以下に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明が適用可能な画像形成装置の一実施形態の概略構成について、図1を参照して説明する。ここで、図1は本発明が適用可能なタンデム型カラー画像形成装置の概略構成図である。
本実施の形態に係る画像形成装置100では、例えば、画像読取装置102より読み取られたカラー原稿のカラー画像情報、図示しないパーソナルコンピュータや画像データ入力装置等から送られてくるカラー画像情報等が入力され、入力された画像情報に対して画像処理が行われるようになっている。
図1において、1Y,1M,1C,1Kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色トナー画像を形成する画像形成ユニットであり、複数の張架ロールにより張架された無端状の中間転写ベルト9の進行方向に沿って1Y,1M,1C,1Kの順で直列に配設されている。また、中間転写ベルト9は、これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kで順次形成された各色のトナー像が、互いに重ね合わされた状態で転写される中間転写体であり、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kに対応する静電潜像保持体である感光ドラム2Y,2M,2C,2Kのそれぞれに対向して配設される一次転写ロール6Y,6M,6C,6Kとの間に挿し込まれ、矢印方向に循環移動可能に形成されている。そして、中間転写ベルト9上に多重に転写された各色のトナー像は、給紙カセット17等から給紙された記録媒体としての記録用紙18上に一括して転写された後、定着装置15によって記録用紙18上に定着され、カラー画像が形成された記録用紙18が外部に排出されるようになっている。
ここで、画像読取装置102は、プラテンガラス上に載置された原稿を不図示の光源によって照明し、原稿からの反射光像を、走査光学系を介してCCDセンサ等からなる画像読取素子によって所定の解像度で読み取るように構成されている。
また、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、同様に構成されており、大別して、矢印方向に沿って所定の回転速度で回転する感光ドラム2Y,2M,2C,2Kと、この感光ドラム2Y,2M,2C,2Kの表面を一様に帯電する帯電ロール3Y,3M,3C,3Kと、当該感光ドラム2Y,2M,2C,2Kの表面に各色に対応した画像を露光して静電潜像を形成する露光装置4Y,4M,4C,4Kと、感光ドラム2Y,2M,2C,2K上に形成された静電潜像を現像する現像装置5Y,5M,5C,5Kと、現像装置5Y,5M,5C,5Kに所定の色のトナーを供給する着脱自在のトナーカートリッジ10Y,10M,10C,10Kと、ドラムクリーニング装置7Y,7M,7C,7K等とから構成されている。
さらに、本実施の形態において、感光ドラム2Y,2M,2C,2Kは、矢印方向に回転する金属製ドラムの表面に有機系感光材料、アモルファスセレン系感光材料、アモルファスシリコン系感光材料等からなる感光体層が形成されており、帯電ロール3Y,3M,3C,3Kは、この感光ドラム2Y,2M,2C,2Kの表面と接触し、該感光体層を所定の電位に帯電するように構成されている。
このように構成した画像形成装置における画像形成工程について、イエロートナー画像を形成する画像形成ユニット1Yを代表例として説明する。
まず、感光ドラム2Yは、帯電ロール3Yにより、その表面が一様に帯電される。次に、例えば、画像読取装置102によって読み取られた画像情報に基づき、露光装置4Yから出力されるレーザービームによりイエロー画像に対応する走査露光がなされ、感光ドラム2Yの表面にはイエロー画像に対応する静電潜像が形成される。
このイエロー画像に対応する静電潜像は現像装置5Yによってイエロートナー像となり、一次転写手段の一部を構成する一次転写ロール6Yの圧接力及び静電吸引力によって中間転写ベルト9上に一次転写される。一次転写後の感光ドラム2Y上に残留したイエロートナーは、ドラムクリーニング装置7Yによって掻き取られる。その後、感光ドラム2Yの表面は除電装置8Yによって除電された後、次の画像形成サイクルのために帯電ロール3Yにより再び帯電される。
多色のカラー画像形成を行う本画像形成装置100では、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの相対的な位置の違いを考慮したタイミングで、上記と同様の画像形成工程が画像形成ユニット1M,1C,1Kにおいても行われ、中間転写ベルト9上にフルカラートナー像が重ね合わされた状態で形成される。この中間転写ベルト9としては、例えば、可撓性を有するポリイミド等の合成樹脂フィルムを帯状に形成し、この帯状に形成された合成樹脂フィルムの両端を溶着等の手段によって接続することにより、無端ベルト状に形成したものを用いることができる。
中間転写ベルト9上に一次転写されたフルカラートナー像は、所定のタイミングで二次転写位置へと搬送される記録用紙18上に、中間転写ベルト9を支持するバックアップロール13と、このバックアップロール13に所定のタイミングで圧接する二次転写ロール12との圧接力及び静電吸引力によって二次転写される。なお、記録用紙18上に二次転写できなかった中間転写ベルト9上の残トナーは、そのまま中間転写ベルト9上に付着した状態でベルトクリーニング装置14まで搬送され、このベルトクリーニング装置14により中間転写ベルト9上から除去されて次の画像形成に備える。
一方、記録媒体の一例である記録用紙18は、画像形成装置100内の下部に配置された給紙カセット17から、所定のサイズのものが給紙ロール17aによって給紙される。給紙された記録用紙18は、複数の搬送ロール19及びレジストロール20によって、所定のタイミングで中間転写ベルト9の二次転写位置まで搬送される。そして、記録用紙18には、上述したように、二次転写手段としてのバックアップロール13と二次転写ロール12とによって、中間転写ベルト9上からフルカラートナー像が一括して転写される。
また、中間転写ベルト9上からフルカラートナー像が二次転写された記録用紙18は、中間転写ベルト9から分離された後、二次転写手段の下流側に配設された定着装置15へと搬送され、この定着装置15によって熱及び圧力でトナー像が記録用紙18上に定着されるようになっている。定着後の記録用紙18は、排出ロール23を介して排出トレイ24上に排出される。なお、本実施の形態において、定着装置15はユニット構造となっており、対応する画像形成装置本体100の筐体部分には、開閉自在のカバー(蓋部)Caが設けられており、このカバーCaを開閉することにより、定着ユニットの交換や用紙ジャム時の紙詰まり処理等が行えるようになっている。また、本発明が適用可能な画像形成装置は、上述のような構成に限定されるものではなく、開閉カバーを有してユニット構造の定着装置を収容する例えばプリンタ等にも当然に適用可能である。
次に、本実施の形態に係る定着装置15の構成について図2〜図5を参照して説明する。ここで、図2は、本実施の形態に係る定着装置の外観構成を示す模式的斜視図である。また、図3は、筐体やガイド部材を取り除いた状態での主要部材の構成を説明するための模式的斜視図であり、図4は、主要部材の構成を動作するための模式的断面図である。さらに、図5は、通常モードと封筒モードとにおける定着ベルトの位置を示す模式的断面図である。
図2〜図5に示すように、本実施の形態に係る定着装置15は、中空のユニット筐体150を備え、このユニット筐体150の内部には、互いに対向して定着圧接部(定着ニップ部)Nを形成する一対の定着回転体としての加熱ロール151及び定着ベルト153等が配設されている。一方、ユニット筐体150の外部には、図2に最も良く示されるように、加熱ロール151と定着ベルト153との対向部にて形成される定着ニップ部Nの下流側(本例では、図中、上側)に、トナー像が定着された記録用紙18の搬送をガイドする、その詳細を後述する一対の搬送ガイド部材(搬送案内部材)180,190が配設されており、定着ニップ部Nを通過した定着後の記録用紙18は、上記一対の搬送ガイド部材180,190に案内されて所定の搬送経路に沿って搬送されるようになっている。また、ユニット筐体150の軸方向一端部側には、定着ニップ部Nの圧接力を可変するための圧接力切り替えレバー160が配設されている。
ユニット筐体150の内部には、図3及び図4に模式的に示すように、ハロゲンランプ等の加熱源151aを内部に備える加熱部材としての円筒状の加熱ロール151と、加熱ロール151に転動して記録用紙18を挟持搬送する加圧部材としての無端ベルト状の定着ベルト153と、定着ベルト153の内側に接触配置されて加熱ロール151と定着ベルト153との間に所定の定着ニップ部Nを形成する押圧部材155等が配設されており、後述する圧接力切り替えレバー160を操作することにより押圧部材155を移動させて定着ニップ部Nにおける圧接力を切り替えるように構成されている。なお、図4では、明瞭化のために圧接力切り替えレバー160を省略した状態で簡略的に図示している。
加熱部材としての加熱ロール151は、不図示のモータにより所定の方向(本例では、反時計回り方向)に回転駆動されると共に、ベアリング151bを介して、軸方向(長手方向)両端部に設けられた板状の固定支持部材152により回転可能に支持されている。本実施の形態に係る加熱ロール151は、機械的強度に優れかつ熱伝導性が良好なアルミニウム等の金属製の円筒状のコアの表面に、シリコーンゴム等の弾性層が形成されており、さらにこの弾性層の表面には、記録用紙18上の未定着トナー像のオフセットを防止するために設けられた離型層が形成されている。なお、本実施の形態における加熱ロール151の周囲には、加熱ロール151の表面温度を計測する不図示の温度センサが配設されており、この温度センサによって加熱ロール151の表面温度が所定の温度となるように、加熱源151aの温度制御が行われるようになっている。
また、本実施の形態において、加熱ロール151を回転可能に支持する固定支持部材152の上部には、後述する可動端部157eが当接する、加熱ロール151の軸方向に突出するように設けられた板状の固定端部152eと、この固定端部152eと所定の間隔を設けて対向(本例では、固定端部152eの斜め上方にて対向)するようにボルト軸152sを介して固定端部152eに締結され、圧縮バネSが取り付けられる円板状の取付端部152fとが設けられている。
一方、加圧部材としての定着ベルト153は単層構造であってもよいが、本実施の形態では基材表面に離型層を施した積層構造のベルトを使用している。この定着ベルト153の基材としては、耐熱性を有すれば、例えば熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂基材や、ステンレス、ニッケル、銅合金等の金属基材が用いられる。また、離型層としては、表面に付着するトナーの剥離性が良好なものがよく、その材質としては、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等のフッ素系樹脂が用いられる。
図4に最も良く示されるように、本実施の形態において、定着ベルト153の内部には、加熱ロール151との対向面にて定着ベルト153を押圧し、所定の定着ニップ部Nを形成する略直方体形状の押圧部材155が軸方向に延在するように配設されていると共に、例えば低熱伝導性で剛性の高い樹脂からなる断面略円弧状の不図示のベルト走行ガイドが軸方向に配設されている。押圧部材155の軸方向両端部は、接続プレート155Pを介して略方形の板状の第1可動支持部材156に取り付けられており、第1可動支持部材156の右上端部には、回転自在に形成されたガイドロール156Rが軸方向に突設されている。さらに、第1可動支持部材156は、略逆く字状の第2可動支持部材157に取り付けられている。より具体的には、第1可動支持部材156は、その右上端部に設けられたガイドロール156Rの略下方端に位置する可動支点Pmにて、第2可動支持部材157に対して回転可能に取り付けられていると共に、第2可動支持部材157は、その下端部に位置する固定支点Pfにて、固定支持部材152に対して回転可能に取り付けられている。また、第2可動支持部材157の上端部には、前述した固定支持部材152の固定端部152eと対向するように軸方向に突設させた板状の可動端部157eが形成されており、この第2可動支持部材157の可動端部157eと固定支持部材152の取付端部152fとの間にボルト軸152sを介して圧縮バネSが装着されている。さらに、第1可動支持部材156のガイドロール156Rと対向する位置には、偏心回転部材としての駆動カム160Cが、ガイドロール156Rと接触(当接)するように配設されており、この駆動カム160Cは、定着ベルト153の背面側で軸方向に延在する駆動シャフト160Sと一体に揺動自在に接続されている。なお、上述した固定支持部材152、第1可動支持部材156、第2可動支持部材157等は、図3に最も良く示されるように、加熱ロール151及び定着ベルト153の軸方向両端部に互いに対向するようにそれぞれ設けられていると共に、駆動シャフト160Sは両端部の第2可動支持部材157を連結している。
本実施の形態に係る圧接力切り替えレバー160は、把手部160aを有する断面略く字状の部材であり、その下端部にて駆動カム160Cと同軸一体に駆動シャフト160Sと接続されている。具体的には、駆動シャフト160Sの一端部側であって、駆動カム160Cの軸方向外側(本例では、図3中、手前側)に設けられており、この圧接力切り替えレバー160により駆動シャフト160Sを回転させて駆動カム160Cを駆動し、第1可動支持部材156に取り付けられた押圧部材155を介して、加熱ロール151に対する定着ベルト153の圧接力(ニップ荷重)を切り替えるようになっている。
本実施の形態における押圧部材155は、図4に最も良く示されるように、定着ニップ部N内で、定着ベルト153の回転方向の上流側に配設された弾性変形可能なパッド部155aと、このパッド部155aと隣接して、定着ニップ部N内で、定着ベルト153の回転方向の下流側に配設され、かつパッド部155aよりも高い剛性を有するヘッド部155bとで構成されている。ここで、パッド部155aは、シリコーンゴム等の弾性材料によって形成され、加熱ロール151と定着ベルト153との定着ニップ部Nのうちプレニップ域を形成し、記録用紙18上の未定着トナー像を安定して定着するようになっている。なお、このパッド部155aの表面に、定着ベルト153との摩擦抵抗を小さく維持し、定着ベルト153の回転を一層スムーズにするため、例えばPTFE、PFA等のフッ素系樹脂シートからなる低摩擦シートを接着等によって設けるようにしてもよい。
また、ヘッド部155bは、定着ニップ部N内のポストニップ域(剥離ニップ域)を形成するもので、プレニップ域より高い圧力分布がもたらされるようになっている。ここで、ヘッド部155bとしては、例えばアルミニウム、ステンレス、鋼、銅、黄銅等の金属や合金並びに樹脂材料からなる剛性の高い材料(非弾性材料)が主として使用される。なお、本実施の形態では、剛性の高いヘッド部155bを凹状に形成し、このヘッド部155bの凹部にてパッド部155aを保持して両者を一体に形成している。このように弾性部材であるパッド部155aを入口側に設け、非弾性部材であるヘッド部155bを出口側に設けて定着ニップ部Nを形成することにより、通常の厚さの記録用紙18を定着する際に、良好な定着性能及び良好な剥離性能を同時に実現している。
上記駆動カム160Cは、圧接力切り替えレバー160と一体に駆動シャフト160Sと連結されて所定の範囲で回転するようになっており、その周縁部にガイドロール156Rとの接触面として高荷重面C1、解除面C2、低荷重面C3が形成された所定の曲面形状を有している。より具体的には、圧接力切り替えレバー160の可動範囲に対応する駆動カム160Cの周縁部には、高荷重面C1及び低荷重面C3が形成されていると共に、その中間部にガイドロール156Rを保持する凹状の解除面C2が形成されている。そして、各接触面C1〜C3と駆動シャフト(回転中心)160Sとの距離は、高荷重面C1>低荷重面C3>解除面C2となるように設定されている。これにより、圧接力切り替えレバー160を回転させて駆動カム160Cの高荷重面C1を第1可動支持部材156のガイドロール156Rに接触させた場合には、圧縮バネSの付勢力により、通常の厚さ(例えば、秤量60〜163g/m2)の記録用紙18上の未定着トナー像を定着するための高いニップ荷重(例えば、約250N)が、定着ニップ部Nに付与されるようになっている。なおこの際、定着ベルト153の背面側に配置された押圧部材155は、そのパッド部155a及びヘッド部155bの双方にて定着ベルト153を押圧して定着ニップ部Nを形成しており、前述したように通常モードにおける定着性能及び剥離性能を同時に確保している。
上記状態から圧接力切り替えレバー160を所定の方向(本例では、時計回り方向)に回転させた場合には、駆動カム160Cが同方向に回転駆動され、第1可動支持部材156のガイドロール156Rとの当接面が高荷重面C1から解除面C2に移動してガイドロール156Rが解除面C2の凹部に係止される。この際、第1可動支持部材156は、ニップ荷重の反力により、所定の方向(本例では、図4中、時計回り方向)に回転すると共に、第2可動支持部材157は、圧縮バネSにより逆方向(本例では、図4中、反時計回り方向)に回転し、可動端部157eが固定端部152eに当接して停止する。これにより、ニップ荷重は解除され、定着ベルト153と加熱ロール151とが容易に離間可能となる。
また、ニップ荷重を封筒や厚紙を定着するための低いニップ荷重(例えば、約30〜40N)に設定する場合には、圧接力切り替えレバー160を上記状態からさらに所定の方向(本例では、時計回り方向)に回転させることによって所望のニップ荷重に容易に切り替えることができる。具体的には、駆動カム160Cの解除面C2がガイドロール156Rと接触している状態から、圧接力切り替えレバー160を所定の方向(本例では、時計回り方向)に、さらに回転させると、駆動カム160Cが同方向に一体に回転駆動され、第1可動支持部材156のガイドロール156Rとの当接面が解除面C2から低荷重面C3に変更される。この際、第1可動支持部材156は、ガイドロール156Rを介して駆動カム160Cに押圧されて、所定の方向(本例では、図4中、反時計回り方向)に回転し、パッド部155aのみが定着ベルト153を押圧して定着ニップ部Nを形成するように、押圧部材155と定着ベルト153との当接角度を変更する。なおこの際、第2可動支持部材157の可動端部157eは、圧縮バネSの弾性力により固定支持部材152の固定端部152eと近接した状態(若干隙間がある状態)となっており、駆動カム160Cの高荷重面C1がガイドロール156Rと接触している状態(高いニップ荷重が付与されている状態)に比し、定着ベルト153が搬送方向下流側に若干移動していると共に、加熱ロール151と定着ベルト153との間に所定の低ニップ荷重を付与して、封筒や厚紙における紙しわの発生を未然に防止している。
すなわち、本実施の形態における定着装置15では、通常の厚さの記録用紙を定着するための高圧接力(高ニップ荷重)モード(以下、通常モードとも称する)、封筒や厚紙を定着するための低圧接力(低ニップ荷重)モード(以下、封筒モードとも称する)、ジャム処理等のためにニップ荷重を解除する解除モードの3つの圧接力切り替えモードが、圧接力切り替えレバー160の回動位置に応じて設定可能となっている。そして、図5に模式的に示すように、通常モードに比し、封筒モードでは、加圧部材である定着ベルト153の位置が搬送方向下流側に移動して、定着ニップ部Nを形成する押圧部材155がパッド部155a及びヘッド部155bからパッド部155aに切り替わるようになっている。つまり、圧接力切り替えレバー160を切り替えることにより、ニップ荷重、ニップ当接角を変更すると共に、定着ニップ部Nを形成する押圧部材155を変更することができ、記録媒体に応じた適切なニップ荷重及び押圧部材の設定の変更を可能としている。
また、本実施の形態における搬送ガイド部材180,190は、定着ニップ部Nの下流側に対向配置されており、定着ベルト153側(本例では、図5中、定着ベルト153の上側)には、加圧側搬送ガイド部材180が配設されている一方、加熱ロール151側(本例では、図5中、加熱ロール151の上側)には、加熱側搬送ガイド部材190が配設されている。そして、搬送ガイド部材180,190のぞれぞれは、互いに対向して対をなす複数の搬送ロール180R,190Rを有しており、かかる搬送ロール対180R,190Rにより搬送圧接部(搬送ニップ部)N1を形成している。
ところで、上述したようにベルト状の加圧部材153を押圧部材155により、加熱ロール151側に押圧する構成の場合には、定着ベルト153が加熱ロール151の表面に食い込み、加熱ロール151側から見て凹形状の定着ニップ部Nが形成されることとなる(特に、剛性の高いヘッド部155bが押圧する定着ニップ部Nの出口側に凹形状のニップ部が形成されることとなる)。このため、かかる形状の定着ニップ部Nに記録用紙18を通紙する際には、定着後の記録用紙18が加圧部材153側にカールし易くなる。特に、腰(剛性)の弱い薄紙(例えば、坪量60〜90g/m2)を定着ニップ部Nに通紙する場合には、より一層定着ベルト153側にカールし易くなり、定着後の記録用紙18が、加圧部材153と加圧側搬送ガイド部材180との間に入り込んでジャムや用紙折れの要因となったり、加圧側搬送ガイド部材180の搬送ロール180Rに食い込むように突入(衝突)して、記録用紙18の先端部へダメージを与えたり、記録用紙18先端が折れ曲がるといった虞が生じる。
そこで、本実施の形態に係る搬送ガイド部材180では、次のようにして上述の問題の発生を未然に防止している。
以下に、本実施の形態に係る加圧側搬送ガイド部材180の構成を図6及び図7をさらに参照して説明する。ここで、図6は、加圧側搬送ガイド部材180の構成を示す模式的斜視図であり、図7は、加圧側搬送ガイド部材180の構成を説明するための模式的断面図である。
図5に模式的に示したように、本実施の形態に係る搬送ガイド部材180,190は、定着ニップ部Nの下流側(本例では、図5中、上側)にて互いに対向する一対のガイド部材として配設されており、加熱側搬送ガイド部材190は、定着面側に配置される従来公知のガイド部材と同様な構成であり、軸方向に沿って設けられた複数の略三角形状の案内片としてのガイドリブ195と、これらガイドリブ195間に設けられ、その表面がPFAチューブ等のフッ素樹脂にて形成された複数の搬送ロール190Rとを備えている。
一方、本実施の形態に係る加圧側搬送ガイド部材180は、定着面と反対側に配置されるガイド部材であり、図6(a),(b)に模式的に示すように、回転軸180sに取り付けられ、用紙幅中央を中心に対称な位置に配置(本例では、4ヶ所)された複数の搬送ロール180Rと、回転軸180sを挟んで上流側と下流側に渡って軸方向に沿って複数配設された案内片としてのガイドリブ185とを備えている。
本実施の形態において、加圧側搬送ガイド部材180の搬送ロール180Rは、ゴム等の弾性部材により形成され、不図示の駆動源と接続されて回転駆動される駆動ロールであると共に、加熱側搬送ガイド部材190の搬送ロール190Rは、不図示のバネにより上記駆動ロール180Rに対して圧接するように対向配置されて搬送ロール180Rの回転に伴って転動する従動ロールである。そして、対向配置されたこれらの搬送ロール対180R,190Rにより、複数の搬送ニップ部N1が軸方向に沿って形成されている(図5参照)。
加圧側搬送ガイド部材180のガイドリブ185は、搬送ロール180Rの回転軸180sを挟んで回転軸180sと直交するように配置された略コ字状の部材であり、搬送ロール180Rの下流側(図6中、上側)に位置する出口側リブ185oと上流側(図6中、下側)に位置する入口側リブ185iとが耐熱性樹脂により一体形成されている。ここで、ガイドリブ185の出口側リブ185oの搬送ニップ部N1側は、略三角形状に形成されており、加熱側搬送ガイド部材190の略三角形状のガイドリブ195の出口側リブ195oと略平行にその先端が対向するように配置形成されている。
同様に、ガイドリブ185の入口側リブ185iの搬送ニップ部N1側は、記録用紙18と対向して搬送方向上流側から下流側に向かって内側に傾斜(定着ベルト153から搬送ニップ部N1近傍に向かって傾斜)するガイド辺185gを有する略三角形状に形成されている。さらに、この入口側リブ185iは、搬送ロール180Rが存在する軸方向の領域(以下、ロール領域とも称する)R1に対応して搬送ロール180Rの上流側(下方)に配置され、定着後の記録用紙18を当該搬送ロール180Rに向かって搬送ガイドするガイドリブ(以下、ロールガイドリブとも称する)185i1と、搬送ロール180Rが存在しない軸方向の領域(以下、非ロール領域とも称する)R2に対応して回転軸180sの上流側(下方)に配置され、定着後の記録用紙18を搬送方向に沿って搬送ガイドするガイドリブ(以下、非ロールガイドリブとも称する)185i2とから構成されており(図6(b)参照)、上記ロールガイドリブ185i1のガイド辺(以下、ロールガイド辺とも称する)185g1と非ロールガイドリブ185i2のガイド辺(以下、非ロールガイド辺とも称する)185g2とでは、その傾斜角度を異ならせている。
具体的には、図7に最も良く示されるように、非ロールガイドリブ185i2の非ロールガイド辺185g2は、軸方向に沿った接平面L0がさらに搬送ロール180Rの表面にも接するように、その傾斜角度が設定されている(図7(b)参照)のに対し、ロールガイドリブ185i1のロールガイド辺185g1は、軸方向に沿った接平面が搬送ロール180Rと非接触で加熱側搬送ガイド部材190の搬送ロール190Rと交差(搬送ロール190Rを通過)するように、その傾斜角度が設定されている(図7(a)参照)。なお、図7では、簡明化のため、接平面を軸方向と直交する断面で切断した直線(例えば、直線L0)として示している。
すなわち、非ロールガイドリブ185i2の非ロールガイド辺185g2の傾斜角度を、搬送ロール180Rと接するように設定すると共に、ロールガイドリブ185i1のロールガイド辺185g1の傾斜角度を、非ロールガイドリブ185i2の非ロールガイド辺185g2の傾斜角度よりも加熱側搬送ガイド部材190の搬送ロール190R側に寝かせる(傾斜させる)ことにより、定着後の記録用紙18を、非ロール領域R2では搬送ニップ部N1に円滑に導くと共に、ロール領域R1ではロールガイド辺185g1を搬送ロール180Rに対するジャンプ台のように機能させて記録用紙18(特に、その先端が定着ベルト153側にカールした記録用紙)が搬送ロール180Rに食い込むように突入(衝突)することを未然に回避して、衝突による記録用紙18に対するダメージを効果的に抑制している。
なお、本実施の形態において、ロールガイドリブ185i1及び非ロールガイドリブ185i2はいずれも、そのガイド辺185g1,185g2の上流側端部185gu1,185gu2(図7中、定着ベルト153側端部)の位置が、軸線方向に沿って同一の位置(高さ)となるように配置形成されていると共に、ガイドリブ185i1,185i2と定着ベルト153とが最も接近する封筒モードの際の定着ベルト153と非接触であって、かつ、可能な限り近接した位置となるように設定されている。一般に、記録用紙18のカールは用紙端部(搬送方向と直交する幅方向端部)で大きくなるが、上述のようにガイド辺185g1,185g2の上流側端部185gu1,185gu2の位置を設定することにより、様々なサイズの記録用紙18が搬送されてきた場合でも、定着ベルト153側にカールした記録用紙18が定着ベルト153とガイドリブ185i1,185i2との間に入り込むのを防止すると共に、ガイド辺185g1,185g2の上流側端部185gu1,185gu2を不揃いに配置した構成に比し、記録用紙18の幅方向端部が折れ曲がってしまう、いわゆるドッグイアーを効果的に防止することができる。
さらに、ロールガイドリブ185i1のロールガイド辺185g1に導かれた記録用紙18と、対向する加熱側搬送ガイド部材190の搬送ロール190Rとの不測の接触(衝突)を回避して、記録用紙18を搬送ニップ部N1により円滑に導くという観点からは、図7(a)に最も良く示されるように、ロールガイドリブ185i1のロールガイド辺185g1の下流側端部185gd1の位置を、非ロールガイドリブ185i2の非ロールガイド辺185g2の軸方向に沿った接平面と、定着ニップ部Nと搬送ニップ部N1との軸方向に沿った共通接平面との間の領域、すなわち、図7中、直線L0と直線L1とで挟まれた領域内に配置することが好ましい。
なお、直線L0と直線L1とのなす角度α(図7参照)、すなわち、定着ニップ部Nと搬送ニップ部N1との共通接線に対する非ロールガイドリブ185i2の非ロールガイド辺185g2の傾斜角度αは、25〜35°であることが好ましい。非ロールガイド辺185g2の傾斜角度αを、このような角度範囲に設定することにより、用紙カールが発生し易い高温高湿環境(例えば、温度28℃、湿度80%)にて坪量70g/m2程度の薄紙(A4サイズ)を定着ニップ部Nに通紙(搬送速度は148.5mm/sec)した場合でも、記録用紙18の折れ曲がりや搬送ロール180Rの傷等のダメージを生じさせることなく、良好な搬送性能が得られることが確認できた。
また、上述した実施の形態では、各ガイド辺185gの形状を直線形状とした構成を例示したが、搬送方向に沿って(搬送方向上流側から下流側に向かって)、定着ベルト153側から搬送ニップ部N1近傍に向かうようにガイド辺185gの上流側端部185guと下流側端部185gdとが配置形成されていれば差し支えなく、ガイド辺185gの途中の形状は曲面(軸方向と直交する断面が曲線)であってもよい。このようにガイド辺185gを曲面形状とした場合には、ガイド辺185gの上流側端部185guと下流側端部185gdとの共通接平面(共通接線)をガイド辺185gとして規定することにより、ガイド辺185gの傾斜角度を設定することができる。
なお、本発明の技術的範囲は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨に逸脱しない範囲において多様な変更もしくは改良を加え得るものである。例えば、上述した各実施の形態では、入口側リブ185iと出口側リブ185oとを一体に樹脂成型した構成を例示したが、例えば、入口側リブ185iを構成するロールガイドリブ185i1と非ロールガイドリブ185i2とを別部材により形成してもよい。具体的には、例えば、ロールガイドリブ185i1を、非ロールガイドリブ185i2に比し摩擦係数のより小さい材料やトナー非着性(剥離性)のより高い材料(例えば、PFA等のフッ素系樹脂)で形成してもよいし、ロールガイド辺185g1の表面を同様な材料でコーティングしてもよい。これにより、両面印刷時等においても搬送ガイド部材へのトナーの付着を防止して画像欠陥を防止すると共に、良好な搬送性能を確保することが可能となる。
また、上述した実施の形態では、圧接力を切り替える際に、定着ベルト153が搬送方向に移動するように構成した定着装置15に搬送ガイド部材180を適用した構成を好適な例として例示したが、当然に、上述の搬送ガイド部材180を、従来公知の一定の圧接力を付与する定着装置に適用してもよい。