以下に添付図面を参照して、この発明にかかるレーザ照射システムの第1実施形態を詳細に説明する。図1は、第1の実施形態に適用可能なレーザ照射システム1の一例のハードウェア構成を示す。レーザ照射システム1は、当該レーザ照射システム1の全体を制御する全体制御装置100と、レーザ光を媒体20に対して照射するレーザ照射装置101とを有する。レーザ照射装置101は、レーザ発振器11、方向制御モータ12、方向制御ミラー13、光学レンズ14および集光レンズ15を有する。
レーザ照射装置101は、媒体20に対してレーザ光によりエネルギを伝達し、このエネルギにより媒体20に可視情報を描画する描画装置として機能する。レーザ照射装置101において、レーザ発振器11は、レーザ発光素子と、当該レーザ発光素子を駆動する駆動回路を有し、レーザ光を照射する。レーザ発光素子としては、半導体レーザ(LD:Laser Diode)を用いることができる。これに限らず、レーザ発光素子として、気体レーザや固体レーザ、液体レーザを用いてもよい。レーザ発振器11によるレーザ光照射のON/OFFや、レーザ光の照射パワーは、全体制御装置100により制御される。すなわち、レーザ発振器11において、全体制御装置100の制御に従い駆動回路によりレーザ発光素子が駆動されて、レーザ光が照射される。
方向制御ミラー13は、レーザ発振器11から照射されたレーザ光を反射面で反射させて当該レーザ光の照射方向を変える。方向制御モータ12は、例えばサーボモータであって、全体制御装置100による制御に従い方向制御ミラー13を駆動して、方向制御ミラー13の反射面の向きを2軸に制御する。方向制御モータ12と方向制御ミラー13とによりガルバノミラーを構成する。
光学レンズ14は、レーザ発振器11から照射されたレーザ光のスポット径を大きくするために設けられる。また、集光レンズ15は、方向制御ミラー13から出射されたレーザ光を媒体20の表面に収束させる。詳細は後述するが、媒体20は、加熱により発色および消色を行うことができる。以下、媒体20を、サーマルリライタブル媒体20と呼ぶ。
次に、レーザ照射システム1の基本的な動作について、概略的に説明する。全体制御装置100の制御に従い、レーザ発振器11がレーザ光を照射する。レーザ発振器11から照射されたレーザ光は、光学レンズ14によりスポット径が拡大されて、方向制御ミラー13に入射する。そして、全体制御装置100の制御により方向制御モータ12が駆動され、方向制御ミラー13および方向制御モータ12からなるガルバノミラーによりレーザ光の進行方向が調整され、レーザ光の照射位置が制御される。その後、方向制御ミラー13から出射したレーザ光は、集光レンズ15により所定の焦点距離に集光され、サーマルリライタブル媒体20に照射される。
レーザ照射システム1において、レーザ光の照射パワーの制御、光学レンズ14や集光レンズ15のレンズ位置または焦点距離、サーマルリライタブル媒体20の位置を調整することで、描画する線分の線幅を変化させることが可能である。
レーザ照射システム1において、所定の照射パワーを維持しつつ、与えられた始点から終点に向けてレーザ光の照射位置を直線的または曲線的に移動させることで、サーマルリライタブル媒体20に対して、始点と終点とを結ぶ線分または曲線を描画することができる。以下では、この、始点から終点に向けて、所定の照射パワーを維持しつつレーザ光の照射位置を移動させる一連の動作を、ストロークと呼ぶ。
図2は、全体制御装置100の一例の構成を示す。この図2に例示する構成は、主にソフトウェアによって全体制御装置100を実装する場合のハードウェア構成図であり、コンピュータを実体としている。コンピュータを実体とせず全体制御装置100を実現する場合、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定機能向けに設計されたIC(Integrated Circuit)を利用することができる。
全体制御部1において、バス300に対してCPU(Central Processing Unit)301、メモリ302、ドライブ装置303、通信I/F304が接続される。メモリ302は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などによる揮発性のメモリである。さらに、バス300に対してハードディスク305、入力装置306および表示制御部307が接続される。バス300に接続される各部は、バス300を介して互いに通信可能とされている。
ハードディスク305は、CPU301が動作するためのプログラムや各種データ、文字や記号のフォントデータなどが予め格納される。本発明に係る、レーザ照射装置101を制御するための制御プログラムも、ハードディスク305に格納される。CPU301は、ハードディスク305から読み出したプログラムに従い、メモリ302をワークメモリとして用いて、このレーザ照射システム1の全体の動作を制御する。
ドライブ装置303は、脱着可能な記録媒体310が装填可能とされ、当該記録媒体310からのデータの読み出しを行うことができる。ドライブ装置303が対応可能な記録媒体310としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)といったディスク記録媒体や、書き換え可能な不揮発性の半導体メモリ(例えばEEPROM)が考えられる。
上述したハードディスク305に格納される制御プログラムやフォントデータは、例えば記録媒体310に記録されて提供される。ドライブ装置303により、記録媒体310に記録される制御プログラムやフォントデータを読み出してハードディスク305に所定に格納することで、全体制御装置100に対して制御プログラムが実装される。
通信I/F304は、レーザ照射装置101に対するインターフェイスであって、CPU301は、通信I/F304を介してレーザ発振器11および方向制御モータ12と通信を行い、これらレーザ発振器11および方向制御モータ12を制御する。通信I/F304は、例えば、LAN(Local Area Network)といった外部の機器と通信を行うためのネットワークと接続され、このネットワークを介してレーザ照射装置101を制御するようにできる。
これに限らず、通信I/F304がIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394やUSB(Universal Serial Bus)といったシリアルインターフェイスに対応し、このシリアルインターフェイスを介してレーザ照射装置101を制御するようにしてもよい。さらに、通信I/F304が対応可能なインターフェイスは、有線に限られず、ワイヤレスUSBやBluetoothといった、無線通信を行うものでもよい。さらにまた、全体制御装置100とレーザ照射装置101とを共通の筐体内に構成するものとし、通信I/F304を内部的な通信を行うインターフェイスとしてもよい。
入力装置306は、マウスなどのポインティングデバイスや、キーボードであって、ユーザ操作を受け付ける。入力装置306は、ユーザ操作に応じた制御信号を出力し、CPU301に供給する。CPU301がプログラムに従い、この入力装置306からの制御信号に応じてレーザ照射システム1を制御することで、レーザ照射システム1を、ユーザ操作に応じて動作させることが可能となる。
表示制御部307は、LCD(Liquid Crystal Display)などを表示デバイスとして用いたディスプレイ308が接続される。表示制御部307は、CPU301がプログラムに従い生成した表示制御信号を、ディスプレイ308が表示可能な信号に変換してディスプレイ308に供給する。このディスプレイ308における表示と、入力装置306とにより、レーザ照射システム1を操作するためのGUI(Graphical User Interface)を構成することができる。このGUIにより、例えばサーマルリライタブル媒体20に描画する文字や記号の入力欄がディスプレイ308に表示される。ユーザは、このGUIによる表示に従い、入力装置306から文字や記号の入力を行う。
サーマルリライタブル媒体20に描画される描画対象の文字や記号は、例えばリスト状にハードディスク305に記憶されていてもよいし、入力装置306により入力してもよい。文字や記号は、UNICODEやJISコードなどの文字コードで特定され、全体制御装置100は、文字コードに対応するフォントデータをハードディスク305から読み出して描画命令に変換することで、レーザ照射装置101を制御する。
<サーマルリライタブル媒体について>
サーマルリライタブル媒体20は、発色温度帯まで加熱して急冷することで発色し、発色部を当該発色温度帯より低温の消色温度帯に加熱することで消色する、書き換え可能な感熱媒体である。
図3は、サーマルリライタブル媒体20の発色および消色に関する温度特性の例を示す。図3の例では、発色温度帯が温度T1〜温度T2の範囲、消色温度帯が発色温度帯における下限の温度T2より低温の温度T3〜温度T4の範囲となっている。ロイコ染料を用いたサーマルリライタブル媒体20の場合、発色温度帯の温度が180℃以上、消色温度帯の温度が略130℃〜170℃の範囲となっている。
また、図3の曲線200で例示されるように、サーマルリライタブル媒体20を発色温度帯の温度まで加熱して急冷することで、加熱部分を発色させることができる。また、曲線201で例示されるように、発色部は、消色温度帯の温度まで加熱し、温度が消色温度帯内に一定時間以上留まるようにゆっくり冷やす(徐冷と呼ぶ)ことで、消色する。
なお、通常のサーマルリライタブル媒体は、近赤外領域のレーザ光を吸収しない。そのため、レーザ発振器11に近赤外レーザ波長を発振するレーザ発光素子(半導体レーザ、固体レーザのYAGレーザなど)を用いる場合は、サーマルリライタブル媒体20に対し、レーザ光を吸収する材料の添加や層を追加する必要がある。
<第1の実施形態>
次に、本発明の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、明度を反転させた白抜き文字として描画したい文字や記号を少なくとも含む所定範囲を、発色温度帯の温度まで加熱しその後急冷して発色させる。これにより、当該所定範囲がレーザ光の照射により塗り潰される。以下では、このように、所定範囲をレーザ光の照射により発色させて塗り潰すことを、塗り潰しと呼ぶ。塗り潰しを行った後、当該文字や記号の部分を消色温度帯の温度まで加熱しさらに徐冷して消色する。これにより、塗り潰しを行った範囲内に対して、当該文字や記号の部分の明度が反転された白抜き文字を描画することができる。
図4は、第1の実施形態による全体制御装置100の機能を説明するための一例の機能ブロック図である。全体制御装置100は、形状情報取得部400、描画位置決定部401、塗り潰し領域決定部402、文字ストローク生成部403、塗り潰しストローク生成部404、パワー調整部405および描画命令生成部406を有する。これら全体制御装置100に含まれる各部は、主に、CPU301上で動作する制御プログラムにより形成される。なお、形状情報取得部400は、例えばハードディスク305を用いることができる。
形状情報取得部400は、レーザ照射システム1で描写する描画対象の形状を示す情報を取得する。レーザ照射システム1で描画する形状の例としては、文字や記号がある。これに限らず、図案をレーザ照射システム1で描画する形状に含めてもよい。描画対象の形状を示す情報は、例えばハードディスク305に予め格納される。形状が文字や記号である場合には、形状情報取得部400は、ハードディスク305に予め格納された、当該文字や記号の形状に関する情報であるフォントデータを、当該文字や記号の文字コードに基づき取得する。
描画対象の形状を示す情報は、ハードディスク305に予め格納されているのに限らず、例えば入力装置306から入力するようにもできる。また、描画対象の形状に関する情報は、記録媒体310に記録されていてもよい。形状情報取得部400は、記録媒体310に記録された描画対象の形状に関する情報を、ドライブ装置303を介して取得する。
描画位置決定部401は、例えば入力装置306の操作に応じて入力された、サーマルリライタブル媒体20に描画を行おうとする文字列の描画位置を決定する。描画位置は、入力装置306の操作に応じた位置に決定してもよいし、予め決められた位置に決定することもできる。
文字ストローク生成部403は、形状情報取得部400から読み出したフォントデータと、描画位置決定部401で決定された描画位置とに基づき、サーマルリライタブル媒体20に対して描画する文字列のストローク情報(文字ストローク情報と呼ぶ)を生成する。換言すれば、この文字ストローク情報は、文字形状取得部400で取得した描画対象の形状をサーマルリライタブル媒体20に対して形成するための情報である。このとき、文字ストローク生成部403は、必要に応じてフォントデータの拡大や縮小処理も行うことができる。
ストローク情報は、サーマルリライタブル媒体20に対して文字列を描画するためのレーザ光の照射位置に関する情報を含む。このストローク情報は、例えば、文字列中の文字や記号を構成する線分のそれぞれについて、描画開始点および終了点が、サーマルリライタブル媒体20に対する相対的な座標で示される。文字列のストローク情報は、パワー調整部405に供給される。
塗り潰し領域決定部402は、描画位置決定部401で決定された描画位置に基づき、塗り潰しを行う領域を決定する。塗り潰しストローク生成部404は、塗り潰し領域決定部402で決定された塗り潰しを行う領域を示す情報に従い、塗り潰しを行うためのストローク情報を生成する。塗り潰しを行うためのストローク情報(以下、塗り潰しストローク情報と呼ぶ)は、パワー調整部405に供給される。
パワー調整部405は、文字列ストローク情報および塗り潰しストローク情報に対して、それぞれレーザ光の照射パワーを設定する。すなわち、第1の実施形態においては、塗り潰しストローク情報に対して、サーマルリライタブル媒体20が発色温度帯まで加熱されるような照射パワーを設定する。また、文字列ストローク情報に対して、消色温度帯まで加熱されるような照射パワーを設定する。これら塗り潰しおよび文字ストローク情報、ならびに、照射パワーの情報は、描画命令生成部406に供給される。
描画命令生成部406は、塗り潰しおよび文字ストローク情報と照射パワー情報とに基づき、レーザ照射装置101、すなわち、レーザ発振器11および方向制御モータ12とを制御するための描画命令を生成する。全体制御装置100は、この描画命令に従いレーザ発振器11および方向制御モータ12とを制御することで、サーマルリライタブル媒体20に対して、所望の白抜き文字を描画することができる。
図5は、第1の実施形態による白抜き文字の描画処理を示す一例のフローチャートである。なお、図5のフローチャートによる処理の実行に先立って、白抜き文字として描画したい文字や記号が予め全体制御装置100に対して設定されているものとする。一例として、図6−1に例示されるように、入力装置306に対するユーザ操作により、文字列「79年生まれの(CR)19人の音楽家」が、白抜きの対象となる白抜き対象文字列600として設定されている。なお、ここで、(CR)は、改行を意味する。
図5において、ステップS10で、描画位置決定部401が、白抜き対象文字列600における全文字の描画位置を決定する。描画位置は、描画基点(図6−2参照)、文字サイズおよび白抜き対象文字列600から算出される。なお、1つの文字や記号に対して定義される範囲を示す情報は、その文字や記号に対応するフォントデータが持っている。図6−2の例では、各文字を囲む枠線が当該文字に対して定義される範囲を示している。
描画基点は、例えば入力装置306に対するユーザ操作により与えられる。図6−2の例では、白抜き対象文字列600の範囲における左上隅の点が、描画基点としている。描画基点は、全体制御装置100がテンプレートとして予め持っている位置情報を用いてもよい。この描画基点を基準として、白抜き対象文字列600を構成する各文字の文字サイズに基づき、当該各文字の描画位置が算出される。
次のステップS11で、塗り潰し領域決定部402が、塗り潰しを行う領域を決定する。少なくとも、白抜き対象の文字列を全て含む矩形領域を含む領域を、塗り潰し対象の領域とする。図6−3の例では、白抜き対象文字列600の範囲に対して、さらにマージンを持たせた範囲を、塗り潰しを行う塗り潰し領域601として決定している。
処理はステップS12に移行され、塗り潰しストローク生成部404が、ステップS11で決定された塗り潰し領域601に対して塗り潰しを行うためのストロークを決定する。ある領域に対して塗り潰しを行うには、幾つかの方法が考えられる。ここでは、図7−1に例示されるように、ストロークとして線分を想定し、X方向の線分を、Y方向に線分の線幅分ずつずらして描画することで塗り潰しを行うものとする。
図7−1の例では、塗り潰し領域の基点を座標(100,100)を始点として、塗り潰し領域のX方向の端(終点)の座標(500,100)までの線分の情報を生成する。以下、始点および終点のX座標は変えずに、Y方向に線幅分ずつずらしながら、Y方向の終点まで、順次、線分情報を生成する。図7−1の例では、線幅を「40」として、最初の始点(100,100)−終点(500,100)の線分に続き、始点(100,140)−終点(500,140)、始点(100,180)−終点(500,180)のように、Y方向に線幅分ずつずらしながら、線分情報を生成する。図7−2は、このようにして生成された線分情報の例を示す。この線分情報が、塗り潰しストロークを行うための塗り潰しストローク情報に相当する。
ステップS12で塗り潰しストローク情報を生成すると、処理はステップS13に移行され、文字ストローク生成部403が文字形状情報を取得する。例えば、文字ストローク生成部403は、白抜き対象文字列600を構成する各文字のフォントデータを形状情報取得部400から読み出す。
なお、ここでは、形状情報取得部400には、文字や記号の中心線の並びで定義されるストロークフォントとしてフォントデータが記録されているものとする。ストロークフォントデータは、例えば文字や記号の中心線の端点の座標と、描画順とを有する。また、フォントの範囲を定義する座標情報も、ストロークフォントデータに含めてよい。これに限らず、形状情報取得部400には一般的なアウトラインフォントで以てフォントデータを記録しておき、アウトラインフォントに基づきストロークフォントを生成してもよい。
次のステップS14で、文字ストローク生成部403は、ステップS13で取得したストロークフォントに基づき文字や記号を描写するための文字ストローク情報を生成する。ここで、ストロークフォントデータは、標準化された大きさの座標値で構成される。一方、描画させる文字サイズや描画位置などに応じて、ストロークフォントの変倍(拡大または縮小)を行う必要が生じる場合がある。また、ストロークフォントデータは、曲線で構成されている場合が多い。一方、レーザ照射システム1においては、ストロークを曲線で構成するよりも、線分で構成した方が制御が容易である。そのため、ストロークフォントを直線で近似する必要が生じる。
図8−1を用いて、ステップS14における文字ストローク情報の生成について説明する。一例として、文字「r」のストロークフォント510を考える。文字「r」のストロークフォント510は、図8−1の左上に例示されるように、縦の線分と、当該線分に接続される曲線とからなる。この曲線部分を直線近似して、ストロークフォント510’を生成する。ストロークフォント510’は、ストロークフォント510の曲線部分を直線近似した線分513、514および515と、曲線部分との接続部を含む直線部分の線分511および512とからなる。
このストロークフォント510’を、例えば図8−1の下図の如く描画サイズまで拡大して、実際の描画に用いる文字ストローク情報を生成する。この例では、ストロークフォント510の直線部分を構成する線分511および512からなる線分が点A(100,50)−点B(100,500)とされる。また、それぞれストロークフォント510の曲線部分を構成する線分513が点C(100,220)−点D(230,50)、線分514が点D(230,50)−点E(300,50)、線分515が点E(300,50)−点F(400,100)とされる。図8−2は、このようにして生成された線分情報の例を示す。この線分情報が、文字ストロークを行うための文字ストローク情報に相当する。
次に、1文字分の文字ストローク情報が生成されると、処理はステップS15に移行され、白抜き対象文字列600を構成する全ての文字や記号に対して文字ストローク情報の生成処理が行われたか否かが判定される。若し、白抜き対象文字列600のうち未だ処理されていない文字や記号があると判定されたら、処理はステップS13に戻され、次の文字について処理が行われる。
なお、以下では、白抜き文字の対象となる文字列に含むことができる文字および記号を、纏めて文字と呼ぶ。また、白抜き文字の対象としては、これら文字や記号に限らず、図案なども含めることができる。この図案も、纏めて文字と呼ぶ。
一方、ステップS15で、白抜き対象文字列600を構成する全ての文字に対して文字ストローク情報の生成処理が行われたと判定されたら、処理はステップS16に移行される。ステップS16では、パワー調整部405が、塗り潰しストローク生成部404で生成された塗り潰しストローク情報による塗り潰しストロークと、文字ストローク生成部403で生成された文字ストローク情報による文字ストロークとに対するストロークパワーの調整を行う。
第1の実施形態では、塗り潰しストロークに対して、サーマルリライタブル媒体20を少なくとも発色温度帯の温度まで加熱するように、照射パワーを調整する。同様に、パワー調整部405は、文字ストロークに対して、サーマルリライタブル媒体20を消色温度帯の温度まで加熱するように照射パワーを調整する。
各ストロークに対する照射パワーの調整の際に、ストロークによるレーザ照射位置の移動速度などを考慮して、各ストロークにおけるある点の温度が所定時間内に所定温度に加熱されるように照射パワーを調整すると、好ましい。
ステップS16でレーザ光の照射パワーが調整されると、次のステップS17において、描画命令作成部406が、レーザ照射装置101に対する描画命令を生成する。すなわち、ステップS17で、描画命令生成部406は、ステップS12で生成された塗り潰しストローク情報と、ステップS14で生成された文字ストローク情報と、ステップS16で調整された、塗り潰しストロークおよび文字ストロークそれぞれに対するレーザ光の照射パワーとに基づき、描画命令を生成する。
ステップS17で生成される描画命令について、図9−1〜図9−3を用いてより具体的に説明する。なお、ここでは、文字「7」を白抜き対象文字として考え、ストロークによる線幅を「40」とする。
この場合、図9−1に例示されるように、X方向の塗り潰しストロークを、始点(100,100)−終点(500,100)、始点(100,140)−終点(500,140)、…というように、Y方向に線幅分ずらして順次行って発色させた塗り潰し領域を形成する。そして、この塗り潰し領域に対して、文字「7」のストロークフォントを拡大した文字ストローク情報に従い消色温度帯まで加熱する文字ストロークを行うことで、文字「7」の白抜き文字が形成される。
図9−2は、このような描画を行うための一例の描画命令を示す。図9−2において、各行それぞれは、1つの制御コードからなり、制御コードは、パラメータを含むことができる。1つの描画命令は、少なくとも1つの制御コードを含む。
制御コード「t prmt」は、ストロークによる線幅をパラメータprmtに示される値に設定する。制御コード「p prmp」は、レーザ光の照射パワーをパラメータprmpに示される値に設定する。この例では、制御コード「p prmp」のパラメータprmpは、発色温度帯の温度に加熱する際の照射パワーを100%としたときのパーセンテージで照射パワーを示す。制御コード「m prmmx prmmy」は、レーザ光を照射しない状態で照射位置を移動させる移動先の座標(x,y)を、パラメータ(prmmx,prmmy)に示される値に設定する。制御コード「d prmdx prmdy」は、レーザ光を照射した状態で照射位置を移動させる移動先の座標(x,y)を、パラメータ(prmdx,prmdy)に示される値に設定する。制御コード「w prmw」は、待ち時間をパラメータprmwに示される値に設定する。
ステップS17で描画命令が生成されたら、次のステップS18で、全体制御装置100は、生成された描画命令に従い通信I/F304を介してレーザ照射装置101を制御して、サーマルリライタブル媒体20に対して描画を行う。
図9−2に例示される描画命令では、全体制御装置100は、例えばレーザ発振器11を制御して、最初の制御コード「t 40」で線幅を「40」に設定し、次の制御コード「p 100」でレーザ光の照射パワーを「100%」に設定する。そして、全体制御装置100は、次の制御コード「m 100 100」で、塗り潰しの始点とされる座標(100,100)に照射位置が移動するように方向制御モータ12を制御し、次の制御コード「w 50」で時間「50」だけ待機する。
ここでの待ち時間は、方向制御モータ12により、方向制御ミラー13が動いている状態から停止されたときに、停止動作が行われてから方向制御ミラー13が完全停止して安定するまでの時間が設定される。レーザ照射装置101に適した固定値としての待ち時間は、例えば「50」が予め設定されている。
制御コード「w 50」による待機後、全体制御装置100は、次の制御コード「d 500 100」で、直前の制御コード「p 100」で設定された照射パワーでレーザ光の照射を行うようにレーザ発振器11を制御すると共に、パラメータに示される座標(500,100)まで照射位置を移動させるように、方向制御モータ12を制御する。この制御に従い方向制御モータ12により方向制御ミラー13が駆動される。これにより、座標(100,100)を始点とし、座標(500,100)を終点とする塗り潰しストロークによる線分の描画が行われる。
1回の塗り潰しストロークによる描画が終了すると、制御コード「m 100 140」により、次の塗り潰しストロークの始点まで照射位置を移動させ、さらに制御コード「w 50」による待機を行い、待機後、制御コード「d 500 140」により次の塗り潰しストロークによる描画を行う。この制御コード「m prmmx prmmy」、「w prmw」および「d prmdx prmdy」による塗り潰しストロークによる描画動作を描画命令に従い繰り返すことで、塗り潰し領域が形成される(図9−1参照)。
塗り潰し領域が形成されると、白抜き文字の描画が開始される。全体制御装置100は、図9−2の描画命令の中程に記述される制御コード「p 60」によりレーザ発振器11を制御して、レーザ光の照射パワーを「60%」に設定する。そして、全体制御装置100は、次の制御コード「m 200 150」で、文字ストロークによる1つの線分の始点とされる座標(200,150)に照射位置が移動するように方向制御モータ12を制御する。そして、次の制御コード「w 50」でパラメータに設定される時間「50」だけ待機する。
制御コード「w 50」による待機後、全体制御装置100は、次の制御コード「d 300 150」で、直前の制御コード「p 60」で設定された照射パワーでレーザ光の照射を行うようにレーザ発振器11を制御すると共に、パラメータに示される座標(300,150)まで照射位置を移動させるように、方向制御モータ12を制御する。この制御に従い方向制御ミラー13が駆動される。
これにより、図9−1に例示されるように、座標(200,150)を始点とし、座標(300,150)を終点とする軌跡520に沿って、サーマルリライタブル媒体20が消色温度帯の温度まで加熱される。その結果、この軌跡520を中心として制御コード「t 40」で設定された幅「40」の範囲521において、塗り潰しされた部分が消色され、文字「7」の横線部分が白抜きで描画される。
全体制御装置100は、次の制御コード「m 300 150」で、文字ストロークによる次の線分の始点とされる座標(300,150)に照射位置が移動するように方向制御モータ12を制御する。図9−1の例では、当該次の線分の始点が直前に描画(消色)した線分の終点と一致するので、実際には照射位置の移動は行われない。
次の制御コード「w 50」で時間「50」だけ待機した後、全体制御装置100は、その次の制御コード「d 250 250」で、直前の制御コード「p 60」で設定された照射パワーでレーザ光の制御を行うようにレーザ発振器11を制御すると共に、パラメータに示される座標(250,250)まで照射位置を移動させるように、方向制御モータ12を制御する。この制御に従い方向制御ミラー13が駆動され、座標(300,150)を始点とし、座標(250,250)を終点とする軌跡522に沿って、サーマルリライタブル媒体20が消色温度帯の温度まで加熱される。その結果、この軌跡522を中心として制御コード「t 40」で設定された幅「40」の範囲523において、塗り潰しされた部分が消色され、文字「7」の斜め線部分が白抜き描画される。
図9−3は、上述のようにして塗り潰し領域に白抜き文字を描画した結果の例を示す。サーマルリライタブル媒体20を発色温度帯の温度まで加熱して発色させた塗り潰し領域530に対して、消色温度帯の温度まで加熱することで消色させて描画した線分521および523により、白抜き文字「7」が形成されていることが分かる。
上述したように、第1の実施形態によれば、フォントデータからビットマップデータを作成することなく、線分のストロークにより白抜き文字を描画することができる。
なお、上述では、塗り潰し領域を、X方向の線分をY方向に線幅に応じて順次ずらして描画することで形成するように説明したが、これはこの例に限定されない。すなわち、塗り潰し領域を形成するためには、所定範囲を、ストロークにより発色温度帯の温度まで加熱して発色できれば、Y方向、斜め方向、渦巻き状など他の方法で形成してもよい。
また、上述では、塗り潰し領域を、サーマルリライタブル媒体20に対してレーザ光を照射して形成するように説明したが、これはこの例に限定されない。すなわち、サーマルリライタブル媒体20の所定範囲が発色温度帯の温度まで加熱されれば、当該所定範囲を塗り潰し領域として用いることができる。例えば、サーマルリライタブル媒体20を、接触型のホットスタンプで加熱して所定範囲を発色させてもよいし、温風やランプ(赤外線)により加熱して当該所定範囲を発色させることもできる。
さらに、加熱または加熱以外の方法で所定範囲を予め発色させ塗り潰し領域が形成されたサーマルリライタブル媒体20を、白抜き文字の描画対象とし、第1の実施形態における塗り潰しを行うステップおよび構成を全て省略することも考えられる。この場合、塗り潰し領域決定部402は、入力装置306から入力された情報や、ハードディスク305などに予め格納された情報から塗り潰し領域を示す情報を取得し、塗り潰し領域を決定することが考えられる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、塗り潰し領域に対する白抜き文字の描画の際に、一度、消色温度帯の温度まで加熱して白抜き文字を描画した後に、白抜き文字の描画部分を再び弱い照射パワーで以てなぞる。これにより、より確実に白抜き文字の描画を行うことができるようになる。
なお、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態におけるレーザ照射システム1をそのまま利用できるので、装置の構成についての詳細な説明は、省略する。
図10を用いて、第2の実施形態による白抜き文字の描画方法の原理について説明する。なお、図10において、上述した図3と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図3を用いて既に説明したように、サーマルリライタブル媒体20は、発色温度帯の温度まで加熱した後急冷すると発色し、発色部分を消色温度帯の温度まで加熱して徐冷することで、消色することができる。
ここで、例えば環境温度などの影響により、消色時に、消色温度帯まで加熱された部分が急冷されてしまうと、発色部分が十分に消色されない場合がある。例えば、発色部分に対して曲線210で示されるように消色温度帯まで加熱した後に、その部分が急冷され、曲線211に示されるように、消色温度帯の温度範囲以下の温度で徐冷が進行したものとする。この場合、消色温度帯の温度範囲内での徐冷時間が短いため、十分に消色されない。
そこで、第2の実施形態においては、図10の曲線212に例示されるように、一度、照射パワーp1により消色温度帯の温度で加熱した部分を、照射パワーp2により再び消色温度帯の温度まで加熱する。これにより、消色部分の温度が消色温度帯の範囲内に留まる時間が長くなり、発色部の消色、すなわち白抜き文字の描画をより確実に行うことができる。
図11は、第2の実施形態による全体制御装置100’の機能を説明するための機能ブロック図である。なお、図11において、上述した図4と共通する部分については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。この第2の実施形態による全体制御装置100は、図4を用いて説明した第1の実施形態による全体制御装置100に対して、文字ストローク複製部407が追加されている。文字ストローク複製部407は、文字ストローク生成部403で生成された文字ストローク情報を複製して保持する。
図12は、第2の実施形態による白抜き文字の描画処理を示す一例のフローチャートである。なお、図12において、上述した図5のフローチャートと共通する処理には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。ステップS10による文字の描画位置決定処理、ステップS11およびステップS12の塗り潰しストローク生成処理、ならびに、ステップS13〜ステップS15の文字ストローク生成処理は、上述した図5のフローチャートの対応する各処理と同一の処理であるので、ここでの説明を省略する。
ステップS15で白抜き対象の文字列を構成する全ての文字に対して文字ストローク情報の生成処理が行われたと判定されたら、処理はステップS20に移行される。ステップS20で、文字ストローク複製部407が、ステップS13〜ステップS15の処理で生成された文字ストローク情報を複製する。複製された複製文字ストローク情報は、例えばメモリ302に保持される。
次のステップS21で、パワー調整部405が、塗り潰しストローク生成部404で生成された塗り潰しストローク情報によるストロークと、文字ストローク生成部403で生成された文字ストローク情報によるストロークと、文字ストローク複製部407で複製された複製文字ストローク情報によるストロークとに対するストロークパワーの調整を行う。
第2の実施形態では、パワー調整部405は、文字ストローク生成部403で生成された文字ストローク情報による文字ストロークに対するレーザ光の照射パワーを、サーマルリライタブル媒体20を消色温度帯の温度まで加熱するような照射パワーp1に調整する。また、パワー調整部405は、文字ストローク複製部407に複製された複製文字ストローク情報による複製文字ストロークに対しても同様に、レーザ光の照射パワーを、サーマルリライタブル媒体20を消色温度帯の温度まで加熱するような照射パワーp2に調整する。
ここで、図10を参照し、文字ストロークによる照射パワーp1によるレーザ光の照射で消色温度帯の温度に加熱された部分の温度が、消色温度帯の温度範囲内にあるうちに、複製文字ストロークによる照射パワーp2によるレーザ光の照射を行うのが好ましい。また、複照射パワーp2によるレーザ光の照射が行われるタイミングでは、サーマルリライタブル媒体20のレーザ光照射部分が、照射パワーp1によるレーザ光の照射により既にある程度加熱されていることになる。したがって、照射パワーp2は、文字ストロークによる照射を行う照射パワーp1よりは小さいパワーで済むことになる。
ステップS21で各ストロークパワーが調整されると、処理はステップS22に移行され、描画命令生成部406により描画命令が生成される。そして、処理はステップS18に移行され、生成された描画命令に従い全体制御装置100によりレーザ照射装置101が制御されて、サーマルリライタブル媒体20に対して描画が行われる。
図13は、図12のステップS20〜ステップS22による、複製文字ストロークに関する処理をより詳細に示す一例のフローチャートである。ステップS20で、上述したように、文字ストローク複製部407が、ステップS13〜ステップS15の処理で生成された文字ストローク情報を複製する。そして、次のステップS21−1で、パワー調整部405が、1組目、すなわち文字ストローク生成部403で生成された文字ストローク情報による文字ストロークに対して、照射パワーp1を設定する。さらに、ステップS21−2で、文字ストローク複製部407で複製された複製文字ストローク情報による複製文字ストロークに対して、照射パワーp2を設定する。
パワー調整部405による照射パワー設定処理が終了したら、処理はステップS22−1に移行される。ステップS22−1では、描画命令生成部406が、ステップS12で生成された塗り潰しストローク情報による塗り潰しストロークの全てに対する描画命令を生成する。
次のステップS22−2で、描画命令生成部406が、照射パワーp1が設定された1つの文字ストロークの描画を描画命令に追加し、次のステップS22−3で、待ち時間を描画命令に追加する。さらに、次のステップS22−4で、ステップS22−2で描画命令に追加された1つの文字ストロークの描画をなぞるための、照射パワーp2が設定された1つの複製文字ストロークの描画を描画命令に追加する。
そして、次のステップS22−5で、白抜き対象文字列を構成する全文字ストロークに対する処理が終了したか否かが判定される。若し、終了していないと判定されたら、処理はステップS22−2に戻される。一方、終了していると判定されたら、この図13のフローチャートを抜けて、処理は図12のステップS18に移行される。
ステップS22で生成される描画命令について、図14−1〜図14−3を用いてより具体的に説明する。なお、ここでは、上述した図9−1に例示される文字「7」を白抜き対象文字として考え、参照を容易とするために、図9−1を図14−1として再掲する。
図14−2および図14−3は、第2の実施形態により生成される一例の描画命令を示す。図14−2および図14−3に例示される描画命令において、各制御コードの意味は、図9−2で説明した各制御コードと同一なので、ここでの説明を省略する。
図14−2は、図13のステップS22−1における、塗り潰しストロークに対する描画命令の例を示す。最初の制御コード「t 40」により線幅が「40」に設定され、次の制御コード「p 100」によりレーザ光の照射パワーが100%に設定される。そして、次の制御コード「m prmmx prmmy」、「w prmw」および「d prmdx prmdy」により、レーザ光を照射しない状態での照射位置の移動先座標、待ち時間、ならびに、レーザ光を照射した状態での照射位置の移動先座標が設定され、これが塗り潰しストローク全てに対してそれぞれ設定される。
図14−3は、図13のステップS22−2〜ステップS22−5における、白抜き文字に対する描画命令の例を示す。最初の制御コード「p 60」で、照射パワーp1が設定される。この照射パワーp1が文字ストロークに対応するもので、この例では、照射パワーp1を、発色温度帯の温度に加熱する際の照射パワーを100%としたときの、60%のパワーとしている。次の制御コード「m 200 150」で、文字ストロークによる1つの線分の始点とされる座標(200,150)が設定される。そして、次の制御コード「w 50」で、方向制御ミラー13が安定するまでの待ち時間が「50」に設定される。さらに次の制御コード「d 300 150」で、レーザ光を照射しながら移動する移動先の座標(300,150)がパラメータとして設定される。この制御コード「d 300 150」により、直前の制御コード「p 60」で設定された照射パワーp1で、現在の照射位置からパラメータにより設定された」座標(300,150)まで、レーザ光を照射しながら照射位置が移動され、1回の文字ストロークによる描画が行われる。
次の制御コード「p 20」で、照射パワーp2が設定される。この照射パワーp2が複製文字ストロークに対応するもので、この例では、20%のパワーとされている。次の制御コード「m 200 150」で、複製文字ストロークによる1つの線分の始点とされる座標(200,150)が設定される。
そして、次の制御コード「w 150」で、待ち時間が設定される。ここで設定される待ち時間は、方向制御ミラー13が安定するまでの待ち時間であると共に、例えば上述の図10において、レーザ光を照射パワーp1で照射した後に、照射パワーp2で照射するタイミングを決めるものである。ここでの待ち時間の長さは、例えば環境温度と照射パワーp2との関係などから実験的に求める。図14−3の例では、待ち時間が「150」に設定されている。なお、この待ち時間を長くすると、照射パワーp2が大きくなる傾向がある。
次の制御コード「d 300 150」で、レーザ光を照射しながら移動する移動先の座標(300,150)がパラメータとして設定される。照射パワーp2が設定された制御コード「p 20」から、この制御コード「d 300 150」までの各制御コードにより、上述の、照射パワーp1が設定された制御コード「p 60」およびこの制御コード「p 60」に続く制御コード「m 200 150」および「d 300 150」により照射パワーp1で加熱された線分が、照射パワーp2でなぞられ再び加熱されることになる。
照射パワーp1および照射パワーp2による1つの線分に対する描画設定が終了すると、制御コード「p 60」により再び照射パワーp1が設定され、次の制御コード「m 300 150」により、次の描画開始点にレーザ光の照射位置を移動させるために、次の線分の始点の座標が設定される。
このように、照射パワーp1および照射パワーp2による、線分に対する描画設定を、白抜き対象文字列を構成する全ての文字に対して行い、白抜き文字に対する描画命令を生成する。
第2の実施形態によれば、環境温度が低い場合であっても、発色部分を確実に消去することができるため、白抜き文字の品質が安定化する。
なお、上述では、サーマルリライタブル媒体20を消色温度帯の温度に加熱し、また、消色温度帯の温度を所定時間保持するために、レーザ光の照射パワーを照射パワーp1、照射パワーp2のように制御したが、これはこの例に限定されない。例えば、レーザ光の照射パワーを固定的として、照射のON/OFFを短時間で繰り返すことで、サーマルリライタブル媒体20の加熱量を同様に制御することができる。この場合、レーザ光照射のON時間とOFF時間の割合に応じて加熱量が変化する。
また、上述では、同じ文字ストロークを消色温度帯の温度に2回、加熱することで、消色温度帯の温度を保持するように説明したが、これはこの例に限られない。すなわち、同じ文字ストロークを3回以上、消色温度帯の温度に加熱してもよい。
さらに、上述では、図12のステップS20において、照射パワーp2でのレーザ光の照射を行うために、ステップS13〜ステップS15で生成された文字ストローク情報を複製しているが、これはこの例に限定されない。例えば、文字ストローク生成部400が、ステップS13〜ステップS15で生成された文字ストローク情報をメモリ302やハードディスク305に保持している場合、保持されている文字ストローク情報を読み出すことで、複製文字ストローク情報を得ることができる。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、より広範囲の加熱が可能な加熱手段を用いて環境温度を上げることで、文字ストローク部分の温度が消色温度帯の温度に留まる時間を長くする。第3の実施形態によれば、上述した第2の実施形態のように、消色温度帯の温度まで加熱した一度文字ストローク部分を、レーザ光の照射パワーを弱めて再び消色温度帯の温度まで加熱しなくても、消色温度帯の温度を所定時間保持することが可能となる。
このような第3の実施形態に適用可能な加熱手段としては、例えば赤外線ランプを挙げることができる。図15は、第3の実施形態に適用可能なレーザ照射システム1’の一例の構成を示す。なお、図15において、上述した図1と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図15において、レーザ照射システム1’におけるレーザ照射装置101’は、図1に示したレーザ照射システム1のレーザ照射装置101に対して、サーマルリライタブル媒体20に対して赤外線を照射する赤外線ランプ30Aおよび30Bが追加されている。2個の赤外線ランプ30Aおよび30Bを用いることで、サーマルリライタブル媒体20の媒体面を均一に加熱することができる。赤外線ランプ30Aおよび30BのON/OFFは、全体制御装置100”により制御される。例えば、全体制御装置100”は、CPU301が制御プログラムに従い、通信I/F304を介して赤外線ランプ30Aおよび30BのON/OFFを制御する。
赤外線ランプ30Aおよび30Bは、少なくとも、レーザ光の照射位置およびその近傍に赤外線が照射されるように配置される。これに限らず、サーマルリライタブル媒体20の全体に赤外線が照射されるように、赤外線ランプ30Aおよび30Bを配置してもよい。また、赤外線ランプ30Aおよび30Bは、サーマルリライタブル媒体20に対して、レーザ光の照射側(表側とする)から赤外線を照射するように配置しているが、これはこの例に限られない。例えば、サーマルリライタブル媒体20の裏側から赤外線を照射するように配置してもよいし、サーマルリライタブル媒体20の表裏それぞれに赤外線を照射するように配置することもできる。
なお、第3の実施形態における全体制御装置100”の機能は、図4を用いて説明した第1の実施形態と共通とすることができる。同様に、白抜き文字の描画処理も、図5を用いて説明した第1の実施形態と共通とすることができる。そのため、ここでのこれらの説明は、省略する。
第3の実施形態では、描画命令生成部406において、赤外線ランプ30Aおよび30Bを点灯させる制御コード「l prml」を新たに定義する。赤外線ランプ30Aおよび30Bは、制御コード「l prml」のパラメータprmlに指定される強度で赤外線を照射する。一例として、制御コード「l 100」で100%の強度とされ、制御コード「l 0」でランプが消灯される。これに限らず、単に赤外線のON/OFFを切り替えるスイッチとしてパラメータを用いることもできる。
描画命令生成部406は、この制御コード「l prml」を、塗り潰しを行うための一連の制御コードの後であって、且つ、文字ストロークを行うための制御コードの前に、パラメータをランプを点灯させる値として配置する。
図16は、このように制御コード「l prml」が配置された描画命令の例を示す。図16の例では、塗り潰しの描画命令の最後の制御コード「d 500 140」の直後に、制御コード「l 100」が配置されている。この制御コード「l 100」により、赤外線ランプ30Aおよび30Bを点灯するように設定される。これら制御コード「d 500 140」と制御コード「l 100」の間に発色温度帯の温度からの冷却時間を待機する待ち時間を設定する制御コード「w prmw」を配置してもよい。
制御コード「l 100」の次に、消色温度帯の温度まで加熱しての文字ストロークを行う一連の制御コードが配置される。図16の例では、当該制御コード「l 100」の次に、制御コード「p 60」が配置され、消色温度帯の温度まで加熱するレーザ光の照射パワーが設定される。続けて文字ストロークの描画を行うための各制御コードが配置される。
文字ストロークを描画するための一連の制御コードの後に、制御コード「w 300」が配置される。この制御コード「w 300」は、媒体面の温度が消色温度帯内に留まるべき時間を設定するもので、図16の例では、パラメータが「300」とされ、時間「300」だけ待機するように設定されている。この制御コード「w 300」の直後に、制御コード「l 0」が配置され、赤外線ランプ30Aおよび30Bが消灯するように設定される。すなわち、赤外線ランプ30Aおよび30Bのは、文字ストロークによる白抜き描画後に、この制御コード「w prmw」のパラメータに示される時間だけ点灯が持続された後に、消灯される。
このように、第3の実施形態では、サーマルリライタブル媒体20を加熱するための加熱手段を別途に用意する必要がある一方で、第2の実施形態の方法のように、同じ文字ストロークに対して複数回の描画動作を行う必要が無いため、第2の実施形態に対して描画時間を短縮できる。
上述では、媒体面を消色温度帯の温度に保持するための加熱手段として赤外線ランプを用いたが、これはこの例に限定されない。すなわち、媒体面の所定範囲以上の領域を略均一に加熱可能であれば、他の加熱手段を用いることも可能である。
例えば、温風を用いてサーマルリライタブル媒体20の媒体面を加熱することが考えられる。また例えば、サーマルリライタブル媒体20の裏面側に金属プレートを配置し、この金属プレートに対して電磁波を照射して当該金属プレートを加熱することで、間接的にサーマルリライタブル媒体20を加熱することも考えられる。これらの場合でも、上述の赤外線ランプの場合と同様に、文字ストロークによる描画後に所定の待ち時間を経て加熱が開始され、加熱が開始されてから所定時間後に加熱が停止されるように、全体制御装置100’に制御される。
なお、上述の各実施形態では、レーザ照射装置101または101’は、サーマルリライタブル媒体20に対してレーザ光により非接触でエネルギを伝達し、このエネルギによりサーマルリライタブル媒体20に可視情報(塗り潰しおよび文字)を描画するように説明したが、これはこの例に限定されない。すなわち、サーマルリライタブル媒体20に加熱手段を接触させ、直接的に加熱を行ってエネルギを伝達して可視情報を描画するような描画装置に対しても、本発明の各実施形態を適用することができる。
<他の実施形態>
上述した各実施形態による全体制御装置100で実行される制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD、DVD、フレキシブルディスク(FD)、などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
また、各実施形態による全体制御装置100で実行される制御プログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、各実施形態の全体制御装置100で実行される制御プログラムをインターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
また、各実施形態による全体制御装置100で実行される制御プログラムを、ROMなどに予め組み込んで提供するように構成してもよい。
各実施形態による全体制御装置100で実行される制御プログラムは、上述した各部(描画位置決定部401、塗り潰し領域決定部402、文字ストローク生成部403、塗り潰しストローク生成部404、パワー調整部405および描画命令生成部406など)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU301が上述の記憶媒体から制御プログラムを読み出して実行することにより、これら各部が主記憶装置(例えばメモリ302)上にロードされ、描画位置決定部401、塗り潰し領域決定部402、文字ストローク生成部403、塗り潰しストローク生成部404、パワー調整部405および描画命令生成部406などが主記憶装置上に生成されるようになっている。