(第一の実施の形態の構成)
図4は、本発明における第一の実施の形態として、PINダイオード10の構造の断面図と、炭素,窒素または酸素などの不純物の濃度分布28と、点欠陥の濃度分布26とを示したものである。PINダイオード10は、N型層14,P型層16,I型層18,カソード電極20及びアノード電極22を備える。
PINダイオード10は、シリコン基板12をベースにして形成される。シリコン基板12は、リン,砒素,アンチモンなどのN型ドーパントを低濃度で含む。例えばシリコン基板12に含まれるN型ドーパントの濃度は1014cm-3程度である。
N型層14は、シリコン基板12の表面側の表層部に、リン,砒素,アンチモンなどのN型ドーパントが高濃度で添加されることによって形成される。P型層16は、シリコン基板12の裏面側の表層部に、ホウ素(ボロン)やインジウムなどのP型ドーパントが高濃度で添加されることによって形成される。例えば、N型層14,P型層16には、それぞれ1018cm-3以上1020cm-3以下の濃度でN型ドーパント,P型ドーパントが含まれる。
シリコン基板12の、N型層14,P型層16以外の領域がI型層18になる。I型層18は、N型層14に含まれるN型ドーパントの濃度よりも低い濃度のN型ドーパントを含む。例えば、I型層のN型ドーパントの濃度は1014cm-3程度である。
カソード電極20及びアノード電極22は、アルミニウム,タングステン,銅などの金属を、N型層14及びP型層16の上にそれぞれ堆積させることによって形成される。
PINダイオード10を構成するシリコン基板12には、炭素及び酸素などの不純物(以下、欠陥要因不純物)が含まれる。シリコン基板12に含まれる欠陥要因不純物の濃度の分布28は、均一の濃度で分布する第一の欠陥要因不純物分布領域30と、I型層18からP型層16にかけて欠陥要因不純物濃度が指数関数的に減少する第二の欠陥要因不純物分布領域32とからなる。ここで、シリコン基板12の表面における欠陥要因不純物の濃度は、第一の欠陥要因不純物領域において均一に含まれる欠陥要因不純物の濃度よりも1桁以上低い。例えば、第一の欠陥要因不純物分布領域30においては1015cm-3程度の欠陥要因不純物が均一に分布する。一方、第二の欠陥要因不純物分布領域32においてはシリコン基板12の表面から約10μmの深さから、シリコン基板12の表面にかけて欠陥要因不純物が指数関数的に減少して分布する。シリコン基板12の表面において含まれる欠陥要因不純物の濃度は1014cm-3以下である。
PINダイオード10は、P型層16とI型層18とが接する面の近傍の領域に、点欠陥24を含む。具体的には、第二の欠陥要因不純物分布領域32に対して、点欠陥24が分布26に示すように分布する。ここで点欠陥24のピーク濃度は、シリコン基板12の第一の欠陥要因不純物分布領域30に均一に含まれる欠陥要因不純物の濃度と同じ程度か、もしくはそれ以上の濃度である。
例えば、点欠陥24の分布26は、シリコン基板12の表面から約5μmの深さにピークを有し、6μmから10μm程度の半値幅をもって分布する。また、点欠陥24のピーク濃度は1015cm-3から1016cm-3程度である。
(第一の実施の形態の製造方法)
図5は、PINダイオード10の製造工程を示す。PINダイオード10は、N型ドーパントを含むシリコン基板12から形成される。例えば、以下に示すステップS11では、1014cm-3程度の濃度のN型ドーパント(リン)が含まれるシリコン基板12が用いられる。
ステップS11では、シリコン基板12に対してN2雰囲気中で熱処理が行なわれる。シリコン基板12には、一般的に、1015cm-3程度の欠陥要因不純物(炭素,窒素または酸素等)が含まれる。熱処理によって、欠陥要因不純物はシリコン基板12の表面側あるいは裏面側から外方拡散され、シリコン基板12の表面及び裏面付近の欠陥要因不純物の濃度は低下する。その結果、シリコン基板12内の欠陥要因不純物の濃度の分布は、シリコン基板12の表面及び裏面の各面から数μmの深さから、表面及び裏面にかけて欠陥要因不純物が指数関数的に減少して分布し、それ以外の領域では欠陥要因不純物が均一に分布する。ここでは、欠陥要因不純物が均一に分布した領域における欠陥要因不純物の濃度に対して、シリコン基板12の表面及び裏面における欠陥要因不純物の濃度は1桁以上低くなるように熱処理が行なわれる。
上記の熱処理が行なわれた後に、シリコン基板12の表面あるいは裏面のいずれか一方が研磨される。これによって、PINダイオード10に用いられるシリコン基板12の厚さが決まるとともに、シリコン基板12の表面あるいは裏面のいずれか一方の近傍において、欠陥要因不純物が低減した領域と欠陥要因不純物が均一に分布した領域の一部とが削り取られるので、シリコン基板12には、欠陥要因不純物が均一に分布した第一の欠陥要因不純物分布領域30と、シリコン基板12の表面あるいは裏面のいずれか一方の近傍において欠陥要因不純物が低減した第二の欠陥要因不純物分布領域32とが残る。その結果、シリコン基板12に含まれる欠陥要因不純物の濃度は、図4の分布28に示すような分布になる。
例えば、1015cm-3程度の濃度で欠陥要因不純物を含む厚さ300μmのシリコン基板12に対して、N2雰囲気中で1150℃,1時間以上の熱処理を行った場合、シリコン基板12の表面及び裏面の各面から約10μmの深さのところから、それぞれ表面及び裏面にかけて欠陥要因不純物が指数関数的に減少する。上記の熱処理を経て、シリコン基板12の内部に均一に分布する欠陥要因不純物の濃度は略1015cm-3になり、シリコン基板12の表面及び裏面における欠陥要因不純物の濃度は1014cm-3程度になる。次に、厚さが150μmになるまでシリコン基板12の裏面側が研磨される。その結果、シリコン基板12の表面から約10μmの深さまでが第二の欠陥要因不純物分布領域32になり、その他の領域が第一の欠陥要因不純物分布領域30になる。ここで、シリコン基板12の表面には1014cm-3程度の欠陥要因不純物が含まれ、第一の欠陥要因不純物分布領域30には1015cm-3程度の欠陥要因不純物が含まれる。
次にステップS12に移行する。ステップ12では、P型ドーパントイオン及びN型ドーパントイオンがイオン注入装置によって加速されて、それぞれシリコン基板12の表面及び裏面から添加される。さらにN2雰囲気中で熱処理が行なわれ、それぞれのドーパントがシリコン基板12の表面及び裏面近傍で拡散されて、N型層14とP型層16とが形成される。
具体的には、イオン注入装置によってリンや砒素などのN型ドーパントイオンがシリコン基板12の裏面近傍の領域に添加され、N2雰囲気中で熱処理が行なわれる。その結果、シリコン基板12の裏面近傍の領域に、1018cm-3以上1020cm-3以下の濃度のN型ドーパントを有するN型層14が形成される。さらに、ホウ素(ボロン)やインジウムのようなP型ドーパントイオンがシリコン基板12の表面近傍の領域に添加されて、N2雰囲気中で熱処理が行なわれる。その結果、シリコン基板12の表面近傍の領域に、1018cm-3以上1020cm-3以下の濃度のP型ドーパントを有するP型層16が形成される。あるいは、N型ドーパントイオンとP型ドーパントイオンとがそれぞれシリコン基板12の表面及び裏面の領域に添加された後に、N2雰囲気中で熱処理が行なわれて、シリコン基板12の裏面近傍の領域にN型層14が、表面近傍の領域にP型層16が形成されてもよい。
例えば、シリコン基板12の裏面近傍にリンが添加され、N2雰囲気中での熱処理が行なわれて約1019cm-3の濃度でリンを含むN型層14が形成される。次に、シリコン基板12の表面近傍の領域にボロンが添加され、N2雰囲気中での熱処理が行なわれ、約1018cm-3の濃度のボロンを含むP型層16が形成される。その結果、N型層14とP型層16との間に挟まれるシリコン基板12の領域がI型層18になる。ここで、I型層18のN型ドーパントの不純物濃度は、1014cm-3程度である。
次にステップS13に移行する。ステップS13では、ヘリウムイオンを照射するためのイオン注入装置とシリコン基板12との間の領域に、アブソーバ層が設置される。アブソーバ層の材料としては、アルミニウムが用いられる。アルミニウムは元素周期律表においてシリコンに近い元素であるため、シリコンに対するヘリウムイオンの散乱断面積と、アルミニウムに対するヘリウムイオンの散乱断面積とは略等しい。したがって、ある加速エネルギーで加速されたヘリウムイオンがアルミニウムを介してシリコンに照射された場合と、上記と同じ加速エネルギーで加速されたヘリウムイオンがシリコンに照射された場合とでは、ヘリウムイオンの飛程は略等しくなる。すなわち、アブソーバ層としてアルミニウムを用いると、照射されるヘリウムイオンの加速エネルギーに基づいて、シリコン基板12における点欠陥24が生成される領域を容易に予測することができる。ここでは、シリコン基板12の裏面とイオン注入装置との間の領域に、205μm前後の厚さのアルミホイル膜がアブソーバ層として設置される。
次にステップS14に移行する。ステップS14では、イオン注入装置によってヘリウムイオンが所定の加速エネルギーで加速されて、アブソーバ層を介してシリコン基板12に照射される。照射されたヘリウムイオンの加速エネルギーと、アブソーバ層の材質および厚さとから決まるシリコン基板12内の所定の領域に点欠陥24が生成される。ここで生成される点欠陥24は空孔型欠陥及び格子間型欠陥である。また、ヘリウムイオンの所定の加速エネルギーは、点欠陥24が生成されるシリコン基板12内の所定の領域が第二の欠陥要因不純物分布領域32になるように設定される。
尚、シリコン基板12にヘリウムイオンが照射される代わりに、プロトンが照射されてもよい。その場合は、シリコン基板12内の第二の欠陥要因不純物分布領域32に点欠陥24が生成されるように、照射されるプロトンの加速エネルギーが設定される。
例えば、23MeVのエネルギーで加速された約1012cm-2の照射量のヘリウムイオンが、205μm前後の厚さのアルミホイル膜のアブソーバ層を介してシリコン基板12の裏面に照射される。この加速エネルギーの場合は、シリコン基板12の裏面から145μm前後の深さにヘリウムイオンの飛程のピークが位置する。このとき、シリコン基板12の裏面から145μm前後の深さを中心として、照射されたヘリウムイオンの加速エネルギーと照射される側の材質(ここではシリコン)とによって定まる6μmから10μm程度の半値幅で分布した点欠陥24が生成される。シリコン基板12の厚さは150μmなので、点欠陥24が生成される領域は、シリコン基板12の表面から深さ5μm前後の領域になる。また、点欠陥24のピーク濃度は1015cm-3程度になる。
ステップS11からステップS13で挙げた例においては、シリコン基板12の表面から深さ10μmの領域は、欠陥要因不純物が低濃度で含まれた第二の欠陥要因不純物分布領域32である。したがって、点欠陥24は第二の欠陥要因不純物分布領域32内に生成される。
尚、ここで挙げた例において、ヘリウムイオンの加速エネルギーは23MeVに限定されるものではない。ヘリウムイオンの加速エネルギーを低減することによって、シリコン基板12に生成される点欠陥24のピーク位置を浅くし、かつ、分布26の半値幅を狭めてもよい。
あるいは、先のステップS13において、シリコン基板12の裏面とイオン注入装置との間の領域に205μm前後の厚さのアルミホイル膜のアブソーバ層が設置される代わりに、シリコン基板12の表面とイオン注入装置との間の領域に345μm前後の厚さのアルミホイル膜のアブソーバ層が設置されてもよい。その場合は、23MeVのエネルギーで加速されたヘリウムイオンを、アブソーバ層を介してシリコン基板12の表面に照射することによって、上記の例と同様に、シリコン基板12の表面から深さ5μm前後の領域に、点欠陥24を生成することができる。
次にステップS15に移行する。ステップS15では、シリコン基板12の表面側に形成されたP型層16と、裏面側に形成されたN型層14とのそれぞれに対して、アルミニウム,タングステン,銅などの金属が堆積されて、アノード電極22とカソード電極20とが形成される。金属をシリコン基板12に堆積する技術としては、一般的な半導体製造工程において用いられる蒸着法やスパッタリング法などが挙げられる。上記の例では、蒸着法によってシリコン基板12の両面にアルミニウムが堆積され、アノード電極22とカソード電極20とが形成される。
以上のステップを経て、図4に示した本実施の形態のPINダイオード10が形成される。
(第一の実施の形態における作用・効果について)
PINダイオード10のアノード電極22とカソード電極20との間に順方向バイアスが印加された状態から逆方向バイアスが印加された状態に切り替わるときに、少数キャリア蓄積効果によって逆回復時間が生じる。PINダイオード10においては、ヘリウムイオンの照射条件によってシリコン基板12に生成する点欠陥24の濃度を調整することによって、少数キャリアのライフタイムを調整することができ、逆回復時間を短縮することができる。
また、シリコン基板12に含まれる欠陥要因不純物(ここでは、炭素不純物あるいは酸素不純物)と点欠陥24とが結合して、室温で熱的に安定した複合欠陥が生成される。しかしながら、PINダイオード10において、点欠陥24が導入された領域は第二の欠陥要因不純物分布領域32であり、この領域に含まれる欠陥要因不純物の濃度は低い。したがって、PINダイオード10に生成される複合欠陥の濃度も低くなる。その結果、逆回復時間を短縮するためにPINダイオード10内に点欠陥24が高濃度で生成された場合でも、PINダイオード10に含まれる複合欠陥の濃度を低く抑えることができるので、複合欠陥が原因となって生じるダイナミックアバランシェ効果が抑制される。さらに、逆回復時のダイナミックアバランシェ効果が抑制されることによって、逆回復時間内に発生するダイナミックインパクトオシレーションも抑制される。
(第二の実施の形態の構成)
図6は、本発明における第二の実施の形態として、PINダイオード40の構造の断面図と、欠陥要因不純物の濃度分布46と、点欠陥の濃度分布26,44とを示したものである。
PINダイオード40は、第一の実施の形態におけるPINダイオード10と同様の構成を有するが、その構成に含まれる欠陥要因不純物の分布および点欠陥の分布が異なる。そこで、第一の実施の形態に係るPINダイオード10の構成と重複する部分については、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
PINダイオード40を構成するシリコン基板12に含まれる欠陥要因不純物の濃度の分布46は、均一の濃度で分布する第一の欠陥要因不純物分布領域48と、I型層18からP型層16にかけて欠陥要因不純物濃度が指数関数的に減少する第二の欠陥要因不純物分布領域50と、I型層18からN型層14にかけて欠陥要因不純物濃度が指数関数的に減少する第三の欠陥要因不純物分布領域52とからなる。ここで、シリコン基板12の表面及び裏面における欠陥要因不純物の濃度は、第一の欠陥要因不純物領域48において均一に含まれる欠陥要因不純物の濃度よりもそれぞれ1桁以上低い。例えば、第一の欠陥要因不純物分布領域48においては1015cm-3程度の欠陥要因不純物が均一に分布する。一方、第二の欠陥要因不純物分布領域50及び第三の欠陥要因不純物分布領域52においては、それぞれシリコン基板12の表面及び裏面から約10μmの深さから、シリコン基板12の表面及び裏面にかけて欠陥要因不純物が指数関数的に減少して分布する。シリコン基板12の表面及び裏面において含まれる欠陥要因不純物の濃度は1014cm-3以下である。
PINダイオード40は、P型層16とI型層18とが接する面の近傍の領域に点欠陥24を含み、N型層14とI型層18とが接する面の近傍の領域に点欠陥42を含む。具体的には、第二の欠陥要因不純物分布領域50に対して、点欠陥24が分布26に示すように分布する。ここで点欠陥24のピーク濃度は、シリコン基板12の第一の欠陥要因不純物分布領域48に均一に含まれる欠陥要因不純物の濃度と同じ程度か、もしくはそれ以上の濃度である。更に、第三の欠陥要因不純物分布領域52に対して、点欠陥42が分布44に示すように分布する。ここで点欠陥42のピーク濃度は、シリコン基板12の第一の欠陥要因不純物分布領域48に均一に含まれる欠陥要因不純物の濃度と同じ程度か、もしくはそれ以上の濃度である。
例えば、点欠陥24の分布26は、シリコン基板12の表面から約5μmの深さにピークを有し、6μmから10μm程度の半値幅をもって分布する。点欠陥24のピーク濃度は、1015cm-3から1016cm-3程度である。また、点欠陥42の分布44は、シリコン基板12の裏面から約5μmの深さにピークを有し、6μmから10μm程度の半値幅をもって分布する。点欠陥42のピーク濃度は1015cm-3から1016cm-3程度である。
(第二の実施の形態の製造方法)
図7に、PINダイオード40の製造工程を示す。PINダイオード40は、N型ドーパントを含むシリコン基板12から形成される。例えば、以下に示すステップS21では、1014cm-3程度の濃度でN型ドーパント(リン)が含まれるシリコン基板12が用いられる。
ステップS21では、シリコン基板12に対してN2雰囲気中で熱処理が行なわれる。熱処理によって、欠陥要因不純物はシリコン基板12の表面側あるいは裏面側から外方拡散され、シリコン基板12の表面及び裏面付近の欠陥要因不純物の濃度は低下する。その結果、シリコン基板12の表面及び裏面の各面から数μmの深さから、表面及び裏面にかけて欠陥要因不純物が指数関数的に減少して分布し、それ以外の領域では欠陥要因不純物が均一に分布する。
シリコン基板12において欠陥要因不純物が均一に分布した領域が第一の欠陥不純物分布領域48に相当し、シリコン基板12の表面近傍において欠陥要因不純物が低減した領域が第二の欠陥不純物分布領域50に相当し、シリコン基板の裏面近傍において欠陥要因不純物が低減した領域が第三の欠陥不純物分布領域52に相当する。ここでは、第一の欠陥要因不純物分布領域48において均一に分布した欠陥要因不純物の濃度に対して、第二の欠陥要因不純物分布領域50におけるシリコン基板12の表面の欠陥要因不純物の濃度と、第三の欠陥要因不純物分布領域52におけるシリコン基板12の裏面の欠陥要因不純物の濃度とはそれぞれ1桁以上低くなるように熱処理の条件を定める。
例えば、1015cm-3程度の濃度の欠陥要因不純物を含む厚さ150μmのシリコン基板12に対して、N2雰囲気中で1150℃,1時間以上の熱処理が行なった場合、シリコン基板12の表面及び裏面の各面から約10μmの深さのところから、それぞれ表面及び裏面にかけて欠陥要因不純物が指数関数的に減少する。上記の熱処理を経て、シリコン基板12の内部に均一に分布する欠陥要因不純物の濃度は略1015cm-3になり第一の欠陥要因不純物分布領域48が形成される。シリコン基板12の表面及び裏面における欠陥要因不純物の濃度はそれぞれ1014cm-3程度になり、第二の欠陥要因不純物分布領域50及び第三の欠陥要因不純物分布領域52がそれぞれ形成される。
次にステップS22に移行する。ステップS22では、シリコン基板12の表面及び裏面の近傍に、それぞれP型層16とN型層14とが形成される。このステップにおける具体的な処理については、本発明の第一の実施の形態において述べたステップS12と同様であるので、説明を省略する。
次にステップS23に移行する。ステップS23では、ヘリウムイオンを照射するためのイオン注入装置とシリコン基板12との間の領域に、アブソーバ層が設置される。例えば、シリコン基板12の裏面とイオン注入装置との間の領域には、205μm前後の厚さのアルミホイル膜がアブソーバ層として設置される。
次にステップS24に移行する。ステップS24では、イオン注入装置によってヘリウムイオンが所定の加速エネルギーで加速されて、アブソーバ層を介してシリコン基板12に照射される。その結果、照射されたヘリウムイオンの加速エネルギーと、アブソーバ層の材質および厚さとから決まるシリコン基板12内の所定の領域に、点欠陥24が生成される。また、ヘリウムイオンの所定の加速エネルギーは、点欠陥24が生成されるシリコン基板12内の所定の領域が、第二の欠陥要因不純物分布領域50になるように設定される。
尚、シリコン基板12にヘリウムイオンが照射される代わりに、プロトンが照射されてもよい。その場合は、シリコン基板12内の第二の欠陥要因不純物分布領域50に点欠陥24が生成されるように、照射されるプロトンの加速エネルギーが設定される。
例えば、本発明の第一の実施例と同様に、23MeVのエネルギーで加速されたヘリウムイオンが、約1012cm-2の照射量で、205μm前後の厚さのアルミホイル膜のアブソーバ層を介してシリコン基板12の裏面に照射される。その結果、点欠陥24は、分布26に示すように、シリコン基板12の表面から5μm前後の深さにピークを有し、6μmから10μm程度の半値幅で分布するように生成される。また、点欠陥24のピーク濃度は1015cm-3程度になる。ステップ21からステップ23までに挙げた例においては、シリコン基板12の表面から深さ10μmまでの領域は、欠陥要因不純物が低濃度で含まれた第二の欠陥要因不純物分布領域50である。したがって、シリコン基板12の表面から5μmの深さを中心に、6μmから10μm程度の半値幅で分布した点欠陥24は、第二の欠陥要因不純物分布領域50内に生成される。
次にステップS25に移行する。ステップS25では、シリコン基板12とイオン注入装置との間の領域には、ステップ23で設置されたアブソーバ層とは異なる厚さのアブソーバ層が設置される。このステップによって配置されたアブソーバ層の厚さと、次のステップで照射されるヘリウムイオンの加速エネルギーとから、点欠陥42がシリコン基板12内に生成される領域が定まる。上記の例では、シリコン基板12の裏面とイオン注入装置との間の領域には、345μm前後の厚さのアブソーバ層が設置される。
次にステップS26に移行する。ステップS26では、イオン注入装置によって再びヘリウムイオンが所定の加速エネルギーで加速されて、アブソーバ層を介してシリコン基板12に照射される。その結果、照射されたヘリウムイオンの加速エネルギーと、アブソーバ層の材質および厚さとから決まるシリコン基板12内の所定の領域に、点欠陥42が生成される。また、上記のヘリウムイオンの所定の加速エネルギーは、点欠陥42が生成されるシリコン基板12内の所定の領域が、第三の欠陥要因不純物分布領域52になるように設定される。
尚、照射されるヘリウムイオンの加速エネルギーは、必ずしもステップ24において照射されるヘリウムイオンの加速エネルギーと等しくなくてもよい。また、このステップにおいて照射されるヘリウムイオンの照射量は、ステップ24において照射されるヘリウムイオンの照射量と異なってもよい。
あるいは、シリコン基板12にヘリウムイオンが照射される代わりに、プロトンが照射されてもよい。その場合は、シリコン基板12内の第三の欠陥要因不純物分布領域52に点欠陥42が生成されるように、照射されるプロトンの加速エネルギーが設定される。
例えば、ステップS24と同様に、23MeVのエネルギーで加速されたヘリウムイオンが、約1012cm-2の照射量で、アブソーバ層を介してシリコン基板12の裏面に照射される。その結果、点欠陥42は、分布44に示すように、シリコン基板12の裏面から深さ5μm前後の領域内にピークを有し、6μmから10μm程度の半値幅で分布するように生成される。また、点欠陥42のピーク濃度は1015cm-3程度になる。ステップ21からステップ24で挙げた例においては、シリコン基板12の裏面から深さ10μmまでの領域は、欠陥要因不純物が低濃度で含まれた第三の欠陥要因不純物分布領域52である。したがって、シリコン基板12の裏面から5μmの深さを中心に、6μmから10μm程度の半値幅で分布した点欠陥42は、第三の欠陥要因不純物分布領域52内に生成される。
次にステップS27に移行する。ステップS27では、シリコン基板12の表面近傍の領域に形成されたP型層16と、裏面近傍の領域に形成されたN型層14とのそれぞれに対して、アノード電極22とカソード電極20とが形成される。このステップの具体的な処理については、本発明の第一の実施の形態において述べたステップS15と同様であるので、説明を省略する。
以上のステップを経て、図6に示した本実施の形態のPINダイオード40が形成される。
(第二の実施の形態における作用・効果について)
PINダイオード40においては、ヘリウムイオンの照射条件によってシリコン基板12に生成する点欠陥24,42の濃度を調整することによって、少数キャリアのライフタイムを調整することができ、逆回復時間を短縮することができる。特に、カソード電極20近傍にある第三の欠陥要因不純物分布領域52に生成された点欠陥42によって、本発明の第一の実施の形態におけるPINダイオード10に比べて、ライフタイムを制御できる幅(マージン)が拡大される点で効果が顕著である。
また、PINダイオード40において、点欠陥24,42が生成された領域はそれぞれ第二,第三の欠陥要因不純物分布領域であり、これらの領域に含まれる欠陥要因不純物の濃度は低い。したがって、PINダイオード40において生成される複合欠陥の濃度も低くなる。その結果、逆回復時間を短縮するためにPINダイオード40内に点欠陥24,42が高濃度で生成された場合でも、点欠陥24,42が生成された領域に含まれる複合欠陥の濃度を低く抑えることができるので、ダイナミックアバランシェ効果が抑制される。さらに、逆回復時間内に発生するダイナミックインパクトオシレーションも抑制される。
(第三の実施の形態の構成)
図8は、本発明における第三の実施の形態として、PINダイオード60の構造の断面図と、欠陥要因不純物の濃度分布68と、点欠陥の濃度分布26とを示したものである。
PINダイオード60は、第一の実施の形態におけるPINダイオード10と同様の構成を有するが、エピタキシャル層64を有する点でPINダイオード10の構成と異なる。そこで、第一の実施の形態に係るPINダイオード10の構成と重複する部分については、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
PINダイオード60は、シリコン基板62と、シリコン基板62の表面にエピタキシャル成長によって堆積されたシリコンエピタキシャル層(以下、エピタキシャル層という)64とからなるシリコン領域66をベースにして形成される。シリコン基板62は、リン,砒素,アンチモンなどのN型ドーパントを低濃度で含む。エピタキシャル層64は、リン,砒素,アンチモンなどのN型ドーパントをシリコン基板62と同程度の濃度で含む。例えばシリコン基板62に含まれるN型ドーパントの濃度は1014cm-3程度であり、エピタキシャル層64に含まれるN型ドーパントの濃度もまた1014cm-3程度である。また、エピタキシャル層64の層厚は約10μmかそれ以上である。
N型層14は、シリコン基板62の表面側の表層部に、リン,砒素,アンチモンなどのN型ドーパントが高濃度で添加されることによって形成される。P型層16は、シリコン基板62の裏面側の表層部に、ホウ素(ボロン)やインジウムなどのP型ドーパントが高濃度で添加されることによって形成される。例えば、N型層14,P型層16には、それぞれ1018cm-3以上1020cm-3の以下の濃度でN型ドーパント,P型ドーパントが含まれる。
PINダイオード60を構成するシリコン領域66には、欠陥要因不純物が含まれる。シリコン領域66に含まれる欠陥要因不純物の濃度の分布68は、シリコン基板62側で均一の濃度で分布する第一の欠陥要因不純物分布領域70と、エピタキシャル層64側で均一の濃度で分布する第二の欠陥要因不純物分布領域72とからなる。ここで、第一の欠陥要因不純物分布領域70においては、欠陥要因不純物が1015cm-3程度の濃度で均一に分布する。一方、第二の欠陥要因不純物分布領域72においては、欠陥要因不純物が1014cm-3以下の濃度で均一に分布する。第二の欠陥要因不純物分布領域72は、エピタキシャル層64の領域である。したがって、第二の欠陥要因不純物分布領域72の幅は約10μmかそれ以上である。
PINダイオード60は、P型層16とI型層18とが接する面の近傍の領域に、点欠陥24を含む。具体的には、第二の欠陥要因不純物分布領域72に対して、点欠陥24が分布26に示すように分布する。ここで点欠陥24のピーク濃度は、シリコン基板12の第一の欠陥要因不純物分布領域70に均一に含まれる欠陥要因不純物の濃度と同じ程度か、それ以上の濃度である。
例えば、点欠陥24の分布26は、シリコン基板12の表面から約5μmの深さにピークを有し、6μmから10μm程度の半値幅をもって分布する。また、点欠陥24のピーク濃度は1015cm-3から1016cm-3程度である。
(第三の実施の形態の製造方法)
図9に、PINダイオード60の製造工程を示す。PINダイオード60は、N型ドーパントを含むシリコン基板62をベースにして形成される。例えば、以下に示すステップS31では、1014cm-3程度の濃度でN型ドーパント(リン)が含まれるシリコン基板62が用いられる。
ステップS31では、気相エピタキシャル成長法あるいは分子線エピタキシャル成長法などによって、シリコン基板62の表面側がエピタキシャル成長されてエピタキシャル層64が形成される。エピタキシャル層64には、欠陥要因不純物が1014cm-3以下の濃度で均一に分布する。ここで、シリコン基板62に均一に含まれる欠陥要因不純物が分布する領域が第一の欠陥要因不純物分布領域70に相当し、エピタキシャル層64に均一に含まれる欠陥要因不純物が分布する領域が第二の欠陥要因不純物分布領域72に相当する。また、シリコン基板62とエピタキシャル層64とからなるシリコンの領域をシリコン領域66とする。
エピタキシャル層64の層厚は、シリコン領域66に対して所定の加速エネルギーでヘリウムイオンが照射されることによって生成される点欠陥24の分布の半値幅以上である。本発明の実施の形態においては、エピタキシャル層64の層厚は約10μmかそれ以上である。
例えば、1015cm-3程度の濃度で欠陥要因不純物を均一に含む厚さ140μmのシリコン基板62の表面に、気相エピタキシャル成長法によって約10μmの層厚でエピタキシャル層64が形成される。ここで、エピタキシャル層64には1014cm-3程度の欠陥要因不純物が均一に含まれる。ここで厚さ140μmのシリコン基板62の領域が第一の欠陥要因不純物分布領域70になり、層厚が約10μmのエピタキシャル層64の領域が第二の欠陥要因不純物分布領域72になる。
次にステップS32に移行する。ステップS32では、シリコン領域66の表面(エピタキシャル層64側)及び裏面(シリコン基板62側)の近傍に、それぞれP型層16とN型層14とが形成される。このステップにおける具体的な処理については、本発明の第一の実施の形態において述べたステップS12と同様であるので、説明を省略する。
次にステップS33に移行する。ステップS33では、ヘリウムイオンを照射するためのイオン注入装置と、シリコン領域66の表面あるいは裏面のいずれか一方との間の領域に、アブソーバ層が設置される。例えば、シリコン領域66の裏面とイオン注入装置との間の領域に、205μm前後の厚さのアルミホイル膜のアブソーバ層が設置される。
次にステップS34に移行する。ステップS34では、イオン注入装置によってヘリウムイオンが所定の加速エネルギーで加速されて、アブソーバ層を介してシリコン領域66に照射される。その結果、照射されたヘリウムイオンの加速エネルギーと、アブソーバ層の材質および厚さとから決まるシリコン領域66内の所定の領域に、点欠陥24が生成される。また、上記のヘリウムイオンの所定の加速エネルギーは、点欠陥24が生成されるシリコン領域66内の所定の領域が、第二の欠陥要因不純物分布領域72になるように設定される。
尚、シリコン領域66にヘリウムイオンが照射される代わりに、プロトンが照射されてもよい。その場合は、シリコン領域66内の第二の欠陥要因不純物分布領域72に点欠陥24が生成されるように、照射されるプロトンの加速エネルギーが設定される。
例えばこのステップでは、本発明の第一の実施例と同様に、23MeVのエネルギーで加速された約1012cm-2の照射量のヘリウムイオンが、205μm前後の厚さのアルミホイル膜のアブソーバ層を介してシリコン領域66の裏面に照射される。その結果、点欠陥24は、分布26に示すように、シリコン領域66の表面から5μm前後の深さにピークを有し、6μmから10μm程度の半値幅で分布するように生成される。また、点欠陥24のピーク濃度は1015cm-3程度になる。ステップ31からステップ33で挙げた例においては、シリコン領域66の裏面からの深さが約10μmまでの領域はエピタキシャル層64であり、欠陥要因不純物が低い濃度で含まれた第二の欠陥要因不純物分布領域72である。したがって、シリコン領域66の表面から5μmの深さを中心に、6μmから10μm程度の半値幅で分布した点欠陥24は、第二の欠陥要因不純物分布領域72内に生成される。
次にステップS35に移行する。ステップS35では、シリコン領域66の表面近傍の領域に形成されたP型層16と、裏面近傍の領域に形成されたN型層14とのそれぞれに対して、アノード電極22とカソード電極20とが形成される。このステップにおける具体的な処理については、本発明の第一の実施の形態において述べたステップS15と同様であるので、説明を省略する。
以上のステップを経て、図8に示した本実施の形態のPINダイオード60が形成される。
(第三の実施の形態における作用・効果)
第一,第二の実施の形態と同様に、PINダイオード60においても、ヘリウムイオンの照射条件によってシリコン領域66に生成する点欠陥24の濃度を調整することによって、少数キャリアのライフタイムを調整することができ、逆回復時間を短縮することができるという効果がある。
更に、PINダイオード60における第二の欠陥要因不純物分布領域72に含まれる欠陥要因不純物は、本発明の第一、第二の実施の形態における第二あるいは第三の欠陥要因不純物分布領域内の最少の欠陥要因不純物の濃度、すなわち、熱処理によって外方拡散された後のシリコン基板の表面及び裏面における欠陥要因不純物の濃度と同程度まで低減された濃度で均一に分布する。PINダイオード60においては、この領域に点欠陥24が生成されるので、本発明の第一,第二の実施の形態と比べてもPINダイオード60に生成される複合欠陥の濃度は低くなる。その結果、逆回復時間を短縮するためにPINダイオード60内に点欠陥24が高濃度で生成された場合でも、ダイナミックアバランシェ効果が抑制される点と、逆回復時間内に発生するダイナミックインパクトオシレーションも抑制される点とで効果が顕著である。
また、本発明の第一,第二の実施の形態に係るPINダイオード10,40においては、シリコン基板に含まれる欠陥要因不純物の濃度は、その製造に用いられるシリコン基板毎によってばらつく。例えばシリコン基板は、単結晶成長によって精製されたシリコンインゴットから切り出されたものである。しかしながら、同一のシリコンインゴットから切り出されたシリコン基板であっても、各シリコン基板がシリコンインゴットのどの部分から切り出されたかによって、各シリコン基板に含まれる欠陥要因不純物の濃度が異なる。一般に、その濃度はシリコン基板によって一桁程度異なることもある。PINダイオード10,40における第二あるいは第三の欠陥要因不純物分布領域は、シリコン基板に対して熱処理が行なわれて欠陥要因不純物が外方拡散されることによって形成された領域であるから、シリコン基板に含まれる欠陥要因不純物の濃度が1桁程度ばらつく場合には、第二あるいは第三の欠陥要因不純物分布領域における欠陥要因不純物の濃度も1桁程度ばらつく。その結果、本発明の第一、第二の実施の形態に係るPINダイオード10,40では、各シリコン基板から製造されたデバイス毎に、それぞれに含まれる複合欠陥の濃度が一桁程度ばらつく。
一方、PINダイオード60は、シリコン基板62とエピタキシャル層64とからなるシリコン領域66によって形成される。更に、エピタキシャル層64が第二の欠陥要因不純物分布領域72になり、この領域に点欠陥24が生成される。一般に、シリコン基板上にエピタキシャル成長されたエピタキシャル層においては、そこに含まれる欠陥要因不純物やドーパント不純物は製造時に殆どばらつかない。例えば、シリコンインゴットから切り出されるシリコン基板に含まれる欠陥要因不純物のばらつきに対して、エピタキシャル層に含まれる欠陥要因不純物のばらつきは10分の1以下である。その結果、本発明の実施の形態によれば、シリコン基板62に含まれる欠陥要因不純物の濃度のばらつきの影響を受けることなく、複合欠陥の濃度のばらつきを抑制してPINダイオード60を実現できる。
(本発明に係る構成を特定する方法)
本発明の第一から第三の実施の形態において示したPINダイオードに含まれる欠陥要因不純物の濃度の分布と点欠陥の濃度の分布とを解析することによって、本発明の構成が実現されたか否かを特定することができる。
例えば、二次イオン質量分析法(SIMS),放射化分析法などによって、PINダイオードに含まれる欠陥要因不純物の濃度プロファイルを評価することができる。また、陽電子消滅法(ポジトロンアニヒレーション)によって、PINダイオードに含まれる点欠陥の濃度プロファイルを評価することができる。これらの方法によって得られる欠陥要因不純物の濃度プロファイルと点欠陥の濃度プロファイルとを重ね合わせることによって、欠陥要因不純物が低濃度で分布した領域に対して点欠陥が生成されたか否かを特定することができる。
(その他の実施の形態)
尚、本発明においては、第一から第三の実施の形態に係るPINダイオードに限らず、PN接合を有する半導体デバイスであって、半導体デバイス内に点欠陥が生成されるものであれば、上記の実施の形態と同様にデバイスを構成することができる。そのような半導体デバイスとしては、例えばバイポーラトランジスタ,サイリスタ,あるいはIGBTなどが挙げられる。いずれの場合も、N型のシリコン基板をベースにして半導体デバイスを形成する際に、シリコン基板に対してN2雰囲気中で熱処理を行なって欠陥要因不純物を外方拡散させるか、あるいは、シリコン基板の表面にシリコンをエピタキシャル成長させて、欠陥要因不純物が低い濃度で含まれる領域を形成し、その領域に点欠陥を生成させることによって実現される。
上記の半導体デバイスにおいても、本発明の第一から第三の実施の形態と同様に、デバイス内に生成する点欠陥の濃度を調整することによって、キャリアのライフタイムを調整することができ、逆回復時間を短縮することができる。更に、点欠陥が分布する領域に生成される複合欠陥の濃度を低く抑えることができるので、複合欠陥が原因となって生じるダイナミックアバランシェ効果が抑制される。また、逆回復時間内に発生するダイナミックインパクトオシレーションも抑制される。
10,40,60,80,94 PINダイオード、12,62 シリコン基板、14,82 N型層、16,84 P型層、18,86 I型層、20,88 カソード電極、22,90 アノード電極、24,42,92 点欠陥、26,44 点欠陥の濃度分布、28,46,68 欠陥要因不純物の濃度分布、64 エピタキシャル層、66 シリコン領域。