JP5067987B2 - コンクリート養生用粘着テープ及び養生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリートを養生するのに用いられる粘着テープに係り、更に詳しくは、コンクリートの養生中に劣化せず、且つ、コンクリートを養生した後の撤去処理には好適な引裂強さを有し、取り扱いが容易なコンクリート養生用粘着テープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンクリートは現代に欠かせない社会の基盤材料といえるものであり、道路、駅、建物等、あらゆるところで日常的に目に付く付かないを問わずに、多くのコンクリートが用いられている。身近なところではフーチング基礎に用いられ住宅の土台となっている。鉄筋と合わせて構造材に用いられることが多く、その用途から、コンクリートの特性として、永続的に強度を保つことが求められるが、そのためにはコンクリート製の物品等を作製する際に、コンクリートに十分に高い品質を付与することが肝要である。
【0003】
コンクリートの品質を高め、特に構造材として所要の強度及び耐久性を与えるためには、コンクリート施工時に十分な養生を行うことが必要である。コンクリートの養生とは、コンクリートが十分に硬化し、所定の強度が付与されるように行うものであって、コンクリートに含まれるセメントの水和に適した温度を保ち、そのセメントの水和反応に必要な水分が不足しないように湿潤状態を保つことが望ましい。一般に、短くても一ヶ月以上、好ましくは三ヶ月以上の養生期間が必要とされ、好ましい条件下では期間が長いほど品質は向上する。
【0004】
コンクリートを養生せず、単に放置すれば、直射日光や風等によって表面が乾燥し十分なセメントの水和反応が行われず、又、夏日が続く夏季等の高温によってひび割れがすすみ、更には、凍結も起こり得る冬季等の低温によってセメントの水和反応が緩慢となり充分な強度発現に至らないといった問題が生じることがある。例えば、セメント協会コンクリートパンフレット第50号(1956年)によれば、コンクリートを養生せずに絶えず空中放置した場合には、絶えず湿潤養生した場合に比べて、コンクリートの圧縮強度が半分以下にしかならないことが報告されている。又、湿潤下においては、六ヶ月経過後も圧縮強度が向上していくことも確認されている。このように養生は、コンクリート施工工事において、大変重要な工程である。
【0005】
従来、コンクリート施工時の養生においては、例えば、コンクリート打設時に使用する型枠をそのまま長期にわたり外さないこと、あるいは、工事用ビニルシートで覆ったり定期的に散水したりして出来るだけ乾燥を防ぐこと、といった方法が採用されていた。
【0006】
しかしながら、型枠を使用してコンクリートを打設する場合には、作業工程の制約や納期の制限等から、極力型枠を早期に取り外す傾向にある。型枠を早期に取り外せば、コンクリートは直接外気に晒され、上記したように温度変化や乾燥等によって品質が低下する。
又、型枠を外した後に、養生工程として工事用ビニルシートで覆ったり定期的に散水したりすることは、作業工程が増えて煩雑であり、手間と労力が増えて効率が悪く、又、一般に、見かけ上コンクリートが固化した後なので認識及び知識の不足から作業が軽んじられ、乾燥が完全に防げなかったり散水が偏って行われて水和反応が均一に行われず、結果として充分な養生が施されずに、コンクリートの品質を低下させるという問題を抱えていた。
【0007】
このように、強度、耐久性等の品質を高くするために行うコンクリートの養生作業においては、長期にわたる型枠の保持が不要であり、極力省力化が可能であって、好ましくは短い納期にも対応可能なように工期短縮に役立つ養生方法が求められていた。
こういった事情に応じて、従来より種々の提案が成されてきている。
【0008】
特開平9−158472号公報によれば、シートを用いたコンクリートの養生方法が提案されている。この方法は、図3に示すように、断熱部材15と、それを挟むように両面に配置された一対の不透水性の接着フィルム17,18からなる養生シート14を、型枠10の内面に貼付してコンクリート体16を打設し、コンクリート体16が硬化した後に型枠10を除去してから後も、この養生シート14をコンクリート体16表面から剥がさず接着した状態で残置する方法である。このような養生方法によれば、型枠10を除去した後にも養生シート14がコンクリート体16表面にしっかりと残り、しかも、この養生シート14が、断熱性と不透水性を兼ね備えるものであるため、コンクリート体16は暑中下の日射や寒中期の低温等の温度変化から乾燥が防止され湿潤状態を維持出来、その結果、良好な品質がコンクリートに付与され得るとしている。
【0009】
しかしながら、この方法は、開示されているとおり、型枠と接着フィルムとの接着力が、接着フィルムとコンクリートとの接着力よりも弱いものを選択する必要があり、実際には、型枠と接着フィルムとの接着力を弱くすると、コンクリート打設時に養生シートがずれてしまって、効果的にコンクリート表面を保護し養生することが出来ないという問題を抱えていた。反対に、型枠と接着フィルムとの接着力を強くすると、型枠を外す際に接着フィルムも剥がれてしまい、コンクリートを覆えないという問題が生じた。
【0010】
又、特開平10−61184号公報によれば、同じくシートを用いたコンクリートの養生方法が提案されている。この方法は、図4に示すように、型枠を用いてコンクリート体16を打設し、コンクリート体16が硬化した後に型枠を除去してから後に、接着剤27と不透水性の合成樹脂フィルム25からなる養生シート24を、コンクリート体16表面に貼着する方法である。このような養生方法によれば、型枠を除去した後に、水分を通さない養生シート24がコンクリート体16表面を保護するので、コンクリート体16は湿潤状態を維持出来、その結果、良好な品質がコンクリートに付与され得るとしている。
【0011】
しかしながら、この方法は、開示されているとおり、合成樹脂フィルムとして、光分解性フィルム若しくはアルカリ劣化性フィルムから選択するとしているため、実際には、太陽光の当たり具合によって養生期間の管理が出来ず、又、コンクリートの部分によってフィルムの劣化時期にズレが生じ、場所によって養生が充分でなかったり、フィルムが残って美観の低下を招くといった問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
翻って考察するに、コンクリートの養生作業において、強度、耐久性等の品質を高くするために行う型枠の長期間保持は、作業現場事情及び納期の制限等から好ましいものではない。従って、上記の提案のように、型枠を外した後に養生工程としてコンクリート表面を何らかの方法で覆蓋する方法を採用することは望ましい方法であると考えられた。課題は、コンクリート表面を覆蓋するものとして、如何に、取り扱いが容易で、湿潤状態の維持というコンクリートの品質向上に果たすべき役割を所望の期間全う出来るものを適用するかということであった。
【0013】
本発明は、上記した従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンクリートの養生を行う際に、コンクリートの表面を容易に、確実に覆蓋することが可能で、且つ、養生に必要な期間中に劣化が生じず、更に、撤去も容易に実施し得るコンクリート養生用粘着テープを提供することにあり、これによって、コンクリート敷設時に、作業時間の短縮や作業負荷の軽減を図り、コンクリート表面を覆蓋しさえすれば、熟練者でなくとも、確実にコンクリートの品質を高められる等、特別な養生工を必要とせず、作業効率に優れたコンクリート養生作業を実現することにある。
【0014】
本発明者らは、従来のコンクリート表面覆蓋用シートの問題点を整理し、種々検討した結果、光によってもpH変動によっても劣化し難く、透水性のない、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムであって適度に薄いフィルムを使用して、フィルムの取扱性及び貼付時の作業性に優れ、且つ、コストを抑えていながら、取り外すときに仮に裂け目が生じても破れたり分離したりし難い大きな引裂強さを有するコンクリート養生用粘着テープ、及び、その粘着テープを用いた養生方法によって、上記の目的を達成出来ることを見出した。
【0015】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、コンクリートの養生時に用いられ、コンクリートの表面を覆蓋する粘着テープであって、少なくとも、基材層と、基材層の一の面に設けられた粘着剤層とからなり、基材層の、引裂強さTRと厚さtとの積で求められる最大荷重Fが、概ね5〜40Nであることを特徴とするコンクリート養生用粘着テープが提供される。その引裂強さTRは、MD方向の引裂強さ若しくはCD方向の引裂強さのうち何れか小さい方として規定されることが好ましい。
【0016】
又、本発明によれば、型枠にコンクリートを打設し、打設されたコンクリートが硬化した後に型枠を取り外し、硬化したコンクリートの表面に粘着テープを覆蓋した状態で所定期間残置するコンクリートの養生方法であって、粘着テープとして、少なくとも、基材層と、基材層の一の面に設けられた粘着剤層とからなり、基材層の、引裂強さTRと厚さtとの積で求められる最大荷重Fが、概ね5〜40Nである、コンクリート養生用粘着テープを用いることを特徴とするコンクリートの養生方法が提供される。その引裂強さTRは、MD方向の引裂強さ若しくはCD方向の引裂強さのうち何れか小さい方として規定されることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のコンクリート養生用粘着テープについて、実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
本発明は、コンクリートの表面を覆蓋するように貼着し、所定の期間保護してコンクリートを湿潤状態に保ち、コンクリートの品質を向上させるために用いられる従来より改善されたコンクリート養生用の粘着テープである。シート状であっても巻重体であってもよく、その形態は問わない。
【0018】
本発明においては、コンクリートとは異種材料が結合した混合材料を指し、所定の期間養生を必要とする混合材料であれば、コンクリートに含まれる個々の材料は問われるものではないが、本発明のコンクリート養生用粘着テープは、例えば、ポルトランドセメントや、シリカ等からなる混合セメント等のセメントと、砂、砂利等の骨材と、減水剤等の混和剤と、水からなる、よく知られた各種のコンクリートの養生時に、好適に用いることが出来る。
【0019】
本発明のコンクリート養生用粘着テープは、少なくとも基材層と粘着剤層とから形成されている。使用前には、粘着テープの粘着剤層の面には、剥離ライナーが備えられることが好ましい。その他、必要に応じて、プライマー処理や背面処理剤処理を施すことも好ましい。
【0020】
本発明においては、養生完了後にコンクリート表面に貼着した粘着テープを剥がす手段として、粘着テープ自身に光分解性やアルカリ劣化性を持たせて太陽光やコンクリートからしみ出すアルカリ成分により自然にシートが剥がれるようにするのではなく、人手あるいは機械によって除去するものとし、除去し易いように粘着テープの引裂強さを高めたところに特徴がある。一般に、粘着テープは、剥がそうとすると途中で裂けてしまって、何度も接着部分をめくり直さなければならないことがよくあるが、コンクリート養生用粘着テープにおいては、コンクリートと当たったり種々の機械工具に接して、裂け目が生じてしまい易いため、粘着テープの引裂強さが低ければ、その裂け目から破けたり分離してしまう。粘着テープの引裂強さを高めることによって、作業現場で裂け目が生じても、そこから破けたり分離してしまうことがなく、1ヶ所接着部分をめくり、それを引っ張れば途中で裂けることなく一度に剥がすことが出来、作業性が大幅に向上し、工期短縮に導ける。
【0021】
又、本発明のコンクリート養生用粘着テープは、屋外においても劣化し難い材料を用いているので、粘着テープによるコンクリート表面の覆蓋を取り外すまで、所望の期間、良好な湿潤状態を維持してコンクリート表面を保護するので、養生を全うし得る。本発明のコンクリート養生用粘着テープは、コンクリート表面の全面において、蒸発しようとする水分が殆ど阻止されるので、コンクリート表面の全領域で良好な湿潤状態が維持され、従って、良好な品質のコンクリートを得ることが可能である。
【0022】
本発明においては、粘着テープの引裂強さを、次のように規定している。即ち、基材層の、引裂強さTR(N/m)と厚さt(m)との積で求められる最大荷重F(N)が、概ね5〜40Nの範囲にあることが好ましい(単位は省略することがある)。これは、次式で示され、
5<TR×t=F<40
厚さt当たりの最大荷重Fが引裂強さTRであることを示している。
【0023】
基材層の最大荷重Fが5Nより小さいと、剥がす際に裂けやすく、粘着テープの除去に手間が掛かる等作業性が低下し、短納期工事に適さない。一方、粘着テープが裂けてしまうことを防ぐには、粘着テープを引き裂く最大荷重Fが大きい程よいが、通常の基材層として使用される樹脂等では引裂強さTRに限界があるので、厚さtを大きくし、即ち、基材層を厚くして最大荷重Fを大きくすることになるが、厚い粘着テープは取り扱いが難しくコスト高にもなり、非実用的であり好ましくない。
【0024】
基材層に用いられる、後述する樹脂等では引裂強さTRは、概ね400kN/m以下である。又、基材層の厚さtは、100μm以下であることが実用的である。従って、基材層の最大荷重Fは40N以下であることが好ましい。
【0025】
尚、引裂強さTRは、日本工業規格K7311に示される引裂試験により求められる値とし、厚さtとは、その引裂試験に供される直角形引裂試験片(図5)の切り欠き部分の厚さをいう。
【0026】
基材層に用いられる樹脂等をフィルム状あるいはシート状に加工されたものでは、引っ張る方向によって強度が異なることがある。本発明においては、コンクリートに養生用粘着テープ貼付し引き剥がす実作業を踏まえ、何れかの方向から引っ張っても基材層の最大荷重Fが5N以上であることが好ましい。即ち、引裂強さTRが、基材層のMD方向の引裂強さ若しくはCD方向の引裂強さのうち何れか小さい方であっても、基材層の、引裂強さTRと厚さtとの積で求められる最大荷重Fが、概ね5〜40Nの範囲にあることが好ましい。
【0027】
本発明においては、使用前に粘着剤層を保護する剥離ライナーを備えることが、保管や運搬、作業時の取り扱い性において好ましいが、その剥離ライナーの粘着剤層側の表面は、シリコン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、フッ素系剥離剤等の剥離剤処理されていると、粘着剤層と剥離ライナーとの剥離性が向上するため、より好ましい。
【0028】
尚、基材層と粘着剤層の接着性、接着耐久性を高めるために、エポキシ樹脂、カルボキシル基を有するビニル共重合体、アクリル共重合体等を、基材層と粘着剤層の間のプライマー層として、設けることも好ましい。
又、基材層の粘着剤層とは反対側には、フッ素系、長鎖アルキル系、シリコン系等の剥離処理剤を用いて背面処理を施すことも好ましい。
【0029】
以下、本発明のコンクリート養生用粘着テープに関し、図面に基づいて、更に詳細に説明する。
図1は、本発明のコンクリート養生用粘着テープの一実施例を示す断面図である。図1に示すように、コンクリート養生用粘着テープ5は、基材層1と、基材層1の一の面に設けられた粘着剤層2からなり、基材層1と粘着剤層2との間にはプライマー層3が設けられ、基材層1の粘着剤層2とは反対側には背面処理剤層4が備わる。通常、使用する前の状態では、粘着剤層2の基材層1とは反対側の面には剥離ライナーが設けられていることが多い(図示しない)。
【0030】
プライマー層3が設けられることによって、コンクリートの養生が完了した際に、コンクリート養生用粘着テープ5を取り除こうと引っ張ったときに、基材層1だけが剥がれ、粘着剤層2がコンクリート表面上に残ることを防止出来る。粘着剤層2がコンクリート表面上に残っては、基材層1の引裂強さが大きくても、作業性の向上が図られない。プライマー層3によって、しっかりと基材層1と粘着剤層2とが一体化されていることが肝要である。
【0031】
剥離ライナーの、粘着剤層2側の表面はシリコン系剥離剤による処理等の剥離剤処理が施され、粘着剤層と剥離ライナーとの剥離性を良好にしている。尚、剥離ライナーを、剥離性のよい材質で構成した場合には、剥離剤処理は施さなくてもよい。
【0032】
さて、図1に示すコンクリート養生用粘着テープ5の製造方法の一例を以下に示す。
先ず、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン樹脂、あるいはポリエステル樹脂からなる、所定の厚さで所望の引裂強さを有するフィルムを用意する。好ましくは、このフィルムの片面に、アクリル樹脂、ビニル共重合体、あるいは、ゴム系樹脂、ポリエステル樹脂等からなるプライマーを塗布し、乾燥させた後、プライマーの上に、アクリル系、ゴム系、シリコン系、あるいは、フッ素系の樹脂等からなる粘着剤を塗布する。フィルムの粘着剤塗布面とは反対側の面には、好ましくは、長鎖アルキル系剥離剤、シリコン系剥離剤、あるいは、フッ素系剥離剤からなる背面処理剤を塗布し、本発明のコンクリート養生用粘着テープ5を得る。
【0033】
次に、本発明のコンクリート養生用粘着テープを用いた場合のコンクリートの養生方法について説明する。図2は、養生方法の一例を説明する断面図であり、本発明のコンクリート養生用粘着テープ5を、垂直の壁面を有するコンクリート体6に適用した例を示している。
【0034】
型枠(図示しない)を設置して、型枠内にコンクリートを打設してコンクリート体6を形成する。コンクリート体6が固化し、強度が所定の値になったら、型枠を撤去し、開放された全面を覆うように、コンクリート養生用粘着テープ5を貼着する。図2は、コンクリート養生用粘着テープ5をコンクリート体6に貼着した後の状態を表している。コンクリート養生用粘着テープ5は、切らずに、なるべく大きな面積を一度に貼着することが好ましい。
【0035】
コンクリート養生用粘着テープ5の基材層によって、コンクリート体6表面から蒸発しようとする水分が阻止され、コンクリート体6は養生に適する良好な湿潤状態に保たれる。そして、コンクリート養生用粘着テープ5を表面に残置したまま、コンクリート体6を所定の期間、養生した後に、コンクリート養生用粘着テープ5をコンクリート体6から引き剥がせば、養生完了である。良好な湿潤状態に保たれたコンクリート体6には、所望の強度を付与出来、又、コンクリート養生用粘着テープ5は、引っ張る途中で裂け難いため、簡単に除去出来る。
【0036】
以下、本発明に係るコンクリート養生用粘着テープの構成材料について説明する。
上記のように、コンクリート養生用粘着テープは、少なくとも基材層と粘着剤層とから構成されている。
粘着剤層は、コンクリートと基材層とを接着させるものであり、基材層、コンクリートに接着性の良好なものであって、且つ、養生中のコンクリートから拡散するアルカリ成分により粘着性が失われなければ、その種類は特に限定されるものではない。通常、溶剤型アクリル系粘着剤、溶剤型天然ゴム系粘着剤、溶剤型ブロックコポリマー系粘着剤、エマルジョン型アクリル系粘着剤、ホットメルト型アクリル系粘着剤等を用いることが出来る。耐久性の面から、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。粘着剤層の厚さは限定されないが、一般的には10〜100μm程度である。
【0037】
基材層は、コンクリートから蒸発しようとする水分を阻止するために用いられ、従って、蒸発した水分を透過させることがなければ、その種類は特に限定されない。通常、ポリプロピレン、ポリエチレン等オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルクロライド等のプラスチックフィルム等を用いることが出来る。
【0038】
基材層の厚さは限定されないが、一般的には20〜150μm程度であり、強度が得られる上にコストがかからないので25〜100μm程度がより好ましい。
基材層の色も白、黒、乳白色、透明等、限定されるものではないが、濃色では太陽光が偏って集光されテープ下のコンクリート表面温度にバラツキが生じ養生が均一に行われないおそれがあり、透明では除去し忘れるおそれがあるので、白又は乳白色が好ましい。
【0039】
コンクリート養生用粘着テープの粘着剤層に設けられ、テープ使用時には外される剥離ライナーは、その材質については、一般的に粘着テープに用いられている剥離ライナー、剥離紙であればよい。剥離ライナーは、粘着剤の粘着特性を低下させずに、容易にロール状、シート状等に製造出来ることが必要であり、粘着剤に対して剥がれやすい基材から構成される。基材の種類としては、粘着剤の粘着特性を低下させずに、容易にロール状、シート状等に製造可能であれば、種類は特に限定されないが、通常、半ざらクラフト紙、上質紙、クレコート紙、和紙等の紙、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の繊維よりなる織布が用いられる。尚、粘着剤の種類により、剥離ライナーと粘着剤との剥離効果を有する場合(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等オレフィン樹脂)には、剥離剤は必要ないが、それ以外の場合には粘着剤層と接する面に剥離剤処理を施すことが好ましい。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
(実施例1)
基材層として厚さ80μmのポリオレフィンフィルム(3M社製FLJ−4002)を用意した。このフィルムの引裂強さを日本工業規格K7311に従い測定したところ、MD方向で164kN/m、CD方向で113kN/mであった。
【0041】
この基材層に、アクリル系プライマーを0.3μm塗布した後、更に、アクリル系粘着剤(東亜合成製TM−287が100重量部に対してナガセ化成製デナコールEX−421を2重量部添加したもの)を乾燥後の厚さが30μmになるように塗布した。そして、基材層の、プライマー及び粘着剤とは反対側の面には、長鎖アルキル系背面処理剤を0.2μm塗布し、コンクリート養生用粘着テープを得た。
【0042】
得られたコンクリート養生用粘着テープを用いて、固化し型枠を外されたコンクリート体に貼付して、コンクリート体の養生を行った。養生は三ヶ月行い、その後、コンクリート養生用粘着テープをコンクリート体から剥離したところ、剥離し易さは良好で、テープが裂けることなく、容易に除去することが出来た。表1に、使用したコンクリート養生用粘着テープの基材層の仕様及び引裂試験結果と、養生後のコンクリート養生用粘着テープの剥離し易さを記す。
【0043】
(実施例2〜5、比較例1〜3)
コンクリート養生用粘着テープの基材層に用いる材料を変更した以外は、実施例1と同じ条件でコンクリート体の養生を行い、養生後のコンクリート養生用粘着テープの剥離し易さを評価した。表1に、使用したコンクリート養生用粘着テープの基材層の仕様及び引裂試験結果と、養生後のコンクリート養生用粘着テープの剥離し易さを記す。
【0044】
表1において、基材層材料は、PEはポリエチレン、PPはポリプロピレン、PETはポリエチレンテフタレート、PP/PEはPPとPEとの混合比が重量比で60:40の混合樹脂、EVAはエチレン−酢酸ビニル共重合体を示す。又、剥離し易さは、○が良好、×は剥離途中で頻繁にテープが裂け全てのテープの除去が困難であったことを示す。
尚、各実施例及び各比較例において使用したコンクリート体を構成する材料は、セメントとしてポルトランドセメント、骨材として砂利及び砂、混和剤としてAE減水剤、水である。又、セメント、砂利、砂、混和剤、水の混合比は、それぞれ25:32:32:0.2:11である。各実施例及び各比較例ともに、養生後のコンクリート体の、圧縮強度は40N/mm2以上であり、コンクリート体として良好な品質が付与されていた。
【0045】
【表1】
【0046】
(引裂試験)
引裂試験は、日本工業規格K7311(1995)で規定された引裂試験方法に準拠して行った。以下に引裂試験方法を説明する。
試験片たる基材層は、打ち抜いて成形された図5に示す直角形引裂試験片とする。MD方向(フィルム原反の流れ方向)の引裂強さを測定する場合には、試験片の長尺方向をMD方向とし、CD方向(フィルム原反の幅方向)の引裂強さを測定する場合には、試験片の長尺方向をCD方向とする。
試験片の切り欠き部分の厚さt(m)を測定し、試験片を引張試験機に取り付け、引張速さ300±15mm/minで、試験片が断裂するまで引っ張り、断裂に至るまでの試験機の最大荷重F(N)を読みとり記録する。
試験は、3個の試験片について行い、平均値を試験結果とする。引裂強さTR(N/m)は、次式、
TR=F/t
で求められる。
【0047】
(考察)
表1からわかるように、本発明のコンクリート養生用粘着テープを用いた実施例1〜5においては、養生後のテープの剥離し易さは良好であったが、比較例1〜3のテープでは、養生後にテープを除去しようとするとテープは容易に裂け、剥離し易さは良好ではなかった。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のコンクリート養生用粘着テープによれば、コンクリートの表面に簡単に貼着出来、養生が終わり、そのコンクリート養生用粘着テープをコンクリートの表面から引き剥がす際にも、取り扱い及び作業が容易であって、且つ、養生中には粘着テープ自身が劣化せず水分の蒸発放散を生じさせることがない。従って、熟練者でなくとも、簡便に、充分な強度、耐久性が付与された高品質なコンクリートを得ることが出来るといった優れた効果を有する。
そのような高い信頼性を有するコンクリートによって形成された、道路、駅、建物等の公共建築、あるいは、個人住宅は、長期にわたり人々に安心と安全を提供し、地震時の二次災害も最小限に抑え得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のコンクリート養生用粘着テープの一実施例を示す断面図である。
【図2】 本発明のコンクリート養生用粘着テープを用いた養生方法の一例を説明する断面図である。
【図3】 従来の養生シートの一例を示す断面図である。
【図4】 従来の養生シートの他の一例を示す断面図である。
【図5】 引裂試験に用いられる試験片の形状を示す上面図である。
【符号の説明】
1…基材層、2…粘着剤層、3…プライマー層、4…背面処理剤層、5…コンクリート養生用粘着テープ、6,16…コンクリート体、10…型枠、12…支保工、14,24…養生シート、15…断熱部材、17,18…接着フィルム、25…合成樹脂フィルム、27…接着剤。
Claims (4)
- コンクリートの養生時に用いられ、コンクリートの表面を覆蓋する粘着テープであって、
少なくとも、透水性ではない基材層と、前記基材層の一の面の側に設けられた粘着剤層と、前記基材層と粘着剤層の間のプライマー層と、からなり、
前記粘着剤層が、前記コンクリートの表面と接して、前記コンクリートと前記基材層とを接着させるものであり、
前記基材層の、引裂強さTRと厚さtとの積で求められる最大荷重Fが、5乃至40Nであることを特徴とするコンクリート養生用粘着テープ。 - 前記引裂強さTRが、前記基材層のMD方向の引裂強さ若しくはCD方向の引裂強さのうち何れか小さい方である請求項1に記載のコンクリート養生用粘着テープ。
- 型枠にコンクリートを打設し、打設されたコンクリートが硬化した後に前記型枠を取り外し、硬化したコンクリートの表面に粘着テープを覆蓋した状態で所定期間残置するコンクリートの養生方法であって、
前記粘着テープとして、少なくとも、透水性ではない基材層と、前記基材層の一の面の側に設けられた粘着剤層と、前記基材層と粘着剤層の間のプライマー層と、からなり、その粘着剤層が、前記コンクリートの表面と接して、前記コンクリートと前記基材層とを接着させるものであり、前記基材層の、引裂強さTRと厚さtとの積で求められる最大荷重Fが、5乃至40Nである、コンクリート養生用粘着テープを用いることを特徴とするコンクリートの養生方法。 - 前記引裂強さTRが、前記基材層のMD方向の引裂強さ若しくはCD方向の引裂強さのうち何れか小さい方である請求項3に記載のコンクリートの養生方法。
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