以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の第1実施の形態である駆動力伝達装置(以下、「ディスコネクト装置」と称す。)10が搭載された4輪駆動車100について説明する。第1実施の形態の4輪駆動車100に搭載されるディスコネクト装置1は、駆動力の伝達と遮断とを切り替えることで、4輪駆動車100の2輪駆動走行状態における燃費の向上を図るためのものである。
図1は、ディスコネクト装置1が搭載された4輪駆動車100の概略を示した概略図であり、理解を容易とするため、原動機2を2点鎖線にて示している。なお、矢印Lは4輪駆動車100の左方向を、矢印Rは4輪駆動車100の右方向を、矢印Fは、4輪駆動車100の前方向を、矢印Bは、4輪駆動車100の後方向をそれぞれ示している。
図1に示すように、4輪駆動車100は、駆動力を発生する原動機2と、その原動機2から入力された駆動力を変速して出力するトランスミッション3と、そのトランスミッション3に連結されトランスミッション3から伝達された駆動力を伝達する連結軸4と、その連結軸4によって伝達された駆動力をリヤプロペラシャフト6とフロントプロペラシャフト7とに分配して出力するトランスファ5とを主に備えている。
トランスファ5は、4輪駆動車100の4輪を駆動輪とする4輪駆動走行(以下、「4WD」と略す。)状態と、4輪駆動車100の2輪の駆動を解除して残りの2輪を駆動輪とする2輪駆動走行(以下、「2WD」と略す。)状態との2つの走行状態の切り替えをおこなうものであり、フロントプロペラシャフト7に伝達される駆動力の伝達と遮断とを切り替える機能も備えている。
リヤプロペラシャフト6には、リヤデファレンシャル機構8が連結されており、そのリヤデファレンシャル機構8は、車輪9に連結される右リヤアクスル11と車輪10に連結される左リヤアクスル12とに駆動力を分配する。
フロントプロペラシャフト7には、フロントデファレンシャル機構13が連結されており、そのフロントデファレンシャル機構13は、車輪14に連結される左フロントアクスル16と、車輪17に連結される右フロントアクスル15にディスコネクト装置1を介して接続される中央フロントアクスル18とに駆動力を分配する。
ここで、4輪駆動車100におけるディスコネクト装置1の作動について説明する。上述したように、4輪駆動車100は、4WD状態と2WD状態との2つの走行状態にて運転が行われる。その4輪駆動車100の4WD状態と2WD状態との切り替えは、トランスファ5にて、原動機2から入力された駆動力のフロントプロペラシャフト7への伝達と遮断とを切り替えることでおこなわれる。
そのため、4輪駆動車100が走行している状態では、フロントプロペラシャフト7は、フロントデファレンシャル機構13を介して車輪17と車輪14とによって回転されている。よって、車輪17及び車輪14の回転を妨げる抵抗がフロントプロペラシャフト7を回転させる分だけ大きくなり、4輪駆動車100の走行抵抗を増加させ、4輪駆動車100の燃費を悪化させる要因の1つとなっている。
そこで、ディスコネクト装置1によって中央フロントアクスル18から車輪17の接続を解除すると、中央フロントアクスル18は、車輪17に対して独立して回転することができる。
一方、フロントデファレンシャル機構13に連結される左フロントアクスル16は、車輪14と同一の回転速度にて回転している。その車輪14の回転は、フロントデファレンシャル機構13を介してフロントプロペラシャフト7および中央フロントアクスル18に分配される。
ここで、フロントデファレンシャル機構13の作動について簡単に説明する。フロントデファレンシャル機構13は、差動機構であり、フロントプロペラシャフト7から入力された駆動力を1対1の比率で中央フロントアクスル18と左フロントアクスル16に分配するものである。
そのため、フロントプロペラシャフト7と左フロントアクスル16と中央フロントアクスル18とは、連動しており、駆動力が左フロントアクスル16から入力された場合で、フロントプロペラシャフト7からの駆動力の伝達がない場合に、中央フロントアクスル18には、左フロントアクスル16と回転方向が反対方向で同等の駆動力が伝達される。
上述したように、中央フロントアクスル18は、独立して回転することができる状態であるので、中央フロントアクスル18を回転させるための駆動力は、フロントプロペラシャフト7を回転させるために必要な駆動力よりも小さく、その駆動力の反力がフロントプロペラシャフト7に伝達されるが、その駆動力の大きさでは、フロントプロペラシャフト7を回転させることができない。その結果、フロントプロペラシャフト7は回転されずに停止された状態を維持する。
よって、車輪14と車輪17との回転からフロントプロペラシャフト7の回転が切り離される。その結果、フロントプロペラシャフト7の回転抵抗分の駆動損失が削減されるので、4輪駆動車100の走行抵抗を低減させ、4輪駆動車100の燃費の向上を図ることができる。
次に、図2を参照してディスコネクト装置1の概略構成について説明する。図2は、ディスコネクト装置1の断面図であり、中央フロントアクスル18(図1参照)から右フロントアクスル15(図1参照)に駆動力の伝達が遮断された状態(2WD状態)を示している。また、DCソレノイド52の内部構造に関しては、概略を示している。なお、図1と同様に、矢印L,R,F,Bは4輪駆動車100の左方向,右方向,前方向,後方向をそれぞれ示している。
図2に示すように、ディスコネクト装置1は、4輪駆動車100の2WD状態における燃費の向上を図るためのものであり、そのために、2WD状態において、フロントプロペラシャフト7の回転を停止させことができる状態を作り出すものである。
ディスコネクト装置1は入力シャフト20と、出力シャフト30と、クラッチ部40と、駆動部50と、駆動力伝達部60と、ケース70とを備えている。
入力シャフト20は、フロントデファレンシャル機構13(図1参照)から伝達される駆動力をクラッチ部40に入力するものであり、後述するケース70にボールベアリングB1を介して回動可能に支持されている。
また、図2に示すように、入力シャフト20は、中央フロントアクスル18の端部(図1右側端部)から延設されると共に軸心Lを有する略円柱形状に構成されており、嵌合孔21と、スプライン22とを備えている。
嵌合孔21は、入力シャフト20と出力シャフト30とを回動可能に連接するための部位であり、入力シャフト20の端部(図2矢印R方向側端部)に凹設されると共に軸心Lに沿う方向に開口する円形の開口部を有しており、後述する出力シャフト30の嵌合先端31にローラベアリングB2を介して外嵌される。
スプライン22は、クラッチ部40に駆動力を伝達するための部位であり、入力シャフト20の端部(図2矢印R方向側端部)の外周面の全周に渡って軸心L方向に沿って延設されており、後述するクラッチ部40のスプライン91(図3(d)参照)にスプライン嵌合される。
図2に示すように、出力シャフト30は、入力シャフト20から伝達される駆動力を出力するものであり、後述するケース70にボールベアリングB3を介して回動可能に支持されている。
また、出力シャフト30は、右フロントアクスル15の端部(図1矢印L方向側端部)から延設されると共に軸心Lを有する略円柱形状に構成されており、嵌合先端31と、スプライン32と、リング溝33と、サークリップ34とを備えている。
嵌合先端31は、入力シャフト20と出力シャフト30とを回動可能に連接するための部位であり、軸心Lを有する円柱形状に構成されると共に出力シャフト30の端部(図2矢印R方向側端部)から凸設されており、前述した入力シャフト20の嵌合孔21にローラベアリングB2を介して内嵌されている。
スプライン32は、クラッチ部40から伝達された駆動力を伝達するための部位であり、出力シャフト30の端部(図2矢印R方向側端部)の外周面の全周に渡って軸心L方向に沿って延設されており、後述するクラッチ部40のスプライン84(図3(a)参照)にスプライン嵌合される。なお、スプライン32が形成される出力シャフト30の部位は、嵌合先端31より大きな外径を有している。
リング溝33は、後述するサークリップ34を収容する部位であり、出力シャフト30のスプライン32が形成されている部位の全周に沿って凹設されると共にスプライン32の歯底(軸心L側の谷の部位)より軸心L側に底面を有している。
また、スプライン32の歯底からリング溝33の底面までの深さは、後述するサークリップ34の厚さより大きな寸法値とされている。そのため、スプライン32を後述するクラッチ部40のスプライン84とスプライン嵌合する際に、サークリップ34はリング溝33の底面側へ移動することができるので、クラッチ部40の移動を円滑におこなうことができる。
サークリップ34は、出力シャフト30がノッチプレート80から抜けないように規制するため部材であり、断面が円形の正面視C形の形状に構成されている。
図2に示すように、クラッチ部40は、入力シャフト20と出力シャフト30とを回転方向に連結または連結の解除をおこなうものであり、軸心Lを有する略円筒形状体として構成され、出力シャフト30がスプライン嵌合されるノッチプレート80と、そのノッチプレート80を内挿し入力シャフト20がスプライン嵌合されるポケットプレート90と、そのポケットプレート90とノッチプレート80とを係止するストラット43とを備えている。なお、クラッチ部40の詳細な説明は、図3、図5(a)及び図5(b)を用いて後述する。
駆動部50は、クラッチ部40を作動させる駆動力を発生するためのものであり、クラッチ部40の内部に収容されクラッチ部40を4WD状態とするための押圧力を発生するねじりコイルばね51と、クラッチ部40を2WD状態とするための押圧力を発生するDCソレノイド52とを備えている。
ねじりコイルばね51は、ねじりコイルばねとされるコイル部51a(図5(c)及び図5(d)参照)を備え、それらコイル部51aをコイル部51aの巻き部の軸心方向(図5(c)上下方向)に所定の距離離して配設し、それらコイル部51aの一方の端部同士を正面視(図5(c)紙面垂直方向視)コの字形状となるように連結されて構成されている(図5(c)及び図5(d)参照)。
よって、後述するコイル位置決め凸部92b(図3(d)参照)を一対のコイル部51aの間に配設することで、ねじりコイルばね51の位置決めをおこなうことできる。なお、ねじりコイルばね51の配設向きは、ストラット43をノッチプレート80側に押圧することが可能であればどの向きでも良い。
図2に示すように、DCソレノイド52は、磁界の発生を制御して、クラッチ部40に付与する押圧力を発生させるものであり、後述するケース70に収容固定され、コイルフレーム53と、プランジャ54とを備えている。
コイルフレーム53は、磁界を発生するためのものであり磁石部55とコイル56と備えている。そのコイル56の入力シャフト20側(図2矢印L方向)に磁石部55が配設されている。
コイルフレーム53は、磁界を発生するためのものであり、円筒形状に構成され、一定方向の磁界を発生する永久磁石である磁石部55と、流される電流の極性(方向)によって異なる方向の磁界を発生させると共に電流が遮断されることで磁界を消失させるコイル56とを備えている。コイルフレーム53は、磁石部55とコイル56とを固定するものであり、コイル56の入力シャフト20側(図10矢印L方向)に磁石部55が配設されている。
プランジャ54は、鉄にて構成される軸状の部材であり、コイルフレーム53に内挿されると共にコイルフレーム53によって発生された磁界から磁力を付与され、後述する駆動力伝達部60を介してクラッチ部40に押圧力を付与するものである。
ねじりコイルばね51は、常時ストラット43をノッチプレート80側へ押圧し、DCソレノイド52は、流される電流の極性(方向)によって異なる向きの磁界を発生させるコイル56と、磁界によってストラット43をポケットプレート90側へ押圧する磁力が付与される鉄製のプランジャ54を備えているので、駆動部50の簡素化を図ることができる。
即ち、例えば、ねじりコイルばね51を省略した構成では、ストラット43を揺動するためには、ストラット43をノッチプレート80側およびポケットプレート90側の両方へ押圧するように構成する必要があり、ストラット43をポケットプレート90側へ押圧するための磁界を発生するコイル56を更に備える必要がある。そのため、DCソレノイド52が複雑化するという不具合がある。
これに対し、第1実施の形態によれば、コイル56が発生する磁力は、ねじりコイルばね51が発生する押圧力より大きく設定されているので、1個のコイル56に流される電流の極性(方向)の切り替えに応じて異なる向きの磁界を発生させることで、プランジャ54に付与する磁力をねじりコイルばね51の押圧力より小さくすることができる。
その磁力と押圧力とによってプランジャ54が移動されて、ストラット43をノッチプレート80側とポケットプレート90側とへ揺動させることができる。よって、コイル56を1個とすることができるので、DCソレノイド52の簡素化を図ることができる。
また、例えば、ストラット43がねじりコイルばね51の押圧力によってノッチプレート80側へ押し付けられた状態(トルク(駆動力)伝達状態)において、コイル56に電流を流す回路が断線した場合には、その状態が保たれるので、ストラット43がノッチプレート80側へ押し付けられた状態をフェール状態として、故障が発生しても、本発明のディスコネクト装置1を搭載する4輪駆動車100の運行状態を確実にトルク(駆動力)伝達状態とすることができる。
出力シャフト30と入力シャフト20との間で駆動力の伝達を遮断する場合に、コイル56は、正極性の電流が流されることで、永久磁石の発生する磁界と同一方向の磁界を発生し、それら磁界の合成磁界によって、弾性部材の押圧力より大きな磁力をプランジャ54に付与し、プランジャ54をコイルフレーム53側(図2矢印R方向)へ移動させる。
その移動によって、ストラット43が収納凹部92に収容されると共に、プランジャ54が磁石部55に近接する。また、プランジャ54が磁石部55に近接するとねじりコイルばね51の押圧力より大きな磁力が永久磁石の磁界からプランジャ54に付与されるので、コイル56に流される正極性の電流を遮断してもプランジャ54を保持することができ、磁石部55の磁力のみで、駆動力の伝達を遮断することができる。
また、出力シャフト30と入力シャフト20との間で駆動力を伝達する場合に、コイル56は、電流の逆極性の電流が流されることで、永久磁石の磁界と逆方向でかつ磁界の強度が略同一の磁界を発生し、それら磁界の合成磁界によって、ねじりコイルばね51の押圧力より小さな磁力をプランジャ54に付与し、プランジャ54を磁石部55側の反対側へ移動させ、その移動によってストラット43が係合凹部86に係止される。なお、磁界は、向きが逆方向の場合には、それぞれを打ち消し合うため、合成磁界が弱くなる。
例えば、磁石部55が省略され、プランジャ54がストラット43をポケットプレート90側へ押し付ける状態(駆動力遮断状態)を使用頻度が高い状態として使用する場合には、プランジャ54を保持するためにコイル56に通電するので、使用頻度が高い分通電時間が長くなり、DCソレノイド52の電力消費が増加するという不具合がある。
これに対し、第1実施の形態では、DCソレノイド52は、プランジャ54を保持することで、ストラット43をポケットプレート90側へ押圧する永久磁石を有する磁石部を備えているので、DCソレノイド52への電流の通電を不要として、プランジャ54を保持することができる。よって、DCソレノイド52の電力消費を低減することができる。
また、例えば、ストラット43が磁石部55の磁力によってポケットプレート90側へ押し付けられた状態(トルク(駆動力)遮断状態)において、コイル56に電流を流す回路が断線した場合には、その状態が保たれるので、ストラット43がポケットプレート90側へ押し付けられた状態をフェール状態として、故障が発生しても、本発明のディスコネクト装置1を搭載する4輪駆動車100の運行状態を確実にトルク(駆動力)遮断状態とすることができる。
図2に示すように、駆動力伝達部60は、DCソレノイド52にて発生された押圧力をクラッチ部40に伝達するものであり、フォークシフト61と、ピンシフト62と、リテーナスプリング63と、ストッパスプリング64と、スプリングシフトフォーク65と、スリーブカップリング66と、リテーナストラット67と、複数(第1実施の形態では6個)のピンスリーブ68とを備えている。
フォークシフト61は、クラッチ部40に軸心L方向で入力シャフト20側(図2矢印L側)へ向かう押圧力を付与するものであり、正面視(図2矢印LR方向視)略H字形状に構成された板状体であり、シフトフォーク接触面61aと、シフトフォーク接触面61bとを備えている。
また、フォークシフト61の中央には、フォークシフト61の側面方向(図2紙面垂直方向)に開口を有する円筒体61cが形成されており、そのフォークシフト61の駆動部50側(図2矢印F側)にシフトフォーク接触面61aが形成され、そのフォークシフト61の駆動部50の反対側(図2矢印B側)にシフトフォーク接触面61bが形成されている。
シフトフォーク接触面61aは、正面視(図2矢印LR方向視)略コ字形状に構成された板状体であり、そのコの字形状の一対の端部は、側面視(図2紙面垂直方向視)入力シャフト20側(図2矢印L側)に突出したU字形状に構成されている。
また、シフトフォーク接触面61bも、シフトフォーク接触面61aと同様に構成されており、シフトフォーク接触面61bとシフトフォーク接触面61aとは、コの字の開口部を反対方向に向けた状態にて配設されており、フォークシフト61の正面視(図2矢印LR方向視)略H字形状を構成している。
円筒体61cには、ケース70に軸支された軸状体であるピンシフト62が摺動可能に内嵌されているので、ピンシフト62を中心としてフォークシフト61が軸心L方向(図2矢印LR方向)に揺動することができる。
この揺動により、シフトフォーク接触面61aが後述するリテーナスプリング63の側面の内のコイルフレーム53側(図2矢印R側)の側面に当接し、シフトフォーク接触面61bが後述するスリーブカップリング66に当接することで、DCソレノイド52からの押圧力がクラッチ部40に伝達される。
図2に示すように、リテーナスプリング63は、前述したようにシフトフォーク接触面61aに当接される部位であり、環状の平板状体として構成されプランジャ54に摺動可能に外挿されている。また、リテーナスプリング63の環状の側面の180°対向する部位にシフトフォーク接触面61aの一対の端部がそれぞれ当接されているので、リテーナスプリング63をバランス良く押圧することができる。
ストッパスプリング64は、環状の平板状体として構成されプランジャ54の端部(図2矢印L側端部)に摺動不能に外嵌されている。スプリングシフトフォーク65は、コイルばねとして構成されており、プランジャ54に伸縮可能に外挿され、リテーナスプリング63とストッパスプリング64とに狭持されて配設されている。
即ち、プランジャ54は、スプリングシフトフォーク65を介してシフトフォーク接触面61aに接続されている。そのため、スプリングシフトフォーク65が緩衝部材として働くので、プランジャ54をDCソレノイド52側(図2矢印R方向)に移動している時に、プランジャ54とシフトフォーク接触面61aとが相対移動して、プランジャ54から伝達される押圧力のクラッチ部40への伝達を円滑におこなうことができる。また、同様に、クラッチ部40から伝達される押圧力においてもプランジャ54への伝達を円滑におこなうことができる。
また、スプリングシフトフォーク65の初期荷重は、ねじりコイルばね51が発生する押圧力よりも大きく、DCソレノイド52が発生する押圧力よりも小さい荷重に設定されている。そのため、スプリングシフトフォーク65は、DCソレノイド52の押圧力によって圧縮変形されるが、ねじりコイルばね51の押圧力によっては圧縮変形されず形状を維持する。
また、磁石部55がプランジャ54を保持するためには、プランジャ54が磁石部55へ近接する必要があり、例えば、4輪駆動車100が4WD状態で、加速または減速している場合には、係合凹部86と収納凹部92とにストラット43が係止されており、DCソレノイド52の発生する押圧力では、係合凹部86と収納凹部92とに対するストラット43の係止が解除されないので、プランジャ54が磁石部55へ近接されない。
そのため、ストラット43が揺動可能状態(加速(減速)から減速(加速)に移行する状態)となるまで、コイル56に通電する必要があった。そのため、コイル56の通電を停止するために、揺動可能状態を判断するセンサ及びそのセンサを使った制御が必要であり、ディスコネクト装置1が複雑になるという不具合があった。
ここで、第1実施の形態では、プランジャ54の駆動力がスプリングシフトフォーク65を介してストラット43に伝達され、スプリングシフトフォーク65の初期荷重は、ねじりコイルばね51が発生する押圧力よりも大きく、DCソレノイド52が発生する押圧力よりも小さい荷重に設定されているので、ストラット43が揺動不能状態(加速(減速)継続状態)であっても、プランジャ54の押圧力でスプリングシフトフォーク65を圧縮して、プランジャ54が磁石部55へ近接することができる。
そのため、プランジャ54が磁石部55の磁力によって保持される。この状態で、圧縮されたスプリングシフトフォーク65の押圧力は、ストラット43に作用しているので、ストラット43が揺動可能状態(加速(減速)から減速(加速)に移行する状態)となると同時に、係合凹部86と収納凹部92とに対するストラット43の係止が解除される。
よって、コイル56に一度通電すると、スプリングシフトフォーク65が圧縮して、プランジャ54が磁石部55に保持されるので、コイル56の通電を不要とすることができる。また、揺動可能状態(加速(減速)から減速(加速)に移行する状態)にとなると圧縮されたスプリングシフトフォーク65の押圧力により、ストラット43が揺動されるので、揺動可能状態を判断するセンサ及びそのセンサを使った制御を不要として、ディスコネクト装置1を簡素化することができる。その結果、ディスコネクト装置1の製品コストの削減を図ることができる。
図2に示すように、スリーブカップリング66は、円筒形状の一端がフランジ状に張り出した形状に構成されている。その円筒形状に構成される部位は、ノッチプレート80の後述するスプライン嵌合部81(図3参照)に外嵌され、フランジ状に形成される部位は、フォークシフト61に当接され、ノッチプレート80の下面82bへ当接または離間される。
また、一対のシフトフォーク接触面61bがスリーブカップリング66の部位であって軸心Lを挟んで180°対向する部位にそれぞれ当接されるので、スリーブカップリング66を傾き難くすることで、スリーブカップリング66がスプライン嵌合部81(図3(b)参照)の外周面を円滑に移動することができる。
ピンスリーブ68は、スリーブカップリング66からの押圧力をリテーナストラット67に伝達する部材であり、無垢の円柱体として構成され(図4(c)及び図4(d)参照)、後述する貫通孔87に摺動可能に内嵌されている。
リテーナストラット67は、後述する複数のストラット43に押圧力を伝達する部材であり、円筒体として構成され(図)4(a)及び図4(b)参照)、その円筒体の開口側の端面に後述するストラット43が当接され、その反対側の端面には、複数のピンスリーブ68が当接されている。
よって、ピンスリーブ68がストラット43に対して軸心Lを中心に回動した場合でも、リテーナストラット67が介在しているため、ピンスリーブ68からの押圧力をストラット43に安定して伝達することができる。
図2に示すように、ケース70は、ディスコネクト装置1の基体を構成するものであり、第1ケース71と、その第1ケース71にボルトSを介して締結される第2ケース72とを備えて構成されている。第1ケース71は、入力シャフト20側(図2矢印L側)の基体を構成しており、第2ケース72は、出力シャフト30側(図2矢印R側)の基体を構成している。
また、第1ケース71は、略コップ形状に構成されており、その内側面から第2ケース72側(図2矢印R側)に向かって凸部73が凸設されている。また、第2ケース72には、プランジャ54の長手方向(図2矢印LR方向)に所定の距離離れて配設される規制壁部74が形成されている。
また、第1ケース71と第2ケース72とをボルトSにて締結した場合に、凸部73の先端と規制壁部74とは、プランジャ54の長手方向(図2矢印LR方向)の両側にそれぞれ配設され、凸部73の先端と規制壁部74との間隔寸法は、プランジャ54の長手方向の長さ寸法より大きな寸法値に設定されている。よって、プランジャ54の可動範囲を規制することができる。
よって、プランジャ54を勢いよく動作させた場合でも、凸部73及び規制壁部74に当接されプランジャ54の可動範囲が変わらないので、ストラット43をポケットプレート90の収納凹部92(図3(d)参照)に押し込む動作を素早く且つ正確におこなうことができる。
次に、図3、図5(a)及び図5(b)を参照してクラッチ部40の詳細な構成について説明する。前述したように、クラッチ部40は、入力シャフト20と出力シャフト30とを回転方向に連結または連結を解除するものであり、ノッチプレート80と、ポケットプレート90と、ストラット43とを備えている(図2参照)。
図3(a)は、ノッチプレート80の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線におけるノッチプレート80の断面図である。図5(a)は、ストラット43の正面図であり、図5(b)は、ストラット43の側面図である。
ノッチプレート80は、出力シャフト30に駆動力を伝達するものであり、図3(a)及び図3(b)に示すように、スプライン嵌合部81と、フランジ部82と、リング部83とを備えている。
スプライン嵌合部81は、出力シャフト30へ駆動力を伝達するための部位であり、図3(a)及び図3(b)に示すように、軸心Lを有する円筒形状に構成されており、スプライン嵌合部81の内周面には、スプライン84が形成されている。スプライン嵌合部81の一方(図3(b)上側)の開口部には、径方向外側(図3(b)左右方向外側)にフランジ状に張り出すフランジ部82が連成されている。
フランジ部82は、後述するストラット43(図5(a)及び図5(b)参照)によって係止される部位であり、図3(a)及び図3(b)に示すように、軸心Lを有する環状体として構成されている。
また、フランジ部82の上面(図3(b)上側面)である上面82aには、リング溝85及び複数(第1実施の形態では12個)の係合凹部86が凹設され、複数(第1実施の形態では6個)の貫通孔87が貫通成形されている。また、リング溝85は、上面82aと平行に配設された底面とされる底面85aを有している。
図3(a)及び図3(b)に示すように、リング溝85は、リテーナストラット67(図4(a)及び図4(b)参照)を移動可能に収容する部位であり、正面視円形に構成され、軸心Lを含む断面において矩形の断面形状を有している。
係合凹部86は、後述するストラット43(図5(a)及び図5(b)参照)を当接する部位であり、正面視(図3(d)紙面垂直方向視)幅W1の寸法値(図3(a)径方向寸法値)を有する正面視略矩形の開口を有する凹部であり、リング溝85の円周上に均等な間隔で配設されている。
また、係合凹部86は、上面82aと平行に配設された底面とされる底面86aと、リング溝85の円周方向に向いている側面とされる側面86bと、その側面86bに対面する側面とされる側面86cとを有している。
なお、係合凹部86の底面86aは、リング溝85の底面85aから、リテーナストラット67(図4(a)及び図4(b)参照)の軸心L方向の高さ寸法値(図4(b)上下方向寸法値)以上離間した上面82a側(図3(b)上側)に形成されている。そのため、後述するリテーナストラット67をリング溝85内で移動させることで、係合凹部86に対して出没自在とすることができる。
貫通孔87は、ピンスリーブ68を摺動可能に内嵌する部位であり、上面82aからその上面82aの反対側の面である下面82bに貫通成形され、リング溝85の円周上で且つ係合凹部86の正面視(図3(a)紙面垂直方向視)中央の位置に均等な間隔で配設されている。
リング部83は、後述するポケットプレート90を回動可能に係止する部位であり、フランジ部82の外縁全周からスプライン嵌合部81と反対側方向(図3(b)上側方向)に立設され、円筒形状に構成されている。リング部83の先端側(図3(b)上側)の内周面には、ポケットプレート90を係止するためのスナップリング41を内嵌するスナップリング溝88が凹設されている。
図3(d)は、ポケットプレート90の正面図であり、図3(c)は、図3(d)のIIIc−IIIc線におけるポケットプレート90の断面図である。
ポケットプレート90は、軸心Lを有する円筒形状に構成されており、内周面には、スプライン91が形成されている。そのスプライン91は、スプライン32(図2参照)とスプライン嵌合されている。また、ポケットプレート90の下面(図3(c)下側面)である下面90aには、複数(第1実施の形態では3個)の収納凹部92と、複数(第1実施の形態では3個)の収納凹部93とが凹設されている。
複数(第1実施の形態では3個)の収納凹部92は、ポケットプレート90の円周方向に均等に配設され、複数(第1実施の形態では3個)の収納凹部93は、収納凹部92と対向する向きで、収納凹部92の間に1個ずつ配設されている。
なお、収納凹部93は、収納凹部92と配設される向きがポケットプレート90の円周方向に対して異なる以外は、同一の構成であるので、収納凹部92の構成について説明し、収納凹部93の説明は省略する。
収納凹部92は、ストラット43とねじりコイルばね51とを収容すると共に、ストラット43によって係止される部位であり、図3(c)及び図3(d)に示すように、収納当接底面92aと、コイル位置決め凸部92bと、収納当接底面92cと、収納当接側面92dと、ストラット支持凹部92eとを備えている。
収納当接底面92aは、ねじりコイルばね51の反力を受け止める部位であり、図3(a)に示すように、正面視(図3(d)紙面垂直方向視)幅W2の寸法値(図3(d)左右方向寸法値)を有するコの字形状の平坦面であり、下面90aに平行に形成され収納凹部92の底側(図3(c)上側)に配設されている。
コイル位置決め凸部92bは、ねじりコイルばね51の配設位置を決めるための部位であり、略直方体に構成され収納当接底面92aから下面90a側(図3(c)下側)に向かって凸設されている。
収納当接底面92cは、ストラット43が揺動した場合に当接される部位であり、正面視(図3(d)紙面垂直方向視)幅W2の寸法値(図3(d)左右方向寸法値)を有する矩形の平坦面であり、下面90aに平行に形成され収納当接底面92cより下面90a側(図3(c)下側)に配設されている。
収納当接側面92dは、ストラット43が揺動した場合に当接される部位であり、下面90aに垂直に形成される平坦面であり、ポケットプレート90の円周方向でコイル位置決め凸部92bに対向する位置に配設されている。
ストラット支持凹部92eは、後述するストラット係合当接部43b(図5(a)参照)を収容することで、ストラット43を回動可能に軸支するための部位であり、収納当接側面92dの両側に延設される一対の凹部である。
図5(a)は、ストラット43の正面図であり、図5(b)は、ストラット43の側面図である。前述したように、ストラット43は、ポケットプレート90とノッチプレート80とを係止するための部材であり、収納凹部92,93の開口形状に対応した正面視略T字形状の板状体として構成され、ストラット収納当接部43aと、ストラット係合当接部43bとを備えている。
ストラット収納当接部43aは、ストラット43の揺動を支持すると共にポケットプレート90の収納当接側面92dに当接する部位であり、長さW4の寸法値(図5(a)上下方向寸法値)を有する略角柱状体として構成されている。また、ストラット収納当接部43aの側面は、収納当接部43aの長手方向に延設される平坦面とされる側面43cとして構成されている。
ストラット係合当接部43bは、ノッチプレート80の側面86b,86cのどちらかに当接する部位であり、ストラット43が収納凹部92(図3参照)に収容される場合に、側面86bに当接され、ストラット43が収納凹部93(図3参照)に収容される場合に、側面86cに当接される。
また、ストラット係合当接部43bは、ストラット収納当接部43aの側面から収納当接部43aの長手方向に直交する方向(図5(a)紙面上下方向)に延設されており、正面視(図5(a)紙面垂直方向視)幅W5の寸法値(図5(a)上下方向寸法値)を有する平板形状に構成されている。
幅W5の寸法値は、幅W1(図3(a)参照)の寸法値および幅W2(図3(d)参照)の寸法値より小さな寸法値とされており、(W1>W5,W2>W5)。長さW4の寸法値は、幅W1(図3(a)参照)の寸法値より大きく、幅W3(図3(d)参照)の寸法値より小さな寸法値とされている(W3>W4>W1)。
そのため、ストラット43に押圧力が作用するとストラット収納当接部43aは、係合凹部86(図3(a)参照)側へ移動せず、ストラット支持凹部92e(図3(d)参照)に収容された状態を維持する。ストラット係合当接部43bは、係合凹部86側へ移動することができる。その結果、ストラット係合当接部43bを揺動中心としてストラット係合当接部43bが係合凹部86と収納凹部92とを結ぶ方向に揺動することができる。
また、係合当接部43bのストラット収納当接部43aと反対側(図5(b)左側)に位置する端面43dは、ストラット収納当接部43aの側面43cと平行に配設された平坦面として構成されている。
次に、図6及び図7(a)から図7(d)を参照してクラッチ部40の駆動力の伝達と遮断との切り替え動作について説明する。図6は、クラッチ部40を側面側(図2右側側面側)から透視した状態を示した側面透視図であり、収納凹部92,93に対して係合凹部86が対向した状態を示している。また、図6では、理解を容易とするためにポケットプレート90の一部を省略して図示すると共に、図面の簡素化のために、主な符号のみを図示している。
図7(a)及び図7(b)は、図6のVIIa−VIIa線におけるノッチプレート80及びポケットプレート90の断面図であり、図7(c)及び図7(d)は、図6のVIIc−VIIc線におけるノッチプレート80及びポケットプレート90の断面図である。なお、図7(a)及び図7(c)には、入力シャフト20から入力された駆動力が遮断された状態が図示されており、図7(b)及び図7(d)には、入力シャフト20から入力された駆動力が出力シャフト30に伝達された状態が図示されている。
クラッチ部40の駆動力の伝達と遮断との切り替えは、出力シャフト30にスプライン嵌合されるノッチプレート80と入力シャフト20にスプライン嵌合されるポケットプレート90との係止と回動との切り替えによっておこなわれる。
図6に示すように、ノッチプレート80の複数(第1実施の形態では12個)の係合凹部86と、ポケットプレート90の複数(第1実施の形態では3個)の収納凹部92と、収納凹部92に対向した位置に配設される複数(第1実施の形態では3個)の収納凹部93とは、軸心Lを中心とした同一円周上に配設されている。そのため、ノッチプレート80とポケットプレート90とが相対回動すると、収納凹部92,93に対して係合凹部86が対向と離間とを繰り返す。
図7(a)及び図7(c)に示すように、スリーブカップリング66がノッチプレート80に当接され、ピンスリーブ68がスリーブカップリング66に押圧されて、リテーナストラット67の上面(図7(a)及び図7(c)上面)を上面82aと面一とする。
一方、ストラット43は、ねじりコイルばね51によって、ポケットプレート90側からノッチプレート80側へ押圧されているが、スリーブカップリング66の押圧力の方がねじりコイルばね51の押圧力より大きいため、スリーブカップリング66にピンスリーブ68を介して当接されるリテーナストラット67を押し戻すことができない。
そのため、リテーナストラット67の上面67aおよびノッチプレート80の上面82aに当接された状態となる。よって、ストラット43は、ノッチプレート80の係合凹部86に係止しない。同様に、ストラット43は、収納凹部93に関しても同様に係止しないので、ノッチプレート80は、ポケットプレート90に対して、両方向(図7(a)及び図7(c)左右方向)に自由に回動することができる。
図7(b)及び図7(d)に示すように、スリーブカップリング66の押圧力が小さくなって、ねじりコイルばね51の押圧力がスリーブカップリング66の押圧力を上回ると、ストラット43がストラット収納当接部43aを中心として揺動する。そのため、リテーナストラット67がストラット係合当接部43bによって押し戻されて、リテーナストラット67の上面67aが係合凹部86の底面86aと面一となり、ストラット係合当接部43bが係合凹部86に収容される。
その後、ノッチプレート80がポケットプレート90に対してストラット係合当接部43bからストラット収納当接部43aに向かう方向(図7(b)及び図7(d)右方向)(以下、「第1方向」と称す。)に回動すると、側面86bが端面43dに当接されて、側面43cが収納当接側面92dに当接される。よって、ノッチプレート80がポケットプレート90に対して第1方向へ係止される。
また、収納凹部93(図6参照)は収納凹部92と対向する向きに配設されているので、収納凹部93に収容されたストラット43のストラットの側面43cに対面する収納凹部93の収納当接側面と、側面86b(図7(b)参照)と対向する向きに配設された側面86c(図7(b)参照)とがストラット43を介して当接される。
そのため、第1の方向に対向する向きであるストラット収納当接部43aからストラット係合当接部43bに向かう方向(図7(b)及び図7(d)右方向)(以下、「第2方向」と称す。)へノッチプレート80がポケットプレート90に対して係止される。即ち、ノッチプレート80は、ポケットプレート90に対して、両方向(図7(a)及び図7(c)左右方向)に係止される。
また、ノッチプレート80がポケットプレート90に対して、両方向(図7(a)及び図7(c)左右方向)に係止された状態から自由に回動することができる状態に移行する場合には、前述したように、リテーナストラット67を係合凹部86の底面86aから突出させれば良い。
しかし、4輪駆動車100の運行状態が加速(減速)継続状態であると、ストラット43がノッチプレート80の係合凹部86とポケットプレート90の収納凹部92とに強く押し付けられており、DCソレノイド52が発生する押圧力では、リテーナストラット67を突出させてストラット43をノッチプレート80の係合凹部86から離脱させることができない。
そのため、4輪駆動車100の運行状態が加速(減速)から減速(加速)に移行する状態となるまで、ストラット43に押圧力を付与し続ける必要がある。ここで、第1実施の形態では、スプリングシフトフォーク65を圧縮して、プランジャ54を磁石部55で保持するので、コイル56に通電することなく、ストラット43に押圧力を付与し続けることができる。
よって、4輪駆動車100の運行状態が加速(減速)から減速(加速)に移行すると、圧縮されたスプリングシフトフォーク65の押圧力により、ストラット43の揺動が開始されるので、揺動可能状態への移行を判断するセンサ及びそのセンサを使った制御を不要として、ディスコネクト装置1を簡素化することができる。その結果、ディスコネクト装置1の製品コストの削減を図ることができる。
このように、ストラット43を揺動させてノッチプレート80のポケットプレート90に対する回動の規制をおこなうので、ストラット43全体を直動させて動かす場合に比べて、ストラット43のストラット収納当接部43a側の部位の移動量を小さくして、ストラット43を移動させる仕事を小さくすることができる。
そのため、ストラット43全体を直動させて動かす場合と同一の速度でストラット43の当接部の移動を完了させる場合に、ストラット43全体を直動させて動かす場合に比べて、ストラット43を駆動する駆動力を小さくすることができる。よって、駆動力の伝達と遮断との切換えを素早くおこなうことができると共にDCソレノイド52及びねじりコイルばね51を小型しディスコネクト装置1の小型化を図ることができる。
次に、図8(a)、図8(b)及び図8(c)を参照してクラッチ部40の駆動力の遮断から伝達への切り替え動作について説明する。図8(a)、図8(b)及び図8(c)は、図6のVIII−VIII線におけるノッチプレート及びポケットプレートの断面図である。図8(a)は、駆動力が遮断された2WD状態を示し、図8(c)は、駆動力が伝達された4WD状態を示し、図8(b)は、2WD状態から4WD状態に移行している状態を示している。
図8(a)に示すように、4輪駆動車100(図1参照)が2WD状態の場合には、フロントプロペラシャフト7の回転が停止されていると、フロントデファレンシャル機構13(図1参照)に差動によって、ノッチプレート80がポケットプレート90に対して相対回動されている。
そこで、運転者またはコンピュータ(DCソレノイド52の駆動を制御するもの)が4輪駆動車100(図1参照)の運行状態を2WD状態から4WD状態にするための操作または指令を行うと、トランスファ5(図1参照)が切り替えられ、フロントプロペラシャフト7(図1参照)が回転する。
その結果、ノッチプレート80が車輪14と同じ速度で回転し、ポケットプレート90が車輪17と同じ速度で回転する。その後、DCソレノイド52(図2参照)からの押圧力を取り除いて、リテーナストラット67がねじりコイルばね51の押圧力で押し戻される状態とする。
ここで、収納凹部92及び収納凹部93が係合凹部86に対向していた場合には、ねじりコイルばね51の押圧力によって、ストラット43が係合凹部86に押圧されて、4輪駆動車100(図1参照)の運行状態が2WD状態から4WD状態へ移行する(図7(a)及び図7(b)参照)。
また、収納凹部92及び収納凹部93が係合凹部86から回転方向(図8左右方向)に離間していた場合には、ストラット43がノッチプレート80の上面82aに当接した状態となり、4輪駆動車100(図1参照)の運行状態が2WD状態で維持される。
一方、運転者は、路面が滑りやすいスリップ状態において車輌を安定させる目的で4輪駆動車100(図1参照)の運行状態を4WD状態とする。ここで、車輪9,10が滑っていない状態では、4輪駆動車100を(図1参照)4WD状態とする必要はなく、スリップ状態で4WD状態に切り替えればよい。なお、スリップ状態とは、車輪9,10と車輪14,17との回転速度差が発生した状態である。
そのため、ストラット43がノッチプレート80の上面82aに当接した状態であっても、4輪駆動車100がスリップ状態となった場合には、同じ回転方向に同じ速度で回転していたノッチプレート80とポケットプレート90とが相対回動を始めるので、収納凹部92及び収納凹部93が係合凹部86に対向する。
図8(b)に示すように、ストラット43がノッチプレート80の上面82aに当接した状態からノッチプレート80とポケットプレート90との回動が始まる。そして、ストラット収納当接部43aがストラット43の上面と収納凹部93cとの隙間L1分だけ収納凹部93cへ向かって移動して収納凹部93cに当接する。
よって、ストラット43は、係合凹部86の側面86bの上端(図8上端)を支点として揺動し、ストラット43の端面43dの下端(図8下端)を係合凹部86の底面86aに当接させる。
また、この場合のストラット43の端面43dと係合凹部86の側面86cとの隙間寸法値を隙間L2とする。この隙間L2は、ストラット43の係合凹部86への当接のしやすさに関係する値であり、この隙間L2が大きいほど、ノッチプレート80とポケットプレート90との相対回動の速度差が大きくてもストラット43が係合凹部86の底面86aに当接しやすくなる。
そして、ノッチプレート80とポケットプレート90との相対回動が継続されると、収納凹部92に収容されたストラット43が収納凹部93に収容されたストラット43と同様に揺動される。
さらに、ノッチプレート80とポケットプレート90との相対回動が継続されると、図8(c)に示すように、収納凹部93に収容されたストラット43の端面43dが係合凹部86の側面86cに当接され、ノッチプレート80とポケットプレート90との相対回動が停止される。
また、この場合の、収納凹部92に収容されたストラット43の端面43dと係合凹部86の側面86bとの隙間寸法値を隙間L3とする。この隙間L3は、ノッチプレート80とポケットプレート90との回転方向のガタを示す値であり、この隙間L3が小さいほど、ノッチプレート80とポケットプレート90とのガタが無くなり、4輪駆動車100の挙動が安定する。
また、L4は、収納凹部93に収容されるストラット43の端面43dと収納凹部92に収容されるストラット43の端面43dとの距離であり、L5は、複数の係合凹部86の内の一の係合凹部86の側面86bと、その一の係合凹部86から1つ飛ばした位置に配設される他の係合凹部86の側面86cとの距離であり、隙間L3は、L5からL4を差し引いた寸法値である。
よって、ノッチプレート80とポケットプレート90との両方向に対する相対回動が停止されて、4輪駆動車100が4WD状態とされる。
例えば、1つの係止部材を孔に挿入して、ノッチプレート80とポケットプレート90との相対回動の両方向を係止する場合には、孔の内形寸法と、係止部材の外形寸法との差が、孔に係止部材を挿入できる寸法であり、この寸法が大きければ、孔と係止部材との速度差が大きくても孔に係止部材を挿入し易くなる。しかし、この寸法は、孔と係止部材とのガタでもあり、大きい場合は、ガタが大きくなると言う不具合があった。
そこで、第1実施の形態では、対向して配設された収納凹部92及び収納凹部93にそれぞれストラット43を収容しており、隙間L2を隙間L3より大きな値に設定しているので、ストラット43を係合凹部86に収容されやすくすると共にノッチプレート80とポケットプレート90との回転方向のガタを少なくすることができる。
その結果、ノッチプレート80とポケットプレート90との回転速度差が大きくても、4輪駆動車100の運行状態を2WD状態から4WD状態に移行させることができる。特に、車輪9,10及び車輪14,17の急激なスリップ状態に対応することができるので、4輪駆動車100の安定性をさらに向上させることができる。
次に、図9を参照して、第2実施の形態について説明する。図9(a)は、リテーナストラット267を示した正面図であり、図9(b)は、リテーナストラット267を示した側面図である。図9(c)及び図9(d)は、第1プレート280及び第2プレート290の断面図であり、図7(a)及び図7(b)に対応する。
なお、図9(c)には、入力シャフト20から入力された駆動力が遮断された状態が図示されており、図9(d)には、入力シャフト20から入力された駆動力が出力シャフト30に伝達された状態が図示されている。
第1実施の形態(図7(a)及び図7(b)参照)では、駆動力伝達部60は、1個のリテーナストラット67を備え、そのリテーナストラット67で複数(第1実施の形態では6個)のストラット43をポケットプレート90の収納凹部92に押圧して、12個の収納凹部92の内の6個の収納凹部92にそれぞれ収容させ、その押圧を弱めることで、ねじりコイルばね51の押圧力によって、収納凹部92から離間してノッチプレート80の係合凹部86側へ揺動される構成としたが、第2実施の形態では、第1凹部286が凹設された第1プレート280と、第1凹部286とその第1凹部286に連成される第3凹部289とが凹設された第2プレート290とを備えており、第1凹部286には、ストラット43とねじりコイルばね51とリテーナストラット267とが収容され、第3凹部289には、リテーナストラット267のピン当接部267bが収容されている。
また、第3凹部289の底面には、貫通孔287が貫通成形され、その貫通孔287には、ピンスリーブ268が摺動可能に内嵌されている。なお、上記各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図9(a)に示すように、リテーナストラット267は、略Y字形状に形成された板状体として構成されており、ばね当接部267aと、一対のピン当接部267bと、接続部267cとを備えている。
図9(a)及び図9(b)に示すように、ばね当接部267aは、ねじりコイルばね51が当接されて押圧力が付与される部位であり、正面視(図9(a)紙面垂直方向視)長方形形状を有する板状体として構成されている。ピン当接部267bは、ストラット収納当接部43aとピンスリーブ268とが当接されて押圧力が付与される部位であり、正面視(図9(a)紙面垂直方向視)長方形形状を有する板状体として構成されている。
接続部267cは、ばね当接部267aとピン当接部267bとを接続する部位であり、正面視(図9(a)紙面垂直方向視)長方形形状を有する板状体として構成され、その接続部267cの有する一対の長辺の内の一方の長辺には、ばね当接部267aが連成され、その一方の長辺に対向する側(図9(a)右側)の他方の長辺であって、その他方の長辺の両側(図9(a)上下方向両側)には、一対のピン当接部267bが連成されている。
図9(c)及び図9(d)に示すように、第1凹部286は、ストラット43とねじりコイルばね51とを収容する部位であり、第1プレート280の回転軸を中心とする円周方向に均等な間隔で配設された正面視略矩形の開口を有する凹部である。また、第1凹部286は、第1当接底面286aと、コイル位置決め凸部286bと、第1当接底面286cと、第1当接側面286dと、第1ストラット当接底面286fとを備えている。
第1当接底面286aは、図9(c)に示すように、ねじりコイルばね51の反力を受け止める平坦面として構成された部位であり、上面82aに平行に形成され第1凹部286の底側(図3(c)上側)に配設されている。
コイル位置決め凸部286bは、ねじりコイルばね51の配設位置を決めるための部位であり、略直方体に構成され第1当接底面286aから上面82a側(図9(c)上側)に向かって凸設されている。
第1当接側面286dは、ストラット43が揺動した場合に側面43cが当接される部位であり、上面82aに垂直に形成される平坦面であり、第1プレート280の円周方向でコイル位置決め凸部286bに対向する位置に配設されている。
第1ストラット当接底面286fは、ストラット43が揺動した場合に、ストラット収納当接部43aに当接される平坦面として構成された部位であり、第1当接側面286dに直角に連成されている。
第2凹部292は、ストラット43を当接すると共に、ストラット43によって係止される部位であり、第2プレート290の回転軸を中心とする円周方向に均等な間隔で配設された正面視略矩形の開口を有する凹部である。
また、第2凹部292は、下面90aと平行に配設された底面とされる第2底面292aと、第2プレート290の回転軸を中心とする円周方向に向いている側面とされる第2側面292bと、その第2側面292bに対面する側面とされる第2側面292cとを有している。
貫通孔287は、ピンスリーブ268を摺動可能に内嵌する部位であり、第3凹部289の底面から下面82bに貫通成形されている。なお、ピンスリーブ68は、両端を球形に形成された円柱体として構成されている。よって、ピンスリーブ268が上下(図9(c)及び図9(d)参照)に移動してもピン当接部267bとの当接面積を一定とすることができる。
図9(c)及び図9(d)に示すように、リテーナストラット267は、ストラット43とねじりコイルばね51との間で、ピン当接部267bがストラット収納当接部43aの下側(図9(c)及び図9(d)下側)とされるように配設されている。
そのため、ピンスリーブ268が第2プレート290に近接する方向(図9(a)上側)に移動すると、ピンスリーブ268に当接されるピン当接部267bも第2プレート290に近接する方向(図9(c)上側)に移動する。
その移動に応じて、リテーナストラット267が揺動するので、ばね当接部267aが第2プレート290から離間する方向(図9(d)下方向)に移動され、ねじりコイルばね51を圧縮する。その結果、ストラット43は、第2凹部292から離脱するので、第1プレート280は、第2プレート290に対して自由に回動することができる。
また、ピンスリーブ268が第2プレート290側から離間する方向(図9(d)下方向)に移動すると、ねじりコイルばね51の押圧力がばね当接部267aに作用して、ストラット43がストラット収納当接部43aを支点として回動する。
そのため、リテーナストラット267もストラット43と同様に揺動され、ピン当接部267bが第2プレート290側から離間する方向(図9(a)下方向)に移動する。その結果、第1プレート280が第2プレート290に対して一方向(図9(a)及び図9(c)左方向)に係止される。
また、第1プレート280は、第1凹部286と対向して配設される収納凹部293を備えているので、第1プレート280は、第2プレート290に対して、両方向(図9(a)及び図9(c)左右方向)に係止される。
このように、ストラット43を揺動させて第2プレート290の第1プレート280に対する回動の規制をおこなうので、ストラット43全体を直動させて動かす場合に比べて、ストラット43のストラット収納当接部43a側の部位の移動量を小さくして、ストラット43を移動させる仕事を小さくすることができる。
そのため、ストラット43全体を直動させて動かす場合と同一の速度でストラット43の当接部の移動を完了させる場合に、ストラット43全体を直動させて動かす場合に比べて、ストラット43を駆動する駆動力を小さくすることができる。よって、駆動力の伝達と遮断との切換えを素早くおこなうことができると共にDCソレノイド52及びねじりコイルばね51を小型しディスコネクト装置1の小型化を図ることができる。
次に、図10を参照して、第3実施の形態について説明する。図10は、第3実施の形態におけるディスコネクト装置301の断面図であり、図2に対応する。
第1実施の形態(図2参照)では、ねじりコイルばね51の押圧力に対向する押圧力をDCソレノイド52が発生させて、ストラット43をノッチプレート80側(図2矢印L方向側)に押圧し、DCソレノイド52の押圧力を消滅させてプランジャ54に作用する磁力を減少させ、ねじりコイルばね51の押圧力によりストラット43をポケットプレート90側(図2矢印R方向側)に押圧することで、ストラット43を揺動させていたが、第3実施の形態では、スプリングリターン365がねじりコイルばね51の押圧力より大きく反対の向きの押圧力を発生して、ストラット43をノッチプレート80側(図10矢印L方向)に押圧し、プランジャ354を移動させてスプリングリターン365の押圧力と反対向きの押圧力をスプリングリターン365に付与することで、ストラット43に作用するノッチプレート80側(図10矢印L方向)への押圧力を弱めて、ねじりコイルばね51の押圧力によりストラット43がノッチプレート80側に押圧されるように構成した。なお、上記各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
駆動部350は、第1ケース371に取着されるDCソレノイド352を備え、そのDCソレノイド352は、コイルフレーム353とを備えている。
コイルフレーム353は、磁界を発生するためのものであり磁石部55とコイル56と備えている。そのコイル56の出力シャフト30側(図10矢印R方向)に磁石部55が配設されている。
プランジャ354は、鉄にて構成される軸状の部材であり磁石部55及びコイル56に摺動可能に内挿されると共に磁石部55及びコイル56によって発生された磁界から磁力を付与されるものである。
また、プランジャ354は、プランジャ354の端部(図10矢印R側端部)に取着されるストッパスプリング64及びそのストッパスプリング64に当接されるリテーナスプリング63を介して後述するスプリングリターン365に押圧力(図10矢印L方向の力)を付与するものである。
駆動力伝達部360は、スプリングリターン365と、ワッシャ369とを備えている。スプリングリターン365は、圧縮コイルばねにて構成され、一端側(図10矢印R側端部)がリテーナスプリング63に当接され、他端(図10矢印L側端部)がワッシャ369に当接されている。ワッシャ369は、正面視環状の平板状に構成された部材であり入力シャフト20側(図10矢印L側端部)の面が第1ケース371に当接されている。
なお、リテーナスプリング63には、フォークシフト61を介してねじりコイルばね51からの押圧力が作用しており、リテーナスプリング63を入力シャフト20側(図10矢印L側端部)に押圧している。
例えば、入力シャフト20から出力シャフト30に駆動力を伝達する場合には、コイル56から発生される磁界が磁石部55との磁界と同一方向となるように、電流を流して、磁石部55及びコイル56の発生する磁界を強めることで、プランジャ354に入力シャフト20側(図10矢印L方向)への押圧力を作用させる。
その分、ストッパスプリング64に対する入力シャフト20側への押圧力が増加し、ストッパスプリング64がスプリングリターン365を入力シャフト20側へ押圧する。そのスプリングリターン365は、第1ケース371に当接されたワッシャ369によって反力を受けるので、ワッシャ369とリテーナスプリング63との間で圧縮される。
スプリングリターン365が圧縮されると、プランジャ354が入力シャフト20側(図10矢印L方向)に移動され磁石部55からの磁力を強く受ける。その磁力は、スプリングリターン365の押圧力より大きく設定されているので、コイル56に流れる電流を切って磁界を消滅させてもプランジャ354を保持することができる。
また、スプリングリターン365のリテーナスプリング63への押圧力は、ねじりコイルばね51のリテーナスプリング63への押圧力より大きく設定されている。そのため、ねじりコイルばね51の押圧力のみでスプリングリターン365を圧縮することはできないが、プランジャ354に作用する磁力により発生する押圧力がねじりコイルばね51のリテーナスプリング63への押圧力と同じ向きに加わることで、スプリングリターン365が圧縮される。
スプリングリターン365が圧縮されると、ストッパスプリング64が入力シャフト20側(図10矢印L側端部)に移動されると共にストラット43がポケットプレート90側に押圧されて係合凹部86(図3(a)参照)がストラット43と対面した時に係合凹部86の内部へ移動される。その結果、ノッチプレート80がポケットプレート90に対して係合されて入力シャフト20からの駆動力が出力シャフト30に伝達される。
また、例えば、コイル56に電流を流す回路が断線した場合に、ストラット43がねじりコイルばね51の押圧力によってノッチプレート80側へ押し付けられた状態(トルク(駆動力)伝達状態)となるので、ストラット43がノッチプレート80側へ押し付けられた状態をフェール状態として、故障が発生しても、本発明のディスコネクト装置301を搭載する4輪駆動車100の運行状態を確実にトルク(駆動力)伝達状態とすることができる。
また、逆に、入力シャフト20と出力シャフト30との間の駆動力の伝達を遮断する場合には、ストラット43を係合凹部86から離脱させればよく、磁石部55の磁界と反対の磁界を発生するようにコイル56に電流を流して、プランジャ354に作用する磁力を消滅させる。
そして、スプリングリターン365の押圧力およびねじりコイルばね51の押圧力のみがリテーナスプリング63に作用するようにすると、スプリングリターン365の押圧力がねじりコイルばね51の押圧力より大きく設定されているので、スプリングリターン365の押圧力によりプランジャ354が出力シャフト30側(図10矢印R方向)に移動される。
プランジャ354が出力シャフト30側(図10矢印R方向)に移動されるとピンシフト62に軸支されたフォークシフト61が揺動してストラット43がポケットプレート90の収納凹部92(図3(d)参照)に押し込まれる。その結果、ノッチプレート80のポケットプレート90に対する係合が解除されて、入力シャフト20と出力シャフト30との間の駆動力の伝達が遮断される。
プランジャ354が出力シャフト30側(図10矢印R方向)に移動されて、磁石部55から離間されると、磁石部55の永久磁石からの磁界が弱くなり、スプリングリターン365の押圧力のみで、ストラット43をポケットプレート90側(図10矢印L方向)へ押圧することができる。
よって、コイル56への電流の供給を切ってもストラット43はポケットプレート90側へ押圧された状態を維持するので、コイル56の電流の通電を不要として、プランジャ354を保持することができる。よって、DCソレノイド352の電力消費を低減することができる。
また、例えば、ストラット43が磁石部55の磁力によってポケットプレート90側へ押し付けられた状態(トルク(駆動力)遮断状態)において、コイル56に電流を流す回路が断線した場合には、その状態が保たれるので、ストラット43がポケットプレート90側へ押し付けられた状態をフェール状態として、故障が発生しても、本発明のディスコネクト装置301を搭載する4輪駆動車100の運行状態を確実にトルク(駆動力)遮断状態とすることができる。
また、第1ケース371と第2ケース372とをボルトSにて締結した場合に、凸部373の先端と規制壁部374とは、プランジャ54の長手方向(図10矢印LR方向)の両側にそれぞれ配設されている。
また、凸部373の先端と規制壁部374との間隔寸法は、プランジャ54の長手方向の長さ寸法より大きな寸法値に設定されている。よって、プランジャ354が凸部373及び規制壁部374の間を移動することができ、凸部373及び規制壁部374に当接されて可動範囲が規制される。
その結果、プランジャ354を勢いよく動作させた場合でも、可動範囲が変わらないので、ストラット43をポケットプレート90の収納凹部92(図3(d)参照)に押し込む動作を素早く且つ正確におこなうことができる。
例えば、ねじりコイルばね51を省略した構成では、ストラット43を揺動するためには、ストラット43をノッチプレート80側およびポケットプレート90側の両方へ押圧するように構成する必要があり、ストラット43をポケットプレート90側へ押圧するための磁界を発生するコイル56を更に備える必要がある。そのため、DCソレノイド52が複雑化するという不具合がある。
これに対し、第3実施の形態によれば、ストラット43に作用するスプリングリターン365の押圧力が、ストラット43に作用するねじりコイルばね51の押圧力より大きく設定されている。また、1個のコイル56に流される電流の極性(方向)の切り替えに応じて異なる向きの磁界を発生させることで、その磁界からプランジャ354に付与される押圧力をスプリングリターン365の押圧力と反対向きに作用させることができる。
そのため、フォークシフト61を介してストラット43に作用するリテーナスプリング63の押圧力を、ストラット43に作用するねじりコイルばね51の押圧力より小さくすることができる。よって、ストラット43をノッチプレート80側(図10矢印R方向)へ押圧することができる。
また、コイル56が発生させる磁力を小さくして、フォークシフト61を介してストラット43に作用するリテーナスプリング63の押圧力を、ストラット43に作用するねじりコイルばね51の押圧力より大きくことができる。よって、ストラット43をポケットプレート90側(図10矢印L方向)へ押圧することができる。
よって、ストラット43をノッチプレート80側とポケットプレート90側とへ揺動させることができる。その結果、コイル56を1個とすることができるので、DCソレノイド52の簡素化を図ることができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記各実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例を示すものであり、他の数値を採用することは当然可能である。
第1実施の形態では、ねじりコイルばね51がねじりコイルばねとされるコイル部51a(図5(c)及び図5(d)参照)を備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ねじりコイルばね51を圧縮コイルばねにて構成しても良い。
第1実施の形態では、駆動部50が永久磁石である磁石部55を備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、永久磁石である磁石部55を省略して構成しても良い。
この場合、コイル56に電流を流す回路が断線した場合には、ねじりコイルばね51の押圧力によりストラット43がノッチプレート80側(図2矢印R方向)へ押し付けられるので、その状態をフェール状態として、故障が発生しても、本発明のディスコネクト装置301を搭載する4輪駆動車100の運行状態を確実にトルク(駆動力)伝達状態とすることができる。
第3実施の形態では、駆動部50が永久磁石である磁石部55を備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、永久磁石である磁石部55を省略して構成しても良い。
この場合、コイル56に電流を流す回路が断線した場合には、ストラット43に作用するスプリングリターン365の押圧力が、ストラット43に作用するねじりコイルばね51の押圧力より大きいので、ストラット43がポケットプレート90側(図2矢印L方向)へ押し付けられる。そのため、その状態をフェール状態とすることで、故障が発生しても、本発明のディスコネクト装置301を搭載する4輪駆動車100の運行状態を確実にトルク(駆動力)遮断状態とすることができる。
第2実施の形態では、ストラット43がリテーナストラット267を介して揺動される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ストラット43とピンスリーブ268とを一体として構成しても良い。
よって、ディスコネクト装置1を構成する部品数を削減することができる。その結果、ディスコネクト装置1の簡素化を図る共にディスコネクト装置1の製品コストを削減することができる。
第2実施の形態では、ストラット43がリテーナストラット267を介して揺動される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、リテーナストラット267を省略すると共にリテーナストラット267の代わりにピンスリーブ268が当接する部位をストラット43の形状を変更することで形成するように構成しても良い。
即ち、ストラット43(図5(a)及び図5(b)参照)の側面43cの両端に端面43d対向する方向に延設される凸部を形成する。なお、その凸部の形状は、ストラット43が第2凹部292に収容された場合に、下面90aに当接しない形状として構成する。
そのため、リテーナストラット267を省略することができるので、ディスコネクト装置1を構成する部品数を削減してディスコネクト装置1の製品コストを削減することができる。また、DCソレノイド52及びねじりコイルばね51によって駆動される部品の総重量が軽量とされるので、DCソレノイド52及びねじりコイルばね51に必要とされる駆動力を小さくして、駆動力の伝達と遮断との切換えを素早くおこなうことができると共にDCソレノイド52及びねじりコイルばね51を小型しディスコネクト装置1の小型化を図ることができる。
なお、上記各実施の形態において説明した、ストラット43の係止が解除される場合には、4輪駆動車100の運行状態は、加速(減速)から減速(加速)に移行する状態である。即ち、4輪駆動車100の運行状態が加速(減速)継続状態では、ストラット43は、ポケットプレート90及びノッチプレート80(第1プレート280及び第2プレート290)にて伝達される駆動力によって係合凹部86と収納凹部92(第1凹部286と第2凹部292)とに狭持されているので、DCソレノイド52の駆動力では、係止が解除されない。