JP5055857B2 - Cvd装置 - Google Patents

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Description

本発明は、CVD装置に関し、特に帯材や線材等に対して、高い生産性の下でのCVD処理を可能ならしめようとするものである。
CVD法(化学的気相析出法)とは、加熱された基材上に、原料物質を気相の状態で供給し、化学反応により基材表面に元素あるいは化合物を析出させる方法である。ここで、基材とは、CVD処理が施される被処理材を指す。
かようなCVD法としては、例えば
(1) TiCl4とH2とN2(あるいはNH3)の混合ガスを、加熱された基材上に供給し、基材上にTiN膜を成膜する方法、
(2) TiCl4とH2とCH4(あるいはC2H6)の混合ガスを、加熱された基材上に供給し、基材上にTiC膜を成膜する方法、
(3) TiC14とH2の混合ガスを、加熱された炭素含有基材上に供給し、基材上にTiC膜を成膜する方法、
(4) SiC14とN2の混合ガスを、加熱された鉄あるいは鉄基合金基材上に供給し、SiC14と鉄の化学反応により鉄基材表面から鉄基材中にSiを浸透させる方法
など、多数の例が知られている。
上記した各種CVD法のうち、(1), (2)はガスの化学反応による成膜方法、(3)はガスと基材中の元素の化学反応による成膜方法、(4)はガスと基材との反応により、基材表面から基材中に元素を浸透させる方法である。
これらは、いずれもCVD法であり、原料ガスとして供給される気相中の物質が関与する化学反応が加熱された基材表面で起こり、固相あるいは固溶体が生成する。
従来、CVD法は、工業的には、工具の刃先や電子部品のように、非常に小さな基材表面に成膜処理を施すことを目的として実施されてきた。しかしながら、近年、帯材や線材のような、大面積あるいは長尺の基材に対するCVD処理のニーズが高まってきた。
例えば、上記(4)に示した方法を用いて、鋼帯を連続的にCVD炉中に通し、連続的にCVD処理を行うことにより、高周波磁気特性に優れた高珪素鋼帯を製造する方法が提案されている(特許文献1)。
また、上記(1)に示した方法を用いて、方向性電磁鋼板の鋼帯コイルに、連続的にCVD処理を施してTiN膜を成膜し、極めて鉄損の低い方向性電磁鋼板の鋼帯を得る方法が提案されている(特許文献2)。
特開平10−330908号公報 特開2005−256075号公報
また、長尺の帯材や線材にCVD処理を施すための設備としては、図1に示すような、炉内に基材1を支持する搬送ロール2を有する横型CVD炉3や、図2に示すような、炉内に基材1を支持するロールがない縦型CVD炉4が知られている。なお、図2中、番号5はディフレクタロールである。
CVDプロセスにおいては、基材温度の上昇と共にCVDにおける化学反応の反応速度が増加し、短時間でのCVD処理が可能となる。従って、生産性の観点からは、基材温度はできるだけ高いことが好ましい。
しかしながら、基材の機械的強度は温度の上昇と共に低下する。そのため、図1に示したような横型CVD炉3では、基材1の温度が高くなると、ロールのキズや付着物により基材表面に疵が発生する。
また、図2のような縦型CVD炉4では、疵発生の懸念はないものの、基材1の温度が高くなると、図2中Aで示されるような、基材自重による荷重と基材温度が共に高くなる部分において、基材の塑性変形や破断が発生する。
本発明は、上記の課題を有利に解決するもので、CVD処理に際し、基材表面での疵発生や基材の塑性変形・破断などを生じることなしに、帯材や線材に対して高い生産性の下でCVD処理を施すことができるCVD装置を提案することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の課題を解決するために種々検討を重ねた結果、CVD炉の形状を、図3に示すようなU型炉、あるいは図4に示すようなJ型炉とすることにより、基材表面での疵発生や基材の塑性変形・破断などのおそれなしに、基材温度を大幅に上昇させることができ、その結果、生産性が格段に向上することの知見を得た。
本発明は上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)U字形またはJ字形に懸垂した基材の自重を支える一対の支持体を備え、この懸垂した基材に対してCVD処理を施すU型炉またはJ型炉からなるCVD炉を該支持体対の間に配置することを特徴とするCVD装置。
(2)前記支持体間の水平方向の距離をs、CVD炉内の基材の最下点から高い方の支持体までの距離をh 1 、CVD炉内の基材の最下点から低い方の支持体までの距離をh 2 としたとき、これらs,h 1 およびh 2 が次式
2 /h 1 ≧0.2
s/h 1 ≦5.0
の関係を満足することを特徴とする前記(1)記載のCVD装置。
)前記基材を連続的にCVD炉に供給する機構を備えることを特徴とする上記(1)または(2)記載のCVD装置。
本発明では、懸垂した基材の自重を一対の支持体すなわち2ヶ所で支えるようにしたので、同じ炉長の縦型CVD炉と比較して、基材に負荷される荷重が大幅に軽減されるので、基材温度を上昇させることが可能となり、その結果、生産性を著しく向上させることができる。
また、本発明では、支持体対の間にCVD炉を配置したので、炉内ロールで基材を支持する横型CVD炉において懸念された基材表面での疵発生を防止することができる。
以下、本発明を図面に従い具体的に説明する。
図3に、本発明に従うCVD装置の好適例を模式で示す。この例は、CVD炉の形状をU型炉6とした場合で、図中、番号7a,7bが懸垂した基材の自重を支える一対の支持体である。
同図に示したとおり、基材1を支持体7a,7bの間で懸垂させ、この懸垂した基材に対してCVD処理を施す仕組みにしたので、炉内には、基材を支持するための搬送ロールは不要となる。
従って、かような搬送ロールに起因した基材表面での疵発生はない。
また、懸垂した基材の自重を一対の支持体で支えるようにしたので、同じ炉長の縦型CVD炉と比較した場合、基材に負荷される荷重が大幅に軽減される。
このため、基材の処理温度を上げることが可能となり、その結果、化学反応速度を向上させて、生産性を向上さることができる。
次に、図4に、本発明に従う好適CVD装置の別例を模式で示す。この例は、CVD炉の形状をJ型炉8とした場合である。
このJ型炉の場合も、炉内には、基材を支持するための搬送ロールは必要ないので、かような搬送ロールに起因した基材表面での痕発生はない。
また、図3の場合と同様、一対の支持体で懸垂した基材の自重を支えるので、やはり基材に負荷される荷重を軽減することができる。
ところで、図4に示したところにおいて、支持体間の水平方向の距離をs、CVD炉内の基材の最下点から高い方の支持体までの距離をh1、CVD炉内の基材の最下点から低い方の支持体までの距離をh2としたとき、これらs,h1およびh2の大きさは
2/h1≧0.2
s/h1≦5.0
の関係を満足する範囲とすることが望ましい。
というのは、h2/h1<0.2になると、図4中Aの部分の荷重が高くなりすぎて、基材の変形や破断のおそれが生じるからである。
また、s/h1>5.0では、図4中のAの部分において、水平方向の力が大きくなるが、基材にかかる荷重は、基材の自重と水平方向の力の合力となるため、やはり基材の変形や破断のおそれが生じるからである。
なお、このs/h1≦5.0の関係は、図3に示したU型炉の場合も、満足させることが好ましいことは言うまでもない。
本発明において、支持体としては、ロール単体、基材を挟む2本のロール、ブライドルロール、キャタピラ式ブライドル装置など、基材の自重を支えることができるものであれば、いずれもが適合する。
なお、CVD処理における基材の加熱方法については、特に制限はなく、電気ヒーター、ラジアントチューブなど放射による方法、交流磁界を基材に発生し基材を加熱する誘導加熱による方法、基材に電流を流す通電加熱による方法など、基材を加熱することができる機構であればいずれもが適合する。
また、本発明では、帯材や線材といった長尺の基材を効率よく、連続的にCVD処理するために、基材を連続的にCVD炉内に供給する機構を付与し、連続CVD装置とすることもできる。
このためには、例えば、CVD装置の入側に、ペイオフリールなど予め巻き取られた帯材や線材を払い出す装置を配置する一方、CVD装置の出側には、テンションリールなどCVD処理された後の帯材や線材を巻き取る装置を配置すればよい。この場合、さらに、ルーパーや溶接機などを設置することもできる。
実施例1
CVD炉としては、図4に示した構造になるJ型炉を用いた。炉の各寸法は、h1=20m、h2=15m、s=3mである。このJ型CVD炉を用いて、厚み:0.2mm、幅:500mm、長さ:1000mの方向性電磁鋼板の鋼帯コイルに、0.5μm厚みのTiNを成膜した。
このJ型CVD炉を用いた場合、基材を変形させることのない最高基材温度は1200℃であり、このときの通板速度は10m/分であった。なお、この処理条件下において、基材表面での疵発生はなかった。
比較例1
比較のため、実施例1と同じ方向性電磁鋼板の鋼帯コイルに、図2に示した構造になる縦型CVD炉(h=35m)を用いて、0.5μm厚みのTiNを成膜した。
この縦型CVD炉を用いた場合、基材を変形させることのない最高基材温度は1100℃であり、また0.5μmの厚みのTiN膜を成膜するための通板速度は3m/分であった。
両者の生産性を比較すると、10/3≒3.3(倍)であり、本発明のCVDを用いた場合には、従来の縦型CVD炉を用いた場合と比較して、生産性を格段に向上できることが分かる。
実施例2
基本構造は、図4に示した構造になり、炉の各寸法を表1に示すとおり種々に変化させたU型炉あるいはJ型炉を用いて、実施例1と同様なCVD処理を行い、方向性電磁鋼板の鋼帯コイル表面に0.5μm厚みのTiNを成膜した。
各条件における、基材を変形させることのない最高基材温度および通板速度について調べた結果を表1に併記する。
また、表1には、各条件下における生産性を、比較例1の生産性を1とした場合の相対比で示す。
Figure 0005055857
同表に示したとおり、CVD炉としてJ型炉またはU型炉を用いた場合においても、炉の各寸法が、
2/h1≧0.2
s/h1≦5.0
を満足している場合に、とりわけ良好な生産性が得られていることが分かる。
従来の横型CVD炉を示す模式図である。 従来の縦型CVD炉を示す模式図である。 本発明に従うU型CVD炉を示す模式図である。 本発明に従うJ型CVD炉を示す模式図である。
符号の説明
1 基材
2 搬送ロール
3 横型CVD炉
4 縦型CVD炉
5 ディフレクタロール
6 U型CVD炉
7a,7b 支持体
8 J型CVD炉

Claims (3)

  1. U字形またはJ字形に懸垂した基材の自重を支える一対の支持体を備え、この懸垂した基材に対してCVD処理を施すU型炉またはJ型炉からなるCVD炉を該支持体対の間に配置することを特徴とするCVD装置。
  2. 前記支持体間の水平方向の距離をs、CVD炉内の基材の最下点から高い方の支持体までの距離をh 1 、CVD炉内の基材の最下点から低い方の支持体までの距離をh 2 としたとき、これらs,h 1 およびh 2 が次式
    2 /h 1 ≧0.2
    s/h 1 ≦5.0
    の関係を満足することを特徴とする請求項1記載のCVD装置。
  3. 前記基材を連続的にCVD炉に供給する機構を備えることを特徴とする請求項1または2記載のCVD装置。
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