以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェットヘッドの構造〕
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)の分解斜視図である。同図に示すように、本発明に係るインクジェットヘッド10は、ノズルプレート20と、流路形成基板30(振動板40)と、封止基板50と、を積層した構造を有している。なお、図1では、インクジェットヘッド10の構造の理解を容易にするために、流路形成基板30と振動板40とを別々に図示したが、振動板40には流路形成基板30の表面に形成された厚みが1μm〜2μmの二酸化シリコン膜(弾性膜)が適用される。
ノズルプレート20には、インクを吐出する複数のノズル22が一列に並ぶように形成されている。本例に示すインクジェットヘッド10では、ノズルプレート20にはステンレス鋼(SUS)が適用される。
流路形成基板30には、ノズル22に対応する位置にノズル22と連通する圧力室32が形成され、さらに、圧力室32へ供給されるインクを収容する共通液室34の一部となる開口部、及び共通液室34と圧力室32を連通させる供給口36などを含む流路構造が形成されている。
本例に示すインクジェットヘッドでは、流路形成基板30には厚さが100μm〜300μm程度のシリコン単結晶基板(シリコン基板)が適用される。流路形成基板30の厚みは圧力室32の配置密度によって適宜選択するとよく、例えば、ノズル密度が180dpiの場合には200μm程度が好ましく、ノズル密度が360dpiの場合には100μm程度が好ましい。
また、流路形成基板30となるシリコン基板には、加工過程において表面に厚さが1μm〜2μm程度の二酸化シリコン膜が成膜されるので、流路形成基板30のノズルプレート20と接合される面には、二酸化シリコン膜(絶縁膜)38が形成されている。また、図1には図示を省略するが、圧力室32や共通液室34、供給口36など流路構造のインクと接触する内壁面には、保護膜(図2に符号80で図示)が設けられている。
振動板40は、圧力室32の上面を構成するとともに、流路形成基板30の圧力室32となる開口部に対応する位置の圧力室32と反対側の面に圧電素子42が配設される。圧電素子42の振動板40側の面には下部電極(図1中不図示、図2に符号43で図示)が設けられ、振動板40と反対側の面には上部電極44が設けられる。上部電極44は個別電極(アドレス電極)として機能し、下部電極は共通電極(グランド電極)として機能している。なお、上部電極44を共通電極とし下部電極を個別電極とする態様も可能である。
さらに、振動板40の圧電素子配設面46には、上部電極44から引き出された引出電極48が配設され、振動板40の流路形成基板30の共通液室34の一部となる開口部に対応する位置には、該開口部と同一形状の溝45が形成されている。
振動板40の圧電素子配設面46に接合される封止基板50には、振動板40と接合される第1の面52の圧電素子42の配設位置に対応する位置に第1の凹部54が形成されている。第1の凹部54は、圧電素子42の変形領域となる空間を確保するとともに、圧電素子42の周囲の空間を密閉するために設けられている。
第1の凹部54の形態として、1つの第1の凹部54によって圧電素子42配設される全領域を一括して密閉してもよいし、複数の第1の凹部54によって圧電素子42が配設される領域を分割して密閉してもよい。
また、封止基板50の第1の面52と反対側の第2の面56には、第1の凹部54に対応する位置に第1の凹部54に対応する形状を有する第2の凹部58が形成されている。
封止基板50に設けられる第1の凹部54及び第2の凹部58は、略同一の平面形状を有し、かつ、それぞれが対応する位置に設けられている。すなわち、封止基板50は厚み方向(図1の上下方向)について略対称形状(断面形状が上下対称形状)となっており、このような略対称形状を適用することで封止基板50の反りが防止される。
さらに、図1に示すように、第2の凹部58には、圧電素子42に印加される駆動信号を生成する駆動IC60が実装される。
このように、駆動IC60の形状に対応する形状を有する第2の凹部58を設け、該第2の凹部58内に駆動IC60を実装することで、特に、高さ方向についてインクジェットヘッド10のサイズをより小さくすることが可能となる。
本例のインクジェットヘッド10には、長手方向となるノズルの配列方向の長さが10mm〜30mm程度、短手方向となるノズルの配列方向と直交方向の長さが0.7mm〜1.0mm程度、厚さが0.4mm〜0.7mm程度のサイズの駆動ICが適用される。なお、駆動IC60のサイズは回路設計(回路規模)によって変動する。
すなわち、本例に示すインクジェットヘッド10は、ノズルの配列方向が長手方向となる長方形の平面形状を有する駆動IC60が適用され、封止基板50の第2の面には駆動IC60の形状に対応した第2の凹部58が形成される。
上述したように、第2の凹部58に駆動IC60を実装すると、第2の凹部58のサイズを第1の凹部54のサイズよりも大きくしなければならないことがあり得る。このような場合を考慮すると、第2の凹部58のサイズは第1の凹部54のサイズの2倍以下とすることで、反り防止効果を確保することが可能である。
すなわち、第1の凹部54の第1の面における開口面積をS1、第2の凹部58の第2の面における開口面積をS2とすると、開口面積S1と開口面積をS2とは、次式(1)の関係を満たすように、第1の凹部54及び第2の凹部58が形成される。
(S1×0.5)<S2<(S1×2) …(1)
また、封止基板50の反り低減効果を得るための条件として、第1の凹部54の高さh1と第2の凹部58の高さh2と、の関係は、次式(2),(3)のいずれかを満たすとよい。
(h2×0.5)≦h1<(h2×2) …(2)
(h1×0.5)≦h2<(h1×2) …(3)
さらに、封止基板50の剛性確保と加工性の観点を考慮すると、封止基板50の厚みhは、次式(4),(5)を満たすとよい。
h>(h1×3) …(4)
h>(h2×3) …(5)
なお、複数の駆動IC60を用いる場合には、駆動IC60ごとに第2の凹部58を設けてもよいし、2つ以上の駆動IC60に対して1つの第2の凹部58を設けてもよい。
また、封止基板50には、流路形成基板30の共通液室34となる開口部及び振動板40の溝45に対応する位置に共通液室34の一部を構成する開口部55が形成されるとともに、引出電極48に対応する位置には駆動IC60と圧電素子42を電気的に接合する垂直配線(図1中不図示、図6のリード線70、図7の配線パターン72)が形成される貫通穴62が形成されている。
図2は、インクジェットヘッド10を構成する各プレートを接合した状態における立体構造を示す断面図である。なお、図2中、図1と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。また、図2では、紙面と垂直方向に複数のノズル22が並べられている。
図2に示すように、圧力室32の内壁面、供給口36の内壁面、共通液室34の内壁面には、耐インク性能を有する保護膜80が形成されるので、アルカリ性のインクを用いた場合にも、インクと接触する壁面がインクに溶出することが防止される。保護膜80には、酸化シリコンや酸化タンタルなどの酸化膜が好適に用いられる。
また、共通液室34の一部を構成する封止基板50の開口部55にも、流路形成基板30に適用される保護膜80と同様の耐インク性能を有する保護膜82が形成される。なお、封止基板50に形成される保護膜82は、封止基板50に対して所定の加工が施された後に、プラズマCVD法などの化学的気相成長法やECRスパッタ法などの物理的気相成長法によって形成されるので、第1の面52、第2の面56、第1の凹部54の内壁面、第2の凹部58の内壁面、貫通穴62の内壁面を含む封止基板50のすべての面に保護膜82が形成される。
図2に示す封止基板50のように、全面にわたって保護膜82が形成された基板は保護膜82の応力によって反りが発生しやすくなるので、封止基板50を厚み方向について略対称形状とすることで、封止基板50の反りが防止されている。
先に説明したように、圧電素子42の下側面(振動板40側の面)には下部電極43が設けられ、上側面には上部電極44が設けられる。本明細書では、圧電体膜42Aを上部電極44及び下部電極43により挟む構造体を圧電素子42と定義する。また、圧電素子42と振動板40とを含む構成は、圧力室32内に収容されるインクを加圧する圧電アクチュエータとして機能する。
すなわち、駆動IC60から圧電素子42へ所定の駆動信号が印加されると、圧電素子42には撓み変形が生じ、圧電素子42の撓み変形に応じて振動板40が圧力室32の内側へ変形し、圧力室32の体積を減少させる。ノズル22からは、圧力室32の体積減少分に相当する量のインクが吐出される。
なお、図1及び図2には、インクジェットヘッド10の詳細な構造(共通液室34の上面の封止構造や、外部からインクを供給する構造など)の図示を省略したが、図1及び図2に図示されていない構造(構成)については、公知のインクジェットヘッドと同様の構造を適用することができる。
本例では、1列のノズル列を有するインクジェットヘッドを示したが、ノズル配置はこれに限定されず、2列のノズル列を千鳥状に配置した態様や、複数のノズルをマトリクス状に配置した態様も可能である。
〔インクジェットヘッドの製造方法の説明〕
次に、上述したインクジェットヘッド10の製造方法の各工程について詳細に説明する。
(封止基板作製工程)
まず、図3(a)〜(h)を用いて、封止基板50の作製方法を工程順に説明する。
封止基板50の材料には、図3(a)に示すようにシリコン単結晶基板(シリコン基板)100が適用される。図3に(a)に示すシリコン基板100は、1100℃程度の温度環境下でアニール処理が施され、図3(b)に示すように、シリコン基板100の各面にはマスクとなる二酸化シリコン膜102が形成される。
図3(c)に示すように、その後、フッ酸(HF)等のエッチング液を用いて、二酸化シリコン膜102は第1の凹部54や第2の凹部58の形状に合わせてパターンニングされる。
次に、図3(d)に示すように、第1の面52及び第2の面56の両面からエッチング処理が施され、第1の凹部54及び第2の凹部58が形成されるとともに、第1の凹部54(第2の凹部58)と同じ深さの非貫通の貫通穴62、及び共通液室34の一部を構成する非貫通の開口部55が形成される。
このようにして形成された第1の凹部54及び第2の凹部58には、熱感光性樹脂(レジスト)を用いてマスク104が形成され(図3(e))、貫通穴62及び開口部55が貫通するまで、第1の面52及び第2の面56の両面からエッチング処理が施される。図3(f)には、第1の凹部54及び第2の凹部58、貫通した貫通穴62及び貫通した開口部55が形成されたシリコン基板100を図示する。
その後、図3(g)に示すように、マスク102,104が除去され、図3(h)に示すように、アルカリ性のエッチング液に対する耐性を有する保護膜82が形成され、封止基板50が完成する。
(圧電素子形成工程)
次に、図4(a)を参照して、流路形成基板30の圧電素子配設面46(図1,2参照)に圧電素子42を形成する工程について説明する。
まず、絶縁膜38及び振動板40となる酸化膜が成膜された流路形成基板30(シリコン基板)の圧電素子配設面46に、スパッタ法などの薄膜成膜技術を用いて下部電極43が成膜される。下部電極43は圧電体成膜工程における酸素雰囲気下及び600℃〜1100℃の高温雰囲気でも導電性を確保する必要があり、下部電極43の材料には白金が好適に用いられる。なお、後述するように、圧電体膜42Aにチタン酸ジルコン酸鉛を用いる場合には、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ないという観点からも下部電極43の材料には白金が好ましい。下部電極43の膜厚は0.1μm〜0.2μm程度である。
次に、ゾルゲル法やスパッタ法などの薄膜成膜技術を用いて、下部電極43の上に圧電材料から成る圧電体膜42Aが成膜され、酸素雰囲気下又は大気雰囲気下において、600℃〜1100℃の温度で焼成処理が施される。
圧電体膜42Aにはチタン酸ジルコン酸鉛が好適に用いられる。また、圧電体膜42A膜厚は0.2μm〜5.0μm程度である。
次に、スパッタ法などの薄膜成膜技術を用いて、圧電体膜42Aの上に上部電極44となる金属膜が成膜される。上部電極44は、高い導電性を有する材料が適用され、白金、金、アルミニウム、ニッケルなどの金属材料や、導電性を有する酸化膜が好適に用いられる。また、上部電極44の膜厚は0.1μm〜0.2μm程度が好ましい。本例では、スパッタ法により白金を用いて上部電極44を成膜している。
その後、上部電極44、圧電体膜42A、下部電極43は、圧力室32の形状に合わせてパターンニングされ、さらに、引出電極48が形成され、圧電素子配設面46に圧電素子42が配設された流路構造が形成される前の流路形成基板30が作製される。なお、引出電極48の厚みは、下部電極43の厚みと略同一となっている。
(接合工程)
次に、上述した圧電素子配設面46に圧電素子42が配設された流路構造が形成される前の流路形成基板30に、封止基板作製工程により作製された封止基板50が接合される。図4(a)には、流路形成基板30に封止基板50が接合された状態を図示する。
接合工程には、エポキシ系の接着剤が好適に用いられる。また、接合工程における環境温度は熱硬化型の場合には50℃〜200℃とするとよく、接合時に付与される圧力は0.05MPa〜0.5MPaとするとよい。なお、常温硬化型の接着剤を用いてもよい。
接合工程では、流路形成基板30の下側を固定台などによって支持し、平板形状の加重治具120を封止基板50の第2の面に当接させ、加重治具120の平面を介して流路形成基板30と封止基板50の接合部に所定の圧力を付与する方法が適用される。
図5(a)には、封止基板50の第2の面56に第2の凹部58を設けずに、第2の面56の全面を平面とした場合の加圧状態を図示する。同図に示すように、加重治具120を用いて平面で加圧すると、押される面(第2の凹部58がない平面状の第2の面56)裏側に第1の凹部54が存在するために、図5(a)に太線で図示するように封止基板50に変形が生じてしまう。すなわち、平坦な面の裏側に空間が存在すると、空間が存在する部分の剛性が他の部分よりも低下してしまう結果、基板に変形が生じてしまう。
これに対して、本例に示すインクジェットヘッド10に適用される封止基板50は、両面に略同一の形状を有する第1の凹部54と第2の凹部58を備えているので、図5(b)に示すように、荷重が確実に接合部にかかるとともに、第2の凹部58の空間を押すことがないので、封止基板50の変形が防止される。
(流路構造形成工程)
次に、図4(b),(c)を参照して、流路構造形成工程について説明する。接合工程よって流路形成基板30に封止基板50が接合されると、流路形成基板30に圧力室32、共通液室34、供給口36などの流路構造が形成される。
まず、図4(b)に示すように、流路形成基板30の下面に成膜された絶縁膜38が圧力室32や共通液室34、供給口36などの流路構造の形状に合わせてパターンニングされ、さらに、パターンニングされた絶縁膜38をマスクとしてアルカリ性溶液による異方性エッチングが行われ、圧力室32及び共通液室34、供給口36を含む流路構造が形成される。
異方性エッチングについての詳細な説明は省略するが、異方性エッチングはシリコン基板のエッチングレートの違いを利用して行われる。例えば、KOHなどのアルカリ性溶液にシリコン基板を浸漬させることで、圧力室32の精密加工が可能となる。なお、流路形成基板30に所定の流路構造を形成する際に、封止基板50表面には全面にわたって保護膜82が形成され、かつ、圧電素子42は封止基板50の第1の凹部54によって密閉されるので、エッチング液による封止基板50の侵食を防止するとともに、圧電素子42の密閉空間にエッチング液が侵入して圧電素子42を破損することが防止される。
このようにして、流路形成基板30に所定の流路構造が形成されると、流路構造の内壁面(インクと接触する面)には保護膜80が形成される。すなわち、所定の流路構造が形成された流路形成基板30は、100℃以下の温度環境化において、蒸着やスパッタ法などの薄膜成膜技術を用いて保護膜80が形成される。図4(c)には、流路構造の内壁面に保護膜80が形成された状態を図示する。
保護膜80は、インクによって流路構造を形成するシリコンが溶出することを防止するために設けられる。保護膜80には、酸化タンタル、チッ化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどの耐アルカリ性能を有する酸化膜が適用され、いずれの酸化膜を適用するかは、使用するインクのpHによって適宜選択するとよい。
保護膜80は振動板40の下面(圧力室32側の面)にも形成されるので、振動板40の変形を阻害しないという観点で、保護膜80の厚みは0.1μm以下にするとよく、50nm以下にするとより好ましい。
(ノズルプレート接合工程)
上述したように、流路形成基板30に所定の流路構造が形成されると、ステンレス鋼の薄板にノズル22となる複数の開口が形成されたノズルプレート20が接合される。図4(d)には、ノズルプレート20が接合された状態を図示する。
ノズルプレート接合工程では、予めノズル22の加工が施されたノズルプレート20と流路形成基板30との接合面の少なくともいずれか一方に接着剤が塗布され、ノズルプレート20のノズル22と流路形成基板30の圧力室32が位置合わせされ、所定の温度環境化において所定の圧力が付与され、流路形成基板30にノズルプレート20が接合される。
ノズルプレート接合工程には、エポキシ系の接着剤が好適に用いられる。また、ノズルプレート接合工程における環境温度は、熱硬化型の場合には50℃〜200℃とするとよく、接合時に付与される圧力は0.05MPa〜0.5MPaとするとよい。なお、常温硬化型の接着剤を用いてもよい。
(配線工程)
上述したように、インクジェットヘッド10を構成する構造体が作製されると、第2の凹部58には駆動IC60が実装され、さらに、ワイヤボンディング法を用いて、駆動IC60と引出電極48との間のリード線70が封止基板50に設けられた貫通穴62の内部を通して形成される。
図6には、圧電素子42の上部電極44から圧電素子配設面46に引き出された引出電極48と駆動IC60をリード線70により直接接続させる態様を例示したが、図7に示すように、貫通穴62の内壁面及び第2の面56に配線パターン72を形成し、引出電極48からさらに配線パターン72を介して第2の面56に上部電極44への配線を引き出し、第2の面56の配線パターン(接続用電極)と駆動IC60との間をリード線70により接続してもよい。
配線パターン72を形成する方法としては、各圧電素子42から引き出された各引出電極48に対応する共通の貫通穴62に対して、斜め方向から金属膜を成膜する方法や、各圧電素子42から引き出された引出電極48のそれぞれに対応して引出電極48と同数の貫通穴62を形成し、各貫通穴62に導電性ペーストを埋め込むといった方法が可能である。
また、図示は省略するが、第2の面56及び第2の凹部58に駆動信号を伝送するための配線パターンを形成するとともに、第2の凹部58に駆動IC60をフリップチップ実装するための突起状電極(バンプ)を形成してもよい。このような配線パターン及び電極の形成には、一般的なプリント配線基板の製造手法を適用することが可能である。
上記の如く構成されたインクジェットヘッドは、圧電素子42を密閉する封止基板50の第1の面52に圧電素子42を封止するための第1の凹部54を形成するとともに、第1の面52の反対側面の第2の面56に第1の凹部54と略同一形状を有する第2の凹部58を形成することで、封止基板50は厚み方向について対称形状となり反りが低減される。
また、圧電素子42に印加する駆動信号を生成する駆動IC60を第2の凹部58に実装することで、インクジェットヘッド10を小型化することができる。
さらに、封止基板50の表裏両面に略同一形状の第1の凹部54及び第2の凹部58を設けることで、封止基板50と流路形成基板30とを接合する際に、加重治具120の平面を用いて封止基板50を加圧しても、封止基板50は変形することなく、接合部に対して確実に荷重をかけることができる。
〔装置構成〕
次に、図8及び図9を用いて、上述したインクジェットヘッド10が適用される装置例について説明する。
図8は、インクジェット記録装置200の全体構成図である。同図に示すように、インクジェット記録装置200は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の色インク毎に設けられた複数のインクジェットヘッドを有する印字部212と、各インクジェットヘッドに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部214と、記録紙216を供給する給紙部218と、記録紙216のカールを除去するデカール処理部220と、前記印字部212のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙216の平面性を保持しながら記録紙216を搬送する吸着ベルト搬送部222と、印字部212による印字結果を読み取る印字検出部224と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部226と、を備えている。
図8では、給紙部218の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図8のように、裁断用のカッター228が設けられており、該カッター228によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター228は、記録紙216の搬送路幅以上の長さを有する固定刃228Aと、該固定刃228Aに沿って移動する丸刃228Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃228Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃228Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター228は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部218から送り出される記録紙216はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部220においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム230で記録紙216に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙216は、吸着ベルト搬送部222へと送られる。吸着ベルト搬送部222は、ローラー231、232間に無端状のベルト233が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部212のノズル面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
ベルト233は、記録紙216の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図8に示したとおり、ローラー231、232間に掛け渡されたベルト233の内側において印字部212のノズル面に対向する位置には吸着チャンバー234が設けられており、この吸着チャンバー234をファン235で吸引して負圧にすることによってベルト233上の記録紙216が吸着保持される。
ベルト233が巻かれているローラー231、232の少なくとも一方にモーター(不図示)の動力が伝達されることにより、ベルト233は図8において、時計回り方向に駆動され、ベルト233上に保持された記録紙216は紙搬送方向(副走査方向;図8の右方向)に搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト233上にもインクが付着するので、ベルト233の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部236が設けられている。ベルト清掃部236の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部222に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。従って、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部222により形成される用紙搬送路上において印字部212の上流側には、加熱ファン240が設けられている。加熱ファン240は、印字前の記録紙216に加熱空気を吹きつけ、記録紙216を加熱する。印字直前に記録紙216を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
インク貯蔵/装填部214は、印字部212の各インクジェットヘッドに対応する色のインクを貯蔵するタンク(メインタンク)を有している。また、インク貯蔵/装填部214は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部224は、印字部212の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部224は、記録紙216の画像記録幅よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部224は、各色のインクジェットヘッドにより印字されたテストパターンを読み取り、各インクジェットヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部224の後段には、後乾燥部242が設けられている。後乾燥部242は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部242の後段には、加熱・加圧部244が設けられている。加熱・加圧部244は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー245で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部226から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置200では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部226A、226Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(不図示)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)248によってテスト印字の部分を切り離す。カッター248は、排紙部226の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター248の構造は前述した第1のカッター228と同様であり、固定刃248Aと丸刃248Bとから構成されている。また、図示を省略したが、本画像の排出部226Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
本実施形態では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。
図9は、インクジェット記録装置200の印字部周辺の構成を示した概略構成図である。インクジェット記録装置200は、ガイドレール290によって案内された状態で記録紙216の紙幅方向(主走査方向)に往復移動可能なキャリッジ292を備えている。このキャリッジ292上には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各色インクにそれぞれ対応するインクジェットヘッド212K、212C、212M、212Yが搭載される。各インクジェットヘッド212K、212C、212M、212Yは、吐出力を付与する手段として圧電素子を備えており、圧電素子の動作に応じてインク吐出口(ノズル)からインク滴を吐出させる。インクジェット記録装置200は、記録紙216を副走査方向(紙搬送方向)に搬送しつつ、各インクジェットヘッド212K、212C、212M、212Yと共にキャリッジ292を主走査方向に往復移動させながら、各インクジェットヘッド212K、212C、212M、212Yのノズルからそれぞれ対応する色インクのインク滴を吐出させる。これにより、記録紙216上に所望の画像が記録される。
各インクジェットヘッド212K、212C、212M、212Yはそれぞれサブタンク(不図示)と一体的に構成されており、記録動作中、サブタンク内に貯蔵されるインクがインクジェットヘッドのインク消費に伴って順次供給される。また、記録動作の進行に伴ってサブタンク内のインク残量が所定量以下になると、キャリッジ292は、図9に示すような所定の待機位置(メンテナンス位置)に移動される。待機位置では、メインタンクからサブタンクにインク補給が行われ、サブタンク内にインクが十分満たされた後、記録動作が再開される。なお、メインタンクは、図8に示したインク貯蔵/装填部214と等価なものである。
図10は、インクジェット記録装置200のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置200は、通信インターフェース270、システムコントローラ272、画像メモリ274、モータドライバ276、ヒータドライバ278、プリント制御部280、画像バッファメモリ282、ヘッドドライバ284等を備えている。
通信インターフェース270は、ホストコンピュータ286から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース270にはシリアルインターフェースやパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ286から送出された画像データは通信インターフェース270を介してインクジェット記録装置200に取り込まれ、一旦画像メモリ274に記憶される。画像メモリ274は、通信インターフェース270を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ272を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ274は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ272は、通信インターフェース270、画像メモリ274、モータドライバ276、ヒータドライバ278等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ272は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ286との間の通信制御、画像メモリ274の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモーター288やヒータ289を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ276は、システムコントローラ272からの指示に従ってモーター288を駆動するドライバ(駆動回路)である。本例に示すインクジェット記録装置200では、図10のモータドライバを駆動IC60として構成している。ヒータドライバ278は、システムコントローラ272からの指示に従って後乾燥部242その他各部のヒータ289を駆動するドライバである。
プリント制御部280は、システムコントローラ272の制御に従い、画像メモリ274内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ284に供給する制御部である。プリント制御部280において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ284を介してインクジェットヘッド212K,212C,212M,212Yのインク滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部280には画像バッファメモリ282が備えられており、プリント制御部280における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ282に一時的に格納される。なお、図10において画像バッファメモリ282はプリント制御部280に付随する態様で示されているが、画像メモリ274と兼用することも可能である。また、プリント制御部280とシステムコントローラ272とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ284は、プリント制御部280から与えられるドットデータに基づいて各色のインクジェットヘッド212K,212C,212M,212Yの圧電素子42(図1参照)を駆動するための駆動信号を生成し、圧電素子42に生成した駆動信号を供給する。ヘッドドライバ284にはインクジェットヘッド212K,212C,212M,212Yの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部224は、インクジェットヘッド212K,212C,212M,212Yにより記録されたテストパターンを読み取り、所要の信号処理などを行ってインクジェットヘッド212K,212C,212M,212Yのインク吐出状況(吐出の有無、ドットサイズ、ドット位置等)を検出し、その検出結果をプリント制御部280に提供する。プリント制御部280は、必要に応じて印字検出部224から得られる情報に基づいてインクジェットヘッド212K,212C,212M,212Yに対する各種補正を行う。
なお、上述した装置構成は一例であり、他の装置構成にも適用可能である。例えば、インク以外の液体(樹脂液、レジスト液、水等)をインクジェット方式の液体吐出ヘッドから吐出させる液体吐出装置にも適用可能である。
また、本装置例では、記録媒体の全幅に満たない長さのノズル列を有するシリアル型ヘッドを備えた態様を示したが、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するフルライン型ヘッドを備える態様も可能である。
以上、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法を詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):液体を吐出するノズルと連通する圧力室を含む流路構造が形成されるとともに、前記圧力室に対応する位置に前記圧力室内に収容される液体を加圧する圧電素子が配設される流路形成基板と、前記流路形成基板の前記圧電素子が配設される圧電素子配設面に接合され、前記圧電素子配設面に接合される第1の面における前記圧電素子の配設位置に対応する位置に前記圧電素子の形状に対応する形状を有する第1の凹部が形成されるとともに、前記第1の面と反対側の第2の面における前記第1の凹部に対応する位置に前記第1の凹部に対応する形状を有する第2の凹部が形成される封止基板と、を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
本発明によれば、圧電素子を密閉する第1の凹部が第1の面に形成された封止基板の第1の面と反対側の第2の面の第1の凹部の位置に対応する位置に、第1の凹部に対応する形状を有する第2の凹部が形成されるので、封止基板は対称形状となり反りが防止される。
流路形成基板は、圧力室の一壁面を構成するとともに、圧力室の反対側面に圧電素子が形成される振動板を含む態様がある。
(発明2):発明1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1の面における前記第1の凹部の開口面積S1と、前記第2の面における前記第2の凹部の開口面積S2との関係は、(S1×0.5)≦S2≦(S1×2) …(1)を満たすことを特徴とする。
かかる態様によれば、第1の凹部の形状と第2の凹部の形状がより同一形状に近くなるので、より一層反り低減の効果を発揮する。
第1の凹部の開口面積S1と第2の凹部の開口面積S2を同一とする態様がより好ましい。
第1の凹部は、第1の面における開口面積よりも底面の面積が小さくなる形状を有していてもよい。同様に、第2の凹部は、振動板の第2の面における開口面積よりも底面の面積が小さくなる形状を有していてもよい。
(発明3):発明1又は2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1の面における前記第1の凹部の開口形状と、前記第2の面における前記第2の凹部の開口形状は略同一形状であることを特徴とする。
第1の凹部の高さh1と第2の凹部の高さh2は略同一であることが好ましい。
封止基板の厚みhは、第1の凹部の高さh1及び第2の凹部の高さh2の3倍以上である態様が好ましい。
第1の凹部の体積V1と第2の凹部の体積V2は略同一であることが好ましい。
(発明4):発明1乃至3のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2の凹部には、前記圧電素子に印加される駆動信号を生成する駆動信号生成部が配設されることを特徴とする。
かかる態様によれば、駆動信号生成部を第2の凹部に実装することで、当該液体吐出ヘッドを小型化することができる。
駆動信号生成部は、集積化された駆動ICの形態が好ましい。また、駆動IC形態の駆動信号生成部をフリップチップ実装する態様が好ましい。
複数のノズルを備え、複数のノズルに対応して複数の圧力室及び複数の圧電素子を備える態様において、複数の駆動信号生成部を備える態様では、駆動信号生成部ごとに第2の凹部を備えてもよいし、複数の駆動信号生成部に対して共通の第2の凹部を1つ備えてもよい。
(発明5):発明4に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記圧電素子の前記駆動信号が印加される電極から前記流路形成基板の前記圧電素子配設面に引き出された引出電極と、前記封止基板の前記第1の面と前記第2の面を貫通する貫通穴と、前記貫通穴の内部に設けられるとともに、前記引出電極と前記駆動信号生成部とを電気的に接続する配線部材と、を備えたことを特徴とする。
配線部材には、リード線や導電性ペーストなどを適用するとよい。
複数の圧電素子を備える場合には、圧電素子ごとに貫通穴を設けてもよいし、複数の圧電素子に共通の貫通穴を1つだけ設けてもよい。
(発明6):発明5に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記貫通穴は、前記引出電極が設けられる位置に対応する位置に形成されることを特徴とする。
かかる態様によれば、配線部材による駆動信号生成部と引出電極との配線が容易となる。
(発明7):発明1乃至6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記流路形成基板の基材及び前記封止基板の基材は、シリコン基板であることを特徴とする。
かかる態様によれば、エッチング等の手法により精密な加工が可能であり、高い加工精度の流路構造及び第1の凹部、第2の凹部を形成することができる。
(発明8):発明1乃至7のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液体吐出装置。
(発明9):発明8に記載の液体吐出ヘッドを含み、ノズルからインクを吐出して記録媒体上に所望の画像を形成することを特徴とするインクジェット記録装置。
(発明10):第1の面における圧電素子の配設位置に対応する位置に前記圧電素子の形状に対応する形状を有する第1の凹部が形成されるとともに、第1の面の反対側の第2の面における前記第1の凹部に対応する位置に前記第1の凹部に対応する形状を有する第2の凹部が形成される封止基板を作製する封止基板作製工程と、液体を吐出するノズルと連通する圧力室を含む流路構造が形成されるとともに、前記圧力室に対応する位置に前記圧力室内に収容される液体を加圧する圧電素子が配設される流路形成基板を作製する流路形成基板作製工程と、前記封止基板と前記流路形成基板とを接合する接合工程と、を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
少なくとも、封止基板の第1の面及び第2の面、第1の凹部の内壁面、第2の凹部の内壁面に保護膜を形成する保護膜形成工程を含む態様が好ましい。
また、流路形成基板に形成された流路構造にも保護膜を形成する態様が好ましい。
(発明11):発明10に記載の液体吐出ヘッドの製造方法において、前記接合工程は、前記第1の凹部及び前記第2の凹部が形成された前記封止基板の前記第2の面に加重治具を当接させて前記第2の面側から加圧する加圧工程を含むことを特徴とする。
かかる態様によれば、封止基板と流路形成基板を接合する際の封止基板の変形が防止され、好ましい接合状態を得ることができる。
(発明12):発明10又は11に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記流路形成基板作製工程は、前記流路形成基板の圧電素子配設面に圧電素子を形成する圧電素子形成工程を含み、前記接合工程は、前記圧電素子配設面に圧電素子が形成された前記流路形成基板の圧電素子配設面に前記封止基板を接合することを特徴とする。
圧電素子形成工程には、下部電極を成膜する下部電極成膜工程と、圧電体膜を成膜する圧電体膜成膜工程と、上部電極を成膜する上部電極成膜工程と、下部電極、及び圧電体膜、上部電極のそれぞれをパターンニングするパターンニング工程と、を含む態様が好ましい。
(発明13):発明10乃至12のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記流路形成基板作製工程は、前記接合工程によって前記封止基板が接合された前記流路形成基板に圧力室を含む流路構造を形成する流路構造形成工程を含むことを特徴とする。
流路構造に保護膜を成膜する保護膜成膜工程を含む態様が好ましい。
(発明14):発明10乃至13のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2の凹部に前記圧電素子に印加する駆動信号を生成する駆動信号生成部を実装する駆動信号生成部実装工程と、前記駆動信号生成部と前記圧電素子の前記駆動信号が印加される電極との間の電気配線を形成する電気配線形成工程と、を含むことを特徴とする。
駆動信号生成部は、駆動信号生成部に含まれる回路構成を集積してIC化される態様が好ましい。
(発明15):発明14に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記封止基板作製工程は、前記封止基板の前記第1の面と前記第2の面を貫通する貫通穴を形成する貫通穴形成工程を含むとともに、前記電気配線形成工程は、前記圧電素子の電極から前記圧電素子配設面に引き出された引出電極を形成する引出電極形成工程と、前記貫通穴の内部に前記引き出し電極と前記駆動信号生成部とを電気的に接続する配線部材を形成する配線部材形成工程と、を含むことを特徴とする。
かかる態様によれば、封止基板に形成された貫通穴を利用して、駆動信号生成部と圧電素子との電気的接続を容易に行うことが可能である。