以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の第1実施の形態であるディスコネクト装置1が搭載された4輪駆動車100について説明する。第1実施の形態の4輪駆動車100に搭載されるディスコネクト装置1は、駆動力の伝達と遮断とを切り替えることで、4輪駆動車100の2輪駆動走行状態における燃費の向上を図るためのものである。
図1は、ディスコネクト装置1が搭載された4輪駆動車100の概略を示した概略図であり、理解を容易とするため、原動機2を2点鎖線にて示している。なお、矢印Lは4輪駆動車100の左方向を、矢印Rは4輪駆動車100の右方向を、矢印Fは、4輪駆動車100の前方向を、矢印Bは、4輪駆動車100の後方向をそれぞれ示している。
図1に示すように、4輪駆動車100は、駆動力を発生する原動機2と、その原動機2から入力された駆動力を変速して出力するトランスミッション3と、そのトランスミッション3に連結されトランスミッション3から伝達された駆動力を伝達する連結軸4と、その連結軸4によって伝達された駆動力をリヤプロペラシャフト6とフロントプロペラシャフト7とに分配して出力するトランスファ5とを主に備えている。
トランスファ5は、4輪駆動車100の4輪を駆動輪とする4輪駆動走行(以下、「4WD」と略す。)状態と、4輪駆動車100の2輪の駆動を解除して残りの2輪を駆動輪とする2輪駆動走行(以下、「2WD」と略す。)状態との2つの走行状態の切り替えをおこなうものであり、フロントプロペラシャフト7に伝達される駆動力の伝達と遮断とを切り替える機能も備えている。
リヤプロペラシャフト6には、リヤデファレンシャル機構8が連結されており、そのリヤデファレンシャル機構8は、車輪9に連結される右リヤアクスル11と車輪10に連結される左リヤアクスル12とに駆動力を分配する。
フロントプロペラシャフト7には、フロントデファレンシャル機構13が連結されており、そのフロントデファレンシャル機構13は、車輪14に連結される左フロントアクスル16と、車輪17に連結される右フロントアクスル15にディスコネクト装置1を介して接続される中央フロントアクスル18とに駆動力を分配する。
ここで、4輪駆動車100におけるディスコネクト装置1の作動について説明する。上述したように、4輪駆動車100は、4WD状態と2WD状態との2つの走行状態にて運転が行われる。その4輪駆動車100の4WD状態と2WD状態との切り替えは、トランスファ5にて、原動機2から入力された駆動力のフロントプロペラシャフト7への伝達と遮断とを切り替えることでおこなわれる。
そのため、4輪駆動車100が走行している状態では、フロントプロペラシャフト7は、フロントデファレンシャル機構13を介して車輪17と車輪14とによって回転されている。よって、車輪17及び車輪14の回転を妨げる抵抗がフロントプロペラシャフト7を回転させる分だけ大きくなり、4輪駆動車100の走行抵抗を増加させ、4輪駆動車100の燃費を悪化させる要因の1つとなっている。
そこで、ディスコネクト装置1によって中央フロントアクスル18から車輪17の接続を解除すると、中央フロントアクスル18は、車輪17に対して独立して回転することができる。
一方、フロントデファレンシャル機構13に連結される左フロントアクスル16は、車輪14と同一の回転速度にて回転している。その車輪14の回転は、フロントデファレンシャル機構13を介してフロントプロペラシャフト7および中央フロントアクスル18に分配される。
ここで、フロントデファレンシャル機構13の作動について簡単に説明する。フロントデファレンシャル機構13は、差動機構であり、フロントプロペラシャフト7から入力された駆動力を1対1の比率で中央フロントアクスル18と左フロントアクスル16に分配するものである。
そのため、フロントプロペラシャフト7と左フロントアクスル16と中央フロントアクスル18とは、連動しており、駆動力が左フロントアクスル16から入力された場合で、フロントプロペラシャフト7からの駆動力の伝達がない場合に、中央フロントアクスル18には、左フロントアクスル16と回転方向が反対方向で同等の駆動力が伝達される。
上述したように、中央フロントアクスル18は、独立して回転することができる状態であるので、中央フロントアクスル18を回転させるための駆動力は、フロントプロペラシャフト7を回転させるために必要な駆動力よりも小さく、その駆動力の反力がフロントプロペラシャフト7に伝達されるが、その駆動力の大きさでは、フロントプロペラシャフト7を回転させることができない。その結果、フロントプロペラシャフト7は回転されずに停止された状態を維持する。
よって、車輪14と車輪17との回転からフロントプロペラシャフト7の回転が切り離される。その結果、フロントプロペラシャフト7の回転抵抗分の駆動損失が削減されるので、4輪駆動車100の走行抵抗を低減させ、4輪駆動車100の燃費の向上を図ることができる。
次に、図2を参照してディスコネクト装置1の概略構成について説明する。図2は、ディスコネクト装置1の断面図であり、中央フロントアクスル18(図1参照)から右フロントアクスル15(図1参照)への駆動力が伝達される状態(4WD状態)を示している。また、DCソレノイド52の内部構造に関しては、概略を示している。なお、図1と同様に、矢印L,R,F,Bは4輪駆動車100の左方向,右方向,前方向,後方向をそれぞれ示している。
ディスコネクト装置1は、4輪駆動車100の2WD状態における燃費の向上を図るためのものであり、そのために、2WD状態において、フロントプロペラシャフト7(図1参照)の回転を停止させことができる状態を作り出すものである。
ディスコネクト装置1は、図2に示すように、入力シャフト20と、出力シャフト30と、クラッチ部40と、駆動部50と、駆動力伝達部60と、ケース70とを備えている。
入力シャフト20は、フロントデファレンシャル機構13(図1参照)から伝達される駆動力をクラッチ部40に入力するものであり、後述するケース70にボールベアリングB1を介して回動可能に支持されている。
また、入力シャフト20は、図2に示すように、中央フロントアクスル18の端部(図1右側端部)から延設されると共に軸心Tを有する略円柱形状に構成されており、嵌合孔21と、スプライン22とを備えている。
嵌合孔21は、入力シャフト20と出力シャフト30とを回動可能に連接するための部位であり、入力シャフト20の端部(図2矢印R方向側端部)に凹設されると共に軸心Tに沿う方向に開口する円形の開口部を有しており、後述する出力シャフト30の嵌合先端31にローラベアリングB2を介して外嵌される。
スプライン22は、後述するクラッチ部40に駆動力を伝達するための部位であり、入力シャフト20の端部(図2矢印R方向側端部)の外周面の全周に渡って軸心T方向に沿って延設されており、後述するポケットプレート90のスプライン91(図4(a)及び図4(b)参照)にスプライン嵌合される。
出力シャフト30は、入力シャフト20から伝達される駆動力を出力するものであり、図2に示すように、後述するケース70にボールベアリングB3を介して回動可能に支持されている。また、出力シャフト30は、右フロントアクスル15の端部(図1矢印L方向側端部)から延設されると共に軸心Tを有する略円柱形状に構成されており、嵌合先端31と、スプライン32と、リング溝33と、サークリップ34とを備えている。
図2に示すように、嵌合先端31は、入力シャフト20と出力シャフト30とを回動可能に連接するための部位であり、軸心Tを有する円柱形状に構成されると共に出力シャフト30の端部(図2矢印R方向側端部)から凸設されており、前述した入力シャフト20の嵌合孔21にローラベアリングB2を介して内嵌されている。
スプライン32は、後述するクラッチ部40から伝達された駆動力を伝達するための部位であり、図2に示すように、出力シャフト30の端部(図2矢印R方向側端部)の外周面の全周に渡って軸心T方向に沿って延設されており、後述するノッチプレート80のスプライン84(図3(a)及び図3(b)参照)にスプライン嵌合される。なお、スプライン32が形成される出力シャフト30の部位は、嵌合先端31より大きな外径を有している。
リング溝33は、後述するサークリップ34を収容する部位であり、図2に示すように、出力シャフト30のスプライン32が形成されている部位の全周に沿って凹設されると共にスプライン32の歯底(軸心T側の谷の部位)より軸心T側に底面を有している。
また、スプライン32の歯底からリング溝33の底面までの深さは、後述するサークリップ34の厚さより大きな寸法値とされている。そのため、スプライン32を後述するクラッチ部40のスプライン84とスプライン嵌合する際に、サークリップ34はリング溝33の底面側へ移動することができるので、クラッチ部40の移動を円滑におこなうことができる。サークリップ34は、出力シャフト30がノッチプレート80から抜けないように規制するため部材であり、断面が円形の正面視C形の形状に構成されている。
クラッチ部40は、入力シャフト20と出力シャフト30とを回転方向に連結または連結の解除をおこなうものであり、図2に示すように、軸心Tを有する略円筒形状体として構成され、出力シャフト30がスプライン嵌合されるノッチプレート80と、そのノッチプレート80を内挿し入力シャフト20がスプライン嵌合されるポケットプレート90と、そのポケットプレート90とノッチプレート80とを係止するストラット43とを備えている。なお、クラッチ部40の詳細な説明は、図3、図4、図7(a)、図7(b)を用いて後述する。
駆動部50は、図2に示すように、クラッチ部40を作動させる駆動力を発生するためのものであり、クラッチ部40の内部に収容されクラッチ部40を4WD状態とするための押圧力を発生するねじりコイルばね51と、クラッチ部40を2WD状態とするための押圧力を発生するDCソレノイド52とを備えている。
ねじりコイルばね51は、ねじりコイルばねとされるコイル部51a(図7(c)及び図7(d)参照)を備え、それらコイル部51aをコイル部51aの巻き部の軸心方向(図7(c)上下方向)に所定の距離離して配設し、それらコイル部51aの一方の端部同士を正面視(図7(c)紙面垂直方向視)コの字形状となるように連結されて構成されている(図7(c)及び図7(d)参照)。
よって、後述するコイル位置決め凸部92b(図4(a)参照)を一対のコイル部51aの間に配設することで、ねじりコイルばね51の位置決めをおこなうことができる。なお、ねじりコイルばね51の配設向きは、ストラット43をノッチプレート80側に押圧することが可能であればどの向きでも良い。
DCソレノイド52は、磁界の発生を制御して、クラッチ部40に付与する押圧力を発生させるものであり、図2に示すように、後述するケース70に収容固定され、コイルフレーム53と、プランジャ54とを備えている。
コイルフレーム53は、磁界を発生するためのものであり、円筒形状に構成され、一定方向の磁界を発生する永久磁石である磁石部55と、流される電流の極性(方向)によって異なる方向の磁界を発生させると共に電流が遮断されることで磁界を消失させるコイル56とを備えている。コイルフレーム53は、磁石部55とコイル56とを固定するものであり、コイル56の入力シャフト20側(図2矢印L方向)に磁石部55が配設されている。
プランジャ54は、鉄にて構成される軸状の部材であり、図2に示すように、コイルフレーム53に内挿されると共にコイルフレーム53によって発生された磁界から磁力を付与され、後述する駆動力伝達部60を介してクラッチ部40に押圧力を付与するものである。
ねじりコイルばね51は、常時ストラット43をノッチプレート80側へ押圧し、DCソレノイド52は、流される電流の極性(方向)によって異なる向きの磁界を発生させるコイル56と、磁界によってストラット43をポケットプレート90側へ押圧する磁力が付与される鉄製のプランジャ54を備えているので、駆動部50の簡素化を図ることができる。
即ち、例えば、ねじりコイルばね51を省略した構成では、ストラット43を揺動するためには、ストラット43をノッチプレート80側およびポケットプレート90側の両方へ押圧するように構成する必要があり、ストラット43をポケットプレート90側へ押圧するための磁界を発生するコイル56を更に備える必要がある。そのため、DCソレノイド52が複雑化するという不具合がある。
これに対し、第1実施の形態によれば、コイル56が発生する磁力は、ねじりコイルばね51が発生する押圧力より大きく設定されているので、1個のコイル56に流される電流の極性(方向)の切り替えに応じて異なる向きの磁界を発生させることで、プランジャ54に付与する磁力をねじりコイルばね51の押圧力より小さくすることができる。
その磁力と押圧力とによってプランジャ54が移動されて、ストラット43をノッチプレート80側とポケットプレート90側とへ揺動させることができる。よって、コイル56を1個とすることができるので、DCソレノイド52の簡素化を図ることができる。
また、例えば、ストラット43がねじりコイルばね51の押圧力によってノッチプレート80側へ押し付けられた状態(トルク(駆動力)伝達状態、4WD状態)において、コイル56に電流を流す回路が断線した場合には、その状態が保たれるので、ストラット43がノッチプレート80側へ押し付けられた状態をフェール状態として、故障が発生しても、第1実施の形態のディスコネクト装置1を搭載する4輪駆動車100の運行状態を確実にトルク(駆動力)伝達状態(4WD状態)とすることができる。
出力シャフト30と入力シャフト20との間で駆動力の伝達を遮断する場合に、コイル56は、正極性の電流が流されることで、永久磁石の発生する磁界と同一方向の磁界を発生し、それら磁界の合成磁界によって、弾性部材の押圧力より大きな磁力をプランジャ54に付与し、プランジャ54をコイルフレーム53側(図2矢印R方向)へ移動させる。
その移動によって、ストラット43が収納凹部92に収容されると共に、プランジャ54が磁石部55に近接する。また、プランジャ54が磁石部55に近接するとねじりコイルばね51の押圧力より大きな磁力が永久磁石の磁界からプランジャ54に付与されるので、コイル56に流される正極性の電流を遮断してもプランジャ54を保持することができ、磁石部55の磁力のみで、駆動力の伝達を遮断することができる。
また、出力シャフト30と入力シャフト20との間で駆動力を伝達する場合に、コイル56は、電流の逆極性の電流が流されることで、永久磁石の磁界と逆方向でかつ磁界の強度が略同一の磁界を発生し、それら磁界の合成磁界によって、ねじりコイルばね51の押圧力より小さな磁力をプランジャ54に付与し、プランジャ54を磁石部55側の反対側へ移動させ、その移動によってストラット43が係合凹部86に係止される。なお、磁界は、向きが逆方向の場合には、それぞれを打ち消し合うため、合成磁界が弱くなる。
例えば、磁石部55が省略され、プランジャ54がストラット43をポケットプレート90側へ押し付ける状態(駆動力遮断状態、2WD状態)を使用頻度が高い状態として使用する場合には、プランジャ54を保持するためにコイル56に通電するので、使用頻度が高い分通電時間が長くなり、DCソレノイド52の電力消費が増加するという不具合がある。
これに対し、第1実施の形態では、DCソレノイド52は、プランジャ54を保持することで、ストラット43をポケットプレート90側へ押圧する永久磁石を有する磁石部を備えているので、DCソレノイド52への電流の通電を不要として、プランジャ54を保持することができる。よって、DCソレノイド52の電力消費を低減することができる。
また、例えば、ストラット43が磁石部55の磁力によってポケットプレート90側へ押し付けられた状態(トルク(駆動力)遮断状態、4WD状態)において、コイル56に電流を流す回路が断線した場合には、その状態が保たれるので、ストラット43がポケットプレート90側へ押し付けられた状態をフェール状態として、故障が発生しても、第1実施の形態のディスコネクト装置1を搭載する4輪駆動車100の運行状態を確実にトルク(駆動力)遮断状態(2WD状態)とすることができる。
駆動力伝達部60は、DCソレノイド52にて発生された押圧力をクラッチ部40に伝達するものであり、図2に示すように、フォークシフト61と、ピンシフト62と、リテーナスプリング63と、ストッパスプリング64と、スプリングシフトフォーク65と、スリーブカップリング66と、リテーナストラット67と、プレートストラット69と、複数(第1実施の形態では6個)のピンスリーブ68と、圧縮ばねとして構成されるスプリング69eとを備えている。
フォークシフト61は、クラッチ部40に軸心T方向で入力シャフト20側(図2矢印L側)へ向かう押圧力を付与するものであり、正面視(図2矢印LR方向視)略H字形状に構成された板状体であり、シフトフォーク接触面61aと、シフトフォーク接触面61bとを備えている。
また、フォークシフト61の中央には、フォークシフト61の側面方向(図2紙面垂直方向)に開口を有する円筒体61cが形成されており、そのフォークシフト61の駆動部50側(図2矢印F側)にシフトフォーク接触面61aが形成され、そのフォークシフト61の駆動部50の反対側(図2矢印B側)にシフトフォーク接触面61bが形成されている。
シフトフォーク接触面61aは、正面視(図2矢印LR方向視)略コ字形状に構成された板状体であり、そのコの字形状の一対の端部は、側面視(図2紙面垂直方向視)入力シャフト20側(図2矢印L側)に突出したU字形状に構成されている。
また、シフトフォーク接触面61bも、シフトフォーク接触面61aと同様に構成されており、シフトフォーク接触面61bとシフトフォーク接触面61aとは、コの字の開口部を反対方向へ向けた状態にて配設されており、フォークシフト61の正面視(図2矢印LR方向視)略H字形状を構成している。
円筒体61cには、ケース70に軸支された軸状体であるピンシフト62が摺動可能に内嵌されているので、ピンシフト62を中心としてフォークシフト61が軸心T方向(図2矢印LR方向)に揺動することができる。
この揺動により、シフトフォーク接触面61aが後述するリテーナスプリング63の側面の内のコイルフレーム53側(図2矢印R側)の側面に当接し、シフトフォーク接触面61bが後述するスリーブカップリング66に当接することで、DCソレノイド52からの押圧力がクラッチ部40に伝達される。
リテーナスプリング63は、前述したようにシフトフォーク接触面61aに当接される部位であり、図2に示すように、環状の平板状体として構成されプランジャ54に摺動可能に外挿されている。また、リテーナスプリング63の環状の側面の180°対向する部位にシフトフォーク接触面61aの一対の端部がそれぞれ当接されているので、リテーナスプリング63をバランス良く押圧することができる。
ストッパスプリング64は、環状の平板状体として構成されプランジャ54の端部(図2矢印L側端部)に摺動不能に外嵌されている。スプリングシフトフォーク65は、コイルばねとして構成されており、プランジャ54に伸縮可能に外挿され、リテーナスプリング63とストッパスプリング64とに狭持されて配設されている。
即ち、プランジャ54は、スプリングシフトフォーク65を介してシフトフォーク接触面61aに接続されている。そのため、スプリングシフトフォーク65が緩衝部材として働くので、プランジャ54をDCソレノイド52側(図2矢印R方向)に移動している時に、プランジャ54とシフトフォーク接触面61aとが相対移動して、プランジャ54から伝達される押圧力のクラッチ部40への伝達を円滑におこなうことができる。また、同様に、クラッチ部40から伝達される押圧力においてもプランジャ54への伝達を円滑におこなうことができる。
また、スプリングシフトフォーク65の初期荷重は、ねじりコイルばね51が発生する押圧力よりも大きく、DCソレノイド52が発生する押圧力よりも小さい荷重に設定されている。そのため、スプリングシフトフォーク65は、DCソレノイド52の押圧力によって圧縮変形されるが、ねじりコイルばね51の押圧力によっては圧縮変形されず形状を維持する。
また、磁石部55がプランジャ54を保持するためには、プランジャ54が磁石部55へ近接する必要があり、例えば、4輪駆動車100が4WD状態で、加速または減速している場合には、係合凹部86と収納凹部92とにストラット43が係止されており、DCソレノイド52の発生する押圧力では、係合凹部86と収納凹部92とに対するストラット43の係止が解除されないので、プランジャ54が磁石部55へ近接されない。
そのため、ストラット43が揺動可能状態(加速(減速)から減速(加速)に移行する状態)となるまで、コイル56に通電する必要があった。そのため、コイル56の通電を停止するために、揺動可能状態を判断するセンサ及びそのセンサを使った制御が必要であり、ディスコネクト装置1が複雑になるという不具合があった。
ここで、第1実施の形態では、プランジャ54の駆動力がスプリングシフトフォーク65を介してストラット43に伝達され、スプリングシフトフォーク65の初期荷重は、ねじりコイルばね51が発生する押圧力よりも大きく、DCソレノイド52が発生する押圧力よりも小さい荷重に設定されているので、ストラット43が揺動不能状態(加速(減速)継続状態)であっても、プランジャ54の押圧力でスプリングシフトフォーク65を圧縮して、プランジャ54が磁石部55へ近接することができる。
そのため、プランジャ54が磁石部55の磁力によって保持される。この状態で、圧縮されたスプリングシフトフォーク65の押圧力は、ストラット43に作用しているので、ストラット43が揺動可能状態(加速(減速)から減速(加速)に移行する状態)となると同時に、係合凹部86と収納凹部92とに対するストラット43の係止が解除される。
よって、コイル56に一度通電すると、スプリングシフトフォーク65が圧縮して、プランジャ54が磁石部55に保持されるので、コイル56の通電を不要とすることができる。また、揺動可能状態(加速(減速)から減速(加速)に移行する状態)にとなると圧縮されたスプリングシフトフォーク65の押圧力により、ストラット43が揺動されるので、揺動可能状態を判断するセンサ及びそのセンサを使った制御を不要として、ディスコネクト装置1を簡素化することができる。その結果、ディスコネクト装置1の製品コストの削減を図ることができる。
スリーブカップリング66は、図2に示すように、円筒形状の一端がフランジ状に張り出した形状に構成されている。その円筒形状に構成される部位は、ノッチプレート80の後述するスプライン嵌合部81(図3(b)参照)に外嵌され、フランジ状に形成される部位は、フォークシフト61に当接され、ノッチプレート80(図3(b)参照)の下面82bへ当接または離間される。
また、一対のシフトフォーク接触面61bがスリーブカップリング66の部位であって軸心Tを挟んで180°対向する部位にそれぞれ当接されるので、スリーブカップリング66を傾き難くすることで、スリーブカップリング66がスプライン嵌合部81(図3(b)参照)の外周面を円滑に移動することができる。
ピンスリーブ68は、スリーブカップリング66からの押圧力をリテーナストラット67に伝達する部材であり、無垢の円柱体として構成され、後述する貫通孔87に摺動可能に内嵌されている。
リテーナストラット67は、ストラット43に当接され、後述する複数のストラット43に押圧力を伝達したり、ストラット43の揺動を規制したりする部材である。なお、リテーナストラット67の詳細構成は、図6を参照して後述する。
プレートストラット69は、リテーナストラット67がポケットプレート90に対して回動する際にスプリング69e(図12参照)による付勢力をリテーナストラット67に伝達する部材である。なお、プレートストラット69の詳細構成は、図5を参照して後述する。
図2に示すように、ケース70は、ディスコネクト装置1の基体を構成するものであり、第1ケース71と、その第1ケース71に締結される第2ケース72とを備えて構成されている。第1ケース71は、入力シャフト20側(図2矢印L側)の基体を構成しており、第2ケース72は、出力シャフト30側(図2矢印R側)の基体を構成している。
また、第1ケース71は、略コップ形状に構成されており、その内側面から第2ケース72側(図2矢印R側)へ向かって凸部73が凸設されている。また、第2ケース72には、プランジャ54の長手方向(図2矢印LR方向)に所定の距離離れて配設される規制壁部74が形成されている。
また、第1ケース71と第2ケース72とを締結した場合に、凸部73の先端と規制壁部74とは、プランジャ54の長手方向(図2矢印LR方向)の両側にそれぞれ配設され、凸部73の先端と規制壁部74との間隔寸法は、プランジャ54の長手方向の長さ寸法より大きな寸法値に設定されている。よって、プランジャ54の可動範囲を規制することができる。
よって、プランジャ54を勢いよく動作させた場合でも、凸部73及び規制壁部74に当接されプランジャ54の可動範囲が変わらないので、ストラット43を後述するポケットプレート90の収納凹部92(図4(a)参照)に押し込む動作を素早く且つ正確におこなうことができる。
次に、図3、図4及び図7を参照してクラッチ部40の詳細な構成について説明する。前述したように、クラッチ部40は、入力シャフト20と出力シャフト30とを回転方向に連結または連結を解除するものであり、ノッチプレート80と、ポケットプレート90と、ストラット43と、を備えている(図2参照)。
図3(a)は、ノッチプレート80の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線におけるノッチプレート80の断面図である。
ノッチプレート80は、出力シャフト30に駆動力を伝達するものであり、図3(a)及び図3(b)に示すように、スプライン嵌合部81と、フランジ部82と、リング部83とを備えている。
スプライン嵌合部81は、出力シャフト30へ駆動力を伝達するための部位であり、図3(a)及び図3(b)に示すように、軸心Tを有する円筒形状に構成されており、スプライン嵌合部81の内周面には、スプライン84が形成されている。スプライン嵌合部81の一方(図3(b)上側)の開口部には、径方向外側(図3(b)左右方向外側)にフランジ状に張り出すフランジ部82が連成されている。
フランジ部82は、後述するストラット43(図7(a)及び図7(b)参照)によって係止される部位であり、図3(a)及び図3(b)に示すように、軸心Tを有する環状体として構成されている。
また、フランジ部82の上面(図4(b)上側面)である上面82aには、リング溝85及び複数(本実施の形態では6個)の係合凹部86が凹設され、複数(本実施の形態では6個)の貫通孔87が貫通成形されている。
図3(a)及び図3(b)に示すように、リング溝85は、リテーナストラット67(図6(a)及び図6(b)参照)を移動可能(図3(b)上下方向への移動)に収容する部位であり、正面視円形に構成されている。
また、リング溝85は、上面82aと平行に配設されると共に軸心Tを中心とする径方向に延設される平坦面として構成される許可面85aと、その許可面85aに隣接され許可面85aよりも下面82b側に配設されると共に軸心Tを中心とする径方向に延設される平坦面として構成される規制面85bと、その規制面85bと許可面85aとの間に連接され後述するリテーナストラット67の規制突起部67cが当接される当接面85cとを有している。
上述した規制面85bに後述する規制突起部67cが当接されることで、リテーナストラット67の移動(図3(b)下方向への移動)が規制されて後述するストラット43の揺動が規制される。また、規制突起部67cが許可面85aに向かい合った状態で当接面85cに当接されることで、リテーナストラット67がノッチプレート80と共に回動される。
なお、図3(a)に示すように、規制面85bと許可面85aとは軸心Tを中心とした周方向に交互に配設されているので、ノッチプレート80とリテーナストラット67との角度位置によって、規制突起部67cが規制面85bに対向するか又は許可面85aに対向するかが変わる。即ち、ノッチプレート80とリテーナストラット67との角度位置によって、ストラット43の揺動を制御することができる。
係合凹部86は、後述するストラット43(図7(a)及び図7(b)参照)を当接する部位であり、図3(a)に示すように、正面視(図3(a)紙面垂直方向視)幅W1の寸法値(図3(a)径方向寸法値)を有する正面視略矩形の開口を有する凹部であり、リング溝85の円周上に均等な間隔で配設されている。
また、係合凹部86は、図3(b)に示すように、上面82aと平行に配設されると共に軸心Tを中心とする径方向に延設される平坦面として構成される底面86aと、底面86aと直交すると共にリング溝85の円周方向へ向いている平坦面として構成される側面86bと、その側面86bに対面すると共に底面86aと直交する平坦面として構成される側面86cとを有している。
例えば、側面86cを軸心T方向に対して直交する方向に対して70度未満の傾斜角に設定した場合には、ストラット43の端面43dが係合凹部86の側面86cに押圧されると、その押圧力がストラット43を係合凹部86から離脱させるように働き、ストラット43が係合凹部86から抜けることを防止することが困難である。
ここで、第1実施の形態におけるディスコネクト装置1では、面86cを軸心T方向に対して直交する方向に対して90度の傾斜角に設定しているので、ストラット43の端面43dが係合凹部86の側面86cに押圧されると、その押圧力がストラット43を係合凹部86に押し込む方向の力として働く。よって、ストラット43が係合凹部86から抜けることを防止することができる。
なお、係合凹部86の底面86aは、図3(b)に示すように、リング溝85の許可面85aに対して、上面82a側(図3(b)上側)に配設されており、底面86aと許可面85aとの軸心T方向(図3(a)上下方向)における寸法である間隔寸法は、リテーナストラット67(図6(a)、図6(b)及び図6(c)参照)の上面67aから規制突起部67cの先端(図6(b)及び図6(c)下側端部)までの軸心T方向(図6(b)及び図6(c)上下方向)における寸法値(以下、「リテーナストラット規制高さ」と称す。)以上に設定されている。
そのため、後述するリテーナストラット67をリング溝85内で移動させることができる。よって、上面82aよりもリテーナストラット67の上面67aを下面82b側(図3(b)下側)に移動させることができるので、係合凹部86の側面86b,86cにストラット43の端面43dを当接させることができる。その結果、入力シャフト20(図2参照)から出力シャフト30(図2参照)へ駆動力が伝達される(4WD状態)。
また、規制面85bは、図3(b)に示すように、係合凹部86の底面86aに対して、上面82a側(図3(b)上側)に配設されており、規制面85bと底面86aとの軸心T方向(図3(a)上下方向)における寸法である間隔寸法は、リテーナストラット規制高さと同一に設定されている。そのため、リング溝85の規制面85bにリテーナストラット67(図6(a)、図6(b)及び図6(c)参照)の規制突起部67cが対向している状態では、リテーナストラット67の上面67aは、上面82aと面一となる。
よって、ストラット43が係合凹部86の内部に揺動されず、ストラット43の端面43dが係合凹部86の側面86b,86cに当接されないので、入力シャフト20(図2参照)から出力シャフト30(図2参照)への駆動力の伝達が遮断される(2WD状態)。
貫通孔87は、図3(a)及び図3(b)に示すように、ピンスリーブ68を摺動可能に内嵌する部位であり、底面86aからその底面86aの反対側の面である下面82bに貫通成形され、係合凹部86の正面視(図4(a)紙面垂直方向視)中央の位置に配設されている。
リング部83は、後述するポケットプレート90を回動可能に係止する部位であり、フランジ部82の外縁全周からスプライン嵌合部81と反対側方向(図4(b)上側方向)に立設され、円筒形状に構成されている。リング部83の先端側(図4(b)上側)の内周面には、ポケットプレート90を係止するためのスナップリング41を内嵌するスナップリング溝88が凹設されている。
図4(a)は、ポケットプレート90の正面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線におけるポケットプレート90の断面図であり、図4(c)は、ポケットプレート90の側面図である。
ポケットプレート90は、入力シャフト20から駆動力が伝達されるものであり、図4(a)に示すように、軸心Tを有する円筒形状に構成されており、スプライン91と、下面90aと、上面90cと、プレートストラット摺動面90bと、収納凹部92と、収納凹部93と、ノッチ位置決め部94と、リテーナガイド95と、弾性部材収容部96と、プレート突起収容部97とを備えている。
スプライン91は、ポケットプレート90の内周面に形成され、そのスプライン91は、スプライン32(図2参照)とスプライン嵌合されている。
下面90aは、ポケットプレート90の下側(図4(b)及び図4(c)上側)に形成される平坦面であり、軸心Tを中心とする周方向に均等間隔に複数(本実施の形態では3個)配設されている。それら下面90aには、複数(本実施の形態ではそれぞれ3個の計6個)の収納凹部92,93及びリテーナガイド95が凹設されている。また、下面90aの反対面側(図4(b)及び図4(c)下側)には、下面90aと平行に形成された平坦面である上面90cが形成されている。
プレートストラット摺動面90bは、図4(b)及び図4(c)に示すように、下面90aよりもプレートストラット69(図5(b)及び図5(c)参照)の厚さ寸法(図5(b)及び図5(c)。上下方向寸法)分だけ上面90c側に配設される平坦面である。そのため、プレートストラット摺動面90bにプレートストラット69の上面69aを当接させると下面69bを下面90aと面一とすることができる。
また、プレートストラット摺動面90bには、図4(a)に示すように、ノッチ位置決め部94、リテーナガイド95、弾性部材収容部96及びプレート突起収容部97が凹設されている。
ノッチ位置決め部94は、後述するリテーナ位置決め部67d(図6(a)、図6(b)及び図6(c)参照)を収容することで、リテーナストラット67をポケットプレート90に対して位置決めする部位であり、図4(a)に示すように、軸心Tを中心とする周方向に均等間隔を保って複数(本実施の形態では3個)配設されると共に軸心Tを中心とする周方向に延設されている。
そのため、リテーナ位置決め部67dをノッチ位置決め部94の内部で摺動させることで、後述するリテーナストラット67(図6(a)、図6(b)及び図6(c)参照)をポケットプレート90に対して回動可能とすると共にリテーナストラット67の軸心Tとポケットプレート90の軸心Tとの配設位置を一義的に設定することができる。
その結果、作業者がディスコネクト装置1を組み立てる際にリテーナストラット67のポケットプレート90に対する組み付け間違いを防止して、ディスコネクト装置1の製品品質を確保することができる。
また、リテーナストラット67にリテーナ位置決め部67dが形成されるので、位置決めをするために別部材を備えることを不要とすることができる。よって、ディスコネクト装置1の製品コストの削減を図ることができると共にディスコネクト装置1を簡素化することで信頼性の向上を図ることができる。
また、ノッチ位置決め部94と後述するリテーナ位置決め部67d(図6(a)、図6(b)及び図6(c)参照)との嵌合代は、リテーナストラット67が組み付けられノッチプレート80側へ移動された状態において嵌合が維持される長さに設定されている。
即ち、後述するリテーナ位置決め部67d(図6(a)、図6(b)及び図6(c)参照)がノッチ位置決め部94に嵌合され、後述するリテーナストラット67(図6(a)、図6(b)及び図6(c)参照)が下面90aに面一とされる上面67aに当接された状態における、ノッチ位置決め部94とリテーナ位置決め部67dとの嵌合長さが、リテーナストラット67の軸心T方向(図6(b)及び図6(c)上下方向)における移動距離の最大値より大きな値に設定されているので、リテーナストラット67が移動しても、ノッチ位置決め部94とリテーナ位置決め部67dとの嵌合を維持することができる。よって、リテーナストラット67の移動に関わらず、リテーナストラット67のポケットプレート90に対する配設位置を保持することができる。
リテーナガイド95は、後述するリテーナストラット67(図6(a)、図6(b)及び図6(c)参照)を収容する溝であり、図4(a)に示すように、軸心Tを中心とする周方向に均等間隔を保って複数(本実施の形態では3個)配設されると共に軸心Tを中心とする周方向に延設されている。
プレート突起収容部97は、後述するプレート突起部69d(図5(a)、図5(b)及び図5(c)参照)を収容する溝であり、図4(a)に示すように、円弧形状に延設される。よって、後述するリテーナストラット67のリテーナ位置決め部67dの移動方向に沿って後述するスプリング69eを変形させることができる。よって、スプリング69eの弾性力の大きさを安定させることができるので、ディスコネクト装置1の作動を安定させることができる。
弾性部材収容部96は、スプリング69e(図12参照)収容する部位であり、図4(a)に示すように、円弧形状に延設されている。また、弾性部材収容部96は、段差面96aと、段差対向面96bとを備えると共にプレート突起収容部97の両端に連成されており、弾性部材収容部96の溝幅(軸心Tを中心とする円の径方向寸法値)は、プレート突起収容部97の溝幅(軸心Tを中心とする円の径方向寸法値)より広く設定され、プレート突起収容部97の長さW6は、後述するプレート突起部69dの長さW7より大きな値に設定されている。
段差面96aは、弾性部材収容部96のプレート突起収容部97側に形成される面であり、段差対向面96bは、段差面96aが形成される一端の反対側である他端に形成される面であり段差面96aに対向して配設されている。即ち、段差面96aは、弾性部材収容部96とプレート突起収容部97との間に形成される段差に配設される面として構成されている。
よって、弾性部材収容部96に収容されたスプリング69eが段差面96aに当接されることで、プレート突起収容部97に収容されたプレート突起部69dにスプリング69eが当接されることを防止することができる。
また、スプリング69eの自由長は、弾性部材収容部96の周方向の長さより長く設定され、スプリング69eは、段差面96aと段差対向面96bとの両側面に両端を押圧した状態で弾性部材収容部96に収容されている。
収納凹部92は、上述したように下面90a上に複数(本実施の形態では3個)がポケットプレート90の円周方向に均等に配設され、収納凹部93は、収納凹部92と同様に複数(本実施の形態では3個)が下面90a上に収納凹部92と対向する向きで収納凹部92の間に1個ずつ配設されている。
なお、収納凹部93は、収納凹部92と配設される向きがポケットプレート90の円周方向に対して異なる以外は、同一の構成であるので、収納凹部92の構成について説明し、収納凹部93の説明は省略する。
収納凹部92は、ストラット43とねじりコイルばね51とを収容すると共に、ストラット43によって係止される部位であり、図4(a)に示すように、収納当接底面92aと、コイル位置決め凸部92bと、収納当接底面92cと、収納当接側面92dと、ストラット支持凹部92eとを備えている。
収納当接底面92aは、ねじりコイルばね51の反力を受け止める部位であり、図4(a)に示すように、正面視(図4(a)紙面垂直方向視)幅W2の寸法値を有するコの字形状の平坦面であり、下面90aに平行に形成され収納凹部92の底側(図4(a)紙面垂直方向奥側)に配設されている。
コイル位置決め凸部92bは、ねじりコイルばね51の配設位置を決めるための部位であり、略直方体に構成され収納当接底面92aから下面90a側(図4(a)紙面垂直方向手前側)へ向かって凸設されている。
収納当接底面92cは、ストラット43が揺動した場合に当接される部位であり、正面視(図4(a)紙面垂直方向視)幅W2の寸法値(図4(a)左右方向寸法値)を有する矩形の平坦面であり、下面90aに平行に形成され収納当接底面92cより下面90a側(図4(a)紙面垂直方向手前側)に配設されている。
収納当接側面92dは、ストラット43が揺動した場合に当接される部位であり、下面90aに垂直に形成される平坦面であり、ポケットプレート90の円周方向でコイル位置決め凸部92bに対向する位置に配設されている。
ストラット支持凹部92eは、後述するストラット係合当接部43b(図7(a)参照)を収容することで、ストラット43を回動可能に軸支するための部位であり、収納当接側面92dの両側に延設される一対の凹部である。
図7(a)は、ストラット43の正面図であり、図7(b)は、ストラット43の側面図である。前述したように、ストラット43は、ポケットプレート90とノッチプレート80とを係止するための部材であり、収納凹部92,93の開口形状に対応した正面視略T字形状の板状体として構成され、ストラット収納当接部43aと、ストラット係合当接部43bとを備えている。
ストラット収納当接部43aは、ストラット43の揺動を支持すると共にポケットプレート90の収納当接側面92dに当接する部位であり、長さW4の寸法値(図7(a)上下方向寸法値)を有する略角柱状体として構成されている。また、ストラット収納当接部43aの側面は、ストラット収納当接部43aの長手方向に延設される平坦面とされる側面43cとして構成されている。
ストラット係合当接部43bは、ノッチプレート80の側面86b,86cのどちらかに当接する部位であり、ストラット43が収納凹部92(図3参照)に収容される場合に、側面86bに当接され、ストラット43が収納凹部93(図3参照)に収容される場合に、側面86cに当接される。
また、ストラット係合当接部43bは、ストラット収納当接部43aの側面からストラット収納当接部43aの長手方向に直交する方向(図7(a)紙面上下方向)に延設されており、正面視(図7(a)紙面垂直方向視)幅W5の寸法値(図7(a)上下方向寸法値)を有する平板形状に構成されている。
幅W5の寸法値は、幅W1(図4(a)参照)の寸法値および幅W2(図4(a)参照)の寸法値より小さな寸法値とされており、(W1>W5,W2>W5)。長さW4の寸法値は、幅W1(図4(a)参照)の寸法値より大きく、幅W3(図4(a)参照)の寸法値より小さな寸法値とされている(W3>W4>W1)。
そのため、ストラット43に押圧力が作用するとストラット収納当接部43aは、係合凹部86(図4(a)参照)側へ移動せず、ストラット支持凹部92e(図4(a)参照)に収容された状態を維持する。ストラット係合当接部43bは、係合凹部86側へ移動することができる。その結果、ストラット係合当接部43bを揺動中心としてストラット係合当接部43bが係合凹部86と収納凹部92とを結ぶ方向に揺動することができる。
また、係合当接部43bのストラット収納当接部43aと反対側(図7(b)左側)に位置する端面43dは、ストラット収納当接部43aの側面43cと平行に配設された平坦面として構成されている。
次に、図5を参照して、駆動力伝達部60を構成するプレートストラット69の詳細構成について説明する。図5(a)は、プレートストラット69の正面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線におけるプレートストラット69の断面図であり、図5(c)は、プレートストラット69の側面図である。
プレートストラット69は、後述するリテーナストラット67にスプリング69e(図12参照)からの付勢力を伝達する部材であり軸心Tを中心とする環状に構成されている。プレートストラット69は、図5(a)、図5(b)及び図5(c)に示すように、上面69aと、下面69bと、複数(本実施の形態では3個)の係合張出部69cと、複数(本実施の形態では3個)のプレート突起部69dとを備えている。
上面69aは、前述したポケットプレート90のプレートストラット摺動面90bに当接される平坦面である。下面69bは、上面69aの反対側に配設され後述するリテーナストラット67(図6参照)の上面67aに当接される平坦面である。
プレート突起部69dは、前述したプレート突起収容部97に収容される部位であり、下面69bから上面69aへ向かう方向(図5(b)及び図5(c)上方向)に突出する突起である。また、プレート突起部69dの長さW7(軸心Tを中心とする周方向寸法値)は、前述したプレート突起収容部97の幅W6より小さな寸法値とされている。
また、プレート突起部69dは、後述するリテーナストラット67(図6参照)と共に回動して段差対向面96bとの間でスプリング69e(図12(b)参照)を圧縮する。スプリング69eが圧縮されることでスプリング69eに蓄えられた押圧力は、後述するリテーナストラット67(図6参照)を初期位置(図12(a)及び図12(c)に図示されるポケットプレート90とプレートストラット69と位置関係であり、請求項4に記載の「第1角度位置」に対応する。)に押し戻す際に使用される。
係合張出部69cは、リテーナストラット67を嵌合させるための部位であり、図5(a)に示すように、プレート突起部69dの外側に張り出して形成されている。なお、プレート突起部69dには、後述するリテーナストラット67のリテーナ位置決め部67dが挿入される貫通孔69c1が形成されている。
次に、図6を参照して、駆動力伝達部60を構成するリテーナストラット67の詳細構成について説明する。図6(a)は、リテーナストラット67の正面図であり、図6(b)は、図5(a)のVb−Vb線におけるリテーナストラット67の断面図であり、図6(c)は、リテーナストラット67の側面図である。
リテーナストラット67は、ストラット43を揺動させたりその揺動を規制したりする部材であり軸心Tを中心とする環状に構成されている。リテーナストラット67は、図6(a)、図6(b)及び図6(c)に示すように、上面67aと、下面67bと、規制突起部67cと、リテーナ位置決め部67dとを備えている。
上面67aは、プレートストラット69の係合張出部69cに当接される平坦面である。下面67bは、上面67aの反対側に配設されピンスリーブ68(図2参照)に当接される平坦面である。
規制突起部67cは、規制面85bに当接されることでリテーナストラット67の動作を規制する部位であり、図6(a)に示すように、上面67aから下面67bへ向かう方向(図6(b)及び図6(c)下方向)へ突出する突起である。
リテーナ位置決め部67dは、前述した貫通孔69c1に緩嵌される部位であり、下面67bから上面67aへ向かう方向(図6(b)及び図5(c)上方向)に突出する突起である。よって、リテーナストラット67の回動がプレートストラット69へと伝達される。
次に、図8及び図9を参照して、ポケットプレート90、ねじりコイルばね51、ストラット43、プレートストラット69、リテーナストラット67、ピンスリーブ68及びノッチプレート80が組み立てられた状態での位置関係を説明する。
図8は、ポケットプレート90、ねじりコイルばね51、ストラット43、プレートストラット69、リテーナストラット67、ピンスリーブ68及びノッチプレート80の分解組立図である。図9(a)は、図8に示す矢印IXa方向視におけるピンスリーブ68及びノッチプレート80の正面図であり、図9(b)は、図8に示す矢印IXb方向視におけるポケットプレート90、ねじりコイルばね51、ストラット43、プレートストラット69及びリテーナストラット67の正面図である。
図8及び図9(a)に示すように、ピンスリーブ68が貫通孔87に挿入される。図8及び図9(b)に示すように、ポケットプレート90の収納凹部92,93には、ねじりコイルばね51が挿入され、そのねじりコイルばね51のノッチプレート80側(図8下側、図9(b)紙面垂直方向奥側)には、ストラット43が挿入される。前述したように、弾性部材収容部96には、スプリング69e(図12参照)が収容される。
ストラット43のノッチプレート80側(図8下側、図9(b)紙面垂直方向奥側)には、プレートストラット69が配設される。この場合、前述したように、プレートストラット69のプレート突起部69dがポケットプレート90のプレート突起収容部97に挿入され、プレートストラット69の上面69aがポケットプレート90のプレートストラット摺動面90bに当接される。
下面69bは、図9(b)に示すように、弾性部材収容部96及びプレート突起収容部97の開口側(図9(b)紙面垂直方向手前側)に配設される。よってスプリング69e(図12参照)の飛び出しが防止される。
プレートストラット69のノッチプレート80側(図8下側、図9(b)紙面垂直方向奥側)にはリテーナストラット67が配設される。この場合、前述したように、リテーナストラット67の上面67aがプレートストラット69の係合張出部69cに当接され、リテーナストラット67のリテーナ位置決め部67dがプレートストラット69の貫通孔69c1に緩嵌される。リテーナストラット67は、ノッチプレート80のリング溝85に収容され、リテーナストラット67の下面67bがピンスリーブ68に隣接して配設される。
また、ピンスリーブ68をポケットプレート90側(図8上側)へ押圧する押圧力がピンスリーブ68に作用すると、その押圧力は、ピンスリーブ68からリテーナストラット67を介してストラット43へと伝達される。
即ち、リテーナストラット67とプレートストラット69とが緩嵌されているので、リテーナストラット67は、軸心T方向(図8上下方向)に沿ってプレートストラット69に対して独立して移動することができる。
よって、リテーナストラット67とプレートストラット69との両部材を共に移動させることなく、リテーナストラット67のみを移動させることでストラット43を揺動させることができる。
例えば、リテーナストラット67とプレートストラット69とを一部材にて構成した場合には、プレートストラット69の重量分、ストラット43を移動させるための負荷が余分に必要となる。
これに対し、本実施の形態では、リテーナストラット67のみを移動させることでストラット43を揺動させることができるので、プレートストラット69が移動されない分、ストラット43を揺動させるための負荷を低減させることができる。
その結果、ねじりコイルばね51及びDCソレノイド52を変更しなければ、負荷が低減された分、ストラット43の移動速度を向上させることができる。また、ストラット43の移動速度を維持すれば、ねじりコイルばね51及びDCソレノイド52に必要とされる力を小さく抑えることができるので、ねじりコイルばね51及びDCソレノイド52の小型化を図ることができる。
なお、リテーナ位置決め部67dは、リテーナストラット67の移動にかかわらずノッチ位置決め部94に対する嵌合が確保されるので、リテーナストラット67の軸心Tの位置ずれが生じることを防止することができる。
次に、図10、図11及び図12を参照してクラッチ部40の駆動力の伝達(連結軸4WD状態)と遮断(2WD状態)との切り替え動作について説明する。
図10及び図11は、図9(a)及び図9(b)のX−X線におけるクラッチ部40の断面図を並べた状態遷移図であり、クラッチ部40が駆動力を遮断した状態(2WD状態)から伝達する状態(4WD状態)に切り替わり再び遮断する状態(2WD状態)に切り替わる状態遷移を示している。
図10(a)は、ストラット43の係合凹部86に対する係合が解除された状態(2WD状態)で、且つリテーナストラット67の移動が規制されている状態を示したクラッチ部40の断面図であり、図10(b)は、図10(a)の状態からノッチプレート80がポケットプレート90に対して回動された状態を示したクラッチ部40の断面図であり、図10(c)は、図10(b)の状態からノッチプレート80がポケットプレート90に対して更に回動され収納凹部93に収納されるストラット43が係合凹部86側に振動された状態を示したクラッチ部40の断面図である。
図11(a)は、図10(c)の状態からノッチプレート80がポケットプレート90に対して回動されリテーナストラット67の規制突起部67cがリング溝85の当接面85cに当接された状態を示したクラッチ部40の断面図であり、図11(b)は、図11(a)の状態からノッチプレート80がポケットプレート90に対して回動され収納凹部93に収納されたストラット43の端面43dが係合凹部86の側面86cに当接された状態(4WD状態)を示したクラッチ部40の断面図であり、図11(c)は、図11(b)の状態からリテーナストラット67がポケットプレート90側へ移動されストラット43の係合が解除された状態(2WD状態)を示したクラッチ部40の断面図である。
なお、係合凹部86の側面86bは、側面86cに対向すると共に、収納凹部93に収納されるストラット43の端面43dへ当接される面であると共に、収納凹部93に収納されるストラット43は、収納凹部92に収納されるストラット43と周方向に向きが異なる以外は同等に構成されている。
よって、収納凹部93に収納されるストラット43及び係合凹部86の側面86bは、収納凹部92に収納されるストラット43及び係合凹部86の側面86cと同等の効果を奏するため、収納凹部92に収納されるストラット43及び係合凹部86の側面86cに関して説明し、収納凹部93に収納されるストラット43及び係合凹部86の側面86bの説明を省略する。
図12は、図9(a)及び図9(b)のXII−XII線におけるクラッチ部40の断面図および図8に示す矢印IXb方向視におけるポケットプレート90、ねじりコイルばね51、ストラット43、プレートストラット69及びリテーナストラット67の部分正面図を並べた状態遷移図である。
図12(a)は、図9(a)及び図9(b)のXII−XII線におけるクラッチ部40の断面図であり駆動力の伝達が遮断された状態(図10(a)、図10(b)、図10(c)、図11(a)及び図11(c)に対応する状態、2WD状態)が図示されている。図12(b)は、図9(a)及び図9(b)のXII−XII線におけるクラッチ部40の断面図であり駆動力が伝達されている状態(図11(b)に対応する状態、4WD状態)が図示されている。
図12(c)及び図12(d)は、図8に示す矢印IXb方向視におけるポケットプレート90、ねじりコイルばね51、ストラット43、プレートストラット69及びリテーナストラット67の部分正面図であり、それぞれ図12(a)及び図12(b)と同一状態を図示している。また、図12(c)には、駆動力の伝達が遮断されている状態(2WD状態)が図示され、図12(d)には、駆動力が伝達されている状態(4WD状態)が図示されている。
まず、図10(a)に示すように、ディスコネクト装置1は、ストラット43の端面43dと係合凹部86の側面86cとの軸心Tを中心とする周方向の間隔である離間間隔Kが安全値K1以下の場合に、リテーナストラット67の規制突起部67cがノッチプレート80の規制面85bに対向するように構成されている。
ここで、DCソレノイド52(図2参照)からリテーナストラット67に付与される押圧力(図10(a)上側向きの力)がねじりコイルばね51からストラット43に付与される押圧力(図10(a)下側向きの力)よりも小さくなると、リテーナストラット67の規制突起部67cが規制面85bに当接される。
よって、リテーナストラット67がノッチプレート80側(図10(a)下側)へ移動されることが規制され、ストラット43の揺動が規制される。その結果、ストラット43の端面43dが側面86cに当接されることが防止され、ノッチプレート80がポケットプレート90に対して回動可能とされることで、クラッチ部40が駆動力を遮断した状態(2WD状態)を維持することができる。
また、ストラット43は、ノッチプレート80がポケットプレート90に対して回動されている状態でポケットプレート90の収納凹部92からノッチプレート80の係合凹部86へと揺動されるので、係合凹部86の側面86cとストラット43の端面43dとの離間間隔Kが狭いと、ストラット43の揺動が完了する前にストラット43の先端が底面86aに当接される場合がある。
この場合、ストラット43の端面43dの一部と係合凹部86の側面86cの一部とが当接されるので、接触面積が小さくなる。そのため、ストラット43の端面43d及び係合凹部86の側面86cに作用する圧力が高まり、ストラット43の端面43dまたは係合凹部86の側面86cに欠けが発生して、クラッチ装置が破損する場合がある。
ここで、第1実施の形態では、離間間隔Kが安全値K1以下の場合に、リテーナストラット67の規制突起部67cがノッチプレート80の規制面85bに対向するように構成されているので、安全値K1以下の離間間隔Kの状態では、収納凹部92に収納されたストラット43が係合凹部86側に揺動されない。
そのため、ストラット43の端面43dと係合凹部86の側面86cとの一部だけが当接されて、ストラット43の端面43dと係合凹部86の側面86cとの接触圧力が高まることを回避することができる。
その結果、ストラット43の端面43dと係合凹部86の側面86cとの接触面積を十分に確保することができるので、ストラット43の端面43dまたは係合凹部86の側面86cに欠けが発生することを防止して、ディスコネクト装置1の破損を防止することができる。
また、規制突起部67cが規制面85bに当接されることで、リテーナストラット67の移動が規制されて係合凹部86の側面86cにストラット43の端面43dが当接されることを規制することができるので、ストラット43の揺動を規制するために別の部材を追加することを不要とすることができる。
よって、ディスコネクト装置1を構成する部品数を削減することができる。その結果、ディスコネクト装置1の製品コストの削減を図ることができると共にディスコネクト装置1を簡素化することで信頼性の向上を図ることができる。
次に、図10(b)に示すように、図10(a)の状態からノッチプレート80がポケットプレート90に対して更に回動(図10(b)右側へ移動)されると、規制面85bが規制突起部67cの延長上から移動され、許可面85aが規制突起部67cの延長上に位置される。この場合、規制面85bによる規制突起部67cの当接が解除されるので、リテーナストラット67がノッチプレート80側(図10(b)下側)へ移動される。
そして、収納凹部92に収納されたストラット43は、ノッチプレート80の上面82aに対向しているので上面82aに当接されて移動が規制されるが、収納凹部93に収容されたストラット43は、係合凹部86に対向しているのでリテーナストラット67の移動に伴って先端が係合凹部86の内部へ移動される。
次に、図10(c)に示すように、図10(b)の状態からノッチプレート80がポケットプレート90に対して更に回動(図10(c)右側へ移動)されると、収納凹部92に収容されたストラット43が係合凹部86に対向され、収納凹部93に収容されたストラット43がノッチプレート80の上面82aに対向される。
そして、収納凹部92に収納されたストラット43は、係合凹部86に対向しているのでリテーナストラット67が移動している分、先端が係合凹部86の内部へ移動され、収納凹部93に収容されたストラット43は、上面82aに対向しているので上面82aに当接されて収納凹部93の内部へ押し戻される。
そして、図11(a)に示すように、当接面85cに規制突起部67cが当接されて、図11(b)に示すように、リテーナストラット67がノッチプレート80と共に回動して、ストラット43の端面43dが係合凹部86の側面86cに当接される。その結果、ノッチプレート80のポケットプレート90に対する回動が規制され、クラッチ部40が駆動力を伝達する(4WD状態)。
また、図12(c)に示すように、プレートストラット69の貫通孔69c1にリテーナストラット67のリテーナ位置決め部67dが緩嵌されることで、プレートストラット69がリテーナストラット67と共に回動可能とされているので、図12(d)に示すように、当接面85cに規制突起部67cが当接されてノッチプレート80が更に回動されることで、リテーナストラット67がノッチプレート80と共に回動される。
そして、図12(a)及び図12(c)に示す、プレートストラット69の係合張出部69cが一対のスプリング69eの間に非押圧状態として配設された状態である初期位置(請求項4に記載の「第1角度位置」に対応する。)から、プレートストラット69がポケットプレート90に対して回動されることで、図12(b)及び図12(d)に示す、係合張出部69cがスプリング69eを圧縮する状態である回動位置(請求項4に記載の「第2角度位置」に対応する。)へと移動する。
よって、後述するリテーナストラット67(図6参照)のリテーナ位置決め部67dの移動方向に沿って後述するスプリング69e(図8参照)を変形させることができる。その結果、スプリング69eの弾性力の大きさを安定させることができるので、ディスコネクト装置1の作動を安定させることができる。
また、弾性部材収容部96は、上述したように、正面視(図12(d)紙面垂直方向視)円弧形状に構成されているので、リテーナストラット67のリテーナ位置決め部67dの移動方向に沿ってスプリング69eを変形させることができる。よって、スプリング69eの弾性力の大きさを安定させることができるので、ディスコネクト装置1の作動を安定させることができる。
そして、DCソレノイド52(図2参照)からリテーナストラット67に付与される押圧力(図11(c)上側向きの力)がねじりコイルばね51からストラット43に付与される押圧力(図11(c)下側向きの力)よりも大きくなると、図11(c)に示すように、リテーナストラット67がノッチプレート80からポケットプレート90へ向かう方向(図11(c)上方向)へ移動されて、ストラット43の端面43dと係合凹部86の側面86cとの当接が解除されると共に規制突起部67cの当接面85cへの当接も解除される。
よって、ストラット43の端面43dと係合凹部86の側面86cとの当接が解除されることで、ノッチプレート80のポケットプレート90に対する係合が解除されるので、クラッチ部40が駆動力の伝達を遮断する(2WD状態)。
また、規制突起部67cの当接面85cへの当接も解除されるので、圧縮されたスプリング69eの弾性力によりリテーナストラット67がノッチプレート80に対して回動されて回動位置から初期位置に移動される。そのため、駆動力の伝達と遮断とを繰り返しても毎回、ストラット43の揺動を規制する離間間隔Kを安全値K1より小さなとすることができる。
よって、ストラット43の端面43dと係合凹部86の側面86cとの一部だけが当接されて、ストラット43の端面43dと係合凹部86の側面86cとの接触圧力が高まることを回避することができる。
その結果、ストラット43の端面43dと係合凹部86の側面86cとの接触面積を十分に確保することができるので、ストラット43の端面43dまたは係合凹部86の側面86cに欠けが発生することを防止して、ディスコネクト装置1の破損を防止することができる。
また、スプリング69eの弾性力によってプレートストラット69を介してリテーナストラット67を回動位置から初期位置へ移動させるので、リテーナストラット67を回動位置から初期位置へ移動させるために規制面85bの規制突起部67cへの当接が解除されたことを判断するための手段を省略することができる。
その結果、ディスコネクト装置1の部品数を削減することができるので、製品コストの削減を図ることができると共にディスコネクト装置1を簡素化することで信頼性の向上を図ることができる。
なお、スプリング69eの初期荷重(スプリング69eが段差面96aとその段差面96aに対向して配設される段差対向面96bとに両側を当接させた状態における弾性力)は、組み立て状態におけるプレートストラット69がノッチプレート80に対して回動位置から初期位置へ移動される時の抵抗力よりも大きな値に設定されている。よって、プレート突起部69dをプレート突起収容部97の内部に確実に移動させることができる。
また、図12(a)に示すように、プレート突起収容部97の長さW7は、プレート突起部69dの長さW6より大きな寸法値として構成されているので、プレート突起部69dは、初期位置において、一対のスプリング69eからの押圧力の作用を回避することができる。
例えば、プレート突起部69dの配設位置は、プレート突起部69dをスプリング69eにて押圧している場合、スプリング69eの弾性係数にて決まる(スプリング69eの長さが弾性係数によって決まるため)。この場合、プレート突起部69dの配設位置の精度を確保するためには、スプリング69eの弾性係数を精度良く管理する必要がある。
しかしながら、スプリング69eは、製品コストを削減するために短時間で大量に製造されているので、プレート突起部69dの配設位置の精度を確保するために使用するものとしては、弾性係数の製造ばらつきが大きい。また、弾性部材の弾性係数は、素材の物性、線形寸法および製造時の環境温度などによっても変化する。そのため、スプリング69eの弾性係数を管理するために、製造されたスプリング69eを選別する必要がある。その結果、選別するための管理費がかかり、ディスコネクト装置1の製造コストが嵩む。
これに対し、第1実施の形態におけるディスコネクト装置1では、スプリング69eを段差面96aに当接させると共にプレート突起収容部97にプレート突起部69dを収容するので、プレート突起収容部97に収容された状態ではプレート突起部69dへのスプリング69eからの押圧力の作用を回避することができる。
そのため、スプリング69eの弾性係数に関係なくプレート突起収容部97の範囲内にプレート突起部69dを配設することができる。よって、スプリング69eの弾性係数に関わらず、プレート突起収容部97の加工精度を確保することで、プレート突起部69dの配設位置の精度を確保することができる。
一方、プレート突起収容部97の形状の加工は、狙った精度に加工することが容易なので、加工されたプレート突起収容部97の選別作業を不要として、選別するための管理費を削減することができる。よって、ディスコネクト装置1の製造コストの削減を図ることができる。
次いで、図13を参照して、第2実施の形態について説明する。図13は、第2実施の形態におけるクラッチ部240の断面図であり、図10及び図11と同じ断面位置を示している。図13(a)は、係合凹部86にストラット43の先端が移動された状態を示した第2実施の形態におけるクラッチ部240の断面図であり、図13(b)は、図13(a)の状態からノッチプレート80がポケットプレート290に対して回動されストラット43の端面43dに係合凹部86の側面86cが当接されノッチプレート80がポケットプレート290と共に回動する状態(4WD状態)を示した第2実施の形態におけるクラッチ部240の断面図であり、図13(c)は、図13(b)の状態からリテーナストラット267がノッチプレート80側からポケットプレート290側へ移動されている状態を示した第2実施の形態におけるクラッチ部240の断面図である。
また、図13(d)は、図13(c)の状態から更にリテーナストラット267がノッチプレート80側からポケットプレート290側へ移動されリテーナ位置決め凹部298に摺動部269fが嵌合されている状態を示したクラッチ部240の断面図である。
第1実施の形態では、リテーナ位置決め部67dの両側に配設されるスプリング69eの弾性力によりリテーナストラット67を回動位置から初期位置へ移動させる構成としたが、第2実施の形態では、摺動部269fが傾斜面298a上を摺動されることで、リテーナストラット267を回動位置から初期位置へ移動させるように構成されている。なお、上記各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
第2実施の形態におけるポケットプレート90は、側面視(図13(a)紙面垂直方向視)三角形状に凹設されるリテーナ位置決め凹部298を備え、そのリテーナ位置決め凹部298は、三角形状の辺を構成する一対の平坦面として形成される傾斜面298aにて構成されている。
また、リテーナストラット67は、側面視(図13(a)紙面垂直方向視)三角形状に凸設された摺動部269fを備え、図13(a)に示すように、リテーナストラット67は、許可面85aに規制突起部67cが対向されると共にねじりコイルばね51の付勢力によりストラット43を介してノッチプレート80側(図13(a)下側)に移動される。なお、摺動部269fおよびリテーナ位置決め凹部298が三角形状に構成されているので、周方向(図13(b)左右方向)にも隙間が形成される。
次いで、図13(b)に示すように、ポケットプレート290に対してノッチプレート80が回動してストラット43の端面43dに係合凹部86の側面86cが当接されリテーナストラット267が初期位置(図13(a)に図示されたポケットプレート290に対するリテーナストラット267の位置)から回動位置(図13(b)に図示されたポケットプレート290に対するリテーナストラット267の位置)へ移動される。
そして、DCソレノイド52(図2参照)からリテーナストラット267に付与される押圧力(図13(c)上側向きの力)がねじりコイルばね51からストラット43に付与される押圧力(図13(c)下側向きの力)よりも大きくなると、図13(c)に示すように、摺動部269fが傾斜面298a上を摺動されることで、リテーナストラット267がノッチプレート80からポケットプレート290へ向かう方向(図11(c)上方向)へ移動されつつ回動位置から初期位置に向かって移動される。
その結果、図13(d)に示すように、摺動部269fが一対の傾斜面298aに当接されて、リテーナストラット267のポケットプレート290に対する初期位置への移動が完了する。
このように、第2実施の形態では、DCソレノイド52(図2参照)の押圧力を利用することでリテーナストラット267を回動位置から初期位置へ移動させることができるので、リテーナストラット267を回動位置から初期位置に移動させる部材を省略することができる。
その結果、ディスコネクト装置1の部品数を削減することができるので、製品コストの削減を図ることができると共にディスコネクト装置1を簡素化することで信頼性の向上を図ることができる。
傾斜面298aは、ノッチプレート80がポケットプレート290に対して回動する方向(図13左右方向)に対して角度αの傾斜角を有しており、その角度αは、摺動部269fが傾斜面298a上を摺動可能な角度に設定されている。即ち、傾斜面298aの摩擦係数をμとすると、tanαがμより大きな値(tanα>μ)となるように設定されている。
次いで、図14を参照して、第3実施の形態について説明する。図14は、第3実施の形態における係合凹部386及びストラット343の断面図であり、図10及び図11と同じ断面位置を示している。
第1実施の形態では、ストラット43の端面43dと係合凹部86の側面86cとの接触を確実とするために、係合凹部86の側面86cの傾斜を軸心T方向に直交する方向に対して立てることで、当接されたストラット43の抜けを防止していたが、第3実施の形態では、側面86cの傾斜を軸心T方向に直交する方向に対して寝かせる設定とした。なお、上記各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
第3実施の形態におけるディスコネクト装置1は、軸心T方向に直交する方向(図14左右方向)に対する係合凹部386の側面386cの傾斜角度θが90度から70度に設定されている。
よって、ストラット43をポケットプレート90側へ押圧する押圧力を小さく設定することで、ストラット43の端面43dを係合凹部386の側面386cから容易に離脱させることができる。そのため、DCソレノイド52を駆動力が小さな小型のものに変更することができるので、ディスコネクト装置1の小型化を図ることができる。
また、傾斜角度θを80度から70度に設定すると、更によく、ストラット43の抜けを防止とストラット43を離脱させるための力とのバランスを良好とすることができる。
なお、側面86cの傾斜を軸心T方向に直交する方向に対して寝かせる設定とすることができるのは、離間間隔Kが安全値K1より小さな場合に、ストラット43の揺動を規制しているので、ストラット43の係合凹部386への係合を確実として、ストラット43の端面43dと係合凹部386の側面386cとの当接面積を所定値(設計値)とすることができるからである。
即ち、係合凹部386の側面386cの角度を抜け易い側(軸心T方向に直交する方向に対して寝かせる側)に設定しても、端面43dと側面386cとの当接面積が所定値(設計値)とされるので所望する摩擦力を安定して得ることができるからである。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記各実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例を示すものであり、他の数値を採用することは当然可能である。
第2実施の形態では、リテーナ位置決め凹部298が三角形状に構成される場合を説明したが、円弧形状に構成しても良い。この場合、リテーナ位置決め凹部298の傾斜面298a上を摺動する摺動部269fの軸心T方向の移動量とその軸心Tを中心とする回動方向の移動量とのバランスを変更することができる。よって、軸心T方向の移動が完了する前にプレートストラット269を初期位置に復帰させることもできるので、初期位置復帰の調整の幅を広げることができる。