JP4631134B2 - 接着剤用難燃性ポリエステル樹脂及びその接着剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた接着性、難燃性を有すると共に、長期間使用しても分子量低下が抑えられるため優れた耐久接着性を示すリン含有ポリエステル接着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、様々な分野で難燃化材料が求められている。例えば、OA機器や家電製品などにおいては部品の誤動作による異常加熱で万一高分子材料が着火しても火災の原因とならないようにすることが必要とされており小火源での短時間加熱後の速やかな自己消化が重要となってきている。そこで、さらに高度な難燃材料を開発するためには、難燃化された成形材料等の接着剤においても難燃化技術が必要となってきている。
【0003】
これまでの難燃化接着剤には、骨格にハロゲン原子を導入することや、特開昭52−29830号公報に見られるように、ハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモンを併用する難燃化処方なされたものが良く知られている。
【0004】
しかし、廃棄物処理時に発生するダイオキシン問題が最近の世界的な環境問題への取り組みを加速しており、ハロゲン系難燃剤使用規制の動きがでてきている。例えば欧州ではエコラベルの動き等である。
【0005】
一般的に、ノンハロゲン、低有害、低発煙化難燃系に関する技術として例えば、リン系難燃剤を添加する方法が挙げられる。これらは、材料化する際にリン酸エステル等のリン含有添加剤を樹脂に大量に配合することによって難燃性が付与されるものであるので、接着性、耐熱性や種々の用途特性が低下するだけでなく、難燃剤自身がブリードアウトする問題の生じることになる。
【0006】
そこで、ハロゲンフリーでポリエステル樹脂自体に難燃性を付与する方法としては種々提案されているが、その中でも、リン化合物の共重合による難燃化技術が、特開昭53−128195号公報、特開昭63−150352号公報等に提案されている。
【0007】
これまでに、種々の用途に用いられてきた多くのポリエステル系接着剤の中には、用途、使用環境によって、加水分解を起こし、樹脂の分子量が低下する場合があった。このことで、凝集力が減少し接着強度が低下するなど様々な樹脂の特性が損なわれていく。また、ポリエステル接着剤に難燃性を付与するため、含リンジカルボン酸化合物等を共重合することで、さらに樹脂の耐加水分解性は悪化するという問題が生じてきた。例えば、特開平10−46474号公報に用いられているリン含有ポリエステル接着剤についての加水分解性を調べたところ、分子量の低下が認められ長期間使用するための耐久接着性が不足した。
【0008】
また、高度な難燃性を達成するために樹脂中のリン含有率を向上させるべく含リンジカルボン酸等を多量に共重合すると、リン含有率とともに加水分解性はさらに低下した。
【0009】
以上のように、従来の技術では十分に加水分解性を抑えることが非常に難しいため、長期間使用しても高い接着強度を保持し、高度な難燃性を実現するリン含有化合物共重合ポリエステル接着剤は未だ提案されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、自動車部品、電化製品、フィルム、繊維用途に用いられるポリエステル接着剤に関してであり、環境上問題のあるハロゲンを用いずに優れた難燃性を発現するだけでなく接着性、耐加水分解性等の性能にも優れたポリエステル接着剤を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ノンハロゲンで難燃性、耐加水分解性、接着性、機械的特性に優れたポリエステル接着剤を得るべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、分子鎖中に含まれるリン原子が0.5wt%以上であり、しかもエチレングリコールの含有量が40モル%未満であり、好ましくは一般式1で示される含リンジカルボン酸または、一般式2で示されるリン含有カルボン酸あるいはそのエステル化物と共重合して得られ、さらに好ましくはガラス転移温度が−15℃以上40℃未満であることを特徴とする接着剤用難燃性ポリエステル樹脂あるいはそれを含む接着剤に関する。
【化3】
R1,R2:水素原子、または炭化水素基
R3,R4:水素原子、炭化水素基またはヒドロキシ基置換炭化水素基
l、m:0〜4の整数
【0012】
【化4】
R5:水素原子、または炭化水素基
R6,R7:水素原子、炭化水素基またはヒドロキシ基置換炭化水素基
【0013】
【発明実施の形態】
本発明において用いられるポリエステル接着剤には、ノンハロゲンで難燃性を付与するためにリン原子を有するモノマーを共重合や変性によって導入し、分子鎖中にリン原子を含むことが必須である。含まれるリン原子の量としては、樹脂の重量中0.5wt%以上で、好ましくは0.7wt%以上、さらに好ましくは、1.0wt%、最も好ましくは2.0wt%以上である。リン原子含有量が0.5wt%未満であると難燃性が低く、難燃性接着剤として使用しにくい。これらの樹脂にリン原子を導入する方法としては、一般的な方法が用いられるが、その中でも特に下記一般式1、または、一般式2で示される含リンカルボン酸やそのエステル化物を共重合成分として用いる方法が経済性等の面より好ましい。また、上記式で表される化合物以外にも、アルキル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイド、アルキル−ビス(3−ヒドロキシカルボニルエチル)ホスフィンオキサイド等(いずれもアルキルはメチル、エチル、プロピル、ブチル等)、を用いることも好ましい。
【化5】
R1,R2:水素原子、または炭化水素基
R3,R4:水素原子、炭化水素基またはヒドロキシ基置換炭化水素基
l、m:0〜4の整数
【0014】
【化6】
R5:水素原子、または炭化水素基
R6,R7:水素原子、炭化水素基またはヒドロキシ基置換炭化水素基
【0015】
R1、R2、R5の具体例としては水素原子、メチル、エチル、プロピル、フェニルような炭化水素基である。R1とR2は同じであっても良いし、また相異なっていても良い。
R3、R4、R6、R7は水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドソキシブチル、2−ヒドロキシエチルオキシエチルのような炭化水素基またはヒドロキシ基置換炭化水素基等である。
【0016】
さらに、本発明ポリエステルの酸成分の内、芳香族ジカルボン酸が40モル%以上、好ましくは、55モル%以上、さらに好ましくは70モル%共重合することが好ましい。 芳香環濃度を高めておくとさらに、難燃化効果が向上するからである。これは、ポリエステル樹脂が芳香族縮合系樹脂、特に酸素含有縮合系樹脂であるため、これ自体が炭化皮膜形成能力を有しており、自己消化性が発現し、さらにリン含有化合物が共重合されてあるため、これが、燃焼時に固相でリン酸、ポリリン酸となり、脱水剤として作用することによって、炭化皮膜形成が促進されることになるからである。また、芳香族ジカルボン酸を用いることにより、耐加水分解性が向上し、高温高湿度下での安定性が向上する。
【0017】
該ポリエステル樹脂に用いられる成分の二塩基酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボンル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族や脂環族二塩基酸を上記範囲内で共重合することができる。
【0018】
また、ポリエステルのグリコール成分の内、エチレングリコールの含有量が40モル%未満であることが必須である。好ましくは30モル%未満、さらに好ましくは20モル%未満である。また炭素数4以上のグリコールを60モル%以上含むことが好ましい。これは、ポリエステル接着剤に難燃性を付与するため、含リンジカルボン酸化合物を共重合すると、さらに樹脂の耐加水分解性は悪化するという問題が生じてきたためである。一般的にリン結合は加水分解を起こし、リン酸が発生するため、ポリエステル主骨格の加水分解を促進すると考えられる。エチレングリコールの含有量が40モル%以上であるとエステル基濃度が上がることにより耐加水分解性が低下する。また、酸成分として芳香族ジカルボン酸より酸性度の高い、脂肪族ジカルボン酸、または、脂環族ジカルボン酸を60モル%以上共重合するとエステル基の加水分解性が向上してしまい好ましくない。
【0019】
グリコール成分としてはエチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルヒドロキシピバリン酸エステル、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサスド付加物、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−デカンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を上記範囲内で共重合することができる。
【0020】
本発明に用いられるポリエステル樹脂のガラス転移温度は−15℃以上40℃未満で、好ましくは−10℃以上35℃未満、さらに好ましくは−5℃以上30℃未満である。ガラス転移温度が−15℃以下になると接着剤の高温下での弾性率が低下し、接着力が不足することになる。例えば、自動車用部品や家電製品の接着剤として用いる時、夏場の高温環境下での接着強度の低下が起こり、部品と部品を十分に接着しておくことが難しくなる。また、ガラス転移温度が−15℃以下になるとポリエステル樹脂のブロッキングがひどくなり、接着剤を塗布した後、フィルム等の基材の取り扱いが困難となる。また、ガラス転移温度が40℃を超えると、室温付近での弾性率が高くなり、樹脂自体が堅すぎて被着体に対して接着性が発現しない。
【0021】
本発明樹脂の数平均分子量は8000以上が好ましい。さらに好ましくは10000以上、より好ましくは15000以上である。数平均分子量は8000未満では、機械的強度が不足してしまい、接着性等の各種用途特性が損なわれる。
【0022】
なお、本発明の樹脂は、難燃剤併用することでリン含有ポリエステル樹脂の難燃性効果をさらに高めることができる。例えば、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、キシレニルジフェニルフォスフェート、クレジルビス(2,6−キシレニル)フォスフェート、2−エチルヘキシルフォスフェート、ジメチルメチルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)フォスフェート、ジエチル−N,N―ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、リン酸アミド、有機フォスフィンオキサイド、赤燐等のリン系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン、シクロフォスファゼン、トリアジン、メラミンシアヌレート、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、シアヌル酸トリアジニル塩、メレム、メラム、トリス(β−シアノエチル)イソシアヌレート、アセトグアナミン、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラム等の窒素系難燃剤、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、芳香族スルフォンイミド金属塩、ポリスチレンスルフォン酸アルカリ金属塩等の金属塩系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ等の水和金属系難燃剤、シリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムスズ酸亜鉛等無機系難燃剤、シリコーンパウダー等のシリコン系難燃剤である。リン化合物含有樹脂自身の高い難燃性と難燃剤が持つ難燃機構の複合効果からより高い難燃効果が得られる。
【0023】
このポリエステル難燃性接着剤は、必要に応じ、エポキシ樹脂、酸無水物、イソシアネート化合物等の硬化剤、スズ系、アミン系等の硬化触媒を使用することができる。特に、エポキシ樹脂は耐熱性を発現する上で非常に好ましい。
【0024】
本発明のポリエステル接着剤は、ポリイミド、ポリエステル等の各種プラスチッックフィルムや銅、ステンレス、アルミニウム等の金属箔、エポキシ含浸ガラス布あるいは、エポキシ含浸不織布、ポリエステルやナイロン繊維等の接着や含浸用樹脂として用いることができる。また、構造材料としてポリエステル等をベースにした難燃性プラスチックにも適用できる。
【0025】
【実施例】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は以下の方法によって測定したものである。
組成:樹脂を重クロロホルムに溶解し、H1−NMRにより定量した。
ガラス転移温度:示差走査熱量計を用い、測定試料10mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し20℃/minの昇温速度で測定した。
【0026】
リン原子含有量:(湿式分解・モリブデンブルー比色法によるリンの定量)
試料中のリン濃度にあわせて試料を三角フラスコに量りとり、硫酸3ml、過塩素酸0.5mlおよび硝酸3.5mlを加え、電熱器で半日かけて徐々に加熱分解した。溶液が透明になったら、さらに加熱して硫酸白煙を生じさせ、室温まで放冷し、この分解液を50mlメスフラスコに移し、2%モリブデン酸アンモニウム溶液5mlおよび0.2%硫酸ヒドラジン溶液2mlを加え、純水にてメスアップし、内容物をよく混合した。沸騰水浴中に10分間フラスコをつけて加熱発色した後、室温まで水冷し、超音波にて脱気し、溶液を吸収セル10mmに採り、分光光度計(波長830nm)にて空試験液を対照にして吸光度を測定した。先に作成しておいた検量線からリン含有量を求め、試料中のP濃度を算出した。
数平均分子量:溶媒としてテトラヒドロフランを用いてゲル浸透クロマトグラフィによりポリスチレン換算値として求めた。
以下、実施例により本発明を具体的に例示する。実施例中に単に部とあるのは重量部を示す。
【0027】
<リンを共重合した樹脂の合成例1>
撹拌器、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶内に、式3のエチレングリコール溶液(固形分濃度50%)(三光株式会社製GHM−1)2013部、テトラブチルチタネート0.6部を仕込み、200℃まで昇温する。次に反応系を250℃まで昇温する一方、系内を徐々に減圧していき、60分かけて500Paとした。そして、さらに130Pa以下55分間重縮合反応を行い、ポリエステルオリゴマー式4を得た。
【化7】
【化8】
nは2以上の整数
このオリゴマーは、ガラス転移温度75℃、数平均分子量2200の淡黄色固体であった。
別の反応缶にテレフタル酸852部、イソフタル酸825部、セバシン酸1166部、無水トリメリット酸30部、2−メチル1,3−プロパンジオール866部、1,6−ヘキサンジオール1704部、テトラブチルチタネート3.28部をオートクレーブに仕込み、180〜240℃で2時間エステル化反応を実施した。次いでエステル化反応終了後、ポリエステルオリゴマー(式4)2940部を加え、10分間撹拌した後、反応系を240℃から275℃に昇温する一方、系内を徐々に減圧していき、60分かけて500Paとした。そして、さらに130Pa以下で65分間重縮合反応を行い、共重合ポリエステルを得た。
共重合ポリエステルはNMR分析の結果テレフタル酸23モル%、イソフタル酸19モル%、セバシン酸28モル%、式5の成分29モル%(式5は便宜上ジカルボン酸として表した)、トリメリット酸1モル%、エチレングリコール8モル%、2メチル−1,3プロパンジオール27モル%、1,6−ヘキサンジオール65モル%の組成を有しており、数平均分子量25000、リン含有量3.5wt%、ガラス転移温度は6℃の淡黄色樹脂であった。
【0028】
【化9】
【0029】
<リンを共重合した樹脂の合成例2〜6、比較合成例1〜6>
合成例1と同様にして、各原料を用い表1及び表2に示す組成のポリエステル樹脂を得た。比較合成例1〜3はリンを共重合していないかあるいは共重合量が少ないので本発明の範囲外である。また、比較合成例4〜6は、エチレングリコールを40モル%以上含むので本発明の範囲外である。
【0030】
【表1】
*1)TPA:テレフタル酸
*2)IPA:イソフタル酸
*3)NDC:2,6−ナフタレンジカルボン酸
*4)DPDA:4,4‘−ジフェニルジカルボン酸
*5)AA:アジピン酸
*6)SA:セバシン酸
*7)DDA:ドデカンジカルボン酸
*8)式5:式5で示されるジカルボン酸
*9)TMA:無水トリメリット酸
*10)EGエチレングリコール
*11)2MG:2−メチル−1,3−プロパンジオール
*12)1,3−PD:1,3−プロパンジオール
*13)NPG:ネオペンチルグリコール
*14)1,6−HD:1,6−ヘキサンジオール
*15)ND:1,9−ノナンジオール
*16)DDOダイマージオール(ユニケマ社製プリポール2033)
*17)PTG:ポリテトラメチレングリコール(分子量1000)
【0031】
【表2】
<実施例1>
難燃性:JIS K7201酸素指数法に準じて限界酸素指数(L.O.I)で評価した。これは、試料が燃焼するために必要な最低酸素濃度である。この酸素指数が大きいほど難燃性が高いことを示す。
接着性:合成例1で得られたポリエステル接着剤を50μmの2軸延伸PETフィルム上に厚みが30μmになるように積層する。接着層同志を合わせ、テスター産業社製ロールラミネータを用いて接着した。なお、ラミネートは温度170℃、圧力0.3mPa、速度0.5m/minで行った。接着強度は東洋ボールドウイン社製RTM100を用いて、25℃及び、60℃雰囲気下で引っ張り試験を行い、50mm/minの引っ張り速度でT型剥離接着力を測定した。
分子量低下率:合成例1で得られたポリエステル接着剤を50μmの2軸延伸PPフィルム上に接着剤を厚みが30μmになるように積層する。このフィルムの接着剤面を上にして40℃、90%の恒温恒湿機に入れ、100時間静置した。このようにして加速試験したサンプルの耐加水分解を調べるために、PPフィルムから接着剤をはがして数平均分子量を測定し、その低下率を算出した。
(判定)
◎:分子量低下率5%未満、○:分子量低下率5%以上10%未満、×:分子量低下率10%以上
【0032】
<実施例2〜6、比較例1〜6>
表1及び表2に記載したポリエステル接着剤サンプルの各評価を実施例1と同様に行った。
表3から分かる様に、本発明のポリエステル接着剤は、従来技術と比較して、難燃性に優れ、又、耐加水分解性、接着性に優れた性能を有することがわかる。それに対して、表4に見られるように、比較例1〜6は、酸素指数(難燃性)、接着性、耐加水分解性のいずれかが劣っている。
【0033】
【表3】
*1)40℃、90%RH下保存、100時間後測定
◎:分子量低下率5%未満、○:5%以上10%未満、×:10%以上
【0034】
【表4】
【0035】
【発明の効果】
本発明は、接着剤や含浸用樹脂等として用いた場合、高温雰囲気下においても優れた接着性を有し、高い難燃性を有すると共に、加水分解が少ないため、長期間使用できる耐久接着性を実現することができる。
Claims (3)
- 分子鎖中に含まれるリン原子が0.5wt%以上であり、
数平均分子量が8000以上であり、
ポリエステルの酸成分の内、芳香族ジカルボン酸が40モル%以上共重合されており、
一般式1で示されるリン含有カルボン酸あるいは、そのエステル化合物が共重合されており、
R3,R4:水素原子、炭化水素基またはヒドロキシ基置換炭化水素基
l、m:0〜4の整数
ポリエステルのグリコール成分の内、炭素数4以上のグリコールである2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ダイマージオールおよび/またはポリテトラメチレングリコールを合計59モル%以上含み、かつエチレングリコールの含有量が40モル%未満であることを特徴とする難燃性ポリエステル樹脂。 - ガラス転移温度が−15℃以上40℃未満であることを特徴とする請求項1記載の難燃性ポリエステル樹脂。
- 請求項1または2に記載の難燃性ポリエステル樹脂を使用した難燃性ポリエステル接着剤。
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