JPH10337759A - 熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法

Info

Publication number
JPH10337759A
JPH10337759A JP15218897A JP15218897A JPH10337759A JP H10337759 A JPH10337759 A JP H10337759A JP 15218897 A JP15218897 A JP 15218897A JP 15218897 A JP15218897 A JP 15218897A JP H10337759 A JPH10337759 A JP H10337759A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thermoplastic resin
cavity
mold
nest
molded article
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP15218897A
Other languages
English (en)
Inventor
Hisashi Tawara
久志 田原
Takayuki Ito
尊之 伊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Engineering Plastics Corp
Original Assignee
Mitsubishi Engineering Plastics Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Engineering Plastics Corp filed Critical Mitsubishi Engineering Plastics Corp
Priority to JP15218897A priority Critical patent/JPH10337759A/ja
Publication of JPH10337759A publication Critical patent/JPH10337759A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Injection Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Moulds For Moulding Plastics Or The Like (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】成形品の表面転写性を向上させ、特性に優れそ
して外観不良のない成形品を成形し得る、熱可塑性樹脂
から成る成形品の製造方法を提供する。 【解決手段】成形品の製造方法は、非晶性の熱可塑性樹
脂を使用し、溶融した該熱可塑性樹脂を金型に設けられ
たキャビティ内に導入し、以て熱可塑性樹脂から成る成
形品を製造する方法であって、非晶性の熱可塑性樹脂の
ガラス転移温度をTg(゜C)としたとき、金型を型締
めした状態において、キャビティを構成する面の一部の
温度T(゜C)を、(A)溶融熱可塑性樹脂のキャビテ
ィ内への導入前には、Tg−100≦T≦Tg+100、
(B)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入直後に
は、Tg≦T≦Tg+180、(C)金型から成形品を取
り出す前には、T≦Tg−10に制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性樹脂から
成る成形品の製造方法に関し、更に詳しくは、射出成形
法、射出圧縮成形法、ブロー成形法等によって成形され
る成形品の表面転写性を向上させ、特性に優れそして外
観不良のない成形品を成形し得る、熱可塑性樹脂から成
る成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形する
ための金型(以下、単に金型と呼ぶ)は、通常、金型に
設けられた中空部分であるキャビティ内に溶融熱可塑性
樹脂(以下、単に溶融樹脂と呼ぶ場合がある)を射出、
注入あるいは充填する際の高い圧力によっても変形しな
い金属材料、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニ
ウム合金、銅合金から作製されている。そして、金型に
設けられたキャビティ内に溶融樹脂を射出、注入あるい
は充填することで、所望の形状を有し、しかも金型のキ
ャビティを構成する面(以下、便宜上、金型のキャビテ
ィ面と呼ぶ)が転写された成形品を得ている。尚、金型
に設けられたキャビティ内に溶融樹脂を射出、注入ある
いは充填することを、以下、総称して、金型に設けられ
たキャビティ内に溶融樹脂を導入するという。
【0003】熱可塑性樹脂は、大きくは2種類の樹脂、
即ち、非晶性の熱可塑性樹脂と結晶性の熱可塑性樹脂に
分類される。非晶性の熱可塑性樹脂においては、ガラス
転移温度Tgを前後して熱可塑性樹脂の固化及び軟化が
発生する。他方、結晶性の熱可塑性樹脂においては、融
点Tm以上で溶融し、結晶化開始温度Tc以下で結晶が生
成し、発達し、熱可塑性樹脂の固化が生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような金属若しく
は合金製の金型を用いて成形を行なう場合、成形品の表
面状態を金型のキャビティ面の状態に近づけることは容
易でない。通常、金型は、導入された溶融樹脂に起因し
た圧力等の高い応力によっても変形しない金属材料から
作製されているが、これらの金属材料は、また、熱伝導
性に優れている。それ故、金型温度を熱可塑性樹脂のガ
ラス転移温度Tgあるいは結晶化開始温度Tcよりも低く
設定しておき、キャビティ内に導入された溶融樹脂を金
型のキャビティ面で瞬時に冷却することで成形を行って
いる。その結果、成形サイクルを早くできるものの、成
形品表面には瞬時に固化層が形成されるため、ウエルド
マークやフローマーク等の外観不良が成形品に生じ易い
し、キャビティの金型面の成形品表面への転写性不良と
いった問題も生じる。また、結晶性の熱可塑性樹脂を用
いた場合、キャビティ内に導入された溶融した結晶性の
熱可塑性樹脂が、金型のキャビティ面と接触したとき、
瞬時に冷却され始める結果、成形品の表面には、非晶質
層あるいは結晶化度の低い微細な結晶層が形成される。
尚、これらの層は、一般にはスキン層と呼ばれる。この
ようなスキン層が形成された成形品においては、成形品
の表面に関連する物性が著しく低下するといった問題も
生じる。
【0005】これらの問題点を解決するために、一般的
には、キャビティ内に溶融樹脂を高圧導入することで金
型のキャビティ面を無理矢理、成形品の表面に転写させ
る方法、あるいは又、金型温度を高温にして溶融樹脂の
固化層の発達を遅らせてウエルドマークやフローマーク
の発生を防止し、且つ、金型のキャビティ面の成形品表
面への転写性不良の発生を防止する方法がある。しかし
前者の方法においては、成形装置の大型化、金型自体の
大型化・肉厚化によるコストアップにつながると共に、
溶融樹脂の高圧導入により成形品内部に応力が残留し、
その結果、成形品の品質が低下するといった問題が発生
する。後者の方法においては、金型温度を成形に用いる
樹脂の荷重撓み温度よりもやや低めに設定して固化層の
発達を遅らせるために、キャビティ内の樹脂の冷却時間
が長くなる結果、成形サイクルが長くなり、生産性が低
下するといった問題があるし、金型のキャビティ面の成
形品表面への転写性不良や成形不良を完全には改善でき
ないといった問題もある。
【0006】従って本発明の目的は、成形品の表面転写
性を向上させ、特性に優れそして外観不良のない成形品
を成形し得る、熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法
を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明の第1の態様に係る熱可塑性樹脂から成る成
形品の製造方法は、非晶性の熱可塑性樹脂を使用し、溶
融した該熱可塑性樹脂を金型に設けられたキャビティ内
に導入し、以て熱可塑性樹脂から成る成形品を製造する
方法であって、非晶性の熱可塑性樹脂のガラス転移温度
をTg(゜C)としたとき、金型を型締めした状態にお
いて、キャビティを構成する面の一部の温度T(゜C)
を、(A)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入前
には、Tg−100≦T≦Tg+100、好ましくはTg
−80≦T≦Tg+80、(B)溶融熱可塑性樹脂のキ
ャビティ内への導入直後には、Tg≦T≦Tg+180、
好ましくはTg≦T≦Tg+160、(C)金型から成形
品を取り出す前には、T≦Tg−10、好ましくはT≦
g−15、に制御することを特徴とする。
【0008】上記の目的を達成するための本発明の第2
の態様に係る熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法に
あっては、上記の本発明の第1の態様に係る熱可塑性樹
脂から成る成形品の製造方法における金型を型締めした
状態において、キャビティを構成する面の一部の前記温
度T(゜C)を、(A)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ
内への導入前には、Tg−70≦T≦Tg−10、好まし
くはTg−50≦T≦Tg−10、(B)溶融熱可塑性樹
脂のキャビティ内への導入直後には、Tg≦T≦Tg+5
0、好ましくはTg≦T≦Tg+30、(C)金型から成
形品を取り出す前には、T≦Tg−10、好ましくはT
≦Tg−15、に制御することを特徴とする。
【0009】上記の目的を達成するための本発明の第3
の態様に係る熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法
は、結晶性の熱可塑性樹脂を使用し、溶融した該熱可塑
性樹脂を金型に設けられたキャビティ内に導入し、以て
熱可塑性樹脂から成る成形品を製造する方法であって、
結晶性の熱可塑性樹脂の結晶化開始温度をTc(゜
C)、融点をTm(゜C)としたとき、金型を型締めし
た状態において、キャビティを構成する面の一部の温度
T(゜C)を、(A)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内
への導入前には、Tc−150≦T≦Tm、好ましくは、
c−130≦T≦Tm−10、(B)溶融熱可塑性樹脂
のキャビティ内への導入直後には、Tc≦T≦Tm、好ま
しくはTc<T<Tm−10、(C)金型から成形品を取
り出す前には、T≦Tc−10、好ましくはT≦Tc−1
5、に制御することを特徴とする。
【0010】上記の目的を達成するための本発明の第4
の態様に係る熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法
は、結晶性の熱可塑性樹脂を使用し、溶融した該熱可塑
性樹脂を金型に設けられたキャビティ内に導入し、以て
熱可塑性樹脂から成る成形品を製造する方法であって、
結晶性の熱可塑性樹脂の結晶化開始温度をTc(゜C)
としたとき、金型を型締めした状態において、キャビテ
ィを構成する面の一部の温度T(゜C)を、(A)溶融
熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入前には、Tc−1
20≦T≦Tc−10、好ましくはTc−100≦T≦T
c−10、(B)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への
導入直後には、Tc≦T≦Tc+30、好ましくはTc
T≦Tc+20、(C)金型から成形品を取り出す前に
は、T≦Tc−10、好ましくはT≦Tc−15、に制御
することを特徴とする。
【0011】キャビティを構成する面(キャビティ面と
呼ぶ)の一部の温度Tが上述のとおりに制御されている
か否かを調べるには、キャビティ面に温度センサーを取
り付ければよい。この場合、例えば直径0.5mm以下
の温度センサーを使用し、出来る限り必要部位の温度の
みを正確に測定することが好ましい。あるいは又、赤外
線やレーザを用いて金型内に埋め込んだ水晶ガラスを通
して温度測定を行ってもよい。更には、温度測定を行わ
ずとも、CAEにて熱伝導計算を行うことである程度の
予測が可能である。
【0012】本発明の第1〜第4の態様に係る熱可塑性
樹脂から成る成形品の製造方法においては、キャビティ
を構成する面の一部は、厚さ0.1mm乃至10mmの
入れ子から成り、入れ子は、2×10-2cal/cm・
sec・deg以下の熱伝導率を有する、広く、ジルコ
ニア系材料、アルミナ系材料、チタニア系材料から成る
群から選択されたセラミック、若しくは、ソーダガラ
ス、石英ガラス、耐熱ガラス及び結晶化ガラスから成る
群から選択されたガラスから作製することが望ましい。
より具体的には、入れ子は、ZrO2、ZrO2−Ca
O、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、K2O−Ti
2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al2
3−2SiO2、ZrO2−SiO2、MgO−Si
2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2
及びチタニアから成る群から選択されたセラミックから
作製されていることが好ましく、中でも、ZrO2又は
ZrO2−Y23から成るセラミックから作製されてい
ることが一層好ましい。あるいは又、ソーダガラス、石
英ガラス、耐熱ガラス及び結晶化ガラスから成る群から
選択されたガラスから作製されていることが好ましく、
中でも、結晶化ガラスから作製されていることが一層好
ましい。尚、これらの材質から成る入れ子を用いる場
合、断熱性に優れているために、金型温度をTg若しく
はTc以下の一定温度に保つ必要がある。また、入れ子
の近傍に熱媒体用の配管等を設けることで、熱伝導を良
くすることも好ましい。
【0013】入れ子の厚さが0.1mm未満の場合、入
れ子による断熱効果が少なくなり、キャビティ内に導入
された溶融樹脂の急冷を招き、ウエルドマークやフロー
マーク等の外観不良が成形品に発生し易くなる。また、
金型を構成する金属若しくは合金製の金型部に入れ子を
固定する際には、例えば熱硬化性接着剤を用いて入れ子
を金型部に接着すればよいが、入れ子の厚さが0.1m
m未満の場合、接着剤の膜厚が不均一になると入れ子に
不均一な応力が残るために、成形品表面がうねる現象が
生じたり、キャビティ内に導入された溶融樹脂の圧力に
よって入れ子が破損することがある。一方、入れ子の厚
さが10mmを越える場合、入れ子による断熱効果が大
きくなり過ぎ、キャビティ内の樹脂の冷却時間を延長し
ないと、成形品取り出し後に成形品が変形することがあ
る。それ故、成形サイクルの延長といった問題が発生す
ることがある。尚、入れ子の厚さは、0.1mm乃至1
0mm、好ましくは、0.5mm乃至10mm、より好
ましくは1mm乃至7mm、一層好ましくは2mm乃至
5mmである。
【0014】入れ子を構成する材料の熱伝導率は、キャ
ビティ内の溶融樹脂の急冷を防止する目的で、2×10
-2cal/cm・sec・deg以下であることが必要
とされる。この値を越える熱伝導率を有する材料を用い
て入れ子を作製した場合、キャビティ内の溶融樹脂が入
れ子によって急冷されるために、入れ子を備えていない
通常の炭素鋼等から作製された金型にて成形された成形
品と同程度の外観しか得られない。
【0015】入れ子を構成する材料に対して、通常の研
削加工で凹凸、曲面等の加工を容易にでき、かなり複雑
な形状以外は任意の形状の入れ子を製作できる。セラミ
ック粉末若しくは溶融ガラスを成形用金型に入れてプレ
ス成形した後に熱処理することで、入れ子を作製するこ
とができる。また、ガラスから成る板状物を治具上に置
いたまま炉内で自然に賦形させることによって、入れ子
を作製することもできる。曲面を有する成形品を成形す
る場合、入れ子の裏面(入れ子のキャビティを構成する
面と反対側の面であり金型部と対向する面)の曲率に合
わせて、金型部の入れ子装着部を加工を行えばよい。
【0016】入れ子を結晶化ガラスから作製する場合、
入れ子を、結晶化度が10%以上、更に望ましくは結晶
化度が60%以上、一層望ましくは結晶化度が70〜1
00%の結晶化ガラスから作製することが好ましい。1
0%以上の結晶化度になると結晶がガラス全体に均一に
分散するので、熱衝撃強度及び界面剥離性が飛躍的に向
上するため、成形品の成形時における入れ子の破損発生
を著しく低下させることができる。結晶化度が10%未
満では、成形時にその表面から界面剥離を起こし易いと
いった欠点がある。尚、入れ子を構成する結晶化ガラス
の線膨張係数が1×10-6/deg以下、熱衝撃強度が
400゜C以上であることが好ましい。
【0017】熱衝撃強度とは、所定の温度に加熱した1
00mm×100mm×3mmのガラスを25゜Cの水
中に投げ込んだとき、ガラスに割れが発生するか否かの
温度を強度として規定したものである。熱衝撃強度が4
00゜Cであるとは、400゜Cに熱した100mm×
100mm×3mmのガラスを25゜Cの水中に投げ込
んだとき、ガラスに割れが発生しないことを意味する。
この熱衝撃強度は、耐熱ガラスにおいても180゜C前
後の値しか得られない。従って、それ以上の温度(例え
ば、約300゜C)で溶融された樹脂が入れ子と接触し
たとき、入れ子に歪みが生じ、入れ子が破損する場合が
ある。熱衝撃強度は、ガラスの結晶化度とも関係し、1
0%以上の結晶化度を有する結晶化ガラスから入れ子を
作製すれば、成形時に入れ子が割れることを確実に防止
し得る。
【0018】ここで、結晶化ガラスとは、原ガラスに少
量のTiO2及びZrO2の核剤を添加し、1600゜C
以上の高温下で溶融した後、プレス、ブロー、ロール、
キャスト法等によって成形され、更に結晶化のために熱
処理を行い、ガラス中にLi2O−Al23−SiO2
結晶を成長させ、主結晶相がβ−ユークリプタイト系結
晶及びβ−スポジュメン結晶が生成したものを例示する
ことができる。あるいは又、CaO−Al23−SiO
2系ガラスを1400〜1500゜Cで溶融後、水中へ
移して砕いて小粒化を行った後、集積し、耐火物セッタ
ー上で板状に成形後、更に加熱処理を行い、β−ウォラ
ストナイト結晶相が生成したものを例示することができ
る。更には、SiO2−B23−Al23−MgO−K2
O−F系ガラスを熱処理して雲母結晶を生成させたもの
や、核剤を含むMgO−Al23−SiO2系ガラスを
熱処理してコーディエライト結晶が生成されたものを例
示することができる。
【0019】これら結晶化ガラスにおいては、ガラス基
材中に存在する結晶粒子の割合を結晶化度という指標で
表すことができる。そして、X線回折装置等の分析機器
を用いて非晶相と結晶相の割合を測定することで結晶化
度を測定することができる。
【0020】入れ子をセラミックから作製した場合、入
れ子の素材が多孔質であるために、成形品の表面に凸状
の突起物が転写される場合がある。しかしながら、結晶
化ガラスは、結晶粒子が微細であり、しかも粒子間の接
着力が優れており、多孔質でないために、成形品の表面
が鏡面になり易いといった利点がある。
【0021】入れ子の表面に、スパッタリングやイオン
プレーティング等の表面処理技術によって、上述した材
料又は金属化合物から成る薄膜層を少なくとも1層設け
てもよく、これによって、セラミックの空孔を充填する
ことができ、成形品の表面特性を一層向上させることが
できる。但し、膜厚としては、20μm以下が好まし
く、この厚さを越えると断熱効果の低下及び薄膜層の入
れ子表面への密着性の低下、入れ子縁部での薄膜層のだ
れ発生、薄膜層の損傷発生、薄膜層の表面のうねり発生
が生じる虞がある。
【0022】成形品に鏡面性が要求される場合、入れ子
のキャビティを構成する面(入れ子のキャビティ面と呼
ぶ)の表面粗さRmaxを0.03μm以下とすることが
望ましい。表面粗さRmaxが0.03μmを越えると、
鏡面性が不足し、成形品に要求される特性、例えば表面
平滑性(写像性)を満足しない場合がある。そのために
は、作製された入れ子のキャビティ面に対して、表面粗
さRmaxが0.03μm以下になるまで、例えばダイヤ
モンドラッピングを行い、更に、必要に応じて、ラッピ
ングを行えばよい。ラッピングは、ラッピングマシン等
を用いて行うことができる。尚、ラッピングは入れ子加
工の最終工程で行うことが望ましい。通常の炭素鋼等の
磨きと比較すると、例えば結晶化ガラスの場合、約1/
2のコストで鏡面が得られるために、金型の製作費を低
減させることが可能である。尚、表面粗さRmaxの測定
は、JIS B0601に準じた。つや消し若しくはヘ
ラーラインの状態の表面を有する成形品を成形する場合
には、入れ子のキャビティ面をサンドブラスト処理やエ
ッチングを行うことによって、入れ子のキャビティ面に
細かい凹凸やラインを形成すればよい。
【0023】また、入れ子に凹凸形状を設ける場合に
は、凹凸部のエッジに発生した微細なクラックが溶融樹
脂と接触して破損することを防止するために、ダイヤモ
ンド砥石で凹凸部の縁部を研磨して応力が集中しないよ
うにすべきである。あるいは又、場合によっては、半径
0.3mm以下の曲率面やC面カットを設け、応力集中
を避けることが好ましい。
【0024】研削加工等によって所定形状に加工した
後、入れ子の装着時に入れ子が金型部に設けられた入れ
子装着部から落下して破損する虞がない場合、あるいは
又、接着剤を用いることなく入れ子を入れ子装着部に装
着可能な場合には、接着剤を用いずに入れ子を金型部に
設けられた入れ子装着部に直接装着することができる。
あるいは又、エポキシ系、シリコン系、ウレタン系、ア
クリル系等の中から選択された熱硬化性接着剤を用い
て、入れ子を入れ子装着部に接着してもよい。尚、入れ
子装着部が設けられた入れ子装着用中子を金型部に取り
付け、かかる入れ子装着用中子の入れ子装着部に入れ子
を装着してもよい。
【0025】金型部の入れ子装着部と入れ子のクリアラ
ンス(D)は、限りなく0に近い値であってよいが、実
用的には、0.005mm以上であることが好ましい。
ここで、クリアランス(D)は、入れ子のキャビティ面
に沿った、金型部の入れ子装着部と入れ子との間のクリ
アランスを指す。入れ子を構成する材料の線膨張係数に
依存するが、クリアランス(D)が余りに小さい場合、
金型部を構成する材料と入れ子を構成する材料の線膨張
係数の差による入れ子の破損を防止することができなく
なる場合があるので、入れ子のクリアランス(D)は、
このような問題が生じないような値とすればよい。尚、
クリアランス(D)を大きくし過ぎると、入れ子の位置
ズレ及び位置安定性が不足するために、入れ子が破損す
る虞がある。従って、クリアランス(D)は、2mm程
度以下であることが好ましい。
【0026】本発明の第1若しくは第3の態様に係る熱
可塑性樹脂から成る成形品の製造方法においては、キャ
ビティを構成する面の一部を、4×10-2cal/cm
・sec・deg以上の熱伝導率を有する、炭素鋼、ニ
ッケル、ステンレススチール、アルミニウム、クロム、
ベリリウム、亜鉛、銅及びタングステンカーバイドから
成る群から選択された金属若しくは合金から作製するこ
ともできる。この場合、例えば、これらの材料をブロッ
ク状に加工した後、金型部に装着することによって、キ
ャビティ面の一部を構成することができる。尚、これら
の材質は熱伝導性に優れているため、通常、そのままで
は、キャビティ面の一部の温度Tを制御することはでき
ない。そこで、かかる材料から構成されたキャビティを
構成する面の一部の温度T(゜C)を、加圧水蒸気、加
圧水、電熱ヒータ、ペルチェ素子、高周波加熱、水、空
気のいずれかを用いて制御する必要がある。即ち、かか
る材料から作製されたブロックの温度Tを、加圧水蒸
気、加圧水、電熱ヒータ、ペルチェ素子、高周波加熱、
水、空気のいずれかを用いて制御すればよい。このよう
な材質を用いる場合、出来るだけ熱の出入りを俊敏にす
ることで、成形サイクルの短時間化を図る必要がある。
特に成形サイクルの短時間化を図る方法として、キャビ
ティを構成する面の一部の加熱を加圧水蒸気にて行い、
冷却を潜熱の高い水を用いて行うことが好ましい。ま
た、他の手段を用いる場合でも、キャビティを構成する
面の一部の近傍に加熱・冷却用の配管等を設けることが
好ましい。尚、かかるキャビティを構成する面の一部の
表面に、スパッタリングやイオンプレーティング等の表
面処理技術によって、上述したセラミック材料やガラス
又は金属化合物から成る薄膜層を少なくとも1層設けて
もよく、これによって、キャビティを構成する面の一部
の表面硬度を高めたり、腐食を防止できるといった効果
を得ることができる。尚、薄膜層の膜厚としては20μ
m以下が好ましく、この厚さを越えると薄膜層の損傷発
生が生じる虞がある。
【0027】本発明の第1〜第4の態様に係る熱可塑性
樹脂から成る成形品の製造方法においては、溶融熱可塑
性樹脂がキャビティを構成する面の一部との接触を開始
してから0.1秒間乃至10秒間経過したときのキャビ
ティを構成する面の一部の温度T(゜C)を前記(B)
の条件に制御し、且つ、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ
内への導入動作を開始してから0.2秒間乃至12秒間
経過したときのキャビティを構成する面の一部の温度T
(゜C)を前記(B)の条件に制御することが好まし
い。このような時間制御を行うことによって、成形品の
表面転写性や特性の一層の向上を図ることができる。
尚、キャビティを構成する面の一部と溶融熱可塑性樹脂
との接触状態は、例えば、金型に配設した圧力センサー
を通じて検知することができる。
【0028】本発明の成形品の製造方法において、成形
品を成形する方法としては、熱可塑性樹脂を成形するた
めに一般的に用いられる射出成形法やブロー成形法、多
色成形法を挙げることができるが、最も好ましい方法は
射出成形法である。
【0029】場合によっては、本発明においては、成形
品の成形時にキャビティの容積を可変とし得る構造の金
型を用いることができる。この場合、例えば油圧シリン
ダーで可動させることができる中子を金型に配設すれば
よい。
【0030】かかる構造の金型を使用する場合、本発明
の熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法においては、
型締め時、成形すべき成形品の容積(VM)よりもキャ
ビティの容積(VC)が大きくなるように、金型を型締
めし、且つ、キャビティ内における中子の配置位置を制
御し、該キャビティ(容積:VC)内に溶融熱可塑性樹
脂を導入し、熱可塑性樹脂の導入開始前、開始と同時
に、導入中に、あるいは導入完了後(導入完了と同時を
含む)、中子を移動させて、キャビティの容積を成形す
べき成形品の容積(VM)まで減少させてもよい。尚、
キャビティの容積が成形すべき成形品の容積(VM)と
なる時点を、熱可塑性樹脂の導入中、あるいは導入完了
後(導入完了と同時を含む)とすることができる。
【0031】上記の型締め時、成形すべき成形品の容積
(VM)とキャビティの容積(VC)の関係は、成形すべ
き成形品の厚さをt0とし、型締め時における成形品の
厚さ方向のキャビティの距離をt1とし、Δt=t1−t
0としたとき、0.1mm≦Δt≦6mmとなるような
関係であることが好ましい。Δt<0.1mmでは、流
動性の悪い溶融熱可塑性樹脂を用いて成形品を成形する
ことが困難となる場合があり、成形品に残留する応力を
小さくすることができない。Δt>6mmでは、成形品
中に空気が巻き込まれ、成形品の品質が劣化する虞があ
る。
【0032】あるいは又、本発明の熱可塑性樹脂から成
る成形品の製造方法において、金型に加圧流体注入装置
を更に備え、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹
脂内に、加圧流体注入装置から加圧流体を注入し、以
て、キャビティ内の熱可塑性樹脂の内部に中空部を形成
することもできる。加圧流体注入装置の取り付け位置
は、成形すべき成形品の形状等に依存して、射出成形装
置の溶融樹脂射出ノズル内、金型に配設された溶融熱可
塑性樹脂導入部内(例えば、ゲート部内)、あるいは、
金型に配設されそしてキャビティに開口する加圧流体注
入装置取付部から適宜選択すればよい。キャビティ内に
導入された溶融熱可塑性樹脂内への加圧流体の注入開始
の時点は、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の導入
中、導入完了と同時、あるいは導入完了後とすることが
できる。キャビティ内の樹脂内への加圧流体の注入は、
キャビティ内の樹脂が冷却、固化した後も続けることが
好ましい。キャビティ内へ導入する溶融熱可塑性樹脂の
量は、キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で完全に充填す
るために必要な量であってもよいし、成形品に依って
は、キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で完全に充填する
には不十分な量であってもよい。
【0033】この場合の使用に適した加圧流体として
は、常温・常圧下でガス状あるいは液状の流体であっ
て、溶融熱可塑性樹脂内への注入時、溶融熱可塑性樹脂
と反応したり混合しないものが望ましい。具体的には、
窒素ガス、炭酸ガス、空気、ヘリウムガス等、常温でガ
ス状の物質、水等の液体、高圧下で液化したガスを使用
することができるが、中でも、窒素ガスやヘリウムガス
等の不活性ガスが好ましい。尚、注入する加圧流体は、
成形品の中空部に断熱圧縮による焼けが生じないような
不活性な加圧流体であることが、一層好ましく、窒素ガ
スを用いる場合、純度90%以上のものを使用すること
が望ましい。更には、加圧流体として、発泡性樹脂、繊
維強化樹脂材料等を使用することもできる。尚、この場
合には、中空部に発泡性樹脂、繊維強化樹脂材料等が充
填されるが、このような構造も、本発明においては中空
部という概念に含める。
【0034】本発明における熱可塑性樹脂としては、通
常使用されている熱可塑性樹脂の全てを用いることがで
きる。具体的には、非晶性の熱可塑性樹脂として、ポリ
スチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂とい
ったスチレン系樹脂;メタクリル樹脂;ポリカーボネー
ト樹脂;変性PPE樹脂;ポリアリレート樹脂を挙げる
ことができる。また、結晶性の熱可塑性樹脂として、ポ
リエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィ
ン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド
MXD6等のポリアミド系樹脂;ポリオキシメチレン
(ポリアセタール)樹脂;ポリエチレンテレフタレート
(PET)樹脂、ポリブチレンエチレンテレフタレート
(PBT)樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレ
ンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテル
スルホン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアミドイ
ミド樹脂を挙げることができる。
【0035】結晶性の熱可塑性樹脂は、結晶化によって
密度及び融点が高くなり、成形品の硬度や弾性率が向上
する。また、結晶性の熱可塑性樹脂は、水分や染料、可
塑剤等が結晶組織へ入り込み難いといった特徴を有して
いるため、耐薬品性に優れている。通常、結晶性の熱可
塑性樹脂を用いた成形品の成形においては、金型温度を
結晶性の熱可塑性樹脂の荷重撓み温度よりもかなり低く
設定しておき、キャビティ内に導入された溶融した結晶
性の熱可塑性樹脂の冷却、固化を促進させる方法が採ら
れている。従来の技術においては、金型は金属材料から
作製されているので、熱伝導性が良く、しかも、金型温
度を結晶性の熱可塑性樹脂の荷重撓み温度よりもかなり
低く設定した場合、キャビティ内に導入された溶融した
結晶性の熱可塑性樹脂は、金型のキャビティ面と接触し
たとき、瞬時に冷却され始める。その結果、成形品の表
面には、非晶質層あるいは結晶化度の低い微細な結晶層
(スキン層)が形成される。このようなスキン層が形成
された成形品においては、成形品の表面に関連する物性
が著しく低下するという問題が生じる。例えば結晶性の
熱可塑性樹脂としてポリオキシメチレン(ポリアセター
ル)樹脂から成形された成形品の耐摩擦摩耗性や耐候性
が著しく低下する。また、金型のキャビティ面の成形品
表面への転写性も劣化する。
【0036】本発明においては、キャビティ内に導入さ
れた溶融した結晶性の熱可塑性樹脂が急冷されることが
ないために、結晶性の熱可塑性樹脂を用いた場合にも、
樹脂の結晶化度の低下を招くことがなく、成形品の樹脂
表面の結晶化度が高く、樹脂の劣化による割れ等、樹脂
表面に関連する物性の低下を防止することができる。
【0037】更には、ポリマーアロイ材料から成る熱可
塑性樹脂を用いることもできる。ここで、ポリマーアロ
イ材料は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンド
したもの、又は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を化
学的に結合させたブロック共重合体若しくはグラフト共
重合体から成る。ここで、少なくとも2種類の熱可塑性
樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料を構成する熱可
塑性樹脂として、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AE
S樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂、ポリエチレ
ン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹
脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミ
ド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリア
ミド系樹脂、変性PPE樹脂、ポリブチレンテレフタレ
ート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエ
ステル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリスルホン樹
脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹
脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、
ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン
樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、液晶ポリマー、
エラストマーを挙げることができる。2種類の熱可塑性
樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカ
ーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイ材料を
例示することができる。尚、このような樹脂の組合せ
を、ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂と表記する。以
下においても同様である。更に、少なくとも2種類の熱
可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、
ポリカーボネート樹脂/PET樹脂、ポリカーボネート
樹脂/PBT樹脂、ポリカーボネート樹脂/ポリアミド
系樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂/PET樹
脂、変性PPE樹脂/HIPS樹脂、変性PPE樹脂/
ポリアミド系樹脂、変性PPE樹脂/PBT樹脂/PE
T樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミドMXD6樹脂、ポ
リオキシメチレン樹脂/ポリウレタン樹脂、PBT樹脂
/PET樹脂、ポリカーボネート樹脂/液晶ポリマーを
例示することができる。また、少なくとも2種類の熱可
塑性樹脂を化学的に結合させたブロック共重合体若しく
はグラフト共重合体から成るポリマーアロイ材料とし
て、HIPS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹
脂を例示することができる。
【0038】尚、ポリマーアロイ材料が非晶性及び結晶
性の熱可塑性樹脂から構成されているとき、結晶性の熱
可塑性樹脂よりも非晶性の熱可塑性樹脂の含有率の方が
高い場合あるいは同率の場合には、本発明の第1若しく
は第2の態様に係る熱可塑性樹脂から成る成形品の製造
方法を適用し、非晶性の熱可塑性樹脂よりも結晶性の熱
可塑性樹脂の含有率の方が高い場合には、本発明の第3
若しくは第4の態様に係る熱可塑性樹脂から成る成形品
の製造方法を適用する。ポリマーアロイ材料を用いる場
合、ポリマーアロイ材料中の含有率の高い方の熱可塑性
樹脂の性質が成形品の性能及び外観に発現し易いため、
本発明の第1若しくは第2の態様に係る熱可塑性樹脂か
ら成る成形品の製造方法、あるいは又、本発明の第3若
しくは第4の態様に係る熱可塑性樹脂から成る成形品の
製造方法の適用を使い分ける必要がある。尚、同率の場
合、結晶性の熱可塑性樹脂特有の結晶が発達し難くなる
ため、結晶の発達を温度制御しても結晶化度は向上しな
い。そのため、本発明の第1若しくは第2の態様に係る
熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法を採用すること
が好ましい。こうすることで、非晶性の熱可塑性樹脂と
結晶性の熱可塑性樹脂から成るポリマーアロイ材料に特
有の現象である成形品外観不良(色ムラや表面のくも
り)の発生を効果的に防止することができる。
【0039】即ち、ポリマーアロイ材料に基づき成形さ
れた成形品においては、一般に、成形品の外観(特に、
光沢性)が悪くなり、特に、成形品の厚さが変わる部分
やウェルド部分において外観不良が生じ易いという問題
がある。この原因は、通常、金型は熱伝導性が良い金属
材料から作製されているので、キャビティ内に導入され
た溶融したポリマーアロイ材料は、金型のキャビティ面
と接触したとき、瞬時に冷却され始める。その結果、溶
融したポリマーアロイ材料に固化層が形成され、転写性
不良や光沢不良が生じる。本発明においては、キャビテ
ィ内に導入された溶融したポリマーアロイ材料が急冷さ
れることがないために、成形品の光沢性が極めて向上
し、鏡面性に優れた成形品を容易に得ることができる。
【0040】尚、以上に説明した各種の熱可塑性樹脂
に、安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、染顔料等を添加す
ることができるし、ガラスビーズ、マイカ、カオリン、
炭酸カルシウム等の無機充填材、あるいは有機充填材を
添加することもできる。
【0041】本発明の熱可塑性樹脂から成る成形品の製
造方法においては、無機繊維を5重量%乃至80重量%
含有する熱可塑性樹脂を用いることもできる。尚、成形
品の強度を重視する場合には、無機繊維の平均長さを、
5μm乃至5mm、好ましくは10μm乃至0.4mm
とし、成形品の写像性(鏡面性)を重視する場合には、
5μm乃至0.4mm、より好ましくは5μm乃至0.
2mm、一層好ましくは5μm乃至0.1mmとするこ
とが望ましい。また、これらの場合、無機繊維の平均直
径を、0.01μm乃至15μm、より好ましくは0.
1μm乃至13μm、一層好ましくは0.1μm乃至1
0μmとすることが望ましい。
【0042】従来の技術において、無機繊維を含有した
熱可塑性樹脂を用いて成形品を成形した場合、成形品の
表面に無機繊維が析出する結果、成形品の外観が悪くな
り、あるいは又、写像性(鏡面性)が劣化するという問
題が生じ易い。それ故、優れた外観特性や写像性が要求
される成形品に対しては、無機繊維を含有する熱可塑性
樹脂を使用することは困難であった。尚、成形品の表面
への無機繊維の析出という現象は、成形品の表面に無機
繊維が浮き出ることなどで認識することができる。それ
故、成形品の表面への無機繊維の析出といった問題を解
決するために、従来の技術においては、熱可塑性樹脂の
粘度を低下させ、溶融樹脂の流動性を良くすることで対
応していた。しかしながら、無機繊維の含有率を増加さ
せた場合、無機繊維が成形品の表面から析出することを
防止することは難しくなる。そのため、優れた外観特性
が必要とされる成形品には、優れた性能を有しているに
も拘らず、無機繊維を含有した熱可塑性樹脂を使用する
ことは困難であった。無機繊維の含有率が増えると無機
繊維が成形品の表面から析出する原因も、金型の材質と
関係している。通常、金型は熱伝導性が良い金属材料か
ら作製されているので、キャビティ内に導入された無機
繊維を含有する溶融樹脂は、金型のキャビティ面と接触
したとき、瞬時に冷却され始める。その結果、金型のキ
ャビティ面と接触した溶融樹脂に固化層が形成され、無
機繊維が析出する。加えて、金型のキャビティ面の成形
品表面への転写性が不足するという問題を生じる。本発
明においては、キャビティ内に導入された溶融した熱可
塑性樹脂が急冷されることがないために、金型のキャビ
ティ面と接触した溶融樹脂に固化層が形成されることが
無く、無機繊維が析出することを確実に防止することが
できる。
【0043】この場合、熱可塑性樹脂が含有する無機繊
維の割合(言い換えれば、熱可塑性樹脂に添加された無
機繊維の割合)は、要求される曲げ弾性率(例えば、A
STM D790に準拠して測定したときの値が3.0
GPa以上)を満足し得る成形品を成形できる範囲であ
ればよく、その上限は、キャビティ内の溶融熱可塑性樹
脂の流動性が低下するため成形が困難となり、あるいは
又、優れた鏡面性を有する成形品を成形できなくなると
きの値とすればよい。具体的には、結晶性の熱可塑性樹
脂を用いる場合には上限は概ね80重量%である。非晶
性の熱可塑性樹脂を用いる場合には、結晶性の熱可塑性
樹脂よりも流動性が劣るために、場合によっては上限は
概ね50重量%となる。含有率が5重量%未満では成形
品に要求される曲げ弾性率、弾性率や線膨張係数が得ら
れず、また、80重量%を越えると溶融熱可塑性樹脂の
流動性が低下するため成形品の成形が困難となり、ある
いは又、優れた鏡面性を有する成形品を成形できなくな
る虞がある。
【0044】また、無機繊維の平均長さが5μm未満で
あったり、平均直径が0.01μm未満では、成形品に
要求される曲げ弾性率が得られない。一方、無機繊維の
平均長さが5mmを越えたり、平均直径が15μmを越
えると、成形品の表面が鏡面にならないといった問題が
生じる。
【0045】上記の範囲の平均長さ及び平均直径を有す
る無機繊維を、好ましくはシランカップリング剤等を用
いて表面処理した後、熱可塑性樹脂とコンパウンドし
て、ペレット化して成形用材料とする。このような成形
用材料、及び入れ子が組み込まれた金型を用いて成形品
の成形を行うことで、高剛性、高弾性率、低線膨張係
数、高荷重撓み温度(耐熱性)を有し且つ鏡面性(写像
性)に優れた成形品を得ることができる。
【0046】無機繊維は、ガラス繊維、カーボン繊維、
ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカー繊
維、チタン酸カリウムウィスカー繊維、塩基性硫酸マグ
ネシウムウィスカー繊維、珪酸カルシウムウィスカー繊
維及び硫酸カルシウムウィスカー繊維から成る群から選
択された少なくとも1種の材料から構成することが好ま
しい。尚、熱可塑性樹脂に含有される無機繊維は1種類
に限定されず、2種類以上の無機繊維を熱可塑性樹脂に
含有させてもよい。
【0047】無機繊維の平均長さは、重量平均長さを意
味する。無機繊維の長さの測定は、熱可塑性樹脂の樹脂
成分を溶解する液体に無機繊維を含有する成形用ペレッ
ト若しくは成形品を浸漬して樹脂成分を溶解するか、ガ
ラス繊維の場合、600゜C以上の高温で樹脂成分を燃
焼させて、残留する無機繊維を顕微鏡等で観察して測定
することができる。通常、無機繊維を写真撮影して人が
測長するか、専用の繊維長測定装置を使用して無機繊維
の長さを求める。数平均長さでは微小に破壊された繊維
の影響が大き過ぎるので、重量平均長さを採用すること
が好ましい。重量平均長さの測定に際しては、あまりに
小さく破砕された無機繊維の破片を除いて測定する。無
機繊維の公称直径の2倍よりも長さが短くなると測定が
難しくなるので、例えば公称直径の2倍以上の長さを有
する無機繊維を測定の対象とする。
【0048】無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いた
本発明の成形品の製造方法において得られる成形品とし
て、自動車用ドアハンドルを挙げることもできる。自動
車用ドアハンドルから成る成形品に要求される物性値を
例示すると、以下の表1のとおりである。これらの特性
を満足するためには、以下の表2に示す諸元を満足する
無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いることが好まし
い。尚、自動車用ドアハンドルは、ドアに固定される本
体部品、及び、バネあるいは固定部品によって本体部品
と連結される取っ手部品から構成されており、外ヒンジ
タイプ又は内ヒンジタイプの引手式(プルアップ式)あ
るいはプッシュボタン式のアウトサイド・ドアハンド
ル、ドアトリムに埋め込まれた引手式のインサイド・ド
アハンドルを例示することができる。
【0049】
【表1】 曲げ弾性率 :5.0GPa以上 好ましくは、5〜25GPa 線膨張係数 :3.0×10-5/deg以下 好ましくは0.5〜3.0×10-5/deg 荷重撓み温度:140゜C以上 写像性 :85%以上
【0050】
【表2】 平均長さ:5μm〜400μm 好ましくは5μm乃至70μm 平均直径:0.01μm〜15μm 好ましくは0.1μm〜10μm 含有率 :15〜80重量% 好ましくは20〜60重量%
【0051】また、無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を
用いた本発明の成形品の製造方法においては、成形品の
表面の少なくとも一部分に光反射薄膜を成膜する工程を
更に含むことができる。この場合、光反射薄膜の厚さ
は、光を効果的に反射できる厚さであればよく、例え
ば、少なくとも50nm、好ましくは50nm乃至50
0nm、一層好ましくは100nm乃至300nmとす
ることが望ましい。尚、50nm未満では、反射率が十
分でなくなる場合があり、一方、500nmを越えると
成形品の表面平滑性が低下し反射率に問題を生じる場合
がある。光反射薄膜を構成する材料として、例えば、
金、白金、銀、クロム、ニッケル、リンニッケル、アル
ミニウム、銅、ベリリウム、ベリリウム銅、亜鉛等の金
属又はこれらの金属化合物、合金を挙げることができ
る。成膜方法として、 (a)電子ビーム加熱法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着
法等の各種真空蒸着法、 (b)プラズマ蒸着法 (c)2極スパッタ法、直流スパッタ法、直流マグネト
ロンスパッタ法、高周波スパッタ法、マグネトロンスパ
ッタ法、イオンビームスパッタ法、バイアススパッタ法
等の各種スパッタ法 (d)DC(Direct Current)法、RF法、多陰極法、
活性化反応法、HCD(Hollow Cathode Discharge)
法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応
性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティン
グ法 等のPVD(Physical Vapor Deposition)法を挙げる
ことができる。反射率とコストの観点からは、アルミニ
ウムを真空蒸着することによって光反射薄膜を成膜する
ことが最も好ましい。
【0052】こうして得られた成形品の一形態としてミ
ラーを挙げることができる。より具体的には、ルームミ
ラー、ドアミラー、フェンダーミラー、スピードメータ
ーに内蔵されるミラー等の車両車載ミラー、カメラ用ダ
ハミラー、複写機用光学系ミラー、レーザビームプリン
ター用ポリゴンミラー等の光学系ミラーを例示すること
ができる。ミラー部材(光反射薄膜を成膜する前の成形
品)あるいはミラーから成る成形品に要求される物性値
は、以下の表3のとおりである。尚、表3中、写像性
は、光反射薄膜形成前の成形品に対する値である。これ
らの特性を満足するためには、以下の表4に示す諸元を
満足する無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いること
が好ましい。本発明の熱可塑性樹脂から成る成形品の製
造方法によってミラーから成る成形品を製造すれば、ガ
ラスから製造する従来のミラー作製方法よりも量産性に
優れ、且つ、アセンブリー部分までも成形によって一体
化できることから、部品の低減及びミラーの製造コスト
ダウンが期待できる。
【0053】
【表3】 曲げ弾性率 :5.0GPa以上 線膨張係数 :3.0×10-5/deg以下 荷重撓み温度:100゜C以上 写像性 :85%以上(ミラー部材として)
【0054】
【表4】 平均長さ:5〜100μm 好ましくは5〜70μm 平均直径:0.01〜15μm 好ましくは0.1〜10μm 含有率 :15〜80重量%
【0055】あるいは又、こうして得られた成形品の別
の形態としてリフレクターを挙げることができる。より
具体的には、ヘッドランプ、ターンランプ、サーチライ
ト、回転灯、非常灯等に組み込まれたリフレクターを例
示することができる。リフレクター部材(光反射薄膜を
成膜する前の成形品)に要求される物性値を、以下の表
5に例示する。これらの特性を満足するためには、以下
の表6に示す諸元を満足する無機繊維を含有する熱可塑
性樹脂を用いることが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂
から成る成形品の製造方法によってリフレクターから成
る成形品を製造すれば、ガラス又は熱硬化性樹脂から製
造する従来のリフレクター作製方法よりも量産性に優
れ、且つ、アセンブリー部分までも成形によって一体化
できることから、部品の低減及びミラーの製造コストダ
ウンが期待できるし、光源からの熱によってもリフレク
ターは変形せず、しかも熱による膨張量も極めて少な
い。
【0056】
【表5】 線膨張係数 :3.0×10-5/deg以下 好ましくは0.5〜3.0×10-5/deg 荷重撓み温度:140゜C以上 好ましくは140〜260゜C
【0057】
【表6】 平均長さ:5〜100μm 好ましくは5〜70μm 平均直径:0.01〜15μm 好ましくは0.05〜13μm 更に好ましくは0.1〜10μm 含有率 :15〜80重量%
【0058】あるいは又、無機繊維を含有する熱可塑性
樹脂を用いた本発明の成形品の製造方法においては、成
形品の表面の少なくとも一部分に塗膜を形成する工程を
更に含むことができる。この場合、塗膜は、アクリル系
塗料皮膜、ウレタン系塗料皮膜及びエポキシ系塗料皮膜
から成る群から選択された少なくとも1種の塗料皮膜で
あることが好ましい。即ち、成形された成形品の表面か
ら埃等を除去した後、成形品の表面に塗料を刷毛塗り、
スプレー、静電塗装、浸漬法等の方法により塗布し、そ
の後、乾燥することによって、成形品(例えば、自動車
用外装部材)の表面の少なくとも一部分に塗膜を形成す
ることができる。本発明によって得られた成形品に残留
する歪みが小さいために、塗料溶液による成形品へのク
ラックが発生し難い。また、本発明によって得られた成
形品の表面は写像性に優れており、塗装後も写像性に優
れた外観を有する成形品を得ることができる。尚、原料
樹脂の荷重撓み温度以下の硬化温度を有する塗料を使用
することが好ましい。こうして得られた成形品の一形態
である自動車用外装部材として、フロントフェンダー、
リアフェンダー、ドア、ボンネット、ルーフ又はトラン
クフェードを例示することができる。このような自動車
用外装部材としての成形品に要求される物性値を例示す
ると、以下の表7のとおりである。これらの特性を満足
するためには、以下の表8の諸元を満足する無機繊維を
含有する熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。尚、先
に説明した自動車用ドアハンドルの少なくとも一部分に
塗膜を形成することもできる。
【0059】
【表7】 曲げ弾性率 :4.0GPa以上 好ましくは4.5GPa以上 線膨張係数 :4.0×10-5/deg以下 好ましくは3.5×10-5/deg以下 荷重撓み温度:100゜C以上 好ましくは110゜C以上
【0060】
【表8】平均長さ:5〜400μm 好ましくは5〜200μm 平均直径:0.01〜15μm 好ましくは0.1〜10μm 含有率 :15〜80重量% 好ましくは20〜60重量%
【0061】あるいは又、無機繊維を含有する熱可塑性
樹脂を用いた本発明の成形品の製造方法においては、成
形品の表面の少なくとも一部分にハードコート層を形成
する工程を更に含むことができる。この場合、ハードコ
ート層は、アクリル系ハードコート層、ウレタン系ハー
ドコート層及びシリコーン系ハードコート層から構成さ
れた群から選択された少なくとも1種のハードコート層
から成ることが好ましい。即ち、成形された成形品の表
面から埃等を除去した後、アクリル系、ウレタン系又は
シリコーン系のハードコート溶液から選択された溶液
を、成形品の表面にディップ法、フローコート法、スプ
レー法等の方法により塗布し、その後、乾燥、硬化させ
ることによって、成形品の表面の少なくとも一部分にハ
ードコート層を形成することができる。成形品の表面の
ハードコート層の厚さは1μm乃至30μm、好ましく
は3μm乃至15μmであることが望ましい。1μm未
満ではハードコート層の耐久性が不足し、30μmを越
えるとハードコート層にクラックが発生し易くなる。ハ
ードコート層と成形品との間の密着性が十分でない場合
には、プライマーコートを成形品に塗布した後にトップ
コートを塗布することで、密着力を向上させることがで
きる。成形品に残留する歪みが小さいために、ハードコ
ート層の形成に起因した成形品へのクラックの発生は生
じ難い。また、本発明によって得られた成形品の表面は
写像性に優れており、ハードコート層形成後も写像性に
優れた外観を有する成形品を得ることができる。こうし
て得られた成形品の一形態として、フロント・ピラー、
センター・ピラーあるいはリア・ピラーといった自動車
用ピラーを挙げることができる。ハードコート層を形成
する前の成形品に要求される物性値を例示すると、以下
の表9のとおりである。これらの特性を満足するために
は、以下の表10に示す諸元を満足する無機繊維を含有
する熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0062】
【表9】 曲げ弾性率 :4.0GPa以上 線膨張係数 :4.0×10-5/deg以下 荷重撓み温度:100゜C以上
【0063】
【表10】 平均長さ:5〜400μm 好ましくは5〜200μm 平均直径:0.01〜15μm 好ましくは0.1〜10μm 含有率 :15〜80重量% 好ましくは20〜60重量%
【0064】あるいは又、本発明の成形品の製造方法に
おいて、平均粒子径0.1μm乃至1mm、好ましくは
0.2μm乃至0.5mmの金属粉末、又は、平均厚さ
0.1μm乃至200μm、好ましくは1乃至150μ
mで平均外径が平均厚さより大きい金属フレークを、
0.01重量%乃至80重量%、好ましくは0.1重量
%乃至60重量%、より好ましくは1重量%乃至50重
量%含有する熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0065】メタリック色調を有する熱可塑性樹脂製の
成形品は、金属部品に比べ軽量であり、しかも、金属感
を有しており、各種の自動車部品や工業製品の部品等に
使用されている。通常、成形品にメタリック色調を付与
するためには、メタリック色調を与える金属粒子を含ん
だ塗料を成形品に塗装したり、メタリック色調を与える
金属粒子を成形品の原料樹脂に練り込む。成形品を塗装
することによって、塗料に含有された金属粒子の大きさ
に関係なく、比較的容易に金属感を成形品の表面に付与
することができる。しかしながら、成形品に深み感を与
えようとした場合、クリヤーコートを重ね塗りしなけれ
ばならず、成形品の製造工数が増加するという問題があ
る。一方、原料樹脂に金属粒子を練り込む方法において
は、例えば、粒子径の小さい金属粒子を用いると成形品
が濁った灰色になり易く、成形品に金属感を付与するこ
とが困難となる。また、粒子径の大きい金属粒子を用い
ると、金属粒子が成形品表面に析出するために、ギラギ
ラした金属感が成形品表面に強く現れるという問題があ
る。それ故、金属粒子の粒子径を規定する必要がある
が、そうした場合でも、クリヤーコートを施した場合の
深み感のある色調を成形品の表面に付与することができ
ない。そのため、現状では、成形品の原料樹脂に金属粒
子を練り込む場合であっても、成形品の表面にクリアー
コートを施し、成形品の表面に深み感のある色調を付与
している。従来の技術において、成形品の表面に深み感
が得られない理由は、成形品の表面に金属粒子が析出
し、成形品の表面に凹凸が生じることにある。この現象
は、金型の材質と関係している。従来の技術において
は、金型は熱伝導性が良い金属材料から作製されている
ので、キャビティ内に導入された溶融樹脂は、金型のキ
ャビティ面と接触したとき、瞬時に冷却され始める。そ
の結果、金属粒子を含む溶融樹脂に固化層が形成され、
成形品の表面に金属粒子が析出し、光沢不良を生じる。
本発明においては、キャビティ内に導入された溶融した
熱可塑性樹脂が急冷されることがないために、金型のキ
ャビティ面と接触した溶融樹脂に固化層が形成されるこ
とが無く、成形品の表面に金属粒子が析出することが無
く、光沢不良を生じることを確実に防止することができ
る。
【0066】金属粉末又は金属フレークの含有率が0.
01重量%未満では、成形品にはメタリック色調が不足
する。一方、80重量%を越えると、成形品の外観にぎ
らついた感じしか得られず、あるいは又、金属粉末若し
くは金属フレークが成形品の表面に析出する結果、成形
品の表面に深み感を付与することが困難となる。金属粉
末の平均粒子径が0.1μm未満では、深みのある金属
感を得られない。一方、1mmを越えると、金属粉末が
成形品表面に析出し易くなるために深み感が得られなく
なる。また、金属フレークを用いる場合、平均厚さが
0.1μm未満では、樹脂と混練する際、金属フレーク
に亀裂が生じるため、成形品のメタリック色調が低減す
る。一方、平均厚さが200μmを越えると、金属フレ
ークが成形品の表面に析出し易くなり、成形品の表面に
深み感を付与することが困難となる。また、平均外径が
平均厚さより小さいと、成形品の表面に深み感を付与す
ることが困難となる。
【0067】金属粉末の平均粒子径、金属フレークの平
均厚さや平均外径は、画像解析装置を用いて測定するこ
とができる。金属粉末、金属フレークが樹脂に含有され
ている場合、樹脂を炭化するか、溶剤で樹脂を溶解した
後、金属粉末の平均粒子径、金属フレークの平均厚さや
平均外径を測定すればよい。
【0068】金属粉末若しくは金属フレークを構成する
金属としては、金、銀、白金、銅、アルミニウム、クロ
ム、鉄、ニッケル、又はこれらの化合物、合金を挙げる
ことができる。中でも、金属粉末を酸化クロム粉末又は
アルミニウム粉末から構成し、あるいは又、金属フレー
クをアルミニウムフレークから構成することが、深み感
のあるメタリック色調を得るために、コストあるいは外
観的な観点から好ましい。
【0069】尚、この場合、熱可塑性樹脂には、無機繊
維を1乃至50重量%、好ましくは5乃至40重量%含
有させることができる。尚、この場合、金属粉末若しく
は金属フィラーと無機繊維の合計重量%を50重量%以
下とすることが好ましい。無機繊維として、ガラス繊
維、ガラスビーズ、カーボン繊維、ウォラストナイト、
ほう酸アルミニウムウィスカー繊維、チタン酸カリウム
ウィスカー繊維、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー繊
維、珪酸カルシウムウィスカー繊維、硫酸カルシウムウ
ィスカー繊維を挙げることができる。無機繊維の含有率
が少なすぎると成形品の強度が不十分となる場合があ
る。一方、無機繊維の含有率が50重量%を越えると、
成形品表面に無機繊維が析出する虞がある。
【0070】本発明において、キャビティを構成する面
の一部を上述の入れ子から構成する場合、保守が容易で
あり、成形時、セラミックやガラスといった非常に脆い
材料から成る入れ子に破損が発生せず、成形品にバリを
発生させず、長期間の使用に耐え、キャビティ面を構成
する入れ子の面の状態を確実に成形品の表面に転写する
ために、以下に説明する金型を使用することが好まし
い。
【0071】即ち、第1の態様に係る熱可塑性樹脂成形
用の金型は、(イ)熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形
するための金型部と、(ロ)該金型部の内部に配設さ
れ、キャビティを構成する面の一部を構成し、厚さが
0.1mm乃至10mmの入れ子と、(ハ)該金型部の
内部に配設され、キャビティの一部を構成し、該入れ子
の端部を被覆する被覆プレートとを備えている。そし
て、入れ子と被覆プレートとの間のクリアランス
(C21)を0.03mm以下(C21≦0.03mm)と
し、且つ、入れ子に対する被覆プレートの重なり量(Δ
21)を0.1mm以上(ΔS21≧0.1mm)、好ま
しくは0.5mm以上(ΔS21≧0.5mm)とする。
【0072】あるいは又、第2の態様に係る熱可塑性樹
脂成形用の金型は、(イ)熱可塑性樹脂に基づき成形品
を成形するための第1の金型部及び第2の金型部、
(ロ)第1の金型部に配設され、キャビティを構成する
面の一部を構成し、厚さが0.1mm乃至10mmの入
れ子、及び、(ハ)第2の金型部に設けられた溶融熱可
塑性樹脂導入部とを備えている。そして、第2の金型部
には、入れ子被覆部が設けられており、第1の金型部と
第2の金型部とを型締めした状態において、(A)入れ
子と入れ子被覆部との間のクリアランス(C11)を0.
03mm以下(C11≦0.03mm)とし、(B)入れ
子に対する入れ子被覆部の重なり量(ΔS11)を0.5
mm以上(ΔS11≧0.5mm)とする。尚、このよう
な構造の金型部における入れ子被覆部の構造は、入れ子
と対向する第2の金型部の面に設けられた一種の切り込
み(切り欠き)とすることができる。
【0073】更には、第3の態様に係る熱可塑性樹脂成
形用の金型は、(イ)熱可塑性樹脂に基づき成形品を成
形するための第1の金型部及び第2の金型部、(ロ)第
1の金型部に配設され、キャビティを構成する面の一部
を構成し、厚さが0.1mm乃至10mmの入れ子、及
び、(ハ)入れ子と第2の金型部との間に配設され、第
1の金型部に取り付けられ、溶融熱可塑性樹脂導入部が
設けられた被覆プレートとを備えている。そして、第2
の金型部には、入れ子被覆部が設けられており、第1の
金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、
(A)入れ子と入れ子被覆部との間のクリアランス(C
31)を0.03mm以下(C31≦0.03mm)とし、
(B)入れ子に対する入れ子被覆部の重なり量(Δ
31)を0.5mm以上(ΔS31≧0.5mm)とし、
(C)入れ子と被覆プレートとの間のクリアランス(C
32)を0.03mm以下(C32≦0.03mm)とし、
(D)入れ子に対する被覆プレートの重なり量(Δ
32)を0.5mm以上(ΔS32≧0.5mm)とす
る。尚、被覆プレートは入れ子の一部分とのみ重なり合
っている。ここで、このような構造の金型における溶融
熱可塑性樹脂導入部としては、例えば、ダイレクトゲー
ト構造を挙げることができる。
【0074】更には、第4の態様に係る熱可塑性樹脂成
形用の金型は、(イ)熱可塑性樹脂に基づき成形品を成
形するための第1の金型部及び第2の金型部、(ロ)第
1の金型部に配設され、キャビティを構成する面の一部
を構成し、厚さが0.1mm乃至10mmの第1の入れ
子、(ハ)第2の金型部に配設され、キャビティを構成
する面の一部を構成し、厚さが0.1mm乃至10mm
の第2の入れ子、及び、(ニ)第1の入れ子と第2の入
れ子との間に配設され、第1の金型部、第2の金型部、
あるいは、第1及び第2の金型部に取り付けられ、溶融
熱可塑性樹脂導入部が設けられた被覆プレートとを備え
ている。そして、第1の金型部と第2の金型部とを型締
めした状態において、(A)第1の入れ子の第2の入れ
子と対向する面と、第2の入れ子の第1の入れ子と対向
する面との間のクリアランス(C40)を0.03mm以
下(C40≦0.03mm)とし、(B)第1の入れ子の
第2の入れ子と対向する面と、第2の入れ子の第1の入
れ子と対向する面との重なり量(ΔS40)を0.5mm
以上(ΔS40≧0.5mm)とし、(C)第1の入れ子
と被覆プレートとの間のクリアランス(C41)、及び第
2の入れ子と被覆プレートとの間のクリアランス
(C42)を0.03mm以下(C41≦0.03mm且つ
42≦0.03mm)とし、(D)第1の入れ子に対す
る被覆プレートの重なり量(ΔS41)、及び第2の入れ
子に対する被覆プレートの重なり量(ΔS42)を0.5
mm以上(ΔS41≧0.5mm且つΔS42≧0.5m
m)とする。尚、被覆プレートは第1及び第2の入れ子
の一部分とのみ重なり合っている。ここで、このような
構造の金型における溶融熱可塑性樹脂導入部としては、
例えば、サイドゲート構造を挙げることができる。
【0075】通常、成形品を金型から取り足すために突
き出しピンを金型に配設する。ところが、成形品の形状
に依っては突き出しピンの先端の跡が成形品の表面に残
るために、突き出しピンを金型に配設することが困難と
なる場合がある。このような場合、第3又は第4の態様
に係る金型においては、成形品を金型から取り出すため
に、被覆プレートにはキャビティに連通したタブ形成部
が設けられている構造とすることもできる。これによっ
て、成形品にはタブ部が形成される。かかるタブ部に突
き出しピンを当てて、成形品を金型から取り出せばよ
い。尚、成形品に形成されたタブ部は、後の工程で削除
すればよい。
【0076】ここで、キャビティの一部を構成すると
は、成形品の外形を規定するキャビティ面を構成するこ
とを意味する。より具体的には、キャビティは、例え
ば、金型部、第1の金型部あるいは第2の金型部に形成
されたキャビティを構成する面と、入れ子に形成された
キャビティを構成する面と、場合によっては、被覆プレ
ートに形成されたキャビティを構成する面とから構成さ
れている。そして、キャビティを構成する面の一部は、
入れ子から構成される。
【0077】型締め状態において、クリアランス
(C11,C21,C31,C32,C40,C41,C42)を、
0.03mm以下、実用的には、0.001mm以上
0.03mm以下(0.001mm≦C11,C21
31,C32,C40,C41,C42≦0.03mm)、好ま
しくは0.003mm以上0.03mm以下(0.00
3mm≦C11,C21,C31,C32,C40,C41,C42
0.03mm)とする。クリアランスの下限は、入れ子
の外周部に微細なクラックが発生したり、金型温度上昇
時に入れ子が熱膨張することによって、入れ子が金型部
の入れ子被覆部、被覆プレートや他の入れ子と接触し、
入れ子の外周部の微細クラックに応力がかかる結果、入
れ子が破損するといった問題が生じないような値とすれ
ばよい。クリアランス(C11,C21,C31,C32
40,C41,C42)が0.03mmを越えると、溶融樹
脂が、入れ子と被覆プレートの間、入れ子と金型部入れ
子被覆部や被覆プレートとの間、あるいは第1の入れ子
と第2の入れ子との間に侵入し、入れ子にクラックが生
じる場合があるし、成形品にバリが発生したり、金型部
から成形品を取り出す際に入れ子が損傷するといった問
題も生じる虞がある。
【0078】重なり量(ΔS11,ΔS21,ΔS31,ΔS
32,ΔS40,ΔS41,ΔS42)の値が0.1mm未満あ
るいは0.5mm未満の場合、入れ子の外周部に発生し
た微細なクラックと溶融樹脂とが接触する結果、入れ子
に生成したクラックが成長し、入れ子が破損する虞があ
る。
【0079】このような構造の金型によれば、入れ子に
よる断熱効果が大きく、キャビティ内に導入された溶融
熱可塑性樹脂の急冷を抑制することができ、ウエルドマ
ークやフローマーク等の外観不良が発生することを効果
的に防止することができる。しかも、入れ子を、所定の
クリアランスや重なり量の範囲内で入れ子被覆部や被覆
プレートによって被覆することで、成形品端部の外観を
損なうことがなくなり、成形品端部にバリが発生しなく
なり、更には、入れ子外周部に残っている微細なクレー
ズと溶融熱可塑性樹脂が接触しなくなるために入れ子の
破損を防止し得る。
【0080】特にエンジニアリングプラスチックス、ス
ーパーエンジニアリングプラスチックといった耐熱性や
強度に優れる反面、成形性が悪いプラスチックを使用す
る場合、通常、金型温度を80゜C以上として成形を行
なうが、フローマーク等の外観不良が多発している。然
るに、本発明の熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法
においては、金型温度を80゜C以下としても外観特性
が良好な成形品を得ることができる。また、無機繊維や
金属粉末、金属フレークを含有する熱可塑性樹脂を用い
た場合であっても、これらの材料が成形品の表面に析出
する現象が生ぜず、鏡面性等の外観特性に優れた成形品
を得ることができる。これは、キャビティを構成する面
の一部の温度を制御することによって、キャビティ内に
導入されそしてキャビティを構成する面の一部と接した
溶融熱可塑性樹脂の温度を一時的にTg若しくはTc
上、規定温度以下に保持することができる結果、キャビ
ティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の冷却・固化を適
度に遅延することが可能となり、溶融熱可塑性樹脂の流
動性及び転写性を向上できるからである。
【0081】非晶性の熱可塑性樹脂を使用し、且つ、例
えば上述の入れ子を用いる場合、初期の金型温度が低い
場合であっても、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に導
入することでキャビティを構成する面の一部(即ち、入
れ子の表面)の温度が上昇し、またその上昇した温度を
一時的に入れ子は蓄える性質があるために、キャビティ
内への溶融熱可塑性樹脂の導入直後のキャビティを構成
する面の一部(即ち、入れ子の表面)と接する溶融熱可
塑性樹脂の温度をTg以上に保つことができる。その結
果、成形品に成形不良が発生することを効果的に防止す
ることができる。また、一時的に入れ子に蓄えられた熱
は、次第に金型に奪われるために、キャビティ内の熱可
塑性樹脂の温度は次第にTg以下となる。そして、キャ
ビティ内の熱可塑性樹脂の冷却後、金型の型開きを行
い、成形品が得られる。それ故、成形サイクルも極端に
延長されず、しかも、特別な装置が必要とされないとい
った利点がある。
【0082】非晶性の熱可塑性樹脂を使用し、且つ、例
えば上述の入れ子を用いる場合、キャビティを構成する
面の一部(即ち、入れ子)の温度Tは、以下に一例を示
すような温度履歴を辿る。即ち、非晶性の熱可塑性樹脂
(例えば、Tgが150゜C)を用い、溶融した熱可塑
性樹脂の温度を300゜C、溶融熱可塑性樹脂のキャビ
ティ内への導入前の温度TをTg−50゜C(=100
゜C)の条件とする。この場合、射出成形機から溶融熱
可塑性樹脂をキャビティ内に導入したとき、金型内に組
み込んだ温度センサーによって温度Tを測定すると、瞬
時に約280゜Cまで達する。そして、キャビティ内の
熱可塑性樹脂の冷却が次第に進み、溶融熱可塑性樹脂が
キャビティを構成する面の一部(入れ子)と接触を開始
してから2秒後には、温度Tは180゜C程度となる。
その後、更に熱可塑性樹脂の冷却が進み、溶融熱可塑性
樹脂導入前の金型温度まで冷却される。このように、溶
融熱可塑性樹脂がキャビティを構成する面の一部(入れ
子)と接触を開始してから2秒後の温度TがTg以上で
保持されることによって、溶融熱可塑性樹脂の急冷が防
止されるため、成形品の成形不良発生防止及び性能向上
を達成することができる。
【0083】尚、通常の炭素鋼から作製された金型を用
い、金型のキャビティ面の温度を制御することなく、同
じ条件で成形した場合、キャビティ内への溶融熱可塑性
樹脂の導入直後には金型のキャビティ面の温度は300
゜C付近まで上昇するが、0.1秒未満でTg以下まで
溶融熱可塑性樹脂は冷却され、数秒後には金型温度まで
冷却されてしまう。そのため、成形品には成形不良や性
能低下が発生する。
【0084】また、例えば、結晶性の熱可塑性樹脂とし
てポリオキシメチレン樹脂を用いた場合、炭素鋼から作
製された金型を用いて、金型温度100゜Cにて成形し
た成形品においては、表面に約50μmの非晶質のスキ
ン層が生成するのに対し、本発明の熱可塑性樹脂から成
る成形品の製造方法においては、同じ金型温度であって
も成形品にスキン層が全く生成せず、成形品の摩擦摩耗
特性及び耐候性が飛躍的に向上した。あるいは又、ポリ
マーアロイ材料を用い、炭素鋼から作製された金型を用
いて、金型温度80゜Cにて成形を行った場合、成形品
表面には光沢不良が発生していたのに対し、本発明の中
から成る成形品の製造方法においては、同じ金型温度で
あっても成形品表面は極めて優れた光沢性を有してい
た。
【0085】即ち、結晶性の熱可塑性樹脂を使用し、且
つ、例えば上述の入れ子を用いる場合、入れ子に一時的
に蓄えられた熱によって、キャビティ内への溶融熱可塑
性樹脂の導入直後のキャビティを構成する面の一部(即
ち、入れ子の表面)と接する溶融熱可塑性樹脂の温度を
c以上に保つことができるために、結晶の発達が著し
く、またスキン層が発達し難いため溶融熱可塑性樹脂の
流動性も向上し、薄肉の成形品の成形を容易に行うこと
が可能となるし、成形不良の発生を防止することができ
る。
【0086】しかも、溶融熱可塑性樹脂の流動性が向上
するが故に、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入
圧力を低く設定できる結果、成形品に残留する応力を緩
和できる。それ故、高い品質の成形品を成形することが
可能となる。また、例えば導入圧力を低減できるため
に、金型の薄肉化、成形装置の小型化が可能となり、成
形品のコストダウンも可能になる。
【0087】尚、キャビティを構成する面の一部を、4
×10-2cal/cm・sec・deg以上の熱伝導率
を有する、炭素鋼等の上述の金属若しくは合金から作製
し、しかも、キャビティを構成する面の一部の温度T
(゜C)を、加圧水蒸気等を用いて制御することによっ
ても、入れ子を用いる場合と同様に、キャビティ内への
溶融熱可塑性樹脂の導入直後のキャビティを構成する面
の一部と接する溶融熱可塑性樹脂の温度を制御すること
ができる結果、入れ子を用いる場合と同様の作用、効果
を得ることができる。
【0088】ここで、キャビティを構成する面の一部を
入れ子から構成すれば、かかる入れ子は、低熱膨張率を
有する材料から作製されており、しかも、金型とは独立
して作製され、金型に配設されるので、入れ子による断
熱効果が大きいばかりか、入れ子の保守が容易である。
入れ子を結晶化ガラスから作製すれば、線膨張係数が低
く、熱衝撃に対しても強く、破損やクラックが発生し難
い入れ子を作製することができる。
【0089】更には、成形品の成形時、キャビティの容
積を可変とし得る構造を有する金型を用いれば、成形品
の表面を均一に圧縮することが可能となることから、成
形品の表面にヒケが発生することを抑制することができ
る。あるいは又、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂中に
加圧流体を注入すれば、キャビティ内の樹脂はキャビテ
ィ面に向かって加圧される。その結果、成形品にヒケが
発生することを確実に防止し得る。しかも、入れ子と接
触する溶融樹脂の冷却・固化が適度に遅延されるので、
入れ子のキャビティ面近傍の固化し始めた樹脂の部分と
内部の樹脂とが相互に混じり合うといった現象の発生を
回避することができ、肉厚部近傍の成形品表面に色ムラ
や外観不良が発生することを防止し得る。
【0090】
【実施例】以下、図面を参照して、実施例に基づき本発
明を説明する。
【0091】(実施例1)実施例1は、本発明の第1若
しくは第2の態様に係る熱可塑性樹脂から成る成形品の
製造方法に関する。実施例1においては、キャビティを
構成する面(キャビティ面)の一部を、ジルコニア(Z
rO2)から成る入れ子から構成した。実施例1にて使
用した金型を、図1の(A)に模式的な一部端面図で示
す。
【0092】この金型は、(イ)熱可塑性樹脂に基づき
成形品を成形するための第1の金型部10及び第2の金
型部11、(ロ)第1の金型部10に配設され、キャビ
ティ13を構成する面の一部を構成し、厚さが0.1m
m乃至10mm(実施例1においては3.00mm厚)
の入れ子16、及び、(ハ)第2の金型部11に設けら
れた溶融熱可塑性樹脂導入部12を備え、そして、第2
の金型部11には、入れ子被覆部15が設けられてお
り、第1の金型部10と第2の金型部11とを型締めし
た状態において、(A)入れ子16と入れ子被覆部15
との間のクリアランス(C11)を0.03mm以下(C
11≦0.03mm)とし、(B)入れ子16に対する入
れ子被覆部15の重なり量(ΔS11)を0.5mm以上
(ΔS11≧0.5mm)とする構造の金型(第2の態様
に係る熱可塑性樹脂成形用の金型)である。尚、このよ
うな構造の金型部における入れ子被覆部15の構造は、
入れ子16と対向する第2の金型部11の面に設けられ
た一種の切り込み(切り欠き)14とすることができ
る。金型を型締めしたときの模式的な端面図を図1の
(A)に示し、型開きしたときの模式的な端面図を図2
に示す。また、組み立て中の金型の模式的な端面図を、
図1の(B)及び(C)に示す。
【0093】実施例1の金型におけるキャビティ13の
大きさは100mm×100mm×2mmであり、形状
は直方体である。実施例1においては、入れ子16をジ
ルコニア(ZrO2)から研削加工にて作製し、厚さを
3.00mmとした。入れ子16のキャビティを構成す
る面(キャビティ面)16Aに対して、ダイヤモンド砥
石を用いた研磨及び仕上げを行ない、入れ子16のキャ
ビティ面16Aの表面粗さRmaxを0.02μmとし
た。また、入れ子16に温度センサー挿入用の直径0.
6mmの穴を設けた。使用したジルコニアの熱伝導率
は、0.8×10-2cal/cm・sec・degであ
る。
【0094】第1の金型部(可動金型部)10を炭素鋼
S55Cから作製した。第1の金型部10に入れ子16
のための入れ子装着部10A(寸法:100.02mm
×100.02mm×3.02mm)を切削加工して設
ける(図1の(B)参照)。そして、入れ子16をシリ
コン系接着剤(図示せず)を用いて入れ子装着部10A
内に接着する(図1の(C)参照)。隙間ゲージを用い
て入れ子16と入れ子装着部10Aとの間のクリアラン
ス(D)を測定したところ、最低クリアランスは0.0
5mmであった。次いで、温度センサー17を入れ子装
着部を介して入れ子16に設けた穴に挿入し、温度セン
サー17と穴の隙間を電熱セメントで埋めた。
【0095】一方、第2の金型部(固定金型部)11を
炭素鋼S55Cから作製した。第2の金型部(固定金型
部)11の中央に直径5mmのダイレクトゲートから成
る溶融熱可塑性樹脂導入部(ゲート部)12を設けた。
また、第2の金型部11にキャビティ13まで一端部が
延びる圧力伝達ピン18を取り付け、かかる圧力伝達ピ
ン18の他端部に圧力センサー19を取り付け、キャビ
ティ13内に導入(射出)された溶融熱可塑性樹脂の状
態を確認できるようにした。尚、図1の(B)及び
(C)並びに図2においては、温度センサー17、入れ
子16に設けられた穴、圧力伝達ピン18及び圧力セン
サー19の図示を省略した。
【0096】このように作製した第1の金型部(可動金
型部)10及び第2の金型部(固定金型部)11を組み
付けて金型を得ることができる。この金型において、入
れ子16と入れ子被覆部15との間のクリアランス(C
11)、及び、入れ子16に対する入れ子被覆部15の重
なり量(ΔS11)は、それぞれ、C11=0.02mm、
ΔS11=1.0mmであった。これによって、入れ子1
6の端部とキャビティ13に導入された溶融樹脂との間
には接触がない構造となる。
【0097】成形装置として日精樹脂工業株式会社製、
PS−80射出成形機を用いた。また、熱可塑性樹脂と
して、ガラス繊維添加の非晶性の熱可塑性樹脂であるポ
リカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチッ
クス株式会社製、GS2020MKR、ガラス繊維20
重量%添加、Tg=145゜C)を用いた。ガラス繊維
の平均長さは200μmであり、平均直径は13μmで
あった。成形条件を以下の表11のとおりとした。即
ち、キャビティを構成する面の一部(入れ子16)の温
度T(゜C)を、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ13内
への導入前に、Tg−100≦T(=Tg−45)≦Tg
+100、あるいは、Tg−70≦T(=Tg−45)≦
g−10を満足するように制御した。
【0098】
【表11】 金型温度 :100゜C(=T) 溶融熱可塑性樹脂温度:310゜C 射出圧力 :800kgf/cm2−G
【0099】そして、所定量の溶融熱可塑性樹脂をゲー
ト部12を介してキャビティ13内に導入(射出)し
た。その結果、金型に配設した圧力センサー19が反応
し、溶融熱可塑性樹脂がキャビティ13内に導入された
ことが確認された。圧力センサー19が反応した時間よ
り1秒後の入れ子16のキャビティ面16Aの温度Tを
測定したところ、165゜C(Tg+20゜C)であっ
た。即ち、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ13内への導
入直後には、Tg≦T(=Tg+20)≦Tg+180、
あるいは、Tg≦T(=Tg+20)≦Tg+50に制御
されていた。尚、圧力センサー19が反応した時間より
1秒後は、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ13内への導
入動作を開始してから1.2秒後と等しい。
【0100】キャビティ13内への溶融熱可塑性樹脂の
導入完了後、キャビティ13内の熱可塑性樹脂は次第に
冷却され、導入完了から20秒を経た後の入れ子16の
キャビティ面16Aの温度Tは100゜Cで安定してい
ることを確認した後、金型を型開きし、次いで、金型か
ら成形品を取り出した。即ち、金型から成形品を取り出
す前には、T(=Tg−45)≦Tg−10に制御されて
いた。
【0101】溶融熱可塑性樹脂がキャビティを構成する
面の一部(入れ子16)との接触を開始してから1秒間
経過したときのキャビティを構成する面の一部(入れ子
16)の温度T(゜C)をTg以上の温度に制御し、且
つ、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入動作を開
始してから1.2秒間経過したときのキャビティを構成
する面の一部(入れ子16)の温度T(゜C)をTg
上の温度に制御し、しかも、温度Tを規定の温度以下に
制御したが故に、成形品の表面にはその端部に至るまで
ガラス繊維の析出が無く、成形品は転写性に優れ、高い
鏡面性を有していた。
【0102】(実施例2)実施例2も、本発明の第1若
しくは第2の態様に係る熱可塑性樹脂から成る成形品の
製造方法に関する。実施例2においては、実施例1の金
型及び射出成形機を用いた。また、熱可塑性樹脂とし
て、ポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレー
ト樹脂から成るポリマーアロイ材料(重量比率7:3)
(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製:ユ
ーピロンMB4303)を用いた。尚、ポリカーボネー
ト樹脂のTgは145゜Cである。成形条件を、以下の
表12のとおりとした。ここで、使用したポリマーアロ
イ材料は非晶性の熱可塑性樹脂であるポリカーボネート
樹脂の重量比率が多いため、ポリマーアロイ材料の物性
としてガラス転移温度Tgを用いた。即ち、溶融熱可塑
性樹脂のキャビティ13内への導入前には、キャビティ
を構成する面の一部(入れ子16)の温度T(゜C)
を、Tg−100≦T(=Tg−65)≦Tg+100、
あるいは、Tg−70≦T(=Tg−65)≦Tg−10
を満足するように制御した。
【0103】
【表12】 金型温度 :80゜C(=T) 溶融熱可塑性樹脂温度:280゜C 射出圧力 :700kgf/cm2−G
【0104】所定量の溶融熱可塑性樹脂をゲート部12
を介してキャビティ13内に導入(射出)した。その結
果、金型に配設した圧力センサー19が反応し、溶融熱
可塑性樹脂がキャビティ13内に導入されたことが確認
された。圧力センサー19が反応した時間より1秒後の
入れ子16のキャビティ面16Aの温度を測定したとこ
ろ150゜C(Tg+5゜C)であった。即ち、溶融熱
可塑性樹脂のキャビティ13内への導入直後には、Tg
≦T(=Tg+5)≦Tg+180、あるいは、Tg≦T
(=Tg+5)≦Tg+50に制御されていた。尚、圧力
センサー19が反応した時間より1秒後は、溶融熱可塑
性樹脂のキャビティ13内への導入動作を開始してから
1.1秒後と等しい。
【0105】キャビティ13内への溶融熱可塑性樹脂の
導入完了後、キャビティ13内の熱可塑性樹脂は次第に
冷却され、導入完了から20秒を経た後の入れ子16の
キャビティ面16Aの温度Tは80゜Cで安定している
ことを確認した後、金型を型開きし、次いで、金型から
成形品を取り出した。即ち、金型から成形品を取り出す
前には、T(=Tg−65)≦Tg−10に制御されてい
た。
【0106】溶融熱可塑性樹脂がキャビティを構成する
面の一部(入れ子16)との接触を開始してから1秒間
経過したときのキャビティを構成する面の一部(入れ子
16)の温度T(゜C)をTg以上の温度に制御し、且
つ、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入動作を開
始してから1.1秒間経過したときのキャビティを構成
する面の一部(入れ子16)の温度T(゜C)をTg
上の温度に制御し、しかも、温度Tを規定の温度以下に
制御したが故に、成形品にはポリマーアロイ材料特有の
曇りや色ムラも無く、成形品はその端部に至るまで転写
性に優れ、高い鏡面性を有していた。
【0107】(実施例3)実施例3は、本発明の第3の
態様に係る熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法に関
する。実施例3においては、キャビティを構成する面の
一部を、銅製のブロックとした。実施例3にて使用した
金型を、図3に模式的な一部端面図で示す。
【0108】実施例3の金型におけるキャビティ23の
大きさは100mm×100mm×2mmであり、形状
は直方体である。実施例3においては、ブロック26を
銅から研削加工にて作製し、その大きさを100mm×
100mm×20mmとした。そして、ブロック26に
媒体用流路25を設けるために、3カ所に配管穴を設け
た。次いで、ブロック26のキャビティ面26Aに対し
て、スパッタリング処理にて厚さ15μmのTiNから
成る薄膜層26Bを形成した。そして、ダイヤモンド砥
石を用いた研磨及び仕上げを行ない、ブロック26のキ
ャビティ面26Aの表面粗さRmaxを0.02μmとし
た。また、ブロック26に温度センサー挿入用の直径
0.6mmの穴を設けた。使用した銅の熱伝導率は90
×10-2cal/cm・sec・degである。
【0109】固定金型部20を炭素鋼S55Cから作製
した。そして、ブロック26を金型内に組み付け、温度
センサー27をブロック26に設けた穴に挿入し、温度
センサー27と穴の隙間を電熱セメントで埋めた。
【0110】一方、可動金型部21を炭素鋼S55Cか
ら作製した。可動金型部21にキャビティ23まで一端
部が延びる圧力伝達ピン28を取り付け、かかる圧力伝
達ピン28の他端部に圧力センサー29を取り付け、キ
ャビティ23内に導入された溶融熱可塑性樹脂の状態を
確認できるようにした。
【0111】成形装置としてアイダエンジニアリング株
式会社製、MAX−100射出成形機を用いた。また、
熱可塑性樹脂として、結晶性の熱可塑性樹脂であるポリ
アセタール樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス
株式会社製、F20−03、Tc=154゜C、Tm=1
65゜C)を用いた。
【0112】ブロック26の表面温度が160゜C(=
c+6゜C)となるように高圧蒸気を温調機(図示せ
ず)から媒体用流路25に導入した。即ち、キャビティ
を構成する面の一部(ブロック26)の温度T(゜C)
を、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ23内への導入前に
は、Tc−150≦T(=160=Tc+6)≦Tm(=
165)に制御した。
【0113】成形条件を以下の表13のとおりとした。
所定量の溶融熱可塑性樹脂をゲート部22を介してキャ
ビティ23内に導入した。その結果、金型に配設した圧
力センサー29が反応し、溶融熱可塑性樹脂がキャビテ
ィ23内に導入されたことが確認された。圧力センサー
29が反応した時間より1秒後のブロック26のキャビ
ティ面26Aの温度Tを測定したところ156゜C(=
c+2゜C)であった。即ち、溶融熱可塑性樹脂のキ
ャビティ内への導入直後には、Tc≦T(=Tc+2)≦
mに制御されていた。次いで、圧力センサー29の反
応時間より2秒後に温調機から20゜Cの水を媒体用流
路25に導入してブロック26の冷却を開始した。その
結果、キャビティ23内の熱可塑性樹脂は次第に冷却さ
れ、冷却時間20秒後にブロック26のキャビティ面2
6Aの温度は40゜C(=Tc−114゜C)となっ
た。即ち、金型から成形品を取り出す前には、T(=T
c−114)≦Tc−10に制御されていた。その後、金
型を型開きし、次いで、金型から成形品を取り出した。
【0114】
【表13】 溶融熱可塑性樹脂温度:190゜C 射出圧力 :500kgf/cm2−G
【0115】溶融熱可塑性樹脂がキャビティを構成する
面の一部(ブロック26)との接触を開始してから2秒
間経過したときのキャビティを構成する面の一部(ブロ
ック26)の温度T(゜C)をTc以上の温度に制御
し、且つ、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入動
作を開始してから2.5秒間経過したときのキャビティ
を構成する面の一部(ブロック26)の温度T(゜C)
をTc以上の温度に制御し、しかも、温度Tを規定の温
度以下に制御したが故に、偏光顕微鏡で断面を観察する
と成形品表面まで結晶が生成していた。また、成形品は
その端部に至るまで転写性に優れ、高い鏡面性を有して
いた。
【0116】(実施例4)実施例4は、本発明の第4の
態様に係る熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法に関
する。実施例4においても、実施例1の金型及び射出成
形機を用いた。また、熱可塑性樹脂としてポリアミド系
樹脂[三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
製:PA−MXD6 1002H(ガラス繊維30重量
%添加)]を用いた。尚、使用したポリアミド系樹脂の
結晶化開始温度Tcは203゜Cであり、融点Tmは23
7゜Cである。成形条件を、以下の表14のとおりとし
た。尚、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ13内への導入
前には、キャビティを構成する面の一部(入れ子16)
の温度T(゜C)を、Tc−120≦T(=140)≦
c−10を満足するように制御した。
【0117】
【表14】 金型温度 :140゜C(=T) 溶融熱可塑性樹脂温度:280゜C 射出圧力 :600kgf/cm2−G
【0118】所定量の溶融熱可塑性樹脂をゲート部12
を介してキャビティ13内に導入(射出)した。その結
果、金型に配設した圧力センサー19が反応し、溶融熱
可塑性樹脂がキャビティ13内に導入されたことが確認
された。圧力センサー19が反応した時間より1秒後の
入れ子16のキャビティ面16Aの温度を測定したとこ
ろ208゜C(Tc+5゜C)であった。即ち、溶融熱
可塑性樹脂のキャビティ13内への導入直後には、Tc
≦T(=Tc+5)≦Tc+30に制御されていた。尚、
圧力センサー19が反応した時間より1秒後は、溶融熱
可塑性樹脂のキャビティ13内への導入動作を開始して
から1.2秒後と等しい。
【0119】キャビティ13内への溶融熱可塑性樹脂の
導入完了後、キャビティ13内の熱可塑性樹脂は次第に
冷却され、導入完了から20秒を経た後の入れ子16の
キャビティ面16Aの温度Tは140゜Cで安定してい
ることを確認した後、金型を型開きし、次いで、金型か
ら成形品を取り出した。即ち、金型から成形品を取り出
す前には、T(=Tc−63)≦Tc−10に制御されて
いた。
【0120】溶融熱可塑性樹脂がキャビティを構成する
面の一部(入れ子16)との接触を開始してから1秒間
経過したときのキャビティを構成する面の一部(入れ子
16)の温度T(゜C)をTc以上の温度に制御し、且
つ、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入動作を開
始してから1.2秒間経過したときのキャビティを構成
する面の一部(入れ子16)の温度T(゜C)をTc
上の温度に制御し、しかも、温度Tを規定の温度以下に
制御したが故に、偏光顕微鏡で断面を観察すると成形品
表面まで結晶が生成していた。また、成形品はその端部
に至るまで転写性に優れ、高い鏡面性を有していた。
【0121】(比較例1)実施例3の金型及び射出成形
機を用いて成形を行った。また、熱可塑性樹脂として、
実施例1で使用した非晶性の熱可塑性樹脂のガラス繊維
強化ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラ
スチックス株式会社製、GS2020MKR、ガラス繊
維20重量%添加、Tg145゜C)を用いた。成形条
件を、以下の表15のとおりとした。尚、比較例1にお
いては、実施例3と異なり、ブロック26の温度制御は
行わなかった。
【0122】
【表15】 金型温度 :100゜C(T=Tg−45) 溶融熱可塑性樹脂温度:310゜C 射出圧力 :800kgf/cm2−G
【0123】所定量の溶融熱可塑性樹脂をゲート部22
を介してキャビティ23内に導入(射出)した。その結
果、キャビティ23内に配設した圧力センサー29が反
応し、溶融熱可塑性樹脂がキャビティ23内に導入され
たことが確認された。圧力センサー29が反応した時間
より0.1秒後のブロック26のキャビティ面26Aの
温度を測定したところ120゜C(T=Tg−40)で
あった。即ち、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導
入直後に、Tg≦T≦Tg+180、あるいは、Tg≦T
≦Tg+50を満足していなかった。冷却時間20秒後
にキャビティ面26Aの温度が100゜C(Tg−45
゜C)で安定していることを確認した後、金型を型開き
し、次いで、金型から成形品を取り出した。
【0124】溶融熱可塑性樹脂がキャビティを構成する
面の一部(ブロック26)との接触を開始してから少な
くとも0.1秒間以上、キャビティを構成する面の一部
(ブロック26)の温度T(゜C)をTc以上の温度に
制御することができなかったため、成形品の表面には、
成形品端部に至るまでガラス繊維が析出しており、更に
は、ジェッティングやフローマーク等の成形不良が発生
しており、成形品は醜い外観であった。
【0125】(比較例2)比較例2においては、比較例
1と同様に実施例3の金型及び射出成型機を用いて成形
を行った。尚、比較例2においても、実施例3と異な
り、ブロック26の温度制御は行わなかった。熱可塑性
樹脂として、実施例2で使用したポリカーボネート樹脂
とポリプチレンテレフタレート樹脂から成るポリマーア
ロイ材料(重量比率7:3)(三菱エンジニアリングプ
ラスチックス株式会社製:ユーピロンMB4303)を
用いた。尚、ポリカーボネート樹脂のTgは145゜C
である。成形条件を、実施例2と同様に表12に示した
条件とした。そして、所定量の溶融熱可塑性樹脂をゲー
ト部22を介してキャビティ23内に導入(射出)し
た。その結果、キャビティ23内に配設した圧力センサ
ー29が反応し、溶融熱可塑性樹脂がキャビティ23内
に導入されたことが確認された。圧力センサー29が反
応した時間より0.1秒後のブロック26のキャビティ
面26Aの温度を測定したところ90゜C(T=Tg
55)であった。即ち、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ
内への導入直後に、Tg≦T≦Tg+180、あるいは、
g≦T≦Tg+50を満足していなかった。冷却時間2
0秒後にキャビティ面26Aの温度が80゜C(Tg
65゜C)で安定していることを確認した後、金型を型
開きし、次いで、金型から成形品を取り出した。
【0126】溶融熱可塑性樹脂がキャビティを構成する
面の一部(ブロック26)との接触を開始してから少な
くとも0.1秒間以上、キャビティを構成する面の一部
(ブロック26)の温度T(゜C)をTc以上の温度に
制御することができなかったため、成形品の表面には、
ポリマーアロイ材料特有の曇りや色ムラが発生してお
り、更には、ジェッティングやフローマーク等の成形不
良が発生しており、成形品は醜い外観であった。
【0127】(比較例3)比較例3においては、比較例
1と同様に実施例3の金型及び射出成形機を用いて成形
を行った。尚、比較例3においても、実施例3と異な
り、ブロック26の温度制御は行わなかった。熱可塑性
樹脂として、実施例3で用いた結晶性の熱可塑性樹脂で
あるポリアセタール樹脂(三菱エンジニアリングプラス
チックス株式会社製、F20−03、Tc154゜C、
m165゜C)を用いた。成形条件を以下の表16の
とおりとした。所定量の溶融熱可塑性樹脂をゲート部2
2を介してキャビティ23内に導入した。その結果、キ
ャビティ23内に配設した圧力センサー29が反応し、
溶融熱可塑性樹脂がキャビティ23内に導入されたこと
が確認された。圧力センサー29が反応した時間より
0.1秒後のブロック26のキャビティ面26Aの温度
を測定したところ85゜C(T=Tc−79゜C)であ
った。即ち、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入
直後に、Tc≦T≦Tmを満足していなかった。キャビテ
ィ23内の熱可塑性樹脂は次第に冷却され、冷却時間2
0秒後にブロック26のキャビティ面26Aの温度が8
0゜C(T=Tc−74゜C)で安定していることを確
認した後、金型を型開きし、次いで、金型から成形品を
取り出した。
【0128】
【表16】 金型温度 :80゜C(T=Tc−74) 溶融熱可塑性樹脂温度:190゜C 射出圧力 :700kgf/cm2−G
【0129】溶融熱可塑性樹脂がキャビティを構成する
面の一部(ブロック26)との接触を開始してから少な
くとも0.1秒間以上、キャビティを構成する面の一部
(ブロック26)の温度T(゜C)をTc以上の温度に
制御することができなかったため、成形品の断面を偏光
顕微鏡で観察すると、成形品表面には結晶が生成してい
なかった。また、ジェッティングやフローマーク等の成
形不良が発生しており、成形品は醜い外観であった。
【0130】以上、本発明を好ましい実施例に基づき説
明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例にて説明した金型の構造、使用した熱可塑性樹
脂、射出成形条件は例示であり、適宜変更することがで
きる。
【0131】例えば、図4の(A)に模式的な一部端面
図を示す構造の金型を用いることもできる。この金型
(第1の態様に係る熱可塑性樹脂成形用の金型)は、
(イ)熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形するための金
型部(固定金型部30及び可動金型部31)と、(ロ)
金型部の内部に配設され、キャビティ33を構成する面
の一部を構成し、厚さが0.1mm乃至10mmの入れ
子36と、(ハ)金型部の内部に配設され、キャビティ
33を構成する面の一部を構成し、入れ子36の端部を
被覆する被覆プレート34とから成る。そして、入れ子
36と被覆プレート34との間のクリアランス(C21
を、0.03mm以下(C21≦0.03mm)とし、且
つ、入れ子36に対する被覆プレート34の重なり量
(ΔS21)を0.1mm以上(ΔS21≧0.1mm)、
好ましくは0.5mm以上(ΔS21≧0.5mm)とす
る。尚、図4の(A)に示した金型の組み立て中の模式
的な端面図を、図4の(B)及び(C)に示す。
【0132】例えば、入れ子36は石英ガラスから研削
加工にて作製することができる。そして、入れ子36の
キャビティ面36Aに対して、ダイヤモンド砥石及び酸
化セリウム砥石を用いた研磨及び仕上げを行ない、入れ
子36のキャビティ面36Aの表面粗さRmaxを0.0
2μmとする。入れ子36を構成する石英ガラスの熱伝
導率は0.32×10-2cal/cm・sec・deg
であり、線膨張係数は0.58×10-6/degであ
る。
【0133】固定金型部30は炭素鋼S55Cから作製
することができる。炭素鋼S55Cを切削加工して、入
れ子装着部30Aを設ける。次いで、入れ子36を、2
液硬化型エポキシ系接着剤(図示せず)を用いて、入れ
子装着部30A内に仮り止めする(図4の(B)参
照)。尚、仮り止め後、隙間ゲージを用いて入れ子36
と入れ子装着部30Aのクリアランス(D)を測定し、
最低クリアランスが0.005mm以上となるように、
入れ子装着部30Aの切削加工を行うことが好ましい。
一方、可動金型部31は炭素鋼S55Cから作製するこ
とができる。
【0134】炭素鋼S55Cから被覆プレート34を作
製することができる。被覆プレート34を切削加工した
後、固定金型部30にビス(図示せず)を用いて固定す
る(図4の(C)参照)。尚、図4の(C)にはゲート
部の図示を省略した。入れ子36と被覆プレート34と
の間のクリアランス(C21)が0.03mm以下となる
ように、また、入れ子36に対する被覆プレート34の
重なり量(ΔS21)が0.1mm以上となるように、被
覆プレート34を切削加工する。
【0135】あるいは又、金型の模式的な一部端面図を
図5の(A)に示すように、成形すべき成形品の形状に
依り、曲面を有する入れ子36を用いることもできる。
この場合には、固定金型部30を炭素鋼S55Cから作
製し、入れ子装着部30Aの切削加工を行い、固定金型
部30に設けられた入れ子装着部30Aの底部の曲率半
径を、入れ子装着部と対向する入れ子36の裏面(キャ
ビティ面と反対の面)の曲率半径に合わせることが好ま
しい。被覆プレート34は炭素鋼S55Cから作製する
ことができる。被覆プレート34の入れ子36に対向す
る面の曲率半径を入れ子36のキャビティ面の曲率半径
と一致させることが好ましい。被覆プレート34を切削
加工した後、固定金型部30にビス(図示せず)を用い
て固定することができる。また、可動金型部31は炭素
鋼S55Cから作製すればよい。あるいは又、図5の
(B)に模式的な一部端面図を示すように、入れ子36
を装着する固定金型部30の部分を、固定金型部30に
装着された入れ子装着用中子30Bから構成することも
できる。この場合、入れ子装着用中子30Bに入れ子装
着部を設ける。
【0136】あるいは又、図6に模式的な端面図を示す
ように、(イ)熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形する
ための第1の金型部40及び第2の金型部45、(ロ)
第1の金型部40に配設され、キャビティ44を構成す
る面の一部を構成し、厚さが0.1mm乃至10mmの
入れ子48、及び、(ハ)入れ子48と第2の金型部4
5との間に配設され、第1の金型部40に取り付けら
れ、溶融熱可塑性樹脂導入部42が設けられた被覆プレ
ート41を備え、第2の金型部45には、入れ子被覆部
47が設けられており、第1の金型部40と第2の金型
部45とを型締めした状態において、(A)入れ子48
と入れ子被覆部47との間のクリアランス(C31)を
0.03mm以下(C31≦0.03mm)とし、(B)
入れ子48に対する入れ子被覆部47の重なり量(ΔS
31)を0.5mm以上(ΔS31≧0.5mm)とし、
(C)入れ子48と被覆プレート41との間のクリアラ
ンス(C32)を0.03mm以下(C32≦0.03m
m)とし、(D)入れ子48に対する被覆プレート41
の重なり量(ΔS32)を0.5mm以上(ΔS32≧0.
5mm)とした構造を有する金型(第3の態様に係る熱
可塑性樹脂成形用の金型)を用いることもできる。尚、
図6の(A)及び(B)に示すように、被覆プレート4
1は入れ子48の一部分とのみ重なり合っている。入れ
子被覆部47は、入れ子48のキャビティ面49と対向
する第2の金型部45の面に設けられた一種の切り込み
(切り欠き)46である。ここで、このような構造の金
型における溶融熱可塑性樹脂導入部42としては、例え
ば、ダイレクトゲート構造を挙げることができる。
【0137】尚、金型を型締めしたときの模式的な端面
図を図6の(A)及び(B)に示し、型開きしたときの
模式的な端面図を図8に示す。また、組み立て中の金型
の模式的な端面図を、図7の(A)、(B)及び(C)
に示す。尚、図6の(A)、図7の(A)〜(C)及び
図8は、垂直面で被覆プレート41を含む金型の領域を
切断したときの図であり、図6の(B)はかかる垂直面
と平行な垂直面で被覆プレート41を含まない金型の領
域を切断したときの図である。
【0138】第1の金型部(固定金型部)40は炭素鋼
S55Cから作製することができる。そして、切削加工
を行い、入れ子48のための入れ子装着部40Aを設け
(図7の(A)参照)、次いで、入れ子48をシリコン
系接着剤(図示せず)を用いて入れ子装着部40A内に
接着する(図7の(B)参照)。隙間ゲージを用いて入
れ子48と入れ子装着部40Aとの間のクリアランス
(D)を測定し、最低クリアランスが0.005mm以
上となるように、入れ子装着部40Aの切削加工を行う
ことが好ましい。一方、第2の金型部(可動金型部)4
5は炭素鋼S55Cから作製することができる。
【0139】炭素鋼にて被覆プレート41を作製するこ
とができる。そして、所定位置にボルト(図示せず)に
て第1の金型部40に取り付ける(図7の(C)参
照)。尚、被覆プレート41には溶融熱可塑性樹脂導入
部(ゲート部)42を設ける。被覆プレート41の入れ
子と対向する面43と、入れ子48との間のクリアラン
ス(C32)、及び、入れ子48に対する被覆プレート4
1の重なり量(ΔS32)のそれぞれが、C32≦0.03
mm及びΔS32≧0.5mmを満足するように、被覆プ
レート41の加工を行う。
【0140】このように作製した第1の金型部(固定金
型部)40及び第2の金型部(可動金型部)45を組み
付けて金型を得ることができる。この金型において、入
れ子48と入れ子被覆部47との間のクリアランス(C
31)、及び、入れ子48に対する入れ子被覆部47の重
なり量(ΔS31)のそれぞれが、C31≦0.03mm及
びΔS31≧0.5mmを満足するように、入れ子被覆部
47の加工を行う。こうして、入れ子48の端部とキャ
ビティ44に導入された溶融樹脂との間には接触が無い
構造とすることができる。
【0141】あるいは又、図9に模式的な端面図を示す
ように、(イ)熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形する
ための第1の金型部50及び第2の金型部55、(ロ)
第1の金型部50に配設され、キャビティを構成する面
の一部を構成し、厚さが0.1mm乃至10mmの第1
の入れ子54、(ハ)第2の金型部55に配設され、キ
ャビティを構成する面の一部を構成し、厚さが0.1m
m乃至10mmの第2の入れ子59、及び、(ニ)第1
の入れ子54と第2の入れ子59との間に配設され、第
1の金型部50、第2の金型部55、あるいは、第1及
び第2の金型部50,55に取り付けられ、溶融熱可塑
性樹脂導入部60が設けられた被覆プレート52,57
を備え、そして、第1の金型部50と第2の金型部55
とを型締めした状態において、(A)第1の入れ子54
の第2の入れ子と対向する面54Aと、第2の入れ子5
9の第1の入れ子と対向する面59Dとの間のクリアラ
ンス(C40)を0.03mm以下(C40≦0.03m
m)とし、(B)第1の入れ子54の第2の入れ子と対
向する面54Aと、第2の入れ子59の第1の入れ子と
対向する面59Dとの重なり量(ΔS40)を0.5mm
以上(ΔS40≧0.5mm)とし、(C)第1の入れ子
54と被覆プレート52との間のクリアランス
(C41)、及び第2の入れ子59と被覆プレート57と
の間のクリアランス(C42)を0.03mm以下(C41
≦0.03mm且つC42≦0.03mm)とし、(D)
第1の入れ子54に対する被覆プレート52の重なり量
(ΔS41)、及び第2の入れ子59に対する被覆プレー
ト57の重なり量(ΔS42)を0.5mm以上(ΔS41
≧0.5mm且つΔS42≧0.5mm)とした金型(第
4の態様に係る熱可塑性樹脂成形用の金型)を用いるこ
ともできる。尚、被覆プレート52,57は第1及び第
2の入れ子54,59の一部分とのみ重なり合ってい
る。ここで、このような構造の金型における溶融熱可塑
性樹脂導入部60としては、例えば、サイドゲート構造
を挙げることができる。ここで、参照番号61はキャビ
ティである。
【0142】尚、組み立て中の金型の模式的な端面図
を、図10〜図12に示す。ここで、図9の(A)、図
10の(A),(C)、図11の(A),(C)及び図
12の(A)は、垂直面で被覆プレート52,57を含
む金型の領域を切断したときの図であり、図9の
(B)、図10の(B),(D)、図11の(B),
(D)及び図12の(B)は、かかる垂直面と平行な垂
直面で被覆プレート52,57を含まない金型の領域を
切断したときの図である。
【0143】この金型においては、ジルコニアから作製
された第1の入れ子54の形状を直方体とした。また、
ジルコニアをキャビティ面が凹形状になるようにプレス
成形後、焼成することによって、第2の入れ子59を作
製する。第2の入れ子59には凹部が設けられている。
第2の入れ子59における凹部の底面59Bは所定の厚
さを有する。また、第2の入れ子59は、底面59Bか
らの立ち上がり部59Cを有する。第2の入れ子59の
凹部の底面59B及び立ち上がり部59Cの内側面59
A(これらの面はキャビティ面である)に対して、ダイ
ヤモンド砥石を用いた研磨及び仕上げを行うことが好ま
しい。更には、第2の入れ子59の凹部の底面59Bと
立ち上がり部59Cの境界部を、半径0.1mmの曲面
とすることが好ましい。尚、第2の金型部55に第2の
被覆プレート57を取り付けるために、第2の入れ子5
9の立ち上がり部59Cの一部は除去された形状となっ
ている(図11の(A)及び(B)参照)。
【0144】第1の金型部(固定金型部)50は炭素鋼
S55Cから作製することができる。第1の入れ子54
のための入れ子装着部50Aを第1の金型部50に設け
る(図10の(C)及び(D)参照)。尚、参照番号5
1は、第1の被覆プレート取付部である。そして、第1
の入れ子54を、シリコン系接着剤(図示せず)を用い
て、入れ子装着部50A内に接着する(図11の(C)
及び(D)参照)。隙間ゲージを用いて第1の入れ子5
4と入れ子装着部50Aとの間のクリアランス(D)を
測定し、最低クリアランスが0.005mm以上となる
ように、入れ子装着部50Aの加工を行うことが好まし
い。
【0145】第2の金型部(可動金型部)55も炭素鋼
S55Cから作製することができる。そして、第2の入
れ子59のための入れ子装着部55Aを第2の金型部5
5に設ける(図10の(A)及び(B)参照)。尚、参
照番号56は、第2の被覆プレート取付部である。次い
で、第2の入れ子59を、シリコン系接着剤(図示せ
ず)を用いて、入れ子装着部55A内に接着する(図1
1の(A)及び(B)参照)。隙間ゲージを用いて第2
の入れ子59と入れ子装着部55Aとの間のクリアラン
ス(D)を測定し、最低クリアランスが0.005mm
以上となるように、入れ子装着部55Aの加工を行うこ
とが好ましい。
【0146】炭素鋼にて第1の被覆プレート52を作製
し、第1の被覆プレート取付部51の所定位置にボルト
(図示せず)にて第1の金型部50に固定する(図12
の(B)参照)。尚、第1の被覆プレート52には、溶
融熱可塑性樹脂導入部の一部60Aが形成されている。
また、炭素鋼にて第2の被覆プレート57を作製し、第
2の被覆プレート取付部56の所定位置にボルト(図示
せず)にて第2の金型部55に固定する(図12の
(A)参照)。尚、第2の被覆プレート57には、溶融
熱可塑性樹脂導入部の一部60Bが形成されている。第
1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態におい
て、第1の被覆プレート52及び第2の被覆プレート5
7によって、溶融熱可塑性樹脂導入部60が構成され
る。ここで、このような構造の金型における溶融熱可塑
性樹脂導入部60としては、例えば、サイドゲート構造
を挙げることができる。
【0147】このように作製した第1の金型部(固定金
型部)50と第2の金型部(可動金型部)55を組み付
けて金型を得ることができる。この金型において、第1
の金型部50と第2の金型部55とを型締めした状態
で、C40,ΔS40,C41,C42,ΔS41,ΔS42が規定
の値を満足するように、第1の入れ子54、第2の入れ
子59、第1の被覆プレート52及び第2の被覆プレー
ト57を加工する。尚、参照番号53は、第1の被覆プ
レート52の第1の入れ子54と対向する面であり、参
照番号58は、第2の被覆プレート57の第2の入れ子
59と対向する面である。
【0148】更には、図13の(A)に模式的に示すよ
うに、成形品の成形時、キャビティの容積を可変とし得
る構造を有する金型とすることもできる。この場合、例
えば油圧シリンダー(図示せず)で可動させることがで
きる中子70を金型のキャビティ44内に配設すればよ
い。尚、図13の(A)に示す例においては、中子70
を図6にて説明した金型に組み込んだ。そして、成形品
の成形においては、型締め時、成形すべき成形品の容積
(VM)よりもキャビティ44の容積(VC)が大きくな
るように、第1の金型部40と第2の金型部45とを型
締めし、且つ、キャビティ内における中子70の配置位
置を制御する。そして、キャビティ(容積:VC)44
内に溶融した熱可塑性樹脂を導入し、熱可塑性樹脂の導
入開始前、開始と同時に、導入中に、あるいは導入完了
後(導入完了と同時を含む)、図示しない油圧シリンダ
ーの作動によって中子70を移動させて、キャビティ4
4の容積を成形すべき成形品の容積(VM)まで減少さ
せる。この状態を図13の(B)に模式的に示す。この
ように、成形品の成形時、キャビティの容積を可変とし
得る構造を有する金型を用いれば、成形品の表面を均一
に圧縮することが可能となることから、成形品の表面に
ヒケが発生することを抑制することができる。
【0149】あるいは又、図14の(A)に模式的に示
すように、加圧流体注入装置80を更に備えた金型を用
いることもできる。尚、図14の(A)に示す例におい
ては、加圧流体注入装置80の取り付け位置は、金型部
に配設されそしてキャビティに開口する加圧流体注入装
置取付部とした。そして、キャビティ44内に導入され
た溶融熱可塑性樹脂内に、加圧流体注入装置80から加
圧流体を注入し、以て、キャビティ44内の熱可塑性樹
脂の内部に中空部を形成する。尚、キャビティ44内へ
の溶融熱可塑性樹脂の導入完了時の状態を図14の
(B)に模式的に示し、溶融熱可塑性樹脂内への加圧流
体の注入完了の状態を図15に模式的に示す。このよう
に、キャビティ44内の溶融熱可塑性樹脂中に加圧流体
を注入すれば、キャビティ44内の樹脂はキャビティ面
に向かって加圧される結果、成形品にヒケが発生するこ
とを確実に防止し得る。しかも、入れ子48と接触する
溶融樹脂の冷却・固化が適度に遅延されるので、入れ子
のキャビティ面近傍の固化し始めた樹脂の部分と内部の
樹脂とが相互に混じり合うといった現象の発生を回避す
ることができ、肉厚部近傍の成形品表面に色ムラや外観
不良が発生することを防止し得る。
【0150】図16には、成形品を金型から取り出すた
めに、キャビティ44に連通したタブ形成部41Bが被
覆プレート41Aに設けられている構造を例示する。
尚、被覆プレート41Aは第1の金型部40に取り付け
られている。尚、この場合にも、入れ子48と被覆プレ
ート41Aとの間のクリアランスC33は0.03mm以
下を満足する必要がある。この金型は図6にて説明した
金型と実質的には同様の構造を有する。被覆プレート4
1Aは、図16の(A)の紙面垂直方向にも2カ所設け
られている。尚、図16の(A)及び図17の(A)
は、垂直面で被覆プレート41,41Aを含む金型の領
域を切断したときの図であり、図16の(B)及び図1
7の(B)は、かかる垂直面と平行な垂直面で被覆プレ
ート41,41Aを含まない金型の領域を切断したとき
の図である。金型をこのような構造にすることによっ
て、成形品にはタブ部が形成される。金型の型開き後
(図17の(A)及び(B)参照)、第2の金型部に配
設された突き出しピン(図示せず)をかかるタブ部に当
てて成形品を押し出し、成形品を第2の金型部45から
取り出せばよい。尚、成形品に形成されたタブ部は、後
の工程で削除すればよい。
【0151】図18の(A)には、自動車用ドアハンド
ルである成形品を成形するための金型組立体の模式的な
端面図を示す。この金型組立体は、第1の金型部(固定
金型部)90と、第2の金型部91とから構成されてい
る。第2の金型部91は、可動金型部92とスライドコ
ア94A,94Bから成る。尚、円柱状のスライドコア
94Aは2つ設けられ、図18の(A)の紙面垂直方向
に可動である。また、スライドコア94Bは1つ設けら
れ、図18の(A)の紙面左右方向に可動である。第1
の金型部90には入れ子97が配設されている。尚、参
照番号96はキャビティである。また、第2の金型部9
1には溶融熱可塑性樹脂導入部が設けられているが、か
かる溶融熱可塑性樹脂導入部の図示は省略した。図18
の(B)には、自動車用ドアハンドルである成形品の模
式的な側面図を示し、図18の(C)には、自動車用ド
アハンドルである成形品の模式的な正面図を示す。図1
8の(B)に示すように、自動車用ドアハンドルにはア
ンダーカット部が設けられている。かかる成形品を成形
した後、成形品を金型組立体から取り出すために、先
ず、一方のスライドコア94Aを図18の(A)の紙面
垂直方向の上方向に、そして他方のスライドコア94A
を図18の(A)の紙面垂直方向の下方向に移動させ、
次いで、スライドコア94Bを図18の(A)の右手方
向に移動させ、その後、第1の金型部(固定金型部)9
0と可動金型部92とを型開きする。このような構造を
有する金型組立体においては、特願平7−152519
号(特開平8−318534号公報)にて開示した抑え
プレートを金型組立体に配設することが困難である。然
るに、本発明においては、第2の金型部91である可動
金型部92及びスライドコア94Bに入れ子被覆部9
3,95を設けることによって、入れ子97を第1の金
型部90に確実に配設することができる。
【0152】
【発明の効果】本発明の熱可塑性樹脂から成る成形品の
製造方法においては、キャビティを構成する面の一部の
温度を制御することによって、キャビティ内に導入され
そしてキャビティを構成する面の一部と接した溶融熱可
塑性樹脂の温度を一時的にTg若しくはTc以上であって
規定の温度以下に保持することができる結果、キャビテ
ィ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の冷却・固化を適度
に遅延することが可能となり、溶融熱可塑性樹脂の流動
性及び転写性を向上させることができるし、ジェッティ
ングやフローマーク等の外観不良が成形品に発生するこ
とを効果的に防止することができる。しかも、成形サイ
クルの極端な延長無しに、外観を損なうこと無く成形品
を成形することができ、成形品の不良率低減及び成形品
の均質化、高品質化を達成することができる。更には、
成形品へ高付加価値を付与でき、成形品製造コストの削
減を図ることができる。また、無機繊維等を含有する熱
可塑性樹脂を用いた場合であっても、成形品表面に無機
繊維等が析出することを確実に防止することができる。
【0153】更には、溶融熱可塑性樹脂の流動性が向上
するが故に、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入
圧力を低く設定できるので、成形品に残留する応力を緩
和でき、成形品の品質が向上する。また導入圧力を低減
できるために、金型部の薄肉化、成形装置の小型化が可
能となり、成形品のコストダウンも可能になる。
【0154】しかも、本発明において、入れ子を、所定
のクリアランスや重なり量の範囲内で金型部内に組み込
めば、長期的な成形を実施しても、入れ子に破損が生じ
ることが無く、容易且つ安価に高い鏡面性を有する成形
品を成形することができる。また、成形品端部のバリ発
生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1にて用いた金型の模式的な一部端面
図、及び金型組立中の模式的な端面図である。
【図2】図1に示した金型の型開き時の模式的な端面図
である。
【図3】実施例3にて用いた金型の模式的な一部端面図
である。
【図4】本発明の熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方
法において使用に適した金型の模式的な一部端面図、及
び金型組立中の模式的な一部端面図である。
【図5】図4とは若干構造の異なる、本発明の熱可塑性
樹脂から成る成形品の製造方法において使用に適した金
型の模式的な一部端面図である。
【図6】図1とは若干構造の異なる、本発明の熱可塑性
樹脂から成る成形品の製造方法において使用に適した金
型の型締め時の模式的な端面図である。
【図7】図6に示した金型の組み立て中の模式的な端面
図である。
【図8】図6に示した金型の型開き時の模式的な端面図
である。
【図9】図1とは若干構造の異なる、本発明の熱可塑性
樹脂から成る成形品の製造方法において使用に適した金
型の型締め時の模式的な端面図である。
【図10】図9に示した金型の組み立て中の模式的な端
面図である。
【図11】図10に引き続き、金型の組み立て中の模式
的な端面図である。
【図12】図9に示した金型の型開き時の模式的な端面
図である。
【図13】成形品の成形時、キャビティの容積を可変と
し得る構造を有する金型の型締め時の模式的な端面図、
及びキャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の導入後の金型
等の模式的な端面図である。
【図14】加圧流体注入装置を更に備えた金型の型締め
時の模式的な端面図、及びキャビティ内への溶融熱可塑
性樹脂の導入完了時点での金型等の模式的な端面図であ
る。
【図15】キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂への加圧流
体の注入完了時点での金型等の模式的な端面図である。
【図16】成形品を金型から取り出すために、キャビテ
ィに連通したタブ形成部が被覆プレートに設けられてい
る構造を有する金型の型締め時の模式的な端面図であ
る。
【図17】図16に示した金型の型開き後の可動金型部
及び成形品の状態を示す図である。
【図18】自動車用ドアハンドルを成形するための、ス
ライドコアを備えた金型の型締め時の模式的な端面図、
及び自動車用ドアハンドルの模式図である。
【符号の説明】
10,40,50,90・・・第1の金型部、10A,
30A,40A,50A,55A・・・入れ子装着部、
11,45,91・・・第2の金型部、12,22,3
2,42,60・・・溶融熱可塑性樹脂導入部(ゲート
部)、13,23,33,44,61,96・・・キャ
ビティ、14,46・・・切り込み(切り欠き)、1
5,47,93,95・・・入れ子被覆部、16,3
6,48,97・・・入れ子、16A,26A,36
A,49・・・キャビティ面、17,27・・・温度セ
ンサー、18,28・・・圧力伝達ピン、19,29・
・・圧力センサー、25・・・媒体用流路、26・・・
ブロック、26B・・・薄膜層、30・・・固定金型
部、31・・・可動金型部、34,41,41A・・・
被覆プレート、41B・・・タブ形成部、43・・・被
覆プレートの入れ子と対向する面、51・・・第1の被
覆プレート取付部、52・・・第1の被覆プレート、5
3・・・第1の被覆プレートの第1の入れ子と対向する
面、54・・・第1の入れ子、54A・・・第1の入れ
子の第2の入れ子と対向する面、55・・・第2の金型
部、56・・・第2の被覆プレート取付部、57・・・
第2の被覆プレート、58・・・第2の被覆プレートの
第2の入れ子と対向する面、59・・・第2の入れ子、
59A・・・第2の入れ子のキャビティ面、59B・・
・第2の入れ子における凹部の底面、59C・・・第2
の入れ子の立ち上がり部、59D・・・第2の入れ子の
第1の入れ子と対向する面、60A,60B・・・溶融
熱可塑性樹脂導入部の一部、70・・・中子、80・・
・加圧流体注入装置、92・・・可動金型部、94A,
94B・・・スライドコア

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非晶性の熱可塑性樹脂を使用し、溶融した
    該熱可塑性樹脂を金型に設けられたキャビティ内に導入
    し、以て熱可塑性樹脂から成る成形品を製造する方法で
    あって、非晶性の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg
    (゜C)としたとき、金型を型締めした状態において、
    キャビティを構成する面の一部の温度T(゜C)を、 (A)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入前に
    は、Tg−100≦T≦Tg+100、 (B)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入直後に
    は、Tg≦T≦Tg+180、 (C)金型から成形品を取り出す前には、T≦Tg−1
    0、に制御することを特徴とする熱可塑性樹脂から成る
    成形品の製造方法。
  2. 【請求項2】金型を型締めした状態において、キャビテ
    ィを構成する面の一部の前記温度T(゜C)を、 (A)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入前に
    は、Tg−70≦T≦Tg−10、 (B)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入直後に
    は、Tg≦T≦Tg+50、 (C)金型から成形品を取り出す前には、T≦Tg−1
    0、に制御することを特徴とする請求項1に記載の熱可
    塑性樹脂から成る成形品の製造方法。
  3. 【請求項3】結晶性の熱可塑性樹脂を使用し、溶融した
    該熱可塑性樹脂を金型に設けられたキャビティ内に導入
    し、以て熱可塑性樹脂から成る成形品を製造する方法で
    あって、結晶性の熱可塑性樹脂の結晶化開始温度をTc
    (゜C)、融点をTm(゜C)としたとき、金型を型締
    めした状態において、キャビティを構成する面の一部の
    温度T(゜C)を、 (A)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入前に
    は、Tc−150≦T≦Tm、 (B)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入直後に
    は、Tc≦T≦Tm、 (C)金型から成形品を取り出す前には、T≦Tc−1
    0、に制御することを特徴とする熱可塑性樹脂から成る
    成形品の製造方法。
  4. 【請求項4】結晶性の熱可塑性樹脂を使用し、溶融した
    該熱可塑性樹脂を金型に設けられたキャビティ内に導入
    し、以て熱可塑性樹脂から成る成形品を製造する方法で
    あって、結晶性の熱可塑性樹脂の結晶化開始温度をTc
    (゜C)としたとき、金型を型締めした状態において、
    キャビティを構成する面の一部の温度T(゜C)を、 (A)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入前に
    は、Tc−120≦T≦Tc−10、 (B)溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入直後に
    は、Tc≦T≦Tc+30、 (C)金型から成形品を取り出す前には、T≦Tc−1
    0、に制御することを特徴とする熱可塑性樹脂から成る
    成形品の製造方法。
  5. 【請求項5】キャビティを構成する面の一部は、厚さ
    0.1mm乃至10mmの入れ子から成り、入れ子は、
    2×10-2cal/cm・sec・deg以下の熱伝導
    率を有する、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y2
    3、ZrO2−MgO、K2O−TiO2、Al23、A
    23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2
    ZrO2−SiO2、MgO−SiO2、2MgO−Si
    2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る
    群から選択されたセラミック、若しくは、ソーダガラ
    ス、石英ガラス、耐熱ガラス及び結晶化ガラスから成る
    群から選択されたガラスから作製されていることを特徴
    とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の熱
    可塑性樹脂から成る成形品の製造方法。
  6. 【請求項6】キャビティを構成する面の一部は、厚さ
    0.1mm乃至10mmの入れ子から成り、入れ子は、
    2×10-2cal/cm・sec・deg以下の熱伝導
    率を有する、ZrO2又はZrO2−Y23から成るセラ
    ミック、若しくは、結晶化ガラスから作製されているこ
    とを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に
    記載の熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法。
  7. 【請求項7】キャビティを構成する面の一部は、4×1
    -2cal/cm・sec・deg以上の熱伝導率を有
    する、炭素鋼、ニッケル、ステンレススチール、アルミ
    ニウム、クロム、ベリリウム、亜鉛、銅及びタングステ
    ンカーバイドから成る群から選択された金属若しくは合
    金から作製されていることを特徴とする請求項1又は請
    求項3に記載の熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方
    法。
  8. 【請求項8】キャビティを構成する面の一部の温度T
    (゜C)を、加圧水蒸気、加圧水、電熱ヒータ、ペルチ
    ェ素子、高周波加熱、水、空気のいずれかを用いて制御
    することを特徴とする請求項7に記載の熱可塑性樹脂か
    ら成る成形品の製造方法。
  9. 【請求項9】溶融熱可塑性樹脂がキャビティを構成する
    面の一部との接触を開始してから0.1秒間乃至10秒
    間経過したときのキャビティを構成する面の一部の温度
    T(゜C)を前記(B)の条件に制御し、且つ、溶融熱
    可塑性樹脂のキャビティ内への導入動作を開始してから
    0.2秒間乃至12秒間経過したときのキャビティを構
    成する面の一部の温度T(゜C)を前記(B)の条件に
    制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいず
    れか1項に記載の熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方
    法。
JP15218897A 1997-06-10 1997-06-10 熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法 Pending JPH10337759A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15218897A JPH10337759A (ja) 1997-06-10 1997-06-10 熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15218897A JPH10337759A (ja) 1997-06-10 1997-06-10 熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10337759A true JPH10337759A (ja) 1998-12-22

Family

ID=15534994

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP15218897A Pending JPH10337759A (ja) 1997-06-10 1997-06-10 熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10337759A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005169925A (ja) * 2003-12-12 2005-06-30 Ono Sangyo Kk 射出成形方法および装置
JP2010260175A (ja) * 2009-04-28 2010-11-18 Plamo Kk 射出成型装置
WO2012043060A1 (ja) * 2010-09-30 2012-04-05 積水化学工業株式会社 高分子材料及びその製造方法
WO2013073015A1 (ja) * 2011-11-16 2013-05-23 テクノポリマー株式会社 成形装置、及び熱可塑性成形品の製造方法
JP5730868B2 (ja) * 2010-06-14 2015-06-10 ポリプラスチックス株式会社 金型の製造方法
JP2019508558A (ja) * 2016-03-02 2019-03-28 サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ ガラスフィラー強化固体樹脂

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005169925A (ja) * 2003-12-12 2005-06-30 Ono Sangyo Kk 射出成形方法および装置
JP2010260175A (ja) * 2009-04-28 2010-11-18 Plamo Kk 射出成型装置
JP5730868B2 (ja) * 2010-06-14 2015-06-10 ポリプラスチックス株式会社 金型の製造方法
WO2012043060A1 (ja) * 2010-09-30 2012-04-05 積水化学工業株式会社 高分子材料及びその製造方法
US8796413B2 (en) 2010-09-30 2014-08-05 Sekisui Chemical Co., Ltd. Polymer material and method for producing same
JP5739342B2 (ja) * 2010-09-30 2015-06-24 積水化学工業株式会社 高分子材料及びその製造方法
WO2013073015A1 (ja) * 2011-11-16 2013-05-23 テクノポリマー株式会社 成形装置、及び熱可塑性成形品の製造方法
JP2019508558A (ja) * 2016-03-02 2019-03-28 サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ ガラスフィラー強化固体樹脂

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5741446A (en) Method of producing a molded article using a mold assembly with an insert block
US6165407A (en) Mold assembly for molding thermoplastic resin and method of manufacturing molded article of thermoplastic resin
KR100808960B1 (ko) 에프알피 성형품 및 그 제조방법
JP4198149B2 (ja) 熱可塑性樹脂成形用の金型組立体及び成形品の製造方法
JP5149069B2 (ja) 金型組立体及び射出成形方法
JP3719826B2 (ja) 金型組立体及び成形品の製造方法
JP4130007B2 (ja) 熱可塑性樹脂成形用の金型組立体及び成形品の製造方法
JP3747983B2 (ja) 成形品の成形方法、並びに金型組立体
JP2002096335A (ja) 光学素子成形用金型及び光学素子成形方法
JP5040374B2 (ja) 金型組立体及び射出成形方法
JP4992682B2 (ja) 射出成形方法
JPH10337759A (ja) 熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法
JP3578571B2 (ja) 自動車用外装部品の製造方法、及び、自動車用ピラーの製造方法
JP2001105449A (ja) 熱可塑性樹脂製の光学的反射部材及びその製造方法
JPH09248829A (ja) 穴空き成形品製造用の金型組立体及び穴空き成形品の製造方法
JP3578570B2 (ja) 無機繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品の成形方法
JP2000079628A (ja) 熱可塑性樹脂成形用の金型組立体及び成形品の製造方法
JP3575927B2 (ja) 熱可塑性樹脂製光反射部材の成形方法及び熱可塑性樹脂製光反射部品の作製方法
JPH1170557A (ja) 熱可塑性樹脂から成る成形品の製造方法
JP2000225635A (ja) 表面がメッキされた成形品及びその製造方法
JP2001300941A (ja) 入れ子及び金型組立体、並びに、成形方法
JP2000271970A (ja) ポリアセタール樹脂から成る成形品及びその製造方法
JPH08318534A (ja) 熱可塑性樹脂成形用の金型組立体及び入れ子
JP5045221B2 (ja) 金型組立体、及び、射出成形方法
JPH1128981A (ja) 中空部を有する樹脂製の車両用ルーフレールの作製方法