JP2021155682A - 樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱伝導性及び伸びが良好な樹脂組成物を提供する。【解決手段】樹脂組成物は、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体と、第1無機粒子と、第1無機粒子に対して5倍以上10倍以下の平均粒子径を有する第2無機粒子と、を含有する。エチレン−(メタ)アクリレート共重合体、第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子及び第2無機粒子の合計含有量は15体積%以上25体積%以下である。第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子の含有量は20体積%以上60体積%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂組成物に関する。
樹脂は電気絶縁性に優れているものの、樹脂自体の熱伝導性はほとんどない。そこで、電気機器及び電子機器のような機器での発熱を抑制するため、樹脂に熱伝導性の無機フィラーを添加した樹脂組成物をこれらの機器に使用することが提案されている。
特許文献1には、平均一次粒子径が0.1〜30μmの熱伝導性粒子と、熱可塑性樹脂とを含む熱伝導性樹脂組成物が記載されている。熱伝導性粒子は、炭酸マグネシウム粒子と、被覆層とを有している。被覆層は、アルコキシシリル基およびアルキル基を有する表面処理剤で炭酸マグネシウム粒子表面上に形成されている。
特許文献2には、(A)および(B)の合計量を100重量%として、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂20〜50重量%、(B)マグネシア50〜80重量%を配合してなる耐水性熱伝導性樹脂組成物が記載されている。(B)マグネシアの平均粒子径(D50)をBET比表面積で除した値は100〜800の範囲である。
特許文献3には、エチレン共重合樹脂(A)100重量部に対し、元素周期表の2〜5周期に属し、かつ、2A族、4A族、7A族、8族、2B族、3B族のいずれかに属している元素から選ばれる少なくとも1種類を有する化合物からなる熱伝導性充填材(B)150〜1,500重量部を含有する放熱性樹脂組成物が記載されている。
特開2014−159554号公報 特開2014−62235号公報 特開2009−67877号公報
特許文献1の熱伝導性樹脂組成物によれば、機械物性を損なわない成形体を得ることができるとされている。ここでいう機械物性とは、引張破壊点伸び率を示している。しかしながら、当該樹脂組成物の引張破壊点伸び率は50%を下回っており、十分な伸びを有するとはいえない。
特許文献2によれば、耐水性熱伝導性樹脂組成物は、高温高湿度処理後の重量増加率、寸法変化率、強度保持率に優れ、熱伝導性および、湿熱と乾燥を繰り返した際の成形品の耐久性に優れているとされている。しかしながら、当該樹脂組成物にはポリアリーレンスルフィド樹脂が配合されている。また、当該樹脂組成物には大量のマグネシアが配合されている。したがって、当該樹脂組成物をひずませた場合には、ポリアリーレンスルフィド樹脂とマグネシアとの界面に応力が集中して破断しやすいため、十分な伸びを有する樹脂組成物が得られないおそれがある。
特許文献3によれば、放熱性樹脂組成物は放熱性に優れ、しかも柔軟性と金属接着性を兼ね備えているとされている。しかしながら、当該樹脂組成物は、大量の熱伝導性充填材が添加されている。したがって、当該樹脂組成物をひずませた場合には、エチレン共重合樹脂と熱伝導性充填材との界面に応力が集中して破断しやすいため、十分な伸びを有する樹脂組成物が得られないおそれがある。
一方、十分な伸びを有する樹脂組成物を得るために無機粒子の配合量を少なくすると、十分な熱伝導性を有する樹脂組成物が得られないおそれがある。
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、熱伝導性及び伸びが良好な樹脂組成物を提供することにある。
本発明の態様に係る樹脂組成物は、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体と、第1無機粒子と、第1無機粒子に対して5倍以上10倍以下の平均粒子径を有する第2無機粒子と、を含有する。エチレン−(メタ)アクリレート共重合体、第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子及び第2無機粒子の合計含有量は15体積%以上25体積%以下である。第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子の含有量は20体積%以上60体積%以下である。
エチレン−(メタ)アクリレート共重合体はエチレン−メチルアクリレート共重合体であってもよい。
樹脂組成物において、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体、第1無機粒子及び第2無機粒子の合計含有量は90体積%以上であってもよい。
第1無機粒子の平均粒子径は0.1μm以上3μm未満であってもよい。
第2無機粒子の平均粒子径は3μm以上20μm以下であってもよい。
第1無機粒子は水酸化マグネシウムを含んでいてもよい。
第2無機粒子は水酸化マグネシウムを含んでいてもよい。
樹脂組成物の熱伝導率は0.35W/m・K以上であってもよい。
樹脂組成物の切断時伸びは560%以上であってもよい。
切断時引張強さは18MPa以上であってもよい。
本開示によれば、熱伝導性及び伸びが良好な樹脂組成物を提供することができる。
本実施形態に係る絶縁電線の一例を示す模式的な断面図である。
以下、本実施形態に係る樹脂組成物及びこれを用いた絶縁電線について詳細に説明する。
[樹脂組成物]
本実施形態に係る樹脂組成物は、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体と、第1無機粒子と、第2無機粒子とを含有する。エチレン−(メタ)アクリレート共重合体、第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子及び第2無機粒子の合計含有量は15体積%以上25体積%以下である。第1無機粒子及び第2無機粒子の合計含有量を上記の範囲とすることにより、樹脂組成物の熱伝導性及び強度を向上させることができる。第1無機粒子及び第2無機粒子の合計含有量は18体積%以上であってもよい。また、第1無機粒子及び第2無機粒子の合計含有量は23体積%以下であってもよい。
樹脂組成物の熱伝導率は0.35W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導率を0.35W/m・K以上とすることにより、樹脂組成物の熱伝導性が向上し、放熱性の高い成形品を形成することができる。熱伝導率は0.4W/m・K以上であることがより好ましい。熱伝導率の値が大きいほど成形品の放熱性が良好であるため、熱伝導率の上限は特に限定されないが、熱伝導率は10W/m・K以下であってもよく、5W/m・K以下であってもよく、1W/m・K以下であってもよい。熱伝導率は、JIS A1412−2:1999(熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法−第2部:熱流計法(HFM法))に準じ、HFM法によって測定することができる。
樹脂組成物の切断時伸びは560%以上であることが好ましい。切断時伸びを560%以上とすることにより、樹脂組成物は十分な伸びを有するため、伸びが必要となる用途に樹脂組成物を使用することができる。切断時伸びは570%以上であることがより好ましく、580%以上であることがさらに好ましい。切断時伸びの値は大きいほど伸びが良好であるため、切断時伸びの上限は特に限定されないが、切断時伸びは1000%以下であってもよく、800%以下であってもよく、600%以下であってもよい。切断時伸びは、JIS K6251:2017(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方)に準拠して測定することができる。
樹脂組成物の切断時引張強さは18MPa以上であることが好ましい。切断時引張強さを18MPa以上とすることにより、樹脂組成物が十分な強度を有するため、剛性が必要となる用途に樹脂組成物を使用することができる。切断時引張強さは18.5MPa以上であることがより好ましく、19MPa以上であることがさらに好ましい。切断時引張強さは、値が大きいほど剛性が良好であるため、上限は特に限定されないが、例えば、30MPa以下であってもよく、25MPa以下であってもよく、20MPa以下であってもよい。切断時引張強さは、JIS K6251:2017に準拠して測定することができる。
(エチレン−(メタ)アクリレート共重合体)
エチレン−(メタ)アクリレート共重合体は、エチレンと(メタ)アクリレートとを含むモノマー成分を重合させてなる共重合体である。エチレン−(メタ)アクリレート共重合体は、エチレンと(メタ)アクリレートとを含むモノマー成分を、公知の重合反応によって形成することができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか一方であることを意味する。
(メタ)アクリレートには、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどからなる群より選択される少なくとも1つの(メタ)アクリレートが含まれる。
エチレン−(メタ)アクリレート共重合体の具体例としては、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)及びエチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)などが挙げられる。これらのエチレン−(メタ)アクリレート共重合体は単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。エチレン−(メタ)アクリレート共重合体は、マレイン酸及び無水マレイン酸などで変性されていてもよく、変性されていなくてもよい。エチレン−(メタ)アクリレート共重合体は、エチレン−メチルアクリレート共重合体であってもよい。
エチレン−(メタ)アクリレート共重合体に含まれる(メタ)アクリレートの含有量は特に限定されないが、モノマー比で15%以上であってもよく、20%以上であってもよい。また、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体に含まれる(メタ)アクリレートの含有量は、モノマー比で40%以下であってもよく、30%以下であってもよい。
エチレン−(メタ)アクリレート共重合体に含まれるエチレンの含有量は特に限定されないが、モノマー比で60%以上であってもよく、70%以上であってもよい。また、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体に含まれるエチレンの含有量は、モノマー比で85%以下であってもよく、80%以下であってもよい。
エチレン−(メタ)アクリレート共重合体には、エチレン及び(メタ)アクリレート以外の少量のモノマー成分が含まれていてもよい。エチレン−(メタ)アクリレート共重合体に含まれるエチレン及び(メタ)アクリレートの合計の含有量は、モノマー比で80%以上であってもよく、90%以上であってもよく、95%以上であってもよい。
(無機粒子)
樹脂組成物は、第1無機粒子と第2無機粒子とを含有する。第1無機粒子及び第2無機粒子は、樹脂組成物内の熱を伝導する役割を有する。
第2無機粒子は、第1無機粒子に対して5倍以上10倍以下の平均粒子径を有する。第2無機粒子の平均粒子径を上記の範囲とすることにより、伸びを向上させることができる。第2無機粒子の平均粒子径は、第1無機粒子の平均粒子径に対して6倍以上であることが好ましい。第2無機粒子の平均粒子径は、第1無機粒子の平均粒子径に対して8倍以下であることが好ましい。第1無機粒子及び第2無機粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)などの顕微鏡を用いて測定した少なくとも10以上の無機粒子の長径の平均値であってもよい。
第1無機粒子の平均粒子径は0.1μm以上3μm未満であってもよい。第1無機粒子の平均粒子径は0.3μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよい。また、第1無機粒子の平均粒子径は2μm以下であってもよく、1.5μm以下であってもよい。
第2無機粒子の平均粒子径は3μm以上20μm以下であってもよい。第2無機粒子の平均粒子径は4.5μm以上であってもよく、6μm以上であってもよい。第2無機粒子の平均粒子径は15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよい。
第1無機粒子及び第2無機粒子の少なくともいずれか一方(以下、「無機粒子」ともいう。)の形状は、特に限定されず、球状、楕円体形状、多角形状、鱗片状、不定形状などであってもよい。第1無機粒子及び第2無機粒子は同じ形状であってもよく、異なる形状であってもよい。
第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子の含有量は20体積%以上60体積%以下である。第1無機粒子の含有量を上記の範囲とすることにより、伸びを向上させることができる。第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子の含有量は25体積%以上であってもよく、30体積%以上であってもよい。第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子の含有量は55体積%以下であってもよく、50体積%以下であってもよい。
無機粒子は樹脂組成物内の熱を伝導する役割を有する。無機粒子は、熱伝導性を有していれば、無機粒子を形成する材料は特に限定されない。無機粒子は、酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、炭酸塩、ケイ酸塩及び炭素化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含んでいてもよい。また、無機粒子は、炭素系材料及びクレーの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。酸化物は、例えば、アンチモン、スズ、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム及びベリリウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属又は半金属の酸化物を含む。ケイ素の酸化物を含む無機粒子としては、例えば、結晶シリカ及び溶融シリカが挙げられる。水酸化物は、例えば、アルミニウム、スズ、亜鉛及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属又は半金属の水酸化物を含む。窒化物は、例えば、ホウ素、ケイ素、アルミニウム及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属又は半金属の窒化物を含む。ホウ素の窒化物を含む無機粒子としては、例えば、六方晶窒化ホウ素、立方晶窒化ホウ素、及びBNNT(窒化ホウ素ナノチューブ)などが挙げられる。炭化物は、例えば、ケイ素、アルミニウム及びホウ素からなる群より選択される少なくとも一種の金属又は半金属の炭化物を含む。炭酸塩は、例えば、マグネシウム、カルシウム及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも一種の金属と炭酸との塩を含む。炭素系材料は、例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、CNT(カーボンナノチューブ)、及びダイアモンドからなる群より選択される少なくとも一種の材料を含む。クレーは、例えば、ハイドロタルサイト、ドーソナイト、ゾノトライト、及びタルクからなる群より選択される少なくとも一種の材料を含む。第1無機粒子は水酸化マグネシウムを含んでいてもよい。また、第2無機粒子は水酸化マグネシウムを含んでいてもよい。このような無機粒子を使用することにより、樹脂組成物の熱を効果的に放散することができる。第1無機粒子及び第2無機粒子は同じ材料で形成されていてもよく、異なる材料で形成されていてもよい。
無機粒子の熱伝導率は、例えば、5W/m・K以上であることが好ましく、7W/m・K以上であることがより好ましい。無機粒子の熱伝導率の値が大きいほど熱伝導性が向上するため、熱伝導率の上限は特に限定されないが、熱伝導率は500W/m・K以下であってもよく、300W/m・K以下であってもよい。
無機粒子は、表面処理されていてもよく、表面処理されていなくてもよい。表面処理としては、例えば、無機粒子の表面を有機化合物又は無機化合物を含む被膜で被覆してもよく、無機粒子の表面を化学的に修飾してもよい。
樹脂組成物は、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体及び無機粒子以外の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、金属不活性剤、架橋材、架橋助剤、難燃剤、難燃助剤、老化防止剤、滑剤、充填剤、補強剤、紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤等が挙げられる。樹脂組成物におけるこれらの添加剤の含有量は、本実施形態の効果を妨げない範囲で定めることができる。樹脂組成物におけるエチレン−(メタ)アクリレート共重合体、第1無機粒子及び第2無機粒子の合計含有量は90体積%以上であってもよい。
以上の通り、本実施形態に係る樹脂組成物は、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体と、第1無機粒子と、第1無機粒子に対して5倍以上10倍以下の平均粒子径を有する第2無機粒子と、を含有する。エチレン−(メタ)アクリレート共重合体、第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子及び第2無機粒子の合計含有量は15体積%以上25体積%以下である。第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子の含有量は20体積%以上60体積%以下である。上記樹脂組成物は、熱伝導性及び伸びが良好であるため、絶縁電線の被覆材、ホース、チューブ、発泡体、フィルム、又はコーティング剤などに用いることが好ましい。
樹脂組成物は、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体と無機粒子とを溶融混練することにより作製することができる。溶融混練の方法は公知の手段を用いることができ、例えば、あらかじめヘンシェルミキサー等の高速混合装置を用いてエチレン−(メタ)アクリレート共重合体と無機粒子とをプリブレンドした後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等の公知の混練機を用いて混練してもよい。
[絶縁電線]
次に、本実施形態に係る絶縁電線10について説明する。図1に示すように、絶縁電線10は、導体11と、導体11を被覆し、上記樹脂組成物を含む被覆層12とを備えている。導体11は、1本の素線のみで構成されていてもよく、複数本の素線を束ねて構成された集合撚り線であってもよい。また、導体11は、1本の撚り線のみで構成されていてもよく、複数本の集合撚り線を束ねて構成された複合撚り線であってもよい。導体11を構成する材料は、特に限定されないが、銅、アルミニウム及びこれらの合金などからなる群より選択される少なくとも1つの導電性金属であることが好ましい。
被覆層12の厚さは、特に限定されないが、0.16mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。被覆層12の厚さを上記のようにすることにより、導体11を効果的に保護することができる。また、被覆層12の厚さは、特に限定されないが、2.0mm以下であることが好ましく、1.85mm以下であることがより好ましい。被覆層12の厚さを上記のようにすることにより、狭くかつ短い経路内であっても絶縁電線10の配索を容易にすることができる。
被覆層12を構成する樹脂組成物を作製する場合には、樹脂が十分に溶融する温度に設定された押出機に、樹脂組成物を投入する。この際、必要に応じて、酸化防止剤などの他の成分も押出機に投入する。そして、樹脂組成物はスクリューにより溶融及び混練され、一定量がブレーカープレートを経由してクロスヘッドに供給される。溶融した樹脂組成物は、ディストリビューターによりニップルの円周上へ流れ込み、ダイスにより導体11の外周上に被覆された状態で押し出されることにより、導体11の外周を被覆する被覆層12を得ることができる。
樹脂組成物は架橋されていてもよい。具体的には、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体は架橋されていてもよい。架橋方法は特に限定されないが、例えば、樹脂組成物に電子線を照射することにより架橋してもよい。電子線の照射条件は特に限定されないが、例えば、加速電圧が500kV〜1000kVであり、照射線量が100kGy〜250kGyである。
以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の材料を使用して樹脂組成物を作製した。
(エチレン−(メタ)アクリレート共重合体)
エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA) ダウケミカル社製のエルバロイ(登録商標)AC1125 アクリレート含量25%(モノマー比)
(無機粒子)
(1)Mg(OH) 平均粒子径0.7μm 神島化学工業株式会社製X−6F(表面処理なし)
(2)Mg(OH) 平均粒子径1.0μm 神島化学工業株式会社製X−6(表面処理なし)
(3)Mg(OH) 平均粒子径3.5μm 宇部マテリアルズ株式会社製UD−653(表面処理なし)
(4)Mg(OH) 平均粒子径6.7μm 神島化学工業株式会社製EP3−6.7μm(表面処理なし)
まず、上記材料を表1に示す配合比で混練機(株式会社小平製作所製の6インチ電熱ロール)で混練した。混練機の温度は約103℃、前方ロールの回転数は12rpm、後方ロールの回転数は14rpmに設定した。混練工程では、ロール上でEMAを溶融して巻き付けた後、溶融状態のEMAに第1無機粒子及び第2無機粒子をこの順番で添加して約20分間予備混練した。次に、ロール上の混練物を、切り取って再びロールへ返す作業を10回繰り返した後、前後のロール間隔を狭くしてロール間に5回通過させる作業を2セット繰り返し、シート状の樹脂組成物を得た。
[評価]
(熱伝導率)
まず、上記混練機の前後のロール間隔を4.8mm〜5.3mmに調節した。当該ロール間に上記のようにして得られたシート状の樹脂組成物を通過させ、その後150mm×150mmのサイズにカットした。カットした樹脂シートを、5mm厚のステンレススペーサー型枠内に配置した。樹脂シートは、剥離剤で表面をコーティングしたPETフィルム(東レフィルム加工株式会社製セラピール(登録商標)MFA)の間に挟み込み、これをステンレス板でさらに挟み込んだ。そして、プレス機(大竹機械工業株式会社製自動4段蒸気ロールHP034サイドプレート式)でステンレス板の外側から樹脂シートをプレスした。プレス工程では、樹脂シートを、温度175℃かつ圧力0.5MPaで3分間予備加熱し、温度175℃かつ圧力14MPaで2分間本加熱した後、圧力14MPaで約10分間徐冷した。このようにして厚さが5mmの樹脂板を得た。そして、この樹脂板の一方の面に加速電圧750kVかつ照射線量160kGyで電子線を照射した。
次に、5mm厚の樹脂板を、株式会社ダンベル製スーパー円形カッター直径50mmを使用して打ち抜き、熱伝導率測定用試験片を作製した。
熱伝導率測定用試験片の熱伝導率を熱伝導率測定装置(英弘精機株式会社製熱伝導率測定装置HC−110)を用いて測定した。熱伝導率は、JIS A1412−2に準じ、HFM法によって測定した。この測定結果を表1に示す。
(引張試験)
樹脂組成物の切断時伸び及び切断時引張強さを引張試験によって評価した。引張試験では、以下のように樹脂組成物の厚みを調整し、ダンベル型に打ち抜いたものを引張試験片として評価した。
まず、上記混練機の前後のロール間隔を1.3mm〜2.0mmに調節した。当該ロール間に上記のようにして得られたシート状の樹脂組成物を通過させ、その後150mm×150mmのサイズにカットした。カットした樹脂シートを、1mm厚のステンレススペーサー型枠内に配置した。上記以外は引張試験と同様の方法により樹脂シートをプレスして樹脂板を作製した。得られた樹脂板の厚さは1mmであった。そして、この樹脂板の一方の面に加速電圧750kVかつ照射線量160kGyで電子線を照射した。
次に、1mm厚の樹脂板を、株式会社ダンベル製スーパーダンベルカッターSDK−300を使用して打ち抜き、JISK6251:2017に準拠したダンベル状3号形の引張試験片を作製した。熱プレスによる樹脂配向の乱れなどを考慮し、ダンベルのネック部分が樹脂板の端から20mm離れるように引張試験片を打ち抜いた。
引張試験ではINSTRON製引張圧縮試験機5900Rを使用した。引張試験は、JIS K6251:2017に準拠し、引張速度200mm/分、温度:室温(約23℃)、標線間距離20mm、つかみ具間距離50mm、試験回数n=5で実施した。この測定結果の平均値を表1に示す。
Figure 2021155682
実施例1〜実施例4に係る樹脂組成物では、比較例1に係る樹脂組成物と比較して熱伝導率が向上した。
実施例1及び実施例2に係る樹脂組成物では、比較例2〜比較例4に係る樹脂組成物と比較して熱伝導率が同等であり、かつ、切断時伸びが向上した。実施例3及び実施例4に係る樹脂組成物では、比較例2、比較例5及び比較例6に係る樹脂組成物と比較して熱伝導率が同等であり、かつ、切断時伸びが向上した。
これらの実施例では、第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子の含有量が0体積%又は65体積%である場合よりも、35体積%又は50体積%である場合に切断時伸びが向上している。このような効果は、第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子の含有量が20体積%以上60体積%以下である場合でも同様であると推定される。
一方、比較例7〜比較例9に係る樹脂組成物では、比較例2に係る樹脂組成物と比較して切断時伸び及び切断時引張強さが低下した。これらの結果から、第1無機粒子の平均粒子径が3.5μmである場合よりも、0.7μm又は1.0μmである場合の方が、切断時伸び及び切断時引張強さが向上することが分かる。このような効果は、第2無機粒子が第1無機粒子に対して5倍以上10倍以下の平均粒子径を有する場合でも同様であると推定される。
また、比較例12〜比較例14、比較例16〜比較例18及び比較例20〜比較例22に係る樹脂組成物では、比較例11に係る樹脂組成物と比較して切断時伸び及び切断時引張強さが低下した。実施例及び比較例の結果から、無機粒子の合計含有量が20体積%の場合には、第1又は第2無機粒子単独ではなく、平均粒子径がそれぞれ異なる第1及び第2無機粒子がEMAに添加されることにより、切断時伸び及び切断時引張強さが向上することが分かる。このような効果は、EMA、第1無機粒子及び第2無機粒子の合計に対する第1無機粒子及び第2無機粒子の合計含有量が15体積%以上25体積%以下である場合でも同様であると推定される。
上記のような場合に切断時伸び及び切断時引張強さが向上した理由は明らかではないが、平均粒子径が大きい第2無機粒子間に平均粒子径が小さい第1無機粒子が入り込むため、樹脂組成物において無機粒子が最適な充填構造を取ると推定される。この充填構造のために無機粒子同士が接触しにくくなり、樹脂組成物をひずませた場合であっても、EMAと無機粒子との界面で応力の集中が生じにくくなったため、切断時伸び及び切断時引張強さが向上したと推定される。
実施例では、EMAをマトリックス樹脂として使用したが、EMAと類似する特性を有するEEA又はEBAのようなエチレン−(メタ)アクリレート共重合体であっても同様の効果を奏すると推定される。また、実施例では、水酸化マグネシウムを第1無機粒子及び第2
無機粒子として使用したが、水酸化マグネシウムのような熱伝導性が高い無機粒子であれば同様の効果を奏すると推定される。
以上、本実施形態を説明したが、本開示はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。

Claims (10)

  1. エチレン−(メタ)アクリレート共重合体と、
    第1無機粒子と、
    前記第1無機粒子に対して5倍以上10倍以下の平均粒子径を有する第2無機粒子と、
    を含有し、
    前記エチレン−(メタ)アクリレート共重合体、前記第1無機粒子及び前記第2無機粒子の合計に対する前記第1無機粒子及び前記第2無機粒子の合計含有量は15体積%以上25体積%以下であり、
    前記第1無機粒子及び前記第2無機粒子の合計に対する前記第1無機粒子の含有量は20体積%以上60体積%以下である、樹脂組成物。
  2. 前記エチレン−(メタ)アクリレート共重合体はエチレン−メチルアクリレート共重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記エチレン−(メタ)アクリレート共重合体、前記第1無機粒子及び前記第2無機粒子の合計含有量は90体積%以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記第1無機粒子の平均粒子径は0.1μm以上3μm未満である、請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記第2無機粒子の平均粒子径は3μm以上20μm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記第1無機粒子は水酸化マグネシウムを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記第2無機粒子は水酸化マグネシウムを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  8. 熱伝導率は0.35W/m・K以上である、請求項1から7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  9. 切断時伸びは560%以上である、請求項1から8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  10. 切断時引張強さは18MPa以上である、請求項1から9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
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