JP5061405B2 - セラミックシート付き離型フィルムおよび離型フィルムの離型層の硬さを設計する方法 - Google Patents
セラミックシート付き離型フィルムおよび離型フィルムの離型層の硬さを設計する方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムに関し、詳しくは特に薄層のセラミックシートの製造用支持体として好適な離型フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムを基材とし、その上に離型層を積層した離型フィルムは、粘着ラベル、粘着テープ等の台紙として一般的に広く使用されている。
【0003】
近年、携帯電話の急激な普及にともない、積層セラミックコンデンサーの需要が拡大してきている。積層セラミックコンデンサーは、一時的に電気を蓄える特性を使い電流を安定させる目的で電子回路に不可欠な部材であり、携帯電話には約250個の積層セラミックコンデンサーが使用されている。
【0004】
積層セラミックコンデンサー用セラミックシートを製造する際に、工程用キャリアフィルムとして、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、価格等の点より、二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、シリコーン系皮膜を設けた離型フィルムが一般的に使用されてきている。このような、シリコーン系皮膜を有する離型フィルムとしては、特開昭60−141553号公報、特開平3−231812号公報、特公平4−59207号公報、特公平6−2393号公報が知られている。
【0005】
前記セラミックシートは、チタン酸バリウム、アルミナ等のセラミック粉末を分散させた水系ないし有機系溶媒に、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等の高分子バインダーと可塑剤、分散剤とを加えたものを高速ミキサーやボールミルにより混合分散し、次いでセラミックスラリーを離型フィルムの離型層面にドクターブレード法により数百μm〜数十μmの厚さに塗布・乾燥させた後、離型フィルムから剥離して巻き取ることにより一般に製造されている。
【0006】
近年、積層セラミックコンデンサーの小型・高容量化のために、セラミックシートの厚さをより薄膜化し、かつ多層に積層することが要望されている。セラミックシートの厚みは、従来の7〜10μm程度から、現在では3〜5μm程度の厚みのものが開発されてきており、さらに1〜2μm程度の厚みのものも検討されつつある。また、数年後には1μm未満の厚みにまで、セラミックシートの薄膜化が進むと予想されている。
【0007】
ところが、セラミックシートの厚みが薄くなるにつれ、セラミックシートを離型フィルムの離型層から剥離する際の剥離力が大きくなり、剥離不良が多発するという新しい問題が生じてきた。そのため、従来の離型フィルムよりも剥離力の小さい離型フィルムが必要となってきた。従来のラベル用などに使用されてきた汎用の離型フィルムは、その用途で剥離力が小さいものであっても、薄層セラミックシートの製造には剥離性の点で不十分であり、より剥離力の小さい離型フィルムが求められている。
【0008】
ところが、ある特定組成のセラミックシートとの剥離力が小さい離型フィルムを設計しても、セラミックシートの構成成分(セラミックの種類や平均粒径、バインダーの種類、それらの含有量比率など)やセラミックシートの厚みが変わると、セラミックシートと離型フィルムの離型層との剥離力が変化するため、再びその特定組成のセラミックシートに最適な離型フィルムの離型層組成を設計する必要があった。
【0009】
さらに、剥離力の小さい離型フィルムであればあるほど、離型層とポリエステル基材フィルムとの密着性は悪化する傾向が強い。離型フィルムはセラミックシート製造工程、特にセラミックスラリーを離型フィルムに塗工する前の駆動ロールや粘着ロールなどの剪断力や粘着力が付与される工程で、離型層と基材フィルムとの密着性が悪いと、離型フィルムの離型層が脱落しやすくなる。その結果、セラミックシートの剥離不良や平滑性不良等の不具合が生じる。そのため、離型層と基材フィルムとの密着耐久性に優れた離型フィルムも求められている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解消し、特に薄層のセラミックシートの製造において、セラミックシートの剥離性に優れ、かつ離型層と基材フィルムとの密着耐久性に優れたセラミックシート付き離型フィルムを提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、セラミックシートを製造する際の剥離工程において、剥離界面のセラミックシートと離型フィルムの離型層とのダイナミック硬度差を特定範囲とすることで、セラミックシートの構成成分(セラミックの種類や平均粒径、バインダーの種類、それらの含有量比率など)やセラミックシートの厚みに依存せず、剥離性に優れることを見出したものである。
【0012】
さらに本発明は、離型層と基材フィルム間の密着耐久性のパラメータであるラブオフ値を特定の範囲内とした離型フィルムが、セラミックシート製造時の離型層脱落にともなう不具合が生じないことを見出したものである。
【0013】
すなわち、本発明は、厚みが12〜100μmであるポリエステルフィルムの片面に紫外線硬化型シリコーン樹脂と硬化触媒とを300mJ/cm2〜500mJ/cm2の紫外線照射量で反応、硬化させた離型層を設けた離型フィルムと、前記離型フィルムの離型層表面にセラミックシート層を積層してなるセラミックシート付き離型フィルムであって、前記紫外線硬化型シリコーン樹脂が紫外線カチオン硬化型シリコーンであり、
前記離型層表面にセラミックシート層を積層した際のセラミックシート層表面のダイナミック硬度Aと前記離型層表面のダイナミック硬度Bとの差の絶対値が下記式(1)を満足し、
かつ前記離型層のラブオフ値が6.0以下であることを特徴とするセラミックシート付き離型フィルム。
|A−B|≦4(gf/μm2) …(1)
(ここで、ラブオフ値とは、離型層表面に粘着剤層を設けた際の離型層と粘着剤層との剥離力を、離型フィルムの離型層表面を摩擦材で10往復摩擦させた後と摩擦前で測定し、摩擦後の剥離力(P10)と摩擦前の剥離力(P0)との比(P10/P0)で示すものである。)
【0014】
【発明の実施形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の離型フィルムの基材には、ポリエステルフィルムを使用する。ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂は特に限定されず、離型フィルムの基材として一般的に使用されているポリエステル樹脂を使用することができる。なかでも、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステル樹脂が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0015】
また、本発明のセラミックシート製造用離型フィルムは、離型層からセラミック層を剥離しセラミックシートを製造した後はキャリアフィルムとしての機能を終え廃棄される。すなわち、セラミックシート製造後には離型フィルムは不要なものとなる。しかしながら、従来から離型フィルムの支持体として使用されてきた前記ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムなどは生分解性の機能が無く、焼却処分せざるを得ない。
【0016】
したがって、自然界で分解する生分解性を有し、燃焼時にも熱量が少なく焼却炉を痛めないなど環境負荷が少なく、かつ透明性、機械的強度に優れた、生分解性プラスチックフィルムを離型フィルムの支持体として使用することもできる。前記生分解性プラスチックフィルムとしては、例えば主たる繰り返し単位が、一般式、−O−CHR−CO−(Rは水素または炭素数1〜3のアルキル基)で示される単位からなる脂肪族ポリエステルフィルムなどが挙げられる。前記繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(2−オキシ酪酸)などを挙げることができるが、これらの一種または二種以上が選択して用いられる。二種以上を用いる場合は、混合物、共重合体でもよい。また、ポリマー中に不斉炭素を有するものでは、L−体、DL−体、D−体といった光学異性体が存在するが、これらのいずれでもよく、また、二種以上の異性体が混在したものであってもよい。前記脂肪族ポリエステルは、対応するα−オキシ酸の脱水環状エステル化合物を用い、開環重合などの公知の方法で製造することができる。これらの脂肪族ポリエステルの中でも、特にポリ乳酸が最も好適である。
【0017】
一方、離型フィルムの基材であるポリエステルフィルムには、フィルムの滑り性、巻き性、ブロッキング性などのハンドリング性を良くするために、本発明の効果を阻害しない範囲内で、無機粒子や耐熱性高分子粒子を含有させても良い。しかしながら、セラミックシート製造時のピンホールなどの欠点検査のために、フィルムの透明性を大きく阻害するような粒子は好ましくない。前記粒子としては、例えばシリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、アルミナ−シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト粒子等が挙げられる。特に、ポリエステルと屈折率差の小さい粒子が好ましく、例えば凝集体シリカ、ガラスフィラーなどが好適である。また、前記粒子は平均粒径が0.01〜3μmであることが好ましく、ポリエステルフィルムに対し0.005〜0.5重量%の割合で含有させることが好ましい。
【0018】
透明性を維持しながらハンドリング性に優れたポリエステルフィルムを得るためには、例えば平均粒径1〜3μmの凝集体シリカ粒子を使用する場合には、ポリエステルフィルム中に100〜600ppm、特に200〜300ppm含有させることが好適である。また、中間層に不活性粒子を含有させずに、表面層にのみ不活性粒子を含有するフィルム積層体としてもよい。この場合、ポリエステルフィルムには不活性粒子を含有させずに、離型層とは反対面に粒子含有層を共押出し法または塗布法により設ける方法などが挙げられる。
【0019】
ポリエステル樹脂に微粒子を含有させる方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができる。好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用いエチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーと粒子を含有していない溶融ポリエステル樹脂にブレンドしてもよい。
【0020】
また、前記ポリエステル樹脂には、各種の添加剤を含有させても良い。添加剤としては、例えば、アルカリ土類金属塩及び/またはアルカリ金属塩などの静電密着性付与剤、リン酸やリン酸エステルなどのリン酸系化合物などの熱安定剤、帯電防止剤、UV吸収剤等が挙げられる。
【0021】
本発明の離型フィルムに用いるポリエステルフィルムは、キャリアフィルムとして要求される機械的強度、耐熱性、透明性などの点から、二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
【0022】
次に、本発明のセラミックシート製造用離型フィルムの製造方法について、離型フィルムの支持体としてポリエチレンテレフタレート(PETと記す)フィルムを使用した例を説明するが、当然これに限定されるものではない。
【0023】
粒子を含有するPET樹脂ペレットを十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、約280℃の溶融PET樹脂をTダイよりシート状に溶融押出しし、冷却回転ロール上で静電気を印加させながら冷却固化密着せしめて、未延伸PETシートを得る。溶融押出しの際、溶融PET樹脂が約280℃に保たれたメルトライン中で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行うことが好ましい。
【0024】
溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合、触媒や添加粒子起因の凝集物や高融点有機物の除去性能に優れ好適である。
【0025】
さらに、濾材として濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が15μm以下のものを使用することにより、20μm以上の大きさの異物を効率良く除去することができ好ましい。
【0026】
得られた未延伸シートを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍に一段または多段に分け延伸して一軸配向ポリエステルフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して80〜180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き160〜240℃の熱処理ゾーンに導き、1〜60秒間の熱固定処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱固定処理工程中で、幅方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。さらに、熱固定処理後フィルム両端のクリップ把持部分をトリミングし、次いで長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0027】
また、二軸延伸フイルムの製造方法は、前記のような逐次二軸延伸法以外に、未延伸フィルムを縦方向と横方向に同時二軸延伸する方法によっても得ることができる。同時二軸延伸はリニアモーター駆動式のテンターを用いても良い。
【0028】
ポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは12〜100μm、より好ましくは25〜50μmである。 厚みが12μm未満では、セラミックシート製造の際のキャリヤーフィルムとして要求される腰(スティッフネス)が不十分となる。一方、厚みが100μmを超えるとコスト高となり好ましくない。
【0029】
本発明で使用する離型フィルムの離型層を構成する樹脂としては、紫外線硬化型を使用する。軽剥離性の点からシリコーン樹脂が好ましい。
【0030】
紫外線硬化型シリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとしては、1)アルケニル基とメルカプト基を含有するシロキサンに、光重合開始剤を加え架橋反応させるラジカル付加型、2)メタクリル基やアクリル基を含有するシロキサンに光重合開始剤を加えラジカル重合により硬化させるラジカル重合型、3)白金系触媒の存在化でビニルシロキサンをヒドロシリル化反応させる付加反応型、4)紫外線でオニウム塩光開始剤を分解してブレンステッド酸を生成させ、これでエポキシ基を開裂させて架橋させるカチオン重合型、などが挙げられる。なかでも、紫外線カチオン硬化型シリコーン樹脂は、官能基にエポキシ基を有しており、コロナ処理したフィルムへの密着性に優れることから特に好適である。
【0031】
電子線は紫外線よりもエネルギーが強いため、電子線硬化型のシリコーン樹脂は、紫外線硬化型のように開始剤を用いなくてもラジカルによる架橋反応が起こる。
【0032】
本発明では、離型フィルムの離型層表面にセラミックシート層を積層した際に、セラミックシート層表面のダイナミック硬度Aと前記離型層表面のダイナミック硬度Bとの差の絶対値が下記式(1)を満足することが必要である。
|A−B|≦4(gf/μm2) …(1)
【0033】
前記ダイナミック硬度の差の絶対値(|A−B|)が6gf/μm2を越えると、セラミックシート層を離型フィルムから剥離してセラミックシートを製造する際に剥離性が低下し、特に薄層のセラミックシートの場合、剥離時にセラミックシートの破れや剥離不良が多発し、歩留まりが低下する等の問題が発生する。
【0034】
前記ダイナミック硬度の差の絶対値(|A−B|)を上記範囲内とすることにより、セラミックシート層を離型フィルムから剥離してセラミックシートを製造する際の剥離力が小さく、容易に剥離することができるため、セラミックシートの破損を低減することができる。
【0035】
セラミック層を離型フィルムから剥離してセラミックシートを製造する際、セラミックシートの硬さにより剥離形態が変わるため、離型フィルムの離型層面の硬さを変える必要がある。すなわち、セラミックシートが柔らかい場合、セラミックシート層を剥離する際に、セラミックシート層の粘性の影響がでてくるため、それに対応して離型フィルムの離型層の構成成分である活性エネルギー線硬化型樹脂を柔らかくすることが好ましい。
【0036】
また、セラミックシートが硬い場合、またはセラミックシートの厚みが薄い場合には、セラミックシート層を剥離する際に、セラミックシート層の粘性の影響はほとんど見られないため、離型フィルムの離型層の構成成分である活性エネルギー線硬化型樹脂を硬くすることが好ましい。
【0037】
セラミックシートと離型フィルムとの界面の剥離挙動は、通常の粘着シートと離型フィルムとの界面の剥離挙動とは異なる。すなわち、粘着シートの粘着剤層と離型フィルムの離型層との界面の剥離の場合には、界面の凝集エネルギーが支配的となる。一方、硬いセラミックシートと離型フィルムとの界面の剥離の場合には、離型層が硬い場合には剥離時の離型層の変形が小さく、結果として剥離力が小さくなる。また、離型層が柔らかい場合には剥離時の離型層の変形が大きく、結果として剥離力が大きくなる。
【0038】
したがって、硬いセラミックシートと硬い離型フィルムとの剥離挙動は、粘着シートと離型フィルムとの剥離のような、界面剥離力ではなく、界面せん断力に支配されているものと考えられる。
【0039】
前記ダイナミック硬度差の絶対値(|A−B|)を20gf/μm2以下とするためには、セラミックシート層の硬さに応じて離型フィルムの離型層の硬さを設計することが必要である。
【0040】
例えば、セラミックシートはセラミック原料(チタン酸バリウム、アルミナ等)と結着剤(ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等)から構成されるが、セラミックシートに対して結着剤の含有量が多い場合、またはセラミックシート層の厚みが厚い場合には、離型フィルムにセラミックシート層を積層した際のセラミックシートの硬度は小さくなる。また、セラミックスラリー中でのセラミック粉末の分散性もセラミックシートの硬度に影響し、セラミック粉末の分散性が不十分であるとセラミックシートの硬度は小さくなる。
【0041】
上記のような硬度の小さいセラミックシートを剥離する場合には、活性エネルギー線硬化型樹脂を主成分とする離型層の硬度を小さくすることが必要であり、例えば1)樹脂中の疎水基の含有量を可能な限り多くする、2)樹脂中に導入する架橋基の含有量を少なくする、3)リニアーな分子構造を有する樹脂を使用する、ことなどによって達成することができる。また、離型層の厚みを厚くすることも有効である。
【0042】
また、セラミックシートに対する結着剤の含有量が少ない場合、またはセラミックシート層の厚みが薄い場合には、離型フィルムにセラミックシート層を積層した際のセラミックシートの硬度は大きくなる。
【0043】
上記のような硬度の大きいセラミックシートを剥離する場合には、活性エネルギー線硬化型樹脂を主成分とする離型層の硬度を大きくすることが必要であり、例えば樹脂中に導入する疎水基の含有量の調整は必要であるが、樹脂中に導入する架橋基の含有量を多くするなどの方法で、樹脂の架橋密度を大きくすることにより達成することができる。
【0044】
また、活性エネルギー線硬化型樹脂を主たる構成成分とする離型層の厚みが面内において均一であれば、厚みが小さいほど一定の硬化エネルギーでも架橋密度が大きくなるため、厚みを可能なかぎり小さくすることにより、離型層の硬度を大きくすることもできる。さらに、フィルム自体の硬度も調整してもよい。
【0045】
さらに、離型層の硬化条件によっても硬度を制御することができ、活性エネルギー線照射時の温度及び照射量が高いほど、離型層樹脂の架橋密度が大きくなり、離型層の硬度を高くすることができる。
【0046】
離型層の塗布量は特に限定されないが、硬化後の離型層の塗布量が0.02〜0.2g/m2となる範囲が好ましくい。離型層の塗布量が0.02g/m2未満では、剥離性能が低下しやすい。一方、0.2g/m2を超えると、ポリエステルとの密着性に影響する硬化時間が長くなり、生産性が低下しやすくなる。
【0047】
前記離型層をポリエステルフィルムに形成する方法は、特に限定されないが、例えば活性エネルギー線硬化型シリコーン樹脂を分散させた塗布液を、基材のポリエステルフィルムの片面に塗布し、溶媒等を乾燥・除去した後、活性エネルギー線を照射することによりシリコーン樹脂を反応させ硬化させる方法が用いられる。
【0048】
上記塗布液の塗布法としては、公知の任意の塗布法を適用することができ、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、マイヤーバーなどのバーコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法等の従来から知られている方法を使用することができる。
【0049】
また、本発明の離型フィルムの離型層面は、離型層のラブオフ値が6以下である。ラブオフ値が6を超えると、セラミックシート製造工程において、セラミックスラリーを離型フィルムの離型層に塗布する前に離型層の脱落が発生しやすくなる。そのため、離型層が脱落した箇所にセラミックスラリーを塗布すると、セラミックシートの厚みの不均一化や、離型層が脱落した箇所でセラミックシートの剥離不良が多発しやすくなり、歩留まりが低下するなどの問題が発生する。
【0050】
なお、ラブオフ値とは、離型層と基材のポリエステルフィルム間の密着耐久性に関連するパラメータであり、ラブオフ値が低いほど密着耐久性が良いと判断する。具体的には、離型層表面に粘着剤層を設けた際の離型層と粘着剤層との剥離力を、離型フィルムの離型層表面を2N/cm2の荷重下で摩擦材により10往復摩擦させた後と摩擦前で測定し、摩擦後の剥離力(P10)と摩擦前の剥離力(P0)との比(P10/P0)で示したものである。摩擦試験機としては学振式摩擦ケンロウ度試験機を用い、摩擦材としては白色ポリプロピレンフィルムを用いた。また、剥離力は離型層表面に粘着テープを貼り、300mm/分の速度で剥離した際の測定値である。
【0051】
離型層のラブオフ値が6以下、すなわち離型層とポリエステルフィルムとの密着性が良好である場合、離型層がポリエステルフィルムから脱落することがない。そのため、セラミックスラリーが均一に塗布され、セラミックシート層を離型フィルムから剥離することが容易となり、セラミックシートの破損を低減することができる。
【0052】
上記範囲のようなラブオフ値を得るには、例えば活性エネルギー線硬化型シリコーン樹脂の架橋密度を大きくすることが好ましい。特に、紫外線カチオン硬化型シリコーン樹脂は、架橋基にエポキシ基を用いているため、ポリエステルフィルムへの密着性は、架橋反応を促進すればするほど強くなる。
【0053】
また、ポリエステルフィルムへの密着性を上げるために、上記離型層用塗布液をフィルムへ塗布するに先立ち、ポリエステルフィルム表面に、アンカーコートあるいはコロナ処理、火炎処理等の前処理を行なっても良い。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を用いてさらに詳細に本発明の説明をするが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、本発明で使用する特性及び物性評価は、下記の方法により測定した。
【0055】
(1)ダイナミック硬度
ダイナミック超微小硬度計(島津製作所製、DUH−201−202)を用いて、加重2gfの三角すいを試料(セラミックシート面あるいは離型層面)に押しつけ、2秒間保持した後のダイナミック硬度を下記式より求めた。なお、測定は10回行ない平均値を使用した。また、離型フィルムの離型層面におけるダイナミック硬度の測定は、セラミックシート層を設ける前の離型フィルムに対して行なってもよいし、セラミックシート層を設けた後セラミックシート層を剥離した離型フィルムに対して行なってもよい。
ダイナミック硬度=α×P/D2
ここで、Pは試験加重(gf)、Dは圧子の試料への侵入量(μm)、αは圧子形状による定数(115°三角すい)であり、37.838である。
【0056】
(2)ラブオフ値
まず、サンプルとして縦23cm×横4cm程度の寸法にカットした離型フィルム、摩擦材として2cm×8cm程度の寸法にカットした白色ポリプロピレンフィルム(東洋紡績社製、パールSS、厚み35μm)、2.5cm×7cm程度の寸法にカットした2枚の綿ガーゼ、及びポリエステル粘着テープ(日東電工社製、ニットー31B)を準備する。
【0057】
学振式摩擦ケンロウ度試験機(山口科学産業社製)のヘッド部分にガーゼと白色ポリプロピレンフィルムをはめ込み、ヘッドと相対する部分にサンプルを置き固定する。ガーゼと白色ポリプロピレンフィルムをはめ込んだヘッド部分をサンプルの上に倒し、セットする。白色ポリプロピレンフィルムとサンプルの離型層表面を重ね合わせ、2N/cm2の荷重下で10往復摩擦させた後の離型層表面に粘着剤層を設けた際の離型層と粘着剤層との剥離力(P10)と、走行前の離型層表面に粘着剤層を設けた際の離型層と粘着剤層との剥離力(P0)との比(P10/P0)を求め、下記の3つの基準で評価した。
○:≦5.0
△:5.0を超え、10.0以下
×:>10.0
【0058】
(3)セラミックシートの剥離性
セラミックシート製造用フィルム積層体を5cm巾にカットし、ピール法(剥離速度:500mm/分、T型剥離)によりセラミックシート層を離型フィルムから剥離して、下記基準により評価した。なお、試験は5回行ない、○を合格とした。
○:5回の試験で、いずれの剥離時にもセラミックシートが破れなかった場合
△:5回の試験で、1回でも剥離時にセラミックシートが一部でも破れた場合
×:5回の試験で、1回でも剥離時にセラミックシートが完全に破れ破損した場合
【0059】
剥離力は、離型層表面に粘着テープを貼り、気泡およびゴミなどの混入に注意しながら5kgの圧着ゴムローラで一往復させた後、テンシロンによりロードセル・エアーチャック5kg、引張速度300mm/分、チャートスピード200mm/分の条件で剥離した際の測定値である。なお、ガーゼと白色ポリプロピレンフィルムは、摩擦が1往復終了する毎に取り替えた。
【0060】
実施例1
活性エネルギー線硬化型樹脂として紫外線カチオン硬化型シリコーン樹脂(東芝シリコン株式会社製、UV9315)を樹脂固形分濃度が2重量%となるように溶剤(ノルマルヘキサン)に分散させた後、シリコーンレジン100重量部に対し、1重量%のビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートを硬化触媒として添加し、シリコーン樹脂塗布液を作成した。
【0061】
厚さ50μmの二軸延伸PETフイルム(東洋紡績社製、E5151)の片面にワイヤーバーを用いて上記硬化型シリコーン樹脂塗布液を塗布した。100℃で30秒間乾燥した後、紫外線照射装置で紫外線照射(300mJ/cm2)し、硬化型シリコーン樹脂を主たる構成成分とする離型層(乾燥後塗布量:0.10g/m2)を設けた離型フィルムを得た。
【0062】
また、溶剤(トルエン/エタノール=50/50:重量比)中にセラミック粉末(平均粒径が0.6μmのチタン酸バリウム(BaTiO3)、富士チタン社製)を混合し、ボールミルで24時間分散した後、結着剤(ポリビニルブチラール、積水化学工業製)及び可塑剤(ポリエチレングリコール、セラミック粉末と結着材の総量に対し2重量%)を混合し、さらにボールミルで24時間分散し、ペースト状のセラミックスラリーを得た。
【0063】
前記の離型フィルムの離型層表面に、上記セラミックスラリーを乾燥後の厚みが10μmになるようにドクターブレードを用いてコートし、120℃で1分間乾燥してセラミックシート層(セラミック原料/結着剤の重量比:100/10)を設けた。評価結果を表1に示す。
【0064】
実施例2
活性エネルギー線硬化型樹脂として紫外線カチオン硬化型シリコーン樹脂(東芝シリコン株式会社製、UV9300)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で離型フィルムを得た。さらに、実施例1と同様の方法でセラミックシート層を設けた。評価結果を表1に示す。
【0065】
実施例3
紫外線照射量を500mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様の方法で離型フィルムを得た。さらに、実施例1と同様の方法でセラミックシート層を設けた。評価結果を表1に示す。
【0066】
比較例1
紫外線照射量を100mJ/cm2とし、さらにセラミックシートの組成をセラミック原料/結着剤=100/50(重量比)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でセラミックシート層を設けた。評価結果を表1に示す。
【0067】
比較例2
付加重合反応型シリコーンレジン(信越化学株式会社製、KS830)を樹脂固形分濃度が3重量%となるように溶剤(トルエン)に分散し、シリコーンレジン100重量部に対し、1重量%の白金触媒を添加して硬化型シリコーン樹脂塗布液を作成した。
【0068】
厚さ50μmの二軸延伸PETフイルム(東洋紡績社製、E5151)の片面にワイヤーバーを用いて上記硬化型シリコーン樹脂塗布液を塗布した。160℃で30秒間乾燥及び硬化させ、離型層(乾燥後塗布量:0.5g/m2)を設けた離型フィルムを得た。上記で得られた離型フイルムの離型層面にセラミックシート層(セラミック原料/結着剤の重量比:100/10)を設けた。評価結果を表1に示す。
【0069】
比較例3
紫外線照射量を100mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様の方法で離型フィルムを得た。さらに、実施例1と同様の方法でセラミックシート層を設けた。評価結果を表1に示す。
【0070】
比較例4
実施例1において、セラミックスラリーの調合方法を、溶剤(トルエン/エタノール=50/50:重量比)中にセラミック粉末(平均粒径が0.6μmのチタン酸バリウム(BaTiO3)、富士チタン社製)、結着剤(ポリビニルブチラール、積水化学工業製)、及び可塑剤(ポリエチレングリコール、セラミック粉末と結着材の総量に対し2重量%)を混合し、ボールミルで1時間分散してセラミックスラリーを調合する方法に変更した以外は、実施例1と同様にして得た離型フィルムにセラミックシート層を設けた。評価結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のセラミックシート付き離型フィルムは、セラミックシート層と離型層とのダイナミック硬度差の絶対値を小さくしているため、セラミックシートを剥離する際の剥離力が小さく、剥離不良が起こりにくい。その結果、セラミックシートの剥離時にセラミックシートの破れや剥離不良がなく、生産性の良好なセラミックシートを得ることができる。また、本発明は、顧客の要望でセラミックシートの組成や厚みを変更する場合にも、セラミック層表面と離型層表面との硬度差の絶対値という尺度でそれに適応した離型フィルムを過度な実験を行なうことなく短期間に設計することができるので極めて有用である。さらに、離型層と基材フィルム間の密着耐久性に優れているため、セラミックシート製造工程、特にセラミックスラリーを離型フィルムに塗工する前の駆動ロールや粘着ロールなどの剪断力や粘着力が付与される工程を通過しても、離型フィルムの離型層が脱落しにくい。そのため、セラミックシートの剥離不良や平滑性不良等の不具合も生じないという利点もある。
Claims (2)
- 厚みが12〜100μmであるポリエステルフィルムの片面に紫外線硬化型シリコーン樹脂と硬化触媒とを300mJ/cm2〜500mJ/cm2の紫外線照射量で反応、硬化させた離型層を設けた離型フィルムと、前記離型フィルムの離型層表面にセラミックシート層を積層してなるセラミックシート付き離型フィルムであって、前記紫外線硬化型シリコーン樹脂が紫外線カチオン硬化型シリコーンであり、
前記離型層表面にセラミックシート層を積層した際のセラミックシート層表面のダイナミック硬度Aと前記離型層表面のダイナミック硬度Bとの差の絶対値が下記式(1)を満足し、
かつ前記離型層のラブオフ値が6.0以下であることを特徴とするセラミックシート付き離型フィルム。
|A−B|≦4(gf/μm2)・・・(1)
(ここで、ラブオフ値とは、離型層表面に粘着剤層を設けた際の離型層と粘着剤層との剥離力を、離型フィルムの離型層表面を摩擦材で10往復摩擦させた後と摩擦前で測定し、摩擦後の剥離力(P10)と摩擦前の剥離力(P0)との比(P10/P0)で示すものである。) - 厚みが12〜100μmであるポリエステルフィルムの片面に紫外線カチオン硬化型シリコーンと硬化触媒とを構成成分とする離型層を設けた離型フィルムと、前記離型フィルムの離型層表面にセラミックシート層を積層してなるセラミックシート付き離型フィルムにおいて、前記離型層表面にセラミックシート層を積層した際のセラミックシート層表面のダイナミック硬度Aと前記離型層表面のダイナミック硬度Bとの差の絶対値が|A−B|≦20gf/μm2を満足し、かつ上記ラブオフ値が10以下を満足するように離型層を硬化させることを特徴とするセラミックシート層の硬さに応じて紫外線照射量を変えて離型フィルムの離型層の硬さを設計する方法。
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