JP5149591B2 - 表面処理アルミニウム材料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、塗装を施すアルミニウム製品に好適に用いられる表面処理アルミニウム材料の製造方法に関するものである。
電気製品、器物、装飾品、建材などに塗装して使用するアルミニウム製品に用いられるアルミニウム材やアルミニウム合金材には、密着性や耐食性を高めるため、様々な下地処理が行われている。たとえば、このような下地処理として、特許文献1、特許文献2において開示されているように、アルミニウム材料の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成する方法などがある。
しかしながら、単にアルミニウム材料の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成しただけでは、塗装材料との密着性において不十分となる場合があった。前記密着性が不十分な場合には、厳しい環境で使用したときの耐食性も不十分となり、製品の信頼性が損なわれる場合があった。
特開平8−283990号公報 特開2003−147550号公報
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、密着性および耐食性に優れた無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料の製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、
本発明の表面処理アルミニウム材料の製造方法は、アルミニウム材料を電解液中で電解する電解処理工程を行うことにより、前記アルミニウム材料の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成する表面処理アルミニウム材料の製造方法において、前記電解処理工程は2回以上連続して行なうものであり、前記2回以上連続して行う電解処理工程は、電解液の液温を50℃超とする高温電解処理工程と、電解液の液温を50℃以下とする低温電解処理工程とを含み、前記高温電解処理工程と前記低温電解処理工程をこの順で連続して行うプロセスを少なくとも1回行うことを特徴とする。
また、前記2回以上連続して行う電解処理工程のうち、最初の電解処理工程を、高温電解処理工程とすることを特徴とする。
また、前記2回以上連続して行う電解処理工程のうち、最後の電解処理工程を、低温電解処理工程とすることを特徴とする。
本発明の表面処理アルミニウム材料の製造方法においては、前記電解処理工程のうち少なくとも1回の電解処理工程が、前記電解液としてpH9以上のアルカリ性電解液を用いることが好ましい。
上記の構成によれば、密着性および耐食性に優れた無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料を製造することができる。
以下、本発明の実施形態である表面処理アルミニウム材料の製造方法の一例について図1を用いて説明する。まず、製造装置について説明する。
(製造装置)
図1に示すように、本発明の実施形態である表面処理アルミニウム材料の製造装置は、巻き出し機4と、17個の搬送ロール3と、巻き取り機5と、電解液2で満たされた電解処理槽1と、給電ロール7と、直流電源E、E、E、Eと、不溶性の導電材料からなる陰極Cとから構成される。この製造装置の巻き出し機4に、ロール状のアルミニウム材料6がセットされ、引き出されたアルミニウム材料6が、連続的に、電解処理槽1で電解処理をされることにより、アルミニウム材料6の表面上に無孔質陽極酸化皮膜が形成され、最終的に表面処理アルミニウム材料が巻き取り機5で巻き取られる。
前記電解処理槽1は、前記製造装置の上流から下流へと直列に配置された4つの電解処理槽から構成されている。前記4つの電解処理槽は、それぞれ第1電解処理槽1a、第2電解処理槽1b、第3電解処理槽1c、第4電解処理槽1dと呼称し、示している。
前記4つの電解処理槽1a、1b、1c、1dは、互いに離間して配置されている。そのため、各電解処理槽1a、1b、1c、1dを離間した距離dが、中断工程ma、mb、mcに対応する中断時間tに相当するようになっている。
前記直流電源E、E、E、Eの陽極側は、給電ロール7に接続し、前記給電ロール7を介して、前記アルミニウム材料6が各電解処理槽1a、1b、1c、1d内で陽極となるように接続されている。
一方、前記直流電源E、E、E、Eの陰極側は各電解処理槽1a、1b、1c、1d中に配置された不溶性の導電材料からなる陰極Cに接続されている。
そのため、前記直流電源E、E、E、Eの電圧Vka、Vkb、Vkc、Vkdを調節することによって、前記電圧Vka、Vkb、Vkc、Vkdを前記アルミニウム材料6からなる陽極と前記不溶性の導電材料からなる陰極Cとの間に印加することができる。
前記アルミニウム材料6は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることができ、特に限定されない。具体的には、例えば、純アルミ系の1000系合金、Al−Cu系、Al−Cu−Mg系の2000系合金、Al−Mn系の3000系合金、Al−Si系の4000系合金、Al−Mg系の5000系合金、Al−Mg−Si系の6000系合金、Al−Zn−Mg−Cu系、Al−Zn−Mg系の7000系合金、Al−Fe−Mn系の8000系合金などが用いられ、成形用合金、構造用合金、電気用合金、AC1A,AC2A,AC3A,AC4Bなどの鋳造用合金などが用いられる。
また、アルミニウム材料としては、上記の合金に溶体化処理、時効処理などの種々の調質処理を施したものも用いることができる。さらに、これらのアルミニウム合金を表面にクラディングしたクラッド材も使用できる。また、予めプレス成形加工などを施した加工材であっても、未加工の板材、押出材、鋳造品であってもかまわない。本発明にあっては、これらの合金のなかでも、1000系合金、3000系合金、5000系合金が好ましい。
前記アルミニウム材料6に対しては、電解処理工程を行う前に前処理を行なうことが望ましい。前記前処理は、前記アルミニウム材料6の表面に付着した油脂分を除去する処理、あるいは前記アルミニウム材料6の表面に形成された不均質な酸化物皮膜を除去する処理などを指し、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、前記アルミニウム材料6に対して、弱アルカリ性の脱脂液による脱脂処理を施したのち、水酸化ナトリウム水溶液でアルカリエッチングをし、硝酸水溶液中でデスマット処理を行う方法や、前記脱脂処理後に酸洗浄を行う方法などを適宜選択して用いることができる。
(製造方法)
次に、本発明の実施形態である表面処理アルミニウム材料の製造方法について、図1を用いて説明する。
本実施形態の製造方法は、電解処理工程を2回以上連続して行うものであり、本実施形態では、電解処理工程を4回にわたって行う例について説明する。ただし、本発明は、これに限られるものではない。電解処理工程は、前記製造装置の4つの電解処理槽1a、1b、1c、1dにおいて、薄板、薄帯状、またはシート状のアルミニウム材料6を順次電解処理する工程である。
(電解処理工程)
前記電解処理工程は、アルミニウム材料6を電解液2中で電解処理することにより、アルミニウム材料6の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成する工程である。前記電解処理は、電解液2中で、アルミニウム材料6を陽極に接続し、不溶性の導電材料からなる陰極Cに接続し、電圧を印加し、直流電流を流すことにより行う。
前記無孔質陽極酸化皮膜は、先に述べた電解処理により、アルミニウム材料6の表面に形成されるアルミニウム酸化物からなる皮膜であって、前記皮膜表面に形成される孔の空孔率が5%以下であるものである。孔の空孔率が5%以下である皮膜では、孔の数が少ないか、もしくは孔径の大きさが小さいので、塗装材料との密着性を向上させることができる。
なお、前記空孔率とは、5万倍の倍率で透過電子顕微鏡を用いて陽極酸化皮膜の表面を観察したとき、観察できる孔の面積率のことである。
以下、各電解処理槽1a〜1dにおいて行われる処理をそれぞれ、第1電解処理工程ka、第2電解処理工程kb、第3電解処理工程kc、および第4電解処理工程kdという。
また、前記電解処理工程kには、中断工程mが挿入されていても良い。具体的には、第1〜第4の各電解処理工程ka、kb,kc、kd間において、アルミニウム材料6に対して電解処理を行わない中断工程ma、mb、mcを設ける。
また、ここで、各電解処理工程ka、kb,kc、kdにおける電解液2a、2b、2c、2dの液温はそれぞれTka、Tkb、Tkc、Tkdと設定されている。
本実施形態では、前半の電解処理工程の電解液2の液温を50℃超とし、その後の電解処理工程の電解液2の液温を50℃以下とすることが好ましい。
具体的には、電解液2の液温を50℃超で行う高温電解処理と、電解液2の液温を50℃以下で行う低温電解処理とをこの順で行うと良い。
たとえば、前記4つの電解処理工程ka、kb、kc、kdの電解液2a、2b、2c、2dの液温Tka、Tkb、Tkc、Tkdをそれぞれ60℃、60℃、30℃、30℃と設定することが好ましい。
前半の電解処理とは、たとえば、4つの電解処理槽のうち、第1電解処理槽を前半の電解処理槽としても良く、第1および第2の電解処理槽を前半の電解処理槽としてもよく、第1〜第3の電解処理槽を前半の電解処理槽としても良い。
前記高温電解処理工程の電解液2の液温は、50℃超80℃未満の高温とすることが好ましく、60℃以上80℃未満がより好ましい。液温が80℃未満の場合には、前記電解液2が沸騰し、電解処理のための電解液2として使用できなくなるためである。
また、前記低温電解処理工程の電解液2の液温は、20℃以上50℃以下の低温とすることが好ましく、20℃以上30℃以下がより好ましい。液温が20℃未満の場合には、電解液成分が析出する。
(第1電解処理工程ka)
具体的には、まず、巻き出し機4にアルミニウム材料6をセットし、引き出しを開始する。引き出されたアルミニウム材料6は、搬送ロール3によって搬送される。
搬送された前記アルミニウム材料6について、第1電解処理槽1aで1回目の電解処理工程kaがなされる。電解液2の液温は、Tkaに設定されている。その後、電解処理槽1aから引き上げられ、1回目の中断工程maがなされる。中断工程における中断時間tは、1.5秒とされており、以下各中断工程における中断時間tも1.5秒とされている。
前記中断工程maは、電解処理を中断する中断時間tが0.3秒以上である中断工程であるが、より好ましくは0.8秒以上である。前記中断工程maを行うことにより、電解処理工程によって形成した無孔質陽極酸化皮膜の表面状態を安定化させ、無孔質陽極酸化皮膜の表面を改質する効果を向上させることができる。たとえば、アルミニウム材料6の表面の局部的な発熱、または電解質アニオンの濃化を均一化することにより、表面状態を安定化し、次の電解処理槽での電解が均一に行われるようにすることができる。
前記中断時間tが0.3秒未満の場合には、電解処理工程によって形成した無孔質陽極酸化皮膜の表面状態が安定化することができず、欠陥部分を生じる場合がある。さらに、表面の一部に多孔質の酸化皮膜を形成する場合が発生する。
なお、前記中断時間tが30秒を超える場合は、中断の効果はそれほど向上せず、製造に要する時間が長くなるため、製造コスト、生産効率等の面から見て好ましくない。
(第2電解処理工程kb)
さらに、前記中断工程maがなされたアルミニウム材料6について、第2電解処理槽1bで2回目の電解処理工程kbがなされる。電解液2の液温は、Tkbに設定されている。その後、アルミニウム材料6は、電解処理槽1bから引き上げられ、2回目の中断工程mbがなされる。
(第3電解処理工程kc)
さらに、前記中断工程mbがなされたアルミニウム材料6について、第3電解処理槽1cで3回目の電解処理工程kcがなされる。電解液2の液温は、Tkcに設定されている。その後、アルミニウム材料6は、電解処理槽1cから引き上げられ、3回目の中断工程mcがなされる。
(第4電解処理工程kd)
最後に、前記中断工程mcがなされたアルミニウム材料6について、第4電解処理槽1dで4回目の電解処理工程kdがなされる。電解液2の液温は、Tkdに設定されている。その後、アルミニウム材料6は、電解処理槽1dから引き上げられ、搬送ロール3によって搬送された後、巻き取り機5で巻き取られ、表面処理アルミニウム材料として製造される。
以上の工程において、TkcをTkdより高くすれば良く、TkbをTkcより高くしても良く、TkaをTkbより高くしても良い。TkcをTkdより高くする場合、Tka〜Tkcは、それぞれ同じ温度でも異なる温度でもかまわない。同様に、TkbをTkcより高くする場合、Tka、Tkbは、同じ温度でも異なる温度でも良く、Tkc、kdも同じ温度でも異なる温度でも良い。TkaをTkbより高くする場合は、Tkb〜Tkdは、それぞれ同じ温度でも異なる温度でもかまわない。なお、最後の電解処理工程である第4電解処理工程の液温Tkdは、50℃以下とすることがより好ましい。
前記電流としては、電流密度0.2〜20A/dm程度の直流電流を用いる。
前記電圧は、約5〜300V、好ましくは約20〜100Vの範囲の電圧を用いる。直流電流を用いた場合、電圧1Vを印加して形成される無孔質陽極酸化皮膜の厚さが約1.4nmとなる比例関係があるため、適切な膜厚の無孔質陽極酸化皮膜を形成するためには、前記範囲の印加電圧を用いるのが好ましい。
なお、電源装置などの点からは、100V以下とすることが好ましく、本発明の実施形態である表面処理アルミニウム材料の製造方法においては、このような低電圧でも、密着性に優れた無孔質陽極酸化皮膜を形成することができる。
また、全ての電解処理工程の合計の電解時間は、数秒〜10分程度とするのが好ましい。
(電解液2)
前記電解液2に用いる電解質としては、無孔質陽極酸化皮膜を生成する電解質であるホウ酸、ホウ酸塩(例えば、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸ナトリウム等)、リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等)、アジピン酸塩(例えば、アジピン酸アンモニウム)、フタル酸塩(例えば、フタル酸水素カリウム)、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムマグネシウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム等)、安息香酸塩(例えば、安息香酸アンモニウム)、酒石酸塩(例えば、酒石酸アンモニウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム)、マロン酸塩(例えば、マロン酸エチル)、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム)などの群から選ばれる1種または2種以上の電解質を溶解した水溶液などを用いることができる。
前記電解質のなかでもリン酸塩、ケイ酸塩が、形成する無孔質陽極酸化皮膜の性状、リン酸アニオンやケイ酸アニオンが皮膜表面に結合して、密着性や耐食性を向上したり、製造コストなどの点で好ましい。
電解液2は、pH9以上とすることが好ましい。より好ましくはpH10以上、さらに好ましくはpH11以上のアルカリ性電解液を用いることが望ましい。
電解液2としてpH9以上のアルカリ性電解液を用いた場合には、無孔質陽極酸化皮膜の表面に局部的な溶解を生じさせることができ、また、無孔質陽極酸化皮膜の表面に水酸基あるいは電解質成分からなる反応基を形成することができる。先に述べた局部的な溶解や、表面に形成された反応基は、塗装材料との密着性を高めることができる。
なお、pH9以上とした電解液2を用いる電解処理工程は、少なくとも1回あればよく、残りの電解処理工程においては、pH2〜12の電解液2を用いることができる。少なくとも1回このようなアルカリ性電解液で処理を行うことにより、前記表面改質効果を引き起こすことができるためである。なお、すべての電解処理工程において、このようなアルカリ性電解液を用いてもかまわない。
また、pH13以上のアルカリ性電解液とすることは、無孔質陽極酸化皮膜の皮膜溶解を著しくし、塗装材料との密着性を悪化させるので好ましくない。
なお、前記電解液2は、前記電解質を溶解した水溶液に水酸化ナトリウムなどを添加することにより、アルカリ性の電解液に調整することができる。
さらに、前記電解液2中の電解質濃度は、2質量%から使用する電解質の飽和濃度の範囲内で選ぶことができる。
まず、電解液2の液温を50℃超の液温で電解処理する高温電解処理工程を行うことによって、無孔質陽極酸化皮膜の一部が形成されるとともに、Fe、Si、Tiなどを含む晶析出物が除去されると考えられる。前記晶析出物の部分は、無孔質陽極酸化皮膜を形成するのが困難であり、欠陥部となりやすい。また、周辺部にバリヤー性の弱い部分を形成し、塗装材料との密着性を悪化させるとともに、耐食性を劣化させる。前記高温電解処理工程を行うことによって、前記晶析出物を溶解し、取り除くことができるものと考えられる。しかしながら、前記高温電解処理工程では、表面が多孔質化する場合がある。
そのため、次に、電解液2の液温を50℃以下とする低温電解処理工程を行うことによって、無孔質陽極酸化皮膜の形成速度を抑えて成膜し、多孔質化した表面を無孔質化できるものと考えられる。そのことによって、アルミニウム材料6の表面を、塗装材料との密着性に優れた、均一で緻密な無孔質陽極酸化皮膜とすることが可能になる。
なお、電解液2の液温を50℃超とする高温電解処理工程から、電解液2の液温を50℃以下とする低温電解処理工程にするプロセスは、全電解処理工程kの中に少なくとも1つあれば良く、2つ以上あってもかまわない。
たとえば、Tka=60℃、Tkb=30℃、Tkc=60℃、Tkd=30℃のように電解液2の液温を設定し、2つの前記プロセスを有していてもかまわない。
なお、このようにして得られた表面処理アルミニウム材料について、さらに、前記製造方法を複数回行うことにより、表面状態をさらに改質した表面処理アルミニウム材料としても良い。
また、電解処理槽1の数に制限はない。
本発明の実施形態である表面処理アルミニウム材料の製造方法は、前半で高温電解処理工程を行い、その後、低温電解処理工程を行う構成なので、まず、アルミニウム材料6表面のFe、Si、Tiなどを含む晶析出物を、前半の高温電解処理工程によって溶解して、取り除き、次に、前記晶析出物は取り除かれたが、多孔質化した表面を、後半の低温電解処理工程によって無孔質表面へと修復することができる。
また、最終電解処理工程kdが低温電解処理工程とすることによって、最終的に得られる表面処理アルミニウムの表面を、より緻密で均一な無孔質陽極酸化皮膜とすることができ、塗装材料との密着性を高め、その耐食性を向上させることができる。
本発明の実施形態である表面処理アルミニウム材料の製造方法は、電解処理工程を2回以上行う構成なので、緻密で均一な無孔質陽極酸化皮膜を形成することができ、塗装材料との密着性を高め、その耐食性を向上させることができる。
本発明の実施形態である表面処理アルミニウム材料の製造方法は、中断工程を行ってから電解処理工程を行う構成なので、無孔質陽極酸化皮膜の表面を改質する効果を向上させることができる。たとえば、アルミニウム材料6の表面の局部的な発熱、または電解質アニオンの濃化を均一化することにより、表面状態を安定化し、次の電解処理槽での電解が均一に行われるようにすることができる。
本発明の実施形態である表面処理アルミニウム材料の製造方法は、電解液2としてpH9以上のアルカリ性電解液を用いる構成なので、無孔質陽極酸化皮膜の表面に局部的な溶解を生じさせるとともに、水酸基もしくは電解質成分からなる反応基を形成することにより、塗装材料との密着性を高め、その耐食性を向上させることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
アルミニウム材料として幅1000mm、厚み0.3mmのJIS1100アルミニウム合金条を用い、液温50℃とした5%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、10秒間エッチング処理を行い、水で10秒間洗浄したのち、室温の5%硝酸水溶液を用いて、10秒間中和処理を行い、再び、水で10秒間洗浄する前処理を行なった。
次いで、前記前処理を行ったアルミニウム合金条について、図1に示す製造装置を用いて2段階の電解処理を行い、無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料を得た。
前記2段階の電解処理においては、1回目の電解処理工程において、電解処理温度を75℃の高温処理工程とし、2回目の電解処理工程において、電解処理温度を50℃の低温処理工程とした。
前記電解処理の条件として、各槽の電流密度は3A/dm、上限電圧は100Vとした。また、中断工程における中断時間は、0.3秒とした。
なお、前記電解処理工程において用いた電解液は、2%リン酸ナトリウム水溶液と3%リン酸カリウム水溶液であり、水酸化ナトリウムを含有させることによって電解液をpH9に調整した。
このようにして得られた表面処理アルミニウム材料の無孔質陽極酸化皮膜の耐食性、密着性および空孔率を、以下のようにして調べた。
(密着性および耐食性)
幅25mm、長さ150mm、厚み1mmの表面処理アルミニウム材料に、アクリル系樹脂を5μmの膜厚で塗装し、260℃で20秒の焼付け処理を行った。このようなサンプルを2つ作成し、一つを密着性の評価に用い、もう一つを耐食性の評価に用いた。
前記サンプルの碁盤目試験を行うことにより、密着性評価試験を行った。剥離が3個であったので、○と評価した。
なお、100枡中、剥離が0個のサンプルを◎、剥離が5個以下のサンプルを○、剥離が5個超のサンプルを×とする評価基準を用いている。
前記サンプルについて、JIS規格の塩水噴霧試験を300日間行った後、サンプルの腐食状態を観察した。腐食面積が3%であったので、○と評価した。
なお、全く腐食が見られなかったサンプルを◎、腐食面積が5%以下であったサンプルを○、腐食面積が5%超であったサンプルを×とする評価基準を用いている。
(空孔率)
幅25mm、長さ150mm、厚み1mmの表面処理アルミニウム材料の無孔質陽極酸化皮膜の任意の表面を20箇所、5万倍の倍率で透過電子顕微鏡を用いて観察し、孔の面積率を測定した。空孔率は、0.9%であった。
(実施例2〜6)
実施例2〜6についても、実施例1と同様に実験を行った。
実施例1〜6の実験条件および実験結果を、表1に示す。表1には、実施例1の結果を併せて示す。尚、表1のNo.1〜6がそれぞれ、実施例1〜6に対応する。
Figure 0005149591
表1から分かるように、実施例1〜6(表1のNo.1〜6)において、密着性および耐食性は十分な結果を示した。
(比較例1、2)
比較例1、2については、低温電解処理をしなかった他は、実施例1と同様に実験を行った。
比較例1、2の実験条件および実験結果を、表2に示す。尚、表2のNo.1〜2がそれぞれ、比較例1〜2に対応する。
Figure 0005149591
表2から分かるように、低温電解処理をしなかった比較例1〜2(表2のNo.1〜2)については、密着性および耐食性において不十分な結果を示した。
なお、表1および表2の空孔率が、5%以下であることから分かるように、実施例1〜6(表1のNo.1〜6)および比較例1、2(表2のNo.1〜2)で製造した表面処理アルミニウム材料の表面に形成した陽極酸化皮膜はすべて無孔質である。
本発明は、塗装を施すアルミニウム製品に好適に用いられる表面処理アルミニウム材料の製造方法に関するものであり、各種アルミニウム製品への塗装、樹脂ラミネート、接着されるアルミニウム材料の下地処理を必要とする産業において利用可能性がある。
本発明の実施形態である表面処理アルミニウム材料の製造方法の一例を説明する図である。
符号の説明
1…電解処理槽、1a…第1電解処理槽、1b…第2電解処理槽、1c…第3電解処理槽、1d…第4電解処理槽、2…電解液、3…搬送ロール、4…巻き出し機、5…巻き取り機、6…アルミニウム材料、7…給電ロール、k…電解処理工程、ka…1回目の電解処理工程、kb…2回目の電解処理工程、kc…3回目の電解処理工程、kd…4回目の電解処理工程、m…中断工程、ma…1回目の中断工程、mb…2回目の中断工程、mc…3回目の中断工程、E、E、E、E…直流電源、C…不溶性の導電材料からなる陰極。

Claims (4)

  1. アルミニウム材料を電解液中で電解する電解処理工程を行うことにより、前記アルミニウム材料の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成する表面処理アルミニウム材料の製造方法において、
    前記電解処理工程は2回以上連続して行なうものであり、
    前記2回以上連続して行う電解処理工程は、電解液の液温を50℃超とする高温電解処理工程と、電解液の液温を50℃以下とする低温電解処理工程とを含み、
    前記高温電解処理工程と前記低温電解処理工程をこの順で連続して行うプロセスを少なくとも1回行うことを特徴とする表面処理アルミニウム材料の製造方法。
  2. 前記2回以上連続して行う電解処理工程のうち、最初の電解処理工程を、高温電解処理工程とすることを特徴とする請求項1に記載の表面処理アルミニウム材料の製造方法。
  3. 前記2回以上連続して行う電解処理工程のうち、最後の電解処理工程を、低温電解処理工程とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理アルミニウム材料の製造方法。
  4. 前記電解処理工程のうち少なくとも1回の電解処理工程が、前記電解液としてpH9以上のアルカリ性電解液を用いることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の表面処理アルミニウム材料の製造方法。
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