JP3988437B2 - セラミックシート製造用フィルム積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムに関し、詳しくは剥離力が小さく、超薄膜のセラミックシートの製造用等に好適なフィルム積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムを基材とし、その上に離型層を積層した離型フィルムは、粘着ラベル、粘着テープ等の台紙として広く使用されている。
近年、セラミックコンデンサーなどの部品として使用されるセラミックシートの作成に離型フィルムが使用されることが一般化されるなか、セラミックコンデンサーの大容量化、小型化に伴って、セラミックシートが薄膜化(特にセラミックが薄くなると剥離力は大きくなる)し、それにより従来の離型フィルムより剥離力の小さい離型フィルムが求められるようになっている。すなわち、従来の離型フィルムは、ラベル用等としては剥離力が十分に小さいものであっても、薄層セラミックシートの製造に用いるは不適当である傾向が生じており、より剥離力の小さい離型フィルムが求められている。しかしながら、セラミックの種類により、最適な離型性を有する離型層を選択することは、非常に困難であった。
また、セラミックの厚みが薄膜になればなるほど、セラミックシートのピンホール等の欠点が発生しやすくなるという問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる問題点を解消し、特に薄層のセラミックシートの製造において剥離時の剥離力が小さく、セラミックシートのピンホール等の欠点を実質上生じることのないフィルム積層体を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
我々は、鋭意検討の結果、特定範囲のダイナミック硬さを有するセラミックシートと、特定範囲のダイナミック硬さを有する離型層とからなる離型フィルム積層体が、セラミックシート製造時の剥離工程において、好ましい剥離除去性を示すことを見出すとともに、特定の表面凹凸を有する離型フィルムが、セラミックシート製造時のコーティング工程において、好ましい均一コート性を示すことを見出し、本発明に到達したものである。
【0005】
即ち、本発明は、ポリエステルフィルムからなる基材の少なくとも一方の表面に、硬化型シリコーン樹脂を硬化させたシリコーン樹脂より構成される離型層を設け、該離型層の直上にセラミックシート層を積層して製造されるフィルム積層体の製造方法であって、
離型層は、硬化後の離型層の表面の三次元平均表面粗さSRaが0.025μm以下であり、紫外線硬化型シリコーン樹脂に100mJ/cm 2 以上の紫外線を照射して硬化させて形成され、
セラミックシート層を積層する際に、セラミックシート層の負荷時のダイナミック型さ(A)と該離型層の負荷時のダイナミック型さ(B)との差の絶対値が20gf/μm 2 以下となるように、セラミックシート層の(a)結着材とセラミック原料との混合比、あるいは(b)セラミックシート層の厚み、に応じて、(c)離型層の厚み、あるいは(d)硬化型シリコーン樹脂の架橋密度、を調整することを特徴とするセラミックシート製造用フィルム積層体の製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の基材として用いるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは特に限定されず、離型フィルム基材として通常一般に使用されているポリエステルフィルムを成形したものを使用することが出来るが、好ましくは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステルであるのが良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0007】
本発明に用いるポリエステルフィルムとしては、特に機械強度が優れる等から、二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
【0008】
本発明において用いるポリエステルフィルムの製造法は、特に限定されず、従来一般に用いられている方法を用いることが出来る。例えば、前記ポリエステルを押出機にて溶融して、フィルム状に押出し、回転冷却ドラムにて冷却することにより未延伸フィルムを得、該未延伸フィルムを一軸または二軸延伸する事により得ることが出来る。一軸延伸フィルムは、未延伸フィルムを縦方向あるいは横方向に一軸延伸することにより得ることが出来る。また、二軸延伸フィルムは、縦方向あるいは横方向の一軸延伸フィルムを横方向または縦方向に逐次二軸延伸する方法、或いは未延伸フィルムを縦方向と横方向に同時二軸延伸する方法で得ることが出来る。
【0009】
本発明において、ポリエステルフィルム延伸時の延伸温度は、ポリエステルの二次転移点(Tg)以上とすることが好ましい。また、二軸延伸フィルムの場合は、おのおのの方向に1〜8倍、特に2〜6倍の延伸倍率とすることが好ましい。
【0010】
本発明に用いるポリエステルフィルムの厚さは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、2〜300μmであるのが良く、特に10〜125μmであることが好ましい。
【0011】
本発明の離型フィルムにおける離型層を構成するシリコーン樹脂としては、特に限定はなく、付加反応系、縮合反応系、紫外線硬化系もしくは、電子線硬化系のシリコーン樹脂等の硬化性シリコーン樹脂を使用することが出来る。
【0012】
付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイロドジエンシロキサンを白金触媒を用いて反応させ、3次元架橋構造を形成したものが挙げられる。
【0013】
縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端に−OH基を持つポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンを白金触媒を用いて反応させ、3次元架橋構造を形成したもの等が挙げられる。
【0014】
紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、例えば、最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、不飽和基を導入して光硬化させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これでエポキシ基を開裂させて架橋するもの等が挙げられる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強い為、電子線硬化系のシリコーン樹脂は、紫外線硬化系のように開始剤を用いなくてもラジカルによる架橋反応が起こる。
【0015】
本発明の離型フィルム積層体は、離型フィルムの離型層表面上に積層されるセラミックシート層の負荷時のダイナミック硬さ(A)と該離型層の負荷時のダイナミック硬さ(B)とが、下記式(1)で示される範囲であることが必要である。
|A−B|≦20(gf/μm2)・・・・(1)
|A−B|は、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
上記範囲外になると後述の様に、セラミックシート製造時の剥離工程におけるセラミックシートからの離型フィルムの剥離性が低下し、特に薄層のセラミックシートの場合、剥離時にセラミックシートの破れや剥離不良が多く発生し、歩留まりが低下する等の問題が発生する。
【0016】
セラミックシート層の負荷時のダイナミック硬さ(A)と離型層の負荷時のダイナミック硬さ(B)との関係が上記範囲にあることにより、剥離工程における、セラミックシートからの離型フィルムの剥離が容易になり、セラミックシートの破損を低減することができる。セラミックシートと離型フィルムとの剥離は、セラミックシートの硬さにより剥離形態が変わるため、それに対応する離型面の硬さを変える必要がある。つまり、セラミックシートが柔らかい場合には、セラミックシート層を剥離するとき、セラミック層の粘性の影響が出ると考えられ、それに対応する離型層は、シリコーン樹脂層の化学的な剥離力(たとえば疎水基含有量が多い等)が優れているものが適している。そういった離型層の硬さは、一般に柔らかい部類に入る。また、逆にセラミックシートが硬くなると、(一般的にはセラミックシートが薄くなると)セラミックシートを剥離するとき、セラミックシート層の粘性の影響はほとんど出ないと考えられ、それに対応する離型層は硬いものが適している。その理由は、硬いセラミックシートと硬い離型フィルムとの剥離は、粘着シートと離型フィルムとの剥離のような、界面剥離力ではなく、界面のせん断力に影響されるからである。
【0017】
上記範囲のようなダイナミック硬さの差を確保するには、セラミックシートと硬化型シリコーン樹脂において、それぞれに対応するセラミックシート及びシリコーン層の構成にする必要がある。たとえば、セラミックシートの結着剤(ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等)とセラミック原料(チタン酸バリウム、アルミナ等)の混合比(結着剤/セラミック原料)において、結着剤混合比率が高い場合、あるいは、セラミックシート層の厚みが厚い場合、セラミックシートのダイナミック硬さは小さくなる(柔らかくなる)。 上記のようなセラミックシートを剥離する場合は、シリコーン樹脂より構成される離型層は、出来る限り該シリコーン樹脂中に導入する架橋基の含有量を少なくし、あるいは離型層の厚みを厚くし、あるいは線状構造のシリコーン樹脂を使用する(そうすることにより該シリコーン樹脂は柔らかくなる)等する。また、該セラミックシート中のセラミック混合比率が高い場合、あるいは、セラミックシートの層厚みが薄い場合、セラミックシートのダイナミック硬さは大きくなる(硬くなる)。上記のようなセラミックシートを剥離する場合の離型層は、これを構成するシリコーン樹脂中に導入する疎水基の含有量の調節は必要であるが、該樹脂中に導入する架橋基の含有量を多くする等の方法で、樹脂の架橋密度を大きくすること(コート膜の硬度を上げること)により達成出来る。
硬化型シリコーン樹脂において、樹脂厚みが離型層の面内において均一であるならば、一定の硬化エネルギーでも厚みが小さい程架橋密度が大きくなるため、厚みを可能な限り小さくすることにより、硬度の高い離型層が達成できる。
また基材のポリエステルフィルム自体の硬度も影響するため、これを調節しても良い。
【0018】
本発明において、離型層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型層重量が0.02〜0.36g/m2となる範囲が良い。より好ましくは、0.02〜0.20g/m2となる範囲が良い。離型層の厚みが上記範囲より小さいと剥離性能が低下しやすい。また、上記範囲より大きいと、ポリエステルの密着性に必要な硬化時間が長くなり、生産上不都合となりやすいばかりでなく、離型層の表面凹凸のコントロールが難しくなり、あるいは離型層が削れやすくなり、ピンホール等の欠点の原因となるため好ましくない。
【0019】
本発明において離型層の形成方法は、特に限定されず、例えば硬化型シリコーン樹脂を分散させた塗液を、基材のポリエステルフィルムの表面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去した後、熱により樹脂を反応させ硬化させる方法が用いられる。
【0020】
上記塗液の塗布法としては、公知の任意の塗布法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどによるバーコート方、スプレーコート法、エアーナイフコート法等の従来から知られている方法が利用できる。
【0021】
本発明において、ポリエステルフィルムへの離型層の密着性を上げるために、上記溶液の塗布に先立ち、ポリエステルフィルム表面に、アンカーコート等の前処理をしても良い。
【0022】
本発明において、離型層形成時には、(1)溶媒未使用の硬化型シリコーン樹脂をポリエステルフィルムに塗布した後、活性エネルギー線硬化するか、(2)シリコーン硬化樹脂を溶媒に溶解あるいは分散したものを、ポリエステルフィルムに塗布し、溶媒の乾燥除去後、活性エネルギー線硬化する。樹脂の活性エネルギー線硬化又は溶媒の乾燥除去の条件は、使用する樹脂の種類、離型層の厚み、離型フィルムのサイズ等により、適宜選択すれば良い。例えば、紫外線硬化型シリコーン樹脂の場合、紫外線照射量は、100mJ/cm2以上とする。また、溶媒乾燥条件は、100℃以下程度であるのが好ましい。紫外線照射量が、100mJ/cm2より小さいと、シリコーン樹脂の反応硬化が不完全になりやすく、重剥離化(剥離力が重くなる)や、ラブオフ値の増大(フィルムとの密着性が悪くなる)や、シリコーン離型層の背面転写(裏移り)の原因となる可能性がある。また溶媒乾燥条件が、100℃より大きいと、フィルムの平面性が悪化する可能性がある。
【0023】
さらに、この様にして製造された離型フィルムの離型面側表面の表面凹凸が下式を満足する事が必要である。
SRa≦0.025μm・・・・(2)
{SRaは、3次元表面粗さにおける中心面平均粗さ(μm)を表す。}
SRaは小坂研究所(株)製3次元表面粗さ計で測定できる。
SRaは、より好ましくは0.020μm以下、さらに好ましくは0.015μm以下である。
SRaが0.025μmを超えるとセラミックのピンホール等の欠点が発生しやすくなる。
【0024】
上記範囲の様な表面凹凸にする方法は、任意であり特に限定されないが、例えば、ポリエステルフィルム内に不活性粒子を上記表面凹凸になるように適当な範囲で含有させる方法と、アンカーコート層内に不活性粒子を上記表面凹凸になるように適当な範囲で含有させる方法等が考えられる。例として前者の場合を以下に説明する。
【0025】
不活性粒子としては、無機粒子、有機粒子いずれの粒子でもよい。無機粒子としては、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタン等、有機粒子としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ベンゾグアナミド系樹脂等を単独もしくは複数組み合わせて用いることが好ましい。
【0026】
不活性粒子の平均粒径は、上記表面凹凸の範囲内になるように選定すれば、いずれでもよいが、2μm以下のものを用いるのが好ましい。2μmを超えると、粗大突起が発生し、逆に、表面の平滑性は悪くなる。
また粒子の粒度分布の範囲は、次式を満足するような範囲であることが好ましい。
150≦D50×C≦10000・・・・(3)
{式中、D50は積算重量が50%時の粒子径(μm)、Cは不活性粒子の添加量(ppm)を表す。}
不活性粒子の添加量C(ppm)は、平均粒径D50(μm)との組み合わせにおいて決定する必要があり、式(3)で示したごとくCとD50との積が150〜10000の範囲を選ぶことが好ましい。150未満では易滑性が不十分となり、逆に10000を超えると粗大突起数が多くなるので、好ましくない。
又、ポリエステル中に不活性粒子を入れない場合も考えられるが、その場合は、滑り等が悪くなるため、離型コート層を被覆した側とは反対側のポリエステルフィルム面にのみ表面凹凸を形成してもよい。
【0027】
本発明において、不活性粒子のポリエステル中への添加は、該ポリエステル製造工程における任意の段階で行う事が出来るが、初期縮合が終了するまでに行う事が好ましい。またポリエステル製造過程への不活性粒子の添加は、スラリー状及び粉末状のいずれの状態で行っても良いが、粒子の飛散防止、供給精度の均一性の向上の点からスラリー状に分散させて行うのが好ましく、特にエチレングリコールのスラリーとして添加するのが好ましい。
【0028】
以下に、試験例及び実験例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
(試験例)
1.試験方法
【0029】
1)負荷時のダイナミック硬さ
ダイナミック超微小硬度計(島津製作所製、DUH−201−202)を用いて、荷重2gfの三角すいを試料(セラミックシート面あるいは離型層面)に押しつけ、2秒間保持した後のダイナミック硬度を下記式より求めた。なお、測定は10回行ない平均値を使用した。また、離型フィルムの離型層面におけるダイナミック硬度の測定は、セラミックシート層を設ける前の離型フィルムに対して行ってもよいし、セラミックシート層を設けた後にセラミックシート層を剥離した離型フィルムに対して行ってもよい。
ダイナミック硬度=α×P/D2
ここで、Pは荷重(gf)、Dは圧子の試料への侵入量(μm)、αは圧子形状による定数(115°三角すい)であり、37.838である。
【0030】
2)三次元表面粗さSRa
離型ポリエステルフィルムの離型層表面を触針式三次元表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、SE−3AK)を用いて、針の半径2μm、荷重30mg、針のスピード0.1mm/秒の条件下で、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmにわたって測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを三次元粗さ解析装置(株式会社小坂研究所製、TDA−21)に取り込ませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、即ちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。次に、解析装置を用いて、三次元平均表面粗さSRaを求めた。
【0031】
3)セラミックシートの剥離性
離型フィルムの離型層面にセラミックシート層を積層したフィルム積層体を5cm巾にカットし、セラミックシート層面にポリエステル粘着テープ(日東電工社製、ニットー31B)を貼り、ピール法(剥離速度500mm/分でT型剥離する)によりセラミックシート層を離型フィルムから剥離して、下記基準により評価した。なお試験は5回行い、Aであれば合格とした。
A・・・セラミックシートが5回の試験ですべて破れることなく、剥離した場合
B・・・5回の試験で1回でもセラミックシートの一部に破損があった場合
C・・・5回の試験で1回でもセラミックシートが完全に破れ破損した場合
【0032】
4)セラミックシートのピンホール
離型フィルムの離型層面にセラミックシート層を積層したフィルム積層体を20cm×30cmに切断した。トレーザートレース台(コクヨ社製)に、上面がセラミックシート面となるように前記フィルム積層体を置き、下面から光をあてセラミックシート面から光が漏れる箇所の数を目視で数え、1m2当たりの個数に換算し少数第1位の桁を四捨五入した。この1m2当たりのピンホールの個数を下記の3段階で評価した。
A・・・1個以下/m2
B・・・2〜5個/m2
C・・・6個以上/m2
【0033】
2.実施例
(実施例1)
撹拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取り出し口を設けた2段の完全混合器よりなる連続エステル化反応装置を用い、その第一エステル化反応缶のエステル化反応生成物が存在する系へ、テレフタル酸に対するエチレングリコールのモル比率を1.7に調整し且つ三酸化アンチモンをアンチモン原子としてテレフタル酸単位あたり289ppmを含むエチレングリコールスラリーを、連続的に供給した。
【0034】
同時に、テレフタル酸のエチレングリコールスラリー供給口とは別の供給口より、酢酸マグネシウム四水塩のエチレングリコール溶液を、反応缶内を通過する反応生成物中のポリエステル単位当たりそれぞれMg原子として100ppmとなるように連続的に供給し、常圧にて平均滞留時間4.5時間、温度255℃で反応させた。
【0035】
この反応生成物を連続的に系外に取り出して、第2エステル化反応缶に供給した。第2エステル化反応缶内を通過する反応生成物中のポリエステルユニットに対して、0.5重量部のエチレングリコール、トリメチルホスフェートのエチレングリコール溶液をP原子として64ppm、及びD50が0.6μmである炭酸カルシウムのエチレングリコールスラリーに100g/lのトリポリリン酸ナトリウムの水溶液をNa原子として20ppm添加した炭酸カルシウムスラリーを炭酸カルシウムとして生成ポリエステルに対し1000ppmとなるように、それぞれ別個の供給口より連続的に供給し、常圧にて平均滞留時間5時間、温度260℃で反応させた。
【0036】
該エステル化反応生成物を撹拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取り出し口を設けた2段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、固有粘度0.62のポリエステルを得た。該ポリマーを290℃で溶融押出しし、90℃で縦方向に3.5倍、130℃で横方向に3.5倍延伸した後、220℃で熱処理して厚さ38μmの長尺のポリエステルフィルムロールを得た。
【0037】
次に、紫外線カチオン硬化型シリコーンレジン(東芝シリコン株式会社製UV9315)を溶剤(ノルマヘキサン)に分散し(2重量%濃度)、シリコーンレジン100重量%に対し、1重量%のビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートを硬化触媒として添加し、シリコーン塗液を作成した。厚さ38μmの上記ポリエステルフィルムにワイヤーバーにて、上記シリコーン塗液を塗布し、100℃×30秒で乾燥後、紫外線照射装置で紫外線照射(300mJ/cm2)し、長尺の離型フィルムロール(シリコーン樹脂離型層の乾燥後重量0.10g/m2)を得た。
【0038】
また、溶剤(トルエン/エタノール=50/50:重量比)中にセラミック粒子(平均一次粒子径が0.6μmのチタン酸バリウム(BaTiO3)、富士チタン社製)100重量部を混合し、分散メディアである粒径1.5mmのジルコニアビーズ(充填量:スラリーに対し200重量%)とともにボールミルで24時間分散した。次いで、バインダー(ポリビニルブチラール、積水化学工業株式会社製)10重量部、及び可塑剤(ポリエチレングリコール)をセラミック粉末とバインダーの総量に対し2重量%混合し、ボールミルで24時間分散し、さらにフィルター(孔径3μm)で濾過処理を行い、ペースト状のセラミックスラリーを得た。
【0039】
前記の離型フィルムロールを巻き出し、上記セラミックスラリーを乾燥後の厚みが10μmになるようにドクターブレードを用いて、離型フィルムの離型層面に塗布し、120℃で1分間乾燥してセラミックシート層(セラミック粒子/バインダーの重量比:100/10)を設け、得られたセラミックシート製造用フィルム積層体を長尺のロール状に巻き取った。
【0040】
(参考例1)
熱硬化型シリコーン樹脂(信越化学株式会社製、KS830)を樹脂固形分濃度が3重量%となるように溶剤(トルエン)に分散し、シリコーン樹脂100重量部に対し、1重量部の白金触媒を添加し、硬化型シリコーン樹脂塗布液を作成した。
【0041】
厚さ38μmの二軸延伸PETフィルム(東洋紡績社製、E5151)の長尺のロールを巻出し、上記硬化型シリコーン樹脂塗布液を前記フィルムの片面に、ワイヤーバーを用いて塗布し、140℃で30秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が0.05g/m2の硬化型シリコーン樹脂を主たる構成成分とする離型層を設けた離型フィルムを製造し、ロール状に巻き取った。
【0042】
また、溶剤(トルエン/エタノール=50/50:重量比)中にセラミック粒子(平均一次粒子径が0.6μmのチタン酸バリウム(BaTiO3)、富士チタン社製)100重量部を混合し、分散メディアである粒径1.5mmのジルコニアビーズ(充填量:スラリーに対し200重量%)とともにボールミルで24時間分散した。次いで、バインダー(ポリビニルブチラール、積水化学工業株式会社製)10重量部、及び可塑剤(ポリエチレングリコール)をセラミック粉末とバインダーの総量に対し2重量%混合し、ボールミルで24時間分散し、さらにフィルター(孔径3μm)で濾過処理を行い、ペースト状のセラミックスラリーを得た。
【0043】
前記の離型フィルムロールを巻き出し、上記セラミックスラリーを乾燥後の厚みが10μmになるようにドクターブレードを用いて、離型フィルムの離型層面に塗布し、120℃で1分間乾燥してセラミックシート層(セラミック粒子/バインダーの重量比:100/10)を設け、得られたセラミックシート製造用フィルム積層体を長尺のロール状に巻き取った。
【0044】
(実施例2)
実施例1のポリエステルに使用した炭酸カルシウム粒子の代わりに、D50が0.5μmの炭酸カルシウムを3000ppm使用した以外は、実施例1と同様にしてセラミックフィルム製造用フィルム積層体を長尺のロール状に巻き取った。
【0045】
(比較例1)
シリコーン樹脂離型層の乾燥重量を0.5g/m2となるようにした以外は、実施例2と同様にしてセラミックフィルム製造用フィルム積層体を長尺のロール状に巻き取った。
【0046】
(比較例2)
実施例1のポリエステルに使用した炭酸カルシウム粒子の代わりに、D50が2.5μmのシリカを300ppm使用した以外は、実施例1と同様にしてセラミックフィルム製造用フィルム積層体を長尺のロール状に巻き取った。
【0047】
3.試験結果
実施例及び比較例の試験結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1、2、3においては、|A−B|≦20であり、セラミックの剥離不良は見られず、SRaは、0.025μm以下であり、ピンホール欠点は発生しなかった。それに対し、|A−B|が20より大きい比較例1においては、粘着剤高速剥離力が大きく、セラミックの剥離不良が見られた。比較例2においては、|A−B|≦20であったが、SRaが0.025μmより大きく、セラミックシートにピンホール欠点が発生した。
【0050】
【発明の効果】
本発明のセラミックシート製造用フィルム積層体は、セラミックシート層と離型層との硬度差が小さいため、剥離時の剥離力が小さく、セラミックシートの製造時の剥離工程において、剥離不良のない適度の力でセラミックシートを離型フィルムから剥離除去することが可能である。又、離型面の表面凹凸をコントロールすることにより、特に薄膜セラミックシートの製造時のセラミックコート工程において、ピンホール等の欠点のない均一なセラミックシートを得ることが出来る。よって、本発明で得られたフィルム積層体は、セラミックシート、特に超薄膜セラミックシートを工業的規模で生産性よく製造するのに好適である。
Claims (1)
- ポリエステルフィルムからなる基材の少なくとも一方の表面に、硬化型シリコーン樹脂を硬化させたシリコーン樹脂より構成される離型層を設け、該離型層の直上にセラミックシート層を積層して製造されるフィルム積層体の製造方法であって、
離型層は、硬化後の離型層の表面の三次元平均表面粗さSRaが0.025μm以下であり、紫外線硬化型シリコーン樹脂に100mJ/cm2以上の紫外線を照射して硬化させて形成され、
セラミックシート層を積層する際に、セラミックシート層の負荷時のダイナミック硬さ(A)と該離型層の負荷時のダイナミック硬さ(B)との差の絶対値が20gf/μm2以下となるように、セラミックシート層の(a)結着材とセラミック原料との混合比、あるいは(b)セラミックシート層の厚み、に応じて、(c)離型層の厚み、あるいは(d)硬化型シリコーン樹脂の架橋密度、を調整することを特徴とするセラミックシート製造用フィルム積層体の製造方法。
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