JP2009132102A - Tダイおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】超硬合金製のリップ部材をダイ本体に取り付けてリップ部を構成することにより、そのエッジ部をシャープエッジとするとともに精度や耐摩耗性、耐蝕性を確保した上で、さらにダイ本体を鋳鉄や低熱膨張合金あるいはその他の鋼材等によって形成しても、スリット内を流れる溶融樹脂材料の摩擦や滞留、偏りなどを防ぐ。
【解決手段】ダイ本体1に形成されたスリット3の開口端縁にリップ部が設けられて、スリット3内を通して供給される溶融材料をリップ部から吐出するTダイにあって、リップ部を超硬合金製のリップ部材を取り付けて構成するとともに、スリット3の内壁面4には、表面が仕上げ加工された中間層11を介して、硬質クロムめっき層12を被覆する。
【選択図】図3
【解決手段】ダイ本体1に形成されたスリット3の開口端縁にリップ部が設けられて、スリット3内を通して供給される溶融材料をリップ部から吐出するTダイにあって、リップ部を超硬合金製のリップ部材を取り付けて構成するとともに、スリット3の内壁面4には、表面が仕上げ加工された中間層11を介して、硬質クロムめっき層12を被覆する。
【選択図】図3
Description
本発明は、樹脂フィルム類を溶融押し出し成形により製造する場合などに用いられるTダイおよびその製造方法に関するものである。
Tダイを用いた押出成形法により製造される樹脂フィルムは、特に光学用途などに使用されるものについては厚み偏差やスジ状の欠陥、いわゆるダイスジがないものが求められており、これに伴いTダイの品質特性も重要となってきている。このため、溶融樹脂材料の流路となるスリットは、滞留が生じないようにその内壁面が滑らかとされるとともに、特に溶融材料が吐出させられるスリット開口端縁のリップ部は、その先端のエッジ部をシャープエッジに形成することができて、しかも欠けや傷、摩耗が発生しないように、硬度や強度、耐摩耗性の高い材質として、加工精度や離型性を向上させることが要求されている。
そこで、例えば特許文献1、2には、スリット内壁面に溶融樹脂との摩擦を低減するための硬質クロムめっきを施す一方で、リップ部先端のエッジ部にはWCを主成分とした高硬度で耐摩耗性の高い超硬を例えば溶射によって被覆することが記載されている。また、本発明の発明者らも、例えば特許文献3において、リップ部を超硬合金製のリップ部材によって形成するとともに、このリップ部を除いたダイ本体は超硬合金と略等しい熱膨張係数を有する鋼材(低熱膨張合金)として接着等により取り付けたTダイを提案している。
特開2000−334806号公報
特開2006−224462号公報
特開2007−196630号公報
ところが、特許文献1、2に記載のようにスリット内壁面に硬質クロムめっきを施すとともに、その先端開口縁のリップ部には超硬を被覆しようとすると、クロムめっきとWCとは密着性が悪いため、これらの継ぎ目で面荒れやクラック、段差が生じてしまい、成形された樹脂フィルム等にダイスジを発生させる原因となってしまう。また、特に溶射によって超硬を被覆する場合には、WCを主成分とする粉末材料を溶融して吹き付けることになるので、溶射後に研削・みがき加工を施してエッジ部を仕上げる際に粉末材料の粒子の剥がれやクラックが発生し易く、シャープエッジに仕上げることが困難となる。
この点、リップ部を超硬合金製として鋼材よりなるダイ本体に取り付けた特許文献3に記載のTダイでは、このようなクラックや剥がれを生じることなくエッジ部をシャープで高精度に仕上げることができ、また高い耐摩耗性や耐蝕性、強度を得ることができる。さらに、高温の溶融樹脂材料が流通させられて吐出させられるTダイでは、こうしてリップ部をダイ本体と異なる材質のリップ部材で形成してダイ本体に取り付けると、熱膨張の違いからリップ部に歪みが生じてしまうが、特許文献3に記載のTダイではダイ本体を超硬合金と略等しい熱膨張係数を有する低熱膨張合金よりなる鋼材で形成しているので、このような歪みがリップ部に発生するのも防ぐことができる。
ところが、このような低熱膨張合金は、その材料組成や製造方法が複雑であって高価であり、しかも難加工材であるためにダイ本体に成型するにもコスト高になるという問題がある。そこで、本発明の発明者らは、このような低熱膨張合金よりなる鋼材に代えて、やはり超硬合金と熱膨張係数が略等しく、かつ低熱膨張合金よりは安価で加工性がよい鋳鉄によってダイ本体を形成することを試みた。
しかしながら、このような鋳鉄によって形成したダイ本体には、その表面にポアやボイドといった開気孔が多数形成されており、また鋳造の際に生成した析出物が表面に析出していることもあって、スリットの内壁面に溶融樹脂材料との摩擦を低減するための硬質クロムめっきを施しても、この硬質クロムめっきの表面にダイ本体の表面性状に応じた凹凸が形成されてしまい、スリットを流れる溶融樹脂に滞留や偏りが生じるおそれがある。これは、例えば低熱膨張合金やその他の鋼材によってダイ本体を形成したときでも、そのスリット内壁面に析出物が存在していれば同様である。
本発明は、このような背景の下になされたもので、超硬合金製のリップ部材をダイ本体に取り付けてリップ部を構成することにより、そのエッジ部をシャープエッジとするとともに精度や耐摩耗性、耐蝕性を確保した上で、さらにダイ本体を鋳鉄や低熱膨張合金あるいはその他の鋼材等によって形成しても、スリット内を流れる溶融樹脂材料の摩擦や滞留、偏りなどを防ぐことが可能なTダイおよびその製造方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のTダイは、ダイ本体に形成されたスリットの開口端縁にリップ部が設けられて、上記スリット内を通して供給される溶融材料を上記リップ部から吐出するTダイであって、上記リップ部が超硬合金製のリップ部材を取り付けて構成されるとともに、上記スリットの内壁面には、表面が仕上げ加工された中間層を介して、硬質クロムめっき層が被覆されていることを特徴とする。また、このようなTダイを製造するための本発明のTダイの製造方法は、上記ダイ本体の上記スリットの内壁面に上記中間層を形成し、この中間層の表面を仕上げ加工した後に、該中間層の表面に上記硬質クロムめっき層を被覆することを特徴とする。
このような構成のTダイでは、まずダイ本体のスリット開口端縁に設けられるリップ部が、超硬合金製のリップ部材を取り付けて構成されたものであるので、耐摩耗性や耐蝕性を確保することができるのは勿論、リップ部のエッジ部に超硬を溶射して被覆したりするのに比べ、高精度でシャープなエッジを形成することができる。そして、例えば上述のような製造方法によって製造される本発明のTダイでは、ダイ本体のスリットの内壁面に一旦中間層を形成し、この中間層の表面を仕上げ加工して平滑にした上に硬質クロムめっき層を被覆するので、ダイ本体のスリット内壁面表面に開気孔や析出物が存在しても、硬質クロムめっき層の表面には凹凸を生じさせることなく滑らかな表面状態とすることが可能となる。
従って、このダイ本体を、上述のような低熱膨張合金やその他の鋼材によって形成した場合は勿論、リップ部材の超硬合金と熱膨張係数が略等しい鋳鉄製としても、スリットを流れる溶融材料との摩擦を低減して滞留を防ぐことができる。このため、このような鋳鉄製のダイ本体を採用することにより、高温の溶融樹脂材料が流れてもリップ部に歪みなどを生じることのないTダイを低コストで提供することが可能となる。
ここで、上記中間層は、その表面に被覆される硬質クロムめっき層が、通常は電解めっきによって形成されることから金属層であることが望ましく、また開気孔や析出物による凹凸を残すことなく表面を仕上げ加工できる厚さとするには、このように金属を溶射した金属溶射層か金属めっき層であることが望ましい。そして、さらにこうして表面を仕上げ加工することを考慮すると、この中間層は、金属溶射層とする場合にはNi、Ni−Cr、Ni−Co、Cu、Cu−Ni、Co、Co−Niのうち少なくとも1種を溶射した金属溶射層であることが望ましく、また金属めっき層とする場合は、Ni、Ni−P、Ni−Bのうち少なくとも1種をめっきした金属めっき層であることが望ましい。
なお、こうして形成される中間層は、その層の厚みが薄すぎると、表面を仕上げ加工した後でも開気孔や析出物による凹凸が残ってしまって、硬質クロムめっき層の表面を滑らかにすることができなくなるおそれがある一方、この中間層の層厚が厚すぎても、その形成に時間がかかる上に、表面仕上げ加工にも時間や労力を要する結果になる。このため、中間層の厚みは0.01〜0.2mmの範囲とされるのが望ましい。また、硬質クロムめっき層の厚みは、薄すぎると寿命が短く、逆に厚すぎるとやはりその被覆や表面仕上げ加工に時間や労力を要するので、0.03〜0.1mmの範囲とされるのが望ましい。
さらに、硬質クロムめっき層が被覆される中間層の仕上げ加工された表面の粗さは、粗いままだと硬質クロムめっき層の表面に凹凸が残されるおそれがあるので、例えばJIS B 0601:2001に規定される最大高さRzにおいて1.6S以下とされるのが望ましい。一方、この中間層を介して被覆される硬質クロムめっき層の表面はできるだけ滑らかに鏡面加工されるのが望ましく、同じく最大高さRzにおいて0.8S以下に仕上げられるのが望ましい。
以上説明したように、本発明によれば、リップ部を超硬合金製のリップ部材によって構成することにより、耐摩耗性や耐蝕性を確保するとともにそのエッジ部に高い精度とシャープさを与えることができる一方、ダイ本体のスリット内壁面表面に開気孔や析出物が存在していても、中間層を介して硬質クロムめっき層を被覆することにより、その表面を平滑としてスリット内を流れる溶融材料との摩擦を確実に低減するとともに滞留や偏りを防ぎ、厚み偏差やダイスジのない樹脂フィルム類の溶融押し出し成形を行うことが可能となる。
図1ないし図3は本発明のTダイの一実施形態を示すものであり、また図3ないし図6はこの一実施形態のTダイを製造する本発明のTダイの製造方法の一実施形態を説明するものである。本実施形態のTダイは、そのダイ本体1が複数(本実施形態では2つ)の本体部材2により構成され、ダイ本体1の後端側(図1および図2において上側)でこれらの本体部材2の側面同士が密着させられて一体化されることによりダイ本体1に組み立てられている。本実施形態では、これらの本体部材2が、後述するリップ部を除いて、例えば特許第2694239号公報に記載されているような、いわゆる低熱膨張鋳鉄製とされている。
一方、ダイ本体1の先端側(図1および図2において下側)においては、後端側で密着させられた本体部材2の側面同士が間隔をあけて互いに対向することにより、該側面間に、このダイ本体1の先端に開口する溝状のスリット3が、当該ダイ本体1の長手方向(図2における左右方向)に亙って延びるように画成される。従って、ダイ本体1のこの先端側において間隔をあけて互いに対向するこれら本体部材2の側面が、スリット3の内壁面4とされる。
ここで、このスリット3の後端側には、上記長手方向に延びる断面円形状のマニホールド5が形成されてスリット3に連通させられるとともに、このマニホールド5には、上記長手方向の適宜箇所(本実施形態では中央に1箇所)においてダイ本体1の後端面1Aから延びる供給口6が連通させられている。この供給口6は図示されない押出機に接続されていて、この押出機において粉砕、混和させられるとともに加熱されることにより溶融した例えば高分子有機材料等の溶融樹脂材料が、該供給口6からダイ本体1に供給され、上記マニホールド5を介してダイ本体1の長手方向に給送されるとともに、スリット3を通ってそのダイ本体1先端側の開口端縁から吐出させられる。
このダイ本体1の先端側においては、両本体部材2の上記側面とは反対側の側面が先端側に向かうに従いスリット3側に向かうように傾斜させられて先細り形状とされており、ただしその突端面は、供給口6およびマニホールド5の中心線を含んでスリット3の間隔の中心を通る平面Pに直交する平面状とされている。そして、スリット3の開口端縁となるこの突端面と上記内壁面4との交差稜線部分には、それぞれリップ部7が設けられている。なお、本実施形態のTダイは、図1に示すようにこの平面Pに対して対称形状とされている。
本実施形態では、これらのリップ部7は、本体部材2の上記交差稜線部分を断面L字状に切り欠いた切欠部に、本体部材2とは別体に形成された平板状のリップ部材8を、例えばセラミックス系接着剤による接着等によって接合することにより、各本体部材2と一体化されて設けられている。このリップ部材8は、本実施形態では超硬合金製とされており、ダイ本体1の本体部材2を構成する低熱膨張鋳鉄と熱膨張係数が略等しく、例えば300℃でともに8.0×10−6/℃以下とされていて、本実施形態では両者とも約5.5×10−6/℃とされている。
ここで、これらのリップ部7の対向する内壁面9は、その先端側部分が、互いに平行かつ上記平面Pとも平行とされており、従って上記突端面とは垂直に交差することになって、このリップ部7の内壁面9と上記突端面との交差稜線部がエッジ部となる。これに対して、スリット3の上記内壁面4は、マニホールド5から先端側に向けて一定間隔で延びた後、先端側に向かうに従い互いの間隔が漸次狭まるように傾斜するとともに、リップ部7の内壁面9後端側は上記先端側部分に対して鈍角に曲折して傾斜し、内壁面4の先端側と段差無く面一に連なるように形成されている。
そして、このスリット3の内壁面4には、図3に示すように中間層11を介して硬質クロムめっき層12が被覆されている。このうち中間層11は、金属粉末を加熱、溶融させて内壁面4に噴射することにより形成した金属溶射層、または内壁面4を除いてマスキングを施した本体部材2を金属めっき液中に浸漬してめっきすることにより形成した金属めっき層とされており、金属溶射層の場合は、望ましくはNi、Ni−Cr、Ni−Co、Cu、Cu−Ni、Co、Co−Niのうち少なくとも1種よりなる層とされ、また金属めっき層の場合は、望ましくはNi、Ni−P、Ni−Bのうち少なくとも1種よりなる層とされて無電解めっきされる。
このような中間層11は、金属溶射層である場合も金属めっき層である場合も、内壁面4の表面から0.01〜0.2mmの厚みT1で形成されるとともに、その表面はJIS B 0601:2001に規定される最大高さRzにおいて1.6S以下の粗さとなるように仕上げ加工されている。また、硬質クロムめっき層12は、このような中間層11が形成された内壁面4を除いてマスキングを施した本体部材2をクロムめっき液中に浸漬して電解めっきすることにより形成され、その中間層11表面からの厚みT2は上記厚みT1より薄く、0.03〜0.1mmとされるとともに、その表面はやはりJIS B 0601:2001に規定される最大高さRzにおいて0.8S以下に仕上げ加工されている。
このような中間層11および硬質クロムめっき層12を被覆する場合の本発明の製造方法の一実施形態では、図4に示すような本体部材2の上記内壁面4に、まず図5に示すように上記厚みT1よりも層厚の厚い中間層11を均一に被覆する。このとき、本体部材2が上述のような鋳鉄である場合には、鋳造の際に生成されるポアやボイドに起因する開気孔Hが内壁面4に多数存在しており、こうして被覆した中間層11の表面にもこの開気孔Hによる凹凸が図5に示すように残されることになる。
そこで、本実施形態では同図5に一点鎖線で示すようにこの層厚が厚く被覆された中間層11の表面を仕上げ加工して図6に示すように開気孔Hによる凹凸を除去し、上述のような表面粗さにするとともに層厚を上記厚みT1にする。なお、この中間層11表面の仕上げ加工は、例えば研削加工等により行われる。そして、このように平滑に仕上げられた中間層11の表面に硬質クロムめっき層12を厚みT2で被覆することにより、図3に示したようにこの硬質クロムめっき層12の表面すなわちスリット3の内壁面4も上述のような表面粗さで平滑に形成することができる。
こうして硬質クロムめっき層12が被覆された後にマスキングを外し、上記切欠部にリップ部材8を上述のように取り付けてリップ部7を設け、さらに複数の本体部材2を組み付けてダイ本体1とすることにより、上記実施形態のTダイが製造される。なお、この硬質クロムめっき層12についても、上記厚みT2より一旦厚く被覆しておいてその表面を仕上げ加工することにより厚みT2となるようにしてもよく、その場合には、切欠部にリップ部材8を取り付けて設けたリップ部7の後端側内壁面9も一体に仕上げ加工して、上述のように内壁面4と面一な傾斜面となるようにしてもよい。
従って、例えばこのような製造方法により製造される上記構成のTダイによれば、まず上記リップ部7が、ダイ本体1を構成する本体部材2とは別部材の超硬合金よりなるリップ部材8を取り付けたものであるので、超硬を溶射した場合のようにエッジ部を形成する際に溶射した粉末粒子が剥離してクラックを生じたりすることが無く、シャープなエッジ部を高精度に形成することができる。また、上述のようにスリット3の内壁面4に被覆された硬質クロムめっき層12と一体に仕上げ加工することにより、この内壁面4とリップ部7の内壁面9との継ぎ目に面荒れやクラック、段差が生じたりすることもない。
そして、さらに上記Tダイでは、このスリット3の内壁面4の硬質クロムめっき層12が、表面が仕上げ加工された中間層11を内壁面4との間に介して被覆されているので、たとえダイ本体1の本体部材2が鋳鉄製であって内壁面4に多数の開気孔Hが存在していても、その凹凸が表面に現れるのを防いで平滑な硬質クロムめっき層12を得ることができる。このため、スリット3内を流れてリップ部7から吐出される溶融樹脂材料に滞留や偏りが生じるのを防いで、厚み偏差やダイスジのない高精度、高品質の樹脂フィルム類の溶融押し出し成形を行うことが可能となる。
また、本実施形態では、このようにダイ本体1として、例えば上述のような低熱膨張鋳鉄製の本体部材2を用いることができるので、高価で加工性の悪い低熱膨張合金を用いなくても、ダイ本体1と超硬合金製のリップ部材8との熱膨張を略等しくすることができる。このため、高温の溶融樹脂材料がスリット3を流れてもリップ部7に歪みが生じることがなく、従って一層高精度、高品質の樹脂フィルム類の溶融押し出し成形が可能なTダイを、より低コストで提供することができる。
なお、本実施形態ではこのようにダイ本体1を鋳鉄製としているが、特許文献3に記載したような低熱膨張合金製のダイ本体や、これら以外の鋼材等の素材よりなるダイ本体を用いてもよく、このような材料でスリット3の内壁面4に例えば析出物などが発生していても、中間層11を介することによって硬質クロムめっき層12の表面を平滑にすることができる。
また、本実施形態では、上記中間層11が金属層であるため、その表面への硬質クロムめっき層12の被覆が容易である。さらに、この中間層11は、Ni、Ni−Cr、Ni−Co、Cu、Cu−Ni、Co、Co−Niのうち少なくとも1種を溶射した金属溶射層、またはNi、Ni−P、Ni−Bのうち少なくとも1種をめっきした金属めっき層であるので、上述のような開気孔や析出物による凹凸を残さずに表面仕上げできるような厚みT1の中間層11を比較的短時間でより低廉に形成することができる。なお、このような中間層11の表面仕上げ加工の容易さを考慮すると、これらの材質のうちでもNiまたはNi合金よりなる中間層11が望ましい。また、上記各種の材質よりなる層を積層して中間層11としてもよい。
なお、この中間層11の厚みT1は、薄すぎると表面仕上げした後でも開気孔や析出物による凹凸がその表面に残ってしまい、その上に被覆した硬質クロムめっき層12にも凹凸の影響が生じるおそれがある。その一方で、この中間層11の厚みT1が厚すぎても、その形成および表面仕上げに時間や労力を要することになるので、本実施形態のように0.01〜0.2mmの範囲とされるのが望ましい。
また、表面仕上げ加工された後の中間層11の表面粗さについても、本体部材2表面の開気孔や析出物による凹凸が残る程度にまで粗いままだと、やはり硬質クロムめっき層12の表面にも凹凸の影響が生じるおそれがある。このため、中間層11の表面粗さも本実施形態のようにJIS B 0601:2001に規定される最大高さRzにおいて1.6S以下の範囲とされるのが望ましい。
一方、この中間層11に被覆される硬質クロムめっき層12についても、その厚みT2は本実施形態のように0.03〜0.1mmの範囲とされるのが望ましく、これより厚みT2が薄いと硬質クロムめっき層12の摩耗により寿命が短くなるおそれがある一方、逆にこれより厚いとやはりその被覆に時間や労力を要することになる。ただし、この硬質クロムめっき層12の表面粗さは、溶融材料との摩擦低減のためには極力滑らかとされるのが望ましく、JIS B 0601:2001に規定される最大高さRzにおいて0.8S以下の鏡面加工とされるのが望ましい。
1 ダイ本体
2 本体部材
3 スリット
4 スリット3の内壁面
7 リップ部
8 リップ部材
9 リップ部7の内壁面
11 中間層
12 硬質クロムめっき層
2 本体部材
3 スリット
4 スリット3の内壁面
7 リップ部
8 リップ部材
9 リップ部7の内壁面
11 中間層
12 硬質クロムめっき層
Claims (5)
- ダイ本体に形成されたスリットの開口端縁にリップ部が設けられて、上記スリット内を通して供給される溶融材料を上記リップ部から吐出するTダイであって、上記リップ部が超硬合金製のリップ部材を取り付けて構成されるとともに、上記スリットの内壁面には、表面が仕上げ加工された中間層を介して、硬質クロムめっき層が被覆されていることを特徴とするTダイ。
- 上記ダイ本体が鋳鉄製であることを特徴とする請求項1に記載のTダイ。
- 上記中間層が、Ni、Ni−Cr、Ni−Co、Cu、Cu−Ni、Co、Co−Niのうち少なくとも1種を溶射した金属溶射層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のTダイ。
- 上記中間層が、Ni、Ni−P、Ni−Bのうち少なくとも1種をめっきした金属めっき層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のTダイ。
- 請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載のTダイの製造方法であって、上記ダイ本体の上記スリットの内壁面に上記中間層を形成し、この中間層の表面を仕上げ加工した後に、該中間層の表面に上記硬質クロムめっき層を被覆することを特徴とするTダイの製造方法。
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---|---|---|---|---|
CN102189658A (zh) * | 2010-03-04 | 2011-09-21 | 上海金纬管道设备制造有限公司 | 用于生产pvc芯层发泡板的模头装置 |
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