以下、本発明の描画制御装置、レーザ照射装置、描画制御方法、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体を適用した実施の形態について説明する。
ここでは、「描画対象」なる文言は、文字、数字、記号、図形等の描画の対象を表すものとして用いる。また、「文字」とは、遍(へん)や旁(つくり)、又は、更にその一部等、文字の全体又は一部を表す文言として用いる。同様に、「数字」、「記号」、「図形」は、数字、記号、図形の全体又は一部を表す文言として用いる。
また、「線分」とは、文字等の描画対象に含まれ、描画対象を描画するために両端の座標が決まっている区間をいう。この線分は、直線の一部だけでなく、曲線の一部も含み、太さを有する。
また、「一筆部品」とは、描画が開始される位置から次に描画が終了される位置までに連続的に描画される一又は複数の線分を含むものとして用いる。例えば、レーザ照射で描画を行う場合は、レーザの1回の照射開始点から照射終了点までに描画される文字等の一画が一筆部品となる。
このため、文字、数字、記号、図形等の描画対象は、1以上の一筆部品を含み、一筆部品は、1以上の線分を含む。
なお、実施の形態の一筆部品(一画)は、従来のストロークフォントのストロークに対応するが、実施の形態の一筆部品は、レーザマーキング装置100による文字の描画に最適化されるものであって、公的機関(例えば、日本規格協会、ISO等)等が定める一画と同じであってもよいし異なっていてもよい。実施の形態のレーザマーキング装置100は、レーザ光により媒体を発色させて一筆部品を描画するため、一筆部品を適切な形状に調整する。
また、「描画順」なる文言は、描画対象に含まれる線分を描画する順(線分をどちらの端部から描画するかという描画順も含む)と、文章等に含まれる複数の描画対象の各々を描画する順との2つの意味を有するものとして用いる。
[実施の形態1]
図2は、実施の形態1のレーザマーキング装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
レーザマーキング装置100は、レーザを照射する描画装置10、及び、描画装置10の描画を制御する描画制御装置20を有する。描画装置10は、レーザを照射するレーザ発振器11、レーザの照射方向を変える方向制御ミラー13、方向制御ミラー13を駆動する方向制御モータ12、光学レンズ14、及び集光レンズ15を含む。
レーザ発振器11は、半導体レーザ(LD(Laser Diode))であるが、気体レーザ、固体レーザ、液体レーザ等でもよい。方向制御モータ12は、方向制御ミラー13の反射面の向きを2軸に制御する例えばサーボモータである。方向制御モータ12と方向制御ミラー13とによりガルバノミラーを構成する。光学レンズ14は、レーザ光のスポット径を大きくするレンズであり、集光レンズ15はレーザ光を収束させるレンズである。
リライタブル媒体50は、180℃以上の温度に加熱して急冷することで発色し、130〜170℃の温度に加熱することで消色する書き換え可能な感熱媒体である。通常の感熱紙やサーマルリライタブル媒体は近赤外領域のレーザ光を吸収しないので、近赤外レーザ波長を発振するレーザ光源(半導体レーザや固体レーザのYAG等)を用いる場合は、感熱紙、サーマルリライタブル媒体にレーザ光を吸収する材料の添加や層を追加する必要がある。なお、書き換えとは、レーザ光で加熱して記録を行い、レーザ光又は温風、ホットスタンプ等で加熱して消去することである。また、書き換えができないサーマルペーパとは、加熱により消色が困難な感熱紙をいう。本実施の形態では、使用する媒体の例として、リライタブル媒体50を使用した場合を説明するが、書き換えができないサーマルペーパ、プラスチック、金属等のように書き換えが可能でない媒体に対しても、好適に適用できる。
図3は、描画制御装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。図3は、主にソフトウェアによって描画制御装置20を実装する場合のハードウェア構成図であり、コンピュータを実体としている。コンピュータを実体とせず描画制御装置20を実現する場合、ASIC((Application Specific Integrated Circuit))等の特定機能向けに生成されたICを利用する。
描画制御装置20は、CPU31、メモリ32、ハードディスク35、入力装置36、CD−ROMドライブ33、ディスプレイ37及びネットワーク装置34を有する。ハードディスク35には、ストロークフォントの一連の文字のフォントデータを記憶するフォントデータDB41、フォントデータから重複を排除した描画命令を生成し描画装置10を制御する文字描画プログラム42、描画順同一化対象DB43、及び描画条件DB44が記憶されている。
CPU31は、ハードディスク35から文字描画プログラム42を読み出して実行し、後述する手順で、リライタブル媒体50に文字を描画する。メモリ32は、DRAM等の揮発性メモリで、CPU31が文字描画プログラム42を実行する際の作業エリアとなる。
入力装置36は、マウスやキーボード等の描画装置10を制御する指示をユーザが入力するための装置である。リライタブル媒体50に描画する文章又は図形(以下、文章等)や、文章等に含まれる描画対象のサイズ等を表す描画条件は、例えば、入力装置36を介してユーザによって入力される。入力された描画条件は、描画条件DB44として、例えば、ハードディスク35に記憶される。描画条件には、文章等の中における各描画対象の位置、及びサイズ等を表すデータが含まれる。描画条件のデータ構造については図7を用いて後述する。
また、入力装置36には、実施の形態1の描画制御装置20による特定の描画対象に含まれる線分の描画順を揃える処理を実行するモード(実行モード)、又は当該処理を実行しないモード(非実行モード)を選択するための操作もユーザによって入力される。実行モードが選択された場合は、実行モードを実行する対象であることを表す対象フラグが設定される。この対象フラグは描画順同一化対象DB43に記憶される。描画順同一化対象DB43に記憶される対象フラグを含む描画順同一化対象データのデータ構造については図7を用いて後述する。
ディスプレイ37は、例えば文字描画プログラム42が指示する画面情報に基づき所定の解像度や色数で、GUI(Graphical User Interface)画面を表示するユーザインターフェイスとなる。例えば、リライタブル媒体50に描画する文字の入力欄が表示される。
CD−ROMドライブ33は、CD-ROM38を脱着可能に構成され、CD−ROM38からデータを読み出し、また、記録可能な記録媒体にデータを書き込む際に利用される。フォントデータDB41、及び文字描画プログラム42は、CD-ROM38に記憶された状態で配布され、CD-ROM38から読み出されてハードディスク35にインストールされる。CD−ROM38は、この他、DVD、ブルーレイディスク、SDカード、メモリースティック(登録商標)、マルチメディアカード、xDカード等、不揮発性のメモリで代用することができる。
ネットワーク装置34は、LANやインターネット等のネットワークに接続するためのインターフェイス(例えばイーサネット(登録商標)カード)であり、OSI基本参照モデルの物理層、データリンク層に規定されたプロトコルに従う処理を実行して、描画装置10に文字コードに応じた描画命令を送信することを可能とする。フォントデータDB41、及び文字描画プログラム42は、ネットワークを介して接続した所定のサーバからダウンロードすることができる。なお、ネットワーク経由でなく、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、ワイヤレスUSB、Bluetooth等で直接、描画制御装置20と描画装置10を接続してもよい。
リライタブル媒体50に描画される描画対象の文字は、上述のように入力装置36から入力され、例えばリスト状のデータとしてハードディスク35に記憶されている。なお、リライタブル媒体50に描画される描画対象である文字等を含む文章等や、文章等に含まれる描画対象のサイズは、描画条件を構成する。
文字は、UNICODEやJISコード等の文字コードで特定され、描画制御装置20は文字コードに対応する文字のフォントデータをフォントデータDB41から読み出し、描画装置10を制御するための描画命令を生成する際に用いる。また、描画制御装置20は、描画順同一化対象DB43に記憶された描画順同一化対象データを読み出し、描画順の決定の際に参照する。
また、描画対象の文字の文字コードは、入力装置36から入力される場合と、予めハードディスク35に記憶されている場合(ネットワーク経由で入力される場合を含む)とがある。
入力装置36から入力される場合は、キーボードのキーを押下することで入力されるキーコードに対応した文字コード、又は、IME(Input Method Editor)が起動している場合にキーコードからIMEが変換した文字コードが対象文字コード取得手段25に入力される。また、ハードディスク35に予め記憶されている場合は、例えば、宛先等の文字列がリスト状に記憶されているので、文字列の文字を指定する文字コードが読み出され、対象文字コード取得手段25に入力される。
また、描画対象が数字の「1」のように、全て直線状の線分で構成されている場合は、各線分の座標を容易に抽出することができる。しかしながら、アウトラインフォントでは曲線をスケーラブルに描画できるように、例えばベジェ曲線のような曲線で描画できるようになっている。曲線で描画されていると、線分間の距離の算出が複雑になるので、曲線を含む描画対象であっても直線状の線分に変換して描画することが好適になる。
そこで、実施の形態1の描画制御装置20は、フォントデータが曲線を含む場合、曲線部分を直線に変換し、各直線の線分の座標を検出する。なお、文字が曲線を含む場合、フォントデータには曲線制御用のデータが含まれているので、その文字が曲線を含むか否かはフォントデータから判定される。
図4は、フォントデータ、座標データ、及び座標データに基づいて描画された文字の一例を表す図である。図4(a)は、描画情報としてのフォントデータの一例を示す。図4(a)のフォントデータはアルファベットの「r」という文字のフォントデータを示し、4つの線分で定義するためのデータを含む。フォントデータは、各線分の端点の座標と、描画順を有する。フォントデータに含まれる端点の座標は、文字をビットマップに配置した場合のビットマップの所定画素を原点に指定されている。
ストロークフォントをレーザ等で描画する場合、座標だけではレーザを照射しながら移動するのか、レーザを照射しないで移動するのかを判別できない。このため、ストロークフォントのフォントデータには、レーザの描画開始位置(人間が書くとすると筆をおろす位置)と移動命令、レーザの描画終了位置(人間が書くとすると筆を上げる位置)と移動命令が含まれている。
図4(a)では、「m」はレーザの描画開始位置とその座標までの移動命令を示し、「d」は描画終了位置とその座標までの移動命令を示す。従って、「m」は筆を上げて移動することを意味し、「d」は筆を下ろして移動することを意味する。このように、フォントデータは、座標による文字の形状、描画の順番、描画の方向(図では矢印を有する線分)を規定し、「m」と「d」によりレーザ照射の有無を規定する。すなわち、一以上の連続した「d」に対応づけられた座標により表される線分が一筆部品である。
従って、図4(a)に示す描画情報としてのフォントデータは、座標(100,500)から座標(100、50)まで線分が描かれ、座標(100,50)から座標(120、220)までは線分を描かずに移動し、座標(120、220)から座標(230、500)まで線分が描かれ、座標(230、500)から座標(300、500)まで線分が描かれ、さらに、座標(300、500)から座標(400、450)まで線分が描かれることを表す。
一方、描画される文字の形状は、線分を指定する2点の座標が線分の数だけあれば特定できることになる。図4(b)は、媒体に実際に描画される文字(ここでは「r」)を構成する各線分の座標の一例を示す。図4(b)は、媒体に描画対象を描画する描画位置を表すデータとしての座標データを示しており、描画情報としてのフォントデータに基づき文字の大きさを2倍に拡大した場合の座標データを表す。ストロークフォントは、アウトラインフォントようにスケーラブルフォントの一種なので、例えば、リライタブル媒体50に描画する際の文字の大きさを指定できるようになっている。
ストロークフォントの文字の大きさの調整方法はいくつか知られているが、ここでは説明のため単にフォントデータの座標をそれぞれ2倍にした。例えば文字の中心からの距離に応じて線分の座標を調整してもよい。
アルファベットの「r」のように4つの線分を含む文字の場合、線分の座標は4組となる。図4(b)に示す[0]〜[3]は、各線分の描画順を示し、描画順の右側に続く4つの数字のうち、最初の2つの数値は線分の始点の座標を表し、残りの(右側の)2つの数値は線分の終点の座標を表す。
図4(b)に示す描画位置を表すデータとしての座標データを用いると、描画対象である「r」は、図4(c)に示すように、点A→点B、点C→点D→点E→点Fの順に描画される。
図5は、描画順による文字の歪み方の相違を示す図である。図5(a)は、描画したい数字「9」を示し、(b)、(c)は相異なる描画順によって実際に描画される数字「9」を示す。なお、図5(b)、(c)では、実線は実際に描画される数字を示し、破線は座標データによって表される歪みのない数字を示し、グレーの矢印は描画順を示す。
例えば、描画対象が図5(a)に示す数字の「9」のように、比較的曲率の大きい曲線で構成される場合は、レーザマーキング装置100の方向制御モータ12と方向制御ミラー13の追従遅れにより、図5(b)に示す描画順(1)と、図5(c)に示す描画順(2)とで、描画される数字「9」の歪み方が異なる。
文字等の描画対象の描画順は、複数の描画対象を含む文章を描画する際に、文章全体として効率良く描画を行えるように工夫されている。このため、一般的には、同じ文字でも、文章の中における位置によって、図5(b)、(c)に示すように描画順が異なる場合がある。
しかしながら、例えば、上述のように描画順が異なることによって歪み方が異なる描画対象が複数含まれている文章をサーマルリライタブル媒体に描画する場合に、描画順が揃っていないと、同じ文字であるのに歪み方の相違により形状が異なってしまい、見栄えが悪くなる、あるいは、見難くなる可能性がある。
実施の形態1の描画制御装置は、同一の文字等の描画順を揃えることにより、見易い文章等を描画する。
次に、図6を用いて実施の形態1の描画制御装置の機能ブロックについて説明する。
図6は、実施の形態1の描画制御装置20の機能ブロックを示す図である。各ブロックをソフトウェアで実現する場合、各ブロックはCPU31が文字描画プログラム42を実行することで実現される。
描画制御装置20は、描画位置決定手段21、モード設定手段22、描画順決定手段23、描画命令生成手段24、対象文字コード取得手段25、フォントデータ取得手段26、描画条件取得手段27、描画順同一化対象種別データ取得手段28、及び描画順同一化対象サイズデータ取得手段29を含む。
描画位置決定手段21は、フォントデータ取得手段26によってフォントデータDB41から読み出されるフォントデータと、描画条件取得手段27によって描画条件DB44から読み出される描画条件とに基づいて、描画対象をリライタブル媒体50に描画する描画位置である座標データを決定する。なお、描画条件には、文章等の中における各描画対象の位置、及びサイズ等を表すデータが含まれる。描画条件を表すデータについては図7を用いて後述する。
モード設定手段22は、実施の形態1の描画制御装置20による特定の描画対象の描画順を揃える処理を実行する実行モードを設定するための処理手段である。ユーザによって実行モードが選択された場合は、実行モードが選択されたことを表す対象フラグが描画順同一化対象DB43に設定されている。このため、モード設定手段22は、描画順同一化対象DB43に設定された対象フラグに基づき、実行モード又は非実行モードに設定する。
描画順決定手段23は、描画対象に含まれる線分を描画する描画順と、文章等に含まれる複数の描画対象の各々を描画する描画順との両方の描画順を決定する。
描画命令生成手段24は、描画位置決定手段21によって決定される座標データと、描画順決定手段23によって決定される描画順とを反映した描画命令を生成する。生成された描画命令は、描画装置10に入力され、この結果、ユーザによって入力装置36に入力された文章等を表す描画対象が描画装置10によってリライタブル媒体50に描画される。
対象文字コード取得手段25は、ユーザによって入力装置36に入力された文章等に含まれる描画対象の文字コードを取得する。
フォントデータ取得手段26は、対象文字コード取得手段25によって取得された文字コードに基づいてフォントデータDB41を参照し、文字コードに対応づけられたフォントデータを読み出す。
描画条件取得手段27は、リライタブル媒体50に描画する描画対象である文字等を含む文章等や、文章等に含まれる描画対象のサイズの条件を表す描画条件をハードディスク35に記憶された描画条件DB44から取得する。
描画順同一化対象種別データ取得手段28は、描画順を揃える対象として指定されている描画対象の種別を表す文字コード(例えば、JISコード)を描画順同一化種別格納手段としての描画順同一化対象DB43から取得する。
描画順同一化対象サイズデータ取得手段29は、描画順を揃える対象として指定されている描画対象の判定基準サイズを表す判定基準サイズデータを描画順同一化対象DB43から取得する。ここで、判定基準サイズとは、描画順を揃える処理を行うか否かを判定する閾値となるサイズである。
なお、描画対象の判定基準サイズは、すべての描画対象について一律に決められていてもよく、平仮名、片仮名、漢字、数字、アルファベット、記号、図形等にグループ分けしてグループ毎に決められていてもよく、あるいは、各描画対象について決められていてもよい。
図7(a)は、描画条件DB44の一例を示す図であり、図7(b)は、実施の形態1の描画制御装置20で用いる描画順同一化対象DB43の一例を示す図である。
図7(a)に示すように、描画条件DB44は、描画対象の種別を特定するための文字コードの一例としてのJISコード、文章等を表す描画対象の各々が配置される位置(x、y座標)を表す位置データ、及びサイズを表すデータを含む。描画対象の位置を示す座標値は、例えば、描画対象が配置される領域の左上の点の座標である。
また、図7(b)に示すように、描画順同一化対象DB43に記憶される描画順同一化対象データは、テーブル形式のデータであり、文字コード、対象フラグ、及び判定基準サイズデータを含む。ここでは、文字コードとして、描画対象の種別を特定するための文字コードの一例としてのJISコードを用いる例を示す。対象フラグは、各描画対象が線分の描画順を揃える対象になっているか否かを示すフラグである。また、判定基準サイズデータは、対象フラグが設定されている描画対象に対して描画順を揃える処理を行うか否かを判定する閾値となる判定基準サイズを表す。
対象フラグが"1"に設定されている描画対象は、線分の描画順を揃える対象になっている描画対象であり、対象フラグが"0" に設定されている描画対象は、線分の描画順を揃える対象になっていない描画対象である。実施の形態1の描画順同一化対象DB43の対象フラグが"1"に設定される描画対象は、描画対象に含まれる線分の曲率が所定値以上の描画対象である。
なお、JISコード、描画対象のサイズ、及び判定基準サイズデータとして、アルファベットと数字を組み合わせた記号を示すが、実際の描画制御装置では具体的なコード番号、描画対象のサイズ、及び判定基準サイズを表す数値が与えられる。
図8は、実施の形態1の描画制御装置20による描画制御処理を表すフローチャートである。
まず、描画位置決定手段21は、フォントデータ取得手段26によってフォントデータDB41から読み出されるフォントデータと、描画条件取得手段27によって描画条件DB44から読み出される描画条件とに基づいて、描画対象をリライタブル媒体50に描画する描画位置である座標データを決定する(ステップS1)。
このステップS1の処理に際し、フォントデータ取得手段26は、対象文字コード取得手段25によって取得された文字コードに基づいてフォントデータDB41を参照し、文字コードに対応づけられたフォントデータを読み出す。そして、描画位置決定手段21は、フォントデータ取得手段26によってフォントデータDB41から読み出されるフォントデータと、描画条件取得手段27によって描画条件DB44から読み出される描画条件に含まれるサイズのデータとに基づいて、描画対象をリライタブル媒体50に描画する描画位置である座標データを決定する。以上により、ステップS1の処理が行われる。
例えば、図9(a)に示すような文字列を描く場合は、図9(b)に示すように描画基点(例えば、左上の点を基点とし、基点の座標値は(x0,y0)とする)を設定し、描画条件に含まれる文字サイズ等から、描画対象に含まれる各線分を描画する位置を表す座標データを決定する。
次に、描画順決定手段23は、描画するすべての描画対象の各々を描画する描画順を決定する(ステップS2)。描画する全ての描画対象は、描画条件取得手段27がハードディスク35内の描画条件DB44に記憶される描画条件から文章等を表すデータを取得し、描画順決定手段23に受け渡す。描画順決定手段23は、空走距離が短くなり、かつ、全体の描画時間を短縮できるように、すべての描画対象の各々を描画する順序を決定する。
例えば、図10(a)に示す描画順1のように、1〜2行目の全てにわたって文字コードの格納順(左から右に上から下に向かう順)ではなく、図10(b)に示すように2行目は右から左に描画する描画順2の方が、図10(a)に矢印Aで示す分を空走せずに済むため、空想距離が短くなる。ステップS2では、描画順決定手段23は、例えば、図10(b)に示す要領で空走距離が短くなり、かつ、全体の描画時間を短縮できるように、すべての描画対象の各々を描画する順序を決定する。なお、ステップS2で決定する描画順は、複数の描画対象の各々を描画する順序であり、各描画対象に含まれる線分を描画する描画順については、後に説明する工程で決定する。
次に、モード設定手段22は、描画順同一化対象DB43に設定されている対象フラグを読み出し、対象フラグに基づき、実行モードが設定されているか否かを判定する(ステップS3)。実施の形態1の描画制御装置20では、実行モードが設定されているか否かの判定は、描画対象毎に行われる。
ステップS3において実行モードが選択されていると判定された場合は、描画順決定手段23は、ステップS3で実行モードが選択されていると判定された描画対象が描画順を揃える対象として指定されているか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4の処理は、描画順同一化対象種別データ取得手段28によって、描画順同一化対象DB43から取得された描画対象の種別を表す文字コード(例えば、JISコード)に基づいて判定が行われる。
ステップS4において対象であると判定された場合は、描画順決定手段23は、ステップS4で対象と判定された描画対象が描画順を揃える対象として指定されている判定基準サイズ以下であるか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5の処理は、描画順同一化対象サイズデータ取得手段29によって描画順同一化対象DB43から取得された判定基準サイズを表すデータと、描画条件取得手段27によって描画条件DB44から読み出される描画条件に含まれるサイズとを比較することによって行われる。描画対象のサイズが描画順同一化対象DB43に記憶された判定基準サイズ以下である場合は、描画装置10の追従遅れにより、描画における歪みが大きくなるため、描画順を揃える対象とするものである。
ステップS5において対象であると判定された場合は、描画順決定手段23は、描画対象の描画順を予め定められた描画順に決定する(ステップS6Y)。例えば、描画対象が数字の「9」である場合に、予め図5(c)に示す描画順が指定されている場合は、たとえ空走時間が長くなる場合であっても、図5(c)に示す描画順に決められる。
ステップS6Yの処理が終了すると、描画順決定手段23は、すべての描画対象について、各々の描画対象に含まれる線分の描画順を決定する処理が終了したか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7の処理は、例えば、ステップS2において描画順が決定されたすべての描画対象についての処理が終了したか否かを判定することによって行われる。
ステップS7において、描画順決定手段23がすべての描画対象についての処理が終了したと判定した場合は、描画命令生成手段24は、描画命令を生成する(ステップS8)。
次いで、描画制御装置20により、描画命令に基づいて描画装置10が駆動される(ステップS9)。これにより、所望の描画がリライタブル媒体50に行われる。
以上により、一連の処理が終了する。
なお、ステップS3でNoと判定された場合は、その描画対象は実行モードによって線分の描画順が揃えられる描画対象ではなく、また、ステップS4、S5のうちのいずれかのステップにおいて、Noと判定された場合は、描画対象が線分の描画順を揃えるために指定された描画対象ではない場合であるため、フローはステップS6Nに進行し、線分の描画順が描画時間を優先した描画順に決定される(ステップS6N)。ステップS6Nの処理が終了すると、フローはステップS7に進行する。
また、ステップS7において、すべての描画対象についての処理が終了していないと判定された場合は、フローはステップS3にリターンし、次に描画順が早い描画対象について実行モードが設定されているか否かが判定される。
以上、実施の形態1の描画制御装置20によれば、予め指定された種別とサイズに合致する描画対象については、その描画対象に含まれる線分の描画順が揃えられる。このため、描画装置10の追従遅れが生じても、指定された同一の描画対象については形状が揃うため、複雑な制御機構を用いることなく、描画における歪みを目立たなくすることができる。
例えば、図9(a)に示すように、1行目に「79年生まれの」と描画し、2行目に「19人の音楽家」と描画する場合は、1行目の「9」と2行目の「9」の描画順が揃えられるため、同一の描画対象についての歪みが揃えられ、描画における歪みを目立たなくなる。
以上では、レーザを用いた描画装置10を制御する形態について説明したが、実施の形態1の描画制御装置20は、X−Yプロッタのように2軸方向にヘッド等を走査する描画装置に適用することが可能である。これは、2軸方向にヘッド等を走査する際に、レーザマーキング装置と同様に、追従遅れによる描画対象の歪みが生じるからである。
また、以上では、ステップS6Yにおいて決定する描画順を予め定めた描画順に決定する形態について説明したが、線分の描画順の決定の仕方は、これに限られない。例えば、線分の描画順を揃える対象となるすべての描画対象以外の描画順を決定してから、トータルの描画時間が最短となるように、最後に線分の描画順を揃える対象となるすべての描画対象に含まれる線分の描画順を決定してもよい。具体的には、例えば、図9(a)の1行目と2行目の「9」以外のすべての描画対象の描画順を決定してから、最後に、1行目と2行目のすべての描画対象を描画するのに要するトータルの描画時間が最短になるように、1行目と2行目の「9」の描画順を揃えるようにしてもよい。
また、以上では、線分の描画順を揃える描画対象を予め描画順同一化対象種別データに指定した形態について説明したが、描画順同一化対象種別データで指定する描画対象は、例えば、描画開始位置から次の描画終了位置までに連続的に描画される一又は複数の線分を含む一筆部品の数が所定数以下の描画対象に設定してもよい。
[実施の形態2]
実施の形態2の描画制御装置220は、実施の形態1の描画制御装置20のように予め描画順同一化対象種別データ、及び描画順同一化対象サイズデータで指定された描画対象について、線分の描画順を揃えるのではなく、相連続する線分同士の方向変化度合が所定度合い以上である場合に、その線分を含む描画対象の描画順を揃える点が異なる。
以下では、相違点を中心に説明を行うこととし、実施の形態1の描画制御装置20と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
図11は、実施の形態2の描画制御装置220の機能ブロックを示す図である。各ブロックをソフトウェアで実現する場合、各ブロックはCPU31が文字描画プログラム42を実行することで実現される。
描画制御装置220は、描画位置決定手段21、モード設定手段22、描画命令生成手段24、対象文字コード取得手段25、フォントデータ取得手段26、描画条件取得手段27、方向変化度合演算手段221、方向変化度合判定手段222、及び描画順決定手段223を含む。
方向変化度合演算手段221は、描画情報であるフォントデータ、又は描画位置である座標データに基づき、描画対象に含まれる相連続する線分同士の方向変化度合を演算する。
ここで、相連続する線分同士とは、2つの線分がそれぞれ有する2つの端点のうちの一方が共通の線分(すなわち、互いに連続的に接続されている2つの線分)をいうこととする。
なお、実施の形態1と同様に、フォントデータは、対象文字コード取得手段25によって取得された文字コードに基づいてフォントデータDB41をフォントデータ取得手段26が参照することによって読み出される。また、座標データは、フォントデータ取得手段26によってフォントデータDB41から読み出されるフォントデータと、描画条件取得手段27によって描画条件DB44から読み出される描画条件とに基づいて、描画位置決定手段21によって決定される。
方向変化度合判定手段222は、方向変化度合演算手段221によって演算される方向変化度合が所定度合以上であるか否かを判定する。この判定の閾値となる所定の方向変化度合は、例えば、ユーザによって入力装置36を介して設定されており、メモリ32又はハードディスク35に記憶されている。
描画順決定手段223は、方向変化度合判定手段222によって方向変化度合が所定度合以上であると判定された相連続する線分を含む描画対象について、その描画対象に含まれる線分の描画順を揃える処理を実行する。線分の描画順を揃える手法自体は、実施の形態1における手法と同一である。
図12は、実施の形態2の描画制御装置220による描画制御処理を表すフローチャートである。ステップS21〜S23の処理は、図8に示す実施の形態1におけるステップS1〜S3の処理と同一であるため説明を省略する。
ステップS23において実行モードが選択されていると判定された場合は、方向変化度合演算手段221は、描画情報であるフォントデータ、又は描画位置である座標データに基づき、描画対象に含まれる相連続する線分同士の方向変化度合を演算する(ステップS24)。
次いで、方向変化度合判定手段222は、方向変化度合演算手段221によって演算される方向変化度合が所定度合以上であるか否かを判定する(ステップS25)。所定度合以上であるか否かを判定するのは、所定度合以上である場合は、線分同士の方向変化度合が比較的大きい場合であり、描画装置10の追従遅れによって描画に比較的大きな歪みが生じる可能性が高くなるからである。
ステップS25において、方向変化度合が所定度合い以上であると判定された場合は、描画順決定手段223は、方向変化度合判定手段222によって方向変化度合が所定度合以上であると判定された相連続する線分を含む描画対象について、その描画対象に含まれる線分の描画順を予め定められた描画順に決定する(ステップS26Y)。例えば、描画対象が数字の「9」である場合に、予め図5(c)に示す描画順が指定されている場合は、たとえ空走時間が長くなる場合であっても、図5(c)に示す描画順に決められる。
ステップS26Yの処理が終了すると、描画順決定手段223は、すべての描画対象について、各々の描画対象に含まれる線分の描画順を決定する処理が終了したか否かを判定する(ステップS27)。ステップS27の処理は、例えば、ステップS22において描画順が決定されたすべての描画対象についての処理が終了したか否かを判定することによって行われる。
ステップS27において、描画順決定手段223がすべての描画対象についての処理が終了したと判定した場合は、描画命令生成手段24は、描画命令を生成する(ステップS28)。
次いで、描画制御装置20により、描画命令に基づいて描画装置10が駆動される(ステップS29)。これにより、所望の描画がリライタブル媒体50に行われる。
以上により、一連の処理が終了する。
なお、ステップS23でNoと判定された場合は、その描画対象は実行モードによって線分の描画順が揃えられる描画対象ではなく、また、ステップS25でNoと判定された場合は、描画対象が所定度合い以上の方向変化度合を有する相連続する線分を含まず、線分の描画順を揃えるために指定された描画対象ではない場合であるため、フローはステップS26Nに進行し、線分の描画順が描画時間を優先した描画順に決定される(ステップS26N)。ステップS26Nの処理が終了すると、フローはステップS27に進行する。
また、ステップS27において、すべての描画対象についての処理が終了していないと判定された場合は、フローはステップS23にリターンし、次に描画順が早い描画対象について実行モードが設定されているか否かが判定される。
以上、実施の形態2の描画制御装置220によれば、方向変化度合が所定度合い以上の相連続する線分を含む描画対象については、その描画対象に含まれる線分の描画順が揃えられる。このため、描画装置10の追従遅れが生じても、指定された同一の描画対象については形状が揃うため、複雑な制御機構を用いることなく、描画における歪みを目立たなくすることができる。
以上、本発明の例示的な実施の形態の描画制御装置、レーザ照射装置、描画制御方法、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。