JP5210189B2 - 難燃性樹脂組成物および絶縁電線 - Google Patents

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本発明は、難燃性樹脂組成物および該難燃性樹脂組成物を用いた絶縁電線に関するものであり、特に自動車、電気・電子機器等に好適に使用される難燃性樹脂組成物及び絶縁電線に関するものである。
自動車、電子・電気機器等に使用される部材や絶縁材料には、機械特性、難燃性、耐熱性、耐寒性等の種々の特性が要求されている。従来、その材料としてポリ塩化ビニル化合物や、分子中に臭素原子や塩素原子を含むハロゲン系難燃剤を配合したコンパウンドが主として使用されてきた。
上記従来の材料は、廃棄の際に焼却処理を行うと多量の腐食性ガスが発生するおそれがある。このため、腐食性ガスの発生するおそれのないノンハロゲン難燃材料が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、ノンハロゲン難燃性樹脂組成物として、水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物を難燃剤として用いた組成物が公知である(例えば、特許文献2〜4参照)
特開2004−83612号公報 特許第3339154号公報 特許第3636675号公報 特開2004−189905号公報
上記従来の、水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物を難燃剤として用いたポリオレフィン系樹脂からなるノンハロゲン難燃樹脂組成物は、耐寒性、耐摩耗性を十分備えていないという問題があり、耐寒性及び耐摩耗性を向上させることが要望されている。
本発明が解決しようとする課題は、上記問題点を解決しようとするものであり、水酸化マグネシウムなどの金属水和物を難燃剤として用いた場合に、耐寒性および耐摩耗性に優れた難燃性樹脂組成物および絶縁電線を提供することにある。
そこで、本発明者らは、耐摩耗性を向上させるために、高弾性率の樹脂を用いることを考えた。この際、すべての樹脂成分を高弾性率のものにすると耐寒性が悪くなる傾向があるため、相反するこれらの特性を満足させるべく、ベース樹脂に対して高弾性率の樹脂を所定割合配合することとした。そして、本発明者らは、鋭意検討した結果、高弾性率の樹脂の配合効果を格段に向上できる知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る難燃性樹脂組成物は、金属水和物を主成分とする難燃剤を含有する難燃性樹脂組成物であって、ベース樹脂と、官能基を有する弾性率が1000MPa以上のポリプロピレン樹脂とを含有し、前記ベース樹脂が、官能基を有していないポリプロピレン樹脂であり、前記ベース樹脂と前記ポリプロピレン樹脂とのメルトフローレイト(MFR)の差がg/10min以上であることを要旨とするものである。
このとき、前記官能基は、カルボン酸基、酸無水物基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルケニル環状イミノエーテル基、および、シラン基から選択された1種または2種以上であることが好ましい。また、前記ポリプロピレン樹脂は、該ポリプロピレン樹脂を除く成分100質量部に対し10〜30質量部配合されていることが好ましい。
一方、本発明に係る絶縁電線は、上記難燃性樹脂組成物を用いた絶縁体が導体の周囲に形成されていることを要旨とするものである。
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂と特定のポリプロピレン樹脂とを含有し、ベース樹脂が官能基を有していないポリプロピレン樹脂であり、ベース樹脂と特定のポリプロピレン樹脂とのメルトフローレイト(MFR)の差がg/10min以上であることにより、金属水和物を主成分とする難燃剤を含有していても、耐寒性および耐摩耗性に優れる。
これは、ベース樹脂に高弾性率のポリプロピレン樹脂を配合することにより耐摩耗性と耐寒性とを両立させることを図るとともに、ベース樹脂とポリプロピレン樹脂との流動性に一定以上の差を設けることにより両者を相溶しにくくして、樹脂組成物全体の硬さがポリプロピレン樹脂とベース樹脂とにより平均化されるのを抑えたことにより、高弾性率のポリプロピレン樹脂の特性が発揮されやすくなったためと推察される。これにより、高弾性率のポリプロピレン樹脂の配合効果が格段に向上し、耐摩耗性が向上する。
また、このポリプロピレン樹脂は官能基を有するため、例えば本発明に係る難燃性樹脂組成物を導体に被覆する場合には、導体との密着性が向上し、より一層、耐摩耗性と耐寒性とを向上させることができる。
そして、本発明に係る絶縁電線によれば、本発明に係る難燃性樹脂組成物を用いているため、耐寒性および耐摩耗性に優れる。
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明に係る難燃性樹脂組成物(以下、本組成物ということがある。)は、難燃剤と、ベース樹脂と、特定のポリプロピレン樹脂とを含有するものから構成される。本組成物には、上記成分以外に、耐寒性や耐摩耗性等の物性を損なわない範囲で、必要に応じて、他の添加剤を適宜配合することができる。他の添加剤としては酸化防止剤や充填剤、顔料等が挙げられる。
ベース樹脂としては、塩素、臭素等のハロゲン元素を含まない所謂ノンハロゲン系のプラスチック又はゴムが用いられる。このようなベース樹脂として好ましい材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、EVA樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。ベース樹脂は、コストなどの観点から、官能基を有さない樹脂が好ましい。なお、ベース樹脂とは、本組成物の主材料であり、樹脂材料の中で50質量%以上を占める材料である。
ベース樹脂の弾性率は、100〜4000MPaの範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、1000〜3000MPaの範囲内である。弾性率が100MPa未満では、特定のポリプロピレン樹脂を配合したことによる耐摩耗性向上効果等が得られにくい。一方、弾性率が4000MPaを超えると、本組成物の耐寒性が低下しやすい。弾性率は、JIS K7161に準拠して測定される。
ベース樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、0.1〜30g/10minの範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、0.5〜20g/10minの範囲内である。MFRが0.1g/10min未満では、本組成物の流動性が低下しやすく、成形しにくい。一方、MFRが30g/10minを超えると、機械的特性などが低下しやすい。メルトフローレイト(MFR)は、JIS K6758に準拠して測定される(温度230℃、荷重2.16Kg)。
ベース樹脂の(重量平均)分子量は、1000〜1000000の範囲内にあることが好ましい。分子量が1000未満では、耐摩耗性が悪くなるおそれがある。一方、分子量が1000000を超えると、加工性が悪くなるおそれがある。
上記特定のポリプロピレン樹脂は、主に、本組成物の耐摩耗性を向上させるために用いられる。そのため、特定のポリプロピレン樹脂は、弾性率が1000MPa以上である。弾性率が1000MPa未満では、本組成物は十分な耐摩耗性が得られない。また、特定のポリプロピレン樹脂の弾性率は、好ましくは1500MPa以上、より好ましくは2000MPa以上である。一方、特定のポリプロピレン樹脂の弾性率の上限は、低温特性(低温での巻き付け試験で絶縁電線に亀裂が入らないこと)に優れるなどの観点から、4000MPaが好ましい。より好ましくは、弾性率の上限が3500MPa、さらに好ましくは、弾性率の上限が3000MPaである。
また、上記特定のポリプロピレン樹脂は、官能基を有する。官能基としては、例えば、カルボン酸基(カルボキシル基)、酸無水物基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルケニル環状イミノエーテル基、シラン基などを例示することができる。これらのうち、1種の官能基のみを有していても良いし、2種以上の官能基を有していても良い。特定のポリプロピレン樹脂が官能基を有するため、例えば本組成物を電線導体に被覆する場合には、被覆材と導体との密着性が向上する。これにより、低温においても、被覆材は導体から剥がれにくくなるため、耐寒性が向上する。また、被覆材表面に摩擦力(外力)が負荷された場合においても、被覆材と導体との界面は裂けにくくなるため、耐摩耗性も向上する。
特定のポリプロピレン樹脂に官能基を導入する方法としては、具体的には、官能基を有する化合物をポリプロピレン樹脂にグラフト重合して、グラフト変性プロピレン重合体とする方法や、官能基を有する化合物とプロピレンモノマとを共重合させてプロピレン共重合体とする方法等が挙げられる。
官能基としてカルボキシル基や酸無水物基を導入する化合物としては、具体的には、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のα、β−不飽和ジカルボン酸、又はこれらの無水物、アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、ペンテン酸等の不飽和モノカルボン酸等が挙げられる。
官能基としてエポキシ基を導入する化合物としては、具体的には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸モノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル、α−クロロアクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸等のグリシジルエステル類、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、p−グリシジルスチレン等が挙げられる。
官能基としてヒドロキシル基を導入する化合物としては、具体的には、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
官能基としてアミノ基を導入する化合物としては、具体的には、アミノエチル(メタ)アクリレート、プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、フェニルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
官能基としてアルケニル環状イミノエーテル基を導入する化合物としては、具体的には、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−イソプロペニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン等が挙げられる。
官能基としてシラン基を導入する化合物としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセチルシラン、ビニルトリクロロシラン等の不飽和シラン化合物が挙げられる。
特定のポリプロピレン樹脂の配合量は、本組成物中における該ポリプロピレン樹脂を除く成分100質量部に対し10〜30質量部であることが好ましい。配合量が10質量部未満では、絶縁電線の絶縁層とした場合に十分な耐摩耗性が得られないおそれがある。また、配合量が30質量部を超えると、絶縁電線の絶縁層とした場合に耐寒性が低下するおそれがある。より好ましい配合量は、本組成物中における該ポリプロピレン樹脂を除く成分100質量部に対し12〜28質量部であり、さらに好ましくは15〜25質量部である。
また、本組成物においては、ベース樹脂と特定のポリプロピレン樹脂とのMFRの差は、3g/10min以上である。MFRの差が3g/10min未満では、ベース樹脂と特定のポリプロピレン樹脂とが相溶しやすくなり、本組成物の硬さがポリプロピレン樹脂の硬さとベース樹脂の硬さとを平均化した硬さになって、高弾性率のポリプロピレン樹脂の特性が発揮されなくなる。そのため、耐摩耗性向上効果が低下する。ベース樹脂と特定のポリプロピレン樹脂とのMFRの差は、好ましくは5g/10min以上であり、さらに好ましくは10g/10min以上である。一方、加工性を確保するなどの観点から、MFRの差の上限としては、2000g/10minであることが好ましい。より好ましくは、MFRの差の上限としては、1000g/10minである。
特定のポリプロピレン樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、0.1〜2000g/10minの範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、0.5〜1000g/10minの範囲内である。MFRが0.1g/10min未満では、本組成物の流動性が低下しやすく、成形しにくい。一方、MFRが2000g/10minを超えると、機械的特性などが低下しやすい。
特定のポリプロピレン樹脂の(重量平均)分子量は、1000〜1000000の範囲内にあることが好ましい。分子量が1000未満では、耐摩耗性が悪くなるおそれがある。一方、分子量が1000000を超えると、加工性が悪くなるおそれがある。
難燃剤は、金属水和物を主成分とするものである。金属水和物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどを例示することができる。より好ましくは、水酸化マグネシウムである。水酸化マグネシウムとしては、天然鉱物を粉砕した天然品であっても良いし、海水から合成して得られる合成品であっても良い。
難燃剤の粒径は、平均粒径で0.1〜20μm、好ましくは0.2〜10μm、更に好ましくは0.5〜5μmである。難燃剤の平均粒径が0.1μm未満では、二次凝集が起り易く、機械的特性が低下しやすい。また難燃剤の平均粒径が20μmを超えると、絶縁電線の絶縁層に用いた場合に、絶縁層の外観不良となるおそれがある。
難燃剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対し、通常、30〜250質量部の範囲であれば、自動車等の絶縁電線に要求される難燃性が得られる。好ましい難燃剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対し、50〜200質量部であり、さらに好ましくは60〜180質量部である。
難燃剤は、表面が表面処理剤により表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィンの単独重合体、もししくは相互共重合体、あるいはそれらの混合物等が用いられる。また上記の表面処理剤は変性されていてもよい。
難燃剤の表面処理剤の変性は、例えば、不飽和カルボン酸やその誘導体等を変性剤として用い、上記のαオレフィン重合体等の重合体にカルボキシル基(酸)を導入して酸変性する方法が挙げられる。上記変性剤としては具体的には、不飽和カルボン酸としてはマレイン酸、フマル酸等が挙げられ、その誘導体としては無水マレイン酸(MAH)、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル等が挙げられる。変性剤としては、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。またこれらの変性剤は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。表面処理剤に酸を導入する酸変性方法としては、グラフト重合や直接法等が挙げられる。また、酸変性量としては、変性剤の使用量として、通常、重合体に対して0.1〜20質量%程度であり、好ましくは0.2〜10質量%、更に好ましくは0.2〜5質量%である。
難燃剤を表面処理剤で処理する際の表面処理方法は特に限定されず、各種処理方法を用いることができる。難燃剤の表面処理方法としては、例えば、難燃剤の粉砕と同時に行う方法や、予め粉砕した難燃剤と表面処理剤を混合して後から処理する方法が挙げられる。また、処理方法としては、溶媒を用いた湿式処理方法、溶媒を用いない乾式処理方法のいずれでもよい。
難燃剤の湿式処理に用いられる溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素等が用いられる。また、難燃剤の表面処理は、難燃性樹脂組成物の調製時に、難燃剤と樹脂等に表面処理剤を加えて組成物を混練する際に同時に処理を行う方法でもよい。
上記難燃性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。難燃性樹脂組成物は、例えば、バンバリミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸混練押出機、ロール等の通常の混練機で溶融混練して均一に分散することで製造することができる。
難燃性樹脂組成物は、自動車、電子・電気機器に使用される部材や絶縁材料に利用することができ、特に絶縁電線の絶縁層の形成材料として好適に用いられる。
本発明の絶縁電線は、通常の絶縁電線の製造に用いられる電線押出成形機等を用いて、上記の難燃性樹脂組成物を導体の周囲に押し出して導体を被覆することで、難燃性樹脂組成物を用いた絶縁層が導体の周囲に形成されているものである。絶縁電線に用いられる導体は、通常の絶縁電線に使用されるものが利用できる。また絶縁電線の導体の径や絶縁層の厚み等は、特に限定されず、絶縁電線の用途などに応じて適宜決めることができる。絶縁層は、単層であっても、2層以上の複数層から構成しても、いずれでもよい。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(実施例1)
ベース樹脂として官能基が導入されていないポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「EC7」、MFR=1.5g/10min)50質量部と、弾性率が2100MPa、酸無水物基が導入されたポリプロピレン樹脂(三井化学社製、商品名「AT2377」、MFR=20g/10min)15質量部と、水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、商品名「キスマ5A」)49質量部と、酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1010」)1質量部とを、二軸混練機を用いて200℃で混合した後、ペレタイザーにてペレット状に成形して難燃性樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを押出成形機により軟銅線を7本撚り合わせた軟銅撚線の導体(断面積:0.5mm)の外周に0.2mm厚で押出して、難燃性樹脂組成物からなる絶縁層により導体が被覆された絶縁電線を得た。
(実施例2、3)
表1の難燃性樹脂組成物の成分組成の欄に示す通り、実施例1のポリプロピレン樹脂「AT2377」の配合量を変えた以外は、実施例1と同様にして絶縁電線を製造した。
(実施例4〜6)
表1の難燃性樹脂組成物の組成の欄に示す通り、実施例1のポリプロピレン樹脂「AT2377」を、弾性率が2200MPa、酸無水物基が導入されたポリプロピレン樹脂(三井化学社製、商品名「AT2378」)に変え、配合量を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様にして絶縁電線を製造した。
(比較例1〜3)
実施例1のベース樹脂を、官能基が導入されていないポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「MA1B」、MFR=21g/10min)とし、実施例1のポリプロピレン樹脂「AT2377」を、弾性率が500MPa、酸無水物基が導入されたポリプロピレン樹脂(三井化学社製、商品名「QB550」、MFR=3)に変え、表1に記載する配合量とした以外は、実施例1と同様にして絶縁電線を製造した。
(比較例4〜6)
実施例1のベース樹脂を、官能基が導入されていないポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「MA1B」、MFR=21g/10min)とし、実施例1のポリプロピレン樹脂「AT2377」を、弾性率が600MPa、酸無水物基が導入されたポリプロピレン樹脂(三井化学社製、商品名「QB551」、MFR=6g/10min)に変え、表1に記載する配合量とした以外は、実施例1と同様にして絶縁電線を製造した。
(比較例7)
実施例1のポリプロピレン樹脂「AT2377」を、弾性率が1000MPa、酸無水物基が導入されたポリプロピレン樹脂(三菱化学社製、商品名「P502」、MFR=1.7g/10min)に変えた以外は、実施例1と同様にして絶縁電線を製造した。
実施例及び比較例で得られた絶縁電線を用いて、耐寒性試験及び耐摩耗性試験を行った。試験の結果を表1に示す。耐寒性試験方法及び耐摩耗性試験方法は下記の通りである。
〔耐寒性試験方法〕
JIS C3005に準拠して行った。すなわち、実施例、比較例の絶縁電線を38mmの長さに切断し試験片とし、試験片を耐寒性試験機に装着し、所定の温度まで冷却し、打撃具で打撃して、試験片の打撃後の状態を観察した。5本の試験片を用いて、5本の試験片が全て割れた温度を耐寒温度とした。
〔耐摩耗性試験方法〕
社団法人自動車技術規格「JASO D611−94」に準拠して、ブレード往復法により試験を行った。すなわち、実施例、比較例の絶縁電線を750mmの長さに切り出して試験片とした。そして、23±5℃の室温下で試験片の被覆材(絶縁層)に対し軸方向に10mm以上の長さでブレードを毎分50回の速さで往復させ、導体に接するまでの往復回数を測定した。この際、ブレードにかかる荷重は7Nとした。回数については200回以上のものを合格(○)とし、200回未満のものを不合格(×)とした。
Figure 0005210189
・EC7:日本ポリプロ社製、ポリプロピレン樹脂、弾性率1200MPa、MFR=1.5g/10min
・MA1B:日本ポリプロ社製、ポリプロピレン樹脂、弾性率1500MPa、MFR21g/10min
・AT2377:三井化学社製、酸無水物基を有するポリプロピレン樹脂、弾性率2100MPa、MFR20g/10min
・AT2378:三井化学社製、酸無水物基を有するポリプロピレン樹脂、弾性率2200MPa、MFR22g/10min
・QB550:三井化学社製、酸無水物基を有するポリプロピレン樹脂、弾性率500MPa、MFR3g/10min
・QB551:三井化学社製、酸無水物基を有するポリプロピレン樹脂、弾性率600MPa、MFR6g/10min
・P502:三菱化学社製、酸無水物基を有するポリプロピレン樹脂、弾性率1000MPa、MFR1.7g/10min
・水酸化マグネシウム:協和化学工業社製、商品名「キスマ5A」
・酸化防止剤:チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1010」
比較例1〜6では、ベース樹脂に配合したポリプロピレン樹脂の弾性率が1000MPa未満であるため、耐摩耗性に劣っている。比較例7では、ベース樹脂と高弾性率のポリプロピレン樹脂とのMFRの差が3g/10min未満であるため、耐摩耗性と耐寒性に劣るとともに、電線外観不良となった。これに対し、実施例では、耐寒性および耐摩耗性が良好であることが確認できた。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

Claims (3)

  1. 金属水和物を主成分とする難燃剤を含有する難燃性樹脂組成物であって、樹脂が、ベース樹脂と、官能基を有する弾性率が1000MPa以上のポリプロピレン樹脂と、からなり、前記ベース樹脂が、官能基を有していないポリプロピレン樹脂であり、前記官能基は、カルボン酸基、酸無水物基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルケニル環状イミノエーテル基、および、シラン基から選択された1種または2種以上であり、前記ベース樹脂と前記官能基を有するポリプロピレン樹脂とのメルトフローレイト(MFR)の差が5g/10min以上であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
  2. 前記官能基を有するポリプロピレン樹脂は、該官能基を有するポリプロピレン樹脂を除く成分100質量部に対し10〜30質量部配合されていることを特徴とする請求項に記載の難燃性樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物を用いた絶縁体が導体の周囲に形成されていることを特徴とする絶縁電線。
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