JP2009083140A - 液体吐出ヘッド及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ノズル近傍の精度を維持しつつ、ノズル内面の耐アルカリ性を確保できる液体吐出ヘッド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】SOI基板の表面Si層の上にSiO2マスク層を形成し、形成したSiO2マスク層にノズル開口に対応するマスク開口を形成する。次に、マスク開口をエッチングして、SOI基板の表面Si層にノズル孔を形成する。次に、流路基板をSOI基板に直接接合し、接合された流路基板上に圧電アクチュエータを形成する。次に、SOI基板のSi基板を除去し、その後、露出したSiO2層を除去する。これにより、表面Si層に形成されたノズル孔が開口する。最後に、露出した表面Si層の表面、及び、ノズル孔の内面にSiO2層を形成する。
【選択図】 図2
【解決手段】SOI基板の表面Si層の上にSiO2マスク層を形成し、形成したSiO2マスク層にノズル開口に対応するマスク開口を形成する。次に、マスク開口をエッチングして、SOI基板の表面Si層にノズル孔を形成する。次に、流路基板をSOI基板に直接接合し、接合された流路基板上に圧電アクチュエータを形成する。次に、SOI基板のSi基板を除去し、その後、露出したSiO2層を除去する。これにより、表面Si層に形成されたノズル孔が開口する。最後に、露出した表面Si層の表面、及び、ノズル孔の内面にSiO2層を形成する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、液体吐出ヘッド及びその製造方法に係り、特にSOI(Silicon On Insulator)基板を用いてSi(シリコン)製のノズルプレートが製造される液体吐出ヘッド及びその製造方法に関する。
インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドに形成された複数のノズルからインクの微小液滴を記録媒体に向けて噴出させることにより、記録媒体上に画像等を記録するものである。このインクジェット記録装置は、多種多様の記録媒体に対して高品質な画像を記録できることから幅広く利用されている。
このインクジェット記録装置のインクジェットヘッドは、一般にノズルが形成されたノズルプレートと、圧力室等が形成された流路基板と、圧電素子等のアクチュエータとが順に積層されて構成される。
ノズルプレートには、一般に金属やガラス、Si等が用いられ、Si製のノズルプレートは、一般にエッチングによりノズルが形成される。たとえば、特許文献1では、非等方性湿式エッチングによりSi基板にノズルを形成してノズルプレートを形成している。この特許文献1では、まず、Si基板の片面にエッチングのマスク層としてSiO2層を形成し、そのSiO2層が形成されたSi基板を非等方性湿式エッチングしてノズルを形成する。そして、ノズルが形成されたSi基板のノズル内面及びSiO2層上に硼素層を形成し、硼素層が形成されたSi基板を再度エッチングして、硼素層が形成されていない方の面を所定量除去する。そして、SiO2層を選択的にエッチングして、SiO2層、及び、そのSiO2層上の硼素層を除去して、ノズルプレートを完成させている。
ところで、Siのノズルプレートは、一般に厚さが100μm以下と極めて薄いため、単体ではハンドリングできない。このため、ハンドリング時は常に厚い基板又は構造体と接合しておく必要がある。たとえば、特許文献2では、ノズルプレートを構成するSi(シリコン)基板を支持基板に樹脂層(接着剤)を介して貼り合わせ、その支持基板に貼り合わされたSi基板を研削により薄板化し、薄板化したSi基板にノズルを形成した後、支持基板をSi基板から剥離して、ノズルプレートを製造している。
特開2001−030500号公報
特開2006−256223号公報
しかしながら、特許文献2のように、樹脂層を介してSi基板を支持基板に貼り合わせると、流路基板との接合時に熱がかかる直接接合を適用することができないという欠点がある。このため、樹脂層を介してノズルプレートを流路基板に接合することとなるが、樹脂層を介してノズルプレートを流路基板に接合すると、樹脂層がノズル内に食み出して、ノズルの精度を低下させるという欠点がある。また、樹脂がインクに悪影響を及ぼすという欠点もある。
また、特許文献1のノズルプレートは、その製造時にSiO2層や硼素層をSi基板の片面に形成する工程があるが、厚さ30μm程度の薄いノズルプレートは反ってしまうという問題がある。また、硼素層の形成には、1100℃程度のアニール処理によるドライブイン工程が必要となるが、この加熱により表面にホウケイ酸ガラス層が形成される。このホウケイ酸ガラス層のフッ酸によるエッチングには長時間かかるため、SOI基板を用いたプロセスには、適用することができないという問題もある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ノズル近傍の精度を維持しつつ、ノズル内面の耐アルカリ性を確保できる液体吐出ヘッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、Si基板と表面Si層の間にSiO2層が形成されたSOI基板を用いた液体吐出ヘッドの製造方法であって、SOI基板の表面Si層の上にエッチングマスクとなるSiO2マスク層を形成する工程と、前記SiO2マスク層にノズル開口に対応するマスク開口を形成する工程と、前記SiO2マスク層に形成された前記マスク開口をエッチングして、前記SOI基板の表面Si層にノズル孔を形成する工程と、表面にSiO2層が形成された流路基板を前記SOI基板に直接接合する工程と、前記流路基板上に液体吐出手段を設ける工程と、前記SOI基板のSi基板を除去して、SiO2層を露出させる工程と、露出した前記SOI基板のSiO2層を除去して、表面Si層を露出させ、該表面Si層に形成された前記ノズル孔を開口させる工程と、露出した前記SOI基板の表面Si層の表面、及び、該表面Si層に形成されたノズル孔の内面にSiO2層を形成する工程と、からなることを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。
請求項1に係る発明によれば、SOI基板を利用することにより、次の手順でSi製のノズルプレートを用いた液体吐出ヘッドが製造される。まず、SOI基板の表面Si層の上にエッチングマスクとなるSiO2マスク層を形成する。なお、SOI基板は、単体でハンドリングが可能な厚さに形成されているものとする。次に、そのSiO2マスク層にノズル開口に対応するマスク開口を形成する。次に、マスク開口をエッチングして、SOI基板の表面Si層にノズル孔を形成する。なお、エッチングは、SOI基板のSiO2層に達したところで終了する。次に、表面にSiO2層が形成された流路基板をSOI基板の上に直接接合する。なお、この直接接合において、熱がかけられた場合であっても、SOI基板には接着剤が用いられていないので、接着剤が溶ける等の問題が生じることはない。次に、流路基板上に液体吐出手段を設ける。次に、SOI基板のSi基板を除去して、SiO2層を露出させる。次に、露出したiO2層を除去して、表面Si層を露出させる。これにより、表面Si層に形成されたノズル孔が開口する。最後に、露出した表面Si層の表面、及び、ノズル孔の内面にSiO2層を形成する。これにより、Si製のノズルプレートを用いた液体吐出ヘッドが製造される。
このように製造された液体吐出ヘッドは、ノズルプレートの製造に際して、SOI基板を用いることにより、支持基板を用いずに単体でノズルプレート用の基板をハンドリングすることができる。
また、接着剤を用いる必要がなく、ノズルプレート用のSOI基板と流路基板とを直接接合することができる。これにより、接着剤がノズル内に食みだしたり、接着剤がノズル内部の液体に悪影響を及ぼしたりするという問題を回避できる。
また、SiO2層を除去する際、SiとSiO2とで選択比がとれるため、ノズル部の精度が低下することがない。これにより、ノズル近傍の精度を維持することができる。
さらに、ノズルの表面及び内部にSiO2層が形成されるため、耐アルカリ性を確保することができる。
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記液体吐出手段は、振動板、圧電体、配線を含み、スパッタにより前記流路基板上に形成することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。
請求項2に係る発明によれば、液体吐出手段を構成する振動板、圧電体、配線等が、スパッタにより流路基板上に形成された後エッチングで形状が形成される。一般にエッチングは、冷却のためチャンバ内で基板の下面にヘリウムガスを供給しながら行われる。この際、基板に孔が開いていると、その孔からヘリウムガスがリークするので、孔が開いている基板に対しては、孔を遮蔽した状態で行う必要がある。本発明では、液体吐出手段を形成する際、SOI基板に形成されたノズル孔が貫通した状態にないため、流路基板上にスパッタで液体吐出手段を形成しても、ヘリウムガスがリークすることはない。これにより、スパッタとエッチングで簡易に液体吐出手段を形成することができる。
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、開口したノズル孔の表面及び内面に陽極酸化法によりSiO2層を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。
請求項3に係る発明によれば、開口したノズル孔の表面及び内面に陽極酸化法によりSiO2層が形成される。陽極酸化法を用いることにより、常温でSiO2層を形成することができ、熱に弱い液体吐出手段を形成した後であっても、ノズル孔の表面及び内面にSiO2層を形成することができる。また、陽極酸化法を用いることにより、Siが露出した内面にのみ選択的かつ均一にSiO2層を形成することができる。さらに、ノズル内面のインク濡れ性を向上させることができる。
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、前記SOI基板の表面Si層の厚さが、36μm±0.5μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。
請求項4に係る発明によれば、SOI基板の表面Si層の厚さが、36μm±0.5μmで形成される。SOI基板は、最終的に表面Si層のみが残されてノズルプレートとなる。したがって、ノズルプレートの厚さが36μm±0.5μmで形成される。本発明では、このような薄いノズルプレートであっても、接着剤を用いることなく、流路基板に接合することができる。
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、KOHによる異方性エッチングで前記SOI基板の表面Si層にノズル孔を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。
本発明によれば、KOHによる異方性エッチングによりSOI基板の表面Si層にノズル孔が形成される。KOHによる異方性エッチングによりSOI基板の表面Si層にノズル孔を形成することにより、SiO2層に達したところでエッチングを終了させることができる。
請求項6に係る発明は、前記目的を達成するために、表面にSiO2層が形成された流路基板と、前記流路基板上に設けられた液体吐出手段と、前記流路基板に直接接合されたノズルプレートであって、Siによって厚さ36μm±0.5μmに形成され、表面及びノズル孔の内面にSiO2層が形成されたノズルプレートと、からなることを特徴とする液体吐出ヘッドを提供する。
請求項6に係る発明によれば、Siによって厚さ36μm±0.5μmに形成されたノズルプレートが、流路基板に直接接合されて液体吐出ヘッドが形成される。ノズルプレートが流路基板に直接接合されているため、接着剤がノズル内部に食みだしてノズルの精度を低下させたり、接着剤がノズル内部の液体に悪影響を及ぼしたりするのを防止することができる。
本発明によれば、製造された液体吐出ヘッドのノズル近傍の精度を維持しつつ、ノズル内面の耐アルカリ性を確保することができる。
以下、添付図面に従って本発明に係る液体吐出ヘッド及びその製造方法の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェットヘッドの構成〕
まず、本発明に係る液体吐出ヘッドの一実施形態であるインクジェットヘッドの構成について説明する。
まず、本発明に係る液体吐出ヘッドの一実施形態であるインクジェットヘッドの構成について説明する。
図1は、本発明が適用されたインクジェットヘッドの要部の構成を示す断面図である。
同図に示すように、本実施の形態のインクジェットヘッド10は、ノズルプレート20、流路基板30、圧電アクチュエータ40が順に積層されて構成されている。
ノズルプレート20は、Siによって形成されており、流路基板30の下面に直接接合されている。このノズルプレート20には、インクの吐出口となるノズル孔22が多数規則的に配置されて形成されている(図1では1つのみ図示)。
なお、このノズルプレート20は、SOI基板から形成され、30〜100μm程度の厚さで形成される。本例では36μm±0.5μmの厚さで形成される。
また、このノズルプレート20の表面及びノズル孔22の内面には、耐インク膜として、SiO2層24が形成されている。
なお、本例ではノズル孔22の形状をテーパ状としているが、ノズル孔22の形状は、これに限らず、円筒状(ストレート状)やラッパ状等とすることもできる。
流路基板30は、所定厚さ(600〜700μm程度)のSi基板で形成されており、その表面には耐インク膜として、所定圧さ(数μm程度)のSiO2層32が形成されている。この流路基板30には、ノズルプレート20に形成されたノズル孔22に対応して、多数の圧力室34が形成されている。
圧力室34は、ノズル孔22から吐出するインクが充填される空間部であり、それぞれ対応するノズル孔22に連通されている。なお、図示されていないが、インクジェットヘッド10には、各圧力室34に連通する共通流路が設けられており、この共通流路から各圧力室34に対してインクが分配供給される。
圧電アクチュエータ40は、インク吐出手段として機能し、主として、振動板42と圧電素子44とで構成されている。
振動板42は、流路基板30の上に配置されており、Si基板42Aと、その上面及び下面に形成されたSiO2層42B、42Cとで構成されている。この振動板42は、複数の圧力室34にまたがって形成されており、各圧力室34の天井面を構成する。また、この振動板42を構成する上面側のSiO2層42Cは、圧電素子44との間で絶縁層として機能する。
圧電素子44は、振動板42の上に配置されており、各圧力室34に対向する位置に配置されている。すなわち、圧電素子44は各圧力室34に一対一で対応して設けられている。
圧電素子44は、下部電極44Bと、圧電体44Aと、上部電極44Cとで構成されており、圧電体44Aが下部電極44Bと上部電極44Cとの間に挟まれた構造になっている。
圧電体44Aは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で構成され、下部電極44B及び上部電極44Cは、白金(Pt)又はイリジウム(Ir)で構成される。
なお、圧電体44Aを構成する圧電材料は、本例のものに限定されるものではなく、この他、たとえば、チタン酸バリウム等の他の圧電材料を用いることもできる。
また、下部電極44B及び上部電極44Cを構成する電極材料についても、本例のものに限定されるものではなく、この他、たとえば、タングステン(W)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、チタン(Ti)等を適用することもできる。
また、下部電極44B及び上部電極44Cのいずれか一方の電極を個別電極(アドレス電極)とし、他方の電極を共通電極(グランド電極)とすることができる。この場合、下部電極44B及び上部電極44Cの間に配置される圧電体44Aの分極方向(配向方向)に応じて、個別電極にプラス電圧を印加しても、分極方向と同方向の電界が印加されるように構成することが好ましい。これにより、駆動ICや電源のコスト低減を図ることができる。特に、スパッタ法で圧電体44Aが形成される場合には、下部電極44Bから上部電極44Cに向かう方向が圧電体44Aの分極方向となるため、下部電極44Bを個別電極とすることが好ましい。
また、絶縁層として機能する振動板42の上面側のSiO2層42Cは、シリコン炭窒化層(SiCN層)、酸化ジルコニウム層(ZrO2層)、シリコン酸窒化層(SiON層)などで構成されていてもよい。これらの中でも、安価でプロセスが容易なことから、Si基板42Aを熱酸化して得られるSiO2層が好ましい。このように振動板42を構成するSi基板42Aと下部電極44Bとの間に絶縁層を配置することにより、複数の下部電極間での電流リークを抑えることができ、電気的クロストークや消費電力の増大を防止することができる。
以上のように構成された本実施の形態のインクジェットヘッド10は、下部電極44Bと上部電極44Cと間に挟まれた圧電体44Aに所定の電界を印加すると、圧電体44Aが変位し、その圧電体44Aの変位に応じて振動板42が変形する。そして、振動板42が変形することにより、圧力室34内のインクが加圧され、圧力室34に連通されたノズル孔22からインク滴が吐出される。
〔インクジェットヘッドの製造方法〕
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の一例としてインクジェットヘッド10の製造方法について説明する。
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の一例としてインクジェットヘッド10の製造方法について説明する。
図2は、本実施の形態のインクジェットヘッド10の製造工程の一例を示したフローチャートである。
まず、図3(a)に示すように、流路基板30を形成する(ステップS1)。流路基板30は、Si基板で形成され、このSi基板に圧力室34や流路が形成されて構成される。流路基板30の厚さは、単体でハンドリング可能な厚さで形成され、たとえば、600〜700μm程度に形成される。
次に、図3(b)に示すように、流路基板30の表面に耐インク膜となるSiO2層32を形成する(ステップS2)。SiO2層32は、Si基板からなる流路基板30を熱酸化して形成される。
次に、図4(a)に示すように、ノズルプレート用にSOI基板50を用意する(ステップS3)。
SOI基板50は、Si基板50Aと表面Si層50Cの間にSiO2層50Bを挿入した構造の基板である。以後、本明細書では、Si基板をハンドル層50A、SiO2層をBOX層50B、表面Si層をSOI層50Cと呼ぶ。
後述するように、ノズルプレート20は、このSOI基板50のSOI層(表面Si層)50Cによって形成される。したがって、SOI層(表面Si層)50Cは、ノズルプレート20の厚さに対応し、30μm〜100μm程度に形成される。
なお、本例において、SOI層(表面Si層)50Cは、P型Si単結晶(比抵抗20Ω・cm)で形成され、厚さ36μm±0.5μmで形成される。
また、SOI基板50は、全体として、単体でハンドリング可能な厚さをもって形成される。
次に、図4(b)に示すように、SOI基板50のSOI層(表面Si層)50C上にエッチングマスクとなるSiO2マスク層50Dを形成する(ステップS4)。
次に、図4(c)に示すように、SiO2マスク層50Dにノズル開口に対応するマスク開口52を形成する(ステップS5)。この処理は、次のように行われる。まず、SiO2マスク層50Dにノズル開口に対応するレジストパターンを形成する。レジストパターンは、たとえば、フォトリソにより形成する。次に、レジストパターンが形成されたSiO2マスク層50Dをエッチングして、ノズル孔22に相当するマスク開口52を形成する。マスク開口52の形成後、レジストを除去して処理を完了する。
次に、図4(d)に示すように、SiO2マスク層50Dに形成されたマスク開口部分をエッチングし、SOI層(表面Si層)50Cにノズル孔22を形成する(ステップS6)。
ノズル孔22の形成方法としては、ドライエッチング、ウェットエッチング等を用いることができる。本例では、KOHによる異方性エッチングを用いる。この場合、Si基板は、(100)面方位のものを使用する。(100)面方位のものを使用することにより、エッチングは、BOX層(SiO2層)50Bに達したところで終了する。
次に、図5(a)に示すように、ノズル孔22が形成されたSOI基板50を流路基板30の下部に直接接合する(ステップS7)。
一般に直接接合は、基板に高い熱がかかるため、接着剤等の樹脂層を有する基板では用いることができないが、本例のSOI基板50と流路基板30は、いずれも樹脂層がないので、直接接合により基板同士を接合することができる。
次に、図5(b)に示すように、SOI基板50が接合された流路基板30上に圧電アクチュエータ40を形成する(ステップS8)。すなわち、流路基板30の上に振動板42、圧電素子44、必要な配線等を形成する。
圧電体等の形成には、たとえば、スパッタを用いることができる。スパッタで形成した圧電体等をエッチングにより所望の形状に加工する。エッチングは、通常、冷却のため、チャンバ内で基板の下部からヘリウムガスをかけながら行われる。このため、基板に貫通した孔が開いていると、その孔からヘリウムガスがリークするという問題が発生する。しかしながら、本例の流路基板30は、図5(b)に示すように、下面に接合されたSOI基板50によって、孔が完全に閉塞された状態にあるため、下部から供給されるヘリウムガスが上部にリークすることはない。したがって、特にリーク対策等を行わずに、スパッタとエッチングを用いて圧電体等を形成することができる。
なお、このように形成された圧電アクチュエータ40は高温に弱いため、以下のプロセスでは、高温(たとえば、250℃以上)が必要となる手法は用いることができない。
次に、図6(a)に示すように、SOI基板50のハンドル層(Si基板)50Aを除去する(ステップS9)。ハンドル層(Si基板)50Aを除去する方法としては、たとえば、機械研磨やドライエッチング、ウェットエッチング等を用いることができる。これにより、BOX層(SiO2層)50Bが露出する。
なお、SOI基板50は、十分な厚さを有する流路基板30に接合されているため、機械研磨等を用いても、基板を破損させることなく、ハンドル層50Aを除去することができる。
次に、図6(b)に示すように、露出したBOX層(SiO2層)50Bを除去する(ステップS10)。BOX層(SiO2層)50Bを除去する方法としては、ドライエッチングやウェットエッチング等を用いることができる。これにより、SOI層(表面Si層)50Cが露出し、ノズル孔22が開口する。この際、SiとSiO2とで選択比が取れるため、ノズル部の精度が低下することなく、高精度なノズル孔22を形成することができる。
その一方で本工程があることにより、あらかじめノズル孔22の内面に耐インク膜としてのSiO2層を形成しておくことができない。すなわち、あらかじめノズル孔22の内面にSiO2層を形成しておくと、BOX層除去との選択比が必要になるため、あらかじめノズル孔22の内面にSiO2層を形成しておくことができない(あらかじめノズル孔22の内面にSiO2層を形成しておくと、本工程であらかじめ形成しておいたSiO2層もBOX層と共に除去されてしまう。)。
このように本工程でBOX層(SiO2層)50Bを除去することにより、流路基板30の下部にSi製のノズルプレート20が形成される。すなわち、本工程で流路基板30の下部には、SOI基板50のSOI層(表面Si層)50Cのみが残り、このSOI層(表面Si層)50Cが、インクジェットヘッド10のノズルプレート20を構成する。
次に、図6(c)に示すように、ノズルプレート20(=露出したSOI基板50のSOI層(表面Si層)50C)の表面、及び、そのノズルプレート20の表面に開口したノズル孔22の内面に耐インク膜としてのSiO2層24を形成する(ステップS11)。本例では、このSiO2層24を陽極酸化法により形成する。
ここで、陽極酸化法は、次のステップで行われる。
まず、ノズルプレート20(=露出したSOI基板50のSOI層(表面Si層)50C)の表面に陽極酸化用治具を取り付ける。
陽極酸化用治具100は、図7に示すように、主として、ノズルプレート20に接触する第1電極102と、その第1電極102が電解液と接触するのを防止するシール部材104と、第1電極102とは絶縁され、電解液と接触する第2電極106と、第1電極102と第2電極106を絶縁する絶縁部材108とで構成される。第2電極106には、たとえば、白金(Pt)を用いる。
次に、陽極酸化用治具100が取り付けられたインクジェットヘッド10のインク流路に電解液を流す。電解液としては、たとえば、0.04mol/Lの硝酸カリウムを含んだ無水エチレングリコール等が用いられる。
次に、陽極酸化用治具100の第1電極102を電源110のプラス極、第2電極106を電源110のマイナス極に接続する。そして、その第1電極102と第2電極106との間に電流を流す。
ここで、電流の制御方法としては、図8に示すように、定電流法と定電圧法を組み合わせることが好ましい。すなわち、最初に定電流法を実施し、電圧値が規定値に達したところで定電圧法に移行することが好ましい。この際、定電流法では、たとえば、電流密度を3mA/cm2に設定し、次の定電圧法で最終電流密度が0.3mA/cm2以下(初期設定値の1/10以下)になるまで陽極酸化を続ける(最終電流密度が小さくなれば、小さくなるほど、緻密な膜を形成することができる。)。
これにより、ノズルプレート20の表面、及び、ノズル孔内面のSiが露出していた部分にのみ50nm程度の陽極酸化膜が形成される。
本方法によれば、常温でSiO2層を形成することができるので、その形成過程で熱に弱い圧電アクチュエータ40を損傷させるおそれがない。
また、Siが露出していた部分にのみ選択的かつ均一にSiO2層を形成することができる。
また、このようにノズル孔22の内面にSiO2層を形成することにより、インク濡れ性を向上させることができる。
以上一連の工程で本実施の形態のインクジェットヘッド10が製造される。
このように製造されたインクジェットヘッド10は、接着剤を用いずにノズルプレート20が流路基板30に直接接合されているので、接着剤がノズル孔内部にはみ出てノズル孔の精度を低下させたり、接着剤がインクに悪影響を及ぼしたりすることがない。
また、ノズル孔22の形成に際して、SOI基板50のBOX層(SiO2層)50Bを除去する際、SiとSiO2の選択比を取れるため、ノズル孔22を高精度に形成することができる。
また、ノズルの表面及び内面にSiO2層が形成されるため、耐インク性を確保することができる。
なお、本実施の形態では、説明の都合上、最初に流路基板30の加工、形成を行っているが、流路基板30は、SOI基板50に接合する間に用意されていればよい。
なお、本実施の形態では、ノズルプレート20を構成するSOI基板50のSOI層(表面Si層)50Cの厚さを36μm±0.5μmとしているが、SOI層50Cの厚さは、ノズル孔22の形成方法、及び、ノズルのサイズ(インク入り側の開口サイズとインク吐出側の開口サイズ)によって決定される。
すなわち、たとえば、本実施の形態のように、ノズル孔22をKOHによる異方性エッチングで形成すると、ノズル内面がノズル表面(吐出面:ノズルプレートの表面)に対して54.7度の角度に固定されて形成される((100)面方位のSi基板の場合)。したがって、インク入り側の開口サイズとインク吐出側の開口サイズが決まると、自動的にSOI層50Cの厚さが決定される。
通常、ノズルのインク入り側の開口サイズは、流路のサイズによって決まるので、インク吐出側の開口サイズは、SOI層50Cの厚さで対応することとなる。その結果、本例では、SOI層50Cの厚さが、36μm±0.5μmとされている。
そして、このように極薄いノズルプレートは、単体ではハンドリングできず、結果として、SOI基板を用いて製造することが有効に作用する。
〔インクジェット記録装置〕
次に、本発明に係るインクジェットヘッド10が用いられるインクジェット記録装置について説明する。
次に、本発明に係るインクジェットヘッド10が用いられるインクジェット記録装置について説明する。
図9は、インクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。
同図に示すように、このインクジェット記録装置111は、インクの色ごとに設けられた複数のインクジェットヘッド112K、112C、112M、112Yを有する印字部112と、各インクジェットヘッド112K、112C、112M、112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、前記印字部112のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送する吸着ベルト搬送部122と、印字部112による印字結果を読み取る印字検出部124と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126と、を備えている。
各インクジェットヘッド112K、112C、112M、112Yは、図1に示したインクジェットヘッド10にそれぞれ相当するものである。
なお、図9では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。
また、ロール紙のマガジンに代えて、又は、これと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図9のように、裁断用のカッター128が設けられ、ロール紙は、このカッター128によって所望のサイズに切断される。
カッター128は、記録紙116の搬送路幅以上の長さを有する固定刃128Aと、該固定刃128Aに沿って移動する丸刃128Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃128Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃128Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター128は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部118から送り出される記録紙116は、マガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙116は、吸着ベルト搬送部122へと送られる。吸着ベルト搬送部122は、ローラー131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図10に示したとおり、ローラー131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー134が設けられており、この吸着チャンバー134をファン135で吸引して負圧にすることによってベルト133上の記録紙116が吸着保持される。
ベルト133が巻かれているローラー131、132の少なくとも一方にモータ(不図示)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図10において、時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は、図10の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。ベルト清掃部136の構成について詳細は図示しないが、たとえば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部122に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。従って、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において印字部112の上流側には、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹きつけ、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部112は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。
印字部112を構成する各インクジェットヘッド112K、112C、112M、112Yは、図10に示すように、本インクジェット記録装置111が対象とする最大サイズの記録紙116の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙116の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図9、10の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応したインクジェットヘッド112K、112C、112M、112Yが配置されている。記録紙116を搬送しながら、各インクジェットヘッド112K、112C、112M、112Yからそれぞれ色インクを吐出することにより、記録紙116上にカラー画像が形成される。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドが、インク色ごとに設けられてなる印字部112によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙116と印字部112を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、インクジェットヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能になり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては、本例のものに限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。たとえば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加することもできる。
図9に示すように、インク貯蔵/装填部114は、各インクジェットヘッド112K、112C、112M、112Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有しており、各タンクは、図示しない管路を介して各インクジェットヘッド112K、112C、112M、112Yと連通されている。
また、インク貯蔵/装填部114は、インク残量が少なくなると、その旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を有するとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部124は、印字部112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、このイメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まり、その他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部124は、少なくとも各インクジェットヘッド112K、112C、112M、112Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されてなるエリアセンサを用いることもできる。
印字検出部124は、各色のインクジェットヘッド112K、112C、112M、112Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部124の後段には、後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、たとえば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部126から排出される。
本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは、分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置111では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(不図示)が設けられている。
なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。カッター148は、排紙部126の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター148の構造は、上述した第1のカッター128と同様であり、固定刃148Aと丸刃148Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
なお、インク色ごとに設けられている各インクジェットヘッド112K、112C、112M、112Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号150によってインクジェットヘッドを示すものとする。
図11(a)は、インクジェットヘッド150の構造例を示す平面透視図である。
同図に示すように、本例のインクジェットヘッド150は、インク滴の吐出口であるノズル孔22と、各ノズル孔22に対応する圧力室32等からなる複数のインク室ユニット(1ノズルに対応した記録素子単位となる液滴吐出素子)160を千鳥でマトリクス状(2次元的)に配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
なお、記録紙116の搬送方向(副走査方向)と略直交する方向(主走査方向)に、記録紙116の全幅に対応する長さ以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。たとえば、図11(a)の構成に代えて、図11(b)に示すように、複数のノズル孔22が2次元に配列された短尺のヘッドユニット150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化し、記録紙116の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル孔22に対応して設けられている圧力室32は、その平面形状が概略正方形となっている。各圧力室32の略中央部にはそれぞれノズル孔22が配置されるとともに、それらの隅部には供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。
また、圧力室32の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
また、ノズル孔22や供給口154の配置も図11(a)、(b)に示す配置に限定されない。
次に、インクジェット記録装置111の制御系について説明する。
図12は、インクジェット記録装置111の制御系を示す要部ブロック図である。
インクジェット記録装置111は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170にはシリアルインターフェースやパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置111に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従ってモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従って後乾燥部142その他各部のヒータ189を駆動するドライバである。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。プリント制御部180において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ184を介してインクジェットヘッド150のインク滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図13において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるドットデータに基づいて各色のインクジェットヘッド150の圧電素子44(図1参照)を駆動するための駆動信号を生成し、圧電素子44に生成した駆動信号を供給する。ヘッドドライバ184にはインクジェットヘッド150の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部124は、図9で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部180に提供する。
プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部124から得られる情報に基づいてインクジェットヘッド150に対する各種補正を行う。
以上、本発明の液体吐出ヘッド及びその製造方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…インクジェットヘッド、20(50C)…ノズルプレート、22…ノズル孔、24…SiO2層、30…流路基板、32…SiO2層、34…圧力室、40…圧電アクチュエータ、42…振動板、44…圧電素子、44A…圧電体、44B…下部電極、44C…上部電極、50…SOI基板、50A…Si基板(ハンドル層)、50B…SiO2層(BOX層)、50C…表面Si層(SOI層)、50D…SiO2マスク層、52…マスク開口、111…インクジェット記録装置
Claims (6)
- Si基板と表面Si層の間にSiO2層が形成されたSOI基板を用いた液体吐出ヘッドの製造方法であって、
SOI基板の表面Si層の上にエッチングマスクとなるSiO2マスク層を形成する工程と、
前記SiO2マスク層にノズル開口に対応するマスク開口を形成する工程と、
前記SiO2マスク層に形成された前記マスク開口をエッチングして、前記SOI基板の表面Si層にノズル孔を形成する工程と、
表面にSiO2層が形成された流路基板を前記SOI基板に直接接合する工程と、
前記流路基板上に液体吐出手段を設ける工程と、
前記SOI基板のSi基板を除去して、SiO2層を露出させる工程と、
露出した前記SOI基板のSiO2層を除去して、表面Si層を露出させ、該表面Si層に形成された前記ノズル孔を開口させる工程と、
露出した前記SOI基板の表面Si層の表面、及び、該表面Si層に形成されたノズル孔の内面にSiO2層を形成する工程と、
からなることを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。 - 前記液体吐出手段は、振動板、圧電体、配線を含み、スパッタにより前記流路基板上に形成することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 開口したノズル孔の表面及び内面に陽極酸化法によりSiO2層を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 前記SOI基板の表面Si層の厚さが、36μm±0.5μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- KOHによる異方性エッチングで前記SOI基板の表面Si層にノズル孔を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 表面にSiO2層が形成された流路基板と、
前記流路基板上に設けられた液体吐出手段と、
前記流路基板に直接接合されたノズルプレートであって、Siによって厚さ36μm±0.5μmに形成され、表面及びノズル孔の内面にSiO2層が形成されたノズルプレートと、
からなることを特徴とする液体吐出ヘッド。
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