JP5073288B2 - 表面処理アルミニウム材料の製造方法および表面処理アルミニウム材料の製造装置 - Google Patents
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本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高い密着性および耐食性が得られる無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料の製造方法および表面処理アルミニウム材料の製造装置を提供することを課題としている。
本発明において「無孔質陽極酸化皮膜」とは、空孔率が5%以下である陽極酸化皮膜のことを意味する。
本発明の表面処理アルミニウム材料の製造方法では、複数回の電解工程のうち少なくとも1回の電解工程が、前回の電解工程よりも電解電流密度を低くして行なう電流密度減少工程であるので、電流密度減少工程によって、前回までの電解工程よって得られた無孔質陽極酸化皮膜が補修され、空孔率を低下させるとともに、皮膜の密着性および耐食性を向上させることができる。よって、本発明によれば、高い密着性および耐食性の得られる無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料が得られる。
また、2回目以降の電解工程は、前回の電解工程終了後0.3秒以上電解を中断する中断工程を行なってから行なうことで、電解工程によって生じたバリヤー性の弱い部分での熱を放散させることができ、熱に起因する欠陥の増加や異物の発生を抑制することができる。よって、より一層耐久性に優れた無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料が得られる。
本発明において、電流密度を変化させる工程は、直列に配置した電解槽を用いてアルミ条に連続的に行なってもよいし、単一槽のバッチ処理で変化させてもよい。
このような方法とすることで、電流が集中していた部分の皮膜の補修がより一層促進され、より一層密着性および耐食性に優れた無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料が得られる。
電解液としてアルカリ性のものを用いると、水酸基などの無孔質陽極酸化皮膜の表面に密着性を高める官能基が形成されやすい。しかし、アルカリ性の電解液は、無孔質陽極酸化皮膜の溶解性が大きいため、バリヤー性の弱い部分の溶解性を高めてしまう欠点がある。上記の表面処理アルミニウム材料の製造方法において、複数回の電解工程のうち少なくとも最後の1回の電解工程を、電解液としてpH8以上のアルカリ性電解液を用いる方法とすることで、バリヤー性の弱い部分の溶解性を高めるという欠点を抑制しつつ、密着性を高める官能基を形成でき、より一層密着性に優れた無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料が得られる。
空孔率が2%以下であると、空孔を介しての腐食性物質とアルミとの接触が困難となり、耐食性の高いものとなる。また、空孔率が2%以下であると、空孔中の不純物やガスが放出されることによる密着性の低下も生じにくくなる。よって、空孔率が2%以下であると、耐食性および密着性に非常に優れたものとなる。さらに、空孔率が1%以下であることが好ましい。
このような製造装置とすることで、電解工程を複数回行うことができ、複数回の電解工程のうち少なくとも1回の電解工程を前回の電解工程よりも電解電流密度を低くして行なうことができる。したがって、本発明の表面処理アルミニウム材料の製造装置によれば、高い密着性および耐食性の得られる無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料を製造できる。
加えて、このような製造装置とすることで、2回目以降の電解工程は、前回の電解工程終了後0.3秒以上電解を中断する中断工程を行なってから行なうことができるため、電解工程によって生じたバリヤー性の弱い部分での熱を放散させることができ、熱に起因する欠陥の増加や異物の発生を抑制することができる。よって、より一層耐久性に優れた無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料が得られる。
本発明において用いられるアルミニウム材料としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることができ、特に限定されない。具体的には、例えば、純アルミ系の1000系合金、Al−Cu系、Al−Cu−Mg系の2000系合金、Al−Mn系の3000系合金、Al−Si系の4000系合金、Al−Mg系の5000系合金、Al−Mg−Si系の6000系合金、Al−Zn−Mg−Cu系、Al−Zn−Mg系の7000系合金、Al−Fe−Mn系の8000系合金などが用いられ、成形用合金、構造用合金、電気用合金、AC1A,AC2A,AC3A,AC4Bなどの鋳造用合金などが用いられる。
本実施形態においては、電解工程は、4つの電解槽を備えた図1に示す表面処理アルミニウム材料の製造装置を用いて複数回行なわれる。図1において、符号1は電解槽、符号2は電解液、符号3は搬送ロール、符号4、5は巻き取りロール、符号6は板状のアルミニウム材料を示している。
図1に示す製造装置では、電解槽1は上流から下流まで直列に配置された第1電解槽1a、第2電解槽1b、第3電解槽1c、第4電解槽1dの4つの電解槽からなる。
より詳細には、図1に示すように、巻き取りロール4に巻きつけられたアルミニウム材料6は、搬送ロール3によって搬送されて第1電解槽1a内の電解液2中で電解され(1回目)た後、搬送ロール3によって搬送されて第1電解槽1a内から取り出され、0.3秒以上電解を中断する中断工程を行なう。そして、中間工程の終了したアルミニウム材料6は、搬送ロール3によって搬送されて第2電解槽1b内の電解液2中で電解される(2回目)。
よって、電解工程は、図1に示す第3電解槽1cおよび第4電解槽1dにおいて電解工程を行なわず、1回目と2回目の2回のみで電解工程を終了してもよいが、さらに1回または複数回の電解工程を行なうことが望ましい。本実施形態においては、2回目の電解工程終了後、必要に応じて上記と同様にして中間工程と、3回目の電解工程または、3回目の電解工程と中間工程と4回目の電解工程とが行なわれ、巻き取りロール5に巻き取られて、電解工程が終了する。
なお、本実施形態において、電流密度減少工程を行なう電解槽が、図1に示す表面処理アルミニウム材料の製造装置における電流密度減少槽である。
電解槽1内に収容される電解液2としては、無孔質陽極酸化皮膜を生成する電解質であるホウ酸、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩、フタル酸塩、ケイ酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩、クエン酸塩などの群から選ばれる1種または2種以上の電解質を溶解した水溶液などが用いられる。これらの電解質のなかでもホウ酸、アジピン酸塩、フタル酸塩が酸化皮膜の性状、コストなどの点で好ましい。また、電解液2としてアルカリ性のものを用いる場合、上記の電解質を水酸化ナトリウムでアルカリ性とした水溶液や、ケイ酸塩を溶解した水溶液などを用いることができる。
印加電圧は、直流電流では、電圧1Vに対して形成される酸化皮膜厚さが約1.4nmとなる関係があることから約5〜300V、好ましくは約20〜100Vの範囲とされる。電源装置などの点からは100V以下とすることが好ましく、このような低電圧での電解でも密着性と塗装後耐食性に優れた無孔質陽極酸化皮膜が得られる。
(電解電流密度)
本実施形態においては、複数回の電解工程のうち少なくとも1回の電解工程を、前回の電解工程よりも電解電流密度を低くして行なう(電流密度減少工程)。
具体的には、例えば、電解工程として1回目〜4回目の4回の電解工程を行なう場合、電解電流密度は以下に示すように増減させることができる。
1回目>2回目>3回目>4回目、1回目>2回目<3回目<4回目、1回目>2回目=3回目<4回目など。
1回目>2回目>3回目、1回目>2回目<3回目、1回目>2回目=3回目など。
また、例えば、電解工程として1回目と2回目の2回の電解工程を行なう場合、電解電流密度は以下に示すように増減させることができる。
1回目>2回目。
すなわち、電解工程として1回目〜4回目の4回の電解工程を行なう場合、電解電流密度は1回目>2回目>3回目>4回目や1回目>2回目>3回目<4回目、1回目>2回目<3回目>4回目などとなるように増加させるこことが望ましい。
また、例えば、電解工程として1回目〜3回目の3回の電解工程を行なう場合、電解電流密度は1回目>2回目>3回目となるように増加させることが望ましい。
電解液2のpHは、2〜12とすることができ、全ての電解工程のうち少なくとも最後の1回の電解工程に用いる電解液のpHを8以上、好ましくは9以上、より好ましくは10以上のアルカリ性電解液とすることが望ましい。
(密着性)
実施例1〜6および比較例1〜2の表面処理アルミニウム材料に、アクリル系樹脂を5μmの厚みで塗装し、260℃で20秒の焼付け処理を行ない、120℃の温水に5分間浸漬させた後、碁盤目試験を行なった。密着性は、100桝中に剥離のない場合を◎、剥離が5個以下である場合を○、剥離が5個を超える場合を×として評価した。
(耐食性)
実施例1〜6および比較例1〜2の表面処理アルミニウム材料に、アクリル系樹脂を5μmの厚みで塗装し、260℃で20秒の焼付け処理を行なった。次いで、JIS規格の塩水噴霧試験を90日間行って腐食状態を観察した。耐食性は、腐食がない場合を◎、腐食面積が3%以下である場合を○、腐食面積が3%を超える場合を×として評価した。
(空孔率)
表面処理アルミニウム材料の陽極酸化皮膜の任意の表面を20箇所、5万倍の倍率で透過電子顕微鏡を用いて観察し、孔の面積率を測定した。
また、表1に示すように、本発明の実施例の陽極酸化皮膜は、空孔率が0.3%以下の無孔質陽極酸化皮膜であった。
また、表1に示すように、複数回の電解工程のうち最後の1回の電解工程において、電解液としてpH8以上のアルカリ性電解液を用いた実施例4および実施例5では、非常に高い密着性が得られた。
また、電解工程が3回以上行なわれ、3回以上の電解工程のうち少なくとも2回の電解工程が、前回の電解工程よりも電解電流密度を低くして行なった実施例2、実施例3、実験例5では、非常に高い耐食性が得られた。
また、中断工程の時間以外の条件は同じである実施例2と実施例6とを比較すると、中断工程の時間が0.3秒以上である実施例2では、中断工程の時間が0.3未満である実施例6と比較して、耐食性に優れていることが確認できた。
Claims (5)
- アルミニウム材料を電解液中で電解する電解工程を行うことにより、前記アルミニウム材料の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成する表面処理アルミニウム材料の製造方法において、
前記電解工程は複数回行なわれ、前記複数回の電解工程のうち少なくとも1回の電解工程が、前回の電解工程よりも電解電流密度を低くして行なう電流密度減少工程であり、
前記電解工程のうち2回目以降の電解工程は、前回の電解工程終了後0.3秒以上電解を中断する中断工程を行なってから行なうことを特徴とする表面処理アルミニウム材料の製造方法。 - 前記電解工程は3回以上行なわれ、前記3回以上の電解工程のうち少なくとも2回の電解工程が、前記電流密度減少工程であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理アルミニウム材料の製造方法。
- 前記複数回の電解工程のうち少なくとも最後の1回の電解工程が、前記電解液としてpH8以上のアルカリ性電解液を用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面処理アルミニウム材料の製造方法。
- 前記無孔質陽極酸化皮膜の空孔率が、2%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面処理アルミニウム材料の製造方法。
- アルミニウム材料を電解液中で電解する電解工程を行うことにより、前記アルミニウム材料の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成する表面処理アルミニウム材料の製造装置であって、
上流から下流まで直列に配置された複数の電解槽を備え、
前記複数の電解槽のうち少なくとも1つの電解槽が、一つ前の電解槽よりも低い電解電流密度で電解工程を行なう電流密度減少槽であり、
上流から下流に沿って隣接する各前記電解槽間の距離が、上流の電解槽から下流の電解槽へ前記アルミニウム材料を搬送する間に前記アルミニウム材料の電解を0.3秒以上中断する距離とされたことを特徴とする表面処理アルミニウム材料の製造装置。
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