JP5089417B2 - 熱伝導性シートおよび放熱装置 - Google Patents
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Description
その熱対策の部品の一つに熱伝導性シートがある。その熱伝導性シートとは電子電気機器内にある半導体素子等の発熱部とヒートシンクなどの放熱部の隙間を埋めることにより発熱部で生じた熱を放熱部へと効率よく伝達するため、または電子電気製品に使用される電源や光源などといった発熱部から発生する熱を効果的に放散などさせるための部材である。
シートが低硬度であると、発熱部品及び放熱部品に密着し広い接触面積を得ることができるために効率良く熱を伝達させることができる。また、高さの異なる発熱部品が高密度で実装された場合でもその高さに追従することができ、それにより高さの凹凸を吸収することで密着し広い接触面積を得ることができる。このような低硬度の熱伝導性シートには非常に柔軟なシリコーンゴムがよく用いられており、近年ではそのシリコーンゴムのシロキサン問題から他のアクリルゴムやエチレンプロピレンゴムやウレタンゴムを用いた熱伝導性シートなどが提案されてきている。
また、シートの面方向の熱伝導率を高めることをも考慮した熱伝導性充填剤の炭素系材料となるグラファイトを用いて薄いシートとしたものが市場に投入されている。ただし、このグラファイトシートは非常に脆くて取り扱い作業性が悪く、または脱落して電気絶縁性が必要な部品に付着した場合などは導通してしまうといった問題が生じる。
更に、シートではなく発熱部と放熱部の間に非常に薄い膜で介在させることができる熱伝導性のグリスなどもある。ただ、これは流れ出してしまって放熱性能が低下したり、他の部品に付着して不具合を起こしたり、更には発熱部品や放熱部品に均一に塗布することに非常に手間がかかり多くの作業時間を費やさなければならないといった問題がある。
すなわち、本発明は、
(1)熱可塑性プラスチック5〜30質量部、熱可塑性エラストマー45〜85質量部、ゴム5〜30質量部の割合で含有する複合ポリマー100質量部に対し、炭素繊維50〜200質量部及び金属水酸化物100〜350質量部を混合してなり、前記熱可塑性プラスチックが融点120〜150℃のポリエチレンまたはポリプロピレンであり、前記熱可塑性エラストマーが酢酸ビニル基含有量40〜60質量%のエチレン酢酸ビニルであり、前記ゴムが二元共重合体のエチレン・メチルアクリレート共重合体であり、前記炭素繊維が平均径4〜12μmかつ平均長さ25〜200μmであり、前記金属水酸化物の平均粒径が10μm以下である、熱伝導性組成物からなり、該熱伝導性組成物を0.05〜0.30mm厚のシート形状に成形してなることを特徴とする熱伝導性シート、および、
(2)発熱部材と放熱部材との隙間に、もしくは発熱部材とそこから離れた位置にある放熱部材との間に、もしくは発熱部材のみに(1)項に記載の熱伝導性シートを介在させることを特徴とする放熱装置
を提供するものである。
本発明の熱伝導性組成物は、熱可塑性プラスチック及び熱可塑性エラストマー及びゴムという数種類のポリマーを特定の比率で混合させた複合ポリマーとすることで、熱伝導性粉末の炭素繊維と難燃剤の金属水酸化物粉末の高濃度の含有が可能となり、かつその高濃度の含有量であっても0.05mmから0.30mm厚といった薄膜シートとしても曲げても千切れたりもしくはひびや割れが発生しないといった取り扱いが可能な強度を有する熱伝導性と難燃性と強度とを有するものである。
一方、熱可塑性プラスチックの融点が高すぎる場合、例えば融点150℃を超えたポリプロピレンなどを含有させた場合、その組成の材料をバンバリーミキサーやニーダーなどで混合する時に200℃以上といった混合温度が必要となってくる。そうすると、その200℃以上の混合温度により、難燃性に寄与する金属水酸化物において脱水が始まってしまい、結果その組成の材料の難燃性が低下してしまうことがあり好ましくない。
なお、本発明において、「ゴム」には、熱可塑性エラストマーは含まないものである。
平均粒径が大きすぎた場合、粒度分布によっては50μm以上の粒径物が存在し、0.05mm厚から0.30mm厚での0.05mm厚などといった場合にシートの厚みを越える粒径物が存在することとなり、そのシート厚より大きな粒径である金属水酸化物粉末を起点として千切れてしまったりするために好ましくない。
発熱部材としては、電子電気機器内にある半導体素子、電子電気製品に使用される電源や光源などを挙げることができる。
放熱部材としては、ヒートシンクなどを挙げることができる。
発熱部材と放熱部材との隙間に熱伝導性シートを介在させる場合は、好ましくは、発熱部と放熱部の隙間を熱伝導性シートにより埋めるものである。
発熱部材とそこから離れた位置にある放熱部材との間に熱伝導性シートを介在させる場合は、好ましくは、熱伝導性シートの表面の長手方向または短手方向の1端を発熱部材に接触させ、他端を放熱部材に接触させるものである。
発熱部材のみに熱伝導性シートを介在させたとは、好ましくは、発熱部材に熱伝導性シートを接触させ、熱を熱伝導性シートを介して広い範囲に広げ温度を下げるものである。
熱可塑性プラスチックであるポリプロピレンに融点が125℃の日本ポリプロ(株)製ノバテックFX4Gを用い、熱可塑性エラストマーであるエチレン−酢酸ビニル共重合体に酢酸ビニル基含有量が40質量%のバイエル(株)製レバプレン400HVを用い、ゴムであるエチレン・メチルアクリレート共重合体に二元型共重合体の三井デュポンポリケミカル(株)製ベイマックDPを用い、炭素繊維に平均径が8μmで平均長が50μmの帝人(株)製ラヒーマR−A201を用い、金属水酸化物である水酸化マグネシウムに平均粒径が1.1μmの神島化学(株)製マグシーズN−4を用いた。それらを表1〜2に示す各例での配合量(質量部)をバンバリーミキサーで混練りし、熱伝導性組成物を得た、この熱伝導性組成物をカレンダーロールでシート状に成形し、表1〜2に示す0.05mmから0.30mmの各厚みのシートを得た。
表3〜4に示す混合割合であること以外は実施例1〜実施例11と同じ同一の材料を用い同様の方法で成形し、表3〜4に示す0.05mmから0.30mmの各厚みのシートを得た。なお、比較例11〜12は請求項7に係る発明の比較例である。
熱可塑性プラスチックであるポリエチレンに融点が108℃の日本ポリエチレン(株)製ノバテックLD YF30を使用する以外は実施例1で使用した材料を用い、実施例1と同様の方法で成形し、0.15mm厚みのシートを得た。なお本比較例は、請求項2に係る発明の比較例である。
熱可塑性プラスチックであるポリプロピレンに融点が162℃のサンアロマー(株)製PC600Sを使用する以外は実施例1で使用した材料を用い、実施例1と同様の方法で成形し、0.30mm厚みのシートを得た。なお本比較例は、請求項2に係る発明の比較例である。
熱可塑性エラストマーであるエチレン−酢酸ビニル共重合体に酢酸ビニル含有量が15質量%の日本ポリエチレン(株)製ノバテックEVA LV440を使用する以外は実施例1で使用した材料を用い、実施例1と同様の方法で成形し、0.30mm厚みのシートを得た。なお本比較例は、請求項3に係る発明の比較例である。
熱可塑性エラストマーであるエチレン−酢酸ビニル共重合体に酢酸ビニル含有量が80質量%のバイエル(株)製レバプレン800HVを使用する以外は実施例1で使用した材料を用い、実施例1と同様の方法で成形し、0.10mm厚みのシートを得た。なお本比較例は、請求項3に係る発明の比較例である。
ゴムであるエチレン・メチルアクリレート共重合体に三元型の三井デュポンポリケミカル(株)製ベイマックGを使用する以外は実施例1で使用した材料を用い、実施例1と同様の方法で成形し、0.10mm厚みのシートを得た。なお本比較例は、請求項4に係る発明の比較例である。
炭素繊維に平均径3μm、平均長さ50μmのものを使用する以外は実施例1で使用した材料を用い、実施例1と同様の方法で成形し、0.10mm厚みのシートを得た。なお本比較例は、請求項5に係る発明の比較例である。
炭素繊維に平均径18μm、平均長さ50μmのものを使用する以外は実施例1で使用した材料を用い、実施例1と同様の方法で成形し、0.10mm厚みのシートを得た。なお本比較例は、請求項5に係る発明の比較例である。
炭素繊維に平均径8μm、平均長さ20μmのものを使用する以外は実施例1で使用した材料を用い、実施例1と同様の方法で成形し、0.10mm厚みのシートを得た。なお本比較例は、請求項5に係る発明の比較例である。
炭素繊維に平均径8μm、平均長さ250μmのものを使用する以外は実施例1で使用した材料を用い、実施例1と同様の方法で成形した0.10mm厚みのシートを得た。なお本比較例は、請求項5に係る発明の比較例である。
金属水酸化物である水酸化アルミニウムに平均粒径18μmの昭和電工(株)製ハイジライトH−31を使用する以外は実施例1で使用した材料を用い、実施例1と同様の方法で成形し、0.10mm厚みのシートを得た。なお本比較例は、請求項6に係る発明の比較例である。
実施例および比較例の熱伝導性シートについて、以下に示す熱伝導率測定及びUL94薄手材料垂直燃焼試験及びシート巻き付け試験を実施した。結果を表1〜6に示す。
(熱伝導率測定)
京都電子工業(株)製の迅速熱伝導率計QTM−500を用い、評価シート上にそれの測定プローブをセットして熱伝導率の測定を行った。
15W/m・K以上で合格である。
材料・装置・部品・道具類などから製品に至るまでの、機能や安全性に関する標準化を目的とした製品安全規格を満たしたものに対し認可を与える機関であるUnderwriters Laboratoriesで実施評価されるUL94「機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験」にある薄手材料垂直燃焼試験に準拠した。本試験は同じくUL94にある20mm垂直燃焼試験を行った場合、材料が薄いためにゆがんだり、縮んだりまたはクランプの所まで燃え尽きてしまう材料について実施するためのものである。本発明の熱伝導性薄膜シートは0.05mmから0.30mmと薄いものであることから、この薄手材料垂直燃焼試験を行った。
94VTM−2以上で合格である。
例えば規定のシートを電子電気機器内にセットなどする場合にそれを曲げたりしなければならない状況がある。その際に、多少の曲げでも千切れたりもしくはひびや割れが発生したりすると、その電気電子機器の組み立て作業の生産性を大きく低下させる原因となり製品としては成り立たなくなる。取り扱いが可能な強度を有するというのはそのように曲げても千切れたりもしくはひびや割れが発生することがない強度を意味する。
それを受け、JIS C 3005ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法の巻付加熱試験を参考にした。それは電線試料を規定の径をもつ円筒に緊密に規定回数巻き付け、または屈曲し、そのままの状態で、規定温度の恒温槽で1時間加熱した後に取り出して、試料の表面にひび及び割れが生じているかどうかを目視で調べるものである。本試験では、径1.0mmの円筒の棒に規定のシートを巻き付けた際に、千切れたりもしくはそれにひびや割れが発生するかしないかで行った。それを現品で行い、千切れもしくはひびや割れが発生しなかった規定のシートについては更に120℃で1000時間の熱履歴を与えたもので同様の試験を行った。千切れたりもしくはひびや割れが発生しないものを合格とした。
表3の熱可塑性プラスチックであるポリプロピレンが30質量部を越えた比較例2の0.15mm厚シートは、その組成物が硬すぎて径1.0mmの円筒の棒に巻き付けるとひびや割れが発生し取り扱いが困難なことがわかる。
表3の熱可塑性エラストマーであるエチレン酢酸ビニルが45質量部未満である比較例3の0.15mm厚シートは脆く、径1.0mmの円筒の棒に巻き付けるとひびや割れが発生し取り扱いが困難なことがわかる。
表3の熱可塑性エラストマーであるエチレン酢酸ビニルが90質量部を越えた比較例4の0.15mm厚シートは強度が低く、径1.0mmの円筒の棒に巻き付ける際に千切れてしまい取り扱いが困難なことがわかる。
表3のゴムであるエチレン・メチルアクリレート共重合体が5質量部未満である比較例5の0.15mm厚シートは脆く、径1.0mmの円筒の棒に巻き付けるとひびや割れが発生し取り扱いが困難なことがわかる。
表3のゴムであるエチレン・メチルアクリレート共重合体が30質量部を越えた比較例6の0.15mm厚シートは強度が低く、径1.0mmの円筒の棒に巻き付ける際に千切れてしまい取り扱いが困難なことがわかる。
表4の炭素繊維が200質量部を越えた比較例8の0.15mm厚シートは脆く、径1.0mmの円筒の棒に巻き付けるとひびや割れが発生し取り扱いが困難なことがわかる。
表4の金属水酸化物である水酸化マグネシウムが100質量部未満である比較例9の0.30mm厚シートは、UL94の薄手材料垂直燃焼試験94VTM−2以上といった垂直難燃性がないことがわかる。
表4の金属水酸化物である水酸化マグネシウムが350質量部を越えた比較例10の0.15mm厚シートは脆く、径1.0mmの円筒の棒に巻き付けるとひびや割れが発生し取り扱いが困難なことがわかる。
表4のシートの厚みが0.05mm未満である比較例11のシートは、所定の材料種類と配合量からなる組成物ではあるが、シート状に成形する際に千切れたりしてしまい成形不可であった。
表4のシートの厚みが0.30mmを超えた比較例12の0.40mm厚シートは、炭素繊維の並びが面方向と厚み方向でランダムに並んでしまうために熱伝導率が8W/m・Kと10W/m・K以下で低く、熱伝導性に劣ることがわかる。
表5の熱可塑性プラスチックに融点が150℃を超えたポリプロピレンを用いた比較例14の0.30mm厚シートは、融点125℃のポリプロピレンを用いた実施例1が0.10mm厚でもUL94の薄手材料垂直燃焼試験が94VTM−0であることに対し、0.30mm厚でも燃焼してしまい難燃性が低下していることがわかる。
表5の熱可塑性エラストマーに酢酸ビニル基含有量が40質量%未満のエチレン酢酸ビニルを用いた比較例15の0.30mm厚シートは、酢酸ビニル基含有量40質量%のエチレン酢酸ビニルを用いた実施例1が0.10mm厚でもUL94の薄手材料垂直燃焼試験が94VTM−0であることに対し、0.30mm厚でも燃焼してしまい難燃性が低下していることがわかる。
表5の熱可塑性エラストマーに酢酸ビニル基含有量が60質量%を越えたエチレン酢酸ビニルを用いた比較例16の0.10mm厚シートは強度が低く、径1.0mmの円筒の棒に巻き付ける際に千切れてしまい取り扱いが困難なことがわかる。
表5のゴムに三元型のエチレン・メチルアクリレート共重合体を使用した比較例17の0.10mm厚シートは、現品は径1.0mmの円筒の棒に巻き付けても千切れたりもしくはひびや割れが発生することのない強度を有するが、120℃の1000時間といった熱の履歴を与えた場合に若干硬くなり、径1.0mmの円筒の棒に巻き付けるとひびや割れが発生することはないが筋がつくといったシートの取り扱い強度に多少の問題があることがわかる。
表6の炭素繊維に平均径が12μmを超えたものを用いた比較例19の0.10mm厚シートは脆く、径1.0mmの円筒の棒に巻き付けるとひびや割れが発生し取り扱いが困難なことがわかる。
表6の炭素繊維に平均長さが25μm未満のものを用いた比較例20の0.10mm厚シートは、熱伝導率が8W/m・Kと10W/m・K以下で低く、熱伝導性に劣ることがわかる。
表6の炭素繊維に平均径が200μmを超えたものを用いた比較例21の0.10mm厚シートは脆く、径1.0mmの円筒の棒に巻き付けるとひびや割れが発生し取り扱いが困難なことがわかる。
表6の金属水酸化物に平均粒径が10μmを超えた水酸化アルニミニウムを用いた比較例22の0.10mm厚シートは脆く、径1.0mmの円筒の棒に巻き付けるとひびや割れが発生し取り扱いが困難なことがわかる。
2 複合ポリマー
3 炭素繊維
4 金属水酸化物
Claims (2)
- 熱可塑性プラスチック5〜30質量部、熱可塑性エラストマー45〜85質量部、ゴム5〜30質量部の割合で含有する複合ポリマー100質量部に対し、炭素繊維50〜200質量部及び金属水酸化物100〜350質量部を含有し、前記熱可塑性プラスチックが融点120〜150℃のポリエチレンまたはポリプロピレンであり、前記熱可塑性エラストマーが酢酸ビニル基含有量40〜60質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体であり、前記ゴムが二元型共重合体のエチレン・メチルアクリレート共重合体であり、前記炭素繊維が平均径4〜12μmかつ平均長さ25〜200μmであり、前記金属水酸化物の平均粒径が10μm以下である、熱伝導性組成物からなり、該熱伝導性組成物を0.05〜0.30mm厚のシート形状に成形してなることを特徴とする熱伝導性シート。
- 発熱部材と放熱部材との隙間に、もしくは発熱部材とそこから離れた位置にある放熱部材との間に、もしくは発熱部材のみに請求項1に記載の熱伝導性シートを介在させることを特徴とする放熱装置。
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