JP2023085990A - 逆入力遮断クラッチ - Google Patents

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永生 土肥
Eisei Doi
祥平 金子
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Abstract

【課題】耐久性を良好に確保することができる構造を実現する。【解決手段】逆入力遮断クラッチは、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間から軸方向にはみ出した潤滑剤を、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間に戻すための戻し部39を有する。【選択図】図7

Description

本発明は、入力部材に入力される回転トルクを出力部材に伝達するのに対し、出力部材に逆入力される回転トルクを完全に遮断して入力部材に伝達しないか、またはその一部のみを入力部材に伝達して残部を遮断する、逆入力遮断クラッチに関する。
逆入力遮断クラッチは、駆動源などの入力側機構に接続される入力部材と、減速機構などの出力側機構に接続される出力部材とを備えており、入力部材に入力される回転トルクを出力部材に伝達するのに対し、出力部材に逆入力される回転トルクを完全に遮断して入力部材に伝達しないかまたはその一部のみを入力部材に伝達して残部を遮断する機能を有する。
逆入力遮断クラッチは、出力部材に逆入力される回転トルクを遮断する機構の相違により、ロック式とフリー式に大別される。ロック式の逆入力遮断クラッチは、出力部材に回転トルクが逆入力された際に、出力部材の回転を防止する機構を備える。一方、フリー式の逆入力遮断クラッチは、出力部材に回転トルクが入力された際に、出力部材を空転させる機構を備える。ロック式の逆入力遮断クラッチとフリー式の逆入力遮断クラッチとのいずれを使用するかについては、逆入力遮断クラッチを組み込む装置の用途などによって適宜決定される。
国際公開第2019/026794号パンフレットには、ロック式の逆入力遮断クラッチが記載されている。国際公開第2019/026794号パンフレットに記載の逆入力遮断クラッチは、入力側係合部を有する入力部材と、出力側係合部を有する出力部材と、被押圧面を有する被押圧部材と、入力側被係合部、出力側被係合部および押圧面を有する係合子とを備える。前記係合子は、前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合することに基づいて、前記被押圧面から離れる方向に変位し、前記出力側被係合部を前記出力側係合部に係合させて、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達する。これに対し、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記係合子は、前記出力側係合部が前記出力側被係合部に係合することに基づいて、前記押圧面を前記被押圧面に押し付け、前記押圧面と前記被押圧面とを摩擦係合させる。これにより、前記出力部材に逆入力された回転トルクを完全に遮断して前記入力部材に伝達しないか、または、その一部のみを前記入力部材に伝達して残部を遮断する。
国際公開第2019/026794号パンフレットに記載の逆入力遮断クラッチによれば、軸方向寸法を短くでき、かつ、部品点数を抑えることができる。
国際公開第2019/026794号パンフレット
国際公開第2019/026794号パンフレットに記載の逆入力遮断クラッチは、耐久性を向上させる面からは、さらなる改良の余地がある。
すなわち、被押圧部材の被押圧面と係合子の押圧面との間には、グリースなどの潤滑剤が塗布される。入力部材に回転トルクが入力されると、前記係合子は、前記押圧面を前記被押圧面に対し近接対向させる(微小隙間を介して対向させる)か、あるいは、前記押圧面を前記被押圧面に対し摺動させながら、前記入力部材の回転中心を中心として回転する。このとき、前記被押圧面と前記押圧面との間に存在する前記潤滑剤が軸方向に押し出される。この結果、前記潤滑剤が、前記被押圧面と前記押圧面との間で不足または枯渇してしまい、耐久性が損なわれる可能性がある。
本発明は、上述のような事情に鑑みて、耐久性を良好に確保することができる、逆入力遮断クラッチの構造を実現することを目的としている。
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチは、被押圧部材と、入力部材と、出力部材と、係合子と、潤滑剤と、戻し部とを備える。
前記被押圧部材は、内周面に被押圧面を有する。
前記入力部材は、前記被押圧面の径方向内側に配置された少なくとも1個の入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置されている。
前記出力部材は、前記被押圧面の径方向内側において前記入力側係合部よりも径方向内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置されている。
前記係合子は、前記被押圧面に対向する押圧面と、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部と、前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部とを有し、前記被押圧面に対する遠近方向である第1方向の移動を可能に配置されている。
前記潤滑剤は、前記被押圧面と前記押圧面とを潤滑する。
前記戻し部は、前記被押圧面と前記押圧面との間から軸方向にはみ出した前記潤滑剤を、前記被押圧面と前記押圧面との間に戻す。
また、前記係合子は、前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合することに基づいて、前記第1方向に関して前記被押圧面から離れる方向に変位し、前記出力側被係合部を前記出力側係合部に係合させることで、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記出力側被係合部に前記出力側係合部が係合することに基づいて、前記押圧面を前記被押圧面に押し付けて、前記押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させる。
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチでは、前記戻し部は、径方向外側面に、少なくとも周方向一方側の端部に開口する凹部を有することができ、かつ、前記入力部材に回転トルクが入力されると、径方向外側面のうちで前記凹部から外れた部分を前記被押圧面に摺接または近接対向させ、かつ、前記入力部材の回転中心を中心に回転することができる。
前記凹部は、周方向一方側から周方向他方側に向かうほど軸方向幅が小さくなる回収部を有することができる。
この場合、前記回収部は、周方向他方側の端部に開口することができる。
若しくは、前記凹部は、前記回収部の軸方向他方側の端部から軸方向他方側に向けて伸長し、かつ、周方向にわたり軸方向幅が変化しない直線部を有することができる。
または、前記凹部は、周方向一方側部分に、周方向一方側から周方向他方側に向かうほど軸方向幅が小さくなる第1の回収部を有し、かつ、周方向他方側部分に、周方向他方側から周方向一方側に向かうほど軸方向幅が小さくなる第2の回収部を有することができる。
この場合、前記凹部は、前記第1の回収部の軸方向他方側の端部と前記第2の回収部の軸方向一方側の端部とを接続し、かつ、周方向にわたり軸方向幅が変化しない直線部を有することができる。
前記凹部のうち、軸方向幅が最も小さい部分における軸方向幅を、前記被押圧面と前記押圧面との軸方向に関する接触幅以下とする、好ましくは前記被押圧面と前記押圧面との軸方向に関する接触幅よりも小さくすることができ、かつ、前記凹部のうち、軸方向幅が最も大きい部分における軸方向幅を、前記被押圧面と前記押圧面との軸方向に関する接触幅よりも大きくすることができる。
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチでは、前記戻し部を、前記係合子の径方向外側面の周方向中央部と、前記被押圧面との間に配置することができる。
あるいは、本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチでは、前記戻し部を、前記係合子の径方向外側面の周方向端部と、前記被押圧面との間に配置することができる。
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチでは、前記係合子が、前記戻し部を有することができる。
あるいは、本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチは、前記戻し部を有する補助部品をさらに備えることができる。
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチでは、前記補助部品を、前記係合子に装着することができる。
前記係合子は、前記補助部品の周方向端部に対向する段差面を有することができる。
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチは、前記補助部品を、前記被押圧面に近づく方向に向けて弾性的に付勢する弾性部材をさらに備えることができる。
前記弾性部材は、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との間に弾性的に挟持することができる。
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチでは、前記補助部品を、前記入力部材に装着することができる。
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチでは、前記係合子は、径方向外側面の周方向に離隔した2箇所位置に前記押圧面を有することができる。
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチは、前記係合子を1対備え、かつ、前記入力部材が、前記入力側係合部を1対有することができる。
本発明の一態様に係る逆入力遮断クラッチによれば、耐久性を良好に確保することができる。
図1は、実施の形態の第1例に係る逆入力遮断クラッチを、出力部材側から見た端面図である。 図2は、図1のA-A断面である。 図3は、図1のB-B断面である。 図4は、入力部材を省略して示す、図2のC-C断面図である。 図5は、入力部材に回転トルクが入力された状態で示す、図2のD-D断面図である。 図6は、出力部材に回転トルクが逆入力された状態で示す、図2のD-D断面図である。 図7は、実施の形態の第1例に係る逆入力遮断クラッチを、ハウジングおよび入力部材を省略して示す斜視図である。 図8は、入力部材を取り出して示す斜視図である。 図9は、出力部材を取り出して示す斜視図である。 図10(A)は、補助部品を径方向外側から見た斜視図であり、図10(B)は、補助部品を径方向内側から見た斜視図である。 図11は、実施の形態の第1例に関する変形例の第1例を示す、図10に相当する図である。 図12は、実施の形態の第1例に関する変形例の第2例を示す、図10(A)に相当する図である。 図13は、実施の形態の第2例を示す、図4のE-E断面に相当する図であって、(A)は、入力部材に回転トルクが入力された状態で示す図であり、(B)は、出力部材に回転トルクが逆入力された状態で示す図である。 図14は、実施の形態の第3例に係る逆入力遮断クラッチを示す、図4に相当する図である。 図15は、実施の形態の第3例に係る逆入力遮断クラッチを示す、要部拡大図である。 図16は、実施の形態の第4例に係る逆入力遮断クラッチを示す、図4に相当する図である。 図17は、実施の形態の第4例に係る逆入力遮断クラッチから、係合子、補助部品および弾性部材を取り出して示す斜視図である。 図18は、実施の形態の第4例に係る逆入力遮断クラッチから、係合子、補助部品および弾性部材を取り出して、軸方向から見た端面図である。 図19は、実施の形態の第4例に係る逆入力遮断クラッチから、係合子および弾性部材を取り出して、軸方向から見た端面図である。 図20(A)は、補助部品を径方向外側から見た斜視図であり、図20(B)は、補助部品を径方向内側から見た斜視図である。 図21は、実施の形態の第4例に係る逆入力遮断クラッチを示す分解斜視図である。 図22は、実施の形態の第5例に係る逆入力遮断クラッチを示す斜視図である。 図23は、実施の形態の第5例に係る逆入力遮断クラッチを、入力部材側から見た端面図である。 図24は、図23のF-F断面図である。 図25は、実施の形態の第5例に係る逆入力遮断クラッチを、ハウジングを省略して示す斜視図である。 図26は、補助部品を取り出して示す斜視図である。 図27は、実施の形態の第6例に係る逆入力遮断クラッチを示す斜視図である。 図28は、実施の形態の第6例に係る逆入力遮断クラッチを、ハウジングを省略して示す斜視図である。 図29は、実施の形態の第6例に係る逆入力遮断クラッチを、ハウジングを省略し、かつ、入力部材側から見た端面図である。 図30は、図29のG-G断面図である。 図31は、補助部品を取り出して示す斜視図である。 図32は、実施の形態の第7例に係る逆入力遮断クラッチを示す断面図である。 図33は、実施の形態の第7例に係る逆入力遮断クラッチを、入力側ハウジング素子を省略し、かつ、入力部材側から見た端面図である。 図34は、入力部材に回転トルクが入力された状態で示す、図33と同様の図である。 図35は、出力部材に回転トルクが逆入力された状態で示す、図33と同様の図である。 図36は、実施の形態の第7例に係る逆入力遮断クラッチから、入力部材、1対の係合子、および1対の付勢部材を取り出して示す、斜視図である。
[実施の形態の第1例]
図1~図10(B)は、本発明の実施の形態の第1例を示している。なお、軸方向、径方向および周方向とは、特に断らない限り、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向および周方向をいう。本例において、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向および周方向は、入力部材3の軸方向、径方向および周方向と一致し、かつ、出力部材4の軸方向、径方向および周方向と一致する。また、軸方向片側とは、入力部材3側(図2および図3の右側)をいい、軸方向他側とは、出力部材4側(図2および図3の左側)をいう。
<逆入力遮断クラッチの構造の説明>
本例の逆入力遮断クラッチ1は、被押圧部材を構成するハウジング2と、入力部材3と、出力部材4と、1対の係合子5とを備える。逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3に入力される回転トルクを出力部材4に伝達するのに対し、出力部材4に逆入力される回転トルクは完全に遮断して入力部材3に伝達しないか、またはその一部のみを入力部材3に伝達して残部を遮断する逆入力遮断機能を有する。
ハウジング2は、固定の部分に支持固定されて、逆入力遮断クラッチ1の使用時にも回転しない。また、ハウジング2は、軸方向中間部内周面に、円筒面状の凹面である被押圧面6を有する。
本例では、ハウジング2は、入力側ハウジング素子7と、出力側ハウジング素子8とを備える。
出力側ハウジング素子8は、段付円筒面状の内周面を有する。すなわち、出力側ハウジング素子8の内周面は、軸方向他側の小径円筒面部9と、軸方向片側の大径円筒面部10とを、軸方向片側を向いた接続面部11により接続してなる。本例では、大径円筒面部10により、被押圧面6が構成されている。
また、出力側ハウジング素子8は、小径円筒面部9の軸方向他側の端部に、径方向内側に向けて突出した内向フランジ部12を有する。さらに、出力側ハウジング素子8は、軸方向片側の端部外周面に、円筒面状の内径側嵌合面部13を有する。
入力側ハウジング素子7は、中空円形板状の側板部14と、該側板部14の径方向外側の端部から軸方向他側に向けて全周にわたり折れ曲がった大径円筒部15と、側板部14の径方向中間部から軸方向片側に向けて全周にわたり突出した小径円筒部16とを備える。大径円筒部15は、内周面に外径側嵌合面部17を有する。
本例では、出力側ハウジング素子8の内径側嵌合面部13を、入力側ハウジング素子7の外径側嵌合面部17にがたつきなく嵌合(インロー嵌合)させることにより、入力側ハウジング素子7と出力側ハウジング素子8とが径方向に位置決めされる。このように、入力側ハウジング素子7と出力側ハウジング素子8とを径方向に位置決めした状態で、入力側ハウジング素子7と出力側ハウジング素子8とは、図示しないボルトなどの結合部材により互いに結合されてハウジング2を構成する。ハウジング2は、前記固定の部分に備えられた通孔に挿通したボルトを、出力側ハウジング素子8の軸方向他側面に開口するねじ孔18に螺合することにより、前記固定の部分に支持固定される。
入力部材3は、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力される。入力部材3は、入力軸部19と、入力フランジ部20と、1対の入力側係合部21とを有する。
入力軸部19は、円筒形状を有する。
入力フランジ部20は、入力軸部19の軸方向他側の端部外周面から径方向外側に向けて全周にわたり突出している。
1対の入力側係合部21は、入力フランジ部20の軸方向他側面の径方向反対側2箇所位置から軸方向他側に向けて突出している。1対の入力側係合部21は、入力部材3の径方向に関して互いに離隔している。このため、それぞれの入力側係合部21は、入力フランジ部20の軸方向他側面のうち、入力部材3の回転中心Oから径方向外側に外れた部分に配置されている。
1対の入力側係合部21は、軸方向から見て略扇形で、かつ、周方向に関して対称な端面形状を有する。具体的には、本例では、それぞれの入力側係合部21の径方向内側面21aは、互いに平行な平坦面により構成されており、かつ、それぞれの入力側係合部21の径方向外側面21bは、入力フランジ部20の外周面と同じ円筒面状の輪郭形状を有する。また、それぞれの入力側係合部21の1対の周方向側面21cは、径方向外側に向かうほど互いに離れる方向に傾斜した平坦面により構成されている。
入力部材3は、ラジアル転がり軸受22により、ハウジング2の入力側ハウジング素子7の内側に回転自在に支持されている。ラジアル転がり軸受22の外輪22aは、入力側ハウジング素子7の小径円筒部16にがたつきなく内嵌され、かつ、側板部14の軸方向片側面の径方向内側部分と、小径円筒部16の軸方向片側部分に係止された止め輪23aとの間で軸方向に挟持されている。ラジアル転がり軸受22の内輪22bは、入力部材3の入力軸部19の軸方向他側の端部にがたつきなく外嵌され、かつ、入力フランジ部20の軸方向片側面と、入力軸部19の軸方向中間部外周面に係止された止め輪23bとの間で軸方向に挟持されている。
なお、図示の例では、ラジアル転がり軸受22は、転動体22cとして玉を使用した玉軸受により構成されている。ただし、入力部材3を支持するためのラジアル転がり軸受は、転動体として円すいころを使用した円すいころ軸受や円筒ころを使用したころ軸受により構成することもできる。
入力部材3をハウジング2の内側に回転自在に支持した状態で、1対の入力側係合部21は、被押圧面6の径方向内側に配置される。
出力部材4は、減速機構などの出力側機構に接続され、回転トルクを出力する。出力部材4は、入力部材3と同軸に配置されている。本例では、出力部材4は、出力軸部24と、出力フランジ部25と、出力側係合部26と、小径軸部27とを有する。
出力軸部24は、段付円柱形状を有する。すなわち、出力軸部24は、軸方向片側の大径部24aと軸方向他側の小径部24bとを、軸方向片側に向かうほど外径が大きくなる円すい台状の接続部24cにより接続してなる。
出力フランジ部25は、出力軸部24の大径部24aの軸方向片側の端部外周面から径方向外側に向けて全周にわたり突出している。
出力側係合部26は、出力フランジ部25の軸方向片側面の中央部から軸方向片側に向けて突出している。出力側係合部26は、カム機能を有する。すなわち、出力部材4の回転中心Oから出力側係合部26の外周面までの距離は、周方向に関して一定でない。
本例では、出力側係合部26は、軸方向から見て略矩形の端面形状を有する。すなわち、出力側係合部26の外周面は、1対の長辺部26aと、1対の短辺部26bとからなる。出力側係合部26は、出力部材4の回転中心Oを通り、かつ、1対の長辺部26aに直交する仮想平面に対して面対称であり、かつ、出力部材4の回転中心Oを通り、かつ、1対の長辺部26aに平行な仮想平面に対して面対称である。なお、1対の短辺部26bは、出力フランジ部25の外周面と同一の円筒面上に存在している。
小径軸部27は、円柱形状を有し、出力フランジ部25の軸方向片側面の中央部から軸方向片側に向けて突出している。小径軸部27の軸方向長さは、出力側係合部26の軸方向長さよりも大きくなっている。したがって、小径軸部27の先端部(軸方向片側の端部)は、出力側係合部26の先端面(軸方向片側の端面)よりも軸方向片側に突出している。また、小径軸部27の外径寸法は、出力側係合部26の1対の長辺部26a同士の間隔よりも大きくなっている。したがって、小径軸部27の径方向外側部分が、長辺部26aの長さ方向中間部から径方向外側に突出している。
出力部材4の出力軸部24は、ラジアル転がり軸受28により、ハウジング2の出力側ハウジング素子8の内側に回転自在に支持されている。ラジアル転がり軸受28の外輪28aは、出力側ハウジング素子8の小径円筒面部9にがたつきなく内嵌され、かつ、内向フランジ部12の軸方向片側面と、小径円筒面部9の軸方向片側の端部に係止された止め輪29aとの間で軸方向に挟持されている。ラジアル転がり軸受28の内輪28bは、出力軸部24の大径部24aにがたつきなく外嵌され、かつ、出力フランジ部25の軸方向他側面と、大径部24aの軸方向他側の端部外周面に係止された止め輪29bとの間で軸方向に挟持されている。
なお、図示の例では、ラジアル転がり軸受28は、転動体28cとして玉を使用した玉軸受により構成されている。ただし、出力部材4を支持するためのラジアル転がり軸受は、転動体として円すいころを使用した円すいころ軸受や円筒ころを使用したころ軸受により構成することもできる。
また、出力部材4の小径軸部27は、入力部材3の内側に滑り軸受(スリーブ)30により、入力部材3に対する相対回転を自在に支持されている。
出力部材4をハウジング2の内側に回転自在に支持した状態で、出力側係合部26は、1対の入力側係合部21同士の間に配置される。
1対の係合子5は、径方向外側面のうちで周方向に離隔した2箇所位置に、それぞれが被押圧面6に対向する1対の押圧面31を有し、かつ、径方向外側面のうちで1対の押圧面31同士の間に位置する周方向中央部に、平坦面部32を有する。それぞれの押圧面31は、被押圧面6の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する部分円筒面状の凸曲面により構成されている。平坦面部32は、係合子5の径方向内側面に備えられた、後述する底面34と平行な平坦面により構成されている。
なお、係合子5に関して径方向とは、図4に矢印αで示した底面34に対して直角な方向をいい、係合子5に関して幅方向とは、図4に矢印βで示した底面34に対して平行な方向をいう。本例では、係合子5に関する径方向が、係合子5の1対の押圧面31の被押圧面6に対する遠近方向であって、第1方向に相当する。
1対の係合子5の径方向外側面のうち、平坦面部32を含む、1対の押圧面31から周方向に外れた部分は、軸方向から見た場合に、入力部材3の中心軸Oを中心とし、かつ、1対の押圧面31に接する仮想円よりも、径方向内側に存在している。すなわち、1対の押圧面31が被押圧面6に当接した状態で、1対の係合子5の径方向外側面のうち、1対の押圧面31から周方向に外れた部分は、被押圧面6に当接しない。
それぞれの押圧面31は、係合子5のその他の部分よりも被押圧面6に対する摩擦係数が大きい表面性状を有することが好ましい。また、それぞれの押圧面31は、係合子5のその他の部分と一体に構成することもできるし、係合子5のその他の部分に、貼着や接着などにより固定された摩擦材の表面に形成することもできる。
また、1対の係合子5は、径方向内側面の幅方向中間部に、矩形凹部33を有する。矩形凹部33の内面は、径方向内側を向いた底面34と、幅方向に互いに対向する1対の内側面35とを有する。底面34は、幅方向中央部に、円弧形の断面形状を有する凹部36を有し、凹部36が形成された部分以外の部分が、平坦面部32と平行な平坦面により構成されている。凹部36の内面は、出力部材4の小径軸部27の外周面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する円筒状凹面により構成されている。後述する図5に示すように、入力部材3に回転トルクが入力されると、底面34のうちで凹部36の幅方向両側に位置する部分が出力側係合部26に係合する。すなわち、本例では、底面34のうちの凹部36の幅方向両側に位置する部分により、出力側被係合部が構成されている。
さらに、1対の係合子5は、幅方向中央部の径方向中間部に、入力側係合部21と係合可能な入力側被係合部37を有する。本例では、入力側被係合部37は、軸方向から見て略弓形の開口形状を有し、かつ、係合子5の幅方向中央位置の径方向中間部を軸方向に貫通する貫通孔により構成されている。入力側被係合部37は、入力側係合部21を緩く挿入できる大きさを有する。したがって、入力側被係合部37の内側に入力側係合部21を挿入した状態で、入力側係合部21と入力側被係合部37の内面との間には、係合子5の幅方向および径方向にそれぞれ隙間が存在する。このため、入力側係合部21は、入力側被係合部37(係合子5)に対し、入力部材3の回転方向に関する変位が可能であり、入力側被係合部37は、入力側係合部21に対し、係合子5の径方向の変位が可能である。本例では、入力側被係合部37は、径方向内側面(径方向外側を向いた面)に、底面34と平行な平坦面37aを有する。
なお、本発明を実施する場合、入力側被係合部を、係合子の軸方向片側面にのみ開口する有底孔により構成することもできる。あるいは、入力側被係合部を、係合子の径方向外側面に開口する切り欠きにより構成することもできる。
本例の逆入力遮断クラッチ1では、それぞれの係合子5の1対の押圧面31を径方向に関して互いに反対側に向け、かつ、それぞれの係合子5の径方向内側面を互いに対向させた状態で、1対の係合子5をハウジング2の径方向内側に、該1対の係合子5の径方向(第1方向)の移動を可能に配置する。また、軸方向片側に配置した入力部材3の1対の入力側係合部21を、1対の係合子5の入力側被係合部37に軸方向に挿入し、かつ、軸方向他側に配置した出力部材4の出力側係合部26を、1対の矩形凹部33同士の間に軸方向に挿入する。すなわち、1対の係合子5は、それぞれの矩形凹部33により、出力側係合部26を径方向外側から挟むように配置される。
なお、1対の係合子5をハウジング2の径方向内側に配置した状態で、被押圧面6と1対の押圧面31との間部分、および、1対の係合子5の径方向内側面の幅方向両側部分(矩形凹部33から外れた部分)同士の間部分の少なくとも一方に隙間が存在するように、ハウジング2の内径寸法と係合子5の径方向寸法が規制されている。
本例の逆入力遮断クラッチ1は、潤滑剤と、1対の補助部品38とをさらに備える。
潤滑剤は、ハウジング2の被押圧面6とそれぞれの係合子5の1対の押圧面31とを潤滑する。このために、潤滑剤は、被押圧面6に全周にわたって塗布されている。本例では、潤滑剤として、粘度が比較的高い(40℃における基油の動粘度が45mm/s以上170mm/s以下)グリースを使用している。ただし、本発明を実施する場合、潤滑剤として、トラクションオイルなどの粘度が比較的低い(40℃における基油の動粘度が15mm/s以上35mm/s以下)ものを使用することもできる。
1対の補助部品38は、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間から軸方向にはみ出した潤滑剤を、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間に戻すための戻し部39を有し、入力部材3に回転トルクが入力された際に、1対の係合子5とともに、入力部材3の回転中心Oを中心に回転するように、それぞれの係合子5に装着されている。それぞれの補助部品38は、略U字形の断面形状を有し、かつ、略矩形板状または略台形板状の1対の側板部40と、該1対の側板部40の径方向外側の端部同士を接続する接続板部41とを有する。
接続板部41は、径方向外側面に、戻し部39を有する。戻し部39は、接続板部41の径方向外側面に、周方向にわたって形成された(周方向両側の端部に開口する)凹部により構成されている。具体的には、戻し部39は、接続板部41の周方向一方側の端部に開口し、かつ、周方向一方側から周方向他方側に向かうほど軸方向幅が小さくなる回収部42と、接続板部41の周方向他方側の端部と回収部42の幅狭部(回収部42の周方向他方側の端部)とに開口し、かつ、周方向に関して軸方向幅が変化しない直線部43とを有する。本例では、回収部42のうち軸方向幅が最も小さい幅狭部の軸方向幅Wを、被押圧面6と押圧面31との軸方向に関する接触幅以下、好ましくは被押圧面6と押圧面31との軸方向に関する接触幅よりも小さくし、かつ、回収部42のうち軸方向幅が最も大きい幅広部の軸方向幅Wを、被押圧面6と押圧面31との軸方向に関する接触幅よりも大きくしている。具体的には、本例では、回収部42のうち幅狭部の軸方向幅Wを、係合子5の軸方向厚さt以下(W≦t)、好ましくは係合子5の軸方向厚さtよりも小さくしている(W<t)。また、回収部42のうち幅広部の軸方向幅Wを、係合子5の軸方向厚さtよりも大きくしている(t<W)。
それぞれの補助部品38は、それぞれの係合子5の径方向外側部分の周方向中央部に装着されている。具体的には、1対の側板部40を、係合子5の径方向外側部分の周方向中央部の軸方向両側に配置し、かつ、接続板部41の径方向内側面を、平坦面部32に当接または近接対向させている。これにより、補助部品38を装着した1対の係合子5を、被押圧面6の内側に配置した状態で、補助部品38が係合子5から脱落することを防止している。
なお、補助部品は、1対の側板部の互いに対向する内側面に備えられた爪部を、係合子の軸方向側面に備えられた凹部に係止することにより、係合子に対して装着することもできる。具体的には、1対の側板部同士の間の時郁方向に関する間隔を弾性的に拡げた状態で、補助部品を係合子の径方向外側から装着し、爪部と凹部との位置が一致した状態で、1対の側板部を弾性的に復元させて爪部を凹部に係止する、いわゆるパチン止めにより、係合子に対して装着することもできる。これにより、補助部品を装着した係合子を、被押圧面の内側に配置する以前の状態でも、補助部品が係合子から不用意に脱落することを防止できる。
あるいは、補助部品を係合子に対し、圧入やねじ止め(ボルト止め)、リベット止めなどにより支持固定することもできる。
後述するように、入力部材3に回転トルクが入力され、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間に隙間が生じた状態で、それぞれの補助部品38の接続板部41の径方向外側面は、被押圧面6に当接または近接対向するように、それぞれの補助部品38がそれぞれの係合子5に装着されている。ただし、後述するように、出力部材4に回転トルクが入力され、それぞれの押圧面31が被押圧面6に押し付けられることを阻害しないように、それぞれの補助部品38がそれぞれの係合子5に装着されている。
また、本例では、1対の補助部品38の周方向に関する向きが逆になるように、それぞれの補助部品38がそれぞれの係合子5に装着されている。すなわち、1対の補助部品38のうちの一方の補助部品38は、回収部42を周方向片側に向けた状態で、1対の係合子5のうちの一方の係合子5に装着され、かつ、1対の補助部品38のうちの他方の補助部品38は、回収部42を周方向他側に向けた状態で、1対の係合子5のうちの他方の係合子5に装着されている。
それぞれの補助部品38を構成する材料は、特に限定されないが、ゴムのごときエラストマ若しくは合成樹脂などの弾性材、または、金属材料などにより構成することができる。たとえば、それぞれの補助部品38を弾性材により構成すれば、1対の側板部40により、それぞれの係合子5の径方向外側部分の周方向中央部を軸方向に弾性的に挟持することで、それぞれの補助部品38をそれぞれの係合子5に支持することもできる。これにより、それぞれの係合子5を被押圧面6の内側に配置する以前の状態においても、それぞれの補助部品38がそれぞれの係合子5から不用意に脱落することを防止できる。
本例の逆入力遮断クラッチ1は、1対の弾性部材44をさらに備える。それぞれの弾性部材44は、出力部材4の出力側係合部26と、1対の係合子5の出力側被係合部(底面34)とのがたつきを抑えるために、出力側係合部26とそれぞれの出力側被係合部との間に配置されている。
本例では、それぞれの弾性部材44は、1対の腕部45および1対の接続部46を有し、板ばねにより構成されている。それぞれの腕部45は、先端部に開口する切り欠きを有し、板厚方向(係合子5の径方向)から見て略U字形の平面形状を有する。それぞれの接続部46は、1対の腕部45の軸方向両側の端部同士を接続し、係合子5の径方向に関して外側に突出するように、略U字形または略V字形に湾曲している。それぞれの弾性部材44は、1対の腕部45に形成された切り欠きを、係合子5の径方向内側部分の幅方向両側の端部(矩形凹部33の幅方向両側に存在する部分)に係止することにより、係合子5に支持されている。本例では、それぞれの係合子5と出力側係合部26との位置関係、具体的には、それぞれの係合子5の径方向位置およびそれぞれの係合子5に対する出力側係合部26の回転位相にかかわらず、出力側係合部26が1対の弾性部材44に弾性的に当接するようにしている。これにより、出力側係合部26と出力側被係合部との間のがたつきを抑えている。
<逆入力遮断クラッチの動作説明>
本例の逆入力遮断クラッチ1の動作について、図5および図6を用いて説明する。なお、図5および図6は、入力部材3および出力部材4と、1対の係合子5との間の径方向に関する隙間を誇張して示している。
まず、入力部材3に入力側機構から回転トルクが入力された場合を説明する。
入力部材3に回転トルクが入力されると、図5に示すように、入力側被係合部37の内側で、入力側係合部21が入力部材3の回転方向(図5の例では反時計方向)に回転する。すると、入力側係合部21の径方向内側面21aが入力側被係合部37の平坦面37aを径方向内側に向けて押圧し、1対の係合子5を、被押圧面6から離れる方向にそれぞれ移動させる。つまり、1対の係合子5を、入力部材3との係合に基づき、互いに近づく方向である径方向内側に向けて(図5の上側に位置する係合子5を下側に向けて、図5の下側に位置する係合子5を上側に向けて)それぞれ移動させる。これにより、1対の係合子5の径方向内側面が互いに近づく方向に移動し、それぞれの係合子5の出力側被係合部(底面34)が出力部材4の出力側係合部26を径方向両側から挟持する。すなわち、出力部材4を、出力側係合部26の長辺部26aが係合子5の底面34と平行になるように回転させつつ、出力側係合部26と底面34とをがたつきなく係合(当接)させる。この結果、入力部材3に入力された回転トルクは、1対の係合子5を介して、出力部材4に伝達され、出力部材4から出力される。本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3に回転トルクが入力されると、入力部材3の回転方向に関係なく、1対の係合子5を、被押圧面6から離れる方向にそれぞれ移動させる。そして、入力部材3に入力された回転トルクが、1対の係合子5を介して、出力部材4に伝達される。
次に、出力部材4に出力側機構から回転トルクが逆入力された場合を説明する。
出力部材4に回転トルクが逆入力されると、図6に示すように、出力側係合部26が、1対の係合子5の出力側被係合部(底面34)同士の内側で、出力部材4の回転方向(図6の例では時計方向)に回転する。すると、出力側係合部26の外周面のうち、長辺部26aと短辺部26bとの接続部(角部)が出力側被係合部(底面34)を径方向外側に向けて押圧し、1対の係合子5を、被押圧面6に近づく方向にそれぞれ移動させる。つまり、1対の係合子5を、出力部材4との係合に基づき、互いに離れる方向である径方向外側に向けて(図6の上側に位置する係合子5を上側に向けて、図6の下側に位置する係合子5を下側に向けて)それぞれ移動させる。これにより、1対の係合子5のそれぞれの押圧面31を、被押圧面6に対して摩擦係合させる。
この結果、出力部材4に逆入力された回転トルクが完全に遮断されて入力部材3に伝達されないか、または、出力部材4に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材3に伝達され残部が遮断される。出力部材4に逆入力された回転トルクを完全に遮断して入力部材3に伝達されないようにするには、1対の押圧面31が被押圧面6に対して摺動(相対回転)しないように、1対の係合子5を出力側係合部26とハウジング2との間で突っ張らせ、出力部材4をロックする。これに対し、出力部材4に逆入力された回転トルクのうちの一部のみが入力部材3に伝達され残部が遮断されるようにするには、1対の押圧面31が被押圧面6に対して摺動するように、1対の係合子5を出力側係合部26とハウジング2との間で突っ張らせ、出力部材4を半ロックする。
本例の逆入力遮断クラッチ1では、以上の動作が可能となるように、各構成部材間の隙間の大きさが調整されている。特に、それぞれの係合子5の1対の押圧面31が被押圧面6に接触した位置関係において、入力側係合部21の径方向内側面21aと入力側被係合部37の内面との間に、出力側係合部26の角部が出力側被係合部(底面34)を押圧することに基づいて1対の押圧面31を被押圧面6に向けてさらに押し付けることを許容する隙間が存在するようにしている。これにより、出力部材4に回転トルクが逆入力されたときに、係合子5の径方向外側への移動が入力側係合部21によって阻止されることを防止し、かつ、1対の押圧面31が被押圧面6に接触した後も、1対の押圧面31と被押圧面6との接触部に作用する面圧が、出力部材4に逆入力された回転トルクの大きさに応じて変化するようにすることで、出力部材4のロックまたは半ロックが適正に行われるようにしている。
本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、国際公開第2019/026794号パンフレットに記載の逆入力遮断クラッチと同様の理由により、軸方向寸法を短くでき、かつ、部品点数を抑えることができる。
本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3および出力部材4のそれぞれの回転を、係合子5の径方向移動に変換する。そして、このように入力部材3および出力部材4の回転を係合子5の径方向移動に変換することで、係合子5を、該係合子5の径方向内側に位置する出力部材4に係合させる、あるいは、係合子5を、該係合子5の径方向外側に位置するハウジング2に押し付けるようにしている。このように、本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3および出力部材4のそれぞれの回転によって制御される係合子5の径方向移動に基づき、入力部材3から出力部材4に回転トルクが伝達可能になる出力部材4のロック解除状態または半ロック解除状態と、出力部材4の回転が防止または抑制される出力部材4のロックまたは半ロック状態とを切り替えることができるため、逆入力遮断クラッチ1の装置全体の軸方向寸法を短くできる。
しかも、係合子5に、入力部材3に入力された回転トルクを出力部材4に伝達する機能と、出力部材4をロックまたは半ロックする機能との両方の機能を持たせている。このため、逆入力遮断クラッチ1の部品点数を抑えることができ、かつ、回転トルクを伝達する機能とロックまたは半ロックする機能とをそれぞれ別の部材に持たせる場合に比べて、動作を安定させることができる。たとえば、回転トルクを伝達する機能とロックまたは半ロックする機能とを別の部材に持たせる場合、ロック解除または半ロック解除のタイミングと回転トルクの伝達開始のタイミングとがずれる可能性がある。この場合、ロック解除または半ロック解除から回転トルクの伝達開始までの間に出力部材に回転トルクが逆入力されると、出力部材が再びロックまたは半ロックされてしまう。本例では、係合子5に、回転トルクを出力部材4に伝達する機能と、出力部材4をロックまたは半ロックする機能との両方の機能を持たせているため、このような不都合が生じることを防止できる。
また、入力部材3から係合子5に作用する力の向きと、出力部材4から係合子5に作用する力の向きとを逆向きにしているため、両方の力の大小関係を規制することで、係合子5の移動方向を制御できる。このため、出力部材4のロック状態または半ロック状態とロック解除状態または半ロック解除状態との切り換え動作を安定して確実に行うことができる。
さらに本例の逆入力遮断クラッチ1は、戻し部39を有するため、耐久性を良好に確保することができる。この理由について、次に説明する。
被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間に塗布された潤滑剤は、入力部材3に回転トルクが入力され、それぞれの係合子5が、それぞれの押圧面31を被押圧面6に近接対向させるか、または、それぞれの押圧面31を被押圧面6に対し摺接させた状態で、入力部材3の回転中心Oを中心に回転すると、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間から軸方向に押し出される。本例では、それぞれが戻し部39を有する1対の補助部品38を、1対の係合子5に装着している。このため、入力部材3に回転トルクが入力され、1対の補助部品38が、1対の係合子5とともに入力部材3の回転中心Oを中心に回転することで、軸方向に押し出された潤滑剤を、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間に戻すことができる。
すなわち、戻し部39は、周方向中央部から周方向端部に向かうほど軸方向幅が大きくなる回収部42を有する。したがって、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間から軸方向に押し出された潤滑剤は、それぞれの係合子5の回転に伴って、回収部42の周方向端部(開口部)から該回収部42内に取り込まれ(回収され)、該回収部42の内側面に沿って案内されることにより、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間まで戻される。このため、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間の潤滑状態を長期間にわたり良好に維持することができ、逆入力遮断クラッチ1の耐久性を良好に確保することができる。
本例では、1対の補助部品38の周方向に関する向きが逆になるように、それぞれの補助部品38をそれぞれの係合子5に装着している。このため、入力部材3の回転方向にかかわらず、軸方向に押し出された潤滑剤を、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間に戻すことができる。
なお、本発明の逆入力遮断クラッチを実施する場合、係合子の数を、1個または3個以上とすることもできる。
また、本発明の逆入力遮断クラッチを実施する場合、係合子を、1対の押圧面を被押圧面に近づける方向に弾性的に付勢する付勢部材を備えることもできる。前記付勢部材は、たとえば、ねじりコイルばねや板ばねなどにより構成することができる。
また、入力部材、出力部材、被押圧部材、および、係合子の材質は、特に限定されない。たとえば、これらの材質としては、鉄合金、銅合金、アルミニウム合金などの金属のほか、必要に応じて強化繊維を混入した合成樹脂などでも良い。また、入力部材、出力部材、被押圧部材、および、係合子のそれぞれで、同じ材質にしても良いし、異なる材質にしても良い。
[実施の形態の第1例に関する変形例の第1例]
図11(A)および図11(B)は、本発明の実施の形態の第1例に関する変形例の第1例を示している。本変形例では、補助部品38aに備えられた戻し部39aを構成する直線部43aが、接続板部41の周方向端部に開口していない。その他の部分の構成および作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
[実施の形態の第1例に関する変形例の第2例]
図12は、本発明の実施の形態の第1例に関する変形例の第2例を示している。本変形例では、補助部品38fに備えられた戻し部39eは、接続板部41の周方向両側の端部に開口し、かつ、周方向一方側から周方向他方側に向かうほど軸方向幅が小さくなる回収部42bのみを有する。すなわち、本変形例では、戻し部39eは、周方向に関して軸方向幅が変化しない直線部を有していない。その他の部分の構成および作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
[実施の形態の第2例]
図13(A)および図13(B)は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の逆入力遮断クラッチは、戻し部39(図10(A)参照)を有する補助部品38bを、被押圧面6に近づく方向、すなわち係合子5aの径方向に関して外側に向かう方向に弾性的に付勢する弾性部材47をさらに備える。弾性部材47は、係合子5aの径方向外側面の周方向中央部に備えられた平坦面部32と、補助部品38bの接続板部41の径方向内側面との間に弾性的に挟持されている。弾性部材47は、たとえば、ねじりコイルばねや板ばね、ゴムなどにより構成することができる。
また、本例では、補助部品38bの1対の側板部40aの軸方向内側面の径方向内端部に備えられた爪部48を、係合子5aの軸方向外側面の径方向外側部分に備えられた凹部49の内側に配置している。すなわち、補助部品38bを係合子5aに対し、いわゆるパチン止めにより支持している。具体的には、補助部品38bを係合子5aに装着する際には、1対の側板部40a同士の間の軸方向に関する間隔を弾性的に広げた状態で、補助部品38bを係合子5aの径方向外側から装着し、爪部48と凹部49との位置が一致した状態で、1対の側板部40aを弾性的に復元させ、爪部48を凹部49に係止する。本例では、凹部49の径方向長さを、爪部48の先端部の径方向寸法よりも大きくすることで、補助部品38bが、係合子5aに対して径方向外側に向けて過度に変位することを防止している。なお、係合子5aおよび該係合子5aに装着された補助部品38bに関して軸方向内側とは、係合子5aの軸方向中央側をいい、軸方向外側とは、係合子5aの軸方向両側をいう。
本例の逆入力遮断クラッチによれば、図13(A)に示すように、入力部材3への回転トルクの入力に伴い、係合子5aが径方向内側に向けて変位した場合でも、弾性部材47の弾力により、補助部品38bを被押圧面6に近づく方向に弾性的に押圧して、戻し部39を被押圧面6に弾性的に当接または近接対向させることができる。このため、戻し部39により、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間から軸方向に押し出された潤滑剤を、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間に戻す効果を良好に得ることができる。
なお、出力部材4に回転トルクが逆入力されると、図13(B)に示すように、補助部品38bが係合子5aに対し、弾性部材47の弾力に抗して径方向内側に向けて相対移動することで、係合子5aが被押圧面6に近づく方向に移動することが許容される。その他の部分の構成および作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
[実施の形態の第3例]
図14および図15は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例では、1対の補助部品38を1対の係合子5の周方向端部の径方向外側部分に装着している。具体的には、1対の補助部品38を、1対の係合子5の周方向片側の端部(図14の時計方向に関して前側の端部)の径方向外側の端部に装着している。なお、1対の補助部品38は、周方向に関する向きが逆になるように、それぞれの係合子5に装着されている。
さらに、本例では、図15に示すように、出力側係合部26と出力側被係合部(底面34)との間のがたつきを抑えるための弾性部材44により、それぞれの補助部品38を被押圧面6に近づく方向に向けて弾性的に付勢している。具体的には、本例では、弾性部材44の腕部45の先端部に備えられた折れ曲がり部75により、補助部品38を径方向外側に向けて押圧している。ただし、補助部品を弾性部材にモールド成形するなどにより、一体に構成することもできる。
本例の逆入力遮断クラッチでは、弾性部材44により、補助部品38を被押圧面6に近づく方向に弾性的に押圧している。このため、入力部材3への回転トルクの入力に伴い、係合子5が径方向内側に向けて変位した場合でも、戻し部39を被押圧面6に弾性的に当接または近接対向させることができ、軸方向に押し出された潤滑剤を、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間に戻す効果を良好に得ることができる。
さらに、本例では、出力側係合部26と出力側被係合部(底面34)との間のがたつきを抑えるための弾性部材44に、補助部品38を被押圧面6に近づく方向に弾性的に押圧する機能を持たせている。このため、本例の逆入力遮断クラッチによれば、実施の形態の第2例に係る逆入力遮断クラッチと比較して部品点数を減らすことができる。その他の部分の構成および作用効果は、実施の形態の第1例および第2例と同様である。
[実施の形態の第4例]
図16~図21は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例では、1対の係合子5bは、径方向外側部分の周方向中央部に、軸方向から見て扇形の切り欠き部50を有する。切り欠き部50の内面は、部分円筒面状の底面51と、周方向に互いに対向する1対の内側面52とを有する。図示の例では、1対の内側面52は、径方向外側に向かうほど互いに離れる方向に傾斜しているが、本発明を実施する場合、1対の内側面を、互いに平行な平坦面により構成することもできる。
また、本例では、1対の補助部品38cは、軸方向から見て略扇形の1対の側板部40bと、該側板部40bの径方向外側の端部同士を接続する接続板部41aとを有する。
接続板部41aは、径方向外側面に、戻し部39bを有する。本例では、戻し部39bは、周方向に関して対称な形状を有する。具体的には、戻し部39bは、周方向内側から周方向外側に向かうほど軸方向幅が大きくなる1対の回収部42aと、該1対の回収部42aの周方向内側の端部同士を接続し、かつ、周方向に関して軸方向幅が変化しない直線部43bとを有する。1対の回収部42aのうち幅狭部の軸方向幅Wは、係合子5の軸方向厚さt以下(W≦t)、好ましくは係合子5bの軸方向厚さtよりも小さく、かつ、1対の回収部42aのうち幅広部の軸方向幅Wが、係合子5bの軸方向厚さtよりも大きくなっている(t<W)。
なお、補助部品38cに関して周方向内側とは、補助部品38cの周方向中央側をいい、周方向外側とは、補助部品38cの周方向両側をいう。
本例では、それぞれの補助部品38cは、径方向外側部分を、それぞれの係合子5bの切り欠き部50の内側に配置した状態で、それぞれの係合子5bに装着されている。具体的には、1対の側板部40bを、係合子5bのうち、切り欠き部50の径方向内側に位置する部分の軸方向両側に配置し、かつ、接続板部41aの径方向内側面を、切り欠き部50の底面51に当接または近接対向させている。この状態で、接続板部41aの周方向端面は、切り欠き部50の内側面52に当接または近接対向する。すなわち、本例では、それぞれの内側面52が、段差面に相当する。本例では、接続板部41aの周方向端面を、切り欠き部50の内側面52に当接または近接対向させているため、補助部品38cが係合子5bに対し、周方向に大きくずれ動くのを確実に防止することができる。
また、本例では、1対の補助部品38cに備えられた戻し部39bは、周方向に関して対称な形状を有している。このため、それぞれが補助部品38cを装着した1対の係合子5bのハウジング2の径方向内側への組み付け方向を規制する必要がなく、誤組み付けを防止することができ、かつ、逆入力遮断クラッチの組立工数を削減することができる。その他の部分の構成および作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
[実施の形態の第5例]
図22~図25は、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例の逆入力遮断クラッチ1aでは、入力部材3aは、複数の部品を組み合わせることにより構成されている。具体的には、入力部材3aは、軸部材53と、1対の係合部材54と、補強部材55とを備える。
軸部材53は、円筒形状を有する入力軸部19aと、該入力軸部19aの軸方向他側の端部外周面から径方向外側に向けて全周にわたり突出する入力フランジ部20aとを有する。入力フランジ部20aは、径方向反対側2箇所位置に、略弓形の開口形状を有する支持孔56を備える。
1対の係合部材54は、軸方向から見て略弓形の端面形状を有する。それぞれの係合部材54は、軸方向片側の端部を、軸部材53の支持孔56に圧入により内嵌固定している。本例では、1対の係合部材54のうちで入力フランジ部20aの軸方向他側面から突出した部分により、入力側係合部21が構成されている。
補強部材55は、1対の入力側係合部21の先端部(係合部材54の軸方向他側の端部)同士の間にかけ渡されている。補強部材55は、円板状であって、中央部に、出力側係合部26を緩く挿入できるだけの大きさを有する挿通孔57を備え、かつ、径方向反対側2箇所位置に、略弓形の開口形状を有する圧入孔58を備える。補強部材55は、それぞれの圧入孔58を、1対の入力側係合部21の先端部に圧入により外嵌することで、1対の入力側係合部21の先端部同士の間にかけ渡されている。
また、本例の逆入力遮断クラッチ1aでは、それぞれが戻し部39cを有する1対の補助部品38dを、入力部材3aに対し支持固定している。補助部品38dは、L字形の断面形状を有し、かつ、略矩形板状の支持板部59と、該支持板部59の径方向外側の端部から軸方向他側に向けて折れ曲がった折れ曲がり板部60とを有する。
折れ曲がり板部60は、径方向外側面に、4本の突条61を有する。それぞれの突条61は、折れ曲がり板部60の径方向外側面の隅部から周方向内側に向かうほど軸方内側に向かう方向に伸長する傾斜部62と、傾斜部62の周方向内側の端部から周方向に伸長する方向に折れ曲がった直線部63とを有する。本例では、それぞれの突条61同士の間部分により、戻し部39cが構成されている。具体的には、軸方向両側に配された1対の突条61の傾斜部62同士の間部分により、回収部42bが構成され、かつ、直線部63同士の間部分により、直線部43bが構成されている。すなわち、本例では、戻し部39cは、周方向に関して対称な形状を有する。
それぞれの補助部品38dは、支持板部59を入力フランジ部20aの軸方向片側面に対し、ねじなどの結合部材64により支持固定されている。このため、本例の逆入力遮断クラッチ1aでは、入力部材3aが回転中心Oを中心に回転すると、それぞれが戻し部39cを有する1対の補助部品38dは、入力部材3a、および、1対の係合子5とともに回転中心Oを中心に回転する。これにより、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間から軸方向に押し出された潤滑剤を、戻し部39cにより、被押圧面6とそれぞれの押圧面31との間に戻すことができる。また、本例では、それぞれの補助部品38dを、入力部材3aに対し支持固定しているため、それぞれの補助部品38dが入力部材3aに対しずれ動くのを確実に防止することができる。
さらに、本例では、1対の入力側係合部21の先端部同士の間に、補強部材55をかけ渡しているため、入力部材3aに回転トルクが入力された際に、1対の入力側係合部21の先端部が互いに離れる方向に湾曲するよう変形するのを防止できる。その他の部分の構成および作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
[実施の形態の第6例]
図27~図31は、本発明の実施の形態の第6例を示している。本例では、補助部品38eは、1対の素子65a、65bを備える。本例では、1対の素子65a、65bは、同一の形状および寸法を有する部品により構成されている。ただし、1対の素子65a、65bを、異なる部品により構成することもできる。それぞれの素子65a、65bは、L字形の断面形状を有し、かつ、略矩形板状の支持板部59aと、該支持板部59aの径方向外側の端部から軸方向他側に向けて折れ曲がった折れ曲がり板部60aとを有する。
折れ曲がり板部60aは、径方向外側面に、2本の突条61aを有する。それぞれの突条61aは、折れ曲がり板部60aの径方向外側面のうち、軸方向に関して支持板部59aに近い側の端部の周方向両側の端部から、周方向に関して中央部に向かうほど軸方向に関して支持板部59aから遠い側の端部に向かう方向に伸長する傾斜部62aと、傾斜部62aの周方向内側の端部から折れ曲がり、周方向に伸長する直線部63aとを有する。
1対の素子65a、65bのうち、一方(軸方向片側)の素子65aは、支持板部59aを、入力部材3aの入力フランジ部20aの軸方向片側面に対し、結合部材64により支持固定され、かつ、他方(軸方向片側)の素子65bは、支持板部59aを、補強部材55の軸方向他側面に対し、結合部材64により支持固定されている。本例では、それぞれの補助部品38eを構成する1対の素子65a、65bを、入力部材3aに支持固定した状態で、それぞれの突条61a同士の間部分に、戻し部39dが構成される。具体的には、軸方向両側に配された1対の突条61aの傾斜部62a同士の間部分により、回収部42cが構成され、かつ、直線部63a同士の間部分により、直線部43cが構成されている。その他の部分の構成および作用効果は、実施の形態の第1例および第5例と同様である。
[実施の形態の第7例]
図32~図36は、本発明の実施の形態の第7例を示している。本例の逆入力遮断クラッチ1dは、ハウジング2aと、入力部材3bと、出力部材4aと、1対の係合子5bとを備える。
ハウジング2aは、軸方向中間部内周面に被押圧面6aを有する。本例では、ハウジング2aは、入力側ハウジング素子7aと出力側ハウジング素子8aとを備え、全体として中空円盤状に構成されている。
入力部材3bは、軸部材53aと、1対の係合部材54aとを備える。
軸部材53aは、円筒形状を有する入力軸部19bと、該入力軸部19bの軸方向他側の端部外周面の径方向反対側2箇所位置から径方向外側に向けて突出する入力フランジ部20bとを有する。入力フランジ部20bは、径方向反対側2箇所位置に、円形の開口形状を有する支持孔56aを備える。
1対の係合部材54aは、円柱状に構成されている。それぞれの係合部材54aは、軸方向片側の端部を、軸部材53aの支持孔56aに圧入により内嵌固定している。本例では、1対の係合部材54aのうちで入力フランジ部20bの軸方向他側面から突出した部分により、入力側係合部21が構成されている。
入力部材3bは、ラジアル転がり軸受22により、ハウジング2aの入力側ハウジング素子7aの内側に回転自在に支持されている。
出力部材4aは、円柱状の出力軸部24と、該出力軸部24の軸方向片側の端面の中央部から軸方向片側に向けて伸長する略長円形の出力側係合部26とを有する。出力部材4aは、ラジアル転がり軸受28により、ハウジング2aの出力側ハウジング素子8aの内側に回転自在に支持されている。
1対の係合子5bは、本体プレート65と、1対のリンク部材66と、揺動支持軸67とを備える。
本体プレート65は、略半円形板形状を有する。本体プレート65は、被押圧面6aに対向する1対の押圧面31と、出力側被係合部68と、揺動支持部69とを備える。
1対の押圧面31は、本体プレート65の径方向外側面の周方向に離隔した2箇所位置に備えられている。
出力側被係合部68は、本体プレート65の径方向内側面の幅方向中央部に備えられている。本例では、出力側被係合部68は、本体プレート65の径方向内側面の幅方向中央部から径方向外方に向けて凹んだ、略矩形状の凹部により構成されている。
揺動支持部69は、本体プレート65の幅方向中央部の径方向外側部に備えられている。揺動支持部69は、揺動支持軸67を介してリンク部材66を揺動可能に支持するための部分である。本例では、揺動支持部69は、本体プレート65の幅方向中央部の径方向外側部を軸方向に貫通する円孔(プレート側通孔)により構成されている。
本体プレート65は、幅方向中央部の径方向内側部に、挿通孔70をさらに備える。挿通孔70は、本体プレート65の幅方向中央部の径方向内側部を軸方向に貫通し、かつ、円周方向に伸長する円弧形の長孔により構成されている。挿通孔70は、入力側係合部21を緩く挿入できる大きさを有する。具体的には、挿通孔70の内側に入力側係合部21を挿入した際に、入力側係合部21と挿通孔70の内面との間に、周方向に関する隙間および本体プレート65の径方向に関する隙間が存在する。このため、入力側係合部21は、前記周方向に関する隙間の存在に基づいて、挿通孔70(本体プレート65)に対し、入力部材3bの回転方向に関する変位が可能であり、挿通孔70(本体プレート65)は、前記本体プレート65の径方向に関する隙間の存在に基づいて、入力側係合部21に対し、本体プレート65の径方向の変位が可能である。換言すれば、後述する逆入力遮断クラッチ1の動作時に、挿通孔70の内周縁と入力側係合部21とが干渉して該動作が阻害されることがないように、挿通孔70の大きさが規制されている。
本体プレート65は、径方向内側面の幅方向両側部に、1対の保持部71をさらに備える。保持部71のそれぞれは、後述する付勢部材72の端部を保持するための部分である。本例では、保持部71のそれぞれは、本体プレート65の径方向内側面の幅方向両側部から径方向内側に突出する突起状の凸部により構成されている。
1対のリンク部材66は、本体プレート65の軸方向両側に配置されている。リンク部材66のそれぞれは、鋼板などの金属板にプレス加工による打ち抜き加工を施して造られたプレス成形品であって、略矩形板形状または略長円板形状を有する。リンク部材66のそれぞれは、その長手方向に関する一方側部分(本体プレート65の径方向に関する内側部分)に入力側被係合部73を有し、かつ、その長手方向に関する他方側部分(本体プレート65の径方向に関する外側部分)に揺動被支持部74を有する。入力側被係合部73は、リンク部材66を軸方向に貫通する円孔により構成され、かつ、揺動被支持部74は、リンク部材66を軸方向に貫通する円孔(リンク側通孔)により構成されている。
入力側被係合部73には、入力側係合部21が挿通されている。これにより、リンク部材66の長手方向に関する一方側部分が、入力側係合部21に対し揺動可能に接続されている。
揺動支持軸67は、円柱状であり、本体プレート65の揺動支持部69と、1対のリンク部材66のそれぞれの揺動被支持部74とに挿通されている。これにより、リンク部材66のそれぞれの長手方向に関する他方側部分が、揺動支持軸67を介して、本体プレート65の揺動支持部69に揺動可能に支持されている。本例では、揺動支持軸67は、軸方向中間部を、本体プレート65の揺動支持部69に圧入し、かつ、軸方向両側部を、リンク部材66のそれぞれの揺動被支持部74に、相対回転可能に内嵌している。
本例の逆入力遮断クラッチ1dは、係合子5bのそれぞれを、押圧面31を被押圧面6aに対し近づける方向、すなわち本体プレート65の径方向に関して外側に向かう方向に弾性的に付勢する1対の付勢部材72をさらに備える。付勢部材72のそれぞれは、本体プレート65の径方向内側面の幅方向両側部同士の間に配置されている。具体的には、付勢部材72のそれぞれは、本体プレート65の径方向内側面の幅方向両側部同士の間に挟持されている。これにより、入力部材3bおよび出力部材4aのそれぞれにトルクが加わっていない中立状態において、1対の係合子5bのそれぞれの押圧面31が被押圧面6aに接触した状態となるようにしている。
本例では、付勢部材72は、コイルばねにより構成されており、該付勢部材72の軸方向両側部の内側に、1対の係合子5bの保持部71を挿入することによって、該付勢部材72が1対の本体プレート65の径方向内側面同士の間から脱落することを防止している。
さらに、本例の逆入力遮断クラッチ1bは、潤滑剤と、1対の補助部品38とをさらに備える。本例では、1対の補助部品38は、それぞれの係合子5bの径方向外側部分のうち、周方向中央部から周方向にわずかに外れた位置(図33~図35の例では、時計方向前側に外れた位置)に装着されている。すなわち、係合子5bの径方向外側部分のうち、後述するように、入力部材3bに回転トルクが入力されることに伴うリンク部材66の揺動が阻害されない位置に、補助部品38が装着されている。
入力部材3bに回転トルクが入力されると、図34に示すように、入力側係合部21が入力部材3bの回転方向(図34の例では時計方向)に回転する。すると、リンク部材66のそれぞれが揺動支持軸67を中心に揺動しつつ、入力側係合部21によって、リンク部材66を介して揺動支持軸67が引っ張られることにより、1対の係合子5b(本体プレート65)が、被押圧面6aから遠ざかる方向(径方向内側)にそれぞれ移動する。これにより、1対の係合子5bのそれぞれの押圧面31が被押圧面6aから離れ、かつ、1対の出力側被係合部68が出力部材4aの出力側係合部26を径方向両側から挟持し、出力側係合部26と1対の出力側被係合部68とが、がたつきなく係合する。この結果、入力部材3bに入力された回転トルクが、1対の係合子5bを介して、出力部材4aに伝達され、出力部材4aから出力される。
一方、出力部材4aに回転トルクが逆入力されると、図35に示すように、出力側係合部26が、1対の出力側被係合部68同士の内側で、出力部材4aの回転方向(図35の例では時計方向)に回転する。すると、出力側係合部36aの角部が、出力側被係合部68の底面を径方向外側に向けて押圧し、1対の係合子5bを、被押圧面6aに近づく方向(径方向外側)にそれぞれ移動させる。これにより、1対の係合子5bのそれぞれの押圧面31が、被押圧面6aに対して押し付けられ、それぞれの押圧面31が被押圧面6aに摩擦係合する。この結果、出力部材4aに逆入力された回転トルクが、他の部材に固定されて回転しないハウジング2aに伝わることで完全に遮断されて入力部材3bに伝達されないか、または、出力部材4aに逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材3bに伝達され残部が遮断される。
本例の逆入力遮断クラッチ1bによれば、入力部材3bへの回転トルクの入力時に、入力部材3bから係合子5bに作用する荷重の方向を、ロック状態または半ロック状態からロック解除状態または半ロック解除状態への切り換え時に係合子5bが移動すべき方向である、係合子5bの径方向(被押圧面6aに対する係合子5bの遠近方向)とほぼ平行にすることができる。このため、入力部材3bへの回転トルクの入力時に、ロック状態または半ロック状態からロック解除状態または半ロック解除状態への切り換えを円滑に行うことができる。また、本例では、戻し部39を有する補助部品38を備えるため、被押圧面6aとそれぞれの押圧面31との間の潤滑状態を長期間にわたり良好に維持することができ、逆入力遮断クラッチ1dの耐久性を良好に確保することができる。その他の部分の構成および作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
上述した実施の形態の第1例~第7例およびこれらの変形例は、矛盾を生じない限り、適宜組み合わせて実施することができる。また、実施の形態の第1例~第7例およびこれらの変形例では、被押圧面と押圧面との間から軸方向にはみ出した潤滑剤を、前記被押圧面と前記押圧面との間に戻す戻し部を有する補助部品を、係合子または入力部材に装着しているが、本発明を実施する場合、前記戻し部を、係合子または入力部材に直接形成することもできる。
1、1a、1b、1c、1d 逆入力遮断クラッチ
2、2a ハウジング
3、3a、3b 入力部材
4、4a 出力部材
5、5a、5b 係合子
6、6a 被押圧面
7、7a 入力側ハウジング素子
8、8a 出力側ハウジング素子
9 小径円筒面部
10 大径円筒面部
11 接続面部
12 内向フランジ部
13 内径側嵌合面部
14 側板部
15 大径円筒部
16 小径円筒部
17 外径側嵌合面部
18 ねじ孔
19、19a、19b 入力軸部
20、20a、20b 入力フランジ部
21 入力側係合部
21a 径方向内側面
21b 径方向外側面
21c 周方向側面
22 ラジアル転がり軸受
22a 外輪
22b 内輪
22c 転動体
23a、23b 止め輪
24 出力軸部
24a 大径部
24b 小径部
24c 接続部
25 出力フランジ部
26 出力側係合部
26a 長辺部
26b 短辺部
27 小径軸部
28 ラジアル転がり軸受
28a 外輪
28b 内輪
28c 転動体
29a、29b 止め輪
30 滑り軸受
31 押圧面
32 平坦面部
33 矩形凹部
34 底面
35 内側面
36 凹部
37 入力側被係合部
37a 平坦面
38、38a、38b、38c、38d、38e、38f 補助部品
39、39a、39b、39c、39d、39e 戻し部
40、40a 側板部
41、41a 接続板部
42、42a 回収部
43、43a、43b 直線部
44 弾性部材
45 腕部
46 接続部
47 弾性部材
48 爪部
49 凹部
50 切り欠き部
51 底面
52 内側面
53、53a 軸部材
54、54a 係合部材
55 補強部材
56、56a 支持孔
57 挿通孔
58 圧入孔
59 支持板部
60 折れ曲がり板部
61 突条
62 傾斜部
63 直線部
64 結合部材
65 本体プレート
66 リンク部材
67 揺動支持軸
68 出力側被係合部
69 揺動支持部
70 挿通孔
71 保持部
72 付勢部材
73 入力側被係合部
74 揺動被支持部
75 折れ曲がり部

Claims (19)

  1. 内周面に被押圧面を有する被押圧部材と、
    前記被押圧面の径方向内側に配置された少なくとも1個の入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置された入力部材と、
    前記被押圧面の径方向内側において前記入力側係合部よりも径方向内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置された出力部材と、
    前記被押圧面に対向する押圧面と、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部と、前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部とを有し、前記被押圧面に対する遠近方向である第1方向の移動を可能に配置された係合子と、
    前記被押圧面と前記押圧面とを潤滑する潤滑剤と、
    前記被押圧面と前記押圧面との間から軸方向にはみ出した前記潤滑剤を、前記被押圧面と前記押圧面との間に戻す戻し部と、
    を備え、
    前記係合子は、前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合することに基づいて、前記第1方向に関して前記被押圧面から離れる方向に変位し、前記出力側被係合部を前記出力側係合部に係合させることで、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記出力側被係合部に前記出力側係合部が係合することに基づいて、前記押圧面を前記被押圧面に押し付けて、前記押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させるものである、
    逆入力遮断クラッチ。
  2. 前記戻し部は、径方向外側面に、少なくとも周方向一方側の端部に開口する凹部を有し、前記入力部材に回転トルクが入力されると、径方向外側面のうちで前記凹部から外れた部分を前記被押圧面に摺接または近接対向させ、かつ、前記入力部材の回転中心を中心に回転する、
    請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
  3. 前記凹部は、周方向一方側から周方向他方側に向かうほど軸方向幅が小さくなる回収部を有する、
    請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
  4. 前記回収部が、周方向他方側の端部に開口する、
    請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ。
  5. 前記凹部は、前記回収部の軸方向他方側の端部から軸方向他方側に向けて伸長し、かつ、周方向にわたり軸方向幅が変化しない直線部を有する、
    請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ。
  6. 前記凹部は、周方向一方側部分に、周方向一方側から周方向他方側に向かうほど軸方向幅が小さくなる第1の回収部を有し、かつ、周方向他方側部分に、周方向他方側から周方向一方側に向かうほど軸方向幅が小さくなる第2の回収部を有する、
    請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
  7. 前記凹部は、前記第1の回収部の軸方向他方側の端部と前記第2の回収部の軸方向一方側の端部とを接続し、かつ、周方向にわたり軸方向幅が変化しない直線部を有する、
    請求項6に記載の逆入力遮断クラッチ。
  8. 前記凹部のうち、軸方向幅が最も小さい部分における軸方向幅が、前記被押圧面と前記押圧面との軸方向に関する接触幅以下であり、かつ、前記凹部のうち、軸方向幅が最も大きい部分における軸方向幅が、前記被押圧面と前記押圧面との軸方向に関する接触幅よりも大きい、
    請求項2~7のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
  9. 前記戻し部が、前記係合子の径方向外側面の周方向中央部と、前記被押圧面との間に配置されている、
    請求項1~8のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
  10. 前記戻し部が、前記係合子の径方向外側面の周方向端部と、前記被押圧面との間に配置されている、
    請求項1~8のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
  11. 前記係合子が、前記戻し部を有する、
    請求項1~10のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
  12. 前記戻し部を有する補助部品をさらに備える、
    請求項1~10のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
  13. 前記補助部品が、前記係合子に装着されている、
    請求項12に記載の逆入力遮断クラッチ。
  14. 前記係合子が、前記補助部品の周方向端部に対向する段差面を有する、
    請求項13に記載の逆入力遮断クラッチ。
  15. 前記補助部品を、前記被押圧面に近づく方向に向けて弾性的に付勢する弾性部材をさらに備える、
    請求項13または14に記載の逆入力遮断クラッチ。
  16. 前記弾性部材が、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との間に弾性的に挟持されている、
    請求項15に記載の逆入力遮断クラッチ。
  17. 前記補助部品が、前記入力部材に装着されている、
    請求項12に記載の逆入力遮断クラッチ。
  18. 前記係合子は、径方向外側面の周方向に離隔した2箇所位置に前記押圧面を有する、
    請求項1~17のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
  19. 前記係合子を1対備え、かつ、前記入力部材が、前記入力側係合部を1対有する、
    請求項1~18のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
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