JP5061608B2 - コーティング組成物、積層体及びフレキシブルフラットケーブル - Google Patents

コーティング組成物、積層体及びフレキシブルフラットケーブル Download PDF

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Description

本発明は、コーティング組成物に関するものであり、特に、電気、電子機器の配線などに使用されるフレキシブルフラットケーブル用接着剤に用いると優れた性能を発揮するものである。本発明のコーティング組成物は、優れた耐熱性や耐ブロッキング性を有するので通常のコーティング剤として使用できるだけでなく、さらにポリエステルフィルムや錫メッキ銅に対する接着性に優れた接着剤としても利用することが出来る。
近年、家電製品や自動車部品の軽薄短小化に伴い、回路基板同士の配線には多心平型のフレキシブルフラットケーブル(以下FFCと略することがある)が多用されるようになった。FFCは導電体である錫メッキ銅を、一般に接着剤を介して絶縁フィルムと貼り合わせる構造、すなわち絶縁フィルム/接着剤/金属導線/接着剤/絶縁フィルムの構造を有していることが多い。絶縁フィルムとしては、機械特性、電気特性の優れた2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層がよく用いられている。
最近、FFCは自動車用途の様々な部分に用いられる事が多くなり、これに伴い、使用環境温度が高くなり、耐熱性の要求が高くなっている。これまではFFC用の接着剤には非晶性のポリエステル樹脂が主に用いられていたが、80℃以上の雰囲気下では機械的強度が低下してしまい、接着不良や接着剤層の変形が起こり使用に耐えられない。
例えば特許文献1には結晶性のポリエステル樹脂を用いた溶剤溶解型接着剤が開示されているが、耐熱性は優れるものの、接着性や耐ブロッキング性については要求を満足するレベルには至っていなかった。
特開2003−327676号公報
本発明の課題は、接着性、特に錫メッキ銅に対する接着性とブロッキング性を両立することができ、優れた耐熱性を有するコーティング組成物を得ることである。このコーティング組成物は自動車部品、電化製品などに配線部品のFFCに用いられる接着剤として優れた性能を発揮する。
本発明者等は、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の発明に至った。
数平均分子量が5000以上40000以下でありかつ融点が80℃以上150℃以下である結晶性ポリエステル樹脂(A)と、数平均分子量が5000以上40000以下である非晶性ポリウレタン樹脂(B)を有機溶剤に溶解してなるコーティング組成物である。
また、上記のコーティング組成物を、基材フィルムにコーティングして乾燥したものであり、その乾燥後のコーティング層の厚みが5μm以上60μm以下であることを特徴とする積層体に関する。
また、上記積層体のコーティング層を内側にして、導電体を挟み込んで接着した構造を有するフレキシブルフラットケーブルに関する。
本発明で得られたコーティング組成物は従来技術と比較して、接着性、耐ブロッキング性、特に耐熱性に優れている。
本発明において用いられる結晶性ポリエステル樹脂(A)は数平均分子量が5000以上40000以下である。好ましくは10000以上、30000以下である。数平均分子量が5000未満であると接着剤としての機械的強度が不足してしまい、接着性及び耐熱性が低下してしまうことがある。40000より大きいと有機溶剤に溶解した際、溶液粘度が高くなり、コーティングする際に作業上困難になるおそれがある。また、融点は80℃以上150℃以下である。80℃未満であると耐熱性が不足してしまいがちであり、150℃より高いと結晶性が高くなり、有機溶剤に溶解した際、溶液の安定性に劣り、流動性が低下し、コーティングする事が困難になる場合がある。
本発明において用いられる非晶性ポリウレタン樹脂(B)は数平均分子量が5000以上40000以下である。好ましくは10000以上、30000以下である。数平均分子量が5000未満であると5000未満であると接着剤としての機械的強度が不足してしまい、接着性及び耐熱性が低下してしまうことがある。40000より大きいと有機溶剤に溶解した際、溶液粘度が高くなり、コーティングする際に作業上困難になる場合がある。
本発明において用いられる非晶性ポリウレタン樹脂は結晶性ポリエステル樹脂に配合されることにより、結晶性ポリエステル樹脂(A)がコーティング後に結晶化し、体積収縮を起こし、接着性が低下することを防ぐ作用がある。また、分子内にウレタン基を有するので、エポキシ樹脂や非晶性のポリエステル樹脂に比べ、機械的強度が高くなり、ブロッキングを防止する効果がある。好ましくは結晶性ポリエステル樹脂(A)と非晶性ポリウレタン樹脂(B)の配合比が結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、非晶性ポリウレタン樹脂(B)が5質量部以上50質量部以下である。非晶性ポリウレタン樹脂の配合比が5質量部未満であると結晶性ポリエステル樹脂(A)がコーティング後、結晶化し、体積収縮を起こし、接着性が低下する効果が薄れてしまう。50質量部より多いと接着剤層中の結晶性部分が不足して、耐熱性が低下してしまうことがある。
本発明において用いられる非晶性ポリウレタン樹脂(B)は、ジオール成分、ジイソシアネート成分からなるものであるが、必要に応じてこれ以外の成分、例えばジアミン成分を共重合しても問題ない。ジオール成分としてはポリエステルポリオールを主成分(50質量%以上)とするものであることが望ましい。アクリルポリオールやポリエーテル等のポリオールを主成分とすることもできるが、結晶性ポリエステル樹脂との相溶性が低下してしまい、コーティングの表面荒れを起こしてしまうおそれが高くなる。ポリエステルポリオールの組成については後述する。
ジオール成分には必要に応じてポリエステルポリオール以外の低分子量成分が含まれていても全く問題ない。例えば、ジオール化合物としては1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、2−ノルマルブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール、3−フェニル−1,5−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−3−ナトリウムスルホ−2,5−ヘキサンジオール等が挙げられる。また1,2−プロパンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、1,2−ジアミノシクロブタン、1,2−ジアミノシクロペンタン、1,2−ジアミノシクロヘプタンなどのようなジアミン化合物を用いることもできる。
非晶性ポリウレタン樹脂(B)に用いられるイソシアネート成分としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアナート、3、3’−ジメトキシ−4,4’ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5−キシリレンジイソシアネート、1,3ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、1,4−ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
本発明において用いられる非晶性ポリウレタン樹脂(B)は酸価が50当量/トン以上であることが望ましい。本発明のコーティング組成物はフレキシブルフラットケーブル用の接着剤用を主な用途としており、その場合導電体、すなわち錫メッキ銅への接着性が必要である。酸価が50当量/トン未満であると錫メッキ銅への接着性が低下してしまうことがある。尚ここで言う酸価とは樹脂10g(1トン)当たりのカルボキシル基の当量数を示す。上限は特に限定されないが1000当量/トン以下が好ましい。
本発明に用いる非晶性ポリウレタン樹脂(B)にカルボキシル基を導入する方法としては、末端に酸変性処理を施したポリエステルポリオールを用いて非晶性ポリウレタン樹脂を合成する方法や、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等を鎖長延長剤として非晶性ポリウレタン樹脂を合成する方法が挙げられる。これらのうち、非晶性ポリウレタン樹脂の重合の際、適度の分子量に調整するためには後者の方が好ましい。
本発明において用いられる結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非晶性ポリエステルポリウレタン(B)のポリエステルポリオール成分に用いられる二塩基酸成分としては、以下に示す多価カルボン酸、もしくはそのアルキルエステル、酸無水物を使用でき、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等、脂環族二塩基酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等、脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸等が挙げられる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオ−ル、ネオペンチルヒドロキシピバリン酸エステル、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサスド付加物、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−デカンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートグリコール等を共重合することができる。
本発明の結晶性ポリエステル樹脂(A)は有機溶剤に溶解した溶解品の保存安定性の観点より、好ましくは二塩基酸成分として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を5モル%以上、又は、グリコール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを15モル%以上含むことが好ましい。より好ましくは、二塩基酸成分として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を8モル%以上、且つ、グリコール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール20モル%以上を併用して含むことがより好ましく、より溶液安定性に優れたコーティング組成物を得ることができる。特に、有機溶剤が汎用溶剤、特にメチルエチルケトンやトルエンのような有機溶剤のみで溶解品を得る場合には、結晶融解エネルギー(示差走査熱量測定による)は、13mJ/mg以下が好ましく、より好ましくは10mJ/mg以下である。結晶融解エネルギーは結晶化度の度合いを示し、結晶融解エネルギーが小さいほど、結晶化度が低い。結晶化度が低い程、溶剤安定性が向上する。逆に、結晶融解エネルギーが大きいほど、結晶化度が高くなり、汎用有機溶剤に難溶になったり、保存安定性に劣り、溶液が固化したりしてしまうようになる。
本発明においては結晶性ポリエステル樹脂(A)と非晶性ポリウレタン樹脂(B)が有機溶剤に溶解してなることが必要である。この際、用いられる有機溶剤はトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルから選ばれる溶剤を少なくとも1種類以上含んでいることが好ましく、そのうちの1種類の有機溶剤の含有量が全有機溶剤中の50重量%以上であることがさらに好ましい。必要に応じて、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジオキソラン、ベンジルアルコール、アセテート系有機溶剤、及びセロソルブ系有機溶剤の溶剤を併用する事ができる。塩素系溶剤も溶解安定性を向上させる点については効果があり使用することができるが、近年の環境問題の観点からは含まれない方が好ましい。
本発明のコーティング組成物は適宜、難燃剤、顔料、ブロッキング防止剤を配合して使用することが好ましい。難燃剤としてはデカブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールA等の臭素系難燃剤やトリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、キシレニルジフェニルフォスフェート、クレジルビス(2,6−キシレニル)フォスフェート、2−エチルヘキシルフォスフェート、ジメチルメチルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)フォスフェート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、リン酸アミド、有機フォスフィンオキサイド、赤燐等のリン系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン、シクロフォスファゼン、トリアジン、メラミンシアヌレート、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、シアヌル酸トリアジニル塩、メレム、メラム、トリス(β−シアノエチル)イソシアヌレート、アセトグアナミン、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラム等の窒素系難燃剤、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、芳香族スルフォンイミド金属塩、ポリスチレンスルフォン酸アルカリ金属塩等の金属塩系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ等の水和金属系難燃剤、シリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムスズ酸亜鉛等無機系難燃剤、シリコーンパウダー等のシリコン系難燃剤である。顔料は酸化チタン、カーボンブラック等が用いられる。ブロッキング防止剤にはシリカ、炭酸カルシウム、タルク等が用いられ、接着性の面より、特にタルクが好ましい。
本発明のコーティング組成物には必要に応じてシランカップリング剤、タッキファイヤー、結晶核剤、紫外線吸収剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物等を配合することができる。
本発明に用いられる基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムと略す)、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオキサベンザゾールフィルム等、任意のプラスチックフィルムが用いられるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムが経済性や汎用性の面で好ましい。プラスチックフィルムには、必要に応じコロナ処理や易接着層を設けることができる。
本発明のコーティング組成物を乾燥後の厚みが5μm以上60μm以下となるように基材プラスチックフィルムにコーティングし、乾燥した積層体とすることでFFCの絶縁フィルムとして用いることができる。FFCはこの積層体のコーティング層を内側にして、導電体を挟み込んで接着することにより製造することが出来る。
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。実施例中単に部とあるのは質量部を示す。なお、実施例に記載された測定値は以下の方法によって測定したものである。
樹脂組成:樹脂をクロロホルムDに溶解し、ヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)ジェミニ−200を用いて、H−NMR分析を行ってその積分比より決定した。
融点、結晶融解エネルギー、ガラス転移温度:示差走査熱量計を用い、測定試料10mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計(DSC)DSC−220を用いて、20℃/minの昇温速度で測定することにより求めた。融解ピークの最大値を示す温度を融点とした。また、融解ピークの面積から結晶融解エネルギーを算出した。ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
数平均分子量:テトラヒドロフランを溶離液としたウォーターズ社製ゲルろ過浸透クロマトグラフィー(GPC)150cを用い、カラム温度30℃、流量1ml/分にてGPC測定を行った結果から計算して、ポリスチレン換算の測定値を得た。但し、カラムは昭和電工(株)shodex KF−802、804、806を用いた。
酸価:ポリエステル0.2gを20mlのクロロホルムに溶解し、0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、樹脂10gあたりの当量(eq/トン)を求めた。
<結晶性ポリエステル樹脂(A)の合成例1>
撹拌機、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶内に、テレフタル酸ジメチル272部、1,4−ブタンジオール162部、1,6−ヘキサンジオール142部、1,4−シクロヘキサンジメタノール144部、テトラブチルチタネート0.27部を仕込み、4時間かけて220℃まで徐々に上昇し、留出するメタノールを系外に除きつつエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、反応缶系内を180℃まで冷却を行い1,4−シクロヘキサンジカルボン酸34部、セバシン酸81部を仕込み、2時間かけて230℃まで徐々に上昇し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。エステル化反応終了後30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を260℃まで上昇し、更に1mmHg以下で1時間後期重合を行った。このようにして結晶性ポリエステル樹脂(A)合成例1を得た。このようにして得られた結晶性ポリエステル樹脂の特性値を表1に示した。撹拌機、温度計、ジムロートを装備した反応缶内に、このようにして得られた結晶性ポリエステル樹脂(A)を250部、メチルエチルケトンを150部、トルエンを600部仕込み、80℃まで昇温を行い、3時間かけて完全に溶解して固形分濃度25質量%の結晶性ポリエステル樹脂(A)の溶液を得た。
<結晶性ポリエステル樹脂(A)の合成例2、3および比較合成例1>
合成例1と同様にして、ポリエステル樹脂(A)の合成例2、3および比較合成例1の作成を行った。このようにして得られた結晶性ポリエステル樹脂の特性値を表1に示した。また合成例1と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(A)をメチルエチルケトン及びトルエンに溶解し、目的とする結晶性ポリエステル樹脂(A)の溶液を得た。
Figure 0005061608
<非晶性ポリウレタン樹脂(B)の合成例4>
撹拌機、温度計、ジムロートを装備した反応缶内に、ポリエステルポリオール(組成テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=50/50//50/50モル比、数平均分子量2000、ガラス転移温度55℃)を405部、大日本インキ化学工業(株)社製ODX688を195部、ジメチロールブタン酸を18部、メチルエチルケトンを191部、トルエンを285部仕込み、80℃まで昇温を行い、1時間かけて完全に溶解した。その後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを102部仕込み、80℃にて1時間撹拌を行った。その後、ジブチル錫ジラウレートを0.1g仕込み、80℃にて10時間撹拌を行い、ウレタン化反応を行った。反応終了後、トルエンを604部仕込み希釈を行い、固形分濃度40質量%の目的とする非晶性ポリウレタン樹脂(B)の溶液を得た。このようにして得られた非晶性ポリウレタン樹脂(B)の特性値は、数平均分子量26000、酸価185eq/トン、ガラス転移温度は32℃であった。
<コーティング組成物1>
直径2mmのガラスビーズを入れた100mlのガラス瓶に、合成例1で得られた結晶性ポリエステル樹脂(A)の溶液を20.0部、合成例4で得られた非晶性ポリウレタン樹脂(B)の溶液を3.0部、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン(アルベマール社製SAYTEX8010)を2.8部、三酸化アンチモンを2.0部、酸化チタンを0.85部、タルク(林化成(株)製、ミクロンホワイト#5000A)を0.24部仕込み、シェーカーにて2時間分散を行い、目的とするコーティング組成物1を得た。表2に全体を100質量%とした固形分の配合比を示す。
<コーティング組成物2〜4、比較組成物1〜4>
コーティング組成物1と同様にして、各種添加剤を配合し、目的とするコーティング組成物2〜4、比較組成物1〜4を得た。このようにして得られたコーティング(比較)組成物の配合を表2、表3に示す。なお表中の原料を以下に示す。
シリカは日本アエロジル(株)製アエロジルR972を用いた。
エポキシ樹脂はジャパンエポキシレジン(株)社製エピコート1001を用いた。
非晶性ポリエステル1は東洋紡績(株)製バイロン300(数平均分子量:23000、ガラス転移温度:7℃)を示す。
非晶性ポリエステル2は東洋紡績(株)製バイロン200(数平均分子量:17000、ガラス転移温度:67℃)を示す。
Figure 0005061608
Figure 0005061608
<実施例1>
得られたコーティング組成物1を以下に示す通りの評価項目に従い、評価を行った。
接着強度:コーティング組成物1で得られたコーティング組成物を25μmの二軸延伸PETフィルム上に乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、120℃で10分乾燥したものを作成した。このようにして得られたコーティング組成物塗布PETフィルムをコーティング剤塗布面と錫メッキ銅とをテスター産業社製ロールラミネータを用いて、ラミネート温度120℃、圧力0.3MPa、速度1m/minの条件にて貼り合わせた。このようにして得られた貼り合わせ品を1cm幅に切断し、東洋ボールドウイン社製RTM100を用いて、25℃雰囲気下で、100mm/minの引っ張り速度で引っ張り試験を行い、90°剥離接着力を測定した。
耐ブロッキング性:コーティング組成物1で得られたコーティング組成物を25μmの二軸延伸PETフィルム上に乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、120℃で10分乾燥したものを作成した。このようにして得られたコーティング組成物塗布PETフィルムを同方向に5枚重ね、コーティング層の上にPETフィルムが重なるようにした。次いで、このようにして重ねたフィルムの上に20g/cmの荷重をかけ、70℃雰囲気中に72時間保存した。この後、を取り出し、重ねたフィルム間の接着強度を測定し、下記の判定を行った。
(判定)○:0〜1N/cm ×:1N/cm以上
耐熱性:コーティング組成物1で得られたコーティング組成物を25μmの二軸延伸PETフィルム上に乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、120℃で10分乾燥したものを作成した。このようにして得られたコーティング組成物を塗布した積層体を、幅0.8mm、厚さ0.05mmの錫メッキ銅線を10本、銅線の線間が1.0mm幅となるように平行に揃え、その上に50μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを離型フィルムとして重ねた状態で、テスター産業社製ロールラミネータを用いて、ラミネート温度100℃、圧力0.3MPa、速度1m/minの条件にて貼り合わせた。この後、ポリプロピレンフィルムを取り外し、錫メッキ銅線を上向きにし、1N/cmとなるように重りを載せて、80℃にて72時間の熱処理を行った。このようにして熱処理を行ったサンプルの錫メッキ銅線の接着剤層への沈み込みの深さを測定した。
(判定)○:5μm未満
△:5μm以上、10μm未満
×:10μm以上
このようにして評価を行った実施例1の結果を表4に示す。
<実施例2〜4>
コーティング組成物2〜4について、実施例1と同様にサンプルを作成し、評価を行った。このようにして評価を行った実施例2〜4の結果を表4に示す。
Figure 0005061608
<比較例1〜4>
コーティング比較組成物1〜4について、実施例1と同様にサンプルを作成し、評価を行った。このようにして評価を行った比較例1〜4の結果を表5に示す。
Figure 0005061608
比較組成物1は結晶性ポリエステル樹脂(A)比較合成例1の樹脂を用いており、数平均分子量が特許請求の範囲外である。このため、接着剤としての機械的強度が不足しており、接着性、耐熱性に劣る。
比較組成物2は非晶性ポリウレタン樹脂を用いておらず、特許請求の範囲外である。このため、接着性、耐ブロッキング性に劣る。
比較組成物3は非晶性ポリウレタン樹脂の代わりにエポキシ樹脂を配合しており、特許請求の範囲外である。このため、接着性、耐ブロッキング性、耐熱性に劣る。
比較組成物4は低ガラス転移温度の非晶性ポリエステル1と高ガラス転移温度の非晶性ポリエステル2を用いており、結晶性ポリエステル樹脂を用いておらず、特許請求の範囲外である。このため、耐熱性に劣る。
本発明で得られたコーティング組成物は従来技術と比較して、接着性、耐ブロッキング性、特に耐熱性に優れている。

Claims (9)

  1. 数平均分子量が5000以上40000以下でありかつ融点が80℃以上150℃以下である結晶性ポリエステル樹脂(A)と、数平均分子量が5000以上40000以下である非晶性ポリウレタン樹脂(B)を有機溶剤に溶解してなるコーティング組成物。
  2. 結晶性ポリエステル樹脂(A)と非晶性ポリウレタン樹脂(B)の配合比が、結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、非晶性ポリウレタン樹脂(B)が5質量部以上50質量部以下である請求項1に記載のコーティング組成物。
  3. 非晶性ポリウレタン樹脂(B)を構成するジオール成分が、ポリエステルポリオールを主成分とする請求項1または2に記載のコーティング組成物。
  4. 非晶性ポリエステルポリウレタン樹脂(B)の酸価が、50当量/トン以上である請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング組成物。
  5. 有機溶剤が、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよび酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング組成物。
  6. さらに、難燃剤、顔料、ブロッキング防止剤のうち少なくとも1種を配合している請求項1〜5のいずれかに記載のコーティング組成物。
  7. ブロッキング防止剤が、タルクである請求項6に記載のコーティング組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のコーティング剤を、基材フィルムにコーティングして乾燥したものであり、その乾燥後のコーティング層の厚みが5μm以上60μm以下であることを特徴とする積層体。
  9. 請求項8に記載した積層体のコーティング層を内側にして、導電体を挟み込んで接着した構造を有するフレキシブルフラットケーブル。
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