JP5083960B2 - 車体洗浄装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車体洗浄装置に関し、特に、自動車の塗装工程において使用される車体洗浄装置に関する。
自動車の塗装工程には、通常、複数回の塗装作業や塗装後の乾燥焼付け作業が含まれるため、これら塗装作業や焼付け作業の前後に、車体の洗浄が行われることが多い。
例えば、特開2005−13949号公報(特許文献1)には、電着塗装工程にて電着塗膜を形成した自動車ボディを電着槽から出槽した後、この自動車ボディに付着した余剰な電着塗料を電着水洗工程にて洗い流し、その後、電着乾燥炉に搬送して電着塗膜を焼き付ける手段が開示されている。詳細には、電着塗装後、余剰となる電着塗料が付着した自動車ボディに対して、第1水洗用スプレー装置を用いて洗浄液を吹付け、これを洗い流す方法が開示されている。
また、特開平6−99115号公報には、塗装工程の前処理に含まれる化成処理工程を終了した車体に対してスプレーによる水洗処理が施されると共に、この水洗処理において高圧の洗浄液を車体に対して吹付けることで、化成処理後の車体表面に付着した鉄粉やスラッジを除去する手段が開示されている。詳細には、車体の両側に対応した位置に複数の洗浄ノズルを配設し、これら複数の洗浄ノズルから5kg/cm2以上の高圧洗浄液を吹付けることで車体の洗浄を行う手段が開示されている。
特開2005−13949号公報 特開平6−99115号公報
このように、上記特許文献に開示の洗浄手段は何れもスプレーによる洗浄方式を採っているが、車体表面の全体にわたって洗浄を施すためには、スプレーの吹付け範囲を拡げる必要があり、一方で、車体表面に付着した異物を確実に除去するためには、特許文献2に記載のように、ある程度高圧の洗浄液を吹付ける必要がある。そのため、上記要件を何れも満たすためには、相当数のスプレー設備(ノズルなど)が必要となり、設備コストの高騰を招く。また、上述の洗浄方法では、洗浄効率の面でも好ましいとはいえない。
上記問題点を解消する手段として、例えば、車体の上方に複数の洗浄ノズルを車幅方向に並べて配置し、これら洗浄ノズルに適宜の洗浄液供給手段により洗浄液を供給することで、各洗浄ノズルから車体のフード部やルーフ部に洗浄液を吹付け、これらフード部やルーフ部を含む車体表面を洗浄する手段が考えられる。
しかしながら、洗浄対象を車体とする場合、フード部に比べてルーフ部は車体上方に位置するため、上記洗浄ノズルからの距離がフード部とルーフ部とで異なる。そのため、ルーフ部との距離が適正となるよう洗浄ノズルの配設高さを定めると、洗浄ノズルからフード部までの距離が離れ過ぎるために洗浄液圧が低下し、洗浄能力が低下する。また、フード部との距離が適正となるよう洗浄ノズルの配設高さを定めると、洗浄ノズルからルーフ部までの距離が近過ぎるために洗浄液圧が過大となり、液圧によりルーフ部が変形するおそれがある。あるいは、既に塗膜が形成されている場合には、当該塗膜を剥がしてしまうおそれがある。
ここで、洗浄ノズルを昇降可能とすれば、フード部とルーフ部双方との距離を適正に保つことが可能となるが、昇降機構を別途設けるとなると洗浄装置が高価になる。また、可動部を設けることで故障の確率も高まる。何より、洗浄ノズルを昇降させることで、ワークたる車体と洗浄ノズルとが干渉するおそれが生じることから、ワーク不良を回避するためにも洗浄ノズルを昇降可能とすることは好ましくない。
以上の事情に鑑み、本発明では、ワーク不良を避けつつ車体表面を万遍なく確実に洗浄することのできる車体洗浄装置を低コストに提供することを技術的な課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、搬送ライン上に載置されて所定方向に搬送される車体に対して洗浄液を吹き付けることにより車体の洗浄を行う車体洗浄装置であって、車体のフード部に向けて略鉛直下方に洗浄液を吹き付ける第1の洗浄液吹付け手段と、車体のルーフ部に向けて略鉛直下方に洗浄液を吹き付ける第2の洗浄液吹付け手段とを備え、第1の洗浄液吹付け手段は車体の車高よりも高い位置で、かつ、第2の洗浄液吹付け手段より低い位置に配設されると共に、第1および第2の洗浄液吹付け手段は互いに搬送方向にずれた位置に配設されている車体洗浄装置を提供する。
このように、本発明では、フード部用とルーフ部用の洗浄液吹付け手段をそれぞれ設けると共に、フード部用の洗浄液吹付け手段を、洗浄すべき車体の車高よりも高く、かつ、ルーフ部用の洗浄液吹付け手段より低い位置に配設した。この構成によれば、第1の洗浄液吹付け手段とフード部との距離、および第2の洗浄液吹付け手段とルーフ部との距離をそれぞれ適正に保って洗浄することができる。そのため、ルーフ部の変形等を招くことなく車体の洗浄を確実かつ効率よく実施することができる。また、双方の洗浄液吹付け手段を固定した状態でルーフ部とフード部の双方を洗浄できるので、これら洗浄液吹付け手段を昇降させる必要もなく、昇降に要する駆動機構が不要となる。また、この分の設備コストを低減できる。もちろん、フード部用の洗浄液吹付け手段を洗浄すべき車体の車高よりも高く設定しているので、車体と洗浄液吹付け手段とが干渉するおそれもなく、ワーク不良が生じる可能性を低減できる。
上記構成による作用効果は、第1および第2の洗浄液吹付け手段における洗浄液の吹付け方向を略鉛直下方とし、かつ互いに搬送方向位置をずらして配設することにより実効性を有する。すなわち、高圧化された洗浄液を最短距離でフード部あるいはルーフ部に吹付けることができるので、高圧にした洗浄液の洗浄能力を一層高めて効率よく洗浄を行うことができる。
ここで、第1および第2の洗浄液吹付け手段は何れも切換弁を介して共通の洗浄液供給手段に連結され、かつ、切換弁の切換動作により、何れかの洗浄液吹付け手段による洗浄液の吹付けが択一的に選択されるよう構成することもできる。また、このように、双方の洗浄液吹付け手段による洗浄液の吹付けを択一的に選択可能とした場合、車体の載置方向に合わせて各々の洗浄液吹付け手段の搬送方向での位置関係を決定することが好ましい。すなわち、車体が搬送ラインの下流側に向けて載置される場合、第1の洗浄液吹付け手段が第2の洗浄液吹付け手段よりも搬送ラインの上流側に配置され、車体が搬送ラインの上流側に向けて載置される場合、第1の洗浄液吹付け手段が第2の洗浄液吹付け手段よりも搬送ラインの下流側に配置されるようにするのが好ましい。
本発明に係る車体洗浄装置では、第1の洗浄液吹付け手段と第2の洗浄液吹付け手段とが互いに搬送方向にずれた位置に配設されるため、切換弁により洗浄液の吹付けが択一的に選択される構成に加えて上記の配置関係を採る場合、フード部とルーフ部との間を重複して洗浄することができる。すなわち、車体を搬送ラインの下流側に向けて載置し、第1の洗浄液吹付け手段を第2の洗浄液吹付け手段よりも搬送ラインの上流側に配置した場合、第1の洗浄液吹付け手段によるフード部の洗浄が終了した時点で第2の洗浄液吹付け手段へと洗浄液の吹付けを切換える。すると、切換時から、第2の洗浄液吹付け手段が、切換時における第1の洗浄液吹付け手段の搬送方向位置に到るまでの間、距離でいうと、第1の洗浄液吹付け手段と第2の洗浄液吹付け手段との搬送方向にずれた距離の分だけ双方の洗浄液吹付け手段による洗浄が重複して行われる。
このように、フード部とルーフ部との間を重複して洗浄することで、例えばフード部とルーフ部との間に位置するフロントピラーに集中して洗浄液を吹付けることができるので、当該箇所における洗浄性能(異物の除去性能)が向上する。また、上述のように、何れかの洗浄液吹付け手段により選択的に吹付けを行う構成とすることで、常に何れかの洗浄液吹付け手段による洗浄液の吹付けが行われるので、別個独立して洗浄液の吹付けを行う場合と比べて洗浄液の節約になる。特に、上述の配置関係を満たすことで、フロントピラー近傍など電着塗装後に余剰の塗料が溜まりやすい箇所のみを集中して洗浄することができるため、効率よく洗浄液を吹付けることができ、更なる洗浄液の節約にもつながる。
また、フロントピラー下部やフロントドア前方下部など、フード部とルーフ部との間には、インナパネルとアウタパネルとの板合わせ部の隙間から内部に侵入した電着塗装時の塗料が洗浄後も残存することも少なくない。この残存塗料分は、この後の乾燥焼付け時に沸騰して吹き出る現象(いわゆる二次タレ)を引き起こすおそれがあるため、できる限り焼付け前に除去しておきたいところ、塗装後焼付け前に上述の如く洗浄を行うことで、この種の塗料分を極力洗い流すことができるため、二次タレ対策としても有効である。
また、特に重点的に洗浄する必要のある箇所を重複して洗浄できることから、これらフロントピラー等に専用の洗浄液吹付け手段を設けずとも、フード部用およびルーフ部用の洗浄液吹付け手段で足りる。そのため、設備スペースおよびコストの低減が可能となる。
もちろん、上述の作用効果は、車体が搬送ラインの上流側に向けて載置される場合、第1の洗浄液吹付け手段が第2の洗浄液吹付け手段よりも搬送ラインの下流側に配置されるようにしても、同様に得ることができる。
以上のように、本発明によれば、ワーク不良を避けつつ車体表面を万遍なく確実に洗浄することのできる車体洗浄装置を低コストに提供することができる。
以下、本発明に係る車体洗浄装置、および、この洗浄装置を用いた車体洗浄方法の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1および図2は、本発明に係る車体洗浄装置10と、この車体洗浄装置10による車体1の洗浄工程を概念的に示す図であり、図1が洗浄工程における車体1と車体洗浄装置10の斜視図を、図2がその側面図をそれぞれ示している。なお、この実施形態では、電着塗装後、焼付け乾燥前に実施される洗浄工程を例にとり説明する。
図1および図2に示すように、洗浄対象となる車体1は、適当な搬送手段により搬送ライン上を所定の搬送方向に向けて搬送される。ここでは、図示は省略するが、例えばオーバーヘッドコンベアにより、ハンガー5上に載置された車体1を所定の搬送方向(図2中、白抜き矢印の方向)に向けて搬送されるようになっている。また、この際、車体1のフード部2が搬送ラインの下流側、ルーフ部3が搬送ラインの上流側となるように、搬送ライン(ハンガー5)に対する車体1の載置方向が設定される。
車体洗浄装置10は、車体1のフード部2に向けて略鉛直下方に洗浄液6を吹き付ける第1の洗浄液吹付け手段としてのフード用ライザー11と、車体1のルーフ部3に向けて略鉛直下方に洗浄液6を吹き付ける第2の洗浄液吹付け手段としてのルーフ用ライザー12とを主に備える。ここで、双方のライザー11,12は共に上方の固定側部分から垂下して配設されており、詳細には、フード用ライザー11は、洗浄すべき車体1の車高よりも高い位置で、かつ、ルーフ用ライザー12より低い位置に配設されている。そのため、図2に示すように、車体1が車体洗浄装置10の下方、正確にはフード用ライザー11あるいはルーフ用ライザー12の下方にまで搬送された場合であっても、双方のライザー11,12が何れも車体1と干渉することはない。
また、双方のライザー11、12は、互いに搬送方向位置をずらした状態で配設されている。この実施形態では、フード用ライザー11がルーフ用ライザー12よりも搬送ラインの上流側(図2でいえば右側)に配置されている。また、後述する切換弁(三方向切換バルブ16)を設ける場合、フード用ライザー11とルーフ用ライザー12との離間距離は、フード部先端からルーフ部先端までの距離以下に設定するのが好ましい。フード用ライザー11による洗浄液の吹付けとルーフ用ライザー12による洗浄液の吹付けとを、時間的もしくは量的なロスを極力抑えて実施できるためである。
フード用ライザー11は長筒状をなし、その長手方向に沿って複数の洗浄ノズル13を有する。ここで、フード用ライザー11は、車体1の搬送ラインに対して直交する向きにその長手方向を合わせた姿勢で搬送ライン上方に配置されると共に、このフード用ライザー11に設けられた複数の洗浄ノズル13が一律に略鉛直下方を向くように配設されている。よって、適当な洗浄液供給手段(例えば後述する洗浄液加圧供給手段15)によりフード用ライザー11内に洗浄液6を供給し、各洗浄ノズル13へと分配することで、各洗浄ノズル13から略鉛直下方に向けて洗浄液6が吹き付けられるようになっている。
ルーフ用ライザー12は、フード用ライザー11と同様、長筒状をなし、かつ、その長手方向に沿って複数の洗浄ノズル14を有する。ここで、ルーフ用ライザー12は、車体1の搬送ラインに対して直交する向きにその長手方向を合わせた姿勢で搬送ライン上方に配設されると共に、このルーフ用ライザー12に設けられた複数の洗浄ノズル14が一律に略鉛直下方を向くように配設されている。よって、フード用ライザー11と同様、適当な洗浄液供給手段によりルーフ用ライザー12内に洗浄液6を供給し、各洗浄ノズル14へと分配することで、各洗浄ノズル14から略鉛直下方に向けて洗浄液6が吹き付けられるようになっている。
上記構成のフード用ライザー11およびルーフ用ライザー12は、この実施形態では、図2に示すように、共通の洗浄液加圧供給手段15に連結されている。また、この洗浄液加圧供給手段15と双方のライザー11,12の間には、切換弁としての三方向切換バルブ16が配設されている。ここで、三方向切換バルブ16は、洗浄液加圧供給手段15を導入側、フード用ライザー11およびルーフ用ライザー12を切換排出側として配設されている。そのため、洗浄液加圧供給手段15から加圧供給された高圧の洗浄液6が、三方向切換バルブ16の切換動作により、フード用ライザー11とルーフ用ライザー12との何れか一方に択一的に選択供給されるようになっている。ここで、各ライザー11,12からの洗浄液6の吹付け圧は、例えば0.6MPaから2.0MPaの間で調整される。また、この洗浄液加圧供給手段15により設定される洗浄液6の吹付け圧が上記範囲内に設定されるのに応じて、フード用ライザー11とフード部2との離間距離H1およびルーフ用ライザー12とルーフ部3との離間距離H2が設定される。
上記構成の車体洗浄装置10による車体1の洗浄作業は、例えば以下のようにして行われる。
まず、図3(a)に示すように、車体1が車体洗浄装置10のフード用ライザー11の下方を通過し始めた段階で、洗浄液加圧供給手段15から所定圧力に加圧された洗浄液6をフード用ライザー11に向けて送り込む。この際、三方向切換バルブ16は、図3(a)に示す通り、フード用ライザー11側のみに洗浄液加圧供給手段15からの洗浄液6を送るように切換えられている。これにより、フード用ライザー11に取付けれた複数の洗浄ノズル13からその下方に位置する車体1のフード部2先端に向けて略鉛直下方に洗浄液6が吹き付けられ、当該吹き付けられた領域に付着した異物等が除去される。ここでは、電着塗装後、焼付け工程の前に実施される洗浄工程に上述の車体洗浄装置を用いていることから、フード部2の表面に付着した余剰の電着塗料が主に異物として洗い流される。
このようにしてフード部2の洗浄を引き続き行い、フード部2の洗浄が完了した段階で洗浄液6の供給先をフード用ライザー11からルーフ用ライザー12に切換える。ここでは、図3(b)に示すように、車体1のフード部2とルーフ部3との中間部分(フロントピラー4など)がフード用ライザー11の直下に到った段階で、三方向切換バルブ16を切換え、洗浄液加圧供給手段15からの洗浄液6をルーフ用ライザー12へ送り込む。この際、ルーフ用ライザー12の下方にはフード部2が位置しており、ルーフ用ライザー12に取り付けられた複数の洗浄ノズル14からフード部2に向けて略鉛直下方に洗浄液6が吹付けられる。よって、フード部2やフロントピラー4の一部については、フード用ライザー11による洗浄と、ルーフ用ライザー12による洗浄とが重複して実施される。
なお、この実施形態では、上記重複洗浄の車体前後方向幅は、図3(b)に示すように、フード用ライザー11とルーフ用ライザー12との搬送方向での離間距離Wに対応し、また、重複洗浄位置は、フード用ライザー11からルーフ用ライザー12への切換のタイミングによって決まる。そのため、これら離間距離Wや三方向切換バルブ16による切換のタイミングを適宜調整することで、複数の車種に対しても、重複洗浄を要する箇所に対して適切かつ十分な洗浄を行うことが可能となる。
上述のようにしてルーフ用ライザー12による洗浄液6の吹付けを継続して行うことで、図3(c)に示すように、ルーフ部3の前方端がルーフ用ライザー12の下方に到った段階で、ルーフ部3の表面にルーフ用ライザー12から洗浄液6が略鉛直下方に吹付けられる。これにより、ルーフ部3の表面に付着した余剰の電着塗料が主に異物として洗い流され、かつ、車体1全体にわたって洗浄がなされる。
以上の説明から明らかなように、上記車体洗浄装置10によれば、フード用ライザー11(洗浄ノズル13)とフード部2との距離H1、および、ルーフ用ライザー12(洗浄ノズル14)とルーフ部3との距離H2をそれぞれ適正に保って洗浄することができる。そのため、ルーフ部3の変形等を招くことなくフード部2とルーフ部3双方の洗浄を確実かつ効率よく実施することができる。また、双方のライザー11,12を固定した状態でルーフ部3とフード部2の双方を洗浄できるので、これらライザー11,12を昇降させるための駆動機構が不要となり、その分の設備コスト低減を図ることができる。
また、フード用ライザー11とルーフ用ライザー12とを互いに搬送方向にずらして配置し、かつ、洗浄液加圧供給手段15により加圧された洗浄液6を双方のライザー11,12共に略鉛直下方に吹き付ける構成としたので、高圧化された洗浄液を最短距離でフード部2やルーフ部3に吹付けることができる。そのため、洗浄液6の液圧をなるべく維持して高い洗浄能力を発揮することができる。また、この実施形態では、図1に示すように、車体1の車幅方向全域にわたって洗浄液6の吹き付けが可能なように複数の洗浄ノズル13,14が各ライザー11,12にそれぞれ取付けられている。よって、これらライザー11,12による洗浄液6の吹付けを実施することで、フード部2やルーフ部3の全面にわたって洗浄を行うことができる。
特に、この実施形態のように、電着塗装後の車体1には、その塗装態様に起因して、電着槽から車体1を引き上げる際、例えばフロントピラー4下部などに電着塗料が溜まり易い問題があるが、上述のように、フード部2とルーフ部3との間を重複して洗浄することにより、これら電着塗料が溜まり易い箇所を重点的に洗浄して、確実に電着塗料を洗い流すことができる。また、車体1の上方から高圧の洗浄液6を重複して吹付けることで、例えば、フロントドアのへミング部など、特に電着塗料が残り易い箇所についても、大量の洗浄液6を流し込んで当該領域における電着塗料を極力洗い流すことが可能となる。従い、二次タレ等の塗膜不良をできる限り回避することができる。もしくは、上記洗浄により残存塗料分をできる限り少なくすることで、2次タレが生じたとしても問題とならずに済む程度のレベルに抑えることができる。
また、上述の如く重複して洗浄することで、フロントピラー4下部など必要な箇所のみに効率良く洗浄液6を吹付けることができるので、最小限の量の洗浄液6で済む。また、車体1の両側にフロントピラー4専用の洗浄ノズルを設けずに済むため、この点でもコスト低減につながる。
以上、本発明に係る車体洗浄装置10、および、この車体洗浄装置10を用いた車体1の洗浄方法の一実施形態を説明したが、もちろん、この形態に限られることなく、他の形態を採ることも可能である。
図4はその一例を概念的に示すもので、同図に係る車体洗浄装置においては、搬送ラインの上流側に向けて載置・搬送される車体1に対して、搬送方向下流側にフード用ライザー11が配置され、その上流側にルーフ用ライザー12が配置されている。従い、図4(a)に示すように、搬送方向上流側に位置するルーフ用ライザー12の下方を車体1のルーフ部3が通過し始めた際、洗浄液加圧供給手段15からルーフ用ライザー12に加圧された洗浄液6を送り込むことで、ルーフ用ライザー12に取付けられた複数の洗浄ノズル14を介してルーフ部3の表面に洗浄液6が吹き付けられる。従い、ルーフ部3がフード部2に先立って洗浄される。
そして、ルーフ部3の洗浄が完了し、すなわち、図4(b)に示すように、ルーフ用ライザー12の下方をルーフ部3が通過し終えた段階でも、引き続きルーフ用ライザー12による洗浄液6の吹付けを行う。これにより、フロントピラー4など、ルーフ部3とフード部2との中間部分についてもルーフ用ライザー12による洗浄がなされる。
このようにしてルーフ用ライザー12による洗浄液6の吹付けを継続して行い、図4(c)に示すように、フード用ライザー11の下方をルーフ部3が通過し終えた段階で、洗浄液6の供給先をルーフ用ライザー12からフード用ライザー11に切換える。これにより、フロントピラー4をはじめとするルーフ部3とフード部2との中間部分が双方のライザー11,12により重複して洗浄液6の吹付けを受け、重点的に洗浄がなされる。また、上記実施形態と同様、双方のライザー11,12間の離間距離Wやその切換タイミングを適宜調整することで、車種に合わせた適切かつ十分な洗浄を行うことができる。
以上の説明から明らかなように、搬送ラインの上流側に向けて載置・搬送される車体1に対して、搬送方向下流側にフード用ライザー11を配置すれば、上記同様、双方のライザー11,12の一方を択一的に選択する洗浄液6の供給形態を使用して、重点的な洗浄が必要な箇所のみを重複して洗浄することができる。もちろん、フード部2やルーフ部3との距離をそれぞれ適正に保って洗浄することで、車体1に不要な負荷をかけることなく効果的な洗浄を実施することができる。また、双方のライザー11,12を固定した状態で車体1全体を万遍なく洗浄できるので、これらライザー11,12を昇降させるための駆動機構が不要となり、その分の設備コスト低減を図ることができる。
なお、以上の説明では、三方向切換バルブ16の切換動作により、フード用ライザー11による洗浄液6の吹付けと、ルーフ用ライザー12による洗浄液6の吹付けとを択一的に選択可能な構成とした場合を説明したが、特にこれに限る必要はない。例えば、各々のライザー11,12ごとに洗浄液加圧供給手段を設け、これらを相互に独立して駆動させることで、任意のタイミングもしくは期間で双方のライザー11,12による洗浄液6の吹付けを制御することができる。また、洗浄液6の吹付けタイミングを適正に制御できるのであれば、車体1の載置方向に応じて、双方のライザー11,12間の搬送方向位置を設定する必要もない。
もちろん、フード用ライザー11が車体1の車高よりも高い位置で、かつ、ルーフ用ライザー12より低い位置に配設されており、かつ、双方のライザー11,12が互いに搬送方向にずれた状態で配設されている限りにおいて、その配置形態は任意である。
また、以上の説明では、洗浄対象となる車体1として、いわゆるワゴンタイプなどの、後部積荷収容空間が乗員収容空間と一体化した型式の車体を例示したが、これ以外の車種、例えばセダンタイプなどの、後部積荷収容空間がトランクルームとして乗員収容空間と独立して存在する車種についても、本発明に係る車体洗浄装置もしくは車体洗浄方法を適用することは可能である。この場合、トランクルーム用のライザーをルーフ用ライザー12に隣接して新たに追加配置し、もしくは、フード用ライザー11をトランク用のライザーとしても使用する(兼用する)ことにより対応することが可能である。
また、以上の説明では、電着塗装後、焼付け前の洗浄工程に上記構成に係る車体洗浄装置を使用した場合を説明したが、もちろん、上記以外の洗浄工程、例えば溶接組立後、塗装工程前における洗浄工程や、電着塗装の前処理における洗浄工程、あるいは、下塗り工程(電着塗装工程)以外の塗装工程における塗装後焼付け前の洗浄工程等に対しても本発明を適用することは可能である。
本発明の一実施形態に係る車体洗浄装置と、この車体洗浄装置により洗浄される車体の斜視図である。 車体洗浄装置と、この車体洗浄装置により洗浄される車体の側面図である。 洗浄工程の流れを概念的に説明するための図であり、(a)はフード部の洗浄を開始する際の側面図、(b)はフード用ライザーからルーフ用ライザーへ加圧洗浄液の供給先を切換える際の側面図、(c)はルーフ部の洗浄を開始する際の側面図である。 他の実施形態に係る車体洗浄装置を使用した場合の洗浄工程の流れを概念的に説明するための図であり、(a)はルーフ部の洗浄を開始する際の側面図、(b)はルーフ部の洗浄が完了した際の側面図、(c)はルーフ用ライザーからフード用ライザーへ加圧洗浄液の供給先を切換える際の側面図である。
符号の説明
1 車体
2 フード部
3 ルーフ部
6 洗浄液
10 車体洗浄装置
11 フード用ライザー
12 ルーフ用ライザー
13,14 洗浄ノズル
15 洗浄液加圧供給手段
16 三方向切換バルブ

Claims (2)

  1. 搬送ライン上に載置されて所定方向に搬送される車体に対して洗浄液を吹き付けることにより前記車体の洗浄を行う車体洗浄装置であって、
    前記車体のフード部に向けて略鉛直下方に前記洗浄液を吹き付ける第1の洗浄液吹付け手段と、前記車体のルーフ部に向けて略鉛直下方に前記洗浄液を吹き付ける第2の洗浄液吹付け手段とを備え、
    前記第1の洗浄液吹付け手段は前記車体の車高よりも高い位置で、かつ、前記第2の洗浄液吹付け手段より低い位置に配設されると共に、前記第1および第2の洗浄液吹付け手段は互いに搬送方向にずれた位置に配設されている車体洗浄装置。
  2. 前記第1および第2の洗浄液吹付け手段は何れも切換弁を介して共通の洗浄液供給手段に連結され、かつ、前記切換弁の切換動作により、前記何れかの洗浄液吹付け手段による前記洗浄液の吹付けが択一的に選択されると共に、
    前記車体が前記搬送ラインの下流側に向けて載置される場合、前記第1の洗浄液吹付け手段が前記第2の洗浄液吹付け手段よりも前記搬送ラインの上流側に配置され、
    前記車体が前記搬送ラインの上流側に向けて載置される場合、前記第1の洗浄液吹付け手段が前記第2の洗浄液吹付け手段よりも前記搬送ラインの下流側に配置されている請求項1に記載の車体洗浄装置。
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