JP5247233B2 - 金型組立体及び射出成形方法 - Google Patents

金型組立体及び射出成形方法 Download PDF

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Description

本発明は、金型組立体、係る金型組立体を用いた射出成形方法、及び、係る射出成形方法によって得られる成形品に関する。
一般に用いられる射出成形法や射出圧縮成形法では、熱可塑性樹脂から成る成形品の転写性を向上させるために、通常、金型温度、樹脂温度及び金型内圧を高くしている。また、射出圧縮成形法は、射出成形法よりも成形品全体に均一に内圧を加えることができるために、成形品全体の転写性を高めることができることも知られている。
射出成形法や射出圧縮成形法では、成形品に屡々反りが生じる。反りの発生を抑制するためには、射出成形法よりも射出圧縮成形法を採用する方が、成形品の歪みを低減できるが故に有効である。ところで、成形品に歪みが発生する要因の1つに、金型のキャビティを構成する面(金型のキャビティ面、あるいは、単にキャビティ面と呼ぶ)と接触した溶融熱可塑性樹脂が急冷、固化される結果、成形品内部に発生した歪みを挙げることができる。このような溶融熱可塑性樹脂の急冷、固化の原因は、金型が鋼材から作製されていることにある。
金型のキャビティ面に設けられた凹凸部を成形品表面に転写する場合、凹凸形状がある程度大きいときには、一般的な成形条件であっても、成形条件次第で転写が可能である。しかしながら、成形品に形成すべき凹凸部が小さくなり、あるいは又、深くなってくると、金型のキャビティ面に設けられた凹凸部を成形品表面に忠実に転写させることが困難になってくる。この原因も、金型が鋼材から作製されていることにある。一般に、転写性を向上させるためには、出来るだけ溶融した状態で熱可塑性樹脂を金型のキャビティ面に無理矢理押し付ける必要がある。しかしながら、鋼材は熱伝導率が高いために、溶融熱可塑性樹脂が金型のキャビティ面と接触した瞬間に固化し始めて固化層が形成され、いくら成形機あるいは金型の圧縮によってキャビティ内の溶融熱可塑性樹脂に圧力を加えても、微細な凹凸部を成形品に転写できないという問題がある。
例えば、特開平8−318534号公報には、入れ子に熱伝導率の低い素材を使用して、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の急冷、固化を抑制して、優れた外観を有する成形品を成形する方法が提案されている。ここで、入れ子は、セラミックスやガラスから作製されている。
また、金型のキャビティ面に、セラミックスあるいはサーメットから成る薄層が形成された合成樹脂成形用金型が、特開平5−38721号公報に開示されている。この薄層は、断熱性を高める目的で、意図的に空隙が多く発生する溶射法にて形成されている。尚、このような薄層を、便宜上、以下、セラミックス溶射層と呼ぶ。このセラミックス溶射層は、適度な気孔を有するため、断熱性に優れると共に、熱や圧力によって破損し難い。
特開2004−175112の実施例5には、ステンレス鋼から成る入れ子本体26と、断熱層27と、封口層28とから構成された入れ子25が開示されている。尚、断熱層27は、ジルコニアセラミックス材料粉末を使用したプラズマパウダースプレー溶射法にて入れ子本体26上に形成されている。そして、断熱層27の表面に、封口層28がNi−P無電解メッキ法にて形成されている。更には、特開2004−175112の実施例6には、断熱層の表面にアモルファスのダイヤモンド状炭素質薄膜をマグネトロンスパッタリング法にて3μm厚で形成することが開示されている。
また、特開2007−321194には、溶射皮膜の開気孔部が、10〜45原子%の水素を含有するアモルファス状炭素水素固形物によって充填され、かつ該溶射皮膜表面には0.5〜80μmの膜厚のアモルファス状炭素水素固形物膜が被覆されている耐食性溶射皮膜、及び、溶射皮膜の封孔被覆方法が開示されている。
特開平8−318534号公報 特開平5−38721号公報 特開2004−175112 特開2007−321194
ところで、特開平8−318534号公報に開示された技術にあっては、入れ子は緻密であるが脆性な材料から作製されており、入れ子を破損すること無く金型に配設するために、金属プレートを用いて特定のクリアランスで押さえ込み、特に、破損し易い入れ子のエッジ部を保護する対策を講じている。しかしながら、金型の構造、キャビティや成形品の形状等から、金属プレートを配置することが困難な場合がある。また、焼成法によって得られる焼結体から成る入れ子は、緻密な構造であるが故に、ラップ加工を行うと、表面粗さRaが0.05μm以下の状態を得ることは非常に容易である。しかしながら、入れ子の密度が高いため、引っ張り応力が加わるような部位において入れ子を用いると、入れ子に破損が生じ易いといった欠点がある。更には、一般に、焼結体にあっては、焼結炉の制限や焼成時の変形を抑制することが難しいことから、B5(約470cm2)サイズを越える大きさの焼結体を作製することは困難であるし、硬度の高いセラミックス焼結体に曲面を形成したり、穴開け加工を施すことは、難易度の高い加工の1つである。時間とコストをかければ、10cm角程度の単純な形状を有する焼結体を作製することは可能であるが、それ以上の大きな形状の焼結体を作製することは困難な場合が多い。
また、成形品表面に凹凸部を形成する場合には、入れ子のキャビティを構成する面(入れ子のキャビティ面)に凹凸部を設けておく必要がある。しかしながら、セラミックスやガラスは硬く、耐薬品性にも優れているため、入れ子のキャビティ面に凹凸部を設けることは極めて困難である。更には、成形品によって凹凸部のパターンを変更する場合、都度、入れ子を作製しなければならず、成形品の製造コストの増加を招く。
尚、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の冷却を抑制する方法として、熱伝導率の低い樹脂系素材を金型の内部に配設する方法も提案されているが、樹脂圧力や熱によって、樹脂系素材に設けられた微細な凹凸部が変形してしまい、耐久性に乏しいといった問題を有する。このような樹脂系素材の表面に金属膜を成膜して微細な凹凸の変形を防ぐことも提案されているが、やはり、樹脂系素材自体が変形を起こしたり、金属膜と樹脂系素材との界面に傷が発生し、その傷までが成形品表面に転写されるといった問題がある。
特開平5−38721号公報に開示された技術にあっては、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の急冷を抑制することができるものの、セラミックス溶射層の表面に空隙が多く存在するので、空隙内に溶融熱可塑性樹脂が侵入し、金型から成形品を離型する際、セラミックス溶射層を破壊したり、成形品表面に凹凸が多く転写され、高品質な成形品が得られないといった離型性に問題を有する。尚、セラミックス溶射層の表面を平坦化するために、非常に薄い(数μm)のシリコーン系塗料を塗布する旨も開示されているが、耐久性に問題が生じ易い。
特開2004−175112の実施例5に開示された入れ子25にあっては、封口層28を無電解メッキ法にて形成しているが、一般的に、溶射法にて形成された断熱層27には空隙が多く存在するので、無電解メッキ法にて封口層28を形成したとき、以下の問題が生じ易い。即ち、断熱層27に深い空隙が多く存在する場合、メッキ工程で発生した水素の泡を巻き込みながらメッキ層が成長する結果、封口層28にピンホールが多発し易い。特に、空隙の大きな部分で発生した大きなピンホール又はその影響で、封口層28の断熱層27に対する密着力が低下する。そして、封口層28に生じたピンホールが成形品の表面に転写されてしまうといった問題や、封口層28に生じたピンホールに成形品の一部分が侵入し、金型から成形品を離型する際、封口層28に損傷が生じるといった離型性の問題が発生し易い。
特開2004−175112の実施例6には、断熱層の表面にアモルファスのダイヤモンド状炭素質薄膜をマグネトロンスパッタリング法にて3μm厚で形成することが開示されているが、金属膜の表面にダイヤモンド状炭素質薄膜を形成することには、何ら、言及されていない。特開2007−321194にも、金属膜の表面にアモルファス状炭素水素固形物膜を被覆することには、何ら、言及されていない。更には、これらの特許公開公報には、キャビティ面からの成形品の離型性について、更には、離型性の改善については、何ら、言及されていない。
従って、本発明の目的は、金属製ブロックと溶射皮膜とから構成され、高い耐久性を有し、平面、曲面を問わず製作可能であり、しかも、例えば、B5サイズ以上の面積(具体的には、例えば500cm2以上)の大きな面積であっても作製可能な入れ子を備え、成形品の表面に所望の形状を付与することができ(例えば、微細な凹凸部を容易に、且つ、安定して成形品表面に転写可能である)、しかも、成形品の離型性に問題を生じ難い構成、構造を有する金型組立体、係る金型組立体を用いた射出成形方法、及び、係る射出成形方法によって得られる成形品を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の金型組立体は、
(A)第1金型部、第2金型部、及び、第1金型部に設けられた溶融樹脂射出部を備え、第1金型部と第2金型部との型締めによってキャビティが形成される金型、
(B)第1金型部及び/又は第2金型部に配置され、
(B−1)金属製ブロック、
(B−2)金属製ブロックの少なくともキャビティに面した表面に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層、及び、
(B−3)金属下地層上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜、
から構成された入れ子、並びに、
(C)表面に凹凸部を有し、入れ子の溶射皮膜上に配設された厚さ0.03mm乃至0.5mmの金属膜、
を備えており、
凹凸部を有する金属膜の表面には、10原子%乃至45原子%の水素原子を含有する炭素水素固形物から成る炭素水素固形物皮膜が形成されていることを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る射出成形方法は、上記の本発明の金型組立体を用いた射出成形方法であって、
(イ)第1金型部と第2金型部とを型締めしてキャビティを形成した後、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、次いで、
(ロ)キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型する、
工程を具備することを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る射出成形方法(射出圧縮成形法)は、上記の本発明の金型組立体を用いた射出成形方法であって、
(イ)成形すべき成形品の容積よりもキャビティの容積が大きくなるように、第1金型部と第2金型部とを型締めした後、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、
(ロ)溶融熱可塑性樹脂の射出開始と同時に、あるいは、射出中に、あるいは、射出完了と同時に、あるいは、射出完了後、キャビティの容積を成形すべき成形品の容積まで減少させ、その後、
(ハ)キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型する、
工程を具備することを特徴とする。
本発明の第2の態様に係る射出成形方法にあっては、工程(ロ)において、溶融熱可塑性樹脂の射出開始と同時に、あるいは、射出中に、あるいは、射出完了と同時に、あるいは、射出完了後、キャビティの容積を成形すべき成形品の容積まで減少させるが、容積減少開始を溶融熱可塑性樹脂の射出開始と同時とする場合には、容積減少終了を、溶融熱可塑性樹脂の射出中に、あるいは、射出完了と同時に、あるいは、射出完了後とすることができるし、容積減少開始を溶融熱可塑性樹脂の射出中とする場合には、容積減少終了を、射出完了と同時に、あるいは、射出完了後とすることができるし、容積減少開始を溶融熱可塑性樹脂の射出完了と同時とする場合には、容積減少終了を、射出完了後とすることができる。
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る射出成形方法にあっては、中実の成形品を成形することができる。
あるいは又、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る射出成形方法にあっては、キャビティに連通した加圧流体注入ノズルを更に備えた金型組立体を用い、本発明の第1の態様に係る射出成形方法にあっては、前記工程(イ)において、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出中に、あるいは、射出完了と同時に、あるいは、射出完了後、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体注入ノズルから加圧流体の注入を開始することができ、一方、本発明の第2の態様に係る射出成形方法にあっては、前記工程(ロ)において、容積減少終了と同時あるいは容積減少終了の後、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体注入ノズルから加圧流体の注入を開始することができる。尚、加圧流体を注入するこのような射出成形方法をガスアシスト成形法と呼ぶ場合がある。ガスアシスト成形法を採用することで、中空部を有する成形品を得ることができる。ガスアシスト成形法を採用する場合、キャビティ内に射出する溶融熱可塑性樹脂の量は、キャビティを完全に充填する量であってもよいし(所謂、フルショット法)、不完全に充填する量であってもよい(所謂、ショートショット法)。加圧流体は、常温及び常圧で気体の物質であり、使用する熱可塑性樹脂と反応や混合しないものが望ましい。具体的には、窒素ガス、空気、炭酸ガス、ヘリウム等が挙げられるが、安全性及び経済性を考慮すると、窒素ガスやヘリウムガスが好ましい。加圧流体注入ノズルは、例えば、第1金型部に配設してもよいし、第2金型部に配設してもよいし、第1金型部と第2金型部の両方に配設してもよい。そして、加圧流体注入ノズルの先端が、キャビティ内、あるいは、第1金型部又は第2金型部のキャビティを構成する面近傍に位置するように、加圧流体注入ノズルを第1金型部又は第2金型部に配設することが好ましい。加圧流体注入ノズルの後端部は、例えば配管を介して加圧流体源に接続されている。また、加圧流体注入ノズルの後部に移動手段が取り付けられている。あるいは又、加圧流体注入ノズルの先端部が溶融樹脂射出部内に配置されるように、加圧流体注入ノズルを配設する構成としてもよいし、金型組立体は射出用シリンダーを備えた射出成形機に取り付けられており、射出用シリンダーと溶融樹脂射出部とは連通しており、加圧流体注入ノズルが射出用シリンダーの先端部(ノズル部)に配置されるように、加圧流体注入ノズルを配設する構成としてもよい。
本発明の金型組立体、あるいは又、上述した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様あるいは本発明の第2の態様に係る射出成形方法(これらを総称して、単に、『本発明』と呼ぶ場合がある)において、炭素水素固形物は、炭素原子含有率90原子%乃至55原子%、水素原子含有率10原子%乃至45原子%の組成、好ましくは、炭素原子含有率85原子%乃至62原子%、水素原子含有率15原子%乃至38原子%の組成を有する微小固体粒子から成り、JIS Z2244:2003 にて規定された炭素水素固形物皮膜のビッカース硬さHVは、700乃至2800、好ましくは1200乃至1400、より具体的には、700HV/0.05/30乃至2800HV/0.05/30、好ましくは1200HV/0.05/30乃至1400HV/0.05/30である形態とすることができる。炭素水素固形物の組成は、ラザフォード後方散乱分光法(RBS法)に基づき分析することができる。
上記の好ましい形態を含む本発明において、炭素水素固形物皮膜の厚さは0.1μm乃至20μmであることが望ましい。そして、この場合、炭素水素固形物皮膜の厚さは、凹凸部の高さの1/10以下であり、且つ、凹凸部のピッチの1/10以下である構成とすることが一層好ましい。
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明にあっては、溶射皮膜の熱伝導率は1W/(m・K)乃至4W/(m・K)であり、溶射皮膜の平均厚さは0.3mm乃至2.0mmである構成とすることが好ましい。溶射皮膜の熱伝導率の値が上記の範囲の下限を下回る場合、溶射皮膜の所望の気孔率を得ることが困難となる虞がある。一方、溶射皮膜の熱伝導率の値が上記の範囲の上限を越える場合、例えば、溶射皮膜と金属膜を介して接する溶融熱可塑性樹脂の急冷を抑制することが困難となり、係る熱可塑性樹脂から得られた成形品の外観改良効果が低減する虞がある。溶射皮膜の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法、熱線法といった方法に基づき測定することができる。
あるいは又、例えば、溶射皮膜と金属膜を介して接する溶融熱可塑性樹脂の急冷を抑制し、成形品の外観を改良するために、溶射皮膜を単層溶射皮膜から構成する場合、溶射皮膜の平均厚さを、上述のとおり、0.3mm乃至2.0mm、好ましくは0.3mm乃至1.0mmとすることが望ましい。一方、溶射皮膜を複数の単位層の積層構造から構成する場合、溶射皮膜の平均厚さ(総厚平均)を、0.5mm乃至1.8mm、好ましくは1.0mm乃至1.5mmとすることが望ましく、溶射皮膜表面を構成する単位層(トップコートと呼ばれる場合もある)の平均厚さを、0.05mm乃至0.3mm、好ましくは0.1mm乃至0.2mmとすることが望ましく、その他の単位層(中間層と呼ばれる場合もある)の平均厚さを、0.1mm乃至0.5mm、好ましくは0.2mm乃至0.4mmとすることが望ましく、単位層の層数を、2乃至4、好ましくは2乃至3とすることが望ましい。溶射皮膜の厚さ(膜厚)は、切断加工した断面に必要に応じて研磨加工やラップ加工を施し、係る断面をデジタル顕微鏡、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、レーザー顕微鏡等にて観察し、厚さを計測するといった方法に基づき測定することができる。
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明にあっては、溶射皮膜の気孔率平均値は5%以上10%以下であり、溶射皮膜の少なくとも表層領域には熱硬化性樹脂が含浸されている構成とすることができる。ここで、熱硬化性樹脂として、具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂を挙げることができる。溶射皮膜の表層領域とは、溶射皮膜の表面から内部に向かって深さDpまでの領域を意味する。ここで、Dpの値は、20μmから1mmまでの範囲のいずれかの値とすることができる。尚、それよりも深い領域にまで熱硬化性樹脂が含浸されていてもよい。溶射皮膜への熱硬化性樹脂の含浸は、硬化前の液状の熱硬化性樹脂に溶射皮膜を浸漬した後、加熱して熱硬化性樹脂を硬化させ、溶射皮膜の表面上に残った熱可塑性樹脂を研磨等によって除去するといった方法に基づき、達成することができる。このような溶射皮膜の構成にあっては、溶射皮膜の表面は緻密となるが故に、例えばメッキ法にて金属膜を成膜したとき、金属膜にピンホールが発生し難いし、金属膜の膜厚を薄くすることができる。
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明にあっては、溶射皮膜を構成する粉末材料の平均粒径は1×10-5m(10μm)乃至1×10-4m(100μm)であることが好ましい。溶射皮膜の表面領域における溶射皮膜を構成する粉末材料の平均粒径は、可能な限り小さいことが望ましいが、小さすぎると、溶射皮膜を形成する溶射工程で原料粉体(セラミックス粒子)の搬送が困難となる虞がある。従って、溶射皮膜の形成を容易としたり、あるいは又、溶射皮膜にクラックが発生することを防止するといった観点から、更には、所望の気孔率を達成して断熱性を向上させ、溶射皮膜表面に与える凹凸の影響を少なくし、更には、溶射皮膜にクラックを発生させないといった観点、上述した範囲の平均粒径を有する原料粉体(セラミックス粒子)から溶射皮膜を構成することが好ましい。
ここで、平均粒径とは、粉末の粒径累積度数が50%となる粒径であると定義され、例えば、光透過沈降法に基づき測定することができる。
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明にあっては、溶射皮膜表面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.05mmまでの部分(便宜上、溶射皮膜の表面領域と呼ぶ)における気孔率平均値は0.4%以上5%未満であり、金属下地層と溶射皮膜との界面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.2mmまでの部分(便宜上、溶射皮膜の底部領域と呼ぶ)における気孔率平均値は5%以上10%以下である構成とすることが好ましい。尚、見掛け密度から計算した気孔率平均値に換算すると、溶射皮膜の表面領域における気孔率平均値は3%以上10%未満であり、溶射皮膜の底部領域における気孔率平均値は10%以上20%以下となる。あるいは又、溶射皮膜表面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.05mmまでの部分(溶射皮膜の表面領域)における溶射皮膜を構成する粉末材料の平均粒径は2×10-6m(2μm)乃至5×10-5m(50μm)であり、金属下地層と溶射皮膜との界面から溶射皮膜内部に向かって厚さ0.2mmまでの部分(溶射皮膜の底部領域)における溶射皮膜を構成する粉末材料の平均粒径は2×10-5m(20μm)乃至1×10-4m(100μm)であることが好ましい。
このように厚さ方向に変化した気孔率を有する場合、即ち、気孔率が、溶射皮膜表面に近い側ほど、低い値である場合、溶射皮膜の表面は緻密となる。従って、溶射皮膜表面に凹凸が少なく、溶射皮膜表面は平滑性に優れている。それ故、溶射皮膜表面に配設された金属膜の表面状態に溶射皮膜表面の状態が反映されるが、金属膜の表面も平滑性に優れており、成形品表面に凹凸が多く転写され、高品質な成形品が得られないといった問題が発生することが無いし、溶射皮膜の耐久性に問題が生じることも無い。また、このような溶射皮膜の構成にあっては、溶射皮膜の表面は緻密であるが故に、メッキ法にて金属膜を成膜したとき、金属膜にピンホールが発生し難いし、金属膜の膜厚を薄くすることができる。あるいは又、溶射皮膜の表面は緻密であるが故に、スタンパ構造を採用した場合にあっても、成形中に溶射粒子が入れ子表面から脱落することが無く、成形中に金属膜の裏面が磨耗して金属膜の金属粉が成形品中に混入したり、金属膜の表面側に細かいうねりが発生するといった問題の発生を確実に防止することができる。
尚、溶射皮膜の気孔率の制御は、
(1)溶射材料粉末の粒径の選択
(2)溶射ガンと被処理体である金属製ブロック表面との間の距離
(3)溶射雰囲気の圧力の制御
等によって行うことができる。具体的には、溶射材料粒度が小径なほど、また、溶射距離が短いほど、また、溶射雰囲気の圧力が低いほど、それぞれ、緻密になるので、これらの(1)、(2)及び(3)の項目を適宜組み合わせることによって、所望の気孔率を有する溶射皮膜を得ることができる。
溶射皮膜の気孔率が非常に小さい場合、ラップ仕上げを行った後の溶射皮膜表面の粗さは小さくなるものの、熱伝導率は大きくなる。また、そのような溶射皮膜は、製造時にクラックが発生し易く、膜厚を厚くすることが困難である。そこで、気孔率を溶射皮膜の厚さ方向に変化させ、表面付近を緻密とし、金属製ブロック付近を粗くすれば、溶射皮膜全体の熱伝導率が低く、しかも、ラップ仕上げを行った後の表面の粗さが小さい溶射皮膜を得ることができる。また、熱伝導率が低く、しかも、厚さの厚い溶射皮膜を得ることができるので、例えば、射出成形工程において、溶融熱可塑性樹脂が急冷されることによって、成形品に外観不良や転写不良が発生することを確実に防止することができる。更には、ウェルドラインやフローマークの発生、反りやヒケの発生が無く、転写性が非常に優れ、内部に歪の非常に少ない成形品を得ることができる。また、成形品に穴を形成する場合にあっても、後述するように、ウェルドラインの発生を確実に防止することができる。
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明においては、少なくともキャビティに面した金属製ブロックの表面の全てに溶射皮膜が形成されている形態とすることができるし、あるいは又、キャビティに面した金属製ブロックの表面の一部に溶射皮膜が形成されている形態とすることもできる。前者の場合、金属製ブロックのキャビティに面した部分以外の部分の表面にも溶射皮膜が形成されている形態が含まれる。
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明において、溶射によって形成された皮膜である溶射皮膜は、組成の観点から、同一組成から構成されていてもよいし(便宜上、同一組成皮膜と呼ぶ)、溶射材料の組成を積層間で連続的に変化させた漸変皮膜とすることもできる。また、溶射皮膜は、気孔率の変化状態の観点から、単層(単層溶射皮膜と呼ぶ)から構成されていてもよいし、複数層の積層構造(便宜上、各層を単位層と呼ぶ)から構成されていてもよい。複数の単位層のそれぞれの組成は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、上述したように、溶射皮膜が厚さ方向に変化した気孔率を有する場合、気孔率の変化の状態は、金属下地層と溶射皮膜との界面から溶射皮膜表面に向かって、徐々に(連続的に)減少する形態とすることもできるし、段階的に減少する形態とすることもできるし、徐々に(連続的に)、且つ、段階的に減少する形態とすることもできる。尚、溶射皮膜を同一組成皮膜あるいは漸変皮膜の単層溶射皮膜から構成する場合、溶射条件等によって、厚さ方向に変化した気孔率を有する溶射皮膜を得ることができる。また、溶射皮膜を複数の単位層の積層構造から構成する場合、溶射条件等によって、複数層の積層構造を構成する単位層のそれぞれにおける気孔率を異ならせることができる。
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明において、場合によっては、溶射皮膜表面の表面粗さRaを0.05μm以下とすることが望ましい。尚、表面粗さRaは、JIS B 0601:2001に規定されており、溶射皮膜表面に対して細かいダイヤモンド砥粒等で鏡面ラップ処理を行い、係る溶射皮膜表面を表面粗さ計を用いて、少なくとも倍率20000倍、基準長さ0.8mm、カットオフ0.8mm、測定速度0.05mm/秒の条件にて、数回スキャニングさせて、得られた粗さ曲線データより中心線平均粗さ(Ra)を選択して、その平均値を求めるといった方法に基づき測定することができる。ここで、上述したように、溶射皮膜の表面領域における気孔率平均値を上記の範囲とすれば、溶射皮膜表面が非常に緻密な表面状態となり、例えばラップ仕上げを行った後の溶射皮膜表面の表面粗さRaを容易に0.05μm以下にすることができる。気孔率が上記の範囲の上限を超えると、ラップ仕上げをしても溶射皮膜表面に細かい凹凸が残存してしまい、例えば、成形品表面にこれらの凹凸が転写され、成形品の外観に若干ヘーズが生じる虞がある。一方、気孔率を上記の範囲の下限を下回る値にすることは技術的に困難である。ラップ加工は、例えば、ダイヤモンド粉末や化学研磨液等を用いて行うことができ、研磨粒子の番手としては最終仕上げとして5000番以上の物を使用すればよい。また、溶射皮膜表面の表面粗さRaを0.05μm以下とすることで、例えば、金属膜を入れ子の表面上に(より具体的には、溶射皮膜表面上に)着脱自在に配設(載置)した場合、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の圧力によって金属膜が変形すること(例えば、凹むこと)を確実に防止することができる。
本発明において、気孔率とは、皮膜断面内の或る領域において、その面積に対して気孔が占める面積の割合と定義され、気孔率平均値の測定は、例えば、溶射皮膜を厚さ方向に切断して、デジタル顕微鏡、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、レーザー顕微鏡等にて断面の画像を得た後、画像解析装置を用いて係る画像のコントラスト差から気孔率を求め、更には、得られた気孔率から平均値を求めるといった方法に基づき行うことができる。また、本発明において、溶射皮膜に含まれる空隙である気孔とは、開口気孔(開孔)及び密閉気孔(閉孔)の両者を含む。
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明において、素材の溶射される面である金属製ブロック(素地とも呼ばれる)を構成する材料として、炭素鋼やステンレス鋼を例示することができる。尚、金属製ブロックという用語には、合金から成る金属製ブロックが包含される。
金属下地層は、溶射皮膜を金属製ブロックに強固に密着させるために必要とされ、その組成として、Ni−Cr合金、より具体的な組成として、Ni−20%Cr、Ni−50%Crをはじめ、MCrAlY(但し、Mは、Co,Niを表す)で表される多成分系の耐熱合金等を例示することができる。金属下地層の厚さが0.03mm未満では金属製ブロックに対する強固な密着力が得られ難く、一方、1mmを超えると成膜した溶射皮膜の残留応力が大きくなって金属下地層と金属製ブロックの界面で剥離が発生する虞があり、また、経済的にも得策でない。金属下地層の厚さ上限値として、好ましくは0.5mm、更に好ましくは0.3mmを挙げることができる。金属下地層の施工によって、金属製ブロックの表面を被覆すると共に、金属下地層の上に形成するセラミックス溶射皮膜との接合力を向上させることができ、溶射皮膜の耐久性を向上させることができる。金属下地層は、例えば、プラズマ溶射法やHVOF法、ワイヤーを用いた溶射法等の各種溶射法に基づき形成することができる。尚、溶射法に基づき形成された金属下地層は、下地溶射皮膜あるいはアンダーコートあるいはボンドコートとも呼ばれる。
溶射皮膜を構成するセラミックスとして、酸化ジルコニウム、及び、酸化アルミニウムを例示することができる。ここで、酸化ジルコニウムの組成として、より具体的には、CaO安定化ジルコニア(5%CaO−ZrO2,8%CaO−ZrO2,31%CaO−ZrO2)、MgO安定化ジルコニア(20%MgO−ZrO2,24%MgO−ZrO2)、Y23安定化ジルコニア(6%Y23−ZrO2,7%Y23−ZrO2,8%Y23−ZrO2,10%Y23−ZrO2,12%Y23−ZrO2,20%Y23−ZrO2)、ジルコン(ZrO2−33%SiO2)、CeO安定化ジルコニアを挙げることができるし、酸化アルミニウムの組成として、より具体的には、ホワイトアルミナ(Al23)、グレイアルミナ(Al23−1.5〜4%TiO2)、アルミナ・チタニア(Al23−13%TiO2,Al23−20%TiO2,Al23−40%TiO2,Al23−50%TiO2)、アルミナ・イットリア(3Al23・5Y23)、アルミナ・マグネシア(Mg・Al24)、アルミナ・シリカ(3Al23・2SiO2)を挙げることができるが、特に好ましいのは、気孔率を制御し易い酸化ジルコニウム系のセラミックスである。但し、「%」は重量%を意味する。
酸化物系セラミックス溶射皮膜の形成には、熱源温度の高いプラズマ溶射法の適用が好ましい。具体的には、金属下地層の表面に直接セラミックス溶射皮膜を0.1mm乃至1.0mm厚さの範囲になるように溶射皮膜を積層させる。0.1mmより薄い溶射皮膜では、セラミックス溶射皮膜の断熱性、耐酸化性を十分発揮させることができず、一方、1.0mm以上厚く形成しても、セラミックス溶射皮膜の特性が飽和し、工業的意義がないからである。
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明において、金属膜は、クロム、クロム合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、タングステン及びタングステン合金から成る群から選択された少なくとも1種類の材料、又は、ニッケル−リン合金膜上にクロム膜が形成された積層構造、又は、ニッケル膜上にクロム膜が形成された積層構造から構成されていることが好ましい。そして、この場合、金属膜は、電気メッキ法や化学メッキ法といったメッキ法、あるいは、物理的気相成長法(PVD法)によって溶射皮膜上に形成されていることが望ましい。尚、メッキ法を、電気メッキ法と化学メッキ法(無電解メッキ法)との組合せとしてもよい。この場合、金属膜は、溶射皮膜のキャビティ面に成膜されていればよく、例えば、溶射皮膜の全表面に成膜されていてもよい。
あるいは又、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明において、金属膜は、クロム、クロム合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、タングステン及びタングステン合金から成る群から選択された少なくとも1種類の材料、又は、ニッケル−リン合金膜上にクロム膜が形成された積層構造、又は、ニッケル膜上にクロム膜が形成された積層構造から成り、入れ子の溶射皮膜上に着脱自在に配設されていることが好ましい。このようなスタンパ構造を採用すれば、成形品によって凹凸部のパターンを変更する場合、都度、入れ子を作製する必要がなく、金属膜のみを作製し、金属膜を交換すればよいだけなので、成形品の製造コストの増加を招くことがないし、成形品の成形コスト削減、成形品の設計から実際の製品としての成形品を成形までに要する時間[TAT(Turn Around Time)]の短縮化を図ることができる。
本発明においては、入れ子の表面上(より具体的には溶射皮膜上)に金属膜を配設するが、どのような金属膜を配設するかは、例えば、成形品に依存して決定すればよい。例えば、金属膜を入れ子の表面上に着脱自在に配設する構造(所謂スタンパ構造)とすれば、全体として平面形状あるいは概ね平面形状を有する成形品、あるいは又、2次元曲面、球体の一部等の比較的緩やかな曲面形状を有する成形品にしか適用することができないが、大面積の入れ子及び金属膜を低コストで実現することができる。一方、金属膜をメッキによって溶射皮膜上に形成すれば、3次元形状(立体的な曲面を有する形状)を備えた成形品に適用することができるが、入れ子及び金属膜の製造コストがスタンパ構造よりも高くなる。
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明において、金属膜の表面には凹凸部が形成されているが、凹凸部の形成形態として、平坦な金属膜の表面に凸部が形成されている形態、平坦な金属膜の表面に凹部が形成されている形態、平坦な金属膜の表面に凸部と凹部の組合せが形成されている形態、金属膜の表面に凸部と凹部の組合せが形成されており、平坦な部分が無い形態を挙げることができる。
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明において、上述したとおり、金属膜は、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金、Mo、Mo合金、W及びW合金から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成ることが好ましい。金属膜は、1層から構成してもよいし、上述したとおり、複数層から構成してもよい。Cr合金として、具体的には、ニッケル−クロム合金を挙げることができる。また、Ni合金として、具体的には、ニッケル−鉄−クロム合金、ニッケル−コバルト−モリブデン合金、ニッケル−リン合金(Ni−P系)、ニッケル−鉄−−タングステン−モリブデン合金(Ni−Fe−W−Mo系)、ニッケル−コバルト−リン合金(Ni−Co−P系)を挙げることができる。
金属膜の厚さは、0.03mm乃至0.5mm、好ましくは0.1mm乃至0.3mmであることが望ましい。金属膜の厚さが0.03mm未満では、転写性が向上する傾向にはあるが、金属膜の耐久性が乏しくなるために、金属膜の破損や変形、形態にも依るが、溶射皮膜の表面からの金属膜の剥離を引き起こす虞がある。一方、金属膜の厚さが0.5mmを超えると、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の冷却が促進されるために、転写性が劣る傾向になる。尚、金属膜の厚さとは、金属膜の底面から凹凸部の凸部頂面までの高さを意味する。
金属膜の表面に設けられた凹凸部を垂直面で切断したときの断面形状は、一義的に規定することはできず、成形品に要求される仕様に応じて決定すればよい。凹凸部の配置状態として略スパイラル状や2次元マトリックス状を挙げることができる。金属膜の表面に設けられた凹凸部のピッチは、1×10-8m乃至1×10-5m、好ましくは5×10-8m乃至5×10-6mであることが望ましいが、これに限定するものではない。また、凹凸部の高さ(深さ)は、1×10-9m乃至1×10-6m、好ましくは5×10-9m乃至5×10-7mであることが望ましいが、これに限定するものではない。
本発明において、金属膜の作製方法として、平滑なガラス面をマザー型として使用し、電鋳法により作製する方法を挙げることができる。また、表面に凹凸部が設けられた金属膜の作製方法として、ガラス面にフォトレジストを用いて凹凸部を設けたマザー型を使用し、電鋳法により作製する方法を挙げることができる。尚、平坦な金属膜の表面に凹凸部を設ける方法として、レーザを用いる方法、機械加工等によって金属膜の表面に加工を施す方法を挙げることができる。あるいは又、凹凸部の形状によっては、ダイヤモンドバイトを用いた機械加工によって金属膜に凹凸部を形成してもよいし、凹凸部を化学的な方法にて形成してもよい。後者の場合、レジスト層を金属膜の表面に塗布し、例えば、所望のマスクを介して紫外線をレジスト層に照射することによってレジスト層にパターンを形成し、あるいは又、印刷法にてレジスト層を形成し、次いで、係るレジスト層をエッチング用マスクとして金属膜をエッチングすることで、金属膜に凹凸部を形成することができる。尚、所望に応じて、複数回のレジスト層の形成とエッチングとを行って、凹凸部を形成してもよい。
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明において、金属膜を入れ子のキャビティ面に着脱自在に配設(載置)する場合、成形時、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の流動によって金属膜が動かないように、金属膜を、入れ子の周辺部における真空吸着によって入れ子のキャビティ面に固定する構成としてもよい。具体的には、入れ子の周辺部に貫通孔部を設け、係る貫通孔部を塞ぐように金属膜を入れ子のキャビティ面に配設(載置)し、貫通孔部を真空吸引装置に接続すればよい。
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明において、溶射皮膜表面には、10原子%乃至45原子%の水素原子を含有する炭素水素固形物から成る炭素水素固形物皮膜が形成されている構成とすることができる。尚、炭素水素固形物は、炭素原子含有率90原子%乃至55原子%、水素原子含有率10原子%乃至45原子%の組成を有する微小固体粒子から成り、炭素水素固形物皮膜のビッカース硬さHVは、700乃至2800であることが好ましい。また、炭素水素固形物皮膜の厚さは5μm乃至20μmであることが望ましいし、炭素水素固形物皮膜を5μm以上の厚さに亙り鏡面研磨加工することで、炭素水素固形物皮膜の厚さを5μm乃至20μmとすることが一層望ましい。溶射皮膜表面に炭素水素固形物皮膜を形成することで、極めて平滑な溶射皮膜表面を得ることができる結果、金属膜の溶射皮膜表面に対する密着性が向上し、成形品の成形中、入れ子から金属膜がずれることを防止し得るし、転写性も向上する。溶射皮膜表面に炭素水素固形物皮膜を形成する方法は、実質的に、凹凸部を有する金属膜の表面に炭素水素固形物皮膜を形成する方法と同様とすることができる。
第1金型部や第2金型部は、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金等の金属材料から作製することができる。また、溶融樹脂射出部の構造は、公知の如何なる形式の溶融樹脂射出部(ゲート構造)とすることもでき、例えば、ダイレクトゲート構造、サイドゲート構造、ジャンプゲート構造、ピンポイントゲート構造、トンネルゲート構造、リングゲート構造、ファンゲート構造、ディスクゲート構造、フラッシュゲート構造、タブゲート構造、フィルムゲート構造を例示することができる。溶融樹脂射出部は、第1金型部に設けられているが、構造によっては、第1金型部と第2金型部とに設けられていてもよい。本発明の第2の態様に係る射出成形方法(射出圧縮成形法)を採用する場合、キャビティの容積を可変とし得る構造とすればよい。この場合、例えば油圧シリンダーで可動させることができる可動中子を金型組立体に配設すればよい。あるいは又、金型は、第1金型部のパーティング面と第2金型部とのパーティング面とで印籠構造が形成されている構造とすればよい。ここで、印籠構造とは、第1金型部のパーティング面と第2金型部のパーティング面とが対向しており、金型が完全に型締めされていなくともキャビティが形成されるように、僅かなクリアランスをもって第1金型部のパーティング面と第2金型部のパーティング面が摺り合うように第1金型部と第2金型部が嵌合する構造を指す。尚、本発明においては、例えば、第1金型部を固定金型部とし、第2金型部を可動金型部とする構成とすることもできる。
研削加工等によって所定形状に加工した後、入れ子の装着時に金属製ブロックが金型部に設けられた装着部から落下して破損する虞がない場合、あるいは又、接着剤を用いることなく金属製ブロックを装着部に装着可能な場合には、接着剤を用いずに金属製ブロックを金型部に設けられた装着部に直接装着することができる。あるいは又、エポキシ系、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系等の中から選択された熱硬化性接着剤を用いて、金属製ブロックを装着部に接着してもよいし、ボルト等によって金属製ブロックを装着部に接着してもよい。尚、装着部が設けられた装着用中子を金型部に取り付け、係る装着用中子の装着部に入れ子を装着してもよい。
上記の目的を達成するための本発明の成形品は、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る射出成形方法によって成形された成形品である。ここで、本発明の成形品にあっては、入れ子に対向した部分の投影面積が500cm2以上であり、入れ子に対向した部分の形状が、少なくとも平面又は曲面を有する形態とすることができる。更には、このような形態を含む本発明の成形品にあっては、例えば、入れ子に対向した部分に穴が形成されている形態とすることができる。
本発明の成形品として、具体的には、フレネルレンズ、パーソナルコンピュータ用のハウジング、球面あるいは非球面のレンズやミラー、レンズアレイ、導光板、回折格子、光学フィルタ、ブルーレイディスクやデジタル多用途ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)といった光ディスク、ホログラムメモリ、各種ディスプレイカバー、ドアハンドル、自動車用センターコンソールを挙げることができるし、本発明の成形品を、ナノインプリント技術におけるモールドやスタンパ等に適用することができるし、ナノプリント技術に適用することもできる。
本発明での使用に適した熱可塑性樹脂として、結晶性熱可塑性樹脂や非晶性熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂(PA系樹脂);ポリオキシメチレン(ポリアセタール,POM)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂;メタクリル系樹脂;ポリカーボネート樹脂(PC樹脂);変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;液晶ポリマーを例示することができる。
更には、ポリマーアロイ材料から成る熱可塑性樹脂を用いることができる。ここで、ポリマーアロイ材料は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたもの、又は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を化学的に結合させたブロック共重合体若しくはグラフト共重合体から成る。ポリマーアロイ材料は、単独の熱可塑性樹脂のそれぞれが有する特有な性能を合わせ持つことができる高機能材料として広く使用されている。少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料を構成する熱可塑性樹脂として、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;メタクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂;変性PPE樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂を挙げることができる。2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイ材料を例示することができる。尚、このような樹脂の組合せを、ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂と表記する。以下においても同様である。更に、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカーボネート樹脂/PET樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂、ポリカーボネート樹脂/ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂/PET樹脂、変性PPE樹脂/HIPS樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミド系樹脂、変性PPE樹脂/PBT樹脂/PET樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミドMXD6樹脂、ポリオキシメチレン樹脂/ポリウレタン樹脂、PBT樹脂/PET樹脂を例示することができる。
尚、以上に説明した各種の熱可塑性樹脂に、添加剤や、充填剤、強化剤を加えることもできる。
尚、添加剤として、可塑剤;安定剤;酸化防止剤:紫外線吸収剤;ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド等の有機ニッケル化合物、ヒンダードアミン系化合物等の紫外線安定剤;帯電防止剤;難燃剤;バイナジン、プリベントール、チアベンダゾール等の防かび剤;流動パラフィン、ポリエチレンワックス、脂肪酸アマイド等の滑剤;ADCA等の有機発泡剤;透明核剤;有機顔料、無機顔料、有機染料といった各種の着色剤;架橋剤;アクリルグラフトポリマー、MBS等の耐衝撃強化剤を挙げることができる。
可塑剤として、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸類;リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリクレシル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル類;オレイン酸ブチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸−n−ヘキシン、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル等の脂肪酸塩基エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート等のアルコールエステル類;クエン酸アセチルトリエチル、マレイン酸ジブチル等のオキシ酸エステル類;トリメリット系可塑剤;ポリエステル系可塑剤;エポキシ系;塩化パラフィン系可塑剤を挙げることができる。
安定剤として、ジ−n−オクチルスズ化合物、ジ−n−ブチルスズ化合物、ジメチルスズ化合物等の有機スズ系安定剤;三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ケイ酸鉛等の鉛化合物系安定剤;カドミウム石けん、鉛石けん、亜鉛石けん等の金属石けん系安定剤;リン酸トリスノニル;リン酸トリスノニルフェニル等を挙げることができる。
酸化防止剤として、ジブチルクレゾール、ブチルヒドロキシアニソール等のフェノール系酸化防止剤;メチレンビス(メチルブチルフェノール)、チオビス(メチルブチルフェノール)等のビスフェノール系酸化防止剤;トリス(メチルヒドロキシブチルフェニル)ブタン、トコフェノール等のポリフェノール系酸化防止剤;ジミリスチルチオジプロピオネート等の有機イオウ化合物;トリス(モノ/ジノニルフェニル)ホスファイト等の有機リン化合物を挙げることができる。
紫外線吸収剤として、サリチル酸フェニル、サリチル酸ブチルフェニル等のサリチル酸系紫外線吸収剤;ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;(ヒドロキシメチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;アクリル酸エチルヘキシルシアノジフェノニル等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤を挙げることができる。
帯電防止剤として、ポリ(オキシエチレン)アルキルアミン、ポリ(オキシエチレン)アルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤系帯電防止剤;アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等の陰イオン界面活性剤系帯電防止剤;第4級アンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤系帯電防止剤;両性系界面活性剤;電導性樹脂を挙げることができる。
難燃剤として、テトラブロモビスフェノールA、ポリブロモビフェノール、ビス(ヒドロキシジブロモフェニル)プロパン、塩化パラフィン等のハロゲン系難燃剤;リン酸アンモニウム、リン酸トリクレジル等のリン系難燃剤;三酸化アンチモン;赤リン;酸化スズ等を挙げることができる。
また、充填剤、強化剤として、無機系材料;ステンレス鋼繊維、高強度アモルファス金属繊維、ステンレス箔、スチール箔、銅箔等の金属系材料;高分子ポリエチレン繊維、高強力ポリアレート繊維、パラ系全芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維、PEEK繊維、PEI繊維、PPS繊維、フッ素樹脂繊維、フェノール樹脂繊維、ビニロン繊維、ポリアセタール繊維等の有機系材料;粉系を挙げることができる。
無機系の充填剤、強化剤として、ガラス繊維、ガラス長繊維、石英ガラス繊維等のガラス系材料;PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、グラファイトウィスカ等の炭素系材料;炭化ケイ素繊維、炭化ケイ素連続繊維、炭化ケイ素ウィスカ、炭化ケイ素ウィスカシート等の炭化ケイ素系材料;ボロン繊維といったボロン系材料;Si−Ti−C−O繊維といったSi−Ti−C−O系材料;チタン酸カリウム繊維、チタン酸カリウムウィスカ、チタン酸カリウム系導電性ウィスカ等のチタン酸カリウム系材料;窒化ケイ素ウィスカ、窒化ケイ素ウィスカシート等の窒化ケイ素系材料;硫酸カルシウムウィスカといった硫酸カルシウム系材料を挙げることができる。
粉系の充填剤、強化剤として、マイカフレーク、マイカ粉、シラスバルーン、シリカ微粉、タルク粉、水酸化アルミニウム粉、水酸化マグネシウム粉末、マグネシウムシリケート粉末、硫酸カルシウム微粉、球状中空ガラス粉、金属化粉、高純度合成シリカ微粉、二硫化タングステン粉末、タングステンカーバイト粉、ジルコニア微粉、ジルコニア系微粉末、部分安定化ジルコニア粉末、アルミナ-ジルコニア複合粉末、複合金属粉末、鉄粉、アルミニウム粉、モリブデン金属粉、タングステン粉、窒化アルミニウム粉末、ナイロン微粒子粉、シリコーン樹脂微粉末、スピネル粉末、アモルファス合金粉末、アルミフレーク、ガラスフレークを挙げることができる。
本発明において、炭素水素固形物皮膜を構成する炭素水素固形物(微小固体粒子)は、通常、アモルファス状である。
ここで、炭素水素固形物皮膜は、排気した反応容器内に金属膜を保持した状態で、反応容器内に炭化水素系ガスを導入し、金属膜に高周波電力及び高電圧パルスを印加して導入された炭化水素系ガスのプラズマを発生させると同時に、金属膜を負の電位となるように保持する。これによって、金属膜の凹凸部が形成された表面に、10原子%乃至45原子%の原子水素を含有するアモルファス状の炭素水素固形物が形成される。具体的には、金属膜を負の電位にすることにより、プラスに帯電し、イオン化し、ラジカル状態となった炭化水素系ガス成分が、金属膜の表面に引き付けられる。そして、雲状、霧状となった炭化水素系ガスのイオンやラジカルは金属膜の全面を覆い、金属膜の表面において炭素原子と水素原子から成るアモルファス状の微小固体粒子の放電、析出が繰り返され、これらの微小固体粒子が金属膜の表面に吸着され、金属膜の表面において均等、均一な炭素水素固形物皮膜が成膜される。即ち、炭化水素系ガスに基づくプラズマ発生下、高周波電力と高電圧パルスとを重畳印加し、且つ、金属膜を負の電位に保持することによって、この雰囲気中に析出した炭素原子と水素原子を主成分とするアモルファス状の微小固体粒子が、金属膜の表面に誘引、吸着される。このような成膜雰囲気では、成膜材料源としての炭化水素系ガスは、プラズマによって容易に分解すると共に、活性な炭素や水素のイオンやラジカルが発生する結果、金属膜の表面が一定の厚さの炭素水素固形物皮膜によって被覆される。また、たとえ、金属膜の表面の形状が複雑であったとしても、炭素水素固形物皮膜の成膜は、比較的、均等、均一に行われる。尚、負電位を印加せずに単に炭化水素系ガスのプラズマ放電を行うと、形成される炭素水素固形物皮膜の厚さは均等にはならない。その理由は、プラズマエネルギーのみの場合、炭化水素系ガス濃度によってガスの分解効率が変化すると共に、金属膜の位置等によってガス濃度自体も変化するためである。
金属膜の表面に形成された凹凸部が、例えば、凸部、凹部、及び、凸部と凹部とを結ぶ側面から構成されている場合、凸部、凹部及び側面の上への炭素水素固形物皮膜の成膜をスパッタリング法に基づき試みた場合、通常、凸部には炭素水素固形物皮膜が成膜されるものの、炭素水素固形物皮膜を側面及び凹部の上に均一に成膜することは困難である。これに対して、上述した方法に基づく炭素水素固形物皮膜の成膜にあっては、凸部、凹部及び側面の上に炭素水素固形物皮膜を均等、均一に成膜することができる。
炭素水素固形物皮膜は、具体的には、プラズマCVD装置を用いて成膜することができる。プラズマCVD装置によって、金属膜上に炭素水素固形物から成る炭素水素固形物皮膜が形成されるプロセスは、以下のステップ(a)〜ステップ(d)と考えられる。
(a)導入された炭化水素系ガスのイオン化(ラジカルと呼ばれる活性な中性粒子も存在する)が生じる。
(b)炭化水素系ガスから変化したイオン及びラジカルは、負の電位に保持された金属膜に衝撃的に衝突する。
(c)衝突時のエネルギーによって、結合エネルギーの小さいC−H結合が切断され、その後、活性化されたCとHが重合反応を繰り返して高分子化し、炭素原子と水素原子を主成分とする炭素水素固形物が析出する。
(d)そして、このステップ(c)の反応が金属膜の表面で生じる結果、金属膜上に炭素水素固形物(微小固体粒子)から成る炭素水素固形物皮膜が形成(成膜)される。
プラズマCVD装置に導入されるソースガスである有機系ガスとして、炭素と水素から成る炭化水素系ガスを用いることができる。具体的には、常温(18゜C)で気体状態の有機系ガスとして、CH4ガス、CH2CH2ガス、C22ガス、CH3CH2CH3ガス、CH3CH2CH2CH3ガスを挙げることができるし、常温で液体状態の有機系ガスとして、C65CH3、C65CH2CH、C64(CH32、CH3(CH24CH3を挙げることができる。
炭素水素固形物皮膜における炭素原子と水素原子の含有率は、プラズマCVD法におけるソースガスである炭化水素系ガスの種類を変化させることによって、制御することができる。例えば、炭化水素系ガス成分のC/H比が大きいほど、形成される炭素水素固形物皮膜における炭素原子含有率が高くなる。但し、この場合、得られる炭素水素固形物皮膜は硬くなる。そこで、炭素水素固形物を構成する微小固体粒子の炭素原子含有率の上限を、好ましくは90原子%と規定している。一方、炭化水素系ガス成分のC/H比が小さいほど、炭素水素固形物を構成する微小固体粒子の水素原子含有率を高くすることができ、曲げ変形に対する抵抗力が大きくなり、生成した炭素水素固形物皮膜の剥離も生じ難い。即ち、炭素水素固形物を構成する微小固体粒子の水素原子含有率の下限を10原子%としているが、炭素水素固形物皮膜の熱的及び機械的な曲げ変形に対する抵抗を向上させるという観点からは、水素原子の含有率が高い方が有利である。但し、水素原子の含有率が45原子%を超えると、炭素原子含有率が相対的に少なくなり、軟質で耐摩耗性が低下するうえ、成膜が困難となる等の点で好ましくない場合がある。このように、水素原子含有率を高くした炭素水素固形物皮膜のビッカース硬さHVは700乃至2800となるが、係るビッカース硬さHVは、一般のダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)に比較すると、極めて低い値である。
尚、炭素水素固形物を構成する微小固体粒子は、具体的には、1×10-9m程度以下、あるいは、1×10-9m以下の大きさである。そして、各微小固体粒子及び微小固体粒子の堆積層である炭素水素固形物皮膜はアモルファス状態を呈しているため、欠陥が生じ易い粒界が存在せず、緻密で優れた密着性を有し、金属膜から剥離することがない。
本発明にあっては、断熱性を有する断熱皮膜としての溶射皮膜が溶射法によって形成されている。従って、入れ子を焼結体といった緻密であるが脆性な材料から作製したときの種々の問題(焼成炉の問題、製造時の割れの問題、使用時の破損の問題、製造コストが非常に高いといった問題等)が発生することがないし、入れ子は、例えば、金型の構造、キャビティや成形品の形状等からの種々の制約を受けることが無い。
しかも、入れ子の表面上(具体的には溶射皮膜上)に金属膜が配設されているので、成形品の表面に一層高い鏡面性を付与することができるし、成形品の表面に、例えば、高い光学特性を付与することができる。また、金属膜の表面を所望の形状に加工することによって、金属膜の表面に加工された形状を成形品の表面に高い精度で転写することができる。
更には、凹凸部を有する金属膜の表面には、10原子%乃至45原子%の水素原子を含有する炭素水素固形物から成る炭素水素固形物皮膜が形成されているので、金型から(より具体的には、金属膜から)成形品を離型する際の成形品の離型性を飛躍的に向上させることができる。
従って、全てが緻密であるセラミックス焼結体から作製された入れ子を使用し、しかも、入れ子の破損防止対策として複雑な型組を採用した従来の金型組立体を用いること無く、表面が同等の品質を有する、即ち、外観特性に優れた成形品を成形する金型組立体を提供することが可能となる。また、入れ子の大きさは、溶射装置で噴霧できる範囲であれば、基本的に制限がないため、例えば、500cm2を越えるような大きな入れ子を、比較的容易に、且つ、安価に提供することが可能となる。
また、得られた成形品においては、ガラス繊維等の充填剤が配合された熱可塑性樹脂を用いて成形した場合であっても、キャビティ内での溶融熱可塑性樹脂の急冷を防止できるために、充填剤の浮きを防止することができ、また、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂における固化層の急速な発達を抑制できるために、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の流動性を、通常の鋼材から作製された入れ子の場合と比較して、1〜3割ほど高められる効果もあり、特に大型の成形品や薄肉の成形品を容易に成形することができる。また、3次元曲率を有する成形品にまで応用できるため、応用範囲を大幅に広げることが可能となる。
成形品に穴を設ける場合、第1金型部に金属製の第1コア部材を配設し、第2金型部に金属製の第2コア部材を配設する。そして、第1金型部と第2金型部とを型締めすることでキャビティを形成する。尚、第1金型部と第2金型部とを型締めした状態において、第1コア部材の先端面と第2コア部材の先端面とは接触した状態、あるいは、対向した状態となる。そして、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を射出するが、コア部材の周囲を溶融熱可塑性樹脂が流動し、表層が冷えかけた熱可塑性樹脂同士が合流する結果、合流部位にウェルドラインと呼ばれる筋状のラインが屡々発生する。このような現象を解決する方法として、環状の焼結体(環状焼結体と呼ぶ)を作製し、環状焼結体をコア部材に挿入し、接着剤等でコア部材に接着する方法を挙げることができる。しかしながら、このような方法では、ウェルドラインは消失できるが、キャビティ面を構成する入れ子とは別部品として環状焼結体を作製する必要があるし、環状焼結体を精度良く加工しないと、第1金型部と第2金型部との型締め時に破損する虞が高い。特に、キャビティが複雑な3次元形状や球の一部を構成している場合、環状焼結体を固定すべき第1金型部や第2金型部の部分に精度良く加工、接着ができない可能性が高い。更には、環状焼結体と入れ子との間には、破損防止のために若干のクリアランスが必要であり、環状焼結体や入れ子の作製が困難となる。
本発明にあっては、溶射処理で入れ子の表面に溶射皮膜を形成するので、複雑な3次元形状や球面から成るキャビティ面の一部を入れ子が構成する場合にあっても、入れ子を容易に作製することができる。また、ウェルドラインの発生を確実に防止することができる。更には、成形品に穴を設けるために、入れ子に突起部(コア部材に相当する)を設ける場合、係る突起部の表面に厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層を形成し、金属下地層上にセラミックスから成る溶射皮膜を形成すればよい。但し、突起部の当たり面あるいは対向面には、金属下地層及び溶射皮膜を形成する必要はない。また、この場合には、突起部に設けられた溶射皮膜の上に金属膜を配設してもよいし、配設しなくともよい。
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
実施例1は、本発明の金型組立体、本発明の第1の態様に係る射出成形方法、及び、本発明の成形品に関する。
パーソナルコンピュータや携帯電話、PDA等にて使用される液晶表示装置には、液晶表示装置の薄型、軽量化、省電力、高輝度・高精細化の要求に対処するために、面状光源装置が組み込まれている。そして、この面状光源装置には、一般に、テーパー状の傾斜面を有する楔形の導光板が備えられている。この導光板は、平坦な第1面と、この第1面と対向する平坦な第2面を有し、一般に、透明な材料から作製されている。
また、自動車、電車、船舶、航空機等の輸送手段における灯具や灯火(例えば、ヘッドライト、テールライト、ハイマウントストップライト、スモールライト、ターンシグナルランプ、フォグライト、室内灯、メーターパネル用ライト、各種のボタンに内蔵された光源、行き先表示灯、非常灯、非常口誘導灯等)、建築物における各種の灯具や灯火(外灯、室内灯、照明具、非常灯、非常口誘導灯等)、街路灯、信号機や看板、機械、装置等における各種の表示灯具、トンネルや地下通路等における照明具や採光部にも、導光板を採用することができる。
そして、このような導光板を液晶表示装置に組み込めば、極めて明るい表示の液晶表示装置を得ることができ、消費電力を低減できる。また、例えば輸送手段における灯具に代表される灯具等に導光板を適用すれば、光を射出する灯具等の光透過部材に凹凸を設けなくとも均一な輝度分布、高輝度を達成することができると共に、反射部材(リフレクター)を平面状とすることができるので、灯具等の体積を減少させることができる結果、灯具等の設置場所の制限が少なくなる。また、光源を蛍光管や発光ダイオードとすれば、省電力化、省エネルギーを図ることができるし、光源からの光の有効利用を図ることができる。更には、例えば室内灯に代表される灯具等においては、あるいは又、日光に照らされない部屋や地下室、地下通路にあっても、光源(例えば蛍光灯)の光を有効に、効率良く利用することが可能となり、光源の数を減少させることも可能となる、省エネルギーを達成することができる。また、自然光を光源として用いれば、一層の省エネルギーを達成することができる。
実施例1にあっては、成形品をこのような導光板とした。より具体的には、実施例1の導光板は、大きさが270mm×190mmであり、厚さが2.5mmから1.0mmに変化する楔形の導光板である。
入れ子の模式的な断面図を図1の(A)に示し、拡大した模式的な一部断面図を図1の(B)に示すように、更には、金型組立体の概念図を図2に示すように、実施例1の金型組立体10は、
(A)第1金型部(固定金型部)11、第2金型部(可動金型部)12、及び、第1金型部11に設けられた溶融樹脂射出部14を備え、第1金型部11と第2金型部12との型締めによってキャビティ13が形成される金型、
(B)第1金型部11及び第2金型部12に配置された入れ子20A,20B、並びに、
(C)表面に凹凸部を有し、入れ子20A,20Bの溶射皮膜33A,33B上に配設された厚さ0.03mm乃至0.5mmの金属膜40A,40B、
を備えている。ここで、入れ子20A,20Bは、
(B−1)金属製ブロック31A,31B、
(B−2)金属製ブロック31A,31Bの少なくともキャビティ13に面した表面(金属製ブロック31A,31Bの頂面)に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層32A,32B、及び、
(B−3)金属下地層32A,32B上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜33A,33B、
から構成されている。
溶融樹脂射出部14は、ゲート点数が1点のサイドゲート構造を有する。入れ子20A,20Bは、図示しないボルトを用いて、第1金型部(固定金型部)11及び第2金型部(可動金型部)12の装着部に固定されている。図1の(B)においては、気孔が整列しているように図示しているが、実際には、気孔はランダムに形成されている。更には、専ら、密閉気孔(閉孔)を図示しているが、当然であるが、開口気孔(開孔)も存在する。図面によっては、金属製ブロック31A,31B及び溶射皮膜33A,33Bを纏めて、参照番号34A,34Bで表している場合がある。
そして、凹凸部を有する金属膜40A,40Bの表面には、10原子%乃至45原子%の水素原子を含有する炭素水素固形物から成る炭素水素固形物皮膜41A,41Bが形成されている。ここで、炭素水素固形物は、より具体的には、炭素原子含有率90原子%乃至55原子%、水素原子含有率10原子%乃至45原子%の組成を有する微小固体粒子から成り、炭素水素固形物皮膜のビッカース硬さHVは、700乃至2800である。尚、図1の(A)以外の図面においては、炭素水素固形物皮膜41A,41Bの図示を省略している。炭素水素固形物皮膜41A,41Bの諸元は、以下のとおりである。炭素水素固形物皮膜41A,41Bを構成する炭素水素固形物(微小固体粒子)は、アモルファス状である。炭素水素固形物皮膜41A,41Bの厚さは、金属膜40,40Bにおける凹凸部の高さの1/10以下であり、且つ、凹凸部のピッチの1/10以下である。
炭素水素固形物皮膜の厚さ:5μm
炭素原子含有率 :83原子%
水素原子含有率 :17原子%
ビッカース硬さHV :1300HV0.05/30
実施例1における入れ子において、金属製ブロック31A,31Bは、具体的には、20゜C乃至200゜Cにおける線膨張係数が11.5×10-6/゜CであるSUS420J2(日立金属株式会社製HPM38)から作製されている。金属製ブロック31Aの厚さは順次変化している。一方、金属製ブロック31Bの厚さは一定である。金属製ブロック31A,31Bのキャビティ面に該当する面の全てに溶射皮膜が形成されている。また、厚さ0.05mmの金属下地層32A,32Bは、溶射皮膜33A,33Bを金属製ブロック31A,31Bに強固に密着させるために必要とされ、その組成は、Ni−Cr(より具体的には、Ni−20%Cr)であり、溶射法に基づき金属製ブロック31A,31Bの頂面に形成されている。金属下地層32A,32B上には溶射皮膜33A,33Bが形成されている。実施例1において、溶射皮膜33A,33Bは、図1の(B)に入れ子20A,20Bの拡大した模式的な一部断面図を示すように、1層の単位層から構成されており、プラズマ溶射装置にて形成されている。また、溶射皮膜33A,33Bの表面は、鏡面仕上げとなっている。ここで、溶射皮膜33A,33Bの諸元は、以下のとおりである。
溶射皮膜の組成 :ZrO2(Y23を8重量%含有)
溶射皮膜の平均厚さ :1.0mm
溶射皮膜の熱伝導率 :2W/(m・K)
溶射皮膜の気孔率平均値 :7.0%
溶射皮膜を構成する粉末材料の平均粒径:20μm
溶射皮膜表面の表面粗さRa :0.015μm
実施例1にあっては、金属膜40A,40Bは、厚さ0.3mmのニッケル−クロム(Ni−Cr)合金薄膜から成り、入れ子20A,20B(具体的には、溶射皮膜33A,33B)のそれぞれの上に、適切な方法で着脱自在に配設(載置)されている。即ち、実施例1においては、所謂スタンパ構造を有する。入れ子20A,20Bの上に載置される金属膜40A,40Bのキャビティ面には、プリズム状の凹凸部が形成されている。即ち、この凹凸部は、2次元マトリックス状に配置されており、ピッチは100μm、高さは80μmであり、金属膜40A,40Bの表面には平坦な部分が無い。そして、凹凸部の延在方向に垂直な仮想平面で凹凸部を切断したときの凹凸部の形状は二等辺三角形である。尚、入れ子20Aの上に載置される金属膜40Aにおける凹凸部の延びる方向と、入れ子20Bの上に載置される金属膜40Bにおける凹凸部の延びる方向は、平行である。金属膜40A,40Bの溶射皮膜33A,33Bと対向する面は平坦である。金属膜40A,40Bは、例えば、ガラス面にフォトレジストを用いて凹凸部を設けたマザー型を使用し、電鋳法により作製することができる。
凹凸部を有する金属膜40A,40Bの表面に、炭素水素固形物皮膜41A,41Bを、以下に説明するプラズマCVD装置を用いて形成(成膜)することができる。
図6は、金属膜40A,40B上に炭素水素固形物から成る炭素水素固形物皮膜41A,41Bを形成するために使用されるプラズマCVD装置の概念図である。このプラズマCVD装置は、
(1)接地された反応容器(反応装置)101、
(2)この反応容器101内の所定の位置に配置された金属膜40A,40Bに接続された導体102、並びに、
(3)反応容器101内に成膜用の有機系ガスを導入するためのガス導入装置及び反応容器101を真空引きする真空装置(これらは図示せず)、
を備えている。また、プラズマCVD装置は、更に、
(4)高電圧パルスを印加するための高電圧パルス発生電源103、
(5)金属膜40A,40Bの周囲に炭化水素系ガスプラズマを発生させるためのプラズマ発生用電源104、並びに、
(6)導体102及び金属膜40A,40Bに高電圧パルス及び高周波電力の両方を同時に印加するために、高電圧パルス発生電源103及びプラズマ発生用電源104との間に配設された重畳装置105、
を備えている。
尚、ガス導入装置及び真空装置は、それぞれバルブ106a及び106bを介して反応容器101に接続されている。また、導体102は高電圧導入部108を介して重畳装置105に接続されている。
このプラズマCVD装置を用いて、金属膜40A,40B上に炭素水素固形物から成る炭素水素固形物皮膜41A,41Bを形成するには、金属膜40A,40Bを反応容器101内の所定の位置に配置し、真空装置を駆動して反応容器101を排出した後、ガス導入装置から有機系ガスを反応容器101内に導入する。そして、プラズマ発生用電源104からの負の高周波電力を金属膜40A,40Bに印加する。反応容器101は、アース線108によって電気的に接地されているので、金属膜40A,40Bは、相対的に負の電位を有することになる。そのため、印加によって発生する導入ガスのプラズマ中のプラスイオンが、負に帯電した金属膜40A,40Bの周りに発生する。そして、高電圧パルス発生電源103からの高電圧パルス(負の高電圧パルス)を金属膜40A,40Bに印加すると、炭化水素系ガスプラズマ中のプラスイオンは金属膜40A,40Bの表面に誘引、吸着される。このような処理によって、金属膜40A,40Bの表面には、炭素水素固形物から成る炭素水素固形物皮膜が形成(成膜)される。即ち、反応容器101内では、最終的には炭素と水素を主成分とするアモルファス状の炭素水素固形物から成る炭素水素固形物皮膜が、金属膜40A,40Bの周囲に析出し、金属膜40A,40B上に堆積し、炭素水素固形物皮膜41A,41Bが形成される。
尚、図6に示すプラズマCVD装置にあっては、高電圧パルス発生電源103の出力電圧を、以下の(1)〜(3)のように変化させることによって、金属膜40A,40Bに対して金属等のイオン注入も可能である。
(1)イオン注入を重点的に行う場合 :10kV乃至40kV
(2)イオン注入と炭素水素固形物皮膜の形成の両方を行う場合:5kV乃至20kV
(3)炭素水素固形物皮膜の形成のみを行う場合 :数百乃V至数kV
尚、高電圧パルス発生電源103にあっては、パルス幅1マイクロ秒乃至10ミリ秒のパルスを、1回乃至複数回、繰り返し発生させることができる。また、プラズマ発生用電源104の高周波電力の出力周波数は、数十kHzから数GHzの範囲で変化させることができる。
反応容器101へ導入するガスは、常温で気体のものは、そのままの状態で反応容器101に導入すればよい。また、液状の化合物は、加熱してガス化させ、そのガス(蒸気)を反応容器101に導入すればよい。
実施例1における射出成形の条件を以下の表1に例示する。実施例1にあっては、金型組立体10Aの概念図を図2に示すように、第1金型部(固定金型部)11と第2金型部(可動金型部)12とを型締めしてキャビティ13を形成する。そして、表1に示す熱可塑性樹脂を射出用シリンダー16内で可塑化・溶融、計量した後、射出用シリンダー16からランナー部及びスプルー部15、溶融樹脂射出部(ゲート部)14を介して、表1に示す射出条件で、キャビティ13内に溶融熱可塑性樹脂を射出して、キャビティ13内の一部を溶融熱可塑性樹脂で充填した。次いで、キャビティ13内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型した。
[表1]
射出成形機 :住友重機械工業株式会社SE−150D
熱可塑性樹脂:PC樹脂
(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製 HL7001)
樹脂温度 :300゜C
金型温度 :100゜C
射出圧力 :150MPa
ゲート点数が1点のサイドゲート構造を有する溶融樹脂射出部14であったが、転写性が非常に優れており、成形品(導光板)の表面には、金属膜40A,40Bの表面に設けられた凹凸部が非常に精確に転写されていた。具体的には、転写率をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS1100)で測定したところ、導光板の両面共に、96〜99%の転写率を示しており、非常に高い転写率を示した。また、離型性には全く問題が生じなかった。更には、5万回の成形を行ったが、入れ子20A,20Bに損傷等は生じなかった。
比較のために、『比較例1A』として、鋼材から入れ子を作製し、実施例1と同様にして射出成形を行い、成形品を得た。この比較例1Aにあっては、転写率及び輝度が非常に低い値であった。
また、『比較例1B』として、実施例1と同じ入れ子を用い、但し、炭素水素固形物皮膜が形成されていない金属膜を用いて、実施例1と同様にして射出成形を行い、成形品を得た。この比較例1Bにあっては、離型時、金属膜から成形品の一部が離型できず、成形品の一部が金属膜上に残ったり、成形品に割れが生じ、安定した成形を行うことができなかった。
更には、『比較例1C』として、実施例1と同じ入れ子を用い、但し、厚さが0.02mmの金属膜を用いて、実施例1と同様にして射出成形を行い、成形品を得た。この比較例1Cにあっては、成形時、金属膜が剥離し、成形を行うことができなかった。更には、『比較例1D』として、実施例1と同じ入れ子を用い、但し、厚さが0.6mmの金属膜を用いて、実施例1と同様にして射出成形を行い、成形品を得た。この比較例1Dにあっては、転写率が非常に低い値であり、輝度も低かった。
また、『比較例1E』として、実施例1と同じ入れ子及び金属膜を用い、但し、金属下地層の厚さを0.02mmとして、実施例1と同様にして射出成形を行い、成形品を得た。この比較例1Eにあっては、成形時、溶射皮膜が剥離し、金属膜も同時に剥離し、成形を行うことができなかった。更には、『比較例1F』として、実施例1と同じ入れ子及び金属膜を用い、但し、金属下地層の厚さを1.2mmとした。このような入れ子においては、溶射皮膜の成膜中に、金属下地層が剥離し、入れ子の作製を行うことができなかった。
また、『比較例1G』として、水素原子含有率が7%の炭素水素固形物皮膜を金属膜上に成膜したところ、炭素水素固形物皮膜にクラックが発生してしまった。更には、『比較例1H』として、水素原子含有率が48%の炭素水素固形物皮膜を金属膜上に成膜したところ、所望の厚さの炭素水素固形物皮膜が成膜できず、また、成膜中に炭素水素固形物皮膜が金属膜から剥離してしまった。
尚、輝度測定は、トプコン社製BM5Aを用いて、直径10mmの測定範囲で9箇所での輝度測定を行った。直径10mmの測定範囲を、溶融樹脂射出部近傍に対応する導光板の部分で3箇所、導光板中央部分で3箇所、導光板端部近傍で3箇所の合計9箇所とした。また、表面粗さ・形状測定器 フォームタリサーフ を使用して、導光板の表面部に設けられた凹凸部の表面(より具体的には、凹凸部全体の表面)の表面粗さRaを測定した。実施例1、比較例1A、比較例1B、比較例1Dにおける測定結果を、以下の表2に示す。
[表2]
転写率(%) 表面粗さRa(μm) 輝度(cd/m2
実施例1 96〜99 0.005 4862
比較例1A 65〜75 0.007 3025
比較例1B −−− 0.02 4295
比較例1D 73〜80 0.006 3862
実施例2は、実施例1の変形であり、金属膜をメッキ法にて溶射皮膜の表面に形成した。溶射皮膜の表面領域(溶射皮膜の表面から溶射皮膜の内部に向かってDp=0.5mmまでの領域)には熱硬化性樹脂(具体的には、エポキシ樹脂)が含浸されている。溶射皮膜の気孔率平均値は5%以上10%以下、具体的には、6.5%である。金属膜は、ニッケル−リン合金(Ni−P)から成り、無電解メッキ法にて厚さ150μmの金属膜を溶射皮膜上に形成した後、ダイヤモンドバイトを用いたシェービング加工に基づき、係る金属膜の表面に凹凸部を設けた。凹凸部が設けられた金属膜の最終的な厚さを100μmとした。凹凸部は、ピッチが1μm、高さが1μmのライン・アンド・スペース状(多数の直線状の凸部と直線状の凹部とが並置、並設された状態)とした。尚、金型組立体、入れ子の構成、構造は、実施例1において説明した金型組立体、入れ子と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。また、溶射皮膜、炭素水素固形物皮膜の形成方法、得られた溶射皮膜、炭素水素固形物皮膜の諸元も、炭素水素固形物皮膜の厚さを0.2μmとした点を除き、実施例1と同様であるので、詳細な説明は省略する。尚、例えばクロム(Cr)から成る金属膜をPVD法(具体的には、ターゲットとしてクロムを用いた周知のスパッタリング法や、周知のイオンプレーティング法)にて形成することもできる。
ここで、実施例2における成形品を回折格子とし、大きさを30mm×50mmとした。
実施例2にあっても、実施例1にて説明したと同じ射出成形条件(表1参照)にて成形品を成形した。
ゲート点数が1点のサイドゲート構造を有する溶融樹脂射出部14であったが、転写性が非常に優れており、成形品(回折格子)の表面には、金属膜の表面に設けられた凹凸部が非常に精確に転写されていた。具体的には、転写率をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS1100)で測定したところ、回折格子の両面共に、93〜98%の転写率を示しており、非常に高い転写率を示した。また、離型性には全く問題が生じなかった。得られた回折格子の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金属膜に形成された凹凸のパターンが、忠実に回折格子の表面に再現されており、表面にざらつきの無い回折格子を得ることができた。更には、5万回の成形を行ったが、入れ子20A,20Bに損傷等は生じなかった。
尚、比較のために、炭素水素固形物皮膜を形成しない金属膜を用いて、実施例2と同様に回折格子を成形した。得られた回折格子の表面には、離型時に付いたと思われる離型跡が全面に認められた。また、得られた回折格子の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、表面にざらつきが認められた。
実施例3も、実施例1の変形であり、本発明の第1の態様に係る射出成形方法に関するが、中空部を有する成形品を成形するためにガスアシスト成形法を採用した。
実施例3においては、成形品を、自動車のアウタードアハンドル、より具体的には、バータイプのアウタードアハンドルとした。自動車用のドアハンドルは、通常、ポリカーボネート(PC)系アロイあるいはポリアミド(PA)系樹脂でノンフィラーの熱可塑性樹脂から作製されるが、一部、フィラーを添加された熱可塑性樹脂が用いられる場合もある。そして、無塗装で使用される場合もあるが、塗装やメッキ処理することで付加価値を高くした状態で屡々使用されている。しかしながら、ドアハンドル表面におけるフィラー浮きや塗装不良、メッキの密着不良等の不良が多く、歩留りは決して高いとは云えない。その原因の1つに、溶融熱可塑性樹脂のキャビティへの充填時に発生する固化層に起因した外観品質不良(転写不良やフィラー浮き等)が挙げられる。また、ゴム粒子が添加された熱可塑性樹脂を用いて成形されたドアハンドル表面にメッキを施す場合、ドアハンドルの表面層に生じた剪断応力によって添加されたゴム粒子の微細破断や伸びが生じる結果、メッキ時にエッチングをしても小さいゴム粒子がエッチングされず、メッキ密着不良が屡々発生する。最近では、メッキ歩留りを考慮して、蒸着法、イオンプレーティング法を含む物理的気相成長法(PVD法)にて金属層をドアハンドル表面に成膜することも検討されているが、やはり、ドアハンドル表面の外観品質は歩留りに直結する。
プルアップ式のドアハンドルに関しては、成形品外観部分に相当する部分のみの外観品質の向上のために、係る部分を成形するための焼結体(入れ子)を切削研磨することで製作可能である。然るに、バータイプのアウタードアハンドルは3次元形状であり、しかも、鍵穴部分が設けられた形状を有するので、焼結体を切削加工することは非常に難しい形状である。
実施例3にあっては、自動車用のバータイプのアウタードアハンドルとして、150mm×30mm、高さが20mmの3次元形状であり、鍵穴部分が設けられた形状を有するドアハンドルを成形した。
実施例3における入れ子において、具体的には、金属製ブロック31A,31Bは、実施例1と同様に、SUS420J2(日立金属株式会社製HPM38)から作製されている。また、厚さ0.08mmの金属下地層32A,32Bの組成は、実施例1と同様に、Ni−Cr(より具体的には、Ni−20%Cr)であり、溶射法に基づき金属製ブロック31A,31Bの頂面に形成されている。金属製ブロック31A,31Bのキャビティ13に面する表面は、アウタードアハンドルを成形するための3次元曲面形状を有している。また、溶射皮膜33A,33Bは、車体への取り付け面に対応する金属製ブロック31A,31Bの部分を除く全面に設けられている。ここで、実施例3においても、溶射皮膜33A,33Bは1層の単位層から構成されており、プラズマ溶射装置にて形成されている。具体的には、溶射皮膜33A,33BはZrO2から成る。溶射皮膜33A,33Bの表面は、鏡面仕上げとなっている。更には、溶射皮膜33A,33Bの表面には金属膜40A,40Bが配設されている。具体的には、溶射皮膜33A,33Bの表面を酸を用いてエッチングした後、無電解メッキ法にて厚さ100μmのNi−P層を形成して金属膜40A,40Bを得た後、サンドブラスト処理にて、ピッチ約5μm、高さ約3μmの凹凸部を金属膜40A,40Bの表面に形成した。その後、実施例1と同様にして、金属膜40A,40Bの表面に炭素水素固形物皮膜41A,41Bを成膜した。炭素水素固形物皮膜41A,41Bの諸元は、実施例1における炭素水素固形物皮膜41A,41Bの諸元と同じとした。
また、鍵穴部分の貫通穴部分に相当する金型の部分は、押し切りコア構造を有する。より具体的には、金属製ブロック31A,31Bのキャビティ13に面する表面に突起部(コア部材に相当する)を設け、係る突起部の表面に上述した金属下地層を形成し、金属下地層上にセラミックスから成る溶射皮膜を形成する。但し、金型の型締め時、突起部と突起部が隙間3μmをもって対向する突起部の対向面には、金属下地層及び溶射皮膜を形成する必要はない。
更には、アウタードアハンドルの厚さが20mmと厚いので、一般の射出成形ではヒケが生じる虞があり、加圧流体として窒素ガスを用いたガスアシスト成形法を採用した。それ故、第2金型部(可動金型部)に加圧流体導入用の配管と加圧流体注入ノズル17を設置した。尚、加圧流体注入ノズル17の後部には、油圧シリンダーから成る移動手段18が取り付けられている。
実施例3における射出成形の条件を以下の表3に例示する。実施例3にあっても、金型組立体10Bの概念図を図3に示すように、第1金型部(固定金型部)11と第2金型部(可動金型部)12とを型締めしてキャビティ13を形成する。尚、金型には、キャビティ13に連通したオーバーフローキャビティ19が設けられており、キャビティ13に射出された溶融熱可塑性樹脂の一部が成形中に流入し得る構造となっている。そして、移動手段18の動作によって、加圧流体注入ノズル17をキャビティ13に向かう方向に移動させ、前進端に位置させた(図3参照)。この状態にあっては、加圧流体注入ノズル17はキャビティ13に連通している。そして、表3に示す熱可塑性樹脂を射出用シリンダー16内で可塑化・溶融、計量した後、射出用シリンダー16からランナー部及びスプルー部15、溶融樹脂射出部(ゲート部)14を介して、表3に示した射出条件で、キャビティ13内に溶融熱可塑性樹脂を射出して、キャビティ13内の一部を溶融熱可塑性樹脂で充填した。尚、実施例3にあっては、キャビティ容積の約50%を満たす容量の溶融熱可塑性樹脂をキャビティ13内に射出した。そして、その後、加圧流体注入ノズル17から150MPaの窒素ガスをキャビティ13内の溶融熱可塑性樹脂に注入した。キャビティ13に射出された溶融熱可塑性樹脂の一部は、オーバーフローキャビティ19に流入する。次いで、キャビティ13内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型した。
[表3]
射出成形機 :日精樹脂工業株式会社AZ7000
熱可塑性樹脂:PC/PBT樹脂
(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製 MB4305)
樹脂温度 :280゜C
金型温度 :90゜C
射出圧力 :100MPa
ガスアシスト成形法を採用したので、アウタードアハンドルにヒケの発生は認めらなかった。また、鍵穴部分の周りにも、固化した熱可塑性樹脂同士が合流することによって発生するウェルドラインの発生や、ガスアシスト成形特有の現象である「色むら」現象の発生もなかった。尚、「色むら」とは、注入された加圧流体が、キャビティ面近傍の溶融熱可塑性樹脂と混合される結果生じる色むらである。更には、アウタードアハンドルの表面には、金属膜の表面に形成された凹凸部を正確に反映したシボが形成されていた。更には、5万回の成形を行ったが、入れ子20A,20Bに損傷等は生じなかった。
比較のために、鋼材から作製した入れ子を用いて射出成形したところ、キャビティ13内に溶融熱可塑性樹脂を完全には充填させることができず、窒素ガスをキャビティ13内の溶融熱可塑性樹脂に注入したところ、得られた成形品には欠陥部としての穴が開いていた。そこで、射出圧力を120MPaに変更して、ガスアシスト成形を行ったところ、キャビティ13内に溶融熱可塑性樹脂を完全に充填させることができ、得られた成形品に欠陥部としての穴が開いてはいなかったものの、アウタードアハンドルの溶融樹脂射出部に対応する部分の近傍の表面には、「湯じわ」と呼ばれる厚肉成形時等に充填速度が遅い際に発生する成形不良が発生しており、また、鍵穴部分の周りにはウェルドラインが発生しており、更には、「色むら」現象が発生しており、外観的に優れたアウタードアハンドルを得ることはできなかった。
また、実施例3の入れ子と同じ構成、構造を有するが、金属膜に炭素水素固形物皮膜を成膜しないものを比較のため作製し、係る入れ子を用いて実施例3と同様にして成形品を成形したところ、溶融樹脂射出部に対応する成形品の部分に、離型時に発生した剥離跡が認められた。
実施例4も、実施例1の変形であるが、実施例4にあっては、本発明の第2の態様に係る射出成形方法を採用した。尚、金型は、射出圧縮成形ができる印籠構造を有する。実施例4においては、成形品を眼鏡用レンズとした。
実施例4における入れ子において、具体的には、金属製ブロック31A,31Bは、実施例1と同様に、SUS420J2(日立金属株式会社製HPM38)から作製されている。また、厚さ0.05mmの金属下地層32A,32Bの組成は、実施例1と同様に、Ni−Cr(より具体的には、Ni−20%Cr)であり、溶射法に基づき金属製ブロック31A,31Bの頂面に形成されている。金属製ブロック31A,31Bのキャビティ13に面する表面は、眼鏡用レンズを成形するための3次元曲面形状を有している。尚、図4及び図5においては、図面の簡素化のために、このような形状を表してはいない。また、溶射皮膜33A,33Bは、金属製ブロック31A,31Bのキャビティ13に面する表面の全面に設けられている。ここで、実施例4においては、溶射皮膜33A,33Bは、図1の(B)に入れ子20A,20Bの拡大した模式的な一部断面図を示したと同様に、1層の単位層から構成されており、プラズマ溶射装置にて形成されている。また、入れ子20A,20Bのキャビティ面は、鏡面仕上げとなっている。溶射皮膜33A,33Bの具体的な構成、構造は、実施例1において説明した溶射皮膜33A,33Bの具体的な構成、構造と同じである。ここで、溶射皮膜33A,33Bの表面には金属膜40A,40Bが配設されている。また、金属膜40A,40Bの表面には、炭素水素固形物皮膜41A,41Bが成膜されている。尚、入れ子の構成は、実施例1において入れ子と同じ構成を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例4にあっては、金属膜をメッキ法にて溶射皮膜の表面に形成した。溶射皮膜の表面領域(溶射皮膜の表面から溶射皮膜の内部に向かって0.5mmまでの領域)には熱硬化性樹脂(具体的には、エポキシ樹脂)が含浸されている。溶射皮膜の気孔率平均値は5%以上10%以下、具体的には、6.5%である。金属膜は、ニッケル−クロム合金から成り、無電解メッキ法及び電気メッキ法の組合せにて、厚さ0.35mmの金属膜を溶射皮膜上に形成した後、係る金属膜の表面をエッチング加工することで凹凸部を設けた。凹凸部が設けられた金属膜の厚さを0.3mmとした。凹凸部は、ピッチが0.2μm、高さが0.3μmの円錐形に凸部を有する。尚、入れ子の構成、構造は、実施例1において説明した入れ子と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。また、炭素水素固形物皮膜の形成方法、得られた炭素水素固形物皮膜の諸元も、炭素水素固形物皮膜の厚さを10nmとした点を除き、実施例1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
尚、このような金属膜の凹凸部を成形品の表面に転写することで、眼鏡用レンズに光反射防止機能を付与することができる。即ち、光の波長よりも短い周期的構造を有するサブ波長格子(SWS,SubWavelength Surface)から構成された光反射防止層を眼鏡用レンズの表面に設けることができる。SWS型反射防止層は、例えば、光学部品の光入射面に設けられた多数の周期的構造を有するピラミッド状の凸部から構成されている。そして、このような構造を採用することで、凸部の底部に向かう方向に沿って徐々に凸部の体積が増加し、これに対応して反射防止層の有効屈折率が、空気の屈折率n0から媒質の屈折率n1へと徐々に増加する。その結果、空気中を進行する光が光学部品の光入射面に入射したとき、急激な屈折率の変化が生じることがなくなり、光は、殆ど反射されず、光学部品の内部に侵入する。
実施例4における射出成形の条件を以下の表4に例示する。
[表4]
射出成形機 :日精樹脂工業株式会社AZ7000
熱可塑性樹脂:PC樹脂
(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製 H3000R)
樹脂温度 :290゜C
金型温度 :120゜C
射出圧力 :80MPa
尚、金型は、第1金型部11のパーティング面と第2金型部12とのパーティング面とで印籠構造が形成されている。そして、成形すべき成形品の容積よりもキャビティ13の容積が大きくなるように、第1金型部11と第2金型部12とを型締めするが(金型組立体10Bの概念図である図4参照)、具体的には、成形品の厚さが1.0mm厚くなる状態にて、第1金型部(固定金型部)11と第2金型部(可動金型部)12とを型締めした。次いで、溶融樹脂射出部14から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ13内に射出した。そして、溶融熱可塑性樹脂の射出完了後、2.5×103Nの圧縮力にて、キャビティ13の容積を成形すべき成形品の容積まで減少させた。キャビティ13の容積減少中の状態を、金型組立体の概念図である図5に示すが、図5においては、溶融熱可塑性樹脂の図示は省略している。成形品の最終的な厚さを12mmとした。次に、キャビティ13内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型した。
ゲート点数が1点のサイドゲート構造を有する溶融樹脂射出部14であったが、射出圧縮成形方法を採用することで、キャビティ13内への溶融熱可塑性樹脂の高い充填性を達成することができ、しかも、転写性や圧力保持が優れているため、成形品にはヒケや反りの発生も無く、成形品は非常に良好な3次元曲面を有していた。また、偏光板をクロスニコル状態とすることで成形品の歪観察を行ったところ、溶融樹脂射出部14の近傍に対応する成形品の部分は、白から黒の色を呈しており、歪が非常に少ないことが分かった。また、レンズの両面共に95%以上の転写率を示しており、全光線透過率が97%と非常に高い透過率を示した。更には、離型性には全く問題が生じなかった。また、5万回の成形を行ったが、入れ子20A,20Bに損傷等は生じなかった。
尚、実施例4の入れ子と同じ構成、構造を有するが、金属膜に炭素水素固形物皮膜を成膜しないものを比較のため作製し、係る入れ子を用いて実施例4と同様にして成形品を成形したところ、離型不良が発生したため、レンズの表面に形成された凹凸部の多くに変形が生じたり、損傷が生じていた。損傷のない部位にて転写率を測定したところ、実施例4と同等の数値を示したが、損傷の影響で全光線透過率は93%を下回っていた。
射出圧縮成形においては、従来の技術のように焼結体から成る入れ子を用いる場合、焼結体の設計が非常に難しく、金属プレートを押さえプレートとして用いるとき、金属プレートの金属面がキャビティ面として出現するために、成形品の外観を損ねたり、あるいは又、焼結体を箱型形状にすると、肉厚が増して冷却時間が延びるといった問題があった。実施例4の金型組立体にあっては、金属製ブロック、金属下地層及び溶射皮膜から構成された入れ子を用いることで、均一な厚さによる断熱性の均一化や押さえプレートを使用しないことによる簡素化、入れ子の破損の防止、印籠構造における特に金型組立体の設計と製作が容易になるといった利点もある。
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した入れ子の構造、構成、使用した材料、金型組立体の構成、構造、射出成形条件等は例示であり、適宜変更することができる。実施例にあっては、第1金型部及び第2金型部に入れ子を配設したが、成形すべき成形品に依っては、第1金型部にのみ入れ子を配設してもよいし、第2金型部にのみ入れ子を配設してもよい。また、成形すべき成形品に依存して、キャビティに面した入れ子の表面の全てが溶射皮膜から構成されている構成とすることもできるし、一部が溶射皮膜から構成されており、残部には金属製ブロックが露出している構成とすることもできる。実施例においては、入れ子20A,20Bを同じ構成としたが、必要に応じて、異なる構成とすることもできる。
図1の(A)は、実施例1における入れ子の模式的な断面図であり、図1の(B)は、入れ子を拡大した模式的な一部断面図である。 図2は、実施例1の金型組立体の概念図である。 図3は、実施例3の金型組立体の概念図である。 図4は、型締め直後の実施例4の金型組立体の概念図である。 図5は、実施例4において、キャビティの容積を成形すべき成形品の容積まで減少させた状態の金型組立体の概念図である。 図6は、炭素水素固形物皮膜の成膜に適したプラズマCVD装置の概念図である。
符号の説明
10,10A,10B・・・金型組立体、11・・・第1金型部(固定金型部)、12・・・第2金型部(可動金型部)、13・・・キャビティ、14・・・溶融樹脂射出部(ゲート部)、15・・・ランナー部及びスプルー部、16・・・射出用シリンダー、17・・・加圧流体注入ノズル、18・・・移動手段、19・・・オーバーフローキャビティ、20A,20B・・・入れ子、31A,31B・・・金属製ブロック、32A,32B・・・金属下地層、33A,33B・・・溶射皮膜、33’,33”・・・単位層、34A,34B・・・金属下地層と溶射皮膜の総称、40A,40B・・・金属膜、41A,41B・・・炭素水素固形物皮膜、101・・・反応容器、102・・・導体、103・・・高電圧パルス発生電源、104・・・プラズマ発生用電源、105・・・重畳装置、106a,106b・・・バルブ、107・・・接地線、108・・・高電圧導入部

Claims (16)

  1. (A)第1金型部、第2金型部、及び、第1金型部に設けられた溶融樹脂射出部を備え、第1金型部と第2金型部との型締めによってキャビティが形成される金型、
    (B)第1金型部及び/又は第2金型部に配置され、
    (B−1)金属製ブロック、
    (B−2)金属製ブロックの少なくともキャビティに面した表面に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層、及び、
    (B−3)金属下地層上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜、
    から構成された入れ子、並びに、
    (C)表面に凹凸部を有し、入れ子の溶射皮膜上に配設された厚さ0.03mm乃至0.5mmの金属膜、
    を備えており、
    成形すべき成形品の表面には、金属膜の表面の凹凸部が転写され、
    凹凸部を有する金属膜のキャビティに面した表面には、炭素原子含有率90原子%乃至55原子%、水素原子含有率10原子%乃至45原子%の組成を有する微小固体粒子から成る炭素水素固形物皮膜が形成されており、
    炭素水素固形物皮膜のビッカース硬さHVは、1200乃至1400であることを特徴とする金型組立体。
  2. (A)第1金型部、第2金型部、及び、第1金型部に設けられた溶融樹脂射出部を備え、第1金型部と第2金型部との型締めによってキャビティが形成される金型、
    (B)第1金型部及び/又は第2金型部に配置され、
    (B−1)金属製ブロック、
    (B−2)金属製ブロックの少なくともキャビティに面した表面に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層、及び、
    (B−3)金属下地層上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜、
    から構成された入れ子、並びに、
    (C)表面に凹凸部を有し、入れ子の溶射皮膜上に配設された厚さ0.03mm乃至0.5mmの金属膜、
    を備えており、
    成形すべき成形品の表面には、金属膜の表面の凹凸部が転写され、
    凹凸部を有する金属膜のキャビティに面した表面には、10原子%乃至45原子%の水素原子を含有する炭素水素固形物から成る炭素水素固形物皮膜が形成されており、
    溶射皮膜の気孔率平均値は5%以上10%以下であり、溶射皮膜の少なくとも表層領域には熱硬化性樹脂が含浸されていることを特徴とする金型組立体。
  3. 炭素水素固形物皮膜の厚さは、0.1μm乃至20μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金型組立体。
  4. 炭素水素固形物皮膜の厚さは、凹凸部の高さの1/10以下であり、且つ、凹凸部のピッチの1/10以下であることを特徴とする請求項3に記載の金型組立体。
  5. 溶射皮膜の熱伝導率は、1W/(m・K)乃至4W/(m・K)であり、
    溶射皮膜の平均厚さは、0.3mm乃至2.0mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の金型組立体。
  6. 溶射皮膜を構成する粉末材料の平均粒径は2×10-5m乃至1×10-4mであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の金型組立体。
  7. 少なくともキャビティに面した金属製ブロックの表面の全てに、溶射皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の金型組立体。
  8. キャビティに面した金属製ブロックの表面の一部に、溶射皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の金型組立体。
  9. 金属膜は、クロム、クロム合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、タングステン及びタングステン合金から成る群から選択された少なくとも1種類の材料、又は、ニッケル−リン合金膜上にクロム膜が形成された積層構造、又は、ニッケル膜上にクロム膜が形成された積層構造から構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8いずれか1項に記載の金型組立体。
  10. 金属膜は、電気メッキ法、化学メッキ法、又は、物理的気相成長法によって溶射皮膜上に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の金型組立体。
  11. 金属膜は、クロム、クロム合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、タングステン及びタングステン合金から成る群から選択された少なくとも1種類の材料、又は、ニッケル−リン合金膜上にクロム膜が形成された積層構造、又は、ニッケル膜上にクロム膜が形成された積層構造から成り、入れ子の溶射皮膜上に着脱自在に配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の金型組立体。
  12. (A)第1金型部、第2金型部、及び、第1金型部に設けられた溶融樹脂射出部を備え、第1金型部と第2金型部との型締めによってキャビティが形成される金型、
    (B)第1金型部及び/又は第2金型部に配置され、
    (B−1)金属製ブロック、
    (B−2)金属製ブロックの少なくともキャビティに面した表面に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層、及び、
    (B−3)金属下地層上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜、
    から構成された入れ子、並びに、
    (C)表面に凹凸部を有し、入れ子の溶射皮膜上に配設された厚さ0.03mm乃至0.5mmの金属膜、
    を備えており、
    凹凸部を有する金属膜のキャビティに面した表面には、炭素原子含有率90原子%乃至55原子%、水素原子含有率10原子%乃至45原子%の組成を有する微小固体粒子から成る炭素水素固形物皮膜が形成されており、
    炭素水素固形物皮膜のビッカース硬さHVは、1200乃至1400である金型組立体を用いた射出成形方法であって、
    (イ)第1金型部と第2金型部とを型締めしてキャビティを形成した後、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、次いで、
    (ロ)キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型し、以て、成形品の表面に金属膜の表面の凹凸部を転写する、
    工程を具備することを特徴とする射出成形方法。
  13. (A)第1金型部、第2金型部、及び、第1金型部に設けられた溶融樹脂射出部を備え、第1金型部と第2金型部との型締めによってキャビティが形成される金型、
    (B)第1金型部及び/又は第2金型部に配置され、
    (B−1)金属製ブロック、
    (B−2)金属製ブロックの少なくともキャビティに面した表面に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層、及び、
    (B−3)金属下地層上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜、
    から構成された入れ子、並びに、
    (C)表面に凹凸部を有し、入れ子の溶射皮膜上に配設された厚さ0.03mm乃至0.5mmの金属膜、
    を備えており、
    凹凸部を有する金属膜のキャビティに面した表面には、10原子%乃至45原子%の水素原子を含有する炭素水素固形物から成る炭素水素固形物皮膜が形成されており、
    溶射皮膜の気孔率平均値は5%以上10%以下であり、溶射皮膜の少なくとも表層領域には熱硬化性樹脂が含浸されている金型組立体を用いた射出成形方法であって、
    (イ)第1金型部と第2金型部とを型締めしてキャビティを形成した後、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、次いで、
    (ロ)キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型し、以て、成形品の表面に金属膜の表面の凹凸部を転写する、
    工程を具備することを特徴とする射出成形方法。
  14. キャビティに連通した加圧流体注入ノズルを更に備えた金型組立体を用い、
    前記工程(イ)において、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出中に、あるいは、射出完了と同時に、あるいは、射出完了後、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体注入ノズルから加圧流体の注入を開始することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載に射出成形方法。
  15. (A)第1金型部、第2金型部、及び、第1金型部に設けられた溶融樹脂射出部を備え、第1金型部と第2金型部との型締めによってキャビティが形成される金型、
    (B)第1金型部及び/又は第2金型部に配置され、
    (B−1)金属製ブロック、
    (B−2)金属製ブロックの少なくともキャビティに面した表面に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層、及び、
    (B−3)金属下地層上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜、
    から構成された入れ子、並びに、
    (C)表面に凹凸部を有し、入れ子の溶射皮膜上に配設された厚さ0.03mm乃至0.5mmの金属膜、
    を備えており、
    凹凸部を有する金属膜のキャビティに面した表面には、炭素原子含有率90原子%乃至55原子%、水素原子含有率10原子%乃至45原子%の組成を有する微小固体粒子から成る炭素水素固形物皮膜が形成されており、
    炭素水素固形物皮膜のビッカース硬さHVは、1200乃至1400である金型組立体を用いた射出成形方法であって、
    (イ)成形すべき成形品の容積よりもキャビティの容積が大きくなるように、第1金型部と第2金型部とを型締めした後、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、
    (ロ)溶融熱可塑性樹脂の射出開始と同時に、あるいは、射出中に、あるいは、射出完了と同時に、あるいは、射出完了後、キャビティの容積を成形すべき成形品の容積まで減少させ、その後、
    (ハ)キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型し、以て、成形品の表面に金属膜の表面の凹凸部を転写する、
    工程を具備することを特徴とする射出成形方法。
  16. (A)第1金型部、第2金型部、及び、第1金型部に設けられた溶融樹脂射出部を備え、第1金型部と第2金型部との型締めによってキャビティが形成される金型、
    (B)第1金型部及び/又は第2金型部に配置され、
    (B−1)金属製ブロック、
    (B−2)金属製ブロックの少なくともキャビティに面した表面に形成された、厚さ0.03mm乃至1mmの金属下地層、及び、
    (B−3)金属下地層上に形成された、セラミックスから成る溶射皮膜、
    から構成された入れ子、並びに、
    (C)表面に凹凸部を有し、入れ子の溶射皮膜上に配設された厚さ0.03mm乃至0.5mmの金属膜、
    を備えており、
    凹凸部を有する金属膜のキャビティに面した表面には、10原子%乃至45原子%の水素原子を含有する炭素水素固形物から成る炭素水素固形物皮膜が形成されており、
    溶射皮膜の気孔率平均値は5%以上10%以下であり、溶射皮膜の少なくとも表層領域には熱硬化性樹脂が含浸されている金型組立体を用いた射出成形方法であって、
    (イ)成形すべき成形品の容積よりもキャビティの容積が大きくなるように、第1金型部と第2金型部とを型締めした後、溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、
    (ロ)溶融熱可塑性樹脂の射出開始と同時に、あるいは、射出中に、あるいは、射出完了と同時に、あるいは、射出完了後、キャビティの容積を成形すべき成形品の容積まで減少させ、その後、
    (ハ)キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却、固化し、その後、得られた成形品を金型から離型し、以て、成形品の表面に金属膜の表面の凹凸部を転写する、
    工程を具備することを特徴とする射出成形方法。
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