JP2010018890A - 耐食性に優れた表面処理アルミニウム材料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、高温に曝されることなく使用される、耐食性に優れた表面処理アルミニウム材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜が形成され、該無孔質陽極酸化皮膜の厚さが500〜8000Åであり、有孔度を30%以下であり、かつ、皮膜全体の含水率が15〜30%の無孔質陽極酸化皮膜とする。特定の条件下で陽極酸化処理をした後、熱水と接触させ高温で水和反応させて安定で耐食性の高いベーマイトを形成しておく。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜が形成され、該無孔質陽極酸化皮膜の厚さが500〜8000Åであり、有孔度を30%以下であり、かつ、皮膜全体の含水率が15〜30%の無孔質陽極酸化皮膜とする。特定の条件下で陽極酸化処理をした後、熱水と接触させ高温で水和反応させて安定で耐食性の高いベーマイトを形成しておく。
【選択図】なし
Description
本発明は、電気部品の筐体、熱交換器のフィン材等の、アルミニウム材料表面の一部に塗装や有機樹脂フィルムのラミネート処理を施し、高温で加熱しない比較的低い温度環境で使用される表面処理アルミニウム材料の耐食性を改善する技術に関するものである。
従来から、飲料缶をはじめとする各種容器や家具、内装建材用の化粧板には、アルミニウム材の表面にリン酸クロメートもしくはクロム酸クロメートの皮膜を形成し、そのリン酸クロメート皮膜もしくはクロム酸クロメート皮膜の表面に有機樹脂フィルムをラミネートした表面処理アルミニウム材料が採用されている。飲料缶に使用する表面処理アルミニウム材料は、缶に加工する際にラミネートした有機樹脂フィルムがアルミニウム表面から剥離しないよう強い接着性が要求される。また、内容物に対する耐食性も要求される。さらに化粧板等に使用される表面処理アルミニウム材料でも、長期間にわたる良好な耐食性が要求され、成形加工する際にラミネートした有機樹脂フィルムがアルミニウム表面から剥離しないよう強い接着性が要求される。
表面処理アルミニウム材料と有機樹脂フィルムとの密着性を向上させ、併せて耐食性を維持するための手段として、本出願人は先にアルミニウム材料の表面に形成する酸化皮膜を無孔質陽極酸化皮膜とする方法を提案した(特許文献1参照)。この方法はアルミニウム材料を特定の条件下で陽極酸化処理して、アルミニウム材料表面に厚さが50〜1500Åで、含水率が5%以下の無孔質陽極酸化皮膜を形成したものである。この無孔質陽極酸化皮膜は、従来の硫酸法等による陽極酸化皮膜とは異なり、表面に僅かの窪みを有するものの無孔質であり、含水率が5%以下と少ない。従って、この無孔質陽極酸化皮膜の表面に有機樹脂フィルムをラミネートする際には、陽極酸化皮膜と有機樹脂フィルムとの接触面積が大きくなり、密着性が向上する。また、有機樹脂フィルムをラミネートする際に、有機樹脂フィルムの融点である200℃以上の高温に加熱するが、無孔質陽極酸化皮膜の含水率が5%以下と少ないため、高温加熱時に水分の放出もなく、陽極酸化皮膜と有機樹脂フィルムとの密着性が向上する。
まず、この表面処理アルミニウム材料の製造方法を、飲料缶に使用される表面処理アルミニウム材料を例に挙げて説明する。表面処理アルミニウム材の製造に先立って、アルミニウム又はアルミニウム合金の素材に前処理を施す。この前処理は、素材の表面に付着した油脂分を除去し、表面の不均質な酸化被膜を除去するのが目的であり、アルカリ洗浄等の手段が用いられる。次いで、アルミニウム又はアルミニウム合金の素材を、硼酸、硼酸塩、アジピン酸、酒石酸、クエン酸塩、マロン酸塩もしくは過酸化水素の群から選ばれる少なくとも1種を添加した電解質水溶液を使用して、比較的低電圧、低電流密度で生成する無孔質陽極酸化皮膜が溶解しないように穏やかに陽極酸化処理を行って、無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料を得る。
さらに、無孔質陽極酸化皮膜の表面に、有機樹脂フィルムをラミネート加工する。有機樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンとポリエチレンに第二成分を添加して融点を下げた接着層を有する二層フィルム等が多用される。この有機樹脂フィルムを無孔質陽極酸化皮膜の表面に、その低融点の接着層を接着させて積層し、接着層の融点以上の190℃〜220℃の温度の加熱したローラーを通過させて、有機樹脂フィルムをラミネートし、表面処理アルミニウム材料を得る。無孔質陽極酸化皮膜は、表面が無孔質で有機樹脂フィルムとの接触面積が大きいので、アルミニウム材料への有機樹脂フィルムの密着性を高めることができる。このようにして得られた有機樹脂フィルムをラミネートしたアルミニウム材料は、アルミニウム材料を加工する際の加工油の塗布が不要となり、缶の製造コストが低減できる。また、内容物が直接アルミニウムに接触しないので、飲料へのアルミニウム臭の混入を防ぐことができる。さらに、万一有機樹脂フィルムにピンホール等の損傷が発生しても、無孔質陽極酸化皮膜のバリアー性が高いので、孔から侵入した飲料等がアルミニウムの生地を腐食させることはない。
しかしながら、この無孔質陽極酸化皮膜は表面の孔が少なくしかも浅いので、水分や塩素等の腐食性の物質が侵入し難く、耐食性は従来の硫酸法等による陽極酸化膜に比較して格段に優れているものの、湿度が高く腐食物質を含む使用環境においては満足のいく耐食性が得られておらず、一層の耐食性の向上が求められている。アルミニウム材料にあっては、電気部品の筐体やエアコンのフィン材等の、防食のために陽極酸化皮膜を施したままで、その後200℃以上の高温に加熱することなく、そのまま或いは簡単な塗装を施して使用される用途が多々存在する。このようなアルミニウム材料の使用条件下では、大気中の湿分や水中の塩素といった腐食物質による腐食に耐える耐食性が求められている。このような目的に添った耐食性を具備した表面処理アルミニウム材料で満足できるものは未だに得られていない。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、200℃以上の高温に加熱することのない使用条件下で、大気中の湿分や水中の塩素といった腐食物質による腐食に耐えることができる、耐食性に優れた表面処理アルミニウム材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明者は無孔質陽極酸化皮膜の性状を詳しく検討した。その結果、無孔質陽極酸化皮膜を熱水で処理することにより、耐食性が極めて向上することを見出して本発明に至った。従来の無孔質陽極酸化皮膜は含水率が5%以下と少なく、安定した水酸化物となっていないため、大気中の湿分や水中の塩素といった腐食物質に長時間曝されると腐食に至る結果を招いていた。これに対して本発明では、特定の条件下の陽極酸化処理によって得られる無孔質陽極酸化皮膜を熱水と接触させて水和反応を促進させ、無孔質陽極酸化皮膜表面に安定なγ−ベーマイト(γ−AlOOH)を形成し、耐食性を向上させることとした。従来の陽極酸化法においても陽極酸化皮膜を高温の水と反応させてベーマイト化して封孔する処理が知られているが(平成2年、軽金属協会発行、「アルミニウム ハンドブック」第4版、P.157参照)、本発明の無孔質陽極酸化皮膜は封孔処理されたものではなく、もともと無孔状態で形成された陽極酸化皮膜の表面をベーマイト化したものである。
本発明の表面処理アルミニウム材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜が形成され、該無孔質陽極酸化皮膜は厚さが500〜8000Åであり、有孔度が30%以下であり、かつ、前記無孔質陽極酸化皮膜の含水率が15〜30%である無孔質陽極酸化皮膜を具備した表面処理アルミニウム材料とした。適度な厚さを有する陽極酸化皮膜は、有孔度が30%以下と低くしかも適度な水分を含むことによって、耐食性に富んだγ−ベーマイトを形成しているので、200℃以下の比較的低温で使用する用途においては、優れた耐食性を発揮することができる。
本発明では、前記無孔質陽極酸化皮膜の厚さは1000〜7000Åとするのがより好ましい。充分な耐食性を付与するためである。なお、ここでいう無孔質陽極酸化皮膜の厚さとは、表面のγ−ベーマイト層を含んだ厚さである。また、前記無孔質陽極酸化皮膜の有孔度は20%以下とするのが好ましい。腐食性の成分が侵入する機会をより少なくして、耐食性を増進させるためである。本発明では、前記無孔質陽極酸化皮膜の含水率は8〜20%であることが好ましい。適量の水分を含有していれば水和反応が促進されて、耐食性に富んだγ−ベーマイトを形成しているからである。
また、本発明では前記無孔質陽極酸化皮膜中に硼素(B)、リン(P)、シリコン(Si)、炭素(C)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)又は硫黄(S)成分のうち少なくとも1種を20ppm以上、好ましくは50ppm以上含有させるのが良い。耐食性を増進させるγ−ベーマイトが生成する水和反応が促進されるからである。
本発明の耐食性に優れた表面処理アルミニウム材料の製造方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金を硼酸、硼酸塩、アジピン酸、酒石酸塩、クエン酸、マロン酸、珪酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩のうちから選ばれた少なくとも1種を溶解した電解質水液中で電解し、該アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成した後、熱水と接触させて該無孔質陽極酸化皮膜の有孔度を30%以下にして、かつ該無孔質陽極酸化皮膜中の含水量を15〜30%にする耐食性に優れた表面処理アルミニウム材料の製造方法である。特定の条件下で生成した無孔質陽極酸化皮膜を、熱水と接触させるという簡単な方法で、極めて耐食性に優れた表面処理アルミニウム材料を得ることができる利点を有する。
本発明の耐食性に優れた表面処理アルミニウム材料の製造方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金を硼酸、硼酸塩、アジピン酸、酒石酸塩、クエン酸、マロン酸、珪酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩のうちから選ばれた少なくとも1種を溶解した電解質水液中で電解し、該アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成した後、熱水と接触させて該無孔質陽極酸化皮膜の有孔度を30%以下にして、かつ該無孔質陽極酸化皮膜中の含水量を15〜30%にする耐食性に優れた表面処理アルミニウム材料の製造方法である。特定の条件下で生成した無孔質陽極酸化皮膜を、熱水と接触させるという簡単な方法で、極めて耐食性に優れた表面処理アルミニウム材料を得ることができる利点を有する。
本発明の耐食性に優れた表面処理アルミニウム材料の製造方法では、電解質水液中に硼素(B)、リン(P)、シリコン(Si)、炭素(C)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)又は硫黄(S)成分のうち少なくとも1種を添加した電解質水溶液を用いると良い。γ−ベーマイトを生成させる水和反応を促進させる効果を有するからである。
以上詳細に説明したように、本発明の無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜が形成され、該無孔質陽極酸化皮膜は厚さが500〜8000Å、有孔度が30%以下で、かつ、含水率が皮膜全体で15〜30%に保たれており、該無孔質陽極酸化皮膜は耐食性に優れたγ−ベーマイトとなっているため、優れた耐食性を備えている。従って、本発明の表面処理アルミニウム材料は、200℃以上の高温に加熱されることのない使用環境においては、優れた耐食性を発揮するので電気部品の筐体や熱交換器のフィン材として有用である。
また本発明の表面処理アルミニウム材料の製造方法によれば、適正な電解条件を選択することにより、容易に無孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料とすることができ、これをさらに沸騰水中で加熱するという簡単な処理で耐食性の優れた表面処理アルミニウム材料を提供することが可能となる。
以下に、本発明の表面処理アルミニウム材料について順を追って説明する。本発明に使用するアルミニウム素材としては、純アルミニウムの他に純アルミ系のJIS1000系合金、Al−Mn系のJIS3000系合金あるいはAl−Mg系のJIS5000系等が使用でき、材質については特に限定されるものではない。また、これらの合金に溶体化処理、時効処理等の種々の調質処理を施したものも使用される。これらの素材の各種圧延板が好んで使用される。また、これらのアルミニウム合金のクラッド材も使用できる。
アルミニウム素材に対して前処理が施される。前処理は、特に限定されたものではなく、素材表面の不均質な酸化膜を除去するためのものであって、例えば、弱アルカリ性の脱脂液による洗浄をした後、水酸化ナトリウム水溶液中でアルカリエッチングをして硝酸水溶液中でデスマット処理を行う方法や、脱脂洗浄後に酸洗浄を行う方法などが用いられる。
次に、この前処理が施されたアルミニウム素材を電解質水溶液中で電解して、アルミニウム素材の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成するための陽極酸化処理を行う。電解液としては、生成する無孔質酸化皮膜を溶解しにくく、かつ無孔質酸化皮膜を生成する電解質である硼酸、硼酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、珪酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩の群から選ばれる少なくとも1種を溶解した、皮膜溶解性の低い電解質水溶液を使用する。あるいはまた、過酸化水素(H2O2)を含む水溶液を電解液として用いても良い。これらの電解液の中でも特に硼酸、硼酸塩あるいはアジピン酸塩を含む電解液が好んで使用できる。電解質水溶液中の電解質濃度は、添加する塩の種類や電解条件によっても異なるが、おおむね2〜150g/l程度である。電解質濃度が2g/lより低いと皮膜ムラが生じやすく、150g/lを越えると溶解し難く沈殿を生じることがある。
また、電解浴温度は30℃以上、好ましくは40℃〜60℃、より好ましくは50℃〜60℃が良い。電解浴温度が30℃未満では電解質の溶解性が低く、液抵抗による電圧ロスが大きくなるからである。一方、電解浴温度が60℃を越えるほど高くなると、緻密な陽極酸化皮膜ができ難いほかに、加熱に費用がかかるからである。電解質水溶液の水素イオン濃度(pH)は、3〜8の範囲が好ましい。pHが3より低いと生成する陽極酸化皮膜が多孔質化する傾向にあり、一方、pHが8を越えると生成した皮膜が溶解したり、皮膜の生成率が低下して所望の厚さの陽極酸化皮膜が得難くなるからである。
電解条件は、印加電圧はおおむね3〜570Vで、電解質水溶液の種類、電流密度によって適宜選定する。電流密度は0.3〜10A/dm2程度である。陽極酸化処理時の電流密度が高くなると、電解面の温度も上昇して皮膜の有孔度が高くなる傾向にある。陽極酸化皮膜の厚さは陽極酸化処理時間によって調節し、膜厚が500〜8000Å、好ましくは1000〜7000Åとなるようにする。これらの範囲で電解条件を適宜選択して、陽極酸化皮膜中の有孔度が30%以下、好ましくは20%以下となるようにする。陽極酸化処理をするにあたっての留意点は、アルミニウム母材を削り取ること無く、穏やかに陽極酸化皮膜を形成させて、孔を極力生じさせないようにすることである。
次に、上記陽極酸化処理によって得られた無孔質陽極酸化皮膜を沸騰水中で煮沸処理し、無孔質陽極酸化皮膜を水和反応させて安定で耐食性に富んだγ−ベーマイト(γ−AlOOH)を形成させる。煮沸処理に使用する水は腐食性の不純物、特に塩素を含まないイオン交換水が適する。JISに規定されたイオン交換水は、電気伝導度が0.1μS(マイクロジーメンス)で、腐食性のイオンをほとんど含まないので耐食性を損なうことはない。表面に無孔質陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム材料を、80℃以上の沸騰したイオン交換水中に浸漬して水和反応をさせる。浸漬時間は材料の大きさや皮膜の厚さを考慮して、数秒から数分間でよい。
このような陽極酸化処理と水中煮沸処理によって得られた陽極酸化皮膜は、厚さの均一な無孔質陽極酸化皮膜である。無孔質陽極酸化皮膜の膜厚は500〜8000Åで、有孔度は30%以下、含水率は6〜30%である。膜厚が500Å以下では充分な耐食性は得られない。一方、膜厚が8000Åを越えると皮膜中に欠陥が生じやすくなり、皮膜が破壊されて耐久性が劣るようになる。従って、無孔質陽極酸化皮膜の膜厚適正範囲は500〜8000Å、好ましくは1000〜7000Åである。また、無孔質陽極酸化皮膜の有孔度は30%以下、より好ましくは20%以下とするのが良い。有孔度は30%を越えると孔に腐食性物質が侵入しやすくなり、そこを起点として腐食され易くなる。アルミニウム又はアルミニウム合金の表面にはシリコンや鉄などの微量不純物の金属間化合物が存在しており、これら不純物の上には陽極酸化皮膜が生成し難く、極微小な窪みが生じている。このような不純物が露出していない部分では、実質的に無孔の状態である。陽極酸化皮膜のこのような窪みも全て積算して孔の面積割合が30%以下となっていれば良い。30%以下には0%(ゼロ%)を含むものである。無孔質陽極酸化皮膜の有孔度は、表面を電子顕微鏡で2万倍に拡大して約50μm2の面積を任意の20箇所について観察し、合計の面積当たりの孔の面積を積算することによって測定できる。
また、無孔質陽極酸化皮膜の含水率は、6%〜30%である。含水率が6%未満では安定なγ−ベーマイト(γ−AlOOH)が充分生成しておらず、耐食性が向上しない。一方、無孔質陽極酸化皮膜の含水率が30%を越えるようでは孔が多数有って、良質の無孔質陽極酸化皮膜になっていないということであり、耐食性が得られない。従って、無孔質陽極酸化皮膜の含水率は6%〜30%、好ましくは8%〜20%である。無孔質陽極酸化皮膜中の含水量とは、表面に付着している水分ばかりでなく、孔の深部に侵入して結晶水となっている水分も含んだ皮膜全体の水分である。無孔質陽極酸化皮膜の含水率は、熱重量法により室温から500℃まで0.5℃/minの加熱速度で加熱した際の、120℃から500℃までの重量減少から測定できる。このようにして無孔質陽極酸化皮膜に安定なγ−ベーマイト(γ−AlOOH)を生成させておけば、200℃以上に加熱しない限りは安定で、良好な耐食性を維持している。使用中に200℃以上に加熱すると、γ−ベーマイトが脱水して耐食性が悪化するので、使用環境には留意すべきである。
さらに、本発明の無孔質陽極酸化皮膜は、シリコン(Si)、リン(P)、硼素(B)、炭素(C)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、硫黄(S)成分のうち少なくとも1種を合計で20ppm以上、好ましくは50ppm以上含有しているものとするのが良い。これらの元素はγ−AlOOH生成の水和反応を促進させる効果を有する。これらの成分を適量含んだ無孔質陽極酸化皮膜を得るには、前述の通りこれら成分を適量含む電解質水溶液を使用し、適正な電解条件を選択して陽極酸化処理を行う。
このようにして得られた無孔質陽極酸化皮膜を具備した表面処理アルミニウム材料は、湿潤な汚染雰囲気環境で長期間使用しても腐食されることのない耐食性を具備したものとなる。従って、電気部品の筐体やエアコンのフィン材等の、防食のために陽極酸化皮膜を施したままで、その後200℃以上の高温に加熱することなく、そのまま或いは簡単な塗装又はラミネートを施して使用される用途に広く利用可能である。
「作用」
本発明は、特定の条件下で陽極酸化処理をして得られる無孔質陽極酸化皮膜を熱水中で水和反応させ、安定なγ−ベーマイトを形成し、耐食性を持たせたものである。陽極酸化皮膜中に腐食物質が侵入する孔が少なく、しかも該無孔質陽極酸化皮膜が耐食性の高いγ−ベーマイト皮膜であれば、200℃以下程度の低温環境で使用されるアルミニウム材料において、十分な耐食性を有したものとなる。
本発明は、特定の条件下で陽極酸化処理をして得られる無孔質陽極酸化皮膜を熱水中で水和反応させ、安定なγ−ベーマイトを形成し、耐食性を持たせたものである。陽極酸化皮膜中に腐食物質が侵入する孔が少なく、しかも該無孔質陽極酸化皮膜が耐食性の高いγ−ベーマイト皮膜であれば、200℃以下程度の低温環境で使用されるアルミニウム材料において、十分な耐食性を有したものとなる。
以下試験例と比較例を用いて本発明をより具体的に説明する。アルミニウム合金素材として0.1mmまで圧延したAl−Mg系のJIS5052板材を準備した。この素材を2%の界面活性剤を含む50℃の脱脂液に60秒間浸漬させた後、30秒間水洗した。次いで、10%NaOH水溶液で50℃で30秒間エッチングした後、30秒間水洗した。さらに引き続き、10%HNO3 溶液で30秒間洗浄した後、30秒間水洗した。
次いで、表1に示す塩又は過酸化水素(H2O2)を含む水溶液を電解液として、上記アルミニウム合金を陽極にして電解処理を行った。電解液中の塩の濃度は2〜150g/l、電解浴温度は40〜60℃、電解電圧は3〜600V、電流密度は0.3〜10A/dm2の範囲で適宜調整した。このようにしてアルミニウム合金表面に表1に示す厚さの陽極酸化皮膜を形成した。次いで、陽極酸化皮膜を施したアルミニウム合金を、温度80℃から沸騰温度までのイオン交換水中で数秒から数分間煮沸処理して、陽極酸化皮膜中の含水率を調整した。
各試料の陽極酸化皮膜について皮膜厚さ、有孔度、含水率を測定し、次いで、SST試験と湿潤試験により耐食性の評価を行った。さらに陽極酸化皮膜中の微量成分を測定した。皮膜厚さは試片を切断し、電子顕微鏡観察により測定した。有孔度は、陽極酸化皮膜表面を2万倍の電子顕微鏡で約50μm2の面積を任意の20箇所について観察し、孔の面積を求めた。含水率は、所定の陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム材料を、熱重量法により室温から500℃まで0.5℃/minの速度で加熱した時の、120℃から500℃の間の結晶水の脱離による重量減少を測定し、陽極酸化皮膜を形成していないアルミニウム材料の減量を補正し、陽極酸化皮膜中の含水量に換算した。耐食性の評価はJIS Z−2371に規定する方法に準拠し、5%NaCl水溶液を35℃で720時間噴霧した後、外観に変化のない場合は○印、やや変色が認められる場合は△印、腐食が認められた場合は×印を付して評価した。また、湿潤試験は50℃で95%の相対湿度を有する環境に168時間暴露した後外観を観察して、外観に全く変化のない場合は◎印、一部に軽い変色が認められるが腐食は見られない場合は○印、全面に変色があるが腐食は認められない場合は△印、腐食が認められた場合は×印を付して評価した。微量成分の測定は、グロー放電質量分析法(GD−MASS分析)により皮膜をエッチングしながら元素分析して測定した。これらの測定結果を表1に併記する。
比較のため、従来の硫酸法による多孔質の陽極酸化皮膜の例(比較例No.1)、無孔質陽極酸化皮膜を厚く形成した例(比較例No.2)、陽極酸化処理により形成したままの陽極酸化皮膜中の水分が少ない例(比較例No.3)及び電解質として過酸化水素を使用した例(比較例No.4)について、試験例と同様の評価をした。各比較例の処理条件は次の通りである。比較例No.1は、20℃の15%硫酸中で、直流1.5A/dm2で100秒間処理。比較例No.2は、50℃の10%硼酸塩水溶液中で、直流2A/dm2で60秒間、600Vの電圧に達するまで処理。比較例No.3は、50℃の2%リン酸塩水溶液中で、直流2A/dm2で60秒間、210Vの電圧に達するまで処理。比較例No.4は、20℃の1%過酸化水素中で、直流1.6A/dm2で300秒間、50Vの電圧に達するまで処理。これらの結果も表1に併記する。
表1の結果から、比較例No.1は有孔度が高く腐食物質が入りやすく、耐食性が劣ることが判る。比較例No.2は皮膜厚さが厚すぎるため皮膜に亀裂が入り、耐食性が悪化したものである。比較例のNo.4は皮膜中の含水率が低くて耐食性のγ−ベーマイトが生成しておらず、耐食性が発揮されなかったものである。これに対して試験例1から試験例6はいずれも良好な耐食性を示している。
Claims (7)
- アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜が形成され、該無孔質陽極酸化皮膜は厚さが500〜8000Åであって、有孔度が30%以下で、かつ、前記無孔質陽極酸化皮膜の含水率が15〜30%であることを特徴とする表面処理アルミニウム材料。
- 前記無孔質陽極酸化皮膜の厚さが1000〜7000Åであることを特徴とする請求項1に記載の表面処理アルミニウム材料。
- 前記無孔質陽極酸化皮膜の有孔度が20%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面処理アルミニウム材料。
- 前記無孔質陽極酸化皮膜の含水率が8〜20%であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の表面処理アルミニウム材料。
- 前記無孔質陽極酸化皮膜は、硼素(B)、リン(P)、シリコン(Si)、炭素(C)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)又は硫黄(S)成分のうち少なくとも1種を20ppm以上含有していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の表面処理アルミニウム材料。
- 前記無孔質陽極酸化皮膜は、硼素(B)、リン(P)、シリコン(Si)、炭素(C)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)又は硫黄(S)成分のうち少なくとも1種を50ppm以上含有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の表面処理アルミニウム材料。
- アルミニウム又はアルミニウム合金を硼酸、硼酸塩、アジピン酸、酒石酸塩、クエン酸、マロン酸、珪酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩のうちから選ばれた少なくとも1種を溶解した電解質水溶液中で電解処理して、該アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成した後、熱水と接触させて該無孔質陽極酸化皮膜の有孔度が30%以下、かつ該無孔質陽極酸化皮膜中の含水量が15〜30%の無孔質陽極酸化皮膜を形成することを特徴とする耐食性に優れた表面処理アルミニウム材料の製造方法。
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