JP3719826B2 - 金型組立体及び成形品の製造方法 - Google Patents

金型組立体及び成形品の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形する成形品の製造方法、かかる成形品の製造方法の実施に適した金型組立体、並びに、かかる金型組立体での使用に適した入れ子に関し、更に詳しくは、射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト成形法、ブロー成形法等によって成形される成形品の表面特性の向上及び成形品の金型組立体からの離型性を向上し得る成形品の製造方法、かかる成形品の製造方法の実施に適した金型組立体、並びに、かかる金型組立体での使用に適した入れ子に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形するための金型(以下、単に金型と呼ぶ)は、通常、金型に設けられた中空部分であるキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂(以下、単に溶融樹脂と呼ぶ場合がある)を射出、注入あるいは充填する際の高い圧力によっても変形しない金属材料、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金から作製されている。そして、金型に設けられたキャビティ内に溶融樹脂を射出、注入あるいは充填することで、所望の形状を有し、しかも金型のキャビティを構成する面(以下、便宜上、金型のキャビティ面と呼ぶ)が転写された成形品を得ている。尚、金型に設けられたキャビティ内に溶融樹脂を射出、注入あるいは充填することを、以下、総称して、金型に設けられたキャビティ内に溶融樹脂を導入するという。
【0003】
このような金属製若しくは合金製の金型を用いて成形を行なう場合、成形品の表面状態を金型のキャビティ面の状態に近づけることは容易でない。通常、金型は、導入された樹脂に起因した圧力等の高い応力によっても変形しない上述の金属材料から作製されているが、これらの金属材料は、また、熱伝導性に優れている。それ故、キャビティ内に導入された溶融樹脂は金型のキャビティ面と接触したとき、瞬時に冷却され始める。その結果、金型のキャビティ面と接触した溶融樹脂の部分に固化層が形成され、ウエルドマークやフローマーク等の外観不良が成形品に生じ易いし、金型のキャビティ面の成形品表面への転写不良といった問題も生じ易い。
【0004】
これらの問題点を解決するために、一般には、キャビティ内に溶融樹脂を高圧導入することで金型のキャビティ面を無理矢理、成形品の表面に転写させる方法、あるいは又、金型温度を高温にして溶融樹脂の固化層の発達を遅らせてウエルドマークやフローマークの発生を防止し、且つ、金型のキャビティ面の成形品表面への転写不良の発生を防止する方法がある。しかし前者の方法においては、成形装置の大型化、金型自体の大型化・肉厚化によるコストアップにつながると共に、溶融樹脂の高圧導入により成形品内部に応力が残留し、その結果、成形品の品質が低下するといった問題が発生する。後者の方法においては、金型温度を成形に用いる樹脂の荷重撓み温度よりもやや低めに設定して固化層の発達を遅らせるために、キャビティ内の樹脂の冷却時間が長くなる結果、成形サイクルが長くなり、生産性が低下するといった問題があるし、金型のキャビティ面の成形品表面への転写不良や成形不良を完全には改善できないといった問題もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これらの問題を解決するために、例えば、特開昭55−55839号公報、特開昭61−100425号公報、特開昭62−208919号公報、特開平5−111937号公報、特開平5−200789号公報、特公平6−35134号公報、特開平6−218769号公報には、低熱伝導材を金型のキャビティ面に設け若しくは取り付けることで、キャビティ内に導入された溶融樹脂の固化層の発達を遅延させ、ウエルドマークやフローマーク等の成形不良を防止する方法が提案されている。このように低熱伝導材を金型のキャビティ面に設け若しくは取り付けることで、固化層の発達が抑制されるために成形品の外観は向上する。また、溶融樹脂の低熱伝導材に対する濡れ性が向上する結果、成形品表面の転写性も向上する。
【0006】
ところが、溶融樹脂の低熱伝導材に対する濡れ性が向上する結果、成形品と低熱伝導材との密着性が向上し、金型からの成形品の離型が困難となり、成形品表面に剥離マークが残り、最悪の場合、成形品に低熱伝導材が貼り付いたまま取れなくなるといった問題が発生する。
【0007】
このような問題を解決するため、特開昭63−194913号公報には、金型のキャビティ面をジルコニア(ZrO2)から構成し、成形品の離型性を改良する方法が提案されている。しかしながら、この特許公開公報に開示された技術は、その実施例であげられている塩化ビニルには有効であるものの、他の樹脂に対しては余り効果が無いのが実情である。例えば、ポリアミド系樹脂等の非常に粘着性の高い熱可塑性樹脂を用いて成形を行った場合、金型からの成形品の離型時、剥離マークが成形品に発生しており、外観の優れた成形品を安定して得ることは困難である。
【0008】
また、金型のキャビティ面の表面に離型剤を塗布してから成形を行うことも考えられる。しかしながら、成形品の表面に離型剤の跡が残るため外観不良が発生し易く、また、離型剤の均一塗布が難しいため、離型剤が塗布されなかった金型のキャビティ面の部分に接触していた成形品にはやはり剥離マークが発生する。
【0009】
更には、成形用材料中に離型剤をコンパウンドして成形することも考えられる。金属や金属合金から作製された金型を用いる場合には、溶融熱可塑性樹脂の金型キャビティ面への密着性がそれほど高くないため効果がある。しかしながら、低熱伝導材は熱可塑性樹脂との密着性が高く、このような成形用材料を用いても離型性向上に対する効果が余りなく、剥離マークが発生する。
【0010】
低熱伝導材を耐熱性プラスチックから作製する場合もあるが、かかる低熱伝導材の剛性は低く、更には、表面硬度が劣るために、長期間使用すると低熱伝導材が歪んだり、低熱伝導材に傷が付き易い等の問題がある。また、このような低熱伝導材においても、金型からの成形品の離型性は非常に悪い。あるいは又、耐熱性プラスチックの表面に金属やセラミックスから成る薄膜を化学的気相成長法(CVD法)や物理的気相成長法(PVD法)にて形成した低熱伝導材もあるが、耐熱性プラスチックへの薄膜の密着性が悪く、耐熱性プラスチックの表面から薄膜が剥離したり、薄膜にクラックが発生する。また、表面硬度の低い薄膜では、繊維強化成形用材料を用いて成形を行うと、薄膜に傷が付くといった問題もある。それ故、一般に、試験用金型若しくは簡易金型として用いられるだけであり、長期使用には耐えられない。
【0011】
従って、本発明の目的は、成形時、離型不良が発生せず、長期間の使用に耐え、キャビティ面を構成する入れ子の面の状態を確実に成形品の表面に転写することができ、しかも、無機質材料から成る入れ子に破損が発生しない、熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形するための成形品の製造方法、かかる成形品の製造方法の実施に適した金型組立体、並びに、かかる金型組立体での使用に適した入れ子を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形するための金型部の内部に配設され、そして、キャビティの一部を構成する入れ子であって、
該入れ子の表面には薄膜が形成されており、
該入れ子は、厚さ0.1mm乃至10mm、弾性率0.8×106kg/cm2以上、熱伝導率0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数(μ)が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成ることを特徴とする本発明の入れ子によって達成することができる。
【0013】
入れ子の厚さが0.1mm未満の場合、入れ子による断熱効果が少なくなり、キャビティ内に導入された溶融樹脂の急冷を招き、ウエルドマークやフローマーク等の外観不良が成形品に発生し易くなる。また、金型組立体を構成する金属若しくは合金製の金型部に入れ子を固定する際には、例えば熱硬化性接着剤を用いて入れ子を金型部に接着すればよいが、入れ子の厚さが0.1mm未満の場合、接着剤の膜厚が不均一になると入れ子に不均一な応力が残るために、成形品表面がうねる現象が生じたり、キャビティ内に導入された溶融樹脂の圧力によって入れ子が破損することがある。一方、入れ子の厚さが10mmを越える場合、入れ子による断熱効果が大きくなり過ぎ、キャビティ内の樹脂の冷却時間を延長しないと、成形品取り出し後に成形品が変形することがある。それ故、成形サイクルの延長といった問題が発生することがある。尚、入れ子の厚さは、0.1mm乃至10mm、好ましくは、0.5mm乃至10mm、より好ましくは1mm乃至7mm、一層好ましくは2mm乃至5mmである。
【0014】
入れ子を構成する無機材料の弾性率は、0.8×106kg/cm2以上、好ましくは1.5×106kg/cm2以上、更に好ましくは2.0×106kg/cm2以上であることが必要とされる。入れ子を構成する無機材料の弾性率が0.8×106kg/cm2未満の場合、キャビティ内に導入された溶融樹脂の圧力によって入れ子が変形を起こす虞がある。弾性率としては、一般に用いられるヤング率の値を用いることができる。例えば、高弾性率のフィラーが添加された熱硬化性プラスチックを用いることによって上記の弾性率を上回る弾性率を有する入れ子を作製することも可能である。しかしながら、フィラーを取り巻く材料が樹脂であるが故に、キャビティ内に導入された溶融樹脂の圧力によって入れ子に部分的に凹凸が発生する。従って、無機材料から作製された入れ子とする必要がある。
【0015】
入れ子を構成する無機材料の熱伝導率は、キャビティ内の溶融樹脂の急冷を防止する目的で、0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degであることが必要とされる。この範囲を越える熱伝導率を有する無機材料を用いて入れ子を作製した場合、キャビティ内の溶融樹脂が入れ子によって急冷されるために、入れ子を備えていない通常の炭素鋼等から作製された金型組立体を用いて成形された成形品と同程度の外観しか得られない。また、この範囲未満の場合、固化層の発達は防止できるものの、キャビティ内の樹脂の冷却が遅くなり、成形サイクルの延長といった問題が発生する虞がある。
【0016】
入れ子の表面に形成された薄膜の厚さは、0.01μm乃至20μm、好ましくは0.1μm乃至15μm、更に好ましくは0.3μm乃至10μmとする必要がある。薄膜の厚さが0.01μm未満では、薄膜の耐久性が乏しくなるし、成形を連続して行うと離型性が悪くなるといった問題が発生する虞がある。一方、薄膜の厚さが20μmを越えると、入れ子の断熱効果が小さくなり、溶融樹脂の固化層の発達を招くため、成形品に外観不良が発生し、あるいは又、薄膜にクラックが発生し易くなるといった問題が生じる。
【0017】
入れ子の表面に形成された薄膜のビッカース硬度は600Hv以上、好ましくは800Hv以上、更に好ましくは1000Hv以上であることが要求される。ビッカース硬度が600Hv未満では、使用する熱可塑性樹脂が繊維を含有していない場合には特に摩耗の虞も無く入れ子を使用することができるが、繊維強化の熱可塑性樹脂を用いる場合、薄膜が摩耗する虞がある。ビッカース硬度の測定は、JIS B7725に基づく。
【0018】
入れ子の表面に形成された薄膜の動摩擦係数(μ)は0.5以下、好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.1以下であることが必要とされる。動摩擦係数(μ)が0.5以下の場合、摺動抵抗が小さくなるし、溶融樹脂との密着性も低くすることができる。尚、動摩擦係数(μ)の測定法及び算出法は後述する。
【0019】
入れ子の表面に形成された薄膜と熱可塑性樹脂との剥離強度は、1kgf/cm以下、好ましくは0.5kgf/cm以下、更に好ましくは0.3kgf/cm以下であることが必要とされる。剥離強度は、JIS K 6854に準拠して測定する。非晶性の熱可塑性樹脂を使用する場合には熱可塑性樹脂のTg(ガラス転移温度)より10゜C低く雰囲気温度を保持した高温炉内で、また、結晶性の熱可塑性樹脂を使用する場合には熱可塑性樹脂のTc(結晶化開始温度)より10゜C低く雰囲気温度を保持した高温炉内で、表面に薄膜が形成された入れ子を熱可塑性樹脂で挟み、1分間、その状態を保持した後に、剥離強度を測定する。入れ子の表面に形成された薄膜と熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下の場合、成形の際に剥離マークの発生を回避することができるが、剥離強度が1kgf/cmを越える場合、入れ子に起因した成形品の離型不良による剥離マークの発生が回避できなくなる虞がある。尚、TgあるいはTcより10゜C低い温度で剥離強度の測定を行う理由は、高温の場合、より一層、熱可塑性樹脂と薄膜との間の密着性が高くなるためである。
【0020】
本発明の入れ子を用いることによってキャビティ内の溶融樹脂の急冷を防ぐことができる結果、金型部のキャビティ面と接触した溶融樹脂に固化層が形成されることを回避でき、ウエルドマークやフローマーク等の外観不良が成形品に発生することを防止することができる。また、例えば無機繊維を含有した熱可塑性樹脂を使用した場合であっても、成形品の表面に無機繊維が析出することを防止することができる。しかも、薄膜を入れ子の表面に形成することによって、入れ子からの成形品の離型性を飛躍的に向上させることができる。即ち、このような薄膜を入れ子表面に形成することによって、金型組立体からの成形品の離型時に剥離マークが消失し、離型剤の混合された成形用材料や離型剤を塗布した金型組立体を使用しなくとも、容易に成形品を金型組立体から離型することが可能となり、離型剤による外観不良も無くなる。
【0021】
しかも、溶融樹脂の流動性が向上するが故に、溶融樹脂のキャビティ内への導入圧力を低く設定でき、成形品に残留する応力を緩和できる。その結果、成形品の品質が向上する。また、導入圧力を低減できるために、金型部の薄肉化、成形装置の小型化が可能となり、成形品のコストダウンも可能になる。
【0022】
また、本発明における入れ子は、低熱伝導性の無機材料から作製されており、しかも、金型部とは独立して作製され、金型部の内部に配設されるので、入れ子による断熱効果が大きいばかりか、入れ子の保守が容易である。また、熱衝撃に対しても強く、破損やクラックが発生し難い入れ子を作製することができる。更には、その表面に薄膜を形成するので、入れ子の耐久性の向上を図ることができる。その結果、長期間の使用に耐え、しかも、成形品にウエルドライン等が発生し難い。
【0023】
本発明の入れ子は、広く、ジルコニア系材料、アルミナ系材料、K2O−TiO2から成る群から選択されたセラミックス、若しくは、ソーダガラス、石英ガラス、耐熱ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製することが望ましい。より具体的には、入れ子は、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、ZrO2−SiO2、K2O−TiO2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2、MgO−SiO2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る群から選択されたセラミックスから作製されていることが好ましく、中でも、ZrO2又はZrO2−Y23から成るセラミックスから作製されていることが一層好ましい。あるいは又、ソーダガラス、石英ガラス、耐熱ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されていることが好ましく、中でも、石英ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されていることが一層好ましい。
【0024】
入れ子を結晶化ガラスから作製する場合、入れ子を、結晶化度が10%以上、更に望ましくは結晶化度が60%以上、一層望ましくは結晶化度が70〜100%の結晶化ガラスから作製することが好ましい。10%以上の結晶化度になると結晶がガラス全体に均一に分散するので、熱衝撃強度及び界面剥離性が飛躍的に向上するため、成形品の成形時における入れ子の破損発生を著しく低下させることができる。結晶化度が10%未満では、成形時にその表面から界面剥離を起こし易いといった欠点がある。尚、入れ子を構成する結晶化ガラスの線膨張係数が1×10-6/deg以下、熱衝撃強度が400゜C以上であることが好ましい。
【0025】
熱衝撃強度とは、所定の温度に加熱した100mm×100mm×3mmのガラスを25゜Cの水中に投げ込んだとき、ガラスに割れが発生するか否かの温度を強度として規定したものである。熱衝撃強度が400゜Cであるとは、400゜Cに熱した100mm×100mm×3mmのガラスを25゜Cの水中に投げ込んだとき、ガラスに割れが発生しないことを意味する。この熱衝撃強度は、耐熱ガラスにおいても180゜C前後の値しか得られない。従って、それ以上の温度(例えば、約300゜C)で溶融された樹脂が入れ子と接触したとき、入れ子に歪みが生じ、入れ子が破損する場合がある。熱衝撃強度は、ガラスの結晶化度とも関係し、10%以上の結晶化度を有する結晶化ガラスから入れ子を作製すれば、成形時に入れ子が割れることを確実に防止し得る。
【0026】
ここで、結晶化ガラスとは、原ガラスに少量のTiO2及びZrO2の核剤を添加し、1600゜C以上の高温下で溶融した後、プレス、ブロー、ロール、キャスト法等によって成形され、更に結晶化のために熱処理を行い、ガラス中にLi2O−Al23−SiO2系結晶を成長させ、主結晶相がβ−ユークリプタイト系結晶及びβ−スポジュメン結晶が生成したものを例示することができる。あるいは又、CaO−Al23−SiO2系ガラスを1400〜1500゜Cで溶融後、水中へ移して砕いて小粒化を行った後、集積し、耐火物セッター上で板状に成形後、更に加熱処理を行い、β−ウォラストナイト結晶相が生成したものを例示することができる。更には、SiO2−B23−Al23−MgO−K2O−F系ガラスを熱処理して雲母結晶を生成させたものや、核剤を含むMgO−Al23−SiO2系ガラスを熱処理してコーディエライト結晶が生成されたものを例示することができる。
【0027】
これら結晶化ガラスにおいては、ガラス基材中に存在する結晶粒子の割合を結晶化度という指標で表すことができる。そして、X線回折装置等の分析機器を用いて非晶相と結晶相の割合を測定することで結晶化度を測定することができる。
【0028】
入れ子を構成する無機材料に対して、通常の研削加工で凹凸、曲面等の加工を容易にでき、かなり複雑な形状以外は任意の形状の入れ子を製作できる。セラミックス粉末若しくは溶融ガラスを成形用金型に入れてプレス成形した後に熱処理することで、入れ子を作製することができる。また、ガラスから成る板状物を治具上に置いたまま炉内で自然に賦形させることによって、入れ子を作製することもできる。曲面を有する成形品を成形する場合、入れ子の裏面(入れ子のキャビティを構成する面と反対側の面であり金型部と対向する面)の曲率に合わせて、金型部の入れ子装着部を加工すればよい。
【0029】
成形品に鏡面性が要求される場合、入れ子のキャビティを構成する面(入れ子のキャビティ面と呼ぶ)の表面粗さRmaxを0.03μm以下とすることが望ましい。表面粗さRmaxが0.03μmを越えると、鏡面性が不足し、成形品に要求される特性、例えば表面平滑性(写像性)を満足しない場合がある。そのためには、作製された入れ子のキャビティ面に対して、表面粗さRmaxが0.03μm以下になるまで、例えばダイヤモンドラッピングを行い、更に、必要に応じて、ポリッシングを行えばよい。ラッピングは、ラッピングマシン等を用いて行うことができる。尚、ラッピングは入れ子加工の最終工程で行うことが望ましい。通常の炭素鋼等の磨きと比較すると、例えば結晶化ガラスの場合、約1/2のコストで鏡面が得られるために、金型組立体の製作費を低減させることが可能である。尚、表面粗さRmaxの測定は、JIS B0601に準じた。つや消し若しくはヘラーラインの状態の表面を有する成形品を成形する場合には、入れ子のキャビティ面をサンドブラスト処理やエッチングを行うことによって、入れ子のキャビティ面に細かい凹凸やラインを形成すればよい。
【0030】
また、入れ子に凹凸形状を設ける場合には、凹凸部のエッジに発生した微細なクラックが溶融樹脂と接触して破損することを防止するために、ダイヤモンド砥石で凹凸部の縁部を研磨して応力が集中しないようにすべきである。あるいは又、場合によっては、半径0.3mm以下の曲率面やC面カットを設け、応力集中を避けることが好ましい。
【0031】
本発明の入れ子の表面に形成された薄膜を構成する材料は、TiN、TiAlN、TiC、CBN、BN、アモルファスダイヤモンド、CrN、Cr及びNiから成る群から選択された材料であることが好ましく、特に、アモルファスダイヤモンド又はTiN、CrNが成形品の離型性の一層の改善のために好ましい。また、薄膜は、少なくとも一層形成されていればよく、多層であってもよい、例えば、TiNから成る薄膜を入れ子の表面に形成し、その上にアモルファスダイヤモンドやCrN等の薄膜を形成してもよい。あるいは又、下地層としてSiO2層を入れ子の表面に形成し、その上にアモルファスダイヤモンドやTiN、CrN等の薄膜を形成してもよい。
【0032】
入れ子の表面に薄膜を形成する方法としては、常圧CVD法や減圧CVD、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等の化学的気相成長法(CVD法)、真空蒸着法やスパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、IVD法(イオン・ベーパー・デポジション法)等の物理的気相成長法(PVD法)を挙げることができる。
【0033】
上記の目的を達成するための本発明の金型組立体は、
(イ)キャビティが設けられ、熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形するための第1の金型部及び第2の金型部、
(ロ)該第1若しくは第2の金型部に配置され、該第1の金型部と該第2の金型部とを型締めした状態において形成される該キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入するための溶融樹脂導入部、並びに、
(ハ)該金型部の少なくとも一方に配設され、キャビティの一部を構成する、表面に薄膜が形成された入れ子、
を備え、
該入れ子は、厚さ0.1mm乃至10mm、弾性率0.8×106kg/cm2以上、熱伝導率0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数(μ)が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成ることを特徴とする。尚、入れ子は、第1の金型部に配置されていてもよく、第2の金型部に配置されていてもよく、更には、第1及び第2の金型部の両方に配置されていてもよい。
【0034】
本発明の金型組立体には、第1若しくは第2の金型部に配置され、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧流体を注入するための加圧流体注入装置が更に備えられていてもよい。あるいは又、キャビティの容積を可変とし得る構造としてもよい。かかる構造として、第1の金型部と第2の金型部とによって印篭構造が形成される構造や、キャビティの容積を可変とし得る、キャビティ内で可動の中子を金型組立体が更に備えている構造を挙げることができる。更には、第1若しくは第2の金型部に配置され、そしてキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧流体を注入するための加圧流体注入装置が更に備えられ、且つ、キャビティの容積を可変とし得る構造を有する金型組立体としてもよい。
【0035】
上記の目的を達成するための本発明の成形品の製造方法は、
(イ)キャビティが設けられ、熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形するための第1の金型部及び第2の金型部、
(ロ)該第1若しくは第2の金型部に配置され、該第1の金型部と該第2の金型部とを型締めした状態において形成される該キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入するための溶融樹脂導入部、並びに、
(ハ)該金型部の少なくとも一方に配設され、キャビティの一部を構成する、表面に薄膜が形成された入れ子、
を備え、
該入れ子は、厚さ0.1mm乃至10mm、弾性率0.8×106kg/cm2以上、熱伝導率0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数(μ)が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成る金型組立体を用い、溶融樹脂導入部からキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入することを特徴とする。
【0036】
本発明の金型組立体若しくは成形品の製造方法においては、溶融樹脂導入部として、例えば、ダイレクトゲート構造、サイドゲート構造やオーバーラップゲート構造を挙げることができる。
【0037】
本発明の金型組立体を用いた成形品の製造方法としては、熱可塑性樹脂を成形するために一般的に用いられる射出成形法、射出圧縮成形法、多色成形法、ガスアシスト成形法、ブロー成形法を例示することができる。
【0038】
本発明の成形品の製造方法においては、第1若しくは第2の金型部に配置され、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧流体を注入するための加圧流体注入装置が、金型組立体には更に備えられ、
溶融樹脂導入部からのキャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の導入開始後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内部に加圧流体注入装置から加圧流体を注入し、以て、キャビティ内の樹脂内部に中空部を形成する態様(ガスアシスト成形法)とすることもできる。
【0039】
加圧流体注入装置の取り付け位置は、成形すべき成形品の形状等に依存して、射出成形装置の溶融樹脂射出ノズル内、金型部に配設された溶融樹脂導入部内(例えばゲート部内)、あるいは、金型部に配設されそしてキャビティに開口する加圧流体注入装置取付部から適宜選択すればよい。キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂内への加圧流体の注入開始の時点は、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の導入中、導入完了と同時、あるいは導入完了後とすることができる。キャビティ内の樹脂内への加圧流体の注入は、キャビティ内の樹脂が冷却、固化した後も続けることが好ましい。キャビティ内へ導入する溶融熱可塑性樹脂の量は、キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で完全に充填するために必要な量であってもよいし、成形品に依っては、キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で完全に充填するには不十分な量であってもよい。
【0040】
この場合の使用に適した加圧流体としては、常温・常圧下でガス状あるいは液状の流体であって、溶融熱可塑性樹脂内への注入時、溶融熱可塑性樹脂と反応したり混合しないものが望ましい。具体的には、窒素ガス、炭酸ガス、空気、ヘリウムガス等、常温でガス状の物質、水等の液体、高圧下で液化したガスを使用することができるが、中でも、窒素ガスやヘリウムガス等の不活性ガスが好ましい。尚、注入する加圧流体は、成形品の中空部に断熱圧縮による焼けが生じないような不活性な加圧流体であることが、一層好ましく、窒素ガスを用いる場合、純度90%以上のものを使用することが望ましい。更には、加圧流体として、発泡性樹脂、繊維強化樹脂材料等を使用することもできる。尚、この場合には、中空部に発泡性樹脂、繊維強化樹脂材料等が充填されるが、このような構造も、本発明においては中空部という概念に含める。
【0041】
あるいは又、金型組立体をキャビティの容積を可変とし得る構造とし、成形すべき成形品の容積(VM)よりもキャビティの容積(VC)が大きくなるように、第1の金型部と第2の金型部とを型締めし、該キャビティ(容積:VC)内に溶融熱可塑性樹脂を導入し、熱可塑性樹脂の導入開始前、開始と同時に、導入中に、あるいは導入完了後、キャビティの容積を成形すべき成形品の容積(容積:VM)まで減少させる態様(射出圧縮成形法)とすることもできる。尚、キャビティの容積が成形すべき成形品の容積(VM)となる時点を、熱可塑性樹脂の導入中、あるいは導入完了後(導入完了と同時を含む)とすることができる。かかる金型組立体の構造として、第1の金型部と第2の金型部とによって印篭構造が形成される構造や、キャビティの容積を可変とし得る、キャビティ内で可動の中子を金型組立体が更に備えている構造を挙げることができる。尚、中子の移動の制御は、例えば油圧シリンダーで行うことができる。
【0042】
上記の型締め時、成形すべき成形品の容積(VM)とキャビティの容積(VC)の関係は、成形すべき成形品の厚さをt0とし、型締め時における成形品の厚さ方向のキャビティの距離をt1とし、Δt=t1−t0としたとき、0.1mm≦Δt≦6mmとなるような関係であることが好ましい。Δt<0.1mmでは、流動性の悪い溶融熱可塑性樹脂を用いて成形品を成形することが困難となる場合があり、成形品に残留する応力を小さくすることができない。一方、Δt>6mmでは、成形品中に空気が巻き込まれ、成形品の品質が劣化する虞がある。
【0043】
尚、ガスアシスト成形法と射出圧縮成形法とを組み合わせることもできる。
【0044】
本発明の金型組立体若しくは成形品の製造方法においては、入れ子が第1の金型部に配設され、第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、入れ子の表面と、該入れ子の表面と対向する第2の金型部の面との間のクリアランスC11が0.03mm以下(C11≦0.03mm)である構造(本発明の金型組立体の第1の態様と呼ぶ場合がある)とすることができる。
【0045】
あるいは又、本発明の金型組立体若しくは成形品の製造方法においては、入れ子が第1の金型部に配設され、第2の金型部には入れ子被覆部が設けられており、第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、入れ子と入れ子被覆部との間のクリアランスC21は0.03mm以下(C21≦0.03mm)であり、且つ、入れ子に対する入れ子被覆部の重なり量ΔS21は0.5mm以上(ΔS21≧0.5mm)である構造(本発明の金型組立体の第2の態様と呼ぶ場合がある)とすることができる。尚、このような構造の金型部における入れ子被覆部の構造は、入れ子と対向する第2の金型部の面に設けられた一種の切り込み(切り欠き)や、第2の金型部のパーティング面の延在部等、成形すべき成形品の形状や金型組立体の構造に依存して適宜設計すればよい、ここで、このような構造の金型組立体における溶融樹脂導入部としては、例えば、ダイレクトゲート構造を挙げることができる。
【0046】
あるいは又、本発明の金型組立体若しくは成形品の製造方法においては、第1若しくは第2の金型部に取り付けられ、キャビティの一部を構成し、入れ子の端部を被覆する被覆プレートを更に備え、入れ子は第1の金型部に配設され、第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、入れ子と被覆プレートとの間のクリアランスC31は0.03mm以下(C31≦0.03mm)であり、且つ、入れ子に対する被覆プレートの重なり量ΔS31は0.5mm以上(ΔS31≧0.5mm)である構造(本発明の金型組立体の第3の態様と呼ぶ場合がある)とすることができる。ここで、このような構造の金型組立体における溶融樹脂導入部としては、例えば、ダイレクトゲート構造、サイドゲート構造やオーバーラップゲート構造を挙げることができる。尚、被覆プレートは、入れ子の一部分とのみ重なり合っていてもよいし、入れ子の全周囲と重なり合っていてもよい。また、被覆プレートは、作製すべき成形品の形状に依存して、第1の金型部に配設されていてもよいし、第2の金型部に配設されていてもよい。
【0047】
更には、本発明の金型組立体若しくは成形品の製造方法においては、入れ子と第2の金型部との間に配設され、第1の金型部に取り付けられ、溶融樹脂導入部が設けられた被覆プレートを更に備え、第2の金型部には入れ子被覆部が設けられており、第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、入れ子と入れ子被覆部との間のクリアランスC41は0.03mm以下(C41≦0.03mm)であり、入れ子に対する入れ子被覆部の重なり量ΔS41は0.5mm以上(ΔS41≧0.5mm)であり、入れ子と被覆プレートとの間のクリアランスC42は0.03mm以下(C42≦0.03mm)であり、入れ子に対する被覆プレートの重なり量ΔS42は0.5mm以上(ΔS42≧0.5mm)であり、被覆プレートは入れ子の一部分とのみ重なり合っている構造(本発明の金型組立体の第4の態様と呼ぶ場合がある)とすることができる。ここで、このような構造の金型組立体における溶融樹脂導入部としては、例えば、サイドゲート構造やオーバーラップゲート構造を挙げることができる。
【0048】
尚、本発明の金型組立体において、入れ子を第1及び第2の金型部の両方に配置する場合には、第1の金型部に配置された入れ子を第1の入れ子とし、第2の金型部に配置された入れ子を第2の入れ子とした場合、第1の入れ子と第2の入れ子との間に配設され、第1の金型部、第2の金型部、あるいは、第1及び第2の金型部に取り付けられ、溶融樹脂導入部が設けられた被覆プレートを金型組立体は更に備え、
第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、
第1の入れ子の第2の入れ子と対向する面と、第2の入れ子の第1の入れ子と対向する面との間のクリアランスC51は0.03mm(C51≦0.03mm)以下であり、
第1の入れ子の第2の入れ子と対向する面と、第2の入れ子の第1の入れ子と対向する面との重なり量ΔS51は0.5mm以上(ΔS51≧0.5mm)であり、
第1の入れ子と被覆プレートとの間のクリアランスC52、及び第2の入れ子と被覆プレートとの間のクリアランスC53は0.03mm以下(C52,C53≦0.03mm)であり、
第1の入れ子に対する被覆プレートの重なり量ΔS52、及び第2の入れ子に対する被覆プレートの重なり量ΔS53は0.5mm以上(ΔS52,ΔS53≧0.5mm)であり、被覆プレートは第1及び第2の入れ子の一部分とのみ重なり合っている金型組立体(本発明の金型組立体の第5の態様と呼ぶ場合がある)とすることができる。
【0049】
特に、本発明の金型組立体の第3〜第5の態様においては、圧力の高い溶融樹脂導入部近傍における入れ子の部分に破損が生じ易いため、この部分を上述したクリアランスや重なり量にて被覆プレートによって入れ子を被覆することで、破損し易い無機材料から作製された入れ子の破損を確実に防止することができる。しかも、成形品端部の外観を損なうことがなくなり、成形品端部にバリが発生しなくなり、更には、入れ子外周部に発生した微細なクラックと溶融樹脂が接触しなくなるために入れ子が破損しない。
【0050】
本発明の金型組立体若しくは成形品の製造方法における入れ子あるいは薄膜を構成する好ましい材料は、本発明の入れ子にて説明したと同様である。
【0051】
本発明の金型組立体の第1の態様において、入れ子の金型組立体への配置は、特に破損及びバリ等が発生し難い場合には、接着剤で単に金型部のキャビティを構成する面(金型部のキャビティ面)に接着することによって行うことができる。この場合、入れ子が型締めによる応力によって金型部のキャビティ面に接触しないように金型部内に配置する。あるいは又、入れ子をボルトを用いて固定できる場合には、ボルトを用いて固定してもよい。
【0052】
本発明の金型組立体のその他の態様においては、研削加工等によって所定形状に加工した後、入れ子の装着時に入れ子が金型部に設けられた入れ子装着部から落下して破損する虞がない場合、あるいは又、接着剤を用いることなく入れ子を入れ子装着部に装着可能な場合には、接着剤を用いずに入れ子を金型部に設けられた入れ子装着部に直接装着することが好ましい。更には、エポキシ系、シリコン系、ウレタン系、アクリル系等の中から選択された熱硬化性接着剤を用いて、入れ子を入れ子装着部に接着してもよい。尚、入れ子装着部が設けられた入れ子装着用中子を金型部に取り付け、かかる入れ子装着用中子の入れ子装着部に入れ子を装着してもよい。あるいは又、場合によっては、入れ子をボルトを用いて固定できる場合には、ボルトを用いて固定してもよい。金型部の入れ子装着部と入れ子のクリアランス(D)は、限りなく0に近い値であってよいが、実用的には、0.005mm以上であることが好ましい。入れ子を構成する無機材料の線膨張係数に依存するが、クリアランス(D)が余りに小さい場合、金型部を構成する金属若しくは合金材料と入れ子を構成する無機材料の線膨張係数の差による入れ子の破損を防止することができなくなる場合があるので、入れ子のクリアランス(D)は、このような問題が生じないような値とすればよい。尚、クリアランス(D)を大きくし過ぎると、入れ子の位置ズレ及び位置安定性が不足するために、入れ子が破損する虞がある。従って、クリアランス(D)は、2mm程度以下であることが好ましい。
【0053】
成形品に穴(貫通穴あるいは非貫通穴)を形成する必要がある場合がある。このような場合には、本発明の金型組立体若しくは成形品の製造方法においては、第1若しくは第2の金型部に配置され、成形品に穴を形成するためのスライドコアが金型組立体に更に備えられた態様とすればよい。
【0054】
この場合、成形品に穴を形成するためのスライドコアは、
一対の対向するスライドコア部材と、キャビティの一部を構成するそれぞれのスライドコア部材の部分に取り付けられた環状部材とから構成され、
該環状部材は、一端が閉塞しそして他端が開口した形状、若しくは両端が開口した形状を有し、
該環状部材の表面には薄膜が形成され、
該環状部材は、厚さ0.1mm乃至5mm、弾性率0.8×106kg/cm2以上、熱伝導率0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数(μ)が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成る態様とすることができる。
【0055】
環状部材の厚さが0.1mm未満の場合、環状部材による断熱効果が少なくなり、キャビティ内に導入された溶融樹脂の急冷を招き、外観不良が成形品に発生し易くなる。一方、環状部材の厚さが5mmを越える場合、環状部材による断熱効果が大きくなり過ぎ、キャビティ内の樹脂の冷却時間を延長しないと、成形品取り出し後に成形品が変形することがある。それ故、成形サイクルの延長といった問題が発生することがある。尚、環状部材の厚さは、0.1mm乃至5mm、好ましくは、0.5mm乃至5mm、より好ましくは1mm乃至5mm、一層好ましくは2mm乃至5mmである。
【0056】
環状部材を構成する材料の弾性率は、0.8×106kg/cm2以上、好ましくは1.5×106kg/cm2以上、更に好ましくは2.0×106kg/cm2以上であることが必要とされる。環状部材を構成する材料の弾性率が0.8×106kg/cm2未満の場合、キャビティ内に導入された溶融樹脂の圧力によって環状部材が変形を起こす虞がある。弾性率として、一般に用いられるヤング率の値を用いることができる。環状部材を構成する無機材料の熱伝導率は、キャビティ内の溶融樹脂の急冷を防止する目的で、0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degであることが必要とされる。この範囲を越える熱伝導率を有する材料を用いて環状部材を作製した場合、キャビティ内の溶融樹脂が環状部材によって急冷され、成形品の外観不良が発生し易い。また、この範囲未満の場合、固化層の発達は防止できるものの、キャビティ内の樹脂の冷却が遅くなり、成形サイクルの延長といった問題が発生する虞がある。
【0057】
環状部材の表面に形成された薄膜の厚さは、0.01μm乃至20μm、好ましくは0.1μm乃至15μm、更に好ましくは0.3μm乃至10μmとする必要がある。薄膜の厚さが0.01μm未満では、薄膜の耐久性が乏しくなるし、成形を連続して行うと離型性が悪くなるといった問題が発生する虞がある。一方、薄膜の厚さが20μmを越えると、溶融樹脂の固化層の発達を招くため、成形品に外観不良が発生し、あるいは又、薄膜にクラックが発生し易くなるといった問題が生じる。
【0058】
環状部材の表面に形成された薄膜のビッカース硬度は600Hv以上、好ましくは800Hv以上、更に好ましくは1000Hv以上であることが要求される。ビッカース硬度が600Hv未満では、使用する熱可塑性樹脂が繊維を含有していない場合には特に摩耗の虞もなく環状部材を使用することができるが、繊維強化の熱可塑性樹脂を用いる場合、薄膜が摩耗する虞がある。環状部材の表面に形成された薄膜の動摩擦係数(μ)は0.5以下、好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.1以下であることが必要とされる。動摩擦係数(μ)が0.5以下の場合、摺動抵抗が小さくなるし、溶融樹脂との密着性も低くすることができる。環状部材の表面に形成された薄膜と熱可塑性樹脂との剥離強度は、1kgf/cm以下、好ましくは0.5kgf/cm以下、更に好ましくは0.3kgf/cm以下であることが必要とされる。剥離強度の測定は前述のとおりである。環状部材の表面に形成された薄膜と熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下の場合、成形の際に剥離マークの発生を回避することができるが、剥離強度が1kgf/cmを越える場合、成形品の離型不良による剥離マークの発生が回避できなくなる虞がある。
【0059】
尚、以上のスライドコアを構成する環状部材に関する事項や規定は、後述するコアピンを構成する環状部材、あるいは又コアピンにも当てはまる事項、規定である。
【0060】
成形品に形成すべき穴が貫通穴である場合、一対のスライドコア部材が対向した状態において、一方のスライドコア部材に取り付けられた環状部材の端部と他方のスライドコア部材に取り付けられた環状部材の端部との間のクリアランスC61は0.03mm以下(C61≦0.03mm)であることが好ましい。また、スライドコア部材に取り付けられた環状部材と入れ子との間のクリアランスC62も0.03mm以下(C62≦0.03mm)であることが好ましい。
【0061】
環状部材を構成する材料は入れ子を構成する材料群の中から選択すればよく、環状部材を構成する材料は、入れ子を構成する無機材料と同じであっても異なっていてもよい。具体的には、環状部材を構成する材料は、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、ZrO2−SiO2、K2O−TiO2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2、MgO−SiO2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る群から選択されたセラミックスから作製されていることが好ましく、中でも、ZrO2又はZrO2−Y23から成るセラミックスから作製されていることが一層好ましい。あるいは又、ソーダガラス、石英ガラス、耐熱ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されていることが好ましく、中でも、石英ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されていることが一層好ましい。また、環状部材の表面に形成された薄膜を構成する材料は、TiN、TiAlN、TiC、CBN、BN、アモルファスダイヤモンド、CrN、Cr及びNiから成る群から選択された材料であることが好ましい。薄膜は、少なくとも一層形成されていればよく、多層であってもよい、更には、例えばTiN層を環状部材の表面に形成し、その上にアモルファスダイヤモンドやCrN等の薄膜を形成してもよい。あるいは又、下地層としてSiO2層を環状部材の表面に形成し、その上にアモルファスダイヤモンドやTiN、CrN等の薄膜を形成してもよい。環状部材の表面に薄膜を形成する方法としては、常圧CVD法や減圧CVD、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等のCVD法、真空蒸着法やスパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、IVD法等のPVD法を挙げることができる。
【0062】
あるいは又、本発明の金型組立体若しくは成形品の製造方法において、成形品に穴(貫通穴あるいは非貫通穴や凹部)を形成する場合には、入れ子に突起部(凸部)を設けてもよい。あるいは又、第1の金型部及び/又は第2の金型部に取り付けられ、キャビティ内を占める部分がキャビティの一部を構成するコアピン(ピン、あるいはモールドピンとも呼ばれる)が金型組立体に更に備えられていることが好ましい。尚、コアピンの断面形状は、所望の穴の断面形状に合わせて設計すればよい。また、コアピンは先端に向かって先細りとしてもよいし、コアピンの側面に段差を付けてもよい。
【0063】
穴空き成形品を製造するとき、キャビティ内に導入された溶融樹脂の流れは、コアピンで分岐され、再び合流する。この過程で溶融樹脂は冷却され、固化しかけた樹脂が合流するために、ウエルドラインが発生し易い。ウエルドラインが発生した成形品においては、強度の低下が著しい。従って、応力の加わる成形品の部分にウエルドラインが発生しないような金型設計を行う必要があり、成形品の設計自由度が低くなるという問題がある。また、ウエルドラインが発生した成形品の外観は醜いものとなる。
【0064】
コアピンは、金属、ガラス、セラミックスから作製すればよいが、金属製のコアピンの場合、コアピンで分岐されそしてキャビティ内で冷却しかけた溶融樹脂が合流する結果、ウエルドマークが発生し、成形品の強度が低下する虞がある。このような場合には、コアピンをセラミックス若しくはガラスから構成すればよい。これによって、キャビティ内の溶融樹脂が合流する際の樹脂の冷却を抑制できるために、成形品内部にウエルドマークが発生することを効果的に防止することができ、成形品の強度低下を防ぐことができる。尚、この場合、コアピンの径(コアピンが円筒径の場合には直径、多角柱の場合には外接円の直径)が10mmを越えないことが好ましい。コアピンの径が10mmを越えると、コアピンによる断熱効果が大きくなり過ぎ、キャビティ内の樹脂の冷却時間を延長しないと、金型からの成形品取り出し後に成形品が変形することがある。それ故、成形サイクルの延長といった問題が生じる虞がある。但し、断熱性の良好な入れ子を第1及び第2の金型部に配設する場合には、コアピンで分岐されそして合流する溶融樹脂が冷却され難いので、コアピンを金属製としても問題はない。
【0065】
本発明において、コアピンの径が10mm以下の場合には、コアピンは、弾性率0.8×106kg/cm2以上、熱伝導率0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、該コアピンの表面には薄膜が形成され、該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数(μ)が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成ることが望ましい。尚、コアピンと入れ子のキャビティ面との間のクリアランスCc1は0.03mm以下(Cc1≦0.03mm)であることが好ましい。そして、コアピンを構成する材料は入れ子を構成する材料群の中から選択すればよく、コアピンを構成する材料は、入れ子を構成する無機材料と同じであっても異なっていてもよい。具体的には、コアピンを構成する材料は、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、ZrO2−SiO2、K2O−TiO2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2、MgO−SiO2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る群から選択されたセラミックスから作製されていることが好ましく、中でも、ZrO2又はZrO2−Y23から成るセラミックスから作製されていることが一層好ましい。あるいは又、ソーダガラス、石英ガラス、耐熱ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されていることが好ましく、中でも、石英ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されていることが一層好ましい。また、コアピンの表面に形成された薄膜を構成する材料は、TiN、TiAlN、TiC、CBN、BN、アモルファスダイヤモンド、CrN、Cr及びNiから成る群から選択された材料であることが好ましい。薄膜は、少なくとも一層形成されていればよく、多層であってもよい、更には、例えばTiN層をコアピンの表面に形成し、その上にアモルファスダイヤモンドやCrN等の薄膜を形成してもよい。あるいは又、下地層としてSiO2層をコアピンの表面に形成し、その上にアモルファスダイヤモンドやTiN、CrN等の薄膜を形成してもよい。コアピンの表面に薄膜を形成する方法としては、常圧CVD法や減圧CVD、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等のCVD法、真空蒸着法やスパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、IVD法等のPVD法を挙げることができる。
【0066】
この場合、入れ子を配設した金型部とは異なる金型部にコアピンが取り付けられている形態としてもよいし、入れ子に貫通孔を設け、コアピンをこの貫通孔を通して金型部に取り付る形態としてもよい。
【0067】
本発明において、コアピンの径が10mmを越える場合には、コアピンは、
(a)第1の金型部及び/又は第2の金型部に取り付けられたコアピン取付部と、
(b)コアピン取付部に取り付けられ、一端が閉塞しそして他端が開口した形状、若しくは、両端が開口した形状を有する環状部材、
とから成り、
該環状部材は、キャビティ内を占めるコアピンの部分の表面を構成し、
該コアピン取付部は、該環状部材の他端から環状部材の内部に延在しており、
該環状部材の表面には薄膜が形成され、
該環状部材は、弾性率0.8×106kg/cm2以上、熱伝導率0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数(μ)が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成ることが好ましい。
【0068】
この場合の環状部材を構成する材料は入れ子を構成する材料群の中から選択すればよく、環状部材を構成する材料は、入れ子を構成する無機材料と同じであっても異なっていてもよい。具体的には、環状部材を構成する材料は、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、ZrO2−SiO2、K2O−TiO2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2、MgO−SiO2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る群から選択されたセラミックスから作製されていることが好ましく、中でも、ZrO2又はZrO2−Y23から成るセラミックスから作製されていることが一層好ましい。あるいは又、ソーダガラス、石英ガラス、耐熱ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されていることが好ましく、中でも、石英ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されていることが一層好ましい。また、環状部材の表面に形成された薄膜を構成する材料は、TiN、TiAlN、TiC、CBN、BN、アモルファスダイヤモンド、CrN、Cr及びNiから成る群から選択された材料であることが望ましい。薄膜は、少なくとも一層形成されていればよく、多層であってもよい、更には、例えばTiN層を環状部材の表面に形成し、その上にアモルファスダイヤモンドやCrN等の薄膜を形成してもよい。あるいは又、下地層としてSiO2層を環状部材の表面に形成し、その上にアモルファスダイヤモンドやTiN、CrN等の薄膜を形成してもよい。環状部材の表面に薄膜を形成する方法としては、常圧CVD法や減圧CVD、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等のCVD法、真空蒸着法やスパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、IVD法等のPVD法を挙げることができる。尚、コアピン取付部に取り付けられた環状部材と入れ子のキャビティ面との間のクリアランスCc1は0.03mm以下(Cc1≦0.03mm)であることが好ましい。尚、コアピン取付部は金属から作製すればよく、環状部材のコアピン取付部への取り付けは、例えば接着剤を用いて行うことができる。
【0069】
場合によっては、コアピンの径が10mmを越える場合、コアピンを上述のセラミックス若しくはガラスから作製する代わりに、少なくともキャビティ内を占めるコアピンの部分の表面に、セラミックス若しくはガラスを溶射して成る溶射層が形成されている形態とすることもできる。この場合、溶射層は、弾性率0.8×106kg/cm2以上、熱伝導率0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degの無機材料から構成されていることが好ましく、溶射層の表面には薄膜が形成され、この薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数(μ)が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成ることが好ましい。溶射層を構成する材料及び薄膜を構成する材料は、上述の環状部材及びその表面に形成された薄膜を構成する材料から適宜選択すればよい。尚、スライドコアを環状部材から構成する代わりに、スライドコアの表面に上記と同様の溶射層を形成し、更に、この溶射層の表面に上記と同様の薄膜を形成してもよい。溶射層、及びその表面に形成された薄膜を構成する材料は、入れ子、及び入れ子の表面に形成された薄膜にて説明した材料から適宜選択すればよい。
【0070】
尚、本発明の金型組立体若しくは成形品の製造方法にあっては、キャビティ内を占めるコアピンと入れ子のキャビティ面との間のクリアランス(Cc1)、あるいは、環状部材と入れ子のキャビティ面との間のクリアランス(Cc1)は0.03mm以下(Cc1≦0.03mm)とする必要がある。クリアランス(Cc1)の下限は、金型組立体の昇温時に入れ子の熱膨張に起因して、入れ子のキャビティ面とコアピンや環状部材とが接触して入れ子が破損することがないような値とすればよい。尚、クリアランス(Cc1)が0.03mmを超えると、溶融樹脂がコアピンや環状部材と入れ子のキャビティ面との間に侵入するために、入れ子にクラックが生じたり、成形品にバリが発生する虞がある。クリアランス(Cc1)を0.03mm以下とすることで、コアピンや環状部材と入れ子のキャビティ面との間に溶融樹脂が侵入することを確実に防止することができ、しかも、成形品に穴を確実に形成することができる。
【0071】
以上に説明した本発明の金型組立体におけるコアピンとしては、広くは、少なくともキャビティ内を占めるコアピンの部分の少なくとも表面は、セラミックス若しくはガラスから成ると言い換えることができる。即ち、コアピン全体の表面をセラミックス若しくはガラスから構成してもよいし、キャビティ内を占めるコアピンの部分の表面を、セラミックス若しくはガラスから構成してもよいし、コアピン全体の表面から一定の深さまでをセラミックス若しくはガラスから構成してもよいし、キャビティ内を占めるコアピンの部分の表面から一定の深さまでを、セラミックス若しくはガラスから構成してもよいし、コアピン全体をセラミックス若しくはガラスから構成してもよい。尚、この場合、キャビティ内を占めるコアピンの部分は、入れ子のキャビティ面と対向する対向面を有し、この対向面と入れ子のキャビティ面との間のクリアランス(Cc1)は0.03mm以下(Cc1≦0.03mm)であることが好ましい。
【0072】
コアピンをセラミックスやガラスから作製し、あるいは又、少なくともキャビティ内を占めるコアピンの部分の少なくとも表面をセラミックス若しくはガラスから構成することによって、コアピンで分岐され再び合流する溶融樹脂は余り冷却されることがないので、成形品にウエルドライン等が発生し難い。更には、キャビティ内を占めるコアピンの部分における対向面と入れ子のキャビティ面との間のクリアランスを規定することで、コアピンと入れ子が接触することが無くなり、コアピンや入れ子を長期間に亙って使用することが可能となる。しかも、コアピンや環状部材の表面に薄膜を形成することによって、成形品の離型性の向上を図れるだけでなく、コアピンや環状部材の耐久性を向上させることができる。
【0073】
クリアランス(C11,C21,C31,C41,C42,C51,C52,C53,C61,C62,Cc1)は0.03mm以下、実用的には、0.001mm以上0.03mm以下(0.001mm≦C11,C21,C31,C41,C42,C51,C52,C53,C61,C62,Cc1≦0.03mm)、好ましくは0.003mm以上0.03mm以下(0.003mm≦C11,C21,C31,C41,C42,C51,C52,C53,C61,C62,Cc1≦0.03mm)とする。クリアランスの下限は、入れ子の外周部に微細なクラックが発生したり、金型温度上昇時に入れ子が熱膨張することによって、入れ子が金型部の入れ子被覆部や被覆プレート、スライドコア、コアピンと接触し、入れ子の外周部の微細クラックに応力がかかる結果、入れ子等が破損するといった問題が生じないような値とすればよい。クリアランス(C11,C21,C31,C41,C42,C51,C52,C53,C61,C62,Cc1)が0.03mmを越えると、溶融樹脂が、入れ子と金型部の入れ子被覆部や被覆プレート、スライドコア、コアピンとの間に侵入し、入れ子等にクラックが生じる場合があるし、成形品にバリが発生したり、金型部から成形品を取り出す際に入れ子等が損傷するといった問題も生じる。尚、本発明においては、入れ子や環状部材等の端部に発生し易い微細なクラックが薄膜によって被覆されるため、入れ子や環状部材が破損することを格段に低下させることができる。
【0074】
重なり量(ΔS21,ΔS31,ΔS41,ΔS42,ΔS51,ΔS52,ΔS53)の値が0.5mm未満の場合、入れ子の外周部に発生した微細なクラックと溶融樹脂とが接触する結果、入れ子に生成したクラックが成長し、入れ子が破損する場合がある。
【0075】
通常、成形品を金型組立体から取り足すために突き出しピンを金型部に配設する。ところが、成形品の形状に依っては突き出しピンの先端の跡が成形品の表面に残るために、突き出しピンを金型部に配設することが困難となる場合がある。このような場合、本発明の金型組立体の第3〜第5の態様においては、成形品を金型組立体から取り出すために、被覆プレートにはキャビティに連通したタブ形成部が設けられている構造とすることもできる。これによって、成形品にはタブ部が形成される。かかるタブ部に突き出しピンを当てて、成形品を金型組立体から取り出せばよい。尚、成形品に形成されたタブ部は、後の工程で削除すればよい。
【0076】
ここで、キャビティの一部を構成するとは、成形品の外形を規定するキャビティ面を構成することを意味する。より具体的には、キャビティは、例えば、金型部、第1の金型部あるいは第2の金型部に形成されたキャビティを構成する面(金型部のキャビティ面)と、入れ子に形成されたキャビティを構成する面(入れ子のキャビティ面)と、場合によっては、被覆プレートに形成されたキャビティを構成する面(被覆プレートのキャビティ面)とから構成されている。
【0077】
本発明における熱可塑性樹脂としては、通常使用されている熱可塑性樹脂の全てを用いることができる。具体的には、非晶性の熱可塑性樹脂として、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂;メタクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;変性PPE樹脂;ポリアリレート樹脂を挙げることができる。また、結晶性の熱可塑性樹脂として、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂;ポリオキシメチレン(ポリアセタール)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂を挙げることができる。
【0078】
結晶性の熱可塑性樹脂は、結晶化によって密度及び融点が高くなり、成形品の硬度や弾性率が向上する。また、結晶性の熱可塑性樹脂は、水分や染料、可塑剤等が結晶組織へ入り込み難いといった特徴を有しているため、耐薬品性に優れている。通常、結晶性の熱可塑性樹脂を用いた成形品の成形においては、金型温度を結晶性の熱可塑性樹脂の荷重撓み温度よりもかなり低く設定しておき、キャビティ内に導入された溶融した結晶性の熱可塑性樹脂の冷却、固化を促進させる方法が採られている。従来の技術においては、金型部は金属材料から作製されているので、熱伝導性が良く、しかも、金型温度を結晶性の熱可塑性樹脂の荷重撓み温度よりもかなり低く設定した場合、キャビティ内に導入された溶融した結晶性の熱可塑性樹脂は、金型部のキャビティ面と接触したとき、瞬時に冷却され始める。その結果、成形品の表面には、非晶質層あるいは結晶化度の低い微細な結晶層(スキン層)が形成される。このようなスキン層が形成された成形品においては、成形品の表面に関連する物性が著しく低下するという問題が生じる。例えば結晶性の熱可塑性樹脂としてポリオキシメチレン(ポリアセタール)樹脂から成形された成形品の耐摩擦摩耗性や耐候性が著しく低下する。また、金型部のキャビティ面の成形品表面への転写性も劣化する。
【0079】
本発明においては、キャビティ内に導入された溶融した結晶性の熱可塑性樹脂が急冷されることがないために、結晶性の熱可塑性樹脂を用いた場合にも、樹脂の結晶化度の低下を招くことがなく、成形品の樹脂表面の結晶化度が高く、樹脂の劣化による割れ等、樹脂表面に関連する物性の低下を防止することができる。
【0080】
更には、ポリマーアロイ材料から成る熱可塑性樹脂を用いることもできる。ここで、ポリマーアロイ材料は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたもの、又は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を化学的に結合させたブロック共重合体若しくはグラフト共重合体から成る。ここで、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料を構成する熱可塑性樹脂として、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂、変性PPE樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、液晶ポリマー、エラストマーを挙げることができる。2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイ材料を例示することができる。尚、このような樹脂の組合せを、ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂と表記する。以下においても同様である。更に、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカーボネート樹脂/PET樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂、ポリカーボネート樹脂/ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂/PET樹脂、変性PPE樹脂/HIPS樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミド系樹脂、変性PPE樹脂/PBT樹脂/PET樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミドMXD6樹脂、ポリオキシメチレン樹脂/ポリウレタン樹脂、PBT樹脂/PET樹脂、ポリカーボネート樹脂/液晶ポリマーを例示することができる。また、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を化学的に結合させたブロック共重合体若しくはグラフト共重合体から成るポリマーアロイ材料として、HIPS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂を例示することができる。
【0081】
ポリマーアロイ材料に基づき成形された成形品においては、一般に、成形品の外観(特に、光沢性)が悪くなり、特に、成形品の厚さが変わる部分やウェルド部分において外観不良が生じ易いという問題がある。この原因は、通常、金型部は熱伝導性が良い金属材料から作製されているので、キャビティ内に導入された溶融したポリマーアロイ材料は、金型部のキャビティ面と接触したとき、瞬時に冷却され始める。その結果、溶融したポリマーアロイ材料に固化層が形成され、転写性不良や光沢不良が生じる。本発明においては、キャビティ内に導入された溶融したポリマーアロイ材料が急冷されることがないために、成形品の光沢性が極めて向上し、鏡面性に優れた成形品を容易に得ることができる。
【0082】
尚、以上に説明した各種の熱可塑性樹脂に、安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、染顔料等を添加することができるし、ガラスビーズ、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム等の無機充填材、あるいは有機充填材を添加することもできる。
【0083】
本発明の成形品の製造方法においては、無機繊維を5重量%乃至80重量%含有する熱可塑性樹脂を用いることもできる。尚、成形品の強度を重視する場合には、無機繊維の平均長さを、5μm乃至5mm、好ましくは10μm乃至0.4mmとし、成形品の写像性(鏡面性)を重視する場合には、5μm乃至0.4mm、より好ましくは5μm乃至0.2mm、一層好ましくは5μm乃至0.1mmとすることが望ましい。また、これらの場合、無機繊維の平均直径を、0.01μm乃至15μm、より好ましくは0.1μm乃至13μm、一層好ましくは0.1μm乃至10μmとすることが望ましい。
【0084】
従来の技術において、無機繊維を含有した熱可塑性樹脂を用いて成形品を成形した場合、成形品の表面に無機繊維が析出する結果、成形品の外観が悪くなり、あるいは又、写像性(鏡面性)が劣化するという問題が生じ易い。それ故、優れた外観特性や写像性が要求される成形品に対しては、無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を使用することは困難であった。尚、成形品の表面への無機繊維の析出という現象は、成形品の表面に無機繊維が浮き出ることなどで認識することができる。それ故、成形品の表面への無機繊維の析出といった問題を解決するために、従来の技術においては、熱可塑性樹脂の粘度を低下させ、溶融樹脂の流動性を良くすることで対応していた。しかしながら、無機繊維の含有率を増加させた場合、無機繊維が成形品の表面から析出することを防止することは難しくなる。そのため、優れた外観特性が必要とされる成形品には、優れた性能を有しているにも拘らず、無機繊維を含有した熱可塑性樹脂を使用することは困難であった。無機繊維の含有率が増えると無機繊維が成形品の表面から析出する原因も、金型部の材質と関係している。通常、金型部は熱伝導性が良い金属材料から作製されているので、キャビティ内に導入された無機繊維を含有する溶融樹脂は、金型部のキャビティ面と接触したとき、瞬時に冷却され始める。その結果、金型部のキャビティ面と接触した溶融樹脂に固化層が形成され、無機繊維が析出する。加えて、金型部のキャビティ面の成形品表面への転写性が不足するという問題を生じる。本発明においては、キャビティ内に導入された溶融した熱可塑性樹脂が急冷されることがないために、金型部のキャビティ面と接触した溶融樹脂に固化層が形成されることが無く、無機繊維が析出することを確実に防止することができる。
【0085】
この場合、熱可塑性樹脂が含有する無機繊維の割合(言い換えれば、熱可塑性樹脂に添加された無機繊維の割合)は、要求される曲げ弾性率(例えば、ASTM D790に準拠して測定したときの値が3.0GPa以上)を満足し得る成形品を成形できる範囲であればよく、その上限は、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の流動性が低下するため成形が困難となり、あるいは又、優れた鏡面性を有する成形品を成形できなくなるときの値とすればよい。具体的には、結晶性の熱可塑性樹脂を用いる場合には上限は概ね80重量%である。非晶性の熱可塑性樹脂を用いる場合には、結晶性の熱可塑性樹脂よりも流動性が劣るために、場合によっては上限は概ね50重量%となる。含有率が5重量%未満では成形品に要求される曲げ弾性率、弾性率や線膨張係数が得られず、また、80重量%を越えると溶融熱可塑性樹脂の流動性が低下するため成形品の成形が困難となり、あるいは又、優れた鏡面性を有する成形品を成形できなくなる虞がある。
【0086】
また、無機繊維の平均長さが5μm未満であったり、平均直径が0.01μm未満では、成形品に要求される曲げ弾性率が得られない。一方、無機繊維の平均長さが5mmを越えたり、平均直径が15μmを越えると、成形品の表面が鏡面にならないといった問題が生じる。
【0087】
上記の範囲の平均長さ及び平均直径を有する無機繊維を、好ましくはシランカップリング剤等を用いて表面処理した後、熱可塑性樹脂とコンパウンドして、ペレット化して成形用材料とする。このような成形用材料、及び表面に薄膜が形成された入れ子が組み込まれた金型組立体を用いて成形品の成形を行うことで、高剛性、高弾性率、低線膨張係数、高荷重撓み温度(耐熱性)を有し且つ鏡面性(写像性)に優れた成形品を得ることができるし、金型組立体からの成形品の離型性が飛躍的に向上する。
【0088】
無機繊維は、ガラス繊維、カーボン繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカー繊維、チタン酸カリウムウィスカー繊維、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー繊維、珪酸カルシウムウィスカー繊維及び硫酸カルシウムウィスカー繊維から成る群から選択された少なくとも1種の材料から構成することが好ましい。尚、熱可塑性樹脂に含有される無機繊維は1種類に限定されず、2種類以上の無機繊維を熱可塑性樹脂に含有させてもよい。
【0089】
無機繊維の平均長さは、重量平均長さを意味する。無機繊維の長さの測定は、熱可塑性樹脂の樹脂成分を溶解する液体に無機繊維を含有する成形用ペレット若しくは成形品を浸漬して樹脂成分を溶解するか、ガラス繊維の場合、600゜C以上の高温で樹脂成分を燃焼させて、残留する無機繊維を顕微鏡等で観察して測定することができる。通常、無機繊維を写真撮影して人が測長するか、専用の繊維長測定装置を使用して無機繊維の長さを求める。数平均長さでは微小に破壊された繊維の影響が大き過ぎるので、重量平均長さを採用することが好ましい。重量平均長さの測定に際しては、あまりに小さく破砕された無機繊維の破片を除いて測定する。無機繊維の公称直径の2倍よりも長さが短くなると測定が難しくなるので、例えば公称直径の2倍以上の長さを有する無機繊維を測定の対象とする。
【0090】
無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いた本発明の成形品の製造方法において得られる成形品として、自動車用ドアハンドルを挙げることもできる。自動車用ドアハンドルから成る成形品に要求される物性値を例示すると、以下の表1のとおりである。これらの特性を満足するためには、以下の表2に示す諸元を満足する無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。尚、自動車用ドアハンドルは、ドアに固定される本体部品、及び、バネあるいは固定部品によって本体部品と連結される取っ手部品から構成されており、外ヒンジタイプ又は内ヒンジタイプの引手式(プルアップ式)あるいはプッシュボタン式のアウトサイド・ドアハンドル、ドアトリムに埋め込まれた引手式のインサイド・ドアハンドルを例示することができる。
【0091】
【表1】
曲げ弾性率 :5.0GPa以上
好ましくは、5〜25GPa
線膨張係数 :3.0×10-5/deg以下
好ましくは
0.5〜3.0×10-5/deg
荷重撓み温度:140゜C以上
写像性 :85%以上
【0092】
【表2】
平均長さ:5μm〜400μm
好ましくは5μm乃至70μm
平均直径:0.01μm〜15μm
好ましくは0.1μm〜10μm
含有率 :15〜80重量%
好ましくは20〜60重量%
【0093】
また、無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いた本発明の成形品の製造方法においては、成形品の表面の少なくとも一部分に光反射薄膜を成膜する工程を更に含むことができる。この場合、光反射薄膜の厚さは、光を効果的に反射できる厚さであればよく、例えば、少なくとも50nm、好ましくは50nm乃至500nm、一層好ましくは100nm乃至300nmとすることが望ましい。尚、50nm未満では、反射率が十分でなくなる場合があり、一方、500nmを越えると成形品の表面平滑性が低下し反射率に問題を生じる場合がある。光反射薄膜を構成する材料として、例えば、金、白金、銀、クロム、ニッケル、リンニッケル、アルミニウム、銅、ベリリウム、ベリリウム銅、亜鉛等の金属又はこれらの金属化合物、合金を挙げることができる。成膜方法として、
(a)電子ビーム加熱法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着法等の各種真空蒸着法
(b)プラズマ蒸着法
(c)2極スパッタ法、直流スパッタ法、直流マグネトロンスパッタ法、高周波スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、バイアススパッタ法等の各種スパッタ法
(d)DC(Direct Current)法、RF法、多陰極法、活性化反応法、HCD(Hollow Cathode Discharge)法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法
等のPVD(Physical Vapor Deposition)法を挙げることができる。反射率とコストの観点からは、アルミニウムを真空蒸着することによって光反射薄膜を成膜することが最も好ましい。
【0094】
こうして得られた成形品の一形態としてミラーを挙げることができる。より具体的には、ルームミラー、ドアミラー、フェンダーミラー、スピードメーターに内蔵されるミラー等の車両車載ミラー、カメラ用ダハミラー、複写機用光学系ミラー、レーザビームプリンター用ポリゴンミラー等の光学系ミラーを例示することができる。ミラー部材(光反射薄膜を成膜する前の成形品)あるいはミラーから成る成形品に要求される物性値は、以下の表3のとおりである。尚、表3中、写像性は、光反射薄膜形成前の成形品に対する値である。これらの特性を満足するためには、以下の表4に示す諸元を満足する無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。本発明の成形品の製造方法によってミラーから成る成形品を製造すれば、ガラスから製造する従来のミラー作製方法よりも量産性に優れ、且つ、アセンブリー部分までも成形によって一体化できることから、部品の低減及びミラーの製造コストダウンが期待できる。
【0095】
【表3】
曲げ弾性率 :5.0GPa以上
線膨張係数 :3.0×10-5/deg以下
荷重撓み温度:100゜C以上
写像性 :85%以上(ミラー部材として)
【0096】
【表4】
平均長さ:5〜100μm
好ましくは5〜70μm
平均直径:0.01〜15μm
好ましくは0.1〜10μm
含有率 :15〜80重量%
【0097】
あるいは又、こうして得られた成形品の別の形態としてリフレクターを挙げることができる。より具体的には、ヘッドランプ、ターンランプ、サーチライト、回転灯、非常灯等に組み込まれたリフレクターを例示することができる。リフレクター部材(光反射薄膜を成膜する前の成形品)に要求される物性値を、以下の表5に例示する。これらの特性を満足するためには、以下の表6に示す諸元を満足する無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。本発明の成形品の製造方法によってリフレクターから成る成形品を製造すれば、ガラス又は熱硬化性樹脂から製造する従来のリフレクター作製方法よりも量産性に優れ、且つ、アセンブリー部分までも成形によって一体化できることから、部品の低減及びミラーの製造コストダウンが期待できるし、光源からの熱によってもリフレクターは変形せず、しかも熱による膨張量も極めて少ない。
【0098】
【表5】
線膨張係数 :3.0×10-5/deg以下
好ましくは
0.5〜3.0×10-5/deg
荷重撓み温度:140゜C以上
好ましくは140〜260゜C
【0099】
【表6】
平均長さ:5〜100μm
好ましくは5〜70μm
平均直径:0.01〜15μm
好ましくは0.05〜13μm
更に好ましくは0.1〜10μm
含有率 :15〜80重量%
【0100】
あるいは又、無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いた本発明の成形品の製造方法においては、成形品の表面の少なくとも一部分に塗膜を形成する工程を更に含むことができる。この場合、塗膜は、アクリル系塗料皮膜、ウレタン系塗料皮膜及びエポキシ系塗料皮膜から成る群から選択された少なくとも1種の塗料皮膜であることが好ましい。即ち、成形された成形品の表面から埃等を除去した後、成形品の表面に塗料を刷毛塗り、スプレー、静電塗装、浸漬法等の方法により塗布し、その後、乾燥することによって、成形品(例えば、自動車用外装部材)の表面の少なくとも一部分に塗膜を形成することができる。本発明によって得られた成形品に残留する歪みが小さいために、塗料溶液による成形品へのクラックが発生し難い。また、本発明によって得られた成形品の表面は写像性に優れており、塗装後も写像性に優れた外観を有する成形品を得ることができる。尚、原料樹脂の荷重撓み温度以下の硬化温度を有する塗料を使用することが好ましい。こうして得られた成形品の一形態である自動車用外装部材として、フロントフェンダー、リアフェンダー、ドア、ボンネット、ルーフ又はトランクフェードを例示することができる。このような自動車用外装部材としての成形品に要求される物性値を例示すると、以下の表7のとおりである。これらの特性を満足するためには、以下の表8の諸元を満足する無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。尚、先に説明した自動車用ドアハンドルの少なくとも一部分に塗膜を形成することもできる。
【0101】
【表7】
曲げ弾性率 :4.0GPa以上
好ましくは4.5GPa以上
線膨張係数 :4.0×10-5/deg以下
好ましくは
3.5×10-5/deg以下
荷重撓み温度:100゜C以上
好ましくは110゜C以上
【0102】
【表8】
平均長さ:5〜400μm
好ましくは5〜200μm
平均直径:0.01〜15μm
好ましくは0.1〜10μm
含有率 :15〜80重量%
好ましくは20〜60重量%
【0103】
あるいは又、無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いた本発明の成形品の製造方法においては、成形品の表面の少なくとも一部分にハードコート層を形成する工程を更に含むことができる。この場合、ハードコート層は、アクリル系ハードコート層、ウレタン系ハードコート層及びシリコーン系ハードコート層から構成された群から選択された少なくとも1種のハードコート層から成ることが好ましい。即ち、成形された成形品の表面から埃等を除去した後、アクリル系、ウレタン系又はシリコーン系のハードコート溶液から選択された溶液を、成形品の表面にディップ法、フローコート法、スプレー法等の方法により塗布し、その後、乾燥、硬化させることによって、成形品の表面の少なくとも一部分にハードコート層を形成することができる。成形品の表面のハードコート層の厚さは1μm乃至30μm、好ましくは3μm乃至15μmであることが望ましい。1μm未満ではハードコート層の耐久性が不足し、30μmを越えるとハードコート層にクラックが発生し易くなる。ハードコート層と成形品との間の密着性が十分でない場合には、プライマーコートを成形品に塗布した後にトップコートを塗布することで、密着力を向上させることができる。成形品に残留する歪みが小さいために、ハードコート層の形成に起因した成形品へのクラックの発生は生じ難い。また、本発明によって得られた成形品の表面は写像性に優れており、ハードコート層形成後も写像性に優れた外観を有する成形品を得ることができる。こうして得られた成形品の一形態として、フロント・ピラー、センター・ピラーあるいはリア・ピラーといった自動車用ピラーを挙げることができる。ハードコート層を形成する前の成形品に要求される物性値を例示すると、以下の表9のとおりである。これらの特性を満足するためには、以下の表10に示す諸元を満足する無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0104】
【表9】
曲げ弾性率 :4.0GPa以上
線膨張係数 :4.0×10-5/deg以下
荷重撓み温度:100゜C以上
【0105】
【表10】
平均長さ:5〜400μm
好ましくは5〜200μm
平均直径:0.01〜15μm
好ましくは0.1〜10μm
含有率 :15〜80重量%
好ましくは20〜60重量%
【0106】
あるいは又、本発明の成形品の製造方法において、平均粒子径0.1μm乃至1mm、好ましくは0.2μm乃至0.5mmの金属粉末、又は、平均厚さ0.1μm乃至200μm、好ましくは1乃至150μmで平均外径が平均厚さより大きい金属フレークを、0.01重量%乃至80重量%、好ましくは0.1重量%乃至60重量%、より好ましくは1重量%乃至50重量%含有する熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0107】
メタリック色調を有する熱可塑性樹脂製の成形品は、金属部品に比べ軽量であり、しかも、金属感を有しており、各種の自動車部品や工業製品の部品等に使用されている。通常、成形品にメタリック色調を付与するためには、メタリック色調を与える金属粒子を含んだ塗料を成形品に塗装したり、メタリック色調を与える金属粒子を成形品の原料樹脂に練り込む。成形品を塗装することによって、塗料に含有された金属粒子の大きさに関係なく、比較的容易に金属感を成形品の表面に付与することができる。しかしながら、成形品に深み感を与えようとした場合、クリヤーコートを重ね塗りしなければならず、成形品の製造工数が増加するという問題がある。一方、原料樹脂に金属粒子を練り込む方法においては、例えば、粒子径の小さい金属粒子を用いると成形品が濁った灰色になり易く、成形品に金属感を付与することが困難となる。また、粒子径の大きい金属粒子を用いると、金属粒子が成形品表面に析出するために、ギラギラした金属感が成形品表面に強く現れるという問題がある。それ故、金属粒子の粒子径を規定する必要があるが、そうした場合でも、クリヤーコートを施した場合の深み感のある色調を成形品の表面に付与することができない。そのため、現状では、成形品の原料樹脂に金属粒子を練り込む場合であっても、成形品の表面にクリアーコートを施し、成形品の表面に深み感のある色調を付与している。従来の技術において、成形品の表面に深み感が得られない理由は、成形品の表面に金属粒子が析出し、成形品の表面に凹凸が生じることにある。この現象は、金型部の材質と関係している。従来の技術においては、金型部は熱伝導性が良い金属材料から作製されているので、キャビティ内に導入された溶融樹脂は、金型部のキャビティ面と接触したとき、瞬時に冷却され始める。その結果、金属粒子を含む溶融樹脂に固化層が形成され、成形品の表面に金属粒子が析出し、光沢不良を生じる。本発明においては、キャビティ内に導入された溶融した熱可塑性樹脂が急冷されることがないために、金型部のキャビティ面と接触した溶融樹脂に固化層が形成されることが無く、成形品の表面に金属粒子が析出することが無く、光沢不良を生じることを確実に防止することができる。
【0108】
金属粉末又は金属フレークの含有率が0.01重量%未満では、成形品にはメタリック色調が不足する。一方、80重量%を越えると、成形品の外観にぎらついた感じしか得られず、あるいは又、金属粉末若しくは金属フレークが成形品の表面に析出する結果、成形品の表面に深み感を付与することが困難となる。金属粉末の平均粒子径が0.1μm未満では、深みのある金属感を得られない。一方、1mmを越えると、金属粉末が成形品表面に析出し易くなるために深み感が得られなくなる。また、金属フレークを用いる場合、平均厚さが0.1μm未満では、樹脂と混練する際、金属フレークに亀裂が生じるため、成形品のメタリック色調が低減する。一方、平均厚さが200μmを越えると、金属フレークが成形品の表面に析出し易くなり、成形品の表面に深み感を付与することが困難となる。また、平均外径が平均厚さより小さいと、成形品の表面に深み感を付与することが困難となる。
【0109】
金属粉末の平均粒子径、金属フレークの平均厚さや平均外径は、画像解析装置を用いて測定することができる。金属粉末、金属フレークが樹脂に含有されている場合、樹脂を炭化するか、溶剤で樹脂を溶解した後、金属粉末の平均粒子径、金属フレークの平均厚さや平均外径を測定すればよい。
【0110】
金属粉末若しくは金属フレークを構成する金属としては、金、銀、白金、銅、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、又はこれらの化合物、合金を挙げることができる。中でも、金属粉末を酸化クロム粉末又はアルミニウム粉末から構成し、あるいは又、金属フレークをアルミニウムフレークから構成することが、深み感のあるメタリック色調を得るために、コストあるいは外観的な観点から好ましい。
【0111】
尚、この場合、熱可塑性樹脂には、無機繊維を1乃至50重量%、好ましくは5乃至40重量%含有させることができる。尚、この場合、金属粉末若しくは金属フィラーと無機繊維の合計重量%を50重量%以下とすることが好ましい。無機繊維として、ガラス繊維、ガラスビーズ、カーボン繊維、ウォラストナイト、ほう酸アルミニウムウィスカー繊維、チタン酸カリウムウィスカー繊維、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー繊維、珪酸カルシウムウィスカー繊維、硫酸カルシウムウィスカー繊維を挙げることができる。無機繊維の含有率が少なすぎると成形品の強度が不十分となる場合がある。一方、無機繊維の含有率が50重量%を越えると、成形品表面に無機繊維が析出する虞がある。
【0112】
【実施例】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
【0113】
(実施例1)
実施例1の金型組立体は、本発明の金型組立体の第1の態様に関する。図1に模式的な端面図を示す実施例1の金型組立体は、(イ)キャビティ14が設けられ、熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形するための第1の金型部(可動金型部)10及び第2の金型部(固定金型部)11、(ロ)第2の金型部11に配置され、第1の金型部10と第2の金型部11とを型締めした状態において形成されるキャビティ14内に溶融熱可塑性樹脂を導入するための溶融樹脂導入部13、並びに、(ハ)第1の金型部10に配設され、キャビティ14の一部を構成する、表面に薄膜16が形成された入れ子15を備えている。第1の金型部10と第2の金型部11とを型締めした状態において、入れ子15の表面15Aと、入れ子15の表面15Aと対向する第2の金型部11の面(実施例1においてはパーティング面PL2)との間のクリアランスC11は0.03mm以下(C11≦0.03mm)である。尚、図1の(A)は金型組立体を型締めした状態を示し、図1の(B)は金型組立体を型開きした状態を示す。
【0114】
実施例1において成形される成形品の寸法を、外形100mm×100mmとし、肉厚が4mm、深さ15mmの箱形とした。実施例1の金型組立体におけるキャビティ14の寸法を、かかる形状の成形品が成形できるような寸法とした。
【0115】
実施例1においては、入れ子15をジルコニア(ZrO2)から作製した。入れ子15の厚さを3.0mmとした。尚、ジルコニアの弾性率は2×106kgf/cm2であり、熱伝導率は0.8×10-2cal/cm・sec・degである。入れ子15は、厚さ3.0mmとなるように、ジルコニアをプレス成形した後、焼成して作製した。そして、入れ子15のキャビティ面15Aに対してダイヤモンド砥石を用いた研磨及び仕上げを行ない、入れ子15のキャビティ面15Aの表面粗さRmaxを0.02μmとした。
【0116】
薄膜16の厚さを0.5μmとし、薄膜を構成する材料をアモルファスダイヤモンドとした。この薄膜16のビッカース硬度は1500Hvであり、動摩擦係数(μ)は0.2であった。入れ子15の表面における薄膜16の形成は、以下表11の条件に基づくプラズマCVD法にて行った。
【0117】
【表11】
使用ガス:CH4/H2
圧力 :10-3〜10-2Pa
温度 :約400゜C
【0118】
動摩擦係数(μ)の測定は、スラスト式摺動試験を用いて行った。この試験においては、鈴木式試験機及び試験方法を採用した。鈴木式試験機の概要を図50に示す。リング状の入れ子を作製し、その表面に薄膜を形成して、入れ子試料を得る。一方、内径20mm、外径25.6mm、高さ15mmのリングをSUJ2(ステンレス鋼)から作製した。試験においては、リング状の入れ子試料を下方の試料ホルダーに取り付ける。一方、SUJ2製のリングを上方の試料ホルダーに取り付ける。尚、入れ子試料の表面に形成された薄膜とSUJ2製のリングとを接触させる。そして、試料ホルダーに取り付けられたリング状の入れ子試料に所定の面圧(5N/cm2)の荷重を加え、リング状の入れ子試料を所定の線速度でモータ(図示せず)によって回転させる。そして、所定の測定時間(20時間)が経過した後の平衡状態になった動摩擦係数(μ)を、以下の式から求める。
μ=(f・r)/(N・R)
ここで、fは、リング状の入れ子に取り付けられたロードセルにて測定された摩擦力であり、rは回転軸の中心からロードセルまでの距離であり、Nは荷重であり、RはSUJ2製のリングの平均半径である。尚、荷重は、(面圧)×(摺動面積)から求めることができる。
【0119】
一方、第1の金型部(可動金型部)10を炭素鋼S55Cから作製し、切削加工を行い、第1の金型部10に入れ子装着部10Aを設けた(図2の(A)参照)。そして、入れ子装着部10Aに入れ子15をボルト17を用いて固定した(図2の(B)参照)。尚、ボルト17は図2の(B)に2カ所のみ図示したが、必要とされる本数のボルト17を用いて、入れ子15を固定すればよい。また、第2の金型部(固定金型部)11を炭素鋼S55Cから作製した。第2の金型部11の中央に直径5mmのダイレクトゲート構造を有する溶融樹脂導入部13を設けた(図2の(C)参照)。
【0120】
このように作製した第1の金型部(可動金型部)10と第2の金型部(固定金型部)11とを組み付けて本発明の金型組立体を得た。第1の金型部10と第2の金型部11とを型締めした状態において、入れ子15の表面15Aと、入れ子15の表面15Aと対向する第2の金型部11の面(実施例1においてはパーティング面PL2)との間のクリアランスC11は0.02mm(C11=0.02mm)であった。このような構造にすることで、入れ子15の外周部は、第2の金型部11、及びキャビティ14内に導入された溶融樹脂と接触しなくなる。
【0121】
完成した金型組立体を成形装置に取り付けた後、金型組立体を金型温調機を用いて130゜Cまで加熱後、40゜Cまで急冷しても、ジルコニアから作製された入れ子15に割れ等の損傷は発生しなかった。また、薄膜16にも損傷は生じなかった。
【0122】
成形装置として住友重機械株式会社製、SH−100射出成形機を用い、金型組立体を80゜Cに加熱した。熱可塑性樹脂として、平均長さ200μm、平均直径13μmのガラス繊維を30重量%添加したポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂から成るポリマーアロイ材料(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、GMB4030、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の重量割合=7/3)を用いて、射出成形を行なった。成形条件を表12のとおりとした。尚、このような熱可塑性樹脂を用いた場合、薄膜16と熱可塑性樹脂との剥離強度(Tg−10゜Cにて測定)は0.02kgf/cmであった。溶融樹脂導入部(ダイレクトゲート部)13を介してキャビティ14へ溶融樹脂を導入(射出)した状態を図3に模式的な端面図にて示す。そして、所定量の溶融樹脂を溶融樹脂導入部13を介してキャビティ14内に導入(射出)した後、20秒後に金型組立体の型開きを行い、成形品を金型組立体から取り出した。
【0123】
【表12】
金型温度: 80゜C
樹脂温度:290゜C
射出圧力:800kgf/cm2−G
【0124】
入れ子15と接していた成形品の表面にはガラス繊維の析出(浮き)もなく、成形品は非常に高い鏡面性を有していた。また、フローマーク及びジェッティング等の成形不良も全く認められなかった。更には、アモルファスダイヤモンドから成る薄膜16と使用した熱可塑性樹脂との剥離強度が0.02kgf/cmであるため、金型部からの成形品の離型もスムーズであり、成形品に剥離マークは認められなかった。連続して成形を10000回行ったが、入れ子15や薄膜16に損傷は発生しなかった。
【0125】
(実施例2)
実施例2の金型組立体も、本発明の金型組立体の第1の態様に関する。実施例2の金型組立体が実施例1の金型組立体と相違する点は、金型組立体がキャビティの容積を可変とし得る構造(実施例2においては印篭構造)を有する点にある。
【0126】
図4に模式的な端面図を示す実施例2の金型組立体を構成する要素は、基本的には、実施例1の金型組立体を構成する要素と同じであるので詳細な説明は省略する。実施例2においては、成形される成形品の寸法を、外形100mm×100mmとし、肉厚が4mm、深さ10mmの箱形とした。実施例2の金型組立体におけるキャビティ14の寸法を、かかる形状の成形品が成形できるような寸法とした。
【0127】
実施例2においても、入れ子15をジルコニア(ZrO2)から作製した。入れ子15の厚さを3.0mmとした。入れ子15は、厚さ3.0mmとなるようにジルコニアをプレス成形した後、焼成して作製した。そして、入れ子15のキャビティ面15Aに対して、ダイヤモンド砥石を用いた研磨及び仕上げを行ない、入れ子15のキャビティ面15Aの表面粗さRmaxを0.02μmとした。実施例2の金型組立体においては、第1の金型部10に配設された入れ子15の表面の一部分15Bと第2の金型部11のパーティング面PL2とが対向しており、金型組立体が完全に型締めされていなくともキャビティ14が形成されるように、僅かなクリアランスC11(実施例2においては0.01mm)をもって第1の金型部10に配設された入れ子15の表面の一部分15Bと第2の金型部11のパーティング面PL2が嵌合する構造とした(図4の(A)参照)。
【0128】
薄膜16の厚さを3μmとし、薄膜を構成する材料をTiNとした。この薄膜16のビッカース硬度は2000Hvであり、動摩擦係数(μ)は0.3であった。入れ子15の表面における薄膜16の形成は、以下の表13の条件に基づくプラズマCVD法にて行った。
【0129】
【表13】
使用ガス:TiCl4/N2/H2
圧力 :約10-3Pa
温度 :約500゜C
【0130】
一方、第1の金型部(可動金型部)10を炭素鋼HPM1から作製し、切削加工を行い、第1の金型部10に入れ子装着部を設けた。そして、入れ子装着部に入れ子15をボルト17を用いて固定した。また、第2の金型部(固定金型部)11を炭素鋼HPM1から作製した。第2の金型部の中央に直径5mmのダイレクトゲート構造を有する溶融樹脂導入部13を設けた。
【0131】
このように作製した第1の金型部(可動金型部)10と第2の金型部(固定金型部)11とを組み付けて本発明の金型組立体を得た。第1の金型部10と第2の金型部11とを型締めした状態において、入れ子15の表面の一部分15Bと、入れ子15の表面の一部分15Bと対向する第2の金型部11の面(実施例2においてはパーティング面PL2)との間のクリアランスC11は0.01mm(C11=0.01mm)であった。このような構造にすることで、入れ子15の外周部は、第2の金型部11、及びキャビティ14内に導入された溶融樹脂と接触しなくなる。
【0132】
完成した金型組立体を成形装置に取り付けた後、金型組立体を金型温調機を用いて130゜Cまで加熱後、40゜Cまで急冷しても、ジルコニアから作製された入れ子15に割れ等の損傷は発生しなかった。また、薄膜16にも損傷は生じなかった。
【0133】
成形装置として射出圧縮成形可能な東芝機械株式会社製、IS100プレストロール射出成形機を用い、金型組立体を80゜Cに加熱した。そして、成形すべき成形品の容積(VM)よりもキャビティ14の容積(VC)が大きくなるように、第1の金型部10と第2の金型部11とを型締めした(図4の(A)参照)。尚、型締め時、成形すべき成形品の容積(VM)とキャビティの容積(VC)の関係は、成形すべき成形品の厚さは4mm(=t0)であり、型締め時における成形品の厚さ方向のキャビティの距離をt1としたとき、t1=6mmとした。即ち、Δt=t1−t0としたとき、Δtは2mmであり、0.1mm≦Δt≦6mmを満足している。
【0134】
熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂として、平均長さ200μm、平均直径13μmのガラス繊維を30重量%添加したポリアミド系樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ポリアミド6、製品名1015G30)を用いて、射出成形を行なった。成形条件を表14のとおりとした。尚、TiNから成る薄膜16と上記熱可塑性樹脂との剥離強度は0.05kgf/cmであった。
【0135】
【表14】
金型温度: 80゜C
樹脂温度:260゜C
射出圧力:300kgf/cm2−G
【0136】
所定量の80%の溶融樹脂を溶融樹脂導入部13を介してキャビティ14内に導入(射出)した後(図5の(A)参照)、キャビティ14の容積を成形すべき成形品の容積(容積:VM)まで減少させながら、所定量の溶融樹脂の導入を完了させた(図4の(B)及び図5の(B)参照。但し、図4の(B)と図5の(B)は同じ図であり、図4の(B)においては溶融樹脂の図示を省略した)。次いで、20秒後に金型組立体の型開きを行い、成形品を金型組立体から取り出した。
【0137】
成形品の表面にはガラス繊維の析出もなく、成形品は非常に高い鏡面性を有していた。また、成形品には、フローマーク及びジェッティング等の成形不良も認められなかった。TiNから成る薄膜16と上記熱可塑性樹脂との剥離強度は0.05kgf/cmであるため、成形品の離型もスムースであり、剥離マークの発生もなかった。連続して成形を10000回行ったが、入れ子15に割れ等の損傷は発生せず、薄膜16にも損傷は発生しなかった。
【0138】
このように、成形品の成形時、キャビティの容積を可変とし得る構造を有する金型組立体を用いれば、成形品の表面を均一に圧縮することが可能となることから、成形品の表面にヒケが発生することを抑制することができる。
【0139】
尚、場合によっては、第1の金型部のパーティング面と第2の金型部とのパーティング面とで印篭構造が形成されていてもよい。
【0140】
(比較例1)
実施例1にて用いた金型組立体において、入れ子15をRmax0.02μmまで鏡面仕上げをした炭素鋼(熱伝導率11×10-2cal/cm・sec・deg)から作製した入れ子に取り替えて成形を行った。尚、実施例1と同様の熱可塑性樹脂を使用し、実施例1と同様の成形条件にて成形を行った。
【0141】
その結果、キャビティ14内での溶融樹脂の流動性が悪く、キャビティ14内を完全に溶融樹脂で充填することができなかった。そこで、射出圧力を200kgf/cm2−G増加させ、1000kgf/cm2−Gとして成形を行なった。得られた成形品には、フローマーク及びジェッテイング等の成形不良が生じていた。また、成形品表面にはガラス繊維が析出しており、実施例1にて得られた成形品と比較すると、比較例1にて得られた成形品の鏡面性は著しく劣っていた。
【0142】
(比較例2)
比較例2においては、実施例1の金型組立体を用いた。但し、入れ子15の表面に薄膜を形成しなかった。そして、実施例1と同様の熱可塑性樹脂を使用し、実施例1と同様の成形条件にて成形を行った。
【0143】
その結果、成形後に金型組立体から成形品を取り出す際、離型することができず、圧縮空気を用いて成形品と金型部のキャビティ面との間に強制的に空隙を設けることによって、ようやく成形品を金型組立体から離型することができた。また、ジルコニアから作製された入れ子15と熱可塑性樹脂との剥離強度は2.8kgf/cmであったため、成形品の表面には剥離マークが発生しており、また、ガラス繊維の析出は無いものの、醜い外観であった。
【0144】
(比較例3)
比較例3においては、実施例2の金型組立体を用いた。比較例3が実施例2と相違する点は、入れ子15の表面に形成した薄膜を、ビッカース硬度500HvのSiO2から成る厚さ10μmの薄膜とした点にある。そして、実施例2と同様の熱可塑性樹脂を使用し、実施例2と同様の成形条件にて成形を行った。
【0145】
SiO2から成る薄膜と熱可塑性樹脂との剥離強度は3.3kgf/cmであったため、成形後、成形品の金型組立体からの離型性が悪く、圧縮空気を用いて成形品と金型部のキャビティ面との間に強制的に空隙を設けることによって、ようやく成形品を金型組立体から離型することができた。成形品の表面には剥離マークが発生していた。連続して10000回の成形を行ったが、薄膜のビッカース硬度が500Hvしかなかったため、成形を繰り返すうちに薄膜に微細な傷が発生し、成形品の表面状態が悪くなった。
【0146】
(比較例4)
比較例4においては、実施例1にて説明した金型組立体を用いた。比較例4が実施例1と相違する点は、入れ子を、弾性率0.2×102kgf/cm2のガラス繊維添加エポキシ樹脂から作製した点にある。尚、入れ子の表面には、実施例1と同様にアモルファスダイヤモンドから成る厚さ0.5μmの薄膜を形成した。そして、実施例1と同様の熱可塑性樹脂を使用し、実施例1と同様の成形条件にて成形を行った。
【0147】
その結果、成形回数が少ないうちは、成形品の離型性及び外観は実施例1とほぼ同等であった。しかしながら、成形回数が100回を越えると、入れ子の弾性率が低いために、特に溶融樹脂導入部13近傍に位置する入れ子の部分が樹脂圧力や熱によって変形して、成形品の表面がうねる現象が発生してきた。
【0148】
(比較例5)
比較例5においては、実施例1にて説明した金型組立体を用いた。比較例5が実施例1と相違する点は、入れ子15の表面に形成したアモルファスダイヤモンドから成る薄膜の膜厚を0.008μm及び75μmとした点にある。そして、実施例1と同様の熱可塑性樹脂を使用し、実施例1と同様の成形条件にて成形を行った。
【0149】
その結果、薄膜の厚さが0.008μmの場合、成形回数15回までは、成形品の離型性及び外観は実施例1と同等であった。しかしながら、それ以降の成形においては、薄膜が入れ子から部分的に剥離したため、成形品の離型不良が発生し、また、成形品の表面に剥離マークが発生するようになった。一方、薄膜の厚さが75μmの場合、金型温度昇温時から薄膜にクラックが入り、更には、成形を行っても成形品表面にガラス繊維の析出が生じるなど、良好なる成形品を得ることができなかった。
【0150】
(実施例3)
図6の(A)に模式的な端面図を示す実施例3の金型組立体も、本発明の金型組立体の第1の態様に関する。実施例3の金型組立体が実施例1の金型組立体と相違する点は、金型組立体に加圧流体注入装置18を備えた点にある。この加圧流体注入装置18は周知の加圧流体注入ノズルから成り、キャビティ14に開口するように第2の金型部11に配設されている。加圧流体注入装置18は、図示しない配管を介して加圧流体源に接続されている。
【0151】
実施例3の金型組立体を構成する要素は、基本的には、実施例1の金型組立体を構成する要素と同じであるので詳細な説明は省略する。そして、実施例1と同じ熱可塑性樹脂を用い、実施例1と同様の成形条件で成形を行った。尚、実施例3においては、キャビティ14内を完全に満たすだけの溶融樹脂を溶融樹脂導入部13からキャビティ14内に導入(射出)した後、直ちに、加圧流体注入装置18から加圧流体である窒素ガス(圧力:70kgf/cm2−G)をキャビティ14内の溶融樹脂の内部に注入し、キャビティ14内の樹脂内部に中空部を形成した。この状態を図6の(B)に模式的に示す。キャビティ14内の樹脂が冷却するまで、中空部を加圧流体で加圧した。キャビティ14内の樹脂が冷却した後、中空部内の加圧流体を加圧流体注入装置18を介して大気に解放した。そして、金型組立体の型開きを行い、成形品を金型組立体から取り出した。
【0152】
成形品の表面にはガラス繊維の析出もなく、成形品は非常に高い鏡面性を有していた。また、成形品には、フローマーク及びジェッティング等の成形不良も認められず、成形品の内部には所望の中空部が形成されていた。しかも、成形品にヒケが発生することを確実に防止でき、更には、入れ子と接触する溶融樹脂の冷却・固化が遅延されるので、入れ子のキャビティ面近傍の固化し始めた樹脂の部分と内部の樹脂とが相互に混じり合うといった現象の発生を回避することができ、肉厚部近傍の成形品表面に色ムラや外観不良が発生することを防止できた。また、成形品の離型もスムースであり、剥離マークの発生もなかった。
【0153】
連続して成形を10000回行ったが、入れ子15に割れ等の損傷は発生せず、薄膜16にも損傷は発生しなかった。
【0154】
(実施例4)
図7の(A)に模式的な端面図を示す実施例4の金型組立体は、本発明の金型組立体の第2の態様に関する。実施例4の金型組立体においては、入れ子15は第1の金型部(可動金型部)10に配設され、第2の金型部(固定金型部)11には入れ子被覆部12が設けられている。そして、第1の金型部10と第2の金型部11とを型締めした状態において、入れ子15と入れ子被覆部12との間のクリアランスC21は0.03mm以下(C21≦0.03mm)であり、且つ、入れ子15に対する入れ子被覆部12の重なり量ΔS21は0.5mm以上(ΔS21≧0.5mm)である。尚、実施例4においては、入れ子被覆部12の構造は、入れ子と15のキャビティ面15Aと対向する第2の金型部11の面に設けられた一種の切り込み(切り欠き)11Aとした。溶融樹脂導入部13の構造をダイレクトゲート構造とした。実施例4の金型組立体を型締めしたときの模式的な端面図を図7の(A)に示し、型開きしたときの模式的な端面図を図8の(A)に示す。また、組み立て中の金型組立体の模式的な端面図を、図7の(B)及び(C)に示す。
【0155】
実施例4の金型組立体においては、ジルコニアから成る入れ子15の厚さを3.00mmとした。
【0156】
実施例4の金型組立体におけるキャビティ14の大きさは、100mm×100mm×4mmであり、形状は直方体である。入れ子15の大きさは、102.00mm×102.00mm×3.00mmである。尚、入れ子15を研削加工にて作製し、入れ子15のキャビティ面15Aに対して、ダイヤモンド砥石を用いた研磨及び仕上げを行ない、入れ子15のキャビティ面15Aの表面粗さRmaxを0.02μmとした。次いで、実施例1と同様の方法で、入れ子15の表面にアモルファスダイヤモンドから成る薄膜16を形成した。
【0157】
第1の金型部(可動金型部)10を炭素鋼S55Cから作製した。入れ子15のための入れ子装着部10Aの内寸法が102.20mm×102.20mm、深さが3.02mmとなるように切削加工して、入れ子装着部10Aを設け(図7の(B)参照)、次いで、入れ子15をシリコン系接着剤(図示せず)を用いて入れ子装着部10A内に接着した(図7の(C)参照)。隙間ゲージを用いて入れ子15と入れ子装着部10Aとの間のクリアランス(D)を測定したところ、最低クリアランスは0.05mmであった。
【0158】
一方、第2の金型部(固定金型部)11を炭素鋼S55Cから作製した。第2の金型部(固定金型部)11の中央に直径5mmのダイレクトゲート構造を有する溶融樹脂導入部13を設けた。
【0159】
このように作製した第1の金型部(可動金型部)10及び第2の金型部(固定金型部)11を組み付けて実施例4の金型組立体を得た。この金型組立体において、入れ子15と入れ子被覆部12との間のクリアランス(C21)は0.02mm(C21=0.02mm)であった。また、入れ子15に対する入れ子被覆部12の重なり量(ΔS21)は1.0mm(ΔS21=1.0mm)であった。以上のとおり、入れ子15の端部とキャビティ14に導入された溶融樹脂との間には接触がない構造とした。
【0160】
完成した金型組立体を成形装置に取り付けた後、金型組立体を金型温調機を用いて130゜Cまで加熱後、40゜Cまで急冷しても、ジルコニアから作製された入れ子15に割れ等の損傷は発生しなかった。また、薄膜16に損傷が発生することも無かった。
【0161】
実施例1と同じ成形装置、熱可塑性樹脂を用い、実施例1と同じ成形条件にて成形を行った。キャビティ14内へ溶融樹脂を導入(射出)した状態を図8の(B)に模式的な端面図にて示す。入れ子15と接していた成形品の表面にはガラス繊維の析出(浮き)もなく、非常に高い鏡面性を有していた。また、フローマーク及びジェッティング等の成形不良もなかった。更には、金型部からの成形品の離型もスムーズであり、成形品に剥離マークは認められなかった。連続して成形を10000回行ったが、入れ子15や薄膜16に損傷は発生しなかった。
【0162】
(実施例5)
図9の(A)に模式的な一部端面図を示す実施例5の金型組立体は、本発明の金型組立体の第3の態様に関する。実施例5の金型組立体においては、入れ子15は第1の金型部(固定金型部)10に配設されており、キャビティ14の一部を構成し、入れ子15の端部を被覆する被覆プレート19を更に備えている。入れ子15は第1の金型部10に配設され、第1の金型部(固定金型部)10と第2の金型部(可動金型部)11とを型締めした状態において、入れ子15と被覆プレート19との間のクリアランスC31は0.03mm以下(C31≦0.03mm)であり、且つ、入れ子15に対する被覆プレート19の重なり量ΔS31は0.5mm以上(ΔS31≧0.5mm)である。尚、図9の(A)に示した金型組立体の組み立て中の模式的な端面図を、図9の(B)及び(C)に示す。
【0163】
入れ子15を、ジルコニア(ZrO2)から研削加工にて作製した。そして、入れ子15のキャビティ面15Aに対してダイヤモンド砥石及び酸化セリウム砥石を用いた研磨及び仕上げを行ない、入れ子15のキャビティ面15Aの表面粗さRmaxを0.02μmとした。次いで、実施例1と同様の方法で、入れ子15の表面にアモルファスダイヤモンドから成る薄膜16を形成した。
【0164】
第1の金型部(固定金型部)10を炭素鋼S55Cから作製した。炭素鋼S55Cを切削加工して、入れ子装着部10Aを設けた。次いで、入れ子15を、2液硬化型エポキシ系接着剤(図示せず)を用いて、入れ子装着部10A内に仮り止めした(図9の(B)参照)。尚、仮り止め後、隙間ゲージを用いて入れ子15と入れ子装着部10Aのクリアランス(D)を測定し、最低クリアランスが0.005mm以上となるように、入れ子装着部10Aの切削加工を行った。一方、第2の金型部(可動金型部)11を炭素鋼S55Cから作製した。
【0165】
炭素鋼S55Cから被覆プレート19を作製した。被覆プレート19を切削加工した後、第1の金型部10にビス(図示せず)を用いて固定した(図9の(C)参照)。被覆プレート19はキャビティ14の一部を構成し、しかも、被覆プレート19は入れ子15の全周囲を覆っている。被覆プレート19には、サイドゲート構造の溶融樹脂導入部13が設けられている。尚、図9の(C)には溶融樹脂導入部13の図示を省略した。入れ子15と被覆プレート19との間のクリアランス(C31)が0.03mm以下となるように、また、入れ子15に対する被覆プレート19の重なり量(ΔS31)が0.5mm以上となるように、被覆プレート19を切削加工した。
【0166】
あるいは又、金型組立体の模式的な一部端面図を図10の(A)に示すように、成形すべき成形品の形状に依り、曲面を有する入れ子15を用いることもできる。この場合には、第1の金型部10を炭素鋼S55Cから作製し、入れ子装着部10Aの切削加工を行い、第1の金型部10に設けられた入れ子装着部10Aの底部の曲率半径を、入れ子装着部と対向する入れ子15の裏面(キャビティ面と反対の面)の曲率半径に合わせることが好ましい。被覆プレート19は炭素鋼S55Cから作製することができる。被覆プレート19の入れ子15に対向する面の曲率半径を入れ子15のキャビティ面15Aの曲率半径と一致させることが好ましい。被覆プレート19を切削加工した後、第1の金型部10にビス(図示せず)を用いて固定することができる。また、第2の金型部11は炭素鋼S55Cから作製すればよい。あるいは又、図10の(B)に模式的な一部端面図を示すように、入れ子15を装着する第1の金型部10の部分を、第1の金型部10に装着された入れ子装着用中子10Bから構成することもできる。この場合、入れ子装着用中子10Bに入れ子装着部を設ける。
【0167】
更には、被覆プレート19にサイドゲート構造の溶融樹脂導入部13を設ける代わりに、図11に示すように、被覆プレート19には溶融樹脂導入部を設けずに、第2の金型部11の中央にダイレクトゲート構造を有する溶融樹脂導入部13を設けてもよい。尚、この場合には、第1の金型部10は可動金型部に相当し、第2の金型部11は固定金型部に相当する。
【0168】
実施例5の金型組立体を用いた成形品の製造方法は、実質的には実施例1にて説明した成形品の製造方法と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0169】
(実施例6)
実施例6の金型組立体は、本発明の金型組立体の第4の態様に関する。実施例6の金型組立体を型締めしたときの模式的な端面図を図12の(A)及び(B)に示し、型開きしたときの模式的な端面図を図14に示す。また、組み立て中の金型組立体の模式的な端面図を、図13の(A)、(B)及び(C)に示す。尚、図12の(A)、図13の(A)〜(C)及び図14は、垂直面で被覆プレートを含む金型組立体の領域を切断したときの図であり、図12の(B)はかかる垂直面と平行な垂直面で被覆プレートを含まない金型組立体の領域を切断したときの図である。
【0170】
実施例6の金型組立体においては、入れ子25と第2の金型部(可動金型部)21との間に配設され、第1の金型部(固定金型部)20に取り付けられ、溶融樹脂導入部23が設けられた被覆プレート29を更に備え、第2の金型部21には、入れ子被覆部22が設けられており、第1の金型部20と第2の金型部21とを型締めした状態において、入れ子25と入れ子被覆部22との間のクリアランスC41は0.03mm以下(C41≦0.03mm)であり、入れ子25に対する入れ子被覆部22の重なり量ΔS41は0.5mm以上(ΔS41≧0.5mm)であり、入れ子25と被覆プレート29との間のクリアランスC42は0.03mm以下(C42≦0.03mm)であり、入れ子25に対する被覆プレート29の重なり量ΔS42は0.5mm以上(ΔS42≧0.5mm)である。図12の(A)及び(B)に示すように、被覆プレート29は入れ子25の一部分と一部分とのみ重なり合っている。実施例6の金型組立体における溶融樹脂導入部23はサイドゲート構造である。尚、入れ子被覆部22は、入れ子25のキャビティ面25Aと対向する第2の金型部21の面に設けられた一種の切り込み(切り欠き)21Aである。
【0171】
実施例6の金型組立体におけるキャビティ24の大きさは、100mm×100mm×4mmであり、形状は直方体である。入れ子25の大きさは、102.00mm×102.00mm×3.00mmである。尚、入れ子25を研削加工にて作製し、入れ子25のキャビティ面25Aに対して、ダイヤモンド砥石を用いた研磨及び仕上げを行ない、入れ子25のキャビティ面25Aの表面粗さRmaxを0.02μmとした。次いで、実施例1と同様の方法で、入れ子25の表面にアモルファスダイヤモンドから成る薄膜26を形成した。
【0172】
第1の金型部(固定金型部)20を炭素鋼S55Cから作製した。入れ子25のための入れ子装着部20Aの内寸法が102.20mm×102.20mm、深さが3.02mmとなるように切削加工して、入れ子装着部20Aを設け(図13の(A)参照)、次いで、入れ子25をシリコン系接着剤(図示せず)を用いて入れ子装着部20A内に接着した(図13の(B)参照)。隙間ゲージを用いて入れ子25と入れ子装着部20Aとの間のクリアランス(D)を測定したところ、最低クリアランスは0.05mmであった。
【0173】
炭素鋼にて被覆プレート29を作製し、所定位置にボルト(図示せず)にて第1の金型部20に取り付けた(図13の(C)参照)。尚、被覆プレート29には溶融熱可塑性樹脂導入部(ゲート部)23が設けられている。被覆プレート29の入れ子と対向する面29Aと、入れ子25との間のクリアランス(C42)は0.02mm(C42=0.02mm)であり、入れ子25に対する被覆プレート29の重なり量(ΔS42)は1.0mm(ΔS42=1.0mm)であった。
【0174】
一方、第2の金型部(可動金型部)21を炭素鋼S55Cから作製した。
【0175】
このように作製した第1の金型部(固定金型部)20及び第2の金型部(可動金型部)21を組み付けて実施例6の金型組立体を得た。この金型組立体において、入れ子25と入れ子被覆部22との間のクリアランス(C41)は0.02mm(C41=0.02mm)であった。また、入れ子25に対する入れ子被覆部22の重なり量(ΔS41)は1.0mm(ΔS41=1.0mm)であった。以上のとおり、入れ子25の端部とキャビティ24に導入された溶融樹脂との間には接触がない構造とした。
【0176】
完成した金型組立体を成形装置に取り付けた後、金型組立体を金型温調機を用いて130゜Cまで加熱後、40゜Cまで急冷しても、ジルコニアから作製された入れ子25に割れ等の損傷は発生しなかった。
【0177】
実施例1と同じ成形装置、熱可塑性樹脂を用い、実施例1と同じ成形条件にて成形を行った。入れ子25と接していた成形品の表面にはガラス繊維の析出(浮き)もなく、成形品は非常に高い鏡面性を有していた。また、フローマーク及びジェッティング等の成形不良もなかった。更には、金型部からの成形品の離型もスムーズであり、成形品に剥離マークは認められなかった。連続して成形を10000回行ったが、入れ子25や薄膜26に損傷は発生しなかった。
【0178】
(実施例7)
実施例7は、本発明の金型組立体の第5の態様に関する。実施例7の金型組立体の模式的な端面図を、図15に示す。また、組み立て中の金型組立体の模式的な端面図を、図16〜図18に示す。尚、図15の(A)、図16の(A),(C)、図17の(A),(C)及び図18の(A),(B)は、垂直面で被覆プレートを含む金型組立体の領域を切断したときの図であり、図15の(B)、図16の(B),(D)、及び、図17の(B),(D)は、かかる垂直面と平行な垂直面で被覆プレートを含まない金型組立体の領域を切断したときの図である。
【0179】
実施例7の金型組立体においては、入れ子が第1及び第2の金型部の両方に配置されている。第1の金型部(固定金型部)30に配置された入れ子を第1の入れ子35とし、第2の金型部(可動金型部)40に配置された入れ子を第2の入れ子45とした場合、第1の入れ子35と第2の入れ子45との間に配設され、第1の金型部30及び第2の金型部40に取り付けられ、溶融樹脂導入部(ゲート部)37が設けられた被覆プレート33,43が金型組立体には更に備えられている。そして、第1の金型部30と第2の金型部40とを型締めした状態において、第1の入れ子35の第2の入れ子45と対向する面と、第2の入れ子45の第1の入れ子35と対向する面との間のクリアランスC51は0.03mm(C51≦0.03mm)以下であり、第1の入れ子35の第2の入れ子45と対向する面と、第2の入れ子45の第1の入れ子35と対向する面との重なり量ΔS51は0.5mm以上(ΔS51≧0.5mm)であり、第1の入れ子35と被覆プレート33との間のクリアランスC52、及び第2の入れ子45と被覆プレート43との間のクリアランスC53は0.03mm以下(C52,C53≦0.03mm)であり、第1の入れ子35に対する被覆プレート33の重なり量ΔS52、及び第2の入れ子45に対する被覆プレート43の重なり量ΔS53は0.5mm以上(ΔS52,ΔS53≧0.5mm)であり、被覆プレート33,43は第1及び第2の入れ子35,45の一部分とのみ重なり合っている。
【0180】
実施例7の金型組立体におけるキャビティ38の大きさは100mm×100mm×3mmであり、形状は直方体である。実施例7においては、第1の入れ子35の厚さを3.00mmとし、第2の入れ子45の厚さを2.00mmとし、これらの入れ子をジルコニアから研削加工にて作製した。第1の入れ子35の大きさは、102.00mm×102.00mm×3.00mmである。第1の入れ子35のキャビティ面35Aに対して、ダイヤモンド砥石を用いた研磨及び仕上げを行ない、第1の入れ子35のキャビティ面35Aの表面粗さRmaxを0.02μmとした。次いで、実施例1と同様の方法で、入れ子35の表面にアモルファスダイヤモンドから成る薄膜36を形成した。
【0181】
第1の金型部(固定金型部)30を炭素鋼S55Cから作製した。第1の入れ子35のための入れ子装着部31の内寸法が、102.20mm×102.20mm、深さが3.02mmとなるように切削加工を行い、第1の金型部30に入れ子装着部31を設けた(図16の(C)及び(D)参照)。尚、参照番号32は、第1の被覆プレート取付部である。次いで、第1の入れ子35を、シリコン系接着剤(図示せず)を用いて、入れ子装着部31内に接着した(図17の(C)及び(D)参照)。隙間ゲージを用いて第1の入れ子35と入れ子装着部31との間のクリアランス(D)を測定したところ、最低クリアランスは0.05mmであった。
【0182】
ジルコニアをキャビティ面が凹形状になるようにプレス成形後、焼成することによって、第2の入れ子45を作製した。第2の入れ子45には凹部が設けられている。第2の入れ子45の外形寸法は106.00mm×106.00mmである。また、凹部の寸法は100.00mm×100.00mmであり、凹部の底面45Bの厚さは2.00mmであり、底面からの立ち上がり部45Cの厚さ(高さ)は5.00mmである。従って、キャビティ38を形成する部分の高さ(厚さ)は3.00mmである。第2の入れ子45の凹部の底面45B及び立ち上がり部45Cの内側面45A(これらの面はキャビティ面である)に対して、ダイヤモンド砥石を用いた研磨及び仕上げを行ない、これらの面の表面粗さRmaxを0.02μmとした。更には、第2の入れ子45の凹部の底面45Bと立ち上がり部45Cの境界部を、半径0.1mmの曲面とした。尚、第2の金型部40に第2の被覆プレート43を取り付けるために、第2の入れ子45の立ち上がり部45Cの一部は除去された形状となっている(図17の(A)及び(B)参照)。次いで、実施例1と同様の方法で、入れ子45の表面にアモルファスダイヤモンドから成る薄膜46を形成した。
【0183】
第2の金型部(可動金型部)40を炭素鋼S55Cから作製した。そして、第2の入れ子45のための入れ子装着部41の内寸法が、106.20mm×106.20mm、深さが5.02mmとなるように切削加工を行い、第2の金型部40に入れ子装着部41を設けた(図16の(A)及び(B)参照)。尚、参照番号42は、第2の被覆プレート取付部である。次いで、第2の入れ子45を、シリコン系接着剤(図示せず)を用いて、入れ子装着部41内に接着した(図17の(A)及び(B)参照)。隙間ゲージを用いて第2の入れ子45と入れ子装着部41との間のクリアランス(D)を測定したところ、最低クリアランスは0.05mmであった。
【0184】
炭素鋼にて第1の被覆プレート33を作製し、所定位置にボルト(図示せず)にて第1の金型部30に固定した(図18の(B)参照)。尚、第1の被覆プレート33には、溶融熱可塑性樹脂導入部の一部37Aが形成されている。また、炭素鋼にて第2の被覆プレート43を作製し、所定位置にボルト(図示せず)にて第2の金型部40に固定した(図18の(A)参照)。尚、第2の被覆プレート43には、溶融熱可塑性樹脂導入部の一部37Bが形成されている。第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、第1の被覆プレート33及び第2の被覆プレート43によって、溶融熱可塑性樹脂導入部37が構成される。
【0185】
このように作製した第1の金型部(固定金型部)30と第2の金型部(可動金型部)40を組み付けて実施例7の金型組立体を得た。この金型組立体において、第1の金型部30と第2の金型部40とを型締めした状態で、第1の入れ子35の第2の入れ子と対向する面35Aと、第2の入れ子45の第1の入れ子と対向する面45Dとの間のクリアランス(C51)は0.01mmであった。また、第1の被覆プレート33の第1の入れ子と対向する面34と、第1の入れ子35との間のクリアランス(C52)、第2の被覆プレート43の第2の入れ子と対向する面44と、第2の入れ子45との間のクリアランス(C53)は、それぞれ0.01mmであった。更には、第1の入れ子35の第2の入れ子と対向する面35Aと、第2の入れ子45の第1の入れ子と対向する面45Dとの重なり量(ΔS51)は1.0mmであり、第1の入れ子35に対する第1の被覆プレート33の重なり量(ΔS52)は1.0mmであった。一方、第2の入れ子45に対する第2の被覆プレート43の重なり量(ΔS53)は3.0mmであった。尚、第1及び第2の被覆プレート33,43は第1及び第2の入れ子35,45の一部分とのみ重なり合っている。
【0186】
完成した金型組立体を成形装置に取り付けた後、金型組立体を金型温調機を用いて130゜Cまで加熱後、40゜Cまで急冷しても、ジルコニアから作製された第1及び第2の入れ子35,45に割れ等の損傷は発生しなかった。
【0187】
実施例1と同じ成形装置、熱可塑性樹脂を用い、実施例1と同じ成形条件にて成形を行った。入れ子35,45と接していた成形品の表面にはガラス繊維の析出(浮き)もなく、成形品は非常に高い鏡面性を有していた。また、フローマーク及びジェッティング等の成形不良もなかった。更には、金型部からの成形品の離型もスムーズであり、成形品に剥離マークは認められなかった。連続して成形を10000回行ったが、入れ子35,45や薄膜36,46に損傷は発生しなかった。
【0188】
尚、実施例7においては、溶融熱可塑性樹脂導入部(ゲート部)37が設けられた被覆プレート33,43を、第1及び第2の金型部30,40に取り付けた構造としたが、被覆プレートを第1の金型部30若しくは第2の金型部40のいずれか一方に取り付ける構造とすることもできる。
【0189】
(実施例8)
実施例8における金型組立体は、実施例6の金型組立体の変形である。図19の(A)に模式的な端面図を示すように、実施例8の金型組立体においては、成形品の成形時、キャビティの容積を可変とし得る構造を有する。実施例8においては、例えば油圧シリンダー(図示せず)で可動させることができる中子27を金型組立体のキャビティ24内に配設する。そして、成形品の成形においては、型締め時、成形すべき成形品の容積(VM)よりもキャビティ24の容積(VC)が大きくなるように、第1の金型部20と第2の金型部21とを型締めし、且つ、キャビティ内における中子27の配置位置を制御する。そして、キャビティ(容積:VC)24内に溶融した熱可塑性樹脂を導入し、熱可塑性樹脂の導入開始前、開始と同時に、導入中に、あるいは導入完了後(導入完了と同時を含む)、図示しない油圧シリンダーの作動によって中子27を移動させて、キャビティ24の容積を成形すべき成形品の容積(VM)まで減少させる。この状態を図19の(B)に模式的に示す。このように、成形品の成形時、キャビティの容積を可変とし得る構造を有する金型組立体を用いれば、成形品の表面を均一に圧縮することが可能となることから、成形品の表面にヒケが発生することを抑制することができる。
【0190】
実施例1と同じ成形装置、熱可塑性樹脂を用い、実施例1と同じ成形条件にて成形を行った。入れ子25と接していた成形品の表面にはガラス繊維の析出(浮き)もなく、成形品は非常に高い鏡面性を有していた。また、フローマーク及びジェッティング等の成形不良もなかった。更には、金型部からの成形品の離型もスムーズであり、成形品に剥離マークは認められなかった。連続して成形を10000回行ったが、入れ子25や薄膜26に損傷は発生しなかった。
【0191】
(実施例9)
実施例9における金型組立体も、実施例6の金型組立体の変形である。図20の(A)に模式的な端面図を示すように、実施例9の金型組立体においては、加圧流体注入装置28が更に備えられている。尚、図20の(A)に示す例においては、加圧流体注入装置28の取り付け位置は、金型部に配設されそしてキャビティに開口する加圧流体注入装置取付部とした。そして、キャビティ24内に導入された溶融樹脂内に、加圧流体注入装置28から加圧流体を注入し、以て、キャビティ24内の熱可塑性樹脂の内部に中空部を形成する。尚、キャビティ24内への溶融樹脂の導入完了時の状態を図20の(B)に模式的に示し、溶融樹脂内への加圧流体の注入完了の状態を図21に模式的に示す。このように、キャビティ24内の溶融樹脂中に加圧流体を注入すれば、キャビティ24内の樹脂は金型部のキャビティ面に向かって加圧される結果、成形品にヒケが発生することを確実に防止し得る。しかも、入れ子25と接触する溶融樹脂の冷却・固化が遅延されるので、入れ子のキャビティ面近傍の固化し始めた樹脂の部分と内部の樹脂とが相互に混じり合うといった現象の発生を回避することができ、肉厚部近傍の成形品表面に色ムラや外観不良が発生することを防止し得る。
【0192】
実施例1と同じ成形装置、熱可塑性樹脂を用い、実施例1と同じ成形条件にて成形を行った。入れ子25と接していた成形品の表面にはガラス繊維の析出(浮き)もなく、成形品は非常に高い鏡面性を有していた。また、フローマーク及びジェッティング等の成形不良もなかった。更には、金型部からの成形品の離型もスムーズであり、成形品に剥離マークは認められなかった。また、成形品の内部には所望の中空部が確実に形成されていた。連続して成形を10000回行ったが、入れ子25や薄膜26に損傷は発生しなかった。
【0193】
(実施例10)
実施例10は、本発明の金型組立体の第2の態様に関し、且つ、金型組立体の第1の金型部にスライドコアが更に備えられた構造であって、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧流体を注入するための加圧流体注入装置を更に備えている金型組立体に関する。実施例10の金型組立体においては、成形品として車両用ルーフレールを製造する。実施例10にて作製された車両用ルーフレール50の模式的な斜視図を図22の(A)に、模式的な正面図を図22の(B)に、長手方向に沿った模式的な断面図を図22の(C)に示す。この車両用ルーフレール50は、レグ52と、荷物等を載置し固定するレール51とが一体化された部品であるルーフレールラックから成る。レール51及びレグ52には中空部54が形成されている。尚、参照番号53は溶融樹脂導入部の跡であり、後に除去される。車両用ルーフレール50の中央部には2カ所の貫通穴55が設けられている。
【0194】
車両用ルーフレールは、近年、レジャービークル系車両の増加と共に急増している車両用部品の1つであり、車両ルーフの外面にビス等を用いて取り付けられる。車両用ルーフレールは、通常、レグと呼ばれる車両ルーフに取り付けられる部品、荷物等を載置し固定するレールと呼ばれる部品、あるいは、かかるレグとレールとが一体化された部品の総称である。尚、この一体化された部品はルーフレールラックと呼ばれる場合もある。荷物等をアタッチメント等を用いて車両用ルーフレールに固定することによって、車内に積載できない大きい荷物等を車両に積載することが可能となる。また、車両ルーフに傷が付くことを防止することができる。
【0195】
実施例10にて使用した金型組立体の模式的な端面図を図23の(A)に示し、図23の(A)の円「ア」で囲まれた部分の拡大図を図24に示し、図23の(A)の円「イ」で囲まれた部分の拡大図を図25に示し、図23の(A)の線B−Bに沿った模式的な端面図を図23の(B)に示す。
【0196】
実施例10の金型組立体は、車両用ルーフレール50を成形するためのキャビティ67が設けられた第1の金型部(可動金型部)60及び第2の金型部(固定金型部)61と、溶融樹脂導入部(ゲート部)65と、加圧流体注入装置66と、厚さが3.0mmのセラミックス製の入れ子70から構成されている。溶融樹脂導入部(ゲート部)65は、第2の金型部61に配置され、第1の金型部60と第2の金型部61とを型締めした状態において形成されるキャビティ67内に溶融熱可塑性樹脂を導入するために設けられている。また、加圧流体注入装置66は、第2の金型部61に配置され、キャビティ67内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧流体を注入するために設けられている。入れ子70は、第1の金型部60に配置され、キャビティ67の一部を構成する。更には、第2の金型部61には、入れ子被覆部62が設けられている。
【0197】
実施例10においては、入れ子70のキャビティ面73が車両用ルーフレール50の外側形状と一致するように、入れ子70をジルコニア(ZrO2)から厚みが3.0mmとなるようにプレス加工にて作製した。また、入れ子70の側面のほぼ中央部に、車両用ルーフレール50の中央部に2カ所の貫通穴55を設けるための穴72を計4カ所設けた。また、実施例1と同様の方法で、入れ子70の表面(入れ子70のキャビティ面73)にアモルファスダイヤモンドから成る薄膜(図示せず)を形成した。
【0198】
一方、第1の金型部(可動金型部)60を炭素鋼S55Cから作製した。この第1の金型部60には、入れ子70を装着するための入れ子装着部を設けた。そして、入れ子装着部にシリコン系接着剤を用いて入れ子70を接着した。また、第2の金型部(固定金型部)61も炭素鋼S55Cから作製した。加圧流体注入装置66を第2の金型部61に配設した。加圧流体注入装置66は、加圧流体注入ノズル66Aと、この加圧流体注入ノズル66Aの先端部近傍に内蔵された逆止弁66Bと、加圧流体注入ノズルを移動させるための移動手段(図示せず)から構成されている(図24参照)。また、加圧流体注入ノズルの後端は、配管を介して加圧流体源に接続されているが、これらの配管、加圧流体源の図示は省略した。
【0199】
入れ子70の端面71と、第1の金型部60のパーティング面PL1との段差を0.01mmとした。従って、第1の金型部60と第2の金型部61とを型締めした状態において、入れ子70と入れ子被覆部62との間のクリアランス(より具体的には、入れ子70の端面71と入れ子被覆部62との間のクリアランス、C21)は0.03mm以下(具体的には0.01mm)となった。実施例10においては、入れ子被覆部62は、第2の金型部61のパーティング面PL2の延在部から構成されている。入れ子70に対する入れ子被覆部62の重なり量(ΔS21)は0.5mm以上(具体的には0.5mm)であった。
【0200】
更に、車両用ルーフレール50に貫通穴55を形成するため、第1の金型部(可動金型部)60内に、油圧シリンダーで摺動する2つのスライドコアを設けた。2つのスライドコアのそれぞれは、一対の対向するスライドコア部材68A,68Bと、それぞれのスライドコア部材68A,68Bのキャビティの一部を構成する部分に取り付けられたセラミックス製(ジルコニア製)の環状部材80A,80Bとから構成されている。また、環状部材80A,80Bは、両端が開口した形状を有する。環状部材80A,80Bの厚さを2.0mmとした。環状部材80A,80Bは、炭素鋼S55Cから作製されたスライドコア部材68A,68Bに接着剤にて取り付けられている。尚、実施例1と同様の方法で、環状部材80A,80Bの表面にアモルファスダイヤモンドから成る薄膜(図示せず)を形成した。スライドコア部材68A,68Bが対向した状態においては、スライドコア部材68A,68B同士のクリアランスを0mmとした。一方、一対のスライドコア部材68A,68Bが対向した状態において(図23の(B)参照)、一方のスライドコア部材68Aに取り付けられた環状部材80Aの端部と他方のスライドコア部材68Bに取り付けられた環状部材80Bの端部との間のクリアランス(C61)は0.03mmであった。また、入れ子70に設けた穴72と環状部材80A,80Bとの間のクリアランス(C62)は0.02mmであった。
【0201】
金型組立体を成形装置に取り付けた後、金型組立体を金型温調機を用いて130゜Cまで加熱後、40゜Cまで急冷しても、ジルコニアから作製された入れ子70及び環状部材80A,80Bに割れ等の損傷は発生しなかった。また、入れ子70の表面及び環状部材80A,80Bの表面に形成された薄膜にも損傷は生じなかった。
【0202】
実施例1と同じ成形装置、熱可塑性樹脂を用いた。そして、先ず、第1の金型部60と第2の金型部61の型締めを行った後、2つのスライドコアを油圧シリンダーで前進させ、キャビティ67の一部を閉塞した(図23〜図25参照)。また、移動手段によって加圧流体注入ノズルを前進させて、加圧流体注入ノズル66Aの先端部を第2の金型部61と係合させ、加圧流体注入ノズル66Aの先端部をキャビティ67と連通させた。そして、溶融樹脂導入部(ゲート部)65から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ67内に導入(射出)した。尚、実施例1と同じ成形条件にて成形を行った。キャビティ67内に射出した溶融樹脂量は、キャビティ内を完全に充填するのに十分な量の7割の溶融樹脂量とした。溶融樹脂の導入完了後、直ちに加圧流体注入装置66から窒素ガスから成る加圧流体を溶融樹脂の内部に注入して、キャビティ67内の溶融樹脂を再流動させ、キャビティ67内を溶融樹脂で満たし、且つ、中空部を溶融樹脂の内部に形成した。そして、キャビティ67内の樹脂の冷却後、移動手段によって加圧流体注入ノズルを後退させて、加圧流体注入ノズル66Aの先端部と第2の金型部61との係合を解き、キャビティ内の樹脂の内部に形成された中空部内の加圧流体を、加圧流体注入ノズル66Aの先端部と第2の金型部61との隙間から大気に解放した。その後、油圧シリンダーでスライドコアを後退させ、第1の金型部60と第2の金型部61を型開きし、車両用ルーフレールを金型組立体から取り出した。こうして、図22に模式的に示す車両用ルーフレールを得た。
【0203】
車両用ルーフレール50の表面(入れ子70と接触していた部分)は、金型温度が低いにも拘わらず、車両用ルーフレール50の端部に至るまで光沢のある外観を有し、且つ、車両用ルーフレール50の内部には所望の中空部54が形成されていた。また、ヘジテーションマークやウェルドライン、色ムラ等の成形不良も発生していなかった。更には、金型部からの成形品の離型もスムーズであり、成形品に剥離マークは認められなかった。連続して成形を10000回行ったが、入れ子70、環状部材80A,80Bや薄膜に損傷は発生しなかった。
【0204】
(実施例11)
実施例11は、本発明の金型組立体の第3の態様に関し、且つ、金型組立体の第1の金型部にはスライドコアが更に備えられた構造であって、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧流体を注入するための加圧流体注入装置を更に備えている金型組立体に関する。実施例11にて作製される車両用ルーフレールは、図22に示した車両用ルーフレールと略同形である。
【0205】
実施例11にて使用した金型組立体の模式的な端面図を図26、図27及び図28に示す。尚、図26は、図24に示したと同様の金型組立体の部分の模式的な端面図であり、溶融樹脂導入部を含む部分を拡大した図である。また、図27は、図25に示したと同様の金型組立体の部分の模式的な拡大端面図であり、図28は、図23の(A)の線B−Bと同様の線に沿った金型組立体の部分の模式的な拡大された端面図である。
【0206】
実施例11の金型組立体は、車両用ルーフレール50を成形するためのキャビティ67が設けられた第1の金型部(可動金型部)60及び第2の金型部(固定金型部)61と、溶融樹脂導入部65と、加圧流体注入装置66と、厚さが3.0mmのセラミックス製の入れ子70から構成されている。溶融樹脂導入部65は、第2の金型部61に配置され、第1の金型部60と第2の金型部61とを型締めした状態において形成されるキャビティ67内に溶融熱可塑性樹脂を導入するために設けられている。また、加圧流体注入装置66は、第2の金型部61に配置され、キャビティ67内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧流体を注入するために設けられている。入れ子70は、第1の金型部60に配置され、キャビティ67の一部を構成する。更には、第2の金型部61には、キャビティ67の一部を構成し、入れ子70の端部を被覆する被覆プレート63が配設されている。この被覆プレート63は、入れ子70の全周囲の端部を被覆している。
【0207】
実施例11においても、入れ子70のキャビティ面73が車両用ルーフレール50の外側形状と一致するように、入れ子70をジルコニア(ZrO2)から厚みが3.0mmとなるようにプレス加工にて作製した。また、入れ子70の側面のほぼ中央部に、車両用ルーフレール50の中央部に2カ所の貫通穴55を設けるための穴72を計4カ所設けた。また、実施例1と同様の方法で、入れ子70の表面(入れ子70のキャビティ面73)にアモルファスダイヤモンドから成る薄膜(図示せず)を形成した。
【0208】
一方、第1の金型部(可動金型部)60を炭素鋼S55Cから作製した。この第1の金型部60には、入れ子70を装着するための入れ子装着部を設けた。そして、入れ子装着部にシリコン系接着剤を用いて入れ子70を接着した。また、第2の金型部(固定金型部)61も炭素鋼S55Cから作製した。
【0209】
第1の金型部60と第2の金型部61とを型締めした状態において、入れ子70と被覆プレート63との間のクリアランス(より具体的には、入れ子70のキャビティ面73と被覆プレート63のキャビティ側の内側側面との間のクリアランスC31)が0.03mm以下となるように、更には、入れ子70に対する被覆プレート63の重なり量(ΔS31)が0.5mm以上となるように、被覆プレート63を炭素鋼S55Cから切削加工にて作製し、ボルト(図示せず)によって第2の金型部61に取り付けた。
【0210】
更に、第1の金型部(可動金型部)60内に、車両用ルーフレール50に貫通穴55を形成するため、油圧シリンダーで摺動する2つのスライドコアを設けた。2つのスライドコアのそれぞれは、一対の対向するスライドコア部材68A,68Bと、それぞれのスライドコア部材68A,68Bのキャビティの一部を構成する部分に取り付けられたセラミックス製(ジルコニア)の環状部材81A,81Bとから構成されている。環状部材81A,81Bは、一端が閉塞しそして他端が開口した形状を有する。環状部材81A,81Bの厚さを2.0mmとした。環状部材81A,81Bは、炭素鋼S55Cから作製されたスライドコア部材68A,68Bに接着剤にて取り付けられている。実施例1と同様の方法で、環状部材81A,81Bの表面にアモルファスダイヤモンドから成る薄膜(図示せず)を形成した。一対のスライドコア部材68A,68Bが対向した状態において(図28参照)、一方のスライドコア部材68Aに取り付けられた環状部材81Aと他方のスライドコア部材68Bに取り付けられた環状部材81Bとの間のクリアランス(C61)は0.03mmであった。また、入れ子70に設けた穴72と環状部材81A,81Bとの間のクリアランス(C62)は0.02mmであった。
【0211】
その他の構造は、実施例10にて説明した金型組立体と同様とした。
【0212】
金型組立体を成形装置に取り付けた後、金型組立体を金型温調機を用いて130゜Cまで加熱後、40゜Cまで急冷しても、ジルコニアから作製された入れ子70及び環状部材81A,81Bに割れ等の損傷は発生しなかった。
【0213】
実施例10と同様の成形装置、熱可塑性樹脂を使用し、実施例10と同様の成形条件、成形方法にて車両用ルーフレールを作製した。車両用ルーフレール50の表面(入れ子70と接触していた部分)は、金型温度が低いにも拘わらず、車両用ルーフレール50の端部に至るまで光沢のある外観を有し、且つ、車両用ルーフレール50の内部には所望の中空部54が形成されていた。また、ヘジテーションマークやウェルドライン、色ムラ等の成形不良も発生していなかった。更には、金型部からの成形品の離型もスムーズであり、成形品に剥離マークは認められなかった。尚、連続して成形を10000回行ったが、入れ子70及び環状部材81A,81Bや薄膜に損傷は発生しなかった。
【0214】
(実施例12)
実施例12は、本発明の金型組立体の第4の態様に関し、且つ、金型組立体の第1の金型部にはスライドコアが更に備えられた構造であって、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧流体を注入するための加圧流体注入装置を更に備えている金型組立体に関する。実施例11にて作製される車両用ルーフレールは、図22に示した車両用ルーフレールと略同形である。
【0215】
実施例12にて使用した金型組立体の模式的な端面図を図29及び図30に示す。尚、図29及び図30は、図24に示したと同様の金型組立体の部分の模式的な端面図であり、図29は溶融樹脂導入部を含む部分を拡大した図である。また、図30は、溶融樹脂導入部を含む部分の近傍であって溶融樹脂導入部を含まない部分を拡大した図である。尚、図29における金型組立体の切断面と図30における金型組立体の切断面とは平行である。実施例12の金型組立体においては、図22の(A)の左手側のレグを形成する部分の金型組立体の模式的な端面図は図25と同様であり、また、図23の(A)の線B−Bと同様の線に沿った金型組立体の部分の模式的な端面図は図23の(B)と同様である。
【0216】
実施例12の金型組立体は、車両用ルーフレール50を成形するためのキャビティ67が設けられた第1の金型部(可動金型部)60及び第2の金型部(固定金型部)61と、加圧流体注入装置66と、厚さが3.0mmのセラミックス製の入れ子70と、被覆プレート64から構成されている。加圧流体注入装置66は、第2の金型部61に配置され、第1の金型部60と第2の金型部61とを型締めした状態において形成されるキャビティ67内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧流体を注入するために設けられている。入れ子70は、第1の金型部60に配設され、キャビティ67の一部を構成する。被覆プレート64は、入れ子70と第2の金型部61との間に配設され、第1の金型部60に取り付けられ、溶融樹脂導入部65Aが設けられている。被覆プレート64は入れ子70の一部分とのみ重なり合っている(図29及び図30参照)。更には、第2の金型部61には、入れ子被覆部62が設けられている。
【0217】
実施例12においても、入れ子70のキャビティ面73が車両用ルーフレール50の外側形状と一致するように、入れ子70をジルコニア(ZrO2)から厚みが3.0mmとなるようにプレス加工にて作製した。更に、実施例1と同様の方法で、入れ子70の表面(入れ子70のキャビティ面73)にアモルファスダイヤモンドから成る薄膜(図示せず)を形成した。また、入れ子70の側面のほぼ中央部に、車両用ルーフレール50の中央部に2カ所の貫通穴55を設けるための穴72を計4カ所設けた。また、実施例12においても、入れ子70の端面71(図23の(B)、図25及び図30参照)と、第1の金型部60のパーティング面PL1との段差を0.01mmとした。従って、第1の金型部60と第2の金型部61とを型締めした状態において、入れ子70と入れ子被覆部62との間のクリアランス(より具体的には、入れ子70の端面71と入れ子被覆部62との間のクリアランスC41であり、図23の(B)及び図25におけるC21に相当する)は0.03mm以下(具体的には0.01mm)となった。また、入れ子70に対する入れ子被覆部62の重なり量(ΔS41であり、図23の(B)及び図4におけるΔS21に相当する)は0.5mm以上(具体的には0.5mm)であった。
【0218】
第1の金型部(可動金型部)60を炭素鋼S55Cから作製した。この第1の金型部60には、入れ子70を装着するための入れ子装着部を設けた。そして、入れ子装着部にシリコン系接着剤を用いて入れ子70を接着した。また、第2の金型部(固定金型部)61も炭素鋼S55Cから作製した。
【0219】
第1の金型部60と第2の金型部61とを型締めした状態において、入れ子70と被覆プレート64との間のクリアランス(より具体的には、入れ子70のキャビティ面73と被覆プレート64のキャビティ側の内側側面との間のクリアランスC42)が0.03mm以下となるように、更には、入れ子70に対する被覆プレート64の重なり量(ΔS42)が0.5mm以上となるように、被覆プレート64を炭素鋼S55Cから切削加工にて作製した。また、被覆プレート64の外側底面には、切削加工にて溶融樹脂導入部65Aを設けた。そして、被覆プレート64をボルト(図示せず)を用いて第1の金型部60に取り付けた。
【0220】
更に、第1の金型部(可動金型部)60内に、車両用ルーフレール50に貫通穴55を形成するため、油圧シリンダーで摺動する2つのスライドコアを設けた。かかるスライドコアの構造は、実施例10と同様とした。
【0221】
その他の構造は、実施例10にて説明した金型組立体と同様とした。
【0222】
金型組立体を成形装置に取り付けた後、金型組立体を金型温調機を用いて130゜Cまで加熱後、40゜Cまで急冷しても、ジルコニアから作製された入れ子70及び環状部材80A,80Bに割れ等の損傷は発生しなかった。また、薄膜にも損傷は生じなかった。
【0223】
実施例10と同様の成形装置、熱可塑性樹脂を使用し、実施例10と同様の成形条件、成形方法にて車両用ルーフレールを作製した。車両用ルーフレール50の表面(入れ子70と接触していた部分)は、金型温度が低いにも拘わらず、車両用ルーフレール50の端部に至るまで光沢のある外観を有し、且つ、車両用ルーフレール50の内部には所望の中空部54が形成されていた。また、ヘジテーションマークやウェルドライン、色ムラ等の成形不良も発生していなかった。更には、金型部からの成形品の離型もスムーズであり、成形品に剥離マークは認められなかった。尚、連続して成形を10000回行ったが、入れ子70及び環状部材80A,80Bや薄膜に損傷は発生しなかった。
【0224】
(実施例13)
実施例13は、成形品に穴を形成するために、第1の金型部及び/又は第2の金型部に取り付けられ、キャビティ内を占める部分がキャビティの一部を構成するコアピンを更に備えている金型組立体に関する。以下、種々のコアピンの形態を図面を参照して説明する。
【0225】
図31の(A)及び(B)に模式的な一部断面図を示す金型組立体においては、コアピン101は例えばジルコニアから作製されており、第2の金型部11に公知の方法で取り付けられている。コアピン101の表面には、例えばアモルファスダイヤモンドから成る薄膜16Aが形成されている。図31の(A)に示す構造においては、コアピン101の先端面103と入れ子15のキャビティ面15Aとの間のクリアランスは十分大きい。これによって、成形品に非貫通穴を形成することができる。一方、図31の(B)におけるコアピン101の先端面は対向面102に相当し、先端面(対向面102)と入れ子15のキャビティ面15Aとの間のクリアランス(Cc1)は0.03mm以下(Cc1≦0.03mm)、好ましくは0.001mm乃至0.03mm(0.001mm≦Cc1≦0.03mm)、より好ましくは0.003mm乃至0.03mm(0.003mm≦Cc1≦0.03mm)であることが望ましい。これによって、対向面102と入れ子15のキャビティ面15Aとの間に溶融樹脂が侵入することなく、成形品に貫通穴を形成することができる。尚、図31の(A)及び(B)に示した構造においては、集中応力によるコアピンの対向面102あるいは先端面103の破損を防止するために、ダイヤモンド砥石で、又は、コアピンの対向面102あるいは先端面103の外側コーナー部に0.2mmR以上の曲率を付与するか、又はC面処理(コーナー部を45度の角度に面取りする処理)を行うことが好ましい。
【0226】
あるいは又、図32の(A)に模式的な一部断面図を示すように、入れ子15には貫通孔が設けられており、金型組立体の型締め時、コアピン101の先端部104は貫通孔内へ延びる。この場合、コアピンの先端部104と入れ子15に設けられた貫通孔との間のクリアランス(Cc2)は0.1mm以上であることが好ましい。クリアランス(Cc2)が0.1mm未満の場合、熱による膨張・収縮でコアピンと入れ子が接触して、入れ子やコアピンが破損する虞がある。また、コアピン101のキャビティ14内を占める部分には段差が付けられ、入れ子15のキャビティ面15Aと対向する対向面102が設けられている。入れ子15のキャビティ面15Aと対向する対向面102との間のクリアランス(Cc1)は前述したとおりとすることが望ましい。このような構造にすることで、対向面102と入れ子のキャビティ面15Aとの間に溶融樹脂が侵入することなく、成形品に貫通穴を正確な位置へ確実に形成することができ、しかも、コアピンの先端部104や入れ子15の損傷発生を防止することができる。
【0227】
あるいは又、図32の(B)及び図33の(A)に模式的な一部断面図を示すように、コアピン111は例えばジルコニアから作製されており、入れ子15には貫通孔が設けられており、コアピン111は、この貫通孔を通して公知の方法で第1の金型部10に取り付けられている。コアピン111の表面には、例えばアモルファスダイヤモンドから成る薄膜16Aが形成されている。これらの場合、キャビティ14内を占めるコアピン111の部分は、入れ子15のキャビティ面15Aと対向する対向面112を有し、対向面112と入れ子15のキャビティ面15Aとの間のクリアランス(Cc1)は前述したとおりとすることが望ましい。また、コアピン111と入れ子15に設けられた貫通孔との間のクリアランス(Cc2)は0.1mm以上であることが好ましい。
【0228】
図32の(B)に示す構造においては、コアピン111の先端面113と第2の金型部11のキャビティ面11Bとの間のクリアランスは十分大きい。これによって、成形品に非貫通穴を形成することができる。一方、図33の(A)におけるコアピン111の先端面113と第2の金型部11のキャビティ面11Bとの間のクリアランス(Cc3)は、キャビティ面11Bが金属から構成されている場合、0mmとすることができる。第2の金型部11に入れ子(図示せず)を配設する場合には、かかる入れ子のキャビティ面とコアピン111の先端面113との間のクリアランス(Cc3)は0.03mm以下(Cc3≦0.03mm)、好ましくは0.001mm乃至0.03mm(0.001mm≦Cc3≦0.03mm)、より好ましくは0.003mm乃至0.03mm(0.003mm≦Cc3≦0.03mm)であることが望ましい。これによって、コアピン111の先端面113と第2の金型部11のキャビティ面(入れ子のキャビティ面)との間に溶融樹脂が侵入することなく、成形品に貫通穴を形成することができる。尚、図32の(B)及び図33の(A)に示した構造においては、集中応力によるコアピンの破損を防止するために、ダイヤモンド砥石で、コアピンの先端面113の外側コーナー部に0.2mmR以上の曲率を付与するか、又はC面処理を行うことが好ましい。
【0229】
図33の(B)に模式的な一部断面図を示す例においては、入れ子15には貫通孔が設けられており、コアピン111は貫通孔を通して第1の金型部10に公知の方法で取り付けられている。第2の金型部11には孔部11Cが設けられており、金型組立体の型締め時、コアピン111の先端部114は孔部11C内へ延びる。コアピン111の先端部114と孔部11Cとの間のクリアランス(Cc4)は0.01乃至0.03mmであることが好ましい。このような構造にすることで、成形品に貫通穴を確実に形成することができる。尚、図32の(B)、図33の(A)及び(B)に示した構造においては、集中応力によるコアピンの破損を防止するために、ダイヤモンド砥石で、コアピンの対向面112の外側コーナー部に0.2mmR以上の曲率を付与するか、又はC面処理を行うことが好ましい。
【0230】
図34の(A)に模式的な一部断面図を示す例においては、コアピンは、第2の金型部11に公知の方法で取り付けられたコアピン取付部120と、コアピン取付部120に取り付けられ、一端が閉塞しそして他端が開口した環状部材121とから成る。環状部材121はキャップ状である。環状部材121は例えばジルコニアから作製されており、その表面には、例えばアモルファスダイヤモンドから成る薄膜16Aが形成されている。環状部材121は、キャビティ14内を占めるコアピンの部分の表面を構成する。コアピン取付部120は、環状部材121の他端から環状部材の内部に延在している。環状部材121の肉厚(断面形状が環状の場合、外径と内径の差の1/2)は、0.5乃至4mmとすることが好ましい。コアピン取付部120は金属から作製すればよい。図34の(A)に示す構造においては、環状部材121の先端面123と入れ子のキャビティ面15Aとの間のクリアランスは十分大きい。これによって、成形品に非貫通穴を形成することができる。図34の(B)に模式的な一部断面図を示す例においては、環状部材121の対向面122に相当する先端面と入れ子15のキャビティ面15Aとの間のクリアランス(Cc1)は前述したとおりとすることが望ましい。これによって、環状部材121の対向面122に相当する先端面と入れ子のキャビティ面15Aとの間に溶融樹脂が侵入することなく、成形品に貫通穴を形成することができる。尚、図34の(A)及び(B)に示した構造においては、集中応力による環状部材の破損を防止するために、ダイヤモンド砥石で、環状部材121の外側コーナー部に0.2mmR以上の曲率を付与するか、又はC面処理を行うことが好ましい。
【0231】
図35の(A)及び(B)に模式的な一部断面図を示す例においては、コアピンは、第1の金型部10に公知の方法で取り付けられたコアピン取付部130と、コアピン取付部130に取り付けられ、一端が開口しそして他端が閉塞した環状部材131とから成る。環状部材131はキャップ状である。環状部材131は例えばジルコニアから作製されており、その表面には、例えばアモルファスダイヤモンドから成る薄膜16Aが形成されている。環状部材131は、キャビティ14内を占めるコアピンの部分の表面を構成する。環状部材131の一端を構成する面は対向面132に相当し、コアピン取付部130は、入れ子15に設けられた貫通孔を貫通し、そして環状部材131の一端から環状部材の内部に延在している。環状部材131の肉厚(断面形状が環状の場合、外径と内径の差の1/2)は、0.5乃至4mmとすることが好ましい。コアピン取付部130は金属から作製すればよい。尚、コアピン取付部130と、入れ子15に設けられた貫通孔との間のクリアランス(Cc2)は0.1mm以上であることが好ましい。クリアランス(Cc2)が0.1mm未満の場合、熱による膨張・収縮でコアピンと入れ子が接触して、入れ子やコアピンが破損する虞がある。
【0232】
図35の(A)に示す構造においては、環状部材131の先端面133と第2の金型部11のキャビティ面11Bとの間のクリアランスは十分大きい。これによって、成形品に非貫通穴を形成することができる。一方、図35の(B)における環状部材の他端の面(先端面)133と第2の金型部11のキャビティ面11Bとの間のクリアランス(Cc3)は、キャビティ面11Bが金属から構成されている場合、0mmとすることができる。第2の金型部11に入れ子(図示せず)を配設する場合には、かかる入れ子のキャビティ面と環状部材の他端の面(先端面)133との間のクリアランス(Cc3)は前述したとおりとすることが望ましい。これによって、環状部材の他端の面(先端面)133と第2の金型部11のキャビティ面11Bとの間に溶融樹脂が侵入することなく、成形品に貫通穴を形成することができる。尚、環状部材131の対向面132と入れ子のキャビティ面15Aとの間のクリアランス(Cc1)は前述したとおりとすることが望ましい。図35の(A)及び(B)に示した構造においては、集中応力による環状部材の破損を防止するために、ダイヤモンド砥石で、環状部材131の外側コーナー部に0.2mmR以上の曲率を付与するか、又はC面処理を行うことが好ましい。
【0233】
図36の(A)に模式的な一部断面図を示す例においては、コアピンは、第2の金型部11に公知の方法で取り付けられたコアピン取付部120Aと、コアピン取付部120Aに取り付けられ、両端が開口した環状部材121Aとから成る。環状部材121Aはリング状である。環状部材121Aは例えばジルコニアから作製されており、その表面には、例えばアモルファスダイヤモンドから成る薄膜16Aが形成されている。環状部材121Aは、キャビティ14内を占めるコアピンの部分の表面を構成する。環状部材121Aの一端を構成する面は対向面122Aに相当し、コアピン取付部120Aは、環状部材121Aの他端から環状部材121Aの内部に延在している。この例においては、コアピン取付部120Aの先端面123Aは、対向面122Aの占める平面内に位置する。環状部材121Aの肉厚(断面形状が環状の場合、外径と内径の差の1/2)は、0.5乃至4mmとすることが好ましい。コアピン取付部120Aは金属から作製すればよい。尚、図36の(A)における環状部材121Aの一端の面(対向面)122Aと入れ子のキャビティ面15Aとの間のクリアランス(Cc1)は前述したとおりとすることが望ましい。これによって、環状部材121Aの一端の面(対向面)122Aと入れ子のキャビティ面15Aとの間に溶融樹脂が侵入することなく、成形品に貫通穴を形成することができる。
【0234】
図36の(B)に模式的な一部断面図を示す例においては、入れ子15には貫通孔が設けられており、金型組立体の型締め時、コアピン取付部120Aの先端部124Aは環状部材121Aの一端から貫通孔内へと延びる。コアピン取付部120Aの先端部124Aと貫通孔との間のクリアランス(Cc2)は0.1mm以上である。このような構造とすることで、成形品に確実に貫通穴を形成することができる。
【0235】
図37の(A)に模式的な一部断面図を示す例においては、コアピン取付部120Aの先端部125Aは環状部材121の内部に止まる。入れ子15には貫通孔が設けられており、第1の金型部10には貫通孔から突出した突出部10Cが設けられている。そして、突出部10Cと貫通孔との間のクリアランス(Cc2)は0.1mm以上である。金型組立体の型締め時、突出部10Cは環状部材121Aの内部に嵌合する。より具体的には、金型組立体の型締め時、突出部10Cはコアピン取付部120Aの先端部125Aと嵌合する。このような構造とすることでも、成形品に確実に貫通穴を形成することができる。また、嵌合精度を高めることができる。尚、コアピン取付部120Aの先端部125A及び突出部10Cの先端面は平滑であってもよい。金型組立体の型締め時、突出部10Cの先端部側壁と環状部材121Aの内側表面とが接触しないように、突出部10Cの先端部側壁と環状部材121Aの内側表面との間のクリアランスは0.1mm以上あることが好ましい。
【0236】
図36の(A)及び(B)並びに図37の(A)に示した構造においては、集中応力による環状部材の破損を防止するために、ダイヤモンド砥石で、環状部材121Aの外側コーナー部に0.2mmR以上の曲率を付与するか、又はC面処理を行うことが好ましい。
【0237】
図37の(B)に模式的な一部断面図を示す例においては、コアピンは、第1の金型部10に公知の方法で取り付けられたコアピン取付部130Aと、コアピン取付部130Aに取り付けられ、両端が開口した環状部材131Aとから成る。環状部材131Aはリング状である。環状部材131Aは例えばジルコニアから作製されており、その表面には、例えばアモルファスダイヤモンドから成る薄膜16Aが形成されている。環状部材131Aは、キャビティ14内を占めるコアピンの部分の表面を構成する。環状部材131Aの一端を構成する面は対向面132Aに相当し、入れ子15には貫通孔が設けられており、コアピン取付部130Aは、貫通孔を貫通し、そして環状部材131Aの一端から環状部材の内部に延在している。この場合、コアピン取付部130Aと貫通孔との間のクリアランス(Cc2)は0.1mm以上であることが好ましい。尚、環状部材131Aの対向面132Aに相当する面と入れ子のキャビティ面15Aとの間のクリアランス(Cc1)は前述したとおりとすることが望ましい。更には、環状部材131Aの他端を構成する面136Aと第2の金型部11のキャビティ面11Bとの間のクリアランス(Cc3)は、キャビティ面11Bが金属から構成されている場合、0mmとすることができる。第2の金型部11に入れ子(図示せず)を配設する場合には、かかる入れ子のキャビティ面と環状部材131Aの他端を構成する面136Aとの間のクリアランス(Cc3)は前述したとおりとすることが望ましい。この例においては、コアピン取付部130Aの先端面133Aは、面136Aの占める平面内に位置するが、キャビティ面11Bが金属から構成されている場合には、コアピン取付部130Aの先端面133Aは、面136Aの占める平面から突出していてもよい。
【0238】
図38の(A)に模式的な一部断面図を示す例においては、第2の金型部11には孔部11Cが設けられており、金型組立体の型締め時、コアピン取付部130Aの先端部134Aは孔部11C内へ延びる。コアピン取付部130Aの先端部134Aにおける環状部材131Aと孔部11Cとの間のクリアランス(Cc4)は0.01乃至0.03mmであることが好ましい。
【0239】
図38の(B)に模式的な一部断面図を示す例においては、コアピン取付部130Aの先端部135Aは環状部材131Aの内部に止まり、第2の金型部11には突出部11Dが設けられており、金型組立体の型締め時、突出部11Dは環状部材131Aの内部に嵌合する形態とすることができる。より具体的には、金型組立体の型締め時、突出部11Dはコアピン取付部130Aの先端部135Aと嵌合する。このような構造とすることでも、成形品に確実に貫通穴を形成することができる。また、嵌合精度を高めることができる。尚、コアピン取付部130Aの先端部135A及び突出部11Dの先端面は平滑であってもよい。金型組立体の型締め時、突出部11Dの先端部側壁と環状部材131Aの内側表面とが接触しないように、突出部11Dの先端部側壁と環状部材131Aの内側表面との間のクリアランスは0.1mm以上あることが好ましい。
【0240】
尚、図37の(B)、図38の(A)及び(B)に示した構造においては、集中応力による環状部材の破損を防止するために、ダイヤモンド砥石で環状部材131Aの外側コーナー部に0.2mmR以上の曲率を付与するか、又はC面処理を行うことが好ましい。
【0241】
図39の(A)及び図40の(A)に模式的な一部断面図を示す例においては、コアピンを例えばジルコニアから作製する代わりに、少なくともキャビティ14内を占めるコアピン140,150の部分の表面に、例えばジルコニアを溶射して成る溶射層141,151が形成されている。溶射層141,151の表面には、例えばアモルファスダイヤモンドから成る薄膜16Bが形成されている。尚、コアピン140,150は金属から作製すればよい。
【0242】
図39の(A)に示した構造においては、コアピン140は第2の金型部11に取り付けられており、コアピン140の先端面143と入れ子15のキャビティ面15Aとの間のクリアランスは十分大きい。図40の(A)に示した構造においては、入れ子15には貫通孔が設けられており、コアピン150はこの貫通孔を通して第1の金型部10に取り付けられており、コアピン150の先端面153と第2の金型部11のキャビティ面11Bとの間のクリアランスは十分大きい。これによって、成形品に非貫通穴を形成することができる。尚、図40の(A)に示した例においては、キャビティ14内を占めるコアピン150の部分は、入れ子15のキャビティ面15Aと対向する対向面152を有し、対向面152と入れ子15のキャビティ面15Aとの間のクリアランス(Cc1)は前述したとおりとすることが望ましい。対向面152には、溶射層が形成されていても、形成されていなくともよい。
【0243】
あるいは又、図39の(B)に模式的な一部断面図を示す例においては、コアピン140は第2の金型部11に取り付けられており、キャビティ14内を占めるコアピン140の部分は、入れ子15のキャビティ面15Aと対向する対向面142を有する。対向面142と入れ子15のキャビティ面15Aとの間のクリアランス(Cc1)は前述したとおりとすることが望ましい。対向面142には、溶射層が形成されていても、形成されていなくともよい。図39の(B)に示す構造においては、成形品に貫通穴を形成することができる。
【0244】
更には、図40の(B)に模式的な一部断面図を示す例においては、入れ子15には貫通孔が設けられており、コアピン150はこの貫通孔を通して第1の金型部10に取り付けられており、キャビティ14内を占めるコアピン150の部分は、入れ子15のキャビティ面15Aと対向する対向面152を有し、対向面152と入れ子15のキャビティ面15Aとの間のクリアランス(Cc1)は前述したとおりとすることが望ましい。尚、対向面152には、溶射層が形成されていても、形成されていなくともよい。しかも、コアピン150の先端面153と第2の金型部11のキャビティ面11Bとの間のクリアランス(Cc3)は、キャビティ面11Bが金属から構成されている場合、0mmとすることができる。第2の金型部11に入れ子(図示せず)を配設する場合には、かかる入れ子のキャビティ面とコアピン150の先端面153との間のクリアランス(Cc3)は前述したとおりとすることが望ましい。先端面153には、溶射層が形成されていても、形成されていなくともよい。これによって、成形品に貫通穴を形成することができる。尚、図40の(A)及び(B)において、コアピン150と入れ子15に設けられた貫通孔との間のクリアランス(Cc2)は0.1mm以上であることが好ましい。
【0245】
あるいは又、図41の(A)に模式的な一部断面図を示す例においては、コアピン140は第2の金型部11に取り付けられており、入れ子15には貫通孔が設けられており、金型組立体の型締め時、コアピン140の先端部144は貫通孔内へと延びる。コアピン140の先端部144と貫通孔との間のクリアランス(Cc2)は0.1mm以上である形態を挙げることができる。尚、図41の(A)においては、溶射層141は、対向面142上及び先端部144の表面にも形成されているが、これらの部分に溶射層を形成しなくともよい。
【0246】
一方、図41の(B)に模式的な一部断面図を示すように、入れ子15には貫通孔が設けられており、コアピン150は貫通孔を通して第1の金型部10に取り付けられている態様を挙げることができる。この場合、第2の金型部11には孔部11Cが設けられており、金型組立体の型締め時、コアピン150の先端部154は孔部11C内へ延びる。コアピン150の先端部154における溶射層151と孔部11Cとの間のクリアランス(Cc4)は0.01乃至0.03mmであることが好ましい。
【0247】
図42の(A)に示す構造は、図31の(B)及び図32の(B)に示したコアピンの例を実質的に組み合わせた構造である。即ち、第1のコアピン110はジルコニア製であり、入れ子15には貫通孔が設けられており、第1のコアピン110は、この貫通孔を通して公知の方法で第1の金型部10に取り付けられている。また、第2のコアピン100もジルコニア製であり、第2の金型部11に公知の方法で取り付けられている。第1のコアピン110と第2のコアピン100の先端面は相互に嵌合し得る構造となっている。第1のコアピン110は対向面112を有する。
【0248】
図42の(B)に示す構造は、図36の(A)及び図37の(B)に示したコアピンの例を組み合わせた構造である。即ち、第1のコアピンは、第1の金型部10に公知の方法で取り付けられたコアピン取付部130Bと、コアピン取付部130Bに取り付けられ、両端が開口した環状部材131Bとから成る。環状部材131Bはリング状であり、その構成は、環状部材131と同様とすることができる。コアピン取付部130Bは、環状部材131Bの他端から環状部材131Bの内部に延在している。一方、第2のコアピンは、第2の金型部11に公知の方法で取り付けられたコアピン取付部120Bと、コアピン取付部120Bに取り付けられ、両端が開口した環状部材121Bとから成る。環状部材121Bはリング状であり、その構成は、環状部材121と同様とすることができる。コアピン取付部120Bは、環状部材121Bの他端から環状部材121Bの内部に延在している。これらの環状部材121B,131Bは、キャビティ14内を占めるコアピンの部分の表面を構成する。環状部材131Bの一端を構成する面は対向面132Bに相当し、入れ子15には貫通孔が設けられており、コアピン取付部130Bは、貫通孔を貫通し、そして環状部材131Bの一端から環状部材の内部に延在している。この場合、コアピン取付部130Bと貫通孔との間のクリアランス(Cc2)は0.1mm以上であることが好ましい。コアピン取付部120B,130Bは相互に嵌合し得る構造となっている。環状部材121Bの一端面(先端面)と環状部材131Bの他端面(先端面)との間には、0.003乃至0.03mmのクリアランスがあることが、環状部材121Bや環状部材131Bの破損を防止する上で好ましい。
【0249】
図43の(A)に示す構造は、図39の(B)及び図40の(B)に示したコアピンの例を組み合わせた構造である。即ち、入れ子15には貫通孔が設けられており、コアピンは、入れ子15に設けられた貫通孔を通して第1の金型部10に取り付けられた第1のコアピン150と、第2の金型部11に取り付けられた第2のコアピン140とから成り、金型組立体の型締め時、第1のコアピン150の先端部154と第2のコアピン140の先端部144とが嵌合する。第1のコアピン150に形成された溶射層151の先端面と第2のコアピン140に形成された溶射層141の先端面との間には、0.003乃至0.03mmのクリアランスがあることが、溶射層141,151の破損を防止する上で好ましい。
【0250】
図43の(B)に示す構造は、図42の(A)に示した構造の変形であり、第1の金型部10に入れ子151が取り付けられ、第2の金型部11に入れ子152が取り付けられている。入れ子151には貫通孔が設けられており、ジルコニア製の第1のコアピン110は、この貫通孔を通して公知の方法で第1の金型部10に取り付けられている。第1のコアピン110は対向面112を有する。第2のコアピン100もジルコニア製であり、入れ子152には貫通孔が設けられており、第2のコアピン100は、この貫通孔を通して公知の方法で第2の金型部11に取り付けられている。第2のコアピン100は対向面102を有する。第1のコアピン110と第2のコアピン100の先端面は相互に嵌合し得る構造となっている。第1のコアピン110における対向面112と入れ子151のキャビティ面15A1との間のクリアランス(Cc1)、及び第2のコアピン100における対向面102と入れ子152のキャビティ面15A2との間のクリアランス(Cc1)は、前述したとおりとすることが望ましい。また、第1のコアピン110と入れ子151の貫通孔との間のクリアランス(Cc2)、及び第2のコアピン100と入れ子152の貫通孔との間のクリアランス(Cc2)は、0.1mm以上であることが好ましい。
【0251】
(実施例14)
実施例14における穴空き成形品製造用の金型組立体として、図36の(B)に示したコアピンを備えた金型組立体を使用した。図44及び図45を参照して、以下、実施例14における穴空き成形品製造用の金型組立体の組み立てを説明する。尚、金型組立体の基本的な構造は、実施例5にて説明した金型組立体と同様とした。
【0252】
実施例14においては、入れ子15として、中心部に直径27.00mmの貫通孔15Cが設けられた厚さ3.00mm、直径100.00mmの円盤状のZrO2から成る入れ子を用いた。入れ子15のキャビティ面15Aには薄膜16が形成されている。薄膜16の厚さを0.5μmとし、薄膜を構成する材料をアモルファスダイヤモンドとした。この薄膜16のビッカース硬度は1500Hvであり、動摩擦係数(μ)は0.2であった。尚、薄膜16の形成は、実施例1と同様とすることができる。第1の金型部(固定金型部)10の入れ子装着部10Aの内法寸法を外径100.2mm、深さを3.02mmとし、炭素鋼S55Cを切削加工して入れ子装着部10Aを第1の金型部(固定金型部)10に形成した。そして、エポキシ系接着剤(図示せず)を用いて、第1の金型部(固定金型部)10内の入れ子装着部10Aに入れ子15を固定した(図45の(A)参照)。
【0253】
入れ子15の端部を被覆するための被覆プレート19を炭素鋼S55Cから作製した。尚、内法寸法を99.00mmとした。この被覆プレート19を第1の金型部(固定金型部)10にビス(図示せず)を用いて固定した(図45の(B)参照)。入れ子15と被覆プレート19との間のクリアランス(C31)は、平均で0.01mmであった。また、入れ子15に対する被覆プレート19の重なり量(ΔS31)は0.5mmであった。
【0254】
実施例14の穴空き成形品製造用の金型組立体の組み立て後の金型の型締め時の状態及び型開き時の状態を、図44の(A)及び(B)にそれぞれ示す。成形品に穴を形成するためのコアピンは、第2の金型部(可動金型部)11に公知の方法で取り付けられた金属製のコアピン取付部120Aと、コアピン取付部120Aに接着剤(図示せず)を用いて取り付けられた環状部材121Aから成る。環状部材121Aの両端は開口している。環状部材121Aは切削加工にて作製されたZrO2から成り、内径を26.00mm、外径を32.00mmとした。環状部材121Aの外側コーナー部は0.5mmRに研磨してある。環状部材121Aの表面には薄膜16Aが形成されている。薄膜16Aの厚さを0.5μmとし、薄膜を構成する材料をアモルファスダイヤモンドとした。この薄膜16Aのビッカース硬度は1500Hvであり、動摩擦係数(μ)は0.2であった。尚、薄膜16Aの形成は、実施例1と同様とすることができる。炭素鋼S55Cから作製したコアピン取付部120Aの環状部材121Aを取り付ける部分の直径を25.90mmとした。環状部材121Aの一端を構成する面は対向面122Aに相当し、コアピン取付部120Aは、環状部材121Aの他端から環状部材の内部に延在している。入れ子15のキャビティ面15Aと、環状部材121Aの対向面122Aとは面接触していない。金型の型締め時、入れ子15のキャビティ面15Aと、環状部材121Aの対向面122Aとの間のクリアランス(Cc1)は、0.01mmであった。金型の型締め時、コアピン取付部120Aの先端部124Aは環状部材121Aの一端から貫通孔15C内へと延びる。コアピン取付部120Aの先端部124Aと貫通孔15Cとの間のクリアランス(Cc2)は0.55mmであった。このような構造とすることで、入れ子15及びコアピンの破損、あるいは、成形品のバリ発生を防止することができる。
【0255】
そして、実施例1と同じ熱可塑性樹脂を用い、実施例1と同様の成形条件で成形を行った。成形品の表面にはガラス繊維の析出もなく、成形品は非常に高い鏡面性を有していた。また、成形品には、フローマーク及びジェッティング等の成形不良も認められず、成形品には貫通孔が形成されていた。また、成形品の離型もスムースであり、剥離マークの発生もなかった。連続して成形を10000回行ったが、入れ子15に割れ等の損傷は発生せず、薄膜16にも損傷は発生しなかった。また、環状部材121Aや薄膜16Aにも損傷は発生しなかった。
【0256】
(実施例15)
実施例15における穴空き成形品製造用の金型組立体として、図37の(A)に示したコアピンを備えた金型組立体を使用した。また、金型組立体の基本的な構造は、実施例5にて説明した金型組立体と同様とした。
【0257】
入れ子15を結晶化度70%の結晶化ガラスから作製した。尚、この結晶化ガラスの弾性率は0.9×106kg/cm2であり、熱伝導率は0.4×10-2cal/cm・sec・degである。そして、入れ子15のキャビティ面15Aに対して、ダイヤモンド砥石及び酸化セリウム砥石を用いた研磨及び仕上げを行い、表面粗さRmaxを0.02μmとした。入れ子15の寸法を、厚さ4.00mm、外径100.00mm、内径30.00mmとした。入れ子15のキャビティ面15Aには薄膜16が形成されている。薄膜16の厚さを0.5μmとし、薄膜を構成する材料をアモルファスダイヤモンドとした。この薄膜16のビッカース硬度は1500Hvであり、動摩擦係数(μ)は0.2であった。尚、薄膜16の形成は、実施例1と同様とすることができる。第1の金型部(固定金型部)10の入れ子装着部10Aの内法寸法を外径100.2mm、深さを4.02mmとし、炭素鋼S55Cから切削加工によって入れ子装着部10Aを作製した。また、入れ子装着部10Aには、コアピン取付部120Aと嵌合する円柱状の突出部10Cを設けた。次いで、入れ子15を入れ子装着部10A内にエポキシ系接着剤で固定した。
【0258】
入れ子15の端部を抑えるための被覆プレート19を炭素鋼S55Cから作製し、内法寸法を99.00mmとした。この被覆プレート19を第1の金型部(固定金型部)10にビス(図示せず)を用いて固定した。
【0259】
入れ子15と被覆プレート19との間のクリアランス(C31)は、平均で0.01mmであった。また、入れ子15に対する被覆プレート19の重なり量(ΔS31)は0.5mmであった。
【0260】
第2の金型部(可動金型部)11内にコアピン取付部120Aを取り付けた。炭素鋼S55Cから作製したコアピン取付部120Aの環状部材121Aを取り付ける部分の直径を25.9mmとした。環状部材121AをZrO2から切削加工にて作製した。環状部材121Aの外径を32.00mm、内径を26.00mmとした。尚、環状部材の外側コーナー部をダイヤモンド砥石にて0.5mmRに仕上げた。そして、コアピン取付部120Aの環状部材を取り付ける部分に環状部材121Aを接着剤を用いて固定した。尚、環状部材121Aの表面には薄膜16Aが形成されている。薄膜16Aの厚さを0.5μmとし、薄膜を構成する材料をアモルファスダイヤモンドとした。この薄膜16Aのビッカース硬度は1500Hvであり、動摩擦係数(μ)は0.2であった。尚、薄膜16Aの形成は、実施例1と同様とすることができる。金型組立体の型締め時、入れ子15のキャビティ面15Aと、環状部材121Aの対向面122Aとの間のクリアランス(Cc1)は、0.01mmであった。突出部10Cと入れ子15に設けられた貫通孔との間のクリアランス(Cc2)は2.1mmであった。また、突出部10Cの先端部側壁と環状部材121Aの内側表面との間のクリアランスは0.1mmであった。尚、成形品は、外径99mm、内径32mm、厚さ2mmのドーナツ型である。実施例15の穴空き成形品製造用の金型組立体の組み立て後の金型の型締め時の状態及び型開き時の状態を、図46の(A)及び(B)にそれぞれ示す。
【0261】
完成した金型組立体を成形装置に取り付けた後、金型温調機を用いて130゜Cまで加熱した後、40゜Cまで急冷しても、結晶化度70%の結晶化ガラスから作製された入れ子15に割れ等の問題は発生しなかった。また、環状部材121Aや薄膜16,16Aにも損傷は発生しなかった。
【0262】
成形装置として三菱重工業(株)製、150MST射出成形機を用い、金型組立体を80゜C加熱した。成形用材料として黒色のポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製:S3000)を用い、樹脂温度280゜C、射出圧力700kgf/cm2−Gの条件でキャビティ14内に溶融樹脂を溶融樹脂導入部13から射出した後(図47参照)、20秒後に成形品を金型組立体から取り出した。
【0263】
入れ子15と接触した成形品表面は、成形品の端部に至るまで優れた光沢を有しており、ウエルドラインは発生していなかった。成形品には、フローマーク及びジェッティング等の成形不良も認められず、成形品には貫通孔が形成されていた。また、成形品の離型もスムースであり、剥離マークの発生もなかった。また、10000回の成形を行っても、入れ子15や環状部材121A、薄膜16,16Aに破損は認められなかった。
【0264】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例にて説明した金型組立体の構造、成形品の製造方法における各種条件は例示であり、適宜変更することができる。
【0265】
図48には、成形品を金型組立体から取り出すために、キャビティ24に連通したタブ形成部24Aが被覆プレート29Aに設けられている構造を例示する。尚、被覆プレート29Aは第1の金型部20に取り付けられている。尚、この場合にも、入れ子25と被覆プレート29Aとの間のクリアランスC43は0.03mm以下を満足する必要がある。この金型組立体は実施例6にて説明した金型組立体と実質的には同様の構造を有する。被覆プレート29Aは、図48の(A)の紙面垂直方向にも2カ所設けられている。尚、図48の(A)及び図49の(A)は、垂直面で被覆プレート29,29Aを含む金型組立体の領域を切断したときの図であり、図48の(B)及び図49の(B)は、かかる垂直面と平行な垂直面で被覆プレート29,29Aを含まない金型組立体の領域を切断したときの図である。金型組立体をこのような構造にすることによって、成形品にはタブ部が形成される。金型組立体の型開き後(図49の(A)及び(B)参照)、第2の金型部21に配設された突き出しピン(図示せず)をかかるタブ部に当てて成形品を押し出し、成形品を金型組立体から取り出せばよい。尚、成形品に形成されたタブ部は、後の工程で削除すればよい。
【0266】
【発明の効果】
本発明においては、キャビティ内に充填された溶融樹脂の急冷を抑制することができる結果、ジェッテイングやフローマーク等の外観不良が発生することを効果的に防止することができるし、無機繊維を含有する熱可塑性樹脂を使用した場合にあっても無機繊維が成形品の表面に析出(浮き)することを確実に防止することができる。しかも、金型組立体からの成形品の離型不良も併せて防止できるので、連続成形も容易であり、成形品の品質も安定しており、長期に亙り成形が可能となる。また、成形品の外観を損なうことがなくなり、成形品端部のバリ発生を防止でき、成形品の不良率低減及び成形品の均質化、高品質化を達成することができ、成形品の製造コストの低下を図ることができる。
【0267】
しかも、本発明においては、入れ子は、断熱効果が大きいばかりか、入れ子の保守が容易である。しかも、本発明の金型組立体においては、入れ子を、所定のクリアランス(C)や重なり量(ΔS)の範囲内で金型部内に組み込むことによって、長期的な成形を実施しても、入れ子に破損が生じることがなく、容易且つ安価に外観及び離型性に優れた成形品を成形することが可能となる。
【0268】
更には、キャビティ内での溶融樹脂の流動性が向上するが故に、キャビティ内への溶融樹脂の導入圧力を低く設定できるので、成形品に残留する応力を緩和でき、成形品の品質が向上する。また、導入圧力を低減できるために、金型部の薄肉化、成形装置の小型化が可能となり、成形品のコストダウンも可能になる。
【0269】
本発明において、スライドコアあるいはコアピンを備えた金型組立体を用いることによって、溶融樹脂の急速なる冷却に起因した転写性の劣化、光沢性の劣化を防止することができ、更にはウエルドラインの発生を抑制することができる。また、容易に且つ確実に穴空き成形品を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の金型組立体の型締め状態及び型開き状態を示す模式的な端面図である。
【図2】実施例1の金型組立体の組み立て中の模式的な端面図である。
【図3】実施例1の金型組立体のキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入した状態を示す模式的な端面図である。
【図4】実施例2の金型組立体の型締め直後の状態及びキャビティ容積を減少させた状態を示す模式的な端面図である。
【図5】実施例2の金型組立体のキャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の導入状態及びキャビティ容積を減少させた状態を示す模式的な端面図である。
【図6】実施例3の金型組立体の模式的な端面図、及びキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂内部に加圧流体を注入している状態を示す模式的な端面図である。
【図7】実施例4の金型組立体の型締め状態を示す模式的な端面図、及び、実施例4の金型組立体の組み立て中の模式的な端面図である。
【図8】実施例4の金型組立体の型開き状態を示す模式的な端面図、及び、キャビティ内へ溶融熱可塑性樹脂を導入した状態を示す模式的な端面図である。
【図9】実施例5の金型組立体の型締め状態を示す模式的な端面図、及び、実施例5の金型組立体の組み立て中の模式的な端面図である。
【図10】実施例5の金型組立体の変形を示す模式的な端面図である。
【図11】実施例5の金型組立体の変形を示す模式的な端面図である。
【図12】実施例6の金型組立体を型締めしたときの模式的な端面図である。
【図13】実施例6の金型組立体の組み立て中の模式的な端面図である。
【図14】実施例6の金型組立体を型開きしたときの模式的な端面図である。
【図15】実施例7の金型組立体を型締めしたときの模式的な端面図である。
【図16】実施例7の金型組立体の組み立て中の模式的な端面図である。
【図17】実施例7の金型組立体の組み立て中の模式的な端面図である。
【図18】実施例7の金型組立体を型開きしたときの模式的な端面図である。
【図19】成形品の成形時、キャビティの容積を可変とし得る構造を有する実施例8の金型組立体の模式的な端面図である。
【図20】加圧流体注入装置を備えた実施例9の金型組立体の模式的な端面図、及び成形品の成形中の状態を示す模式的な端面図である。
【図21】図20に引き続き、成形品の成形中の状態を示す模式的な端面図である。
【図22】実施例10にて作製された車両用ルーフレールの模式図である。
【図23】実施例10にて使用した金型組立体の模式的な端面図である。
【図24】図23の(A)の円「ア」で囲まれた部分の拡大された端面図である。
【図25】図23の(A)の円「イ」で囲まれた部分の拡大された端面拡大図である。
【図26】実施例11にて使用した金型組立体の模式的な端面図であり、図24に示したと同様の金型組立体の部分の模式的な拡大された端面図であり、溶融樹脂導入部を含む部分を拡大した図である。
【図27】実施例11にて使用した金型組立体の模式的な端面図であり、図25に示したと同様の金型組立体の部分の模式的な拡大された端面図である。
【図28】実施例11にて使用した金型組立体の部分の模式的な拡大された端面図であり、図23の(A)の線B−Bと同様の線に沿った図である。
【図29】実施例12にて使用した金型組立体の部分の模式的な拡大された端面図であり、溶融樹脂導入部を含む部分を拡大した図である。
【図30】実施例12にて使用した金型組立体の部分の模式的な拡大された端面図であり、溶融樹脂導入部を含まない部分を拡大した図である。
【図31】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図32】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図33】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図34】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図35】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図36】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図37】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図38】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図39】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図40】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図41】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図42】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図43】コアピンを備えた本発明の金型組立体の模式的な一部断面図である。
【図44】実施例14における穴空き成形品製造用の金型組立体の模式的な一部端面図である。
【図45】実施例14における穴空き成形品製造用の金型組立体の組み立て中の模式的な一部端面図である。
【図46】実施例15における穴空き成形品製造用の金型組立体の模式的な一部端面図である。
【図47】実施例15における穴空き成形品製造用の金型組立体のキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入した状態を示す模式的な一部端面図である。
【図48】成形品を金型組立体から取り出すために、キャビティに連通したタブ形成部が被覆プレートに設けられている構造を有する金型組立体の模式的な端面図である。
【図49】金型組立体の型開き後の第2の金型部及び成形品を模式的に示す図である。
【図50】動摩擦係数(μ)の測定方法を説明するための鈴木式試験機の概念図である。
【符号の説明】
10・・・第1の金型部
10A・・・入れ子装着部
10B・・・入れ子装着用中子
10C・・・突出部
11・・・第2の金型部
11A・・・第2の金型部の面に設けられた一種の切り込み(切り欠き)
11B・・・第2の金型部のキャビティ面
11C・・・孔部
11D・・・突出部
12・・・入れ子被覆部
13・・・溶融樹脂導入部
14・・・キャビティ
15・・・入れ子
15A・・・入れ子の表面
15B・・・入れ子の表面の一部分
16,16A,16B・・・薄膜
17・・・ボルト
18・・・加圧流体注入装置
19・・・被覆プレート
20・・・第1の金型部
20A・・・入れ子装着部
21・・・第2の金型部
21A・・・第2の金型部の面に設けられた一種の切り込み(切り欠き)
22・・・入れ子被覆部
23・・・溶融樹脂導入部
24・・・キャビティ
24A・・・タブ形成部
25・・・入れ子
25A・・・入れ子のキャビティ面
26・・・薄膜
27・・・中子
28・・・加圧流体注入装置
29・・・被覆プレート
29A・・・被覆プレート
30・・・第1の金型部
31・・・入れ子装着部
32・・・第1の被覆プレート取付部
33,43・・・被覆プレート
35・・・第1の入れ子
35A・・・第1の入れ子のキャビティ面
36,46・・・薄膜
37・・・溶融樹脂導入部
40・・・第2の金型部
41・・・入れ子装着部
42・・・第2の被覆プレート取付部
45・・・第2の入れ子
45A・・・第2の入れ子のキャビティ面
50・・・車両用ルーフレール
51・・・レール
52・・・レグ
53・・・溶融樹脂導入部の跡
54・・・中空部
55・・・貫通穴
60・・・第1の金型部
61・・・第2の金型部
62・・・入れ子被覆部
63・・・被覆プレート
64・・・被覆プレート
65・・・溶融樹脂導入部
66・・・加圧流体注入装置
66A・・・加圧流体注入ノズル
66B・・・逆止弁
67・・・キャビティ
68A,68B・・・スライドコア部材
70・・・入れ子
71・・・入れ子の端面
72・・・穴
73・・・入れ子のキャビティ面
80A,80B,81A,81B・・・環状部材
101,111,140,150・・・コアピン
102,112,122,122A,132,132A,142,152・・・対向面
103,113,123,123A,133,133A,143,153・・・先端面
104,114,124A,125A,134A,135A,144,154・・・コアピンの先端部
120,120A,130,130A・・・コアピン取付部
121,121A,131,131A・・・環状部材
141,151・・・溶射層

Claims (34)

  1. (イ)キャビティが設けられ、熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形するための第1の金型部及び第2の金型部、
    (ロ)該第1若しくは第2の金型部に配置され、該第1の金型部と該第2の金型部とを型締めした状態において形成される該キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入するための溶融樹脂導入部、並びに、
    (ハ)該金型部の少なくとも一方に配設され、キャビティの一部を構成する、表面に薄膜が形成された入れ子、
    を備え、
    該入れ子は、厚さ0.1mm乃至10mm、弾性率0.8×106kg/cm2以上、熱伝導率0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
    該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成り、
    第1若しくは第2の金型部に配置され、成形品に穴を形成するためのスライドコアを更に備えており、
    該スライドコアは、一対の対向するスライドコア部材と、キャビティの一部を構成するそれぞれのスライドコア部材の部分に取り付けられた環状部材とから構成され、
    該環状部材は、一端が閉塞しそして他端が開口した形状、若しくは両端が開口した形状を有し、
    該環状部材の表面には薄膜が形成され、
    該環状部材は、厚さ0.1mm乃至5mm、弾性率0.8×10 6 kg/cm 2 以上、熱伝導率0.2×10 -2 cal/cm・sec・deg乃至2×10 -2 cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
    該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成ることを特徴とする金型組立体。
  2. 成形品に形成すべき穴は貫通穴であり、一対のスライドコア部材が対向した状態において、一方のスライドコア部材に取り付けられた環状部材の端部と他方のスライドコア部材に取り付けられた環状部材の端部との間のクリアランスは0.03mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の金型組立体。
  3. 環状部材は、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、ZrO2−SiO2、K2O−TiO2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2、MgO−SiO2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る群から選択されたセラミックス、若しくは、石英ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製され、
    環状部材の表面に形成された薄膜を構成する材料は、TiN、TiAlN、TiC、CBN、BN、アモルファスダイヤモンド、CrN、Cr及びNiから成る群から選択された材料であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金型組立体。
  4. (イ)キャビティが設けられ、熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形するための第1の金型部及び第2の金型部、
    (ロ)該第1若しくは第2の金型部に配置され、該第1の金型部と該第2の金型部とを型締めした状態において形成される該キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入するための 溶融樹脂導入部、並びに、
    (ハ)該金型部の少なくとも一方に配設され、キャビティの一部を構成する、表面に薄膜が形成された入れ子、
    を備え、
    該入れ子は、厚さ0.1mm乃至10mm、弾性率0.8×10 6 kg/cm 2 以上、熱伝導率0.2×10 -2 cal/cm・sec・deg乃至2×10 -2 cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
    該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成り、
    成形品に穴を形成するために、第1の金型部及び/又は第2の金型部に取り付けられ、キャビティ内を占める部分がキャビティの一部を構成するコアピンを更に備えており、
    コアピンは、弾性率0.8×10 6 kg/cm 2 以上、熱伝導率0.2×10 -2 cal/cm・sec・deg乃至2×10 -2 cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
    該コアピンの表面には薄膜が形成され、
    該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成ることを特徴とする金型組立体。
  5. コアピンは、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、ZrO2−SiO2、K2O−TiO2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2、MgO−SiO2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る群から選択されたセラミックス、若しくは、石英ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されており、
    該コアピンの表面に形成された薄膜を構成する材料は、TiN、TiAlN、TiC、CBN、BN、アモルファスダイヤモンド、CrN、Cr及びNiから成る群から選択された材料であることを特徴とする請求項4に記載の金型組立体。
  6. コアピンは、
    (a)第1の金型部及び/又は第2の金型部に取り付けられたコアピン取付部と、
    (b)コアピン取付部に取り付けられ、一端が閉塞しそして他端が開口した形状、若しくは、両端が開口した形状を有する環状部材、
    とから成り、
    該環状部材は、キャビティ内を占めるコアピンの部分の表面を構成し、
    該コアピン取付部は、該環状部材の他端から環状部材の内部に延在しており、
    該環状部材の表面には薄膜が形成され、
    該環状部材は、弾性率0.8×106kg/cm2以上、熱伝導率0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
    該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成ることを特徴とする請求項4に記載の金型組立体。
  7. 環状部材は、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、ZrO2−SiO2、K2O−TiO2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2、MgO−SiO2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る群から選択されたセラミックス、若しくは、石英ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されており、
    該環状部材の表面に形成された薄膜を構成する材料は、TiN、TiAlN、TiC、CBN、BN、アモルファスダイヤモンド、CrN、Cr及びNiから成る群から選択された材料であることを特徴とする請求項6に記載の金型組立体。
  8. 第1若しくは第2の金型部に配置され、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧流体を注入するための加圧流体注入装置を更に備えていることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の金型組立体。
  9. キャビティの容積を可変とし得る構造であることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の金型組立体。
  10. 第1の金型部と第2の金型部とによって印籠構造が形成されることを特徴とする請求項9に記載の金型組立体。
  11. キャビティの容積を可変とし得る中子が備えられていることを特徴とする請求項9に記載の金型組立体。
  12. 入れ子は第1の金型部に配設され、
    第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、入れ子の表面と、該入れ子の表面と対向する第2の金型部の面との間のクリアランスは0.03mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の金型組立体。
  13. 入れ子は第1の金型部に配設され、
    第2の金型部には、入れ子被覆部が設けられており、
    第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、入れ子と入れ子被覆部との間のクリアランスは0.03mm以下であり、且つ、入れ子に対する入れ子被覆部の重なり量は0.5mm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の金型組立体。
  14. 第1若しくは第2の金型部に取り付けられ、キャビティの一部を構成し、入れ子の端部を被覆する被覆プレートを更に備え、
    入れ子は第1の金型部に配設され、
    第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、入れ子と被覆プレートとの間のクリアランスは0.03mm以下であり、且つ、入れ子に対する被覆プレートの重なり量は0.5mm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の金型組立体。
  15. 入れ子と第2の金型部との間に配設され、第1の金型部に取り付けられ、溶融樹脂導入部が設けられた被覆プレートを更に備え、
    第2の金型部には、入れ子被覆部が設けられており、
    第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、入れ子と入れ子被覆部との間のクリアランスは0.03mm以下であり、入れ子に対する入れ子被覆部の重なり量は0.5mm以上であり、入れ子と被覆プレートとの間のクリアランスは0.03mm以下であり、入れ子に対する被覆プレートの重なり量は0.5mm以上であり、被覆プレートは入れ子の一部分とのみ重なり合っていることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の金型組立体。
  16. 入れ子は、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、ZrO2−SiO2、K2O−TiO2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2、MgO−SiO2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る群から選択されたセラミックス、若しくは、石英ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されていることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の金型組立体。
  17. 薄膜を構成する材料は、TiN、TiAlN、TiC、CBN、BN、アモルファスダイヤモンド、CrN、Cr及びNiから成る群から選択された材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載の金型組立体。
  18. (イ)キャビティが設けられ、熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形するための第1の金型部及び第2の金型部、
    (ロ)該第1若しくは第2の金型部に配置され、該第1の金型部と該第2の金型部とを型締めした状態において形成される該キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入するための溶融樹脂導入部、並びに、
    (ハ)該金型部の少なくとも一方に配設され、キャビティの一部を構成する、表面に薄膜が形成された入れ子、
    を備え、
    該入れ子は、厚さ0.1mm乃至10mm、弾性率0.8×106kg/cm2以上、熱伝導率0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
    該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成り、
    第1若しくは第2の金型部に配置され、成形品に穴を形成するためのスライドコアが更に備えられており、
    該スライドコアは、一対の対向するスライドコア部材と、キャビティの一部を構成するそれぞれのスライドコア部材の部分に取り付けられた環状部材とから構成され、
    該環状部材は、一端が閉塞しそして他端が開口した形状、若しくは両端が開口した形状を有し、
    該環状部材の表面には薄膜が形成され、
    該環状部材は、厚さ0.1mm乃至5mm、弾性率0.8×10 6 kg/cm 2 以上、熱伝導率0.2×10 -2 cal/cm・sec・deg乃至2×10 -2 cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
    該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成る金型組立体を用い、
    溶融樹脂導入部からキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入することを特徴とする成形品の製造方法。
  19. 成形品に形成すべき穴は貫通穴であり、一対のスライドコア部材が対向した状態において、一方のスライドコア部材に取り付けられた環状部材の端部と他方のスライドコア部材に取り付けられた環状部材の端部との間のクリアランスは0.03mm以下であることを特徴とする請求項18に記載の成形品の製造方法。
  20. 環状部材は、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、ZrO2−SiO2、K2O−TiO2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2、MgO−SiO2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る群から選択されたセラミックス、若しくは、石英ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製され、
    環状部材の表面に形成された薄膜を構成する材料は、TiN、TiAlN、TiC、CBN、BN、アモルファスダイヤモンド、CrN、Cr及びNiから成る群から選択された材料であることを特徴とする請求項18又は請求項19に記載の成形品の製造方法。
  21. (イ)キャビティが設けられ、熱可塑性樹脂に基づき成形品を成形するための第1の金型部及び第2の金型部、
    (ロ)該第1若しくは第2の金型部に配置され、該第1の金型部と該第2の金型部とを型締めした状態において形成される該キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入するための溶融樹脂導入部、並びに、
    (ハ)該金型部の少なくとも一方に配設され、キャビティの一部を構成する、表面に薄膜が形成された入れ子、
    を備え、
    該入れ子は、厚さ0.1mm乃至10mm、弾性率0.8×10 6 kg/cm 2 以上、熱伝導率0.2×10 -2 cal/cm・sec・deg乃至2×10 -2 cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
    該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成り、
    成形品に穴を形成するために、第1の金型部及び/又は第2の金型部に取り付けられ、キャビティ内を占める部分がキャビティの一部を構成するコアピンが更に備えられており、
    コアピンは、弾性率0.8×10 6 kg/cm 2 以上、熱伝導率0.2×10 -2 cal/cm・sec・deg乃至2×10 -2 cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
    該コアピンの表面には薄膜が形成され、
    該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成る金型組立体を用い、
    溶融樹脂導入部からキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入することを特徴とする成形品の製造方法。
  22. コアピンは、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、ZrO2−SiO2、K2O−TiO2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2、MgO−SiO2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る群から選択されたセラミックス、若しくは、石英ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されており、
    該コアピンの表面に形成された薄膜を構成する材料は、TiN、TiAlN、TiC、CBN、BN、アモルファスダイヤモンド、CrN、Cr及びNiから成る群から選択された材料であることを特徴とする請求項21に記載の成形品の製造方法。
  23. コアピンは、
    (a)第1の金型部及び/又は第2の金型部に取り付けられたコアピン取付部と、
    (b)コアピン取付部に取り付けられ、一端が閉塞しそして他端が開口した形状、若しくは、両端が開口した形状を有する環状部材、
    とから成り、
    該環状部材は、キャビティ内を占めるコアピンの部分の表面を構成し、
    該コアピン取付部は、該環状部材の他端から環状部材の内部に延在しており、
    該環状部材の表面には薄膜が形成され、
    該環状部材は、弾性率0.8×106kg/cm2以上、熱伝導率0.2×10-2cal/cm・sec・deg乃至2×10-2cal/cm・sec・degの無機材料から作製され、
    該薄膜は、0.01μm乃至20μmの厚さを有し、ビッカース硬度が600Hv以上、動摩擦係数が0.5以下であって、熱可塑性樹脂との剥離強度が1kgf/cm以下のセラミックス化合物、金属、金属化合物及び炭素化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成ることを特徴とする請求項21に記載の成形品の製造方法。
  24. 環状部材は、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、ZrO2−SiO2、K2O−TiO2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2、MgO−SiO2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る群から選択されたセラミックス、若しくは、石英ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されており、
    該環状部材の表面に形成された薄膜を構成する材料は、TiN、TiAlN、TiC、CBN、BN、アモルファスダイヤモンド、CrN、Cr及びNiから成る群から選択された材料であることを特徴とする請求項23に記載の成形品の製造方法。
  25. 第1若しくは第2の金型部に配置され、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧流体を注入するための加圧流体注入装置が、金型組立体には更に備えられ、
    溶融樹脂導入部からのキャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の導入開始後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内部に加圧流体注入装置から加圧流体を注入し、以て、キャビティ内の樹脂内部に中空部を形成することを特徴とする請求項18又は請求項21に記載の成形品の製造方法。
  26. 金型組立体はキャビティの容積を可変とし得る構造であり、
    成形すべき成形品の容積よりもキャビティの容積が大きくなるように、第1の金型部と第2の金型部とを型締めし、
    該キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入し、
    熱可塑性樹脂の導入開始前、開始と同時に、導入中に、あるいは導入完了後、キャビティの容積を成形すべき成形品の容積まで減少させることを特徴とする請求項18又は請求項21に記載の成形品の製造方法。
  27. 第1の金型部と第2の金型部とによって印籠構造が形成されることを特徴とする請求項26に記載の成形品の製造方法。
  28. キャビティの容積を可変とし得る中子が金型組立体には更に備えられていることを特徴とする請求項26に記載の成形品の製造方法。
  29. 入れ子は第1の金型部に配設され、
    第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、入れ子の表面と、該入れ子の表面と対向する第2の金型部の面との間のクリアランスは0.03mm以下であることを特徴とする請求項18乃至請求項28のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
  30. 入れ子は第1の金型部に配設され、
    第2の金型部には、入れ子被覆部が設けられており、
    第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、入れ子と入れ子被覆部との間のクリアランスは0.03mm以下であり、且つ、入れ子に対する入れ子被覆部の重なり量は0.5mm以上であることを特徴とする請求項18乃至請求項28のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
  31. 第1若しくは第2の金型部に取り付けられ、キャビティの一部を構成し、入れ子の端部を被覆する被覆プレートが金型組立体には更に備えられており、
    入れ子は第1の金型部に配設され、
    第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、入れ子と被覆プレートとの間のクリアランスは0.03mm以下であり、且つ、入れ子に対する被覆プレートの重なり量は0.5mm以上であることを特徴とする請求項18乃至請求項28のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
  32. 入れ子と第2の金型部との間に配設され、第1の金型部に取り付けられ、溶融樹脂導入部が設けられた被覆プレートが金型組立体には更に備えられており、
    第2の金型部には、入れ子被覆部が設けられており、
    第1の金型部と第2の金型部とを型締めした状態において、入れ子と入れ子被覆部との間のクリアランスは0.03mm以下であり、入れ子に対する入れ子被覆部の重なり量は0.5mm以上であり、入れ子と被覆プレートとの間のクリアランスは0.03mm以下であり、入れ子に対する被覆プレートの重なり量は0.5mm以上であり、被覆プレートは入れ子の一部分とのみ重なり合っていることを特徴とする請求項18乃至請求項28のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
  33. 入れ子は、ZrO2、ZrO2−CaO、ZrO2−Y23、ZrO2−MgO、ZrO2−SiO2、K2O−TiO2、Al23、Al23−TiC、Ti32、3Al23−2SiO2、MgO−SiO2、2MgO−SiO2、MgO−Al23−SiO2及びチタニアから成る群から選択されたセラミックス、若しくは、石英ガラス及び結晶化ガラスから成る群から選択されたガラスから作製されていることを特徴とする請求項18乃至請求項32のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
  34. 薄膜を構成する材料は、TiN、TiAlN、TiC、CBN、BN、アモルファスダイヤモンド、CrN、Cr及びNiから成る群から選択された材料であることを特徴とする請求項18乃至請求項33のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
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