JP5071332B2 - インサート成形用加飾シート及び加飾樹脂成形品 - Google Patents
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Description
このインサート成形において、通常、成形用加飾シートに施される模様としては、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂をバインダー樹脂とし、グラビア印刷等により平面的絵柄として形成されており、絵柄の耐久性(耐摩耗性等)を出すため、基材シートの裏面側(樹脂成形物側)に絵柄は印刷される。したがって、インサート成形品の表面は平坦、且つ均一な光沢の外観となり、そのままでは成形品表面に凹凸の意匠感を得ることはできない。
さらに、特許文献3には、表面に微細凹凸を有する凹版の凹部に未硬化の電離放射線硬化性樹脂を充填し、その上から基体シートを圧着させた状態で電離放射線を照射することによる、基体シートの片面に厚さ2μm以上の硬化した微細凹凸層が形成された凹凸インサートシートが提案されている。
しかしながら、これらのシートを用いてインサート成形すると真空成形時又は射出成形時に、シート表面の凹凸模様に割れが発生するという問題があった。
すなわち、本発明は、透明基材フィルムの上に少なくとも着色層、樹脂層及びバッカーフィルムがこの順に積層されたインサート成形用加飾シートであって、着色層から透明基材フィルムに向かってエンボス加工が施され、かつ樹脂層の厚さが該エンボス深さに対して0.3〜2.5倍であることを特徴とするインサート成形用加飾シート、及び該インサート成形用加飾シートを用いた加飾樹脂成形品である。
本発明のインサート成形用加飾シート10(以下、単に「加飾シート10」と記載することがある)は、透明基材フィルム11の上に少なくとも着色層12、樹脂層14、及びバッカーフィルム15がこの順に積層されている。
本発明の加飾シートの特徴は、着色層12の表面から透明基材フィルム11に向かってエンボス加工が施され、凹部13が設けられている点である。そして、該エンボス加工により生じた凹部には、樹脂層14を構成する樹脂が入り込み、これを埋めている。
該樹脂層14の上にはバッカーフィルム15が配されるが、樹脂層14が接着性を有しており、直接バッカーフィルム15を貼付する態様であってもよいし、また接着剤層(図示せず)を介して、バッカーフィルム15を貼付してもよい。
以下、加飾シート10を構成する各層又はフィルムについて詳細に説明する。
また、基材フィルム11は透明性を有することが必要である。本発明の加飾シート10を用いた成形品は基材フィルム11側から観察されるためである。なお、ここでいう透明には内部の絵柄層12が視認される程度の半透明も含むものである。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂を単体で又は2種以上混合して用いる。なお、本発明において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
また、成形性ポリエステル樹脂としては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、非晶性ポリエステル等が使用できる。上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントに高結晶で高融点の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントにはガラス転移温度が−70℃以下の非晶性ポリエーテル等を使用したブロックポリマー等があり、該高結晶性で高融点の芳香族ポリエステルには、例えばポリブチレンテレフタレートが使用され、該非晶性ポリエーテルには、ポリテトラメチレングリコール等が使用される。また、前記非晶質ポリエステルとしては、代表的には、エチレングリコール−1,4−シクロヘキサンジメタノール−テレフタル酸共重合体がある。
なお、基材フィルム11の厚みは、コスト面、インサート成形品に対する要求性能、成形用加飾シートの成形適性等の観点から、通常30〜300μm程度(多層の場合は総厚)が好ましいが、特に限定されない。
また、基材フィルム11の表面、裏面、又は表裏両面には、基材フィルム11に接する他層との密着性向上のために、必要に応じ適宜、コロナ放電処理、プラズマ処理、ウレタン樹脂等によるプライマー層形成等の公知の易接着処理を施してもよい。
着色層形成用のインキは、バインダー等からなるビヒクル、顔料や染料等の着色剤、これに適宜加える各種添加剤からなるが、バインダーの樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等より選択される1種単独の樹脂、又は2種以上の混合樹脂が用いられる。
また、着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、クロムバーミリオン、カドミウムレッド、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、ペリレンレッド等の有機顔料(或いは染料も含む)、又はアルミニウム、真鍮、等の鱗片状箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等が使用される。
本発明では、高い意匠性を付与し得るとの観点から、特に着色層12がメタリック色のベタ印刷層の場合に好適である。
また、着色層12の厚さは、特に制限は無いが、通常0.5〜20μm程度である。
また、着色層12は金属顔料であるアルミニウム、インジウム、スズなどをスパッタリングなどの蒸着法によって設けることもできる。この場合の着色層12の厚さは10nm〜100nmの範囲であることが好ましい。
着色層12及び透明樹脂フィルム11にエンボス加工する方法としては、通常、加熱加圧によるエンボス加工法が用いられる。加熱加圧によるエンボス加工法は着色層12及び透明樹脂フィルム11の表面を加熱軟化させ、エンボス版で加圧してエンボス版の凹凸模様を賦形して、冷却し、固定化する方法であって、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機を用いることができる。
加熱加圧によるエンボス加工法では、着色層12が形成されている基材フィルム11上にエンボス加工を行う方法と、基材フィルム11に着色層12を塗工する工程で同時にエンボス加工を行う方法がある。
また、エンボス版の版深は、着色層12までで止まるようにすることもできるが、図1に示すように、樹脂フィルム11まで到達させることが意匠性の点からはより好ましい。
該凹部を埋めて凹凸を維持するためには、樹脂層を構成する樹脂の選定が重要であり、かつ樹脂層としてある程度以上の厚さが必要である。この点については後に詳述する。
これらのうち、特にバッカーフィルムとしてABS樹脂を用いる場合には、ABS樹脂と接着性の高い、(メタ)アクリル系樹脂又は塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂が好ましい。
また、Tダイ押出しなどの方法により、上記熱可塑性樹脂をエンボス加工が施された着色層12の上に押し出し、ラミネートする方法も可能である(以下「ラミネート法」と称する。)。押し出す樹脂としては、上記したものから、透明性や接着性を考慮して適宜選定すればよく、特にアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン、ウレタン系樹脂などが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、分子中にラジカル重合性不飽和結合、又はカチオン重合性官能基を有する、プレポリマー(所謂オリゴマーも包含する)及び/又はモノマーを適宜混合した電離放射線により硬化可能な組成物が好ましくは用いられる。これらプレポリマー又はモノマーは単体又は複数種を混合して用いる。
なお、上記電離放射線硬化性樹脂は、後に詳述するバッカーフィルムとの接着性を考慮すると、熱接着方法で接着するよりも、接着剤を用いたドライラミネートなどの方法を用いることが硬化性樹脂とバッカーフィルム層間の密着強度の観点から好ましい。このような接着剤を用いる方法において、電離放射線硬化性樹脂としては、ポリエステルアクリレートやウレタンアクリレートが、低臭気、低硬化収縮性や真空成形時の伸びの点で好ましい。
また、メタリック顔料、パール顔料、着色顔料、染料等を添加することもできる。
特に、樹脂層14を、前記した塗布法で設ける場合は、樹脂層14の厚さはエンボス深さに対して、0.3〜1.3倍であることが好ましく、ラミネート法で設ける場合は、0.25〜1.5倍であることが好ましい。また、ラミネート法においては、樹脂層14の厚さは20〜100μmの範囲が好ましい。20μm以上であると凹部13を埋めるのに好適であり、100μm以下であれば、積層する樹脂の熱によるエンボス戻りが発生することがなく、良好な立体意匠性を維持することができる。
なお、ここで樹脂層14の厚さとは、エンボス加工により生じる凹部を除いた部分での厚さをいう。
以上のように、樹脂層14の厚さはエンボス深さとの関係で決定されるものであるが、その他、バッカーフィルム15との十分な接着性が得られるとの観点から、1μm以上であることが好ましく、またバッカーフィルムとの間のエアがみを防止するとの観点から100μm以下であることが好ましい。
また、接着剤層は、上記樹脂等からなる接着剤を、グラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工法により形成する。また、接着剤層の厚さは特に制限は無いが、通常は1〜50μm程度である。
次いで、樹脂層14を形成すべく、樹脂組成物をロールコート等の公知の塗工手段により塗工する。該樹脂組成物の一部は凹部13に埋め込まれるが、埋め込みが不十分の場合には、ワイピング等の手法により、強制的に埋め込むこともできる。該樹脂層14の上に直接又は接着剤層を介して、バッカーフィルム15をドライラミネーションすることで、本発明の加飾シート10を製造することができる。
まず、固定枠に固定した加飾シート10が軟化する所定の温度になるまでヒーターで加熱し、加熱され軟化した加飾シート10に真空成形金型を押し付け、同時に真空成形金型から真空ポンプ等で空気を吸引し加飾シート10を真空成形金型にしっかりと密着させる。
加飾シート10が真空成形金型に密着した後、加飾シート10を冷却し、成形した加飾シート10から真空成形金型をはずし、固定枠から成形された加飾シート10をはずす。真空成形は通常140〜180℃程度で行われる。
評価方法
(1)立体意匠性
各実施例及び比較例で得られた加飾樹脂成形品を目視にて立体意匠性を評価した。評価基準は以下の通りである。
A:エンボス直後と同等な凹凸感であり、非常に優れた意匠性を有する。
B:エンボス直後より僅かに凹凸感は劣るが、良好な意匠性を有する。
C:凹凸が残っているがエンボス直後と比べ明らかに凹凸が少なく、意匠性に劣る。
D:ブリスター(発泡)が見られ、意匠性が劣悪である。
(2)密着性
JIS K5600−5−6(ISO 2409)(クロスカット法)に準拠して測定した。評価基準は以下の通りである。
A;剥離がない、又はカット交差点に微小な剥れが生じる程度
B;カットの縁に沿って剥れる、又は剥離面積が5%以上である
(1)加飾シートの作製
基材である厚さ125μmのハイグロス透明アクリルフィルムの片面に、アクリル樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂をバインダーとし、これに平均粒径11μmのアルミフレーク状顔料を分散させたインキをグラビア印刷し、更に黒色インキを用いてグラビ印刷して着色層を形成した。着色層の厚さは5μmとした。
次に、該着色層上にヘアライン状エンボス版を用いてエンボス加工を行った。エンボス深さは40μmとした。該エンボス加工面にアクリル樹脂を主成分とするインキ(アクリル樹脂;ポリメタクリル酸メチル、分子量約7万、Tg;約105℃)を、エンボス加工により生じる凹部を除いた部分が20μmの厚さとなるように塗布して樹脂層を形成し、エンボス加工により生じる凹部の少なくとも一部をアクリル樹脂で充填したエンボスフィルム20を得た。樹脂層の厚さはエンボス深さに対して0.5倍である。
次に図2に示すような装置を用いて、エンボスフィルム20にバッカーフィルム15を貼付した。具体的には、バッカーフィルム15としてABS樹脂フィルムを用い、該フィルムをヒーター17によって200℃に加熱するとともに、ヒータードラムを介してプレスロール18に導入した。一方、エンボスフィルム20を、冷却されているバックアップロール19を介してプレスロール18に導入し、バッカーフィルムとエンボスフィルム20のエンボス加工面とが接触するように貼付し、加飾シートを得た。
上記(1)で作製した加飾シートを真空成形機(布施真空社製「VPF−T1」)に配し、ヒーターにて表面温度が160℃になるまで加熱し、真空成形を行った。真空成形品を取り出し、トリミングした後、インサート成形を行った。射出樹脂としては、ポリカーボネート(以下「PC」と記載する。)とABS樹脂の混合物(商品名:サイコロイIP1000BK GEプラスチック製)を用いた。上記方法にて評価した結果を第1表に示す。
実施例1において、樹脂層の厚さを40μmとしたこと(樹脂層の厚さ/エンボス深さ=1)以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートを用いて加飾樹脂成形品を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
基材として厚さ75μmのハイグロス透明アクリルフィルムを用い、樹脂層を構成する樹脂組成物として、アクリル樹脂を主成分とするインキに代えて、紫外線硬化性樹脂(ウレタンアクリレート系UV硬化性樹脂、分子量;約8000、表中では「UV樹脂」と記載する。)を用い、かつ樹脂層の厚さを40μmとしたこと(樹脂層の厚さ/エンボス深さ=1)以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートを用いて加飾樹脂成形品を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
実施例1において、塗布法に代えて、Tダイ法(ラミネート法)を用い、樹脂層の厚さを100μmとしたこと(樹脂層の厚さ/エンボス深さ=2.5)以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートを用いて加飾樹脂成形品を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
実施例1において、樹脂層の厚さを第1表に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートを用いて加飾樹脂成形品を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
実施例4において、樹脂層の厚さを第1表に示すように変えたこと以外は実施例4と同様にして加飾シートを得た。該加飾シートを用いて加飾樹脂成形品を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
一方、比較例1で製造された加飾樹脂成形品は、真空成形時にエンボスの凹部にブリスターが発生した。また、比較例2で製造された加飾樹脂成形品は、ある低度の凹凸は維持されるが、エンボス直後に比較して明らかに凹凸が少なくなり、意匠性に劣ることがわかった。さらに、比較例3で製造された加飾樹脂成形品は、乾燥に多大な時間を要し、実施例及び他の比較例に比べて著しく生産性が低かった。また、実施例の加飾樹脂成形品に比較して密着性の点で劣り、かつエンボス戻りによって、エンボス直後に比較して明らかに凹凸が少なくなり、意匠性に劣っていた。
11 基材フィルム
12 着色層
13 凹部
14 樹脂層
15 バッカーフィルム
16 ヒータードラム
17 ヒーター
18 プレスロール
19 バックアップロール
20 エンボスフィルム
Claims (7)
- 透明基材フィルムの上に少なくとも着色層、樹脂層及びバッカーフィルムがこの順に積層されたインサート成形用加飾シートであって、着色層から透明基材フィルムに向かってエンボス加工が施され、かつ樹脂層の厚さが該エンボス深さに対して0.3〜2.5倍であることを特徴とするインサート成形用加飾シート。
- 前記樹脂層が前記エンボス加工により生じた凹部を埋めてなる請求項1に記載のインサート成形用加飾シート。
- 前記樹脂層が熱可塑性樹脂である請求項1又は2に記載のインサート成形用加飾シート。
- 前記樹脂層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化した硬化物で構成される請求項1又は2に記載のインサート成形用加飾シート。
- 前記電離放射線硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂である請求項4に記載のインサート成形用加飾シート。
- 前記着色層がメタリック色のベタ印刷層である請求項1〜5のいずれかに記載のインサート成形用加飾シート。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のインサート成形用加飾シートを用いた加飾樹脂成形品。
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