以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置を示す断面図である。画像形成装置10は、胴内排紙方式のタンデム型カラー複写機であり、下側の装置本体11と上側の装置本体16とを備える。
下側の装置本体11には、給紙部14と、画像形成部12と、定着器13が配設され、また、上側の装置本体16には、原稿画像を読み取る画像読取部20が配設される。下側の装置本体11と上側の装置本体11との間には排紙空間15が形成され、この排紙空間15に定着処理後の用紙Pが排出される。
画像形成部12は、給紙部14から給紙された用紙Pにトナー像を形成するものであり、中間転写ベルト125の回転方向の上流側から下流側へ向けてマゼンタ用ユニット12Mと、シアン用ユニット12Cと、イエロー用ユニット12Yと、ブラック用ユニット12Kとが配設される。
各画像形成ユニット12M、12C、12Y、12Kには、像担持体である感光体121が配設され、感光体121の周囲に、現像器122、露光ユニット124、帯電器123及びクリーニング装置126が配設される。
現像器122は、感光体121の右方に対向して配置され、感光体121にトナーを供給する。帯電器123は、感光体回転方向に対し現像器122の上流側であって感光体121の表面に対向して配置され、感光体121表面を一様に帯電させる。
露光ユニット124は、画像読取部20にて読み取った文字や絵柄などの画像データに基づいて、感光体121を走査露光するためのものであり感光体121の下方に設けられる。露光ユニット124には、図示しないレーザ光源、ポリゴンミラー等が設けられ、レーザ光源から出射されたレーザ光が、ポリゴンミラーを介して、帯電器123の感光体回転方向下流側から、感光体121の表面に照射される。照射されたレーザ光により、感光体121表面には静電潜像が形成され、この静電潜像が現像器122によりトナー像に現像される。
無端状の中間転写ベルト125は、駆動ローラー125aとテンションローラー125bに張架されている。駆動ローラー125aは図示しないモーターによって回転駆動され、中間転写ベルト125は駆動ローラー125aの回転によって循環駆動させられる。
この中間転写ベルト125に接触するように感光体121が中間転写ベルト125の下方で搬送方向に沿って隣り合うように配列されている。1次転写ローラー125cは、中間転写ベルト125を挟んで感光体121と対向し、中間転写ベルト125に圧接して1次転写部を形成する。この1次転写部において、中間転写ベルト125の回転とともに所定のタイミングで各感光体121のトナー像が中間転写ベルト125に順次転写される。これにより、中間転写ベルト125表面にはマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたトナー像が形成される。
2次転写ローラー113は、中間転写ベルト125を挟んで駆動ローラー125aと対向し、中間転写ベルト125に圧接して2次転写部を形成する。この2次転写部において、中間転写ベルト125表面のトナー像が用紙Pに転写される。転写後に、図示しないベルトクリーニング装置が中間転写ベルト125に残存するトナーを清掃する。
画像形成装置10内の下方には給紙部14が配設され、給紙部14には、用紙Pを収納し、挿脱自在に装置本体11に装着された用紙トレイ141が設けられる。給紙部14の左方には、用紙トレイ141からピックアップローラー142によって繰り出された用紙Pを中間転写ベルト125の2次転写部に搬送ローラー112によって搬送する第1用紙搬送路111が配設される。更に、装置本体11の左上方には、画像が形成された用紙Pに対して定着処理を行う定着器13と、定着処理の行われた用紙を用紙排出トレイ151に搬送する第2用紙搬送路114とが配設される。
中間転写ベルト125における画像形成動作と給紙動作とのタイミングを取って、用紙Pが2次転写部に搬送される。2次転写部に搬送された用紙Pは、バイアス電位が印加された2次転写ローラー113によって、中間転写ベルト125上のトナー像を2次転写され、定着器13に搬送される。
定着器13は、熱源により加熱される定着ローラー131と、定着ローラー131に圧接して配設された加圧ローラー132とを備え、トナー像が転写された用紙Pを加熱及び加圧することにより定着処理を行う。トナー像が定着された用紙Pは第2用紙搬送路114を通って、排出ローラーにより用紙排出トレイ151に排出される。
図2は定着器を示す断面図であり、図1の裏面側から見たものである。定着器13は、加熱部材である定着ローラー131と、加圧部材である加圧ローラー132とを備え、その他に、誘導加熱部133と温度センサー134を備え、これらの部材は定着部を構成する。
定着器13は、電磁誘導加熱方式の熱源を用いた定着方式であり、定着ローラー131の外周に対向して配設される誘導加熱部133と、定着ローラー131表面の温度を検知するサーミスタ等からなる温度センサー134とを備え、また、誘導加熱部133と温度センサー134は装置本体11に固定保持され、一方、定着ローラー131と加圧ローラー132は装置本体11に回転可能に保持されている。
定着ローラー131は、円筒型ステンレスからなる基材131aと、加圧ローラー132に圧接するニップ部Nへ弾性と離型性の向上のためにシリコンゴムスポンジからなる弾性層131dとを備え、基材131aと弾性層131dとの間に、基材側から順に断熱層131bと誘導発熱層131cを備える。
加圧ローラー132は、アルミニウム製の芯金からなる基材132aと、ニップ部Nへ弾性を付与するために基材132a上に形成されるシリコンゴムからなる弾性層132bと、ニップ部Nで未定着トナー像を溶融定着する際の離型性を向上させるために弾性層132bの表面を覆うフッ素樹脂チューブからなる離型層132cとを備える。
また、加圧ローラー132は、モーター等の駆動源(図略)によって回転駆動させられ、さらに定着ローラー131に対してその中心方向に加圧する。これにより、加圧ローラー132が定着ローラー131に圧接し、加圧ローラー132が回転すると、定着ローラー131がニップ部Nにおいて同方向に従動回転する。
温度センサー134は、定着ローラー131表面において軸方向(幅方向)の中央部の通紙領域と、小さいサイズの用紙やA4タテの用紙が通紙された時に非通紙領域となる軸方向の両端部とに対向するように配置され、夫々の領域の温度を検知する。温度センサー134にて検知された温度に基づいて、誘導加熱部133の電力が制御され、定着ローラー131表面が所定の温度に保持される。
誘導加熱部133は、励磁コイル133aとホビン133bとコア133cとを備え、電磁誘導により定着ローラー131を加熱するものであり、定着ローラー131の軸方向に延びて、定着ローラー131の外周の一部を囲うように対向して配設される。
銅線からなる励磁コイル133aは、ホビン133bに巻回され、コア133cの中央部の周りを軸方向に周回するように、定着ローラー131外周の一部にわたって渦巻状に配設されている。また励磁コイル133aは、図示しない電源に接続されていて、電源から供給される高周波電流により磁束を発生させる。誘導加熱部133から発せられる磁束は、図2の紙面に平行な方向に発せられ、定着ローラー131の誘導発熱層131cを貫通する。誘導発熱層131cの磁束の周りには渦電流が生じ、渦電流が流れると、誘導発熱層131c内の電気抵抗によってジュール熱が発生して、誘導発熱層131cが発熱することになる。
定着ローラー131が誘導加熱部133によって所定の温度となるように、温度センサー134の検知する温度に基づいて電源の電力を制御している。そして、定着ローラー131が加熱され所定の温度に昇温すると、ニップ部Nで挟持された用紙Pが加熱されるとともに、加圧ローラー132にて加圧されることにより、用紙P上の粉体状態のトナーが溶融定着される。
図3は定着器を示す斜視図である。定着器13は、前述の定着ローラー131、加圧ローラー132等からなる定着部30の他に、加圧機構50と、ニップ圧切り替え部60とを備える。なお、図3では説明の便宜上、定着部30、加圧機構50、ニップ圧切り替え部60のみを図示している。
定着ローラー131及び加圧ローラー132は長手方向の両端側で回転可能に支持され、加圧ローラー132の両端側には加圧機構50及びニップ圧切り替え部60が配設される。
加圧機構50は、加圧ローラー132と定着ローラー131とを圧接させ、圧接するニップ部N(図2参照)でニップ圧を発生させるものであり、第1アーム部材51と、第2アーム部材52と、弾性部材53とを備え、加圧ローラー132の両端側に一対配設される。
ニップ圧切り替え部60は、弾性部材53の付勢力を可変にするものであり、モーター、ギア列等からなる駆動部70と、偏芯カム62と、偏芯カム62に係合するコロ61と、回転連結軸63とを備える。駆動部70は加圧ローラー132の右側に配設され、偏芯カム62とコロ61とは加圧ローラー132の両端側に一対配設される。回転連結軸63は両側の偏芯カム62と一体に設けられ、駆動部70の回転駆動力を右側の偏芯カム62と左側の偏芯カム62とに伝達する。これによって、ニップ圧切り替え部60は加圧ローラー132の両側の弾性部材53の付勢力を同時に変更することになる。
図4は加圧機構とニップ圧切り替え部とを示す側面図であり、図4(a)は通常加圧状態を示し、図4(b)は減圧状態を示すものである。
図4(a)に示すように、第1アーム部材51は鉄等の金属板で所定の形状に形成される。第1アーム部材51の略中央部には、加圧ローラー132が回転可能に軸支されている。第1アーム部材51の下部には、装置本体に固設された支軸54に嵌装する孔が形成され、第1アーム部材51は、支軸54を中心として左右方向に揺動自在に保持される。第1アーム部材51の上部には、左方向に延びる固定軸55の一端が固設され、また、固定軸55を固設する部分から左側に延在して形成される第1当接部51aが形成される。第1当接部51aは平板状をなし、第1当接部51aには固定軸55の他端が固設される。固定軸55には弾性部材53が巻装され、第1当接部51aには弾性部材53の一端が当接している。
第2アーム部材52は鉄等の金属板で所定の形状に形成される。第2アーム部材52の右側部には、平板状をなす第2当接部52aが形成される。第2当接部52aは、第1アーム部材51の第1当接部51aに対向するとともに、固定軸55に対して左右方向に移動可能であるように、固定軸55を貫通させる孔を有する。また、第2当接部52aには弾性部材53の他端が当接している。
弾性部材53は、ニップ部Nにニップ圧を付与するためのものであり、圧縮コイルスプリングからなり、縮小した状態でその両端部を第1当接部51aと第2当接部52aに当接している。このため、第1当接部51aには左方向の付勢力が作用し、第2当接部52aには右方向の付勢力が作用し、弾性部材53によって第1当接部51aと第2当接部52aとは互いに離間する方向に付勢されることになり、加圧ローラー132が定着ローラー131に圧接する。
また、第2アーム部材52は、第2当接部52aから左側に延びて形成され、その左端部には円筒状のコロ61が回転可能に取り付けられる。
コロ61には偏芯カム62が係合する。偏芯カム62は、回転連結軸63(図3も参照)の回転中心の周りに回転可能であり、その回転中心から外周縁までの距離が周上において異なるように形成されている。偏芯カム62の外周縁には、凹状の第1凹部62a及び第2凹部62bが形成される。第1凹部62aと第2凹部62bは回転中心から異なる周面位置に設けられ、第1凹部62aの回転中心からの距離は、第2凹部62bの回転中心からの距離に対して大きくなるように設定されている。第1凹部62a及び第2凹部62bはコロ61に係合可能であり、回転連結軸63が後述する駆動部70によって回転させられると、図4(a)に示す第1凹部62aがコロ61に係合した状態と、図4(b)に示す第2凹部62bがコロ61に係合した状態とに切り替えられる。
図4(a)に示す第1凹部62aがコロ61に係合している場合には、第2アーム部材52の第2当接部52aと第1アーム部材51の第1当接部51aとの間隔は、所定の距離にあり、弾性部材53は所定量だけ縮小している。図4(b)に示す第2凹部62bがコロ61に係合している場合には、図4(a)の状態に対して、第2アーム部材52は、右方向に変位し、第2当接部52aと第1当接部51aとの間隔は大きくなり、弾性部材53は伸長している。
従って、図4(b)の状態では、図4(a)の状態に比べると、弾性部材53による付勢力は小さくなり、これにともなって、ニップ部Nのニップ圧が小さくなり減圧状態となる。尚、ニップ部Nのニップ圧が小さくなるために、第1アーム部材51は支軸54を中心として右方向に僅かに回転移動する。
本実施形態では、偏芯カム62の第1及び第2凹部62a、62bは、その回転中心に対して互いに対向する位置(180°位相のずれた位置)に配置される。これによって、偏芯カム62を180°回転させると、第1凹部62aがコロ61に係合し、一方、偏芯カム62を180°逆回転させると、第2凹部62bがコロ61に係合する。
図4(a)に示すように、偏芯カム62の第1凹部62aがコロ61に係合した場合には、第2アーム部材52の第2当接部52aには、弾性部材53によって矢印A方向の付勢力が作用する。そして、本実施形態では、コロ61の中心軸と偏芯カム62の回転中心との並び方向が矢印A方向に略同じになるように設定される。このように設定すると、コロ61と第1凹部62aとの係合部に矢印A方向の付勢力の略全てが作用し、コロ61と第1凹部62aとが弾性部材53によって確実に係止される。
図4(a)の状態から偏芯カム62を180°回転させて、図4(b)に示すように、偏芯カム62の第2凹部62bがコロ61に係合した場合には、第2アーム部材52の第2当接部52aには、弾性部材53によって、図4(a)の状態より小さい矢印A方向の付勢力が作用する。そして、コロ61の中心軸と偏芯カム62の回転中心との並び方向(以下、「コロ61と偏芯カム62の並び方向」と記載することがある)が矢印A方向に略同じになるように設定される。このように設定すると、コロ61と第2凹部62bとの係合部に矢印A方向の付勢力の略全てが作用し、コロ61と第2凹部62bとが弾性部材53によって確実に係止される。
尚、コロ61と偏芯カム62の並び方向が矢印A方向に一致していると、コロ61と第2凹部62bとの係合部に矢印A方向の全ての付勢力が作用することになるが、矢印A方向に一致していなくとも、例えば、コロ61と偏芯カム62の並び方向が矢印A方向に対して10°程度傾いていても、コロ61と第1凹部62aとの係合部において、A方向の付勢力の、コロ61と偏芯カム62の並び方向を向く分力が、この分力に対する直角方向の分力より十分に大きいのであれば、コロ61と第1凹部62aとが弾性部材53によって確実に係止される。このことは、第2凹部62bがコロ61に係合する場合にも該当する。
偏芯カム62を正逆回転させるために、駆動部70が設けられる。図5〜図7は駆動部70を詳細に示す図であり、図5は駆動部の通常加圧状態を示す斜視図であり、図6は駆動部の減圧状態を示す斜視図であり、また、図8は歯欠けギアの通常加圧時の状態(a)と歯欠けギアの減圧時の状態(b)を示す図である。尚、図5、図6は便宜上、一部のギアをギア列から取り外して示している。
図5に示すように、駆動部70は、モーター72と、モーターギア73と、ギア列74〜80と、復帰スプリング82と、装置本体に固設される台板71とを備える。
モーター72は例えばDCモーターからなり台板71に取り付けられる。モーター72が後述のモーター駆動回路によって正逆回転させられると、ギア列74〜80及び回転連結軸63を介して偏芯カム62(図4参照)が正回転または逆回転する。モーター72の回転軸にはウオームからなるモーターギア73が取り付けられる。
ギア列74〜80は、モーターギア73に噛合するホイールからなる第1ギア74と、平歯車からなる第2ギア75、第3ギア76、第4ギア77と、平歯車からなり所定歯数の歯欠け部78aを有する歯欠けギア78と、平歯車からなる第5ギア79、第6ギア80とを有し、モーター72の回転駆動力を第1〜第4ギア74〜77、歯欠けギア78、第5ギア79、第6ギア80へと順次伝達していく。
第1及び第2ギア74、75は一体に回転軸に設けられ、台板71に回転可能に支持される。第3ギア76は第2ギア75に噛合し第4ギア77と一体に設けられる。第3及び第4ギア76、77は回転連結軸63から延びる回転軸63aに回転可能支持される。歯欠けギア78はモーター側ギアである第4ギア77に噛合し、第5ギア79と一体に設けられるとともに台板71に回転可能に支持される。第6ギア80は第5ギア79と噛合し回転軸63aに一体に設けられる。
ここで、モーター72が正回転するとギア列74〜80は図5の状態にあり、この状態からモーター72が所定の回数だけ逆回転するとギア列74〜80は図6の状態に変わる。図5に示す状態は、通常加圧状態、つまり、偏芯カム62の第1凹部62aがコロ61に係合している場合(図4(a)参照)である。図6に示す状態は、減圧状態、つまり、偏芯カム62の第2凹部62bがコロ61に係合している場合(図4(a)参照)である。
図5に示す状態にあるギア列74〜80では、歯欠けギア78は、その歯欠け部78aの右端が第4ギア77に対向するように、配置設定される。詳しくは図7(a)に示すように、第4ギア77は、歯欠けギア78における歯欠け部78aの右端部の歯部78bに噛み合うように、歯欠け部78aに対向している。
また、図5に示す状態からモーター72が所定の回数だけ逆回転すると、第6ギア80が180°回転するように、つまり、コロ61への係合が偏芯カム62の第1凹部62aから第2凹部62bに切り替わるように(図4参照)、ギア列74〜80の減速比が設定される。また、前記のギア列74〜80の減速比において、モーター72が所定の回数だけ逆回転すると、図6に示すように、歯欠けギア78は、その歯欠け部78aの左端が第4ギア77に対向するように、歯欠け部78aは所定の歯数に設定される。詳しくは図7(b)に示すように、第4ギア77は、歯欠けギア78における歯欠け部78aの左端部の歯部78cに噛み合うように、歯欠け部78aに対向している。
図5に戻り、復帰スプリング82は、第6ギア80と台板71との間に掛けられるコイルスプリングからなり、第6ギア80及び第5ギア79を介して、歯欠けギア78に付勢力を付与している。図5に示す状態では、復帰スプリング82は第6ギア80を時計回り方向に付勢しており、モーター72が逆回転すると、復帰スプリング82は、図6に示すように第6ギア80を反時計回り方向に付勢している。図5及び図6における復帰スプリング82の各付勢力は、第6ギア80及び第5ギア79を介して、歯欠けギア78には図7(a)のF1方向に作用し、また、歯欠けギア78には図7(b)のF2方向に作用する。
従って、図7(a)に示すように、モーター72の正回転によって第4ギア77が矢印B方向に回転し、第4ギア77が歯欠けギア78の歯部78bに噛合して歯欠け部78aに対向している状態において、第4ギア77が矢印B方向にさらに回転すると、歯欠けギア78には第4ギア77によって時計回り方向への回転駆動力が伝達される。しかし、歯欠けギア78には、復帰スプリング82によって、上記回転駆動力の逆方向の付勢力も作用する。このため、歯欠けギア78の歯欠け部78aが第4ギア77に対向した状態で、歯欠けギア78は空転することになる。このように、モーター72がさらに正回転しても、歯欠けギア78は空転するために、後段のギア列及び回転連結軸63を介して偏芯カム62(図4参照)は回転することなく、偏芯カム62の第1凹部62aがコロ61に係合し、通常加圧状態を保持する。
図7(a)の状態から、モーター72が所定の回数だけ逆回転すると、第4ギア77が矢印B方向に対して反対方向に回転し、歯欠けギア78は反時計回り方向に回転する。次に、後段のギア列及び回転連結軸63を介して偏芯カム62(図4参照)は180°回転し、偏芯カム62の第2凹部62bがコロ61に係合し、図7(b)に示す減圧状態に変わる。図7(b)の状態では、第4ギア77が歯欠けギア78の歯部78cに噛合して歯欠け部78aに対向している。この状態において、モーター72がさらに逆回転し、第4ギア77も矢印C方向にさらに回転すると、歯欠けギア78には第4ギア77によって反時計回り方向への回転駆動力が伝達される。しかし、歯欠けギア78には、復帰スプリング82によって、上記回転駆動力の逆方向の付勢力も作用し、歯欠けギア78の歯欠け部78aが第4ギア77に対向した状態で、歯欠けギア78は空転することになる。このように、モーター72が所定の回数以上に逆回転しても、歯欠けギア78は空転するために、後段のギア列及び回転連結軸63を介して偏芯カム62(図4参照)は回転することなく、偏芯カム62の第2凹部62bがコロ61に係合し、減圧状態を保持する。
また、歯欠けギア78には復帰スプリング82によって回転駆動力と逆方向の付勢力が作用するため、モーター72の回転方向を切り替えたとき、歯欠け部78aの端部に位置する歯部78bもしくは78cが第4ギア77と噛み合う位置に配置される。従って、第4ギア77からの回転駆動力を歯欠けギア78に確実に伝達することができる。
図8はモーター72を制御する制御部とその周辺を示すブロック図である。制御部である切り替え制御部101には、モーター72を駆動させるモーター駆動回路103と、定着器13を含めて画像形成装置10の電源をオンオフする電源スイッチ105と、電源スイッチ105のオンオフ操作、印刷モード、ジャム解除等の操作及びその表示が行われる操作パネル104が接続される。
切り替え制御部101は、マイクロコンピュータ、及びRAM、ROMの記憶素子等で構成され、記憶素子に設定されたプログラムに従って、入出力を制御する。具体的には、電源スイッチ105から信号、及び操作パネル104から入力される信号に基づいて、切り替え制御部101は、モーター72が所定の回数だけ正回転または逆回転するようにモーター駆動回路103を制御する。この制御によって、定着器13は通常加圧状態と減圧状態に切り替えられる。
電源スイッチ105からオン信号が入力されると、切り替え制御部101はモーター駆動回路103を介してモーター72を所定の回数だけ逆回転させた後、モーター72の回転を停止する。これによって、ギア列74〜80(図5参照)を介して偏芯カム62(図4参照)の第2凹部62bがコロ61に係合し、定着器13は減圧状態となる。また、印刷モードが設定されると、操作パネル104から印刷開始信号が入力され、印刷開始信号に基づいて切り替え制御部101はモーター駆動回路103を介してモーター72を所定の回数だけ正回転させた後、モーター72の回転を停止する。これによって、ギア列74〜80(図5参照)を介して偏芯カム62(図4参照)の第1凹部62aがコロ61に係合し、定着器13は通常加圧状態となる。これで定着処理が可能となる。さらに、印刷が終了すると、印刷終了信号に基づいて切り替え制御部101はモーター駆動回路103を介してモーター72を所定の回数だけ逆回転させた後、モーター72の回転を停止することで、定着器13は減圧状態となる。さらに定着処理中において、ジャム処理信号が操作パネル104から入力されると、切り替え制御部101はモーター駆動回路103を介してモーター72を所定の回数だけ逆回転させた後、モーター72の回転を停止する。これによって定着器13は通常加圧状態から減圧状態となり、ジャム処理が可能となる。
上記実施形態によれば、画像形成装置10は、ニップ部Nにニップ圧を付与する加圧機構50と、ニップ部Nのニップ圧を変更するニップ圧切り替え部60と、を備える。加圧機構50は、第1及び第2当接部51a、52aを互いに離間させる方向に付勢する弾性部材53と、第1当接部51aにて弾性部材53の一端部に当接する第1アーム部材51と、第2当接部52aにて弾性部材53の他端部に当接する第2アーム部材52と、を有する。ニップ圧切り替え部60は、第2アーム部材52に設けられるコロ61と、コロ61に当接するとともに回転中心から外周面までの距離が変化する偏芯カム62を有する。コロ61の中心軸と偏芯カム62の回転中心との並び方向が、第2当接部52aに作用する弾性部材53の付勢力の方向に略同じとなる。
この構成によると、弾性部材53が第1及び第2当接部51a、52aを互いに離間させる方向に付勢することで、ニップ部Nにニップ圧を付与し、定着部30によって定着処理を行うことが可能となる。このとき、偏芯カム62の回転中心とコロ61との並び方向が第2当接部52aに作用する弾性部材53の付勢力の方向と略同じになるために、コロ61と偏芯カム62との係合部には弾性部材53の略全ての付勢力が作用し、コロ61と偏芯カム62とが確実に係止されることで、ニップ部Nにおけるニップ圧が安定する。
また、上記実施形態によれば、偏芯カム62は、コロ61に選択的に係合する第1凹部62aと第2凹部62bとが回転中心から異なる周面位置に形成されており、第1凹部62aがコロ61に係合する場合には、第1及び第2当接部51a、52aの間隔が所定の距離となり、第2凹部62bがコロ61に係合する場合には、第1及び第2当接部51a
この構成によると、偏芯カム62の第1凹部62aがコロ61に係合すると、第1及び第2当接部51a、52aの間隔に応じた付勢力によって、弾性部材53がニップ部Nにニップ圧を付与し、定着部30によって定着処理を行うことが可能となる。このとき、偏芯カム62の回転中心とコロ61との並び方向が第2当接部52aに作用する弾性部材53の付勢力の方向と略同じになるために、コロ61と第1凹部62aとの係合部には弾性部材53の略全ての付勢力が作用し、コロ61と第1凹部62aとが確実に係止されることで、ニップ部Nにおけるニップ圧が安定する。また、偏芯カム62の第2凹部62bがコロ61に係合すると、第1及び第2当接部51a、52aの間隔が所定の距離より大きくなり、定着処理時より小さくなった付勢力によって、弾性部材53がニップ部Nにニップ圧を付与する。このとき、偏芯カム62の回転中心とコロ61との並び方向が第2当接部52aに作用する弾性部材53の付勢力の方向と略同じになるために、コロ61と第2凹部62bとの係合部には弾性部材53の略全ての付勢力が作用し、コロ61と第2凹部62bとが確実に係止されることで、ニップ部Nにおけるニップ圧が安定する。従って、簡単に確実にニップ圧を変更することができる。
また、上記実施形態によれば、駆動部70は、正逆回転可能であるモーター72の回転駆動力を偏芯カム62に伝達するギア列74〜80に配設され所定歯数の歯欠け部78aを有する歯欠けギア78と、歯欠けギア78と噛合可能である第4ギア77(モーター側ギア)と、第4ギア77が正回転または逆回転したときに歯欠けギア78の歯欠け部78aが第4ギア77に対して離間する方向に歯欠けギア78を付勢する復帰スプリング82と、を有する。第4ギア77が一方向に回転して歯欠けギア78の歯欠け部78aに対向すると、歯欠けギア78の歯欠け部78aが復帰スプリング82によって付勢されるとともに歯欠け部78aにて第4ギア77と噛合不能となることで、歯欠けギア78が空転し、第4ギア77が他方向に回転すると、歯欠けギア78の歯欠け部78a以外の部分が第4ギア77と噛合可能となることで、歯欠けギア78が回転し、偏芯カム62を回転させる。
この構成によると、モーター72の正回転によって第4ギア77が一方向に回転し、歯欠けギア78の歯欠け部78aが第4ギア77に対向していると、モーター72が回転していても歯欠けギア78が空転している状態にあり、偏芯カム62が停止しており、偏芯カム62の第1凹部62aがコロ61に係合している。次に、モーター72を逆回転させると、第4ギア77が他方向に回転し、歯欠けギア78の歯欠け部78a以外の部分が第4ギア77と噛合することで、歯欠けギア78が回転し、これにともなって偏芯カム62が回転する。偏芯カム62の回転によって、偏芯カム62の第2凹部62bがコロ61に係合し、弾性部材53は定着処理時より小さな付勢力に変わる。つまり、ニップ圧が変更される。モーター72がさらに逆回転し続けても、復帰スプリング82の付勢力によって、歯欠けギア78の歯欠け部78aが第4ギア77に対向する位置ある。従って、モーター72が正回転すると、ニップ圧が大きい状態を保持し、一方、モーター72が逆回転すると、ニップ圧が小さい状態を保持することになり、モーター72の回転方向とニップ圧の状態とを相関させておくと、センサー等の特別な部材を設けなくとも、簡単に安価にニップ圧を切り替えることができる。
また、上記実施形態によれば、偏芯カム62の第1凹部62aと第2凹部62bとは回転中心に対して対向する位置に配置されることによって、偏芯カム62を半回転させると、第1及び第2凹部62a、62bの一方の凹部から他方の凹部へ係合が切り替わることになり、ギア列74〜80を大きく減速させなくとも、歯欠けギア78の回転角を大きく設定することができ、これによって、モーター72の出力トルクを小さくできる。
また、上記実施形態によれば、切り替え制御部101は、画像形成(印刷)の開始時に偏芯カム62の第1凹部62aがコロ61に係合する方向にモーター72を回転させ、画像形成の終了時に偏芯カム62の第2凹部62bがコロ61に係合する方向にモーター72を回転させるように制御する。これによって、モーター72の回転方向とニップ圧の状態とを相関させておき、操作モードに応じてモーター72の回転方向を切り替えるようにすると、例えば、画像形成していない場合には、加圧ローラー132と定着ローラー131との圧負荷が簡単に軽減され、加圧ローラー132と定着ローラー131の耐久性が向上する。
また、上記実施形態によれば、定着部30は、定着ローラー131に対向して配置され、磁束を発生させて該磁束によって定着ローラー131に設けた誘導発熱層131cを誘導加熱する誘導加熱部133をさらに備える。これによって、誘導加熱部133を備える電磁誘導加熱方式の定着器において、加圧ローラー132側に加圧機構50、ニップ圧切り替え部60を適切に配置することができ、また、誘導加熱部133、及びその周辺部材を定着ローラー131側に適切に配置することができる。
尚、上記実施形態では、ローラー方式の定着装置に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、加熱部材として無端状の定着ベルトを使用するベルト方式や、加熱部材は固定支持された加熱体と、この加熱体に密着して摺動する耐熱性フィルムとを有し、加熱体と加圧ローラーとを耐熱性フィルムを介して圧接させる方式の定着装置に適用してもよい。また、熱源にヒーターを用いてもよく、さらに加熱部材側に加圧機構を設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、偏芯カム62に第1及び第2凹部62a、62bを設ける構成を示したが、本発明はこれに限らず、コロ61に凹部を設けて、偏芯カム62に該凹部に係合する第1突起及び第2突起を設ける構成にしてもよい。この場合も上記実施形態と同様の効果を奏する。