JP5083490B2 - 走行車両 - Google Patents

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本発明は、トラクタ等の作業用の走行車両に関する。
従来、変速ペダルの位置が中立位置にあれば、その変速ペダルの中立位置を検出して油圧ポンプと油圧モータを備えた静油圧式無段変速装置(HST)のトラニオン軸を中立位置に戻す構成を有するトラクタなどの作業車両が知られている(特許文献1)。
特開平5−106731号公報
前記特許文献1記載の発明では、変速ペダルを中立位置に戻しても、微速で車両が移動することがある。これは、トラニオン軸の中立幅は非常に狭いため、トラニオン軸位置を検出する機構の経年的な変化等により、前記中立位置が変化してしまうことが原因であり、トラニオン軸を中立位置に対応させて電気的な制御を行う構成であっても、車両が停止しないことがあるという問題があった。
また、車両の作業状態とアクセルレバーによるエンジン回転速度の設定と変速ペダル18によるエンジン回転速度の設定とを総合的に判断して最適なエンジン回転速度を選択できるようにした構成はなかった。
本発明の課題は、適切なエンジン回転速度を行う作業用の走行車両を提供することである。
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、エンジン回転速度を変更するアクセルレバー及びペダル式変速操作具(18)と、副変速装置(21)と、を設けた作業用の走行車両において、副変速装置(21)が路上走行を選択している場合には、アクセルレバーの位置がどこにあっても、ペダル式変速操作具(18)によるエンジン回転制御を優先するコントローラ(48)を設け、PTOスイッチ(92)を設け、PTOスイッチ(92)をオンとすると、作業状態と判定し、アクセルレバーの操作によるエンジン回転制御をペダル式変速操作具(18)に対して優先する構成とし、副変速装置(21)が作業走行の速度を選択し、かつ、PTOスイッチ(92)をオフとすると、エンジン目標回転速度を変速ペダル踏込位置とアクセルレバー操作量にそれぞれ対応したエンジン回転速度の中で高い方を選択する制御を行うことを特徴とする作業用の走行車両である。
請求項2記載の発明は、エンジン低回転モードを選択する選択スイッチ(90)を設け、エンジン低回転モード選択スイッチ(90)がオン状態であると、エンジン回転をペダル式変速操作具(18)の踏込量とアクセルレバーの操作量のうちエンジン回転速度が低い方を選択し、エンジン低回転モード選択スイッチ(90)がオフ状態であると、副変速装置(21)が路上走行の速度を選択している場合には、アクセルレバーの位置がどこにあっても、ペダル式変速操作具(18)によるエンジン回転制御を優先することを特徴とする請求項1記載の作業用の走行車両である。
請求項1記載の発明によれば、エンジン回転速度を変更するアクセルレバー及びペダル式変速操作具18と、副変速装置21と、を設けた作業用の走行車両において、副変速装置21が路上走行を選択している場合には、アクセルレバーの位置がどこにあっても、ペダル式変速操作具18によるエンジン回転制御を優先するコントローラ48を設け、PTOスイッチ92を設け、PTOスイッチ92をオンとすると、作業状態と判定し、アクセルレバーの操作によるエンジン回転制御をペダル式変速操作具18に対して優先する構成とし、副変速装置21が作業走行の速度を選択し、かつ、PTOスイッチ92をオフとすると、エンジン目標回転速度を変速ペダル踏込位置とアクセルレバー操作量にそれぞれ対応したエンジン回転速度の中で高い方を選択する制御を行うことで、路上走行時にはアクセルレバーの位置がどこにあっても、ペダル式変速操作具18によるエンジン回転制御を優先することにより、走行性が従来より向上する。路上走行時に低速走行や停車した時にはエンジンの騒音や燃費が悪くなることを防ぐためにアクセルレバーを下げておく必要があるが、副変速装置21が路上走行を選択している場合には自動的にペダル式変速操作具18が優先になるので、いちいちアクセルレバーを下げる操作をして走行に入る必要もない。
また、PTOスイッチ92がオン時には、ペダル式変速操作具18がどの位置にあろうと、アクセルレバーによるエンジン回転速度設定を優先するので常に作業に最適なエンジン回転速度に保つことができる。
以上、車両の作業状態とアクセルレバーによるエンジン回転速度の設定と変速ペダル18によるエンジン回転速度の設定とを総合的に判断して最適なエンジン回転速度を選択できるため、車両の操作性や作業性が向上する
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、住宅地等を走行する場合に、エンジン回転速度を一定回転以下に抑えることで騒音を低減できる。
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
なお、本明細書では車両の前進方向に向いて左、右をそれぞれ左、右方向といい前後方向をそれぞれ前、後という。
本実施例の乗用型芝刈機などの多目的トラクタ1の側面図を図1に、平面図を図2に示す。走行車体2の前部と後部にそれぞれ前輪3、3と後輪4、4を備え、車体フレーム2の前部の下方には芝草刈り取り用のモーア6を設け、車体2の前部上方のフロア7にはステアリングコラム8を立設し、該コラム8の上部にはハンドル10を設けている。またハンドル10の後方には操縦席11があり、該操縦席11の後方にはエンジン12を搭載している。
また、前記エンジン12の冷却用ファンをエンジン動力により駆動し、ラジエータ64を車体上に斜めに設置する構成となっている。これにより、ラジエータ64の冷却容量を低下させることなく、その設置高さを小さくすることができる。
エンジン12の出力軸は、ミッションケース15内の変速装置の入力軸に連結され、エンジン12の回転動力は変速装置で変速され、該変速された走行動力を伝動機構を介して前後輪3,4へ伝達する。
さらに、ミッションケース15の前面に図示していないモーア駆動軸が突出しており、該駆動軸でモーア6内の芝刈用のカッタを回転させる。
図3には多目的トラクタの動力伝達構成図を示す。
ミッションケース15に隣接して設けられるHST16は、クラッチハウジング内の主クラッチ17を経てHST入力軸19へ連動し、変速ペダル(ペダル式変速操作具)18による中立位置からの前進、後進の切替、及びこれらの無段変速による連動を経て、副変速装置21へ連動し、後輪4の差動ギヤ機構、及び前輪3への出力軸等を伝動する構成である。
HST16は、可変容量形ポンプ23と可変容量形モータ24とを閉油圧回路25で接続し、可変容量形ポンプ23の斜板22の傾斜角度(トラニオン軸16aの回動角度)を変速ペダル18の踏み込み操作によって調節して、可変容量形ポンプ23からの吐出油量を変えて可変容量形モータ24による出力軸26の出力回転を無段変速し、又正逆に切替えて出力することができる。
HST出力軸26からの動力は、高低3段の副変速装置21で変速されて走行軸27に取り出され、走行軸27から後輪4への伝動用のデフ装置30と前輪伝動軸31と前輪3への伝動用のデフ装置33に動力が取り出される。なお、前輪伝動軸31の伝動を入り切りする四輪駆動用の四駆クラッチギヤ34がPTO入力軸36と前輪駆動軸31の間に設けられている。
また、主クラッチ17からHST入力軸19を駆動する前に、PTO入力軸36へ分岐して取出した動力をPTO変速装置38を経由してPTO軸39へ取り出す構成とする。
次に、多目的トラクタの変速ペダル18について、図4の平面図と図5の側面図に基づいて説明する。
前記変速ペダル18は、二つの独立したペダル面に、それぞれプレート状の圧力センサSf,Srを有する前進踏込部18fと後進踏込部18rを備え、このペダル基部をフロア7を支持する車体フレーム2から内側へ延設したステー部材41に回動自在に支持させる構成となっている。
変速ペダル18の踏み込み位置を前進踏込部18fの圧力センサSf又は後進踏込部18rの圧力センサSrで検知することによりトラニオン軸16a操作用の電動モータ53(図9,図10参照)の作動方向を切り替える。
また、前記車体フレーム2の下部には、変速ペダル18の踏み込み位置を元の中立位置に復帰させる中立復帰機構Nと、変速ペダル18の踏み込み位置を検知するポテンショメータ式のHSTペダル踏込位置センサ(ペダル式踏込位置検出センサ)47を備えている。
前記中立復帰機構Nは、変速ペダル18の回転軸18aと同一軸心上に支持され、かつスプリング43により常時上方へ付勢された逆「へ」の字型のニュートラルアーム45と、このアーム45の凹部に押圧されながら摺動操作されるローラ46、及びこのローラ46をフロア7の下方で回動自在に支持するローラ支持アーム49、同アーム49と前記変速ペダル18を接続する連動機構等から構成されている。
なお、ローラ46とローラ支持アーム49は車体フレーム2とHSTペダル踏込位置検出センサ47を支持するブラケット51との間に設けられた回動軸52に支持されている。
上記構成により、前記変速ペダル18を踏み込むと、同ペダル18に接続したロッド54及びこれに連結した回動アーム55を介して、前記回動軸52及びローラ支持アーム49を回動し、同ペダル18を踏み離すと、前記ローラ46がニュートラルアーム45に押圧されることにより、元の位置に復帰、即ち同ペダル18を中立位置に復帰させる。
また前記HSTペダル踏込位置検出センサ47は、ブラケット51を介して後進踏込部18rの下方に支持され、このHSTペダル踏込位置検出センサ47の検出アーム(図示せず)は前記回動軸52より延出したピン56を挟持する構成となっている。これにより、前記変速ペダル18を踏み込むと、前述の通り回動軸52が回動し、HSTペダル踏込位置検出センサ47により回動角度、即ち変速ペダル18の踏み込み位置を検出することができる。
図6に示す制御ブロック図におけるコントローラ48は、前記変速ペダル18の前進圧力センサSf及び後進圧力センサSr(または前後進切換レバー57の切換位置)と変速ペダル18の踏み込み位置を検知するポテンショメータ式のHSTペダル踏込位置検出センサ47を入力してトラニオン軸16a操作用の電動モータ53などを作動制御する構成となっている。
また、図6に示す電動ファン65はラジエータ冷却用のファンであって、車体の前進もしくは後進に応じて送風方向を追い風方向に切り替える構成となっている。
また、上述の2ペダル式の構成に替えて、図6、図7に示すように、ハンドルコラム8などオペレータの手元に設けた前後進切換えレバー57を前または後に動かすことで、該レバー57と一体の接触部材60が前進スイッチS’f若しくは後進スイッチS’rを押圧し、その検知により前記トラニオン軸16aの回転方向を正逆に切り換え、この状態で単一の変速ペダル18を踏込み操作することによって、機体を前方または後方に走行させる構成としてもよい。
また、上記構成で、草刈作業などで頻繁に走行車両を前後進に移動させる操作が必要となると、手元の前後進切換えレバー57を頻繁に前後進操作することが面倒になることがある。しかし、図4や図5に示す変速ペダル18の左側の前進踏込部18fに前進側の圧力センサSfと右側の後進踏込部18rに後進側の圧力センサSrを設けるだけでなく手元の前後進切換えレバー57を設けた場合には、該前後進切換えレバー57をニュートラルにしておいて、例えば変速ペダル18の左側を踏めば前進側の圧力センサSfが作動して前進操作を感知し、右側を踏めば後進側の圧力センサSrが作動して後進操作を感知してHST16のトラニオン軸16aの電動モータ53の回転方向及び回転速度が制御されて、手元のレバー操作無しに前進、後進が可能となる。
このように、前後進切替レバー57の基部に設けた前進スイッチS’fと後進スイッチS’rがオン状態で無いとき(中立状態)には変速ペダル18の操作で走行車両の前後進が可能となる。図8には上記構成の制御機構のフローチャートを示す。
このように、本実施例では、変速ペダル18の右側のペダル面又は左側のペダル面の踏み位置をわずかに変えるだけで前後進操作が可能となる。また前記変速ペダル18の踏み込み位置の検出結果に応じて可変容量形ポンプ23の斜板22の傾斜角度(トラニオン軸16aの回動角度)を変更するHSTトラニオン軸操作用の電動モータ53の駆動量が求まる。これにより、前後進速度を調整でき、走行操作性が従来のペダル式無段変速操作装置に比べて向上する。また部品点数が比較的少なくなるのでコストダウンにもなる。
つぎに、HST16は、図9のHST取付部の側面図と図10のHST取付部の平面図と図11のHST取付部の背面図に示すように、ミッションケース15に隣接して設けられ、該ケース15内の走行ミッション系に回転動力を入力する構成としている。そして、HST取付けベース70は、図示のように一枚の板状で形成され、HST16とミッションケース15から機体外側に離れた位置に鉛直方向にその板平面が配置され、ミッションケース15に複数個の取付けボルト71とカラー72によって支持されている。
そして、HST16のトラニオン軸16aの作動制御用の電動モータ53は、取付けベース70の機体内側で、該取付けベース70とミッションケース15との間に位置させてベース70に取り付けられている。そして、変速ペダル18に連動するトラニオン軸16aの操作装置73は、操作軸73aと操作歯車73bとから構成され、操作軸73aは取付けベース70を貫通して軸受け支持され、その機体内側の一端は電動モータ53に伝動可能に接続され、機体外側の他端は操作歯車73bを軸着している。
そして、トラニオン軸16aは、HST16から機体外側に延長して取付けベース70を貫通して、該ベース70の機体外側まで軸受け支持され、先端部位に変速歯車75aを軸着した構成としている。この場合、トラニオン軸16aは、電動モータ53側の操作軸73aと平行状態を保って取付けベース70に軸受支持され、トラニオン軸16aの先端部に大径からなる変速歯車75aが設けられ、該変速歯車75aと操作軸73aの小径の操作歯車73bを噛合させて設け、電動モータ53から出力される操作力がトラニオン軸16aに伝達される構成としている。
そして、図4,図5を用いて説明したように、電動モータ53は、変速ペダル18の前進踏込部18f又は後進踏込部18rの踏込み位置に応じて駆動されて変速ができる構成としている。例えば、上記前進踏込部18f,後進踏込部18rの踏込み角を検出するポテンショメータから構成されるHSTペダル踏込位置検出センサ47による検出角に応じて電動モータ53に駆動指令信号を出力する構成である。そして、電動モータ53は、上記前進踏込部18f,後進踏込部18rから足を離せば、自動的に正逆転に駆動されながら中立位置まで戻る構成になっている。
このように、電動モータ53と操作装置73は、HST16やミッションケース15より機体外側に離して設けた取付けベース70に取り付けてHST16の変速操作ができる構成にしているので、容積的に小型で、組み立てが容易なHST操作部材が得られ、HST16を小型のトラクタにも充分に搭載できるものとなった。
また、トラニオン軸ポジションセンサ(トラニオン軸ポジション検出手段)76をトラニオン軸16aの下方に取り付け、トラニオン軸16aの回動角度位置を検出する構成としている。即ち、トラニオン軸16aと一体に設けるL型ピン76aを、ポテンショメータ76b側から延出してその先端をU型に形成した係合部76cに係合させてトラニオン軸16aの角度変化をポテンショメータ76bに連繋する構成である。
この構成によりトラニオン軸16aの回転角度を検出でき、正規に作動しているかあるいは中立位置に復帰しているか否かなどの動作確認や、電動モータ53による回動を補正することができる。
またトラニオンアーム77をトラニオン軸16aから上方に延長して設け、該トラニオンアーム77の上部にピン77aを突設し、前後に一対の作動杆79F,79Rが取り付けられたプレート78に形成された長孔78aに該ピン77aを係止させた構成としている。そして、作動杆79F,79Rは、図9に示すように、その端部にそれぞれ連結した操作ワイヤー80F,80Rを介してブレーキペダル82に接続して構成している。
上記のように構成されるから、ブレーキペダル82の非操作状態では、トラニオンアーム77が長孔78で許容される範囲で変速歯車75aに追従して回動でき、一方、ブレーキペダル82を踏んだとき、強制的にニュートラル位置に戻すことができる構成となっており、電動モータ53が故障してもHST16の安全が確保できるものとなっている。
上記構成からなるHST16において、トラニオン軸16aの非常に狭い中立幅のため、トラニオン軸16aの設定位置を検出する機構の経年的な変化等により、その中立基準位置が変わり、電気的にトラニオン軸16aを中立位置に位置付けていても、車両が停止しないという問題があった。
そこで本実施例の変速ペダル位置をHSTペダル踏込位置検出センサ47で検出してトラニオン軸16aを電動モータ53で駆動させる構成において、さらに車速を検出するセンサとして、車速センサ85を設けておき、変速ペダル18が中立位置にある時に車速センサ85で車両の微速の前後進を検出するとトラニオン軸操作用電動モータ53を駆動してトラニオン軸16aを微速で動かして、トラニオン軸16aを中立位置に復帰させる制御をコントローラ48が行う。トラニオン軸16aが中立位置に復帰すると、コントローラ48はその位置をトラニオン軸ポジションセンサ76で検出して、その検出値を不揮発メモリに自動的に書込む自動補正機能を設けておくと、次回から上記トラニオン軸16aを中立位置に復帰させる操作をする必要がなくなる。
なお、トラニオン軸16aを微速で動かすために、例えばPWM(Pulse Width Modulation )出力により、例えば10msecの極短い周期でパルス出力し、トラニオン軸操作用電動モータ53を微速で作動させる。
図12に時間経過に対応したトラニオン軸16aのポジションセンサ76の位置を中立位置に復帰させる様子と車速センサ85で測定するための車速パルスおよびトラニオン軸16aを微速で動かして中立位置に復帰させるためのトラニオン軸制御出力値の変化を示すタイムチャートの一例を示し、図13にはこの過程を実行するフローを示す。トラニオン軸制御出力パルスのPWM出力領域(R1)によりトラニオン軸16aが微速で動かされて中立位置に復帰する制御をコントローラ48が行う。
また、トラニオン軸16aの中立位置からのずれを車速センサ85と変速ペダル18のHSTペダル踏込位置検出センサ47で検出すると、例えば図14(a)に示す液晶画面Gにトラニオン軸16aの中立位置の補正を促すメッセージを表示し、そのメッセージが表示された時には、例えば図14(b)に示す手元の中立位置変更スイッチ88(オートクルーズの増速スイッチ、減速スイッチ兼用スイッチとしても使用可)を押すことにより簡単に中立基準位置の設定値を変更可能(電気的に)にしても良い。
中立位置変更スイッチ88を押すことにより簡単に中立基準位置を変更可能にする制御をコントローラ48が行う。この場合の制御フローを図15に示す。
この実施例ではトラニオン軸16aが中立位置からずれると、簡単に修正できるのでメンテナンス性が向上する。
本発明では、変速ペダル18の踏込位置に対応したHSTペダル踏込位置検出センサ47の検出値の他に、エンジンのスロットル弁(図示せず)の開度を調節するアクセル(スロットル)レバー(図示せず)の操作量に対応したアクセルレバーポジションセンサ89の検出値をコントローラ48に入力し、コントローラ48が前記2つのセンサ検出値のいずれかに応じた目標エンジン回転速度を自由に設定できるように構成しても良い。
図16に変速ペダル18の踏込位置に基づく変速ペダルポジション位置とエンジン回転速度の関係(図16(a))と、アクセルレバーの操作量に基づくアクセルレバーポジション位置とエンジン回転速度の関係(図16(b))をそれぞれ示す。図16(a)に示すように変速ペダルポジション位置とエンジン回転速度の関係では、変速ペダル18が中立から外れる時はエンジン回転速度を一定値に上げて、以後変速ペダル18の操作に応じてエンジン回転速度を上げていき、逆に変速ペダル18が中立に戻る時には変速ペダル18が中立時にアイドリング回転になるようペダル操作に応じてエンジン回転速度を下げていき、変速ペダルポジション位置にヒステリシスを設ける。変速ペダル18の踏込位置を最大にしないで、中立位置に戻す場合(点線で示す)にも同様にヒステリシスを設ける。
HSTペダル踏込位置検出センサ47の検出値(変速ペダルポジション位置)にヒステリシスを設ける理由は、変速ペダル18を踏み込んで車両を発進させる時はエンジン回転速度をすばやく上げて駆動力を上げ、停止する時はエンジン回転速度をアイドリングまで連続的に下げてスムーズに車両を停車させることにより、車両走行操作性が前記ヒステリシスを設けない場合より向上するからである。
一方、図16(b)に示すアクセルレバーのポジションセンサ89の検出値とエンジン回転速度との間にはヒステリシスはないが、この理由はアクセルレバー操作と変速ペダル18との連動がなく、走行フィーリングに影響を与えないためである。
本実施例の車両走行状態におけるエンジン回転速度の設定を行う制御フローを図17に示す。
走行車両にはエンジン低回転モード選択スイッチ90を設けており、該スイッチ90がオン状態であると、エンジン目標回転速度を変速ペダル18の踏込量とアクセルレバーの操作量にそれぞれ対応したエンジン回転速度の中で低い方を選択する制御をコントローラ48が行う。住宅地等を走行する場合に、エンジン回転速度を一定回転以下に抑えることで騒音を低減できるので、エンジン回転速度の中で低い方を選択することが望ましい。
また、エンジン低回転モード選択スイッチ90がオフ状態であると、副変速装置21が3速を選択している場合は路上などを走行中であると判断して、これに対応したエンジン目標回転速度を選択するために変速ペダル18の踏込位置に基づくエンジン回転速度を選択する。この場合には、アクセルレバーの位置がどこにあっても、変速ペダル18によるエンジン回転制御を優先することにより、走行性が従来より向上する。路上走行時に低速走行や停車した時にはエンジンの騒音や燃費が悪くなることを防ぐためにアクセルレバーを下げておく必要があるが、副変速装置21が3速を選択している場合には自動的に変速ペダル優先になるので、いちいちアクセルレバーを下げる操作をして走行に入る必要もない。
また、PTOスイッチ92がオンになると車両はモーア6などの作業機を用いる作業状態であると判断してエンジン目標回転速度としてアクセルレバーの操作量に対応したエンジン回転速度を選択する制御をコントローラ48が行う。作業機を用いる作業走行時には、変速ペダル18の操作によるエンジン回転速度の上昇をさせず、アクセルレバーで設定したエンジン回転速度を優先させる。なお、PTOスイッチ92のオンだけでなく、副変速位置21が3速未満の設定(低速又は中速位置)であるときも作業機を用いる作業状態であるとコントローラ48が判断する。
この場合には、変速ペダル18がどの位置にあろうと、アクセルレバーによるエンジン回転速度設定を優先するので常に作業に最適なエンジン回転速度に保つことができる。
さらに、PTOスイッチ92がオフであると非作業中であると判断してエンジン目標回転速度を変速ペダル踏込位置とアクセルレバー操作量にそれぞれ対応したエンジン回転速度の中で高い方を選択する制御をコントローラ48が行う。
上記各ステップでのエンジン目標回転速度が設定されると、エンジン目標回転速度と現在のエンジン回転速度を比較して、現在のエンジン回転速度の方がエンジン目標回転速度より低い場合にはアクセル(スロットル弁)を自動的に、より開く方向へ作動させ、現在のエンジン回転速度の方がエンジン目標回転速度より高い場合にはアクセル(スロットル弁)を自動的により閉じる方向へ作動させる制御をコントローラ48が行う。
このように本実施例では車両の作業状態とアクセルレバーによるエンジン回転速度の設定と変速ペダル18によるエンジン回転速度の設定とを総合的に判断して最適なエンジン回転速度を選択できるため、車両の操作性や作業性が従来より向上する。
本実施例の走行車両が4WS(4Wheel Stearing)制御が可能な走行車両である場合には該車両に装着した作業機を自動認識し、該作業機を使用するのに好ましい操舵モードを液晶などでできた表示画面Gに表示する構成としている。
このとき走行車両に装着される作業機の種類の判別は、作業機側のコントローラ(図示せず)と走行車両側のコントローラ48の各カプラの接続状態により、いかなる種類の作業機が走行車両に装着されているのかを認識することができる。走行車両に装着される作業機が分かると、その作業機に最も適した操舵モードを操縦席領域に設けた液晶に表示する。図18にモーア6が装着された場合にはRWSの操舵モードで作業することを示唆する例を示している。
様々な作業機が走行車両に装着することが想定されるが、経験の浅いオペレータはどの操舵モードを使うと最適な状態で作業できるかすぐには分からない場合がある。FWSモードスイッチ95、RWSモードスイッチ96及び4WSモードスイッチ97を設けておけば、上記液晶表示に従って、容易に適切な操舵モードを選択できる。
この場合の制御フローを図19に示す。図19で、「停車中」とあるステップは、4WSモードを他のモードに切り換える場合は停車中に行うことでモード切換の安全性を高めるためである。またその切り換えが完了したら、その完了を報知するステップを図19の制御フローに入れてもよい。
また、前記4WS制御装置を有する走行車両おいて、FWS、RWS及び4WSの各操舵モードで、前後輪3,4の相対的位置関係のずれを検出する前輪操舵ポジションセンサ98と後輪操舵ポジションセンサ99を設けておき、これらのセンサ98,99で前記ずれを検出した場合には、停車して、そのずれを修正するよう促すメッセージ、例えばFWSを選択したときには後輪4は中立位置にあるはずであるが、中立位置からずれていると、例えば「後輪がずれています。後輪が中立になるようにRWSに切り換えてハンドル操作をして下さい。」と表示画面Gに表示する構成とする。
これは、FWS、RWS又は4WSを選択した時に、前後輪3,4の位置関係が外力によりずれることがあるためであり、このずれがあるままで車両を操舵するとハンドル操作時にオペレータの意図する操舵にならないことがあるので、本実施例によりこのような不具合を未然に防ぐことができる。
このように、4WS制御が可能な走行車両でも、本実施例では簡単に最適な作業モードが分かり、効率の良い作業が可能になる。
本発明は、安全性の高いトラクタなどの農作業用の走行車両として利用可能性がある。
本発明の一実施例の農作業用の走行車両(多目的トラクタ)の側面図である。 図1の走行車両の平面図である。 図1の走行車両の動力伝動機構図である。 図1の走行車両の変速ペダル部分の平面図である。 図4の変速ペダル部分の側面図である。 図1の走行車両の制御ブロック図である。 図1の走行車両の前後進切換スイッチを備えた前後進切換レバーの要部斜視図である。 図1の走行車両の変速制御のフローチャートである。 図1の走行車両のHST取付部の側面図である。 図1の走行車両のHST取付部の平面図である。 図1の走行車両のHST取付部の背面図である。 時間経過に対応したトラニオン軸ポジションセンサの位置を中立位置に復帰させる様子と車速センサで測定するための車速パルスおよびトラニオン軸を微速で動かして中立位置に復帰させるためのトラニオン軸制御出力値の変化を示すタイムチャートの一例を示す図である。 図12の過程を実行するフローを示す。 トラニオン軸の中立位置の補正を促すメッセージが表示された液晶画面の図(図14(a))と、図14(a)のメッセージが表示された時に中立基準位置を変更可能にするための中立位置変更スイッチの図(図14(b))である。 図1の走行車両のHSTトラニオン軸の中立基準位置を変更可能にするための制御フロー図である。 図1の走行車両の変速ペダルの踏込量に基づく変速ペダルポジション位置とエンジン回転速度の関係(図16(a))とアクセルレバーの操作量に基づくアクセルレバーポジション位置とエンジン回転速度の関係(図16(b))を示す図である。 図1の走行車両の走行状態におけるエンジン回転速度の設定を行う制御フロー図である。 図1の走行車両にモーアが装着された場合にはRWSの操舵モードで作業することを示唆する液晶表示画面の例である。 図1の走行車両にFWS、RWS又は4WSの各操舵モードの中の適切な操舵モードを選択する制御フロー図である。
符号の説明
1 多目的トラクタ 2 走行車体
3 前輪 4 後輪
6 モーア 7 フロア
8 ステアリングコラム 10 ハンドル
11 操縦席 12 エンジン
15 ミッションケース 16 HST
16a トラニオン軸 17 主クラッチ
19 HST入力軸 18 変速ペダル
18a 回転軸 18f 前進踏込部
18r 後進踏込部 21 副変速装置
22 斜板 23 可変容量形ポンプ
24 可変容量形モータ 25 閉油圧回路
26 HST出力軸 27 走行軸
30 デフ装置 31 前輪伝動軸
33 デフ装置 34 四駆クラッチギヤ
36 PTO入力軸 38 PTO変速装置
39 PTO軸 41 ステー部材
43 スプリング 45 ニュートラルアーム
46 ローラ 47 HSTペダル踏込位置検出センサ
48 コントローラ 49 ローラ支持アーム
51 ブラケット 52 回動軸
53 電動モータ 54 ロッド
55 回動アーム 56 ピン
57 前後進切換レバー 60 接触部材
64 ラジエータ 65 ラジエータファン
70 HST取付けベース 71 取付けボルト
72 カラー 73 操作装置
73a 操作軸 73b 操作歯車
75a 変速歯車
76 トラニオン軸ポジションセンサ(トラニオン軸ポジション検出手段)
76a L型ピン 76b ポテンショメータ
76c 係合部 77 トラニオンアーム
77a ピン 78 プレート
78a 長孔 79F,79R 作動杆
80F,80R 操作ワイヤー 82 ブレーキペダル
85 車速センサ 88 中立位置変更スイッチ
89 アクセルレバーポジションセンサ
90 エンジン低回転モード選択スイッチ
92 PTOスイッチ 95 FWSモードスイッチ
96 RWSモードスイッチ 97 4WSモードスイッチ
98 前輪操舵ポジションセンサ 99 後輪操舵ポジションセンサ
G 表示手段 N 中立復帰機構
Sf,Sr 圧力センサ S’f 前進スイッチ
S’r 後進スイッチ

Claims (2)

  1. エンジン回転速度を変更するアクセルレバー及びペダル式変速操作具(18)と、副変速装置(21)と、を設けた作業用の走行車両において、
    副変速装置(21)が路上走行を選択している場合には、アクセルレバーの位置がどこにあっても、ペダル式変速操作具(18)によるエンジン回転制御を優先するコントローラ(48)を設け
    PTOスイッチ(92)を設け、PTOスイッチ(92)をオンとすると、作業状態と判定し、アクセルレバーの操作によるエンジン回転制御をペダル式変速操作具(18)に対して優先する構成とし、
    副変速装置(21)が作業走行の速度を選択し、かつ、PTOスイッチ(92)をオフとすると、エンジン目標回転速度を変速ペダル踏込位置とアクセルレバー操作量にそれぞれ対応したエンジン回転速度の中で高い方を選択する制御を行う
    ことを特徴とする作業用の走行車両。
  2. エンジン低回転モードを選択する選択スイッチ(90)を設け、エンジン低回転モード選択スイッチ(90)がオン状態であると、エンジン回転をペダル式変速操作具(18)の踏込量とアクセルレバーの操作量のうちエンジン回転速度が低い方を選択し、エンジン低回転モード選択スイッチ(90)がオフ状態であると、副変速装置(21)が路上走行の速度を選択している場合には、アクセルレバーの位置がどこにあっても、ペダル式変速操作具(18)によるエンジン回転制御を優先することを特徴とする請求項1記載の作業用の走行車両。
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