以下、図面を参照しながら、本発明の作業車両の一実施の形態のトラクタ、並びに本発明に関連する発明の一実施の形態のトラクタについて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の作業車両の一例としてのトラクタの全体構成側面図であり、図2は、同トラクタの全体構成平面図である。
図1、図2に示す通り、このトラクタ1は、前後の走行車輪2,3によって圃場作業可能に機体を支持しており、機体の前部又は後部に作業機を装着して作業を行う。機体前部のエンジンルーム4a内に搭載しているエンジン4からの動力を受けて走行車輪2,3に動力伝達を行う。この走行車輪2,3への動力伝達は、変速装置5の副変速機構12(有段変速)と油圧式無段変速装置(HST)11で変速された動力が無段変速伝動されていく。また、油圧式無段変速装置11に入力された動力のうち無段変速されない動力がPTOと略称される作業動力供給部6に伝達されていく。作業動力供給部6は、機体後部のPTO機構16aと機体中央下部のPTO機構16bから構成されている。
また、作業座席7を中心に、各種の機器操作具を備え、走行操作用として、ステアリングハンドル7a、HSTペダル7b、左右セットのブレーキペダル7c(連結解除により左ブレーキペダルと右ブレーキペダルとして使用)、副変速レバー7d、後輪駆動と4輪駆動を切り換える4WDレバー7e、エンジンを緊急停止する緊急停止スイッチ7f、ウィンカスイッチ7g、オートクルーズスイッチ7h、作業機操作用として、リヤとミッドのPTOレバー8a,8b、装着している作業機の昇降位置を決定するポジションレバー8c、前後進レバー7i、エンジン回転数を設定するスロットルレバー7j、別の油圧機器を駆動する2連の外部油圧レバー8d等を備えて構成される。副変速レバー7dは、図3に示す有段変速の副変速機構12の変速操作を行うもので、3段変速が可能な構成となっている。
ここで、図3は、本実施の形態のトラクタ1の伝動系統の構成展開図である。
また、オートクルーズスイッチ7hを入り状態にすると、オートクルーズモードになり、HSTペダル7bから足を離しても、入り状態にした時点の車速を維持し続ける構成である。具体的には、オートクルーズモードでは、無段変速装置11の油圧ポンプ21pの出力調整用のトラニオン軸21tの回動位置を維持する構成である。
上記変速装置5による走行伝動系は、エンジン動力を受けるHSTと略称される静油圧式の無段変速装置11および車速域を切替える副変速機構12を動力伝達上流側から下流側にかけて直列に配置し、後輪3等の伝動機構13に伝動する(図3参照)。
この走行伝動系に、エンジン4の回転センサ4r、車速センサ12r等による機器動作センサを設けると共に、HSTペダル7b等の変速指示具によるHSTペダル7bの踏み込み量を検出するHSTペダル踏み込み量検出センサ31からの出力に基づいて、油圧式無段変速装置11を制御する制御部100とにより変速システムを構成する。
また、本実施の形態のトラクタ1には、路上走行を含む各種作業内容を区別するための各種モードを切り替える指示を行うモード切替スイッチ32が設けられており、そのモード切替スイッチ32によるモードの切替結果は、制御部100に出力される。
変速装置5は、図3に伝動系統展開図を示すように、油圧式無段変速装置11、副変速機構12、後輪伝動機構13、前輪伝動機構14に至る4WD切替部14a等による走行系機器を備えている。
作業速から路上速の範囲で車速域を選択する副変速機構12による各車速域について油圧式無段変速装置11で無段変速し、この変速動力を前後輪2,3に伝動出力している。
また、エンジン4から油圧式無段変速装置11に入力された動力のうち、無段変速されない動力がPTOクラッチ15を経てリヤとミッドのPTO機構16a,16bから作業機を作動可能に構成している。即ち、油圧式無段変速装置11に入力されたエンジン4からの出力軸21aは、エンジン4と反対側(変速装置5側)に突出しており、複数のギアを介してPTOクラッチ15へと動力伝達されている構成である。これにより、リヤPTO機構16aとミッドPTO機構16bは、一定回転で回転する構成となる。
11aは油圧式無段変速装置11のチャージポンプであり、変速装置5を囲うトランスミッションケース内に内装している。リヤPTO機構16aは、機体後部に装着するロータリー、除雪機、モーア等を駆動する。ミッドPTO機構16bは、前輪2と後輪3との間の機体下部に装着するモーア、除雪機、路上清掃機等を駆動する。
油圧式無段変速装置11は、図4(a)に内部構成と油圧回路図を示すように、エンジン動力によって駆動される出力可変式の油圧ポンプ21pとそのポンプ出力を受ける定量油圧モータ21mとによって構成される。
ここで、図4(a)は、油圧式無段変速装置11の内部構成と油圧回路図である。
油圧ポンプ21pは、エンジン4からの出力軸21aと直結で駆動される。油圧ポンプ21pには出力調整用のトラニオン軸21tが設けられており、このトラニオン軸21tの回動で斜板21sの角度が変化する。斜板21sの角度位置により作動油の送油方向および出力停止を含む流量調節を介して定量油圧モータ21mを駆動し、その出力軸21bから出力停止の中立を含む正逆の変速回転動力を伝動出力する。
油圧ポンプ21pのトラニオン角制御は、サーボ機構のHST制御により、比例ソレノイドバルブ(トラニオン前進側ソレノイド、及びトラニオン後進側ソレノイドを含む)22への駆動電流によって作動油流量を調節する構成としている。
即ち、制御部100は、図5に示す通り、HSTペダル踏み込み量検出センサ31により検出された踏み込み量に対する、油圧式無段変速装置11のトラニオン軸21tの回動角度の変化量を、モード切替スイッチ32により指示されたモードに応じて制御する。ここで、図5は、本実施の形態のトラクタ1の制御部100を説明する入出力ブロック図である。
この作動油流量の調節は、電流のデューティー比を変更することで調節する構成としているので、変更された電流値に応じた回動位置にトラニオン軸21tが回動する。また、比例ソレノイドバルブ22の下流側に切換バルブ22aを構成しているが、この切換バルブ22aでトラニオン軸21tの回動方向、即ち、出力軸21bの正逆方向を決める構成としている。符号Pはパワーステアリングの油圧回路を示している。
以上の構成において、以下に、各モードに応じて予め定められたトラニオン軸の作動量のパターンと、各部の動作について図面を用いて説明する。
図6は、本実施の形態のトラクタ1の各作業モードに応じて予め定められた、HSTペダル踏み込み量とトラニオン軸の作動量との関係を示す図である。
尚、図6に示す、HSTペダル踏み込み量とトラニオン軸の作動量との関係は、メモリ110(図5参照)に予め格納されている。
図6において、低高速モード111として示した、HSTペダル踏み込み量とトラニオン軸の作動量との関係について説明する。
作業者が、モード切替スイッチ32を操作して、低高速モード111を設定すると、その出力が制御部100に送られて、メモリ110に格納された低高速モード111用の対応関係が読み出される。このモードは、例えば、重い作業機を牽引して路上走行をする際に適している。
そして、作業者が、HSTペダル7bを踏み込むと、制御部100は、HSTペダル踏み込み量検出センサ31により検出された踏み込み量に対する、油圧式無段変速装置11のトラニオン軸21tの作動角度の変化量を、メモリ110から読み出された低高速モード111に応じて制御する。
このモードを設定することにより、図6に示す通り、従来の線形変化特性101に比べて、発進時、トラクタ1をゆっくり動かしたいときに、HSTペダル7bの踏み始めは、トラニオン軸21tの作動量が少なく推移するので、HSTペダル7bの踏み込みの度合いに気を遣わなくても、ゆっくり発進出来る。また、最高速走行時でも、HSTペダル7bの踏み込み量に対して、トラニオン軸21tの作動量が少なく推移するので、急激に速度が変わることが無いため、トラクタ1の走行速度の調整が容易に行える。
また、作業者が、モード切替スイッチ32を操作して、中速モード112を設定すると、その出力が制御部100に送られて、メモリ110に格納された中速モード112用の対応関係が読み出される。このモードは、例えば、芝刈り作業等の一定速度で走行しながら作業をする際に適している。
そして、作業者が、HSTペダル7bを踏み込むと、制御部100は、HSTペダル踏み込み量検出センサ31により検出された踏み込み量に対する、油圧式無段変速装置11のトラニオン軸21tの作動角度の変化量を、メモリ110から読み出された低高速モード111に応じて制御する。
このモードを設定することにより、図6に示す通り、従来の線形変化特性101に比べて、発進時、トラクタ1は素早く一定速度に達し、その後、HSTペダル7bの踏み込み量に対して、トラニオン軸21tの作動量が少なく推移する中間領域では、HSTペダル7bの踏み込み量に過敏に反応せずに、その一定速度を維持し易い。よって、例えば、圃場での作業走行時に適したモードである。
また、作業者が、モード切替スイッチ32を操作して、高速モード113を設定すると、その出力が制御部100に送られて、メモリ110に格納された高速モード113用の対応関係が読み出される。このモードは、例えば、作業機なしの状態で高速で路上走行する際に適している。
そして、作業者が、HSTペダル7bを踏み込むと、制御部100は、HSTペダル踏み込み量検出センサ31により検出された踏み込み量に対する、油圧式無段変速装置11のトラニオン軸21tの作動角度の変化量を、メモリ110から読み出された高速モード113に応じて制御する。
このモードを設定することにより、図6に示す通り、従来の線形変化特性101に比べて、最高速走行時でも、HSTペダル7bの踏み込み量に対して、トラニオン軸21tの作動量が少なく推移するので、急激に速度が変わることが無いため、トラクタ1の走行速度の調整が容易に行える。
また、作業者が、モード切替スイッチ32を操作して、低速モード114を設定すると、その出力が制御部100に送られて、メモリ110に格納された低速モード114用の対応関係が読み出される。このモードは、例えば、低速で路上清掃する際に適している。
そして、作業者が、HSTペダル7bを踏み込むと、制御部100は、HSTペダル踏み込み量検出センサ31により検出された踏み込み量に対する、油圧式無段変速装置11のトラニオン軸21tの作動角度の変化量を、メモリ110から読み出された低速モード114に応じて制御する。
このモードを設定することにより、図6に示す通り、従来の線形変化特性101に比べて、発進時、トラクタ1をゆっくり動かしたいときに、HSTペダル7bの踏み始めは、トラニオン軸21tの作動量が少なく推移するので、HSTペダル7bの踏み込みの度合いに気を遣わなくても、ゆっくり発進出来る。
以上説明した通り、本実施の形態のトラクタ1によれば、HSTペダル7bの踏み込みの度合いに気を遣わなくても、モード切替スイッチ32による各モードの設定に適合したトラニオン軸21tの作動量が決定されるので、速度調整が容易且つ適切に行える。即ち、HSTペダル7bの踏み込み加減に注意を集中する必要がなくなり(微調整時踏み込みすぎがなくなる)、作業者の疲労軽減が図られる。
また、本実施の形態2では、ステージ切替弁122の切り替えを指示する機構がレバータイプである構成について説明したが、これに限らず例えば、プッシュタイプの構成であっても良い。
尚、上記実施の形態では、モード切替スイッチ32により各モードを設定する構成について説明したが、これに限らず例えば、モード切替スイッチ32を設けず、HSTペダル7bの踏み込み量に対するトラニオン軸21tの作動角の変化量を、踏み込み量が最小値側にあるときと、最大値側にあるときは、踏み込み量が中間値にあるときに比べて、小さくする構成であっても良い。
この構成により、従来の線形変化特性101(図6参照)に比べて、発進時、トラクタ1をゆっくり動かしたいときに、HSTペダル7bの踏み始めは、トラニオン軸21tの作動量が少なく推移するので、HSTペダル7bの踏み込みの度合いに気を遣わなくても、ゆっくり発進出来る。また、最高速走行時でも、HSTペダル7bの踏み込み量に対して、トラニオン軸21tの作動量が少なく推移するので、急激に速度が変わることが無いため、トラクタ1の走行速度の調整が容易に行える(図6の低高速モード111参照)。
また、上記実施の形態では、モード切替スイッチ32により各モードを設定する構成について説明したが、これに限らず例えば、モード切替スイッチ32を設けず、HSTペダル7bの踏み込み量に対するトラニオン軸21tの作動角の変化量を、踏み込み量が中間値にあるときは、踏み込み量が最小値側にあるときと最大値側にあるときに比べて、小さくする構成であっても良い。
この構成により、従来の線形変化特性101(図6参照)に比べて、発進時、トラクタ1は素早く一定速度に達し、その後、HSTペダル7bの踏み込み量に対して、トラニオン軸21tの作動量が少なく推移する中間領域では、HSTペダル7bの踏み込み量に過敏に反応せずに、その一定速度を維持し易い。よって、トラクタ1の走行速度の微調整が容易に行える(図6の中速モード112参照)。
また、上記実施の形態では、モード切替スイッチ32により各モードを設定する構成について説明したが、これに限らず例えば、副変速レバー7dのレバー位置を検出する副変速レバー位置センサ(図示省略)を設け、その副変速レバー位置センサの検出結果、即ち、L速、H速、M速の何れかの検出結果が、制御部100に送られる構成であっても良い。
この構成によれば、検出結果がL速のときは、図6で説明した低速モード114に対応するトラニオン軸21tの作動量が決定され、検出結果がH速のときは、図6で説明した高速モード113に対応するトラニオン軸21tの作動量が決定され、検出結果がM速のときは、図6で説明した中速モード112に対応するトラニオン軸21tの作動量が決定される。これにより、上記と同様の効果を発揮する。
また、上記実施の形態では、モード切替スイッチ32により設定されたモードに対応して、HSTペダル踏み込み量とトラニオン軸作動量の関係が決定される構成について説明したが、これに限らず例えば、HSTペダル踏み込み量に対するトラニオン作動量を任意に変更できるレスポンスダイヤルスイッチ(図示省略)を、前進走行側と後進走行側とに別々に設けた構成であっても良い。
これにより、HST11の前後進の特性に個体差が有り、前後進の作動フィーリングが若干違う場合でも、作業者の好みに合わせて、前進・後進の設定が可能となる。
また、後進主体の作業のときには、前進より作動を早くしたいときに任意に変更出来るので、作業性が向上する。
また、上記構成に限らず例えば、HSTペダル踏み込み量に対するトラニオン軸21tの最大作動量を任意に変更出来る最高速規制ダイヤルスイッチを、前進側と後進側とに別々に設けた構成であっても良い。
これにより、HST11の前後進の特性に個体差が有り、前後進の作動フィーリングが若干違う場合でも、作業者の好みに合わせて、前進・後進の設定が可能となる。
また、後進主体の作業のときには、後進時の最高速を遅くして、前進は移動を重視して最高速を速くしたい時に、任意に変更出来るので、作業性が向上する。
また、上記構成に限らず例えば、HSTペダル踏み込み量に対するトラニオン軸21tの作動角を、車速に応じて変化率を大きくする構成であっても良い。
これにより、発進時、トラクタをゆっくり動かしたい時に、車速が低いときにはトラニオン軸の作動量を少なくする構成であるため、HSTペダルの踏み込み量に気を遣わずにゆっくり発進出来、狭い倉庫内や、圃場コーナー等でも安全に移動・作業が可能となる。
また、上記構成に限らず例えば、HSTペダル踏み込み量に対するトラニオン軸21tの作動角の変化率を、車速に応じて大きくする構成であって、且つ、車速制御幅を設け、トラニオン軸の作動角の変化率を、当該制御幅の範囲内では同じにすると共に、車速が増加するにつれて、階段状に大きくするべく設定した構成であっても良い。ここで、図7は、車速とトラニオン作動角の変化率の関係を示す図である。
これにより、発進時、トラクタをゆっくり動かしたい時に、車速が低いときにはトラニオン軸の作動量を少なくする構成であるため、HSTペダルの踏み込み量に気を遣わずにゆっくり発進出来、狭い倉庫内や、圃場コーナー等でも安全に移動・作業が可能となる。また、速度が速いときでも、微調整時の変化量が一定になるので速度設定が容易である。
また、上記構成に限らず例えば、図8に示す通り、HSTペダル踏み込み量に対するトラニオン軸21tの作動角の変化率を、車速に基づいて変更する構成であって、且つ、最大変化率を任意の車速において実現するべく設定出来る車速コントロールスイッチ(図示省略)を設けた構成であっても良い。ここで、図8は、車速とトラニオン作動角の変化率の関係を示す図である。
これにより、最高変化率を任意に変更出来るので、作業に適合した速度調整が可能となる。
また、上記構成に限らず例えば、図9に示す通り、HSTペダル踏み込み量に対するトラニオン軸21tの作動角の変化率を、車速に基づいて変更する構成であって、且つ、最大変化率を任意の車速において実現するべく設定出来る車速コントロールスイッチ(図示省略)を備え、且つ、車速制御幅を設け、トラニオン軸の作動角の変化率を、当該車速制御幅の範囲内では同じにすると共に、車速コントロールスイッチにて設定された最大変化率を実現する車速を中心として、階段状に変化するべく設定した構成であっても良い。ここで、図9は、車速とトラニオン作動角の変化率の関係を示す図である。
これにより、最高変化率を実現する車速を任意に変更出来るので、作業に適合した速度調整が可能となる。
(実施の形態2)
次に、本発明に関連する発明の作業車両の一例としての第2のトラクタ200について説明する。
まず、第2のトラクタ200の構成について説明するが、上記実施の形態1で図1〜図3を用いて説明した構成要素については実質的に同一であるので、実質的に同一の機能を有する構成要素については同一の参照符号を付し、その説明は省略する。
また、上記実施の形態1のHST11では、油圧モータは、斜板が設けられていない定量油圧モータ21m(図4(a)参照)として説明したが、本実施の形態2の第2の油圧式無段変速装置11b(第2のHST11b)では、図4(b)に示す通り、斜板121sを設けた可変油圧モータ121mを備えている。そして、本実施の形態2の第2のHST11bは、可変油圧モータ121mの出力を高速と低速の2段切替可能な構成とし、これを、斜板121sを有する可変油圧モータ121mの2ステージ切替という。
低速側と高速側の2ステージ切替は、可変油圧モータ121m側のトラニオン軸121tで斜板121sを回動させることで行うが、そのトラニオン軸121tの作動角度は、ステージ切替弁122により切り替えられる。そして、そのステージ切替弁122の切り替えを指示するHi−Lo切替レバー210が、ステアリングハンドル7aの下方近傍に配置されている(図10参照)。
即ち、ステージ切替弁122の切り替えを指示する機構を、プッシュタイプのスイッチではなく、レバータイプにしたことで、操作時において容易にレバーの位置が確認出来る。また、Hi−Lo切替レバー210をステアリングハンドル7aの下方近傍に配置したことにより、切り替え操作が、素早く且つ容易に行えて、変速ロスが少なく、作業能率が向上する。以上のことから、この構成によれば、従来に比べて操作感が良く、操作性の向上が図られる。
本実施の形態2では、Hi−Lo切替レバー210を上方に操作するとHiに切り替わり、下方に操作するとLoに切り替わる構成である。
また、本実施の形態2では、オートクルーズスイッチ7h(図2、図11参照)がON状態にある間は、Hi−Lo切替レバー210が、オートクルーズモードにおける車速の増減を指示する機能を兼ねている。これにより、スイッチ類の数を減らせる。
ここで、図10は、Hi−Lo切替レバー210とステアリングハンドル7aとの配置関係を示すために、これらを作業座席7側から見た拡大斜視図である。
また、本実施の形態2のメモリ110は、上記実施の形態1で説明した機能の他に、車速を記憶する機能も有している。
また、本実施の形態2の第2のトラクタ200では、メモリ110に記憶された車速に移行させるか否かを指示するメモリ復帰スイッチ220(図11参照)が設けられている。
また、本実施の形態2の制御部100'(図11参照)は、上記実施の形態1で説明した制御部100の機能の他に、Hi−Lo切替レバー210、オートクルーズスイッチ7h、及びメモリ復帰スイッチ220からのそれぞれの出力を受け付ける機能も有すると共に、ステージ切替弁122の動作も制御する構成である。
ここで、図11は、本実施の形態の第2のトラクタ200の制御部100'を説明する入出力ブロック図である。
以上の構成により、本実施の形態2の制御部100'(図11参照)は、オートクルーズスイッチ7hからの指示によりオートクルーズモードが入り状態にある間は、Hi−Lo切替レバー210による、第2のHST11bの可変油圧モータ121mの回転数の増減の指示を、オートクルーズモードにおける車速の増減の指示として受け付ける。
また、制御部100'は、オートクルーズスイッチ7hによりオートクルーズモードが入り状態から切り状態に切り替えられた際、オートクルーズモードにおいて切り替えられる直前の走行車体の車速をメモリ110(図11参照)に記憶させる。その後、制御部100'は、作業者の操作で、オートクルーズスイッチ7hによりオートクルーズモードが入り状態に切り替えられた後、メモリ復帰スイッチ220から車速の移行指示を受けた際、走行車体の車速をメモリ110に記憶されている直前の車速に移行させる。
上記制御部100'による制御動作について、主として図12を参照しながら更に説明する。
ここで、図12は、本実施の形態におけるオートクルーズモードのフロー図である。
図12に示す通り、作業者によりオートクルーズスイッチ7hがONされると、制御部100'は、ステップS10を経てステップS20へ進み、オートクルーズスイッチ7hからのON信号を受け付けた時点のHSTペダル7bの踏み込み量をHSTペダル踏み込み量検出センサ31から受け付けて、それに対応する車速を維持して走行するべく、比例ソレノイドバルブ22に出力信号を送り、第2のHST11b(図4(b)参照)の油圧ポンプ21pのトラニオン軸21tの回動量を一定に制御する(ステップS20参照)。
その後、作業者がHi−Lo切替レバー210を操作すると、制御部100'は、Hi−Lo切替レバー210による指示を、オートクルーズモードにおける車速の増減の指示として受け付けるので、ステップS30を経てステップS40へ進み、微増減速操作後の車速を保持して走行するべく、ステージ切替弁122に出力信号を送る。即ち、例えば、作業者がHi−Lo切替レバー210を「Hi」側に切り替えたときは、制御部100'は、車速が微増する方向に、可変油圧モータ121m側のトラニオン軸121tを回動させるべく、ステージ切替弁122に指令を出して、ステップS50へ進む。
尚、作業者がHi−Lo切替レバー210を操作しなければ(ステップS30参照)、オートクルーズスイッチ7hからのON信号を受け付けた時点の車速を維持しながら(ステップS45参照)、ステップS50へ進む。
そして、制御部100'は、ステップS50において、メモリ復帰スイッチ220からのON信号を受け付けなければ、ステップS60に進み、オートクルーズスイッチ7hがONからOFFに切り替えられたか否かを判定し、OFFに切り替えられたと判定したときは、ステップS70に進み、オートクルーズスイッチ7hがONからOFFに切り替えられる直前の車速をメモリ110に記憶させる。
尚、制御部100'は、ステップS60において、オートクルーズスイッチ7hがONからOFFに切り替えられていないと判定したときは、ステップS30の直前に戻る。
その後、オートクルーズモードがOFF状態で走行中において、作業者がオートクルーズスイッチ7hを再びONさせると、ステップS10〜ステップS50を経て、メモリ復帰スイッチ220がONされたと判定されるとステップS80に進む。そして、オートクルーズスイッチ7hがONからOFFに切り替えられる直前の車速がメモリ110に記憶されているか否かを判定し、記憶されていると判定した際には、オートクルーズスイッチ7hがONからOFFに切り替えられる直前の車速に変更させ(ステップS90)、その後、ステップS30の直前に戻る。
尚、ステップS80において、オートクルーズスイッチ7hがONからOFFに切り替えられる直前の車速がメモリ110に記憶されているか否かを判定した結果、記憶されていないと判定した際には、ステップS50の直前に戻る。
これにより、ある作業場所でオートクルーズモードで作業をして、次いで、路上走行し、次の作業場所で再びオートクルーズモードで作業をするときに、メモリ復帰スイッチをONすることにより前の作業場所と同じ車速になるので、作業者にとって便利である。
尚、上記実施の形態では、Hi−Lo切替レバー210を上方に操作するとHiに切り替わり、下方に操作するとLoに切り替わる構成について説明したが、これに加えて例えば、Hi−Lo切替レバー210が「Hi」の場合、メータパネル(図示省略)に配置されたランプ(図示省略)を点灯させ、「Lo」の場合、メータパネルに配置されたランプを消灯させる構成であっても良い。これにより、上記効果に加えて、「Hi」でランプが点灯するので、作業者に速度注意を促すことが出来る。
また、上記実施の形態では、Hi−Lo切替レバー210を上方に操作するとHiに切り替わり、下方に操作するとLoに切り替わる構成について説明したが、これに限らず例えば、エンジン始動後は、「Hi」となり、作業者がHi−Lo切替レバー210を操作することで「Lo」になる構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、Hi−Lo切替レバー210を上方に操作するとHiに切り替わり、下方に操作するとLoに切り替わる構成について説明したが、これに限らず例えば、Hi−Lo切替レバー210を上下方向どちらでも操作すると、「Hi」、「Lo」を切り替えることが出来、「Hi」に切り替えられると、メータパネル(図示省略)に配置されたランプ(図示省略)を点灯させ、「Lo」に切り替えられると、メータパネルに配置されたランプを消灯させる構成であっても良い。これにより、作業者は、「Hi」と「Lo」の区別が可能となる。
また、上記実施の形態では、Hi−Lo切替レバー210を上方に操作するとHiに切り替わり、下方に操作するとLoに切り替わる構成について説明したが、これに限らず例えば、Hi−Lo切替レバー210を上下方向どちらでも操作すると、「Hi」、「Lo」を切り替えることが出来、「Lo」に切り替えられると、メータパネル(図示省略)に配置されたランプ(図示省略)を点灯させ、「Hi」に切り替えられると、メータパネルに配置されたランプを消灯させる構成であっても良い。これにより、作業者は、「Hi」と「Lo」の区別が可能となる。更に、この構成において、エンジン始動後は、「Hi」となり、作業者がHi−Lo切替レバー210を操作することで「Lo」になる構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、Hi−Lo切替レバー210を上方に操作するとHiに切り替わり、下方に操作するとLoに切り替わる構成について説明したが、これに限らず例えば、Hi−Lo切替レバー210を上下方向どちらでも操作すると、「Hi」、「Lo」を切り替えることが出来ると共に、Hi−Lo切替レバー210を一定時間以上「上げ」、「下げ」位置を保持しないと、切り替わらない構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、オートクルーズスイッチ7h(図2、図11参照)がON状態にある間は、Hi−Lo切替レバー210が、オートクルーズモードにおける車速の増減を指示する機能を兼ねている構成について説明したが、これに限らず例えば、オートクルーズモード中は、Hi−Lo切替レバー210を上下方向に操作しても、車速の「Hi」、「Lo」の切り替えが出来ない構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、オートクルーズスイッチ7h(図2、図11参照)を用いて、オートクルーズモードの「入」と「切」を行う構成について説明したが、これに限らず例えば、オートクルーズモード中は、Hi−Lo切替レバー210を一方向に長押し操作することでオートクルーズモードを解除出来、その後、Hi−Lo切替レバー210を上下方向に操作することで、車速の「Hi」、「Lo」の切り替えが可能となる構成であっても良い。
また、上記実施の形態2では、上記実施の形態1に記載のトラクタ1の構成や機能に対して、更に実施の形態2で説明した新たな構成や機能を追加した第2のトラクタ200について説明したが、本発明に関連する発明の一例のトラクタとしては、これに限らず例えば、上記実施の形態2で新たに説明した構成や機能を備え、上記実施の形態1で説明した構成や機能の内の例えば、HSTペダル踏み込み量とトラニオン作動量との関係を各種作業モードに応じて予め格納しておくことで各種作業モードに適した走行制御が可能となる構成や機能等を備えない第3のトラクタであっても良い。
また、上記実施の形態では、農業用のトラクタを例に挙げて説明したが、これに限らず例えば、建築用、又は運搬用のトラクタであっても良いし、或いは、トラクタに限らず例えば、その他の作業車両であっても良い。
尚、上記実施の形態のHSTペダル7bは、本発明の変速指示具の一例にあたり、本実施の形態のHSTペダル踏み込み量検出センサ31は、本発明の変速操作量検出センサの一例にあたる。
また、上記実施の形態では、本発明の変速指示具の一例としてHSTペダル7bを用いた構成について説明したが、これに限らず例えば、レバー式の変速指示具であっても良い。