JP5085369B2 - 窒化物半導体発光装置及びその製造方法 - Google Patents

窒化物半導体発光装置及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、可視領域〜紫外領域の波長帯で動作する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や、レーザダイオード(LD:Laser Diode)などの窒化物半導体発光装置、及びその製造方法に関する。
緑〜紫外領域にかけての発光素子用材料として、窒化ガリウムに代表される窒化物半導体が用いられるようになっている。
窒化物半導体を用いた発光素子では、一般に多重量子井戸構造からなる発光層(一般には活性層と言われる)の他、発光層の上下層に、電流注入のためのp型及びn型窒化物半導体層が設けられている。
近年のGaN基板開発の進展により、レーザダイオードなどでは、n型の導電型を有するGaN基板上に、n型窒化物半導体層、発光層、及びp型窒化物半導体層を順次エピタキシャル成長することで、従来のサファイア基板上に成長した場合よりもエピ層内の転位密度や欠陥を低減できる上、劈開による平滑な共振器端面を容易に作製できることから、レーザの高性能化、高品質化、高歩留り化が図れるようになった。
また、n型GaN基板の導入によって、レーザの素子構造も、従来、半導体加工によってエピタキシャル成長層深部に設けられたn型窒化物半導体層を露出させた面に形成していたn型オーミック電極を、上記n型GaN基板の裏面側に形成することが可能となったため、作製工程の短縮化も図れるようになった。
n型窒化物半導体に対するオーミック電極としては、主として下からTi/Al電極(例えば、特許文献1を参照)が用いられており、電極被着後に高温の熱処理を施すことで、n型層に対して良好なオーム性接触が得られた例が開示されている。
しかしながら、Alを最表面とした電極は、高温の熱処理によってAlが酸化するため、素子の実装工程において前記Alを最表面とした電極を用いた場合、AuワイヤによるボンディングやAu-Sn合金等のAu系ハンダが接着しない、もしくは容易に剥れてしまい、両者の間で十分な接合強度を得ることができない問題があった。
これを改善するため、オーミック電極としてn型窒化物半導体に近い側から順に、Alおよび/またはAl合金を有してなる厚さ10nm〜70nmの第一層と、第一層(Al、Al合金)、第三層(Au)よりも融点の高い金属として、例えばPd、Ti、Nb、MoおよびWから選ばれる1以上の金属を有してなる厚さ10〜300nmの第二層と、Auを有してなる厚さ100〜1000nmの第三層からなる電極を用い、350℃〜600℃の熱処理を施すことで、n型窒化物半導体に対して良好なオーム性を得るとともに、滑らかで光沢のある電極の表面状態と、良好なワイヤボンディング性を実現した例(例えば特許文献2を参照)が開示されている。
特に、ここでは第二層の金属として厚さ50nmのPdを用いて、第一層のAlを主体とした金属膜の膜厚をパラメータとしてオーミック性の検討を行い、接触抵抗を低減させる上でも第一層の膜厚範囲を10nm〜70nmに限定することが重要と記載されている。
また、第二層の金属としてPdの代わりに、Ti、Nb、Mo、Wのいずれかを用いた場合でも、第一層金属の膜厚と接触抵抗との関係は、前記Pdを用いた場合と同様の結果が得られたことも記載されている。
またその他の例として、n型窒化物半導体層に対して、下からTi層(例えば30nm)、Al層(例えば150nm)、Mo層(例えば30nm)、Pt層(例えば15nm)、Au層(例えば200nm)を順次積層してなる電極を用いることでAu層の剥れを抑止し、さらにAu層の半導体層側への拡散をほぼ完全に抑えた例(例えば特許文献3を参照)が開示されている。
特開平7-45867号公報 特開2006-59933号公報 特開2004-221493号公報
上記特許文献2及び3に記載された拡散バリヤ層として用いられる金属種を参考に、本発明者らは、n型窒化物半導体層上に第一層Al層の厚さを100nmとし、その上に厚さ50nmのMo層、厚さ100nmのTi層、厚さ50nmのPt層の三層構造からなる拡散バリヤ層、そして厚さ300nmのAu層を順次積層した5層構造からなる電極を形成し、窒素雰囲気中で500℃の熱処理を施して、電極表面状態の変化を調べた。その結果、図7に示すように、電極表面に変色を伴う著しい凹凸を有する領域が現れた。
この領域について、オージェ電子分光法を用いて分析した結果を図2に示す。
同図より、前記凹凸領域では、電極最下層に存在したはずのAlが電極最表面にまで拡散していることが確認されており、さらにAlと同時に酸素も観測されたことから、電極最表面層は酸化Alが形成されているものと考えられる。
逆に最表面に存在していたAuは半導体方向に拡散していることも確認された。
この凹凸領域は、第一層のAl膜厚のみを30nm程度にまで薄層化した場合でも生じることが確認されており、さらに熱処理温度を上げると、上記変色を伴う凹凸領域は、さらにその面積を拡大することもわかっている。
このように酸化したAl領域が電極表面に発生してしまうと、上述した通り実装工程において電極表面とAuワイヤやハンダ材料との間で十分な接合強度が得られなくなるため、素子を実装する上で大きな問題となる。
以上のことから、オーム性取得に必要なAl金属が、Auを最上層とした電極中に存在する場合、半導体製造技術において常識的な膜厚範囲で如何なる拡散バリヤ層を設けようとも、高温の熱処理に伴うAlの拡散を完全に抑えることは困難であるものと予想される。
本発明は、上記問題を解消するべく、n型窒化物半導体に対して良好なオーム性接触が得られ、かつ高温の熱処理に対しても従来のような電極表面荒れを起こさないn電極を備えた窒化物半導体発光装置、及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記問題を解消するためには、Al単体金属を用いなくても、n型窒化物半導体に対して良好なオーム性接触が得られるn電極が必須である。
そこで、本発明の要旨の一例を列挙すれば、次の通りである。
1.基板上に設けられたn型窒化物半導体層と、n型窒化物半導体層上に設けられた所定の波長を有する光を発する活性層と、活性層上に設けられたp型窒化物半導体層と、n型窒化物半導体層と電気的に接続されるn電極と、p型窒化物半導体層と電気的に接続されるp電極とを備え、n電極は、n型窒化物半導体に接する側から順に、窒化アルミニウムからなる厚さが1nm以上、5nm未満の範囲である第一層と、Ti、Zr、Hf、Mo及びPtから選ばれる1以上の金属からなる第二層と、Auからなる第三層とを有する積層構造からなり、前記n電極と前記n型窒化物半導体との間の接続はオーム性であることを特徴とする。
2. 基板上に、少なくともn型不純物が添加されたn型窒化物半導体層を形成する工程と、n型窒化物半導体層上に、所定の波長を有する光を発する活性層を形成する工程と、p型不純物が添加されたp型窒化物半導体層を形成する工程と、p型窒化物半導体上に接してp電極を形成する工程と、n型窒化物半導体上に接して、下から窒化アルミニウムからなる厚さが1nm以上、5nm未満の範囲である第一層を形成する工程と、Ti、Zr、Hf、Mo及びPtから選ばれる1以上の金属からなる第二層と、Auからなる第三層とを有する、前記第一層から第三層までの積層構造からなるn電極を形成する工程と、この後熱処理を施す工程とを具備することを特徴とする。
本発明のn電極を用いることで、Al単体金属を用いなくてもn型窒化物半導体に対して良好なオーム性を得ることが可能となり、それと同時にn電極形成後に高温の熱処理を施しても、従来のようなAl拡散が起こらないことから、実装工程において、n電極とAu系ハンダやAuワイヤとの間で、実用上十分な接合強度が得られる。その結果、窒化物半導体発光装置を歩留り良く作製することが可能となる。
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体レーザの断面模式図である。
なお、本発明の主旨はn型窒化物半導体に接して形成されるn電極の構造に関するものであるため、以下で説明するレーザのエピタキシャル成長層の構成は、ごく一般的な積層構成を例に示しているものであって、これに限定されるものではない。
以下に窒化物半導体レーザの全体的な製造方法を説明する。
n型GaN基板1上に、SiドープGaNからなるn型バッファ層2、SiドープAlGaNからなるn型クラッド層3、SiドープGaNからなるn型ガイド層4、InGaN多重量子井戸構造からなる活性層5、MgドープAlGaN(Al組成比=7%)からなる電子ブロック層6、MgドープAlGaN(Al組成比=4%)からなるp型クラッド層7、及びMgドープGaNからなるp型コンタクト層8を、一般的な有機金属気相成長法を用いて順次成長させる。
次に周知のホトリソグラフィ技術と、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチング法を用いて、レジストパターンによって開口された基板表面の所望の領域をp型クラッド層7の途中まで、具体的にはp型クラッド層7を30〜40nm程度残す深さまでエッチングして、p型コンタクト層8を最頂部とする共振器幅1.5μmのリッジを形成する。
次に、基板全面にCVD法、スパッタ法等の周知の絶縁膜形成技術を用いて、例えば膜厚=250nmのSiO2膜9を形成した後、ホトリソグラフィ技術を用いて、上記リッジ最上部に位置する領域のみが開口されたホトレジストパターンを形成し、このホトレジストパターンをエッチングマスクとして上記開口部をエッチングして、リッジ最頂部のp型コンタクト層8を露出させる。
この時エッチング方法としては、フッ酸系薬液を用いたウェットエッチングの他、CF4等のフッ素系ガスを用いたドライエッチング等の周知の技術を用いて行う。
次に、上記開口されたリッジ最頂部を含む所望の領域を開口する形でホトレジストパターンを形成した後、例えば真空蒸着法を用いて該基板1の表面側全面にNi(ニッケル)膜、Mo(モリブデン)膜、及びAu(金)膜を順次被着し、周知のリフトオフ法を用いて不要な金属膜とホトレジストパターンを除去することで、リッジ最頂部のp型コンタクト層8上、及びその周辺に形成されたSiO2膜上の所望の領域にNi/Mo/Auからなるp電極10が形成される。
次に、n型GaN基板1の裏面側から、周知の研磨技術を用いて基板厚が約100μm程度の厚さになるまで研磨・薄層化する。
次に、研磨・薄層化されたn型GaN基板1の裏面側全面に、スパッタ法を用いて厚さが3nmの窒化アルミニウム膜(AlN)101を被着した後、例えば電子ビーム蒸着法を用いて厚さが50nmのTi(チタン)膜102、厚さが50nmのPt(白金)膜103、及び厚さが500nmのAu(金)膜104を順次被着する。この後、窒素中で500℃、10分間のアニール処理を施すことで、n型GaN基板1に対してオーム性接触する、下からAlN/Ti/Pt/Auの4層構造からなるn電極11が形成される。
次に、リッジの長手方向と垂直に、例えば600μm程度の長さになるように劈開してバー状の両共振器端面を形成し、両端面に所望の反射率並びに透過率を有する端面コーティング膜12を形成する。
続いて、上記バーを劈開などによりチップ化することで図1の断面構造、並びに図5の形状を有する窒化物半導体レーザが完成し、これをダイボンディングにより前記レーザチップのp電極側をマウント面として、AuSnハンダが塗布されたSiCからなるサブマウント上にマウントし、さらにレーザチップがマウントされたサブマウントを、ステム上にマウントする。最後に上方を向いているレーザチップのn電極面、及びp電極が電気的に接続されたサブマウント上の電極面に、適宜Auワイヤをボンディングして配線することで窒化物半導体レーザ装置が完成する。
前記の工程により窒化物半導体レーザ装置を50個作製するにあたり、n電極面へのAuワイヤボンディングを行う過程での接続不良は一つも発生せず、接続部の外観も良好であった。
これらについて、Auワイヤとn電極表面との接着性を評価するため、n電極表面に接続されたAuワイヤに対して引っ張り試験(ワイヤプルテスト)を行ったところ、断線強度は50個中全て5g以上であり、断線部は全てAuワイヤ途中での断線であることを確認した。
さらに、前記それぞれのAuワイヤが接続された外部導入端子を介してレーザの電流−電圧(I−V)特性を評価した結果についても、直列抵抗が著しく高いものや立ち上がり電圧などにバラツキは見られず、電極−Auワイヤ間の導通も良好であることを確認した。
上記本実施の形態によるn電極の構造、作用、並びに効果について、本発明者らが行った実験結果に基づき以下に説明する。
実験には、有機金属気相成長法により、サファイア基板上にGaNからなる低温バッファ層と、膜厚=5000nmのアンドープGaN層と、SiドープGaN(ドーピング濃度=1.0〜2.0×1018cm−3、膜厚=1000nm)層をエピタキシャル成長したものを用いた。
そして上記窒化物半導体レーザの作製手法を用いて、オーミック特性の評価方法としては一般的なTLM(Transmission Line Model)パターンを、ホトレジストにより形成することで、電極形成前の試料が完成する。
前記SiドープGaN層からなるTLMパターンのメサ幅(=電極幅)は100μmであり、メサエッチングによって形成した台地の表面には、電極間隔が20、40、80、160、320μmとなるようにn電極を被着するためのホトレジスト開口部を配置した。
この試料に対して、電極最下層となる窒化アルミニウムを、スパッタ法により膜厚をそれぞれ3nm、5nm、8nmの3条件とした3種類の試料を作製する。この時、特に基板加熱は行っていない。
この3試料と窒化アルミニウムを被着していない試料(1試料)を加えた4試料に対して、重ねて膜厚50nmのTi(チタン)層、膜厚50nmのPt(白金)層、及び膜厚300nmのAu(金)層を電子ビーム蒸着法により積層形成して、この後周知のリフトオフ法によりホトレジストとともに、不要な金属膜、及び窒化アルミニウム膜を除去することで、TLM測定試料が完成する。
この4試料に対して、窒素雰囲気中で400℃〜550℃の温度範囲で熱処理した時の、電極間隔=20μmにおける電極間I−V特性を評価した結果を図3A〜Dに示す。
図3Aは、窒化アルミニウムの無いTi/Pt/Au電極のみの特性を示しており、図3B、C、Dは、最下層の窒化アルミニウム(以降、積層構造を表す際にはAlNと略す)膜厚をそれぞれ3nm、5nm、8nmとし、その上にTi/Pt/Auを重ねて形成した電極の特性を示している。
それぞれの電極の特性について、以下に説明する。
図3AのTi/Pt/Au電極のみの場合では、熱処理前において非オーム性ではあるものの、電圧の増加に伴う僅かな電流増加が見られたが、400℃以上の熱処理を施すことで、殆ど電流が流れなくなってしまった。
図3BのAlN(3nm)/Ti/Pt/Au電極では、熱処理前の段階では電流の増加は確認されなかったが、400℃以上の熱処理によって比較的良好なオーム性を示すようになり、450℃〜500℃熱処理後において、最も良好なI−V特性を示した。図示していないが、600℃熱処理後においても、ρc<1.0×10−4Ωcm2であり、電極表面も光沢面から僅かな凹凸に起因した曇り面に変化したが、従来のような著しい変色領域は確認されず良好なAu色が保持されていることを確認した。
図3CのAlN(5nm)/Ti/Pt/Au電極では、熱処理前〜400℃熱処理後まで電流の増加は見られず、450℃以上の熱処理でオーム性が得られはじめ、500℃〜550℃熱処理後に最も良好なI−V特性を示したが、前記(b)と比較して電流値は小さい。
図3DのAlN(8nm)/Ti/Pt/Au電極では、熱処理前〜450℃熱処理後まで電流の増加は見られず、500℃熱処理後にようやくオーム性を示し始めたが、550℃熱処理後においても、前記(b)、(c)と比較して大きな電流値は得られていない。
これらのI−V特性から求めた抵抗値を用いて算出した比接触抵抗ρcの熱処理温度依存性を評価した結果を図4に示す。
同図中の特性線1(AlN膜厚=3nm)、特性線2(AlN膜厚=5nm)、特性線3(AlN膜厚=8nm)から判るように、窒化アルミニウムの膜厚が厚ければ厚いほどρcは高くなる傾向にあり、前記I−V特性評価結果と合わせて、レーザ素子等の発光素子に適用できるオーム性を得るためには、窒化アルミニウムの膜厚は、厚くても5nmまでであることがわかった。
逆に窒化アルミニウムが薄ければ薄いほど良好なオーム性が得られるものと推測されるが、前記の実験結果によれば、窒化アルミニウムが全く無い場合はオーム性を示さない。
従って、被着形成した窒化アルミニウムの膜厚下限としては、一般的な手法による膜厚評価の限界である1nm前後の厚さと考えられるが、例えば膜ではなく島状に薄く窒化アルミニウムが存在するだけでも、オーム性向上に効果があるものと考えられる。
次に、前記実験において最も特性の良かったAlN(膜厚=3nm)/Ti/Pt/Au電極について、熱処理前と500℃熱処理後の積層構造の変化を、断面TEM観察とEDX面分析によって調べた。その結果、500℃熱処理後においても第一層の窒化アルミニウムに大幅な変化は見られず、その存在が明瞭に観察されており、さらにその上層のTi/Pt/Auもそれぞれの界面において僅かな相互拡散が見られた以外は、当初の積層状態を保持していることが観察された。
以上のことから、Al単体金属を用いずにn型窒化物半導体に対してオーム性接触を得るためには、n型窒化物半導体とAl以外の金属膜との間に膜厚を規定した窒化アルミニウムを存在させることが重要であり、この窒化アルミニウムの形成方法として前記実験に用いたスパッタ法で場合でも、この後金属膜を重ねて被着形成し、前記実験結果から少なくとも400℃〜600℃の熱処理を施すことで、n型窒化物半導体に対して良好なオーム性接触を得ることが可能となる上、熱処理に伴う電極最表面側への異種金属拡散の無い実装工程に適したAu最表面も保持できる。
上記実験結果によれば、ある熱処理温度を境にしてI−V特性に顕著な変化が見られること、500℃熱処理後の窒化アルミニウム膜に大幅な変化が見られないことから鑑みて、形成直後にはn型窒化物半導体上にただ堆積していただけの結晶性の低い窒化アルミニウム膜が、熱処理を施すことでn型窒化物半導体と結晶的に結合してヘテロ界面が形成され、これによってn型窒化物半導体と窒化アルミニウム上の金属膜との間で、トンネル効果によるオーム性接触が実現されたものと考えられる。これは、前記実験においてGaNよりもバンドギャップの大きい窒化アルミニウムの膜厚が厚いほど、n電極間の抵抗値が増大する傾向を示すことからも予測されうることである。
逆に、MOVPE法等の通常の結晶成長法で窒化アルミニウムを成長させるには1200℃以上の基板加熱が必要であるため、前記のような基板表面側に金属膜が形成されている状態、さらに基板が薄層化されている状態に対しては、成長炉内の金属汚染や、基板が割れてしまう等の様々な悪影響を及ぼす危険性が高いため、現実的に選択できる方法ではない。
さらにIn(インジウム)が含まれる活性層が形成された基板に対して、1200℃以上の熱処理を施すと、Inの拡散・偏析等が生じて活性層が壊れてしまう危険性もある。
本発明では、半導体製造プロセスで一般的なスパッタ法等の成膜方法を用いて形成した窒化アルミニウムでも、前記のような作用、効果が得られることに特徴があり、前記スパッタ法以外にも、CVD法、昇華法等、半導体プロセスで一般的な手法を用いて形成しても良い。
また、窒化アルミニウム上に形成する電極金属についても、先に述べたオーム性が得られる推測原理から考えて、窒化アルミニウムに対して接着する金属であれば、如何なる金属材料、または導電性金属酸化物等の金属化合物材料を用いても良い。
(実施例2)
図6は、本発明の他の実施形態に係る窒化物半導体発光ダイオード(LED)の模式図である。以下に全体的な製造方法を説明する。
サファイア基板20上に、アンドープGaNからなるバッファ層21と、キャリア濃度=2×1018cm−3で膜厚=5μmのSiドープn型GaN層22、Siドープn型AlGaNクラッド層23、InGa1−bN(0<b≦0.1)からなる活性層24と、Mgドーピング濃度=3.0×1019cm−3で膜厚=40nmのMgドープAlGaNからなるp型クラッド層25、及びMgドープGaNからなるp型コンタクト層26からなる多層構造を、有機金属気相成長法を用いて順次成長させる。
次に、周知のホトリソグラフィ技術と塩素系ガスを用いたドライエッチング法により、該基板20表面側から所望の領域をエッチングして、Siドープn型GaN層22を露出させる。
次に、露出したSiドープn型GaN層22の所望の位置に、スパッタ法を用いて膜厚が1.5nmの窒化アルミニウム膜(AlN)201を被着した後、さらにその上に膜厚が30nmのHf(ハフニウム)膜202、膜厚が50nmのMo(モリブデン)膜203、膜厚が100nmのZr(ジルコニウム)膜204、膜厚が100nmのPt(白金)層205、及び膜厚が500nmのAu(金)膜206を、電子ビーム蒸着法を用いて積層形成し、窒素雰囲気中において450℃のアニール処理を施すことで、SiドープN型GaN層22に対してオーム性接触するAlN/Hf/Mo/Zr/Pt/Auの6層構造からなるn電極27が形成される。
次に、上記エッチング工程でエッチングされなかった領域の、第二のp型クラッド層26上の所望の位置に、膜厚が30nmのPd(パラジウム)膜/膜厚が70nmのPt(白金)膜/膜厚が300nmのAu(金)膜を積層形成することにより、p電極28が形成される。
この時、n電極27の最表面とp電極28の最表面は、ほぼ同じ高さとなるような膜厚構成をとっている。
この後、サファイア基板20の裏面側を、ダイヤモンド砥粒等を用いて厚さが200μm程度になるまで薄層化し、最終処理として研磨面を鏡面に仕上げ、所望も大きさにチップ化することで、窒化物半導体発光ダイオード(LED)が完成する。
前記LEDはサファイア基板を通して、鏡面研磨された裏面側から放出される光を利用するものであるため、LEDを実装するマウント上には、予めAu−Snハンダによるパターニングが施されており、パターニングされたAu−Snハンダに対して、p、n各々の電極と、対応するAu−Snハンダパターンとを合わせる形で実装する。
前記の工程によりLED装置を30個作製し、外部導入端子を介してLEDのI−V特性を評価した結果、50mAの電流値を得るために要した電圧の平均値は3.25Vであり、著しく電圧の高いものや、電流が得られないものは一つも無かった。
さらに、実装したLEDチップに対してせん断強度試験を行った結果、全て400g以上のせん断強度を有していることもわかり、実装工程で何ら問題が発生していないことも確認した。
以上の実施例では、基板材料としてサファイア基板を適用した例について述べたが、常識的に窒化物半導体が成長しうる基板材料、例えばGaN、SiC、Si等でも良く、製造するLEDの構造により如何なる基板材料を用いても良いことは言うまでも無い。
以上の実施例では、n電極における窒化アルミニウムとAuとの金属膜として、下からTi/Pt積層膜、及びHf/Mo/Zr/Pt積層膜を用いた例について述べたが、これに限定されることはなく、Auワイヤ、Au−Snハンダ等の接着させる材料ごとに、適切に金属積層体、及び膜厚を変えても良いことは言うまでも無い。
以上、本発明の実施形態について、各窒化物半導体発光素子の製造方法を交えながら詳述してきたが、具体的な窒化物半導体層の構成は本実施形態に限定されるものではなく、作製するデバイスの構造や必要とされる性能に応じて、種々変更可能である。
以上のことから、本発明のn電極を窒化物半導体発光素子に適用することで、n型窒化物半導体に対して良好なオーム性接触が得られ、かつ高温の熱処理を施した後でも、実装工程に適したAuからなるn電極最表面を良好に保持することができる。
本発明の第一の実施形態である窒化物半導体レーザ素子の断面模式図。 従来技術をもとに形成したAl(膜厚=100nm)/Mo/Ti/Pt/Au電極の500℃熱処理後において電極表面に発生した変色を伴う凹凸領域の分析結果を示す図。 本発明の作用と効果を検証するために作製した試料の電極間I−V特性を示す図。 本発明の作用と効果を検証するために作製した試料の電極間I−V特性を示す図。 本発明の作用と効果を検証するために作製した試料の電極間I−V特性を示す図。 本発明の作用と効果を検証するために作製した試料の電極間I−V特性を示す図。 本発明の作用と効果を検証するために作製した試料の比接触抵抗ρcの熱処理温度依存性評価結果を示す図。 本発明の第一の実施形態である窒化物半導体レーザ素子の模式図。 本発明の第二の実施形態である窒化物半導体発光ダイオードの模式図。 従来技術をもとに形成したAl(膜厚=100nm)/Mo/Ti/Pt/Au電極の500℃熱処理後における電極表面観察結果を示す図。
符号の説明
1…n型GaN基板、
2…n型バッファ層、
3…n型クラッド層、
4…n型ガイド層、
5…活性層、
6…電子ブロック層、
7…p型クラッド層、
8…p型コンタクト層、
9…SiO2膜、
10…p電極、
101…窒化アルミニウム膜、
102…Ti膜、
103…Pt膜、
104…Au膜、
11…n電極、
12…端面コーティング膜、
20…サファイア基板、
21…アンドープGaNからなるバッファ層、
22…n型GaN層、
23…n型AlGaNクラッド層、
24…活性層、
25…p型クラッド層、
26…p型コンタクト層、
201…窒化アルミニウム膜、
202…Hf膜、
203…Mo膜、
204…Zr膜、
205…Pt膜、
206…Au膜
27…n電極、
28…p電極。

Claims (10)

  1. n型窒化物半導体層と、
    前記n型窒化物半導体層上に設けられた所定の波長を有する光を発する発光層と、
    前記発光層上に設けられたp型窒化物半導体層と、
    前記n型窒化物半導体層と電気的に接続されたn電極と、
    前記p型窒化物半導体層と電気的に接続されたp電極とを備え、
    前記n電極は、前記n型窒化物半導体層に近い側から順に第1層、第2層、第3層とがそれぞれ積層された積層膜であり、
    前記第1層は、厚さが1nm以上、5nm以下の範囲を有する窒化アルミニウムからなり、
    前記第2層は、Ti、Zr、Hf、Mo及びPtから選ばれる1以上の金属からなり、
    前記第3層は、Auからなることを特徴とする窒化物半導体発光装置。
  2. 前記n電極と前記n型窒化物半導体層とを接続する電気的特性は、オーム性であることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体発光装置。
  3. 前記n電極の前記第2層は、前記n型窒化物半導体層に近い側にTiが配置され、遠い側にPtが配置された二層構造であることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体発光装置。
  4. 前記窒化アルミニウムは、前記n型窒化物半導体層の表面の少なくとも一部が露出するように島状に設けられていることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体発光装置。
  5. 前記n電極は、前記n型窒化物半導体層に接して設けられていることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体発光装置。
  6. 前記窒化物半導体発光装置は、発光ダイオード(LED)であることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体発光装置。
  7. 前記窒化物半導体発光装置は、レーザダイオード(LD)であることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体発光装置。
  8. n型窒化物半導体層上に、所定の波長を有する光を発する発光層を形成する工程と、
    前記発光層上に、少なくともp型不純物が添加されたp型窒化物半導体層を形成する工程と、
    前記p型窒化物半導体上にp電極を形成する工程と、
    前記n型窒化物半導体層の一表面上に、前記n型窒化物半導体層に近い側から順に窒化アルミニウムからなる厚さが1nm以上、5nm以下の範囲である第1層と、Ti、Zr、Hf、Mo及びPtから選ばれる1以上の金属からなる第2層と、Auからなる第3層とのそれぞれを積層する工程と、
    前記積層する工程の後に、前記n型窒化物半導体層に熱処理を施す工程とを具備することを特徴とする窒化物半導体発光装置の製造方法。
  9. 前記熱処理の温度範囲は、400℃〜600℃であることを特徴とする請求項8記載の窒化物半導体発光装置の製造方法。
  10. 前記窒化アルミニウムは、スパッタ法により形成されることを特徴とする請求項8記載の窒化物半導体発光装置の製造方法。
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