JP2004253704A - 堆積膜の形成方法、半導体素子基板の製造方法及び光起電力素子の製造方法 - Google Patents

堆積膜の形成方法、半導体素子基板の製造方法及び光起電力素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】後工程などにおける傷の発生、外観不良、電極不良などを防止し、高品質の半導体素子や光起電力素子を歩留まりよく製造する。
【解決手段】ロール・ツー・ロール方式によって帯状基板上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法であって、堆積膜形成過程における変形応力によって生じる前記帯状基板の基板長手方向及び幅方向のカール変形を、外部応力を加えることによって同時に除去する工程を有することを特徴とする堆積膜形成方法を提供する。
【選択図】 図11

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、堆積膜形成方法、半導体素子基板の製造方法及び光起電力素子の製造方法に関し、より詳細には、カール変形除去工程を組み込むことにより、カール変形のない光起電力素子等の半導体素子を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、太陽電池(光起電力素子)による太陽光発電の実用化に向けて様々な研究開発が行われている。太陽電池を電力需要を賄うものとして確立させるためには、使用する太陽電池の光電変換効率が十分に高く、信頼性に優れたものであり、且つ大量生産が可能であることが要求される。
【0003】
アモルファスシリコン(以下「a−Si」と記す)太陽電池は、結晶系Si等を用いて作製される太陽電池と比較して、低コストで生産可能であり、量産性に富んでいることなどから注目されている。その理由は、原料ガスとしてシラン等の容易に入手できるガスを使用し、これをグロー放電分解して、金属シートや樹脂シート等の比較的安価な帯状基板上に半導体膜等の堆積膜の形成が可能なためである。そして、a−Si太陽電池の生産方法、生産装置について各種の提案がなされている。
【0004】
図1はシングル型a−Si太陽電池の模式的断面図の一例である。図1において、101は基板、102及び103は裏面反射層(102は金属層、103は透明酸化物層)、104〜106は半導体層(104はn型半導体層、105はi型半導体層、106はp型半導体層)、107は透明導電体層、108は集電電極である。101〜107を便宜上、太陽電池スラブ(以下「スラブ」と記す)と呼ぶ。
【0005】
a−Si太陽電池を生産するにあたっては、基板101としてロール状に巻かれたステンレス等の導電性帯状基板が好適に使用され、裏面反射層102、103としては、金属層102として反射率の高い銀、アルミニウム、銅等が好適に使用され、透明酸化物層103として、酸化亜鉛、酸化錫等の適度な抵抗を持つ透明酸化物が好適に用いられ、これらはロール・ツー・ロール方式の連続スパッタ装置により成膜される(例えば、特許文献1を参照。)。
【0006】
半導体層の成膜生産装置としては、ロール・ツー・ロール方式の連続プラズマCVD装置が用いられる(例えば、特許文献2を参照。)。当該装置においては、104のn型半導体層、106のp型半導体層はRFプラズマCVD法により成膜され、105のi型半導体層はRFプラズマCVD法或いはマイクロ波(MW)プラズマCVD法により成膜される(例えば、特許文献3を参照。)。マイクロ波は周波数が高いので、RFを使用する場合よりエネルギー密度を高めることができ、低い圧力で効率良くプラズマを発生させ維持させることに適している。そして、堆積膜の特性低下原因となる活性種のポリマライゼーションを防ぎ、高品質の堆積膜が得られるばかりでなく、プラズマ中のポリシラン等の粉末の発生を抑え、且つ成膜速度の飛躍的向上が図られるとされている。近年においては、放電維持が容易で、RFよりも高速高品質膜形成に有利とされるVHFを用いてi型半導体層を形成する試みも盛んになされている。
【0007】
透明導電体層107には可視光に対する透明性と電気伝導性に優れた特性を持つSnO2、In2 O3、ITO(In2 O3+SnO2)膜等が好適に使用され、ロール・ツー・ロール方式の連続式スパッタ装置により成膜される。
【0008】
また集電電極108は、例えば、透明導電体層107堆積後、ロールの状態から所望の大きさのスラブに切断され、後工程である太陽電池モジュール工程ラインを通って銅、銀等をワイヤー付線することにより形成される。
【0009】
ロール・ツー・ロール方式を用いて太陽電池を量産するためには、帯状基板を長尺化、幅広化すれば良く、より低コスト化を目指すのであれば基板の厚みを薄くすることが望まれる。
【0010】
しかしながら、基板を長尺化、幅広化すると、各堆積膜特に裏面反射層、半導体層成膜時にヒーターやプラズマからの加熱のため基板が熱変形しカールするという問題が生ずる。また、基板の厚みを薄くしていくと、各堆積膜の堆積膜応力を受け、カール変形し易くなるという問題が生ずる。かかる問題は、太陽電池に限らず、ロール・ツー・ロール方式で堆積膜を形成する際に多かれ少なかれ生じる。
【0011】
基板がカール変形を起こすと、透明導電体層堆積後の後工程、具体的にはスラブ切断工程やワイヤー付線による集電電極形成工程等の太陽電池モジュール形成工程において、傷の発生や集電電極不良等の問題を生じ、太陽電池の歩留及び外観を著しく悪くする恐れがある。かかる問題は、太陽電池に限らず、他の素子、例えば、センサー等の半導体素子、液晶素子(半導体素子といいえないものも含めて)等を製造する際にも同様に生じうる。
【0012】
帯状基板の非堆積面に外部応力を加えることで、上記のような問題を解決し、外観に優れた半導体素子、とりわけ光起電力素子を歩留良く形成する方法が知られている(例えば、特許文献4を参照。)。また、ウエブのカール量をオンラインで検出し、複数のデカールローラーより成るデカール装置を調整することで、ウエブのカールを矯正する方法も知られている(例えば、特許文献5を参照)。
【0013】
【特許文献1】
特開平6−184745号公報
【特許文献2】
米国特許第4,485,125号明細書
【特許文献3】
特開平3−30419号公報
【特許文献4】
特開平11−317372号公報
【特許文献5】
特開平9−194093号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来のカール矯正方法は、いずれも基本的に基板の長手方向に生ずるカールを矯正することに着目したものであり、基板の幅方向に生ずる基板のカール変形に関しては特に問題であると認識されていなかった。もちろん、従来の矯正方法により、基板の幅方向に生ずる基板の変形が十分小さい条件で半導体素子が形成されるときには、所望の効果を最大限に発揮することが期待できるものである。しかしながら、半導体素子の特性改良・低コスト化等の理由のために、素子作製条件を変化させることがある。発明者らの観察によれば、たとえば、プロセス温度を上昇させた場合、帯状基板の厚みを小さくした場合、素子膜厚(金属層、金属酸化物層、半導体層などの膜厚)を大きくした場合、複数の基本素子(pinセルなど)の間に中間層(インターレイヤー)などの異なる膜特性材料を設けた場合には、堆積膜に残留する膜中応力が増加し、その結果生じる帯状基板のカール変形も増大する傾向が認められている。場合によっては基板の長手方向のみならず、基板の幅方向におけるカールも顕著となる場合があることが判明した。このような場合には、長手方向のみならず、幅方向に生ずるカールも同時に矯正させることが課題として認識されるようになった。
【0015】
本発明は、長手方向のみならず、幅方向のカールも顕著となる条件下で素子作製を行った場合においても、上記のような問題を解決し、外観に優れた半導体素子、とりわけ光起電力素子を歩留良く形成する方法を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ロール・ツー・ロール方式によって帯状基板上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法であって、変形応力の印加によって生じる前記帯状基板の長手方向および幅方向の変形を、該帯状基板の非堆積膜面及び堆積面に外部応力を印加することによって同時に除去する工程を有することを特徴とする堆積膜形成方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、ロール・ツー・ロール方式によって帯状基板上に少なくとも半導体層を堆積する工程を有する半導体素子基板の製造方法であって、変形応力の印加によって生じる前記帯状基板の長手方向および幅方向の変形を、該帯状基板の非堆積膜面及び堆積面に外部応力を印加することによって除去する工程を有することを特徴とする半導体素子基板の製造方法を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、ロール・ツー・ロール方式によって帯状基板上に少なくとも半導体層と透明導電体層とを堆積する工程を有する光起電力素子の製造方法であって、変形応力の印加によって生じる前記帯状基板の長手方向および幅方向の変形を、該帯状基板の非堆積膜面及び堆積膜面に外部応力を印加することによって除去する工程を有することを特徴とする光起電力素子の製造方法を提供する。
【0019】
前記変形応力としては、半導体層、透明導電体層、裏面反射層といった堆積膜を形成する際の熱変形応力や該堆積膜の内部応力が挙げられる。
【0020】
前記帯状基板としてはステンレス等の導電性基板が好ましい。
【0021】
また、前記帯状基板の非堆積膜面への外部応力は前記帯状基板を塑性変形せしめる変形応力であることが好ましい。該非堆積膜面への外部応力はカール矯正機を用いて印加することが好ましく、該カール矯正機としては円筒形ローラー式カール矯正機を用いていることが好ましい。また、該外部応力は、透明導電体層、半導体層、裏面反射層といった堆積膜を形成した後に印加することが好ましい。
【0022】
また、前記帯状基板の堆積膜面への外部応力は、前記帯状基板の非堆積膜面への外部応力が前記帯状基板を塑性変形せしめる変形応力として効果的に作用することを助長する働きがあり、かつ、それ自身が基板幅方向に生じるカール変形を矯正する働きのあることが好ましい。また、前記帯状基板の堆積膜面への外部応力は、堆積膜面上に形成された素子の機能を実質的に阻害することなく印加されることが望ましい。ここで、「素子の機能を実質的に阻害することなく」とは、基板への外部応力印加の前後で素子機能(例えば電気特性)が全く或いはほとんど低下しないことを意味する。具体的には、太陽電池の場合、光電変換効率の低下が相対的に5%以下、開放電圧の低下が2%以下、短絡電流密度の低下が2%以下、曲線因子の低下が3%以下の範囲に制御するのが好ましい。またこのために、堆積膜膜面上に外部応力を印加する際には、完成品の性能に悪影響を与えることが少ない場所(例えば、基板の端部等)に選択的に外部応力を印加することが好ましい。該堆積膜面への外部応力印加には、円筒状、棒状、或いは少なくとも一部が球状を有する加重制御手段を用いることが好ましい。該堆積膜面への外部応力印加方法としては、例えば、円筒棒に作用する重力や円筒棒の自由運動が基板に与える圧力を利用することが好ましい一例として挙げられる。
【0023】
本発明によれば、帯状基板に発生した長手方向および幅方向のカール変形を、非成膜面に塑形変形せしめる外部応力ならびに堆積膜面への外部応力を加えることにより除去する工程を加えることによって、スラブ切断工程やワイヤー付線による集電電極形成工程等の後工程における、傷の発生や集電電極不良等の問題を解消することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
先ず、帯状基板がカール変形する具体例について説明する。例えば、ロール・ツー・ロール方式により導電性帯状基板上に裏面反射層、半導体層、透明導電体層を順次積層して光起電力素子を形成する際、上記導電性帯状基板が受ける変形応力としては、各堆積膜形成時のヒーターやプラズマによる熱変形応力、各堆積膜の膜応力、ロール・ツー・ロール成膜装置のステアリング機構からの外部応力等が挙げられる。以下、各応力について説明する。
【0025】
〈熱変形応力〉
ロール・ツー・ロール方式の連続プラズマCVD装置により、幅356mm、厚さ0.15mmのSUS4302D基板を用い、搬送方向に張力70kgをかけながら、搬送速度635mm/minでnip型半導体層を堆積する工程を例に挙げて説明する。図2に当該装置の模式的概略図を示す。図2において、201は基板送り出しチャンバー、202はn型半導体層形成用RFチャンバー、203はi型半導体層形成用RFチャンバー、204はi型半導体層形成用MWチャンバー、205はi型半導体層形成用RFチャンバー、206はp型半導体層形成用RFチャンバー、207は基板巻き取りチャンバー、208〜212はランプヒーター、218は搬送ローラー、219は基板送り出しボビン、220は基板巻き取りボビン、223は基板である。
【0026】
基板223は各半導体層形成用チャンバー202〜206の放電空間直上に搬送されてきた時、ランプヒーター208〜212により成膜面の裏面から加熱され、成膜面はプラズマで加熱されて高温となる。また、放電空間で加熱された基板は、放電空間をでると雰囲気ガスによる冷却や熱放射によって温度が低下する。従って、基板223の搬送方向には温度差が存在し、複数の放電空間でこのような加熱冷却が繰り返し行われる。
【0027】
一般に高温部は低温部よりも熱膨張のために基板幅が広い。ここで、厚み方向の熱膨張は無視できる。また、搬送方向の熱膨張量も長い搬送経路と比較して無視できる程度に小さい。しかしながら、幅方向の熱膨張量は無視できない程大きく、これが変形の主因である。
【0028】
場所による基板の膨張量の差を考える場合、幅の異なる基板が連結したモデルで考えることができる。さらに、基板の搬送方向には張力がかかっているので見かけ上の基板の幅は変化しにくい。このため、熱膨張した高温部の基板幅を低温部の基板幅に合わせるように高温部の基板の中央方向へ圧縮の力が働くことになる。
【0029】
一般に薄板に圧縮力、引張力が働いた場合、薄板はその面と垂直方向に歪み易いことが知られており、本基板も0.15mmと非常に薄いので、上記圧縮力により基板面に対して垂直方向に変形する。
【0030】
図3に加熱によりカール変形した基板の部分斜視図を示す。基板301は室温(25℃)において幅356mmであり、搬送方向がX、幅方向がYである。また、図中の破線は25℃における平坦な基板の形状である。
【0031】
表1に代表的な成膜温度における基板の幅方向の熱膨張量と、その時生じる歪みの大きさの計算値を示す。表中の歪み量Qは熱膨張した基板が幅356mmに矯正された時に円弧状に変形した場合を想定した円弧のピーク面から平坦面までの距離である。
【0032】
〈堆積膜応力〉
薄い基板上に膜を堆積すると、基板には堆積膜応力によるカール変形が発生する。本明細書においては、基板が膜を内側にしてカールする場合を膜内に引張応力が存在すると定義し、反対に膜を外側にしてカールする場合を膜内に圧縮応力が存在すると定義する。図4に堆積膜応力によるカール変形の例の概略図を示す。図中の401は基板、402は堆積膜であり、図4(a)は引張応力が存在する場合、(b)は圧縮応力が存在する場合である。
【0033】
膜内に引張応力が働いていると、膜界面のすぐ下の基板は圧縮された状態となっており、逆に膜内に圧縮応力が働いていると、基板は引っ張られた状態となる。
【0034】
次に、堆積膜応力について、熱応力と内部応力に分けて具体的に説明する。
(熱応力)
基板と堆積膜とは熱膨張率が異なるため、膜内には膜形成時と常温時との温度差に起因する熱応力が発生する。また、膜の熱膨張率が基板の熱膨張率より大きければ、熱膨張率の違いによる応力の寄与は増大する。さらに、成膜時の基板温度が高くなるにつれて熱応力は増大する。
(内部応力)
熱応力を取り除いても、まだ残留する応力が内部応力であり、内部応力は成膜手段及び成膜条件により大きく変化する。また、内部応力は膜形成自体によって発生する歪みに起因する。
【0035】
ここでは、本発明において第1の堆積層である裏面反射層の基板に対する内部応力について説明する。図1に例として示した102〜103の裏面反射層は、前述したように、反射率の高い金属層102と適度な抵抗を持つ透明酸化物層103からなり、これらはロール・ツー・ロール方式の連続式スパッタ装置や電析装置等により成膜される。また、スパッタリングの方式としては、金属及び金属酸化物のターゲット部材に直流電圧を印加し、Arイオン等でターゲット部材を叩き、スパッタ粒子を基板に成膜するDCマグネトロンスパッタリング等が用いられる。
【0036】
スパッタリングによる成膜では、膜形成中に高エネルギーを持ったAr原子やスパッタ原子が基板上に飛来し基板を叩くため、膜内に内部応力を持ったスパッタ膜が形成されると考えられる。また、スパッタ圧力を低くすると、系に存在する粒子の平均自由行程が長くなり、基板に到達する粒子の中に高エネルギーを持ったAr原子やスパッタ原子が多く含まれるようになり内部応力は増大する。さらに、膜厚が増加するにつれて内部応力は増大する。
【0037】
例として、幅356mm、厚み0.15mmのSUS4302D基板上に裏面反射層として、Alを0.2μm、ZnOを1.2μm、不図示のロール・ツー・ロール方式の連続式DCマグネトロンスパッタ装置を用いて成膜した。成膜後、裏面反射層を堆積した基板を常温で目視観察したところ、基板は図4(b)に示すように膜を外側にカールしており、膜内に圧縮応力が内部応力として存在していることがわかった。
【0038】
因みに電析法により金属酸化物を成膜する場合、スパッタリング法で用いられる程、基板を高温にする必要がない。従って、電析法により形成した金属酸化物は、スパッタリング法で形成した金属酸化物よりも内部応力の小さい膜が得られやすいものと考えることができる。
【0039】
〈外部応力〉
裏面反射層、半導体層、透明導電体層をそれぞれ形成するためのロール・ツー・ロール方式の成膜装置には全て、巻き取りの際に基板の端面を揃える機構として、図5に示すステアリング機構が組み込まれている。図5において、501はステアリングローラー、502は搬送速度検知用エンコーダー、503は基板である。ステアリング機構が動作中と動作休止中では基板幅方向に張力の差が生じ、動作・動作休止の繰り返しが基板変形に影響を及ぼす。さらに、基板はステアリングローラーを堆積膜面を外側にして通った後、基板巻き取りボビンに巻かれていくため、基板には堆積膜を外側にしてカールする外力が働く。
【0040】
本発明は、上記に説明した、熱変形応力、堆積膜応力、外部応力等の変形応力を受けて帯状基板がカール変形した際に、該帯状基板の非成膜面に塑形変形せしめる外部応力を加えることより、上記カール変形を除去し、後工程における傷の発生や集電電極不良等の発生を防止し、外観の良い光起電力素子等を歩留良く形成する堆積膜形成方法である。特に、堆積膜の膜厚増加や堆積温度の上昇等により残留応力が増加し、ロール基板幅方向のカール変形が顕著となった場合においても、効果的に基板のカール矯正を行える方法を提供するものである。
【0041】
本発明においては、上記カール変形除去手段として、カール矯正器、特に、円筒型ローラー式カール矯正器が好ましく用いられる。図6に円筒型ローラー式カール矯正器の一例の概略断面図を示す。図中、601は円筒型ローラー、602は架台、603は基板である。円筒型ローラー601は鉛直方向に10本ずつ対向させ、対向距離(矯正幅d)は不図示のローラー対向距離調整ハンドルにより調整することができる。また、円筒型ローラーの長さは少なくとも基板幅よりも長くなくてはならない。
【0042】
図6の円筒型ローラー式カール矯正器においては、帯状基板は図6左上方よりカール矯正器内部へと進入する。同図左上方よりの基板の進入は、基板の自重により行われるものであり、かつ、基板の進入中、図6右上方への基板の退出は停止されている。従って、基板の進入に伴って帯状基板上の矯正部(基板が凹型となっている部分)は下方へと移動する。帯状基板上の矯正部(基板が凹型となっている部分)が矯正器下部に設置された下部制限区域に達すると、基板の進入は自動的に停止する。その後、基板の進入が停止された状態のまま、基板の右上方への退出が為される。従って、基板の退出に伴い、帯状基板上の矯正部(基板が凹型となっている部分)は上方へと移動する。帯状基板上の矯正部(基板が凹型となっている部分)が矯正器上部に設けられた上部制限区域に達すると、基板の退出は自動的に停止される。その後、基板の退出が停止されたまま、再び、基板の進入が為される。このような基板搬送手順を繰り返し行う結果として、帯状基板上の矯正部(基板が凹型となっている部分)は、カール矯正器の内部において上下運動を繰り返すことになる。
【0043】
ロール基板幅方向の基板変形(幅方向カール変形)が問題とならない程度に小さい場合(例えば、矯正前の幅方向カール量が10mm以下の時)、図6の矯正器に、堆積層を堆積され長手方向にカール変形した基板603を通すと、20本の円筒型ローラー601と基板603の自重によって、基板603の非成膜面に各ローラーより塑性変形せしめる外部応力が加わり、主として基板の長手方向のカール変形が除去される。
【0044】
これに対し、本発明はロール基板幅方向の基板変形(幅方向カール変形)が問題となる場合で、上記矯正方法では幅方向のカール量が基準値以下に矯正することが出来ないという課題に対し、基板の堆積面側からも外部応力を印加して、幅方向のカール矯正効果を増強する。該堆積膜面への外部応力の印加には、円筒状、棒状、或いは少なくとも一部が球状を有する加重制御手段を用いることが好ましい。
【0045】
因みに、本発明に用いる加重制御棒は、従来的なカール矯正ローラーのように、端部が支持体に固定されたものではなく、図11および図12に模式的に示すように、帯状基板の移動にともなって、カール矯正機内部を加重制御棒が上下左右に自由に移動することが可能となるように工夫されたものである。そのため、カール矯正内部の基板凹部において、加重制御棒は膜堆積面に対して、多数回に渡って効果的に外部圧力を付与することができ、幅方向のカール矯正を効果的に行うことが可能となる。
【0046】
また、加重制御手段からの外部応力(重力)は、堆積膜基板の幅方向に対してほぼ均等に作用するものでもよいが、堆積膜面に形成される素子の機能に何らかの悪影響を与える恐れのあるときは、加重制御手段の材質及び/又は堆積膜と接する部位の表面形状を最適化することによって悪影響を効果的に抑制することができる。例えば、材質として樹脂を用いたり、表面の凹凸を小さくする加工を施すことは有効である。更に、加重制御手段表面に保護部材を付加することにより、より一層効果を高めることができる。保護部材を付加する方法としては、たとえば、加重制御手段表面の全部あるいは一部をノーメックス(樹脂)シートやゴム素材などの保護材で被覆したり、また、加重制御手段にゴム製Oリングなどを装着する方法などが挙げられる。加重制御手段にゴム製Oリングを装着した場合、堆積膜表面は、加重制御手段本体ではなくリング表面と接触することになる。ゴム製Oリングを、例えば、堆積膜面側で実質的に素子機能を有しない部分と接触する位置に配設すれば、作製した素子の機能を全く損なうことなく幅方向のカール矯正を行うことが可能となり、大変好ましいことである。加重制御手段の形状としては、棒状、円筒状、或いは少なくとも一部が球状であるもの等が好適なものとして挙げることができる。
【0047】
本発明の形成方法により形成される光起電力素子の一例としては、ステンレス製の帯状基板上に、裏面反射層として金属層に反射率の高い銀を、透明酸化物層として適度な抵抗と透明度を有する酸化亜鉛を堆積し、該裏面反射層上に、i型半導体層がそれぞれa−Si、μc−Siからなる2つのpin接合を有するダブル型半導体層を堆積し、更に当該半導体層上に適度な抵抗と透明度を有するITOを堆積することで得られるものが挙げられる。しかし、本発明により得られる効果は、このタイプの素子に何ら限定されるものではなく、a−Si、μc−Siからなる2つのpin接合間に界面層(インターレイヤー)を有する光起電力素子や、a−Si/μc−Si/μc−Siトリプル型光起電力素子など、様々なタイプの薄膜素子に対しても応用可能なものである。
【0048】
【実施例】
本発明の実施例について述べる前に、従来技術によるカール矯正の予備検討を行った結果について説明する。
【0049】
〔予備検討1〕
まず、従来技術の実施例として、図6に示す円筒型ローラー式カール矯正器のみを用い、図7に示す構成のダブル型a−Si/μc−Si太陽電池スラブを作製し、その後所望の大きさに該スラブを切断し、太陽電池モジュール行程ラインにより集電電極をワイヤー付線することにより薄膜太陽電池を作製した。図7中、701は基板、702〜703は裏面反射層、704〜709は半導体層、710は透明導電体層である。
【0050】
(工程1)
オーカイト及び純水で十分に脱脂、洗浄したステンレス帯状基板(幅356mm、厚み0.15mm、長さ800m)701を不図示のロール・ツー・ロール型DCマグネトロンスパッタ装置に入れ、Agを0.4μm堆積し、その後ZnOを1〜3μm堆積して裏面反射層702、703を形成した。
【0051】
(工程2)
基板を取り出し、図2に示したロール・ツー・ロール型プラズマCVD装置をダブル型とした装置に入れ、前記裏面反射層703上にa−Siからなるn型層704、μc−Siからなるi型層705、μc−Siからなるp型層706(以上ボトム層)、a−Siからなるn型層707、a−Siからなるi型層708、μc−Siからなるp型層709(以上トップ層)を順次積層した。なお、ボトム層とトップ層のi型層705、708はVHFプラズマCVD法で、その他の層はRFプラズマCVD法で形成した。即ち、半導体層はダブルセルとした。尚、i型層705の膜厚は約20000Å、i型層708の膜厚は約4000Åとした。
【0052】
(工程3)
基板を取り出し、不図示のロール・ツー・ロール方式のDCマグネトロンスパッタ装置に入れ、上記半導体層上にITOを約700Å堆積し、透明導電体層710を形成した。以上でi型半導体層がそれぞれa−Si、μc−Siからなる2つのpin接合を有するダブル型太陽電池スラブの作製を終了した。
【0053】
(工程4)
基板を取り出し、図6に示す円筒型ローラー式カール矯正器に通してカール変形を除去した。円筒型ローラーとして直径38mm、長さ707mmのローラーを使用し、ローラー対向距離(矯正幅d)は80〜100mmとした。
【0054】
(工程5)
工程4に引き続いて、スラブ切断機(不図示)によりスラブを356mm×240mm(幅356mmはそのままで基板搬送方向に240mm)のサイズに切断した。
【0055】
その後、切断されたスラブを任意に抽出し、長手方向カール量t1(mm)及び幅方向カール量t2(mm)を測定した。ここで、長手方向カール量t1は、図8(a)に示すようにカットされたスラブを水平な台上に成膜面を上にして起いたときの、長手方向(搬送方向)の最大浮き量として定義される。また、幅方向カール量t2は、図8(b)に示すようにカットされたスラブを水平な台上に成膜面を下にして起いたときの、幅方向(搬送方向に垂直な方向)の最大浮き量として定義される。
【0056】
(工程6)
スラブ切断機により切断したスラブを不図示の太陽電池モジュールラインに流し、エッチング電界処理等のモジュール処理を行った後、図9に示すように、集電電極901をワイヤーピッチ5.6mmの間隔で42本付線し、正極用タブ902、負極用タブ903を付設した。
【0057】
得られた薄膜太陽電池について、集電電極901の目視による外観検査、及び、AM1.5の太陽光スペクトルで100mW/cm2の光量の疑似太陽光源を用いて太陽電池特性を測定し、光電変換効率を求めた。
【0058】
発明者らの観察によると、基板の長手方向及び幅方向のカールの程度は、裏面反射層の構成層であるZnOの膜厚に依存して変化することがわかった。後工程である太陽電池モジュールラインでは、歩留まりを良好に保持するため、長手方向カール量t1が5mm以下となっていることが好ましい。発明者は、まずZnO膜厚が1μm、2μm、3μmで作製したダブル型太陽電池スラブの長手方向のカール量を約2mmとするカール矯正幅dを調べた。また、その時の各スラブの幅方向カール量t2も調べた。ここで、長手方向カール量および幅方向カール量とは、前述の(工程5)で定義した量である。ZnO膜厚が1μm、2μm、3μmの場合について、図6の円筒型ローラー式カール矯正器のみを用いて矯正を行った場合についての結果を表2に示す。長手方向のカール量を約2mmとするカール矯正幅は、ZnOの膜厚増加とともに小さく、また、その時の幅方向カール量は、ZnOの膜厚増加とともに大きくなる傾向のあることが判明した。太陽電池モジュールを作成する後工程においては、歩留まりを良好に保つため、幅方向カール量を13mm以下に抑えることが望ましいとされており、ZnO膜厚3μmの基板に対しては、幅方向の矯正も実施する必要のあることがわかった。
【0059】
〔予備検討2〕
次に前記予備検討1で用いたZnO膜厚3μmの基板上に作製した太陽電池スラブに対し、図6の円筒型ローラー式カール矯正器の矯正幅を狭くする(矯正を強める)検討を実施した。矯正幅を80mm、75mm、70mm、65mmに変化させた場合の長手方向カール量t1および幅方向カール量t2の変化を調べた結果を表3に示す。矯正幅70mmまでは、矯正幅の減少とともに、長手方向カール量t1、幅方向カール量t2とも減少する傾向のあることがわかるが、矯正幅70mmにおいても、幅方向のカール量t2は14mmであり、後工程処理を歩留まりよく行うことのできる基準値(13mm)には到達することができなかった。矯正幅を65mmとさらに小さくした場合、カール矯正機が基板に与える抵抗が過大となり、基板の自重のみによるカール矯正機内への進入が困難となった。具体的には、図10に模式的に示すように、基板1003の進入異常(基板のせり出し)が発生し、基板の矯正を行うことが極めて困難となった。
【0060】
以下に、本発明を実施例に基づき説明する。
【0061】
〔実施例1〕
本実施例においては、幅方向のカール矯正効果を増強することを目的とし、基板の堆積面側からも外部応力を印加している。堆積面側から印加する外部応力印加手段(加重制御手段)として、図11に示すような長さ360mm、直径30mmのアルミ製円筒棒1101に作用する重力を利用した。該アルミ製円筒棒1101は、本発明における加重制御手段の一例である。アルミ製円筒棒1101には、両端にガイド板1102が取り付けられており、帯状基板1103あるいは、アルミ製円筒棒1101が移動しても、アルミ製円筒棒1101が基板からずれ落ちる心配がない。
【0062】
前記予備実験2同様、3μm厚ZnOを用いた基板上にダブル型太陽電池を作製し、カール矯正機の矯正幅を70mmに固定した条件の下、加重制御棒の重量を0g重(制御棒なし)、400g重、800g重、1600g重と変化させた。加重制御棒の重量に対する、矯正後の長手方向のカール量t1および、幅方向カール量t2の変化は、表4に示すようになった。加重制御棒を用いることで、幅方向カール量を後工程の基準値である13mm以下にすることが出来た。また、制御棒の重量が大きいほど、幅方向のカール矯正効果も大きいことが確かめられた。表3および表4においてカール矯正を行ったスラブに関して、作製した太陽電池スラブの変換効率測定を行った。歩留まり不良の条件(集電電極形成不良が発生しやすい条件)で矯正したスラブについては、集電電極不良が起こらなかったスラブを抽出して効率を測定した。効率測定を行ったいずれの太陽電池スラブに関しても変換効率11.7%が得られた。
【0063】
なお、図6における帯状基板上の矯正部(基板が凹型となっている部分)には、基板の自重が作用している。本実施例による帯状基板を用いた場合、矯正部に作用する基板の自重は約400g重であった。発明者の検討によると、本発明による加重制御棒の重量は、矯正部に作用する帯状基板の自重以上であることが好ましい。
【0064】
〔実施例2〕
本実施例においては、実施例1と同条件(加重制御棒の重量は800g重)で、加重制御手段に保護材を付加した場合の素子の変換効率を調べた。その結果を表5に示している。加重制御手段に保護材を付加することで、素子特性向上を実現できることがわかる。しかも、表5に示すように、保護材を付加した本実施例の場合、保護材を付加しない実施例1の場合と比べて、集電電極の良否で決定される歩留まりも更に改善できることがわかった。
【0065】
〔実施例3〕
加重制御手段を複数個同時に用いた以外は実施例1と同じ条件で素子効率の変化を調べた。図13は、加重制御手段を2本用いた場合の例を模式的に表したものである。加重制御手段を複数本用いる場合、加重手段の合計重量が帯状基板上の矯正部(基板が凹型となっている部分)にかかる帯状基板の自重以上であることが好ましい。同条件で作製した太陽電池スラブを1本の加重制御手段を用いて矯正した場合と、2本の加重制御手段を用いて矯正した場合の、幅方向カール量並びに後工程における歩留まりを表6に比較して示した。表6において、条件Aは重量800g重の加重手段を1本用いた場合、条件Bは重量800g重の加重手段を2本用いた場合、条件Cは重量400g重の加重手段を2本用いた場合を示している。重量800g重の加重手段を1本用いた条件Aに比べ、重量800g重の加重手段を2本用いた条件B、および、重量400g重の加重手段を2本用いた条件Cでは、幅方向のカール量が低下し、歩留まりが向上することがわかった。
【0066】
〔実施例4〕
トップセルとボトムセルの間にZnO界面層(インターレイヤー)を挿入したダブルセルに関しても、本発明の効果を確かめた。本実施例では、図7におけるダブルセルのボトムp層706を形成後、スパッタ法によりZnO膜を200Å〜20000Å堆積した。その後、トップn層707以降の各層を形成し、ダブルセルを完成させた。まず、矯正幅を80mmに固定した条件で、ZnO界面層の膜厚を変化させた時の長手方向カール量t1、並びに、幅方向カール量t2の変化について調べたところ、表7のようになった。ZnO界面層の膜厚が増加するとともに、長手方向カール量t1、並びに、幅方向カール量t2ともに大きくなる傾向が認められた。この例では、ZnO膜厚が2000Åよりも大きくなると、後工程における歩留まりの不良が発生した。ZnO界面層膜厚が200〜20000Åの範囲にある太陽電池スラブに関し、〔実施例1〕〜〔実施例3〕で述べた矯正方法を実施した。その結果、ZnO界面層膜厚が2000〜20000Åの範囲にある太陽電池スラブに関しても、本発明の効果が確かめられ、後工程において優れた歩留まりを得られることがわかった。
【0067】
〔実施例5〕
つぎに、トリプル型a−Si/μc−Si/μc−Si太陽電池スラブを作製し、本発明によるカール矯正を実施した。本実施例では、図7におけるダブルセルのボトムp層706を形成後、ミドルn層をRF法で、ミドルi層をVHF法で、ミドルp層をRF法で形成した。その後、トップn層707以降の各層を形成し、トリプルセルを完成させた。まず、矯正幅を80mmに固定した条件で、ボトムセル膜厚とミドルセル膜厚の合計膜厚を変化させた時の長手方向カール量t1、並びに、幅方向カール量t2の変化について調べたところ、表8のようになった。なお、表8では、ダブルセルに使用されるボトムセルの膜厚を基準としたときの、トリプルセルにおけるミドルセル膜厚とボトムセル膜厚の合計膜厚を相対値として示している。同表8より、トリプルセルにおけるミドルセル膜厚とボトムセル膜厚の合計膜厚が大きくなるとともに、長手方向カール量t1、並びに、幅方向カール量t2ともに大きくなる傾向が認められた。この例では、ミドルセル膜厚とボトムセル膜厚の合計膜厚が2よりも大きくなると、後工程における歩留まりの不良が発生した。ミドルセル膜厚とボトムセル膜厚の合計膜厚が1.5〜3μmの範囲にあるトリプル型太陽電池スラブに関し、〔実施例1〕〜〔実施例3〕で述べた矯正方法を実施した。その結果、ミドルセル膜厚とボトムセル膜厚の合計膜厚が1.5〜3μmの範囲にあるトリプル型太陽電池スラブに関しても、本発明の効果が確かめられ、後工程において優れた歩留まりを得られることがわかった。
【0068】
〔実施例6〕
さらにトリプル型a−Si/μc−Si/μc−Si太陽電池スラブの、トップa−Siセルとミドルμc−Siセルの間に〔実施例4〕で述べたZnO界面層を挿入した太陽電池スラブに対しても、本発明によるカール矯正を実施した。
【0069】
〔実施例4〕および〔実施例5〕で得られた結果と同様、ZnO界面層の膜厚が大きくなるとともに、あるいは、ミドルセル膜厚とボトムセル膜厚の合計膜厚が大きくなるとともに、長手方向カール量t1、並びに、幅方向カール量t2ともに大きくなる傾向が認められた。本実施例によるトリプル型太陽電池スラブに関しても、〔実施例1〕〜〔実施例3〕で述べた本発明の効果が確かめられ、後工程において優れた歩留まりを得られることがわかった。
【0070】
〔実施例7〕
実施例1及び実施例2における加重制御手段を用いたカール変形除去工程を半導体層704〜709堆積後に行い、その後透明導電体層710を堆積し、スラブ切断を行う以外は実施例1と同様にして薄膜太陽電池を作製した。加重制御手段としては重量800g重の棒状加重制御手段を用いた。カール量測定はカール矯正直後とスラブ切断後の2回行った。
【0071】
その結果、カール矯正直後の長手方向カール量は0mm、幅方向のカール量は8mm、また、スラブ切断後の長手方向カール量は1mm、幅方向のカール量は11mmであり、透明導電体層堆積時にカール変形を起こしていることがわかった。また、得られた薄膜太陽電池において集電電極不良はなく、光電変換効率は実施例1及び実施例2と同様の結果であることから、本実施例の薄膜太陽電池は良好な特性であることがわかった。
【0072】
〔実施例8〕
実施例1における加重制御手段を用いたカール変形除去工程を裏面反射層702、703堆積後に行い、その後半導体層704〜709と透明導電体層710を堆積し、スラブ切断を行う以外は実施例1と同様にして薄膜太陽電池を作製した。〔実施例7〕同様、加重制御手段としては重量800g重の棒状加重制御手段を用いた。カール量測定はカール矯正直後とスラブ切断後の2回行った。
【0073】
その結果、カール矯正直後の長手方向カール量は0mm、幅方向のカール量は5mm、また、スラブ切断後の長手方向カール量は3mm、幅方向のカール量は13mmであり、半導体層704〜709及び透明導電体層710堆積時にカール変形を起こしていることがわかった。また、得られた薄膜太陽電池において集電電極不良はなく、光電変換効率は実施例1及び実施例2と同様の結果であることから、本実施例の薄膜太陽電池は良好な特性であることがわかった。
【0074】
【表1】
Figure 2004253704
【0075】
【表2】
Figure 2004253704
【0076】
【表3】
Figure 2004253704
【0077】
【表4】
Figure 2004253704
【0078】
【表5】
Figure 2004253704
【0079】
【表6】
Figure 2004253704
【0080】
【表7】
Figure 2004253704
【0081】
【表8】
Figure 2004253704
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の堆積膜の形成方法によれば、特に、光起電力素子の製造に適用した場合に、光電変換効率を落とすことなく、長手方向及び幅方向のカール変形を除去することが可能となり、カール変形に起因する傷や電極不良が防止され、光起電力素子等の外観と製造歩留の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シングル型a−Si太陽電池の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】ロール・ツー・ロール方式の連続プラズマCVD装置の一例を示す模式的概略断面図である。
【図3】カール変形した基板の部分斜視図である。
【図4】本発明にかかる堆積膜応力によるカール変形の例を示す概略図である。
【図5】ロール・ツー・ロール方式の成膜装置におけるステアリング機構を示す概略斜視図である。
【図6】本発明に用いる円筒型ローラー式カール矯正機の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の実施例で作製したダブル型a−Si太陽電池スラブを模式的に示す断面図である。
【図8】長手方向カール量(a)および幅方向カール量(b)の定義を説明する模式図である。
【図9】本発明の実施例で作製した太陽電池を光入射側から見た模式的平面図である。
【図10】円筒型ローラー式カール矯正機における基板の進入異常(基板のせり出し)を示す模式図である。
【図11】本発明による加重制御手段の一例を示す斜視図である。
【図12】本発明による加重制御手段(単数)の運動を示す模式図である。
【図13】本発明による加重制御手段(複数)の運動を示す模式図である。
【符号の説明】
101 基板
102 金属層(裏面反射層)
103 透明酸化物層(裏面反射層)
104 n型半導体層
105 i型半導体層
106 p型半導体層
107 透明導電体層
108 集電電極
201 基板送り出しチャンバー
202 n型半導体層形成用RFチャンバー
203 i型半導体層形成用RFチャンバー
204 i型半導体層形成用MW(或いはVHF)チャンバー
205 i型半導体層形成用RFチャンバー
206 p型半導体層形成用RFチャンバー
207 基板巻き取りチャンバー
208〜212 ランプヒーター
213〜217 高周波電極
218 搬送ローラー
219 基板送り出しボビン
220 基板巻き取りボビン
221 送出し側ステアリングローラー
222 巻取り側ステアリングローラー
223 基板
301 基板
401 基板
402 堆積膜
501 ステアリングローラー
502 基板横ずれ検知機構
503 基板
601 円筒型ローラー
602 架台
603 基板
701 基板
702 Ag層(裏面反射層)
703 ZnO層(裏面反射層)
704 a−Siからなるn型層
705 μc−Siからなるi型層
706 μc−Siからなるp型層
707 a−Siからなるn型層
708 a−Siからなるi型層
709 μc−Siからなるp型層
710 ITO層(透明導電体層)
801 基板
901 集電電極
902 正極用タブ
903 負極用タブ
904 スラブ
1001 円筒型ローラー
1002 架台
1003 基板
1101 アルミ製円筒棒(加重制御棒)
1102 ガイド板
1103 基板
1201 アルミ製円筒棒(加重制御棒)
1202 基板
1301 アルミ製円筒棒(加重制御棒)
1302 基板

Claims (16)

  1. ロール・ツー・ロール方式によって帯状基板上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法であって、変形応力の印加によって生じる前記帯状基板の長手方向および幅方向の変形を、該帯状基板の非堆積膜面及び堆積膜面に外部応力を印加することによって同時に除去する工程を有することを特徴とする堆積膜形成方法。
  2. 前記堆積膜面への外部応力が、堆積膜面上に形成された素子の機能を実質的に阻害することなく印加されることを特徴とする請求項1記載の堆積膜形成方法。
  3. 前記堆積膜面への外部応力印加が、加重制御手段の自重並びに自由運動によって為されることを特徴とする請求項1および2に記載の堆積膜形成方法。
  4. 加重制御手段の重量が、矯正部に作用する帯状基板の自重以上であることを特徴とする請求項3に記載の堆積膜形成方法。
  5. 前記帯状基板が導電性基板であることを特徴とする請求項1〜4に記載の堆積膜形成方法。
  6. 前記非堆積膜面への外部応力が前記帯状基板を塑性変形せしめる変形応力であることを特徴とする請求項1〜5の堆積膜形成方法。
  7. 前記変形応力が前記帯状基板上に堆積膜を形成する際の熱変形応力である請求項1〜6記載の堆積膜形成方法。
  8. 前記変形応力が前記帯状基板上に形成した堆積膜の膜応力であることを特徴とする請求項1〜7記載の堆積膜形成方法。
  9. 前記非堆積膜面への外部応力をカール矯正機を用いて印加することを特徴とする請求項1〜8記載の堆積膜形成方法。
  10. 前記カール矯正機として円筒形ローラー式カール矯正機を用いていることを特徴とする請求項9記載の堆積膜形成方法。
  11. 前記帯状基板上に少なくとも半導体層を堆積することを特徴とする請求項1〜10記載の堆積膜形成方法。
  12. 前記半導体層を堆積した後に前記非堆積膜面への外部応力を加えることを特徴とする請求項11記載の堆積膜形成方法。
  13. 前記帯状基板上に少なくとも透明導電体層を形成することを特徴とする請求項1〜10記載の堆積膜形成方法。
  14. 前記透明導電体層を堆積した後に前記非堆積膜面への外部応力を加えることを特徴とする請求項13記載の堆積膜形成方法。
  15. 請求項1〜14に記載の堆積膜形成方法を用いた半導体素子基板の製造方法。
  16. 請求項1〜14に記載の堆積膜形成方法を用いた半導体素子の製造方法。
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