以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係るカード処理装置1を説明する。図1は、カード処理装置1の模式的構造図である。カード処理装置1は、例えば自動定期券発売機(不図示)に内蔵されている。自動定期券発売機(不図示)は、典型的には、駅務機器として駅舎内の改札口付近に自動切符発売機等と並んで設置されている。自動定期券発売機(不図示)は、典型的には、以下に説明するカード処理装置1と、いずれも不図示の紙幣処理装置、硬貨処理装置、発券装置、制御装置、利用者に必要な情報を示す表示装置、利用者の入力操作に供する入力装置(ボタン等)を含んで構成されている。
カード処理装置1は、典型的にはICカードを処理する装置であり、非接触式のICカードを処理する第1カード処理部10と、接触式のICカードを処理する第2カード処理部20と、ICカードを受け入れる挿入部31と、切換部33と、制御装置40とを備えている。ICカードはCPU(中央処理装置)とメモリとを含むICチップを有するカードであり、非接触式と接触式がある。非接触式のICカードはアンテナを内蔵していてこの内蔵アンテナを介してカード処理装置1がICカードのメモリにアクセスすることができる。接触式のICカードは外部端子がカード表面に現れていてこの外部端子を介してカード処理装置1がICカードのメモリにアクセスすることができる。
ここで図2を参照して、非接触式のICカードCR(以下「カードCR」という。)について説明する。図2(a)はカードCRの平面図、図2(b)はカードCR表面の印字の存否を決める温度と時間との関係を示すグラフである。カードCRは、本実施の形態では鉄道の定期券であるとして説明する。カードCRは、表面にその1つの定期券に関する固有の情報(乗車区間、有効期限、利用者の氏名等)が印字され(図2(a)参照)、裏面にその種類の定期券一般の利用案内が印字されている(不図示)。カードCRの表面の印字は、書き換え(リライト)可能となっている。カードCRの表面には、典型的には全面に、印字することが可能な印字層が設けられている。カードCRの表面全体の平面的な範囲の中には、その種類の定期券において印字が行われうる最大の範囲である印字対象区域APが規定されている。印字対象区域APは、概念的に規定されたものであり、物理的に区画されていなくてもよい(外部から視認できなくてもよい)。カードCRの表面から見て印字層の下層にICチップが埋設されている。印字層は、染料(ロイコ染料)と顕色剤とが封入されており、発色に必要な第1の所定の温度としての発色温度T1になると染料と顕色剤とが溶けあった状態となって発色し、第2の所定の温度としての消去温度T2になると染料と顕色剤とがそれぞれ結晶化して発色した色が消えるように構成されている(図2(b)参照)。本実施の形態では、発色温度T1が約170℃程度、消去温度T2が約130℃程度で、発色温度T1よりも消去温度T2が低い温度となっており、上記の各温度を中心としてそれぞれプラスマイナス10℃以下程度の幅を有している。印字層は、比較的短い発色時間t1(例えば、数十ミリ秒程度)発色温度T1となった部分が発色し、比較的長い消去時間t2(本発明の所定の時間であり、例えば、1秒程度)消去温度T2となった部分の色が消えるようになっている。つまり、消去温度T2に消去時間t2維持すると発色した色が消えるようになっており、逆に発色温度T1となった部分を消去温度T2未満に下降させる際に、消去温度T2にある状態を消去時間t2が経過する前に通過させることにより発色を維持することができるようになっている。発色温度T1に加熱した当該部分の加熱を解除して自然に温度を降下させた場合に、消去温度T2を通過する時間が消去時間t2未満であれば発色を維持するためには加熱を解除すればよく、他方、消去温度T2を通過する時間が消去時間t2以上となるときは当該部分を強制的に冷却して消去温度T2を通過する時間が消去時間t2未満となるようにすることにより発色を維持することができる。これら、加熱の解除又は強制冷却が発色を維持する処理となる。
図1に戻ってカード処理装置1の構成の説明を続ける。なお、以下の説明においてカードCRに関して言及したときは適宜図2を参照することとする。
第1カード処理部10は、リーダライタ部11と、消去部12と、印字部13と、発行部14とを有している。リーダライタ部11は、装置側アンテナ11aとローラ11rとを含んで構成されており、装置側アンテナ11aとカードCRに内蔵されているアンテナとの無線通信により、カードCRのICチップに記録されている情報を読み出すことができ、及びカードCRのICチップに情報の書き込み(情報の更新を含む)を行わせることができるように構成されている。また、カードCRを挟むように配設された一対のローラ11rの回転により、カードCRを装置側アンテナ11aとの通信可能な位置まで搬送し、装置側アンテナ11aとの通信可能な位置まで搬送したカードCRを通信が完了するまでその位置に保留する(止めておく)ことができるように構成されている。
消去部12は、消去ヘッド12hと移動手段としてのプラテンローラ12rと検知器12dとを含んで構成されており、カードCRの表面の印字を消去することができる部分である。プラテンローラ12rは、下降した消去ヘッド12hとの間でカードCRを挟んでカードCRを消去ヘッド12hに密着させることができ、また、回転によりカードCRを消去ヘッド12hに対して移動させることができるように構成されている。また、消去部12は、プラテンローラ12rを駆動する(回転させる)駆動手段としてのステッピングモータ(不図示)を有している。カードCRは、プラテンローラ12rにより長手方向に移動させられる。検知器12dは、投光部と受光部とを有し、投光された光がカードCRによって遮られるか否かによりカードCRの先端の位置を検出することができるように構成されている。
図3(a)は、消去ヘッド12hの概略構成を示す平面図である。消去ヘッド12hは、カードCRに接触する部分の側から見た平面が長方形に形成されている。消去ヘッド12hは、長方形の長辺がカードCRの搬送方向DSと直交するように配設されている。また、消去ヘッド12hは、長方形の長辺がカードCRの消去区域AE(図2(a)参照)を横断する長さに形成されており、短辺が消去区域AEのカード搬送方向DSの長さの約10分の1程度の長さに形成されている。ここで「消去区域AE」は、印字対象区域APの範囲内にある区域であって、消去すべき印字のすべてを包囲する区域である。本実施の形態では、消去区域AEを印字対象区域APと一致させている。消去ヘッド12hは、その長手方向において消去区域AEを覆っているが、短辺方向(カード搬送方向DS)においては消去区域AEを覆っておらず、カードCRに対してカード搬送方向DSに相対的に走査することで消去区域AE全体に接触させることができるように構成されている。
また、平面図形が長方形状の消去ヘッド12hは、短辺方向の中央部に長手方向全体にわたって発熱部分12gが設けられている。発熱部分12gは、消去ヘッド12hの長方形を短辺方向でほぼ3等分した長さの幅で帯状に形成されている。帯状に形成された発熱部分12gは、典型的には、発熱部分12gを含む長方形の平面(図3(a)に現れている長方形の平面)内の他の部分(短辺方向における発熱部分12gの両側の部分)よりもわずかに突出しており、消去ヘッド12hがカードCRに接触したときに突出した発熱部分12gがカードCRに接触して両側の部分はカードCRに接触しないようになっている。発熱部分12gは、通電すると消去温度T2となる発熱素子が埋設されて形成されている。消去ヘッド12hは、制御装置40(図1参照)と電気的に接続されており、発熱素子に通電する指令を制御装置40(図1参照)から受けて発熱素子が通電することにより発熱部分12g全体を消去温度T2以上に昇温することもでき、通電を遮断することにより発熱部分12g全体を消去温度T2よりも低くすことができるように構成されている。発熱素子が通電したときの発熱部分12gの温度は、制御装置40(図1参照)により設計条件の範囲内で任意の温度に制御可能に構成されている。
他方図3(b)は、印字部13(図1参照)が有する印字ヘッド13hの概略構成を示す平面図である。印字ヘッド13hは、上述の消去ヘッド12h(図3(a)参照)とほぼ同様に構成されているが、主として発熱部分13gが相違している。すなわち、図3(a)に示す消去ヘッド12hは通電により発熱部分12g全体が消去温度T2以上に昇温するように構成されているのに対し、印字ヘッド13の発熱部分13gは、通電により発色温度T1に昇温する発熱素子がカードCRの表面に印字されるドットの組み合わせによる文字等(文字に加えて記号や図形を含む概念)を表すことができる程度に、発熱部分13gA、13gB、13gC、・・・に細分化されて構成されている。つまり、印字ヘッド13hは、少なくともカード搬送方向DSが印字対象区域APよりも小さい小区域(帯状に形成された発熱部分13g全体)でカードCRの表面を発色温度T1に加熱する発熱素子が複数配設されて構成されている。印字ヘッド13hは、電気的に接続された制御装置40(図1参照)から受けた指令に基づいて、細分化された発熱部分13gA、13gB、13gC、・・・ごとに、発色温度T1に昇温させ、あるいは発色温度T1未満の温度(発色しない温度)にすることができるように構成されている。
再び図1に戻ってカード処理装置1の構成の説明を続ける。印字部13は、上述した印字ヘッド13hとプラテンローラ13rとを含んで構成されており、カードCRの表面に文字等を印字することができる部分である。プラテンローラ13rは、印字ヘッド13hとの間でカードCRを挟んでカードCRを印字ヘッド13hに密着させることができ、また、回転によりカードCRを印字ヘッド13hに対して移動させることができるように構成されている。また、印字部13は、プラテンローラ13rを駆動する(回転させる)駆動手段としてのステッピングモータ(不図示)を有している。カードCRは、プラテンローラ13rにより長手方向に移動させられる。
発行部14は、カードCRを持たない利用者がカードCRの購入を希望した場合に備えて印字されていないカードCRを蓄えておく部分である。これまで説明したリーダライタ部11、消去部12、印字部13、発行部14は、第1搬送部18上に配設されている。第1搬送部18は、搬送ローラ、プーリ、及び搬送ベルトを適宜有しており、カードCRを第1カード処理部10内の各部11、12、13、14の間で搬送することができるように構成されている。
第2カード処理部20は、接触型のICカードに対して情報の読み込み及び書き込みを行うエンコード部21と、廃券処理されたカードや発行ミスのあるカードを回収するカード回収部22とを含んで構成されている。接触型のICカードは、典型的にはクレジットカードである。エンコード部21は、接触型のICカードの、表面に現れているICチップの外部端子を介して情報の読み込み及び書き込みを行うことができ、接触型のICカードの裏面に磁気ストライプが設けられている場合は磁気ストライプに記録されている情報を読み込むことができるように構成されている。エンコード部21及びカード回収部22は、第2搬送部28上に配設されている。第2搬送部28は、搬送ローラ、プーリ、及び搬送ベルトを適宜有しており、接触型のICカードあるいはカードCR(以下、両者を特に区別しないときは「カードCR等」という。)をエンコード部21及びカード回収部22に搬送することができるように構成されている。
挿入部31は、カード処理装置1に対するカードCR等の取り込み及び放出をする挿入口と、挿入口から取り込まれたカードCR等を幅寄せ(片寄せ)するように整列させる整列部と、カードCRと接触型ICカードとを識別すると共にカードCRの表裏を識別する検出部とを有している。切換部33は、カード処理装置1に取り込まれたカードCR等が、第1搬送部10に送られるべきものか第2搬送部20に送られるべきものかにより搬送路を切り換える部分である。挿入部31及び切換部33は、第3搬送部38上に配設されている。第3搬送部38は、搬送ローラ、プーリ、及び搬送ベルトを適宜有しており、カードCR等を、挿入部31と切換部33との間で搬送することができるように構成されている。
第1搬送部18、第2搬送部28、第3搬送部38は、それぞれ異なる駆動手段としてのステッピングモータ(不図示)を有し、カードCR等を正逆両方向に搬送することができるように構成されている。第1搬送部18のステッピングモータ(不図示)は、典型的には、消去部12のプラテンローラ12rを駆動するステッピングモータ(不図示)及び印字部13のプラテンローラ13rを駆動するステッピングモータ(不図示)と共通に構成されているが、それぞれ別のステッピングモータ(不図示)として構成されていてもよい。また、第1搬送部18、第2搬送部28、第3搬送部38のうちカードCR等の搬送速度が共通する部分は、駆動手段としてのステッピングモータ(不図示)を共通にしてもよい。第1カード処理部10を構成する各部11、12、13、14、18、第2カード処理部20を構成する各部21、22、28、挿入部31、切換部33、第3搬送部38は、それぞれ制御装置40と電気的に接続されており、制御装置40からの信号を受信して作動するように構成されている。
ここで図4を参照して、制御装置40の構成を説明する。図4は、制御装置40の概略構成を示すブロック図である。なお、カード処理装置1の部材については適宜図1を参照することとする。制御装置40は、カードCRの印字を消去する処理に関するデータが記憶されている記憶部41と、カードCRの印字を消去する処理の手順を算出する消去処理手順算出部42と、プラテンローラ12rの動作を制御するローラ制御部43と、消去ヘッド12hの動作を制御する消去ヘッド制御部44と、処理するカードCRが処理に適したものか否かを判定する判定部45と、カードCRの印字を消去する処理以外のカード処理装置1における処理を制御する制御部49とを有している。制御装置40は、リーダライタ部11と、消去部12と、リーダライタ部11及び消去部12以外のカード処理装置1の各部と、それぞれ制御信号の送受信ができるように電気的に接続されている。
記憶部41は、消去ヘッド12hの発熱部分12gの温度と発熱部分12gに印加される電力との関係のデータが記憶された印加データ記憶部411と、カードCRの種類に応じた印字の消去を開始する位置(消去開始位置)及び予熱を行う位置(予熱位置)等のデータが記憶された消去開始位置記憶部412と、カードCRのICチップに記録されたデータがカード処理装置1における処理に適したデータとなっているかの判断の基準となる基準データが記憶された基準データ記憶部413とを有している。消去開始位置記憶部412に記憶されている消去開始位置及び予熱位置に関するデータは、外部の入力手段(不図示)により変更することができるように構成されている。基準データ記憶部413に記憶されている基準データは、典型的には、カードCRの認証を行うために照合するデータであり、カード処理装置1で処理可能なカードCRの規格に対応するようにあらかじめ決定されている。
消去処理手順算出部42は、印加データ記憶部411から発熱部分12gの温度と印加電力との関係に関するデータを、消去開始位置記憶部412から消去開始位置及び予熱位置に関するデータをそれぞれ受け取ると共に、消去部12の検知器12dから消去ヘッド12hに対するカードCRの位置の信号を受信し、及び判定部45からカードCRの種類に関するデータを受け取って、受け取ったデータに基づいてカードCRの印字を消去する処理の手順を算出し、算出した手順のデータをローラ制御部43及び消去ヘッド制御部44のそれぞれに送ることができるように構成されている。
ローラ制御部43は、消去処理手順算出部42から消去処理手順のデータを受け取り、受け取った手順のデータに基づいて、カードCRを消去ヘッド12hに対して適切な方向に適切な速度で送るように送りプラテンローラ12rの回転方向及び回転速度を制御するように構成されている。消去ヘッド制御部44は、消去処理手順算出部42から消去処理手順のデータを受け取り、受け取った手順のデータに基づいて、カードCRと消去ヘッド12hとを接触させるための消去ヘッド12hの下降及び離間させるための消去ヘッド12hの上昇の各動作を消去ヘッド12hに行わせ、並びに消去ヘッド12hの発熱部分12gを意図した温度にするための印加電力の調節を消去ヘッド12hに対して行うように構成されている。
判定部45は、リーダライタ部11で読み取られた処理されるべきカードCRに関する情報をリーダライタ部11から受け取り、また、基準データ記憶部413から基準データを受け取って、処理されるべきカードCRがカード処理装置1における処理に適したものか否かを判定し、カードの種類に関するデータを消去処理手順算出部42に送ると共に、カードCRの認証に関するデータを上位機器(本実施の形態では不図示の自動定期券発売機)の制御装置(典型的には制御装置40とは異なる不図示の制御装置)に送ることができるように構成されている。
上述のように、制御装置40は、記憶部41と、消去処理手順算出部42と、ローラ制御部43と、消去ヘッド制御部44と、判定部45と、制御部49とを有するところ、これらは説明の便宜上観念的に区別したものであって、物理的に区別されていなくてもよい。記憶部41、消去処理手順算出部42、ローラ制御部43、消去ヘッド制御部44、判定部45、制御部49は、典型的にはコンピュータ内(CPUやメモリ等)に渾然一体に構成されている。
引き続き図5を参照して、カード処理装置1の作用を説明する。図5は、カード処理装置1の処理のフロー図である。以下では、継続定期券を発行する場合の処理を例として説明する。なお、以下の説明で言及するカード処理装置1の各部材の符号については適宜図1乃至図4を参照することとする。カード処理装置1は、挿入部31の挿入口からカードCR等を受け入れ(S1)、整列部により整列(幅寄せ)させ(S2)、検出部によりカードCR等の種類を検出する(S3)。制御部49は、検出部から受信した検出信号から、挿入されたカードCR等が、非接触型のICカード(カードCR)か否かを判断し(S4)、非接触型のICカード(カードCR)でなく、接触型のICカードであれば切換部33を第2カード処理部20側に切り換えて接触型のICカードを第2カード処理部20に搬送する。本明細書では、第2カード処理部20における接触型のICカードの処理の説明は省略する。他方、非接触型のICカード(カードCR)であれば切換部33を第1カード処理部10側に切り換えてカードCRをリーダライタ部11に搬送し(S5)、カードCRのICチップに記録されている情報の読み取り処理を行う(S6)。ここで、第1カード処理部10に搬送されるカードCRは、表面に乗車区間や有効期限等が印字されている定期券である。
情報の読み取り処理(S6)が行われたら、制御部49は、継続定期券購入者からの必要な情報の入力を受け付けるべく、自動定期券発売機(不図示)の表示装置(不図示)に定期券購入に関するガイダンスを表示させる(S7)。購入者からの必要な情報の入力があり、通貨又はクレジットカードによる決済が完了したら、制御部49は購入された継続定期券の内容に関するデータを装置側アンテナ11aを介してカードCR内のICチップに書き込むことにより更新する(S8)。カードCRのデータの書き換えが完了したら、制御部49は第1搬送部18によりカードCRを消去部12に搬送し、カードCRの表面に印字されている更新前の定期券の内容に関する表示を消去する(S9)。
消去処理(S9)は、カードCR表面の消去区域AE全体を消去時間t2にわたって消去温度T2とすることにより行われる。前述のように、消去ヘッド12hの発熱部分12gの面積は消去区域AEの面積よりも小さいので、カードCR表面の印字を消去するために、消去区域AE内の任意の部分が消去時間t2にわたって消去温度T2に加熱されるような送り速度で、消去ヘッド12hに対してカードCRを移動させることにより消去処理が行われる。消去処理の冒頭で、消去ヘッド12hの加熱部分12gを消去温度T2に加熱後にカードCRを消去ヘッド12hに接触させると、未だ加熱されていないカードCRへ消去ヘッド12hの熱が逃げて消去ヘッド12hの温度が消去温度T2よりも低くなることがある。また、消去処理においてカードCRが消去ヘッド12hに対して移動する際、消去ヘッド12hはカードCRの未だ加熱されていない部分に接触することとなるが、このことにより消去ヘッド12hの熱が逃げて消去ヘッド12hの温度が消去温度T2よりも低くなることがある。消去処理の最中に消去ヘッド12hの温度が消去温度T2よりも低くなると、印字が消えずに残ってしまうこととなる。このような不都合を回避するために、消去ヘッド12hに対してカードCRを移動させる前に、カードCRを消去ヘッド12hに接触させた状態で、消去ヘッド12hの加熱部分12gを消去温度T2よりも高い予熱温度TP(図2(b)参照)に加熱(プレヒート)することが好ましい。このようにすると、カードCRを消去ヘッド12hに接触させた状態で発熱部分12gを加熱するのでカードCRと消去ヘッド12hとの接触により消去ヘッド12hの熱がカードCRに逃げることを回避することができ、加熱部分12gを予熱温度TPに加熱するのでカードCRが消去ヘッド12hに対して移動する際に消去ヘッド12hの熱がカードCRへ逃げても消去ヘッド12hの温度を消去温度T2に維持することが可能となって、カードCR表面の印字を消去することができる。
予熱温度TPは、カードCRの熱容量等を勘案して決定されるが、カードCRのようにICチップが内蔵されているものは磁気カード等に比べて厚みがあるため比較的熱が逃げやすく、予熱温度TPが高温になりがちである。予熱温度TPが発色温度T1に達することとなると、予熱(プレヒート)の段階でカードCRの表面が発色してしまい、その後消去処理を行っても予熱時の発熱跡が残ってしまうこととなる。そこで、以下の消去処理を行い、意図しない発色を残さずにカードCRの印字を消去する。
図6のフロー図を参照して消去処理を説明する。なお、理解の容易のために、図7の消去処理の概念図も適宜参照することとする。また、前述のように、カードCRは、その長手方向が消去ヘッド12hの短辺方向と一致してこの方向が搬送方向DS(図3、図7参照)となっており、消去ヘッド12hに対して搬送方向DSに移動するが搬送方向DSと直交する方向には移動しないため、以下の説明で言及するカードCRと消去ヘッド12hの位置関係は、搬送方向DSの位置関係をいうものとする。消去処理(S9;図5参照)に移行したら、ローラ制御部43は、消去ヘッド12hの発熱部分12gの中心がカードCRの予熱位置PH(図7(a)参照)に合致するようにカードCRを搬送する(S21)。予熱位置PHは、消去処理の最中に消去温度T2を維持できる温度に予熱された発熱部分12gの中心がカードCRの消去開始位置PSに合致するようにカードCRを移動させたとき、消去ヘッド12hからカードCRに熱が逃げることによって、消去開始位置PSに移動した発熱部分12gの温度が消去温度T2となるような位置で、できるだけ消去開始位置PSに近い位置である。例えば、予熱位置PHは、発熱部分12gの中心が、消去開始位置PSから発熱部分12gの幅の長さ分消去区域AE側に入った位置に合致する位置となるようにすることができる。
予熱位置PHにカードCRを搬送する工程(S21)においては、搬送されるカードCRの先端が検知器12dで検知され、消去処理手順算出部42が検知器12dから検知信号を、消去開始位置記憶部412から消去開始位置PS及び予熱位置PHのデータをそれぞれ受け取って予熱位置PHを算出し、算出した予熱位置PHに関するデータをローラ制御部43に送り、ローラ制御部43がプラテンローラ12rの回転を制御することが行われる。
予熱位置PHにカードCRを搬送したら(S21)、消去ヘッド制御部44は消去ヘッド12hを下降させてカードCRの表面に接触させる(S22)。そして、消去処理手順算出部42は、発熱部分12gを予熱温度TPとするための発熱部分12gに印加する電力に関するデータを印加データ記憶部411から受け取って印加電力を算出し、算出したデータを消去ヘッド制御部44に送る一方、消去ヘッド制御部44は受け取った印加電力のデータに基づいて発熱部分12gが予熱温度TPになるように発熱部分12gに電力を印加し、消去ヘッド12hを予熱する(S23)。予熱によって発熱部分12gの温度が予熱温度TPに上昇すると、カードCRの表面の予熱位置PHに発熱跡HMが発生することがある(図7(a)参照)。
予熱が完了したら、消去ヘッド制御部44は、消去ヘッド12hのカードCRへの接触を継続させたまま発熱部分12gの目標温度を消去温度T2とするように設定を変更した上で、発熱部分12gへの電力の印加を継続させる(S24)。すると、消去ヘッド制御部44は、消去処理手順算出部42で算出された、発熱部分12gを消去温度T2とするための発熱部分12gに印加する電力に関するデータを受け取り、受け取った印加電力のデータに基づいて発熱部分12gが消去温度T2になるように発熱部分12gに印加する電力を調節する。そして、ローラ制御部43は、発熱部分12gの中心がカードCRの消去開始位置PSに合致するようにカードCRを移動させる(S25)。消去開始位置PSは、消去区域AEの外側又は消去区域AEの境界上に設定される。予熱位置PHから消去開始位置PSに向けて動き出した時点では、消去ヘッド12hの目標温度は消去温度T2に変更されているが、実際の消去ヘッド12hの温度は消去温度T2まで下がっていない。消去ヘッド12hが予熱位置PHから動き出して消去開始位置PSに到達する頃にほぼ消去温度T2となる。その後、ローラ制御部43は、プラテンローラ12rの回転方向を逆転させて消去区域AE全体が消去時間t2にわたって消去温度T2となる状態を経るようにしつつ発熱部分12gの中心がカードCRの消去終了位置PEに合致する位置までカードCRを搬送する(S26)。カードCRを消去終了位置PEに向けて移動している際、消去ヘッド制御部44は、発熱部分12gが消去温度T2を維持するように印加する電力を、例えば間欠的に印加する等により、調節する。これにより、カードCR表面の印字は完全に消去される。その後、消去ヘッド制御部44は消去ヘッド12hを上昇させてカードCRの表面から離間させ(S27)、消去処理を終了させる。
再び図5に戻って、カード処理装置1の作用の続きを説明する。制御部49は、消去処理が完了して表面の印字が消去されたカードCRを第1搬送部18により印字部13に搬送し、購入された継続定期券の内容(更新後の内容)に関する情報(乗車区間や有効期限等の情報)をカードCRの表面に印字する(S10)。印字は、制御部49が、印字ヘッド13hの細分化された各発熱部分13gA、13gB、13gC、・・・に電力を印加するかしないかの制御を行うことにより、カードCRの表面に発熱部分13g全体の帯状の範囲に相当する区域(ライン)について発色のドットの有無を形成しつつ、印字ヘッド13hに対してカードCRを搬送方向DSに搬送することによりカードCRの表面全体に必要なドットの有無を形成することにより行われる。カードCRの表面全体に必要なドットが形成されることにより、カードCR全体を見たときにドットの跡が文字等として表示されることになる。印字処理が完了したら、制御部49は、第1搬送部18によりカードCRを切換部33まで搬送させ、その後第3搬送部38により挿入部31まで搬送させてカードCRをカード処理装置1から放出する(S11)。カードCRは、典型的には、挿入部31の挿入口から放出される。
以上の説明では、カード処理装置1が駅務機器の1つである自動定期券発売機に適用されるものであるとしたが、自動定期券発売機以外の駅務機器に適用してもよく、あるいは駅務機器以外の機器(例えば店舗における電子マネーカードを取り扱う機器等)に適用してもよい。また、カード処理装置1がICカードを処理する装置であるとしたが、リライト印字ができる磁気カード(大型券等を含む)を処理する装置(典型的にはカードに磁気的に記録された情報を読み取る読み取り手段を有する装置)であってもよい。また、自動定期券発売機等が、ICカードを処理するカード処理装置と磁気カードを処理するカード処理装置との双方を備えることとしてもよい。
以上の説明では、消去部12においてカードCR表面の印字を消去する際、プラテンローラ12rによりカードCRを動かすこととしたが、カードCRを動かさずに消去ヘッド12hを動かしてカードCR表面の印字を消去するように構成されていてもよい。また、カードCR及び消去ヘッド12hの両方を動かしてカードCR表面の印字を消去するように構成されていてもよい。印字部13における印字処理の際も同様である。
以上の説明では、消去ヘッド12hと印字ヘッド13hとが別々に構成されているとしたが、一体に構成されていてもよい。一体に構成される場合は、例えば前述の印字ヘッド13h(図3(b)参照)のような構成とし、消去ヘッドとして使用する場合に細分化された各発熱部分13gA、13gB、13gC、・・・に同じ電力を印加するようにすればよい。消去ヘッド12hと印字ヘッド13hとが一体に構成されていると、消去部12と印字部13との合計スペースを小さくすることができ、カード処理装置1の小型化を図ることができる。他方、別々に構成されていると、消去ヘッド12h及び印字ヘッド13hを個別にメンテナンスすることができ、どちらか一方が故障して交換が必要となった場合でも他方は継続して使用することができ、経済的である。
以上の説明では、消去区域AEを印字対象区域APと一致させることとしたが、消去区域AEを印字対象区域APよりも小さく設定してもよい。消去区域AEを印字対象区域APよりも小さくすると、消去処理における消去ヘッド12hに対するカードCRの相対的な移動量を少なくすることができ、消去処理の所要時間を短縮することができる。他方、消去区域AEを印字される可能性のある最大の範囲の印字対象区域APに一致させて設定しておくと印字の消し忘れを防ぐことができ、安定した消去処理を行うことができる。