JP6503628B2 - 加飾シート及び加飾樹脂成形品 - Google Patents
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Description
項1. 少なくとも、第1樹脂層と、第2樹脂層とが積層された積層体からなる加飾シートであって、
前記積層体において、前記第1樹脂層は、部分的に積層されており、
前記第1樹脂層に含まれるバインダー樹脂が、アクリル系樹脂を80質量%以上含み、
前記第2樹脂層に含まれるバインダー樹脂が、塩素系樹脂を30質量%以上含む、加飾シート。
項2. 前記第1樹脂層及び第2樹脂層の少なくとも一方が、着色剤を含む、項1に記載の加飾シート。
項3. 前記第2樹脂層が複数積層されている、項1または2に記載の加飾シート。
項4. 前記第1樹脂層の厚みが、1.0μm以上である、項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
項5. 前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層が、基材層の上に積層されている、項1〜4のいずれかに記載の加飾シート。
項6. 最表面に表面保護層をさらに備える、項1〜5のいずれかに記載の加飾シート。
項7. 前記表面保護層の厚みが、30μm以下である、項6に記載の加飾シート。
項8. 転写用基材の上に、アクリル樹脂を80質量%以上含むバインダー樹脂を含む第1樹脂層を部分的に積層する工程と、塩素系樹脂を30質量%以上含むバインダー樹脂を含む第2樹脂層を積層する工程とを行い、転写シートを作製する、転写シート作製工程と、
前記転写シートに積層された前記第1樹脂層及び第2樹脂層を基材層上に転写する転写工程と、
を備える、加飾シートの製造方法。
項9.前記転写工程の後、さらに表面保護層を積層する工程を備える、項8に記載の加飾シートの製造方法。
項10. 少なくとも、成形樹脂層の上に、第1樹脂層と、第2樹脂層とが積層された積層体からなる加飾樹脂成形品であって、
前記積層体において、前記第1樹脂層は、部分的に積層されており、
前記第1樹脂層に含まれるバインダー樹脂が、アクリル系樹脂を80質量%以上含み、
前記第2樹脂層に含まれるバインダー樹脂が、塩素系樹脂を30質量%以上含む、加飾樹脂成形品。
項11. 前記加飾樹脂成形品の表面に凹凸形状が形成されており、
前記表面の凹凸形状の凹部が、前記積層体の積層方向において前記第1樹脂層が位置する領域に対応する領域に形成されている、項10に記載の加飾樹脂成形品。
本発明の加飾シートは、少なくとも、第1樹脂層と、第2樹脂層とが積層された積層体からなる加飾シートであって、当該積層体において、第1樹脂層が部分的に積層されており、第1樹脂層に含まれるバインダー樹脂が、アクリル系樹脂を80質量%以上含み、第2樹脂層に含まれるバインダー樹脂が、塩素系樹脂を30質量%以上含むことを特徴とする。本発明の加飾シートは、このような構成を有することにより、加飾シートの表面や内部に機械的に凹凸形状を設けなくても、樹脂成形品に微細な凹凸形状による意匠を表出させることができる。なお、後述の通り、本発明の加飾シートは、絵柄層などを有していなくてもよく、例えば透明であってもよい。以下、本発明の加飾シートについて詳述する。
本発明の加飾シートは、少なくとも、第1樹脂層2と、第2樹脂層3とが積層された積層体からなる。本発明の加飾シートは、加飾シートの保形性を高めることなどを目的として、必要に応じて、基材層1を有していてもよい。また、後述の通り、第1樹脂層2及び第2樹脂層3とは異なるバインダー樹脂組成を有する第3樹脂層を有していてもよい。また、本発明の加飾シートは、加飾シートの表面を保護することなどを目的として、必要に応じて、最外層として表面保護層4を設けてもよい。また、表面保護層4と、これに隣接する層との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、表面保護層4の下にプライマー層5を設けてもよい。また、加飾シートと成形樹脂層8との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、接着層7を有していてもよい。
本発明の加飾シートにおいては、第1樹脂層2が、積層体の水平方向xにおいて部分的に積層されており、かつ、第1樹脂層2に含まれるバインダー樹脂が、アクリル系樹脂を80質量%以上含む。本発明においては、このような構成を有する第1樹脂層2と共に、後述する第2樹脂層3とが積層されていることにより、加飾シートの表面や内部に機械的に凹凸形状を設けなくても、樹脂成形品に微細な凹凸形状による意匠を表出させることが可能となっている。
本発明の加飾シートにおいては、上記の第1樹脂層2と共に、第2樹脂層3が積層されており、第2樹脂層3に含まれるバインダー樹脂は、塩素系樹脂を30質量%以上含む。本発明の加飾シートにおいては、バインダー樹脂がアクリル系樹脂を80質量%以上含む上記の第1樹脂層2と共に、バインダー樹脂が塩素系樹脂を30質量%以上含む第2樹脂層3を含むため、本発明の加飾シートを用いて得られる加飾樹脂成形品において、上記の凹凸形状が効果的に形成されている。これは、塩素系樹脂を多く含む層が形成されていることにより、加飾シートの成形時の熱と圧力によって表面がより突出しやすくなる一方、第1樹脂層2が形成されている領域4aにおいては、第2樹脂層3が積層されていても表面の平坦性が維持されるため、第1樹脂層2が位置している領域4aと位置していない領域4bとの間で凹凸差が大きくなり、凹凸形状がより効果的に形成されているものと考えられる。
本発明の加飾シートは、必要に応じて、上記の第1樹脂層2及び第2樹脂層3以外の第3樹脂層を備えていてもよい。すなわち、第1樹脂層2に含まれるバインダー樹脂において、アクリル系樹脂の含有量が80質量%未満であり、かつ、塩素系樹脂の含有量が30質量%未満である第3樹脂層が積層されていてもよい。第3樹脂層は、バインダー樹脂を構成する樹脂の組成が異なること以外は、上記の第2樹脂層3と同様とすることができる。
基材層1は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たすことを目的として、必要に応じて設けられる層である。基材層1は、樹脂シート(樹脂フィルム)により形成されている。基材層1に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や成形樹脂層との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある);アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂が三次元成形性の観点から好ましい。基材層1を形成する樹脂成分としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、基材層1は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
表面保護層4は、加飾シートの耐薬品性、耐傷付き性などを高めるために、加飾樹脂成形品の最表面に位置するようにして、必要に応じて設けられる層である。本発明において、表面保護層4を形成する樹脂としては、特に制限されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加飾樹脂成形品の表面に上記の微細な凹凸形状を効果的に形成し、さらに、耐傷付き性を高め、優れた表面特性を付与する観点からは、電離放射線硬化性樹脂が好ましいが、表面保護層4を形成する樹脂は、加飾シートの用途に応じて適宜選択することができる。また、表面保護層4は、樹脂フィルムにより形成してもよい。樹脂フィルムとしては、後述の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂により形成された樹脂フィルムが挙げられる。表面保護層4は、例えば電離放射線硬化性樹脂または樹脂フィルムの1層により形成されていてもよいし、これらの2層以上により形成されていてもよい。
表面保護層4の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面保護層4の形成において好適に使用される。
表面保護層4を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、表面保護層4に備えさせる所望の物性に応じて、上記の無機粒子及び有機粒子の他、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができ、例えばマット剤としてはシリカ粒子や水酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
表面保護層4の硬化後の厚みについては、特に制限されないが、上記の微細な凹凸形状を効果的に形成する観点からは、好ましくは30μm以下、より好ましくは5〜20μm程度、より好ましくは7〜15μm程度が挙げられる。さらに、このような範囲の厚みを満たすと、耐傷付き性、耐候性等の表面保護層としての十分な物性が得られると共に、表面保護層4を電離放射線硬化性樹脂を用いて形成する場合には電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。また、表面保護層4の硬化後の厚みが前記範囲を充足することによって、加飾シートの三次元成形性が一層向上するため自動車内装用途等の複雑な三次元形状に対して高い追従性を得ることができる。このように、本発明の加飾シートは表面保護層4の厚みを従来のものより厚くしても、十分に高い三次元成形性が得られることから、特に表面保護層4に高い膜厚を要求される部材、例えば車両外装部品等の加飾シートとしても有用である。
表面保護層4の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、表面保護層4の下に位置する第1樹脂層2、第2樹脂層3、プライマー層5などの層の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
プライマー層5は、表面保護層4とその下に位置する第1樹脂層2、第2樹脂層3などの層との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて含まれる層である。プライマー層5は、樹脂により形成することができる。
接着層7は、加飾シートと成形樹脂層8との密着性や接着性を向上させることなどを目的として、基材層1の裏面に必要に応じて設けられる層である。接着層7を形成する樹脂としては、加飾シートと成形樹脂層8との密着性や接着性を向上させることができるものであれば、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の加飾シートは、例えば次の工程を備える方法により製造することができる。
転写用基材の上に、アクリル樹脂を80質量%以上含むバインダー樹脂を含む第1樹脂層を部分的に積層する工程と、塩素系樹脂を30質量%以上含むバインダー樹脂を含む第2樹脂層を積層する工程とを行い、転写シートを作製する、転写シート作製工程
転写シートに積層された前記第1樹脂層及び第2樹脂層を基材層上に転写する転写工程
図3に示されるように、本発明の加飾シートの製造方法においては、まず、転写シート作製工程を行う。転写シート作製工程においては、転写用基材6の上に、第1樹脂層2を部分的に積層する工程と、第2樹脂層3を積層する工程とを行う。また、転写シート作製工程においては、必要に応じて、上記の第3樹脂層を積層する工程を行う。第1樹脂層2、第2樹脂層3、及び第3樹脂層の積層は、上述の通り、印刷などにより行うことができる。転写シート作製工程においては、所望の加飾シートの積層構造となるようにして、転写用基材6の上に第1樹脂層2、第2樹脂層3、必要に応じて第3樹脂層を積層する。また、プライマー層4を備える加飾シートを製造する場合、転写シート作製工程において、第1樹脂層2の形成に先立って転写用基材6の上にプライマー層4を形成してもよく、後述の転写工程後、表面保護層形成工程においてプライマー層4を形成してもよい。
本発明において、転写用基材6は、第1樹脂層2、第2樹脂層3、必要に応じて設けられる第3樹脂層を基材層1の上に積層するために用いられる。本発明で用いられる転写用基材6は、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが使用される。該熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
離型層は、転写用基材6と第1樹脂層2、第2樹脂層3、必要に応じて設けられる第3樹脂層との剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて、転写用基材6の第1樹脂層2、第2樹脂層3、必要に応じて設けられる第3樹脂層が積層される側の表面に設けられる。離型層は、全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であってもよいし、一部に設けられるものであってもよい。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
次に、図3に示されるように、転写工程を行う。転写工程においては、転写シートに積層された第1樹脂層2、第2樹脂層3、必要に応じて設けられる第3樹脂層を基材層上に転写する。すなわち、転写シートの転写用基材6とは反対側を、基材層1の表面上に積層する。このとき、基材層1の表面を溶融させて、転写シートの転写用基材6とは反対側を基材層1の表面上に積層することにより、転写シートを基材層1の上に熱融着させることができる。次に、得られた積層体の表面に位置する転写用基材6を剥離することにより、基材層1の上に第1樹脂層2、第2樹脂層3、必要に応じて設けられる第3樹脂層が転写された加飾シートが得られる。
本発明の加飾シートに表面保護層4を設ける場合、上記の転写工程の後、表面保護層4を積層する表面保護層形成工程を行ってもよい。表面保護層4の積層は、上記のようにして行うことができる。また、表面保護層4とその下に位置する層との密着性を高めることなどを目的として、表面保護層4を積層する前に、必要に応じて、プライマー層5を積層してもよい。表面保護層4は、プライマー層5同様、第1樹脂層2、第2樹脂層3を形成する前に転写用基材6に設けてもよい。
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに成形樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、成形樹脂層の上に、第1樹脂層と、第2樹脂層とが積層された積層体からなり、当該積層体において、第1樹脂層が部分的に積層されており、第1樹脂層に含まれるバインダー樹脂が、アクリル系樹脂を80質量%以上含み、第2樹脂層に含まれるバインダー樹脂が、塩素系樹脂を30質量%以上含むことを特徴とする。本発明の加飾樹脂成形品では、必要に応じて、加飾シートに上述の基材層1、第3樹脂層、表面保護層4、プライマー層5、接着層7などの少なくとも1層がさらに設けられていてもよい。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する一体化工程。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、加飾シートの表面が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する予備成形工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂を射出、充填して固化させることにより樹脂成形体を形成し、樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる一体化工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す取出工程。
<実施例1>
下記の手順により、加飾シートを作製した。
1.転写シート作製工程
転写用基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み25μm)の表面上に、アクリルウレタン樹脂からなるプライマー層を形成した。プライマー層の厚みは約1μmとした。次に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体50質量%及びアクリル樹脂50質量%の混合樹脂からなるバインダー樹脂を用いたインキ組成物を4回部分的に印刷して、第2樹脂層を4層形成した。各第2樹脂層の厚みは約1.0μmとした。次に、アクリル樹脂からなるバインダー樹脂を用いたインキ組成物を厚み約2μmとなるように部分的に印刷して、第1樹脂層を形成した。このとき、第1樹脂層を形成するインキ組成物は、パール顔料を含んでいる。次に、第1樹脂層の表面に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体50質量%及びアクリル樹脂50質量%の混合樹脂からなるバインダー樹脂を用いたインキ組成物を2回全面に印刷して、第2樹脂層を2層形成した。このとき、各第2樹脂層の厚みは約1.5μmとした。以上のようにして、転写用基材/部分的に形成された第2樹脂層(4層)/部分的に形成された第1樹脂層/全面に形成された第2樹脂層(2層)の順に積層された転写シートを作製した。
基材層としてのABSフィルム(厚み400μm)の一方側の面を約170℃に加熱して溶融させた。この溶融面に対して、上記で得られた転写シートを転写用基材とは反対側から積層して熱融着させ、その後、室温(25℃)まで冷却した。次に、得られた積層体から転写用基材を剥離して、基材の上に第1樹脂層及び第2樹脂層を転写した。
転写工程で得られた積層体の表面に位置する第2樹脂層の表面に、2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量10,000)約80質量部及び6官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量6,000)約20質量部を含む電子線硬化性樹脂を、硬化後の厚みが10μmとなるようにバーコートにより塗工し、未硬化の電子線硬化性樹脂からなる表面保護層を形成した。次に、未硬化の表面保護層に対して、加速電圧195kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂を硬化させて、表面保護層を形成した。以上の手順により加飾シートを得た。
転写シートの作製工程において、第1樹脂層を形成するインキ組成物のバインダー樹脂を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体50質量%及びアクリル樹脂50質量%の混合樹脂としたこと以外は、実施例1と同様にして、加飾シートを得た。
<比較例2>
転写シートの作製工程において、各第2樹脂層を形成するインキ組成物のバインダー樹脂をアクリル樹脂としたこと以外は、実施例1と同様にして、加飾シートを得た。
上記で得られた各加飾シートを、それぞれを真空成形機(布施真空社製「VPF−T1」)に配し、ヒーターにて表面温度が170℃になるまで加熱し、真空成形を行った。真空成形品を取り出し、トリミングした後、射出成形を行い、加飾樹脂成形品を得た。成形用樹脂としては、ポリカーボネートとABS樹脂の混合物(商品名:サイコロイIP1000BK GEプラスチック製)を用いた。
実施例1、比較例1、及び比較例2の各加飾樹脂成形品の表面についての、光学顕微鏡による観察像(倍率100倍)をそれぞれ、図5、6、7に示す。図5に示される像からも明らかなように、実施例1においては、第1樹脂層を設けた領域が平坦である一方、第1樹脂層を設けなかった領域が凹凸を形成しており、第1樹脂層を設けなかった領域が全体として第1樹脂層を設けた領域に対して凸部を形成していた。他方、図6に示されるように比較例1においては全面に凹凸が形成され、図7に示されるように比較例2においては全面が平坦であり、いずれにおいても表面全体が一様な形状となっていた。
各加飾樹脂成形品の表面について、手による触感の評価を行った。実施例1の加飾樹脂成形品では、第1樹脂層を設けた領域(パール柄)が、第1樹脂層を設けなかった領域(非パール柄)に対して凹んでいるような感触が得られた。また、第1樹脂層を設けた領域は滑らかに、第1樹脂層を設けなかった領域は荒れているように感じられた。以上の通り、実施例1の加飾樹脂成形品では、柄に同調した触感が得られており、意匠性に優れるものであった。他方、比較例1では全体が荒れているように、比較例2では全体が滑らかに感じられ、いずれにおいても柄に応じた触感は得られなかった。
実施例1の加飾樹脂成形品の表面における凸部及び凹部について、それぞれ十点平均粗さRzJISを測定したところ、凸部においては2.30μm、凹部においては1.03μmであり、平滑性の差が確認できた。なお、測定は表面粗さ測定機「ハンディサーフE−35A」(株式会社東京精密製)を使用し、JIS B 0601:2001に準拠して行った。
2…第1樹脂層
3…第2樹脂層
31…第2樹脂層
32…第2樹脂層
33…第2樹脂層
4…表面保護層
5…プライマー層
6…転写用基材
7…接着層
8…成形樹脂層
Claims (9)
- 少なくとも、第1樹脂層と、第2樹脂層とが積層された積層体からなる加飾シートであって、
前記積層体において、前記第1樹脂層は、部分的に積層されており、
前記積層体において、前記第2樹脂層は、複数積層されており、かつ、全面に設けられた層と、部分的に設けられた層とを備えており、
前記第1樹脂層に含まれるバインダー樹脂が、アクリル系樹脂を80質量%以上含み、
前記第2樹脂層に含まれるバインダー樹脂が、塩素系樹脂を30質量%以上含み、
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層が、基材層の上に積層されている、加飾シート。 - 前記第1樹脂層及び第2樹脂層の少なくとも一方が、着色剤を含む、請求項1に記載の加飾シート。
- 前記第1樹脂層の厚みが、1.0μm以上である、請求項1または2に記載の加飾シート。
- 最表面に表面保護層をさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記表面保護層の厚みが、30μm以下である、請求項4に記載の加飾シート。
- 転写用基材の上に、アクリル樹脂を80質量%以上含むバインダー樹脂を含む第1樹脂層を部分的に積層する工程と、塩素系樹脂を30質量%以上含むバインダー樹脂を含む第2樹脂層を積層する工程とを行い、転写シートを作製する、転写シート作製工程と、
前記転写シートに積層された前記第1樹脂層及び第2樹脂層を基材層上に転写する転写工程と、
を備え、
前記第2樹脂層を積層する工程において、前記第2樹脂層を複数積層し、
前記第2樹脂層として、全面に設けられた層と、部分的に設けられた層とを積層する、加飾シートの製造方法。 - 前記転写工程の後、さらに表面保護層を積層する工程を備える、請求項6に記載の加飾シートの製造方法。
- 少なくとも、成形樹脂層の上に、基材層が積層され、前記基材層の上に、第1樹脂層と、第2樹脂層とが積層された積層体からなる加飾樹脂成形品であって、
前記積層体において、前記第1樹脂層は、部分的に積層されており、
前記積層体において、前記第2樹脂層は、複数積層されており、かつ、全面に設けられた層と、部分的に設けられた層とを備えており、
前記第1樹脂層に含まれるバインダー樹脂が、アクリル系樹脂を80質量%以上含み、
前記第2樹脂層に含まれるバインダー樹脂が、塩素系樹脂を30質量%以上含む、加飾樹脂成形品。 - 前記加飾樹脂成形品の表面に凹凸形状が形成されており、
前記表面の凹凸形状の凹部が、前記積層体の積層方向において前記第1樹脂層が位置する領域に対応する領域に形成されている、請求項8に記載の加飾樹脂成形品。
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