JP7017189B1 - 回転ロック装置 - Google Patents

Abstract

回転ロック装置（４）は、アクチュエータ（７）により、入力部材（１２）を回転駆動することに伴い、出力部材（１３）により係合部材（８）を回動させることに基づいて、係合爪部（１４）と係合凹部（９）とが係合し、自動変速機（２）の出力軸（３）に支持固定されたロックギヤ（５）の回転が制限される第１のモードと、係合爪部（１４）と係合凹部（９）との係合が外れ、ロックギヤ（５）の回転が許容される第２のモードとを切り換える。

Description

本発明は、動力伝達装置の回転部材を回転不能にするための回転ロック装置、特に、自動変速機を搭載する自動車において、シフトレバーがＰ（パーキング）レンジに選択された際に、前記自動変速機の出力軸の回転をロックするパーキングロック機構などに使用される、回転ロック装置に関する。

自動変速機を搭載する自動車は、シフトレバーがＰレンジに選択された場合に、前記自動変速機の出力軸に備えられたパーキングロックギヤに、爪状のパーキングロックポールを係合させることで、前記出力軸の回転をロックするパーキングロック機構を備える。図３２は、特開２０１０－６２９９号公報に記載のパーキングロック機構を示している。

パーキングロック機構１００は、アクチュエータ１０１と、アクチュエータ１０１により回転駆動されるシャフト１０２と、シャフト１０２の回転に伴って揺動するディテントプレート１０３と、ディテントプレート１０３の揺動に伴って直進運動するロッド１０４と、自動変速機の出力軸に固定されたパーキングロックギヤ１０５と、前記出力軸と平行な揺動軸を中心とする揺動を可能に支持されたパーキングロックポール１０６と、ディテントプレート１０３の揺動を制限してシフトポジションを保持するためのディテントスプリング１０７とを備える。ロッド１０４は、先端部に、円すい台状のカム１０８を有する。

シフトレバーがＰレンジに選択されると、アクチュエータ１０１がシャフト１０２を回転させる。シャフト１０２が回転すると、ディテントプレート１０３が、図３２に矢印αで示す方向に揺動し、ロッド１０４が、図３２に矢印βで示す方向に変位する。そして、ディテントプレート１０３に備えられたパーキング用係止溝１０９に、ディテントスプリング１０７の先端部に備えられたころ１１０が係合するとともに、カム１０８の大径側部分がパーキングロックポール１０６を押し上げ、パーキングロックポール１０６の爪部１１１とパーキングロックギヤ１０５の係合凹部１１２とが係合する。これにより、自動変速機の出力軸の回転がロックあるいは制限される。

特開２０１０－００６２９９号公報

特開２０１０－００６２９９号公報に記載のパーキングロック機構１００は、アクチュエータ１０１によりシャフト１０２を回転させることに基づいて、ディテントプレート１０３を揺動させ、さらに、ディテントプレート１０３の揺動に伴いロッド１０４を変位させることで、ロッド１０４の先端部に備えられたカム１０８によりパーキングロックポール１０６を押し上げ、爪部１１１と係合凹部１１２とを係合させている。このようなパーキングロック機構１００は、その構造が複雑で、組立作業が面倒であり、コストが嵩みやすい。

また、自動車を傾斜した路面に駐車する際に、パーキングロック機構１００を作動させ、かつ、パーキングブレーキを作動しない状態で、サービスブレーキの作動を解除すると、駆動輪が回転しようとすることに伴い、パーキングロックギヤ１０５も回転しようとする。これにより、パーキングロックギヤ１０５の係合凹部１１２の円周方向側面が、パーキングロックポール１０６の爪部１１１の側面に強く押し付けられる。この状態から、パーキングロック機構１００を解除する場合、爪部１１１の側面を係合凹部１１２の円周方向側面に対し滑らせつつ、パーキングロックポール１０６を下方に揺動させる必要がある。すなわち、パーキングロック機構１００を解除するために大きな力が必要とされる。このため、パーキングロック機構１００では、アクチュエータ１０１として出力が大きい大型のアクチュエータを使用する必要があり、その小型化を図る面から不利である。

本発明は、上述のような事情に鑑み、簡易に構成することができ、かつ、必要に応じて解除に必要な力を小さく抑えることができる、回転ロック装置の構造を実現することを目的としている。

本発明の一態様の回転ロック装置は、ロックギヤと、逆入力遮断クラッチと、係合部材とを備える。

前記ロックギヤは、円周方向複数箇所に係合凹部を有する。

前記逆入力遮断クラッチは、互いに同軸に配置された入力部材および出力部材を有し、前記入力部材に回転トルクが入力された場合に、該入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力された場合に、該出力部材に逆入力された回転トルクを前記入力部材に伝達しない。

前記係合部材は、前記係合凹部に係合可能な係合爪部を有し、前記出力部材により回動駆動可能に支持されている。

特に、本発明の一態様の回転ロック装置は、前記入力部材を回転駆動することに基づいて、前記出力部材により前記係合部材を、該出力部材の中心軸を中心に回動させるか、または、該出力部材と該係合部材との間に備えられた減速機の出力軸を中心に回動させることで、前記係合爪部と前記係合凹部とが係合し、前記ロックギヤの回転が制限される第１のモードと、前記係合爪部と前記係合凹部との係合が外れ、前記ロックギヤの回転が許容される第２のモードとを切り換えることができる。

本発明の一態様の回転ロック装置は、前記入力部材を回転駆動するアクチュエータを備えることができる。

本発明の一態様回転ロック装置は、前記第１のモードから前記第２のモードに切り換える際に、前記係合部材を、前記ロックギヤから前記係合部材に加わる力の方向と同じ方向に回動することで、前記係合爪部と前記係合凹部との係合を外すことができる。

前記逆入力遮断クラッチは、
入力部材側係合部を有する前記入力部材と、
出力部材側係合部を有する前記出力部材と、
被押圧面を有する被押圧部材と、および、
前記被押圧面に対向する押圧面、前記入力部材側係合部と係合する係合子側入力係合部、および、前記出力部材側係合部と係合する係合子側出力係合部を有する係合子と、
を備えることができる。

前記係合子は、
前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力部材側係合部と前記係合子側入力係合部との係合に基づいて、前記押圧面を前記被押圧面から離隔させるように変位して、前記係合子側出力係合部を前記出力部材側係合部に係合させることにより、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、
前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記出力部材側係合部と前記係合子側出力係合部との係合に基づいて、前記押圧面を前記被押圧面に押し付けるように変位して、前記押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させることにより、前記出力部材に逆入力された回転トルクを前記入力部材に伝達しない。

本発明の一態様の回転ロック装置では、それぞれが前記係合子からなる１対の係合子を備えることができる。この場合、該１対の係合子は、前記出力部材側係合部を径方向外側から挟むように配置される。なお、前記入力部材の前記入力部材側係合部の数は、前記係合子の数に対応する。

この場合、前記係合子は、
前記押圧面、前記係合子側出力係合部、および、前記被押圧面に対する前記押圧面の遠近動方向に関して前記係合子側入力係合部よりも前記被押圧面に近い側に位置する揺動支持部を有する係合子本体と、および、
前記係合子側入力係合部、および、前記揺動支持部に対し揺動可能に支持された揺動被支持部を有するリンク部材と、
を備えることができる。

前記係合子本体は、
前記係合子側出力係合部を構成するプレート側出力係合部をそれぞれ有し、前記被押圧面の軸方向に関して重畳して配置され、かつ、互いに結合された１対の本体プレートと、および、
前記揺動支持部を構成し、軸方向両側部分が前記１対の本体プレートのそれぞれに支持された揺動支持軸と、
を備えることができる。

前記リンク部材を、前記１対の本体プレート同士の間に配置することができる。

前記係合子本体は、前記１対の本体プレート同士の間に挟持された少なくとも１個の中間プレートを備えることができる。

本発明の一態様の回転ロック装置は、駆動源の回転トルクを駆動輪に伝達する駆動系に組み込んで使用することができる。換言すれば、本発明の一態様の回転ロック装置は、シフトレバーがＰレンジに選択された場合に、駆動輪の回転をロックするパーキングロック機構を構成することができる。

本発明の一態様の回転ロック装置は、簡易に構成することができて、コストを低く抑えることができる。

さらに、第１のモードから第２のモードに切り換える際に、係合部材を、ロックギヤから前記係合部材に加わる力の方向と同じ方向に回動することで、係合部材の係合爪部と係合凹部との係合を外す機能を備えることで、解除（第１のモードから第２のモードへの切り換え）に必要な力を小さく抑えることができる。

図１は、本発明の実施の形態の第１例に係る回転ロック装置が適用されたパーキングロック機構の模式的な斜視図である。 図２は、第１例の回転ロック装置を構成する逆入力遮断クラッチの斜視図である。 図３は、図２の右側から見た第１例の逆入力遮断クラッチの端面図である。 図４は、第１例の逆入力遮断クラッチについての、図３のＡ－Ａ断面図である。 図５は、第１例の逆入力遮断クラッチの分解斜視図である。 図６は、第１例の逆入力遮断クラッチについての、入力部材、入力側ハウジング素子、および入力側軸受を取り除き、入力部材に回転トルクが入力されておらず、かつ、出力部材に回転トルクが逆入力されていない中立状態における、図４の右側から見た端面図である。 図７は、第１例の逆入力遮断クラッチについての、入力部材に回転トルクが入力された状態における、図６と同様の図である。 図８は、第１例の逆入力遮断クラッチについての、出力部材に回転トルクが逆入力された状態における、図６と同様の図である。 図９は、第１例の逆入力遮断クラッチについての、出力部材、出力側ハウジング素子の左側の端部、出力側軸受、左側の本体プレート、ボルト、およびナットを取り除いた状態における、図４の左側から見た端面図である。 図１０は、第１例の逆入力遮断クラッチについての、図９のＢ－Ｂ断面図である。 図１１は、第１例の逆入力遮断クラッチについての、図９の上半部の左右方向中央部の拡大図である。 図１２は、図９に示した第１例の逆入力遮断クラッチについての、その上半部から、中間プレートおよびリンク部材をさらに取り除いた状態における、端面図である。 図１３は、第１例の逆入力遮断クラッチについての、図１２のＣ－Ｃ断面図である。 図１４は、第１例の逆入力遮断クラッチを構成する、１対の係合子およびばねの斜視図である。 図１５は、第１例の１対の係合子およびばねについての、軸方向に関して出力部材側から見た端面図である。 図１６は、第１例の１対の係合子およびばねについての、図１５のＤ１－Ｄ２断面図である。 図１７は、第１例の１対の係合子およびばねについての、図１５のＤ１－Ｏ－Ｄ３断面図である。 図１８は、第１例の１対の係合子の分解斜視図である。 図１９は、第１例の１対の係合子を構成する中間プレートとばねの斜視図である。 図２０（Ａ）（ａ）は、第１例の逆入力遮断クラッチに関して、入力部材に回転トルクが入力される前の状態で示す、係合子側入力係合部と入力部材側係合部との係合部を示す図である。図２０（Ａ）（ｂ）は、図２０（Ａ）（ａ）に示した状態から入力部材に回転トルクが入力された後の状態を示す図である。図２０（Ｂ）（ａ）は、参考例の逆入力遮断クラッチに関して、入力部材に回転トルクが入力される前の状態で示す、係合子側入力係合部と入力部材側係合部との係合部を示す図である。図２０（Ｂ）（ｂ）は、図２０（Ｂ）（ａ）に示した状態から入力部材に回転トルクが入力された後の状態を示す図である。 図２１（Ａ）および図２１（Ｂ）は、第１例の逆入力遮断クラッチに関して、出力部材側係合部と係合子側出力係合部とが係合する前後の状態を示す図である。 図２２（Ａ）～図２２（Ｃ）は、第１例の回転ロック装置に関して、ロックギヤに、該ロックギヤを正転方向に回転させようとする力が加わっている場合において、パーキングロック機構を解除する際の係合部材の回動方向を説明するための図である。 図２３（Ａ）～図２３（Ｃ）は、第１例の回転ロック装置に関して、ロックギヤに、該ロックギヤを逆転方向に回転させようとする力が加わっている場合において、パーキングロック機構を解除する際の係合部材の回動方向を説明するための図である。 図２４は、第１例の回転ロック装置に関して、パーキングロック機構を解除する際の係合部材の回動方向を規制することによる効果を説明するための図である。 図２５は、本発明の実施の形態の第２例に係る回転ロック装置が適用されたパーキングロック機構の模式的な斜視図である。 図２６は、本発明の実施の形態の第３例に係る回転ロック装置を構成する逆入力遮断クラッチの端面図である。 図２７は、第３例の逆入力遮断クラッチの斜視図である。 図２８は、第３例の逆入力遮断クラッチを構成する入力部材の一部の斜視図である。 図２９は、第３例の逆入力遮断クラッチを構成する出力部材の一部の斜視図である。 図３０は、第３例の逆入力遮断クラッチに関して、入力部材に回転トルクが入力された状態を示す図である。 図３１は、第３例の逆入力遮断クラッチに関して、出力部材に回転トルクが逆入力された状態を示す図である。 図３２は、パーキングロック機構の従来構造の１例を示す斜視図である。

［第１例］
本発明の実施の形態の第１例について、図１～図２４を用いて説明する。本例は、本発明の回転ロック装置を、パーキングロック機構に適用した例である。図１に示すように、自動車では、駆動源１の回転は自動変速機２で減速され（駆動源１の出力トルクは自動変速機２で増大され）、デファレンシャルギヤなどを介して駆動輪（図示省略）に伝達される。

駆動源１は、エンジンおよび／または電動モータにより構成される。

自動変速機２は、平行軸歯車式や遊星歯車式などの有段変速機、または、ベルト式やチェーン式、トロイダル式などの無段変速機により構成される。

自動変速機２を搭載する自動車は、シフトレバーがＰレンジに選択された場合に、自動変速機２の出力軸３の回転をロックする回転ロック装置４が適用されたパーキングロッキング機構を備える。

＜回転ロック装置の全体構造＞
本例のパーキングロック機構を構成する回転ロック装置４は、ロックギヤ５と、逆入力遮断クラッチ６と、アクチュエータ７と、係合部材８とを備える。以下、回転ロック装置４の全体構造、逆入力遮断クラッチ６の構造、回転ロック装置４の動作の順に説明する。

ロックギヤ５は、外周面の円周方向等間隔複数箇所に係合凹部９を有する。換言すれば、ロックギヤ５は、外周面に、係合凹部９と凸部１０とを交互に配置してなるギヤ部１１を有する。ロックギヤ５は、自動変速機２の出力軸３に相対回転不能に外嵌固定されている。

逆入力遮断クラッチ６は、互いに同軸に配置された入力部材１２および出力部材１３を有する。本例では、入力部材１２および出力部材１３は、自動変速機２の出力軸３と平行に配置されている。逆入力遮断クラッチ６は、入力部材１２に回転トルクが入力された場合には、入力部材１２の回転方向にかかわらず、入力部材１２に入力された回転トルクを出力部材１３に伝達し、かつ、出力部材１３に回転トルクが逆入力された場合には、出力部材１３の回転方向にかかわらず、出力部材１３に逆入力された回転トルクを完全に遮断して入力部材１２に伝達しない。

アクチュエータ７は、逆入力遮断クラッチ６の入力部材１２を、正転方向と逆転方向との両方向に回転駆動する。アクチュエータ７は、電動モータなどにより構成される。

係合部材８は、ロックギヤ５の係合凹部９に係合可能（係合凹部９の内側に配置可能）な係合爪部１４を有し、逆入力遮断クラッチ６の出力部材１３により回動駆動可能に支持されている。本例では、係合部材８の基端部は、出力部材１３の先端部（図１の左側の端部）に支持固定されている。また、係合部材８は、出力部材１３の軸方向から見て基端部から先端部に向かう（図２２（Ａ）および図２３（Ａ）の下側に向かう）ほど幅寸法（厚さ）が小さくなる端面形状を有し、かつ、先端部に係合爪部１４を有する。

＜逆入力遮断クラッチ＞
本例の回転ロック装置４を構成する逆入力遮断クラッチ６は、入力部材１２と、出力部材１３と、被押圧部材を構成するハウジング１５と、１対の係合子１６と、１対のばね１７とを備える。なお、本例の逆入力遮断クラッチ６に関する説明において、軸方向、径方向、および円周方向とは、特に断らない限り、逆入力遮断クラッチ６の軸方向、径方向、および円周方向をいう。また、逆入力遮断クラッチ６の軸方向、径方向、および円周方向は、入力部材１２の軸方向、径方向、および円周方向と一致し、かつ、出力部材１３の軸方向、径方向、および円周方向と一致する。逆入力遮断クラッチ６に関して、軸方向一方側は、図２、図４、図５、図１０、図１３、図１４、および、図１６～図１９の右側をいい、軸方向他方側は、図２、図４、図５、図１０、図１３、図１４、および、図１６～図１９の左側をいう。

入力部材１２は、アクチュエータ７により回転駆動される。換言すれば、入力部材１２は、アクチュエータ７から回転トルクが入力される。入力部材１２は、図４および図５に示すように、入力軸部１８と、１対の入力腕部１９と、１対の入力部材側係合部２０とを有する。入力軸部１８は、円柱状に構成されており、その軸方向一方側の端部にアクチュエータ７の出力軸が接続される。１対の入力腕部１９は、入力軸部１８の軸方向他方側の端部から、互いに径方向反対側に向けて伸長している。それぞれの入力腕部１９は、その径方向中間部に、軸方向の貫通孔である支持孔２１を有する。１対の入力部材側係合部２０のそれぞれの入力部材側係合部２０は、円柱状のピンにより構成されている。それぞれの入力部材側係合部２０の軸方向一方側の端部は、それぞれの入力腕部１９の支持孔２１に圧入により内嵌固定されている。それぞれの入力部材側係合部２０は、それぞれの入力腕部１９から軸方向一方側に伸長している。なお、入力部材は、全体を一体に（１部品として）構成することもできる。

出力部材１３は、係合部材８を支持固定する。出力部材１３は、入力部材１２と同軸に配置されており、図４および図５に示すように、出力軸部２２と、出力部材側係合部２３とを有する。出力軸部２２は、円柱状に構成されており、その軸方向他方側の端部に係合部材８が支持固定される。出力部材側係合部２３は、略長円柱状に構成されており、出力軸部２２の軸方向一方側の端面の中央部から軸方向一方側に伸長している。出力部材側係合部２３の外周面は、図６、図７、図２１（Ａ）、および図２１（Ｂ）に示すように、短軸方向（図６、図７、図２１（Ａ）、および図２１（Ｂ）の上下方向）の両側の側面２４と、長軸方向（図６、図７、図２１（Ａ）および図２１（Ｂ）の左右方向）の両側の側面により構成されるガイド面２５とを有する。

それぞれの側面２４は、出力部材側係合部２３の短軸方向に対して直交する平坦面により構成されている。それぞれのガイド面２５は、凸曲面により構成されている。具体的には、それぞれのガイド面２５は、出力部材側係合部２３の中心軸（出力部材１３の中心軸）を中心とする部分円筒状の凸面により構成されている。したがって、出力部材１３に関しては、たとえば丸棒素材の外周面を、それぞれのガイド面２５として利用することができ、その分、加工コストを抑えられる。ただし、それぞれのガイド面を、出力部材１３の中心軸と平行かつ非同軸の軸を中心とする部分円筒状の凸面、あるいは、部分楕円筒状の凸面などの非円筒状の凸面により構成することもできる。また、本例では、出力軸部２２と出力部材側係合部２３とが一体に造られているが、互いに別体に造られた出力軸部と出力側係合部とを互いに結合固定することにより出力部材を構成することもできる。出力部材側係合部２３は、１対の入力部材側係合部２０よりも径方向内側に配置されており、具体的には、１対の入力部材側係合部２０同士の間部分に配置される。

ハウジング１５は、図２～図５に示すように、中空の円盤状に構成されており、図示しない他の部材に固定されて、その回転が拘束されている。ハウジング１５は、入力部材１２および出力部材１３と同軸に配置され、かつ、その内側に、１対の入力部材側係合部２０、出力部材側係合部２３、１対の係合子１６、１対のばね１７などを収容している。ハウジング１５は、軸方向他方側に配置された、出力側ハウジング素子（ハウジング本体）２６と、軸方向一方側に配置された入力側ハウジング素子（ハウジング蓋体）２７とを、複数本のボルト２８により結合することで構成されている。

出力側ハウジング素子２６は、外径側筒部２９と、内径側筒部３０と、側板部３１とを備える。外径側筒部２９は、円筒状に構成されている。内径側筒部３０は、円筒状に構成されており、外径側筒部２９の軸方向他方側に、外径側筒部２９と同軸に配置されている。側板部３１は、略円形平板状に構成されており、その径方向外側の端部が外径側筒部２９の軸方向他方側の端部に結合され、かつ、その径方向内側の端部が内径側筒部３０の軸方向一方側の端部に結合されている。

外径側筒部２９は、内周面に被押圧面３２を有する。被押圧面３２は、出力側ハウジング素子２６の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。外径側筒部２９は、軸方向一方側の端部の外周面に、軸方向他方側に隣接する部分の外周面よりも外径寸法が大きい、出力側インロー嵌合面３３を有する。出力側インロー嵌合面３３は、出力側ハウジング素子２６の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。外径側筒部２９は、軸方向一方側の端部の円周方向等間隔となる複数箇所（図示の例では８箇所）に、軸方向一方側の側面に開口するねじ孔３４を有する。内径側筒部３０は、内周面の軸方向一方側の端部から中間部にかけての部分に、出力側軸受嵌合面３５を有する。出力側軸受嵌合面３５は、出力側ハウジング素子２６の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。すなわち、被押圧面３２と出力側インロー嵌合面３３と出力側軸受嵌合面３５とは、互いに同軸に配置されている。

入力側ハウジング素子２７は、外径側筒部３６と、内径側筒部３７と、側板部３８とを備える。外径側筒部３６は、円筒状に構成されている。内径側筒部３７は、円筒状に構成されており、外径側筒部３６の軸方向一方側に、外径側筒部３６と同軸に配置されている。側板部３８は、略円形平板状に構成されており、その径方向外側の端部が外径側筒部３６の軸方向一方側の端部に結合され、かつ、その径方向内側の端部が内径側筒部３７の軸方向他方側の端部に結合されている。

外径側筒部３６は、内周面に入力側インロー嵌合面３９を有する。入力側インロー嵌合面３９は、入力側ハウジング素子２７の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。入力側インロー嵌合面３９は、出力側ハウジング素子２６の出力側インロー嵌合面３３に対して、がたつきなく嵌合することが可能な内径寸法を有する。側板部３８は、出力側ハウジング素子２６のねじ孔３４と整合する、径方向外側の端部の円周方向等間隔となる複数箇所に、通孔４０を有する。内径側筒部３７は、内周面の軸方向他方側の端部から中間部にかけての部分に、入力側軸受嵌合面４１を有する。入力側軸受嵌合面４１は、入力側ハウジング素子２７の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。すなわち、入力側インロー嵌合面３９と入力側軸受嵌合面４１とは、互いに同軸に配置されている。

ハウジング１５は、出力側ハウジング素子２６の出力側インロー嵌合面３３に対して、入力側ハウジング素子２７の入力側インロー嵌合面３９をがたつきなく嵌合させ、かつ、入力側ハウジング素子２７のそれぞれの通孔４０に挿通したボルト２８を、出力側ハウジング素子２６の対応するねじ孔３４に螺合し、さらに締め付けることにより、出力側ハウジング素子２６と入力側ハウジング素子２７とを結合固定することによって組み立てられる。本例では、出力側ハウジング素子２６の出力側インロー嵌合面３３と出力側軸受嵌合面３５とが互いに同軸に配置され、かつ、入力側ハウジング素子２７の入力側インロー嵌合面３９と入力側軸受嵌合面４１とが互いに同軸に配置されている。このため、出力側インロー嵌合面３３と入力側インロー嵌合面３９とをがたつきなく嵌合させた、ハウジング１５の組立状態で、入力側軸受嵌合面４１と出力側軸受嵌合面３５とは、互いに同軸に配置される。

ハウジング１５を組み立てた状態で、入力部材１２の入力軸部１８は、入力側ハウジング素子２７の入力側軸受嵌合面４１に対し、入力側軸受４２により回転可能に支持される。また、出力部材１３の出力軸部２２は、出力側ハウジング素子２６の出力側軸受嵌合面３５に対し、出力側軸受４３により回転可能に支持される。これにより、入力部材１２と出力部材１３とが、互いに同軸に配置され、かつ、ハウジング１５の被押圧面３２に対して同軸に配置される。さらに、この状態で、１対の入力部材側係合部２０および出力部材側係合部２３は、ハウジング１５の被押圧面３２の径方向内側に配置される。なお、逆入力遮断クラッチ６に関して、後述するロック状態を非ロック状態に切り換える性能（ロック解除性能）などを高いレベルにしたい場合は、入力部材１２と出力部材１３との同軸度および傾きを厳密に管理する必要がある。その場合は、入力側軸受４２と出力側軸受４３とのそれぞれを、図示のような単列の転がり軸受から複列の転がり軸受に変更するなどの、一般的な軸受利用方法を適用することもできる。

本例では、１対の係合子１６を構成するそれぞれの係合子１６が、本発明の係合子に相当する。いずれの係合子１６も、被押圧面３２の径方向内側に配置されている。それぞれの係合子１６は、係合子本体４４と、係合子本体４４に対して揺動可能に連結されたリンク部材４５とを備える。

本例では、係合子本体４４は、図１４～図１９に示すように、複数の部品を組み合わせることにより構成されている。以下、係合子本体４４の全体構造、係合子本体４４を構成する各部品の構造の順に説明する。

係合子本体４４は、略半円形板形状を有しており、被押圧面３２に対向する１対の押圧面４６と、揺動支持部を構成する揺動支持軸４７と、出力部材側係合部２３と係合する係合子側出力係合部４８とを備える。

本例では、係合子本体４４の外周面は、係合子本体４４の弧に相当する凸円弧状の径方向外側面と、係合子本体４４の弦に相当するクランク状の径方向内側面から構成されている。なお、係合子本体４４に関して径方向とは、係合子本体４４の弦に直交する、図６に矢印Ｘで示す方向をいい、被押圧面３２に対する押圧面４６の遠近動方向に対応する。また、係合子本体４４に関して幅方向とは、係合子本体４４の弦に対して平行な、図６に矢印Ｙで示す方向をいう。

本例では、１対の係合子１６は、それぞれの係合子本体４４の径方向外側面を反対側に向け、それぞれの係合子本体４４の径方向内側面を対向させた状態で、被押圧面３２の径方向内側に配置されている。このように１対の係合子１６が被押圧面３２の径方向内側に配置された状態で、被押圧面３２と係合子本体４４の径方向外側面との間部分、および、係合子本体４４の径方向内側面同士の間部分のうちの少なくとも一方に、係合子本体４４が径方向に移動することを許容する隙間が存在するように、被押圧面３２の内径寸法および係合子本体４４の径方向寸法が規制されている。

係合子本体４４は、径方向外側面に、１対の押圧面４６を有する。１対の押圧面４６は、出力部材１３のロック状態で、被押圧面３２に対して押し付けられる部分であり、係合子本体４４の径方向外側面の円周方向両側部分に、円周方向に離隔して配置されている。それぞれの押圧面４６は、係合子本体４４の径方向外側面のうち、円周方向に関して押圧面４６から外れた部分よりも、被押圧面３２に向けて突出している。それぞれの押圧面４６は、被押圧面３２の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する部分円筒状の凸面により構成されている。係合子本体４４の径方向外側面のうち、１対の押圧面４６から円周方向に外れた部分（円周方向に関して押圧面４６同士の間に位置する部分）は、被押圧面３２に対して接触することのない、非接触面である。

係合子本体４４は、幅方向中央部の厚さ方向（軸方向）中央部に、内部空間４９を有する。内部空間４９の径方向両側の端部は、係合子本体４４の径方向外側面と径方向内側面とにそれぞれ開口している。係合子本体４４は、軸方向に配置された揺動支持軸４７を有し、揺動支持軸４７の軸方向中間部は、内部空間４９の幅方向中央部の径方向外側部に配置されている。揺動支持軸４７は、円柱状のピンにより構成されており、その軸方向両側の端部が、係合子本体４４のうち、内部空間４９を軸方向両側から挟む部分に支持されている。

係合子本体４４は、径方向内側面の幅方向中央部に、係合子側出力係合部４８を有する。係合子側出力係合部４８は、係合子本体４４の径方向内側面（被押圧面３２に対して遠い側の側面）の幅方向中央部から径方向外方に向けて凹んだ、略矩形状の凹部により構成されている。

係合子側出力係合部４８は、図６、図７、図２１（Ａ）、および図２１（Ｂ）に示すように、その内側に出力部材側係合部２３の短軸方向の先半部を配置できる大きさを有する。特に、本例では、係合子側出力係合部４８は、図７および図２１（Ｂ）に示すように、出力部材側係合部２３の短軸方向の先半部の外周面に合致する内面形状を有する。

係合子側出力係合部４８の内面は、底面５０と、１対の被ガイド面５１とを有する。底面５０は、係合子本体４４の径方向に対して直交する平坦面により構成されている。１対の被ガイド面５１は、係合子側出力係合部４８の内面のうち、係合子本体４４の幅方向に関して両側の端部に位置し、かつ、該幅方向に関して互いに対向している。１対の被ガイド面５１は、係合子本体４４の径方向内側に向かうほど、すなわち、係合子本体４４の径方向に関して被押圧面３２から遠ざかる方向に向かうほど、互いの間隔が拡がる方向に傾斜した１対の凹曲面により構成されている。

それぞれの被ガイド面５１は、出力部材側係合部２３のそれぞれのガイド面２５に接触可能であり、ガイド面２５と同じ大きさの曲率半径またはガイド面２５よりも僅かに大きい曲率半径を有する、部分円筒状の凹面により構成されている。すなわち、本例では、係合子側出力係合部４８は、図７および図２１（Ｂ）に示すように、出力部材側係合部２３の短軸方向の先半部の外周面に合致する内面形状を有する。すなわち、係合子側出力係合部４８の底面５０を、出力部材側係合部２３の側面２４に面接触させるとともに、係合子側出力係合部４８の１対の被ガイド面５１を、出力部材側係合部２３の１対のガイド面２５のうち短軸方向に関する先半部に面接触させることが可能である。なお、被ガイド面は、部分楕円筒状の凹面などの非円筒状の凹面により構成することもできる。

係合子本体４４は、幅方向中央部の径方向内側部に、挿通孔５２を有する。挿通孔５２は、係合子本体４４の幅方向中央部の径方向内側部を軸方向に貫通し、かつ、円周方向に伸長する円弧形の長孔により構成されている。挿通孔５２は、入力部材側係合部２０を緩く挿入できる大きさを有する。具体的には、挿通孔５２の内側に入力部材側係合部２０を挿入した際に、入力部材側係合部２０と挿通孔５２の内面との間に、円周方向に関する隙間および係合子本体４４の径方向に関する隙間が存在する。このため、入力部材側係合部２０は、前記円周方向に関する隙間の存在に基づいて、挿通孔５２（係合子本体４４）に対し、入力部材１２の回転方向に関する変位が可能であり、挿通孔５２（係合子本体４４）は、係合子本体４４の径方向に関する隙間の存在に基づいて、入力部材側係合部２０に対し、係合子本体４４の径方向の変位が可能である。換言すれば、後述する逆入力遮断クラッチ６の動作時に、挿通孔５２の内周縁と入力部材側係合部２０とが干渉して該動作が阻害されることがないように、挿通孔５２の大きさが規制されている。

係合子本体４４は、径方向内側面の幅方向両側部分に、径方向内側に突出する突起状の凸部５３を有する。凸部５３は、係合子本体４４の径方向内側面の幅方向両側部分における厚さ方向（軸方向）中央部から径方向内側に突出している。凸部５３は、１対のばね１７を構成するそれぞれのばね１７を保持するために用いられる。

係合子本体４４は、複数の部品を組み合わせることにより構成されている。具体的には、係合子本体４４は、１対の本体プレート５４と、１対の中間プレート５５と、揺動支持軸４７と、結合部材である複数ずつのボルト５６およびナット５７とを有する。

１対の本体プレート５４は、係合子本体４４の厚さ方向の両側部分を構成する部品であり、軸方向に重畳して配置されている。それぞれの本体プレート５４は、鋼板などの金属板にプレス加工による打ち抜き加工を施して造られたプレス成形品であり、略半円形板形状を有する。本体プレート５４は、径方向外側面のうち、円周方向に離隔した２箇所位置に、係合子本体４４を組み立てた状態で押圧面４６を構成する凸面５８を有する。すなわち、それぞれの本体プレート５４の径方向外側面のうち、円周方向に関する位相が一致する部分に備えられた１対の凸面５８が、押圧面４６を構成する。要するに、１対の押圧面４６を備える係合子本体４４は、４つの凸面５８を有する。本体プレート５４は、幅方向中央部の径方向外側部に、円形の支持孔５９を有する。本体プレート５４は、径方向内側面の幅方向中央部に、係合子本体４４を組み立てた状態で係合子側出力係合部４８を構成するプレート側出力係合部６０を有する。すなわち、軸方向に離隔して配置された１対のプレート側出力係合部６０が、係合子側出力係合部４８を構成する。本体プレート５４は、幅方向中央部の径方向内側部に、係合子本体４４を組み立てた状態で挿通孔５２を構成する貫通孔６１を有する。係合子本体４４は、幅方向両側部分のそれぞれに、複数（図示の例では３個ずつ）の通孔６２を有し、かつ、幅方向両側部分のそれぞれにおいて、複数の通孔６２から外れた箇所に、（図示の例では１個ずつの）位置決め孔６３を有する。

１対の中間プレート５５は、係合子本体４４の厚さ方向の中間部を構成する部材である。それぞれの中間プレート５５は、鋼板などの金属板にプレス加工による打ち抜き加工を施して造られたプレス成形品であり、略扇板形状を有する。１対の中間プレート５５は、１対の本体プレート５４の幅方向両側部分同士の間に挟持されている。それぞれの中間プレート５５は、径方向内側面の幅方向中間部に凸部５３を有する。凸部５３は、１対の本体プレート５４の径方向内側面よりも径方向内側に突出している。中間プレート５５のうち、凸部５３以外の部分は、１対の本体プレート５４同士の間に配置されている。特に、中間プレート５５の径方向外側面は、１対の本体プレート５４の径方向外側面よりも径方向内側に位置しており、被押圧面３２と接触することはない。中間プレート５５は、１対の本体プレート５４のそれぞれの通孔６２と整合する複数箇所に、通孔６４を有する。中間プレート５５は、１対の本体プレート５４のそれぞれの位置決め孔６３と整合する箇所に、位置決め孔６５を有する。

１対の本体プレート５４および１対の中間プレート５５は、互いに整合する１対の本体プレート５４の通孔６２と１対の中間プレート５５の通孔６４とを挿通した複数のボルト５６の先端部に、ナット５７を螺合し、さらに締め付けることによって、互いに結合固定されている。なお、本例の構造では、このような結合固定の作業を行う際に、互いに整合する１対の本体プレート５４の位置決め孔６３と１対の中間プレート５５の位置決め孔６５とに、作業用の位置決めロッドを挿通することによって、１対の本体プレート５４の通孔６２と１対の中間プレート５５の通孔６４とを整合させる作業を容易に行うことができる。本例の構造では、１対の本体プレート５４と１対の中間プレート５５とを結合固定した状態で、本体プレート５４同士の間で、幅方向に関して中間プレート５５同士の間に、内部空間４９が画成される。

揺動支持軸４７は、円柱状のピンにより構成されている。揺動支持軸４７の軸方向両側の端部は、１対の本体プレート５４の支持孔５９に圧入により内嵌固定されている。揺動支持軸４７の軸方向中間部は、内部空間４９内に配置されている。

リンク部材４５は、鋼板などの金属板にプレス加工による打ち抜き加工を施して造られたプレス成形品であって、略矩形板形状または略長円板形状を有しており、係合子本体４４の内部空間４９（本体プレート５４同士の間）に配置されている。

リンク部材４５の厚さ寸法は、内部空間４９の軸方向幅寸法（＝１対の本体プレート５４の互いに対向する側面同士の間隔＝中間プレート５５の厚さ寸法）よりも小さい。リンク部材４５は、その長手方向の一方側の端部に揺動被支持部６６を有し、かつ、その長手方向の他方側の端部に係合子側入力係合部６７を有する。

揺動被支持部６６は、円孔により構成され、かつ、揺動支持軸４７が挿通されている。これにより、リンク部材４５の長手方向一方側の端部が、揺動支持軸４７に対し揺動可能に接続（支持）されている。係合子側入力係合部６７は、円孔により構成され、かつ、入力部材側係合部２０が挿通されている。これにより、リンク部材４５の長手方向他方側の端部が、入力部材側係合部２０に対し揺動可能に接続されている。

揺動被支持部６６の内径寸法は、揺動支持軸４７の外径寸法よりも大きく設定されており、係合子側入力係合部６７の内径寸法は、入力部材側係合部２０の外径寸法よりも大きく設定されている。さらに、本例では、図６および図９に示すように、係合子１６の１対の押圧面４６が被押圧面３２に接触し、かつ、入力部材側係合部２０が係合子本体４４の幅方向中央部に位置する状態で、図１１に示すように、揺動支持軸４７と入力部材側係合部２０との互いに遠い側の端縁同士の間隔Ｗａが、揺動被支持部６６と係合子側入力係合部６７との互いに遠い側の端縁同士の間隔Ｗｂ以下になるように設定されている（Ｗａ≦Ｗｂ）。なお、これらの間隔ＷａとＷｂとの差Ｗｂ－Ｗａは、逆入力遮断クラッチ６の組み立てを容易にする観点からは、極力大きいことが望ましいが、その一方で、入力部材１２に回転トルクが入力された際に、直ちに係合子１６を径方向内側に移動させて非ロック状態を実現できるようにする観点からは、極力小さいことが望ましい。

１対のばね１７は、１対の係合子１６を構成する、１対の係合子本体４４の径方向内側面の幅方向両側部分同士の間に配置されている。つまり、１対のばね１７は、係合子本体４４の幅方向に関して出力部材側係合部２３から外れた位置に配置されている。１対のばね１７は、それぞれの係合子１６を径方向外側に向かう方向、すなわち、それぞれの係合子１６を被押圧面３２に近づける方向に弾性的に付勢している。これにより、入力部材１２および出力部材１３のそれぞれにトルクが加わっていない中立状態において、それぞれの係合子１６の押圧面４６が被押圧面３２に接触した状態となるようにしている。

本例では、それぞれのばね１７は、コイルばねにより構成されている。ばね１７の軸方向両側部分の内側に、１対の係合子１６の凸部５３を挿入することによって、ばね１７が１対の係合子本体４４の径方向内側面同士の間から脱落することを防止している。ただし、それぞれの係合子本体（中間プレート）の径方向内側面の幅方向両側部分に、径方向外側に凹入する凹部（切り欠き）を設け、該凹部にばねの両側の端部を挿入することによって、１対の係合子本体からのばねの脱落を防止することもできる。また、１対の係合子１６を被押圧面に近づける方向に弾性的に付勢する付勢手段としては、コイルばねに限らず、板ばねや皿ばねなどを使用することもできる。また、付勢手段は、係合子同士で挟み込むように配置する以外にも、係合子と出力部材との間に挟み込むように配置することもできる。

本例では、ばね１７の外径寸法は、係合子本体４４の軸方向の厚さ寸法よりも小さい。このため、ばね１７は、図１６および図１７に示すように、係合子本体４４の軸方向両側の側面よりも軸方向両側（外側）に突出しない。

なお、前記中立状態において、１対の係合子１６の押圧面４６が被押圧面３２に接触した状態となるようにしておく理由は、出力部材１３に回転トルクが逆入力された際に、直ちにロック状態が実現されるようにするためである。

本例の逆入力遮断クラッチ６は、その組立状態で、軸方向一方側に配置した入力部材１２の１対の入力部材側係合部２０を、１対の係合子１６の挿通孔５２（１対の本体プレート５４の貫通孔６１）および係合子側入力係合部６７に軸方向に挿入し、かつ、軸方向他方側に配置した出力部材１３の出力部材側係合部２３を、１対の係合子１６の係合子側出力係合部４８同士の間に軸方向に挿入している。すなわち、１対の係合子１６は、それぞれの係合子側出力係合部４８により、出力部材側係合部２３を径方向外側から挟むように配置されている。

次に、逆入力遮断クラッチ６の動作について説明する。

入力部材１２に入力側機構から回転トルクが入力されると、図７に示すように、係合子本体４４の挿通孔５２の内側で、入力部材側係合部２０が入力部材１２の回転方向（図７の例では時計方向）に回転する。すると、リンク部材４５が揺動支持軸４７を中心に揺動しつつ、入力部材側係合部２０によって、リンク部材４５を介して揺動支持軸４７が引っ張られることにより、１対の係合子１６が、被押圧面３２から遠ざかる方向（径方向内側）に移動する。これにより、１対の係合子１６の押圧面４６が被押圧面３２から離れるとともに、１対の係合子側出力係合部４８が出力部材１３の出力部材側係合部２３を径方向両側から挟持し、出力部材側係合部２３と１対の係合子側出力係合部４８とが、がたつきなく係合する。この結果、入力部材１２に入力された回転トルクが、１対の係合子１６を介して、出力部材１３に伝達され、出力部材１３から出力される。

特に、本例の構造では、それぞれの係合子１６が被押圧面３２から遠ざかる方向（径方向内側）に移動する際に、図６から図７へ、および、図２１（Ａ）から図２１（Ｂ）へと示すように、出力部材側係合部２３の短軸方向の先半部の長軸方向両側に位置する１対のガイド面２５により、係合子側出力係合部４８の幅方向両側に位置する１対の被ガイド面５１が案内されることで、係合子１６が幅方向に移動することを規制される。そして、図７および図２１（Ｂ）に示すように、係合子側出力係合部４８の底面５０が、出力部材側係合部２３の側面２４に面接触するとともに、係合子側出力係合部４８の１対の被ガイド面５１が、出力部材側係合部２３の１対のガイド面２５に面接触する。このため、本例の構造では、ロック状態の解除後に、係合子１６が幅方向にずれ動いて被押圧面３２に接触することを有効に防止できる。本例の構造では、係合子１６の径方向内側への移動の案内を、出力部材側係合部２３を用いて行えるため、該案内を行うためだけに用いられる別部品を組み込む構造に比べて、部品点数を少なくすることができる。

また、本例の構造では、係合子側出力係合部４８の１対の被ガイド面５１が、径方向内側に向かうほど互いの間隔が拡がる方向に傾斜した１対の凹曲面により構成され、かつ、出力部材側係合部２３の１対のガイド面２５が、１対の被ガイド面５１の１対の凹曲面に合致する１対の凸曲面により構成されている。このため、図２１（Ａ）に示すように、係合子１６が出力部材側係合部２３から径方向外側に離れた状態では、１対の被ガイド面５１と１対のガイド面２５との間に隙間が形成され、かつ、該隙間の大きさ（幅方向寸法）は、径方向外側に向かうほど大きくなっている。このため、本例の構造では、係合子１６が出力部材側係合部２３から径方向外側に離れた状態において、幅方向や回転方向に関する係合子１６の動きを適度に許容することができ、係合子１６に無理な力が加わることを有効に防止できる。

一方、出力部材１３に出力側機構から回転トルクが逆入力されると、図８に示すように、出力部材側係合部２３が、１対の係合子側出力係合部４８同士の内側で、出力部材１３の回転方向（図８の例では時計方向）に回転する。すると、出力部材側係合部２３の側面２４と１対のガイド面２５のうちの一方のガイド面２５との接続部である角部が、それぞれの係合子１６の係合子側出力係合部４８の底面５０を径方向外方に向けて押圧し、それぞれの係合子１６を、被押圧面３２に近づく方向（径方向外側）に移動させる。これにより、１対の係合子１６の押圧面４６が、被押圧面３２に対して押し付けられ、これらの押圧面４６が被押圧面３２に摩擦係合する。この結果、出力部材１３に逆入力された回転トルクが、他の部材に固定されて回転しないハウジング１５に伝わる（ハウジング１５により支承される）ことで完全に遮断されて入力部材１２に伝達されない。具体的には、押圧面４６が被押圧面３２に対して摺動（相対回転）しないように、１対の係合子１６が出力部材側係合部２３と被押圧面３２との間で突っ張り（挟持され）、出力部材１３がロックされる。

本例では、それぞれの係合子１６が、係合子本体４４の径方向外側面の円周方向に離隔した２箇所に押圧面４６を有しているため、出力部材１３に回転トルクが逆入力された際に、くさび効果によって、被押圧面３２と押圧面４６との摩擦係合力を大きくすることができる。ただし、係合子本体の径方向外側面の円周方向１箇所にのみ押圧面を有する構造を採用することもできる。また、本例では、押圧面４６を、１対の本体プレート５４のそれぞれに備えた凸面５８により構成しているが、押圧面を、中間プレートに形成することもできる。

本例の逆入力遮断クラッチ６によれば、入力部材１２への回転トルクの入力時に、ロック状態から非ロック状態への切り換えを円滑に行うことができる。この点について、本例と参考例を比較するための図２０（Ａ）および図２０（Ｂ）を参照しつつ説明する。

図２０（Ａ）（ａ）および図２０（Ａ）（ｂ）は、本例の構造に関して、入力部材１２の一部と係合子１６の一部との相互の位置関係を示している。より具体的には、図２０（Ａ）（ａ）は、図８に示したロック状態において、入力部材側係合部２０が係合子１６の幅方向中央部に位置し、かつ、リンク部材４５が最も径方向内側に寄った状態での、前記位置関係を示している。図２０（Ａ）（ｂ）は、図２０（Ａ）（ａ）に示した状態から、入力部材１２に回転トルクＴが入力されることにより、入力部材側係合部２０が入力部材１２の回転方向（図示の例では時計方向）に回転して、入力部材側係合部２０から揺動支持軸４７にリンク部材４５を介して並進荷重Ｆが作用し始めた状態での、前記位置関係を示している。

一方、図２０（Ｂ）（ａ）および図２０（Ｂ）（ｂ）は、リンク部材を備えておらず、一体に構成された係合子１６ｚが係合子側入力係合部６７ｚおよび係合子側出力係合部（図示省略）を有する参考例の構造に関して、入力部材１２ｚの一部と係合子１６ｚの一部との相互の位置関係を示している。より具体的には、図２０（Ｂ）（ａ）は、ロック状態において、入力部材側係合部２０ｚが係合子１６ｚの幅方向中央部に位置する状態での、前記位置関係を示している。図２０（Ｂ）（ｂ）は、図２０（Ｂ）（ａ）に示した状態から、入力部材１２ｚに回転トルクＴが入力されることにより、入力部材側係合部２０ｚが入力部材１２ｚの回転方向（図示の例では時計方向）に回転して、入力部材側係合部２０ｚが係合子１６ｚの係合子側入力係合部６７ｚに当接し、入力部材側係合部２０ｚと係合子側入力係合部６７ｚとの当接部Ｘに、回転トルクＴに基づく並進荷重Ｆｔが作用し始めた状態での、前記位置関係を示している。

参考例の構造では、図２０（Ｂ）（ｂ）に示したように、並進荷重Ｆｔの方向、すなわち、入力部材１２ｚから係合子１６ｚに作用する荷重の方向は、ロック状態から非ロック状態への切り換え時に係合子１６ｚが移動すべき方向である、係合子１６ｚの径方向（被押圧面に対する係合子１６ｚの遠近動方向）に対して大きく傾いている。

これに対して、本例の構造では、図２０（Ａ）（ｂ）に示したように、並進荷重Ｆの方向、すなわち、入力部材１２から係合子１６に作用する荷重の方向は、ロック状態から非ロック状態への切り換え時に係合子１６が移動すべき方向である、係合子１６の径方向（被押圧面３２に対する係合子１６の遠近方向）とほぼ平行な方向になっている。換言すれば、並進荷重Ｆの方向と係合子１６が移動すべき方向とのなす角度が、参考例の構造における、並進荷重Ｆｔの方向と係合子１６ｚが移動すべき方向とのなす角度よりも小さい。つまり、本例の構造では、入力部材１２に入力された回転トルクＴを、係合子１６を径方向内側に移動させるための荷重に効率よく変換することができる。このため、本例の構造によれば、入力部材１２への回転トルクの入力時に、ロック状態から非ロック状態への切り換えを円滑に行うことができる。

なお、本例の構造における、図２０（Ａ）（ａ）に示した状態での、入力部材側係合部２０の径方向内側面とリンク部材４５の係合子側入力係合部６７の内周面との間に存在する隙間Ｇの大きさ（前述した差Ｗｂ－Ｗａ）、および、参考例の構造における、図２０（Ｂ）（ａ）に示した状態での、入力部材側係合部２０ｚの径方向内側面と係合子側入力係合部６７ｚとの間に存在する隙間Ｇｚの大きさは、いずれも、逆入力遮断クラッチの組み立てを容易にする観点からは、極力大きいことが望ましいが、その一方で、入力部材１２、１２ｚに回転トルクが入力された際に、直ちに係合子１６、１６ｚを径方向内側に移動させて非ロック状態を実現できるようにする観点からは、極力小さいことが望ましい。したがって、逆入力遮断クラッチの製造においては、これらの事情を考慮して、隙間Ｇ、Ｇｚの大きさを、適度な大きさに調整する必要がある。

参考例の構造では、隙間Ｇｚの大きさを調整するために、係合子側入力係合部６７ｚのうち、入力部材側係合部２０ｚの径方向内側面と当接する部分を、切削加工で高精度に仕上げることが必要になる場合があり、この場合には、コストが嵩むと想定される。これに対して、本例の構造では、リンク部材４５の揺動被支持部６６と係合子側入力係合部６７との中心間距離を管理するだけで、隙間Ｇの大きさを調整することができ、リンク部材４５は、安価なプレス加工で造れるため、コストを抑えやすい。

＜パーキングロック機構の動作＞
本例の回転ロック装置４が適用されたパーキングロック機構を備える自動車において、シフトレバーがＰレンジに選択されると、アクチュエータ７により、逆入力遮断クラッチ６の入力部材１２が回転駆動される。入力部材１２に入力された回転は、出力部材１３に伝達され、図２２（Ｃ）から図２２（Ｂ）、図２２（Ａ）へと順番に示すように、係合部材８が反時計方向に回動することにより、または、図２３（Ｃ）から図２３（Ｂ）、図２３（Ａ）へと順番に示すように、係合部材８が時計方向に回動することにより、係合爪部１４が、ロックギヤ５の係合凹部９のうちのいずれかの係合凹部９に係合する（係合凹部９の内側に配置される）。これにより、パーキングロック機構が第１のモードに切り換わって、ロックギヤ５を支持固定する出力軸３の回転が制限される。換言すれば、係合爪部１４が係合凹部９の内側で変位できる程度のわずかな回転を除き、出力軸３の回転が阻止される。

回転ロック装置４が適用されたパーキングロック機構が第１のモードに切り換えられた状態で、駆動輪からトルクが逆入力されることに伴い、ロックギヤ５が回転しようとすると、係合凹部９の円周方向側面により係合爪部１４の側面が押される。係合爪部１４の側面が押されると、係合部材８に、該係合部材８を、係合凹部９と係合爪部１４との係合を外す方向に回動させようとする力が加わるが、この力は、逆入力遮断クラッチ６により支承され、係合部材８の回動は阻止される。この結果、駆動輪の回転も阻止される。

シフトレバーがＰレンジから他のレンジに選択されると、逆入力遮断クラッチ６の入力部材１２が回転駆動される。入力部材１２に入力された回転は、出力部材１３に伝達され、図２２（Ａ）から図２２（Ｂ）、図２２（Ｃ）へと順番に示すように、係合部材８が時計方向に回動することにより、または、図２３（Ａ）から図２３（Ｂ）、図２３（Ｃ）へと順番に示すように、係合部材８が反時計方向に回動することにより、係合凹部９と係合爪部１４との係合が外れる。これにより、パーキングロック機構が第２のモードに切り換わって、出力軸３の回転が許容される。

特に、本例の回転ロック装置４が適用されたパーキングロック機構は、ロックギヤ５から係合部材８に、ロックギヤ５の回転方向の力Ｆａが加わっている場合に、第１のモードから第２のモードに切り換える際に、係合部材８を、前記力Ｆａの方向と同じ方向に回動することで、係合爪部１４と係合凹部９との係合を外す機能を有する。

すなわち、自動車を傾斜した路面に駐車する際に、パーキングロック機構を作動させ、かつ、パーキングブレーキを作動させない状態で、サービスブレーキ（フットブレーキ）を解除すると、駆動輪が回転しようとすることに伴い、ロックギヤ５も回転しようとする。これにより、ロックギヤ５の係合凹部９の円周方向側面が、係合部材８の係合爪部１４の側面に強く押し付けられることで、係合部材８に回転方向の力Ｆａが加わる。本例の回転ロック装置４は、第１のモードから第２のモードに切り換える際に、係合部材８を、前記力Ｆａと同じ方向に回動する。

具体的には、自動車を下り坂に駐車し、駆動輪７１が路面Ｒ上を転がろうとすることに基づいて、該ロックギヤ５を正転方向（図２２（Ａ）～図２２（Ｃ）の反時計方向）に回転させようとする力Ｆａ´がロックギヤ５に加わっている場合、係合部材８には、図２２（Ａ）～図２２（Ｃ）の時計方向の力Ｆａが加わる。この場合、回転ロック装置４は、パーキングロック機構を第１のモードから第２のモードに切り換える際に、係合部材８を図２２（Ａ）～図２２（Ｃ）の時計方向に回動することで、係合爪部１４と係合凹部９との係合を外す。

これに対し、自動車を上り坂に駐車し、駆動輪７１が路面Ｒ上を転がろうとすることに基づいて、ロックギヤ５を逆転方向（図２３（Ａ）～図２３（Ｃ）の時計方向）に回転させようとする力Ｆａ´がロックギヤ５に加わっている場合、係合部材８には、図２３（Ａ）～図２３（Ｃ）の反時計方向の力Ｆａが加わる。この場合、回転ロック装置４は、パーキングロック機構を第１のモードから第２のモードに切り換える際に、係合部材８を図２３（Ａ）～図２３（Ｃ）の反時計方向に回動することで、係合爪部１４と係合凹部９との係合を外す。

パーキングロック機構を第１のモードから第２のモードに切り換える際に、係合部材８を、係合部材８に加わる回転方向の力Ｆａの方向と同じ方向に回動させることで、係合爪部１４と係合凹部９との係合を外す機能は、次のようにして実現することができる。

まず、アクチュエータ７により、係合部材８を予め定めた所定の方向に回動する。

前記所定の方向が、ロックギヤ５から係合部材８に加わる力Ｆａの方向と一致している場合には、アクチュエータ７の始動電流（突入電流）が、予め定めた所定の時間以下で、または、所定の電流値まで上昇することなく、低下し始める。この場合、そのまま係合部材８を前記所定の方向に回動することで、係合爪部１４と係合凹部９との係合を外す。前記所定の時間または電流値は、予め実験や計算により求めることができる。

前記所定の方向が、ロックギヤ５から係合部材８に加わる力Ｆａの方向とは逆方向である場合には、アクチュエータ７の始動電流が、前記所定の時間経過した後も、または、前記所定の電流値まで上昇しても、低下を開始しない。この場合、係合部材８を前記所定の方向とは逆方向に回動することで、係合爪部１４と係合凹部９との係合を外す。

あるいは、自動変速機２の出力軸３など、自動車の駆動系を構成する回転体に加わるトルクの方向を測定するセンサや、傾斜計などに基づいて、ロックギヤ５から係合部材８に加わる力Ｆａの方向を求め、該方向に係合部材８を回動させることで、係合爪部１４と係合凹部９との係合を外すこともできる。

なお、ロックギヤ５から係合部材８に回転方向の力が加わっていない場合、すなわち係合凹部９の円周方向側面が係合爪部１４の側面に押し付けられていない場合には、第１のモードから第２のモードに切り換える際に、係合部材８をいずれの方向に回転させてもよい。また、第２のモードから第１のモードに切り換える際の係合部材８の回動方向については、特に限定されない。

本例の回転ロック装置４は、アクチュエータ７により、逆入力遮断クラッチ６を介して、係合部材８を回動することで、パーキングロック機構を第１のモードと第２のモードとの間で切り換えることができる。このため、本例の回転ロック装置４を適用したパーキングロック機構は、特開２０１０－６２９９号公報に記載のパーキングロック機構のように、アクチュエータ１０１によりシャフト１０２を回転させることに基づいて、ディテントプレート１０３を揺動させ、さらに、ディテントプレート１０３の揺動に伴いロッド１０４を変位させることで、ロッド１０４の先端部に備えられたカム１０８によりパーキングロックポール１０６を揺動させる構造と比較して、簡易に構成することができる。なお、逆入力遮断クラッチ６は、予め組み立てておく（アセンブリ化しておく）ことができる。

また、本例の回転ロック装置４は、ロックギヤ５から係合部材８に回転方向の力Ｆａが加わっている場合に、パーキングロック機構を第１のモードから第２のモードに切り換える際に、係合部材８を、前記力Ｆａの方向と同じ方向に回動することで、係合爪部１４と係合凹部９との係合を外す機能を有するため、係合部材８を回動駆動するアクチュエータ７の出力を小さく抑えることができる。具体的には、図２４に示すように、第１のモードから第２のモードに切り換える際に、係合部材８を前記力Ｆａの方向と同じ方向に回動した場合、係合部材８を力Ｆａの方向と逆方向に回動した場合と比較して半分程度、かつ、ロックギヤ５から係合部材８に加わる回転方向の力Ｆａの半分未満の力（トルク）で、係合凹部９と係合爪部１４との係合を外すことができる。したがって、アクチュエータ７の消費電力を低減したり、アクチュエータ７を小型化したりすることができる。

ただし、本例の逆入力遮断クラッチ６を含んで回転ロック装置４を構成する場合には、ロックギヤ５から係合部材８に回転方向の力Ｆａが加わっている場合に、係合部材８を、前記力Ｆａの方向と逆方向に回動することで、係合爪部１４と係合凹部９との係合を外すこともできる。すなわち、パーキングロック機構を第１のモードから第２のモードに切り換える際に、係合部材８を、前記力Ｆａの方向にかかわらず、予め定められた所定の方向にのみ回動することで、係合爪部１４と係合凹部９との係合を外すように構成することもできる。なお、図２４から明らかなとおり、係合部材８を前記力Ｆａと逆方向に回動した場合でも、ロックギヤ５から係合部材８に加わる回転方向の力Ｆａよりも小さい力で、係合爪部１４と係合凹部９との係合を外すことができる。

なお、本発明を実施する場合には、ハウジング１５を構成する入力側ハウジング素子２７と出力側ハウジング素子２６とを結合するための結合手段や、係合子本体を構成する１対の本体プレート５４と１対の中間プレート５５とを結合するための結合手段として、リベット、溶接、接着、かしめなどの、他の結合手段を用いることもできる。また、このような他の結合手段として、互いに結合すべき複数の部品の互いに整合する位置に形成された通孔に結合軸の軸方向中間部を挿通し、かつ、該結合軸の軸方向両端部に止め輪を係止し、これらの止め輪によって前記複数の部品を軸方向両側から挟持する結合手段を採用することもできる。

また、１対の本体プレートのうちの一方の本体プレートに、１対の中間プレートのうちの一方の中間プレートを一体に形成し、１対の本体プレートのうちの他方の本体プレートに、１対の中間プレートのうちの他方の中間プレートを一体に形成することもできる。あるいは、１対の本体プレートのうちの一方の本体プレートに、１対の中間プレートの両方を一体に形成することもできる。これらの構成を採用すれば、係合子本体を１対の本体プレートの組み合わせによって構成することができ、部品点数を少なくすることができる。

なお、第１例の回転ロック装置４を構成する逆入力遮断クラッチ６では、１対の本体プレート５４同士の間に１つのリンク部材４５を揺動可能に配置する構成を採用しているが、本発明を実施する場合、１枚の本体プレートの厚さ方向両側に１対のリンク部材を揺動可能に配置する（入力側係合部により、該１対のリンク部材を介して、係合子本体を径方向内側に引っ張る）構成を採用することもできる。

本例の回転ロック装置４では、係合子１６として１対の係合子１６が備えられているが、係合子１６が被押圧面３２に対して遠近方向に移動することが可能な構造を有する限り、１個の係合子を備え、該１個の係合子を１個の入力側係合部と組み合わせた構造を採用することも可能である。また、３個以上の係合子を備え、これらの係合子を対応する入力側係合部と組み合わせた構造も採用することが可能である。これらの構造も本発明の範囲に含められる。

［第２例］
本発明の実施の形態の第２例について、図２５を用いて説明する。本例の回転ロック装置４ａが適用されたパーキングロック機構は、逆入力遮断クラッチ６の出力部材１３の出力トルクを増大して係合部材８に伝達する減速機６８を備える。このため、本例によれば、第１例と比較して、アクチュエータ７の小型化をより図りやすい。

なお、減速機６８の構造については、特に限定されず、歯車式や摩擦ローラ式の減速により構成することができる。また、本発明の回転ロック装置は、アクチュエータの出力軸と、逆入力遮断クラッチの入力部材との間に減速機を配置するように構成することもできる。第２例のその他の部分の構成および作用効果は、第１例と同様である。

［第３例］
本発明の実施の形態の第３例について、図２６～図３１を用いて説明する。本例では、回転ロック装置４を構成する逆入力遮断クラッチ６ａの構造が、第１例における逆入力遮断クラッチ６の構造と異なる。

逆入力遮断クラッチ６ａは、入力部材１２ａと、出力部材１３ａと、被押圧部材６９と、１対の係合子１６ａとを備える。

入力部材１２ａは、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力される。入力部材１２ａは、図２８に示すように、入力軸部１８ａと、１対の入力部材側係合部２０ａとを有する。入力軸部１８ａは、その基端部がアクチュエータ７（図１参照）の出力軸に接続される。１対の入力部材側係合部２０ａは、入力軸部１８ａの先端面の直径方向反対側２箇所位置から軸方向に伸長した凸部により構成されている。

出力部材１３ａは、係合部材８（図１参照）に接続され、回転トルクを出力する。出力部材１３ａは、入力部材１２ａと同軸に配置されており、図２９に示すように、出力軸部２２ａと、出力部材側係合部２３ａとを有する。出力軸部２２ａは、その基端部が前記出力側機構の入力部に接続される。出力部材側係合部２３ａは、略長円柱状で、出力軸部２２ａの先端面の中央部から軸方向に伸長している。出力部材側係合部２３ａは、１対の入力部材側係合部２０ａの間部分に配置される。

被押圧部材６９は、図２７に示すように、円環状に構成されており、ハウジングなどの図示しない他の部材に固定されて、その回転が拘束されている。被押圧部材６９は、入力部材１２ａおよび出力部材１３ａと同軸に、かつ、１対の入力部材側係合部２０ａおよび出力部材側係合部２３ａの径方向外側に配置されている。被押圧部材６９は、その内周面に円筒状の凹面である被押圧面３２ａを有する。

それぞれの係合子１６ａは、略半円形板状に構成されており、被押圧部材６９の径方向内側に配置されている。それぞれの係合子１６ａは、被押圧面３２ａに対向する径方向外側面を部分円筒状の凸面である押圧面４６ａとしており、互いに対向する径方向内側面を、後述する係合子側出力係合部４８ａが形成された部分以外が平坦面となった底面７０としている。押圧面４６ａの曲率半径は、被押圧面３２ａの曲率半径以下である。

１対の係合子１６ａを被押圧部材６９の径方向内側に配置した状態で、被押圧面３２ａと押圧面４６ａとの間部分、および、底面７０同士の間部分の少なくとも一方に隙間が存在するように、被押圧部材６９の内径寸法および係合子１６ａの径方向寸法が規制されている。

係合子１６ａは、係合子側入力係合部６７ａと、係合子側出力係合部４８ａとを有する。係合子側入力係合部６７ａは、係合子１６ａの径方向中間部を軸方向に貫通する孔により構成されている。係合子側入力係合部６７ａは、入力部材側係合部２０ａを緩く挿入できる大きさを有する。このため、入力部材側係合部２０ａは、係合子側入力係合部６７ａ（係合子１６ａ）に対し、入力部材１２ａの回転方向に関する変位が可能であり、係合子側入力係合部６７ａ（係合子１６ａ）は、入力部材側係合部２０ａに対し、係合子１６ａの径方向の変位が可能である。係合子側出力係合部４８ａは、係合子１６ａの底面７０の幅方向中央部から径方向外方に向けて凹んだ略矩形状の凹部により構成されている。係合子側出力係合部４８ａは、その内側に出力部材側係合部２３ａの短軸方向の先半部を配置できる大きさを有する。

逆入力遮断クラッチ６ａは、その組立状態で、軸方向一方側に配置した入力部材１２ａの１対の入力部材側係合部２０ａを、１対の係合子１６ａの係合子側入力係合部６７ａに軸方向に挿入し、かつ、軸方向他方側に配置した出力部材１３ａの出力部材側係合部２３ａを、それぞれの係合子１６ａの係合子側出力係合部４８ａ同士の間に軸方向に挿入している。すなわち、１対の係合子１６ａは、係合子側出力係合部４８ａにより、出力部材側係合部２３ａを径方向外側から挟むように配置されている。

＜逆入力遮断クラッチ６ａの動作説明＞
入力部材１２ａにアクチュエータ７（図１参照）から回転トルクが入力されると、図３０に示すように、係合子側入力係合部６７ａの内側で、入力部材側係合部２０ａが入力部材１２ａの回転方向（図３０の例では時計方向）に回転する。すると、入力部材側係合部２０ａの径方向内側面が係合子側入力係合部６７ａの内面を径方向内方に向けて押圧し、１対の係合子１６ａを、被押圧面３２ａから遠ざかる方向に移動させる。この結果、１対の係合子側出力係合部４８ａが出力部材１３ａの出力部材側係合部２３ａを径方向両側から挟持し、出力部材側係合部２３ａと１対の係合子側出力係合部４８ａとが、がたつきなく係合する。この結果、入力部材１２ａに入力された回転トルクが、１対の係合子１６ａを介して、出力部材１３ａに伝達され、出力部材１３ａから出力される。

一方、出力部材１３ａに、ロックギヤ５（図１参照）から、係合部材８を介して、回転トルクが逆入力されると、図３１に示すように、出力部材側係合部２３ａが、１対の係合子側出力係合部４８ａ同士の内側で、出力部材１３ａの回転方向（図３１の例では時計方向）に回転する。すると、出力部材側係合部２３ａの角部が係合子側出力係合部４８ａの底面を径方向外方に向けて押圧し、１対の係合子１６ａを、被押圧面３２ａに近づく方向にそれぞれ移動させる。この結果、１対の係合子１６ａの押圧面４６ａが、被押圧部材６９の被押圧面３２ａに対して押し付けられる。この結果、出力部材１３ａに逆入力された回転トルクが、図示しない他の部材に固定された被押圧部材６９に伝わることで完全に遮断されて入力部材１２ａに伝達されなくなる。

本例の逆入力遮断クラッチ６ａは、第１例における逆入力遮断クラッチ６よりも簡易に構成することができ、コストを抑えることができる。第３例のその他の部分の構成および作用効果は、第１例と同様である。

本発明の回転ロック装置は、パーキングロック機構に限らず、ロープなどを巻き取るウィンチのストッパなど、種々の用途に適用することができる。

１ 駆動源
２ 自動変速機
３ 出力軸
４、４ａ 回転ロック装置
５ ロックギヤ
６、６ａ 逆入力遮断クラッチ
７ アクチュエータ
８ 係合部材
９ 係合凹部
１０ 凸部
１１ ギヤ部
１２、１２ａ、１２ｚ 入力部材
１３、１３ａ 出力部材
１４ 係合爪部
１５ ハウジング
１６、１６ａ、１６ｚ 係合子
１７ ばね
１８、１８ａ 入力軸部
１９ 入力腕部
２０、２０ａ、２０ｚ 入力部材側係合部
２１ 支持孔
２２、２２ａ 出力軸部
２３、２３ａ 出力部材側係合部
２４ 側面
２５ ガイド面
２６ 出力側ハウジング素子
２７ 入力側ハウジング素子
２８ ボルト
２９ 外径側筒部
３０ 内径側筒部
３１ 側板部
３２、３２ａ 被押圧面
３３ 出力側インロー嵌合面
３４ ねじ孔
３５ 出力側軸受嵌合面
３６ 外径側筒部
３７ 内径側筒部
３８ 側板部
３９ 入力側インロー嵌合面
４０ 通孔
４１ 入力側軸受嵌合面
４２ 入力側軸受
４３ 出力側軸受
４４ 係合子本体
４５ リンク部材
４６、４６ａ 押圧面
４７ 揺動支持軸
４８、４８ａ 係合子側出力係合部
４９ 内部空間
５０ 底面
５１ 被ガイド面
５２ 挿通孔
５３ 凸部
５４ 本体プレート
５５ 中間プレート
５６ ボルト
５７ ナット
５８ 凸面
５９ 支持孔
６０ プレート側出力係合部
６１ 貫通孔
６２ 通孔
６３ 位置決め孔
６４ 通孔
６５ 位置決め孔
６６ 揺動被支持部
６７、６７ａ、６７ｚ 係合子側入力係合部
６８ 減速機
６９ 被押圧部材
７０ 底面
７１ 駆動輪
１００ パーキングロック機構
１０１ アクチュエータ
１０２ シャフト
１０３ ディテントプレート
１０４ ロッド
１０５ パーキングロックギヤ
１０６ パーキングロックポール
１０７ ディテントスプリング
１０８ カム
１０９ パーキング用係止溝
１１０ ころ
１１１ 爪部
１１２ 係合凹部

Claims (9)

1. 円周方向複数箇所に係合凹部を有するロックギヤと、
   互いに同軸に配置された入力部材および出力部材を有し、前記入力部材に回転トルクが入力された場合に、該入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力された場合に、該出力部材に逆入力された回転トルクを前記入力部材に伝達しない逆入力遮断クラッチと、および、
   前記係合凹部に係合可能な係合爪部を有し、前記出力部材により回動駆動可能に支持された係合部材と、
   を備え、
   前記入力部材を回転駆動することに基づいて、前記出力部材により前記係合部材を、該出力部材の中心軸を中心に回動させるか、または、該出力部材と該係合部材との間に備えられた減速機の出力軸を中心に回動させることで、前記係合爪部と前記係合凹部とが係合し、前記ロックギヤの回転が制限される第１のモードと、前記係合爪部と前記係合凹部との係合が外れ、前記ロックギヤの回転が許容される第２のモードとを切り換える、
   回転ロック装置。
2. 前記入力部材を回転駆動するアクチュエータを備える、請求項１に記載の回転ロック装置。
3. 前記第１のモードから前記第２のモードに切り換える際に、前記係合部材を、前記ロックギヤから前記係合部材に加わる力の方向と同じ方向に回動することで、前記係合爪部と前記係合凹部との係合を外す、請求項２に記載の回転ロック装置。
4. 前記逆入力遮断クラッチは、
   入力部材側係合部を有する前記入力部材と、
   出力部材側係合部を有する前記出力部材と、
   被押圧面を有する被押圧部材と、および、
   前記被押圧面に対向する押圧面、前記入力部材側係合部と係合する係合子側入力係合部、および、前記出力部材側係合部と係合する係合子側出力係合部を有する係合子と、
   を備え、
   前記係合子は、
   前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力部材側係合部と前記係合子側入力係合部との係合に基づいて、前記押圧面を前記被押圧面から離隔させるように変位して、前記係合子側出力係合部を前記出力部材側係合部に係合させることにより、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、
   前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記出力部材側係合部と前記係合子側出力係合部との係合に基づいて、前記押圧面を前記被押圧面に押し付けるように変位して、前記押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させることにより、前記出力部材に逆入力された回転トルクを前記入力部材に伝達しないものである、
   請求項１～３のいずれかに記載の回転ロック装置。
5. それぞれが前記係合子からなる１対の係合子を備え、該１対の係合子は、前記出力部材側係合部を径方向外側から挟むように配置される、請求項４に記載の回転ロック装置。
6. 前記係合子は、
   前記押圧面、前記係合子側出力係合部、および、前記被押圧面に対する前記押圧面の遠近動方向に関して前記係合子側入力係合部よりも前記被押圧面に近い側に位置する揺動支持部を有する係合子本体と、および、
   前記係合子側入力係合部、および、前記揺動支持部に対し揺動可能に支持された揺動被支持部を有するリンク部材と、
   を備える、
   請求項４または５に記載の回転ロック装置。
7. 前記係合子本体は、
   前記係合子側出力係合部を構成するプレート側出力係合部をそれぞれ有し、前記被押圧面の軸方向に関して重畳して配置され、かつ、互いに結合された１対の本体プレートと、および、
   前記揺動支持部を構成し、軸方向両側部分が前記１対の本体プレートのそれぞれに支持された揺動支持軸と、
   を備え、
   前記リンク部材が、前記１対の本体プレート同士の間に配置されている、
   請求項６に記載の回転ロック装置。
8. 前記係合子本体は、前記１対の本体プレート同士の間に挟持された少なくとも１個の中間プレートを備える、請求項７に記載の回転ロック装置。
9. 駆動源の回転トルクを駆動輪に伝達する駆動系に組み込んで使用される、請求項２、請求項３、および、請求項２または３を引用する請求項４～８のいずれかに記載の回転ロック装置。

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