JP5057684B2 - 水素製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、水素製造装置に関し、詳しくは、高純度水素生産性能および耐久性の優れた水素製造装置に関する。
水素の工業的製造方法には、水の電気分解法、炭化水素の水蒸気改質法、石炭、重質油等の部分酸化法、合成ガス、水性ガスのスチームによる水素製造法などがある。炭化水素の水蒸気改質法や石炭、重質油の部分酸化法等においては、炭酸ガス、一酸化炭素、水蒸気、メタンなどの不純物ガスを含む原料ガスから水素ガスを分離することが重要な課題であり、分離には吸収法、吸着法、膜分離法など多くの方法が利用されている。
一方、最近は水素燃料電池が高効率の小型発電装置として期待され、急速にその技術開発が進められている。一般に、水素燃料電池は、大きく分けてふたつの部分からなっており、ひとつは、水素と酸素とを電気化学的に反応させて電力を取り出す電池本体であり、もうひとつは電池本体の原料となる水素製造装置である。水素燃料電池は、分散型燃料電池や自動車用燃料電池としての研究が盛んであるが、自動車用の燃料電池は発電性能や耐久性だけでなく、小型化が大きな課題となっている。燃料電池自動車には水素製造装置搭載型と非搭載型とがあり、水素製造装置搭載型の燃料電池自動車には、電池本体だけでなく、水素製造装置の小型化の研究も非常に重要である。水素製造装置非搭載型の燃料電池自動車、例えば水素ガスタンク搭載型の燃料電池自動車においても、燃料供給にはガソリンスタンドに代わる水素供給スタンドのような施設が必要であり、水素供給スタンドにおいて水素を製造することが考えられている。その場合、水素供給スタンドは現在のガソリンスタンドのような比較的狭い敷地に水素製造装置を設置せねばならない。そのため、このような水素製造装置においても小型化は重要な課題である。
さらに、燃料電池の電池本体に使用される水素は、効率よく利用するためには高純度にする必要がある。また、電池本体に触媒を使用しているため、炭酸ガスや一酸化炭素などの不純物が触媒毒や機器の劣化要因となり易く、これらの不純物を非常に嫌い、この点からも高純度水素であることが要求される。そこで、炭化水素の水蒸気改質や合成ガス、水性ガスからの水素製造においては、水素純度の低い混合ガスからの水素の分離、精製が不可欠である。燃料電池システムの水素製造におけるこのような水素の分離、精製の際は、特に装置の小型化が要求され、膜分離法による水素分離装置が検討されている。膜分離法とは、パラジウム等の水素ガスを選択的に透過する水素透過膜を用いて水素含有ガスから水素ガスを選択的に分離、精製する方法である。この水素透過膜は、通常、多孔質セラミックス、多孔質ガラス、多孔質金属等からなる多孔質支持体の表面に形成して使用される。例えば、図5に示すような水素分離システム16が知られている。この水素分離システム16は、円筒状の多孔質支持体の外表面に水素透過膜が形成されている水素分離装置15が、隔壁8に支持された状態で外筒7中に収められている。水素分離用の原料ガスが原料ガス入口11から導入され、原料ガス流路9を通過しながら、水素ガスのみが水素分離装置15を通って製品ガス流路10へと透過していく。水素以外の炭酸ガスなどの不純物ガスは、原料ガス流路9および水素分離装置15の多孔質支持体内を原料ガス流路9の下流側へ流れ、オフガスとしてオフガス出口13から排出される。このようにして高純度水素が分離され製品ガス出口12から取り出される。
一方、水素製造において上述のような水素含有ガスの製造と、水素含有ガスからの水素ガスの分離とを別々に行うのではなく、炭化水素の水蒸気改質等による水素含有ガスの製造と同時に、この水素含有ガスから水素ガスを選択的に分離し精製する方法が知られている。例えば、上述の図5に示すような水素分離システムにおける水素分離装置15の原料ガス流路9を比較的太くして、この原料ガス流路9中に炭化水素の水蒸気改質用のニッケル系触媒を充填して触媒層とし、水蒸気改質用の原料ガスである高温のメタンと水蒸気とからなる混合ガスを原料ガス入り口11から供給して、反応と分離とを同時に行い、水素を製造する方法がある。原料ガスは、原料ガス流路9の触媒層で水蒸気改質反応により水素、一酸化炭素、炭酸ガスになる。そして、水素は水素分離装置15を形成する多孔質支持体、水素透過膜を通過して製品ガス流路10へと流出していく。一方、炭酸ガス、一酸化炭素、未反応メタン、残余水蒸気などは原料ガス流路9を通ってオフガスとしてオフガス出口13から排出される。このように水素製造反応と水素分離とを同時に行って高純度水素を製造することができる。
さらに、メンブレンリアクタ等の装置を使用した水素製造システムが知られている。メンブレンリアクタは、例えば図5に示す水素分離システムと同じ形状をしているが、図5に示す水素分離装置15の代わりに、水素製造機能と水素分離機能とを持った水素製造装置を備えている。すなわち、メンブレンリアクタにおいては、上述のように原料ガス流路9には触媒を充填しないで、水素分離装置の代わりに多孔質支持体に触媒成分を含有させた触媒兼多孔質支持体とその外表面に水素透過膜とを有する水素製造装置を備えている。図5をメンブレンリアクタとみなすと、このメンブレンリアクタでは、原料ガス入口11から供給され、原料ガス流路9に到達した原料ガス、例えばメタンとスチームとの混合ガスが水素製造装置を形成する触媒兼多孔質支持体中に侵入すると、そこでメタンの水蒸気改質反応が起こって水素が発生し、発生した水素は水素透過膜を通って製品ガス流路10へと透過していき、高純度の水素が製品ガス出口12からとりだされる。残った炭酸ガスや一酸化炭素等はオフガスとしてオフガス出口13から排出される(特許文献1、特許文献2参照。)。
特開2004−149332号公報 特開2005−314163号公報
上述のようなメンブレンリアクタにおいては、通常、水素製造装置は多孔質支持体とその表面に形成された水素透過膜とを備えている。そして、多孔質支持体中にはニッケルなどの水素製造用の触媒機能を持つ金属成分が存在する。この場合、多孔質支持体の表面に水素透過膜を形成すると、高温での水素製造装置の使用中に、これらの界面において、多孔質支持体中の一部の金属成分と、水素透過膜を形成する材料中の一部の金属成分とが相互に拡散し合うことがある。例えば、多孔質支持体中の触媒成分であるニッケルと水素透過膜中の成分であるパラジウムのような金属成分とが相互に拡散し合う。水素透過膜中の金属成分が多孔質支持体中の金属成分中へと拡散すると、当然水素透過膜の水素透過機能や水素分離の選択性が低下する。そこで、多孔質支持体と水素透過膜との間にバリア層を介在させることにより、多孔質支持体を形成する材料の金属成分と水素透過膜を形成する材料の金属成分とが相互に拡散することを防ぎ、水素透過膜の性能を維持する方法が考えられる。ところが、多孔質支持体とも水素透過膜とも性質の異なるバリア層を設けると、多孔質支持体とバリア層との間、および水素透過膜とバリア層との間で熱膨張率の違いが発生し易い。熱膨張率の異なった層間では、水素製造装置の使用温度である250〜900℃までの温度変化により剥離や亀裂が生じ易い。本発明では、このような剥離や亀裂を防ぎながら、水素透過膜中の金属成分と多孔質支持体中の金属成分との拡散、溶融を防止する水素製造装置の提供を目的とする。
本発明においては、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)多孔質支持体の表面に、密着層、バリア層、水素透過膜が順次形成されており、多孔質支持体は触媒金属成分を含み、水素透過膜は水素透過性金属を含み、バリア層は前記触媒金属成分を含まない層を有する多孔質層であり、密着層は多孔質支持体の熱膨張率とバリア層の熱膨張率との間の熱膨張率を持つ多孔質層である水素製造装置。
(2)多孔質支持体の表面に、密着層、バリア層、水素透過膜が順次形成されており、多孔質支持体は触媒金属成分を含み、水素透過膜は水素透過性金属を含み、バリア層は前記触媒金属成分を含まない層を有する多孔質層であり、密着層は多孔質支持体よりも少ない前記触媒金属成分を含む多孔質層である水素製造装置。
(3)密着層が複数の層からなり、バリア層に近い側の密着層の熱膨張率が、多孔質支持体に近い側の密着層の熱膨張率よりも小さい(1)または(2)に記載の水素製造装置。
(4)密着層中の熱膨張率が、密着層の多孔質支持体側からバリア層側に向かって連続的に減少している(1)または(2)に記載の水素製造装置。
本発明の水素製造装置は、多孔質支持体と水素透過膜との密着性がよく、特に水素製造装置の使用による温度変化に対しても多孔質支持体と水素分離膜との間での熱歪による剥離や亀裂がなく、多孔質支持体の変形や水素透過膜の破損や性能低下もなく長期間使用できる。また、水素透過膜中のパラジウムなどの金属成分が多孔質支持体中に拡散することがなく、水素透過膜の寿命が長くなる。
本発明の水素製造装置は、図1にその構造の一例を示すように、多孔質支持体2の表面に、密着層3、バリア層4、水素透過膜5がこの順に形成された少なくとも4層を有する。多孔質支持体2は触媒金属成分を含んでおり水素製造触媒機能を有している。水素透過膜5は水素透過性金属を含んだ緻密層であり水素ガスを選択的に透過できる。そして、多孔質支持体2、密着層3、およびバリア層4は共に多孔質層であり、水素製造時の原料ガスおよび反応ガスは、多孔質支持体2側からバリア層4までは自由に流通できる。しかし、水素透過膜5を透過することができるのは水素ガスだけである。ところで、多孔質支持体2は触媒金属成分を含んだ層であるが、バリア層4は少なくとも一層は前記触媒金属成分を含まない層を有し、その場合、通常は、密着層3に接する面に前記触媒金属成分を含まない層を配置することが好ましい。
一般に、金属成分(金属成分とは金属の酸化物等ではなく金属または合金を表わす。)を含む層、例えばセラミックスやガラスと金属成分との複合層は、金属成分を含まない層に比べ熱膨張率が大きくなり易い。例えば、イットリア安定化ジルコニア粉末から作った多孔質体の熱膨張率は9.67×10−6/℃であり、同じイットリア安定化ジルコニア粉末40質量%とニッケル粉末60質量%とから作った多孔質体の熱膨張率は12.05×10−6/℃である(本発明における熱膨張率は、特に断らない限り線熱膨張率を表わす。)。このような熱膨張率の異なった多孔質体で作った多層構造体は、温度変化を受けるとその界面に熱応力が発生し、歪を生じたり、剥離したり、一方の層に亀裂が生じたりする。そこで、本発明では、金属成分を含み大きな熱膨張率を有する多孔質支持体2と、金属成分を含まないで比較的小さな熱膨張率の層を有するバリア層4との間に、両者の中間の熱膨張率を有する密着層3を設けてある。この密着層3は、この水素製造装置1を製造する際に多孔質支持体2とバリア層4との接合性を向上させる作用と、この水素製造装置1の使用時に上述のような温度変化に対する熱応力の影響を和らげる作用を持つ。
一般に、層間に強い接合力を持つ多層構造体を作るには、それぞれの層を類似の材料で形成することが好ましい。この水素製造装置1の場合も多孔質支持体2に使用した一方の材料であるセラミック材料と同じセラミック材料を用いてバリア層4と密着層3とを製造することが好ましい。この場合、密着層3の熱膨張率を多孔質支持体2の熱膨張率とバリア層4の熱膨張率との間の値にするには、多孔質支持体2に含有するもう一方の材料である金属成分と同じ金属成分を、多孔質支持体2よりも少ない比率で含有する多孔質層とすればよい。例えば、上述のイットリア安定化ジルコニア粉末40質量%とニッケル粉末60質量%とから作った多孔質支持体2上に形成する密着層3は、イットリア安定化ジルコニア60質量%とニッケル粉末40質量%とから作った多孔質層とすることができる。図6は、図1の構造に対応する上記の組成の多孔質支持体2、密着層3およびイットリア安定化ジルコニア製のバリア層4の断面電子顕微鏡写真(SEM)、並びにそのエネルギー分散型X線分析装置(EDS)の解析図である。図6(a)は電子顕微鏡写真、図6(b),図6(c),図6(d)はそれぞれ触媒金属成分であるNi元素,ジルコニアの成分であるZr元素,イットリアの成分であるY元素のEDSの解析図である。なお、これらの図には水素透過膜5は表わしていない。Ni元素は最上層であるバリア層4には存在せず、Zr元素,Y元素は多孔質支持体2、密着層3、バリア層4と順次その存在量が増加していることがわかる。この密着層3と同じ組成で多孔質体を作って測定した熱膨張率は11.25×10−6/℃で、密着層3の熱膨張率は多孔質支持体2の熱膨張率とバリア層4の熱膨張率とのほぼ中間の値となる。これにより、製造時の密着性が向上するだけでなく、水素製造装置としての使用中の熱応力の影響を抑え、装置の耐久性を向上できる。
上述のように、多孔質支持体2とバリア層4との間に密着層3を設けると、水素製造装置として使用中の熱応力の影響を抑えることができるが、この作用をさらに向上させるには、多孔質支持体2と密着層3との間、および密着層3とバリア層4との間の熱膨張率の変化を小さくすることが好ましい。このためには、密着層3を多層構造として、多孔質支持体2と接する密着層は多孔質支持体2の熱膨張率に近い値とし、多孔質支持体2側からバリア層4側に向かって密着層中の各層の熱膨張率を順次低下させて、バリア層4に接している密着層はバリア層4の熱膨張率に近づけることが好ましい。例えば、図2に示すように、密着層を密着層3a、3bからなる2層構造とした場合、多孔質支持体2と密着層4とを上述の材料としたとして、密着層3aの材料組成は上述のイットリア安定化ジルコニア60質量%とニッケル粉末40質量%とし、密着層3bの材料組成は上述のイットリア安定化ジルコニア80質量%とニッケル粉末20質量%とすればよい。この場合、密着層3aの熱膨張率は11.25×10−6/℃であり、密着層3bの熱膨張率は10.44×10−6/℃であり、多孔質支持体2と密着層3との接合面も密着層3とバリア層4との接合面も熱膨張率の差が小さくなる。
このように密着層を多層構造として、多孔質支持体に使用した触媒金属の含有量を減少させた密着層を多孔質支持体表面に順次形成すれば、多孔質支持体2と密着層3との接合面および密着層3とバリア層4との接合面だけでなく、多層構造とした密着層同士の接合面においても熱膨張率の差が小さくなり、熱応力の影響を受け難くなり耐久性のある水素製造装置とすることができる。この多層構造の他の例として、触媒金属の含有量が、多孔質支持体側からバリア層側に向かって連続的に減少している密着層とすることができる。そして、密着層3中の触媒金属の含有量を、多孔質支持体2と密着層3との接合面においては多孔質支持体2と同じとし、密着層3とバリア層4との接合面においてはバリア層4と同じとすることが好ましい。なお、通常バリア層4中の触媒金属含有量は0であるので、この場合密着層3とバリア層4との接合面における密着層3中の触媒金属の含有量もほぼ0とすればよい。このようにすれば、密着層は1層ではあるけれども、密着層中の多孔質支持体側からバリア層側に向かって熱膨張率を連続的に減少させることができる。なお、密着層は必ずしも金属成分を含まなくとも、所望の熱膨張率を得られる材料で形成してもよい。例えば、MgOを少量加えた多孔質体は熱膨張率が大きくなり易く、密着層の熱膨張率の調整に好適である。
バリア層は、前記触媒金属成分を含まない層を含む。特に、バリア層は前記触媒以外の金属成分をも含まない層を含むことが好ましい。バリア層の機能は水素透過膜を構成する金属成分、たとえばパラジウムなどが多孔質支持体や密着層中の金属と相互に拡散し合い、水素透過膜の水素分離機能を低下させたり、多孔質支持体の触媒機能を低下させたりしないことである。バリア層が単層構造の場合は、前記触媒金属成分を含んでいなければどのような多孔質層でもよいが、通常は、多孔質支持体を形成している材料と同じ材料から金属材料を除いた材料、例えばセラミック材料やガラス材料で形成することができる。しかし、バリア層と水素透過膜との界面においても上述のように熱応力による界面の剥離や水素透過膜の歪、変形、亀裂、破損などの恐れがある。水素透過膜は、パラジウムなどのような金属製の場合が多く、その熱膨張率は、例えば12.55×10−6/℃程度である。そうすると、水素透過膜と熱膨張率が9.67×10−6/℃である上述のバリア層との接合面では熱応力が発生し易い。水素透過膜は比較的薄いのである程度の熱応力には対応力があるが、接合面での熱膨張率の差は小さいほうがよい。
そこで、バリア層を多層構造にして、例えば図3に示すように第1バリア層4a,第2バリア層4bの2層とすれば、水素透過膜5とバリア層4との接合面の熱膨張率の差が小さくでき接合面での熱応力の発生を抑制できる。ここで、第1バリア層4aには、第2バリア層4bに比べて水素透過膜5の熱膨張率に近い熱膨張率を持つ材料を用いる。この第2バリア層4bへは水素透過膜5の材料成分であるパラジウムなどの金属も、上述の多孔質支持体2に含まれる触媒金属成分も拡散してこないようにする。このようにして多孔質支持体2に含まれるニッケルなどの触媒金属成分と、水素分離膜5に含まれるパラジウムなどの金属とが相互に拡散し合わないようにすることがバリア層4の機能である。さらに、水素透過膜5と第2バリア層4bとの間にこれらの層の中間の熱膨張率を持つ第1バリア層4aを介在させて、各層間の急激な熱膨張率の変化を抑えている。具体的な方法としては、例えば熱膨張率の比較的大きい金属成分や金属酸化物を第2バリア層4bと同じセラミック成分中に添加することにより第1バリア層4aを形成し、第1バリア層4aの熱膨張率を水素透過膜の熱膨張率に近づけることができる。この際、金属成分としては熱膨張率を大きく出来るものであればどのようなものでもよいが、水素透過膜の材料である金属成分、例えばパラジウムなどが好適である。水素透過膜の材料と同じ金属成分であれば、水素製造装置の高温での使用時に接合面から金属同士が拡散し合っても水素透過膜の組成に大きな変化はなく、水素透過膜の機能がそこなわれることもない。添加する金属成分としては、その他にも金、銀、銅など、また添加する金属酸化物としてはマグネシアなどが挙げられる。なお、第2バリア層4bは金属成分を含まない層であることが好ましく、そうすればこの第2バリア層へは水素透過膜の材料成分であるパラジウムなどの金属は拡散してこない。
図7は、図3の構造に対応する多孔質支持体2、密着層3およびイットリア安定化ジルコニア製のバリア層4b、マグネシアを40質量%添加したイットリア安定化ジルコニア製のバリア層4aの積層体の断面電子顕微鏡写真(SEM)、並びにそのエネルギー分散型X線分析装置(EDS)の解析図である。図7に示す積層体の組成は、バリア層以外は図6に示した積層体の組成と同じであり、第1バリア層4aはYSZ80質量%,マグネシア20質量%の組成であり、第2バリア層4bはYSZ100質量%の組成である。図7(a)は電子顕微鏡写真、図7(b),図7(c),図7(d),図7(e)はそれぞれ触媒金属成分であるNi元素,ジルコニアの成分であるZr元素,イットリアの成分であるY元素、マグネシアの成分であるMg元素のEDSの解析図である。なお、これらの図には水素透過膜5は表わしていない。Ni元素は上層の第1バリア層4a,4bには存在せず、Zr元素,Y元素は多孔質支持体2、密着層3、バリア層4bと順次その存在量が増加していることがわかる。また、最上層の第2バリア層4bにはMg元素が存在していることがわかる。
次に、この水素製造装置を構成する多孔質支持体の組成、製造方法等について説明する。多孔質支持体は原料ガスおよび反応後の生成ガスの透過機能と原料ガスの反応触媒の機能とを持っている。さらに、通常はこの多孔質支持体によって水素透過膜が支持されている。通常、水素製造装置の原料ガス成分としては、炭化水素、アルコール、一酸化炭素およびスチームなどであり、生成ガスとしては、水素の他に炭酸ガス、一酸化炭素、水蒸気、メタンなどの混合ガスである場合が多いので、多孔質支持体を形成する材料としては、原料ガスからの水素製造の触媒機能を持ち、これらのガスにより変質せず、水素透過膜を支持できる材料であれば特に限定されない。このような材料は非触媒成分と触媒成分とから形成することができる。このうち非触媒成分としては、無機酸化物、カーボン、無機窒化物等が挙げられる。無機酸化物としては、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ、シリカ−アルミナ、ムライト、コージェライト、ジルコニア、安定化ジルコニア、ガラス等が挙げられる。触媒成分としては、例えば、炭化水素の水蒸気改質による水素製造装置であれば、炭化水素の水蒸気改質触媒(単に改質触媒ともいう。)として利用されるニッケルを挙げることができる。多孔質支持体の具体例として、ニッケルとイットリア安定化ジルコニアとの混合物を主成分とする多孔質焼結体(Ni−YSZサーメットという。)、ニッケルを付加した多孔質セラミックス、ニッケルを付加した多孔質ガラス等を挙げることができる。合成ガスや水性ガスを原料とする水素製造装置であれば、多孔質支持体として鉄やクロム成分等を触媒成分として付加した多孔質セラミックスや多孔質ガラス等を挙げることができる。なお、触媒成分は、原料ガスおよび所望の反応によって適宜選択することができる。
ニッケルを付加した多孔質支持体、特にNi−YSZサーメットにおいて、このNi−YSZサーメット中のNi成分の含有量は、改質触媒としての性能、支持される水素透過膜を形成する材料、及び、水素透過膜との熱膨張率等の各種条件を考慮して決定される。例えば、Ni成分の含有量は、このNi−YSZサーメット全体に対して、1〜99質量%、好ましくは30〜85質量%、さらに好ましくは50〜70質量%とすればよい。また、水素透過膜がパラジウムまたはパラジウム−銀合金を含む材料で形成されている場合には、この水素透過膜の熱膨張係数は、その水素透過膜に吸蔵しうる水素ガス量に依存して、10×10−6〜16×10−6/℃の間で変化する。そこで、Ni−YSZサーメット中のNi成分の含有量を調整すれば、このNi−YSZサーメットの熱膨張係数を、水素透過膜の熱膨張係数に近い値、9×10−6〜17×10−6/℃に調整することができる。これにより、水素製造装置の使用中における温度変化によって発生する熱応力を低減させることができる。多孔質支持体中の金属成分を、少なくしすぎると触媒作用が不十分となり易く、多くしすぎると多孔質支持体の高温での強度が低下する場合がある。
多孔質支持体は、その材料となる成分の粒子を混合して成形し焼結して作ることができる。例えば、Ni−YSZサーメットは、Ni粒子またはNiO粒子とイットリア安定化ジルコニア(YSZともいう。)粒子とを混合、成形し、得られた成形体を焼成し、触媒として使用する前に高温の水素で還元することにより触媒作用を持つNi−YSZサーメットとされる。すなわち、多孔質支持体は、水素製造装置が使用されるときに触媒機能を有していればよく、必ずしも多孔質支持体を形成するために焼成した直後に改質触媒機能を有する必要はない。成形にあたっては、混合粒子中にバインダや気孔形成用のカーボンなどを加えておくこともできる。焼成条件は、焼成される材料の融点や粒径により異なるが、800〜1500℃で0.5〜48時間が好ましい。
多孔質支持体は、その気孔率及び平均気孔径が適切に制御されていることが好ましい。多孔質支持体の気孔率は、10〜85%であることが好ましい。気孔率が10%未満であると、多孔質支持体中を原料ガスが速やかに流れず、圧力損失が大きくなることがあり、特に炭化水素の水蒸気改質用の触媒を兼ねる多孔質支持体の場合には、炭化水素を十分に改質できないことがある。一方、多孔質支持体の気孔率が85%を超えると、支持体としての強度が低下することがある。ここでいう気孔率は、アルキメデス法によって測定したときの値として定義される。多孔質支持体の気孔率は、支持体としての強度、原料ガス、生成ガスおよびオフガスが多孔質支持体を通過する際の圧力損失等を勘案して適切に制御する。
多孔質支持体の気孔の平均気孔径は0.05〜30μmであることが好ましい。この平均気孔径が0.05μm未満であると、多孔質支持体中を原料ガス、生成ガスおよびオフガスが速やかに流れず、圧力損失が大きくなったり、原料ガスを十分に改質できないことがある。一方、平均気孔径が30μmを超えると、支持体としての十分な強度が保てないことがある。ここで、多孔質支持体における気孔の平均気孔径は、表面を電子顕微鏡例えば走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察して、気孔の開口を円に近似して求められる開口径を、算術平均して算出した値である。多孔質支持体の気孔率及び平均気孔径を前記範囲に制御するには、多孔質支持体を形成する材料として用いられる粉末の粒径、粒径分布及び/又は焼成温度を適宜調整すればよい。
多孔質支持体の形状は特に限定されない。多孔質支持体は、例えば、板状、両端が開口した中空の円筒状または多角形筒状、両端が開口した中空のU字管状、両端が開口した中空の螺旋管状、一端が開口し他端が閉塞した中空の円筒状または多角形筒状等とすることができる。多孔質支持体の大きさは取付けられるメンブレンリアクタ等の大きさに応じて決定すればよい。図4に示すメンブレンリアクタは水素製造装置1を一本だけ備えているが、通常は多数本の水素製造装置を並べて隔壁8に取り付ける場合が多い。水素製造装置は多孔質支持体の表面に密着層、バリア層を介して水素分離膜を形成したものであり、水素製造装置の形状は多孔質支持体の形状とほぼ同じである。
密着層は、多孔質支持体とバリア層との間に設ける。密着層は、多孔質支持体とバリア層との密着性を向上し、バリア層の表面状態を均一にし、バリア層の表面状態に起因する水素透過膜の欠陥を少なくし、水素透過膜のバリア層への密着性をよくする。その結果、水素透過膜を薄く形成することができ、水素透過性能を向上させることができる。密着層は、多孔質支持体の一部であると考えてもよく、多孔質支持体と類似の材料成分で形成することができる。密着層が多孔質支持体と異なるのは、その熱膨張率である。密着層の熱膨張率は、上述のように多孔質支持体の熱膨張率とバリア層の熱膨張率との間の値である。そして、密着層は多孔質支持体側からバリア層側に向かって熱膨張率が減少していることが好ましい。材料組成の面から見ると、密着層は多孔質支持体中の触媒金属と同じ触媒金属を多孔質支持体よりも少ない組成で含んでいる。そして、好ましくは多孔質支持体側からバリア層側に向かって触媒金属含有量が減少している。さらに、好ましくは、密着層は多孔質支持体に比べて平均気孔径が小さい点である。このような密着層は、その表面に存在する気孔の平均気孔径が0.05〜10μmであることが好ましい。平均気孔径が0.05μm未満であると、ガスの透過を妨げることがあり、一方、10μmを超えると、密着層上に形成されるバリア層の表面状態を効果的に改善できないことがある。密着層の表面における気孔の平均気孔径は、0.05〜8μmであることが好ましく、0.05〜7μmであることがさらに好ましい。ここで、多孔質支持体における気孔の平均気孔径は、表面を電子顕微鏡例えば走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察して、気孔の開口を円に近似して求められる開口径を、算術平均して算出した値である。
密着層は、多孔質支持体と同じ金属成分の含有量を減らした材料を用いてスラリーを作り、焼結前または焼結後の多孔質支持体の表面に、ディップコート法、スプレー吹き付け法、印刷法等の方法によって成形し、この成形体を焼結すればよい。焼結条件は上述の多孔質支持体と同様である。密着層は、バリア層の表面状態を改善でき、バリア層の熱応力による多孔質支持体からの剥離が防げれば、その層厚は特に限定されず、例えば、0.1μm以上にすることができる。密着層の層厚が、0.1μm未満であると、熱応力によるバリア層の歪や剥離が起こったり、バリア層の表面状態を効果的に改善できない場合がある。一方、密着層の膜厚の上限は特に限定されない。その膜厚は、例えば、100μmに調整することができる。密着層の表面には、バリア層が形成され、さらにその表面に水素透過膜が形成されて、水素製造装置となる。
バリア層は多孔質の層であり、多孔質支持体中に存在するニッケルなどの金属成分の影響から水素透過膜の性能を保護するために設けられる。すなわち、多孔質支持体や密着層の表面に直接水素透過膜を形成すると、高温での使用中にその界面において、多孔質支持体を形成する金属成分、例えば多孔質支持体中の触媒成分であるニッケルと、水素透過膜を形成する金属成分、例えば水素透過膜中の成分であるパラジウムのような金属成分とが相互に拡散し合い、互いに性能低下を来たすことがある。そこで、多孔質支持体と水素透過膜との間にバリア層を介在させることにより、多孔質支持体を形成する金属成分と水素透過膜を形成する金属成分とが相互に拡散することを防ぎ、水素透過膜の水素透過性能および多孔質支持体の触媒機能を維持する。したがって、バリア層は、多孔質支持体を形成する材料の金属成分と水素透過膜を形成する材料の金属成分との相互拡散を防ぎ、かつ、水素ガスが流通できる多孔質材料で形成されていればよく、例えば、多孔質な無機酸化物等によって、形成される。無機酸化物としては、ジルコニア、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、又は、これらの混合物もしくは化合物等が挙げられる。通常、バリア層は、多孔質支持体の触媒成分を除いた材料、例えばイットリア安定化ジルコニアの多孔質層として形成する場合が多い。
バリア層は、上記材料を用いて、焼結前または焼結後の密着層を形成してある多孔質支持体上に、例えば、ディップコート法、スプレー吹き付け法、印刷法等によって上記材料で作ったスラリーから薄層を成形し、これを焼結して形成することができる。あるいは、多孔質支持体表面の密着層中の一部から触媒金属を溶解除去してもよい。触媒金属の溶解除去は密着層を少し厚め、例えば40μmに形成して、密着層表面のバリア層の形成予定部分、例えば20μmの厚さから多孔質支持体中の成分である金属を溶媒や反応剤を用いて溶出させればよい。このとき用いられる溶媒や反応剤としては、金属を溶出できるものであれば、特に限定されない。例えば、密着層および多孔質支持体が前記Ni−YSZサーメットで形成されている場合には、密着層の表面近傍に存在するNiを硫酸や塩酸などの酸溶液を用いて溶出させればよい。バリア層は、多孔質支持体および密着層を形成する材料成分と水素透過膜を形成する材料成分とが相互に拡散しない程度であれば、その層厚は特に限定されず、例えば、5〜100μmに調整される。バリア層の層厚が5μm未満であると、多孔質支持体および密着層を形成する材料成分と水素透過膜を形成する材料成分との相互拡散を防ぐことができないことがあり、一方、100μmを越えると、水素透過部材のスムーズな水素透過を妨げたり、多孔質支持体の水素製造機能を低下させる恐れがある。
水素透過膜は、原料ガスまたは反応ガスの成分であるメタン、水蒸気、水素、炭酸ガス、一酸化炭素などの混合ガスから水素ガスのみを選択的に透過する膜である。水素透過膜は、多孔質支持体の表面に密着層、バリア層を介して形成されている。水素透過膜は、例えば、多孔質支持体が円筒体に成形されている場合には、多孔質支持体の外表面のほぼ全体を覆うように形成されていてもよく、この多孔質支持体の内表面に形成されていてもよい。図4には、水素透過膜を多孔質支持体の外表面のほぼ全体に形成した水素製造装置を備えたメンブレンリアクタの例を示した。多孔質支持体が板状であればその片側の表面に水素透過膜が形成されていればよい。多孔質支持体の表面に水素透過膜を形成した水素製造装置は、上記混合ガス中の水素ガスのみを多孔質支持体側から水素透過膜の表面側へと透過させ、他のガスから分離する。図4に示すように、製品ガス流路10側には多孔質支持体表面が露出していないことが好ましい。多孔質支持体表面が製品ガス10側に露出していると、この部分から水素ガス以外の混合ガスの成分が製品ガス10側に漏出し製品ガス中の水素純度を下げてしまう。さらに、水素ガスが透過していく流通路としての水素透過膜の断面積は広いことが好ましい。このため、図4に示す多孔質支持体の外側表面のほぼ全体に水素透過膜を形成した水素製造装置が好ましい。
この水素透過膜を形成する材料としては、混合ガス中の水素ガスのみを選択的に透過する膜であればどのようなものでも良いが、パラジウム、パラジウム合金、1989年改訂の周期律表第5族元素、この元素を含む合金等の金属が好適に用いられる。前記第5族元素としては、例えば、V、Nb、Ta等が挙げられる。パラジウム合金及び前記第5族元素を含む合金に含まれるパラジウム及び前記第5族元素以外の金属としては、例えば、1989年改訂の周期律表第3族元素(ランタノイド元素を含む)、第8族元素、第9族元素、第10族元素、第11族元素又はこれらの2種以上の組み合わせ等が挙げられる。周期律表第3族元素としてはY等が挙げられ、ランタノイド元素としてはCe、Sm、Gd、Dy、Ho、Er、Yb等が挙げられ、第8族元素としてはRu等が挙げられ、第9族元素としてはRh、Ir等が挙げられ、第10族元素としてはPt等が挙げられ、第11族元素としてはCu、Ag、Au等が挙げられる。
水素透過膜は、多孔質支持体の表面に、例えば、真空蒸着法、無電解めっき法、スパッタリング法等によって形成される。水素透過膜を形成する際、水素透過膜の材料成分をバリア層の表面の気孔内に入り込ませるように、水素透過膜を形成すると、気孔内に入り込んだ水素透過膜成分のフック効果により、バリア層上に水素透過膜を強固に形成することができ、水素透過膜の耐久性も向上する。水素透過膜の厚さは、要求される水素分離性能、例えば水素ガスの透過速度や選択性、水素透過膜の機械的強度等によって決定されるから、一概に決定されるものではないが、例えば、1〜30μmに調整することが好ましい。
通常、この発明の水素分離装置は図4に示すメンブレンリアクタなどに配置されて利用される。図4に示すメンブレンリアクタを簡単に説明すると、外筒7の中に隔壁8によって支持された水素製造装置1がある。外筒7および隔壁8は、900℃を超えない使用条件であれば、強度、緻密性、耐熱衝撃性等の点から金属製が好ましい。金属としては鉄、鋼鉄、銅、鉄、ニッケル、銅、クロミウム、アルミニウム、ボロン、シリコン、モリブテン、タングステン、又は、これらの合金、ステンレス、インコネル、コバール等が挙げられる。
このメンブレンリアクタを、例えば、炭化水素の水蒸気改質による水素製造に使用する場合は、ニッケル系の触媒成分を多孔質支持体の成分として加え、500〜900℃で反応させることが好ましい。そうすれば、改質触媒の水素製造性能も水素透過膜の水素分離性能も充分に発揮できる。また、メタノールなどのアルコールを水蒸気改質する場合は、同じ触媒成分の多孔質支持体を用いて反応温度は250〜600℃とすればよい。合成ガスや水性ガスからの水素製造では、鉄系やクロム系の触媒成分を多孔質支持体中に含ませて200〜500℃で反応させることができる。炭化水素の水蒸気改質による水素製造においては、例えば、原料ガスにメタンを用いた場合、その改質温度が600℃で、原料中のカーボン原子に対するスチーム分子の比率(通常S/Cと称する。)が3.0である場合には、58%程度のメタン転化率とすることができ、通常用いられる粒状の水蒸気改質触媒とほぼ同等の水蒸気改質性能である。なお、このような反応と水素分離が同時に行われる本発明の水素製造装置においては、反応と同時に生成ガス中から水素が分離されるので、反応が熱力学的な平衡の制約を受けずに原料の転化率を高めることができる。このため、非常に高い効率で純水素の製造が出来る。
(実施例1)
水300質量部中で、NiO粉(平均粒径0.5μm)60質量部と、イットリア8モル%を固溶させたジルコニア(以下、単に「8YSZ」と称する。)粉(平均粒径0.5μm)40質量部と、造孔剤として人造黒鉛粉20質量部と、バインダーとしてアクリル系共重合体5質量部とを混合してスラリーAを調製した。このスラリーAをスプレードライによって造粒した。得られた造粒体を、中空の円筒状に加圧成形し、脱脂処理した後、1400℃で1時間焼成して、NiO−8YSZサーメットで形成された多孔質支持体を作成した。この多孔質支持体の大きさは、外径9mm、内径7mm、長さ100mmであった。この多孔質支持体の気孔率、並びに、その表面における気孔の平均気孔径および単位面積当たりの気孔の個数を前記した各方法で求めた。その結果、この多孔質支持体1の気孔率は48%であり、平均気孔径は16μmであり、単位面積当たりの気孔の個数は1.3×10個/cmであった。この多孔質支持体を多孔質支持体Xとした。
エタノール300質量部中で、上記のNiO粉20質量部と、8YSZ粉80質量部と、人造黒鉛粉20質量部と、バインダー5質量部とを混合してスラリーCを調製した。このスラリーCを、上記の多孔質支持体Xの外表面にディップコーティングした。焼成後の層厚が約20μmになるようにスラリーCのディップコーティングを数回繰り返した。このスラリーCをディップコーティングした多孔質支持体Xを1400℃で1時間焼成して密着層を形成した。この密着層の表面における、気孔の平均気孔径は2.7μmであり、気孔の個数は8.2×10個/cmであった。この密着層を形成した多孔質支持体Xを密着層形成多孔質支持体U1とした。
エタノール300質量部中で、上記の8YSZ粉100質量部と、バインダー5質量部とを混合してスラリーDを調製した。このスラリーDを、上記の密着層形成多孔質支持体U1の外表面にディップコーティングした。この操作を焼成後の層厚が約20μmになるように数回繰り返した。このスラリーDをディップコーティングした密着層形成多孔質支持体U1を1300℃で1時間焼成してバリア層を形成した。このバリア層の表面における気孔の平均気孔径は0.2μmであった。このバリア層を形成した密着層形成多孔質支持体U1をバリア層形成多孔質支持体V1とした。
バリア層形成多孔質支持体V1を、エタノール中で30分間超音波洗浄した後、120℃で乾燥し、無電解めっきによってバリア層の表面に水素透過膜を形成した。無電解めっきは、先ず、バリア層形成多孔質支持体V1の円筒内に溶液が侵入しないように開口部をゴム栓で閉じておき、これをSnCl・2HOを含むHCl水溶液に1分間浸漬した後、蒸留水で洗浄し、PdClを含むHCl水溶液に1分間浸漬してから蒸留水で洗浄する。このSnCl・2HO処理及びPdCl処理を3回繰り返す。次いで、Pd(NHCl、EDTA・2Na、アンモニア水及びヒドラジン水溶液からなるめっき液を作成し、上記処理をしたバリア層形成多孔質支持体V1を、常圧下、50℃のめっき液に、めっき厚が1.5μmとなるまで浸漬する。その後、バリア層形成多孔質支持体X2の円筒内部を減圧して、再度めっき液に浸漬しめっき厚を合計9.0μmとした。円筒内部の減圧には、開口部に取り付けたゴム栓にテフロン(登録商標)製チューブを接続して減圧した。この処理によって、バリア層形成多孔質支持体V1の表面に9μmの厚さを有する水素透過膜を形成した。この水素透過膜を形成したバリア層形成多孔質支持体V1を水素製造装置Z1とした。
(実施例2)
実施例1で用いたNiO粉40質量部と、8YSZ粉60質量部と、人造黒鉛粉20質量部と、バインダー5質量部とをエタノール300質量部中で混合してスラリーBを調製しておき、このスラリーBを実施例1において作成した多孔質支持体Xの外表面に、焼成後の層厚が約10μmになるようにディップコーティングした。このスラリーBをディップコーティングした多孔質支持体Xの外表面に、さらに、実施例1で調製したスラリーCを焼成後の層厚が約10μmになるようにディップコーティングした。これを実施例1と同様にして焼成し、密着層を形成した。これを密着層形成多孔質支持体U2とした。この密着層形成多孔質支持体U2に、実施例1と同様にしてバリア層を形成した。このバリア層を形成した密着層形成多孔質支持体U2をバリア層形成多孔質支持体V2とした。さらに、このバリア層形成多孔質支持体V2に実施例1と同様にして水素透過膜を形成した。この水素透過膜を形成したバリア層形成多孔質支持体V2を水素製造装置Z2とした。
(実施例3)
実施例1において作成した密着層形成多孔質支持体U1の外表面に、スラリーDを焼成後の層厚が約10μmになるようにディップコーティングした。さらに、このスラリーDをディップコーティングした密着層形成多孔質支持体U1の外表面に、エタノール300質量部中で、MgO粉(平均粒径0.5μm)40質量部と、実施例1で使用した8YSZ粉60質量部と、人造黒鉛粉20質量部と、バインダー5質量部とを混合して調製したスラリーEを、焼成後の層厚が約10μmになるようにディップコーティングした。その後、このスラリーEをディップコーティングした密着層形成多孔質支持体U1を実施例1と同様にして焼成し、バリア層を形成した。これをバリア層形成多孔質支持体V3とした。このバリア層形成多孔質支持体V3の外表面に実施例1と同様にして水素透過膜を形成した。この水素透過膜を形成したバリア層形成多孔質支持体V3を水素製造装置Z3とした。
(比較例1)
実施例1において作成した多孔質支持体Xの外表面に、直接スラリーDを焼成後の層厚が約20μmになるようにディップコーティングし、実施例1と同様にして焼成し、バリア層を形成した。これをバリア層形成多孔質支持体V4とした。このバリア層形成多孔質支持体V4の外表面に実施例1と同様にして水素透過膜を形成した。この水素透過膜を形成したバリア層形成多孔質支持体V4を水素製造装置Z4とした。
(熱膨張率の測定)
スラリーA〜Eと同様の組成で、それぞれ原料を調整後、プレスし、1400℃で1時間焼成した。焼成後に20mm×3mm×3mmの角柱となるように加工し、熱膨張率測定用の試験片1〜5を作成した。この試験片1〜5につき30〜600℃で線熱膨張率を測定した。線熱膨張率の測定結果を表1に示す。なお、水素透過膜はパラジウム金属の線熱膨張率とした。
Figure 0005057684
(水素製造装置の耐熱性評価)
実施例1〜3および比較例1で作成した水素製造装置Z1〜Z4を、それぞれ恒温槽中で600℃で1時間加熱した後、室温で5時間放置する加熱冷却サイクルを10回繰り返した。その後、水素製造装置Z1〜Z4を取り出し、水素製造装置の開口部断面の各層間の剥離状況、外表面の水素分離膜の亀裂および変形を目視で評価した。評価結果を表2に示した。
Figure 0005057684
上記の評価結果から判るように、比較例の水素製造装置Z4に比べ、実施例1〜3、特に実施例2,3の水素製造装置は加熱、冷却のサイクルに対して強固な構造であることがわかる。
本発明の水素製造装置は、水素燃料電池をはじめとして工業用の高純度水素製造用にも利用可能である。
図1は、本発明の水素製造装置の断面構造図の一例である。 図2は、本発明の水素製造装置の断面構造図の一例である。 図3は、本発明の水素製造装置の断面構造図の一例である。 図4は、本発明の水素製造装置を組み込んだ水素製造システムの断面図である。 図5は、従来の水素分離装置を組み込んだ水素分離システムの断面図である。 図6は、図1の構造に対応する多孔質支持体、密着層およびバリア層の断面電子顕微鏡写真(SEM)、並びにそのエネルギー分散型X線分析装置(EDS)の解析図である。図6(a)は電子顕微鏡写真、図6(b),図6(c),図6(d)はそれぞれNi,Zr,Y元素のEDSの解析図である。 図7は、図3の構造に対応する多孔質支持体、密着層およびバリア層の断面電子顕微鏡写真(SEM)、並びにそのエネルギー分散型X線分析装置(EDS)の解析図である。図7(a)は電子顕微鏡写真、図7(b),図7(c),図7(d),図7(e)はそれぞれNi,Zr,Y,Mg元素のEDSの解析図である。
符号の説明
1:水素製造装置, 2:多孔質支持体, 3,3a,3b:密着層,
4:バリア層, 4a:第1バリア層, 4b:第2バリア層,
5:水素透過膜, 7:外筒, 8:隔壁,
9:原料ガス流路, 10:製品ガス流路, 11:原料ガス入り口,
12:製品ガス出口, 13:オフガス出口, 14:メンブレンリアクタ,
15:水素分離装置, 16:水素分離システム

Claims (4)

  1. 多孔質支持体の表面に、密着層、バリア層、水素透過膜が順次形成されており、多孔質支持体は触媒金属成分を含み、水素透過膜は水素透過性金属を含み、バリア層は前記触媒金属成分を含まない層を有する多孔質層であり、密着層は多孔質支持体の熱膨張率とバリア層の熱膨張率との間の熱膨張率を持つ多孔質層である水素製造装置。
  2. 多孔質支持体の表面に、密着層、バリア層、水素透過膜が順次形成されており、多孔質支持体は触媒金属成分を含み、水素透過膜は水素透過性金属を含み、バリア層は前記触媒金属成分を含まない層を有する多孔質層であり、密着層は多孔質支持体よりも少ない前記触媒金属成分を含む多孔質層である水素製造装置。
  3. 密着層が複数の層からなり、バリア層に近い側の密着層の熱膨張率が、多孔質支持体に近い側の密着層の熱膨張率よりも小さい請求項1または2に記載の水素製造装置。
  4. 密着層中の熱膨張率が、密着層の多孔質支持体側からバリア層側に向かって連続的に減少している請求項1または2に記載の水素製造装置。
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