JP5042573B2 - ミシン - Google Patents
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Description
図27に示す糸切断装置は、中釜202上の水平面で回転揺動運動をする動メス212により、中釜202の上面に移動してきた上糸203及び中釜202の上面に配置された下糸206をすくい、切断するものである。図28は従来の糸切断装置の斜視図であり図示しない駆動源により回転される駆動軸208に動メス土台210が固定され、該動メス土台210に動メス212が固定されている。そして、駆動軸208が回転すると、動メス212は駆動軸208を支点に釜214の上方を往復回動する。この回動により、動メス212の先端部は図29に示すように下糸206を捕捉した後、固定メス216の方向に糸を引寄せ、動メス212の刃部218が固定メス216と一致すると下糸206はT点で切断される。その際、下糸ボビンケース側の切断端は下糸クランプばね220に挟まれ、次の縫い始めのために保持される。なお、224は送り歯、226は針穴、228は針板である。
図30は糸切断後の被縫製物を示す斜視図である。被縫製物に残る糸片の根元をP、切断先をTとすると、図28のPからTに至る経路により長さLが決定される。そして、図示しない電機制御系から糸切信号が出ると、電装系よりソレノイドに通電され、ソレノイド或いはカムにより動メス212が往復回動する。また、動メス212は、その復動中に上糸203及び下糸206を捕捉し、復動完了時に刃部218を固定メス216に合致させて糸を切断する。これら一連の動作は、予め設定された下位置停止位置から上停止の間のミシン作動中に行なわれ、ミシンの回転を伴って実行される。
前記針板上に出没して被縫製物を搬送する送り歯と、前記ミシンベッド内に取り付けられた水平釜の釜軸台と、前記釜軸台に回転可能に支持され、回転により上糸ループを掬う剣先を有する外釜と、前記外釜内に回転可能に支持され、下糸が巻回されたボビンが装着される中釜と、前記中釜に設けられた突起部に係合して中釜の回転を規制する中釜案内と、刃部を有すると共に前記釜軸台に回動可能に支持され、初期位置と当該初期位置から針落ち位置側に前進した糸切断位置とに移動する切断メスと、前記釜軸台上を回動して初期位置と該初期位置より前進した糸捕捉位置と該糸捕捉位置より後退した糸切断位置とに順番に移動され、前記糸切断位置で前記切断メスとの協働により糸を切断する動メスと、前記切断メスを回動させるアクチュエータと、前記初期位置から前記糸切断位置に向かう切断メスの回動により該切断メスと前記動メスとを連結し、当該回動方向に動メスを回動させる係合部と、ミシン主軸に連動して回転する糸切りカムと、動メス駆動腕を介して前記動メスと一体に回動され前記糸切りカムに係合可能なカムコロと、前記アクチュエータの駆動により前記切断メスに伴って動メスが回動し、前記カムコロが前記糸切りカムに係合可能な位置まで移動し、その後糸切りカムが作動して前記動メスがミシン主軸に連動して回動するようにアクチュエータとミシン主軸を駆動するミシンモータとを制御する制御手段と、前記アクチュエータの作動部に取り付けられたシリンダ連結体と、前記シリンダ連結体の下部に固定され、鉤状の先端を有する動メス戻し板と、を備え、前記動メスは、その回動中心が前記外釜の回転中心を挟んで針落ち位置と逆側に位置し、移動動作の全体を通じて前記中釜の上方を回避すると共に、その先端が中釜の外周よりも針落ち位置側を通過し、前記制御手段は、前記アクチュエータの作動部を移動させ、前記動メス戻し板の先端を前記動メス駆動腕に当接させて当該動メス駆動腕を押し戻させることにより、前記動メスを前記糸切断位置から前記初期位置に復帰させることを特徴とするミシンである。
また、動メスは、その移動動作の全体を通じて中釜の上方を回避するようになっているため、中釜の上面を針板近くまで接近させることができる。これにより、中釜内に装着されるボビンに巻回される下糸の糸量を増加させることができ、ボビン交換の回数を減少することができるため生産効率の向上が図られる。
本実施形態では、ミシンとして総合送りミシンを例に説明する。総合送りミシン(以下、単にミシンとする)は、例えば、送り動作に伴う被縫製物のずれを防止するために、針上下動機構による縫い針の上下動及び針振り機構による針振りを同調させた針送り動作と、上送り機構及び下送り機構による送り動作とを同調させることで、厚手の被縫製物(例えば、皮物)に縫い針24を突き刺した状態で送りを行うミシンである。
かかるミシンは、以下の各機構部を内蔵する図示しないミシンフレームと、ミシンフレームのアーム部先端において縫い針24に往復上下動及び針振り動作を付与する針駆動機構と、ミシンフレームのベッド部上に載置された被縫製物をベッド部内から針板25上に出没して水平方向に送る送り機構(下送り機構)と、針駆動機構との協働により縫い目を形成する釜機構と、縫製終了後に上糸T1及び下糸T2を切断する糸切断装置100とを備えている。なお、ミシンは、その他、縫製に必要な種々の機構を備えているが、これらは従来周知の構成と同様であるため本実施形態では詳述しない。
ミシンフレームは、被縫製物たる布を載置する水平なベッド面を有するベッド部(ミシンベッド)と、該ベッド部の一端から上方に立設された縦胴部と、この縦胴部の上部からベッド部とほぼ平行に延出されたアーム部(ミシンアーム)とを備え、側面視にて略コ字状を呈する周知の形状を備えている。アーム部の先端には針駆動機構が内蔵されており、ベッド部には釜機構、送り機構及び糸切断装置100が内蔵されている。また、ベッド部の上面には、針駆動機構により上下動を行う縫い針24の下方側に針板25が固定されている(図13(b)参照)。針板25には、送り機構の送り歯26が出没する開口部が設けられている。また、針板25の一端縁の下面側には後述する釜機構の中釜23に設けられた中釜突起部23aと係合することで該中釜の回転を規制する中釜案内25aが設けられている(図13(b)及び図14参照)。
針駆動機構は、アーム部内において回転自在に延在されミシンモータと連結された図示しないミシン主軸としての上軸と、該上軸の先端に固定された回転錘と、上端が該回転錘の偏心部に回転自在に連結されたクランクロッドと、クランクロッドの下端に連結された針棒と、その下端に支持された縫い針24とを備えた周知の構成を備えている。そして、ミシンモータの駆動により上軸が回転すると、その回転が回転錘及びクランクロッドを介して上下動に変換されると共に、図示しない針振り機構により上軸の回転が揺動運動に変換されて針棒に伝達される。これにより、針棒が往復上下動と針振りとを組み合わせた針送り動作を行い、縫い針24の下降時において後述する送り歯26と同調して送り方向に布を送る。本実施形態では、かかる針棒の往復上下動により、縫い針24が送り歯26の針穴26b内に向かって針落ちを行い、この針穴26bの内側に針落ち位置及びその中心である針落ち芯32が位置するようになっている(図12参照)。
送り機構は、ベッド部内から針板25上に出没して布を搬送する送り歯26と、この送り歯26に上下方向の送り動作を付与する上下送り機構(図示省略)と、送り歯26に水平方向の送り動作を付与する水平送り機構(図示省略)とを備えている。また、ミシンは、上軸の回転に同期して交互に上下動を行う図示しない上送り足と押さえ足とを有し、一方の上送り足は縫い針24及び送り歯26と同調して揺動し、送り方向に布を送る。
送り歯26は、上軸(ミシン主軸)に連動する下軸から上下送り機構及び水平送り機構を介して送り動作を付与され、略楕円軌道の上死点近傍で針板25の開口部からベッド部上に出没して送り方向に布を送る。また、送り歯26には、縫い針24が針落ちを行う針穴26bが形成されている。そして、図13(a)及び(b)に示すように、送り歯26の下面には、針落ち芯32を中心に水平釜と反対側にのみ支持部26aが形成されている。つまり、本実施形態における送り歯26は、針穴26b及び該針穴26bよりも外釜22側の下面が開放されており、かかる構成としたことにより針板25の下方に空間33が形成されている。
釜機構は、水平方向に位置調節可能となってベッド部内の下面に固定された釜軸台1(図1参照)と、該釜軸台1の内部においてZ軸方向(上下方向)に沿って回転自在に支持された釜軸(図示略)と、この釜軸に軸支されることで水平面内において回転可能に支持された外釜22及び該外釜22内に回転可能に支持された中釜23を有する水平釜とを備えている。
外釜22には、縫い針23が下死点から上昇する際に針板25下方に形成される上糸ループを当該外釜22の回転により掬う図示しない剣先が設けられている。
中釜23の内部には、下糸T2が巻回されたボビンが装着される。また、中釜23の上部外周縁の一部には、上述した針板25下面の中釜案内25aに係合されることで該中釜23の回転を規制する中釜突起部23aが設けられている。
さらに、本実施形態における中釜23は、従来の中釜に比べて針板25の下面に近接する高さまでその深さDが増加されており(図13(b)参照)、その内側に装着されるボビンに巻回される下糸T2の糸量を増加することが可能となっている。
そして、上軸に連動してベッド部内において下軸が回転駆動を行うと、図示しない釜軸ギヤを介して釜軸及び外釜22が回転し、当該回転する外釜22と上下動を行う縫い針24との協働により縫い目が形成される。
次に、本実施形態における糸切断装置100の構成について詳しく説明する。
図1は糸切断装置100の構成を示す斜視図であり、図2は糸切断装置100の要部構成を示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、糸切断装置100は、刃部である刃先2a(図3参照)を有すると共に釜軸台1に回動可能に支持され、初期位置(図9参照)と当該初期位置から針落ち位置32側に前進した糸切断位置(図16参照)とに移動する切断メス2と、釜軸台1上を回動して初期位置(図9参照)と該初期位置より前進した糸捕捉位置(図11参照)と該糸捕捉位置より後退した糸切断位置(図16参照)とに移動され、前記糸切断位置で切断メス2との協働により上糸T1及び下糸T2を切断する動メス9と、切断メス2を回動させるアクチュエータとしてのエアシリンダ6と、初期位置から糸切断位置に向かう切断メス2の回動により該切断メス2と動メス9とを連結し、当該回動方向に動メス9を回動させる係合部である動メス駆動ピン21と、上軸(ミシン主軸)に連動して回転する糸切りカム15と、動メス9と一体に回動され糸切りカム15に係合可能なカムコロ13(図6参照)と、釜軸台1に固定され、切断後の下糸T2を保持可能なクランプばね29と、を備えている。また、糸切断装置100は、上記糸切断位置以外での上糸T1及び下糸T2の切断を防止する糸ガイド31を備えている。以下、各部を詳細に説明する。
図3に示すように、切断メス2は、先端(一端)に刃部2aを有すると共に基端部(他端)がねじにより着脱可能となって切断メス台3の一端に取り付けられている。切断メス台3は、その先端の支持部3aが切断メス2の根元付近まで延設されており、該切断メス2をしっかりと支持する形状となっている(図12参照)。これにより、切断メス2を従来よりも厚くすることなく従来比同等の厚さで剛性を確保することができ、その分、動メス9の厚さを従来よりも厚くして剛性を向上することを可能としている。また、本実施形態における切断メス2は、後述するエアシリンダ6の駆動により糸切断位置に配置された際に、その先端である刃先2aが針板25下方の針落ち芯32近傍まで延出されるようになっている(図12参照)。
切断メス台3の他端は、釜軸台1(図1参照)に回動自在に支持された中空の切断メス軸4の上端に抱き締め固定されており、切断メス軸4の下端には切断メス駆動腕5の一端が抱き締め固定されている。また、切断メス軸4には、後述する動メス9の回動中心となる動メス軸11がZ軸方向に沿って回動自在に挿通されている。つまり、本実施形態における切断メス2及び動メス9は、何れもその回動中心が外釜22の回転中心を挟んで針落ち位置32と逆側に配置されている。
切断メス駆動腕5の他端には、釜軸台1に固定されたエアシリンダ6の作動部であるロッド先端6aに取り付けられたシリンダ連結体7が段ねじ8により回動自在に連結されている。そして、ロッド先端6aが図3に示す矢印A1方向又はB1方向に進退移動を行うと、切断メス軸4を中心に切断メス台3が揺動され、その先端に設けられた切断メス2が矢印A2方向又はB2方向に進退移動を行う。
エアシリンダ6は、図4及び図5に示すように、シリンダ取付板16を介して釜軸台1の下部に固定されており、当該エアシリンダ6の作動部であるロッド先端6aが水平方向に進退移動可能に設けられている。シリンダ取付板16の下部には、ロッド先端6aとほぼ平行に設けられたガイド軸17の一端が固定されている。このガイド軸17は、シリンダ連結体7に摺動自在に挿通されており、ガイド軸17の他端にはナット18及びストッパ座金19により、水平方向(図4又は図5に示す矢印A1又はB1方向)に移動するシリンダ連結体7の一方の揺動端部(図4において左端)を規定するストッパが形成されている。なお、エアシリンダ6には、図示しないエアー供給源により圧縮エアーが供給される。
そして、常にはエアシリンダ6にエアーが供給されてロッド先端6aが矢印B1方向(図4における左方向)に配置され、シリンダ連結体7がナット及びストッパ座金19で規定された回転防止用のストッパに当接する初期状態に配置される(図4参照)。本実施形態では、かかる初期状態において、上記切断メス2が初期位置である最後退位置(図9参照)に配置され、その初期位置が規制されるようになっている。一方、エアシリンダ6にエアーが供給されてロッド先端6aが矢印A1方向(図5における右方向)に移動されると、ガイド軸17に沿ってシリンダ連結体7が矢印A1方向に移動される。そして、切断メス台3に設けられたストッパボルト27が釜軸台1に固定されたストッパ板28に当接されることで、切断メス2の糸切断位置(図10及び図16参照)が規定されるようになっている。
図6に示す動メス軸11は、上述した切断メス軸4よりも小径、且つ、該切断メス軸4よりも長尺な軸であり、中空の切断メス軸4を上下に貫通して回動自在に挿通されている。つまり、上記切断メス2と該動メス9とは、二重軸構造となった切断メス軸4と動メス軸11とにより、同心軸を中心にそれぞれ別々に回動可能な状態で釜軸台1に支持されている。
動メス軸11の上端には該動メス軸11と直交するように動メス台10の一端が固定されている。動メス台10の上部には、後述する動メス9の基端部がねじにより着脱自在に固定されており、動メス台10の他端の下面には、下方に向けて本発明の係合部たる動メス駆動ピン21が突設されている。
そして、エアシリンダ6の駆動により切断メス2及び切断メス台3が矢印A2方向に回動し、切断メス台3の一端が動メス台10に設けられた動メス駆動ピン21に当接されると、切断メス2と動メス9とが連結されることとなり、両者が一体となって矢印A2方向に回動される(図2参照)。つまり、動メス9は、切断メス2の揺動に伴い動メス軸11を中心に矢印A2方向に揺動されるものである。
また、図2及び図6に示すように、動メス軸11の下端には動メス駆動腕12の一端が抱き締め固定されている。この動メス駆動腕12は、動メス軸11と直交する水平方向に延出されており、その他端部の下方側にはZ軸方向に沿うカムコロ軸14を介してカムコロ13が回動自在に連結されている。このカムコロ13は、エアシリンダ6の駆動によりロッド先端6aが矢印A1方向に移動した後、後述する糸切りカム15のカム部に沿って移動することで、動メス駆動腕12の他端部を矢印A3方向又はB3方向に揺動して動メス軸11及び動メス9に回動力を付与するものである。そして、動メス9は、エアシリンダ6の駆動力により切断メス2と共に該切断メス2の糸切断位置まで移動した後、この糸切りカム15による回動力により、初期位置より前進した糸捕捉位置と該糸捕捉位置から後退した糸切断位置までの往復移動を行う。
また、図2及び図7に示すように、上記シリンダ連結体7の下部には平面視にて鉤状の先端20aを有する動メス戻し板20が固定されている。このため、エアシリンダ6のロッド先端6aが矢印B1方向に移動すると、該先端20aに当接されて動メス駆動腕12の一端が押し戻されるため、動メス駆動腕12の他端が矢印B3方向に揺動される。そして、シリンダ連結体7が図4に示す初期状態に保持されることにより、動メス9の初期位置が規定されるようになっている。
糸切りカム15は、上軸の回転と同期して該上軸と1対1の比率で回転する図示しないオープナー軸に取り付けられている。この糸切りカム15は、図1及び図2に示すように、ベッド部内において釜軸台1の下方に配設されており、Z軸方向に沿うオープナー軸を中心に水平面内で回転可能に設けられている。本実施形態における糸切りカム15は、上軸の回転に伴い、図8中において反時計周り方向に回転されるようになっている。
糸切りカム15の上面には、図2及び図8に示すように、外周側の待機区間15aと、この待機区間15aから当該糸切りカム15の回転中心付近を通って反対側までカムコロ13を導く溝区間15bと、該溝区間15Bの終端側に形成された開放区間15cとからなるカム部が設けられている。すなわち、これら待機区間15a,溝区間15b及び開放区間15cは、従節たるカムコロ13を導く糸切りカム15の原節となっている。
そして、エアシリンダ6の駆動により切断メス2が糸切断位置まで移動すると、切断メス台3、動メス駆動ピン21、動メス台10及び動メス軸11を介して動メス駆動腕12が図2及び図4に示す矢印A3方向に回動される。これにより、カムコロ13が待機区間15a、つまり、糸切りカム15に係合可能な位置まで移動され、その後、上軸の回転に応じて糸切りカム15が作動することにより動メス9がミシン主軸(上軸)に連動して回動される。
次に、本実施形態における動メス9の構成について詳しく説明する。
図6に示すように、動メス9は、その基端部(一端)がねじにより着脱自在となって動メス台10に取り付けられており、中間部が湾曲部を有して水平方向に延在され、その先端部(他端)は鋭角な先鋭形状を成している。
かかる動メス9は、動メス軸11を中心に矢印A2及び矢印B2方向に揺動可能に設けられ、その移動動作の全体を通じて中釜23の上方を回避すると共にその先端が中釜23の外周よりも針落ち位置32側を通過するようになっている(図9〜図12、図14及び図16参照)。そして、本実施形態における動メス9は、図12及び図14に示すように、針板25下方に設けられた空間33を通過して進退移動することが可能となっている。
上糸逃げ部9aは、図17に示すように、糸捕捉部9dが糸捕捉位置で捕捉した上糸T1及び下糸T2のうち、上糸T1のみが退避可能な退避スペースとなっており、動メス9が糸切断位置まで後退して上糸T1及び下糸T2が切断された後、縫い針24側に残る上糸T1を布の上方に容易に引き抜くことを可能とするものである。
上下糸逃げ部9bは、図15(a)、(b)、図21及び図23に示すように、糸捕捉部9dから動メス9の下方を通って該動メス9外周の先端側に向けて形成されている。かかる上下糸逃げ部9bは、糸捕捉部9dにより捕捉された上糸T1及び下糸T2が該動メス9の外側面よりも内側に退避可能な退避スペースとなっている。そして、この上下糸逃げ部9bの溝部内と動メス9の外側面との境界部がエッジ9eとなっている。
刃部9cは、図21及び図23〜図25に示すように、上下糸逃げ部9bと連続するように、動メス9の先端部近傍の外周面側に設けられている。この刃部9cは、動メス9の進退移動において該動メス9が糸捕捉位置から後退する際に、糸切断位置において上述した切断メス2の刃先2aとの協働により上糸T1及び下糸T2を切断するものである。そして、本実施形態における刃部9cは、図11及び図12に示すように、その移動軌跡が、縫い針24の針落ち芯32を通過するようになっている。
クランプばね29は、図9〜図11及び図16〜図19に示すように、その基端部が、上下方向(Z軸方向)において動メス9と切断メス2との間に配置されるように釜軸台1に取り付けられたクランプばね台30の上面にねじで固定されている。また、クランプばね29の先端は、動メス9先端の内側面(図20(a)に示す斜線部)に沿って該動メス9の前進移動方向に向けて延出されている。
かかるクランプばね29は、その延出部の中間において動メス9側に向けてやや凸となるように曲成された下糸クランプ部29aと、延出部の先端において上下二股のコ字状に形成された糸掬い部29bとを備えている。つまり、本実施形態におけるクランプばね29は、下糸クランプ部29aと糸掬い部29bとが一体に形成されており、下糸クランプ部29aより先が延長されて先端に糸掬い部29bが設けられている(図17参照)。
このクランプばね29は、ばね材により構成されており、動メス9の内側面を押圧するように付勢され、動メス9の移動動作の全体を通じて少なくとも下糸クランプ部29aが該動メス9の内側面と摺接するようになっている。
下糸クランプ部29aは、糸切断後に動メス9の内側面(図20(a)に示す斜線部)との協働により下糸T2の端部を挟持し、次の縫い始めのために下糸T2を保持する本発明の挟持部(保持部)となっている。この下糸クランプ部29aは、糸捕捉部9dにより捕捉された下糸T2の高さをその上下方向における幅の範囲内に含むようになっている。
糸掬い部29bは、動メス9の後退移動時に該動メス9の糸捕捉部9dよりも下側から下糸T2を掬うようになっている。すなわち、糸掬い部29bは、糸捕捉部9dによって下糸T2が捕捉された後、その先端が、中釜23から繰り出され中釜突起部23aの下側を経由して糸捕捉部9dに引っ張られる下糸T2の下側を通って該下糸T2よりも動メス9側に交差するようになっている。これにより、糸掬い部29bは、糸捕捉部9dによって捕捉された下糸T2が当該糸掬い部29bから外れて落下することを防止し、下糸T2を確実に下糸クランプ部29aに導くことを可能としている。
糸ガイド31は、図23〜図25に示すように、切断メス2の刃先2a近傍にねじにより着脱可能に装着されている。かかる糸ガイド31は、切断メス2を挟んで動メス9と反対側から該切断メス2に取り付けられており、その一端側(図23及び図24における右側)が切断メス2の刃先2a全体を覆うようにして動メス9側に曲成され、該刃先2aよりも前方側(図23及び図24における右側)に延出されている。この糸ガイド31の一端は、上側の端部がさらに伸びて動メス9の外側面に沿うように延出されており(図23及び図24参照)、糸捕捉部9dから送り歯26の針穴26bを通って布に縫着される上糸T1及び下糸T2が上下糸逃げ部9bの溝部上側のエッジ9eに接することを防止する糸引掛け部31aとなっている。つまり、糸ガイド31は、切断メス2の刃先2a先端付近で上糸T1及び下糸T2を引掛けることが可能であり、動メス9が糸捕捉位置で捕捉した上糸T1及び下糸T2がエッジ9eに接しないようにガイドすることで、該エッジ9eと切断メス2の刃先2aとの間に上糸T1及び下糸T2が案内されないように保護するようになっている。
次に、上記構成を備えるミシンの動作説明を行う。
まず、縫製中は、エアシリンダ6のロッド先端6aが矢印B1方向に突出され、シリンダ連結体7が図4に示す初期位置に配置される。このため、切断メス2及び動メス9は、共に矢印B2方向の最後退位置である初期位置に配置された状態となる(図9参照)
次に、図示しないミシンペダルの後踏みにより制御部(図示略)に糸切り信号が入力されると、エアシリンダ6にエアーが注入され、ロッド先端6aが矢印A1方向に移動する。これにより、図5に示すように、シリンダ連結体7が矢印A1方向に移動され、切断メス駆動腕5及び切断メス軸4を介して切断メス台3が矢印A2方向に回動される(図2参照)。また、上記ミシンペダルを後踏みした時点でミシンモータが回転を開始する。
切断メス台3が矢印A2方向に回動されると、該切断メス台3が動メス台10の下面に固定されている動メス駆動ピン21と係合することにより、動メス台10もまた矢印A2方向に回動される。切断メス2の矢印A2方向に向かう糸切断位置までの回動により、動メス台10及び動メス軸11を介して動メス駆動腕12が図2に示す矢印A3方向に回動され、カムコロ13が糸切りカム15の待機区間15aに係合された状態となり、切断メス台3の回動が一旦停止された状態となる。
このとき、動メス9の先端は、図10〜図12及び図14に示すように、中釜突起部23a及び中釜案内25aよりも針落ち芯32側である針板25及び送り歯26の下方の空間33を通過するように移動されて上糸T1の三角形内に突入する。
さらに糸切りカム15が回転して、カムコロ13が図8(e)に示す動メス最前進位置まで移動すると、動メス9が、図11に示す最前進位置より若干後退した糸捕捉位置まで戻る。
その後、溝区間15bにより動メス駆動腕12の移動方向が矢印B3方向に反転し、矢印B2方向に後退する動メス9の糸捕捉部9dにより上下の糸T1,T2が捕捉される(図17及び図22参照)。
このとき、動メス9の外周側においては、図23に示すように、糸ガイド31の糸引掛け部31aに上糸T1及び下糸T2が引掛けられた状態となる。また、動メス9の内周側においては、図17及び図22に示すように、上糸T1が動メス9の上糸逃げ部9aに退避した状態となる。
ここで、図12に示すように、動メス9の刃部9cは、針落ち芯32を通過して回動しており、刃先2aは該針落ち芯32の近傍まで接近して待機している。このため、動メス9と切断メス2との協働により糸T1,T2切断されるときには、針落ち芯32から刃先2aまでの距離が従来よりも大幅に短縮されることとなる。
そして、上糸T1及び下糸T2切断後は、図19に示すように、上糸T1が上糸逃げ部9aから抜けてフリーの状態となり、下糸T2は下糸クランプ部29aにより把持される。
また、図16に示すように、動メス9が糸切断位置を通過すると、制御部によりミシンモータが停止され縫い針24が上位置(上停止位置)に停止される。これと同時に制御部から糸切り戻し信号が出力され、該出力信号に応じてエアシリンダ6のロッド先端6aが矢印B1方向に移動することとなる。これにより、切断メス2及び動メス3が、図9に示す初期位置に復帰する。このとき、図8に示すように、糸切りカム15の溝区間15bは上糸T1及び下糸T2の切断終了までであり、当該切断後にミシンが上停止位置で停止する際にはカムコロ13は開放区間15cに移動している為、動メス3が初期位置に復帰する際に当該動メス3の動作の妨げとなることはない。
以上のように、本実施形態たるミシンによれば、動メス9は、その先端が中釜23の外周よりも針落ち位置32側を通過することができるため、糸切断位置を従来よりも針落ち位置32側に接近させることができる。これにより、従来の中釜案内及び針板を使用しながら被縫製物に残る糸の残端長さを短縮することができる。従って、糸摘み等の後処理に要する時間を短縮することができ、生産効率の向上が図られる。
また、動メス9は、その移動動作の全体を通じて中釜23の上方を回避するようになっているため、中釜23の上面を針板24近くまで接近させることができる。これにより、中釜23内に装着されるボビンに巻回される下糸T2の糸量を増加させることができ、ボビン交換の回数を減少することができるため生産効率の向上が図られる。
また、一つのエアシリンダ6を駆動することで、切断メス2及び動メス9を回動させる動作と、該動メス9を上軸に連動させる動作とを何れも実現することができるため、部品点数を抑制することができ、コストの抑制が図られる。
また、動メス9の刃部9cの移動軌跡が針落ち芯32を通過するため、糸切断位置をいっそう針落ち位置32に接近させることができる。従って、被縫製物に残る糸の残端長さをさらに短縮することができるため、生産性の向上が図られる。
また、動メス9を角柱状としたことにより、例えば、従来の板状に形成された動メスに比べて当該動メス9の剛性を向上することができる。これにより、切断メス2との協働により従来よりも太い糸を切断することが可能となり、縫製に用いる糸の自由度が向上する。
また、動メス9の上面の先端角θ1及び外側面の先端角θ2を何れも30度以下としたことにより、上糸T1又は下糸T2を該動メス9の前進移動方向に押し出すことなく上糸ループ内に速やかに突入することができる。従って、糸捕捉位置における糸捕捉動作を円滑に実行することができるため、ミシン動作の信頼性の向上が図られる。また、動メス9の上面の先端角θ1及び外側面の先端角θ2を何れも25度以上としたことにより、該動メス9の先端長さを必要以上に長くすることなく当該動メス9の幅を広く確保することが可能となる。従って、ベッド部内に占める動メス9のスペースや移動距離を抑制しつつ、上述した効果を得ることができる。
また、糸切りに関する全ての部材を一つの釜軸台1に搭載する構成としたことにより、ベッド部内の省スペース化を図ることができる他、例えば、本発明を二本針ミシンに対応させることも可能となる。
また、糸ガイド31が切断メス2に着脱可能に装着されていることにより、例えば、糸ガイド31を取り外して切断メス2の再研磨を行うことも可能となり、コストを抑制することができる。
なお、切断メス2と動メス9とを連動させる係合部は、本実施形態では、動メス駆動ピン21を動メス台10の下面に設けることとしたが、例えば、切断メス台3の上面又は側面に設ける構成としてもよい。
また、動メス駆動腕12に係合する糸切りカム15に替えてエアシリンダを連結する構成としてもよい。この場合、該エアシリンダを駆動するエアーの速度を制御したり、又は図示しない制御部からミシンモータの回転速度を制御して動メス9の動作を制御したりすることでも、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、クランプばね29は、下糸クランプ部29aと糸掬い部29bとを別々に、すなわち別部材からなるように設けることとしてもよい(図26(a)参照)。かかる構成によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、クランプばね29先端の糸掬い部29bは、先端部ほど下方に向かう傾斜状(図26(b)参照)、又は、下方側のみ先端に突出した段部を有する形状(図26(c)参照)としてもよい。
2 切断メス
2a 刃先(刃部)
3 切断メス台
3a 支持部
4 切断メス軸(中空軸)
5 切断メス駆動腕
6 エアシリンダ(アクチュエータ)
6a ロッド先端部
7 シリンダ連結体
8 段ねじ
9 動メス
9a 上糸逃げ部
9b 上下糸逃げ部
9c 刃部
9d 糸捕捉部
9e エッジ
10 動メス台
11 動メス軸
12 動メス駆動腕
13 カムコロ(従節)
14 カムコロ軸
15 糸切りカム
15a 待機区間(カム部、原節)
15b 溝区間(カム部、原節)
15c 開放区間(カム部、原節)
16 シリンダ取付板
17 ガイド軸
18 ナット
19 ストッパ座金
20 動メス戻し板
21 動メス駆動ピン(係合部)
22 外釜(水平釜)
23 中釜(水平釜)
23a 中釜突起部
24 縫い針(針)
25 針板
25a 中釜案内
26 送り歯
26a 支持部
26b 針穴
27 ストッパボルト
28 ストッパ板
29 クランプばね
29a 下糸クランプ部
29b 糸掬い部
30 クランプばね台
31 糸ガイド
31a 糸引掛け部
32 針落ち芯(針落ち位置)
33 空間
T1 上糸
T2 下糸
Claims (5)
- ミシンベッドに固定された針板と、
前記針板上に出没して被縫製物を搬送する送り歯と、
前記ミシンベッド内に取り付けられた水平釜の釜軸台と、
前記釜軸台に回転可能に支持され、回転により上糸ループを掬う剣先を有する外釜と、
前記外釜内に回転可能に支持され、下糸が巻回されたボビンが装着される中釜と、
前記中釜に設けられた突起部に係合して中釜の回転を規制する中釜案内と、
刃部を有すると共に前記釜軸台に回動可能に支持され、初期位置と当該初期位置から針落ち位置側に前進した糸切断位置とに移動する切断メスと、
前記釜軸台上を回動して初期位置と該初期位置より前進した糸捕捉位置と該糸捕捉位置より後退した糸切断位置とに順番に移動され、前記糸切断位置で前記切断メスとの協働により糸を切断する動メスと、
前記切断メスを回動させるアクチュエータと、
前記初期位置から前記糸切断位置に向かう切断メスの回動により該切断メスと前記動メスとを連結し、当該回動方向に動メスを回動させる係合部と、
ミシン主軸に連動して回転する糸切りカムと、
動メス駆動腕を介して前記動メスと一体に回動され前記糸切りカムに係合可能なカムコロと、
前記アクチュエータの駆動により前記切断メスに伴って動メスが回動し、前記カムコロが前記糸切りカムに係合可能な位置まで移動し、その後糸切りカムが作動して前記動メスがミシン主軸に連動して回動するようにアクチュエータとミシン主軸を駆動するミシンモータとを制御する制御手段と、
前記アクチュエータの作動部に取り付けられたシリンダ連結体と、
前記シリンダ連結体の下部に固定され、鉤状の先端を有する動メス戻し板と、を備え、
前記動メスは、その回動中心が前記外釜の回転中心を挟んで針落ち位置と逆側に位置し、移動動作の全体を通じて前記中釜の上方を回避すると共に、その先端が中釜の外周よりも針落ち位置側を通過し、
前記制御手段は、前記アクチュエータの作動部を移動させ、前記動メス戻し板の先端を前記動メス駆動腕に当接させて当該動メス駆動腕を押し戻させることにより、前記動メスを前記糸切断位置から前記初期位置に復帰させることを特徴とするミシン。 - 前記動メスは、その刃部の移動軌跡が前記針の針落ち芯を通過することを特徴とする請求項1記載のミシン。
- 前記動メスは、角柱状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のミシン。
- 前記動メスは、前記糸切断位置で切断された上糸が当該動メスにより把持されることを防止する上糸逃げ部を有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項記載のミシン。
- 前記動メスは、その上面の先端角及び外側面の先端角が25〜30度の範囲内にあることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項記載のミシン。
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