JP3006701B2 - 薄膜半導体太陽電池 - Google Patents

薄膜半導体太陽電池

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JP3006701B2 JP4361503A JP36150392A JP3006701B2 JP 3006701 B2 JP3006701 B2 JP 3006701B2 JP 4361503 A JP4361503 A JP 4361503A JP 36150392 A JP36150392 A JP 36150392A JP 3006701 B2 JP3006701 B2 JP 3006701B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、裏面反射層を有する薄
膜半導体太陽電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】薄膜半導体太陽電池においては、入射す
る太陽光の有効利用を図るべく、透明な基板の基板側か
ら太陽光を入射させる構成の場合には、薄膜半導体の表
面に形成する電極を、銀(Ag)、アルミニウム(A
l)、銅(Cu)等の反射率の高い金属で形成し、一
方、半導体層の表面側から太陽光を入射させる構成の場
合には、同様の金属層を基板上に形成した後に半導体層
を形成するものが知られている。
【0003】また、前記後者の構成の場合、金属層と薄
膜半導体層の間に適当な光学的性質を持った透明層を介
在させると、多重干渉効果によりさらに反射率を高める
ことや薄膜半導体太陽電池の信頼性を向上し得ることも
知られている。一方、特公昭60−41878号公報に
は、前記透明層を用いることにより半導体と金属層との
合金化防止について記載されている。また、米国特許第
4,532,372号及び第4,598,306号に
は、適度な抵抗を有する透明層を用いると、仮に半導体
層に短絡箇所が発生しても電極間に過剰な電流が流れる
のを防止できる旨の記載がある。
【0004】他方、薄膜半導体太陽電池については、そ
の変換効率を高めるための他の手段として、太陽電池の
表面と裏面反射層との少なくとも一方の界面を微細な凹
凸状とする(テクスチャー構造)手法がある。かかる手
法では、太陽電池の表面と裏面反射層との界面で太陽光
が散乱され、該散乱光が半導体の内部に閉じ込められる
こと(光トラップ効果)により、半導体中でのより有効
な光吸収を図るようにしたものである。
【0005】この場合、基板が透明な場合には、基板上
の酸化錫(SnO2 )等の透明電極の表面をテクスチャ
ー構造とし、また、薄膜半導体の表面から太陽光を入射
する場合には、裏面反射層に用いる金属層の表面をテク
スチャー構造とする技術が知られている。さらに、M.
Hirasaka,K.Suzuki,K.Nakat
ani,M.Asano,M.Yano,H.Okan
iwa等は、Alを基板温度や堆積速度を調整して堆積
することにより裏面反射層用のテクスチャー構造が得ら
れるとする内容の技術を開示している(Solar C
ell Materials 20(1990)pp9
9〜110)。
【0006】さらに、金属層と透明層の2層から成る裏
面反射層を設ける手法と、テクスチャー構造を形成する
手法を組み合わせた技術も知られている。例えば、米国
特許第4,419,533号には、金属層の表面がテク
スチャー構造を有し、且つ、その上に透明層が形成され
た裏面反射層を設ける手法が開示されており、これによ
り太陽電池の変換効率を向上させようとしたものであ
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術の手法では、本発明者等による知見によれば、実
際には上記予期されたほどの効果が得られないことが解
った。また、薄膜半導体の堆積条件によっては、透明層
が設けられているにも拘らず、形成された太陽電池の高
温、高湿下での使用に対する十分な信頼性が得られない
場合も生じる。このため、薄膜半導体太陽電池は低価格
にて生産できる可能性がありながら、太陽光発電用には
本格的に普及するに至っていなかった。
【0008】具体的には、従来の裏面反射層には次のよ
うな問題点がある。 (1)金属層及び透明層の積層構造から成る裏面反射層
を用いると、太陽電池の電圧−電流特性については、F
F(曲線因子)の低下が多く見られる。特に、金属とし
てAlを用いた場合に多い。 (2)透明層をテクスチャー化す場合、必ずしもその
サイズ(凹凸のピッチ等)の再現性が良くない。そのた
め、太陽電池のJsc期待したほど大きくすることが
できない。
【0009】本発明者等は、これらの問題点が発生する
原因を解明するために、以下のような実験を行った。ま
ず、5cm×5cmのステンレス板(SUS430)上
にマルチターゲット方式の装置を用い、DCマグネトロ
ンスパッタ法にてAlを1000 堆積した。この時の
基板温度を室温とした。その上に同じ装置内で真空を破
ることなく基板温度を250度に上昇させ、直ちにDC
マグネトロンスパッタ法にてZnOを4000 堆積し
た。SEM観察によると、Alの表面は平滑であり光沢
があったが、ZnOの表面は、直径4000〜5000
程度のクレーター状の凹部が密集しており白濁してい
た。これを基板1とする。
【0010】次いで、同じ装置でAlを堆積した後、一
旦基板を装置から取り出し1日放置してから再度装置に
セットしZnOを堆積した。これを基板2とする。基板
2のZnOの表面を観察すると、クレーター状の凹部は
直径2500〜4000Å程度となり白濁も少なかっ
た。さらに、Alの堆積後基板温度を250度に上げた
後ZnOの堆積開始まで1時間そのまま放置(アニー
ル)した以外は基板1と同じ手順で、基板3を形成し
た。該基板3のZnOの表面を観察すると、クレーター
状の凹部は直径4000〜5000Å程度となり白濁し
た。
【0011】さらに、これらの基板の上にCrの電極を
形成し、基板との間の抵抗を評価した。この抵抗値は、
基板1では1cm2 当り0.2Ωであったが、基板2で
は1cm2 当り5Ω、基板3では1cm2 当り2Ωであ
った。このようにして形成され3種の裏面反射層の上
にグロー放電分解法にて、SiH4 、PH3 を原料ガス
としてn型a−Si層を200 、SiH4 、GeHe
4 を原料ガスとしてi型a−SiGe層を4000 、
SiH4 、BF3 、H2 を原料ガスとしてp型微結晶
(μc)Si層を100 夫々堆積し薄膜半導体接合と
した。
【0012】尚、SiH4 やGeHe4 などのグロー放
電分解法によるa−Siやa−SiGe中には、10%
程度の水素(H)が含まれるので、一般にはa−Si:
Hやa−SiGe:Hと表記されるべきものであるが、
本明細書中では簡略化して単にa−Siやa−SiGe
と表記するものとする。前記薄膜半導体接合の上には、
透明電極として抵抗加熱蒸着法によりITO膜を650
Åの厚みで堆積した。さらにその上に銀ペーストで幅3
00μmの集電電極を形成した。このようにして得られ
た太陽電池の試料種別を、夫々太陽電池1、太陽電池
2、太陽電池3とした。
【0013】次いで、これらの太陽電池をAM−1.5
(100mW/cm2 )のソーラーシミュレーターの下
で測定し、電流−電圧特性を評価した。表1は以上の測
定結果をまとめたものである。
【0014】
【表1】 基板1〜3の特性と太陽電池1〜3の特性の相関から次
のことがいえる。 (1)太陽電池2はJscが小さい。これはZnOの凹
凸のピッチが小さく、光閉じこめが不十分なためと考え
られる。 (2)また、太陽電池、太陽電池はFFが小さい。
これはシリーズ抵抗が高く、電圧降下が大きいためと考
えられる。 (3)このようにAl層の堆積後の違いによって裏面反
射層の特性、さらにはその裏面反射層を用いた太陽電池
の特性が影響を受ける。
【0015】かかる現象が起こる原因を明らかにするた
め、基板1〜3をオージェ分析してその組成プロファィ
ルを測定すると、Al層の表面に、基板2,3では約3
0〜60Å程度の酸化アルミ層が形成されていることが
解かった。シリーズ抵抗の増加やテクスチャー構造の変
化はこの酸化アルミ層の生成によるものと考えられる。
Alは、反射率が高く低価格であり太陽電池の裏面反射
層として好適な金属である。しかし以上のように表面の
特性が不安定なため、再現性に乏しく半導体層の堆積時
の基板温度に制約があり応用範囲が狭い。
【0016】本発明は、上記従来技術の課題を解決する
べくなされたものであり、改良された裏面反射層を用い
ることにより、入射する太陽光を有効に利用でき、基板
と半導体層との間のシリーズ抵抗が下がるため高い変換
効率が得られ、しかも半導体層と金属層の直接の接触や
欠陥箇所でのリーク電流が防止できるため信頼性が高
く、しかも、低コストとなる薄膜半導体太陽電池を提供
することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記従来技術の課題を解
決するべく、請求項1に係る薄膜半導体太陽電池は、少
なくともその表面が、アルミニューム又はアルミニュー
ムの合金から成る第1の部分と、該第1の部分とは異な
る金属から成る島状に分布した第2の部分とが混在し基
板上に、少なくともその表面がテクスチャー構造を有す
る透明層が形成された裏面反射層の上に、薄膜半導体接
合が形成され、更にその上に透明な電極が形成されたこ
とを特徴とする。
【0018】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記第2の部分は、前記基板の全表面積に占める割
合が30%以下であることを特徴とする。請求項3の発
明は、前記裏面反射層は、これを構成する金属層が、少
なくともAl(100-x) Six (但し≦x≦0.5)で
ある基板側の第1の層と、Al(100-x)Six (但し2
≦x≦)である透明層側の第2の層から成ることを特
徴とする。
【0019】
【作用】図1において、101は金属基板である。その
表面に反射率の高い金属の層102Aが形成されてい
る。金属層102Aには微細な孔102Bが無数に形成
されているので、該孔102Bを介して金属基板101
の表面が露出している。その上に透明層103が形成さ
れている。該透明層は、薄膜半導体層104を透過した
太陽光に対しては透明であり、また、適度な電気抵抗を
有し、その表面はテクスチャー構造となっている。な
お、該透明層103上には薄膜半導体接合104が形成
されている。
【0020】ここでは、薄膜半導体接合104としてp
in型のa−Si太陽電池を用いた例を示す。即ち10
5はn型a−Si、106はi型a−Si、107はp
型a−Siである。薄膜半導体接合104が薄い場合に
は、図1に示すように薄膜半導体接合の全体が、透明層
103と同様のテクスチャー構造を示すことが多い。1
08は表面の透明電極である。その上に櫛型の集電電極
109が設けられている。
【0021】かかる構成の薄膜半導体太陽電池を得る手
順は次の通りである。5cm×5cmのステンレス板
(SUS430)上にマルチターゲット方式の装置を用
い、DCマグネトロンスパッタ法にてAlを250Å堆
積した。この時の基板温度を250度とした。その上に
同じ装置内で真空を破ることなく直ちにDCマグネトロ
ンスパッタ法にてZnOを4000Å堆積した。
【0022】SEM観察によると、ZnOの表面は、直
径5000〜6000Å程度のクレーター状の凹部が密
集しており白濁していた。これを基板4とする。また、
Alの堆積が終わった状態の表面を高倍率(10万倍)
でSEM観察すると、堆積されたAl層には直径500
〜1000Å程度の不定形の孔が、略5000〜600
0程度のピッチで無数に開いていた。
【0023】次いで、同じ装置でAlを堆積した後、一
旦基板を装置から取り出し1日放置してから再度装置に
セットしZnOを堆積した。これを基板5とする。基板
5のZnOの表面を観察すると、クレーター状の凹部は
直径400〜6000Å程度となり白濁していた。続い
て、Alの堆積後基板温度を250度に上げた後ZnO
の堆積開始まで1時間アニールした以外は基板4と同じ
手順で、基板6を形成した。基板6のZnOの表面を観
察すると、クレーター状の凹部は直径5000〜600
0Å程度となり白濁していた。
【0024】さらに、これらの基板の上にCrの電極を
形成し、基板との間の抵抗を評価した。基板4では1c
2 当り0.2Ω、基板5では1cm2 当り0.5Ω、
基板6では1cm2 当り0.4Ωであった。このように
して形成された裏面反射層を有する基板を用い、上記太
陽電池1〜3と同様の手順で太陽電池4〜6を形成し
た。
【0025】次いで、これらの太陽電池をAM−1.5
(100mW/cm2 )のソーラーシミュレーターの下
で測定し、電流−電圧特性を評価した。表2は以上の測
定結果をまとめたものである。
【0026】
【表2】 さらに、基板4,5,6のオージェ分析を行うと、基板
5,6においてはAlの表面に約30〜60Åの酸化層
が認められた。このようにAlが基板1〜3と同様な履
歴を経て表面に酸化層の形成が認められているにも拘ら
ず基板の特性も太陽電池の特性も殆ど変化が見られなか
った。かかる改善が見られた理由は次のように推測され
る。 (1)金属層102AたるAlの表面が酸化しても基板
101のステンレス面が孔から露出しているため、導通
が損なわれない。しかも孔の面積の割合が小さいので平
均的な反射率は殆ど全面Alの場合と変化ない。 (2)ZnOのテクスチャー構造の発達がAlの孔10
2Bの分布を反映するため表面の状態の変化に影響され
難い。
【0027】次に、Alに代えてSiを5wt%含むA
lSi合金を金属層として実験を行った。AlSiは高
温に於ける安定性が優れているので、半導体層と接触す
る構成で多く使用される材料である。Alの代わりにA
lSiを用いた以外は基板1と同様にして基板7を得
た。またAlの代わりにAlSiを用いた以外は基板2
と同様にして基板8を得た。Alの代わりにAlSiを
用いた以外は基板5と同様にして基板9を得た。これら
の基板を基板1〜6と同様に評価した。また基板9でA
lの堆積が終わった状態の表面を高倍率(10万倍)で
SEM観察すると、堆積されたAl層には直径500〜
1000Å程度の不定形の孔が、ほぼ4000〜500
0Å程度のピッチで無数に開いていた。
【0028】このようにして形成した裏面反射層を用
い、太陽電池1,2,5と同様に太陽電池7,8,9を
形成した。次いで、これらの太陽電池をAM−1.5
(100mW/cm2 )のソーラーシミュレーターの下
で測定し、電流−電圧特性を評価した。表3は以上の測
定結果をまとめたものである。
【0029】
【表3】 基板7,8,9のオージェ分析を行なうと、基板8,9
においてはAlSiの表面に約50Åの酸化層が認めら
れた。そのため太陽電池8では太陽電池特性の低下が認
められるが、AlSiの表面性の変化にも関わらず、太
陽電池9では太陽電池特性の低下が認められず、Alの
場合ばかりでなくAlSiの場合にも本発明のように構
成すると効果を奏することが解かった。すなわち、本発
明の構成によれば安定性良く、Alの高い反射率を生か
すことができる。
【0030】次に、本発明の薄膜半導体太陽電池におい
て用いられる裏面反射層について詳しく説明する。 (基板及び金属層) 基板としては各種の金属が用いられる。中でもステンレ
ススティール板、亜鉛鋼板、アルミニューム板、銅板等
は、価格が比較的低く好適である。これらの金属板は、
一定の形状に切断して用いても良いし、板厚によっては
長尺のシート状の形態で用いても良い。この場合にはコ
イル状に巻くことができるので連続生産に適合性がよ
く、保管や輸送も容易になる。又用途によってはシリコ
ン等の結晶基板、ガラスやセラミックスの板を用いるこ
ともできる。基板の表面は研磨しても良いが、例えばブ
ライトアニール処理されたステンレス板の様に仕上がり
の良い場合にはそのまま用いても良い。
【0031】ステンレススティールや亜鉛鋼板の様にそ
のままでは光の反射率が低い基板では、その上にアルミ
ニュームの様な反射率の高い金属の層を堆積して用い
る。またガラスやセラミックスの様にそのままでは導電
性の低い材料でも、導電性の高い金属の層を設けること
によって基板として使用可能となる。反射率の高い金属
としてアルミニュームは堆積が容易で価格も低く大面積
デバイスへの応用に向いている。また反射率の一層の改
善、熱的安定性の改善等の見地から、アルミニュームに
Siの他にもCu,Ag,Ni,Mo,Cr等の金属を
適当量含有させた合金も好適に使用できる。
【0032】金属層の堆積には、抵抗加熱や電子ビーム
による真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーテ
ィング法、CVD法、メッキ法等が用いられる。成膜法
の一例としてスパッタリング法の場合を説明する。図4
はスパッタリング装置の一例を示すものである。同図に
おいて、401は堆積室であり、不図示の排気ポンプで
真空排気できる。この内部に、不図示のガスボンベに接
続されたガス導入管402より、アルゴン(Ar)等の
不活性ガスが所定の流量導入され、排気弁403の開度
を調整し堆積室401内は所定の圧力とされる。また、
基板404は内部にヒーター405が設けられたアノー
ド406の表面に固定される。アノード406に対向し
てその表面にターゲット407が固定されたカソード電
極408が設けられている。ターゲット407は堆積さ
れるべきAl等の金属のブロックである。
【0033】ターゲット407は、通常は純度99.9
%乃至99.999%程度の純金属であるが、場合によ
り特定の不純物を導入しても良い。カソード電極は電源
409に接続されている。電源409により、ラジオ周
波数(RF)や直流(DC)の高電圧を加え、カソード
・アノード間にプラズマ410を発生させる。このプラ
ズマの作用によりターゲット407の金属原子が基板4
04上に堆積される。またカソード408の内部に磁石
を設けプラズマの強度を高めたマグネトロンスパッタリ
ング装置では、堆積速度を高めることができる。
【0034】堆積条件の一例を挙げる。直径6インチ純
度99.99%のAlターゲットを用いた。表面を研磨
した5cm×5cm厚さ1mmのステンレス板(SUS
430)を基板とした。ターゲット基板間の距離を5c
mとした。Arを10sccm流しつつ、圧力を1.5
mTorrに保った。直径6インチ純度99.99%の
Alターゲットを用い500Vの直流電圧を加えると、
プラズマが発生して2アンペアの電流が流れた。この状
態で1分間放電を継続した。
【0035】基板温度を、室温、100度、200度、
300度と変えて試料5a,5b,5c,5d,とし
た。温度を高めるとAlの表面が平滑面からテクスチャ
ー構造へと変化した。また基板温度300度で堆積を5
秒間で終了した状態の表面を高倍率(10万倍)でSE
M観察したことろ堆積されたAl層には直径500〜1
000Å程度の不定形の孔が、略5000〜7000Å
程度のピッチで無数に開いていた。他の金属、他の成膜
方法に於いても概ね同様の傾向が見られる。
【0036】(透明層及びそのテクスチャー構造)透明
層としては、ZnOをはじめIn2 3 , SnO2 ,C
dO,CdSnO4 ,TiO等の酸化物が多く用いられ
る(ただし、ここで示した化合物の組成比は実態と必ず
しも一致していない)。該透明層は、光の透過率につい
ては一般的には高いほど良いが、薄膜半導体に吸収され
る波長域の光に対しては透明である必要はない。また、
該透明層はピンホール等による電流を抑制するためには
むしろ電気抵抗を有している方がよい。ただし、この抵
抗は、そのシリーズ抵抗損失が太陽電池の変換効率に与
える影響を無視し得る範囲である必要がある。
【0037】かかる観点から単位面積(1cm2 )当り
の抵抗の範囲は好ましくは10-6〜10Ω、更に好まし
くは10-5〜3Ω、最も好ましくは10-4〜1Ωであ
る。また透明層の膜厚は透明性の点からは薄いほどよい
が、表面のテクスチャー構造を取るためには平均的な膜
厚として1000Å以上必要である。また信頼性の点か
らこれ以上の膜厚が必要な場合もある。テクスチャー構
造については後に詳述する。
【0038】透明層の堆積には、抵抗加熱や電子ビーム
による真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーテ
ィング法、CVD法、スプレーコート法等が用いられ
る。成膜法の一例としてスパッタリング法を説明する。
この場合も図4に示すようなスパッタリング装置が使用
できる。ただし、酸化物ではターゲットとして酸化物そ
のものを用いる場合と、金属(Zn,Sn等)のターゲ
ットを用いる場合とがある。後者の場合では、堆積室に
Arと同時に酸素を流す必要がある(これは反応性スパ
ッタリング法と呼ばれる)。
【0039】堆積条件の一例を挙げる。表面を研磨した
5cm×5cmのサイズで厚みが1mmのステンレス板
(SUS430)を基板とした。直径6インチ純度9
9.9%のZnOターゲットを用い、ターゲット基板間
の距離を5cmとして、Arを10sccm流しつつ、
圧力を1.5mTorrに保ち、直流電圧を加えると、
プラズマが発生して1アンペアの電流が流れた。この状
態で5分間放電を継続した。基板温度を、室温、100
度、200度、300度と変えてZnOを堆積した。温
度を高めるとZnOの表面が白濁した。白濁が生じた試
料は、図5に示すように、表面にクレーター状の凹部が
見られるが、これが白濁の原因と考えられる。
【0040】光閉じ込めが起こる理由としては、金属層
自身がテクスチャー構造を取っている場合には金属層で
の光の散乱が考えられるが、金属層が平滑で透明層がテ
クスチャー構造を取る場合には、薄膜半導体の表面と透
明層との少なくとも一方の界面において、入射光の位相
が凹部と凸部でずれることによる散乱が考えられる。ピ
ッチとして好ましくは3000〜20000Å程度、よ
り好ましくは4000〜15000Å、また、高さの差
として好ましくは500〜20000Å、より好ましく
は700〜10000Åである。また、薄膜半導体の表
面が透明層と同様なテクスチャー構造になると光の位相
差による光の散乱が起こり易く、光トラップの効果が高
い。
【0041】また、透明層の比抵抗を制御するためには
適当な不純物を添加すると良い。本発明の透明層として
は、前述したような導電性酸化物では比抵抗が低すぎる
傾向がある。そこで不純物としては、その添加により抵
抗を適度に高めるものが好ましい。例えばn型の半導体
である透明層にアクセプター型の不純物(例えばZnO
にCu,SnO2 にAl等)を適当量加えて真性化し抵
抗を高めることができる。また、不純物を添加すると耐
薬品性を高める場合が多い。
【0042】透明膜中に不純物を添加するには上記実験
例にて説明したように蒸発源やターゲットに所望の不純
物を添加しても良いし、特にスパッタリング法ではター
ゲットの上に不純物を含む材料の小片を置いても良い。
図9は、裏面反射層がテクスチャー構造を有し、金属層
902とこの上に形成された10-2〜105 Ωcmの範
囲の比抵抗を有する透明層905とから成り、表面に半
導体接合906が形成され、更にその上に透明な電極9
10が形成されて成る薄膜半導体太陽電池を示すもので
ある。該薄膜半導体太陽電池は、裏面反射層のうちの金
属層902が、少なくともAl(100-X) SiX (但し、
0≦x≦0.5)である基板側の第1の層903と、A
(100-X) SiX (但し、2≦x≦6)である透明層側
の第2の層904とから成る。その他の作製条件を同様
にして作成すると、その変換効率は7.5%となりAl
Siのみを使った場合に比べ向上した。
【0043】かかる効果を奏する理由は明確ではない
が、テクスチャー形状が僅かに異なる材料を2層にする
ことにより、より有効に光を半導体層へ散乱させ得るた
めと推測される。次いで、図9に示すような構成の薄膜
太陽電池の各構成要素について詳しく説明する。
【0044】(基板)基板としては各種の金属、有機フ
ィルム、ガラス、セミックスなどが用いられる。中でも
ステンレススティール板、亜鉛鋼板、アルミニュ−ム
板、銅板等は、価格が比較的低く好適である。これらの
金属板は、一定の形状に切断して用いても良いし、板厚
によっては長尺のシート状の形態で用いても良い。この
場合にはコイル状に卷装できるので連続生産に適合性が
よく、保管や輸送も容易になる。
【0045】基板の表面は研磨しても良いが例えばブラ
イトアニール処理されたステンレス板の様に仕上がりの
良い場合にはそのまま用いても良い。 (金属層)金属層の堆積には真空蒸着法やスパッタリン
グ法やCVD法などが用いることができる。図10はそ
のスパッタリング装置の一例を示すものである。同図に
示すように、この場合、2種類の材料が連続的に作成で
きるように、2つの堆積室1001、1002を設けて
いる。一方のターゲット1010はAlであり、他方の
ターゲット1011はAl95Si5 である。
【0046】(透明層)透明層の光の透過率は一般的に
は高いほど良いが、この条件は薄膜半導体に充分吸収さ
れる波長の光に対しても成立する必要はないと共に、薄
膜半導体には全く吸収されない波長の光に対して成立す
る必要もない。すなわち、a−SiGeの半導体層であ
れば、少なくとも波長6500〜10000Åの範囲の
波長の光に対して成立しているだけでよい。
【0047】従って、透明層はZnO、SnO2 等が好
適に使用できる。また、透明層は半導体層のピンホール
などによる短絡電流を抑制するためにはむしろある程度
の抵抗があった方がよい。一方、この抵抗によるシリー
ズ抵抗損失が太陽電池の変換効率に与える影警が無視で
きる囲でなくてはならない。かかる観点から透明層の
抵抗の範囲は、好ましくは10-2〜105 Ωcmであ
る。透明層の堆積の手法としては、抵抗加熱や電子ビー
ムによる真空蒸着法、図11に示すようなスパッタリン
グ法、イオンプレーティング法、CVD法、スプレーコ
ート法等が用いられる。
【0048】(薄膜半導体層)図9に示す構成の薄膜半
導体層は、マイクロ波を用いたCVD装置や容量結合型
高周波CVD装置で作製できる。十分に排気が行われた
時点で、ガス導入管より、SiH4 、SiF4 、PH3
/H2 (1%H2 希釈)、H2 40sccmを導入し、
スロットルバルブの開度を調整して、反応容器の内圧を
適当な圧力に保持し、圧力が安定した時点で、直ちにマ
イクロ波電源や高周波電源よりエネルギーを投入する。
【0049】これによりプラズマが生成すると、透明層
205上にn型a−Si層207が形成される。再び排
気をした後に、今度はガス導入管よりSiH4 、GeH
4 、SiF4 、H2 を導入し、スロットルバルプの開度
を調整して、反応容器の内圧を適当な圧力に保持し、圧
力が安定した時点で、直ちにエネルギーを投入し、プラ
ズマを持続させる。
【0050】これにより、i型a−SiGe層208が
n型a−Si層207上に形成される。この時必要に応
じてはSiH4 とGeH4 の流量比を変え適当な組成の
膜とすることも可能である。再び排気をした後に、今度
はガス導入管よりSiH4 、BF3 2 (1%H2
釈)、H2 を導入し、スロットルバルプの開度を調整し
て、反応容器の内圧を適当な圧力に保持し、圧力が安定
した時点で、直ちにエネルギーを投入し、プラズマを持
続させた。このようにしてp型a−Si層209がi型
a・SiGe層208上に形成される。
【0051】p型、n型の層は逆の順序でも良い。本説
明ではバッチ式のCVD装置を使ったが帯状の基板を利
用し各層を作製する堆積を別々に持つロール・ツー・
ロールのCVD装置で連続的に作製してもよい。 (透明電極と集電電極) 次に、試料を高周波CVD装置より取り出し、抵抗加熱
真空蒸着装置にてITOを堆積した後、塩化鉄水溶液を
含むぺ一ストを印刷し、所望の透明電極のバターンを形
成する。更にAgペーストをスクリーン印刷して集電電
極を形成し薄膜半導体太陽電池が完成する。
【0052】
【実施例】(実施例1) 本実施例においては、図2の断面模式図に示す構成のp
in型a−Si光起電力素子を作製した。表面を研磨し
た5cm×5cm厚さ1mmのAl板201に図4に示
すスパッタリング装置により、基板温度を300度とし
てCrをEB蒸着装置にて短時間堆積した。この状態の
表面を高倍率(10万倍)でSEM観察すると、金属層
たるCr層202Bは堆積時間に応じて微少な島状乃至
斑状をなして堆積されていた。大気中で1週間放置後、
ZnOターゲットを用いてスパッタリング装置にて基板
温度250度にて平均的な厚さが4000 のZnO層
203を堆積し基板11〜14とした。ZnOの表面は
テクスチャー構造となった。
【0053】なお、比較例として金属層たるCrを堆積
させなかった以外は本実施例1と同様の手順で基板10
を作製した。さらに、基板10〜14を市販の容量結合
型高周波CVD装置(アルバック社製CHJ−303
0)にセットした。排気ポンプを用い、反応容器の排気
管を介して、荒引き、高真空引き操作を行った。この
時、基板の表面温度は250℃となるよう、温度制御機
構により制御した。十分に排気が行われた時点で、ガス
導入管より、SiH4 300sccm、SiF4 4sc
cm、PH3 /H2 (1%H2 希釈)55sccm、H
2 40sccmを導入し、スロットバルブの開度を調
整して、反応容器の内圧を1Torrに保持し、圧力が
安定した時点で、直ちに高周波電源より200Wの電力
を投入した。プラズマは5分間持続させた。
【0054】これにより、n型a−Si層205が透明
層203上に形成された。再び排気をした後に、今度は
ガス導入管よりSiH4 300sccm、SiF4 4s
ccm、H2 40sccmを導入し、スロットルバルブ
の開度を調整して、反応容器の内圧を1Torrに保持
し、圧力が安定した時点で、直ちに高周波電源より15
0Wの電力を投入し、プラズマは40分間持続させた。
【0055】これによりi型a−Si層206がn型a
−Si層205上に形成された。再び排気をした後に、
今度はガス導入管よりSiH4 50sccm、BF3
2(1%H2 希釈)50sccm、H2 500scc
mを導入し、スロットルバルブの開度を調整して、反応
容器の内圧を1Torrに保持し、圧力が安定した時点
で、直ちに高周波電源より300Wの電力を投入した。
プラズマは2分間持続させた。
【0056】これにより、p型のμc−Si層207が
i型のa−Si層106上に形成された。次に、試料を
高周波CVD装置より取り出し、抵抗加熱真空蒸着装置
にてITOを堆積した後、塩化鉄水溶液を含むペースト
を印刷し、所望の透明電極208のパターンを形成し
た。更にAgペーストをスクリーン印刷して集電電極2
09を形成し薄膜半導体太陽電池10〜14(基板10
〜14に対応)を完成した。これらの太陽電池をAM
1.5(100mW/cm2 )光照射下にて特性評価を
行った。表4は、これらの基板、太陽電池の特性をまと
めたものである。
【0057】
【表4】 Zn層を全く形成していない太陽電池10に比べ、Cr
を形成した太陽電池11,12ではFFが著しく大きく
一方Jscは殆ど低下していない。こうして本発明の効
果が確認された。太陽電池14はJscが著しく低下し
ているが、これは反射率の低いCrの面積比が高いばか
りでなく、ZnOのテクスチャー構造の発達が悪いこと
も原因と見られる。従って異種の金属としては島状に堆
積され、かつ面積比としては30%以下であることが好
ましい。
【0058】(実施例2) 本実施例においては、図3に示すような構成のpin型
a−SiGe光起電力素子を作製した。表面を研磨した
cm×5cm厚さ1mmのステンレス板301にめっ
き法にて厚さ1μの表面がテクスチャー状をなすNiの
層302Bを形成した。この上に抵抗加熱蒸着法にてA
l層302Aを1000 堆積した。
【0059】さらに、これを水酸化アルミニューム水溶
液につけ、基板を正極とし、炭素棒を負極として直流電
圧を印加し基板15とした。基板15をマイクロオージ
ェ法にて分析すると、テクスチャーの凸部の頂上近くだ
け優先的にAlが溶解しNiが露出していた。一方、水
酸化アルミニューム水溶液に浸さなかった基板を基板1
6とした。
【0060】次いで、基板15,16にイオンプレーテ
ィング法にて、基板温度を300度として酸素雰囲気に
てCuを1.0%含むZnをとばし、平均的な厚さが1
μmで、表面がテクスチャー構造であるZnO層を堆積
した。ひき続き、i層として、Si2 5 を50scc
m、GeH4 を10sccm、H2 を300sccm導
入し、反応容器の内圧を1Torrに保持し、100W
の電力を投入しプラズマを10分間持続させて堆積した
a−SiGeを用いた以外は実施例1と同様にして太陽
電池15,16を作成した。
【0061】これらの試料をAM1.5(100mW/
cm2 )光照射下にて特性評価を行なうと、太陽電池1
5ではFFが62%と良好であったが、太陽電池16で
はFFが34%と極端に低下していた。この場合はZn
OがO2 を用いた反応性スパッタ法で堆積されるためA
lの表面が酸化されたと考えられる。しかし本発明の構
成を持つ太陽電池15ではその影響をうけずに済んでい
る。
【0062】(実施例3)本実施例は、図6に示す装置
を用いて連続的に裏面反射層の形成を行った。ここで基
板送り出し室603には洗浄済みの幅350mm、厚さ
0.2mm、長さ500mの、Cuを10%含むアルミ
ニューム合金のシートロール601がセットされてい
る。Cuを含有させることによってシートの高温下での
機械的強度が著しく高まる。ここからアルミニュームシ
ート602は金属層堆積室604、透明層堆積室605
を経て基板巻き取り室606に送られて行く。
【0063】シート602は各々の堆積室にて基板ヒー
ター607,608にて所望の温度に加熱できるように
なっている。堆積室604のターゲット609は純度9
9.99%のSnで、DCマグネトロンスパッタリング
によりシート602上にSnを堆積する。堆積室605
のターゲット610は純度99.9%のZnOで、DC
マグネトロンスパッタリングにより引き続きZnO層を
堆積する。堆積速度、所望の膜厚の関係でターゲット6
10は4枚からなる。
【0064】この装置を用いて裏面反射層の形成を行っ
た。シートの送り速度は毎分20cmとし、基板ヒータ
ー608のみを用いてSnの基板温度200度、ZnO
の基板温度を250度となるよう調整した。Arを流し
て圧力を1.5mTorrとし、各々のカソードに50
0VのDC電圧を加えた。ターゲット609には2アン
ペア、ターゲット610には各アンペアの電流が流れ
た。巻き取られたシートを調べると、Snは島状に分布
し面積比は20%であった。ZnO層の厚さは平均38
00ÅでありZnO層の表面は白濁していた。
【0065】この上に図7に示す構造のa−Si/a−
SiGeタンデム太陽電池を形成した。ここで701は
基板、702は金属層、703は透明層、704はボト
ムセル、708はトップセルである。さらに705,7
09はn型a−Si層、707,711はp型μc−S
i、706はi型a−SiGe層、710はi型a−S
i層である。なお、705,706の成膜は400度で
行った。これらの薄膜半導体層は、米国特許第4,49
2,181号に記載されているようなロール・ツー・ロ
ール型成膜装置を用いて連続的に製造した。
【0066】一方、図7の712は透明電極であり、該
透明電極は図6に示す装置に類似したスパッタリング装
置で堆積した。713は集電電極である。透明電極のパ
ターニング及び集電電極の形成を行った後シート602
を切断した。こうして全工程を連続的に処理し、量産効
果を上げることができた。この方法で100枚の試料を
作成し、AM1.5(100mW/cm2 )光照射下に
て特性評価を行なうと、光電変換効率で11.4±0.
2%と優れた変換効率が再現性良く得られた。また、こ
れらの太陽電池を温度50度湿度90%の環境下に10
00時間放置したが変換効率は11.5±0.5%と全
く劣化が認められなかった。また、この方法で作成した
別の100枚を、開放状態にてAM1.5相当の光に6
00時間照射すると、10.7±0.3%と光による劣
化も少なかった。
【0067】これはタンデム構成を取ることでより波長
の長い光まで有効に吸収されたためである。またa−S
iGe層の堆積温度を高く設定したため、光照射下での
劣化を抑えられたためである。こうして本発明の裏面反
射層の効果と相まって変換効率が高く、信頼性の高い薄
膜太陽電池が得られた。一方、Snを堆積しなかった以
外は、以上と全く同じ工程で太陽電池を作製した。光電
変換効率は4.7%±2.3%著しく低くかつ再現性が
無かった。これは基板を400度でアニールした後の裏
面反射層の抵抗が高くなっていることから、AlCuの
表面とZnOが反応を起こしたためであると考えられ
る。このような場合にも、本発明の構成の太陽電池は特
性上の影響を受けないことが解かった。
【0068】(実施例4)実施例1と同様の方法で裏面
反射層を形成した。この基板とCrを堆積しなかった基
板の上にスパッタリング法にてCuを0.2μm、イン
ジューム(In)を0.4μm堆積した。次いで、この
試料を石英ガラス製のベルジャーに移し400度に加熱
しながらベルジャー内に水素で10%に希釈したセレン
化水素(H2 Se)を流し、CuInSe2 (CIS)
の薄膜を形成した。この上に再びスパッタリング法によ
りCdSの層を0.1μm堆積した後250度でアニー
ルしp/n接合を形成した。この半導体層上に実施例1
と同様にして透明電極、集電電極を形成した。
【0069】この太陽電池をAM1.5(100mW/
cm2 )光照射下にて特性評価を行なうと、Cr層のあ
る太陽電池では変換効率が11.8%と優れた変換効率
が得られたのに対し、ZnOの無い太陽電池では9.5
%と特性が劣っており、本発明がa−Si以外の薄膜半
導体に対しても効果があることが解った。 (実施例5)本実施例では表面をブライトアニール処理
した幅100mm、長さ10mのステンレス(SUS4
30)の帯をロール状にして基板とした。金属層の堆積
には図10にあるスパッタリング装置を用いた。また、
2種類の材料が連続的に作成できるように、2つの堆積
室1001、1002を設けており、1003の排気ポ
ンプで真空排気できる。
【0070】この内部に、不図示のガスボンベに接続さ
れたガス導入管1004、1005より、アルゴン(A
r)が所定の流量導入され、排気弁1006の開度を調
整し堆積室1001、1002内は所定の圧力とされ
る。また帯状の基板1007の背面部には赤外線ヒータ
ー1008、1009を設けている。基板に対向してそ
の表面にターゲット1010、1011が固定されたカ
ソード電極が設けられている。ターゲット1010、1
011は堆積されるべき材料のブロックである。
【0071】ターゲット1010は純度99.99%程
度のAlであり、ターゲット1011は純度99.99
%程度のAl95Si5 である。カソード電極は101
2、1013の電源に接続されている。この電源により
直流の高電圧を加え、カソード・基板間にプラズマ(不
図示)を発生させ、このプラズマの作用によりターゲッ
ト1010、1011の材料原子が基板1007上に堆
積される。なおターゲット1010、1011を取り付
けてあるカソードの内部には磁石を設けプラズマをター
ゲットに集中させ、堆積速度を高めている。
【0072】堆積条件の一例を挙げる。表面をブライト
アニール処理した幅100mm、長さ10mのステンレ
ス(SUS430)の帯をロール状にして基板とし、基
板送り出し部1014と基板巻取り部1015と間で張
力を掛け毎分200mmの搬送速度で送った。ターゲッ
ト基板間の距離は5cmとした。堆積室1001、10
02にはそれぞれArを100sccmづつ流しつつ、
圧力を2.0mTorrに保った。ターゲット101
0、1011にはそれぞれ10インチ×10インチ角、
純度99.99%のAlとA95Si5 を用いた。夫々
のターゲットに350Vの直流電圧を加えると、プラズ
マが発生して1.7アンペアの電流が流れた。
【0073】この状態で1時間放電を継続した。基板温
度は不図示の熱電対を基板裏面に接触させモニタし、赤
外線ヒータを調節して300度に制御した。なお、この
基板の一部を切りとりオージェエレクトロンスペクトル
測定(AES)により金属膜の組成を分析した。第1層
ではターゲットに純粋なAlを使ったにも関わらずわず
かにSiが約0.3原子%程度測定され、しかもわずか
ながら組成に厚み方向の分布が認められた。これは隣の
AlSiの堆積室からのSiの混入によると思われる。
【0074】第1層と第2層の境界は明瞭ではなかった
が少なくともターゲットとほぼ同じ約5原子%のSiが
測定された領域が第2層であると考えられる。透明層は
図11に示したスパッタリング装置を使用し、堆積条件
は以下のようにして作製した。AlとAl95Si5 を堆
積したロール状の基板を基板送り出し部1101と基板
巻き取り部1102の間に張り毎分50mmの搬送速度
で送った。
【0075】堆積室1103は排気ポンプ1104で真
空排気する。ここにガス導入管1105よりArを15
0sccm流し、排気弁1106の開度を調節し堆積室
内の圧力を2mTorrとした。ターゲット1107は
10インチ×10インチ、純度99.99%のZnOタ
ーゲットを用い、基板1108との距離を5cmとし
た。ターゲットは内部にマグネットを設置したカソード
電極に固定され、このカソード電極が電源1109に接
続されている。
【0076】このカソードに直流電圧360Vを印加す
ると、0.8アンペアの電流が流れプラズマが発生し
た。この状態で2.5時間放電を継続した。基板温度は
基板裏面の赤外線ヒータ1110で200度に制御し
た。なおこの基板の一部を切りとり真空蒸着機にて表面
にCrを抵抗測定用に蒸着した。これにより抵抗値を測
定し触針式膜厚測定機による膜厚とから抵抗値を求める
と、102 Ωcmであった。薄膜半導捧層は、図9に示
す構成のpin型a・SiGeの薄膜半導体層を以下の
ように作製した。
【0077】裏面反射層の形成された基板を5cm×5
cmの大きさに切断し、市販の容量結合型高周波CVD
装置(アルバック社製CHJ−3030)にセットし
た。排気ポンプにて、反応容器の排気管を介して、荒引
き、高真空引き操作を行った。この時、基板の表面温度
は250℃となるよう、温度制御機構により制御した。
十分に排気が行われた時点で、ガス導入管より、SiH
4 300sccm、SiF4 4sccm、PH3 /H2
(1%H2 希釈)55sccm、H2 40sccmを導
入し、スロットルバルブの開度を調整して、反応容器の
内圧を1Torrに保持し、圧力が安定した時点で、直
ちに高周波電源より200Wの電力を投入した。
【0078】プラズマは5分間持続させた。これによ
り、n型a−Si層907が透明層905上に形成され
た。再び排気をした後に、今度はガス導入管よりSiH
4 900sccm、GeH4 200sccm、SiF4
4sccm、H2 40sccmを導入し、スロットルバ
ルブの開度を調整して、反応容器の内圧を1Torrに
保持し、圧力が安定した時点で、直ちに高周波電源から
150Wの電力を供給すると共に、発生したプラズマを
40分間持続させた。これによりi型a−SiGe層9
08がn型a−Si層907上に形成された。
【0079】再び排気をした後に、今度はガス導入管よ
りSiH4 50sccm、BF3 2 (1%H2 希釈)
50sccm、H2 500sccmを導入し、スロット
ルバルプの開度を調整して、反応容器の内圧を1Tor
rに保持し、圧力が安定した時点で、直ちに高周波電源
より300Wの電力を投入した。プラズマは2分間持続
させた。
【0080】このようにしてp型a−Si層909がi
型a−SiGe層908上に形成された。この後透明電
極としてITOを抵抗加熱真空蒸着装置にて堆積し、塩
化鉄水溶液を含むぺ一ストを印刷し、所望の透明電極の
パターンを形成した。更にAgペーストをスクリーン印
刷して集電電極を形成し薄膜半導体太陽電池を完成し
た。この方法で10枚の試料を作成し、AMl.5(1
00mW/cm2 )光照射下にて特性評価を行なうと、
光電変換効率で7.5±0.3%と優れた変換効率が再
現性良く得られた。
【0081】(実施例6)本実施例においては実施例5
と同じ材料、同じ装置を使用した。ただし、金属層の堆
積をAlとAlSiの連続スパッタとはせず1度Alだ
けを堆積した後ロール状の基板を取り出し、再度図10
に示す装置に取り付けてAlSiを堆積した。この基板
の一部を切りとり実施例1と同じくAESにより組成分
析をすると、第1層のSiの量は測定限度以下であっ
た。
【0082】また、第2層はSiが約5原子%のAlS
iであった。その他の条件は実施例1と同じにして太陽
電池を完成した。光照射化にて特性評価を行なうと、光
電変換効率で7.5±0.3%の値が得られた。 (比較例1)本比較例においては、図8に示す構造の裏
面反射層がAl/Ti/ZnOから成るpin型a−S
iGe太陽電池を作製した。具体的には実施例1におけ
るAl95Si5 のターゲットの代わりに純度99.99
%のTiを用いた。Alの厚みを実施例1のAlとAl
95Si5 の合計の厚み程度にするため基板の搬送速度は
毎分100mmとした。
【0083】また、Tiの厚みを50 程度にするため
Tiのターゲットに印加する直流電圧は100Vとし、
さらに基板とターゲットの間の一部を遮蔽して堆積する
厚みを調節した。その他の条件は実施例5とまったく同
じにして太陽電池を作成し、光照射下にて特性評価を行
なうと、光電変換効率は7.4±.2%であった。 (比較例2) 本比較例においては、図8に示す裏面反射層がAl95
5 /ZnOからなるpin型a−SiGe太陽電池を
作製した。具体的には実施例1におけるAl95Si5
ターゲットだけをスパッタリングに使用した。Al95
5 の厚みを実施例1のAlとAl95Si5 の合計の厚
みにするため基板の搬送速度は毎分100mmとした。
その他の条件は実施例5とまったく同じにして太陽電池
を作成し、光照射下にて特性評価を行なうと、光電変換
効率で7.0±0.3%という変換効率が得られた。
【0084】
【発明の効果】以上のように、請求項1及び請求項2の
発明によれば、本発明に係る裏面反射層を用いることに
より、特に、表面状態が不安定なアルミニューム又はそ
の合金を用いても、再現性良く電流が大きくシリーズ抵
抗損失が少なく変換効率が高い太陽電池が得られる。ま
た薄膜半導体の成膜時の基板温度を高めても特性の変化
が少ないため特性の優れた薄膜半導体接合を得ることが
でき、より一層変換効率の高い太陽電池が得られる。し
かも、本発明に係る太陽電池はロール・ツー・ロール法
等の量産性に富む方法で製造できるので、太陽光発電の
普及拡大に大いに寄与するものである。
【0085】また、請求項3の発明によれば、この発明
に係る裏面反射層を用いることにより、光が薄膜半導体
中に有効に閉じ込められるため、薄膜半導体への光の吸
収が増加し、変換効率が高い太陽電池が得られる。ま
た、金属原子が半導体膜中に拡散しにくくなり、さらに
薄膜半導体中に部分的な短絡箇所があっても適度な電気
抵抗によってリーク電流が抑えられ、信頼性の高い太陽
電池が得られる。
【0086】更に、本請求項3に係る発明の裏面反射層
はそれを構成する透明層が薄くても十分な効果を発揮さ
せることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る薄膜半導体太陽電池の構成を示す
断面図である。
【図2】実施例1に係る薄膜半導体太陽電池の構成を示
す断面図である。
【図3】実施例2に係る薄膜半導体太陽電池の構成を示
す断面図である。
【図4】本発明に係る裏面反射層を製造するのに好適な
スパッタリング装置の構成を示す概略側断面図である。
【図5】テクスチャー構造を有する透明層のSEM写真
である。
【図6】本発明に係る裏面反射層を製造するのに好適な
別のスパッタリング装置の構成を示す概略断面図であ
る。
【図7】実施例3に係る薄膜半導体太陽電池の構成を示
す断面図である。
【図8】従来の薄膜半導体太陽電池の構成を示す断面図
である。
【図9】実施例5に係る薄膜半導体太陽電池の構成を示
す断面図である。
【図10】金属層作成用のスパッタ装置の概略側断面図
である。
【図11】透明層作成用のスパッタ装置の概略側断面図
である。
【符号の説明】
101,701 基板 102,702 金属層 102A 第1の金属 102B 第2の金属 103,703 透明層 105,705,709 n型a−Si 106,710 i型a−Si 706 i型a−SiGe 107,707,711 p型μc−Si 108,712 透明電極 109,713 集電電極 202A 第1の金属 202B 第2の金属 302A 第1の金属 302B 第2の金属 604 金属層堆積室 605 透明層堆積室 404,602 基板 601 基板のロール 407,609,610 ターゲット 405,607,608 基板加熱ヒーター 409 電源 801、901 基板 802、803、804、902、903、904 金
属層 805、905 透明層 806 薄膜半導体層 907、907 n型a−Si 808、908 i型aSi、又はi型aSiG
809、909 p型a−Si 8l0、910 透明電極 811、911 集電電極 1001、1002、1103 堆積室 1007、1108 基板 1014、1101 基板送り出し部 1015、1102 基板巻き取り部 1010、1011、1107 ターゲット 1008、1009、1110 基板加熱用赤外線ヒー
ター 1012、1013、1109 電源 1003、1104 排気ポンプ 1006、1106 排気弁 1004、1005、1105 ガス導入管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塩崎 篤志 東京都大田区下丸子3丁目30番2号キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 金井 正博 東京都大田区下丸子3丁目30番2号キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 福岡 貴裕 東京都大田区下丸子3丁目30番2号キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 吉野 豪人 東京都大田区下丸子3丁目30番2号キヤ ノン株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−99477(JP,A) 特開 平4−94173(JP,A) 特開 平2−90574(JP,A) 米国特許4419533(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 31/04 - 31/078

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともその表面が、アルミニューム
    又はアルミニュームの合金から成る第1の部分と、該第
    1の部分とは異なる金属から成る島状に分布した第2の
    部分とが混在した基板上に、少なくともその表面がテク
    スチャー構造を有する透明層が形成された裏面反射層の
    上に、薄膜半導体接合が形成され、更にその上に透明な
    電極が形成されたことを特徴とする薄膜半導体太陽電
    池。
  2. 【請求項2】 前記第2の部分は、前記基板の全表面積
    に占める割合が30%以下であることを特徴とする請求
    項1に記載の薄膜半導体太陽電池。
  3. 【請求項3】 前記裏面反射層は、これを構成する金属
    層が、少なくともAl(100-x) Six (但し≦x≦
    0.5)である基板側の第1の層と、Al(100-x)Si
    x (但し2≦x≦)である透明層側の第2の層から
    成ることを特徴とする請求項1に記載の薄膜半導体太陽
    電池。
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