JP5040374B2 - 金型組立体及び射出成形方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金型組立体、係る金型組立体を用いた射出成形方法、及び、係る射出成形方法によって得られる成形品に関する。
射出成形方法においては、金属から作製され、キャビティを備えた金型を用いて、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、冷却、固化させることで成形品を成形する。然るに、高い熱伝導率を有する金属から金型が作製されているため、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への射出過程で、金型のキャビティを構成する面(キャビティ面と呼ぶ)と接した溶融熱可塑性樹脂の部分が直ちに冷却され、得られた成形品の外観不良や転写不良を招いている。
そこで、熱伝導率の小さいガラスやセラミックスから成る入れ子によって金型のキャビティ面を構成することで、入れ子の高い断熱性によってキャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の急冷を防止し、成形品の外観を改良する技術が、例えば、特開平8−318534号公報に開示されている。
また、金型のキャビティ面に、セラミックスあるいはサーメットから成る薄層が形成された合成樹脂成形用金型が、特開平5−38721号公報に開示されている。この薄層は、断熱性を高める目的で、意図的に空隙が多く発生する溶射法にて形成されている。尚、このような薄層を、便宜上、以下、セラミックス溶射層と呼ぶ。このセラミックス溶射層は、緻密で無いこともあり、熱や圧力によって破損し難い。
特開2004−175112の実施例5には、ステンレス鋼から成る入れ子本体26と、断熱層27と、封口層28とから構成された入れ子25が開示されている。尚、断熱層27は、ジルコニアセラミック材料粉末を使用したプラズマパウダースプレー溶射法にて入れ子本体26上に形成されている。一方、断熱層27の表面に、封口層28がNi−P無電解メッキ法にて形成されている。
特開平8−318534号公報 特開平5−38721号公報 特開2004−175112
ところで、特開平8−318534号公報に開示された技術にあっては、入れ子は緻密であるが脆性な材料から作製されており、入れ子を破損すること無く金型に配設するために、金属プレートを用いて特定のクリアランスで押さえ込み、特に、破損し易い入れ子のエッジ部を保護する対策を講じている。しかしながら、金型の構造、キャビティや成形品の形状等から、金属プレートを配置することが困難な場合がある。また、焼成法によって得られる焼結体から成る入れ子は、緻密な構造であるが故に、ラップ加工を行うと、表面粗さRaが0.05μm以下の状態を得ることは非常に容易である。しかしながら、入れ子の密度が高いため、引っ張り応力が加わるような部位において入れ子を用いると、入れ子に破損が生じ易いといった欠点がある。更には、一般に、焼結体にあっては、焼結炉の制限や焼成時の変形を抑制することが難しいことから、B5(約470cm2)サイズを越える大きさの焼結体を作製することは困難であるし、硬度の高いセラミック焼結体に曲面を形成したり、穴開け加工を施すことは、難易度の高い加工の1つである。時間とコストをかければ、10cm角程度の単純な形状を有する焼結体を作製することは可能であるが、それ以上の大きな形状の焼結体を作製することは困難な場合が多い。
特開平5−38721号公報に開示された技術にあっては、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の急冷を抑制することができるものの、セラミックス溶射層の表面に空隙が多く存在するので、空隙内に溶融熱可塑性樹脂が侵入し、金型から成形品を離型する際、セラミックス溶射層を破壊したり、成形品表面に凹凸が多く転写され、高品質な成形品が得られないといった問題を有する。尚、セラミックス溶射層の表面を平坦化するために、非常に薄い(数μm)のシリコーン系塗料を塗布する旨も開示されているが、耐久性に問題が生じ易い。
特開2004−175112の実施例5に開示された入れ子25にあっては、封口層28を無電解メッキ法にて形成しているが、一般的に、溶射法にて形成された断熱層27には空隙が多く存在するので、無電解メッキ法にて封口層28を形成したとき、以下の問題が生じ易い。即ち、断熱層27に深い空隙が多く存在する場合、メッキ工程で発生した水素の泡を巻き込みながらメッキ層が成長する結果、封口層28にピンホールが多発し易い。特に、空隙の大きな部分で発生した大きなピンホール又はその影響で、封口層28の断熱層27に対する密着力が低下する。そして、封口層28に生じたピンホールが成形品の表面に転写されてしまうといった問題や、封口層28に生じたピンホールに成形品の一部分が侵入し、金型から成形品を離型する際、封口層28に損傷が生じるといった問題が発生し易い。
従って、本発明の目的は、金属製ブロックと溶射皮膜とから構成され、高い耐久性を有し、表面の平滑性に優れ、平面、曲面を問わず製作可能であり、しかも、例えば、B5サイズ以上の面積(具体的には、例えば500cm2以上)の大きな面積であっても作製可能な入れ子を備えた金型組立体、係る金型組立体を用いた射出成形方法、及び、係る射出成形方法によって得られる成形品を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の金型組立体は、
(A)第1金型部、第2金型部、及び、第1金型部に設けられた溶融樹脂射出部を備え、第1金型部と第2金型部との型締めによってキャビティが形成される金型、並びに、
(B)第1金型部及び/又は第2金型部に配置され、キャビティを構成する面を形成する入れ子、
を備えた金型組立体であって、
入れ子は、
(a)金属製ブロック、
(b)金属製ブロックの少なくともキャビティに面した表面に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層、及び、
(c)金属下地層上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜、
から構成されており、
溶射皮膜は、厚さ方向に変化した気孔率を有し、
該気孔率は、溶射皮膜表面に近い側ほど、低い値であることを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る射出成形方法は、上記の本発明の金型組立体を用いた射出成形方法であって、
(イ)第1金型部と第2金型部とを型締めしてキャビティを形成した後、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、次いで、
(ロ)キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型する、
工程を具備することを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る射出成形方法(射出圧縮成形法)は、上記の本発明の金型組立体を用いた射出成形方法であって、
(イ)成形すべき成形品の容積よりもキャビティの容積が大きくなるように、第1金型部と第2金型部とを型締めした後、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、
(ロ)溶融熱可塑性樹脂の射出開始と同時に、あるいは射出中に、あるいは射出完了と同時に、あるいは射出完了後、キャビティの容積を成形すべき成形品の容積まで減少させ、その後、
(ハ)キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型する、
工程を具備することを特徴とする。
本発明の第2の態様に係る射出成形方法にあっては、工程(ロ)において、溶融熱可塑性樹脂の射出開始と同時に、あるいは射出中に、あるいは射出完了と同時に、あるいは射出完了後、キャビティの容積を成形すべき成形品の容積まで減少させるが、容積減少開始を溶融熱可塑性樹脂の射出開始と同時とする場合には、容積減少終了を、溶融熱可塑性樹脂の射出中に、あるいは射出完了と同時に、あるいは射出完了後とすることができるし、容積減少開始を溶融熱可塑性樹脂の射出中とする場合には、容積減少終了を、射出完了と同時に、あるいは射出完了後とすることができるし、容積減少開始を溶融熱可塑性樹脂の射出完了と同時とする場合には、容積減少終了を、射出完了後とすることができる。
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る射出成形方法にあっては、中実の成形品を成形することができる。
あるいは又、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る射出成形方法にあっては、キャビティに連通した加圧流体注入ノズルを更に備えた金型組立体を用い、本発明の第1の態様にあっては前記工程(イ)において、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出中に、あるいは、射出完了と同時に、あるいは、射出完了後、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体注入ノズルから加圧流体の注入を開始することができ、一方、本発明の第2の態様にあっては前記工程(ロ)において、容積減少終了と同時あるいは容積減少終了の後、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体注入ノズルから加圧流体の注入を開始することができる。尚、加圧流体を注入するこのような射出成形方法をガスアシスト成形法と呼ぶ場合がある。ガスアシスト成形法を採用することで、中空部を有する成形品を得ることができる。ガスアシスト成形法を採用する場合、キャビティ内に射出する溶融熱可塑性樹脂の量は、キャビティを完全に充填する量であってもよいし(所謂、フルショット法)、不完全に充填する量であってもよい(所謂、ショートショット法)。加圧流体は、常温及び常圧で気体の物質であり、使用する熱可塑性樹脂と反応や混合しないものが望ましい。具体的には、窒素ガス、空気、炭酸ガス、ヘリウム等が挙げられるが、安全性及び経済性を考慮すると、窒素ガスやヘリウムガスが好ましい。加圧流体注入ノズルは、例えば、第1金型部に配設してもよいし、第2金型部に配設してもよいし、第1金型部と第2金型部の両方に配設してもよい。そして、加圧流体注入ノズルの先端が、キャビティ内、あるいは、第1金型部又は第2金型部のキャビティを構成する面近傍に位置するように、加圧流体注入ノズルを第1金型部又は第2金型部に配設することが好ましい。加圧流体注入ノズルの後端部は、例えば配管を介して加圧流体源に接続されている。また、加圧流体注入ノズルの後部に移動手段が取り付けられている。あるいは又、加圧流体注入ノズルの先端部が溶融樹脂射出部内に配置されるように、加圧流体注入ノズルを配設する構成としてもよいし、金型組立体は射出用シリンダーを備えた射出成形機に取り付けられており、射出用シリンダーと溶融樹脂射出部とは連通しており、加圧流体注入ノズルが射出用シリンダーの先端部(ノズル部)に配置されるように、加圧流体注入ノズルを配設する構成としてもよい。
本発明の金型組立体、上述した形態を含む本発明の第1の態様に係る射出成形方法あるいは本発明の第2の態様に係る射出成形方法(以下、これらを総称して、単に、本発明と呼ぶ場合がある)においては、キャビティに面した入れ子の表面の全てが溶射皮膜から構成されている形態とすることができるし、あるいは又、キャビティに面した入れ子の表面は、一部が溶射皮膜から構成されており、残部には金属製ブロックが露出している形態とすることもできる。
本発明において、溶射によって形成された皮膜である溶射皮膜は、組成の観点から、同一組成から構成されていてもよいし(便宜上、同一組成皮膜と呼ぶ)、溶射材料の組成を積層間で連続的に変化させた漸変皮膜とすることもできる。また、溶射皮膜は、気孔率の変化状態の観点から、単層(単層溶射皮膜と呼ぶ)から構成されていてもよいし、複数層の積層構造(便宜上、各層を単位層と呼ぶ)から構成されていてもよい。複数の単位層のそれぞれの組成は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、上述したとおり、溶射皮膜は厚さ方向に変化した気孔率を有するが、気孔率の変化の状態は、金属下地層と溶射皮膜との界面から溶射皮膜表面に向かって、徐々に(連続的に)減少する形態とすることもできるし、段階的に減少する形態とすることもできるし、徐々に(連続的に)、且つ、段階的に減少する形態とすることもできる。尚、溶射皮膜を同一組成皮膜あるいは漸変皮膜の単層溶射皮膜から構成する場合、溶射条件等によって、厚さ方向に変化した気孔率を有する溶射皮膜を得ることができる。また、溶射皮膜を複数の単位層の積層構造から構成する場合、溶射条件等によって、複数層の積層構造を構成する単位層のそれぞれにおける気孔率を異ならせることができる。
以上に説明した好ましい構成を含む本発明にあっては、溶射皮膜の熱伝導率は1W/(m・K)乃至4W/(m・K)であり、溶射皮膜の平均厚さは0.3mm乃至2.0mmである構成とすることが好ましい。
溶射皮膜の熱伝導率の値が上記の範囲の下限を下回る場合、溶射皮膜の所望の気孔率を得ることが困難となる虞がある。一方、溶射皮膜の熱伝導率の値が上記の範囲の上限を越える場合、例えば、溶射皮膜と接する溶融熱可塑性樹脂の急冷を抑制することが困難となり、係る熱可塑性樹脂から得られた成形品の外観改良効果が低減する虞がある。溶射皮膜の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法、熱線法といった方法に基づき測定することができる。
また、例えば、溶射皮膜と接する溶融熱可塑性樹脂の急冷を抑制し、成形品の外観を改良するために、溶射皮膜を単層溶射皮膜から構成する場合、溶射皮膜の平均厚さを、上述のとおり、0.3mm乃至2.0mm、好ましくは0.3mm乃至1.0mmとすることが望ましい。一方、溶射皮膜を複数の単位層の積層構造から構成する場合、溶射皮膜の平均厚さ(総厚平均)を、0.5mm乃至1.8mm、好ましくは1.0mm乃至1.5mmとすることが望ましく、溶射皮膜表面を構成する単位層(トップコートと呼ばれる場合もある)の平均厚さを、0.05mm乃至0.3mm、好ましくは0.1mm乃至0.2mmとすることが望ましく、その他の単位層(中間層と呼ばれる場合もある)の平均厚さを、0.1mm乃至0.5mm、好ましくは0.2mm乃至0.4mmとすることが望ましく、単位層の層数を、2乃至4、好ましくは2乃至3とすることが望ましい。溶射皮膜の厚さ(膜厚)は、切断加工した断面に必要に応じて研磨加工やラップ加工を施し、係る断面をデジタル顕微鏡、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、レーザー顕微鏡等にて観察し、厚さを計測するといった方法に基づき測定することができる。
更には、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明にあっては、溶射皮膜表面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.05mmまでの部分(便宜上、溶射皮膜の表面領域と呼ぶ)における気孔率平均値は0.4%以上5%未満であり、金属下地層と溶射皮膜との界面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.2mmまでの部分(便宜上、溶射皮膜の底部領域と呼ぶ)における気孔率平均値は5%以上10%以下である構成とすることが好ましい。尚、見掛け密度から計算した気孔率平均値に換算すると、溶射皮膜の表面領域における気孔率平均値は3%以上10%未満であり、溶射皮膜の底部領域における気孔率平均値は10%以上20%以下となる。あるいは又、溶射皮膜表面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.05mmまでの部分(溶射皮膜の表面領域)における溶射皮膜を構成する材料の平均粒径は2×10-6m(2μm)乃至5×10-5m(50μm)であり、金属下地層と溶射皮膜との界面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.2mmまでの部分(溶射皮膜の底部領域)における溶射皮膜を構成する材料の平均粒径は2×10-5m(20μm)乃至1×10-4m(100μm)であることが好ましい。
溶射皮膜の表面領域における溶射皮膜を構成する材料の平均粒径は、可能な限り小さいことが望ましいが、小さすぎると、溶射皮膜を形成する溶射工程で原料粉体(セラミックス粒子)の搬送が困難となる虞がある。従って、溶射皮膜の形成を容易としたり、あるいは又、溶射皮膜にクラックが発生することを防止するといった観点から、上述した範囲の平均粒径を有する原料粉体(セラミックス粒子)から溶射皮膜の表面領域を構成することが好ましい。一方、溶射皮膜の底部領域における溶射皮膜を構成する材料の平均粒径が上記の範囲にあることが、所望の気孔率を達成して断熱性を向上させ、溶射皮膜表面に与える凹凸の影響を少なくし、更には、溶射皮膜にクラックを発生させないといった観点から好ましい。
ここで、平均粒径とは、粉末の粒径累積度数が50%となる粒径であると定義され、例えば、光透過沈降法に基づき測定することができる。
また、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明において、溶射皮膜表面の表面粗さRaは0.05μm以下であることが望ましい。尚、表面粗さRaは、JIS B 0601:2001に規定されており、溶射皮膜表面に対して細かいダイヤモンド砥粒等で鏡面ラップ処理を行い、係る溶射皮膜表面を表面粗さ計を用いて、少なくとも倍率20000倍、基準長さ0.8mm、カットオフ0.8mm、測定速度0.05mm/秒の条件にて、数回スキャニングさせて、得られた粗さ曲線データより中心線平均粗さ(Ra)を選択して、その平均値を求めるといった方法に基づき測定することができる。ここで、上述したように、溶射皮膜の表面領域における気孔率平均値を上記の範囲とすることで、溶射皮膜表面が非常に緻密な表面状態となり、例えばラップ仕上げを行った後の溶射皮膜表面の表面粗さRaを容易に0.05μm以下にすることができる。気孔率が上記の範囲の上限を超えると、ラップ仕上げをしても溶射皮膜表面に細かい凹凸が残存してしまい、例えば、成形品表面に凹凸が転写され、成形品の外観に若干ヘーズが生じる。一方、気孔率を上記の範囲の下限を下回る値にすることは技術的に困難である。ラップ加工は、例えば、ダイヤモンド粉末や化学研磨液等を用いて行うことができ、研磨粒子の番手としては最終仕上げとして5000番以上の物を使用すればよい。
本発明において、気孔率とは、皮膜断面内の或る領域において、その面積に対して気孔が占める面積の割合と定義され、気孔率平均値の測定は、例えば、溶射皮膜を厚さ方向に切断して、デジタル顕微鏡、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、レーザー顕微鏡等にて断面の画像を得た後、画像解析装置を用いて係る画像のコントラスト差から気孔率を求め、更には、得られた気孔率から平均値を求めるといった方法に基づき行うことができる。また、本発明において、溶射皮膜に含まれる空隙である気孔とは、開口気孔(開孔)及び密閉気孔(閉孔)の両者を含む。
本発明において、素材の溶射される面である金属製ブロック(素地とも呼ばれる)を構成する材料として、炭素鋼やステンレス鋼を例示することができる。尚、金属製ブロックという用語には、合金から成る金属製ブロックが包含される。
金属下地層は、溶射皮膜を金属製ブロックに強固に密着させるために必要とされ、その組成として、Ni−Cr、より具体的な組成として、Ni−20%Cr、Ni−50%Cr、Ni−16%Cr−20%Fe、Ni−19%Cr−6%Al、Ni−55%Cr−2.5%Mo−0.5%B等を例示することができる。尚、金属下地層という用語には、合金から成る下地層が包含される。金属下地層の厚さが0.03mm未満では金属製ブロックに対する強固な密着力が得られ難く、一方、1mmを超えると皮膜の溶射中に金属下地層と金属製ブロックの界面で剥離が発生する虞がある。金属下地層の厚さ上限値として、好ましくは0.5mm、更に好ましくは0.3mmを挙げることができ、これによって、皮膜の溶射中に金属下地層と金属製ブロックの界面で剥離が発生することを確実に防止することができ、溶射皮膜の耐久性を向上させることができる。金属下地層は、例えば、プラズマ溶射法やHVOF法、ワイヤーを用いた溶射法等の各種溶射法に基づき形成することができる。尚、溶射法に基づき形成された金属下地層は、下地溶射皮膜あるいはアンダーコートあるいはボンドコートとも呼ばれる。
溶射皮膜を構成するセラミックスとして、酸化ジルコニウム、及び、酸化アルミニウムを例示することができる。ここで、酸化ジルコニウムの組成として、より具体的には、CaO安定化ジルコニア(5%CaO−ZrO2,8%CaO−ZrO2,31%CaO−ZrO2)、MgO安定化ジルコニア(20%MgO−ZrO2,24%MgO−ZrO2)、Y23安定化ジルコニア(6%Y23−ZrO2,7%Y23−ZrO2,8%Y23−ZrO2,10%Y23−ZrO2,12%Y23−ZrO2,20%Y23−ZrO2)、ジルコン(ZrO2−33%SiO2)、CeO安定化ジルコニアを挙げることができるし、酸化アルミニウムの組成として、より具体的には、ホワイトアルミナ(Al23)、グレイアルミナ(Al23−1.5〜4%TiO2)、アルミナ・チタニア(Al23−13%TiO2,Al23−20%TiO2,Al23−40%TiO2,Al23−50%TiO2)、アルミナ・イットリア(3Al23・5Y23)、アルミナ・マグネシア(Mg・Al24)、アルミナ・シリカ(3Al23・2SiO2)を挙げることができるが、特に好ましいのは、気孔率を制御し易い酸化ジルコニウムである。但し、「%」は重量%を意味する。
溶射皮膜は溶射法によって形成されるが、溶射法として、具体的には、プラズマパウダースプレー法あるいはHVOF法を挙げることができる。尚、溶射皮膜表面から溶射皮膜内部に向かって、少なくとも厚さ0.05mmまでの部分を形成するために、セラミックス粒子(粉末)の飛行速度が2×102m/秒以上であることが望ましい。また、溶射時の膜厚は、緻密な皮膜を得るために、1×10-4m(100μm)/パス以下にすることが望ましい。溶射装置として、飛行速度を早くすることが可能なプラズマ溶射装置、若しくは、高速フレーム溶射装置の一種であるHVOF(High Velocity Oxygen Fuel Spraying)用装置を用いることが好ましい。
溶射時、発生する熱による熱膨張に起因して皮膜にクラックが発生することを防止するために、溶射物の表面及び裏面から強制的に溶射物を冷却することが望ましい。冷却には、圧縮空気を用いることができる。尚、溶射物の裏面からの冷却には、水冷ブロック等を用いることもできる。そして、クラックの発生状態を確認しながら、適宜冷却条件を変更して試験を行い、最適な冷却条件を決定すればよい。
第1金型部や第2金型部は、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金等の金属材料から作製することができる。また、溶融樹脂射出部の構造は、公知の如何なる形式の溶融樹脂射出部(ゲート構造)とすることもでき、例えば、ダイレクトゲート構造、サイドゲート構造、ジャンプゲート構造、ピンポイントゲート構造、トンネルゲート構造、リングゲート構造、ファンゲート構造、ディスクゲート構造、フラッシュゲート構造、タブゲート構造、フィルムゲート構造を例示することができる。溶融樹脂射出部は、第1金型部に設けられているが、構造によっては、第1金型部と第2金型部とに設けられていてもよい。本発明の第2の態様に係る射出成形方法(射出圧縮成形法)を採用する場合、キャビティの容積を可変とし得る構造とすればよい。この場合、例えば油圧シリンダーで可動させることができる可動中子を金型組立体に配設すればよい。あるいは又、金型は、第1金型部のパーティング面と第2金型部とのパーティング面とで印籠構造が形成されている構造とすればよい。ここで、印籠構造とは、第1金型部のパーティング面と第2金型部のパーティング面とが対向しており、金型が完全に型締めされていなくともキャビティが形成されるように、僅かなクリアランスをもって第1金型部のパーティング面と第2金型部のパーティング面が摺り合うように第1金型部と第2金型部が嵌合する構造を指す。尚、本発明においては、例えば、第1金型部を固定金型部とし、第2金型部を可動金型部とする構成とすることもできる。
研削加工等によって所定形状に加工した後、入れ子の装着時に金属製ブロックが金型部に設けられた装着部から落下して破損する虞がない場合、あるいは又、接着剤を用いることなく金属製ブロックを装着部に装着可能な場合には、接着剤を用いずに金属製ブロックを金型部に設けられた装着部に直接装着することができる。あるいは又、エポキシ系、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系等の中から選択された熱硬化性接着剤を用いて、金属製ブロックを装着部に接着してもよいし、ボルト等によって金属製ブロックを装着部に接着してもよい。尚、装着部が設けられた装着用中子を金型部に取り付け、かかる装着用中子の装着部に入れ子を装着してもよい。
上記の目的を達成するための本発明の成形品は、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る射出成形方法によって成形された成形品である。ここで、本発明の成形品にあっては、入れ子に対向した部分の投影面積が500cm2以上であり、入れ子に対向した部分の形状が、少なくとも平面又は曲面を有する形態とすることができる。更には、このような形態を含む本発明の成形品にあっては、入れ子に対向した部分に穴が形成されている形態とすることができる。
本発明の成形品として、具体的には、X線撮影用カセットケース、パーソナルコンピュータ用のハウジング、テレビジョン受像機用のハウジング、コピー機用のハウジング、プリンター用のハウジング、液晶表示装置用の反射枠、グレージング、自動車外板、ヘッドランプやテールライト、自動車用のインストルメンタル・パネル、自動車用ドアミラー用のハウジング、自動車用エンジンカバー、ドアハンドル、カメラ筐体、コネクター、バッテリー格納容器、携帯電話ハウジング、半導体メモリ格納容器を挙げることができる。
本発明での使用に適した熱可塑性樹脂として、結晶性熱可塑性樹脂や非晶性熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂(PA系樹脂);ポリオキシメチレン(ポリアセタール,POM)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂;メタクリル系樹脂;ポリカーボネート樹脂(PC樹脂);変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;液晶ポリマーを例示することができる。
更には、ポリマーアロイ材料から成る熱可塑性樹脂を用いることができる。ここで、ポリマーアロイ材料は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたもの、又は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を化学的に結合させたブロック共重合体若しくはグラフト共重合体から成る。ポリマーアロイ材料は、単独の熱可塑性樹脂のそれぞれが有する特有な性能を合わせ持つことができる高機能材料として広く使用されている。少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料を構成する熱可塑性樹脂として、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;メタクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂;変性PPE樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂を挙げることができる。2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイ材料を例示することができる。尚、このような樹脂の組合せを、ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂と表記する。以下においても同様である。更に、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカーボネート樹脂/PET樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂、ポリカーボネート樹脂/ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂/PET樹脂、変性PPE樹脂/HIPS樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミド系樹脂、変性PPE樹脂/PBT樹脂/PET樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミドMXD6樹脂、ポリオキシメチレン樹脂/ポリウレタン樹脂、PBT樹脂/PET樹脂を例示することができる。
尚、以上に説明した各種の熱可塑性樹脂に、添加剤や、充填剤、強化剤を加えることもできる。
尚、添加剤として、可塑剤;安定剤;酸化防止剤:紫外線吸収剤;ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド等の有機ニッケル化合物、ヒンダードアミン系化合物等の紫外線安定剤;帯電防止剤;難燃剤;バイナジン、プリベントール、チアベンダゾール等の防かび剤;流動パラフィン、ポリエチレンワックス、脂肪酸アマイド等の滑剤;ADCA等の有機発泡剤;透明核剤;有機顔料、無機顔料、有機染料といった各種の着色剤;架橋剤;アクリルグラフトポリマー、MBS等の耐衝撃強化剤を挙げることができる。
可塑剤として、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸類;リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリクレシル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル類;オレイン酸ブチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸−n−ヘキシン、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル等の脂肪酸塩基エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート等のアルコールエステル類;クエン酸アセチルトリエチル、マレイン酸ジブチル等のオキシ酸エステル類;トリメリット系可塑剤;ポリエステル系可塑剤;エポキシ系;塩化パラフィン系可塑剤を挙げることができる。
安定剤として、ジ−n−オクチルスズ化合物、ジ−n−ブチルスズ化合物、ジメチルスズ化合物等の有機スズ系安定剤;三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ケイ酸鉛等の鉛化合物系安定剤;カドミウム石けん、鉛石けん、亜鉛石けん等の金属石けん系安定剤;リン酸トリスノニル;リン酸トリスノニルフェニル等を挙げることができる。
酸化防止剤として、ジブチルクレゾール、ブチルヒドロキシアニソール等のフェノール系酸化防止剤;メチレンビス(メチルブチルフェノール)、チオビス(メチルブチルフェノール)等のビスフェノール系酸化防止剤;トリス(メチルヒドロキシブチルフェニル)ブタン、トコフェノール等のポリフェノール系酸化防止剤;ジミリスチルチオジプロピオネート等の有機イオウ化合物;トリス(モノ/ジノニルフェニル)ホスファイト等の有機リン化合物を挙げることができる。
紫外線吸収剤として、サリチル酸フェニル、サリチル酸ブチルフェニル等のサリチル酸系紫外線吸収剤;ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;(ヒドロキシメチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;アクリル酸エチルヘキシルシアノジフェノニル等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤を挙げることができる。
帯電防止剤として、ポリ(オキシエチレン)アルキルアミン、ポリ(オキシエチレン)アルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤系帯電防止剤;アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等の陰イオン界面活性剤系帯電防止剤;第4級アンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤系帯電防止剤;両性系界面活性剤;電導性樹脂を挙げることができる。
難燃剤として、テトラブロモビスフェノールA、ポリブロモビフェノール、ビス(ヒドロキシジブロモフェニル)プロパン、塩化パラフィン等のハロゲン系難燃剤;リン酸アンモニウム、リン酸トリクレジル等のリン系難燃剤;三酸化アンチモン;赤リン;酸化スズ等を挙げることができる。
また、充填剤、強化剤として、無機系材料;ステンレス鋼繊維、高強度アモルファス金属繊維、ステンレス箔、スチール箔、銅箔等の金属系材料;高分子ポリエチレン繊維、高強力ポリアレート繊維、パラ系全芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維、PEEK繊維、PEI繊維、PPS繊維、フッ素樹脂繊維、フェノール樹脂繊維、ビニロン繊維、ポリアセタール繊維等の有機系材料;粉系を挙げることができる。
無機系の充填剤、強化剤として、ガラス繊維、ガラス長繊維、石英ガラス繊維等のガラス系材料;PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、グラファイトウィスカ等の炭素系材料;炭化ケイ素繊維、炭化ケイ素連続繊維、炭化ケイ素ウィスカ、炭化ケイ素ウィスカシート等の炭化ケイ素系材料;ボロン繊維といったボロン系材料;Si−Ti−C−O繊維といったSi−Ti−C−O系材料;チタン酸カリウム繊維、チタン酸カリウムウィスカ、チタン酸カリウム系導電性ウィスカ等のチタン酸カリウム系材料;窒化ケイ素ウィスカ、窒化ケイ素ウィスカシート等の窒化ケイ素系材料;硫酸カルシウムウィスカといった硫酸カルシウム系材料を挙げることができる。
粉系の充填剤、強化剤として、マイカフレーク、マイカ粉、シラスバルーン、シリカ微粉、タルク粉、水酸化アルミニウム粉、水酸化マグネシウム粉末、マグネシウムシリケート粉末、硫酸カルシウム微粉、球状中空ガラス粉、金属化粉、高純度合成シリカ微粉、二硫化タングステン粉末、タングステンカーバイト粉、ジルコニア微粉、ジルコニア系微粉末、部分安定化ジルコニア粉末、アルミナ-ジルコニア複合粉末、複合金属粉末、鉄粉、アルミニウム粉、モリブデン金属粉、タングステン粉、窒化アルミニウム粉末、ナイロン微粒子粉、シリコーン樹脂微粉末、スピネル粉末、アモルファス合金粉末、アルミフレーク、ガラスフレークを挙げることができる。
本発明にあっては、断熱皮膜としての溶射皮膜が溶射法によって形成されている。従って、入れ子を焼結体といった緻密であるが脆性な材料から作製したときの種々の問題(焼成炉の問題、製造時の割れの問題、使用時の破損の問題、製造コストが非常に高いといった問題等)が発生することがないし、入れ子は、例えば、金型の構造、キャビティや成形品の形状等からの種々の制約を受けることが無い。また、断熱性を有し、破損し難い溶射皮膜は、厚さ方向に変化した気孔率を有し、この気孔率は、溶射皮膜表面に近い側ほど、低い値である。即ち、溶射皮膜の表面は緻密である。従って、溶射皮膜表面に凹凸が少なく、溶射皮膜表面は平滑性に優れている。それ故、例えば、溶射皮膜内に溶融熱可塑性樹脂が侵入し難く、また、金型から成形品を離型する際、溶射皮膜の空隙に入り込んだ樹脂によって溶射皮膜が破壊されたり、成形品表面に凹凸が多く転写され、高品質な成形品が得られないといった問題が発生することも無いし、溶射皮膜の耐久性に問題が生じることも無い。
溶射皮膜の気孔率が非常に小さい場合、ラップ仕上げを行った後の溶射皮膜表面の粗さは小さくなるものの、熱伝導率は大きくなる。また、そのような溶射皮膜は、製造時にクラックが発生し易く、膜厚を厚くすることが困難である。そこで、気孔率を溶射皮膜の厚さ方向に変化させ、表面付近を緻密とし、金属製ブロック付近を粗くすることで、溶射皮膜全体の熱伝導率が低く、しかも、ラップ仕上げを行った後の表面の粗さが小さい溶射皮膜を得ることができる。また、熱伝導率が低く、しかも、厚さの厚い溶射皮膜を得ることができるので、例えば、射出成形工程において、溶融熱可塑性樹脂が急冷されることによって、成形品に外観不良や転写不良が発生することを確実に防止することができる。更には、ウェルドラインやフローマークの発生、反りやヒケの発生が無く、転写性が非常に優れ、非常に高い光沢性を有し、内部に歪の非常に少ない成形品を得ることができる。また、成形品に穴を形成する場合にあっても、後述するように、ウェルドラインの発生を確実に防止することができる。
従って、全てが緻密であるセラミックス焼結体から作製された入れ子を使用し、しかも、入れ子の破損防止対策として複雑な型組を採用した従来の金型組立体を用いること無く、表面が同等の品質を有する、即ち、外観特性に優れた成形品を成形する金型組立体を提供することが可能となる。また、入れ子の大きさは、溶射装置で噴霧できる範囲であれば、基本的に制限がないため、例えば、500cm2を越えるような大きな入れ子を、比較的容易に、且つ、安価に提供することが可能となる。
また、得られた成形品においては、溶射皮膜が研磨されている場合、ガラス繊維等の充填剤が配合された熱可塑性樹脂を用いて成形した場合であっても、キャビティ内での溶融熱可塑性樹脂の急冷を防止できるために、充填剤の浮きを防止することができ、また、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂における固化層の急速な発達を抑制できるために、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の流動性を、通常の鋼材から作製された入れ子の場合と比較して、1〜3割ほど高められる効果もあり、特に大型の成形品や薄肉の成形品を容易に成形することができる。また、三次元曲率を有する成形品にまで応用できるため、応用範囲を大幅に広げることが可能となる。
成形品に穴を設ける場合、第1金型部に金属製の第1コア部材を配設し、第2金型部に金属製の第2コア部材を配設する。そして、第1金型部と第2金型部とを型締めすることでキャビティを形成する。尚、第1金型部と第2金型部とを型締めした状態において、第1コア部材の先端面と第2コア部材の先端面とは接触した状態となる。そして、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を射出するが、コア部材の周囲を溶融熱可塑性樹脂が流動し、表層が冷えかけた熱可塑性樹脂同士が合流する結果、合流部位にウェルドラインと呼ばれる筋状のラインが屡々発生する。このような現象を解決する方法として、環状の焼結体(環状焼結体と呼ぶ)を作製し、環状焼結体をコア部材に挿入し、接着剤等でコア部材に接着する方法を挙げることができる。しかしながら、このような方法では、ウェルドラインは消失できるが、キャビティ面を構成する入れ子とは別部品として環状焼結体を作製する必要があるし、環状焼結体を精度良く加工しないと、第1金型部と第2金型部との型締め時に破損する虞が高い。特に、キャビティが複雑な三次元形状や球の一部を構成している場合、環状焼結体を固定すべき第1金型部や第2金型部の部分に精度良く加工、接着ができない可能性が高い。更には、環状焼結体と入れ子との間には、破損防止のために若干のクリアランスが必要であり、環状焼結体や入れ子の作製が困難となる。
本発明にあっては、溶射処理で入れ子の表面に溶射皮膜を形成するので、複雑な三次元形状や球面から成るキャビティ面の一部を入れ子が構成する場合にあっても、入れ子を容易に作製することができる。また、ウェルドラインの発生を確実に防止することができる。更には、成形品に穴を設けるために、入れ子に突起部(コア部材に相当する)を設ける場合、係る突起部の表面に厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層を形成し、金属下地層上にセラミックスから成る溶射皮膜を形成すればよい。但し、突起部の当たり面には、金属下地層及び溶射皮膜を形成する必要はない。尚、この場合にあっても、溶射皮膜は厚さ方向に変化した気孔率を有し、気孔率は、溶射皮膜表面に近い側ほど、低い値であるといった要件を満たす必要がある。係る要件を満たしていない場合、第1金型部と第2金型部とを離型するときに、空隙に入り込んだ熱可塑性樹脂によって溶射皮膜自体が破損するといった問題が生じる虞がある。
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
実施例1は、本発明の金型組立体、本発明の第1の態様に係る射出成形方法、及び、本発明の成形品に関する。
実施例1の成形品は、実施例1の射出成形方法によって成形された成形品であり、投影面積が500cm2以上であり、形状が少なくとも平面を有する。より具体的には、実施例1の成形品は、X線撮影用カセットケース、より具体的には、X線撮影用カセットケースの表蓋である。
X線撮影用カセットケースとは、X線撮影をする際に用いられるフィルムを内蔵した遮光箱であり、表蓋と裏蓋を貼り合せた構造を有し、裏蓋内側に貼られたクッション材と表蓋内側に貼られたスクリーンとの間にフィルムを挟み、均一な密着が得られるようになっている。従って、X線撮影用カセットケースに凹凸や反りがあると、画像がボケて良い、写真が得られないといった問題が生じる。また、軽量化や形状加工性の面から樹脂化が望まれており、しかも、画像解像度を増すために樹脂の厚さを出来るだけ薄くしたいといった要請が高い。熱可塑性樹脂として、反りが発生し難く、成形性と強度とを両立し得る、フィラーを含まないポリカーボネート材料が屡々用いられている。フィラーを含む材料では、X線撮影した際に、フィラーが観察されるためである。カセットサイズとしては、18cm×24cm(432cm2)から、約40cm×50cm(2000cm2)までがあり、成形性改善のために従来のセラミック焼結体から成る入れ子に用いる場合、現状では、X線撮影用カセットケースの成形は極めて困難である。
実施例1におけるX線撮影用カセットケースは、入れ子に対向した部分の投影面積が概ね40cm×50cm=2000cm2(正確な値は後述する)であり、表蓋と裏蓋とを貼り合せたときの厚さは10mmである。尚、表蓋及び裏蓋の入れ子に対向した部分は平坦であり、その厚さは1.7mmである。
実施例1の金型組立体10は、概念図を図2に示すように、
(A)第1金型部(固定金型部)11、第2金型部(可動金型部)12、及び、第1金型部11に設けられた溶融樹脂射出部14A,14Bを備え、第1金型部11と第2金型部12との型締めによってキャビティ13が形成される金型、並びに、
(B)第1金型部11及び第2金型部12に配置され、キャビティ13を構成する面を形成する入れ子20A,20B、
を備えている。尚、溶融樹脂射出部14A,14Bは、ゲート点数が2点のサイドゲート構造を有する。そして、図1の(A)に模式的な断面図を示し、図1の(B)に拡大した模式的な一部断面図を示すように、入れ子20A,20Bは、
(a)金属製ブロック31A,31B、
(b)金属製ブロック31A,31Bの少なくともキャビティ13に面した表面(金属製ブロック31A,31Bの頂面)に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層32A,32B、及び、
(c)金属下地層32A,32B上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜33A,33B、
から構成されている。
ここで、溶射皮膜33A,33Bは、厚さ方向に変化した気孔率を有し、この気孔率は、溶射皮膜33A,33Bの表面に近い側ほど(溶射皮膜33A,33Bの表面に近い部分ほど)、低い値である。尚、図1の(B)、あるいは又、後述する図1の(C)においては、気孔が整列しているように図示しているが、実際には、気孔はランダムに形成されている。また、専ら、密閉気孔(閉孔)を図示しているが、当然であるが、開口気孔(開孔)も存在する。
具体的には、金属製ブロック31A,31Bは、20゜C乃至200゜Cにおける線膨張係数が11.5×10-6/゜CであるSUS420J2(日立金属株式会社製HPM38)から作製されている。また、厚さ0.05mmの金属下地層32A,32Bは、溶射皮膜33A,33Bを金属製ブロック31A,31Bに強固に密着させるために必要とされ、その組成は、Ni−Cr(より具体的には、Ni−20%Cr)であり、溶射法に基づき金属製ブロック31A,31Bの頂面に形成されている。
ここで、表蓋を成形するための入れ子にあっては、第1金型部11に配置された入れ子20Aの形状は「凹」状であり、外形寸法(縦×横×厚さ)は、410mm×510mm×30mmであり、表蓋の外面を成形する入れ子20Aの部分(凹部)の寸法縦×横×深さは、402mm×502.5mm×5mmであり、入れ子20Aに対向した成形品の部分の投影面積は約2020cm2である。一方、第2金型部12に配置された入れ子20Bの形状は「凸」状であり、外形寸法(縦×横×厚さ)は、410mm×510mm×30mmであり、表蓋の内面を成形する入れ子20Bの部分(凸部)の寸法縦×横×高さは、398mm×497.5mm×3.3mmであり、入れ子20Bに対向した成形品の部分の投影面積は約1980cm2である。ここで、溶射皮膜33A,33Bは、表蓋の外面及び内面に対向する金属製ブロック31A,31Bの部分に形成されている。
実施例1において、溶射皮膜33A,33Bは、複数(実施例1にあっては、具体的には2層であり、図1の(B)参照)の単位層33’,33”(下層33’、上層33”)の積層構造から構成されている。また、溶射皮膜33A,33Bは、厚さ方向に変化した気孔率を有するが、気孔率の変化の状態は、金属下地層32A,32Bと溶射皮膜33A,33Bとの界面から溶射皮膜33A,33Bの表面に向かって、気孔率が、段階的に減少している。
表1に、実施例1、あるいは又、後述する実施例2〜実施例4における金属下地層の組成、厚さ;溶射皮膜33A,33B全体の組成、層構成、総厚、熱伝導率;溶射皮膜33A,33Bを構成する第2層目(上層)の単位層33”又は溶射皮膜33A,33Bの組成、厚さ、気孔率平均値、平均粒径、表面粗さ;溶射皮膜33A,33Bを構成する第1層目(下層)の単位層33’の組成、厚さ、気孔率平均値、平均粒径;表面領域の気孔率平均値、平均粒径;底部領域の気孔率平均値、平均粒径を示す。
尚、実施例1においては、溶射皮膜33A,33Bは、組成が同じ酸化ジルコニウム(ZrO2)である2層の単位層から構成されており、プラズマ溶射装置にて形成されている。
Figure 0005040374
実施例1における射出成形の条件を以下の表2に例示する。実施例1にあっては、第1金型部(固定金型部)11と第2金型部(可動金型部)12とを型締めしてキャビティ13を形成する。そして、表2に示す熱可塑性樹脂を射出用シリンダー16内で可塑化・溶融、計量した後、射出用シリンダー16からランナー部及びスプルー部15、溶融樹脂射出部(ゲート部)14A,14Bを介して、表2に示した射出条件で、キャビティ13内に溶融熱可塑性樹脂を射出して、キャビティ13内の一部を溶融熱可塑性樹脂で充填した。次いで、キャビティ13内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型した。
[表2]
射出成形機 :東芝機械株式会社IS1300E
熱可塑性樹脂:ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製 MB2214)
樹脂温度 :260゜C
金型温度 :60゜C
射出圧力 :130MPa
ゲート点数が2点のサイドゲート構造を有する溶融樹脂射出部14A,14Bであったが、成形品にウェルドラインの発生もなく、また、反りの発生もなかった。しかも、成形品表面には光沢があり、フローマーク等の発生もなかった。更には、5万回の成形を行ったが、入れ子20A,20Bに損傷等は生じなかった。
比較のために、鋼材から作製した入れ子を用いて射出成形したところ、キャビティ13内に溶融熱可塑性樹脂を完全に充填させることができなかった。そこで、樹脂温度を290゜C、金型温度を80゜Cに変更して、射出成形を行ったところ、キャビティ13内に溶融熱可塑性樹脂を完全に充填させることはできたが、成形品にウェルドラインが発生しており、また、ウェルドラインの周囲や溶融樹脂射出部14A,14B近傍にガス状の白いマークや銀状が発生しており、成形品の外観は非常に醜かった。しかも、樹脂を無理やりキャビティ13内に充填させたので、成形品が反り上がっていた。
比較のため、表3に、比較例1A、比較例1B、比較例1Cにおける金属下地層の組成、厚さ;溶射皮膜全体の組成、層構成、総厚、熱伝導率;溶射皮膜を構成する第2層目(上層)の単位層又は溶射皮膜の組成、厚さ、気孔率平均値、平均粒径、表面粗さ;溶射皮膜を構成する第1層目(下層)の単位層の組成、厚さ、気孔率平均値、平均粒径;表面領域の気孔率平均値、平均粒径;底部領域の気孔率平均値、平均粒径を示す。
ここで、比較例1A、比較例1B、比較例1Cにおいては、金属下地層は形成されていない。また、比較例1Aにおいては、溶射皮膜は組成が同じである2層の単位層から構成されており、比較例1Bにおいては、溶射皮膜は組成が異なる2層の単位層から構成されており、比較例1Cにおいては、溶射皮膜は単層溶射皮膜から構成されている。ここで、比較例1Cにおいては、1層の溶射皮膜全体の気孔率の値が同じとなるように、溶射皮膜を形成した。
Figure 0005040374
実施例1、あるいは又、後述する実施例2〜実施例4によって得られた溶射皮膜の表面を目視観察したところ、高光沢を有しており、表面は平滑であり、クラックの発生は認められなかった。一方、比較例1Aにおいては、溶射皮膜の表面がざらつき、表面粗さが非常に粗くなっていた。また、比較例1Bによって得られた溶射皮膜の表面を目視観察したところ、クラックが発生していた。更には、比較例1Cによって得られた溶射皮膜の表面を目視観察したところ、表面に大きな凹凸が認められた。しかも、比較例で得られたサンプルには、金属製ブロックとの界面で剥離も生じていた。
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2においては、成形品をパーソナルコンピュータ用のハウジングとした。ここで、パーソナルコンピュータ用のハウジングは、具体的には、ノートブック型パーソナルコンピュータの筐体から成る。尚、筐体は、液晶表示装置の部分を囲むカバー、及び、その裏面に相当するメインカバー、更には、キートップを囲むように設置されたカバー及びその裏面カバーから構成されている。このようなパーソナルコンピュータ用のハウジングは、PC樹脂/ABS樹脂や、PC樹脂を用いて成形されており、ノートブック型パーソナルコンピュータは特に持ち運びに利用されることが多く、年々、軽量化や薄型化といった対策が施されている。
そして、ハウジング自体も、その影響で非常に厚さが薄くなってきているために、成形、特に、キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で完全に充填させることが難しくなってきている。そこで、キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で完全に充填させるために、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の流動距離の短縮を目的として多点ゲート構造を採用すると、ウェルドラインが発生するし、充填圧力(射出圧力)を高くすると、得られたハウジングに大きな反りが発生したり、フローマーク等の外観不良が発生するといった問題が生じる。また、材料面では、流動性の向上を目的として、分子量を低下させたり、流動性改良剤等を併用して対策しているが、ハウジングの強度低下によって、落下時の破損を招くといった問題がある。
また、成形品外観の向上のためにハウジングを塗装することは、塗装の歩留りが悪いこともあり、コストダウンの目的で無塗装タイプのハウジングが増加している。即ち、ハウジングには細かいシボが施され、あるいは又、ハウジング外面は鏡面から構成されている。ところで、ハウジングの成形にあっては、シボあるいは鏡面の転写性を高くしないと、失艶感や高光沢が出ないので、転写性を高くする必要がある。そして、そのために金型温度を高くすると、その結果、成形サイクルが長くなってしまうといった問題が生じる。また、高光沢品にあっては、ハウジングの反りが目立ち易い。
実施例2にあっては、公称12インチノートブック型パーソナルコンピュータのハウジングとして、液晶表示装置裏面のメインカバーを成形した。このメインカバーは、200mm×270mmのフラット形状を有し、フラット部分の厚さは1.5mmであり、フラット部分の外縁には高さ3mmの側壁が設けられた箱型(凹状)の成形品である。
図1の(A)及び(B)に示したと同様に、実施例2における入れ子20A,20Bにあっても、具体的には、金属製ブロック31A,31Bは、実施例1と同様に、SUS420J2(日立金属株式会社製HPM38)から作製されている。また、厚さ0.08mmの金属下地層32A,32Bの組成は、実施例1と同様に、Ni−Cr(より具体的には、Ni−20%Cr)であり、溶射法に基づき金属製ブロック31A,31Bの頂面に形成されている。
ここで、メインカバーを成形するための入れ子20A,20Bにあっては、第1金型部11に配置された入れ子20Aの形状は「凹」状であり、外形寸法(縦×横×厚さ)は、210mm×280mm×30mmであり、メインカバーの外面を成形する入れ子20Aの部分(凹部)の寸法縦×横×深さは、202mm×272.7mm×3mmであり、入れ子20Aに対向した成形品の部分の投影面積は約551cm2である。一方、第2金型部12に配置された入れ子20Bの形状は「凸」状であり、外形寸法(縦×横×厚さ)は、210mm×280mm×30mmであり、メインカバーの内面を成形する入れ子20Bの部分(凸部)の寸法縦×横×高さは、198mm×268.7mm×1.5mmであり、入れ子20Bに対向した成形品の部分の投影面積は約532cm2である。更には、フラット部分と側壁との境界領域(コーナー部)において、メインカバーの外面側には直径1.0mmの曲率が付されており、メインカバーの内面側には直径0.8mmの曲率が付されている。ここで、溶射皮膜33A,33Bは、メインカバーの外面及び内面に対向する金属製ブロック31A,31Bの部分に形成されている。
実施例2においては、溶射皮膜33A,33Bは組成が異なる2層の単位層から構成されており、プラズマ溶射装置にて形成されている。具体的には、溶射皮膜33A,33Bを構成する第1層目(下層)33’はZrO2から成り、第2層目(上層)33”はAl23から成る。また、入れ子20A,20Bのキャビティ面は、鏡面仕上げとなっている。
実施例2における射出成形の条件を以下の表4に例示する。実施例2にあっても、金型組立体10Aの概念図を図3に示すように、第1金型部(固定金型部)11と第2金型部(可動金型部)12とを型締めしてキャビティ13を形成する。そして、表4に示す熱可塑性樹脂を射出用シリンダー16内で可塑化・溶融、計量した後、射出用シリンダー16からランナー部及びスプルー部15、溶融樹脂射出部(ゲート部)14を介して、表4に示した射出条件で、キャビティ13内に溶融熱可塑性樹脂を射出して、キャビティ13内の一部を溶融熱可塑性樹脂で充填した。次いで、キャビティ13内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型した。
[表4]
射出成形機 :日精樹脂工業株式会社AZ7000
熱可塑性樹脂:PC/ABS樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製 MB8300)
樹脂温度 :260゜C
金型温度 :70゜C
射出圧力 :100MPa
ゲート点数が1点のサイドゲート構造を有する溶融樹脂射出部14であったが、転写性が非常に優れており、メインカバーは非常に高い光沢性を有していた。また、メインカバーには反りの発生もなかったため、非常に高級感にあふれていた。更には、5万回の成形を行ったが、入れ子20A,20Bに損傷等は生じなかった。
実施例3も、実施例1の変形である。実施例3にあっては、本発明の第2の態様に係る射出成形方法を採用した。尚、金型は、射出圧縮成形ができる印籠構造を有する。
実施例3においては、成形品をグレージングとした。グレージングとは、車両用窓ガラスであって、運転に支障をきたさない自動車のセンターピラー以降の後部窓ガラスやサンルーフ、列車、トラック等の足元の窓ガラス等を意味する。グレージングは、従来、ガラス製であったが、近年、軽量化による省エネルギー対策あるいはデザイン的に三次元形状化したいといった要請があり、射出成形に基づき、ポリカーボネート(PC)等の熱可塑性樹脂での作製が検討されている。視認性は運転席レベルまで要求されないものの、一般の鋼材からキャビティ面が構成された金型を用いた場合、得られたグレージングの光学的な歪が大きくなり、また、厚さの均一性が悪く、視認性を劣化させるといった問題を有している。
光学的な歪や厚さの均一化を図る目的で、キャビティ内で溶融熱可塑性樹脂が流動するときの固化を出来る限り抑制し、成形時の充填圧力(射出圧力)を低減することで不要な圧力による歪発生を防止し、あるいは又、キャビティ面内の圧力均一性に効果のあるジルコニアセラミックス製の入れ子を用いてグレージングを成形することが、極めて効果的である。しかしながら、グレージングは、500cm2以上の面積のものが一般的であり、また、屡々、三次元曲面を有しているので、ジルコニアセラミックス製の入れ子を作製することは極めて困難である。
実施例3にあっては、グレージングとして、リヤークォーターウインドウであって、台形形状の底辺×上辺×高さ=500mm×400mm×350mmの三次曲面形状を有し、厚さ5mmのグレージングを成形した。
実施例3における入れ子において、具体的には、金属製ブロック31A,31Bは、実施例1と同様に、SUS420J2(日立金属株式会社製HPM38)から作製されている。また、厚さ0.05mmの金属下地層32A,32Bの組成は、実施例1と同様に、Ni−Cr(より具体的には、Ni−20%Cr)であり、溶射法に基づき金属製ブロック31A,31Bの頂面に形成されている。金属製ブロック31A,31Bのキャビティ13に面する表面は、グレージングを成形するための三次曲面形状を有している。また、溶射皮膜33A,33Bは、金属製ブロック31A,31Bのキャビティ13に面する表面の全面に設けられている。ここで、実施例3においては、溶射皮膜33A,33Bは、図1の(C)に入れ子20A,20Bの拡大した模式的な一部断面図を示すように、1層の単位層(ZrO2から成る)から構成されており、プラズマ溶射装置にて形成されている。また、入れ子20A,20Bのキャビティ面は、鏡面仕上げとなっている。
実施例3における射出成形の条件を以下の表5に例示する。
[表5]
射出成形機 :日精樹脂工業株式会社AZ7000
熱可塑性樹脂:PC樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製 H3000R)
樹脂温度 :290゜C
金型温度 :80゜C
射出圧力 :80MPa
尚、金型は、第1金型部11のパーティング面と第2金型部12とのパーティング面とで印籠構造が形成されている。そして、成形すべき成形品の容積よりもキャビティ13の容積が大きくなるように、第1金型部11と第2金型部12とを型締めするが(金型組立体10Aの概念図である図4参照)、具体的には、成形品の厚さが1.0mm厚くなる状態にて、第1金型部(固定金型部)11と第2金型部(可動金型部)12とを型締めした。次いで、溶融樹脂射出部14から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ13内に射出した。そして、溶融熱可塑性樹脂の射出完了後、2.5×103Nの圧縮力にて、キャビティ13の容積を成形すべき成形品の容積まで減少させた。キャビティ13の容積減少中の状態を、金型組立体の概念図である図5に示すが、図5においては、溶融熱可塑性樹脂の図示は省略している。成形品の最終的な厚さを5.0mmとした。次に、キャビティ13内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型した。
ゲート点数が1点のサイドゲート構造を有する溶融樹脂射出部14であったが、射出圧縮成形方法を採用することで、キャビティ13内への溶融熱可塑性樹脂の高い充填性を達成することができ、しかも、転写性や圧力保持が優れているため、グレージングにはヒケや反りの発生も無く、グレージングは非常に良好な三次元曲面を有していた。また、偏光板をクロスニコル状態とすることでグレージングの歪観察を行ったところ、溶融樹脂射出部14の近傍に対応するグレージングの部分は、白から黒の色を呈しており、歪が非常に少ないことが分かった。更には、5万回の成形を行ったが、入れ子20A,20Bに損傷等は生じなかった。
射出圧縮成形においては、従来の技術のように焼結体から成る入れ子を用いる場合、焼結体の設計が非常に難しく、金属プレートを押さえプレートとして用いるとき、金属プレートの金属面がキャビティ面として出現するために、成形品の外観を損ねたり、あるいは又、焼結体を箱型形状にすると、肉厚が増して冷却時間が延びるといった問題があった。実施例3の金型組立体にあっては、金属製ブロック、金属下地層及び溶射皮膜から構成された入れ子を用いることで、均一な厚さによる断熱性の均一化や押さえプレートを使用しないことによる簡素化、入れ子の破損の防止、印籠構造における特に金型組立体の設計と製作が容易になるといった利点もある。
実施例4は、実施例1の変形であり、本発明の第1の態様に係る射出成形方法に関するが、中空部を有する成形品を成形するためにガスアシスト成形法を採用した。
実施例4においては、成形品を、自動車のアウタードアハンドル、より具体的には、バータイプのアウタードアハンドルとした。自動車用のドアハンドルは、通常、ポリカーボネート(PC)系アロイあるいはポリアミド(PA)系樹脂でノンフィラーの熱可塑性樹脂から作製されるが、一部、フィラーを添加された熱可塑性樹脂が用いられる場合もある。そして、無塗装で使用される場合もあるが、塗装やメッキ処理することで付加価値を高くした状態で屡々使用されている。しかしながら、ドアハンドル表面におけるフィラー浮きや塗装不良、メッキの密着不良等の不良が多く、歩留りは決して高いとは云えない。その原因の1つに、溶融熱可塑性樹脂のキャビティへの充填時に発生する固化層に起因した外観品質不良(転写不良やフィラー浮き等)が挙げられる。また、ゴム粒子が添加された熱可塑性樹脂を用いて成形されたドアハンドル表面にメッキを施す場合、ドアハンドルの表面層に生じた剪断応力によって添加されたゴム粒子の微細破断や伸びが生じる結果、メッキ時にエッチングをしても小さいゴム粒子がエッチングされず、メッキ密着不良が屡々発生する。最近では、メッキ歩留りを考慮して、蒸着、イオンプレーティングを含む物理的気相成長法(PVD法)にて金属層をドアハンドル表面に成膜することも検討されているが、やはり、ドアハンドル表面の外観品質は歩留りに直結する。
プルアップ式のドアハンドルに関しては、成形品外観部分に相当する部分のみの外観品質の向上のために、係る部分を成形するための焼結体(入れ子)を切削研磨することで製作可能である。然るに、バータイプのアウタードアハンドルは三次元形状であり、しかも、鍵穴部分が設けられた形状を有するので、焼結体を切削加工することは非常に難しい形状である。
実施例4にあっては、自動車用のバータイプのアウタードアハンドルとして、150mm×30mm、高さが20mmの三次元形状であり、鍵穴部分が設けられた形状を有するドアハンドルを成形した。
実施例4における入れ子において、具体的には、金属製ブロック31A,31Bは、実施例1と同様に、SUS420J2(日立金属株式会社製HPM38)から作製されている。また、厚さ0.08mmの金属下地層32A,32Bの組成は、実施例1と同様に、Ni−Cr(より具体的には、Ni−20%Cr)であり、溶射法に基づき金属製ブロック31A,31Bの頂面に形成されている。金属製ブロック31A,31Bのキャビティ13に面する表面は、アウタードアハンドルを成形するための三次曲面形状を有している。また、溶射皮膜33A,33Bは、車体への取り付け面に対応する金属製ブロック31A,31Bの部分を除く全面に設けられている。ここで、実施例4においては、溶射皮膜33A,33Bは組成が異なる2層の単位層から構成されており、プラズマ溶射装置にて形成されている。具体的には、溶射皮膜33A,33Bを構成する第1層目(下層)33’はAl23から成り、第2層目(上層)33”はZrO2から成る。また、入れ子20A,20Bのキャビティ面は、鏡面仕上げとなっている。
また、鍵穴部分の貫通穴部分に相当する金型の部分は、押し切りコア構造を有する。より具体的には、金属製ブロック31A,31Bのキャビティ13に面する表面に突起部(コア部材に相当する)を設け、係る突起部の表面に上述した金属下地層を形成し、金属下地層上にセラミックスから成る溶射皮膜を形成する。但し、金型の型締め時、突起部と突起部が接触する突起部の当たり面には、金属下地層及び溶射皮膜を形成する必要はない。
更には、アウタードアハンドルの厚さが20mmと厚いので、一般の射出成形ではヒケが生じる虞があり、加圧流体として窒素ガスを用いたガスアシスト成形法を採用した。それ故、第2金型部(可動金型部)に加圧流体導入用の配管と加圧流体注入ノズル17を設置した。尚、加圧流体注入ノズル17の後部には、油圧シリンダーから成る移動手段18が取り付けられている。
実施例4における射出成形の条件を以下の表6に例示する。実施例4にあっても、金型組立体10Bの概念図を図6に示すように、第1金型部(固定金型部)11と第2金型部(可動金型部)12とを型締めしてキャビティ13を形成する。尚、金型には、キャビティ13に連通したオーバーフローキャビティ19が設けられており、キャビティ13に射出された溶融熱可塑性樹脂の一部が成形中に流入し得る構造となっている。そして、移動手段18の動作によって、加圧流体注入ノズル17をキャビティ13に向かう方向に移動させ、前進端に位置させた(図6参照)。この状態にあっては、加圧流体注入ノズル17はキャビティ13に連通している。そして、表6に示す熱可塑性樹脂を射出用シリンダー16内で可塑化・溶融、計量した後、射出用シリンダー16からランナー部及びスプルー部15、溶融樹脂射出部(ゲート部)14を介して、表6に示した射出条件で、キャビティ13内に溶融熱可塑性樹脂を射出して、キャビティ13内の一部を溶融熱可塑性樹脂で充填した。尚、実施例4にあっては、キャビティ容積の約50%を満たす容量の溶融熱可塑性樹脂をキャビティ13内に射出した。そして、その後、加圧流体注入ノズル17から150MPaの窒素ガスをキャビティ13内の溶融熱可塑性樹脂に注入した。キャビティ13に射出された溶融熱可塑性樹脂の一部は、オーバーフローキャビティ19に流入する。次いで、キャビティ13内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型した。
[表6]
射出成形機 :日精樹脂工業株式会社AZ7000
熱可塑性樹脂:PC/PBT樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製 MB4303)
樹脂温度 :270゜C
金型温度 :80゜C
射出圧力 :80MPa
ガスアシスト成形法を採用したので、アウタードアハンドルにヒケの発生は認められず、転写性も優れているために、非常に高い光沢性を有していた。また、鍵穴部分の周りにも、固化した熱可塑性樹脂同士が合流することによって発生するウェルドラインの発生や、ガスアシスト成形特有の現象である「色むら」現象の発生もなかった。尚、「色むら」とは、注入された加圧流体が、キャビティ面近傍の溶融熱可塑性樹脂と混合される結果生じる色むらである。また、アウタードアハンドルの表面に蒸着処理にて0.1μm厚さのアルミニウム薄膜を成膜したところ、非常に金属光沢に優れ、全ての面が鏡面性に優れたアウタードアハンドルが完成した。更には、5万回の成形を行ったが、入れ子20A,20Bに損傷等は生じなかった。
比較のために、鋼材から作製した入れ子を用いて射出成形したところ、キャビティ13内に溶融熱可塑性樹脂を完全には充填させることができず、窒素ガスをキャビティ13内の溶融熱可塑性樹脂に注入したところ、得られた成形品には穴が開いていた。そこで、射出圧力を120MPaに変更して、ガスアシスト成形を行ったところ、キャビティ13内に溶融熱可塑性樹脂を完全に充填させることができ、得られた成形品に穴が開いてはいなかったものの、アウタードアハンドルの溶融樹脂射出部に対応する部分の近傍の表面には、「湯じわ」と呼ばれる厚肉成形時等に充填速度が遅い際に発生する成形不良が発生しており、光沢性が実施例4よりも悪く、また、鍵穴部分の周りにはウェルドラインが発生しており、更には、「色むら」現象が発生しており、外観的に優れたアウタードアハンドルを得ることはできなかった。また、アウタードアハンドルの表面に蒸着処理にて0.1μm厚さのアルミニウム薄膜を成膜したところ、成形不良箇所が極端に目立ってしまった。
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した入れ子の構造、構成、使用した材料、金型組立体の構成、構造、射出成形条件等は例示であり、適宜変更することができる。実施例にあっては、第1金型部及び第2金型部に入れ子を配設したが、成形すべき成形品に依っては、第1金型部にのみ入れ子を配設してもよいし、第2金型部にのみ入れ子を配設してもよい。また、成形すべき成形品に依存して、キャビティに面した入れ子の表面の全てが溶射皮膜から構成されている構成とすることもできるし、一部が溶射皮膜から構成されており、残部には金属製ブロックが露出している構成とすることもできる。実施例においては、入れ子20A,20Bを同じ構成としたが、必要に応じて、異なる構成とすることもできる。
図1の(A)は、入れ子の模式的な断面図であり、図1の(B)及び(C)は、入れ子を拡大した模式的な一部断面図である。 図2は、実施例1の金型組立体の概念図である。 図3は、実施例2の金型組立体の概念図である。 図4は、型締め直後の実施例3の金型組立体の概念図である。 図5は、実施例3において、キャビティの容積を成形すべき成形品の容積まで減少させた状態の金型組立体の概念図である。 図6は、実施例4の金型組立体の概念図である。
符号の説明
10,10A,10B・・・金型組立体、11・・・第1金型部(固定金型部)、12・・・第2金型部(可動金型部)、13・・・キャビティ、14,14A,14B・・・溶融樹脂射出部(ゲート部)、15・・・ランナー部及びスプルー部、16・・・射出用シリンダー、17・・・加圧流体注入ノズル、18・・・移動手段、19・・・オーバーフローキャビティ、20A,20B・・・入れ子、31A,31B・・・金属製ブロック、32A,32B・・・金属下地層、33A,33B・・・溶射皮膜、33’,33”・・・単位層

Claims (8)

  1. (A)第1金型部、第2金型部、及び、第1金型部に設けられた溶融樹脂射出部を備え、第1金型部と第2金型部との型締めによってキャビティが形成される金型、並びに、
    (B)第1金型部及び/又は第2金型部に配置され、キャビティを構成する面を形成する入れ子、
    を備えた金型組立体であって、
    入れ子は、
    (a)金属製ブロック、
    (b)金属製ブロックの少なくともキャビティに面した表面に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層、及び、
    (c)金属下地層上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜、
    から構成されており、
    溶射皮膜は、組成の異なる単位層が、複数、積層された構造を有し、
    溶射皮膜表面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.05mmまでの部分における気孔率平均値は1.0%乃至1.3%であり、金属下地層と溶射皮膜との界面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.2mmまでの部分における気孔率平均値は5%以上10%以下であり、
    溶射皮膜表面の表面粗さRaは0.05μm以下であることを特徴とする金型組立体。
  2. キャビティに面した入れ子の表面の全てが溶射皮膜から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の金型組立体。
  3. キャビティに面した入れ子の表面は、一部が溶射皮膜から構成されており、残部には金属製ブロックが露出していることを特徴とする請求項1に記載の金型組立体。
  4. 溶射皮膜の熱伝導率は、1W/(m・K)乃至4W/(m・K)であり、
    溶射皮膜の平均厚さは、0.3mm乃至2.0mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の金型組立体。
  5. 溶射皮膜表面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.05mmまでの部分における溶射皮膜を構成する材料の平均粒径は2×10-6m乃至5×10-5mであり、金属下地層と溶射皮膜との界面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.2mmまでの部分における溶射皮膜を構成する材料の平均粒径は2×10-5m乃至1×10-4mであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の金型組立体。
  6. (A)第1金型部、第2金型部、及び、第1金型部に設けられた溶融樹脂射出部を備え、第1金型部と第2金型部との型締めによってキャビティが形成される金型、並びに、
    (B)第1金型部及び/又は第2金型部に配置され、キャビティを構成する面を形成する入れ子、
    を備えた金型組立体であって、
    入れ子は、
    (a)金属製ブロック、
    (b)金属製ブロックの少なくともキャビティに面した表面に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層、及び、
    (c)金属下地層上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜、
    から構成されており、
    溶射皮膜は、組成の異なる単位層が、複数、積層された構造を有し、
    溶射皮膜表面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.05mmまでの部分における気孔率平均値は1.0%乃至1.3%であり、金属下地層と溶射皮膜との界面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.2mmまでの部分における気孔率平均値は5%以上10%以下であり、
    溶射皮膜表面の表面粗さRaは0.05μm以下である金型組立体を用いた射出成形方法であって、
    (イ)第1金型部と第2金型部とを型締めしてキャビティを形成した後、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、次いで、
    (ロ)キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型する、
    工程を具備することを特徴とする射出成形方法。
  7. キャビティに連通した加圧流体注入ノズルを更に備えた金型組立体を用い、
    前記工程(イ)において、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出中に、あるいは射出完了と同時に、あるいは射出完了後、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体注入ノズルから加圧流体の注入を開始することを特徴とする請求項6に記載に射出成形方法。
  8. (A)第1金型部、第2金型部、及び、第1金型部に設けられた溶融樹脂射出部を備え、第1金型部と第2金型部との型締めによってキャビティが形成される金型、並びに、
    (B)第1金型部及び/又は第2金型部に配置され、キャビティを構成する面を形成する入れ子、
    を備えた金型組立体であって、
    入れ子は、
    (a)金属製ブロック、
    (b)金属製ブロックの少なくともキャビティに面した表面に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層、及び、
    (c)金属下地層上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜、
    から構成されており、
    溶射皮膜は、組成の異なる単位層が、複数、積層された構造を有し、
    溶射皮膜表面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.05mmまでの部分における気孔率平均値は1.0%乃至1.3%であり、金属下地層と溶射皮膜との界面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.2mmまでの部分における気孔率平均値は5%以上10%以下であり、
    溶射皮膜表面の表面粗さRaは0.05μm以下である金型組立体を用いた射出成形方法であって、
    (イ)成形すべき成形品の容積よりもキャビティの容積が大きくなるように、第1金型部と第2金型部とを型締めした後、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、
    (ロ)溶融熱可塑性樹脂の射出開始と同時に、あるいは射出中に、あるいは射出完了と同時に、あるいは射出完了後、キャビティの容積を成形すべき成形品の容積まで減少させ、その後、
    (ハ)キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型する、
    工程を具備することを特徴とする射出成形方法。
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