JP3787410B2 - 堆積膜製造方法及び光起電力素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光電変換素子の反射層及びその上に積層される透明導電層の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体層通過した光を反射層により反射させて再び半導体層で吸収させる構成の光電変換素子が知られている。更に半導体層と反射層との間に金属酸化物などからなる透明導電層を介在させることが知られている。また、反射層及び/又は透明導電層の表面を凹凸構造(テキスチャー構造)にすることにより、反射光の光路長を伸ばすことが知られている。
【0003】
たとえば米国特許4,419,533では反射層が光電気変換部へ拡散しないように酸化亜鉛等のバリア層を設ける技術とが開示されている。また、米国特許4,532,372には反射層の上に透明導電層を形成し半導体層の欠陥による短絡を防止する技術が開示されている。
【0004】
反射層としてはアルミニウムを用いることが知られている。特開昭62−211377では酸素ガスを供給し4重極質量分析計でその量を監視しつつ酸素ガス流量を制御しながらスパッタリングをおこないアルミニウム膜を作製する方法が開示されており、アルミニウムの粒径が制御できると示されている。
【0005】
特開平02−297737では不活性ガスを10mtorr以上の圧力に保ち腐食や変形欠陥を防止したアルミニウム膜をスパッタリングする方法が開示されている。特開平05−171434では真空容器内に残留空気を残した状態でアルミニウム膜をスパッタリングし突起のないアルミニウム膜を形成する方法が開示されている。
【0006】
特開平06−116723ではアルミニウムをスパッタリングして作製する工程とこのアルミニウム膜を窒素と酸素の混合ガスにさらす工程を繰り返すことにより平滑なアルミニウム膜を得る方法が開示されている。
【0007】
特開平06−116722では長尺基板を移動させつつ、その上に金属層と透明導電層を連続してスパッタ法で形成することが記載されている(Roll to Roll法)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
反射層としてアルミニウムを用い、その上に透明導電層を積層した光電変換素子には以下の問題点があることが明らかになった。
【0009】
アルミニウムの作製温度を高くすることは密着性を高めたり、結晶性を高め凸凹を形成することになるが、アルミニウムの粒界が光を吸収し反射率が低下してしまい半導体層での電気に変換できる光の量を低下させていることが判明した。また、Roll to Roll方式の装置で反射層と透明導電層を連続して作製する場合に反射率が低下することが判明した。
【0010】
また、真空装置内の膜が付着する構造物や材料であるターゲットは定期的なメンテナンスが必要であり装置内部を大気状態にする必要がある。大気開放後の膜作製では光電変換素子の変換効率が安定しないことがあった。特に、Roll to Roll法では複数の成膜室が連結しており、該成膜室を長尺基板が搬送されながら成膜が行われる為、成膜時間が長時間に渡る。この場合、上述の変換効率の不安定さが顕著に現れた。例えば、成膜前に成膜時の温度条件で12時間にわたる予備加熱を行った後、成膜を開始し、10時間経過後の装置で金属層を作製した場合、該金属層を有する光起電力素子の変換効率は最高の効率を有するものと比べて4%ほど低い変換効率が得られる場合があった。
【0011】
また真空排気を基板の幅方向に行う場合は変換効率が幅方向に大きな分布を持つ場合もある。この原因は明らかではないが成膜中の残留不純物ガス等の影響で透明導電層の伝導状態が変動し半導体接合へ影響を及ぼしている可能性もあると考えている。
【0012】
以上のように従来知られた方法だけでは所望のテクスチャー構造で、反射率が高く、安価で、信頼性の高い反射層と透明導電層を安定して得ることは容易ではなかった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
成膜室を大気開放した後に、該成膜室を減圧し、該成膜室を350℃以上550℃以下の温度で10分以上135分以下の時間加熱した後、冷却または放冷し、該成膜室を所定の成膜温度に設定し、基板上に金属反射層を形成する工程と、該金属反射層表面に活性酸素を接触させる工程と、透明導電層を形成する工程とを有することを特徴とする堆積膜製造方法、及び該方法を用いて金属層、及び透明導電層を形成した後、半導体層を形成する光起電力素子の製造方法とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
〔光電変換素子の製造方法〕
図1は本発明による光電変換素子の断面の一例で、基板101上に反射層102、透明導電層103、半導体層104、透明電極108、及び集電電極109が順に積層されている。
【0015】
図2は図1に示す光電変換素子を長尺基板上に作製するための製造装置の一例である。この装置により以下の手順で成膜がなされる。
【0016】
(1)ロール状基板202を送り出し室201から巻き取り室210に渡し、真空ポンプ239、240で真空排気する。
【0017】
(2)所定の圧力まで真空排気した後、ガス供給管230、233、234からアルゴンガス等の不活性ガスを供給し、231、232のガス供給管からは酸素ガスを供給し不図示の排気バルブの開度を調整し所定の圧力に調整する。各室に備えたヒータユニット236、237、238、224、225の複数本の赤外線ランプを点灯し、装置内壁や仕切り板227、228、229や基板204を加熱する。温度は基板近傍に温度センサーを設けておき成膜時の温度以上に制御する。この時各処理室に電力を供給して放電を発生させることが望ましい。
【0018】
また成膜時温度以上に温度が到達してから加熱用のランプを消し加熱時間程度冷却したのち再度加熱しても良い。この温度サイクルプロセスは装置を構成する材料を収縮させ、その結果、ガス溜りを解消する効果がある。この事は特に装置の構成要素が複雑な場合に効果があり、たとえば基板を所定の位置に保つために使用される磁石を内部に備えたマグネットローラー235等を使用する場合は効果が高い。
【0019】
(3)所定の時間加熱した後、冷却または放冷し、所定の成膜温度にする。この後サーボモータで巻き取りロール211を回転させ基板101、204を一定速度で搬送させてから成膜を開始する。
【0020】
(4)まず反射層作製室205でアルミニウムまたはその含有物のターゲット214をカソード電極とし直流電源219にてスパッタリングして反射層102を作製する。マグネトロンスパッタリングを用いてもよい。
【0021】
(5)次に反射層を作製した基板204を搬送し、酸素ガスを含む雰囲気で直流電源220、221によりグロー放電を発生させる活性酸素処理室206、207を通過させ反射層の表面100をイオンやラジカルや励起状態等の活性酸素に接触させる。なお活性酸素処理室と反射層の作製室の間には隙間を狭くしアルゴン等の不活性ガスを流すガスゲート又はピンチバルブ226を設けて、活性酸素処理室の酸素ガスが反射層作製室に混入する量を制限している。
【0022】
(6)次に活性酸素処理室206、207を通過した基板204を透明導電層作製室208、209に搬送し酸化亜鉛を主成分とするターゲット217、218に直流電源222、223にてスパッタリングして透明導電層103を作製して巻き取り室に巻き取る。この時作製温度と直流電力を適当に選ぶことにより透明導電層103の表面に数100nmの大きさの凹凸を作製することができ光の散乱の効果を利用できる。第1図ではこの凹凸を摸式的に強調して記している。
【0023】
以上のようにして基板上に反射層と透明電極が連続して作製できる。なお、活性酸素処理室と透明導電層作製室は透明導電層が酸化膜である場合は厳密に空間を分離する必要はなく、膜の回り込みを低減する程度の簡単な仕切り程度でも良い。
【0024】
活性酸素処理室206、及び207にはアルゴンが混入し、透明導電層作製室208、及び209には酸素ガスが混入する場合があるが、堆積する材料によってはガスゲート、ピンチバルブ等を設けてこれらの処理室間を分離してもよい。
【0025】
透明導電層は図2に示すように複数の作製室で堆積することが望ましく、特に作製室208での作製温度を作製室209での作製温度より低くして堆積した透明導電層を有する光起電力素子は優れた特性を有することがわかった。
【0026】
更に別の堆積装置を用いて半導体層、透明電極を作製し、集電電極が形成される。更に保護樹脂を設けてもよい。
【0027】
この様な手順によって作製した反射層と透明導電層は反射率が良好であり、反射した光が半導体層で効果的に吸収され光電気変換効率が向上する。また長時間にわたり特性に変化がなく信頼性も良い。
【0028】
前述の工程(2)における事前加熱と、光起電力素子の変換効率が関係することを本発明者は見出した。具体的には、工程(6)で形成する透明導電層103表面の凹凸形状が事前加熱の時間によって変化する。本発明者の実験で、事前加熱時間を0分から720分まで変化させ、また加熱温度を250℃から600℃まで変化させ、変換効率との関係を調べた。その結果を表に示す。表の横軸は事前加熱温度、縦軸は加熱時間で、250℃・事前加熱0分の場合を1とした時の変換効率を、1.0〜1.05を△、1.05〜1.15を○、1.15より優れたものを◎で示した。
【0029】
【表1】
【0030】
事前加熱により光電変換効率は改善されるが、加熱時間が長すぎると変換効率が低下することがわかった。この原因は明らかではないが、加熱時間が長すぎると透明導電層103表面の形状が光起電力素子に適した形状とならない、あるいはアルミニウム膜の結晶化が進行し、粒界が発達し、この粒界が光を吸収して反射率が低下する、等の理由が考えられる。したがって、事前加熱は400℃から500℃の範囲で、かつ15分から120分の範囲で実施する事が好適である。
【0031】
なおここでは例としてRoll to Roll方式を示したが、本発明はこの方式に限らず、長尺基板を間欠的に搬送する方式や、枚葉式のインライン方式にも適用できる。
【0032】
〔光電変換素子の構成要素〕
(基板101)
基板101は金属や合金あるいはその積層品、カーボンシート、ポリイミドなどの樹脂フィルムなどが使用可能である。これらはロール状で利用できるため連続作製に好適である。その表面が導電性を有する場合には光起電力素子の一方の電極も兼ねる事ができる。
【0033】
また用途によってはシリコン等の結晶基板、ガラスやセラミックスの板を用いる事もできる。基板の表面は研磨や洗浄をしても良いが、そのまま用いても良い。また表面に凹凸を有したものも使用可能である。また、SUS430のような磁性体を用いると磁石を内蔵したローラで位置を正確に制御しつつ搬送することも可能である。
【0034】
(反射層102)
反射層102はAl、Ag、Cu等が用いられる。Alはマイグレーションの問題が生じないためとくに好適に用いられる。その表面は平滑であっても、凹凸を有していてもよい。スパッタリング法や真空蒸着法や化学的気相成長法やイオンプレーティング法やイオンビーム法などで作製できる。
【0035】
図2を用いて反射層102の形成方法の一例である直流マグネトロンスパッタリング法について述べる。205は作製室であり、排気ポンプ240で真空排気できる。この作製室に、不図示のガスボンベに接続されたガス導入管230より、アルゴン等の不活性ガスをマスフローコントローラを用いて所定流量導入させ、排気弁の開度を調整し作製室205内を所定の圧力とする。214はターゲットで、その内部に不図示の磁石を備えたカソード電極がある。カソード電極には直流電源219が接続され電力を供給してスパッタリングを行う。
【0036】
(活性酸素処理とガスゲート)
作製した反射層を接触させる活性酸素の発生方法としては、アノード電極とカソード電極を用いる直流法、交流法、高周波法やホロカソードタイプなどのイオンビーム法やマイクロウェーブ法が利用できる。酸素ガスを供給し放電を発生させた空間たとえば第2図の206、207に反射層の形成された基板204を通過させれば良い。
【0037】
この時、活性酸素処理室から反射層の作製室への酸素の混入は反射率を低下させる別の要因となるため一定量以下に制限する必要がある。この方法としては一般的に知られているような隙間を狭くかつ長くしてコンダクタンスを小さくしたゲート226などが効果的である。さらにこのゲート226に不活性ガス等を基板上下面に供給することにより雰囲気ガスの分離性能を上げることも可能である。また、ピンチバルブを用い、成膜処理又は活性酸素処理時にロール状基板の移動を停止し、バルブを閉じてもよい。
【0038】
(透明導電層103)
透明導電層103もスパッタリング法や真空蒸着法や化学的気相成長法やイオンプレーティング法やイオンビーム法などで作製できる。反射層まで光を透過させるため透明度が高いことが望ましい。また、半導体層の欠陥を通じて流れる電流を抑制するため適度の抵抗を持つことが望ましい。具体的には導電率が10-8(1/Ωcm)以上、10-1(1/Ωcm)以下であることが望ましい。
【0039】
材料としては酸化亜鉛や酸化チタンや酸化インジウムや酸化錫またはその含有物などが利用できる。酸化物を利用する場合には活性酸素処理室と同じ真空装置内で連続して作製することも可能である。また作製条件を適当に選ぶことにより表面に数100nmの大きさの凹凸を作製することができ光の散乱の効果を利用できる。例えば第1の透明導電層を比較的低い成膜温度で形成し、その上に第2の透明導電層を第1の透明導電層成膜温度より高い温度で形成することにより、下地との密着性を確保しつつ好適な凹凸形状を形成することができる。
【0040】
(半導体層104)
半導体層104は非単結晶半導体が好適に用いられ、その作成には高周波電力やマイクロウェーブ電力を利用するCVD装置などが利用できる。半導体層104は反射層102及び透明導電層103の成膜装置と単一の真空室を構成するように連結した成膜装置で形成してもよいし、別の装置で形成してもよい。
【0041】
真空室内に材料ガスとして SiH4 、SiF4 、PH3 、H2などを供給し、電力を投入して、これによりn型 a−Si層105が透明導電層103上に形成できる。さらにSiH4 、SiF4 、H2などを用い、これによりi型 a−Si層106がn型 a−Si層105上に形成でき、今度はSiH4 、BF3、H2などを用い、p型μc−Si層107が i型a−Si層106上に形成でき、nipの半導体接合が形成できる。この半導体層はアモルファスやマイクロクリスタルに制限されず、nipの構成もpinでも可能であり、半導体接合も複数層も受けても良い。
【0042】
(透明電極108)
透明電極108は半導体層を介した基板とは反対側の電極を兼ね、低抵抗であることが望ましい。酸化インジウムや酸化錫や酸化チタンや酸化亜鉛やその混合物などを原材料にし、抵抗加熱や電子ビームによる真空蒸着法やスパッタリング法、CVD法、スプレー法、浸積法等で作製できる。良好な反射防止効果を得るために透明電極の膜厚は、主に反射を防止したい光の波長に比べ、反射防止膜の屈折率の4倍分の1程度が良い。また屈折率の異なる材料を積層する構成でも良い。
【0043】
(集電電極109)
透明電極の上には電流を効率よく集電するために、格子状の集電電極109を設けてもよい。集電電極の形成方法としては、マスクパターンを用いたスパッタリング、抵抗加熱、CVD法や、全面に金属膜を蒸着した後で不必要な部分をエッチングで取り除きパターニングする方法、光CVDにより直接グリッド電極パターンを形成する方法、グリッド電極パターンのネガパターンのマスクを形成した後にメッキする方法、導電性ペーストを印刷する方法、金属線を導電性ペーストで固着する方法などがある。
【0044】
なおこの後、必要に応じて起電力を取り出すために出力端子110を基板と集電電極に取り付けてもよい。さらに必要に応じて樹脂フィルムを接着するなどして保護樹脂111を設けてもよい。同時に鋼板等の補強材を併用してもよい。
【0045】
【実施例】
(実施例1)
本実施例においては、図1の断面模式図に示す構成の光電変換素子を図2の装置で作成した。
【0046】
図2の装置をメンテナンス等の為に大気開放した後、ロール状基板202を基板送り出し室201にセットし、反射層作製室205、活性酸素処理室206、207、透明導電層作製室208、209それぞれに基板204を貫通させ、基板巻き取り室210のロール211に固定する。基板204には幅120mm、厚さ 0.15mm、長さ150m の表面に凹凸をダル仕上げで残したSUS430を使用した。
【0047】
続いて圧力が10-4torr以下になるまで排気した。この後反射層作製室205と透明導電層作製室208、209にガス供給管230、233、234から不活性ガスとしてアルゴンガスを各々30sccm供給し、活性酸素処理室206、207へは酸素ガスをガス供給管231、232から各々10sccm供給した。またゲート226へもアルゴンガスを30sccm供給した。この状態で排気バルブの開度を調整して真空室内の圧力を3mTorrに保った。
【0048】
反射層作製室205、活性酸素処理室206、207、透明導電層作製室208、209それぞれに100wの赤外線ランプ6本セットにしたヒータユニット236、237、238、224、225をステンレス製の反射板と共に設けておき基板の成膜面の反対の表面に熱電対を接触させて400℃になるよう温度を制御して加熱した。設定温度に約15分で到達した後2時間この状態を保った後、反射層作製室205、活性酸素処理室206、207のヒータを消し、透明導電層作製室208の設定温度を150℃に下げ、透明導電層作製室209の設定温度を250℃に下げた。約30分で透明導電層作製室の温度が設定温度まで下がった。
【0049】
続いてサーボモータを動作し巻き取りロール211を回転させ毎分170mmで基板204の搬送を開始した。
【0050】
反射層作製用のターゲット214には純度99.99重量%のアルミニウムを使用し、25cm×25cmの大きさで、400Wの直流電力を印加した。基板204がターゲット214上を通過する約90秒の間に約200nmの厚みのアルミニウム反射層101を作製した。
【0051】
活性酸素処理室206、207のカソード電極215、216には各々40Wの直流電力を印加した。反射層を作成された基板204は続き搬送され活性酸素処理室を通過する約180秒の間、酸素ガスを含むプラズマに接触する。なお本実施例ではカソード電極215にはアルミニウムのターゲットを使用し、カソード216では酸化亜鉛のターゲットを使用した。どちらも純度99.99重量%、25cm×25cmの大きさであった。
【0052】
透明導電層作製室208、209に基板204を引き続き搬送した。純度99.99重量%、25cm×25cmの大きさの酸化亜鉛ターゲット217、218を用いて各々2800Wの直流電力を印加した。空間を通過する約180秒の間に酸化亜鉛の透明導電層103が約1000nm作製できた。なおこの時透明導電層の表面に高低差が数100nmの大きさの凹凸が発達した。
【0053】
透明導電層まで作製した基板204は巻き取り室210で巻き取った。なお透明導電層の表面を傷つけないようにポリエステルフィルムの合紙213を巻き取り時基板と基板の間にはさみ込んだ。
【0054】
このような状態を約10時間保ち、毎分170mmの搬送速度で約100mにわたり反射層と透明導電層を作製した。
【0055】
この反射層と透明導電層の形成された基板の一部を取りだし分光光度計で反射率を測定したところ800nmの波長で、比較例1の反射率を100%として比べた時、120%の高い反射率であった。
【0056】
さらに反射層と透明導電層の形成された基板を5cm×5cmの大きさに切断し、市販の容量結合型高周波CVD装置にセットした。排気ポンプにて、反応容器の排気管を介して、荒引き、高真空引き操作を行った。この時、基板の表面温度は250℃となるよう、温度制御機構により制御した。十分に排気が行われた時点で、ガス導入管より、Si2H61sccm、PH3 /H2(1%H2希釈)0.5sccm、H240sccmを導入し、スロットルバルブの開度を調整して、反応容器の内圧を1torrに保持し、圧力が安定したところで、直ちに高周波電源より3Wの電力を投入した。プラズマは180秒間持続させた。これにより、n型 a−Si層105が透明層103上に形成された。再び排気をした後に、今度はガス導入管よりSi2H640sccm、H240sccmを導入し、スロットルバルブの開度を調整して、反応容器の内圧を1torrに保持し、圧力が安定したところで、直ちに高周波電源より2Wの電力を投入し、プラズマは600秒間持続させた。これによりi型a-Si層106がn型 a−Si層105上に形成された。再び排気をした後に、今度はガス導入管よりSiH4 /H2(10%H2希釈)0.5sccm、BF3/H2(1%H2希釈)1sccm、H250sccmを導入し、スロットルバルブの開度を調整して、反応容器の内圧を1torrに保持し、圧力が安定したところで、直ちに高周波電源より200Wの電力を投入した。プラズマは120秒間持続させた。これによりp型μc−Si層107がi型 a−Si層106上に形成された。
【0057】
次に試料を高周波CVD装置より取り出し、DCマグネトロンスパッタ装置のアノードの表面に取り付け、ステンレススティールのマスクで試料の周囲を遮蔽して、中央部4.5cm×4.5cmの領域に10重量%の酸化錫と90重量%の酸化インジウムからなるターゲットを用いてスパッタリングした。堆積条件は基板温度200℃、不活性ガスとしてアルゴンの流量50sccm 、酸素ガス0.5sccm、堆積室内の圧力3mTorr、ターゲットの単位面積当たりの投入電力量 0.2W/cm2にて約100秒で厚さが60nmとなるように堆積した。膜の厚みは前もって同じ条件で堆積時間との関係を検量して堆積することにより所定の厚みとした。
【0058】
以上のようにして作製した試料に銀ペーストをスクリーン印刷して集電電極109を面積の2%の領域に形成し出力端子110を付け、保護樹脂111を接着した。AM1.5(100mW/cm2)の光照射下にて特性評価を行ったところ、光電変換効率で比較例1の変換効率を100%として比べた時、120%の優れた変換効率が得られた。
【0059】
さらにこのサンプルを温度85℃、湿度85%の環境試験箱による1000時間の環境試験を行った。変換効率の変化は0.02%低下しただけで全く問題なかった。
【0060】
(実施例2)
真空排気およびガス供給後、ヒータユニット236、237、238、224、225を500℃になるよう温度を制御して2時間加熱した以外は実施例1と同じ条件で作製した。
【0061】
途中反射層と透明導電層の形成された基板を分光光度計で反射率を測定したところ800nmの波長で比較例1の反射率を100%として比べた時、120%の高い反射率であった。また完成後AM1.5(100mW/cm2)の光照射下にて特性評価を行ったところ、光電変換効率で比較例1の変換効率を100%として比べた時、120%の優れた変換効率が得られた。
【0062】
さらにこのサンプルを温度85℃、湿度85%の環境試験箱による1000時間の環境試験を行った。変換効率の変化は0.03%低下しただけで全く問題なかった。
【0063】
(実施例3)
真空排気およびガス供給後、ヒータユニット236、237、238、224、225を400℃になるよう温度を制御して加熱した。設定温度に約15分で設定温度に到達した後約15分この状態を保った後ヒータを消し約15分放置した。この後再度400℃になるよう制御して加熱し約10分後設定温度に到達した後約15分この状態を保った以外は実施例1と同じ条件で作製した。
【0064】
途中反射層と透明導電層の形成された基板を分光光度計で反射率を測定したところ800nmの波長で比較例1の反射率を100%として比べた時、120%の高い反射率であった。また完成後AM1.5(100mW/cm2)の光照射下にて特性評価を行ったところ、光電変換効率で比較例1の変換効率を100%として比べた時、120%の優れた変換効率が得られた。
【0065】
さらにこのサンプルを温度85℃、湿度85%の環境試験箱による1000時間の環境試験を行った。変換効率の変化は0.03%低下しただけで全く問題なかった。
【0066】
(実施例4)
真空排気およびガス供給後、ヒータユニット236、237、238、224、225を400℃になるよう温度を制御して1時間加熱した以外は実施例1と同じ条件で作製した。
【0067】
途中反射層と透明導電層の形成された基板を分光光度計で反射率を測定したところ800nmの波長で比較例1の反射率を100%として比べた時、120%の高い反射率であった。また完成後AM1.5(100mW/cm2)の光照射下にて特性評価を行ったところ、光電変換効率で比較例1の変換効率を100%として比べた時、117%の優れた変換効率が得られた。
【0068】
さらにこのサンプルを温度85℃、湿度85%の環境試験箱による1000時間の環境試験を行った。変換効率の変化は0.04%低下しただけで全く問題なかった。
【0069】
(比較例1)
真空排気およびガス供給後、ヒータユニット224、225のみそれぞれ150℃、250℃に加熱し、予備加熱を行わないで搬送を開始し、活性酸素処理室206、207両方に、酸素ガスは同量供給するが直流電力を供給せず、反射層の表面を活性酸素にさらすことなく作製した以外は実施例1と同じ条件で作製した。
【0070】
途中反射層と透明導電層の形成された基板を分光光度計で反射率を測定し800nmの波長を100%として反射率の比較対象とした。また完成後AM1.5(100mW/cm2)の光照射下にて特性評価を行い得られた 光電変換効率を100%として比較対象とした。
【0071】
(比較例2)
真空排気およびガス供給後、ヒータユニット224、225のみそれぞれ150℃、250℃に加熱し、予備加熱を行わないで搬送を開始した以外は実施例1と同じ条件で作製した。
【0072】
完成後AM1.5(100mW/cm2)の光照射下にて特性評価を行ったところ、光電変換効率で比較例1の変換効率を100%として比べた時、114%の変換効率しか得られなかった。
【0073】
(比較例3)
真空排気およびガス供給後、ヒータユニット224、225のみそれぞれ150℃、250℃に加熱し12時間保った後搬送を開始した以外は実施例1と同じ条件で作製した。
【0074】
完成後AM1.5(100mW/cm2)の光照射下にて特性評価を行ったところ、光電変換効率で比較例1の変換効率を100%として比べた時、114%の変換効率しか得られなかった。
【0075】
(比較例4)
活性酸素発生室206の直流電力を400Wとした以外は比較例1と同じ条件で作製した。完成後AM1.5(100mW/cm2)の光照射下にて特性評価を行ったところ、光電変換効率で比較例1の変換効率を100%として比べた時、88%の変換効率しか得られなかった。
【0076】
(比較例5)
ガスゲート226へのアルゴンガスの供給を停止し、反射層作製室205へのアルゴンガスの供給量を5sccmに低減した以外は実施例1と同じ条件で作製した。完成後AM1.5(100mW/cm2)の光照射下にて特性評価を行ったところ、光電変換効率で比較例1の変換効率を100%として比べた時、80%の変換効率しか得られなかった。
【0077】
どの程度の酸素混入で影響が出るかを調べるため反射層作製室へのアルゴンガスに酸素ガスを意図的に混合して透明導電層まで作製し反射率を作製した。合計流量を35sccmとし酸素ガス量を2sccm、4sccm、8sccmと変化させた結果、それぞれの反射率は800nmの波長で比較例を100%としたときに120%、115%、85%となった。4sccm以上、つまりは約10%以上の酸素混入で著しく反射率が低下した。
【0078】
【発明の効果】
本発明によって作製される反射層及び透明導電層を用いる事により、入射する光を有効に利用できるため半導体への光の吸収が増加し高い変換効率が得られ、より小面積での光電変換素子の利用が可能となる。また長時間にわたり連続した光電変換素子の作製が可能で、安価でかつ信頼性の高い光電変換素子の系統電力用としての本格的な普及に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電変換素子の一例
【図2】本発明の光電変換素子の反射層及び透明導電層を作製するに好適なスパッタリング装置の一例
【符号の説明】
100 活性酸素処理される領域
101 基板
102 反射層
103 透明導電層
104 半導体接合層
105 n型a−Si
106 i型a−Si
107 p型μc−SI
108 反射防止膜
109 集電電極
110 出力端子
111 保護樹脂
201 送り出し室
202 ロール状基板
203 ガイドローラ
204 基板
205 反射層作製室
206、207 活性酸素処理室
208、209 透明電極層作製室
210 巻き取り室
211 巻き取りロール
212 ステアリングローラ
213 合紙ロール
214 反射層用ターゲット
215、216 グロー放電用カソード電極
217、218 透明導電層用ターゲット
219〜223 直流電源
224、225 基板加熱用ヒータ
226 ガスゲート
227、228、229 しきり板
230〜234 ガス導入管
235 マグネットローラ
236〜238 予備加熱用ヒータ
239 真空ポンプ
240 拡散ポンプ
Claims (22)
- 成膜室を大気開放した後に、該成膜室を減圧し、該成膜室を350℃以上550℃以下の温度で10分以上135分以下の時間加熱した後、冷却または放冷し、該成膜室を所定の成膜温度に設定し、基板上に金属反射層を形成する工程と、該金属反射層表面に活性酸素を接触させる工程と、透明導電層を形成する工程とを有することを特徴とする堆積膜製造方法。
- 成膜室は複数の成膜室が単一の真空槽を形成するように連結されていることを特徴とする請求項1記載の堆積膜製造方法。
- 成膜室を大気開放した後に、長尺基板を基板送り出し室から複数の成膜室を貫通して基板巻き取り室で巻き取るようにセットし、該成膜室を減圧し、該成膜室を350℃以上550℃以下の温度で10分以上135分以下の時間加熱した後、該成膜室を所定の成膜温度に設定し、長尺基板上に金属反射層を形成する工程と、該金属反射層表面に活性酸素を接触させる工程と、透明導電層を形成する工程とを有することを特徴とする堆積膜製造方法。
- 金属反射層を形成する前に成膜室を加熱する温度は400℃から500℃の範囲で、且つ時間は15分から120分の範囲であることを特徴とする請求項1又は3記載の堆積膜製造方法。
- 加熱及び、冷却または放冷を複数回行うことを特徴とする請求項1又は3記載の堆積膜製造方法。
- 成膜はスパッタリング法、真空蒸着法、化学的気相成長法、イオンプレーティング法、及びイオンビーム法のいずれかにより行われることを特徴とする請求項1又は3記載の堆積膜製造方法。
- 活性酸素に接触させる空間から、金属層の成膜室へ混入する酸素ガスのガス分圧が10%以下であることを特徴とする請求項1又は3記載の堆積膜製造方法。
- 活性酸素に接触させる空間と金属層の成膜室との間にガスゲート又はピンチバルブを有することを特徴とする請求項1又は3記載の堆積膜製造方法。
- 長尺基板を連続的に搬送しながら成膜することを特徴とする請求項3記載の堆積膜製造方法。
- 成膜中は長尺基板の搬送を停止し、成膜終了後に長尺基板を搬送して、引き続く成膜室で成膜を行うことを特徴とする請求項3記載の堆積膜製造方法。
- 請求項3記載の方法で長尺基板上に金属層及び透明導電層を成膜する工程と、半導体層を形成する工程とを有することを特徴とする光起電力素子製造方法。
- 金属反射層を形成する前に成膜室を加熱する温度は400℃から500℃の範囲で、且つ時間は15分から120分の範囲であることを特徴とする請求項11記載の光起電力素子製造方法。
- 加熱及び、冷却または放冷を複数回行うことを特徴とする請求項11記載の光起電力素子製造方法。
- 成膜はスパッタリング法、真空蒸着法、化学的気相成長法、イオンプレーティング法、及びイオンビーム法のいずれかにより行われることを特徴とする請求項11記載の光起電力素子製造方法。
- 活性酸素に接触させる空間から、金属層の成膜室へ混入する酸素ガスのガス分圧が10%以下であることを特徴とする請求項11記載の光起電力素子製造方法。
- 活性酸素に接触させる空間と金属層の成膜室との間にガスゲート又はピンチバルブを有することを特徴とする請求項11記載の光起電力素子製造方法。
- 長尺基板を連続的に搬送しながら成膜することを特徴とする請求項11記載の光起電力素子製造方法。
- 成膜中は長尺基板の搬送を停止し、成膜終了後に長尺基板を搬送して、引き続く成膜室で成膜を行うことを特徴とする請求項11記載の光起電力素子製造方法。
- 金属反射層はAl、Ag、Cuから選ばれる一種であることを特徴とする請求項11記載の光起電力素子製造方法。
- 透明導電層はZn、Ti、In、Snから選ばれる少なくとも一種の酸化物であることを特徴とする請求項11記載の光起電力素子製造方法。
- 透明導電層は第1の透明導電層と、該第1の透明導電層の成膜温度よりも高い温度で成膜する第2の透明導電層からなることを特徴とする請求項11記載の光起電力素子製造方法。
- 半導体層は非単結晶半導体であることを特徴とする請求項11記載の光起電力素子製造方法。
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