JP2007237445A - 光学部品の射出成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】所望の特性、形状を有するSWS型反射防止層を光入射面に備えた光学部品を確実に成形することを可能とする射出成形方法を提供する。
【解決手段】光学部品の射出成形方法は、第1の金型部10及び第2の金型部13から成る金型、並びに、高さ2.2×10-7(m)乃至6.0×10-7(m)、ピッチ1×10-7(m)乃至3×10-7(m)のSWS型反射防止層として機能する凹凸部が光入射面に設けられた透明な熱可塑性樹脂から成る光学部品の該光入射面を成形するために凸凹部が配された、ジルコニアセラミックスから成る入れ子20を備え、金型組立体を型締めしてキャビティ18を形成した後、キャビティ18内に溶融樹脂射出部19から透明な溶融熱可塑性樹脂を射出し、キャビティ18内の熱可塑性樹脂が冷却、固化した後、金型組立体を型開きし、光学部品を取り出す各工程から成る。
【選択図】 図2
【解決手段】光学部品の射出成形方法は、第1の金型部10及び第2の金型部13から成る金型、並びに、高さ2.2×10-7(m)乃至6.0×10-7(m)、ピッチ1×10-7(m)乃至3×10-7(m)のSWS型反射防止層として機能する凹凸部が光入射面に設けられた透明な熱可塑性樹脂から成る光学部品の該光入射面を成形するために凸凹部が配された、ジルコニアセラミックスから成る入れ子20を備え、金型組立体を型締めしてキャビティ18を形成した後、キャビティ18内に溶融樹脂射出部19から透明な溶融熱可塑性樹脂を射出し、キャビティ18内の熱可塑性樹脂が冷却、固化した後、金型組立体を型開きし、光学部品を取り出す各工程から成る。
【選択図】 図2
Description
本発明は、光学部品の射出成形方法に関し、より具体的には、反射防止層を備えた光学部品の射出成形方法に関する。
例えば、空気中を進行する光が媒質に入射したとき、媒質の光入射面にあっては反射が生じる。この反射は、空気の屈折率n0と媒質の屈折率n1との間の差によって生じ、フレネル反射と呼ばれている。そして、このようなフレネル反射を低減させる手段として、真空蒸着法等を用いて単層膜あるいは多層膜から成る反射防止層を媒質の光入射面、例えば、レンズや反射鏡といった種々の光学部品の光入射面に設ける技術が採用されている。
また、このような単層膜あるいは多層膜から成る反射防止層を設ける代わりに、光の波長よりも短い周期的構造を有するサブ波長格子(SWS,SubWavelength Surface)から構成された反射防止層(便宜上、SWS型反射防止層と呼ぶ)が、近年、半導体装置の製造技術やマイクロマシーン製造技術を応用することで作製が可能となり、種々の開発が進められている。このSWS型反射防止層は、例えば、光学部品の光入射面に設けられた多数の周期的構造を有するピラミッド状の凸部から構成されている。そして、このような構造を採用することで、凸部の底部に向かう方向に沿って徐々に凸部の体積が増加し、これに対応して反射防止層の有効屈折率が、空気の屈折率n0から媒質の屈折率n1へと徐々に増加する。その結果、空気中を進行する光が光学部品の光入射面に入射したとき、急減な屈折率の変化が生じることがなくなり、光は、殆ど反射されず、光学部品の内部に侵入する。
このようなSWS型反射防止層は、表面に凸凹部が形成された金型を使用した射出成形方法に基づき成形される(例えば、特開2002−286906参照)。あるいは又、表面に凸凹部が形成された金属層を内部に配置した金型を使用した射出成形方法に基づき成形される(例えば、特開2004−287238参照)。
ところで、SWS型反射防止層は光の波長よりも短い周期的構造を有するが故に、金型あるいは金属層に設けるべき凸凹部も非常に微細にする必要がある。そして、上述した特許公開公報に開示された技術を用いてSWS型反射防止層を有する光学部品を射出成形方法にて成形しようと試みた場合、実際のところ、金型あるいは金属層に設けられた凸凹部の形状が光学部品の光入射面に正確に転写されず、所望の性能を有するSWS型反射防止層を成形することは困難である。
従って、本発明の目的は、所望の特性、形状を有するSWS型反射防止層を光入射面に備えた光学部品を確実に成形することを可能とする射出成形方法を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る光学部品の射出成形方法は、
(A)第1の金型部及び第2の金型部から成る金型、
(B)第1の金型部及び/又は第2の金型部に配置され、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入するための溶融樹脂射出部、並びに、
(C)第1の金型部に配設された、ジルコニアセラミックスから成る入れ子、
を備えた金型組立体であって、
高さ2.2×10-7(m)乃至6.0×10-7(m)、ピッチ1×10-7(m)乃至3×10-7(m)の凹凸部が光入射面に設けられた透明な熱可塑性樹脂から成る光学部品の該光入射面を成形するために、該入れ子は用いられ、
光入射面の凹凸部を形成するために、キャビティに対向する該入れ子の表面には凸凹部が配されている金型組立体を用いた光学部品の射出成形方法である。
(A)第1の金型部及び第2の金型部から成る金型、
(B)第1の金型部及び/又は第2の金型部に配置され、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入するための溶融樹脂射出部、並びに、
(C)第1の金型部に配設された、ジルコニアセラミックスから成る入れ子、
を備えた金型組立体であって、
高さ2.2×10-7(m)乃至6.0×10-7(m)、ピッチ1×10-7(m)乃至3×10-7(m)の凹凸部が光入射面に設けられた透明な熱可塑性樹脂から成る光学部品の該光入射面を成形するために、該入れ子は用いられ、
光入射面の凹凸部を形成するために、キャビティに対向する該入れ子の表面には凸凹部が配されている金型組立体を用いた光学部品の射出成形方法である。
そして、本発明の第1の態様に係る光学部品の射出成形方法は、
(a)第1の金型部と第2の金型部とを型締めして、キャビティを形成した後、
(b)キャビティ内に溶融樹脂射出部から透明な溶融熱可塑性樹脂を射出し、
(c)キャビティ内の熱可塑性樹脂が冷却、固化した後、第1の金型部と第2の金型部とを型開きし、光学部品を取り出す、
各工程から成ることを特徴とする。
(a)第1の金型部と第2の金型部とを型締めして、キャビティを形成した後、
(b)キャビティ内に溶融樹脂射出部から透明な溶融熱可塑性樹脂を射出し、
(c)キャビティ内の熱可塑性樹脂が冷却、固化した後、第1の金型部と第2の金型部とを型開きし、光学部品を取り出す、
各工程から成ることを特徴とする。
また、本発明の第2の態様に係る光学部品の射出成形方法は、
(a)第1の金型部と第2の金型部とを型締め力F0にて型締めして、キャビティを形成した後、
(b)キャビティ内に溶融樹脂射出部から透明な溶融熱可塑性樹脂を射出し、
(c)キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程の完了からt秒が経過した後、若しくは、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程及びそれに続く保圧工程の完了からt秒が経過した後(但し、0秒≦t≦8.0秒)、型締め力を0.5F0以下とし、
(d)キャビティ内の熱可塑性樹脂が冷却、固化した後、第1の金型部と第2の金型部とを型開きし、光学部品を取り出す、
各工程から成ることを特徴とする。
(a)第1の金型部と第2の金型部とを型締め力F0にて型締めして、キャビティを形成した後、
(b)キャビティ内に溶融樹脂射出部から透明な溶融熱可塑性樹脂を射出し、
(c)キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程の完了からt秒が経過した後、若しくは、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程及びそれに続く保圧工程の完了からt秒が経過した後(但し、0秒≦t≦8.0秒)、型締め力を0.5F0以下とし、
(d)キャビティ内の熱可塑性樹脂が冷却、固化した後、第1の金型部と第2の金型部とを型開きし、光学部品を取り出す、
各工程から成ることを特徴とする。
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る光学部品の射出成形方法にあっては、前記工程(b)において、溶融熱可塑性樹脂を射出する前のキャビティ内を圧力P0(但し、圧力P0は大気圧よりも低く、且つ、大気圧との差は5×104Pa以上である)とし、その後、キャビティ内に溶融樹脂射出部から透明な溶融熱可塑性樹脂を射出する形態とすることができる。このような形態を採用することで、工程(b)において、キャビティ内に溶融樹脂射出部から溶融熱可塑性樹脂を射出したとき、キャビティ内における溶融熱可塑性樹脂の流動性がキャビティ内に存在する気体(例えば空気)によって阻害されることを防止することができ、入れ子の表面に配された凸凹部を、光学部品の光入射面に、一層確実に、しかも、一層正確に、高い精度にて転写することができる。
上記の好ましい形態を含む本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る光学部品の射出成形方法にあっては、光入射面に形成された凹凸部によって反射防止層(より具体的には、SWS型反射防止層)が構成されることが好ましく、更には、この場合、光学部品の光透過率は、JIS K7361−1に基づいた全光線透過率として94%以上であることが好ましい。
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る光学部品の射出成形方法にあっては、熱可塑性樹脂のQ値は、0.1cm3・秒-1以上、好ましくは0.2cm3・秒-1以上、より好ましくは0.3cm3・秒-1以上であることが望ましい。ここで、熱可塑性樹脂のQ値は、高化式フローテスター(島津製作所株式会社製)を用い、280゜Cに加熱した溶融熱可塑性樹脂に荷重1.57×107Pa(160kgf/cm2)を加えた状態で、直径1mm、長さ10mmのノズルから流出させたときの溶融熱可塑性樹脂の流出量(単位:cm3・秒-1)である。Q値が高い程、溶融熱可塑性樹脂の流動性が良いと云える。尚、Q値が余りに高いと、熱可塑性樹脂の靱性が無くなり、光学部品が割れ易くなる傾向にあるので、現実的なQ値の上限値として、1.5cm3・秒-1を挙げることができる。
本発明の第2の態様に係る光学部品の射出成形方法にあっては、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程の完了と同時に(即ちt=0)、あるいは、8.0秒が経過するまでに(即ち、0<t≦8.0秒)、若しくは、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程及びそれに続く保圧工程(保圧工程の時間をt’秒とする)の完了と同時に(即ちt=0)、あるいは、8.0秒が経過するまでに(即ち、0<t≦8.0秒)、型締め力F1を0.5F0以下とするが、好ましくは、0.5秒≦t≦6秒、より好ましくは、1秒≦t≦4秒とすることが望ましく、より現実的には、成形された光学部品の変形状態等を観察して、時間tを設定すればよい。尚、tの値が8秒を超えると、通常、キャビティ内の熱可塑性樹脂の冷却による収縮が完了し、歪みが熱可塑性樹脂内に残留した状態となってしまうので、光学部品に捩れや膨れが発生したり、平面度が低下する虞がある。また、0≦F1/F0≦0.5、より好ましくは、0≦F1/F0≦0.4、より一層好ましくは、0≦F1/F0≦0.3を満足することが望ましく、より現実的には、成形された光学部品の変形状態等を観察して、F0の値、F1の値を設定すればよい。尚、型締め力F1を0.5F0以下にしないと、キャビティ内の熱可塑性樹脂の内部に発生した歪みが開放され難く、光学部品に捩れや膨れが発生したり、平面度が低下する虞がある。
また、型締め力F0の値は、型締め力F0が加わる方向に垂直な仮想平面で光学部品を切断したときの光学部品の最大断面積をSMAX(cm2)としたとき、
F0≧9.8×103×SMAX(N)(=SMAX×103kgf)
を満足することが望ましい。型締め力F0の上限値として、使用する射出成形装置に依存するが、例えば、2.9×104×SMAX(N)(=SMAX×3×103kgf)を挙げることができる。型締め力F0の値が小さすぎる場合には、光学部品にバリが発生する虞があるし、大きすぎると、パーティングラインからの空気や樹脂から発生したガスの排気を促すことができなくなり、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の流動性が若干劣るようになり、光学部品内部に歪みが残留する虞が生じるので、型締め力F0の値は適宜調整する必要がある。
F0≧9.8×103×SMAX(N)(=SMAX×103kgf)
を満足することが望ましい。型締め力F0の上限値として、使用する射出成形装置に依存するが、例えば、2.9×104×SMAX(N)(=SMAX×3×103kgf)を挙げることができる。型締め力F0の値が小さすぎる場合には、光学部品にバリが発生する虞があるし、大きすぎると、パーティングラインからの空気や樹脂から発生したガスの排気を促すことができなくなり、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の流動性が若干劣るようになり、光学部品内部に歪みが残留する虞が生じるので、型締め力F0の値は適宜調整する必要がある。
通常、射出成形装置に備えられた射出シリンダーにおいて計量、可塑化され、溶融された熱可塑性樹脂が、射出シリンダーから射出され、固定金型部と可動金型部とから構成された金型組立体に設けられたスプルー及び溶融樹脂射出部(ゲート部)を介して、キャビティ内に導入(射出)され、保圧される。保圧工程においては、射出圧力とは別の任意に調整可能な圧力(二次射出圧力)に切り替えることによって、溶融熱可塑性樹脂の逆流防止、及び、キャビティ内の熱可塑性樹脂の冷却、固化による成形収縮を防ぐための溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への補充がなされる。溶融樹脂射出部(ゲート部)が固化した後には、保圧は必要なくなるので、通常、溶融樹脂射出部(ゲート部)が固化するまでの時間を対象として保圧工程の時間(保圧時間)t’を決定する。本発明の第2の態様に係る光学部品の射出成形方法にあっては、光学部品の肉厚に応じて保圧時間t’を適宜変更することが望ましく、例えば、光学部品の肉厚が3mm程度の場合、保圧圧力として1×108Pa以下の圧力を加える保圧時間t’を、好ましくは5秒≦t’≦20秒、より好ましくは8秒≦t’≦15秒とすることが望ましい。一般的には、光学部品の肉厚が厚いほど、保圧時間t’を長い時間に設定することが望ましく、光学部品の肉厚によって、保圧時間t’を、例えば、以下のとおりに設定することができる。保圧工程における圧力(保圧圧力)が高すぎたり、保圧時間は長すぎると、光学部品が変形する原因となる。キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程の完了からt秒が経過した後、型締め力を0.5F0以下とするが、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程の完了からt秒が経過するまでの間は、型締め力をF0に保持したまま、しかも、保圧は行わない(即ち、射出シリンダーからキャビティ内の熱可塑性樹脂へ圧力を加えない)。あるいは又、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程及びそれに続く保圧工程の完了からt秒が経過した後、型締め力を0.5F0以下とするが、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の保圧工程の完了からt秒が経過するまでの間は、型締め力をF0に保持したままとする。尚、保圧工程が完了しているので、射出シリンダーからキャビティ内の熱可塑性樹脂へ圧力を加えない。
光学部品の肉厚が0.3mm程度である場合: 0秒 ≦t’≦1秒
光学部品の肉厚が0.5mm程度である場合: 0.5秒≦t’≦2秒
光学部品の肉厚が1mm程度である場合 : 1.5秒≦t’≦5秒
光学部品の肉厚が2mm程度である場合 : 4秒 ≦t’≦12秒
光学部品の肉厚が4mm程度である場合 :15秒 ≦t’≦30秒
光学部品の肉厚が0.5mm程度である場合: 0.5秒≦t’≦2秒
光学部品の肉厚が1mm程度である場合 : 1.5秒≦t’≦5秒
光学部品の肉厚が2mm程度である場合 : 4秒 ≦t’≦12秒
光学部品の肉厚が4mm程度である場合 :15秒 ≦t’≦30秒
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る光学部品の射出成形方法(以下、これらを総称して、単に、本発明の光学部品の射出成形方法と呼ぶ場合がある)においては、必要により、型開き前にキャビティ内をエアーブローしてキャビティ面から光学部品を離型させて離型抵抗を減らしたり、型開き中あるいはエジェクト前にエアーブローを併用することで、特に転写性を高めた光学部品の離型時の変形を抑制することが可能となり、転写性の向上を一層効果的に達成することができる。
本発明の光学部品の射出成形方法にあっては、例えば、肉厚が0.3mm以下であるような光学部品においては、Q値が0.60である熱可塑性樹脂を使用して、樹脂温度330゜Cの射出条件下、溶融熱可塑性樹脂を溶融樹脂射出部を介してキャビティ内に射出することで光学部品を成形する場合の樹脂射出速度は、1.2m・秒-1以上、好ましくは1.5m・秒-1以上、一層好ましくは2.0m・秒-1以上であることが望ましい。一般に、通常の射出成形法にあっては、溶融熱可塑性樹脂を溶融樹脂射出部を介してキャビティ内に射出するときの樹脂射出速度は、0.1m・秒-1乃至0.3m・秒-1程度である。本発明の光学部品の射出成形方法におけるこのような肉厚の薄い光学部品の射出成形といった好ましい形態にあっては、樹脂射出速度は、従来の射出成形法と比較して、20倍以上も高速である。このように、従来の技術とは比較にならない高速の樹脂射出速度にて透明な溶融熱可塑性樹脂を溶融樹脂射出部を介してキャビティ内に射出することで、溶融熱可塑性樹脂を、確実に、且つ、完全に充填させることができる。樹脂温度を360゜C以上にすることで、0.1m・秒-1乃至0.3m・秒-1程度の従来の射出成形法に基づく成形が可能となるが、成形条件に依っては、熱可塑性樹脂が熱分解によって黄変し、光学部品の品質低下を招くといった問題が生じる虞がある。
本発明の光学部品の射出成形方法において、熱可塑性樹脂として、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ノルボルネン系の重合体樹脂である日本ゼオン株式会社製「ゼオノア」(ZEONOR)等のシクロオレフィン樹脂、透明ポリイミド樹脂、脂環式アクリル樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂といった透明性熱可塑性樹脂を例示することができ、好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂を挙げることができる。
本発明の光学部品の射出成形方法での使用に適したポリカーボネートは、公知の方法に基づき製造することができ、例えば、界面重合法、ピリジン法、エステル交換法、環状カーボネート化合物の開環重合法をはじめとする各種製造方法を挙げることができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物と、一般にホスゲンとして知られている塩化カルボニル、又は、ジメチルカーボネートやジフェニルカーボネートに代表される炭酸ジエステル、一酸化炭素や二酸化炭素と言ったカルボニル系化合物とを、反応させることによって得られる、直鎖状、又は、分岐していても良い熱可塑性芳香族ポリカーボネートの重合体又は共重合体である。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物として、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル等を挙げることができるが、好ましくは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類であり、特に好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールAと呼ばれる]である。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
分岐したポリカーボネートを得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で示されるポリヒドロキシ化合物、あるいは、3,3ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノール等を上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよく、使用量は、0.01〜10モル%、好ましくは、0.1〜2モル%である。
界面重合法による反応にあっては、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下で、通常pHを10以上に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物及び適宜分子量調整剤(末端停止剤)、必要に応じて芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のための酸化防止剤を用い、ホスゲンと反応させた後、第三級アミン若しくは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加し、界面重合を行うことによってポリカーボネートを得ることができる。分子量調節剤の添加は、ホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば、特に限定されない。尚、反応温度は0〜35゜Cであり、反応時間は数分〜数時間である。
ここで、反応に不活性な有機溶媒として、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。分子量調節剤あるいは末端停止剤として、一価のフェノール性水酸基を有する化合物を挙げることができ、具体的には、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等を挙げることができる。分子量調節剤の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物100モルに対して、50〜0.5モル、好ましくは、30〜1モルである。重合触媒として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等を挙げることができる。
エステル交換法による反応は、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応である。通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調整したり、反応時の減圧度を調整したりすることによって、所望のポリカーボネートの分子量と末端ヒドロキシル基量が決められる。より積極的な方法として、反応時に、別途、末端停止剤を添加する調整方法も周知である。この際の末端停止剤として、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類を挙げることができる。末端ヒドロキシル基量は、ポリカーボネートの熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼし、実用的な物性を持たせるためには、好ましくは1000ppm以下であり、700ppm以下が特に好ましい。また、エステル交換法で製造するポリカーボネートでは、末端ヒドロキシル基量が少なくなりすぎると、分子量が上がらず、色調も悪くなるので、100ppm以上が好ましい。従って、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが一般的であり、好ましくは1.01〜1.30モルの量で用いられる。
エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒としては、特に制限はないが、主としてアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用され、補助的に塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、あるいは、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。このような原料を用いたエステル交換反応では、100〜320゜Cの温度で反応を行い、最終的には2.7×102Pa(2mmHg)以下の減圧下、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら溶融重縮合反応を行う方法が挙げられる。溶融重縮合は、バッチ式、又は、連続的に行うことができるが、本発明での使用に適したポリカーボネートにあっては、安定性等の観点から、連続式で行うことが好ましい。エステル交換法において、ポリカーボネート中の触媒の失活剤として、触媒を中和する化合物、例えばイオウ含有酸性化合物、又は、それより形成される誘導体を使用することが好ましく、その量は、触媒のアルカリ金属に対して0.5〜10当量、好ましくは1〜5当量の範囲であり、ポリカーボネートに対して通常1〜100ppm、好ましくは1〜20ppmの範囲で添加する。
本発明の光学部品の射出成形方法において、熱可塑性樹脂は、粘度平均分子量(Mv)が1.0×104乃至2.0×104、好ましくは1.1×104乃至1.9×104、より好ましくは1.2×104乃至1.8×104の芳香族ポリカーボネート樹脂であることが望ましい。尚、芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が1.0×104未満であると、光学部品の機械的強度が低下し、光学部品の要求性能を満たさなくなる虞がある。一方、芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が2.0×104を超える場合、溶融した芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性が劣り、成形性に問題が生じ、所望の光学部品を得ることが困難となる。
尚、粘度平均分子量(Mv)は、塩化メチレンを溶媒として、ウベローデ粘度計によって25゜Cの温度で測定した溶液粘度より求めた極限粘度[η]を用い、次式により算出した。
η=1.23×10-4×Mv0.83
本発明の光学部品の射出成形方法において、「透明な熱可塑性樹脂」とは、JIS K 7105−1981 の第5.5.2項(測定法A)に基づき測定された平行光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂を指す。尚、測定においては、樹脂試験片の厚さを3.0mmとする。
光学部品の光入射面に設けられた凹凸部の高さや深さ、ピッチ、形状を、一定としてもよいし、変化させてもよい。また、凹凸部と凹凸部との間に位置する光学部品の光入射面に平坦部が存在してもよいし、存在していなくともよいが、前者の場合、平坦部の面積をできるだけ少なくすると光学特性が向上する傾向にある。ここで、光学部品の光入射面と垂直な仮想平面で光学部品を切断したときの凹凸部の断面形状として、三角形;正方形、長方形、台形を含む任意の丸みを帯びた四角形;任意の多角形を例示することができる。あるいは又、凹凸部の立体形状として、円錐;頂点が丸みを帯びた三角錐、四角錐、六角錐を含む多角錐;切頭多角錐;円柱;頂面が丸みを帯びた三角柱、四角柱、六角柱を含む多角柱を例示することができる。
光学部品の光入射面以外の面(便宜上、その他の面と呼ぶ)の形状、表面の状態は、光学部品に要求される仕様に基づき決定すればよい。
尚、光学部品のその他の面を成形するために、金型組立体の内部に配設された第2の入れ子を更に備えた構成とすることができる。そして、この場合、その他の面の形状に依存して、第2の入れ子は入れ子と同じ構成、構造を有していてもよいし、キャビティに対向する第2の入れ子の表面は鏡面であってもよいし、ブラスト面とすることもできる。ここで、キャビティに対向する第2の入れ子の表面を鏡面とする場合、キャビティに対向する第2の入れ子の表面の表面粗さRZは、0.01μm乃至0.1μm、好ましくは0.01μm乃至0.08μm、一層好ましくは0.01μm乃至0.05μmとすることが望ましい。尚、第2の入れ子は、ジルコニアセラミックスから構成することもできるし、あるいは又、ジルコニアセラミックス(後述する導電性ジルコニアセラミックスを含む)と、金属層から構成することもできる。前者の場合、ジルコニアセラミックスの表面粗さRZが上記の値を満足していればよく、後者の場合、金属層表面の表面粗さRZが上記の値を満足していればよい。尚、これらの構成の第2の入れ子を、便宜上、セラミックス製の第2の入れ子と呼ぶ場合がある。場合によっては、第2の入れ子を金属から構成してもよい。更には、入れ子とセラミックス製の第2の入れ子とを総称して、「入れ子等」と呼ぶ場合がある。表面粗さRZは、JIS B 0601:2001の規定に基づく。
以下、入れ子等についての説明を行う。
入れ子等を構成するジルコニアセラミックス(後述する導電性ジルコニアセラミックスを含む)は、部分安定化ジルコニアセラミックスから構成されていることが好ましい。入れ子等を部分安定化ジルコニアセラミックスから構成する場合、部分安定化ジルコニアセラミックスにおける部分安定化剤は、カルシア(酸化カルシウム,CaO)、イットリア(酸化イットリウム,Y2O3)、マグネシア(酸化マグネシウム,MgO)、シリカ(酸化珪素,SiO2)及びセリア(酸化セリウム,CeO2)から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成ることが好ましい。ジルコニアセラミックスあるいは導電性ジルコニアセラミックス中に含有される部分安定化剤の割合は、部分安定化剤がカルシアの場合、3モル%乃至15モル%、好ましくは6モル%乃至10モル%、イットリアの場合、1モル%乃至8モル%、好ましくは2モル%乃至5モル%、マグネシアの場合、4モル%乃至15モル%、好ましくは8モル%乃至10モル%、セリアの場合、3モル%乃至18モル%、好ましくは6モル%乃至12モル%であることが望ましい。
入れ子等において、入れ子の厚さは、0.1mm乃至10mm、好ましくは0.5mm乃至10mm、より好ましくは1mm乃至7mm、一層好ましくは2mm乃至5mmであることが望ましい。入れ子の厚さが0.1mm未満の場合、入れ子等による断熱効果が少なくなり、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の急冷を招き、光学部品の光入射面に凹凸部が形成され難くなる虞がある。また、金属若しくは合金製の金型組立体に入れ子等を固定する際には、例えば熱硬化性接着剤を用いて入れ子等を金型組立体の内部に接着すればよいが、入れ子の厚さが0.1mm未満の場合、接着剤の膜厚が不均一になると入れ子等に不均一な応力が残るために、光学部品表面がうねる現象が生じたり、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の圧力によって入れ子等が破損することがある。一方、入れ子の厚さが10mmを越える場合、入れ子等による断熱効果が大きくなり過ぎ、キャビティ内の樹脂の冷却時間を延長しないと、光学部品の取り出し後に光学部品が変形することがある。それ故、成形サイクルの延長といった問題が発生することがある。
入れ子等を構成するジルコニアセラミックス、導電性ジルコニアセラミックスあるいは部分安定化ジルコニアセラミックスの熱伝導率は、8.5J/(m・s・K)以下[8.5W/(m・K)以下、あるいは、2×10-2cal/(cm・s・K)以下]、具体的には、約3.5〜6J/(m・s・K)である。8.5J/(m・s・K)を越える熱伝導率を有する無機材料を用いて入れ子等を作製した場合、成形条件にも依るが、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂が入れ子等によって急冷されるために、入れ子等を備えていない通常の炭素鋼等から作製された金型組立体を用いて成形された光学部品と同程度の外観しか得られない場合がある。
入れ子等によって金型組立体に設けられたキャビティの一部が構成されるが、ここで、キャビティの一部を構成するとは、光学部品の外形を規定するキャビティ面の一部を構成することを意味する。より具体的には、キャビティは、例えば、金型組立体を構成する第1の金型部あるいは第2の金型部に形成されたキャビティを構成する面(金型部のキャビティ面)と、入れ子に形成されたキャビティの一部を構成する表面(入れ子のキャビティ面)とから構成されている。以下の説明においても同様である。
光入射面の凹凸部を形成するために、キャビティに対向する入れ子の表面には凸凹部が配されているが、キャビティに対向する入れ子の表面に凸凹部を配する方法として、凸凹部が表面に設けられた金属層を入れ子の表面に配する方法を挙げることができる。尚、凸凹部が設けられた金属層もキャビティ面を構成する。そして、この場合、入れ子等のキャビティ面の全て、あるいは、所望の部位は、凸凹部を有する金属層から構成されている。後者の場合、所望の部位以外の入れ子のキャビティ面は、例えば、平坦な金属層から構成されている。
より具体的には、入れ子等の表面に金属層を配する方法として、ジルコニアセラミックスから成る入れ子に、着脱自在に取り付け可能な金属層を、所謂スタンパとして載置する方法を挙げることができる。尚、このような構成を、便宜上、入れ子等の第1の構成と呼ぶ。着脱自在な金属層の作製方法として、例えばシリコン半導体基板や石英基板の表面に電子線にて感光するレジスト層を塗布し、電子線描画法にてレジスト層にパターンを形成し、次いで、係るレジスト層をエッチング用マスクとしてシリコン半導体基板や石英基板をエッチングすることで、シリコン半導体基板や石英基板の表面に凹凸部を形成した後、シリコン半導体基板や石英基板の表面に凹凸部を覆うように無電解金属メッキ層及び電界金属メッキ層から成る金属層を形成し、次いで、金属層をシリコン半導体基板や石英基板の表面から剥離するといった、所謂電鋳法により作製する方法を挙げることができる。あるいは又、基板の表面に形成された被エッチング層(例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等から成る)上に電子線にて感光するレジスト層を塗布し、電子線描画法にてレジスト層にパターンを形成し、次いで、係るレジスト層をエッチング用マスクとして被エッチング層をエッチングすることで、被エッチング層の表面に凹凸部を形成した後、被エッチング層の表面に凹凸部を覆うように無電解金属メッキ層及び電界金属メッキ層から成る金属層を形成し、次いで、金属層を被エッチング層の表面から剥離するといった電鋳法により作製する方法を挙げることができる。金属層を入れ子に着脱自在に載置する場合、成形時、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の流動によって金属層が動かないように、金属層を、入れ子の周辺部における真空吸着によって入れ子に固定する構成とするか、あるいは又、入れ子の外周部と共に別の金属ブロックで押さえ込むことが好ましいが、これらに限定されるものではなく、単に金属層を入れ子に載置してもよい。
入れ子等の第1の構成において、金属層は、Cr、Cr化合物、Cu、Cu化合物、Ni及びNi化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成り、金属層の厚さTM(単位:m)は、5×10-5(m)≦TM≦5×10-4(m)、好ましくは、1×10-4(m)≦TM≦3×10-4(m)を満足することが望ましい。これによって、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂が金属層と接触した場合でも、溶融熱可塑性樹脂が急冷されることを防止し得る。尚、金属層は、1層から構成してもよいし、複数層から構成してもよい。Cr化合物として、具体的には、ニッケル−クロム合金を挙げることができる。また、Cu化合物として、具体的には、銅−亜鉛合金、銅−カドミウム合金、銅−錫合金を挙げることができる。更には、Ni化合物として、具体的には、ニッケル−リン合金(Ni−P系合金)、ニッケル−鉄合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−錫合金、ニッケル−鉄−リン合金(Ni−Fe−P系合金)、ニッケル−コバルト−リン合金(Ni−Co−P系合金)を挙げることができる。金属層に高い耐擦傷性が要求される場合には、例えば、金属層をクロム(Cr)から構成することが好適である。一方、金属層に耐擦傷性は左程要求されないが、厚さが必要とされる場合には、例えば、金属層を銅(Cu)から構成することが好適である。更には、金属層に耐擦傷性も或る程度要求され、しかも、厚さも必要な場合には、例えば、金属層をニッケル(Ni)から構成することが好適である。更に、金属層に厚さが必要とされ、しかも、表面硬度が必要とされる場合には、金属層を2層構成とし、例えば、下層を銅(Cu)あるいはニッケル(Ni)から構成して所望の厚さとし、厚さの調整を行い、一方、上層を薄いクロム(Cr)から構成することが好ましい。
代替的に、入れ子等の表面に金属層を配する方法として、入れ子等の表面に、直接、金属層を形成する方法を挙げることができる。ここで、入れ子等において、金属層は、例えば、少なくとも入れ子のキャビティ面に設けられていればよく、入れ子等の全表面に設けられていてもよい。
そして、この場合、入れ子等の金属層における凸凹部の形成は、物理的方法あるいは化学的方法によって行うことができる。即ち、ダイヤモンドバイトを用いた機械加工によって、金属層に凸凹部を形成することができる。あるいは又、凸凹部を化学的な方法にて形成する場合、レジスト層を金属層の表面に塗布し、例えば、電子線描画法に基づきレジスト層にパターンを形成し、次いで、係るレジスト層をエッチング用マスクとして金属層をエッチングすることで、金属層に凸凹部を形成することができる。
入れ子等の表面に、直接、金属層を設ける方法、具体的には、入れ子等の表面に金属層を形成する方法として、電気メッキ法、無電解メッキ法、無電解メッキ法と電気メッキ法の組合せを挙げることができる。尚、電気メッキ法を適用する場合、後述する活性金属膜を形成することは必須ではないが、キャビティに対向する入れ子等の表面を粗面化した後、無電解メッキを行い、次いで、電気メッキを行う必要がある。
入れ子等を構成するジルコニアセラミックスは、導電性を有していないもの、即ち、体積固有抵抗値が1×109Ω・cmを越えるものを指す。そして、このような入れ子等において、入れ子等はジルコニアセラミックスから成り、入れ子等と金属層との間に活性金属膜が形成されている構成とすることができる。尚、このような構成を、便宜上、入れ子等の第2の構成と呼ぶ。
入れ子等の第2の構成において、活性金属膜は、Ti、Zr及びBeから成る群から選択された金属(活性金属)と、Ni、Cu、Ag及びFeから成る群から選択された金属との共晶組成物から成り、活性金属膜の厚さは1×10-6m乃至5×10-5m、望ましくは、3×10-6m乃至4×10-5mであることが好ましい。共晶組成物として、より具体的には、例えば、Ti−Ni、Ti−Cu、Ti−Cu−Ag、Ti−Ni−Ag、Zr−Ni、Zr−Fe、Be−Cu、Be−Niを挙げることができる。活性金属膜の厚さを1×10-6m乃至5×10-5mとすることによって、高い導電性を有する活性金属膜を得ることができ、即ち、非導電性のジルコニアセラミックスに対して導電性を付与することができ、金属層を例えば電気メッキ法にて形成することが可能となる。
活性金属膜を形成する方法として、活性金属ソルダー法を挙げることができる。活性金属ソルダー法を採用することによって、活性金属膜は、入れ子等の表面に対して高い密着性を得ることができる。また、入れ子等に対して金属層が高い密着力を得られるようになる。ここで、活性金属ソルダー法とは、活性金属膜を構成する金属材料から成るペーストを、例えばスクリーン印刷法によって入れ子等の表面に塗布し、真空中あるいは不活性ガス中で約800゜C〜1000゜Cの高温で焼き付ける方法を指す。
あるいは又、入れ子等は、体積固有抵抗値が1×109Ω・cm以下、好ましくは1×104Ω・cm以下の導電性ジルコニアセラミックスから成る構成とすることができる。尚、このような構成を、便宜上、入れ子等の第3の構成と呼ぶ。導電性ジルコニアセラミックスの体積固有抵抗値が1×109Ω・cmを越えると、ジルコニアセラミックスが絶縁体となるため、入れ子等の表面に金属層を直接形成することが困難となる。導電性ジルコニアセラミックスの体積固有抵抗値の下限値は、1×10-4Ω・cmであることが望ましい。
入れ子等の第3の構成において、ジルコニアセラミックスを導電性とするためには、ジルコニアセラミックスに導電性付与剤を添加すればよい。導電性付与剤として、Fe2O3、NiO、Co3O4、Cr2O3、TiO2、TiNの内の少なくとも1種類を挙げることができ、あるいは又、導電性付与剤として、TiC、WC、TaC等の炭化物の内の少なくとも1種類を挙げることもできる。導電性ジルコニアセラミックスにおける導電性付与剤の含有量は、10重量%以上であることが望ましい。10重量%未満では、体積固有抵抗値を1×109Ω・cm以下とすることが困難な場合がある。一方、導電性付与剤を多量に添加すれば、ジルコニアセラミックスの体積固有抵抗値は下がるが、得られた焼結体である入れ子等の強度が損なわれてしまう。それ故、40重量%以下とすることが望ましい。
入れ子等の第3の構成において、焼結温度抑制剤を3重量%以下の範囲で導電性ジルコニアセラミックスに含有させてもよい。導電性付与剤としてFe2O3、NiO、Co3O4、Cr2O3、TiO2、TiNを用いる場合、焼結温度抑制剤としてCa、K、Na、Mg、Zn、Sc等の酸化物を挙げることができ、導電性付与剤としてTiC、WC、TaC等の炭化物を用いる場合、焼結温度抑制剤としてAl2O3、TiO2を挙げることができる。これらの焼結温度抑制剤を3重量%以下の範囲で含有させれば、焼成温度を下げて、ジルコニア及び導電性付与剤の粒成長を抑えることができるため、入れ子等の曲げ強度や硬度といった機械的特性を高めることができる。
入れ子等の第2の構成において、活性金属膜の形成に活性金属ソルダー法を採用すれば、活性金属膜が入れ子等の表面に対して高い密着性を得ることができるし、入れ子等に対して金属層が高い密着力を得られるようになる。更には、入れ子等の第2の構成において、活性金属膜を設ければ、入れ子等の表面は導電性を有することになり、金属層を例えば電気メッキ法にて形成することが可能となる。あるいは又、キャビティに対向する入れ子等の表面の表面粗さを規定することによっても、入れ子等に対して無電解メッキ法に基づき金属層を形成することができ、しかも、入れ子等に対して金属層が高い密着力を得られるようになる。一方、入れ子等の第3の構成においては、入れ子等を導電性ジルコニアセラミックスから構成することによって、入れ子等の表面に金属層を直接形成することが可能となる。しかも、入れ子等の最表面に金属層が設けられているので、キャビティに対向する入れ子等の表面における金属層に凸凹部を各種の加工方法で形成することが可能となるし、高い耐擦傷性や表面硬度を得ることができる。また、入れ子等の加工時に入れ子等の外周部に発生した微細なクラックを金属層で被覆すれば、係るクラックが溶融熱可塑性樹脂が接触しなくなるために入れ子等が破損し難い。
入れ子等の第2の構成あるいは第3の構成にあっては、キャビティに対向する入れ子等の表面の表面粗さRZは、0.1μm乃至10μm、好ましくは0.1μm乃至8μm、一層好ましくは0.1μm乃至5μmであることが望ましい。キャビティに対向する入れ子等の表面の表面粗さRZを0.1μm以上とすることによって、係る表面に無電解メッキ法にて金属層を形成するときアンカー効果を得ることができる結果、係る表面に無電解メッキ法にて金属層を形成することが可能となる。一方、キャビティに対向する入れ子等の表面の表面粗さRZが10μmを越えると、入れ子等の表面に、直接、金属層を形成したとき、金属層の表面の粗さが粗くなり、金属層の表面研磨に要する時間が増大したり、金属層のピンホールが発生し易くなる。キャビティに対向する入れ子等の表面を、ブラスト処理によって、あるいは、エッチング処理によって荒らすことができる。
また、入れ子等の第2の構成あるいは第3の構成にあっては、入れ子等において、金属層は、Cr、Cr化合物、Cu、Cu化合物、Ni及びNi化合物から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成り、金属層に設けられた凸凹部の深さ(あるいは高さ)をdとしたとき、金属層の厚さTM(単位:m)は、
(d+5)×10-6m≦TM≦5×10-4m、
好ましくは、(d+10)×10-6m≦TM≦1×10-4m
を満足することが望ましい。これによって、金属層に各種の方法で凸凹部を形成することができる。しかも、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂が金属層と接触した場合でも、溶融熱可塑性樹脂が急冷されることを防止し得る。更には、金型部(場合によっては入れ子装着部や入れ子装着用中子)に対する入れ子の微調整を容易に行うことができる。しかも、高い耐擦傷性や表面硬度を得ることができる。ここで、金属層の厚さTMとは、金属層に設けられた凸凹部の先端部から、入れ子等の表面(後述する活性金属膜が形成されている場合には、活性金属膜と金属層との界面)までの距離を意味する。尚、入れ子等において、金属層は、1層から構成してもよいし、複数層から構成してもよい。Cr化合物として、具体的には、ニッケル−クロム合金を挙げることができる。また、Cu化合物として、具体的には、銅−亜鉛合金、銅−カドミウム合金、銅−錫合金を挙げることができる。更には、Ni化合物として、具体的には、ニッケル−リン合金(Ni−P系合金)、ニッケル−鉄合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−錫合金、ニッケル−鉄−リン合金(Ni−Fe−P系合金)、ニッケル−コバルト−リン合金(Ni−Co−P系合金)を挙げることができる。金属層に高い耐擦傷性が要求される場合には、例えば、金属層をクロム(Cr)から構成することが好適である。一方、金属層に耐擦傷性は左程要求されないが、厚さが必要とされる場合には、例えば、金属層を銅(Cu)から構成することが好適である。更には、金属層に耐擦傷性も或る程度要求され、しかも、厚さも必要な場合には、例えば、金属層をニッケル(Ni)から構成することが好適である。更に、金属層に厚さが必要とされ、しかも、表面硬度が必要とされる場合には、金属層を2層構成とし、例えば、下層を銅(Cu)あるいはニッケル(Ni)から構成して所望の厚さとし、厚さの調整を行い、一方、上層を薄いクロム(Cr)から構成することが好ましい。
(d+5)×10-6m≦TM≦5×10-4m、
好ましくは、(d+10)×10-6m≦TM≦1×10-4m
を満足することが望ましい。これによって、金属層に各種の方法で凸凹部を形成することができる。しかも、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂が金属層と接触した場合でも、溶融熱可塑性樹脂が急冷されることを防止し得る。更には、金型部(場合によっては入れ子装着部や入れ子装着用中子)に対する入れ子の微調整を容易に行うことができる。しかも、高い耐擦傷性や表面硬度を得ることができる。ここで、金属層の厚さTMとは、金属層に設けられた凸凹部の先端部から、入れ子等の表面(後述する活性金属膜が形成されている場合には、活性金属膜と金属層との界面)までの距離を意味する。尚、入れ子等において、金属層は、1層から構成してもよいし、複数層から構成してもよい。Cr化合物として、具体的には、ニッケル−クロム合金を挙げることができる。また、Cu化合物として、具体的には、銅−亜鉛合金、銅−カドミウム合金、銅−錫合金を挙げることができる。更には、Ni化合物として、具体的には、ニッケル−リン合金(Ni−P系合金)、ニッケル−鉄合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−錫合金、ニッケル−鉄−リン合金(Ni−Fe−P系合金)、ニッケル−コバルト−リン合金(Ni−Co−P系合金)を挙げることができる。金属層に高い耐擦傷性が要求される場合には、例えば、金属層をクロム(Cr)から構成することが好適である。一方、金属層に耐擦傷性は左程要求されないが、厚さが必要とされる場合には、例えば、金属層を銅(Cu)から構成することが好適である。更には、金属層に耐擦傷性も或る程度要求され、しかも、厚さも必要な場合には、例えば、金属層をニッケル(Ni)から構成することが好適である。更に、金属層に厚さが必要とされ、しかも、表面硬度が必要とされる場合には、金属層を2層構成とし、例えば、下層を銅(Cu)あるいはニッケル(Ni)から構成して所望の厚さとし、厚さの調整を行い、一方、上層を薄いクロム(Cr)から構成することが好ましい。
入れ子等のエッジ部に発生した微細なクラックが溶融熱可塑性樹脂と接触して入れ子等が破損することを防止するために、場合によっては、入れ子等のエッジ部をダイヤモンド砥石で研磨して応力が集中しないようにすることが好ましい。あるいは又、場合によっては、半径0.3mm以下の曲率面やC面カットを設け、入れ子等のエッジ部への応力集中を避けることが好ましい。
場合によっては、入れ子等を構成する入れ子本体を金属製とし、金属製の入れ子本体にジルコニアセラミックス層を形成してもよい。ジルコニアセラミックス層の形成方法として、溶射法を挙げることもできる。即ち、溶射ガンを用いて上述したジルコニア組成物から成る粉体を金属製の入れ子本体に対して高温で吹き付ける方法であり、アーク溶射、プラズマ溶射等があるが、ジルコニア組成物を溶射する場合、融点が高いので、高温を発生させることができるプラズマ溶射法が有効である。ジルコニアセラミックス層の厚さは、0.5mm乃至2mmとすることが好ましく、あまり厚くすると、ジルコニアセラミックス層が歪によって割れる虞がある。金属製の入れ子本体とジルコニアセラミックス層との間の密着性を高めるために、Ni−Cr等の金属を溶射した後、ジルコニア組成物を溶射することが好ましい。得られたジルコニアセラミックス層の表面に金属層を設ける場合、上述した方法に基づき行えばよい。
尚、本発明の光学部品の射出成形方法においては、金型組立体をキャビティの容積を可変とし得る構造とし、成形すべき光学部品の容積(VM)よりもキャビティの容積(VC)が大きくなるように、第1の金型部と第2の金型部とを型締めし、該キャビティ(容積:VC)内に溶融熱可塑性樹脂を射出し、溶融熱可塑性樹脂の射出開始前、開始と同時に、射出中に、あるいは射出完了後、キャビティの容積を成形すべき光学部品の容積(容積:VM)まで減少させる方法(射出圧縮成形法)とすることもできる。尚、キャビティの容積が成形すべき光学部品の容積(VM)となる時点を、溶融熱可塑性樹脂の射出中、あるいは射出完了後(射出完了と同時を含む)とすることができる。係る金型組立体の構造として、第1の金型部と第2の金型部とによって印籠構造が形成される構造や、キャビティの容積を可変とし得る、キャビティ内で可動の中子を金型組立体が更に備えている構造を挙げることができる。中子の移動の制御は、例えば油圧シリンダーで行うことができる。射出圧縮成形法においては、型締め時、成形すべき光学部品の容積(VM)とキャビティの容積(VC)の関係は、成形すべき光学部品の厚さをT0とし、型締め時における光学部品の厚さ方向のキャビティの距離をT1とし、ΔT=T1−T0としたとき、0.05mm≦ΔT≦2mmとなるような関係であることが好ましい。
溶融樹脂射出部としては、例えば、サイドゲート構造やタブゲート構造、フィルムゲート構造を挙げることができる。溶融樹脂射出部は、光学部品のいずれかの側面に対応するキャビティ面においてキャビティに開口していればよい。
本発明の光学部品の射出成形方法によって製造される光学部品として、各種のレンズ、カメラ等の光学レンズ、マイクロレンズアレイ、ファインダーレンズ、プロジェクターレンズ、眼鏡レンズ、fシーターレンズ、コリメートレンズ、ヘッドランプ、ターンランプ、サーチライト、回転灯、液晶表示装置等の表示装置のフロント・パネルやフロント・カバー、各種レンズ用やCCDカメラ用のカバーやフィルター、光ピックアップ、例えば液晶表示装置等のバックライトに用いられる導光板、太陽電池の光入射部、LEDやレーザ装置の光出射部を覆うカバー、各種の窓ガラスを含むグレージング類を例示することができる。
本発明の光学部品の射出成形方法においては、入れ子をジルコニアセラミックスといった低熱伝導率の材料から構成することによって、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の急冷を防ぐことができる結果、溶融熱可塑性樹脂の流動性が向上し、入れ子のキャビティ面と接触した溶融熱可塑性樹脂に固化層が形成されることを回避でき、キャビティ内を、溶融熱可塑性樹脂で、確実に、且つ、完全に充填させることができる。そして、その結果、キャビティに対向する入れ子の表面に配された凸凹部を、光学部品の光入射面に、確実に、しかも、正確に、高い精度にて転写することができる。
また、本発明の第2の態様に係る光学部品の射出成形方法においては、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程の完了からt秒が経過した後、若しくは、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程及びそれに続く保圧工程の完了からt秒が経過した後(但し、0秒≦t≦8.0秒)、型締め力を0.5F0以下とすることによって、キャビティ内の熱可塑性樹脂の冷却時に発生する歪み、あるいは、収縮によって発生する歪みを低減することができるため、光学部品内部の歪みが減少され、光学部品に捩れや膨れが発生せず、例えば高い平面度を有する光学部品を成形することができる。尚、本発明の第2の態様に係る光学部品の射出成形方法は、射出成形装置の作動を制御するソフトウエアの改造を行うことで達成することができる。
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
実施例1は、本発明の第1の態様に係る光学部品の射出成形方法に関する。実施例1の光学部品40の模式的な断面図を図1の(A)に示し、模式的な斜視図を図1の(B)に示す。
実施例1の光学部品40は、光を通過させるための平板(縦×横×厚さ=30mm×30mm×3mm)から成り、例えば、カメラ部品であるファインダーレンズのカバーにおいて使用されるものである。そして、この光学部品40は、透明な熱可塑性樹脂、より具体的には、芳香族ポリカーボネート樹脂から成り、光入射面(第1面)41、この光入射面41と対向した第2面43、第1側面45、第2側面46、第1側面45と対向した第3側面47、及び、第2側面46と対向した第4側面48を有する。そして、光入射面41には、凹凸部42が設けられている。この光学部品40においては、光入射面41から光が入射し、第2面43から光が射出する。光入射面41に設けられた凹凸部42を、具体的には、平均高さ4.0×10-7(m)、平均ピッチ2.0×10-7(m)とし、四角錐状(ピラミッド状)の凹凸部42が形成されるように、キャビティ18に対向する入れ子20の表面には凸凹部が配されている。尚、凹凸部42と凹凸部42との間の光入射面41には平坦部は存在しない。また、光入射面41に形成された凹凸部42によって反射防止層(より具体的には、SWS型反射防止層)が構成されている。第2面43にも、第1面41における凹凸部42と同様の凹凸部44が設けられており、この凹凸部44によって反射防止層(より具体的には、SWS型反射防止層)が構成されている。
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4にあっては、図2の(A)及び(B)に模式図を示すように、キャビティ18、及び、光学部品40の第3側面47に対応するキャビティ面から溶融熱可塑性樹脂をキャビティ18内に射出するための溶融樹脂射出部19(サイドゲート構造を有する)を備えた金型組立体を用いて、光学部品を製造する。この金型組立体は、より具体的には、第1の金型部10(可動金型部)と第2の金型部(固定金型部)13とを備え、第1の金型部10と第2の金型部13とを型締めすることでキャビティ18が形成される。尚、図2の(B)は、キャビティ18内に射出された溶融熱可塑性樹脂の流動方向に沿った模式的な端面図であり、図2の(B)において、キャビティ18の左手側が光学部品40の第3側面47を形成する部分に相当し、キャビティ18の右手側が光学部品40の第1側面45を形成する部分に相当する。一方、図2の(A)は、キャビティ18内に射出された溶融熱可塑性樹脂の流動方向と直角の方向に沿った模式的な端面図であり、図2の(A)において、キャビティ18の右手側が光学部品40の第2側面46を形成する部分に相当し、キャビティ18の左手側が光学部品40の第4側面48を形成する部分に相当する。
図4に概念図を示すように、射出成形装置は、溶融熱可塑性樹脂を供給するためのスクリュー201を内部に有する射出シリンダー200、固定プラテン210、可動プラテン211、タイバー212、型締め用油圧シリンダー213、及び、油圧ピストン214を具備している。可動プラテン211は、型締め用油圧シリンダー213内の油圧ピストン214の作動によってタイバー212上を平行移動できる。第2の金型部(固定金型部)13は固定プラテン210に取り付けられており、第1の金型部(可動金型部)10は可動プラテン211に取り付けられている。図4の矢印「A」方向への可動プラテン211の移動によって第1の金型部(可動金型部)10が第2の金型部(固定金型部)13と係合し、第2の金型部(固定金型部)13と第1の金型部(可動金型部)10とが型締め力F0にて型締めされ、キャビティ18が形成される。型締め力F0は、型締め用油圧シリンダー213によって制御される。また、例えば、本発明の第2の態様に係る光学部品の射出成形方法においては、型締め用油圧シリンダー213の制御に基づき型締め力がF0からF1へと低下させられ、更には、図4の矢印「B」方向への第1の金型部(可動金型部)10の移動によって、第1の金型部(可動金型部)10が第2の金型部(固定金型部)13との係合を解かれ、第1の金型部(可動金型部)10と第2の金型部(固定金型部)13とは型開きされる。
実施例1の金型組立体において、入れ子20はジルコニアセラミックスから成る。また、光学部品40の光入射面41の凹凸部42を形成するために、キャビティ18に対向する入れ子20の表面には凸凹部が配されている。より具体的には、入れ子20の表面には凸凹部が設けられた金属層22が配されており、係る入れ子20が金型組立体の内部に配設されている。即ち、実施例1における入れ子20は、第1の構成を有する。入れ子20の模式的な斜視図を図3の(A)に示し、金属層22の模式的な斜視図を図3の(B)に示す。
更には、第2の入れ子30が、金型組立体の内部に配設されている。この第2の入れ子30は、ジルコニアセラミックスから成り、更には、光学部品40の第2面43の凹凸部44を形成するために、キャビティ18に対向する第2の入れ子30の表面には凸凹部が配されている。より具体的には、第2の入れ子30の表面には凸凹部が設けられた金属層32が配されており、係る第2の入れ子30が金型組立体の内部に配設されている。即ち、実施例1における第2の入れ子30も、第1の構成を有する。
入れ子20は、入れ子取付け部材11に取り付けられ、入れ子取付け部材11は、ボルト16によって第1の金型部10に固定されている。一方、第2の入れ子30は、第2の入れ子取付け部材14に取り付けられ、第2の入れ子取付け部材14は、ボルト17によって第2の金型部13に固定されている。
入れ子20の入れ子取付け部材11への具体的な取付け方法として、入れ子20の対向する2つの側面に溝部23を形成し、この溝部23と対向する入れ子取付け部材11の部分にも溝部を形成し、これらの溝部内に、銅、真鍮、ゴム等の柔らかな素材から成る係止部材12を配する方法を挙げることができる。第2の入れ子30の第2の入れ子取付け部材14への具体的な取付け方法も、第2の入れ子30の対向する2つの側面に溝部を形成し、この溝部と対向する第2の入れ子取付け部材14の部分にも溝部を形成し、これらの溝部内に、銅、真鍮、ゴム等の柔らかな素材から成る係止部材15を配する方法とすることができる。このような取付け方法を採用することで、入れ子20や第2の入れ子30の縁部分に損傷が発生することを確実に防止することができる。
入れ子20は、光学部品40の光入射面41を成形するために用いられ、部分安定化剤としてイットリア(Y2O3)を含有した部分安定化ジルコニアセラミックス(部分安定化された酸化ジルコニウム,ZrO2)から成り、厚さは5.0mmである。ZrO2−Y2O3という組成を有する部分安定化ジルコニアセラミックス中に含有される部分安定化剤の割合を3モル%とした。部分安定化ジルコニアセラミックスの熱伝導率は約3.8J/(m・s・K)である。そして、光学部品40の光入射面41の凹凸部42を形成するために、キャビティ18に対向する入れ子20の表面には凸凹部が配されている。より具体的には、入れ子20の表面には凸凹部が設けられた金属層22が配されている。金属層22に設けられた凸凹部は、光学部品40の光入射面41における凹凸部42と相補的な形状を有する。第2の入れ子30も、入れ子20と同様の構成、構造を有する。
実施例1にあっては、入れ子20の表面(キャビティ面21)に金属層22を配する方法として、入れ子20のキャビティ面21に、着脱自在に取り付け可能な金属層22を載置する方法を採用した。尚、金属層22は、入れ子20のキャビティ面21に載置され、端部は入れ子取付け部材11の一部分によって押され込まれている。例えばシリコン半導体基板の表面に電子線にて感光するレジスト層を塗布し、電子線描画法にてレジスト層にパターンを形成し、次いで、係るレジスト層をエッチング用マスクとしてシリコン半導体基板をエッチングすることで、シリコン半導体基板の表面に凹凸部を形成した後、シリコン半導体基板の表面に凹凸部を覆うように無電解金属メッキ層及び電界金属メッキ層から成る金属層22(より具体的には、総厚さ0.2mmのニッケル層)を形成し、次いで、金属層22をシリコン半導体基板の表面から剥離するといった、所謂電鋳法により、金属層22を作製した。尚、このような金属層22は、スタンパとも呼ばれる。ここで、金属層22に形成された凸凹部の高さ、ピッチを、凸凹部形成上のバラツキの範囲内で実質的に均一とした。
第2の入れ子30、金属層32も、入れ子20、金属層22と同様の方法で作製した。尚、金属層32は、第2の入れ子30のキャビティ面31に載置され、端部は入れ子取付け部材14の一部分によって押され込まれている。
一方、第1の金型部(可動金型部)10及び第2の金型部(固定金型部)13を炭素鋼S55Cから作製し、切削加工を行い、入れ子装着部を設けた。そして、入れ子装着部に入れ子20及び第2の入れ子30を、先に説明した方法に基づき、装着した。
このように作製した第1の金型部(可動金型部)10と第2の金型部(固定金型部)13とを組み付けて実施例1の金型組立体を得た。完成した金型組立体を成形装置に取り付けた後、金型組立体を金型温調機を用いて130゜Cまで加熱後、40゜Cまで急冷しても、入れ子20や第2の入れ子30に割れ等の損傷は発生しなかった。また、金属層22,32にも損傷は生じなかった。
成形装置として株式会社ゾディックプラスチック製、TR100EH射出成形機を用いた。また、透明な熱可塑性樹脂として表1に粘度平均分子量及びQ値を示す芳香族ポリカーボネート樹脂を使用して、射出成形を行なった。樹脂温度、金型温度、樹脂射出速度、射出圧力、型締め力F0といった成形条件を表1のとおりとした。そして、第1の金型部10と第2の金型部13とを型締めして、図2の(A)及び(B)に示す状態とした後、射出シリンダー200内で計量、溶融された透明な溶融熱可塑性樹脂を、溶融樹脂射出部19を介してキャビティ18へ射出した。所定量(キャビティ18を完全に充填する量)の溶融ポリカーボネート樹脂を溶融樹脂射出部19を介してキャビティ18内に射出した後、キャビティ18内の芳香族ポリカーボネート樹脂を冷却、固化させ、30秒後に金型組立体の型開きを行い、光学部品40を金型組立体から取り出した。尚、実施例1にあっては、光学部品を本発明の第1の態様に係る光学部品の射出成形方法に基づき製造した。即ち、第1の金型部10と第2の金型部13の型締め時から型開きまでの間、型締め力を値F0に保持し続けた。尚、冷却中の型締め力をF2で表したとき、この場合には、F0=F2である。
F0=9.8×105(N)
(=100トン・f)
とした。また、保圧圧力、保圧時間を以下のとおりとした。
保圧圧力=35×106Pa
保圧時間=10秒
F0=9.8×105(N)
(=100トン・f)
とした。また、保圧圧力、保圧時間を以下のとおりとした。
保圧圧力=35×106Pa
保圧時間=10秒
得られた光学部品40の光入射面41における転写率(以下、単に、光学部品の転写率と呼ぶ)、及び、入射波長550nmにおける光学部品の光透過率(以下、単に、光学部品の光透過率と呼ぶ)の測定結果を表1に示す。ここで、転写率とは、入れ子の表面に配された凸凹部の高さに対する、成形された光学部品の凹凸部の高さの比を意味し、(光学部品の凹凸部の高さ)/(入れ子の表面に配された凸凹部の高さ)×100(%)で表され、SEMあるいはAFMで測定された高さから求めることができる。尚、SEMを用いる場合、入れ子の表面に配された凸凹部や光学部品の端面から撮影したSEM写真から平均高さ測定を行うか、あるいは又、切断、電子ビームによる研磨によって得られた入れ子の表面に配された凸凹部や光学部品の断面を撮影したSEM写真から平均高さ測定を行えばよい。今回の試験では、後者の方法を採用した。また、光透過率は、JIS K7361−1に基づいた測定を行い、全光線透過率の値で判断する。尚、今回の試験では、濁度計 NDH−2000(日本電色工業株式会社製)を用いた。
比較のために、入れ子を、厚さ5.0mmの炭素鋼製(熱伝導率:約46J/(m・s・K))に交換して、実施例1と同じ方法に基づき光学部品を成形した。得られた光学部品の転写率及び光透過率の測定結果を表1に「比較例1」として示す。尚、実施例1と同じ樹脂温度、金型温度で成形したところ、キャビティ18内の溶融熱可塑性樹脂の流動性が悪く、キャビティ18内を溶融熱可塑性樹脂で完全に充填することができなかったため、実施例1よりも樹脂温度、金型温度を高くした。しかしながら、得られた光学部品の転写率及び光透過率の値は、いずれも、実施例1の光学部品におけるこれらの値よりも低い値であり、光学部品に要求される特性を満足するものではなかった。
実施例2は、本発明の第2の態様に係る光学部品の射出成形方法に関する。実施例2あるいは後述する実施例3〜実施例4においても、実施例1と同じ射出成形機、金型組立体を用いた。また、実施例2にあっては実施例1と同じ入れ子20を用い、透明な熱可塑性樹脂として実施例1と同じ芳香族ポリカーボネート樹脂を使用して、射出成形を行なった。実施例2における樹脂温度、金型温度、樹脂射出速度、型締め力F0、型締め力F1、時間tの値といった成形条件を表1のとおりとした。更には、得られた光学部品の転写率及び光透過率の値を表1に示す。
実施例2にあっては、第2の金型部(固定金型部)13と第1の金型部(可動金型部)10とを型締め力F0にて型締めして、図2の(A)及び(B)に示す状態とした後、射出シリンダー200内で計量、可塑化され、溶融された溶融熱可塑性樹脂を、スプルー215及び溶融樹脂射出部19を介してキャビティ18へ射出した。所定量(キャビティ18を完全に充填する量)の溶融熱可塑性樹脂を溶融樹脂射出部19を介してキャビティ18内に射出し、キャビティ18内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程の完了からt秒が経過した後、若しくは、キャビティ18内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程及びそれに続く保圧工程の完了からt秒が経過した後、型締め力を0.5F0以下とし、キャビティ18内の熱可塑性樹脂が冷却、固化した後、第2の金型部(固定金型部)13と第1の金型部(可動金型部)10とを型開きし、光学部品を取り出した。
表1から、実施例2の光学部品の射出成形方法を採用することで、実施例1によって得られた光学部品と比較して、一層優れた転写率の値及び光透過率の値を有する光学部品を成形することができることが判る。
比較のために、入れ子を、比較例1にて説明した入れ子に交換して、実施例2と同じ方法に基づき光学部品を成形した。得られた光学部品の転写率及び光透過率の測定結果を表1に「比較例2」として示す。得られた光学部品の転写率及び光透過率の値は、いずれも、実施例2の光学部品におけるこれらの値よりも低い値であり、光学部品に要求される特性を満足するものではなかった。
実施例3は実施例2の変形である。実施例3が実施例2と相違する点は、第2の構成を有する入れ子を用いた点にある。具体的には、金属層22は、電気メッキ法によって入れ子20のキャビティ面21上に形成された厚さ5μmのNi層と、その上に形成された厚さ100μmのNi化合物層(無電解メッキによって形成されたNi−P層)の2層から成る。即ち、金属層22の厚さtは105μmである。キャビティ18に対向する入れ子20のキャビティ面21の表面粗さRZは0.5μmである。また、入れ子20と金属層22との間には、厚さ10μmのTi−Cu−Ag共晶組成物から成る活性金属膜が形成されている。この活性金属膜は、活性金属ソルダー法によって形成されている。
具体的には、入れ子20を、ジルコニア(ZrO2)粉末及びY2O3粉末の混合品をプレス成形した後、焼成して作製した。その後、キャビティ18に対向する入れ子20のキャビティ面21に対してダイヤモンド砥石を用いた研磨及び仕上げを行ない、係る表面の表面粗さRZを0.5μmとした。次に、入れ子20の全面に、活性金属ソルダー法に基づき活性金属膜を形成した。具体的には、Ti−Cu−Ag共晶組成物から成るペーストを入れ子20の全面に塗布し、真空中で約800゜Cの高温で焼き付けることによって、活性金属膜を形成した。その後、電気メッキ法にて、活性金属膜上にニッケル層を形成し、更にその上に無電解メッキ法にてNi−P層を形成した。その後、Ni−P層に、ピラミッド状の凸凹部が形成されたダイヤモンドバイトを用いた機械加工を施し、金属層22にピラミッド状の凸凹部を形成した。金属層に形成された凸凹部を、平均高さ5.8×10-7(m)、平均ピッチ3.0×10-7(m)の凹凸部42が光学部品40の光入射面41に設けられるような大きさ、ピッチとした。ここで、金属層22に形成された凸凹部の高さ、ピッチを、凸凹部形成上のバラツキの範囲内で実質的に均一とした。
第2の入れ子30、金属層32も、入れ子20、金属層22と同様の方法で作製した。第2の入れ子30も、入れ子20と同様の構成、構造を有する。
尚、実施例3においても、透明な熱可塑性樹脂として、実施例1と同じ芳香族ポリカーボネート樹脂を使用して、射出成形を行なった。また、実施例3における樹脂温度、金型温度、樹脂射出速度、型締め力F0、型締め力F1、時間tの値といった成形条件を表1のとおりとした。更には、得られた光学部品の転写率及び光透過率の値を表2に示す。実施例2と異なり、実施例3にあっては、型締め力F1の値を「0」としている。
実施例3において得られた光学部品の転写率及び光透過率の値を表2に示す。得られた光学部品の転写率及び光透過率の値は、いずれも優れた値であり、型締め力F1の値を実施例2よりも低くすることで、実施例2よりも一層優れた転写率及び光透過率を達成することができた。
尚、実施例3において説明した入れ子を用いて、実施例1と同様の光学部品の射出成形方法を実施したところ、得られた光学部品の転写率及び光透過率の値は、いずれも、優れた値であり、光学部品に要求される特性を十分に満足していた。
実施例4も、実施例2の変形である。実施例4が実施例2と相違する点は、溶融熱可塑性樹脂を射出する前のキャビティ18内を圧力P0(但し、圧力P0は大気圧よりも低く、且つ、大気圧との差は5×104Pa以上であり、より具体的には、大気圧との差は5×104Paである)とし、その後、キャビティ18内に溶融樹脂射出部19から透明な溶融熱可塑性樹脂を射出した点にある。
実施例4における樹脂温度、金型温度、樹脂射出速度、型締め力F0、型締め力F1、時間tの値といった成形条件を表2のとおりとした。更には、得られた光学部品の転写率及び光透過率の値を表2に示す。得られた光学部品の転写率及び光透過率の値は、いずれも、優れた値であり、光学部品に要求される特性を十分に満足していた。
尚、実施例4において使用した芳香族ポリカーボネート樹脂のQ値は、実施例1において使用した芳香族ポリカーボネート樹脂のQ値よりも低く、また、粘度平均分子量の値は、実施例1において使用した芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の値よりも高い。即ち、実施例4において使用した芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性は、実施例1において使用した芳香族ポリカーボネート樹脂よりも悪い。それにも拘わらず、溶融熱可塑性樹脂を射出する前のキャビティ18内を大気圧よりも低い圧力P0としたが故に、十分に満足すべき特性を有する光学部品を成形することができた。
比較のために、入れ子を、比較例1にて説明した入れ子に交換して、実施例4と同じ方法に基づき光学部品を成形した。得られた光学部品の転写率及び光透過率の測定結果を表2に「比較例4」として示す。得られた光学部品の転写率及び光透過率の値は、いずれも、実施例4の光学部品におけるこれらの値よりも低い値であり、光学部品に要求される特性を満足するものではなかった。
尚、実施例3において説明した入れ子を用いて、実施例4と同様の光学部品の射出成形方法を実施したところ、得られた光学部品の転写率及び光透過率の値は、いずれも、優れた値であり、光学部品に要求される特性を十分に満足していた。また、実施例1と同様の光学部品の射出成形方法において、溶融熱可塑性樹脂を射出する前のキャビティ18内を圧力P0(但し、圧力P0は大気圧よりも低く、且つ、大気圧との差は5×104Pa以上であり、より具体的には、大気圧との差は5×104Paである)とし、その後、キャビティ18内に溶融樹脂射出部19から透明な溶融熱可塑性樹脂を射出したところ、この場合にも、十分に満足すべき特性を有する光学部品を成形することができた。
以上、本発明を、好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例における金型組立体の構造、使用した透明な熱可塑性樹脂、射出成形条件、入れ子や第2の入れ子の構成、構造、光学部品の構成、構造は例示であり、適宜変更することができる。
代替的に、入れ子20は、以下に説明する方法で作製することもできる。尚、第2の入れ子30も同様の方法で作製することができる。
先ず、部分安定化ジルコニアをプレス成形した後、焼成することで、入れ子20を得る。その後、キャビティ18に対向する入れ子20のキャビティ面21に対してアルミナ粒子を用いたブラスト処理を行ない、係る表面の表面粗さRZを2μmとする。次に、無電解メッキ法にて、入れ子20のキャビティ面21に厚さ2μmのNi−P層を形成した後、電気メッキ法にて、その上に厚さ5μmのNi層を形成し、更に、その上に無電解メッキ法にて厚さ100μmのNi−P層を形成する。その後、Ni−P層に凹凸部が形成されたダイヤモンドバイトを用いた機械加工を施し、金属層22に凸凹部を形成する。
あるいは又、入れ子20を、部分安定化された導電性ジルコニアセラミックスから構成することもできる。尚、キャビティ18に対向する入れ子20のキャビティ面21に金属層22を形成する。即ち、入れ子20は、具体的には、部分安定化ジルコニア(ZrO2−Y2O3)セラミックスから成り、導電性付与剤として、Fe2O3が8重量%含有されている。また、部分安定化ジルコニアセラミックス中に含有される部分安定化剤であるY2O3の割合を、3mol%とする。係る導電性ジルコニアセラミックスの熱伝導率は約3.8J/(m・s・K)であり、体積固有抵抗値は1×108Ω・cmである。金属層22はクロム(Cr)から成る。尚、入れ子20の全面に電気メッキ法にて金属層22を形成する。
入れ子20や第2の入れ子30の第1の金型部10(可動金型部)及び第2の金型部(固定金型部)13への固定方法として、実施例1に説明した固定方法以外にも、例えば、以下に説明する方法を挙げることができる。即ち、図5の(A)には金型組立体を型締めした状態を示し、図6の(A)には金型組立体を型開きした状態を示すが、これらの図5の(A)及び図6の(A)に模式的な断面図を示す金型組立体は、
(A)第1の金型部(可動金型部)110及び第2の金型部(固定金型部)113から成り、型締め時、キャビティ118が形成される、光学部品を成形するための金型組立体と、
(B)キャビティ118内に溶融熱可塑性樹脂を導入するためのサイドゲート方式の溶融樹脂射出部(図示せず)と、
(C)第1の金型部110に配設され、キャビティ118の一部を構成する入れ子120と、
(D)第2の金型部113に配設され、キャビティ118の一部を構成する第2の入れ子130、
を備えている。
(A)第1の金型部(可動金型部)110及び第2の金型部(固定金型部)113から成り、型締め時、キャビティ118が形成される、光学部品を成形するための金型組立体と、
(B)キャビティ118内に溶融熱可塑性樹脂を導入するためのサイドゲート方式の溶融樹脂射出部(図示せず)と、
(C)第1の金型部110に配設され、キャビティ118の一部を構成する入れ子120と、
(D)第2の金型部113に配設され、キャビティ118の一部を構成する第2の入れ子130、
を備えている。
金型組立体には、ボルト116によって第1の金型部110に取り付けられ、キャビティ118の一部を構成し、入れ子120の端面を被覆する被覆プレート111が更に備えられている。尚、被覆プレート111は入れ子120の全周の端面を被覆している。更には、ボルト117によって第2の金型部113に取り付けられ、キャビティ118の一部を構成し、第2の入れ子130の端面を被覆する第2の被覆プレート114が更に備えられている。尚、第2の被覆プレート114は第2の入れ子130の全周の端面を被覆している。被覆プレート111及び第2の被覆プレート114には溶融樹脂射出部(図示せず)が設けられている。
図6の(B)に模式的な拡大した断面図を示し、図5の(B)に模式的な拡大された一部断面図を示す入れ子120(厚さ3.0mm)は、光学部品の光入射面を成形するために用いられ、部分安定化剤としてイットリア(Y2O3)を含有した部分安定化ジルコニアセラミックス(部分安定化された酸化ジルコニウム,ZrO2)から成る入れ子120と、光学部品の光入射面を形成するために、キャビティ118に対向する入れ子120のキャビティ面121に形成され、凸凹部122Aが設けられた金属層122から成る。尚、入れ子120の模式的な断面図を図5の(C)に示す。金属層122に設けられた凸凹部122Aは、光学部品40の光入射面41に形成された凹凸部42と相補的な形状を有する。
金属層122は、電気メッキによって形成された厚さ5μmのNi層と、その上に形成された厚さ100μmのNi化合物層(無電解メッキによって形成されたNi−P層)の2層から成る。即ち、金属層122の厚さtは105μmである。尚、図面においては、金属層122を1層で表した。尚、キャビティ118に対向する入れ子120のキャビティ面121の表面粗さRZは0.5μmである。また、入れ子120と金属層122との間には、厚さ10μmのTi−Cu−Ag共晶組成物から成る活性金属膜124が形成されている。この活性金属膜124は、活性金属ソルダー法によって形成されている。
第1の金型部110と第2の金型部113とを型締めした状態において被覆プレート111と対向する入れ子120の部分の表面には、表面が平坦な金属層122B(図6の(B)参照)が形成されている。尚、この金属層122Bは、金属層122と同時に形成され、金属層122Bの下には活性金属膜124が形成されている。
具体的には、入れ子120を、ジルコニア(ZrO2)粉末及びY2O3粉末の混合品をプレス成形した後、焼成して作製した(図5の(C)の模式的な断面図参照)。その後、キャビティ118に対向する入れ子120のキャビティ面121及び被覆プレート111と対向する入れ子120の表面(表面120Aと呼ぶ)に対してダイヤモンド砥石を用いた研磨及び仕上げを行ない、かかる表面121,120Aの表面粗さRZを0.5μmとした。次に、入れ子120のキャビティ面121及び表面120Aに、活性金属ソルダー法に基づき活性金属膜124を形成した。具体的には、Ti−Cu−Ag共晶組成物から成るペーストをこれらの表面121,120Aに塗布し、真空中で約800゜Cの高温で焼き付けることによって、活性金属膜124を形成した。その後、活性金属膜124が形成された部分以外の入れ子120の部分をマスキングして、電気メッキ法にて、ニッケル層を形成し、更にその上に無電解メッキ法にてNi−P層を形成した。その後、Ni−P層に、凹凸部が形成されたダイヤモンドバイトを用いた機械加工を施し、金属層122に凸凹部122Aを形成した。
第2の入れ子130も、入れ子120と同様の構成、構造を有する。
第1の金型部(可動金型部)110を炭素鋼S55Cから作製し、切削加工を行い、入れ子装着部を設けた。表面120A上に形成された金属層122Bを金属加工用の平面切削機を用いて切削した。そして、入れ子装着部に入れ子120を装着し、入れ子120の端面を被覆プレート111で被覆し、被覆プレート111をボルト116で第1の金型部110に固定した。
また、第2の金型部(固定金型部)113を炭素鋼S55Cから作製し、切削加工を行い、入れ子装着部を設けた。そして、入れ子装着部に第2の入れ子130を装着し、第2の入れ子130の端面を第2の被覆プレート114で被覆し、第2の被覆プレート114をボルト117で第2の金型部113に固定した。
こうして得られた金型組立体を用いて、実施例1〜実施例4にて説明したと同様の方法で光学部品を射出成形することができる。
また、入れ子のキャビティ面に、例えばプラズマCVD法に基づき、セラミックスを化学的気相成長させることで、光入射面の凹凸部を形成するために、キャビティに対向する入れ子の表面に凸凹部を配してもよい。尚、この場合には、通常、入れ子の表面に形成された凸凹部の高さ、ピッチは、不均一になる。
10,110・・・第1の金型部(可動金型部)、11・・・入れ子取付け部材、12,15・・・係止部材、13,113・・・第2の金型部(固定金型部)、14・・・第2の入れ子取付け部材、16,17,116,117・・・ボルト、18,118・・・キャビティ、19・・・溶融樹脂射出部、111・・・被覆プレート、114・・・第2の被覆プレート、20,120・・・入れ子、21,121・・・入れ子のキャビティ面、22,32,122,132・・・金属層、122A・・・凸凹部、124・・・活性金属膜、23・・・溝部、30,130・・・第2の入れ子、40・・・光学部品、41・・・光入射面(第1面)、42・・・凹凸部、43・・・第2面、44・・・凹凸部、45・・・第1側面、46・・・第2側面、47・・・第3側面、48・・・第4側面、200・・・射出シリンダー、201・・・スクリュー、210・・・固定プラテン、211・・・可動プラテン、212・・・タイバー、213・・・型締め用油圧シリンダー、214・・・油圧ピストン
Claims (7)
- (A)第1の金型部及び第2の金型部から成る金型、
(B)第1の金型部及び/又は第2の金型部に配置され、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入するための溶融樹脂射出部、並びに、
(C)第1の金型部に配設された、ジルコニアセラミックスから成る入れ子、
を備えた金型組立体であって、
高さ2.2×10-7(m)乃至6.0×10-7(m)、ピッチ1×10-7(m)乃至3×10-7(m)の凹凸部が光入射面に設けられた透明な熱可塑性樹脂から成る光学部品の該光入射面を成形するために、該入れ子は用いられ、
光入射面の凹凸部を形成するために、キャビティに対向する該入れ子の表面には凸凹部が配されている金型組立体を用いた光学部品の射出成形方法であって、
(a)第1の金型部と第2の金型部とを型締めして、キャビティを形成した後、
(b)キャビティ内に溶融樹脂射出部から透明な溶融熱可塑性樹脂を射出し、
(c)キャビティ内の熱可塑性樹脂が冷却、固化した後、第1の金型部と第2の金型部とを型開きし、光学部品を取り出す、
各工程から成ることを特徴とする光学部品の射出成形方法。 - (A)第1の金型部及び第2の金型部から成る金型、
(B)第1の金型部及び/又は第2の金型部に配置され、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入するための溶融樹脂射出部、並びに、
(C)第1の金型部に配設された、ジルコニアセラミックスから成る入れ子、
を備えた金型組立体であって、
高さ2.2×10-7(m)乃至6.0×10-7(m)、ピッチ1×10-7(m)乃至3×10-7(m)の凹凸部が光入射面に設けられた透明な熱可塑性樹脂から成る光学部品の該光入射面を成形するために、該入れ子は用いられ、
該入れ子は、ジルコニアセラミックスから成り、
光入射面の凹凸部を形成するために、キャビティに対向する該入れ子の表面には凸凹部が配されている金型組立体を用いた光学部品の射出成形方法であって、
(a)第1の金型部と第2の金型部とを型締め力F0にて型締めして、キャビティを形成した後、
(b)キャビティ内に溶融樹脂射出部から透明な溶融熱可塑性樹脂を射出し、
(c)キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程の完了からt秒が経過した後、若しくは、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出工程及びそれに続く保圧工程の完了からt秒が経過した後(但し、0秒≦t≦8.0秒)、型締め力を0.5F0以下とし、
(d)キャビティ内の熱可塑性樹脂が冷却、固化した後、第1の金型部と第2の金型部とを型開きし、光学部品を取り出す、
各工程から成ることを特徴とする光学部品の射出成形方法。 - 前記工程(b)において、溶融熱可塑性樹脂を射出する前のキャビティ内を圧力P0(但し、圧力P0は大気圧よりも低く、且つ、大気圧との差は5×104Pa以上である)とし、その後、キャビティ内に溶融樹脂射出部から透明な溶融熱可塑性樹脂を射出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学部品の射出成形方法。
- 光入射面に形成された凹凸部によって反射防止層が構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光学部品の射出成形方法。
- 光学部品の光透過率が94%以上であることを特徴とする請求項4に記載の光学部品の射出成形方法。
- 熱可塑性樹脂のQ値は、0.1cm3・秒-1以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の光学部品の射出成形方法。
- 熱可塑性樹脂は、粘度平均分子量が1.0×104乃至2.0×104の芳香族ポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の光学部品の射出成形方法。
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