JP5049059B2 - 電子写真感光体、並びにこれを用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、並びにこれを用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジ Download PDF

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Description

本発明は、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、デジタルカラープリンタ、ダイレクトデジタル製版機等に好適な電子写真感光体(以下、「感光体」、「静電潜像担持体」、「像担持体」と称することもある)、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展には目覚ましいものがある。特に、情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行う光プリンターは、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。このデジタル記録技術はプリンターのみならず通常の複写機にも応用され、所謂デジタル複写機が開発されている。また、従来のアナログ複写にデジタル記録技術を搭載した複写機は、種々の情報処理機能が付加できるため、今後その需要性が益々高まっていくと予想される。更に、パーソナルコンピュータの普及、及び性能の向上に伴って、画像及びドキュメントのカラー出力を行うためのデジタルカラープリンタの進歩も急激に進んでいる。
このようなデジタル方式の画像形成装置は、年々その機能を向上させ、高耐久及び高安定化は勿論、高画質化が同時に求められている。また、高速カラー化を図るためには、1つの電子写真感光体に、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段を有する画像形成要素が複数配列されたタンデム型のカラー画像形成装置が現在の主流である。このタンデム型のカラー画像形成装置では、通常、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)用の4つの画像形成要素を搭載し、各々のトナー像を4つの画像形成要素で並列に作成し、記録媒体(転写紙)又は中間転写体上で重ね合わせることで、高速にカラー画像を形成するものである。このタンデム型のカラー画像形成装置では、感光体及びその周りの部材をコンパクトにしないと画像形成装置が非常に大きなものになってしまう。このため、画像形成要素の中心に配置される感光体を小径化することが必要である。しかし、まず、感光体を小径化して、画像形成装置がコンパクトになったとしても、大口径の場合よりも極端に寿命が短くなると、小径化したメリットがなくなる。そこで、従来の感光体よりも感光体の寿命を延ばす(長寿命化する)ことが課題となる。
現在の主流である有機系感光体(OPC)の寿命には2つの律速課程が存在する。1つは静電疲労であり、もう1つは表面層の摩耗である。前記静電疲労は、帯電及び露光といった画像形成における繰り返し使用における感光体の表面電位(帯電電位と露光部電位)の変化であり、有機系材料を用いた場合には帯電電位の低下もしくは露光部電位の上昇(以下、「残留電位」と称することもある)が問題となる。一方、前記表面層の摩耗は、感光体を構成する最表面層がクリーニング手段等の摺察により機械的に摩耗を生ずる現象である。この摩耗により感光体の表面層の厚みが減少すると、表面に生じる傷、感光層厚みの減少による電界強度の上昇、静電疲労の促進などが生じることになり、感光体の寿命を著しく低減する要因となる。そこで、感光体の寿命を向上させるためには、上記2つの課題を同時に解消しなければならない。
現在では、電子写真方式の画像形成装置も高速化の実現により、印刷分野に進出しつつあり、高画質及び高安定化が求められている。前記高画質に関しては画像書き込みにおける解像度として600dpiが最低品質の状況になり、解像度が非常に向上してきた。前記高安定化については、原稿情報を直接印字できるという電子写真の特長を生かして、多量印刷が得意な分野の出力原稿の一部に様々な1枚ずつ異なる情報も追加できるようになり、同じ原稿を非常に大量に処理すると同時に、1枚1枚わずかに異なる情報も入力するという多種多様の書き込み、現像が行われることになりシステムとしての安定性が強く求められる。
これらに対しては、画像形成要素の繰り返し使用における安定性は当然求められることとして、更に異常画像が発生しないということも極めて重要なことである。
このような画像形成装置の寿命及び安定性の向上は、画像形成の中心課題であり、画像形成動作中にその他の部材と常に関連動作を行う感光体が最も重要な鍵を握ることになる。現在までにおける、感光体についての精力的な開発によって、感光体の静電特性及び表面摩耗については、幾つかの技術が完成されつつある。例えば、静電特性の改良に関しては、光キャリア発生効率の大きな電荷発生物質の開発及び移動度の大きな電荷輸送物質の開発が挙げられる。これらを組み合わせることによって、光減衰における大きなゲインとレスポンスを得ることができ、システム全体として、帯電電位の低減化、書き込み光量の低減化、現像バイアスの低減化、転写バイアスの低減化、除電プロセスの不要性などを生み出し、システム設計に余裕度を生み出すことになる。これらは全て感光体に印加されるハザードの低減化につながり、感光体自身にも余裕度が生まれる。
しかし、上述したように、アナログ方式の画像形成装置、及びモノクロ方式の画像形成装置での感光体の使用方法が、高速フルカラー機の出現によって一変し、多種多様な光書き込みなどの使われ方がなされるようになり、異常画像の発生原因が感光体であることが最も大きな問題となる。異常画像の発生には様々なケースがあるが、2つに大別できる。1つは感光体表面に発生する傷などに起因した異常画像であり、もう1つは感光体の静電疲労により発生する異常画像である。前者に関しては、感光体の表面層の改良(例えば保護層の使用)及び感光体への当接部材の改良によりかなりの場合に対応が可能である。後者に関しては、感光体そのものの劣化に起因するものであり、現在最も大きな課題となっているのはネガ・ポジ現像における地汚れである。
前記地汚れの発生原因としては、支持体の汚れ、欠陥、感光層の電気的な絶縁破壊、支持体からのキャリア(電荷)注入、感光体の暗減衰増大、感光層における熱キャリア生成などが挙げられる。これらの中でも、支持体の汚れ及び欠陥に関しては、感光層を塗布する前にそのような支持体を排除することで対応でき、エラーによって生じるものであり、発生原因の本質ではない。そこで、感光体の耐電圧性、支持体からの電荷注入性、静電的疲労の低下を改良することが、この問題の根本的な解決方法であると考えられる。
このような問題点に鑑み、支持体と感光層の間に、下引き層及び中間層の少なくともいずれかを設ける技術が提案されている。例えば、硝酸セルロース系樹脂からなる中間層(特許文献1参照)、ナイロン系樹脂からなる中間層(特許文献2参照)、マレイン酸系樹脂からなる中間層(特許文献3参照)、ポリビニルアルコール樹脂からなる中間層(特許文献4参照)、などが提案されている。
しかし、これらの樹脂単独(単層)の中間層は電気抵抗が高いため、残留電位が生じ、反転現像(ネガ・ポジ現像)において画像濃度の低下が生じる。また、不純物等に起因するイオン伝導性を示すことから、低温低湿下では中間層の電気抵抗が高くなるため、残留電位が著しく上昇する。このため、中間層の厚みを薄くする必要があり、繰り返し使用後の帯電性及び帯電保持性が不十分になるという欠点がある。
これらの問題点を解消するため、中間層の電気抵抗を制御する技術として、導電性添加剤を中間層に添加する方法が提案されている。例えば、カーボン又はカルコゲン系物質を硬化性樹脂に添加した中間層(特許文献5参照)、四級アンモニウム塩を添加してイソシアネート系硬化剤を用いた熱重合体中間層(特許文献6参照)、抵抗調節剤を添加した樹脂中間層(特許文献7参照)、有機金属化合物を添加した樹脂中間層(特許文献8参照)、などが提案されている。
しかし、これら樹脂中間層単体では、近年のレーザー光のようなコヒーレント光を使用した画像形成装置においては、モアレ画像を生じるという問題点がある。
また、モアレ防止と中間層の電気抵抗を同時に制御する目的で、フィラーを含有する中間層を有する感光体が数多く提案されている。例えば、アルミニウム又はスズの酸化物を分散させた中間層(特許文献9参照)、導電性粒子を分散させた中間層(特許文献10参照)、マグネタイトを分散させた中間層(特許文献11参照)、酸化チタンと酸化スズを分散させた中間層(特許文献12参照)、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等のホウ化物、窒化物、フッ化物、酸化物の粉体を分散させた中間層(特許文献13〜18参照)、などが提案されている。
これらのようなフィラーを分散させた中間層は、該フィラーにより中間層の電位特性を発現させるため、中間層中のフィラー量を大きくする必要がある(即ち、樹脂量を減らす必要がある)。このため、中間層の樹脂量の低下に伴って支持体との接着性が低下し、支持体と中間層の間で剥離が生じやすくなり、特に支持体がフレキシブルなベルト状構造のものではこの問題点が顕著である。
このような問題点を解決するため、中間層を積層化することが提案されている。積層化の構成は2つのタイプに大別される。1つは、支持体31上に、フィラーを分散させた樹脂層32と、フィラーを分散していない樹脂層33と、感光層34とをこの順に積層した感光体である(図1参照)。もう1つは、支持体31上に、フィラーを分散していない樹脂層33と、フィラーを分散させた樹脂層32と、感光層34とをこの順に設けた感光体である(図2参照)。
図1に示すような構成の感光体としては、上述したような支持体の欠陥をカバーするため、支持体31上に抵抗の低いフィラーを分散した導電層32を設け、該導電層32上に樹脂層33を設けたものが提案されている(例えば特許文献19〜27等参照)。これらは、本質的に下層である導電層が支持体における電極の役割を果たすため、樹脂中間層単独の構成と上述した感光体の静電的な欠点は変わらない。唯一、導電層がフィラー分散層で構成されるため、該導電層による書き込み光の散乱によりモアレ防止機能が付与される。この場合、下層が導電層であるため、感光体の帯電時には感光体表面に帯電された極性とは逆極性の電荷が下層(導電層)と上層(樹脂中間層)との界面まで到達することにより、感光体の動作が成立する。しかし、導電層の抵抗がそれほど低くない場合には、電極からの電荷注入が十分に行われず、繰り返し使用時に下層が抵抗成分となって残留電位を非常に上昇させてしまう。特に、この構成の目的の1つである支持体の欠陥のカバーを行うためには下層を十分に厚くする(10μm以上)ことが必要となる。
また、支持体上に、少なくとも導電層と、中間層と、チタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層とをこの順に積層した感光体が提案されている(特許文献28〜30参照)。しかし、これらの提案では、チタニルフタロシアニンの結晶型、及び一次粒子サイズを適切にコントロールしないと、熱キャリアの影響による地汚れの発生を低減できるものではなかった。
一方、図2に示す構成の感光体としては、支持体31上に、正孔ブロッキング性層33を設け、該正孔ブロッキング性層33上に抵抗の低いフィラー又は電子伝導性のフィラーを分散させた樹脂層32を設けたものが提案されている(例えば特許文献31及び32等参照)。これらの提案では、図1の構成と同様に正孔のブロッキング機能を有するため、地汚れに対して有効に作用する。また、フィラー分散層が上層に存在するため、図1の構成と比較して残留電位の蓄積性は低い。この図2の構成では、上述したように支持体から感光層への電荷(正孔)注入を防止できるため、反転現像(ネガ・ポジ現像)における地汚れ現象はかなり軽減することができる。また、電荷ブロッキング層を下層に配置することで、繰り返し使用時における残留電位の上昇も、上層に配置する場合に比べて低減できる。
しかし、前記地汚れ発生の原因は、支持体から感光層への電荷(正孔)注入だけでなく、感光層における熱キャリア発生の影響も無視できない。このため、電荷発生層に使用する電荷発生物質及びその粒子状態をコントロールしないと、繰り返し使用時における地汚れの発生は完全に制御できないものである。
ところで、光プリンターの光源としては、現在までのところ、小型かつ安価で信頼性の高い半導体レーザー(LD)及び発光ダイオード(LED)が広く用いられている。前記LEDの発光波長は660nmであり、前記LDの発光波長域は近赤外光領域にある。そこで、可視光領域から近赤外光領域に高い感度を有する電子写真感光体の開発が望まれている。しかし、前記電子写真感光体の感光波長域は、該感光体に使用される電荷発生物質の感光波長域によってほぼ決まってしまう。このため、従来より、各種アゾ顔料、多環キノン系顔料、三方晶形セレン、各種フタロシアニン顔料等の多くの電荷発生物質が開発されている。これらの中でも、特許文献31〜35等に記載されているチタニルフタロシアニン(以下、「TiOPc」と略記することがある)は、600nm〜800nmの長波長光に対して高感度を示すため、光源がLED及びLDである電子写真プリンター及びデジタル複写機用の電荷発生物質として極めて重要かつ有用である。
また、カールソンプロセス及び類似プロセスにおいて繰り返し使用される電子写真感光体には、感度、受容電位、電位保持性、電位安定性、残留電位、及び分光特性に代表される静電特性が優れていることが要求される。特に、高感度な感光体については繰り返し使用による帯電性の低下と残留電位の上昇が、感光体の寿命特性を支配することが知られており、前記チタニルフタロシアニンについても同様の課題がある。
したがって電荷発生物質としてチタニルフタロシアニンを用いた感光体の繰り返し使用時における安定性については未だ十分満足できるものではなく、更なる改良、開発が切望されているのが現状である。
特開昭47−6341号公報 特開昭60−66258号公報 特開昭52−10138号公報 特開昭58−105155号公報 特開昭51−65942号公報 特開昭52−82238号公報 特開昭55−113045号公報 特開昭58−93062号公報 特開昭58−58556号公報 特開昭60−111255号公報 特開昭59−17557号公報 特開昭60−32054号公報 特開昭64−68762号公報 特開昭64−68763号公報 特開昭64−73352号公報 特開昭64−73353号公報 特開平1−118848号公報 特開平1−118849号公報 特開昭58−95351号公報 特開昭59−93453号公報 特開平4−170552号公報 特開平6−208238号公報 特開平6−222600号公報 特開平8−184979号公報 特開平9−43886号公報 特開平9−190005号公報 特開平9−288367号公報 特開平5−100461号公報 特開平5−210260号公報 特開平7−271072号公報 特公平3−27897号公報 特公平5−31137号公報 特公平3−5745号公報 特開平1−204969号公報 特許第2821765号公報
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、繰り返し使用時における地汚れ発生の低減、残留電位の防止、接触帯電手段又は近接配置した帯電手段による帯電に際して絶縁破壊の発生を低減できる、高耐久な電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用い、繰り返し画像形成時における、地汚れの発生及び濃度低下といった反転現像(ネガ・ポジ現像)時の最大の課題を解決できる、高耐久かつ安定動作が可能な画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に、少なくとも電荷ブロッキング層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に有してなり、
前記感光層が少なくともチタニルフタロシアニン結晶を含有し、該チタニルフタロシアニン結晶がCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、及び28.3°にもピークを有することを特徴とする電子写真感光体である。
<2> 感光層が、電荷発生層と電荷輸送層の積層構造からなる前記<1>に記載の電子写真感光体である。
<3> 電荷ブロッキング層が少なくとも絶縁性材料を含有し、該電荷ブロッキング層の厚みが2.0μm未満である前記<1>から<2>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<4> 絶縁性材料が、N−メトキシメチル化ナイロンである前記<3>に記載の電子写真感光体である。
<5> モアレ防止層が少なくとも無機顔料及びバインダー樹脂を含有し、両者の容積比(無機顔料/バインダー樹脂)が1/1〜3/1である前記<1>から<4>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<6> バインダー樹脂が、熱硬化性樹脂である前記<5>に記載の電子写真感光体である。
<7> 熱硬化性樹脂が、アルキッド樹脂とメラミン樹脂との混合物である前記<6>に記載の電子写真感光体である。
<8> アルキッド樹脂とメラミン樹脂との混合質量比(アルキッド樹脂/メラミン樹脂)が、5/5〜8/2である前記<7>に記載の電子写真感光体である。
<9> 無機顔料が酸化チタンである前記<5>から<8>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<10> 酸化チタンが平均粒径の異なる2種類の酸化チタンであり、これらのうち、平均粒径の大きい方の酸化チタン(T1)の平均粒径(D1)とし、平均粒径の小さい方の酸化チタン(T2)の平均粒径を(D2)とすると、次式、0.2<(D2/D1)≦0.5の関係を満たす前記<9>に記載の電子写真感光体である。
<11> 平均粒径の小さい方の酸化チタン(T2)の平均粒径(D2)が、0.05μm<D2<0.2μmである前記<10>に記載の電子写真感光体である。
<12> 平均粒径の異なる2種の酸化チタンの混合質量比が、0.2≦T2/(T1+T2)≦0.8である前記<10>から<11>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<13> チタニルフタロシアニン結晶が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換処理して得られる前記<1>から<12>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<14> 結晶変換処理が、有機溶媒による処理により行われる前記<13>に記載の電子写真感光体である。
<15> 結晶変換処理に使用する有機溶媒が、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒の少なくともいずれかを含む前記<14>に記載の電子写真感光体である。
<16> 結晶変換処理の際に、機械的エネルギーが印加される前記<13>から<15>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<17> CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶が、
CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0°〜7.5゜に最大回折ピークを有する不定形チタニルフタロシアニンを、水の存在下で有機溶媒により結晶変換されたものである前記<13>から<16>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<18> 不定形チタニルフタロシアニンにおける7.0°〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上である前記<17>に記載の電子写真感光体である。
<19> 有機溶媒が、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン及び1,1,2−トリクロロエタンから選択される少なくとも1種を含む前記<17>から<18>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<20> 不定形チタニルフタロシアニンが、ハロゲン化チタンを用いずに合成されたものである前記<17>から<19>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<21> 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<20>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置である。
<22> 少なくとも電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段を有する画像形成要素が複数配列されたタンデム型である前記<21>に記載の画像形成装置である。
<23> 電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段とを有するプロセスカートリッジが画像形成装置本体に着脱可能である前記<21>から<22>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<24> 電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段とを有するプロセスカートリッジにおいて、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<20>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
<25> 電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程とを少なくとも含む画像形成方法であって、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<20>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法である。
本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に、少なくとも電荷ブロッキング層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に有してなり、
前記感光層が少なくともチタニルフタロシアニン結晶を含有し、該チタニルフタロシアニン結晶がCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、及び28.3°にもピークを有する。
本発明の電子写真感光体においては、電荷ブロッキング層とモアレ防止層及び特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層をこの順に積層してなるので、繰り返し使用時における地汚れ発生の低減、残留電位の防止、接触帯電手段又は近接配置した帯電手段による帯電に際して絶縁破壊の発生を低減できる。
本発明の画像形成装置は、本発明の前記電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段とを少なくとも有する。
本発明の画像形成装置においては、前記電子写真感光体として本発明の前記電子写真感光体を用いているので、繰り返し画像形成時における、地汚れの発生及び濃度低下といったネガ・ポジ現像使用時の最大の課題を解決することができる。
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の前記電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段とを有する。
本発明のプロセスカートリッジにおいては、前記電子写真感光体として本発明の前記電子写真感光体を用いているので、繰り返し画像形成時における、地汚れの発生及び濃度低下といったネガ・ポジ現像使用時の最大の課題を解決することができ、取り扱い性に優れたものである。
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、繰り返し使用時における地汚れ発生の低減、残留電位の防止、接触帯電手段又は近接配置した帯電手段による帯電に際して絶縁破壊の発生を低減できる、高耐久な電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用い、繰り返し画像形成時における、地汚れの発生及び濃度低下といったネガ・ポジ現像使用時の最大の課題を解決できる、高耐久かつ安定動作が可能な画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することができる。
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に、少なくとも電荷ブロッキング層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
本発明の電子写真感光体は、その層構成について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第1形態では、支持体と、該支持体上に、電荷ブロッキング層、モアレ防止層、特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する単層構造の感光層がこの順に積層された構成である。
第2形態では、支持体と、該支持体上に、電荷ブロッキング層、モアレ防止層、特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層、及び電荷輸送物質を含有する電荷輸送層がこの順に積層された構成である。
ここで、本発明の電子写真感光体の層構成について、図面に基づいて説明する。
図3は、本発明の電子写真感光体の一例を示す概略断面図であり、支持体31と、該支持体上に、電荷ブロッキング層35、モアレ防止層36、及び特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層34がこの順に積層された構成をとっている。
図4は、本発明の電子写真感光体の他の一例を示す概略断面図であり、支持体31と、該支持体上に、電荷ブロッキング層35、モアレ防止層36、特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層37、及び電荷輸送物質を含有する電荷輸送層38がこの順に積層された構成をとっている。
図5は、本発明の電子写真感光体の更に他の一例を示す概略断面図であり、支持体31と、該支持体上に、電荷ブロッキング層35、モアレ防止層36、特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する電荷発生層37、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層38、及び保護層39がこの順に積層された構成をとっている。
なお、図示を省略しているが、図3の感光層34上に保護層を設けても構わない。
<支持体>
前記支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属;酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を、蒸着法又はスパッタリング法により、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板、又はこれらを押し出し、引き抜き等の工法で素管化した後、切削、仕上げ、研摩等の表面処理した管などが挙げられる。更に、特開昭52−36016号公報に記載されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
これらの中でも、陽極酸化皮膜処理を簡便に行うことのできるアルミニウムからなる円筒状支持体が特に好ましい。
ここで、前記アルミニウムとは、純アルミニウム系あるいはアルミニウム合金のいずれをも含むものである。具体的には、JIS1000番台、JIS3000番台、JIS6000番台のアルミニウム、又はアルミニウム合金が挙げられる。
前記陽極酸化皮膜は、各種金属、各種合金を電解質溶液中で陽極酸化処理したものである。これらの中でも、反転現像(ネガ・ポジ現像)に用いた際に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止できる点から、アルミニウム又はアルミニウム合金を電解質溶液中で陽極酸化処理を行ったアルマイトと呼ばれる被膜が本発明に用いる感光体としては特に好ましい。
前記陽極酸化処理は、例えばクロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われる。これらの中でも、硫酸浴による処理が特に好ましい。具体的には、硫酸濃度が10質量%〜20質量%、浴温が5℃〜25℃、電流密度が1A/dm〜4A/dm、電解電圧が5V〜30V、処理時間が5分間〜60分間の範囲で処理が行われることが好ましい。
このように作製される陽極酸化皮膜は、多孔質であり、かつ絶縁性が高いため、表面が非常に不安定な状況である。このため、作製後の経時変化が存在し、陽極酸化皮膜の物性値が変化しやすい。これを回避するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが好ましい。
前記封孔処理としては、例えばフッ化ニッケル、酢酸ニッケルを含有する水溶液中に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。これらの中でも、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が特に好ましい。
前記封孔処理に引き続き、陽極酸化皮膜の洗浄処理が行われる。これは、封孔処理により付着した金属塩等の過剰なものを除去することが主な目的である。このような金属塩等が支持体(陽極酸化皮膜)表面に過剰に残存すると、該支持体の陽極酸化皮膜上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまうため、逆に地汚れの発生原因になってしまう。
前記洗浄は、純水1回の洗浄でも構わないが、通常は多段階の洗浄を行うことが好ましい。この際、最終の洗浄液が可能な限りきれい(脱イオンされた)なものであることが好ましい。また、多段階の洗浄工程のうち1段階の洗浄工程に接触部材による物理的なこすり洗浄を施すことが好ましい。
以上のようにして形成される陽極酸化皮膜の厚みは、5μm〜15μmが好ましい。前記厚みが、5μm未満であると、陽極酸化皮膜としてのバリア性の効果が十分でないことがあり、15μmを超えると、電極としての時定数が大きくなりすぎて、残留電位の発生及び感光体のレスポンスが低下することがある。
また、前記支持体上に、少なくとも導電性粉体及び結着樹脂に溶剤に分散させた塗布液を塗工したものも支持体として用いることができる。前記導電性粉体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばカーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉;導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体、などが挙げられる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、などが挙げられる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエン、などが挙げられる。
また、円筒状基体上に、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ゴム、テフロン(登録商標)等の素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブを被覆して導電層を形成したものも、支持体として良好に用いることができる。
<電荷ブロッキング層>
前記電荷ブロッキング層は、感光体の帯電時に電極(支持体)に誘起される逆極性の電荷が、支持体から感光層に注入するのを防止する機能を有する層である。負帯電の場合には正孔注入防止機能、正帯電の場合には電子注入防止機能を有する。
前記電荷ブロッキング層としては、酸化アルミニウム層に代表される陽極酸化被膜、SiOに代表される無機系の絶縁層、特開平3−191361号公報に記載されるような金属酸化物のガラス質ネットワークから形成される層、特開平3−141363号公報に記載されるようなポリフォスファゼンからなる層、特開平3−101737号公報に記載されるようなアミノシラン反応生成物からなる層、N−メトキシメチル化ナイロン等の絶縁性材料からなる層、硬化性の結着樹脂からなる層などが挙げられる。これらの中でも、湿式塗工法で形成可能なN−メトキシメチル化ナイロン等の絶縁性材料からなる層、硬化性結着樹脂からなる層が特に好ましい。
前記電荷ブロッキング層は、該電荷ブロッキング層上に、感光層を積層するものであるから、これらの層を湿式塗工法で設ける場合には、これらの塗工溶媒により塗膜が侵されない材料、及び構成からなることが好ましい。
具体的には、前記電荷ブロッキング層は、少なくとも結着樹脂を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂;熱硬化性樹脂(例えば、活性水素(−OH基、−NH基、−NH基等の水素原子)を複数個含有する化合物と、イソシアネート基を複数個含有する化合物と、エポキシ基を複数個含有する化合物とを熱重合させた熱硬化性樹脂等)、などが挙げられる。
前記活性水素を複数個含有する化合物としては、例えばポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール;ヒドロキシエチルメタアクリレート基等の活性水素を含有するアクリル系樹脂、などが挙げられる。
前記イソシアネート基を複数個含有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等と、これらのプレポリマー、などが挙げられる。
前記エポキシ基を複数個含有する化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、などが挙げられる。
これらの中でも、成膜性、環境安定性、溶剤耐性などの点から、ポリアミド樹脂が特に好ましい。
また、オイルフリーアルキド樹脂とアミノ樹脂(例えば、ブチル化メラミン樹脂等)を熱重合させた熱硬化性樹脂、更に、不飽和結合を有するポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の不飽和結合を有する樹脂と、チオキサントン系化合物、メチルベンジルフォルメート等の光重合開始剤との組合せ等の光硬化性樹脂も結着樹脂として使用できる。
また、整流性のある導電性高分子、帯電極性に合わせてアクセプター(ドナー)性の樹脂、又は化合物などを加えて、支持体からの電荷注入を制抑する機能などを持たせてもよい。
前記電荷ブロッキング層には、前記結着樹脂以外にも、更に必要に応じて硬化(架橋)に必要な薬剤、溶剤、添加剤、硬化促進剤等を加えた塗布液を、例えばブレード塗工、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート法などにより、支持体上に塗布することにより形成される。塗布後は、乾燥し、加熱又は光照射等の硬化処理により、硬化させる。
前記電荷ブロッキング層の厚みは、2.0μm未満が好ましく、0.1μm以上2.0μm未満がより好ましく、0.3μm以上1.0μm以下が更に好ましい。前記電荷ブロッキング層の厚みが、2.0μm以上であると、帯電と露光の繰返しによって、特に低温低湿下での残留電位の上昇が著しくなることがあり、厚みが薄すぎると、ブロッキング性の効果が小さくなることがある。
<モアレ防止層>
前記モアレ防止層は、レーザー光のようなコヒーレント光による書き込みを行う際に、感光層内部での光干渉によるモアレ像の発生を防止する機能を有する層である。基本的には、前記書き込み光の光散乱を起こす機能を有する。
このような機能を発現するため、前記モアレ防止層は屈折率の大きな材料を含有することが好ましく、一般には、無機顔料と、バインダー樹脂とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記無機顔料としては、白色顔料が好適に使用され、例えば、酸化チタン、フッ化カルシウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、などが挙げられる。これらの中でも、隠蔽力の大きな酸化チタンが特に好ましい。
また、図3〜図5から明らかなように、本発明の電子写真感光体においては、支持体からの電荷注入を電荷ブロッキング層にて防止するものであるから、前記モアレ防止層においては少なくとも感光体表面に帯電される電荷とは同極性の電荷を移動できる機能を有することが残留電位防止の観点から好ましい。このため、例えば負帯電型感光体の場合には、モアレ防止層には電子伝導性を付与することが好ましく、使用する無機顔料に電子伝導性を有するものを使用するか、導電性のものを使用することが好ましい。前記モアレ防止層に電子伝導性の材料(例えば、アクセプター)などを使用することは本発明の効果を一層顕著なものにする。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、前記電荷ブロッキング層と同様のものを使用することができるが、前記モアレ防止層上に感光層を積層することを考慮すると、該感光層の塗工溶媒に侵されないものであることが好ましい。
前記バインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂が好適であり、アルキッド樹脂とメラミン樹脂の混合物が特に好ましい。この場合、前記アルキッド樹脂と前記メラミン樹脂の混合質量比は、モアレ防止層の構造及び特性を決定する重要な因子である。
前記アルキッド樹脂と前記メラミン樹脂との混合質量比(アルキッド樹脂/メラミン樹脂)は、5/5〜8/2が好ましい。前記混合質量比が5/5よりもメラミン樹脂がリッチであると、熱硬化の際に体積収縮が大きくなり塗膜欠陥を生じやすくなったり、感光体の残留電位が大きくなりすぎることがある。一方、前記混合質量比が8/2よりもアルキッド樹脂がリッチであると、感光体の残留電位低減には効果があるものの、バルク抵抗が低くなりすぎて地汚れが悪くなることがある。
前記モアレ防止層においては、無機顔料とバインダー樹脂の容積比(無機顔料/バインダー樹脂)が重要な特性を決定する。前記無機顔料と前記バインダー樹脂の容積比(無機顔料/バインダー樹脂)が1/1〜3/1の範囲であることが好ましい。両者の容積比が1/1未満であると、モアレ防止能が低下するだけでなく、繰り返し使用における残留電位の上昇が大きくなる場合が存在する。一方、前記容積比(無機顔料/バインダー樹脂)が3/1を超えると、バインダー樹脂における結着能が劣るだけでなく、塗膜の表面性が悪化し、上層の感光層の成膜性に悪影響を与える場合がある。この影響は感光層が積層タイプで構成され、電荷発生層のような薄層を形成する場合に深刻な問題になり得るものである。また、容積比が3/1を超えると、無機顔料表面をバインダー樹脂が覆い尽くせない場合が存在し、電荷発生物質と直接接触することで、熱キャリア生成の確率が大きくなり、地汚れに対して悪影響を与える場合がある。
更に、前記モアレ防止層には、平均粒径の異なる2種類の酸化チタンを用いることで、支持体に対する隠蔽力を向上させてモアレを抑制することが可能となると共に、異常画像の原因となるピンホールをなくすことができる。このため、用いる2種の酸化チタンの平均粒径の比が一定の範囲内(0.2<D2/D1≦0.5)にあることが重要である。本発明で規定する範囲外の粒径比の場合、即ち、平均粒径の大きい方の酸化チタン(T1)の平均粒径に対する平均粒径の小さい方の酸化チタン(T2)の平均粒径の比が小さすぎる場合(0.2>D2/D1)は、酸化チタン表面での活性が増加し、電子写真感光体としたときの静電的安定性が著しく損なわれるようになる。また、平均粒径の大きい方の酸化チタン(T1)の平均粒径に対する平均粒径の小さい方の酸化チタン(T2)の平均粒径の比が大きすぎる場合(D2/D1>0.5)は、支持体に対する隠蔽力が低下し、モアレや異常画像に対する抑制力が低下する。
ここで、前記平均粒径は、例えば水系で強分散を行ったときに得られる粒度分布測定から求めることができる。
また、前記平均粒径の小さい方の酸化チタン(T2)の平均粒径(D2)の大きさが重要な因子であり、0.05μm<D2<0.20μmであることが好ましい。前記平均粒径(D2)が0.05μm以下であると、隠蔽力が低下し、モアレを発生させることがある。一方、前記平均粒径(D2)が0.20以上であると、モアレ防止層の酸化チタンの充填率を低下させ、地汚れ抑制効果が十分に発揮できないことがある。
また、2種の酸化チタンの混合質量比も重要な因子であり、混合質量比〔T2/(T1+T2)〕が0.2よりも小さい場合には、酸化チタンの充填率がそれほど大きくなく、地汚れ抑制効果が十分に発揮できない。一方、混合質量比〔T2/(T1+T2)〕が0.8を超えると、隠蔽力が低下し、モアレを発生させることがある。したがって、0.2≦T2/(T1+T2)≦0.8であることが重要である。
前記モアレ防止層は、無機顔料と、溶剤と、結着樹脂とを、例えばボールミル、サンドミル、アトライラー等により分散し、更に必要に応じて硬化(架橋)に必要な薬剤、溶剤、添加剤、硬化促進剤等を加えて、常法により、ブレード塗工、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート法などにより支持体上の電荷ブロッキング層上に塗布し、塗布後は乾燥し、加熱、光等の硬化処理により乾燥あるいは硬化させて形成することができる。
前記モアレ防止層の厚みは、1μm〜10μmが好ましく、2μm〜5μmがより好ましい。前記厚みが、1μm未満であると、効果の発現性が小さくなり、10μmを超えると、残留電位の蓄積が生じることがある。
<感光層>
前記感光層は、少なくともチタニルフタロシアニン結晶を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
−チタニルフタロシアニン結晶−
前記チタニルフタロシアニン結晶は、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、及び28.3°にもピークを有する。
前記チタニルフタロシアニン結晶は、特徴的な方法で合成される。それは、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ、前記7.3°のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、かつ26.3゜にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶(前駆体)を原料に用い、これを結晶転移させることで得られるものである。
以下に、前駆体としての特定結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶の合成法について述べ、次いで、該チタニルフタロシアニン結晶を結晶型に転移させる方法について、順に説明する。
(1)前駆体(27.2゜に最大回折ピークを有する前記チタニルフタロシアニン結晶)の合成方法
前記チタニルフタロシアニン結晶の合成方法としては、例えば、特開平6−293769号公報に記載されているように、ハロゲン化チタンを原料に用いない方法が良好に用いられる。この方法の最大のメリットは、合成されたチタニルフタロシアニン結晶がハロゲン化フリーであることである。チタニルフタロシアニン結晶は不純物としてのハロゲン化チタニルフタロシアニン結晶を含むと、これを用いた感光体の静電特性において光感度の低下や、帯電性の低下といった悪影響を及ぼす場合が多い(Japan Hardcopy ’89論文集 p.103 1989年参照)。
本発明においても、特開2001−19871号公報に記載されているようなハロゲン化フリーチタニルフタロシアニン結晶を主に対象にしているものであり、これらの材料が有効に使用される。
前記ハロゲン化フリーのチタニルフタロシアニンを合成するためには、チタニルフタロシアニン合成の際の原材料に、ハロゲン化された材料を使用しないことである。具体的には、以下の方法が用いられる。
ここで、まず、前記特定の結晶型を有するチタニルフタロシアニン結晶の合成方法について述べる。
初めにチタニルフタロシアニン結晶の合成粗品の合成法について述べる。フタロシアニン類の合成方法は古くから知られており、例えば、特開平6−293769号公報、Moser等による「Phthalocyanine Compounds」(1963年)、「The Phthalocyanines」(1983年)、等に記載されている。例えば、第1の方法として、無水フタル酸類、金属あるいはハロゲン化金属、及び尿素の混合物を高沸点溶媒の存在下、又は不存在下において加熱する方法である。この場合、必要に応じてモリブデン酸アンモニウム等の触媒が併用される。
第2の方法としては、フタロニトリル類とハロゲン化金属を高沸点溶媒の存在下あるいは不存在下において加熱する方法である。この方法は、第1の方法で製造できないフタロシアニン類、例えば、アルミニウムフタロシアニン類、インジウムフタロシアニン類、オキソバナジウムフタロシアニン類、オキソチタニウムフタロシアニン類、ジルコニウムフタロシアニン類等に用いられる。
第3の方法は、無水フタル酸、又はフタロニトリル類とアンモニアとをまず反応させて、例えば1,3−ジイミノイソインドリン類等の中間体を製造し、次いでハロゲン化金属と高沸点溶媒中で反応させる方法である。
第4の方法は、尿素等の存在下で、フタロニトリル類と金属アルコキシドを反応させる方法である。
これらの中でも、前記第4の方法はベンゼン環への塩素化(ハロゲン化)が起こらず、電子写真用材料の合成法としては、極めて有用な方法であり、本発明においては極めて有効に使用される。
次に、不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)の調製方法について述べる。この調製方法は、フタロシアニン類を硫酸に溶解した後、水で希釈し、再析出させる方法であり、アシッドペースト法、又はアシッドスラリー法と呼ばれるものが使用できる。
具体的な方法としては、前記合成粗品を10倍量〜50倍量の濃硫酸に溶解し、必要に応じて不溶物を濾過等により除去し、これを硫酸の10倍量〜50倍量の充分に冷却した水又は氷水にゆっくりと投入し、チタニルフタロシアニンを再析出させる。析出したチタニルフタロシアニンを濾過した後、イオン交換水で洗浄及び濾過を行い、濾液が中性になるまで充分にこの操作を繰り返す。最終的に、綺麗なイオン交換水で洗浄した後、濾過を行い、固形分濃度で5質量%〜15質量%程度の水ペーストを得る。
この際、析出したチタニルフタロシアニンをイオン交換水で十分に洗浄し、可能な限り濃硫酸を残さないことが重要である。具体的には、洗浄後のイオン交換水が以下のような物性値を示すことが好ましい。即ち、硫酸の残存量を定量的に表せば、洗浄後のイオン交換水のpH及び比伝導度で表すことができる。
pHで表す場合には、pHが6〜8であることが好ましい。この範囲であることにより、感光体特性に影響を与えない硫酸残存量であると判断できる。前記pH値は、例えば市販のpHメーターにより簡便的に測定することができる。
比伝導度で表す場合には、8μS/cm以下が好ましく、5μS/cm以下がより好ましく、3μS/cm以下が更に好ましい。前記比伝導度が8μS/cm以下であれば、感光体特性に影響を与えない硫酸残存量であると判断できる。前記比伝導度の下限値は、洗浄に使用した後のイオン交換水の比伝導度ということになる。いずれの測定においても、前記範囲を逸脱すると、硫酸の残存量が多くなり、感光体の帯電性が低下したり、光感度が悪化することがある。
前記比伝導度は、例えば市販の電気伝導率計を用いて測定することが可能である。
このように作製したものが本発明に用いる不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)である。この不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0°〜7.5゜に最大回折ピークを有するものであることが好ましい。また、その回折ピークの半値巾が1゜以上であることがより好ましい。更に、一次粒子の平均粒子径が0.1μm以下であることが好ましい。
前記結晶変換は、前記不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、かつ前記7.3°のピークと9.4゜のピークの間にはピークを有さず、かつ26.3゜にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶に変換する工程である。
具体的な方法としては、前記不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を乾燥せずに、水の存在下で有機溶媒と共に混合及び撹拌することにより、前記結晶型を得ることができる。
前記有機溶媒は、所望の結晶型を得られるものであれば特に制限はなく、いかなる有機溶媒も使用できるが、例えばテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。あるいは他の溶媒と混合して用いることも可能である。
前記結晶変換に使用される前記有機溶媒の量は、不定形乃至低結晶性チタニルフタロシアニンの質量の10倍以上が好ましく、30倍以上がより好ましい。該範囲において、結晶変換を素早く十分に起こさせると共に、不定形乃至低結晶性チタニルフタロシアニンに含まれる不純物を十分に取り除く効果が発現される。なお、ここで使用する不定形乃至低結晶性チタニルフタロシアニンは、アシッドペースト法により作製するものであるが、上述のように硫酸を十分に洗浄したものを使用することが好ましい。硫酸が残存するような条件で結晶変換を行うと、結晶粒子中に硫酸イオンが残存し、でき上がった結晶を水洗処理のような操作をしても完全には取り除くことができない。硫酸イオンが残存した場合には、感光体の感度低下、帯電性低下を引き起こすなど、好ましい結果を得られない。例えば、特開平8−110649号公報には、硫酸に溶解したチタニルフタロシアニンをイオン交換水と共に有機溶媒に投入して結晶変換を行う方法が記載されている。この際、本発明で得られるチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルに類似した結晶を得ることができるが、チタニルフタロシアニン中の硫酸イオン濃度が高く、光減衰特性(光感度)が悪いものであるため、前記チタニルフタロシアニンの製造方法としては好ましいものではない。
(2)本発明で用いるチタニルフタロシアニン結晶の合成方法
上述のようにして合成した特定結晶型のチタニルフタロシアニン結晶(前駆体)を、適当な方法により結晶転移させることにより、本発明で用いるチタニルフタロシアニン結晶を合成する。
本発明で用いるチタニルフタロシアニン結晶は、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、及び28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶である。
次に、前駆体を結晶転移する方法について述べる。該前駆体は、熱的エネルギー、機械的エネルギー、化学的エネルギーを与えることにより、結晶転移することができる。
前記熱的エネルギー印加の方法としては、前駆体を100℃以上の高温下で、熱処理する方法が挙げられる。例えば、前駆体の粉末を電気炉のようなもので、200℃以上の高温下で数時間加熱処理することにより、所望の結晶型へ転移することができる。この際、あまりにも高温であるとチタニルフタロシアニン結晶そのものが分解してしまうような現象を生じるため、400℃程度を加熱温度の上限とするものである。また、加熱処理は暗所で行うことが好ましく、遮光した状態で加熱処理を行う。更に、加熱処理は大気下で行ってもよいが、減圧下(例えば、10mmHg以下)で行ってもよい。
前記機械的エネルギー印加の方法としては、前駆体に機械的剪断力を与えるような方法が好ましい。例えば、ミキサーのようなもので剪断力を与える方法、乾式ボールミルのようなもので剪断力を与える方法、乳鉢のようなもので剪断力を与える方法などが挙げられる。
前記化学的エネルギー印加の方法としては、2つに大別できる。一つは、乾式法によるものであり、真空蒸着法のような方法により、結晶型を転移させるものである。この場合、前駆体は一度、分子状態までバラバラになり、対向基板上で所望の結晶型になるものである。
もう一つは、湿式法によるものであり、前駆体を有機溶媒によって処理するものである。具体的には、前駆体を有機溶媒に浸漬して、1日以上の期間放置しておくものである。これにより所望の結晶型に転移するものである。
前記有機溶媒としては、前駆体を所望の結晶型に結晶転移できるものであれば有効に使用できるが、エーテル系溶媒、及びケトン系溶媒から選択される少なくとも1種が使用できる。
前記エーテル系溶媒の中でもテトラヒドロフランは有効に用いられ、ケトン系溶媒の中では2−ブタノンが有効に用いられる。前記有機溶媒中には、水及びその他の成分を極力含まないことが重要である。前記有機溶媒中に水を多く含んでいると、結晶転移速度が低下するので好ましくない。
前記湿式法による溶媒処理においては、機械的ネルギーを併用することで、より効率的に結晶転移させることができる。例えば、前駆体を前記有機溶媒と共にミリング装置等(例えば、ボールミル装置)に投入し、所定時間、機械的剪断力を印加することにより、所望結晶型への結晶転移を加速することができる。
前記感光層は、上述したように、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする単層感光層から構成される場合と、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層の積層構造からなる場合がある。まず、積層構造からなる感光体について先に説明する。
−電荷発生層−
前記電荷発生層は、電荷発生物質として、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含有し、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記電荷発生層は、前記顔料を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルベンザール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、などが挙げられる。
前記結着樹脂の含有量は、前記電荷発生物質100質量部に対し500質量部以下が好ましく、10質量部〜300質量部がより好ましい。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロインなどが挙げられる。
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
前記電荷発生層の厚みは、0.01μm〜5μmが好ましく、0.1μm〜2μmがより好ましい。
−電荷発生層−
前記電荷輸送層は、電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解乃至分散し、これを電荷発生層上に塗布し、乾燥することにより形成できる。更に必要に応じて可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
前記電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
前記電荷輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記正孔輸送物質としては、例えばポリ−N−ビニルカルバゾール又はその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート又はその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物又はその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電荷輸送物質の含有量は、前記結着樹脂100質量部に対し、20質量部〜300質量部が好ましく、40質量部〜150質量部がより好ましい。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂の機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これら高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層は耐摩耗性に優れたものである。
前記高分子電荷輸送物質としては、特に制限はなく、公知の材料の中から目的に応じて適宜選択することができるが、トリアリールアミン構造を主鎖及び側鎖の少なくともいずれかに含むポリカーボネートが良好に用いられる。これらの中でも、下記(I)式〜下記(X)式で表される高分子電荷輸送物質が好適に用いられる。
<(I)式>
ただし、前記式(I)中、R、R、及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子を表す。Rは水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。R及びRは、置換もしくは無置換のアリール基を表す。o、p、及びqはそれぞれ独立して0〜4の整数を表す。k、及びjは組成比を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9である。nは繰り返し単位数を表し、5〜5,000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、又は下記一般式で表される2価基を表す。
前記式中、R101、及びR102は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。l及びmはそれぞれ0〜4の整数を表す。Yはm単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(ただし、式中Zは脂肪族の2価基を表す)、又は、下記一般式で表される基である。
ただし、式中、aは1〜20の整数を表す。bは1〜2000の整数を表す。R103、及びR104は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換又は無置換のアルキル基又はアリール基を表す。
<(II)式>
ただし、前記式(II)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar、Ar、及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基を表す。X、k、j、及びnは、前記(I)式の場合と同じである。
<(III)式>
ただし、前記(III)式中、R及びR10は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar、Ar、及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基を表す。X、k、j及びnは、前記(I)式の場合と同じである。
<(IV)式>
ただし、前記(IV)式中、R11及びR12は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar、Ar、及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基を表す。pは1〜5の整数を表す。X、k、j、及びnは、前記(I)式の場合と同じである。
<(V)式>
ただし、前記(V)式中、R13及びR14は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar10、Ar11、及びAr12は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基を表す。X、及びXは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表す。X、k、j及びnは、前記(I)式の場合と同じである。
<(VI)式>
ただし、前記(VI)式中、R15、R16、R17、及びR18は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar13、Ar14、Ar15、及びAr16は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基を表す。Y、Y、及びYは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。X、k、j、及びnは、前記(I)式の場合と同じである。
<(VII)式>
ただし、前記(VII)式中、R19、及びR20は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表す。なお、R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18、及びAr19は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基を表す。X、k、j、及びnは、前記(I)式の場合と同じである。
<(VIII)式>
ただし、前記(VIII)式中、R21は、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar20、Ar21、Ar22、及びAr23は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基を表す。X,k,j及びnは、前記(I)式の場合と同じである。
<(IX)式>
ただし、前記(IX)式中、R22、R23、R24、及びR25は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、及びAr28は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基を表す。X、k、j、及びnは、前記(I)式の場合と同じである。
<(X)式>
ただし、前記(X)式中、R26、及びR27は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar29、Ar30、及びAr31は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基を表す。X、k、j及びnは、前記(I)式の場合と同じである。
また、前記電荷輸送層に使用される高分子電荷輸送物質として、上述の高分子電荷輸送物質の他に、前記電荷輸送層の成膜時には電子供与性基を有するモノマー、又はオリゴマーの状態で、成膜後に硬化反応、又は架橋反応をさせることで、最終的に二次元あるいは三次元の架橋構造を有する重合体も含むものである。
これら電子供与性基を有する重合体から構成される電荷輸送層、あるいは架橋構造を有する重合体は耐摩耗性に優れたものである。通常、電子写真プロセスにおいては、帯電電位(未露光部電位)は一定であるため、繰り返し使用により感光体の表面層が摩耗すると、その分だけ感光体にかかる電界強度が高くなってしまう。この電界強度の上昇に伴い、地汚れの発生頻度が高くなるため、感光体の耐摩耗性が高いことは、地汚れに対して有利である。これら電子供与性基を有する重合体から構成される電荷輸送層は、自身が高分子化合物であるため成膜性に優れ、低分子分散型高分子からなる電荷輸送層に比べ、電荷輸送部位を高密度に構成することが可能で電荷輸送能に優れたものである。このため、高分子電荷輸送物質を用いた電荷輸送層を有する感光体には高速応答性が期待できる。
その他の電子供与性基を有する重合体としては、公知単量体の共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマーなどが挙げられる。また、例えば特開平3−109406号公報、特開20000−206723号公報、特開2001−34001号公報等に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることも可能である。この場合にも、先の移動度を満足できるような材料が有効に使用できる。
なお、前記電荷輸送層中に可塑剤、レベリング剤を添加してもよい。
前記可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して30質量%以下が好ましい。
前記レベリング剤としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、又はオリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して1質量%以下が好ましい。
前記電荷輸送層の厚みは、5μm〜100μmが好ましく、15μm〜40μmがより好ましい。
<単層感光層>
前記単層構造の感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質と結着樹脂を溶剤に溶解乃至分散し、これを塗布し、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
前記結着樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げた結着樹脂のほかに、前記電荷発生層で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。前記結着樹脂100質量部に対する電荷発生物質の含有量は5質量部〜40質量部が好ましい。前記結着樹脂100質量部に対する電荷輸送物質の含有量は190質量部以下が好ましく、50質量部〜150質量部がより好ましい。
前記感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。
前記単層構造の感光層の厚みは、5μm〜100μmが好ましく、15μm〜40μmがより好ましい。
<保護層>
本発明の電子写真感光体においては、感光層の保護の目的で、保護層が感光層の上に設けられることもある。
前記保護層は、少なくとも結着樹脂、及びフィラーを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
−結着樹脂−
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリブチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が特に好ましい。
−フィラー−
前記フィラーは、保護層の耐摩耗性を向上させる目的で添加され、無機フィラー、又は有機フィラーを用いることができる。
前記有機フィラーとしては、例えばポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末、などが挙げられる。
前記無機フィラーとしては、例えば銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末;シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物;チタン酸カリウム、などが挙げられる。これらの中でも、フィラーの硬度の点から、無機材料を用いることが好ましく、シリカ、酸化チタン、アルミナが特に好ましい。
前記フィラーの前記保護層における添加量は、使用するフィラー種により、また感光体を使用する電子写真プロセス条件によっても異なり一概には規定できないが、5質量%以上が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下が更に好ましい。
また、前記保護層には、残留電位低減、応答性改良のため、電荷輸送物質を含有してもよい。前記電荷輸送物質は、前記電荷輸送層と同様な材料を用いることができる。
前記電荷輸送物質として、低分子電荷輸送物質を用いる場合には、保護層中における濃度傾斜を設けても構わない。耐摩耗性向上のため、表面側を低濃度にすることは有効な手段である。ここで言う濃度とは、保護層を構成する全材料の総質量に対する低分子電荷輸送物質の質量比を表し、濃度傾斜とは上記質量比において表面側において濃度が低くなるような傾斜を設けることを示す。また、高分子電荷輸送物質を用いることは、感光体の耐久性を高める点で非常に有利である。以上のほかに真空薄膜作製法にて形成したa−C、a−SiCなど公知の材料を保護層として用いることができる。
前記保護層の形成方法としては、通常の塗布法が採用される。前記保護層の厚みは0.1μm〜10μmが好ましい。
本発明の電子写真感光体においては、前記電荷輸送層と前記保護層の間、又は前記単層感光層と前記保護層の間に、保護層への電荷輸送層成分混入を抑える又は両層間の接着性を改善する目的で中間層を設けることが可能である。
前記中間層としては、保護層塗工液に対し不溶性又は難溶性であるものが適しており、一般にバインダー樹脂を主成分として含む。該バインダー樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、などが挙げられる。前記中間層の形成方法としては、上述したような一般に用いられる塗工法が採用される。
前記中間層の厚みは、0.05μm〜2μmが好ましい。
本発明の電子写真感光体においては、耐環境性の改善を図り、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、前記単層構造の感光層、前記保護層、前記電荷輸送層、前記電荷発生層、前記中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類、などが挙げられる。
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン、などが挙げられる。
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン、などが挙げられる。
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、などが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン、などが挙げられる。
なお、これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、添加する層の総質量に対し0.01質量%〜10質量%が好ましい。
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、を少なくとも有してなり、定着手段、クリーニング手段、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。なお、帯電手段と、露光手段とを合わせて静電潜像形成手段と称することもある。
この場合、少なくとも電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段を有する画像形成要素が複数配列されたタンデム型であることが好ましい。
本発明で用いられる画像形成方法は、帯電工程と、露光工程と、現像工程と、転写工程と、を少なくとも含んでなり、定着工程、クリーニング工程、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、リサイクル工程、制御工程等を含んでなる。なお、帯電工程と、露光工程とを合わせて静電潜像形成工程と称することもある。
本発明で用いられる画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記帯電工程は前記帯電手段により行うことができ、前記露光工程は前記露光手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記定着工程は前記定着手段により行うことができ、前記クリーニング工程は前記クリーニング手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
−電子写真感光体−
前記電子写真感光体としては、本発明の前記電子写真感光体を用いることができる。
−帯電工程及び帯電手段−
前記帯電工程は、電子写真感光体表面を帯電させる工程であり、帯電手段により行われる。
前記帯電手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器(電子写真感光体表面と帯電器との間に100μm以下の空隙を有する近接方式の非接触帯電器を含む)、などが挙げられる。
前記帯電器により電子写真感光体に印加される電界強度としては、20V/μm〜60V/μmが好ましく、30V/μm〜50V/μmがより好ましい。電子写真感光体に印加される電界強度は高いほどドット再現性が良好になるが、電界強度が高すぎると電子写真感光体の絶縁破壊及び現像時のキャリア付着等の問題が発生する場合がある。
ここで、前記電界強度は、下記数式(1)で表される。
<数式(1)>
電界強度(V/μm)=SV/G
ただし、前記数式(1)中、SVは、現像位置における電子写真感光体の未露光部における表面電位(V)を表す。Gは、少なくとも感光層(電荷発生層及び電荷輸送層)を含む感光層の厚み(μm)を表す。
−露光工程及び露光手段−
前記露光(書き込み)は、例えば、前記露光手段を用いて前記電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光手段としては、前記帯電手段により帯電された前記電子写真感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、LED光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記電子写真感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
前記光源としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保できる光源が使用される。
使用する光源(書き込み光)の解像度により、形成される静電潜像ひいてはトナー像の解像度が決定され、解像度が高いほど鮮明な画像が得られる。しかしながら、解像度を高くして書き込みを行うとそれだけ書き込みに時間がかかることになるため、書き込み光源が1つであると書き込みがドラム線速(プロセス速度)の律速になってしまう。したがって、書き込み光源が1つの場合には2,400dpi程度の解像度が上限となる。書き込み光源が複数の場合には、それぞれが書き込み領域を負担すればよく、実質的には「2,400dpi×書き込み光源個数」が上限となる。これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、良好に使用される。
−現像工程及び現像手段−
前記現像工程は、前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成する工程である。前記トナーは、感光体の帯電極性と同極性のトナーを用いられ、反転現像(ネガ・ポジ現像)によって、静電潜像が現像される。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像をトナーを用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記現像剤を収容し、前記静電潜像に該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適である。
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有するものなどが好適に挙げられる。
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記電子写真感光体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該電子写真感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該電子写真感光体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
−転写工程及び転写手段−
前記転写手段は、前記可視像を記録媒体に転写する手段であるが、感光体表面から記録媒体に可視像を直接転写する方法と、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する方法がある。いずれの態様も良好に使用することができるが、高画質化に際して転写による悪影響が大きいような場合には、転写回数が少ない前者(直接転写)の方法が好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記電子写真感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。なお、転写手段としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写手段の中から適宜選択することができ、例えば記録媒体の搬送も同時に行うことのできる転写搬送ベルト等が好適に挙げられる。
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記電子写真感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写帯電器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。前記転写帯電器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
また、転写帯電器は転写ベルト、転写ローラを用いることも可能であるが、オゾン発生量の少ない転写ベルトや転写ローラ等の接触型を用いることが好ましい。なお、転写時の電圧/電流印加方式としては、定電圧方式、定電流方式のいずれの方式も用いることが可能であるが、転写電荷量を一定に保つことができ、安定性に優れた定電流方式がより好ましい。このような転写手段は、構成上、本発明の構成を満足できるものであれば、公知のものを使用することができる。
転写後の感光体表面電位(除電部に突入する差異の表面電位)によって、画像形成1サイクルあたりの感光体通過電荷量が大きく異なる。これが大きいほど、繰り返し使用における感光体の静電疲労に大きな影響を及ぼす。
この通過電荷量とは、感光体の厚み方向を流れる電荷量に相当する。感光体の画像形成装置中の動作として、メイン帯電器により所望の帯電電位に帯電され(ほとんどの場合負帯電される)、原稿に応じた入力信号に基づき光書き込みが行われる。この際、書き込みが行われた部分は光キャリアが発生し、表面電荷を中和する(電位減衰する)。この時、光キャリア発生量に依存した電荷量が感光体厚み方向に流れる。一方、光書き込みが行われない領域(非書き込み部)は、現像工程及び転写工程を経て、除電工程に進む(必要に応じて、その前にクリーニング工程が施される)。ここで、感光体の表面電位がメイン帯電により施された電位に近い状態(暗減衰分は除く)であると、光書き込みが行われた領域とほぼ同じ量の電荷量が感光体厚み方向に流れることになる。一般的に、現在の原稿は書き込み立が低いため、この方式であると、繰り返し使用における感光体の通過電荷量は除電工程で流れる電流がほとんどと言うことになる(書き込み率が10%であるとすると、除電工程で流れる電流は、全体の9割を占めることになる)。
この通過電荷は、感光体を構成する材料の劣化を引き起こす等、感光体の静電特性に大きく影響を及ぼす。その結果、通過電荷量に依存して、特に感光体の残留電位を上昇させる。感光体の残留電位が上昇すると、本発明で使用されるネガ・ポジ現像では、画像濃度が低下することになり、大きな問題となる。したがって、画像形成装置内での感光体の長寿命化(高耐久化)を狙うためには、どのようにして感光体の通過電荷量を小さくするかという課題がある。
これに対して、光除電を行わないという考え方もあるが、メイン帯電器の帯電器能力が大きくないと、帯電の安定化が図れず、残像のような問題を生じる場合がある。感光体の通過電荷は、感光体表面に帯電された電位(これにより生じた電界)により、光照射が行われることにより、発生した光キャリアが移動することにより生じる。したがって、感光体表面電位を光以外の手段で減衰させることができれば、感光体1回転(画像形成1サイクル)あたりの通過電荷量を低減することができる。
このため、転写工程において転写バイアスを調整することにより、感光体の通過電荷量を調整することが有効である。即ち、メイン帯電器により帯電され、書き込みが行われない非書き込み部は、暗減衰量を除き、帯電された電位に近い状態で転写工程に突入する。この際、メイン帯電器により帯電された極性側の絶対値として100V以下まで低減することにより、引き続く除電工程に突入しても光キャリア発生がほとんど行われず、通過電荷が生じない。この値は、0Vより近いほど好ましい。
更に、転写バイアスの調整により、メイン帯電により施される帯電極性とは逆極性に感光体の表面電位が帯電するように転写バイアスを印加させることにより、光キャリアが絶対に発生しないため、より好ましい。但し、逆極性にまで帯電するような転写条件では、場合により転写チリを多く発生させたり、次の画像形成プロセス(サイクル)のメイン帯電が追いつかない場合が出てくる。その場合には、残像のような不具合が発生する場合があるため、逆極性の絶対値として100V以下であることが好ましい。
以上のような制御を加えることは、本発明における効果を顕著なものとして、有効に使用できるものである。
−定着工程及び定着手段−
前記定着は、記録媒体に転写された可視像を、定着装置を用いて定着され、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
前記除電手段としては、前記電子写真感光体に対し除電を行うことができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができる。例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体上に残留する前記トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
前記リサイクル手段は、前記クリーニング手段により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、例えば、公知の搬送手段等が挙げられる。
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
ここで、本発明の画像形成装置の一の態様について、図6を参照しながら説明する。この図6は、本発明の画像形成装置を説明するための概略図であり、後に示すような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図6において、電子写真感光体1は、支持体上に、少なくとも、電荷ブロッキング層、モアレ防止層、及びCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層を有している。前記感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
帯電器3には、ワイヤー方式の帯電器やローラ形状の帯電器が用いられる。高速帯電が必要とされる場合にはスコロトロン方式の帯電器が良好に使用され、コンパクト化や後述する感光体を複数使用するタンデム方式の画像形成装置においては、酸性ガス(NOx、SOx等)やオゾン発生量の少ないローラ形状の帯電器が有効に使用される。この帯電器により、感光体には帯電が施されるが、感光体に印加される電界強度は高いほどドット再現性が良好になるため、20V/μm以上の電界強度が印加されることが好ましい。しかし、感光体の絶縁破壊や現像時のキャリア付着の問題を生み出す可能性があり、上限値は概ね60V/μm以下が好ましく、50V/μm以下がより好ましい。
また、画像露光部5には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保できる光源が使用される。光源(書き込み光)の解像度により、形成される静電潜像ひいてはトナー像の解像度が決定され、解像度が高いほど鮮明な画像が得られる。しかしながら、解像度を高くして書き込みを行うとそれだけ書き込みに時間がかかることになるため、書き込み光源が1つであると書き込みがドラム線速(プロセス速度)の律速になってしまう。したがって、書き込み光源が1つの場合には1,200dpi程度の解像度が上限となる。書き込み光源が複数の場合には、それぞれが書き込み領域を負担すればよく、実質的には「1,200dpi×書き込み光源個数」が上限となる。これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、良好に使用される。
現像手段である現像ユニット6は、少なくとも1つの現像スリーブを有する。現像ユニット6では、感光体の帯電極性と同極性のトナーが使用され、反転現像(ネガ・ポジ現像)によって、静電潜像が現像される。先の画像露光部に使用する光源によっても異なるが、近年使用するデジタル光源の場合には、一般的に画像面積率が低いことに対応して、書込部分にトナー現像を行う反転現像方式が光源の寿命等を考慮すると有利である。また、トナーのみで現像を行う1成分方式と、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を使用した2成分方式の2通りの方法があるが、いずれの場合にも良好に使用できる。
また、転写チャージャ10は転写ベルト、転写ローラを用いることも可能であるが、オゾン発生量の少ない転写ベルトや転写ローラ等の接触型を用いることが好ましい。なお、転写時の電圧/電流印加方式としては、定電圧方式、定電流方式のいずれの方式も用いることが可能であるが、転写電荷量を一定に保つことができ、安定性に優れた定電流方式がより好ましい。特に、転写手段に電荷を供給する電源供給用部材(高圧電源)から出力された電流のうち、転写手段に関連する部分に流れ、感光体に流れ込まない電流を差し引くことにより、感光体への電流値を制御する方法が好ましい。
転写電流は、感光体に静電的に付着しているトナーを引きはがし、被転写体(転写紙又は中間転写体等)へ移行させるために与える必要電荷量に基づく電流である。転写残などの転写不良を回避するためには、転写電流を大きくすればよいことになるが、ネガ・ポジ現像を用いた場合には、感光体の帯電極性と逆極性の帯電を与えることになり、感光体の静電疲労が著しいものとなる。転写電流は大きいほど、感光体−トナー間の静電付着力を上回る電荷量を与えられるため有利であるが、ある閾値を越えると転写手段−感光体間で放電現象を生じてしまい、微細に現像されたトナー像を散らせる結果になる。このため、上限値としてはこの放電現象を起こさない範囲ということになる。この閾値は転写手段−感光体間の空隙(距離)、両者を構成する材料などによって変わるものであるが、概ね200μA以下程度で使用することにより、放電現象を回避できる。したがって、転写電流の上限値は200μA程度である。
また、感光体上の形成されたトナー像は、転写紙に転写されることで転写紙上の画像となるものであるが、この際、2つの方法がある。1つは、図6に示すような感光体表面に現像されたトナー像を転写紙に直接転写する方法と、もう1つは、一端感光体から中間転写体にトナー像が転写され、これを転写紙に転写する方法である。いずれの場合にも本発明において用いることができる。
このような転写手段は、構成上、本発明の構成を満足できるものであれば、公知のものを使用することができる。
また、前述のように転写電流を制御することで、転写後の感光体表面電位(書き込み光の未露光部)を低下させておくことは、画像形成1サイクルあたりの感光体通過電荷量を低減することができ、本発明においては有効に使用される。
除電ランプ2等の光源には、前記電子写真感光体に対し除電を行うことができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等が好適に挙げられる。特に、前記感光体の中間層に含有される金属酸化物が吸収しない波長を有する光源を使用することは、本発明の効果を一層顕著なものとし、有益に使用できる。
前記半導体レーザー(LD)、及びエレクトロルミネッセンス(EL)以外にも、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、キセノンランプ等を用いることができる。また、波長を特定化するため、前記光源と組み合わせて、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
図6中、8はレジストローラ、11は分離チャージャ、12は分離爪である。
また、現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、感光体1上に残存するトナーが生じた場合、ファーブラシ14及びブレード15により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行われることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
次に、図7は、本発明のタンデム型のフルカラー画像形成装置を説明するための概略図であり、以下に説明するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図7において、16Y、16M、16C、及び16Kはドラム状の感光体であり、感光体は、支持体上に、少なくとも、電荷ブロッキング層、モアレ防止層、及びCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を含有する感光層が設けられてなる。
この感光体16Y、16M、16C、16Kは図7中の矢印方向に回転可能であり、その周りに少なくとも回転順に帯電手段17Y、17M、17C、17K、少なくとも1つの現像スリーブを有する現像手段19Y、19M、19C、19K、クリーニング手段20Y、20M)、20C、20K、除電手段27Y、27M、27C、27Kが配置されている。帯電手段17Y、17M、17C、17Kは、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置である。この帯電手段17Y、17M、17C、17Kと、現像手段19Y、19M、19C、19Kとの間の感光体表面側より、露光手段18Y、18M、18C、18Kからのレーザー光が照射され、感光体16Y、16M、16C、16Kに静電潜像が形成される。そして、このような感光体16Y、16M、16C、16Kを中心とした4つの画像形成要素25Y、25M、25C、25Kが、転写紙搬送手段である転写搬送ベルト22に沿って並置されている。転写搬送ベルト22は各画像形成ユニット25Y、25M、25C、25Kの現像手段19Y、19M、19C、19Kと、クリーニング手段20Y、20M、20C、20Kの間で感光体16Y、16M、16C、16Kに当接しており、転写搬送ベルト22の感光体側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ21Y、21M、21C、21Kが配置されている。各画像形成要素25Y、25M、25C、25Kは現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
図7に示す構成のフルカラー画像形成装置において、画像形成動作は、次のようにして行われる。まず、各画像形成要素25Y、25M、25C、25Kにおいて、感光体16Y、16M、16C、16Kに静電潜像が形成される。そして、感光体16Y、16M、16C、16Kが回転し、帯電手段17Y、17M、17C、17Kにより、感光体が帯電される。この際、高精細の潜像を形成するため、感光体の電界強度は20V/μm以上が好ましく、60Vμm以下が好ましく、50V/μm以下がより好ましい。
次に、感光体の外側に配置された露光手段18Y、18M、18C、18Kでレーザー光により、1200dpi以上(好ましくは2400dpi以上)の解像度で書き込みが行われ、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。この書き込み光源としては、任意の感光体に適した光源が用いられる。この場合にも書き込み光源1つに対して2,400dpiの書き込みが概ね上限となる。
次に、現像手段19Y、19M、19C、19Kにより潜像を現像してトナー像が形成される。現像手段19Y、19M、19C、19Kは、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のトナーで現像を行う現像手段であり、4つの感光体16Y、16M、16C、16K上に形成された各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。転写紙26は給紙コロ(不図示)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ23で一旦停止し、感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト22に送られる。転写搬送ベルト22上に保持された転写紙26は搬送されて、各感光体16Y、16M、16C、16Kとの当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行われる。
感光体上のトナー像は、転写ブラシ21Y、21M、21C、21Kに印加された転写バイアスと感光体16Y、16M、16C、16Kとの電位差から形成される電界により、転写紙26上に転写される。そして、4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙26は定着手段24に搬送され、トナー像が定着されて、図示しない排紙部に排紙される。
また、転写部で転写されずに各感光体16Y、16M、16C、16K上に残った残留トナーは、クリーニング手段20Y、20M、20C、20Kで回収される。
続いて、除電手段27Y、27M、27C、27Kにより、感光体上の余分な残留電荷が除去される。その後再び、帯電手段で均一に帯電が施されて、次の画像形成が行われる。
なお、図7では、画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものではなく、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(25Y、25M、25C)が停止するような機構を設けることは有効である。
また、上述したように、転写後の感光体表面が、主帯電器により帯電させた極性側に100V以下に帯電させることが好ましく、逆極性側に帯電させることがより好ましく、逆極性側に100V以下に帯電させることが特に好ましい。これにより、感光体の繰り返し使用における残留電位の上昇を低減化することができる。
以上説明した画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、以下のプロセスカートリッジの形で画像形成装置本体内に着脱可能に組み込まれてもよい。
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段とを有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
前記電子写真感光体として、本発明の前記電子写真感光体を用いる。
前記現像手段としては、前記トナー乃至前記現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容されたトナー乃至現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなり、更に、現像剤担持体に担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。
また、前記帯電手段、露光手段、転写手段、クリーニング手段、及び除電手段としては、上述した画像形成装置と同様なものを適宜選択して用いることができる。
前記プロセスカートリッジは、各種電子写真方式の画像形成装置、ファクシミリ、プリンターに着脱可能に備えさせることができ、本発明の前記画像形成装置に着脱可能に備えさせるのが特に好ましい。
ここで、前記プロセスカートリッジは、例えば、図8に示すように、電子写真感光体101を内蔵し、帯電手段102、現像手段104、転写手段108、クリーニング手段107を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図8中、103は露光手段による露光、105は記録媒体をそれぞれ示す。
次に、図8に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、電子写真感光体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段104で現像され、得られた可視像は転写手段108により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の電子写真感光体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(合成例1)
−チタニルフタロシアニン結晶前駆体の合成−
特開2001−19871号公報に準じて、顔料を作製した。即ち、1,3−ジイミノイソインドリン29.2gとスルホラン200mlを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下した。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後、析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄した。次に、メタノールで数回洗浄し、更に、80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。
得られた粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過した。次いで、洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)により水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。
この不定形チタニルフタロシアニンのCu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピークとして、7.0°〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上であった。
得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40gを、結晶変換溶媒としてのテトラヒドロフラン200gに投入し、4時間攪拌を行った後、濾過を行い、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末(前駆体)を得た。
前記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒は、前記ウェットケーキに対する質量比で33倍の量を用いた。なお、合成例1の原材料には、ハロゲン含有化合物を使用していない。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、市販のX線回折装置(理学電機株式会社製、RINT1100)により、下記の条件によりX線回折スペクトルを測定したところ、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと、最低角7.3±0.2°にピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。結果を図9に示す。
得られた水ペーストの一部を80℃の減圧下(5mmHg)で、2日間乾燥して、低結晶性チタニルフタロシアニン粉末を得た。水ペーストの乾燥粉末のX線回折スペクトルを図10に示す。
<X線回折スペクトル測定条件>
・X線管球:Cu
・電圧:50kV
・電流:30mA
・走査速度:2°/分
・走査範囲:3°〜40°
・時定数:2秒
−チタニルフタロシアニン結晶の合成(前駆体の結晶変換)−
次いで、前駆体の有機溶媒処理を行った。上記のようにして合成した前駆体40gを、400gのテトラヒドロフラン中に、暗所にて1週間浸漬し、放置した。1週間後、チタニルフタロシアニン結晶を濾過分別して、100℃にて1日間真空乾燥を行い、チタニルフタロシアニン結晶を得た(以下、「結晶1」とする)。得られた「結晶1」を先の条件にて測定したX線回折スペクトルを図11に示す。
この図11のX線回折スペクトルは、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、及び28.3°にもピークを有することが分かった。
(合成例2〜7)
合成例1における前駆体合成において、テトラヒドロフランの代わりに表1に記載の有機溶媒を用いた以外は、合成例1と同様にして、チタニルフタロシアニン結晶を合成した。それぞれ、合成例番号に対応して、順次、「結晶2」〜「結晶7」とする。
合成例2〜7において得られた前駆体は、全て合成例1の前駆体と同様に、図9に示すX線回折スペクトルを示していた。また、得られた結晶2〜7について、合成例1と同じ条件にてX線回折スペクトルの測定を行ったが、何れの結晶も図11に示すX線回折スペクトルとほぼ同様のスペクトルが得られた。
(合成例8)
合成例1で合成した前駆体を、以下のようにして有機溶媒処理を行い、合成例8のチタニルフタロシアニン結晶を合成した。
合成例1で合成した前駆体40gを2−ブタノン400gと共に、直径150mmのボールミルポットに投入した。この中に、直径2mmのジルコニアボール3.5kgを投入して、24時間ミリング処理を行った。
有機溶媒処理後、チタニルフタロシアニン結晶を濾過分別して、100℃にて1日間真空乾燥を行い、合成例8のチタニルフタロシアニン結晶を得た(以下、「結晶8」とする)。
得られた結晶8を合成例1と同じ条件にてX線回折スペクトルの測定を行ったところ、図11に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルが得られた。
(合成例9)
合成例1で得られた前駆体を、以下のようにして結晶変換処理を行い、合成例9のチタニルフタロシアニン結晶を合成した。
合成例1で得られた前駆体40gを、直径150mmのボールミルポットに投入した。この中に、直径2mmのジルコニアボール3.5kgを投入して、48時間ミリング処理を行った。
結晶変換処理後、チタニルフタロシアニン結晶をボールから分別して、合成例9のチタニルフタロシアニン結晶を得た(以下、「結晶9」とする)。
得られた結晶9を合成例1と同じ条件にてX線回折スペクトルの測定を行ったところ、図11に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルが得られた。
(合成例10)
合成例1における前駆体合成において、テトラヒドロフランの代わりに2−ブタノンを用いた以外は、合成例1と同様にして、チタニルフタロシアニン結晶を合成した(以下、「結晶10」とする)。
得られた前駆体を合成例1と同じ条件にて測定したX線回折スペクトルを図12に示す。また、得られたチタニルフタロシアニン結晶を合成例1と同じ条件にて測定したX線回折スペクトルを図13に示す。
図13に示すX線回折スペクトルは、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、及び28.3°にもピークを有し、図11に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルが得られた。
(合成例11)
特公平5−31137号公報の製造例1に準じてチタニルフタロシアニン結晶を合成した。即ち、フタロジニトリル97.5gをα−クロロナフタレン750ml中に加え、次に、窒素雰囲気下、四塩化チタン22mlを滴下した。滴下後昇温し、撹拌しながら200℃〜220℃で3時間反応させた後、放冷し、100℃〜130℃で熱時濾過し、100℃に加熱したα−クロロナフタレン200mlで洗浄した。得られた粗ケーキをα−クロロナフタレン300ml、次に、メタノール300mlで室温にて懸洗し、更にメタノール800mlで1時間熱懸洗を3回行い、得られたケーキを水700mlに懸濁させ、2時間熱懸洗を行った。熱懸洗濾液のpHがおよそ7になるまで熱懸洗を繰り返した。その後、140℃〜145℃のN−メチルピロリドン700ml中で、2時間熱懸洗を行う操作を4回実施した。次いで、メタノール800mlで2回熱懸洗を行い、濾過し、1日間80℃真空乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶を得た(以下、「結晶11」とする)。
得られた結晶11のX線回折スペクトルは、特公平5−31137号公報、図−1と同様のものであり、合成例1の図11に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルが得られた。
しかし、合成例1とは、7.0°〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上である不定形チタニルフタロシアニンであり、また、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を前駆体としない点で、製造方法が大きく異なる。また、合成例11の原材料にはハロゲン化チタンを含有している。
(合成例12)
特公平5−31137号公報の製造例4に準じてチタニルフタロシアニン結晶を合成した。即ち、フタロジニトリル46gをα−クロロナフタレン250ml中に仕込み、加熱溶解した後、四塩化チタンを10ml滴下し、150℃で30分間撹拌を行った。次いで徐々に昇温し、220℃で2時間加熱撹拌を行った。その後、撹拌しながら放冷し、反応系の温度が100℃に下がった時点で熱濾過した。次いで、メタノール600mlで熱懸濁、熱水煮沸懸濁をそれぞれ1回ずつ行った後、600mlのN−メチルピロリドンにより、120℃で1時間熱懸濁を行い、熱濾過後、800mlのメタノールで熱懸濁し、濾過後、1日間80℃真空乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶を得た(以下、「結晶12」とする)。
得られたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルは、特公平5−31137号公報の、図−7と同様のものであり、合成例1の図11に示すX線回折スペクトルと同様のスペクトルが得られた。
しかし、合成例1とは、7.0°〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上である不定形チタニルフタロシアニンであり、また、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を前駆体としない点で、製造方法が大きく異なる。また、合成例12の原材料にはハロゲン化チタンを含有している。
(比較合成例1)
特開昭61−239248号公報の実施例に記載の合成方法に準じて、α型チタニルフタロシアニン結晶を合成した。即ち、フタロジニトリル40g、4塩化チタン18g、及びα−クロロナフタレン500mの混合物を窒素気流下、240〜250℃で3時間加熱撹拌して反応を完結させた。その後ろ過し、生成物であるジクロロチタニウムフタロシアニンを得た。得られたジクロロチタニウムフタロシアニンを濃アンモニア水300m及びピリジン300mと共に1時間加熱還流し、目的物であるα形チタニルフタロシアニン18gを得た。生成物はアセトンにより、ソックスレー抽出器で充分洗浄を行った。洗浄後、60℃で1日間真空乾燥を行い、チタニルフタロシアニン結晶を得た(以下、結晶13とする)。
(製造例1)
−分散液1の作製−
次に、本発明で合成したチタニルフタロシアニン結晶の分散液を作製した。下記組成の分散液を下に示す条件のビーズミリングにより作製した。
・顔料作製例1で作製したチタニルフタロシアニン結晶(結晶1)・・・48質量部
・ポリビニルブチラール(積水化学株式会社製、BX−1)・・・32質量部
・2−ブタノン・・・720質量部
市販のビーズミル分散機(VMA−GETZMANN GMBH製、DISPERMAT SL、ローターの直径は50mm、分散室容量は125ml)に直径0.5mmのジルコニアボールを用いた。
始めにポリビニルブチラールを溶解した2−ブタノン溶液を循環タンクに投入し、循環を行い、樹脂液が循環系に満たされ、循環タンクに戻ってくるのを確認した。次いで、顔料を循環タンクに全て投入し、循環タンクで撹拌を行った後、ローター回転数3000r.p.m.にて、300分間循環分散を行った。
分散終了後、ビーズミル分散機よりミルベースを払い出し、更に2060質量部の2−ブタノンを投入し、希釈と同時に分散機に残ったミルベースをすべて払い出し、分散液を作製した(以下、「分散液1」とする)。
作製した分散液1の一部をドライアップして、粉末とした。これを先と同じ条件で、X線回折スペクトルを測定した。得られたスペクトルは「結晶1」と同様であり、分散を行っても結晶が安定であることが分かった。
(製造例2〜12)
−分散液2〜12の作製−
製造例1において、使用したチタニルフタロシアニン結晶を「結晶1」から「結晶2」〜「結晶12」に変更した以外は、製造例1と同様にして、分散液2〜12を作製した。なお、作製した分散液は、使用した結晶番号2〜12に応じて、それぞれ分散液2〜12とした。
(製造例13)
−分散液13の作製−
製造例1において、使用したチタニルフタロシアニン結晶を「結晶1」から、合成例10の前駆体に変更した以外は、製造例1と同様にして、分散液13を作製した。
(製造例14)
−分散液14の作製−
製造例1において、使用したチタニルフタロシアニン結晶を「結晶1」から、「結晶13」に変更した以外は、製造例1と同様にして、分散液14を作製した。
(実施例1)
<電子写真感光体1の作製>
直径30mmのアルミニウムドラム(JIS1050)に、下記組成の電荷ブロッキング層塗工液、モアレ防止層塗工液、電荷発生層塗工液、及び電荷輸送層塗工液を、順次塗布し、乾燥させて、厚み0.5μmの電荷ブロッキング層、厚み3.5μmのモアレ防止層、厚み0.2μmの電荷発生層、及び厚み25μmの電荷輸送層を形成し、積層型の電子写真感光体を作製した。以下、これを「電子写真感光体1」とする。
−電荷ブロッキング層塗工液−
・N−メトキシメチル化ナイロン(FR−101、株式会社鉛市製)・・・4質量部
・メタノール・・・70質量部
・n−ブタノール・・・30質量部
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm)・・・84質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・2−ブタノン・・・100質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、6/4であった。
−電荷発生層塗工液−
前記分散液1を用いた。
−電荷輸送層塗工液−
・ポリカーボネート(ユーピロンZ300、三菱ガス化学株式会社製)・・・10質量部
・下記構造式で表される電荷輸送物質・・・7質量部
・テトラヒドロフラン・・・80質量部
(実施例2〜9)
−電子写真感光体2〜9の作製−
実施例1において、電荷発生層の形成に使用した分散液1の代わりに、分散液2〜9を用いた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体2〜9を作製した。
(実施例10、参考例11及び12)
−電子写真感光体10〜12の作製−
実施例1において、電荷発生層の形成に使用した分散液1の代わりに、分散液10〜12を用いた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体10〜12を作製した。
(比較例1)
−電子写真感光体13の作製−
実施例1において、電荷ブロッキング層を設けない以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体13を作製した。
(比較例2)
−電子写真感光体14の作製−
実施例1において、モアレ防止層を設けない以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体14を作製した。
(比較例3)
−電子写真感光体15の作製−
実施例1において、電荷ブロッキング層とモアレ防止層との塗工順序を入れ替えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体15を作製した。
(実施例13)
−電子写真感光体16の作製−
実施例1において、電荷ブロッキング層の厚みを0.3μmとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体16を作製した。
(実施例14)
−電子写真感光体17の作製−
実施例1において、電荷ブロッキング層の厚みを1.0μmとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体17を作製した。
(実施例15)
−電子写真感光体18の作製−
実施例1において、電荷ブロッキング層の厚みを2.0μmとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体18を作製した。
(実施例16)
−電子写真感光体19の作製−
実施例1において、電荷ブロッキング層の厚みを0.1μmとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体19を作製した。
(実施例17)
<電子写真感光体20の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体20を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm)・・・252質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・2−ブタノン・・・300質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、3/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、6/4であった。
(実施例18)
<電子写真感光体21の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体21を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm)・・・120質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・2−ブタノン・・・150質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、0.7/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、6/4であった。
(実施例19)
<電子写真感光体22の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体22を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm)・・・336質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・2−ブタノン・・・350質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、4/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、6/4であった。
(実施例20)
<電子写真感光体23の作製>
実施例1において、電荷ブロッキング層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体23を作製した。
−電荷ブロッキング層塗工液−
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・2−ブタノン・・・500質量部
上記組成において、アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、6/4であった。
(実施例21)
<電子写真感光体24の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体24を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化亜鉛(SAZEX4000、堺化学株式会社製)・・・110質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・2−ブタノン・・・120質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、6/4であった。
(実施例22)
<電子写真感光体25の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体25を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm)・・・84質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・22.4質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・28質量部
・2−ブタノン・・・100質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、4/6であった。
(実施例23)
<電子写真感光体26の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体26を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm)・・・84質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・28質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・23.3質量部
・2−ブタノン・・・100質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、5/5であった。
(実施例24)
<電子写真感光体27の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体27を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm)・・・84質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・39.2質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・14質量部
・2−ブタノン・・・100質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、7/3であった。
(実施例25)
<電子写真感光体28の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体28を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm)・・・84質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・44.8質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・9.3質量部
・2−ブタノン・・・100質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、8/2であった。
(実施例26)
<電子写真感光体29の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体29を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm)・・・84質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・50.4質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・4.7質量部
・2−ブタノン・・・100質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、9/1であった。
(実施例27)
<電子写真感光体30の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体30を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm)・・・84質量部
・アルコール可溶性ナイロン(東レ株式会社製、アミランCM8000)・・・24質量部
・メタノール・・・300質量部
・n−ブタノール・・・130質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
(実施例28)
<電子写真感光体31の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体31を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm;D1)・・・42質量部
・酸化チタン(PT−401M、石原産業株式会社製、平均粒径0.07μm;D2)・・・42質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・2−ブタノン・・・100質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、6/4であった。
酸化チタンの平均粒径の比(D2/D1)は0.28であり、両者の混合比は0.5であった。
(実施例29)
<電子写真感光体32の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体32を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm;D1)・・・75.6質量部
・酸化チタン(PT−401M、石原産業株式会社製、平均粒径0.07μm;D2)・・・8.4質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・2−ブタノン・・・100質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、6/4であった。
酸化チタンの平均粒径の比(D2/D1)は0.28であり、両者の混合比は0.1であった。
(実施例30)
<電子写真感光体33の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体33を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm;D1)・・・8.4質量部
・酸化チタン(PT−401M、石原産業株式会社製、平均粒径0.07μm;D2)・・・75.6質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・2−ブタノン・・・100質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、6/4であった。
酸化チタンの平均粒径の比(D2/D1)は0.28であり、両者の混合比は0.9であった。
(実施例31)
<電子写真感光体34の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体34を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm;D1)・・・42質量部
・酸化チタン(TTO−F1、石原産業株式会社製、平均粒径0.04μm;D2)・・・42質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・2−ブタノン・・・100質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、6/4であった。
酸化チタンの平均粒径の比(D2/D1)は0.16であり、両者の混合比は0.5であった。
(実施例32)
<電子写真感光体35の作製>
実施例1において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体35を作製した。
−モアレ防止層塗工液−
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm;D1)・・・42質量部
・酸化チタン(A−100、石原産業株式会社製、平均粒径0.15μm;D2)・・・42質量部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、固形分50質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60、固形分60質量%、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・2−ブタノン・・・100質量部
上記組成において、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1であった。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の質量比は、6/4であった。
酸化チタンの平均粒径の比(D2/D1)は0.6であり、両者の混合比は0.5であった。
(実施例33)
<電子写真感光体36の作製>
実施例1において、電荷輸送層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体36を作製した。
−電荷輸送層塗工液−
・下記式で表される高分子電荷輸送物質(質量平均分子量=135,000)・・・10質量部
・下記構造式で表される添加剤・・・0.5質量部
(比較例4及び5)
−電子写真感光体37及び38の作製−
実施例1において、電荷発生層の形成に使用した分散液1の代わりに、分散液13及び14を用いた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体37及び38を作製した。
(実施例34〜43、46〜66、参考例44、45及び比較例6〜10)
以上のように作製した実施例1〜10、13〜33、参考例11、12及び比較例1〜5の各電子写真感光体を図6に示す画像形成装置に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材として接触方式の帯電ローラ、転写部材として転写ベルトを用い、下記の帯電条件にて、書き込み率6%のチャートを用い、連続5万枚印刷を行った。その後、白ベタ及びハーフトーン画像を出力し、地汚れの有無、モアレの有無、及び画像濃度を評価した(なお、試験環境は、22℃、55%RHであった)。結果を表2に示す。
なお、地汚れ画像評価は4段階で行い、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表した。
−帯電条件−
・DCバイアス:−950V
・ACバイアス:2.0kV(Peak to peak)、周波数:1.5kHz
(実施例67)
先に作製した電子写真感光体1を図8に示すプロセスカートリッジに装着し、図7に示す画像形成装置に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材として帯電ローラの両端部に厚み50μmの絶縁テープを巻き付けた近接配置用の帯電部材(感光体と帯電部材表面間の空隙が50μm)を用い、下記の帯電条件にて、帯電を行った。転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として660nmのLED(日亜化学株式会社製)を用いた。書き込み率6%のチャート(A4サイズ全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、連続5万枚印刷を行った。その後、以下のようにして地汚れの有無、カラー色の再現性を評価した(なお、試験環境は、22℃、55%RHであった)。結果を表3に示す。
−帯電条件−
・DCバイアス:−900V
・ACバイアス:2.0kV(Peak to peak)、周波数:2.0kHz
<地汚れ画像の評価>
5万枚の印刷後において、黒ステーションにて白ベタを出力、評価し、地汚れの有無を確認した(試験環境は、22℃−55%RHである)。
なお、地汚れ画像の評価は4段階で行い、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表した。
<カラー色の再現性>
5万枚の印刷前後において、ISO/JIS−SCID画像N1(ポートレート)を出力して、カラー色の再現性について評価した。
(実施例68〜70、参考例71及び72)
実施例67で使用した感光体1を、感光体8〜12に変更した以外は、実施例67と同様にして、評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例11〜13)
実施例67に使用した感光体1を、感光体13〜15に変更した以外は、実施例67と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例14及び15)
実施例67に使用した感光体1を、感光体37及び38に変更した以外は、実施例67と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
本発明の電子写真感光体は、繰り返し使用時における地汚れ発生の低減、残留電位の防止、接触帯電手段又は近接配置した帯電手段による帯電に際して絶縁破壊の発生を低減できる、高耐久であるので、例えば複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、デジタルカラープリンタ、ダイレクトデジタル製版機などに好適である。
また、本発明の画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジは、耐久性が向上し、長期にわたる繰り返し使用によっても地汚れが発生せず、色再現性に優れ、安定な画像形成を行うことが可能であり、直接又は間接電子写真多色画像現像方式を用いたフルカラー複写機、フルカラーレーザープリンター、及びフルカラー普通紙ファックス等に幅広く使用できる。
図1は、従来の電子写真感光体における積層化の構成例を示す断面概念図である。 図2は、従来の電子写真感光体における積層化の構成例を示す断面概念図である。 図3は、本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す概略断面図である。 図4は、本発明の電子写真感光体の層構成の別の一例を示す概略断面図である。 図5は、本発明の電子写真感光体の層構成の更に別の一例を示す概略断面図である。 図6は、本発明の電子写真プロセス及び画像形成装置を説明するための概略図である。 図7は、本発明のタンデム方式のフルカラー画像形成装置を説明するための概略図である。 図8は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。 図9は、合成例1で得られたチタニルフタロシアニン粉末(前駆体)のXDスペクトルを表した図である。 図10は、合成例1で得られた水ペースト乾燥粉末のXDスペクトルを表した図である。 図11は、合成例1で得られたチタニルフタロシアニン結晶(結晶1)のXDスペクトルを表した図である。 図12は、合成例10で得られたチタニルフタロシアニン粉末(前駆体)のXDスペクトルを表した図である。 図13は、合成例10で得られたチタニルフタロシアニン結晶(結晶10)のXDスペクトルを表した図である。
符号の説明
1 電子写真感光体
2 除電ランプ
3 帯電器
5 画像露光部
6 現像ユニット
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
16K、16C、16M、16Y 感光体
17K、17C、17M、17Y 帯電手段
18K、18C、18M、18Y 露光手段
19K、19C、19M、19Y 現像手段
20K、20C、20M、20Y クリーニング手段
21K、21C、21M、21Y 転写手段
22 転写ベルト
23 レジストローラ
24 定着手段
25K、25C、25M、25Y 画像形成要素
26 転写紙
27K、27C、27M、27Y 除電手段
31 支持体
32 樹脂層
33 フィラー分散層
34 感光層
35 電荷ブロッキング層
36 モアレ防止層
37 電荷発生層
38 電荷輸送層
39 保護層
101 電子写真感光体
102 帯電手段
103 露光手段
104 現像手段
105 記録媒体
106 転写手段
107 クリーニング手段
108 除電手段

Claims (20)

  1. 支持体と、該支持体上に、少なくとも電荷ブロッキング層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に有してなり、前記感光層が少なくともチタニルフタロシアニン結晶を含有し、
    該チタニルフタロシアニン結晶が、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0°〜7.5゜に最大回折ピークを有する不定形チタニルフタロシアニンを、水の存在下で、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン及び1,1,2−トリクロロエタンから選択される少なくとも1種の有機溶媒を含む有機溶媒により結晶変換されて得られた、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を結晶変換処理して得られる、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも26.2゜に最大回析ピークを有し、9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、26.2°、27.1°、及び28.3°にもピークを有するチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 感光層が、電荷発生層と電荷輸送層の積層構造からなる請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 電荷ブロッキング層が少なくとも絶縁性材料を含有し、該電荷ブロッキング層の厚みが2.0μm未満である請求項1から2のいずれかに記載の電子写真感光体。
  4. 絶縁性材料がN−メトキシメチル化ナイロンである請求項3に記載の電子写真感光体。
  5. モアレ防止層が少なくとも無機顔料及びバインダー樹脂を含有し、両者の容積比(無機顔料/バインダー樹脂)が1/1〜3/1である請求項1から4のいずれかに記載の電子写真感光体。
  6. バインダー樹脂が、熱硬化性樹脂である請求項5に記載の電子写真感光体。
  7. 熱硬化性樹脂が、アルキッド樹脂とメラミン樹脂との混合物である請求項6に記載の電子写真感光体。
  8. アルキッド樹脂とメラミン樹脂との混合質量比(アルキッド樹脂/メラミン樹脂)が、5/5〜8/2である請求項7に記載の電子写真感光体。
  9. 無機顔料が酸化チタンである請求項5から8のいずれかに記載の電子写真感光体。
  10. 酸化チタンが平均粒径の異なる2種類の酸化チタンであり、これらのうち、平均粒径の大きい方の酸化チタン(T1)の平均粒径(D1)とし、平均粒径の小さい方の酸化チタン(T2)の平均粒径を(D2)とすると、次式、0.2<(D2/D1)≦0.5の関係を満たす請求項9に記載の電子写真感光体。
  11. 平均粒径の小さい方の酸化チタン(T2)の平均粒径(D2)が、0.05μm<D2<0.2μmである請求項10に記載の電子写真感光体。
  12. 平均粒径の異なる2種の酸化チタンの混合質量比が、0.2≦T2/(T1+T2)≦0.8である請求項10から11のいずれかに記載の電子写真感光体。
  13. CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶の結晶変換処理が、有機溶媒による処理により行われる請求項1から12のいずれかに記載の電子写真感光体
  14. 結晶変換処理に使用する有機溶媒が、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒の少なくともいずれかを含む請求項13に記載の電子写真感光体。
  15. 不定形チタニルフタロシアニンにおける7.0°〜7.5゜の回折ピークの半値巾が1゜以上である請求項1から14のいずれかに記載の電子写真感光体。
  16. 不定形チタニルフタロシアニンが、ハロゲン化チタンを用いずに合成されたものである請求項1から15のいずれかに記載の電子写真感光体。
  17. 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
    前記電子写真感光体が、請求項1から16のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
  18. 少なくとも電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段を有する画像形成要素が複数配列されたタンデム型である請求項17に記載の画像形成装置。
  19. 電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段とを有するプロセスカートリッジが画像形成装置本体に着脱可能である請求項17から18のいずれかに記載の画像形成装置。
  20. 電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段とを有するプロセスカートリッジにおいて、
    前記電子写真感光体が、請求項1から16のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
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