JP5060802B2 - 電子写真機器用無端ベルトおよびその製法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真機器用無端ベルトおよびその製法に関するものであり、詳しくはフルカラーLBP(レーザービームプリンター)やフルカラーPPC(プレーンペーパーコピア)等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、中間転写ベルトや紙転写搬送ベルト等に用いられる電子写真機器用無端ベルトおよびその製法に関するものである。
一般に、フルカラーLBPやフルカラーPPC等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、トナー像の転写用,紙転写搬送用,感光体基体用等の用途に、中間転写ベルト等の無端ベルト(シームレスベルト)が多用されている。特に、高画質化を求める中間転写ベルトには、寸法精度の点から膜厚均一性、電気特性の点から表面側表面抵抗、表面性の点から光沢度等の機能の向上が要求される。
従来、無端ベルトとしては、膜厚精度と物性の点から、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂に、導電剤(カーボンブラック等)を含有させてなる材料を遠心成形してなる単層構造のものが用いられている。しかし、単層構造では、例えば、体積抵抗と表面抵抗を個別に制御できないため、電気特性の点で問題がある。一般に、電気特性の制御は、導電剤量で調整するが、単層構造の場合、体積抵抗と表面抵抗はある一定の関係を保って連動しており、かつ、ベルト表裏の表面抵抗は略同等の抵抗を発現する。単層構造の場合は、導電剤の種類や添加剤等の変更により、電気特性の関係を若干変更することができる程度である。また、上記単層構造のベルトは、製法が遠心成形であるため、金型面がトナー転写面となる。そのトナー転写面は、成形時に金型面であるため、摩擦係数制御が困難であり、遠心力によって導電剤がベルトの表面側に偏在するため、抵抗測定機では測定できないが、ミクロ的に見ると導電経路が多く、転写チリが発生しやすい。中間転写ベルトには、1次転写域での転写電界を確保するための電流を流すベルト裏面の表面抵抗特性と、転写チリをなくし、残留電荷を残さないベルト表面の表面抵抗特性と、残留電荷を残さない体積抵抗特性といったような個別の特性が必要であるが、これらの全ての要求特性を単層構造で実現するには、現実的には困難であり、耐圧性や摩耗係数の面を周辺部品にて調整しているのが実情である。
そこで、基層(ベース層)の表面に、高抵抗の表層を設けることが提案されているが、光沢度が低下して、トナーの有無を検知する感度が低下する。このような問題に対して、基層表面をラビング処理した後に、表層を設けた無端ベルトが提案されている(特許文献1)。
特開2004−251978号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載のものは、ラビング処理が必要なため、工程数が増加するという難点がある。また、最近では、高画質化、高速化のために、上記膜厚均一性,表面側表面抵抗,光沢度等の要求特性の向上が求められ、特に光沢度の向上が求められているが、上記特許文献1に記載のものは、これらの点で改良の余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ラビング処理等の特別な処理を行わずに、充分な光沢度を持つ、電子写真機器用無端ベルトおよびその製法の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、基層の表面に表層が形成されてなる2層構造の電子写真機器用無端ベルトであって、上記基層がポリアミドイミド樹脂を主成分とする基層用材料からなるとともに、上記表層が下記の(A)および(B)を含有する表層用材料からなり、かつ、上記表層の光沢度が100〜200の範囲に設定されていることを特徴とする電子写真機器用無端ベルトを第1の要旨とする。
(A)バインダーポリマー。
(B)表面にポリマーがグラフトまたは被覆されてなるカーボンブラック。
また、本発明は、上記電子写真機器用無端ベルトの製法であって、周方向に回転しうる円筒状または円柱状の基体と、上記基体の外周面に近接する位置で上記基体の軸方向に沿って移動しうる第1および第2のノズルとを準備し、上記基体を垂直にした状態で周方向に回転させ、その状態で、上記基体の外周面に近接させた第1のノズルから上記外周面に向かってポリアミドイミド樹脂を主成分とする基層用材料を吐出させ、同時に、上記第1のノズルを上記基体の軸方向に沿って移動させることにより、上記基体の外周面に上記基層用材料をらせん状に塗布してらせん状塗膜の連続による全体塗膜を形成し、上記全体塗膜を加熱処理して基層を形成した後、上記基層を形成した基体を傾け水平にした状態で周方向に回転させ、その状態で、上記基層の外周面に近接させた第2のノズルから上記外周面に向かって下記の(A)および(B)を含有する表層用材料を吐出させ、同時に、上記第2のノズルを上記基体の軸方向に沿って移動させることにより、上記基層の外周面に上記表層用材料をらせん状に塗布してらせん状塗膜の連続による全体塗膜を形成し、上記全体塗膜を加熱処理した後、上記基体から抜き取り電子写真機器用無端ベルトを得るようにした電子写真用無端ベルトの製法を第2の要旨とする。
(A)バインダーポリマー。
(B)表面にポリマーがグラフトまたは被覆されてなるカーボンブラック。
すなわち、本発明者らは、ラビング処理等の特別な処理を行わずに、充分な光沢度を持つ、電子写真機器用無端ベルトを得るため、鋭意研究を重ねた。その結果、バインダーポリマーと、表面にポリマーがグラフトまたは被覆されてなるカーボンブラックとを併用すると、バインダーポリマー中でのカーボンブラックの分散性が良好となり、表層の光沢度が向上することを見いだし、本発明に到達した。
このように、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、バインダーポリマーと、表面にポリマーがグラフトまたは被覆されてなるカーボンブラックとを併用しているため、バインダーポリマー中でのカーボンブラックの分散性が良好となり、表層の光沢度が向上する。すなわち、電子写真機器の立ち上げ時に、4色トナーを予めベルトに塗布してトナーのバラツキ具合(トナーののり具合)をテストして印加電圧を調整しているが、光沢度が低すぎると、トナー濃度センサーでトナーのバラツキを正確に読み取ることが困難である。本発明では、表層の光沢度が100〜200の範囲に設定されているため、トナー濃度チェック時の正確なトナー量を感知することができ、トナー量制御性に優れている。また、ポリアミドイミド樹脂を用いて基層を形成しているため、ポリイミド樹脂を用いる場合に比べて、製造コストが安くなるという利点もある。
また、上記ベルト表面の表面抵抗が、1×109 〜1×1014Ω/□の範囲であり、かつ、下記の式(1)で表されるベルトの表面抵抗の表裏差が0.2〜2桁の範囲であると、転写チリを一層有効に抑制することができる。
Figure 0005060802
上記表層の厚みが、1〜10μmの範囲であると、光沢度を一層向上させることができる。
そして、上記バインダーポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が5〜130℃の範囲であると、耐屈曲性と離型性とを両立することができる。
また、上記バインダーポリマーは、数平均分子量が10,000〜1,200,000の範囲であると、平滑性、耐屈曲性、耐摩耗性等が一層向上する。
また、上記表層が、架橋剤を含有する表層用材料からなると、塗膜の架橋密度が上がり、耐屈曲性、耐摩耗性等がより一層向上する。
本発明の電子写真機器用無端ベルトの製法によると、基体を垂直にした状態でその基体の外周面に基層用材料をらせん状に塗布し、そのらせん状塗膜の連続により全体塗膜を形成しているため、1本のらせん状の帯のなかでの基層用材料の垂れは、垂直下方向(らせん状の帯の幅方向のうちの下方向)に垂れ、その下側の帯が堰となることから、その垂れ幅を小さくすることができる。これにより、1本のらせん状の帯における乾燥速度を均一にすることができ、その結果、電子写真用無端ベルトの電気抵抗を均一にすることができる。すなわち、1本のらせん状の帯のなかでの上記垂直下方向の基層用材料の垂れは、上記のように、その下側の帯が堰となることから、その垂れも殆どがその帯のなかでとどまるため、らせん状の帯のなかで幅方向の上側が薄く下側が厚くなり、塗膜は軸方向に小さなうねりの連続形状に形成されることとなる。このため、液状塗膜が、垂直状態の基体の下端側に垂れて下端側のみ膜厚が大きくなることはなく、塗膜(基層となる)を全体的にみると、小さなうねりの範囲内で略均一厚みに形成することができる。つぎに、上記基層を形成した基体を傾け、水平にした状態で周方向に回転させ、その状態で、上記基層の外周面に表層用材料を吐出しているため、この表層用材料が、上記基層表面のうねり形状を吸収することにより、表層表面は平滑になる。このように、本願発明の電子写真用無端ベルトの製法では、電気抵抗が均一になり、この作製された電子写真用無端ベルトをフルカラー複写機等の電子写真機器に用いることにより、高画質画像を得ることができる。なお、従来は、無端ベルトを2層構造にしようとすると、遠心成形により成型したベルトを一旦型から外して、表面に液を塗工処理(スプレー処理等)等する必要があるが、塗工処理では表層の膜厚制御が困難であったり、ベルト裏面に液が付着する可能性がある。そのため、表層の塗膜を形成した後に、表層の膜厚等を調整するための表面加工等が必要となる。本発明の製法によると、従来のように、膜厚等を調整するための表面加工等も不要となり、充分な光沢度を持つ、電子写真機器用無端ベルトを得ることができる。
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、例えば、図1に示すように、基層1の外周面に表層2が直接形成されて構成されている。
本発明においては、上記基層1がポリアミドイミド樹脂を主成分とする基層用材料からなるとともに、上記表層2が下記の(A)および(B)を含有する表層用材料からなり、かつ、上記表層2の光沢度が100〜200の範囲に設定されているのであって、これらが最大の特徴である。
(A)バインダーポリマー。
(B)表面にポリマーがグラフトまたは被覆されてなるカーボンブラック。
上記基層1を形成する材料(基層用材料)の主成分としては、ポリアミドイミド(PAI)樹脂が用いられる。
なお、本発明において、主成分とは、主成分のみからなる場合も含む意味である。
上記ポリアミドイミド樹脂は、特に限定するものではないが、芳香族系イソシアネート化合物(α)と、芳香族系多価カルボン酸の無水物(β)と、カルボン酸両末端ポリマー(γ)とを共重合させてなる変性ポリアミドイミド樹脂が好適に用いられる。この変性ポリアミドイミド樹脂を主成分とする基層用材料を用いて基層1を形成すると、上記カルボン酸両末端ポリマー(γ)がソフトセグメント的な役割を果たして、ポリアミドイミド樹脂に柔軟性を付与するため、これを用いた電子写真機器用無端ベルトは、破断伸びが大きく、耐久性に優れている。
上記芳香族系イソシアネート化合物(α)としては、分子構造中に芳香族環を有する化合物であれば特に限定はないが、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性、コスト、溶解性の点で、MDI、TODIが好適に用いられる。
また、上記芳香族系多価カルボン酸の無水物(β)としては、分子構造中に芳香族環を有し、上記芳香族系イソシアネート化合物(α)と縮合反応するものであれば特に限定はなく、例えば、芳香族系多価カルボン酸無水物(β1)、芳香族系多価カルボン酸二無水物(β2)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なお、本発明においては、上記芳香族系多価カルボン酸の無水物(β)とともに、芳香族系多価カルボン酸を併用しても差し支えない。
上記芳香族系多価カルボン酸無水物(β1)としては、例えば、トリメリット酸無水物(無水トリメリット酸)、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸無水物等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性、コスト、溶解性等の点から、トリメリット酸無水物(無水トリメリット酸)が好適に用いられる。
また、上記芳香族系多価カルボン酸二無水物(β2)としては、例えば、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸二無水物)、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−2,2′,3,3′−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性、コスト、溶解性等の点から、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)が好適に用いられる。
本発明における芳香族系多価カルボン酸の無水物(β)としては、上記芳香族系多価カルボン酸無水物(β1)と、芳香族系多価カルボン酸二無水物(β2)とを併用して用いることが好ましく、両者を併用すると、変性PAI樹脂中のイミド基の比率が高くなるため、吸水性が低下し、無端ベルトの曲がり癖を改善することができるようになる。
上記芳香族系多価カルボン酸無水物(β1)と、芳香族系多価カルボン酸二無水物(β2)とのモル混合比は、β1/β2=90/10〜50/50の範囲が好ましく、特に好ましくはβ1/β2=80/20〜60/40の範囲である。このような割合でβ1/β2とを併用すると、無端ベルトの耐屈曲性の悪化が少なく、曲がり癖を改善することができるため好ましい。
つぎに、上記カルボン酸両末端ポリマー(γ)は、例えば、ポリマーの末端にカルボン酸をそれぞれ1個有するものであれば特に限定はなく、例えば、カルボン酸両末端ポリブタジエン、カルボン酸両末端水素添加ポリブタジエン、カルボン酸両末端ポリエステル、カルボン酸両末端ポリアミド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
上記ポリマーの両末端にカルボン酸を導入するために用いるカルボン酸としては、特に限定はなく、例えば、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
上記脂肪族カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、シュウ酸、コハク酸、コルク酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等があげられる。また、上記芳香族カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸等があげられる。
上記カルボン酸両末端ポリマー(γ)は、通常の製法に従って合成したポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリエステル、ポリアミド等のポリマーの両末端に、上記のようなカルボン酸を導入することにより得ることができる。なお、上記ポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリエステル、ポリアミド等のポリマーの合成法は、特に限定するものではない。例えば、ポリエステルやポリアミドは、第4版 実験化学講座28 高分子合成(日本化学会編、1992年、丸善株式会社発行)の第208頁〜第231頁および第252頁〜第287頁に記載の方法に準じて作製することができる。
上記カルボン酸両末端ポリマー(γ)のうち、カルボン酸両末端ポリエステルは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、加熱装置、攪拌装置、還流装置、水分離器、蒸留塔および温度計を備えた反応槽に、アジピン酸やセバシン酸等のジカルボン酸と、メチルペンタンジオール,ノナンジオール,メチルオクタンジオール等のジオールとを仕込み、所定温度(例えば、220℃)まで所定時間(例えば、1時間)かけて昇温する。さらに所定温度(例えば、220℃)で縮重合反応を続けた後、所定温度(例えば、室温)まで冷却することにより、所望のカルボン酸両末端ポリエステルを得ることができる。
また、上記カルボン酸両末端ポリエステルは、例えば、撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器に、分子構造中に水酸基を2個以上有するエステル系ポリオールと、無水フタル酸等の二塩基酸の無水物と、NMP溶剤等の有機溶剤とを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら所定温度(例えば、130℃)まで所定時間(例えば、1時間)かけて昇温し、そのまま所定温度(例えば、130℃)で所定時間(例えば、3時間程度)反応させた後、所定温度(例えば、室温)まで冷却することにより作製することもできる。
なお、カルボン酸両末端ポリブタジエン等のカルボン酸両末端ポリマー(γ)も、上記カルボン酸両末端ポリエステルの製法に準じて適宜作製することができる。
このようにして得られるカルボン酸両末端ポリマー(γ)の酸価は、15〜150mgKOH/gの範囲が好ましく、特に好ましくは45〜110mgKOH/gの範囲である。
また、上記カルボン酸両末端ポリマー(γ)の数平均分子量(Mn)は、750〜7500の範囲が好ましく、特に好ましくは数平均分子量(Mn)が1000〜2500の範囲である。
上記カルボン酸両末端ポリマー(γ)から誘導される構造単位の含有割合は、上記変性ポリアミドイミド樹脂全体の5〜30重量%の範囲であることが好ましく、特に好ましくは15〜25重量%の範囲である。すなわち、5重量%未満であると、耐久性が悪くなる傾向がみられ、逆に30重量%を超えると、クリープ率が悪化する傾向がみられるからである。
ここで、上記芳香族イソシアネート化合物(α)のイソシアネート基の総モル数(a)と、芳香族系多価カルボン酸の無水物(β)の酸無水物基とカルボキシル基との総モル数(b)、およびカルボン酸両末端ポリマー(γ)のカルボキシル基の総モル数(c)の合計総モル数〔(b)+(c)〕とのモル混合比は、(a)/〔(b)+(c)〕=90/100〜130/100の範囲が好ましく、特に好ましくは(a)/〔(b)+(c)〕=100/100〜120/100の範囲である。すなわち、(a)/〔(b)+(c)〕の値が、上記上限または下限の範囲から外れると、PAI樹脂の分子量を高くすることが困難となり、耐久性が悪化する傾向がみられるからである。
つぎに、上記(α)〜(γ)を共重合させてなる変性PAI樹脂は、例えば、つぎのようにして調製することができる。すなわち、撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器を準備し、上記芳香族イソシアネート化合物(α)と、無水トリメリット酸等の芳香族系多価カルボン酸の無水物(β)と、カルボン酸両末端ポリエステル等のカルボン酸両末端ポリマー(γ)とを所定量配合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP),N,N−ジメチルホルムアミド(DMF),N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC),γ−ブチロラクトン等の極性溶剤を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら所定時間(好ましくは、1〜3時間)かけて所定温度(好ましくは、130〜150℃)まで昇温する。つぎに、所定温度(好ましくは、130〜150℃)で所定時間(好ましくは、約3〜5時間)反応させた後、反応を停止することにより、変性PAI樹脂を調製することができる。
上記変性PAI樹脂は、数平均分子量(Mn)が5,000〜100,000の範囲が好ましく、特に好ましくはMnが10,000〜50,000の範囲である。すなわち、PAI樹脂のMnが5,000未満であると、引き裂き強度が低くなり、耐久性が悪化し、逆にPAI樹脂のMnが100,000を超えると、溶液粘度が高くなり加工性が悪化する傾向がみられるからである。なお、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。
なお、上記基層1の形成に用いる材料(基層用材料)としては、上記PAI樹脂とともに、導電性充填剤、難燃剤、有機溶剤(DMF,DMAC,トルエン,アセトン,NMP等)、充填剤(炭酸カルシウム等)、レベリング剤(離型剤)等を必要に応じて適宜含有させることも可能である。
上記導電性充填剤としては、特に限定はないが、例えば、カーボンブラック,グラファイト等の導電性粉末、アルミニウム粉末,ステンレス粉末等の金属粉末、導電性酸化亜鉛(c−ZnO),導電性酸化チタン(c−TiO2 ),導電性酸化鉄(c−Fe3 4 ),導電性酸化錫(c−SnO2 )等の導電性金属酸化物、第四級アンモニウム塩,リン酸エステル,スルホン酸塩,脂肪族多価アルコール,脂肪族アルコールサルフェート塩のようなイオン性導電剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
また、上記難燃剤としては、特に限定はないが、例えば、リン含有樹脂(リン含有ポリエスル系樹脂等)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
上記基層用材料は、例えば、PAI樹脂と、導電性充填剤と、有機溶剤と、充填剤とを必要に応じて適宜に配合し、撹拌羽根で混合した後、リングミル,ボールミル,サンドミル等を用いて分散させることにより調製することができる。
つぎに、上記表層2の形成に用いる材料(表層用材料)としては、バインダーポリマー(A成分)および特定のカーボンブラック(B成分)が用いられる。
上記バインダーポリマー(A成分)としては、特定のカーボンブラック(B成分)との相溶性に優れたものが好ましく、例えば、アクリル系ポリマー、アルキド樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
上記アクリル系ポリマーとしては、アクリル系単量体(モノマー)を構造単位とするものであれば、特に限定するものではない。上記アクリル系単量体は、アクリル酸およびその誘導体のみならず、メタクリル酸およびその誘導体、さらにはそれらを重合させて得られる共重合体も含む趣旨である。このようなアクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2,2−ジメチルプロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−tert−ブチルフェニル、アクリル酸2−ナフチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸4−メトキシフェニル、アクリル酸2−メトキシカルボニルフェニル、アクリル酸2−エトキシカルボニルフェニル、アクリル酸2−クロロフェニル、アクリル酸4−クロロフェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−シアノベンジル、アクリル酸4−シアノフェニル、アクリル酸p−トリル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−シアノエチル、アクリル酸3−オキサブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2,2−ジメチルプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−tert−ブチルフェニル、メタクリル酸2−ナフチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸4−メトキシフェニル、メタクリル酸2−メトキシカルボニルフェニル、メタクリル酸2−エトキシカルボニルフェニル、メタクリル酸2−クロロフェニル、メタクリル酸4−クロロフェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−シアノベンジル、メタクリル酸4−シアノフェニル、メタクリル酸p−トリル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−シアノエチル、メタクリル酸3−オキサブチル、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリルアミド、ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、4−カルボキシフェニルメタクリルアミド、4−メトキシカルボキシフェニルメタクリルアミド、メチルクロロアクリレート、エチル−α−クロロアクリレート、プロピル−α−クロロアクリレート、イソプロピル−α−クロロアクリレート、メチル−α−フルオロアクリレート、ブチル−α−ブトキシカルボニルメタクリレート、ブチル−α−シアノアクリレート、メチル−α−フェニルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のラジカル重合性単量体があげられる。
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸n−ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸n−ブチル、ポリアクリル酸イソブチル等が用いられる。また、上記アクリル系ポリマーとしては、シリコーン変性,フッ素変性等した変性アクリル系ポリマーを用いることもできる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。上記シリコーン変性アクリル系ポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂(主鎖)にシリコーン系樹脂がグラフト重合したシリコーングラフトアクリル系樹脂等があげられる。
また、上記アルキド樹脂とは、多価アルコールと、多塩基酸との縮合反応によって得られる合成樹脂をいう。上記アルキド樹脂としては、多価アルコールと多塩基酸のみの縮合物である純粋アルキド樹脂、脂肪油,天然樹脂,合成樹脂等の変性剤で変性した変性アルキド樹脂があげられる。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,プロピレングリコール,トリメチレングリコール,テトラメチレングリコール等の二価アルコール、グリセリン,トリメチロールプロパン等の三価アルコール、ジグリセリン,トリグリセリン,ペンタエリトリット,ジペンタエリトリット,マンニット,ソルビット等の多価アルコール等があげられ、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。また、上記多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸,テレフタル酸,コハク酸,アジピン酸,セバシン酸等の飽和多塩基酸、マレイン酸,無水マレイン酸,フマル酸,イタコン酸,無水シトラコン酸等の不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物,テルペン−無水マレイン酸付加物,ロジン−無水マレイン酸付加物等のディールス−アルダー反応による多塩基酸等があげられ、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。また、上記変性剤として用いられる脂肪油としては、例えば、ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸,リノレン酸,エレオステアリン酸,リシノレイン酸,脱水リシノレイン酸等があげられ、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。また、上記変性剤として用いられる天然樹脂としては、例えば、ロジン,コーパル,コハク,セラック等があげられ、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。また、上記変性剤として用いられる合成樹脂としては、例えば、エステルガム,フェノール樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂等があげられ、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
上記バインダーポリマー(A成分)は、耐屈曲性、離型性等の点から、ガラス転移温度(Tg)が5〜130℃の範囲が好ましく、特に好ましくは8〜120℃の範囲である。すなわち、Tgが低すぎると、離型性が悪化し、逆にTgが高すぎると、表面割れが発生する傾向がみられるからである。
また、上記バインダーポリマー(A成分)は、平滑性、耐屈曲性、耐摩耗性等の点から、数平均分子量(Mn)が10,000〜1,200,000の範囲が好ましく、特に好ましくは20,000〜1,00,000の範囲である。すわなち、Mnが低すぎると、表面が割れやすく、さらに摩耗しやすくなり、逆にMnが高すぎると、平滑性が悪化する傾向がみられるからである。
つぎに、上記バインダーポリマー(A成分)とともに用いられる特定のカーボンブラック(B成分)としては、表面にポリマーがグラフトされてなるカーボンブラック(以下、「ポリマーグラフトカーボン」と略す)、または表面にポリマーが被覆されてなるカーボンブラック(以下、「ポリマー被覆カーボン」と略す)があげられる。
上記ポリマーグラフトカーボンは、カーボンブラック表面に存在するカルボキシル基,ヒドロキシル基,カルボニル基等の官能基に対して、それと反応する反応性基を有するポリマーがグラフト(付加、結合)されてなる構造のものである。
上記ポリマーグラフトカーボンの原料となる、ポリマーグラフト前のカーボンブラックとしては、カーボンブラック表面にカルボキシル基,ヒドロキシル基等の官能基を有するものであれば特に限定はなく、いずれの種類のものも使用可能であるが、ポリマーとの反応効率等を考慮すると、pHが5以下のカーボンブラックを用いることが好ましい。すなわち、カーボンブラックのpHが高すぎると、カーボンブラック表面に目的とするポリマーがグラフトされ難くくなり、そのために分散性が改良されず、凝集粒子が残り、荒れた表層が形成されるようになるとともに、電気抵抗の制御性も低く、制御が困難となる問題が生じやすくなるからである。
また、上記カーボンブラックの表面にグラフトされるポリマーとしては、カーボンブラック表面の官能基に対して反応性を有し、それと結合し得る反応性基を有するものであれば特に限定はなく、例えば、ポリシロキサン系、ポリアクリル系、ポリメタクリル系、スチレン−アクリル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリイミド系、エポキシ系等の各種のポリマーがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なお、このようなカーボンブラック表面におけるグラフトされたポリマーは、そのようなポリマーを与えるモノマーを、カーボンブラック表面の官能基に付加、結合させ、そこを起点に重合させることによっても形成することができ、本発明においては、そのようなモノマーの重合によって形成されるポリマーグラフトカーボンも同様に用いることができる。
そして、そのようなカーボンブラック表面に所定のポリマーがグラフトされてなるポリマーグラフトカーボンにおいて、ポリマーのグラフト割合は、目的とする作用・効果が得られるように適宜に決定されることとなるが、本発明の目的を有利に達成する上において、そのグラフトされたポリマーとカーボンブラックとの割合は、重量比にて0.2〜1.0の範囲内とすることが好ましい。すなわち、重量比が0.2未満であると、活性なカーボンブラック表面をポリマーで充分に覆うことができず、カーボンブラックの分散性の改善効果が実現されにくくなるからである。逆に、重量比が1.0を超えると、ポリマーの量が多すぎるため、ポリマーの特性が表層に出現し、変形を受けたときに表層の割れ等の不具合が発生するおそれや、カーボンブラックのもっている導電性が発現しにくくなるからである。
上記ポリマーグラフトカーボンは、例えば、特開平9−59331号公報や特開平9−272706号公報に記載された方法によって得ることができる。すなわち、一般に、そのようなグラフト化反応は、ポリマーの種類により適宜に選択された分散媒体(溶剤)中において実施され、具体的には、分散媒体として、水、メチルアルコール,エチルアルコール等のアルコール類、アセトン,メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル,酢酸エチル等のエステル類、セロソルブ類等が、反応装置の種類等に応じて、適宜の使用量において用いられることとなる。
また、グラフト化反応は、カーボンブラックとポリマーと分散媒体(溶剤)とを所定の反応装置に仕込み、加熱下において分散、混合させることにより行われることとなるが、その際の反応装置としては、例えば、二本ロール、三本ロール、ニーダー等の混練機、あるいはボールミル、ビーズミル等の分散機等が用いられ、そして、それらに加熱装置を付けて、温度制御可能な装置として使用される。なお、このような反応装置を用いたグラフト化反応において、反応温度は、通常50〜200℃程度、好ましくは70〜150℃の範囲であり、処理(反応)時間は、通常1〜10時間、好ましくは1〜5時間の範囲である。
つぎに、前記ポリマー被覆カーボンは、カーボンブラックの表面をポリマーで被覆処理することにより得られるものである。なお、その表面に、高分子量分散剤等の添加剤を付着させてもよい。ここで、上記付着は、上記添加剤がポリマー被覆カーボンの表面に吸着することによりなされる。以下、これについて詳しく説明する。
上記カーボンブラックとしては、特に制限するものではなく各種のものを用いることができる。なかでも、ポリマーを用いて被覆処理する点を考慮して、表面官能基(水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等)が多いカーボンブラックが好適である。
そして、上記カーボンブラックの平均一次粒子径は、10〜300nmの範囲が好ましく、特に好ましくは15〜100nmである。すなわち、上記範囲内でないと、分散性や導電性の低下等を招くおそれがあるからである。
また、上記カーボンブラックの比表面積は、通常、10〜500m2 /gの範囲が好ましく、特に好ましくは50〜300m2 /gである。なお、上記比表面積は、BET法によって測定した値である。すなわち、低温窒素吸着法によりカーボンブラックの窒素吸着量を測定し、これからBETの式を用い多点法により算出した値である。
さらに、上記カーボンブラックの揮発分は、1.0%以上が好ましく、特に好ましくは1.0〜10%である。すなわち、このような揮発分を示すものであれば、カーボンブラックの官能基(−OH,=CO,−COOH等)を一定量以上含有することとなり、これらの官能基がポリマーに作用し、カーボンブラック表面への被覆を助けるからである。
そして、上記カーボンブラックのDBP吸収量は、40〜250ml/100gの範囲が好ましく、特に好ましくは45〜200ml/100gである。すなわち、上記範囲内でないと、電子写真材料の粘度が高くなり塗布時の作業性が悪くなる等のおそれがあるからである。なお、上記DBP吸収量は、JIS K6221(A法)によって測定した値である。
つぎに、上記カーボンブラックを被覆するポリマーとしては、特に制限するものではなく、例えば、ポリシロキサン系、ポリアクリル系、ポリメタクリル系、スチレン−アクリル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリイミド系、エポキシ系等の各種のものを用いることができる。なかでも、多官能エポキシ樹脂が好適である。ここで、多官能エポキシ樹脂とは、1分子中のエポキシ基の総数が2個以上のエポキシ樹脂をいう。このような多官能エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリフェニルグリシジルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルグリシジルメタン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミドジフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等があげられる。なお、被覆ポリマーは、常法に従って、各種の硬化剤、硬化促進剤、有機溶剤とともに使用される。そして、被覆ポリマーは二種以上のポリマーを任意の割合で併用してもよい。
そして、被覆ポリマーの使用割合は、上記カーボンブラックと被覆ポリマーの合計量の5〜40重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは5〜20重量%である。すなわち、5重量%未満では、未処理のカーボンブラックと同等の分散性や分散安定性しか得られないおそれがあるからであり、逆に40重量%を超えると、ポリマー被覆したカーボンブラックと組み合わせるバインダーの物性やトナー離型性、低摩擦性といった物性を損ねるおそれがあるからである。
さらに、上記ポリマー被覆カーボンには、高分子量分散剤等の適宜の添加剤を配合してもよい。上記高分子量分散剤としては、重量平均分子量が1,000〜50,000の分散剤であって、例えば、カーボンブラック用として通常用いられる各種の分散剤があげられる。具体例としては、ポリエステル系分散剤、ポリウレタン系分散剤、ポリアクリレート系分散剤等があげられ、これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
そして、上記高分子量分散剤の配合割合は、上記ポリマー被覆カーボンと高分子量分散剤の合計量全体の0.1〜40重量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜30重量%である。すなわち、少なすぎると分散剤として有効に働かず、逆に多すぎると物性が悪くなったり、経時的にブリードアウトが生じるおそれがあるからである。
上記ポリマー被覆カーボン、例えば、エポキシ樹脂被覆の場合は、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、スクリュー型攪拌機付き容器内に、予め調製しておいたカーボンブラックの水スラリーを装填し、所定の攪拌条件下にエポキシ樹脂溶液を少量ずつ添加する。これにより、水中に分散していたカーボンブラックが、エポキシ樹脂溶液側に移行する。そして、水切り工程を経由させた後、真空乾燥を行って、水等を除去することにより、粒子状のエポキシ樹脂被覆カーボンブラックが得られる。ついで、上記エポキシ樹脂被覆カーボンブラックと、高分子量分散剤等の添加剤とを、所定の割合で配合し、例えば、ビーズミル等の分散機を用いて分散する。これにより、エポキシ樹脂被覆カーボンブラックの表面に上記添加剤が付着し、その結果、上記添加剤処理済のエポキシ樹脂被覆カーボンブラックが得られる。
上記特定のカーボンブラック(B成分)の配合量は、バインダーポリマー(A成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して、5〜100部の範囲が好ましく、特に好ましくは10〜80部の範囲である。すなわち、B成分が少なすぎると、導電性の発現が不充分となり、逆にB成分が多すぎると、カーボンが高充填とされることで、塗膜の高硬度化につながり、塗膜割れのおそれがあるからである。
なお、上記表層用材料には、バインダポリマー(A成分)および特定のカーボンブラック(B成分)に加えて、架橋剤や、アミノ樹脂,フェノール樹脂,キシレン樹脂等の樹脂架橋剤、レベリング剤、有機溶剤等を適宜配合してもよい。
上記架橋剤としては、特に限定はなく、例えば、イソシアネート化合物等があげられる。
上記イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、カルボジイミド変性MDI、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、クルードMDI等があげられる。
上記架橋剤の配合量は、前記バインダーポリマー(A成分)100部に対して、1〜100部の範囲が好ましく、特に好ましくは5〜50部の範囲である。すなわち、上記架橋剤が少なすぎると、摩耗性が劣り、光沢度低下につながり、逆に上記架橋剤が多すぎると、塗膜の高硬度化につながり、塗膜割れのおそれがあるからである。
上記表層用材料は、例えば、前記バインダーポリマー(A成分)と、特定のカーボンブラック(B成分)と、有機溶剤等とを適宜に配合し、撹拌羽根で混合することにより調製することができる。なお、各層を精度良く形成するためには、隣接する層の形成材料に用いる有機溶剤は、互いに異なった種類のものを使用することが好ましい。すなわち、表層用材料に用いる有機溶剤と、基層用材料に用いる有機溶剤とは、互いに異なった種類のものを使用することが好ましい。
上記有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、n−ブタノール、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、アセトン等があげられ、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、例えばつぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、周方向に回転しうる円筒状または円柱状の基体と、上記基体の外周面に近接する位置で上記基体の軸方向に沿って移動しうる第1のノズルおよび第2のノズルとを準備する。また、前記と同様の方法にて、基層用材料および表層用材料を調製し、それぞれエアー加圧タンク等に収容する。そして、図2に示すように、上記円筒状または円柱状の基体3を垂直にした状態で周方向に回転させる。その状態で、エアー加圧タンク6に所定の圧力をかけて基層用材料5を第1のノズル4に圧送し、第1のノズル4から上記基体3の外周面に向かって基層用材料5を吐出させる。と同時に、上記第1のノズル4を上記基体3の軸方向に沿って一定速度で移動させる。これにより、上記基体3の外周面に基層用材料5を一定幅の帯でらせん状に塗布して(通常は、上側の帯と下側の帯との間に間隔を設けて塗る。場合によっては、間隔をあけなくてもよい)、上記基体3の外周面に上記らせん状塗膜の連続による全体塗膜7(基層となる)を形成する(図3参照)。これにより、上記全体塗膜7には、上側の帯と、その帯の下側の帯とによりうねりが生じる。これは、1本のらせん状の帯のなかでの上記垂直下方向の基層用材料5の垂れは、上記のように、その下側の帯が堰となることから、その垂れも殆どがその帯のなかでとどまるため、らせん状の帯のなかで幅方向の上側が薄く下側が厚くなり、塗膜は軸方向に小さなうねりの連続形状に形成されることとなるからである。つぎに、上記全体塗膜7を所定の条件(150〜300℃で3〜6時間)で加熱処理して、基層を形成する。なお、上記塗布の際に、基体3の外周面に基層用材料5を連続して塗布するだけではなく、基体3の外周面に一周塗布する帯状の基層用材料5と、そのつぎに一周塗布する帯状の基層用材料5とが、基体3の外周面の全ての部分で、基体3の軸方向においても隙間なく繋がっているようにする。
つぎに、図4に示すように、基層8を形成した基体3を、図3の垂直状態から、約90°傾け水平にした状態で周方向に回転させ、その状態で、上記基層8の外周面に近接させた第2のノズル(図示せず)から上記基層8の外周面に向かって、上記表層用材料を吐出させ、同時に、上記第2のノズルを上記基体3の軸方向に沿って移動させることにより、上記基層8の外周面に上記表層用材料をらせん状に塗布してらせん状塗膜の連続による全体塗膜9(表層になる)を形成する。この場合、基層8表面のうねりは、水平状態での基体3の回転により、基層8上に塗布された塗膜に対して遠心力の作用により、塗膜が横方向に移動するため、その横方向への移動により吸収され、表層表面にそのうねりの影響が現れず、表層が平滑になる。つぎに、上記全体塗膜9を所定の条件(100〜200℃で1〜2時間)で加熱処理した後、基層8の一端縁と基体3の外周面との間から高圧エアーを吹き込む等の手法により、基体3を抜き取る。これにより、全体塗膜7からなる基層8の表面に、全体塗膜9からなる表層が形成されてなる2層構造の電子写真機器用無端ベルトを得ることができる。この電子写真機器用無端ベルトは、上記基層8の表面がベルトの長さ方向に沿って複数のうねりの連続形状を有し、上記表層が基層8表面のうねり形状を吸収し、表層表面が平滑になっている。なお、本発明において、平滑とは、表層の表面粗さ(Rz)が、0.2〜5の範囲をいい、好ましくは0.2〜2の範囲である。この表面粗さ(Rz)は、JIS B0601−1982の記載に準じ、例えば、東京精密社製のサーフコム1400Dを用いて測定することができる。
なお、上記円筒状または円柱状の基体3としては、例えば、金属(鉄,アルミニウム,ステンレス等)製の回転ドラム等が用いられる。なお、上記基体3は、基体回転部の負担を軽くできる観点から、円筒状であることが好ましい。上記基体3の直径は、通常、120〜350mmであり、軸方向の長さは、通常、300〜600mmである。このような大きさであると、電子写真機器用の電子写真用無端ベルトを作製するのに、好適である。また、上記基体3の回転数は、50〜500rpmの範囲が好ましい。すなわち、回転数が低すぎると、重力で塗料が下に落ちてしまう傾向がみられ、逆に回転数が高すぎると、遠心力が強すぎて塗料が飛び散る傾向がみられるからである。
上記第1,第2のノズルとしては、例えば、ニードルノズル等が用いられる。また、上記ノズルの吐出部形状としては、丸形状,平形状,矩形状等のものを用いることができる。基体3の軸方向に沿って移動するノズルの速度、基体3とノズルとの距離は、各材料の粘度,ノズル形状,吐出圧等に応じて適宜設定できるが、各材料の吐出量は0.15〜0.25g/secにすることが好ましく、その流量変動は2%以内にすることが好ましい。
なお、本発明の電子写真機器用無端ベルトの基層1および表層2の製法は、上記製法に限定されるものではなく、押出成形法、インフレーション法、ブロー成形法、ディッピング法等により、作製することも可能である。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、光沢度が100〜200であることが必要であり、好ましくは100〜150である。すなわち、光沢度が下限未満であると、前述のように、トナー濃度センサー読み取りのばらつきが大となり、逆に光沢度が上限を超えると、表層の柔軟性が劣るからである。
本発明において、光沢度とは、JIS Z 8741−1997に記載の「鏡面光沢度」のことをいう。上記光沢度は、例えば、日本電色社製のハンディグロスメーターPG−IMを用いて測定することができる。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、ベルト表面の表面抵抗(ρS1)が1×109 〜1×1014Ω/□の範囲が好ましく、特に好ましくは1×1010〜1×1014Ω/□の範囲である。すなわち、ベルト表面の表面抵抗(ρS1)が低すぎると、耐圧が劣る傾向がみられ、逆にベルト表面の表面抵抗(ρS1)が高すぎると、電荷減衰が遅く、トナー転写しなかったり、電荷が残り残像がでる傾向がみられるからである。また、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、ベルト裏面の表面抵抗(ρS2)の表面抵抗が1×106 〜1×1012Ω/□の範囲が好ましく、特に好ましくは1×108 〜1×1012Ω/□の範囲である。
ここで、上記ベルト表面の表面抵抗(ρS1)とは、電子写真機器用無端ベルトの最外周面の表面抵抗をいい、ベルト裏面の表面抵抗(ρS2)とは、電子写真機器用無端ベルトの最内周面の表面抵抗をいう。
また、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、下記の式(1)で表されるベルトの表面抵抗の表裏差が0.2〜2桁の範囲が好ましく、特に好ましくは0.4〜2桁の範囲である。すなわち、表面抵抗の表裏差が小さすぎると、転写域以外へ電荷が流れやすく、転写ちりが発生し、逆に表面抵抗の表裏差が大きすぎると、ベルト表面の電荷減衰速度が遅く、残像現象を発生する傾向がみられるからである。
Figure 0005060802
本発明の電子写真機器用無端ベルトの基層1の厚みは、30〜300μmの範囲が好ましく、特に好ましくは50〜200μmの範囲である。また、表層2の厚みは、1〜10μmの範囲が好ましく、特に好ましくは1〜5μmの範囲である。すなわち、表層2が薄膜すぎると、耐圧が劣る傾向がみられ、逆に表層2が厚膜すぎると、電荷が残り、残像(ゴースト)が生じたり、また、柔軟性が劣る傾向がみられるからである。また、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、内周長が90〜1500mmで、幅が100〜500mm程度のものが好ましい。すなわち、上記寸法の範囲に設定すると、電子写真複写機等に組み込んで使用するのに適した大きさとなるからである。
上記基層1および表層2の膜厚は、例えば、走査電子顕微鏡,マイクロメーター等を用いて測定することができる。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、フルカラーLBPやフルカラーPPC等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、トナー像の転写用,紙転写搬送用,感光体基体用等の用途に好適に用いられるが、これに限定するものではなく、例えば、フルカラーではない、単色の電子写真複写機の転写ベルト等にも使用することができる。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(基層用材料の調製)
撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器に、MDI(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT、Mn:250.06)22部と、TODI(日本曹達社製、TODI/R203、Mn:264.29)29部と、芳香族系多価カルボン酸無水物である無水トリメリット酸(Mn:192.12)36部と、カルボン酸両末端ポリブタジエン(日本曹達社製、C−1000、酸価:52mgKOH/g、Mn:2158)20部と、NMP溶剤250部とを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら1時間かけて130℃まで昇温し、そのまま130℃で約5時間反応させた後反応を停止し、PAI−NMP溶液(固形分濃度:26重量%)を調製した。つぎに、このPAI−NMP溶液に、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN220)4部を配合し、撹拌羽根で混合した後、ボールミル分散させて基層用材料を調製した。この基層用材料の粘度は、5000mPa・s(B型粘度計の測定値)に調整した。
(表層用材料の調製)
後記の表1に示す材料を同表に示す割合で配合し、混練した後、撹拌羽根で混合して、表層用材料を調製した。この表層用材料の粘度は、5000mPa・s(B型粘度計の測定値)に調整した。
(無端ベルトの作製)
金型として、アルミニウム製の円筒形基体を準備し、第1および第2のノズルとして、ディスペンサーを準備した。このノズルは、内径φ1mmのニードルノズルである。そして、基層用材料,表層用材料をそれぞれエアー加圧タンクに収容し、円筒形基体およびノズルをセットした。このとき、円筒形基体の外周面と第1のノズルとのクリアランスを1mmに設定した。つぎに、円筒形基体を垂直にした状態で回転数200rpmで周方向に回転させながら第1のノズルを1mm/secの移動速度で軸方向に下降させ、同時に、エアー加圧タンクに0.4MPaの圧力をかけて基層用材料を第1のノズルに圧送し、第1のノズルから基層用材料を吐出して円筒形基体の外周面上にらせん状にコーティングし、円筒形基体の外周面上にらせん状塗膜の連続による全体塗膜を形成した(図2参照)。このとき、基層用材料の吐出は、吐出量0.2g/sec,変動2%以内になるようにして行った。上記全体塗膜を300℃で6時間加熱処理して基層を形成した。
つぎに、上記基層を形成した円筒形基体を、上記垂直状態から約90°傾け水平にした状態で回転数200rpmで周方向に回転させながら第2のノズルを2mm/secの移動速度で軸方向に沿って移動させ、同時に、エアー加圧タンクに0.4MPaの圧力をかけて表層用材料を第2のノズルに圧送し、第2のノズルから表層用材料を吐出して基層の外周面上にらせん状にコーティングし、基層の外周面上にらせん状塗膜の連続による全体塗膜を形成した。このとき、表層用材料の吐出は、吐出量0.2g/sec,変動2%以内になるようにして行った。上記全体塗膜を180℃で2時間加熱処理して表層を形成した。つぎに、基層の一端縁と基体の外周面との間から高圧エアーを吹き込むことにより、基体を抜き取った。これにより、基層の表面に表層が形成されてなる2層構造の電子写真機器用無端ベルトを得た。この電子写真機器用無端ベルトは、上記基層の表面がベルトの長さ方向に沿って複数のうねりの連続形状を有し、上記表層が基層表面のうねり形状を吸収し、表層表面が平滑になっている。
〔実施例2〜8、比較例1,2〕
表層用材料の配合組成を、下記の表1および表2に示すように変更する以外は、実施例1と同様にして、表層用材料を調製した。そして、この表層用材料を用いる以外は、実施例1に準じて、基層の表面に表層が形成されてなる2層構造の無端ベルトを作製した。
Figure 0005060802
Figure 0005060802
なお、上記表1および表2に示した材料は、下記のとおりである。
〔バインダーa〕
アクリル系ポリマー(三菱レイヨン社製、ダイアナールBR−75)〔Tg:90℃、Mn:85,000〕
〔バインダーb〕
アルキド樹脂(大日本インキ化学工業社製、ベッコライトM−6402−50)〔Tg:120℃、Mn:15,000〕
〔バインダーc〕
アクリル系ポリマー(根上工業社製、パラクロンAW−4500H)〔Tg:−8℃、Mn:320,000〕
〔バインダーd〕
アルキド樹脂(大日本インキ化学工業社製、ベッコゾール1341)〔Tg:150℃、Mn:12,000〕
〔カーボンブラックa(ポリマー被覆カーボン)〕
平均一次粒子径24nm、比表面積134m2 /g、pH値3.0、DBP吸収量65ml/100gのカーボンブラックを準備し、このカーボンブラックと純水とをホモミキサーにより6,000rpmで30分間混合処理してスラリーを調製した。一方、アミノフェノール型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート630)をトルエンに溶解してエポキシ樹脂溶液を調製した。そして、スクリュー型攪拌機付き容器に上記スラリーを移し、約1,000rpmの攪拌条件下、上記アミノフェノール型エポキシ樹脂がカーボンブラックとアミノフェノール型エポキシ樹脂の合計量の10重量%の割合となるように上記エポキシ樹脂溶液を少量ずつ添加した。約15分経過後、水に分散していたカーボンブラックは、全量トルエン側に移行し大径の粒となった。そして、60メッシュの金網で水切りを行った後、真空乾燥機により70℃で7時間乾燥し、水とトルエンとを除去した。このようにして、粒子状のエポキシ樹脂被覆カーボンブラックを得た。さらに、このエポキシ樹脂被覆カーボンブラックに対し、高分子量分散剤(ゼネカ社製、ソルスパースS24000GR)の配合割合が、エポキシ樹脂被覆カーボンブラックと高分子量分散剤との合計量の18重量%の割合となるように配合し、ビーズミルで分散することにより、エポキシ樹脂被覆カーボンブラックに対し分散剤処理を行い、エポキシ樹脂被覆カーボンブラック(ポリマー被覆カーボン)を得た。
〔カーボンブラックb(ポリマーグラフトカーボン)〕
カーボンブラック(種類:LFF、平均粒子径:24nm、DBP吸収量:57ml/100g、pH:3)231部に、スチレン−アクリル系ポリマー69部および分散媒体としてメチルイソブチルケトン700部を仕込み、ビーズミルを用いて均一に分散、混合し、110℃で3時間処理することによりグラフト化反応を進行させ、ポリマーグラフトカーボンを得た(グラフト化率:0.3%)。
〔カーボンブラックc〕
カーボンブラック(平均一次粒子径24nm、比表面積134m2 /g、pH値3.0、DBP吸収量65ml/100g)
〔イソシアネートa〕
HDI(日本ポリウレタン社製、コロネートHX)
〔イソシアネートb〕
TDI(日本ポリウレタン社製、コロネートL)
このようにして得られた実施例および比較例の無端ベルトを用い、後記の基準に従って各特性の評価を行った。これらの結果を下記の表3および表4に併せて示した。
Figure 0005060802
Figure 0005060802
〔光沢度〕
日本電色社製のハンディグロスメーターPG−IMを用いて、基層および表層の光沢度をそれぞれ測定した。
〔表層膜厚〕
走査電子顕微鏡(日立製作所社製、S−4100)を用いて、表層膜厚を測定した。
〔基層膜厚〕
マイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて、基層膜厚を測定した。
〔表面抵抗〕
三菱ケミカル社製、ハイレスタMCP−HIT450を用いて、ベルト表面の表面抵抗(ρS1)およびベルト裏面の表面抵抗(ρS2)をそれぞれ測定した。
〔表面粗さ(Rz)〕
JIS B0601−1982の記載に準じ、東京精密社製のサーフコム1400Dを用いて、基層およびベルト表面(表層を塗布した製品)の表面粗さ(Rz)を測定した。
〔耐久光沢度維持性〕
無端ベルトを複写機(リコー社製、イマジオMP2500)に組み込み、60万枚画像出力後、ベルト表層の光沢度を、日本電色社製のハンディグロスメーターPG−IMを用いて測定した。評価は、光沢度が100以上のものを○、光沢度が80以上100未満のものを△、80未満のものを×とした。
上記表3および表4の結果から、いずれの実施例品も、表層バインダーとカーボンブラックとの相溶性が良好であり、平滑性も優れる状態となるため、光沢度が向上した。また、バインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)が所定の範囲(5〜130℃)内のポリマーa,bを用いた実施例1〜6品は、バインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)が上記所定の範囲から外れたポリマーc,dを用いた実施例7,8品に比べて、耐久試験評価においても、離型性や耐摩耗性に優れるため、光沢度を維持することができた。
これに対し、比較例1,2品は、表層バインダーとカーボンブラックとの相溶性が劣るため、光沢度が低く、光沢がでなかった。さらに、耐久試験評価(耐久光沢度維持性)では、その平滑性が悪いため、離型性や耐摩耗性に不利に働き、より一層光沢度の低下を招く結果となった。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、フルカラーLBP(レーザービームプリンター)やフルカラーPPC(プレーンペーパーコピア)等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、中間転写ベルトや紙転写搬送ベルト等に好適に用いられる。
本発明の電子写真機器用無端ベルトの一例を示す部分断面図である。 本発明の電子写真機器用無端ベルトの製法の一例を示す説明図である。 本発明の電子写真機器用無端ベルトの一例を示す部分拡大断面図である。 本発明の電子写真機器用無端ベルトの一例を示す部分拡大断面図である。
符号の説明
1 基層
2 表層

Claims (8)

  1. 基層の表面に表層が形成されてなる2層構造の電子写真機器用無端ベルトであって、上記基層がポリアミドイミド樹脂を主成分とする基層用材料からなるとともに、上記表層が下記の(A)および(B)を含有する表層用材料からなり、かつ、上記表層の光沢度が100〜200の範囲に設定されていることを特徴とする電子写真機器用無端ベルト。
    (A)バインダーポリマー。
    (B)表面にポリマーがグラフトまたは被覆されてなるカーボンブラック。
  2. 上記基層の表面がベルトの長さ方向に沿って複数のうねりの連続形状を有し、上記表層が基層表面のうねり形状を吸収し、表層表面が平滑になっている請求項1記載の電子写真機器用無端ベルト。
  3. 上記ベルト表面の表面抵抗が、1×109 〜1×1014Ω/□の範囲であり、かつ、下記の式(1)で表されるベルトの表面抵抗の表裏差が0.2〜2桁の範囲である請求項1または2記載の電子写真機器用無端ベルト。
    Figure 0005060802
  4. 上記表層の厚みが、1〜10μmの範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真機器用無端ベルト。
  5. 上記バインダーポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が5〜130℃の範囲である請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真機器用無端ベルト。
  6. 上記バインダーポリマーは、数平均分子量が10,000〜1,200,000の範囲である請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真機器用無端ベルト。
  7. 上記表層が、架橋剤を含有する表層用材料からなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子写真機器用無端ベルト。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子写真機器用無端ベルトの製法であって、周方向に回転しうる円筒状または円柱状の基体と、上記基体の外周面に近接する位置で上記基体の軸方向に沿って移動しうる第1および第2のノズルとを準備し、上記基体を垂直にした状態で周方向に回転させ、その状態で、上記基体の外周面に近接させた第1のノズルから上記外周面に向かってポリアミドイミド樹脂を主成分とする基層用材料を吐出させ、同時に、上記第1のノズルを上記基体の軸方向に沿って移動させることにより、上記基体の外周面に上記基層用材料をらせん状に塗布してらせん状塗膜の連続による全体塗膜を形成し、上記全体塗膜を加熱処理して基層を形成した後、上記基層を形成した基体を傾け水平にした状態で周方向に回転させ、その状態で、上記基層の外周面に近接させた第2のノズルから上記外周面に向かって下記の(A)および(B)を含有する表層用材料を吐出させ、同時に、上記第2のノズルを上記基体の軸方向に沿って移動させることにより、上記基層の外周面に上記表層用材料をらせん状に塗布してらせん状塗膜の連続による全体塗膜を形成し、上記全体塗膜を加熱処理した後、上記基体から抜き取り電子写真機器用無端ベルトを得るようにしたことを特徴とする電子写真用無端ベルトの製法。
    (A)バインダーポリマー。
    (B)表面にポリマーがグラフトまたは被覆されてなるカーボンブラック。
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