JP5030788B2 - 高品質芳香族ポリカーボネートの工業的製造方法 - Google Patents

高品質芳香族ポリカーボネートの工業的製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、芳香族ポリカーボネートの工業的製造法に関する。更に詳しくは、本発明は、ジアルキルカーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物から、着色がなく機械的物性に優れた高品質・高性能の芳香族ポリカーボネートを、工業的に大量に長期間安定的に製造する方法に関する。
芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐衝撃性、透明性などに優れたエンジニアリングプラスチックスとして、多くの分野において幅広く用いられている。この芳香族ポリカーボネートの製造方法については、従来種々の研究が行われ、その中で、芳香族ジヒドロキシ化合物、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)とホスゲンとの界面重縮合法が工業化されている。しかしながら、この界面重縮合法においては、有毒なホスゲンを用いなければならないこと、健康や環境に問題のある塩化メチレンを重合溶媒としてポリカーボネートあたり10倍以上もの大量使用しなければならないこと、副生する塩化水素や塩化ナトリウム、及び塩化メチレンなどの含塩素化合物により装置が腐食すること、ポリマー物性に悪影響を及ぼす塩化ナトリウム、塩化メチレンなどの塩素系残留不純物の分離が困難なこと、塩化メチレンや未反応ビスフェノールAなどを含む大量のプロセス廃水の処理が必要なこと等、多くの課題がある。
一方、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとから、芳香族ポリカーボネートを製造する方法としては、例えば、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートを溶融状態でエステル交換し、副生するフェノールを抜き出しながら重合する溶融法が以前から知られている。このエステル交換反応は平衡反応であってしかもその平衡定数が小さいので、フェノールを溶融物の表面から効率的に抜き出さない限り重合が進行しない。溶融法は、界面重縮合法と異なり、溶媒を使用しないなどの利点がある一方、重合がある程度進行するとポリマーの粘度が急上昇し、副生するフェノールなどを効率よく反応系外に抜き出す事が困難になり、実質的に重合度を上げることができなくなるという芳香族ポリカーボネートそのものに基づく本質的な問題があった。すなわち、芳香族ポリカーボネートの場合、ポリアミドやポリエステルなど他の縮合系ポリマーの溶融重縮合の場合と異なり、低分子量状態、例えば重合度(n)が15−20程度であっても、その溶融粘度が極端に高くなり、通常の攪拌では表面更新が非常に困難になる。そして、ポリマー表面からのフェノールの抜出しが実質的に起こらなくなり、製品として必要な重合度(n=35−65程度)のポリマーを製造することができない。このことは、当業界ではよく知られていることである。
芳香族ポリカーボネートを溶融法で製造するための重合器としては、種々の重合器が知られている。攪拌機を備えた縦型の攪拌槽型重合器を用いる方法は一般に広く知られている。しかしながら、縦型の撹拌槽型重合器は小スケールでは容積効率が高く、シンプルであるという利点を有し、効率的に重合を進められるが、工業的規模では、上述したように重合の進行と共に副生するフェノールを効率的に系外に抜き出す事が困難となり重合速度が極めて低くなるという問題を有している。さらに、大スケールの縦型の撹拌槽型重合器は、通常、蒸発面積に対する液容量の比率が小スケールの場合に比べて大きくなり、いわゆる液深が大きな状態となる。このため、重合度を高めるために真空度を高めていっても、撹拌槽の下部は液深があるために、上部の空間部よりも液深に相当する高い圧力で重合されることになり、フェノール等は効率的に抜き出すことが困難になってしまう。したがって、大スケールの縦型の撹拌槽型重合器は、プレポリマーを製造する場合のみにしか使用することができない。必要な重合度を達成するためには、このプレポリマーからさらに重縮合反応を進行させるための重合器が必須である。
この問題を解決しようと、高粘度状態のポリマーからフェノール等を効率的に抜き出すための種々の工夫がなされている。これらの工夫の大部分は、機械的攪拌の改良に関するものであり、例えば、ベント部を有するスクリュー型重合器を用いる方法(特許文献1)、噛合型2軸押出機を用いる方法(特許文献2)、また、薄膜蒸発型反応器、例えばスクリュー蒸発器や遠心薄膜蒸発器等を用いる方法(特許文献3)が記載されている。さらに、遠心薄膜型蒸発装置と横型2軸撹拌式重合器を組み合わせて用いる方法(特許文献4)も具体的に開示されている。これらの方法は、いずれも機械的攪拌を行うことを技術の根幹としているため、自ずと限界があり、この問題を解決するには至っていない。
すなわち、超高溶融粘度に対応できる機械的攪拌そのものに限界があるため、芳香族ポリカーボネートの超高溶融粘度にかかわる種々の問題を解決することができないままである。これらの方法では、温度を上げその溶融粘度を少しでも下げることで解決していこうとしている。すなわち、300℃近くの高温、高真空下で溶融プレポリマーを機械的攪拌で表面更新を図りながら重合を行うのがこれらの方法であるが、この温度でもなおその溶融粘度が非常に高いため、その表面更新の程度を高くすることができない。したがって、これらの方法では製造できるポリカーボネートの重合度に制限があり、高分子量グレードの製品を製造することは困難である。さらに、これらの方法では300℃近くの高温で反応させるため、得られるポリマーの着色や物性低下が起こり易いことに加え、攪拌装置の真空シール部からの空気や異物の漏れこみなどによるポリマーの着色や物性低下も起こり易いことなど、高品質のポリカーボネートを長期間安定的に製造するためには、なお多くの解決すべき多くの課題がある。
本発明者らは、機械的攪拌を行わないで、溶融プレポリマーをワイヤーなどのガイドに沿わせて自重で落下させながら重合させるガイド接触流下式重合器を用いる方法を開発することによってこれらの課題を完全に解決できることを見出し、先に出願した(例えば、特許文献5〜12)。しかしながら、これらの方法には、芳香族ポリカーボネートを1時間あたり1トン以上生産できるような工業的製造法に関する具体的な方法の開示や示唆はなされていなかった。
さらに、エステル交換反応による芳香族ポリカーボネートを工業的規模で製造するためには、高純度ジアリールカーボネートを工業的規模で大量に入手することが必要である。芳香族ジヒドロキシ化合物、例えば、高純度ビスフェノールAは、工業的に大量に製造されており、これを入手することは容易であるが、高純度ジアリールカーボネートを工業的規模で大量に入手することは、不可能である。したがって、これを製造する必要がある。
ジアリールカーボネートの製法としては、芳香族モノヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応による方法が古くから知られており、最近も種々検討されている。しかしながら、この方法はホスゲン使用の問題に加え、この方法によって製造されたジアリールカーボネートには分離が困難な塩素系不純物が存在しており、そのままでは芳香族ポリカーボネートの原料として用いることはできない。なぜならば、この塩素系不純物は、極微量の塩基性触媒の存在下で行うエステル交換法芳香族ポリカーボネートの重合反応を著しく阻害し、たとえば、1ppmでもこのような塩素系不純物が存在すると殆ど重合を進行させることができない。そのため、エステル交換法芳香族ポリカーボネートの原料とするには、希アルカリ水溶液と温水による十分な洗浄と油水分離、蒸留などの多段階の面倒な分離・精製工程が必要であり、さらにこのような分離・精製工程での加水分解ロスや蒸留ロスのため収率が低下するなど、この方法を経済的に見合った工業的規模で実施するには多くの課題がある。
一方、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とのエステル交換反応による芳香族カーボネートの製造方法も知られている。しかしながら、これらのエステル交換反応は全て平衡反応であって、しかもその平衡が原系に極端に偏っていることに加えて反応速度が遅いことから、この方法によって芳香族カーボネート類を工業的に大量に製造するのは多大な困難を伴っていた。
これを改良するためにいくつかの提案がなされているが、その大部分は、反応速度を高めるための触媒開発に関するものである。このタイプのエステル交換反応用触媒として数多くの金属化合物が提案されている。しかしながら、触媒開発だけでは、不利な平衡の問題を解決できないので、大量生産を目的とする工業的製造法にするためには、反応方式の検討を含め、非常に多くの検討課題がある。
一方、反応方式を工夫することによって平衡をできるだけ生成系側にずらし、芳香族カーボネート類の収率を向上させる試みもなされている。例えば、ジメチルカーボネートとフェノールの反応において、副生してくるメタノールを共沸形成剤とともに共沸によって留去する方法(特許文献13)、副生してくるメタノールをモレキュラーシーブで吸着させて除去する方法(特許文献14)が提案されている。また、反応器の上部に蒸留塔を設けた装置によって、反応で副生してくるアルコール類を反応混合物から分離させながら同時に蒸発してくる未反応原料との蒸留分離を行う方法も提案されている(特許文献15)。
しかしながら、これらの反応方式は基本的にはバッチ方式か、切り替え方式である。触媒開発による反応速度の改良もこれらのエステル交換反応に対しては限度があり、反応速度が遅いことから、連続方式よりもバッチ方式の方が好ましいと考えられていたからである。これらのなかには、連続方式として蒸留塔を反応器の上部に備えた連続攪拌槽型反応器(CSTR)方式も提案されているが、反応速度が遅いことや反応器の気液界面が液容量に対して小さいことから反応率を高くできないなどの問題がある。したがって、これらの方法で芳香族カーボネートを連続的に大量に、長期間安定的に製造するという目的を達成することは困難であり、経済的に見合う工業的実施に至るには、なお多くの解決すべき課題が残されている。
本発明者等は、ジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物を連続的に多段蒸留塔に供給し、触媒を存在させた該塔内で連続的に反応させ、副生するアルコールを含む低沸点成分を蒸留によって連続的に抜き出すと共に、生成したアルキルアリールカーボネートを含む成分を塔下部より抜き出す反応蒸留法(特許文献16)、アルキルアリールカーボネートを連続的に多段蒸留塔に供給し、触媒を存在させた該塔内で連続的に反応させ、副生するジアルキルカーボネートを含む低沸成分を蒸留によって連続的に抜き出すと共に、生成したジアリールカーボネートを含む成分を塔下部より抜き出す反応蒸留法(特許文献17)、これらの反応を2基の連続多段蒸留塔を用いて行い、副生するジアルキルカーボネートを効率的にリサイクルさせながらジアリールカーボネートを連続的に製造する反応蒸留法(特許文献18)、ジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物等を連続的に多段蒸留塔に供給し、塔内を流下する液を蒸留塔の途中段及び/又は最下段に設けられたサイド抜き出し口より抜き出し、蒸留塔の外部に設けられた反応器へ導入して反応させた後に、該抜き出し口のある段よりも上部の段に設けられた循環用導入口へ導入することによって、該反応器内と該蒸留塔内の両方で反応を行う反応蒸留法(特許文献19)等、これらのエステル交換反応を連続多段蒸留塔内で反応と蒸留分離とを同時に行う反応蒸留法を開発し、これらのエステル交換反応に対して反応蒸留方式が有用であることを世界で初めて開示した。
本発明者等が提案したこれらの反応蒸留法は、芳香族カーボネート類を効率よく、かつ連続的に製造することを可能とする初めてのものであり、その後これらの開示に基づいて、2基の連続多段蒸留塔を用いてジアルキルカーボネートからジアリールカーボネートを製造する方法が提案されている(特許文献20〜26)。
また、本出願人は、反応蒸留方式において、多量の触媒を必要とせずに高純度芳香族カーボネートを長時間、安定に製造できる方法として、触媒成分を含む高沸点物質を作用物質と反応させた上で分離し、触媒成分をリサイクルする方法(特許文献27)や、反応系内の多価芳香族ヒドロキシ化合物を触媒金属に対して重量比で2.0以下に保ちながら行う方法(特許文献28)を提案した。さらに、本発明者等は、重合工程で副生するフェノールの70〜99質量%を原料として用いて、反応蒸留法でジフェニルカーボネートを製造しこれを芳香族ポリカーボネートの重合原料とする方法をも提案した(特許文献29)。
しかしながら、これら反応蒸留法による芳香族カーボネート類の製造を提案する全ての先行文献には、工業的規模の大量生産(例えば、1時間あたり1トン)を可能とする具体的な方法や装置の開示は全くなく、またそれらを示唆する記述もない。例えば、ジメチルカーボネートとフェノールから主としてジフェニルカーボネート(DPC)を製造するために開示された2基の反応蒸留塔の高さ(H及びH:cm)、直径(D及びD:cm)、段数(n及びn)と反応原料液導入量(Q及びQ:kg/hr)に関する記述は、表1のとおりである。
Figure 0005030788
すなわち、この反応を反応蒸留方式で実施するにあたり用いられた2基の連続多段蒸留塔の最大のものは、本出願人が特許文献27、28において開示したものである。このようにこの反応用に開示されている連続多段蒸留塔における各条件の最大値は、H=1200cm、H=600cm、D=20cm、D=25cm、n=n=50(この条件のみ特許文献22)、Q=86kg/hr、Q=31kg/hrであり、ジフェニルカーボネートの生産量は約6.7kg/hrに過ぎず、工業的規模の生産量ではなかった。
特公昭50−19600号公報(英国特許第1007302号明細書) 特公昭52−36159号公報 特公昭53−5718号公報(米国特許第3,888,826号明細書) 特開平2−153923号公報 特開平8−225641号公報 特開平8−225643号公報 特開平8−325373号公報 WO 97−22650号公報 特開平10−81741号 特開平10−298279号公報 WO 99/36457号公報 WO 99/64492号広報 特開昭54−48732号公報(西独特許公開公報第736063号明細書、米国特許第4252737号明細書) 特開昭58−185536号公報(米国特許第410464号明細書) 特開昭56−123948号公報(米国特許第4182726号明細書) 特開平3−291257号公報 特開平4−9358号公報 特開平4−211038号公報(WO 91/09832号公報、欧州特許0461274号明細書、米国特許第5210268号明細書) 特開平4−235951号公報 特開平6−157424号公報(欧州特許0582931号明細書、米国特許第5334742号明細書) 特開平6−184058号公報(欧州特許0582930号明細書、米国特許第5344954号明細書) 特開平9−40616号公報 特開平9−59225号公報 特開平9−176094号公報 WO 00/18720公報(米国特許第6093842号明細書) 特開2001−64235号公報 WO 97/11049公報(欧州特許0855384号明細書、米国特許第5872275号明細書) 特開平11−92429号公報(欧州特許1016648号明細書、米国特許第6262210号明細書) 特開平9−255772号公報(欧州特許0892001号明細書、米国特許第5747609号明細書)
本発明が解決しようとする課題は、ジアルキルカーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物から、着色がなく機械的物性に優れた高品質・高性能の芳香族ポリカーボネートを、工業的に大量(例えば、1時間あたり1トン以上)に長期間(例えば、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、より好ましくは5000時間以上)、安定的に製造できる具体的な方法を提供することにある。
本発明者等は、上記の課題を達成できる具体的な方法を見出すべき検討を重ねた結果、
本発明に到達した。すなわち、本発明は、
1. ジアルキルカーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物から芳香族ポリカーボネート
を連続的に製造し、高品質芳香族ポリカーボネートの工業的製造方法であって、
(I)ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とを原料とし、この原料を
触媒が存在する第1連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該第1塔内で反応と蒸留を同時
に行い、生成するアルコール類を含む第1塔低沸点反応混合物を該第1塔上部よりガス状
で連続的に抜出し、生成するアルキルアリールカーボネート類を含む第1塔高沸点反応混
合物を該第1塔下部より液状で連続的に抜出し、該第1塔高沸点反応混合物を触媒が存在
する第2連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該第2塔内で反応と蒸留を同時に行い、生
成するジアルキルカーボネート類を含む第2塔低沸点反応混合物を該第2塔上部よりガス
状で連続的に抜出し、生成するジアリールカーボネート類を含む第2塔高沸点反応混合物
を該第2塔下部より液状で連続的に抜出し、一方、ジアルキルカーボネート類を含む第2
塔低沸点反応混合物を第1連続多段蒸留塔内に連続的に供給することによって、ジアリー
ルカーボネートを連続的に製造する工程(I)と、
(II)該ジアリールカーボネートを精製し、高純度ジアリールカーボネートを取得する
精製工程(II)と、
(III)該芳香族ジヒドロキシ化合物と該高純度ジアリールカーボネートとを反応させ
て芳香族ポリカーボネートの溶融プレポリマーを製造し、該溶融プレポリマーをガイドの
表面に沿って流下せしめ、その流下中に該溶融プレポリマーの重合を行わせるガイド接触
流下式重合器を用いて芳香族ポリカーボネートを製造する工程(III)と、
(IV)工程(III)で副生する芳香族モノヒドロキシ化合物をジアリールカーボネー
ト製造工程(I)に循環する芳香族モノヒドロキシ化合物のリサイクル工程(IV)と、
を含み、
(a)該第1連続多段蒸留塔が、長さL1(cm)、内径D1(cm)の円筒形の胴部を
有し、内部に段数n1をもつインターナルを有する構造をしており、塔頂部又はそれに近
い塔の上部に内径d11(cm)のガス抜出し口、塔底部又はそれに近い塔の下部に内径
12(cm)の液抜出し口、該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間
部に1つ以上の第1の導入口、該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部
に1つ以上の第2の導入口を有するものであって、L1、D1、L1/D1、n1、D1
/d11、D1/d12 が、それぞれ式(1)〜(6)を満足するものであり、
1500 ≦ L1 ≦ 8000 式(1)
100 ≦ D1 ≦ 2000 式(2)
2 ≦ L1/D1 ≦ 40 式(3)
20 ≦ n1 ≦ 120 式(4)
5 ≦ D1/d11 ≦ 30 式(5)
3 ≦ D1/d12 ≦ 20 式(6)
(b)該第2連続多段蒸留塔が、長さL2(cm)、内径D2(cm)の円筒形の胴部を
有し、内部に段数n2をもつインターナルを有する構造をしており、塔頂部又はそれに近
い塔の上部に内径d21(cm)のガス抜出し口、塔底部又はそれに近い塔の下部に内径
22(cm)の液抜出し口、該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間
部に1つ以上の第3の導入口、該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部
に1つ以上の第4の導入口を有するものであって、L2、D2、L2/D2、n2、D2
/d21、D2/d22 が、それぞれ式(7)〜(12)を満足するものであり、
1500 ≦ L2 ≦ 8000 式(7)
100 ≦ D2 ≦ 2000 式(8)
2 ≦ L2/D2 ≦ 40 式(9)
10 ≦ n2 ≦ 80 式(10)
2 ≦ D2/d21 ≦ 15 式(11)
5 ≦ D2/d22 ≦ 30 式(12)
(c)該ガイド接触流下式重合器が、
(1)溶融プレポリマー受給口、多孔板、該溶融プレポリマーを多孔板を通して重合反応
ゾーンのガイドに供給するための溶融プレポリマー供給ゾーン、該多孔板と側面ケーシン
グとテーパー形の底部ケーシングとに囲まれた空間に該多孔板から下方に延びる複数のガ
イドが設けられた重合反応ゾーン、該重合反応ゾーンに設けられた真空ベント口、テーパ
ー形の底部ケーシングの最下部に設けられた芳香族ポリカーボネート排出口、及び該排出
口に接続された芳香族ポリカーボネート排出ポンプを有するものであって、
(2)該重合反応ゾーンの側面ケーシングの水平面における内部断面積A(m2)が、式
(13)を満足するものであって、
0.7 ≦ A ≦ 300 式(13)
(3)該A(m2)と、芳香族ポリカーボネート排出口の水平面における内部断面積B(
2)との比が、式(14)を満足するものであって、
20 ≦ A/B ≦ 1000 式(14)
(4)該重合反応ゾーンの底部を構成するテーパー形の底部ケーシングが、上部の側面ケ
ーシングに対してその内部において、角度C度で接続されており、該角度C度が式(15
)を満足するものであって、
120 ≦ C ≦ 165 式(15)
(5)該ガイドの長さ h(cm)が、式(16)を満足するものであって、
150 ≦ h ≦ 5000 式(16)
(6)該ガイド全体の外部総表面積S(m2)が式(17)を満足するものである、
2 ≦ S ≦ 50000 式(17)
ことを特徴とする高品質芳香族ポリカーボネートの工業的製造方法、
2. 製造される芳香族ポリカーボネートが1時間あたり1トン以上であることを特徴と
する前項1に記載の方法、
3. 該d11と該d12が式(18)を満足し、且つ該d21と該d22が式(19)
を満足することを特徴とする前項1又は2に記載の方法、
1 ≦ d12/d11 ≦ 5 式(18)
1 ≦ d21/d22 ≦ 6 式(19)、
4. 該第1連続多段蒸留塔のL1、D1、L1/D1、n1、D1/d11、D1/d
12 がそれぞれ、2000≦L1≦6000、 150≦D1≦1000、 3≦L1
/D1≦30、 30≦n1≦100、 8≦D1/d11≦25、 5≦D1/d12
≦18であり、且つ、該第2連続多段蒸留塔のL2、D2、L2/D2、n2、D2/d
21、D2/d22 がそれぞれ、2000≦L2≦6000、 150≦D2≦100
0、 3≦L2/D2≦30、 15≦n2≦60、 2.5≦D2/d21≦12、
7≦D2/d22≦25であることを特徴とする前項1ないし3のうち何れか一項に記
載の方法、
5. 該第1連続多段蒸留塔のL1、D1、L1/D1、n1、D1/d11、D1/d
12 がそれぞれ、2500≦L1≦5000、 200≦D1≦800、 5≦L1
1≦15、 40≦n1≦90、 10≦D1/d11≦25、 7≦D1/d12
15であり、且つ、該第2連続多段蒸留塔のL2、D2、L2/D2、n2、D2/d2
1、D2/d22 がそれぞれ、2500≦L2≦5000、 200≦D2≦800、
5≦L2/D2≦15、 20≦n2≦50、 3≦D2/d21≦10、 9≦D2
/d22≦20であることを特徴とする前項1ないし4のうち何れか一項に記載の方法、
6. 該第1連続多段蒸留塔及び該第2連続多段蒸留塔が、それぞれ、該インターナルと
してトレイ及び/又は充填物を有する蒸留塔であることを特徴とする前項1ないし5のう
ち何れか一項に記載の方法、
7. 該第1連続多段蒸留塔が、該インターナルとしてトレイを有する棚段式蒸留塔であ
り、該第2連続多段蒸留塔が、該インターナルとして充填物及びトレイの両方を有する蒸
留塔であることを特徴とする前項6記載の方法、
8. 該第1連続多段蒸留塔及び該第2連続多段蒸留塔の該トレイのそれぞれが、多孔板
部とダウンカマー部を有する多孔板トレイであることを特徴とする前項6又は7記載の方
法、
9. 該多孔板トレイが、該多孔板部の面積1m2あたり100〜1000個の孔を有す
るものであることを特徴とする前項8記載の方法、
10. 該多孔板トレイの孔1個あたりの断面積が、0.5〜5cm2であることを特徴
とする前項8又は9記載の方法、
11. 該第2連続多段蒸留塔が、該インターナルとして充填物を上部に、トレイを下部
に有する蒸留塔であることを特徴とする前項6又は7に記載の方法、
12. 該第2連続多段蒸留塔の該インターナルの該充填物が、1基又は2基以上の規則
充填物であることを特徴とする前項6ないし11のうち何れか一項に記載の方法、
13. 該第2連続多段蒸留塔の該規則充填物が、メラパック、ジェムパック、テクノパ
ック、フレキシパック、スルザーパッキング、グッドロールパッキング、グリッチグリッ
ドからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする前項12に記載の方法

14. ジアリールカーボネート精製工程(II)が、蒸留であることを特徴とする前項
1ないし13のうち何れか一項に記載の方法、
15. 重合反応ゾーンの側面ケーシングが、内径D(cm)、長さL(cm)の円筒形
であって、その下部に接続された底部ケーシングがテーパー形であり、該テーパー形のケ
ーシングの最下部の排出口が内径d(cm)の円筒形であって、D、L、d が、式(2
0)、(21)、(22)及び(23)を満足する、
100 ≦ D ≦ 1800 式(20)
5 ≦ D/d ≦ 50 式(21)
0.5 ≦ L/D ≦ 30 式(22)
h−20 ≦ L ≦ h+300 式(23)
ことを特徴とする前項1ないし14のうち何れか一項に記載の方法、
16. 該hが式(24)を満足する、
400 < h ≦ 2500 式(24)
ことを特徴とする前項1ないし15のうち何れか一項に記載の方法、
17. 1つの該ガイドが、外径 r(cm)の円柱状又は内側に溶融プレポリマーが入
らないようにしたパイプ状のものであって、r が式(25)を満足する、
0.1 ≦ r ≦ 1 式(25)
ことを特徴とする前項1ないし16のうち何れか一項に記載の方法、
18. 該ガイド接触流下式重合器2基以上を連結して重合を行うこと特徴とする前項1
ないし17のうち何れか一項に記載の方法、
19. 前項18記載の2基以上のガイド接触流下式重合器が、ガイド接触流下式第1重
合器、ガイド接触流下式第2重合器の2基の重合器であって、この順に重合度を上げてい
く方法において、該第1重合器のガイド全体の外部総表面積S1(m2)と該第2重合器
のガイド全体の外部総表面積S2(m2)とが式(26)を満足する、
1 ≦ S1/S2 ≦ 20 式(26)
ことを特徴とする前項18に記載の方法、
20. アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有量が、これらの金属元素に換算して、0.1〜0.01ppmであり、且つ、ハロゲン含有量が、1ppb以下である高品質芳香族ポリカーボネートを製造することを特徴とする前項1ないし19の何れか一項に記載の方法
21. 主鎖に対してエステル結合やエーテル結合等の異種結合を介して部分的に分岐している芳香族ポリカーボネートであって、該異種結合の含有量が、カーボネート結合に対して、0.05〜0.5モル%である高品質芳香族ポリカーボネートを製造することを特徴とする前項1ないし20のいずれか一項に記載の方法
を提供する。
本発明によれば、ジアルキルカーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物から芳香族ポリカーボネートを製造するにあたり、特定の構造を有する2基の反応蒸留塔を用いてジアリールカーボネートを製造する工程(I)、これを精製して高純度ジアリールカーボネートを取得する工程(II)、次いで、芳香族ジヒドロキシ化合物と該高純度ジアリールカーボネートとから得られる溶融プレポリマーを、特定の構造を有するガイド接触流下式重合器を用いて芳香族ポリカーボネートを製造する工程(III)、副生する芳香族モノヒドロキシ化合物を工程(I)にリサイクルする工程(IV)を含む本発明の方法を実施することによって、着色がなく機械的物性に優れた高品質・高性能の芳香族ポリカーボネートが、高い重合速度で、1時間当り1トン以上の工業的規模で製造できることが見出された。しかも分子量のバラツキが少なく、長期間、たとえば2000時間以上、好ましくは3000時間以上、さらに好ましくは5000時間以上、安定的に高品質芳香族ポリカーボネートが製造できることも見出された。従って、本発明は高品質芳香族ポリカーボネートの工業的製造方法として極めて優れた効果のある方法である。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明では、先ず、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物からジアリールカーボネートを工業的規模で連続的に製造する工程(I)が行われる。
工程(I)で用いられるジアルキルカーボネートとは、一般式(27)で表されるものである。
OCOOR 式(27)
ここで、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10の脂環族基、炭素数6〜10のアラールキル基を表す。このようなRとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル(各異性体)、アリル、ブチル(各異性体)、ブテニル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、シクロヘキシルメチル等のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等の脂環族基;ベンジル、フェネチル(各異性体)、フェニルプロピル(各異性体)、フェニルブチル(各異性体)、メチルベンジル(各異性体)等のアラールキル基が挙げられる。なお、これらのアルキル基、脂環族基、アラールキル基において、他の置換基、例えば低級アルキル基、低級アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン等で置換されていてもよいし、不飽和結合を有していてもよい。
このようなRを有するジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート(各異性体)、ジアリルカーボネート、ジブテニルカーボネート(各異性体)、ジブチルカーボネート(各異性体)、ジペンチルカーボネート(各異性体)、ジヘキシルカーボネート(各異性体)、ジヘプチルカーボネート(各異性体)、ジオクチルカーボネート(各異性体)、ジノニルカーボネート(各異性体)、ジデシルカーボネート(各異性体)、ジシクロペンチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジシクロヘプチルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジフェネチルカーボネート(各異性体)、ジ(フェニルプロピル)カーボネート(各異性体)、ジ(フェニルブチル)カーボネート(各異性体)ジ(クロロベンジル)カーボネート(各異性体)、ジ(メトキシベンジル)カーボネート(各異性体)、ジ(メトキシメチル)カーボネート、ジ(メトキシエチル)カーボネート(各異性体)、ジ(クロロエチル)カーボネート(各異性体)、ジ(シアノエチル)カーボネート(各異性体)等が挙げられる。
これらの中で、本発明において好ましく用いられるのは、Rがハロゲンを含まない炭素数4以下のアルキル基からなるジアルキルカーボネートであり、特に好ましいのはジメチルカーボネートである。また、好ましいジアルキルカーボネートのなかで、さらに好ましいのは、ハロゲンを実質的に含まない状態で製造されたジアルキルカーボネートであって、例えばハロゲンを実質的に含まないアルキレンカーボネートとハロゲンを実質的に含まないアルコールから製造されたものである。
工程(I)で用いられる芳香族モノヒドロキシ化合物とは、下記一般式(28)で表されるものであり、芳香族基に直接ヒドロキシル基が結合しているものであれば、どの様なものであってもよい。
ArOH 式(28)
ここでArは炭素数5〜30の芳香族基を表す。このようなArを有する芳香族モノヒドロキシ化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール(各異性体)、キシレノール(各異性体)、トリメチルフェノール(各異性体)、テトラメチルフェノール(各異性体)、エチルフェノール(各異性体)、プロピルフェノール(各異性体)、ブチルフェノール(各異性体)、ジエチルフェノール(各異性体)、メチルエチルフェノール(各異性体)、メチルプロピルフェノール(各異性体)、ジプロピルフェノール(各異性体)、メチルブチルフェノール(各異性体)、ペンチルフェノール(各異性体)、ヘキシルフェノール(各異性体)、シクロヘキシルフェノール(各異性体)等の各種アルキルフェノール類;メトキシフェノール(各異性体)、エトキシフェノール(各異性体)等の各種アルコキシフェノール類;フェニルプロピルフェノール(各異性体)等のアリールアルキルフェノール類;ナフトール(各異性体)及び各種置換ナフトール類;ヒドロキシピリジン(各異性体)、ヒドロキシクマリン(各異性体)、ヒドロキシキノリン(各異性体)等のヘテロ芳香族モノヒドロキシ化合物類等が用いられる。
これらの芳香族モノヒドロキシ化合物は、1種又はそれ以上の混合物として用いることができる。これらの芳香族モノヒドロキシ化合物の中で、本発明において好ましく用いられるのは、Arが炭素数6から10の芳香族基からなる芳香族モノヒドロキシ化合物であり、特に好ましいのはフェノールである。また、これらの芳香族モノヒドロキシ化合物の中で、本発明において好ましく用いられるのは、ハロゲンを実質的に含まないものである。したがって、本発明でいうジアリールカーボネートとは、一般的には下記化1で表されるものである。
Figure 0005030788
(式中、Ar、Arはそれぞれ1価の芳香族基を表す。)
Ar及びArは、1価の炭素環式又は複素環式芳香族基を表すが、このAr、Arにおいて、1つ以上の水素原子が、反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などによって置換されたものであってもよい。Ar、Arは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。1価の芳香族基Ar及びArの代表例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ピリジル基を挙げことができる。これらは、上述の1種以上の置換基で置換されたものでもよい。好ましいAr及びArとしては、それぞれ例えば、下記化2に示されるものなどが挙げられる。
Figure 0005030788
特に好ましいジアリールカーボネートは、下記化3で示される置換又は非置換のジフェニルカーボネートである。
Figure 0005030788
(式中、R及びR10は、各々独立に水素原子、炭素数1〜10を有するアルキル基、炭素数1〜10を有するアルコキシ基、環構成炭素数5〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を示し、p及びqは1〜5の整数で、pが2以上の場合には、各Rはそれぞれ異なるものであってもよいし、qが2以上の場合には、各R10は、それぞれ異なるものであってもよい。)
このジアリールカーボネート類の中でも、非置換のジフェニルカーボネートや、ジトリルカーボネート、ジ−t−ブチルフェニルカーボネートのような低級アルキル置換ジフェニルカーボネートなどの対称型ジアリールカーボネートが好ましいが、特に好ましいのは、もっとも簡単な構造のジフェニルカーボネートが好適である。これらのジアリールカーボネート類は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
工程(I)で原料として用いられるジアルキルカーボネートの芳香族モノヒドロキシ化合物に対する量比はモル比で、0.1〜10であることが好ましい。この範囲外では、目的とするのジアリールカーボネートの所定生産量に対して、残存する未反応の原料が多くなり、効率的でないし、またそれらを回収するために多くのエネルギーを要する。この意味で、このモル比は、0.5〜5がより好ましく、さらに好ましくは0.8〜3であり、最も好ましくは、1〜2である。
本発明においては、1時間あたり1トン以上の芳香族ポリカーボネートを連続的に製造するのであるが、そのためには1時間あたり約0.85トン以上の高純度ジアリールカーボネートを連続的に製造する必要がある。したがって、工程(I)において、連続的に供給される芳香族モノヒドロキシ化合物の最低量は、製造すべき芳香族ポリカーボネートの量(Pトン/hr)に対して、通常15Pトン/hrであり、好ましくは13Pトン/hr、より好ましくは10Pトン/hrである。さらに好ましくは8Pトン/hrよりも少なくできる。
なお、工程(I)において原料として用いられるジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物はそれぞれ純度の高いものであってもいいが、他の化合物を含むものであってもよく、例えば、第1連続多段蒸留塔及び/又は第2連続多段蒸留塔で生成する化合物や反応副生物を含むものであってもよい。工業的に実施する場合、これらの原料として、新規に反応系に導入されるジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物に加え、第1連続多段蒸留塔及び/又は第2連続多段蒸留塔から回収されたものをも使用することが好ましい。本発明の方法では、第2連続多段蒸留塔での低沸点反応混合物である塔頂成分が第1連続多段蒸留塔に供給される。この場合、第2塔低沸点反応混合物はそのままで第1連続多段蒸留塔に供給してもよいし、成分の一部を分離した後に供給してもよい。
したがって、工業的に実施する本発明においては、第1連続多段蒸留塔に供給される原料中には、アルコール類、アルキルアリールカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキルアリールエーテルなどが含まれているものが好ましく、さらには生成物であるアルキルアリールカーボネートやジアリールカーボネートのフリース転移生成物やその誘導体などの高沸点副生物を少量含むものであっても好ましく用いられる。本発明において、例えば、ジアルキルカーボネートとしてジメチルカーボネートを、芳香族モノヒドロキシ化合物としてフェノールを原料にして、メチルフェニルカーボネート及びジフェニルカーボネートを製造する場合、その原料中に反応生成物であるメチルアルコールや、メチルフェニルカーボネート及びジフェニルカーボネートを含んでいることが好ましく、さらには反応副生物であるアニソールやサリチル酸フェニル、サリチル酸メチルやこれらから誘導される高沸点副生物を少量含んでいてもよい。
さらに、工程(I)で使用される芳香族モノヒドロキシ化合物の大部分は、本発明の工程(III)で副生する芳香族モノヒドロキシ化合物から成っている。この副生芳香族モノヒドロキシ化合物は工程(IV)によって、工程(I)に循環されることが必要である。
工程(I)において製造されるジアリールカーボネートは、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とのエステル交換反応によって得られるが、このエステル交換反応には、ジアルキルカーボネートの1つ又は2つのアルコキシ基が芳香族モノヒドロキシ化合物のアリーロキシ基と交換されアルコール類を離脱する反応と、生成したアルキルアリールカーボネート2分子間のエステル交換反応である不均化反応によってジアリールカーボネートとジアルキルカーボネートに変換される反応が含まれている。工程(I)の第1連続多段蒸留塔においては、主としてアルキルアリールカーボネートが得られ、第2連続多段蒸留塔においては、主としてこのアルキルアリールカーボネートの不均化反応よって、ジアリールカーボネートとジアルキルカーボネートが得られる。工程(I)で得られたジアリールカーボネートは、ハロゲンを全く含まないため、本発明の芳香族ポリカーボネートを工業的に製造するときの原料として重要である。なぜならば、重合原料中にハロゲンがたとえば1ppmよりも少ない量であっても存在しておれば、重合反応を阻害するし、芳香族ポリカーボネートの安定製造を阻害するし、しかも生成した芳香族ポリカーボネートの物性低下や、着色の原因となるからである。
工程(I)の第1連続多段蒸留塔及び/又は第2連続多段蒸留塔で使用される触媒としては、例えば下記の化合物から選択される;
<鉛化合物>
PbO、PbO2、Pb34等の酸化鉛類;
PbS、Pb2S等の硫化鉛類;
Pb(OH)2、Pb22(OH)2等の水酸化鉛類;
Na2PbO2、K2PbO2、NaHPbO2、KHPbO2等の亜ナマリ酸塩類;
Na2PbO3、Na22PbO4、K2PbO3、K2[Pb(OH)6]、K4PbO4、Ca2PbO4、CaPbO3等の鉛酸塩類;
PbCO3、2PbCO3・Pb(OH)2等の鉛の炭酸塩及びその塩基性塩類;
Pb(OCOCH32、Pb(OCOCH34、Pb(OCOCH32・PbO・3H2O等の有機酸の鉛塩及びその炭酸塩や塩基性塩類;
Bu4Pb、Ph4Pb、Bu3PbCl、Ph3PbBr、Ph3Pb(又はPh6Pb2)、Bu3PbOH、Ph3PbO等の有機鉛化合物類(Buはブチル基、Phはフェニル基を示す。);
Pb(OCH32、(CH3O)Pb(OPh)、Pb(OPh)2等のアルコキシ鉛類、アリールオキシ鉛類;
Pb−Na、Pb−Ca、Pb−Ba、Pb−Sn、Pb−Sb等の鉛の合金類;
ホウエン鉱、センアエン鉱等の鉛鉱物類、及びこれらの鉛化合物の水和物;
<銅族金属の化合物>
CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、CuI2、Cu(OAc)2、Cu(acac)2、オレイン酸銅、Bu2Cu、(CH3O)2Cu、AgNO3、AgBr、ピクリン酸銀、AgC66ClO4、[AuC≡C−C(CH33]n、[Cu(C78)Cl]4等の銅族金属の塩及び錯体(acacはアセチルアセトンキレート配位子を表す。);
<アルカリ金属の錯体>
Li(acac)、LiN(C492等のアルカリ金属の錯体;
<亜鉛の錯体>
Zn(acac)2等の亜鉛の錯体;
<カドミウムの錯体>
Cd(acac)2等のカドミウムの錯体;
<鉄族金属の化合物>
Fe(C108)(CO)5、Fe(CO)5、Fe(C46)(CO)3、Co(メシチレン)2(PEt2Ph)2、CoC55(CO)7、Ni−π−C55NO、フェロセン等の鉄族金属の錯体;
<ジルコニウム錯体>
Zr(acac)4,ジルコノセン等のジルコニウムの錯体;
<ルイス酸類化合物>
AlX3、TiX3,TiX4、VOX3、VX5、ZnX2、FeX3、SnX4 (ここでXはハロゲン、アセトキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。)等のルイス酸及びルイス酸を発生する遷移金属化合物;
<有機スズ化合物>
(CH33SnOCOCH3、(C253SnOCOC65、Bu3SnOCOCH3、Ph3SnOCOCH3、Bu2Sn(OCOCH32、Bu2Sn(OCOC11232、Ph3SnOCH3、(C253SnOPh、Bu2Sn(OCH32、Bu2Sn(OC252、Bu2Sn(OPh)2、Ph2Sn(OCH32、(C253SnOH、Ph3SnOH、Bu2SnO、(C8172SnO、Bu2SnCl2、BuSnO(OH)等の有機スズ化合物;
等の金属含有化合物が触媒として用いられる。これらの触媒は多段蒸留塔内に固定された固体触媒であってもいいし、反応系に溶解する可溶性触媒であってもよい。
もちろん、これらの触媒成分が反応系中に存在する有機化合物、例えば、脂肪族アルコール類、芳香族モノヒドロキシ化合物類、アルキルアリールカーボネート類、ジアリールカーボネート類、ジアルキルカーボネート類等と反応したものであってもよいし、反応に先立って原料や生成物で加熱処理されたものであってもよい。
工程(I)を反応系に溶解する可溶性触媒で実施する場合は、これらの触媒は、反応条件において反応液への溶解度の高いものであることが好ましい。この意味で好ましい触媒としては、例えば、PbO、Pb(OH)2、Pb(OPh)2;TiCl4、Ti(OMe)、(MeO)Ti(OPh)、(MeO)Ti(OPh)、(MeO)Ti(OPh)、Ti(OPh)4;SnCl4、Sn(OPh)4、Bu2SnO、Bu2Sn(OPh)2;FeCl3、Fe(OH)3、Fe(OPh)3等、又はこれらをフェノール又は反応液等で処理したもの等が挙げられる。第1連続多段蒸留塔で用いられる触媒と第2連続多段蒸留塔で用いられる触媒は同じ種類であっても、異なる種類のものであってもよい。
工程(I)において用いられる該第1連続多段蒸留塔とは、長さL(cm)、内径D(cm)の円筒形の胴部を有し、内部に段数nをもつインターナルを有する構造をしており、塔頂部又はそれに近い塔の上部に内径d11(cm)のガス抜出し口、塔底部又はそれに近い塔の下部に内径d12(cm)の液抜出し口、該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間部に1つ以上の第1の導入口、該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部に1つ以上の第2の導入口を有するものであって、L、D、L/D、n、D/d11、D/d12 が、それぞれ、式(1)〜(6)を満足するものであることが必要である;
1500 ≦ L ≦ 8000 式(1)
100 ≦ D ≦ 2000 式(2)
2 ≦ L/D ≦ 40 式(3)
20 ≦ n ≦ 120 式(4)
5 ≦ D/d11 ≦ 30 式(5)
3 ≦ D/d12 ≦ 20 式(6)。
また、工程(I)において用いられる第2連続多段蒸留塔とは、長さL(cm)、内径D(cm)の円筒形の胴部を有し、内部に段数nをもつインターナルを有する構造をしており、塔頂部又はそれに近い塔の上部に内径d21(cm)のガス抜出し口、塔底部又はそれに近い塔の下部に内径d22(cm)の液抜出し口、該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間部に1つ以上の第3の導入口、該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部に1つ以上の第4の導入口を有するものであって、L、D、L/D、n、D/d21、D/d22 が、それぞれ式(7)〜(12)を満足するものであることが必要である;
1500 ≦ L ≦ 8000 式(7)
100 ≦ D ≦ 2000 式(8)
2 ≦ L/D ≦ 40 式(9)
10 ≦ n ≦ 80 式(10)
2 ≦ D/d21 ≦ 15 式(11)
5 ≦ D/d22 ≦ 30 式(12)。
式(1)〜(12)の全てを同時に満足する第1連続多段蒸留塔及び第2連続多段蒸留塔を用いることによって、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とから、ジアリールカーボネートを1時間あたり約0.85トン以上、好ましくは1トン以上の工業的規模で、高選択率・高生産性で、例えば2000時間以上、好ましくは3000時間以上、より好ましくは5000時間以上の長期間、安定的に製造できることが見出されたのである。本発明の方法を実施することによって、このような優れた効果を有する工業的規模での芳香族カーボネートの製造が可能になった理由は明らかではないが、式(1)〜(12)の条件が組み合わさった時にもたらされる複合効果のためであると推定される。なお、工程(I)で用いる連続多段蒸留塔を構成する各々の要因の好ましい範囲は下記に示される。
(cm)及びL(cm)がそれぞれ1500より小さいと、反応率が低下するため目的とする生産量を達成できないし、目的の生産量を達成できる反応率を確保しつつ設備費を低下させるには、L及びLを、それぞれ、8000以下にすることが必要である。より好ましいL(cm)及びL(cm)の範囲は、それぞれ、2000≦L ≦6000 及び2000≦L≦6000 であり、さらに好ましくは、2500≦L≦5000 及び2500≦L≦5000 である。
(cm)及びD(cm)がそれぞれ100よりも小さいと、目的とする生産量を達成できないし、目的の生産量を達成しつつ設備費を低下させるには、D及びDをそれぞれ2000以下にすることが必要である。より好ましいD(cm)及びD(cm)の範囲は、それぞれ150≦D≦1000 及び150≦D≦1000 であり、さらに好ましくは、それぞれ200≦D≦800 及び200≦D≦800である。なお、第1連続多段蒸留塔及び第2連続多段蒸留塔において、D及びDが上記の範囲にある限り、塔の上部から下部までそれぞれ同じ内径であってもよいし、部分的に内径が異なっていてもよい。例えば、これらの連続多段蒸留塔において、塔上部の内径が塔下部の内径よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
/D及び L/Dが、それぞれ2より小さい時や40より大きい時は安定運転が困難となり、特に40より大きいと塔の上下における圧力差が大きくなりすぎるため、長期安定運転が困難となるだけでなく、塔下部での温度を高くしなければならないため、副反応が起こりやすくなり選択率の低下をもたらす。より好ましいL/D及びL/Dの範囲はそれぞれ、3≦L/D≦30 及び3≦L/D≦30 であり、さらに好ましくは、5≦L/D≦15 及び5≦L/D≦15である。
が20より小さいと反応率が低下するため第1連続多段蒸留塔での目的とする生産量を達成できないし、目的の生産量を達成できる反応率を確保しつつ設備費を低下させるには、nを120以下にすることが必要である。さらにnが120よりも大きいと塔の上下における圧力差が大きくなりすぎるため、第1連続多段蒸留塔の長期安定運転が困難となるだけでなく、塔下部での温度を高くしなければならないため、副反応が起こりやすくなり選択率の低下をもたらす。より好ましいnの範囲は、30≦n≦100 であり、さらに好ましくは、40≦n≦90 である。
また、nが10より小さいと反応率が低下するため第2連続多段蒸留塔での目的とする生産量を達成できないし、目的の生産量を達成できる反応率を確保しつつ設備費を低下させるには、nを80以下にすることが必要である。さらにnが80よりも大きいと塔の上下における圧力差が大きくなりすぎるため、第2連続多段蒸留塔の長期安定運転が困難となるだけでなく、塔下部での温度を高くしなければならないため、副反応が起こりやすくなり選択率の低下をもたらす。より好ましいnの範囲は、15≦n≦60 であり、さらに好ましくは、20≦n≦50 である。
/d11が5より小さいと第1連続多段蒸留塔の設備費が高くなるだけでなく大量のガス成分が系外に出やすくなるため、第1連続多段蒸留塔の安定運転が困難になり、30よりも大きいとガス成分の抜出し量が相対的に小さくなり、安定運転が困難になるだけでなく、反応率の低下をもたらす。より好ましい D/d11の範囲は、8≦D/d11≦25 であり、さらに好ましくは、10≦D/d11≦20 である。また、D/d21が2より小さいと第2連続多段蒸留塔の設備費が高くなるだけでなく大量のガス成分が系外に出やすくなるため、第2連続多段蒸留塔の安定運転が困難になり、15よりも大きいとガス成分の抜出し量が相対的に小さくなり、安定運転が困難になるだけでなく、反応率の低下をもたらす。より好ましい D/d21の範囲は、5≦D/d21≦12 であり、さらに好ましくは、3≦D/d21≦10 である。
/d12が3より小さいと第1連続多段蒸留塔の設備費が高くなるだけでなく液抜出し量が相対的に多くなり、第1連続多段蒸留塔の安定運転が困難になり、20よりも大きいと液抜出し口や配管での流速が急激に速くなりエロ−ジョンを起こしやすくなり装置の腐食をもたらす。より好ましいD/d12の範囲は、5≦D/d12≦18 であり、さらに好ましくは、7≦D/d12≦15 である。また、D/d22が5より小さいと第2連続多段蒸留塔の設備費が高くなるだけでなく液抜出し量が相対的に多くなり、第2連続多段蒸留塔の安定運転が困難になり、30よりも大きいと液抜出し口や配管での流速が急激に速くなりエロ−ジョンを起こしやすくなり装置の腐食をもたらす。より好ましいD/d22の範囲は、7≦D/d22≦25 であり、さらに好ましくは、9≦D/d22≦20 である。
さらに、工程(I)では、該d11と該d12が式(18)を満足し、且つ該d21と該d22が式(19)を満足する場合、さらに好ましいことがわかった。
1≦d12/d11≦5 式(18)
1≦d21/d22≦6 式(19)
工程(I)でいう長期安定運転とは、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、より好ましくは5000時間以上、フラッディングや、配管のつまりやエロージョンなどがなく、運転条件に基づいた定常状態で運転が継続でき、高選択率を維持しながら、所定量のジアリールカーボネートが製造されていることを意味する。
工程(I)では、1時間あたり好ましくは1トン以上の高生産性でジアリールカーボネートを高選択率で長期間安定的に生産することを特徴としているが、より好ましくは1時間あたり2トン以上、さらに好ましくは1時間あたり3トン以上のジアリールカーボネートを生産することにある。また、工程(I)では、第1連続多段蒸留塔のL、D、L/D、n、D/d11、D/d12 が、それぞれ、2000≦L≦6000、 150≦D≦1000、 3≦L/D≦30、 30≦n≦100、 8≦D/d11≦25、 5≦D/d12≦18であって、第2連続多段蒸留塔のL、D、L/D、n、D/d21、D/d22 が、それぞれ、2000≦L≦6000、 150≦D≦1000、 3≦L/D≦30、 15≦n≦60、 2.5≦D/d21≦12、7≦D/d22≦25の場合は、1時間あたり2トン以上、好ましくは1時間あたり2.5トン以上、より好ましくは1時間あたり3トン以上のジアリールカーボネートを製造することを特徴とするものである。
さらに、工程(I)では、第1連続多段蒸留塔のL、D、L/D、n、D/d11、D/d12 がそれぞれ、2500≦L≦5000、 200≦D≦800、 5≦L/D≦15、 40≦n≦90、 10≦D/d11≦25、 7≦D/d12≦15であって、第2連続多段蒸留塔のL、D、L/D、n、D/d21、D/d22 がそれぞれ、2500≦L≦5000、 200≦D≦800、 5≦L/D≦10、 20≦n≦50、 3≦D/d21≦10、 9≦D/d22≦20の場合は、1時間あたり3トン以上、好ましくは1時間あたり3.5トン以上、より好ましくは1時間あたり4トン以上のジアリールカーボネートを製造することを特徴とするものである。
工程(I)でいうジアリールカーボネートの選択率とは、反応した芳香族モノヒドロキシ化合物に対するものであって、工程(I)では通常95%以上の高選択率であり、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上の高選択率を達成することができる。
工程(I)で用いられる第1連続多段蒸留塔及び第2連続多段蒸留塔は、インターナルとしてトレイ及び/又は充填物を有する蒸留塔であることが好ましい。本発明でいうインターナルとは、蒸留塔において実際に気液の接触を行わせる部分のことを意味する。このようなトレイとしては、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、向流トレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラックトレイ等が好ましく、充填物としては、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック等の不規則充填物やメラパック、ジェムパック、テクノパック、フレキシパック、スルザーパッキング、グッドロールパッキング、グリッチグリッド等の規則充填物が好ましい。トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせ持つ多段蒸留塔も用いることができる。なお、本発明でいう「インターナルの段数n」とは、トレイの場合はトレイの数を意味し、充填物の場合は、理論段数を意味する。したがって、トレイ部と充填物の充填された部分とを合わせてもつ多段蒸留塔の場合、nはトレイの数と理論段数の合計である。
工程(I)の第1連続多段蒸留塔においては、主としてジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物からアルキルアリールカーボネートを生成させる反応が行われるが、この反応は平衡定数が極端に小さく、しかも反応速度が遅いので、反応蒸留に用いる第1連続多段蒸留塔としては、インターナルがトレイである棚段式蒸留塔がより好ましいことが見出された。また、第2連続多段蒸留塔においては主として、該アルキルアリールカーボネートを不均化させる反応が行われるが、この反応も平衡定数が小さく、しかも反応速度が遅い。しかしながら、反応蒸留に用いる第2連続多段蒸留塔としては、インターナルが充填物及びトレイの両方を有する蒸留塔がより好ましいことが見出された。さらに、第2連続多段蒸留塔としては、上部に充填物、下部にトレイを設置したものが好ましいことも見出された。第2連続多段蒸留塔の該充填物は規則充填物が好ましく、規則充填物のなかでもメラパックが特に好ましいことも見出された。
さらに、第1連続多段蒸留塔及び第2連続多段蒸留塔に、それぞれ設置される該トレイが多孔板部とダウンカマー部を有する多孔板トレイが機能と設備費との関係で特に優れていることが見出された。そして、該多孔板トレイが該多孔板部の面積1mあたり100〜1000個の孔を有していることが好ましいことも見出された。より好ましい孔数は該面積1mあたり120〜900個であり、さらに好ましくは、150〜800個である。また、該多孔板トレイの孔1個あたりの断面積が0.5〜5cmであることが好ましいことも見出された。より好ましい孔1個あたりの断面積は、0.7〜4cmであり、さらに好ましくは0.9〜3cmである。さらには、該多孔板トレイが該多孔板部の面積1mあたり100〜1000個の孔を有しており、且つ、孔1個あたりの断面積が0.5〜5cmである場合、特に好ましいことが見出された。連続多段蒸留塔に上記の条件を付加することによって、本発明の課題が、より容易に達成されることが判明したのである。
工程(I)を実施する場合、原料であるジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とを触媒が存在する第1連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該第1塔内で反応と蒸留を同時に行い、生成するアルコール類を含む第1塔低沸点反応混合物を該第1塔上部よりガス状で連続的に抜出し、生成するアルキルアリールカーボネート類を含む第1塔高沸点反応混合物を該第1塔下部より液状で連続的に抜出し、該第1塔高沸点反応混合物を触媒が存在する第2連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該第2塔内で反応と蒸留を同時に行い、生成するジアルキルカーボネート類を含む第2塔低沸点反応混合物を該第2塔上部よりガス状で連続的に抜出し、生成するジアリールカーボネート類を含む第2塔高沸点反応混合物を該第2塔下部より液状で連続的に抜出し、一方、ジアルキルカーボネート類を含む第2塔低沸点反応混合物を第1連続多段蒸留塔内に連続的に供給することによって、ジアリールカーボネートが連続的に製造される。この原料中には、反応生成物であるアルコール類、アルキルアリールカーボネート、ジアリールカーボネートやアルキルアリールエーテルや高沸点化合物などの反応副生物が含まれていてもいいことは前述のとおりである。他の工程での分離・精製にかかる設備、費用のことを考慮すれば、実際に工業的に実施する本発明の場合は、これらの化合物を少量含んでいることが好ましい。
工程(I)において、原料であるジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物を第1連続多段蒸留塔内に連続的に供給するには、該第1蒸留塔の上部のガス抜出し口よりも下部であるが塔の上部又は中間部に設置された1箇所又は数箇所の導入口から、液状及び/又はガス状で供給してもよいし、芳香族モノヒドロキシ化合物を多く含む原料を該第1蒸留塔の上部の導入口から液状で供給し、ジアルキルカーボネートを多く含む原料を該第1蒸留塔の下部の液抜出し口よりも上部であって塔の下部に設置された導入口からガス状で供給することも好ましい方法である。
また、工程(I)においては、第1連続多段蒸留塔下部より連続的に抜き出されるアルキルアリールカーボネート類を含む第1塔高沸点反応混合物が第2連続多段蒸留塔に連続的に供給されるが、その供給位置は第2蒸留塔の上部のガス抜出し口よりも下部であるが塔の上部又は中間部に設置された1箇所又は数箇所の導入口から、液状及び/又はガス状で供給することが好ましい。また、本発明の好ましい実施態様では、第2蒸留塔として、上部に充填物部、下部にトレイ部を有する蒸留塔を用いる場合、導入口の少なくとも1箇所は充填物部とトレイ部との間に設置されることが好ましい。さらに、充填物が2基以上の複数の規則充填物からなっている場合は、これらの複数の規則充填物を構成する間隔に導入口を設置することも好ましい方法である。
また、工程(I)において第1連続多段蒸留塔及び第2連続多段蒸留塔の塔頂ガス抜き出し成分をそれぞれ凝縮した後、その一部をそれぞれの蒸留塔上部にもどす還流操作を実施することも好ましい方法である。この場合、第1連続多段蒸留塔の還流比は0〜10、であり、第2連続多段蒸留塔の還流比は0.01〜10の範囲、好ましくは0.08〜5、より好ましくは、0.1から2の範囲である。第1連続多段蒸留塔では還流操作をしない還流比0も好ましい実施態様である。
工程(I)において、第1連続多段蒸留塔内に触媒を存在させる方法はどのようなものであってもよいが、触媒が反応液に不溶解性の固体状の場合は、第1連続多段蒸留塔内の段に設置する方法や、充填物状にして設置する方法などによって塔内に固定させることが好ましい。また、原料や反応液に溶解する触媒の場合は、該第1蒸留塔の中間部より上部の位置から蒸留塔内に供給することが好ましい。この場合、原料又は反応液に溶解させた触媒液を原料と一緒に導入してもよいし、原料とは別の導入口からこの触媒液を導入してもよい。本発明の第1連続多段蒸留塔で用いる触媒の量は、使用する触媒の種類、原料の種類やその量比、反応温度並びに反応圧力などの反応条件の違いによっても異なるが、原料の合計質量に対する割合で表して、通常0.0001〜30質量%、好ましくは0.0005〜10質量%、より好ましくは0.001〜1質量%で使用される。
また、工程(I)において、第2連続多段蒸留塔内に触媒を存在させる方法はどのようなものであってもよいが、触媒が反応液に不溶解性の固体状の場合は、第2連続多段蒸留塔内の段に設置する方法や、充填物状にして設置する方法などによって塔内に固定させることが好ましい。また、原料や反応液に溶解する触媒の場合は、該第2蒸留塔の中間部より上部の位置から蒸留塔内に供給することが好ましい。この場合、原料又は反応液に溶解させた触媒液を原料と一緒に導入してもよいし、原料とは別の導入口からこの触媒液を導入してもよい。本発明の第2連続多段蒸留塔で用いる触媒の量は、使用する触媒の種類、原料の種類やその量比、反応温度並びに反応圧力などの反応条件の違いによっても異なるが、原料の合計質量に対する割合で表して、通常0.0001〜30質量%、好ましくは0.0005〜10質量%、より好ましくは0.001〜1質量%で使用される。
工程(I)においては、第1連続多段蒸留塔で用いる触媒と第2連続多段蒸留塔で用いる触媒は、同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよいが、好ましくは、同じ種類の触媒を用いることである。さらに好ましいのは、同じ種類であって、両方の反応液に溶解することのできる触媒である。この場合、触媒は、通常、第1連続多段蒸留塔の高沸点反応混合物中に溶解した状態で、アルキルアリールカーボネート等とともに該第1蒸留塔の下部から抜き出され、そのまま第2連続多段蒸留塔に供給されるので、好ましい実施態様である。なお、必要に応じて第2連続多段蒸留塔に新たに触媒を追加することも可能である。
工程(I)で行われるエステル交換反応の反応時間は第1連続多段蒸留塔内及び第2連続多段蒸留塔内でのそれぞれの反応液の平均滞留時間に相当すると考えられるが、これはそれぞれの該蒸留塔のインターナルの形状や段数、原料供給量、触媒の種類や量、反応条件などによって異なるが、第1連続多段蒸留塔内及び第2連続多段蒸留塔内のそれぞれにおいて、通常0.01〜10時間、好ましくは0.05〜5時間、より好ましくは0.1〜3時間である。
第1連続多段蒸留塔の反応温度は、用いる原料化合物の種類や触媒の種類や量によって異なるが、通常、100〜350℃の範囲である。反応速度を高めるためには反応温度を高くすることが好ましいが、反応温度が高いと副反応も起こりやすくなり、例えばアルキルアリールエーテルなどの副生が増えるので好ましくない。このような意味で、第1連続多段蒸留塔での好ましい反応温度は130〜280℃、より好ましくは150〜260℃、さらに好ましくは、180〜250℃の範囲である。
第2連続多段蒸留塔の反応温度は、用いる原料化合物の種類や触媒の種類や量によって異なるが、通常100〜350℃の範囲である。反応速度を高めるためには反応温度を高くすることが好ましいが、反応温度が高いと副反応も起こりやすくなり、例えばアルキルアリールエーテルや、原料や生成物であるアルキルアリールカーボネートやジアリールカーボネートのフリース転移反応生成物やその誘導体などの副生が増えるので好ましくない。このような意味で、第2連続多段蒸留塔での好ましい反応温度は130〜280℃、より好ましくは150〜260℃、さらに好ましくは180〜250℃の範囲である。
また、第1連続多段蒸留塔の反応圧力は、用いる原料化合物の種類や組成、反応温度などにより異なるが、第1連続多段蒸留塔では減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、通常塔頂圧力が0.1〜2×10Pa、好ましくは10〜10Pa、より好ましくは2×10〜5×10の範囲で行われる。
第2連続多段蒸留塔の反応圧力は、用いる原料化合物の種類や組成、反応温度などにより異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、通常塔頂圧力が0.1〜2×10Pa、好ましくは、10〜10Pa、より好ましくは5×10〜10の範囲で行われる。
なお、工程(I)における第1連続多段蒸留塔として、2基以上の蒸留塔を用いることもできる。この場合、2基以上の蒸留塔を直列に連結することも、並列に連結することも、さらに直列と並列を組み合わせて連結することも可能である。また、工程(I)における第2連続多段蒸留塔として、2基以上の蒸留塔を用いることもできる。この場合、2基以上の蒸留塔を直列に連結することも、並列に連結することも、さらに直列と並列を組み合わせて連結することも可能である。
工程(I)で用いられる第1連続多段蒸留塔及び第2連続多段蒸留塔を構成する材料は、主に炭素鋼、ステンレススチールなどの金属材料であるが、製造する芳香族カーボネートの品質の面からは、ステンレススチールが好ましい。
工程(I)の第2連続多段蒸留塔の塔下部より液状で連続的に抜出された第2塔高沸点反応混合物は、ジアリールカーボネートが主成分であるが、通常、未反応アルキルアリールカーボネート、少量の未反応原料、少量の高沸点副生物等を含んでおり、均一系触媒を用いた場合は、この触媒成分も含まれている。従って、第2塔高沸点反応混合物から、高純度ジアリールカーボネートを取得するための精製工程(II)を実施することが必要である。工程(II)は、第2塔高沸点反応混合物から高純度ジアリールカーボネートが取得できる方法であれば、どのような方法でもよい。たとえば、蒸留及び/又は再結晶などの方法である。このなかで、本発明では、工程(II)を蒸留法で行うことが特に好ましいことが見出された。
さらに、本発明では、工程(II)を2基の蒸留塔(高沸点物質分離塔、サイドカット抜き出し口を有するジアリールカーボネート精製塔)を用い、該高沸点物質分離塔において、未反応アルキルアリールカーボネート、少量の未反応原料、ジアリールカーボネートを主成分とする塔頂成分と、少量の高沸点副生物等及び/又は触媒成分を主成分とする塔底成分とに連続的に分離するとともに、該高沸点物質分離塔の塔頂成分をジアリールカーボネート精製塔に連続的に供給し、該ジアリールカーボネート精製塔において、塔頂成分、サイドカット成分、及び塔底成分の3つの成分に連続的に分離し、サイドカット成分として高純度ジアリールカーボネートを取得する蒸留分離法を採用することが、さらに好ましいことが見出された。
なお、該該高沸点物質分離塔の塔底成分の全量又は一部は、工程(I)の触媒成分として、第1連続多段蒸留塔及び/又は第2連続多段蒸留塔に循環再使用することは好ましい。また、該ジアリールカーボネート精製塔の塔頂成分には、通常、少量のジアリールカーボネートが含まれるので、この塔頂成分をそのままで、又はその塔頂成分に含まれる低沸点成分を別の蒸留塔で分離を行なった後その蒸留塔の塔底成分の全部又は一部を、高沸点物質分離塔及び/又はジアリールカーボネート精製塔に戻すことによって、高純度ジアリールカーボネートとして回収することも好ましい方法である。
工程(II)においては、通常99.9%以上、好ましくは99.99%以上の高純度ジアリールカーボネートが取得される。そして、高沸点副生物の含有量は、通常100ppm以下であり、好ましくは50ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。また、本発明では、通常、ハロゲンを含まない原料と触媒を使用するので、取得される高純度ジアリールカーボネートのハロゲン含有量は0.1ppm以下であり、好ましくは10ppb以下であり、さらに好ましくは1ppb以下である。
続いて、工程(III)が実施される。すなわち、芳香族ジヒドロキシ化合物と該高純度ジアリールカーボネートとを反応させて芳香族ポリカーボネートの溶融プレポリマーを製造し、該溶融プレポリマーをガイドの表面に沿って流下せしめ、その流下中に該溶融プレポリマーの重合を行わせるガイド接触流下式重合器を用いて芳香族ポリカーボネートを製造する工程である。
工程(III)において、用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物とは、一般式(29)で示される化合物である。
HO−Ar−OH 式(29)
(式中、Arは2価の芳香族基を表す。)
2価の芳香族基Arは、好ましくは例えば、一般式(30)式で示されるものである。
−Ar−Y−Ar− 式(30)
(式中、Ar及びArは、各々独立に、炭素数5〜70を有する2価の炭素環式又は複素環式芳香族基を表し、Yは炭素数1〜30を有する2価のアルカン基を表す。)
2価の芳香族基Ar、Arにおいて、1つ以上の水素原子が、反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などによって置換されたものであってもよい。複素環式芳香族基の好ましい具体例としては、1ないし複数の環形成窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する芳香族基を挙げることができる。2価の芳香族基Ar、Arは、例えば、置換又は非置換のフェニレン、置換又は非置換のビフェニレン、置換又は非置換のピリジレンなどの基を表す。ここでの置換基は前述のとおりである。
2価のアルカン基Yは、例えば、下記式で示される有機基である。
Figure 0005030788
(式中、R、R、R、Rは、各々独立に水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、環構成炭素数5〜10のシクロアルキル基、環構成炭素数5〜10の炭素環式芳香族基、炭素数6〜10の炭素環式アラルキル基を表す。kは3〜11の整数を表し、R及びRは、各Xについて個々に選択され、お互いに独立に、水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xは炭素を表す。また、R、R、R、R、R、Rにおいて、一つ以上の水素原子が反応に悪影響を及ぼさない範囲で他の置換基、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基等によって置換されたものであってもよい。)
このような2価の芳香族基Arとしては、例えば、下記式で示されるものが挙げられる。
Figure 0005030788
(式中、R、Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、環構成炭素数5〜10のシクロアルキル基又はフェニル基であって、m及びnは1〜4の整数で、mが2〜4の場合には各Rは、それぞれ同一でも異なるものであってもよいし、nが2〜4の場合にはRは、それぞれ同一でも異なるものであってもよい。)
さらに、2価の芳香族基Arは、次式で示されるものであってもよい。
−Ar−Z−Ar
(式中、Ar及びArは前述の通りで、Zは単結合又は−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−COO−、−CON(R)−などの2価の基を表す。ただし、Rは前述のとおりである。)
このような2価の芳香族基Arとしては、例えば、下記式に示されるものが挙げられる。
Figure 0005030788
(式中、R、R、m及びnは、前述のとおりである。)
さらに、2価の芳香族基Arの具体例としては、置換又は非置換のフェニレン、置換又は非置換のナフチレン、置換又は非置換のピリジレン等が挙げられる。
本発明で用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物は、単一種類でも2種類以上でも構わない。芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的な例としては、ビスフェノールAが挙げられる。また、本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、分岐構造を導入するための3価の芳香族トリヒドロキシ化合物を併用してもよい。
工程(III)における芳香族ジヒドロキシ化合物と高純度ジアリールカーボネートとの使用割合(仕込み比率)は、用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートの種類や、重合温度その他の重合条件によって異なるが、ジアリールカーボネートは芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、通常0.9〜2.5モル、好ましくは0.95〜2.0モル、より好ましくは0.98〜1.5モルの割合で用いられる。
工程(III)における、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとから製造された溶融状態のプレポリマー(以下、溶融プレポリマーと表す)とは、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートから製造される、目的とする重合度を有する芳香族ポリカーボネートより重合度の低い重合途中の溶融物を意味しており、もちろんオリゴマーであってもよい。工程(III)で用いられるこのような溶融プレポリマーは、公知のいかなる方法によって得られたものでよい。たとえば、所定量の芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとからなる溶融混合物を1基又はそれ以上の縦型撹拌槽を用いて、約120℃〜約280℃の温度範囲で、常圧及び/又は減圧下に撹拌しながら、反応によって副生する芳香族モノヒドロキシ化合物を除去することによって、製造することができる。直列に連結された2基以上の縦型撹拌槽を用いて、順に重合度を上げていく必要な重合度を有する溶融プレポリマーを連続的に製造する方法が特に好ましい。
工程(III)では、この溶融プレポリマーが、ガイド接触流下式重合器に連続的に供給され、目的の重合度を有する芳香族ポリカーボネートを連続的に製造する。このガイド接触流下式重合器とは、ガイドに沿ってプレポリマーを溶融流下せしめて重合をさせる重合器であって、1時間あたり1トン以上の芳香族ポリカーボネートを生産できるものである。
該ガイド接触流下式重合器は、
(1)溶融プレポリマー受給口、多孔板、該多孔板を通して重合反応ゾーンの該ガイドに該溶融プレポリマーを供給するための溶融プレポリマー供給ゾーン、該多孔板と側面ケーシングとテーパー形の底部ケーシングとに囲まれた空間に該多孔板から下方に延びる複数のガイドが設けられた重合反応ゾーン、該重合反応ゾーンに設けられた真空ベント口、テーパー形の底部ケーシングの最下部に設けられた芳香族ポリカーボネート排出口、及び該排出口に接続された芳香族ポリカーボネート排出ポンプを有するタイプのものであって、
(2)該重合反応ゾーンの側面ケーシングの水平面における内部断面積A(m)が、式(13)を満足するものであって、
0.7≦A≦300 式(13)
(3)該A(m)と、芳香族ポリカーボネート排出口の水平面における内部断面積B(m)との比が、式(14)を満足するものであって、
20≦A/B≦1000 式(14)
(4)該重合反応ゾーンの底部を構成するテーパー形の底部ケーシングが、上部の側面ケーシングに対してその内部において、角度C度で接続されており、該角度C度が式(15)を満足するものであって、
120≦C≦165 式(15)
(5)該ガイドの長さ h(cm)が、式(16)を満足するものであって、
150≦h≦5000 式(16)
(6)該ガイド全体の外部総表面積S(m)が式(17)を満足するものである、
2≦S≦50000 式(17)
ことが必要である。
高品質・高性能の芳香族ポリカーボネートを1時間あたり1トン以上の工業的規模の生産量で、分子量のバラツキなどがなく、長期間安定的に製造するためには、種々の条件を満足させる重合器であることが必要であり、本発明はこれらの条件を見出したものである。なお、本発明においては、分子量のバラツキがないとは、数平均分子量で200以下のバラツキの場合を意味している。本発明では、数平均分子量のバラツキが好ましくは150以下であり、より好ましくは100以下の芳香族ポリカーボネートが長時間安定的に製造できる。
より具体的には、概念図(図4)に示されるような、重合反応ゾーン5の側面ケーシング10の水平面(a−a’面)における内部断面積A(m)が、式(13)を満足するものであることが必要である。
Aが0.7mよりも小さいと、目的とする生産量を達成できないし、設備費を低下させつつこの生産量を達成するためには、Aは300m以下にすることが必要である。
さらに、該A(m)と、芳香族ポリカーボネート排出口7の水平面(b−b’面)における内部断面積B(m)との比が、式(14)を満足することも必要である。
製造された芳香族ポリカーボネート又は重合度の高められた芳香族ポリカーボネートプレポリマーの品質を低下させることなく溶融粘度の高いこれらの溶融物を排出するためには、A/Bは式(14)を満足していなければならない。
さらに、該重合反応ゾーン5の底部を構成するテーパー形の底部ケーシング11が、上部の側面ケーシング10に対してその内部において、角度C度で設けられており、該角度C度が式(15)を満足することも必要である。
設備費を低下させるためには、Cはできるだけ90度に近い方がいいのであるが、ガイド4の下端から落下してくる芳香族ポリカーボネート又は重合度の高められた芳香族ポリカーボネートプレポリマーの品質を低下させることなく溶融粘度の高いこれらの溶融物を排出口7に移動させるためには、Cは式(15)を満足していなければならない。
さらに、該ガイドの長さ h(cm)が、式(16)を満足することも必要である。
hが150cmより短い場合、溶融プレポリマーの重合度を高めることはできるが、その程度が十分ではなく、また、重合度のバラツキが数平均分子量で約200以上大きくなり、好ましくない。hが5000cmより長い場合、ガイド4の上部と下部での溶融プレポリマーの溶融粘度の違いが大きくなりすぎるため、重合度のバラツキが数平均分子量で約300以上(場合によっては、約500以上)大きくなり、得られる芳香族ポリカーボネートの物性にバラツキがでるので好ましくない。なお、本発明において重合度のバラツキが大きいとは、例えば数平均分子量で表して、約200以上の差があるバラツキの場合を意味している。
さらに、該ガイド4の外部総表面積S(m)が式(16)を満足する必要がある。Sが2mよりも小さいと、目的とする生産量を達成できないし、設備費を低下させつつこの生産量を達成し、且つ物性にバラツキをなくすためには、Sは50000m以下にすることが必要である。
式(13)、(14)、(15)、(16)及び(17)を同時に満足するガイド接触流下式重合器を用いることによって、驚くべきことに、着色がなく機械的物性に優れた高品質・高性能の芳香族ポリカーボネートを、1時間あたり1トン以上の生産量でしかも、数1,000時間以上、たとえば5,000時間以上の長期間、分子量のバラツキなどなく安定的に製造できることが見出された。これらの条件を同時に満足していない場合には、目的とする生産量が得られない、分子量のバラツキが数平均分子量で表して約200以上の差があるバラツキがでる、安定製造が1,000時間もできない、着色がしやすくなるなどの不都合が起こる。
工程(III)において、このような優れた効果を有する工業的規模での芳香族ポリカーボネートの製造が可能となった理由は明らかではないが、上述の理由に加えて、それらの条件が組み合わさった時にもたらされる複合効果が現れたためであると推定される。例えば、式(16)及び(17)を満足する高表面積のガイドを用いると、溶融プレポリマーを比較的低温度で重合させることができ、目的とする分子量を有する大量の高品質の芳香族ポリカーボネートを製造できる。また、式(15)を満足するテーパー形の底部ケーシングは、ガイドから落下してくるこの大量の高品質の生成芳香族ポリカーボネートが排出口に達する時間を短縮でき、その結果、生成芳香族ポリカーボネートの熱履歴を減らせるためと推定される。
なお、このような工業的規模での製造技術は、大規模な製造設備を用いる長時間運転によって初めて確立できるものであるが、その際の製造設備費は考慮すべき重要な因子であることは、論を待たない。本発明の別な効果は、工程(III)で用いる重合器を式(13)、(14)、(15)、(16)及び(17)を満足するガイド接触流下式重合器とすることによって、工業的製造設備として設備費を低下させることができることにある。
工程(III)において用いられるガイド接触流下式重合器における寸法・角度等に要求される範囲は、上記のとおりであるが、さらに好ましい範囲は次のとおりである。重合反応ゾーンの側面ケーシングの水平面における内部断面積A(m)のより好ましい範囲は、 0.8≦A≦250 であり、さらに好ましくは、1≦A≦200 である。
また、該A(m)と、芳香族ポリカーボネート排出口の水平面における内部断面積B(m)との比のより好ましい範囲は、25≦A/B≦900 であり、さらに好ましくは、30≦A/B≦800 である。
さらに、重合反応ゾーンの底部を構成するテーパー形の底部ケーシングが、上部の側面ケーシングに対してその内部においてなす角度C度のより好ましい範囲は、125≦C≦160 であり、さらに好ましくは、135≦C≦165 である。なお、複数のガイド接触流下式重合器を用いて順に重合度を上げていく場合には、それぞれに対応する角度を、C1、C2、C3、・・・とすれば、C1≦C2≦C3≦ ・・・ とすることが好ましい。
また、ガイドの必要な長さh(cm)は、原料プレポリマーの重合度、重合温度、圧力、その重合器で製造すべき芳香族ポリカーボネート又はプレポリマーの重合度、生産量等の要因の違いによって異なるが、より好ましい範囲は、200≦h≦3000 であり、さらに好ましくは、250≦h≦2500 である。hが、式(24)を満足する場合、特に好ましい。
400<h≦2500 式(24)
必要なガイド全体の外部総表面積S(m)も、上記と同様の要因の違いによって異なるが、そのより好ましい範囲は、4≦S≦40000 であり、さらに好ましくは、10≦S≦30000 である。15≦S≦ 20000 は、特に好ましい範囲である。本発明で言うガイド全体の外部総表面積とは、溶融プレポリマーが接触して流下するガイドの表面積全体を意味しており、例えばパイプなどのガイドの場合、外側の表面積を意味しており、溶融プレポリマーを流下させないパイプ内側の面の表面積は含めない。
工程(III)で用いられるガイド接触流下式重合器において、重合反応ゾーンの側面ケーシングの水平面における内部断面の形状は多角形、楕円形、円形等、どのような形状であってもよい。重合反応ゾーンは、通常減圧下で操作されるため、それに耐えるものであればどのようなものでもよいが、好ましくはそれが円形又はそれに近い形状の場合である。従って、本発明の重合反応ゾーンの側面ケーシングは、円筒形であることが好ましい。この場合、円筒形の側面ケーシングの下部にテーパー形の底部ケーシングが接続され、該底部ケーシングの最下部に円筒形の芳香族ポリカーボネート排出口が設けられることが好ましい。そして、該側面ケーシングの円筒形部の内径をD(cm)、長さをL(cm)とし、該排出口の内径をd(cm)とした時、D、L、d が式(20)、(21)、(22)及び(23)を満足していることが好ましい。
100≦D≦1800 式(20)
5≦D/d≦50 式(21)
0.5≦L/D ≦30 式(22)
h−20≦L≦h+300 式(23)
該ガイド接触流下式重合器において、D(cm)のより好ましい範囲は、150≦D ≦1500 であり、さらに好ましくは、200≦D≦1200 である。また、D/d のより好ましい範囲は、6≦D/d≦45 であり、さらに好ましくは、 7≦ D/d≦40 である。また、L/Dのより好ましい範囲は、0.6≦L/D≦25 であり、さらに好ましくは、0.7≦L/D≦20 である。また、L(cm)のより好ましい範囲は、h−10≦L≦h+250 であり、さらに好ましくは、h≦L≦h+ 200 である。
工程(III)において、速い重合速度で、着色が無く機械的物性に優れた高品質・高性能の芳香族ポリカーボネートが、工業的規模で長期間分子量のバラツキがなく安定的に製造できる正確な理由は明らかではないが、以下のことが考えられる。すなわち、工程(III)のガイド接触流下式重合法においては、原料の溶融プレポリマーは受給口1から、供給ゾーン3及び多孔板2を経由して、ガイド4に導かれ、ガイドに沿って流下しながら重合度が上昇していく。この場合、溶融プレポリマーはガイドに沿って流下しながら効果的な内部攪拌と表面更新が行われ、フェノール等の抜出しが効果的に行われるため、速い速度で重合が進行する。重合の進行とともにその溶融粘度が高くなってくるために、ガイドに対する粘着力が増大し、ガイドに粘着する溶融物の量はガイドの下部に行くに従って増えてくる。このことは、溶融プレポリマーのガイド上での滞留時間、すなわち重合反応時間が増えることを意味している。しかも、ガイドに支えられながら自重で流下している溶融プレポリマーは、重量当たりの表面積が非常に広く、その表面更新が効率的に行われているので、これまでの機械的攪拌重合器ではどうしても不可能であった重合後半の高分子量化が容易に達成できるのである。これが工程(III)で用いられる重合器の持つ、優れた特徴の1つである。
ガイドの中間部より下部の重合の後半では、ガイドに粘着する溶融物の量が増えてくるが、その溶融粘度に見合った粘着保持力しかないので、複数のガイドの同じ高さにおいては、ほぼ同じ溶融粘度をもつほぼ同じ量の溶融物が、それぞれのガイドに支えられていることになる。一方、ガイドには上部から溶融物が連続的に供給されているので、ほぼ同じ溶融粘度をもつ重合度の高められた溶融物が、ガイドの下端からテーパー形のケーシングの底部に連続的に落下して行くことになる。すなわち、テーパー形のケーシングの底部では、ガイドを流下しながら生成したほぼ同じ重合度の芳香族ポリカーボネートが溜まってくることになり、分子量のバラツキのない芳香族ポリカーボネートが連続的に製造できることになる。このことは本発明の重合器の持つ他の優れた特徴の1つである。ケーシングの底部に溜まった芳香族ポリカーボネートは、排出口7を経て、排出ポンプ8によって連続的に抜き出され、通常は押出し機を経て連続的にペレット化される。この場合、押出し機で、安定剤、耐候剤等の添加剤を添加することも可能である。
工程(III)で用いられるガイド接触流下式重合器を構成する多孔板は、通常、平板、波板、中心部が厚くなった板などから選ばれ、多孔板の形状についは、通常、円状、長円状、三角形状、多角形状などの形状から選ばれる。多孔板の孔は、通常、円状、長円状、三角形状、スリット状、多角形状、星形状などの形状から選ばれる。孔の断面積は、通常、0.01〜100cmであり、好ましくは0.05〜10cmであり、より好ましくは0.1〜5cmの範囲である。孔と孔との間隔は、孔の中心と中心の距離で通常、1〜500mmであり、好ましくは25〜100mmである。多孔板の孔は、多孔板を貫通させた孔であっても、多孔板に管を取り付けた場合でもよい。また、テーパー状になっていてもよい。
また、工程(III)で用いられるガイド接触流下式重合器を構成するガイドとは、水平方向断面の外周の平均長さに対して該断面と垂直方向の長さの比率が非常に大きい材料を表すものである。該比率は、通常、10〜1,000,000の範囲であり、好ましくは50〜100,000の範囲である。水平方向の断面の形状は、通常、円状、長円状、三角形状、四角形状、多角形状、星形状などの形状から選ばれる。該断面の形状は長さ方向に同一でもよいし異なっていてもよい。また、ガイドは中空状のものでもよい。
ガイドは、針金状のものや細い棒状のものや内側に溶融プレポリマーが入らないようにした細いパイプ状のもの等の単一なものでもよいが、捩り合わせる等の方法によって複数組み合わせたものでもよい。また、網状のものや、パンチングプレート状のものであってもよい。ガイドの表面は平滑であっても凹凸があるものであってもよく、部分的に突起等を有するものでもよい。好ましいガイドは、針金状や細い棒状等の円柱状のもの、前記の細いパイプ状のもの、網状のもの、パンチングプレート状のものである。
このガイドはそれ自身内部に熱媒や電気ヒーターなどの加熱源をもっていてもよいが、加熱源を持たないガイドは、その表面におけるプレポリマーや芳香族ポリカーボネートの熱変性の懸念がないので、特に好ましい。
工業的規模(生産量、長期安定製造等)での高品質の芳香族ポリカーボネートの製造を可能とする本発明のガイド接触流下式重合器において、特に好ましいのは、複数の針金状又は細い棒状又は前記の細いパイプ状のガイドの上部から下部までにおいて横方向の支持材を用いて上下の適当な間隔で各々のガイド間を結合したタイプのガイドである。例えば、複数の針金状又は細い棒状又は前記の細いパイプ状のガイドの上部から下部までにおいて横方向の支持材を用いて上下の適当な間隔、たとえば1cm〜200cmの間隔で固定した金網状ガイド、複数の金網状のガイドを前後に配置しそれらを横方向の支持材を用いて上下の適当な間隔、たとえば1cm〜200cmの間隔で結合させた立体的なガイド、又は複数の針金状又は細い棒状又は前記の細いパイプ状のガイドの前後左右を横方向の支持材を用いて上下の適当な間隔、たとえば1cm〜200cmの間隔で固定したジャングルジム状の立体的なガイドである。横方向の支持材は各ガイド間の間隔をほぼ同じに保つために役立つだけでなく、全体として平面状や曲面状になるガイド、あるいは立体的になるガイドの強度の強化に役立っている。これらの支持材はガイドと同じ素材であってもよいし、異なるものであってもよい。
ガイド接触流下式重合器において、1つのガイドが外径 r(cm)の円柱状又は内側に溶融プレポリマーがはいらないようにしたパイプ状のものである場合、r が式(25)を満足していることが好ましい。
0.1≦r≦1 式(25)
このガイドは、溶融プレポリマーを流下させながら、重合反応を進めるものであるが、溶融プレポリマーをある時間保持する機能も有している。この保持時間は、重合反応時間に関連するものであり、重合の進行とともにその溶融粘度が上昇していくために、その保持時間及び保持量は増加していくことは前記のとおりである。ガイドが溶融プレポリマーを保持する量は、同じ溶融粘度であってもガイドの外部表面積、即ち、円柱状又はパイプ状の場合、その外径によって異なってくる。
また、本発明の重合器に設置されたガイドは、ガイド自身の重量に加え、保持している溶融プレポリマーの重量をも支えるだけの強度が必要である。このような意味において、ガイドの太さは重要であり、円柱状又はパイプ状の場合、式(25)を満足していることが好ましい。rが0.1より小さいと、強度的な面で長時間の安定運転ができにくくなってくる。rが1よりも大きいと、ガイド自身が非常に重くなり、たとえばそれらを重合器に保持するために多孔板の厚みを非常に厚くしなければならないなどの不都合があるだけでなく、溶融プレポリマーを保持する量が多くなりすぎる部分が増え、分子量のバラツキが大きくなるなどの不都合が起こってくる。このような意味で、より好ましいrの範囲は、0.15≦r≦0.8 であり、さらに好ましいのは、0.2≦r≦0.6 である。
このようなガイドの好ましい材質は、ステンレススチール、カーボンスチール、ハステロイ、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム及びその他の合金等の金属や、耐熱性の高いポリマー材料等の中から選ばれる。特に好ましいのはステンレススチールである。また、ガイドの表面は、メッキ、ライニング、不働態処理、酸洗浄、フェノール洗浄等必要に応じて種々の処理がなされてもよい。
ガイドと多孔板との位置関係及びガイドと多孔板の孔との位置関係については、プレポリマーのガイド接触流下が可能である限り特に限定されない。ガイドと多孔板は互いに接触していてもよいし、接触していなくてもよい。ガイドを多孔板の孔に対応させて設置するのが好ましいがこれに限定されない。なぜならば、多孔板から落下する溶融プレポリマーが適当な位置でガイドに接触するように設計されていてもいいからである。ガイドを多孔板の孔に対応させて設置する好ましい具体例としては、(1)ガイドの上端を重合器の上部内壁面などに固定して、ガイドが多孔板の孔の中心部付近を貫通した状態でガイドを設ける方法や、(2)ガイドの上端を多孔板の孔の上端の周縁部に固定して、ガイドが多孔板の孔を貫通した状態でガイドを設ける方法や、(3)ガイドの上端を多孔板の下側面に固定する方法、などが挙げられる。
この多孔板を通じて溶融プレポリマーをガイドに沿わせて流下させる方法としては、液ヘッド又は自重で流下させる方法、又はポンプなどを使って加圧にすることにより、多孔板から溶融プレポリマーを押し出す等の方法が挙げられる。好ましいのは、供給ポンプを用いて加圧下、所定量の原料溶融プレポリマーを重合器の供給ゾーンに供給し、多孔板を経てガイドに導かれた溶融プレポリマーが自重でガイドに沿って流下していく方式である。該溶融プレポリマーは、通常、所定の重合温度に加熱された状態で、ガイド接触流下式重合器に連続的に供給される。したがって、このガイド接触流下式重合器の外壁面には、通常ジャケット等が設置されていることが好ましく、このジャケットに熱媒等を通じて所定の温度に加熱することが好ましい。このことによって、溶融プレポリマー、及びプレポリマー供給ゾーンや多孔板の加熱及び保温と、重合反応ゾーンや側面ケーシング及びテーパー形の底部ケーシングの保温を行うことが好ましい。
工程(III)において、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとから得られる溶融プレポリマーをガイド接触流下式重合器で重合させて芳香族ポリカーボネートを製造する反応の温度は、通常80〜350℃の範囲である。しかしながら、本発明の重合器では内部攪拌を伴う効率的な表面更新が行われているので、比較的低温で重合反応を進行させることができる。したがって、好ましい反応温度は、100〜290℃であり、さらに好ましいのは、150〜270℃である。従来の重合器である横型2軸撹拌式超高粘度ポリマー用リアクターでは、通常300℃以上の高温下で、133Pa以下の高真空下で長時間撹拌する必要があった。しかも撹拌軸シール部からの空気の漏れこみによる黄変や、異物の混入がさけられなかった。本発明の重合器は機械的攪拌がないので、攪拌機のシール部もないので空気等の漏れこみが非常に少ない。しかも、従来の横型2軸撹拌式超高粘度ポリマー用リアクターの場合よりも約20〜50℃も低温で十分に重合を進めることができるのが、本発明の特徴である。このことも、本発明において、着色や物性低下のない高品質の芳香族ポリカーボネートを製造することができる大きな原因である。
また、従来の横型2軸撹拌式超高粘度ポリマー用リアクターを用いても、中粘度グレード以上の芳香族ポリカーボネートを製造することは、その超高粘性のため、不可能であるが、本発明のガイド接触流下式重合器では、高粘度グレードの芳香族ポリカーボネートも容易に製造することができる。すなわち、本発明のガイド接触流下式重合器では、分子量の比較的低いディスクグレードから、高粘度グレードまでの全てのグレードの芳香族ポリカーボネートを製造することができる。このことも本発明の大きな特徴である。
工程(III)では、重合反応の進行にともなって、芳香族モノヒドロキシ化合物が生成してくるが、これを反応系外へ除去する事によって反応速度が高められる。従って、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素や低級炭化水素ガスなど反応に悪影響を及ぼさない不活性なガスを重合器に導入して、生成してくる芳香族モノヒドロキシ化合物をこれらのガスに同伴させて除去する方法や、減圧下に反応を行う方法などが好ましく用いられる。あるいはこれらを併用した方法も好ましく用いられるが、これらの場合も重合器に大量の不活性ガスを導入する必要はなく、内部を不活性ガス雰囲気に保持する程度でもよい。
なお、溶融プレポリマーをガイド接触流下式重合器に供給するに先立って、前記不活性ガスを吸収させ、次いで該不活性ガス吸収溶融プレポリマーを重合させることも好ましい方法である。
工程(III)の重合器内の好ましい反応圧力は、製造する芳香族ポリカーボネートの種類や分子量、重合温度等によっても異なるが、例えばビスフェノールAとジフェニルカーボネートからの溶融プレポリマーから芳香族ポリカーボネートを製造する場合、数平均分子量が5,000以下の範囲では、400〜3,000Pa範囲が好ましく、数平均分子量が5,000〜10,000の場合は、50〜500Paの範囲が好ましい。数平均分子量が10,000以上の場合は、300Pa以下が好ましく、特に20〜250Paの範囲が好ましく用いられる。
工程(III)を実施するにあたり、ガイド接触流下式重合器1基だけで、目的とする重合度を有する芳香族ポリカーボネートを製造することも可能であるが、原料とする溶融プレポリマーの重合度や芳香族ポリカーボネートの生産量などに応じて、2基以上の複数のガイド接触流下式重合器を連結して、順に重合度を上げていく方式も好ましい。この場合、それぞれの重合器において、製造すべきプレポリマー又は芳香族ポリカーボネートの重合度に適したガイドや反応条件を別々に採用することができるので、好ましい方式である。例えば、ガイド接触流下式第1重合器、ガイド接触流下式第2重合器、ガイド接触流下式第3重合器、ガイド接触流下式第4重合器・・・・を用い、この順に重合度を上げていく方式の場合、それぞれの重合器がもつガイド全体の外部総表面積をS1、S2、S3、S4・・・・とすれば、S1≧S2≧S3≧S4≧・・・・とすることができる。また、重合温度も、それぞれの重合器において同じ温度でもよいし、順に上げていくことも可能である。重合圧力も、それぞれの重合器で、順に下げていくことも可能である。
このような意味において、例えば、ガイド接触流下式第1重合器、ガイド接触流下式第2重合器の2基の重合器を用いてこの順に重合度を上げていく場合、該第1重合器のガイド全体の外部総表面積S1(m)と該第2重合器のガイド全体の外部総表面積S2(m)とが式(26)を満足するようなガイドを用いることが好ましい。
1≦S1/S2≦20 式(26)
S1/S2が1よりも小さいと、分子量のバラツキが大きくなり長期間安定製造が困難になる、所定の生産量が得にくい、などの不都合が起こり、S1/S2が20よりも大きいと、第2重合器でのガイドを流下する溶融プレポリマーの流量が多くなり、その結果、溶融プレポリマーの滞留時間が少なくなり必要とする分子量の芳香族ポリカーボネートが得られにくくなる、などの不都合が生じてくる。このような意味でさらに好ましい範囲は、1.5≦S1/S2≦15 である。
工程(III)においては、1時間当り1トン以上の芳香族ポリカーボネートが製造するのであるが、重合反応によって副生した芳香族モノヒドロキシ化合物は系外に排出されるので、1時間当り1トンよりも多量の溶融プレポリマーが、重合器に供給される必要がある。したがって、供給される溶融プレポリマーの量は、その重合度及び製造すべき芳香族ポリカーボネートの重合度によって変化するが、通常、芳香族ポリカーボネートの生産量1トン/hr当り、10〜500kg/hr多い、1.01〜1.5トン/hrの範囲である。
工程(III)における芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートから芳香族ポリカーボネートを製造する反応は触媒を加えずに実施することができるが、重合速度を高めるため、必要に応じて触媒の存在下で行われる。触媒としては、この分野で用いられているものであれば特に制限はないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物類;水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウムなどのホウ素やアルミニウムの水素化物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第四級アンモニウム塩類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カルシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化合物類;リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウムメトキシドなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコキシド類;リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、マグネシウムフェノキシド、LiO−Ar−OLi、NaO−Ar−ONa(Arはアリール基)などのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアリーロキシド類;酢酸リチウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の有機酸塩類;酸化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛フェノキシドなどの亜鉛化合物類;酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、(R)NB(R)又は(R)PB(R4)で表されるアンモニウムボレート類又はホスホニウムボレート類(R、R、R、Rは前記化1の説明通りである。)などのホウ素の化合物類;酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、テトラアルキルケイ素、テトラアリールケイ素、ジフェニル−エチル−エトキシケイ素などのケイ素の化合物類;酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムフェノキシドなどのゲルマニウムの化合物類;酸化スズ、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズカルボキシレート、酢酸スズ、エチルスズトリブトキシドなどのアルコキシ基又はアリーロキシ基と結合したスズ化合物、有機スズ化合物などのスズの化合物類;酸化鉛、酢酸鉛、炭酸鉛、塩基性炭酸塩、鉛及び有機鉛のアルコキシド又はアリーロキシドなどの鉛の化合物;第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第四級アルソニウム塩などのオニウム化合物類;酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモンの化合物類;酢酸マンガン、炭酸マンガン、ホウ酸マンガンなどのマンガンの化合物類;酸化チタン、チタンのアルコキシド又はアリーロキシドなどのチタンの化合物類;酢酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ジルコニウムのアルコキシド又はアリーロキシド、ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウムの化合物類などの触媒を挙げることができる。
触媒を用いる場合、これらの触媒は1種だけで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの触媒の使用量は、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常10−10〜1質量%、好ましくは10−9〜10−1質量%、さらに好ましくは10−8〜10−2質量%の範囲で選ばれる。溶融エステル交換法の場合、使用した重合触媒は、製品の芳香族ポリカーボネート中に残存しているが、これらの重合触媒は通常ポリマー物性に悪影響を及ぼすものが多い。したがって、触媒の使用量はできるだけ、下げることが好ましい。本発明の方法では、重合が効率的に行えるので触媒の使用量を少なくできる。このことも高品質の芳香族ポリカーボネートを製造できる本発明の特徴の1つである。
工程(III)で用いられるガイド接触流下式重合器や配管の材質に特に制限はなく、通常、ステンレススチール製、カーボンスチール製、ハステロイ製、ニッケル製、チタン製、クロム製、及びその他の合金製等の金属や、耐熱性の高いポリマー材料等の中から選ばれる。また、これらの材質の表面は、メッキ、ライニング、不働態処理、酸洗浄、フェノール洗浄等必要に応じて種々の処理がなされてもよい。特に好ましいのは、ステンレススチールやニッケル、グラスライニング等である。
工程(III)のプレポリマー製造時と、ガイド接触流下式重合器での重合時、反応によって副生する大量の芳香族モノヒドロキシ化合物は通常、ガス状で連続的に抜き出され、液状に凝縮されて回収される。本発明においては、工程(III)で副生する芳香族モノヒドロキシ化合物をジアリールカーボネート製造工程(I)に循環する芳香族モノヒドロキシ化合物のリサイクル工程(IV)を行うことが必要である。工業的製造方法においては、副生する芳香族モノヒドロキシ化合物を全量、又はできるだけロスを少なくして回収し、これを循環・再使用することが重要である。本発明の工程(III)で副生し、回収された副生芳香族モノヒドロキシ化合物には、通常ジアリールカーボネートが一部含まれるが、純度が高いのでそのままで、ジアリールカーボネート製造工程(I)に循環、再使用することも可能である。なお、回収された該芳香族モノヒドロキシ化合物中に少量の芳香族ジヒドロキシ化合物や、微量のオリゴマーが混在する場合には、さらに蒸留を行ってこれらの高沸点物質を除去した後に、ジアリールカーボネート製造工程(I)に循環、再使用することが好ましい。
本発明のシステムを実施することによって製造される芳香族ポリカーボネートは、下記化7で示される繰り返し単位を有する。
Figure 0005030788
(Arは前述と同じである。)
特に好ましいのは、全繰り返し単位中、下記化8で示される繰り返し単位が85モル%以上含まれる芳香族ポリカーボネートである。
Figure 0005030788
また、本発明の方法を実施して製造される芳香族ポリカーボネートの末端基は、通常、ヒドロキシ基又は下記化9で示されるアリールカーボネート基からなっている。
Figure 0005030788
(Arは、前述のAr、Arと同じである。)
ヒドロキシ基とアリールカーボネート基の比率に特に制限はないが、通常95:5〜5:95の範囲であり、好ましくは90:10〜10:90の範囲であり、さらに好ましくは80:20〜20:80の範囲である。特に好ましいのは、末端基中のフェニルカーボネート基の占める割合が60モル%以上の芳香族ポリカーボネートである。
本発明の方法を実施して製造される芳香族ポリカーボネートは、主鎖に対してエステル結合やエーテル結合等の異種結合を介して部分的に分岐したものであってもよい。該異種結合の量はカーボネート結合に対して、通常0.005〜2モル%であり、好ましくは、0.01〜1モル%、であり、さらに好ましいのは、0.05〜0.5モル%である。このような量の異種結合は、他のポリマー物性を悪化させることなく、溶融成形時の流れ特性を向上させるので、精密成形に適しているし、比較的低温でも成形でき、性能の優れた成形物を製造することができる。成形サイクルを短縮することもでき成形時の省エネルギーにも貢献できる。
本発明の方法を実施して製造される芳香族ポリカーボネート中には、不純物は殆ど含まれないが、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属をそれらの金属元素として、0.001〜1ppm含有する芳香族ポリカーボネートを製造することができる。好ましくは、この含有量が0.005〜0.5ppm、より好ましくは、0.01〜0.1ppmである。このような金属元素が1ppm以下、好ましくは、0.5ppm以下、より好ましくは、0.1ppmである場合、製品芳香族ポリカーボネートの物性に影響を与えないので、本発明で製造される芳香族ポリカーボネートは高品質である。
本発明の方法を実施して製造される芳香族ポリカーボネートの中で特に好ましいのは、ハロゲンを含まない芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートを用いることにより製造されたものであって、ハロゲン含有量が通常、10ppb以下である。本発明の方法では、ハロゲン含有量が5ppb以下のものも製造できるし、さらに好ましくはハロゲン含有量が1ppb以下の芳香族ポリカーボネートを製造することができるので、非常に高品質の製品が得られることになる。
本発明の方法で、分子量のバラツキのない芳香族ポリカーボネートを長時間安定的に製造できるのは、特定の重合器を用いているためであることは、実施例によって明らかである。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
・数平均分子量(Mn):テトラヒドロフランを搬送溶媒として用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定し、標準単分散ポリスチレンを用いて得た下式による換算分子量較正曲線を用いて数平均分子量(Mn)を求めた。
PC=0.3591MPS 1.0388
(式中、MPCは芳香族ポリカーボネートの分子量、MPSはポリスチレンの分子量を示す。)
・カラー:射出成形機を用い、芳香族ポリカーボネートをシリンダー温度290℃、金型温度90℃で、縦50mm×横50mm×厚さ3.2mmの試験片を連続成形した。得られた試験片の色調はCIELAB法(Commission Internationale de l‘Eclairage 1976 L Diagram)により測定し、黄色度をb値で示した。
・引張伸度:射出成形機を用い、芳香族ポリカーボネートをシリンダー温度290℃、金型温度90℃で射出成形した。得られた厚み3.2mmの試験片の引張伸度(%)は、ASTM D638に準じて測定した。
・異種結合の量は、WO97/32916号公報記載の方法で測定され、アルカリ金属/アルカリ土類金属はICP法により、ハロゲンはイオンクロマト法でそれぞれ測定された。
[実施例1]
(1)ジフェニルカーボネートを連続的に製造する工程(I)
<第1連続多段蒸留塔101>
図1に示されるようなL=3300cm、D=500cm、L/D=6.6、n=80、D/d11=17、D/d12=9 である連続多段蒸留塔を用いた。なお、この実施例では、インターナルとして、孔1個あたりの断面積=約1.5cm、孔数=約250個/mを有する多孔板トレイを用いた。
<第2連続多段蒸留塔201>
図2に示されるようなL=3100cm、D=500cm、L/D=6.2、n=30、D/d21=3.85、D/d22=11.1 である連続多段蒸留塔を用いた。なお、この実施例では、インターナルとして、上部にメラパック2基(合計理論段数11段)を設置し、下部に孔1個あたりの断面積=約1.3cm、孔数=約250個/mを有する多孔板トレイを用いた。
<反応蒸留>
図3に示されるような第1連続多段蒸留塔101と第2連続多段蒸留塔201が接続された装置を用いて反応蒸留を行い、ジフェニルカーボネートを製造した。
フェノール/ジメチルカーボネート=1.9(重量比)からなる原料1を第1連続多段蒸留塔101の上部導入口11から液状で50トン/hrの流量で連続的に導入した。一方、ジメチルカーボネート/フェノール=3.6(重量比)からなる原料2を第1連続多段蒸留塔101の下部導入口12からガス状で50トン/hrの流量で連続的に導入した。第1連続多段蒸留塔101に導入された原料のモル比は、ジメチルカーボネート/フェノール=1.35であった。この原料にはハロゲンは実質的に含まれていなかった(イオンクロマトグラフィーでの検出限界外で1ppb以下)。触媒はPb(OPh)として、反応液中に約100ppmとなるように第1連続多段蒸留塔101の上部導入口11から導入された。第1連続多段蒸留塔101では塔底部の温度が225℃で、塔頂部の圧力が7×10Pa、還流比が0の条件下で連続的に反応蒸留が行われた。メチルアルコール、ジメチルカーボネート、フェノール等を含む第1塔低沸点反応混合物を第1塔の塔頂部13よりガス状で連続的に抜き出し、熱交換器14を経て、抜出し口16から34トン/hrの流量で抜出した。一方、メチルフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、フェノール、ジフェニルカーボネート、触媒等を含む第1塔高沸点反応混合物を第1塔底部17より液状で連続的に抜き出した。
24時間後には安定した定常状態に達したので、第1塔高沸点反応混合物をそのまま第2連続多段蒸留塔201のメラパックと多孔板トレイとの間に設置されている原料導入口21から、66トン/hrの流量で連続的に供給した。第2連続多段蒸留塔201に供給された液には、メチルフェニルカーボネートが18.2質量%、ジフェニルカーボネートが0.8質量%含まれていた。第2連続多段蒸留塔201では塔底部の温度が210℃で、塔頂部の圧力が3×10Pa、還流比が0.3の条件下で連続的に反応蒸留が行われた。24時間後には安定的な定常運転が達成できた。第2塔塔頂部23からジメチルカーボネート35質量%、フェノール56質量%を含む第2塔低沸点反応混合物が連続的に抜き出され、抜出し口26での流量は55.6トン/hrで、第2塔塔底部27からはメチルフェニルカーボネート38.4質量%、ジフェニルカーボネート55.6質量%を含む第2塔高沸点反応混合物が連続的に抜出された。第2塔低沸点反応混合物は、導入口11から第1連続多段蒸留塔101に連続的に供給された。この際、新規に供給されるジメチルカーボネートとフェノールの量は、第2塔低沸点反応混合物の組成、量を勘案した上で、上記原料1及び原料2の組成、量を維持するように調整した。ジフェニルカーボネートの生産量は1時間あたり5.74トンであることがわかった。反応したフェノールに対して、ジフェニルカーボネートの選択率は98%であった。
この条件で長期間の連続運転を行った。500時間後、2000時間後、4000時間後、5000時間後、6000時間後のジフェニルカーボネートの生産量(原料中に含まれるジフェニルカーボネートを除く)は、1時間あたり5.74トン、5.75トン、5.74トン、5.74トン、5.75トンであり、選択率は98%、98%、98%、98%、98%、であり、非常に安定していた。また、製造された芳香族カーボネートには、ハロゲンは実質的に含まれていなかった(1ppb以下)。
(2)高純度ジフェニルカーボネートを取得する工程(II)
該第2連続多段蒸留塔の塔底部から抜き出された第2塔高沸点反応混合物を高沸点物質分離塔(長さ1700cm、内径340cm、30段)に連続的に供給し、塔底部の温度206℃、塔頂部の圧力3800Pa、還流比0.6で連続的に蒸留を行った。該高沸点物質分離塔の塔頂部から連続的に抜き出された塔頂成分をそのまま、サイドカット抜き出し口を有するジアリールカーボネート精製塔(長さ2200cm、内径280cm、導入口より上部が12段、導入口とその下部に設置されたサイドカット口との間が18段、サイドカット口より下部が5段)の導入口に連続的に供給された。該ジアリールカーボネート精製塔では、塔底部の温度213℃、塔頂部の圧力5000Pa、還流比1.5で連続的に蒸留が行われた。サイドカット抜き出し口から連続的に抜き出されたジフェニルカーボネートの純度は99.999%以上で、ハロゲン含有量は1ppb以下であった。
このようにして取得された高純度ジフェニルカーボネートは、一旦貯蔵タンクに溶融状態で貯蔵された。
(3)高品質ポリカーボネートを製造する工程(III)
図5に示すようなガイド接触流下式重合器を用いて芳香族ポリカーボネートの製造を行なった。この重合器の材質は、すべてステンレススチールである。この重合器は円筒形の側面ケーシングとテーパー形の底部ケーシングを有するものであって、L=1,000cm、h=900cm、D=500cm、d=40cm、C=155度 、S=250m である。供給口1から供給された溶融ポリマーは多孔板2により各ガイド4に均一に分配される。重合器下部には不活性ガス供給口9が備えられており、上部には真空ベント口6が備えられている。重合器の外側はジャケットになっており、熱媒で加温されている。
ビスフェノールAと工程(I)、(II)で製造された該高純度ジフェニルカーボネート(対ビスフェノールAモル比1.05)とから製造され、260℃に保たれた芳香族ポリカーボネートの溶融プレポリマー(数平均分子量Mnは4,000)が、供給ポンプによって供給口1より供給ゾーン3に連続的に供給された。重合器内の多孔板2を通して重合反応ゾーン5に連続的に供給された、溶融プレポリマーは、ガイド4に沿って流下しながら重合反応が進められた。重合反応ゾーン5は真空ベント口6を通して80Paに保持されている。ガイド4の下部から重合器の底部11に入ってきた生成芳香族ポリカーボネートは、該底部での滞留量がほぼ一定となるように排出ポンプ8によって排出口7から5.5トン/hrの流量で連続的に抜き出された。
運転を開始してから50時間後に抜き出し口12から抜き出された芳香族ポリカーボネートの数平均分子量Mnは10,500であり、良好なカラー(b値3.2)であった。また、引張伸度は98%であった。運転開始から、60時間後、100時間後、500時間後、1,000時間後、2,000時間後、3,000時間後、4,000時間後、5,000時間後に抜き出し口12から抜き出された芳香族ポリカーボネートのMnは、それぞれ、10,500、10,550、10,500、10,550、10,500、10,500、10,550、10,500であり、安定であった。
このようにして製造された芳香族ポリカーボネートは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有量はこれらの金属元素に換算して、0.04〜0.05ppmであり、塩素の含有量は1ppb以下(検出限界以下)であった。また、異種結合の含有量は0.12〜0.15モル%であった。
(4)芳香族モノヒドロキシ化合物のリサイクル工程(IV)
工程(III)で副生し、液状で回収された約10%のジフェニルカーボネートと微量のビスフェノールAを含むフェノール溶液が、フェノール精製塔(長さ1500cm、内径270cm、9段)に連続的に供給された。塔底部の温度185℃、塔頂部の圧力2000Pa、還流比0.9で連続的に蒸留が行われた。塔頂部から回収されたフェノールは、一旦、タンクに貯蔵された後、工程(I)にリサイクルされた。サイドカット部から回収されたジフェニルカーボネートは、工程(II)の高沸点物質分離塔に供給され、高純度ジフェニルカーボネートとして回収された。
[実施例2]
(1)ジフェニルカーボネートを連続的に製造する工程(I)
実施例1と同じ装置を用いて、下記の条件で反応蒸留を行った。
フェノール/ジメチルカーボネート=1.1(重量比)からなる原料1を第1連続多段蒸留塔101の上部導入口11から液状で40トン/hrの流量で連続的に導入した。一方、ジメチルカーボネート/フェノール=3.9(重量比)からなる原料2を第1連続多段蒸留塔101の下部導入口12からガス状で43トン/hrの流量で連続的に導入した。第1連続多段蒸留塔101に導入された原料のモル比は、ジメチルカーボネート/フェノール=1.87であった。この原料にはハロゲンは実質的に含まれていなかった(イオンクロマトグラフィーでの検出限界外で1ppb以下)。触媒はPb(OPh)として、反応液中に約250ppmとなるように第1連続多段蒸留塔101の上部導入口11から導入された。第1連続多段蒸留塔101では塔底部の温度が235℃で、塔頂部の圧力が9×10Pa、還流比が0の条件下で連続的に反応蒸留が行われた。メチルアルコール、ジメチルカーボネート、フェノール等を含む第1塔低沸点反応混合物を第1塔の塔頂部13よりガス状で連続的に抜き出し、熱交換器14を経て、抜出し口16から43トン/hrの流量で抜出した。一方、メチルフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、フェノール、ジフェニルカーボネート、触媒等を含む第1塔高沸点反応混合物を第1塔底部17より液状で連続的に抜き出した。
24時間後には安定した定常状態に達したので、第1塔高沸点反応混合物をそのまま第2連続多段蒸留塔201のメラパックと多孔板トレイとの間に設置されている原料導入口21から、40トン/hrの流量で連続的に供給した。第2連続多段蒸留塔201に供給された液には、メチルフェニルカーボネートが20.7質量%、ジフェニルカーボネートが1.0質量%含まれていた。第2連続多段蒸留塔201では塔底部の温度が205℃で、塔頂部の圧力が2×10Pa、還流比が0.5の条件下で連続的に反応蒸留が行われた。24時間後には安定的な定常運転が達成できた。第2塔塔頂部23から第2塔低沸点反応混合物が連続的に抜き出され、第2塔塔底部27からはメチルフェニルカーボネート36.2質量%、ジフェニルカーボネート60.8質量%を含む第2塔高沸点反応混合物が連続的に抜出された。第2塔低沸点反応混合物は、導入口11から第1連続多段蒸留塔101に連続的に供給された。この際、新規に供給されるジメチルカーボネートとフェノールの量は、第2塔低沸点反応混合物の組成、量を勘案した上で、上記原料1及び原料2の組成、量を維持するように調整した。ジフェニルカーボネートの生産量は1時間あたり4.03トンであることがわかった。反応したフェノールに対して、ジフェニルカーボネートの選択率は97%であった。
この条件で長期間の連続運転を行った。500時間後、1000時間後、2000時間後のジフェニルカーボネートの1時間あたりの生産量は4.03トン、4.03トン、4.04トンであり、反応したフェノールに対して選択率は97%、97%、97%であり、非常に安定していた。また、製造された芳香族カーボネートには、ハロゲンは実質的に含まれていなかった(1ppb以下)。
(2)高純度ジフェニルカーボネートを取得する工程(II)
実施例1と同様な方法で行われた。
(3)高品質ポリカーボネートを製造する工程(III)
実施例1と同じ重合器に、ビスフェノールAと工程(I)、(II)で製造された高純度ジフェニルカーボネート(対ビスフェノールAモル比1.05)とから製造された芳香族ポリカーボネートの溶融プレポリマー(数平均分子量Mnは3,500)が、供給ポンプによって供給口1より供給ゾーン3に連続的に供給された。重合反応ゾーンの圧力が100Paに保持されている以外は実施例1と同様な方法により重合させて芳香族ポリカーボネートを製造した。運転開始から、50時間後、100時間後、500時間後、1,000時間後、2,000時間後、3,000時間後、4,000時間後、5,000時間後に排出口12から排出された芳香族ポリカーボネートのMnは、それぞれ、7,600、7,600、7,650 7,600、7,650、7,650、7,600、7,600であり、安定であった。
このようにして製造された芳香族ポリカーボネートは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有量はこれらの金属元素に換算して、0.03から0.04ppmであり、塩素の含有量は1ppb以下(検出限界以下)であった。また、異種結合の含有量は0.08〜0.1モル%であった。
(4)芳香族モノヒドロキシ化合物のリサイクル工程(IV)
実施例1と同様な方法で行われた。
[実施例3]
(1)ジフェニルカーボネートを連続的に製造する工程(I)
第2連続多段蒸留塔201における多孔板トレイの孔1個あたりの断面積=約1.8cmとする以外は実施例1と同じ装置を用いて、下記の条件で反応蒸留を行った。
フェノール/ジメチルカーボネート=1.7(重量比)からなる原料1を第1連続多段蒸留塔101の上部導入口11から液状で86トン/hrの流量で連続的に導入した。一方、ジメチルカーボネート/フェノール=3.5(重量比)からなる原料2を第1連続多段蒸留塔101の下部導入口12からガス状で90トン/hrの流量で連続的に導入した。第1連続多段蒸留塔101に導入された原料のモル比は、ジメチルカーボネート/フェノール=1.44であった。この原料にはハロゲンは実質的に含まれていなかった(イオンクロマトグラフィーでの検出限界外で1ppb以下)。触媒はPb(OPh)として、反応液中に約150ppmとなるように第1連続多段蒸留塔101の上部導入口11から導入された。第1連続多段蒸留塔101では塔底部の温度が220℃で、塔頂部の圧力が8×10Pa、還流比が0の条件下で連続的に反応蒸留が行われた。メチルアルコール、ジメチルカーボネート、フェノール等を含む第1塔低沸点反応混合物を第1塔の塔頂部13よりガス状で連続的に抜き出し、熱交換器14を経て、抜出し口16から82トン/hrの流量で抜出した。一方、メチルフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、フェノール、ジフェニルカーボネート、触媒等を含む第1塔高沸点反応混合物を第1塔底部17より液状で連続的に抜き出した。
24時間後には安定した定常状態に達したので、第1塔高沸点反応混合物をそのまま第2連続多段蒸留塔201のメラパックと多孔板トレイとの間に設置されている原料導入口21から、94トン/hrの流量で連続的に供給した。第2連続多段蒸留塔201に供給された液には、メチルフェニルカーボネートが16.0質量%、ジフェニルカーボネートが0.5質量%含まれていた。第2連続多段蒸留塔201では塔底部の温度が215℃で、塔頂部の圧力が2.5×10Pa、還流比が0.4の条件下で連続的に反応蒸留が行われた。24時間後には安定的な定常運転が達成できた。第2塔塔頂部23から第2塔低沸点反応混合物が連続的に抜き出され、第2塔塔底部27からはメチルフェニルカーボネート35.5質量%、ジフェニルカーボネート59.5質量%を含む第2塔高沸点反応混合物が連続的に抜出された。第2塔低沸点反応混合物は、導入口11から第1連続多段蒸留塔101に連続的に供給された。この際、新規に供給されるジメチルカーボネートとフェノールの量は、第2塔低沸点反応混合物の組成、量を勘案した上で、上記原料1及び原料2の組成、量を維持するように調整した。ジフェニルカーボネートの生産量は1時間あたり7.28トンであることがわかった。反応したフェノールに対して、ジフェニルカーボネートの選択率は98%であった。
この条件で長期間の連続運転を行った。500時間後、1000時間後、2000時間後のジフェニルカーボネートの1時間あたりの生産量は7.28トン、7.29トン、7.29トンであり、反応したフェノールに対して選択率は98%、98%、98%であり、非常に安定していた。また、製造された芳香族カーボネートには、ハロゲンは実質的に含まれていなかった(1ppb以下)。
(2)高純度ジフェニルカーボネートを取得する工程(II)
実施例1と同様な方法で行われた。
(3)高品質ポリカーボネートを製造する工程(III)
図5に示すようなガイド接触流下式重合器2基を直列に配置した重合装置を用いて芳香族ポリカーボネートの製造をおこなった。これらの重合器の材質は、すべてステンレススチールである。ガイド接触流下式第1重合器は円筒形側面ケーシングとテーパー形の底部ケーシングを有するものであって、L=950cm、h=850cm、D=400cm、d=20cm、C=150度 、S=750m である。第2重合器は実施例1で用いたものと同じものである。
ビスフェノールAと工程(I)、(II)で製造された高純度ジフェニルカーボネート(対ビスフェノールAモル比1.06)とから製造された芳香族ポリカーボネートの溶融プレポリマー(数平均分子量Mnは2,500)が、供給ポンプによって第1重合器の供給口1より供給ゾーン3に連続的に供給された。第1重合器内の多孔板2を通して重合反応ゾーンに連続的に供給された、該溶融プレポリマーは、ガイド4に沿って流下しながら重合反応が進められた。第1重合器の重合反応ゾーンは真空ベント口6を通して800Paの圧力に保持されている。ガイド4の下部から重合器の底部11に入ってきた重合度の高められた芳香族ポリカーボネートの溶融プレポリマー(数平均分子量Mnは5,500)は、該底部での滞留量がほぼ一定となるように排出ポンプ8によって排出口7から一定の流量で連続的に抜き出された。この溶融プレポリマーが、供給ポンプによって第2重合器の供給口1より供給ゾーン3に連続的に供給された。第2重合器内の多孔板2を通して重合反応ゾーンに連続的に供給された、該溶融プレポリマーは、ガイド4に沿って流下しながら重合反応が進められた。第2重合器の重合反応ゾーンは真空ベント口6を通して50Paの圧力に保持されている。ガイド4の下部から第2重合器の底部11に入ってきた生成芳香族ポリカーボネートは、該底部での滞留量がほぼ一定となるように排出ポンプ8によって排出口7から6トン/hrの流量で連続的に抜き出された。
運転を開始してから50時間後に第2重合器の抜き出し口12から抜き出された芳香族ポリカーボネートの数平均分子量Mnは11,500であり、良好なカラー(b値3.2)であった。また、引張伸度は99%であった。運転開始から、60時間後、100時間後、500時間後、1,000時間後、2,000時間後、3,000時間後、4,000時間後、5,000時間後に抜き出し口12から抜き出された芳香族ポリカーボネートのMnは、それぞれ、11,500、11,550、11,500、11,550、11,500、11,500、11,550、11,500であり、安定であった。
このようにして製造された芳香族ポリカーボネートは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有量はこれらの金属元素に換算して、0.03から0.05ppmであり、塩素の含有量は1ppb以下(検出限界以下)であった。また、異種結合の含有量は0.11〜0.16モル%であった。
(4)芳香族モノヒドロキシ化合物のリサイクル工程(IV)
実施例1と同様な方法で行われた。
本発明によれば、ジアルキルカーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物から、着色がなく機械的物性に優れた高品質・高性能の芳香族ポリカーボネートを、工業的に大量(例えば、1時間あたり1トン以上)に長期間(例えば、1000時間以上、好ましくは3000時間以上、より好ましくは5000時間以上)、安定的に製造できる製造方法が提供される。
本発明を実施するのに好ましい第1連続反応蒸留塔の概略図である。胴部内部にはインターナルが設置されている。 本発明を実施するのに好ましい第2連続反応蒸留塔の概略図である。胴部内部には上部に規則充填物、下部に多孔板トレイからなるインターナルが設置されている。 本発明を実施するのに好ましい、第1連続反応蒸留塔と第2連続反応蒸留塔とを連結した装置の概略図である。 本発明を実施するのに好ましいガイド接触流下式重合器の概略図である。 本発明を実施するのに好ましい円筒形の側面ケーシングとテーパー形の底部ケーシングを有するガイド接触流下式重合器の概略図である。 なお、各図にて使用した符号の説明は、以下のとおりである;(図1、図2及び図3) 1 : ガス抜出し口; 2 : 液抜出し口; 3 : 導入口; 4 : 導入口; 5 : 鏡板部; L 、L :胴部長さ(cm); D 、D :胴部内径(cm); d11 、d21:ガス抜出し口内径(cm); d12 、d22:液抜出し口内径(cm); 101:第1連続多段蒸留塔; 201:第2連続多段蒸留塔; 11、12、21:導入口; 13、23:塔頂ガス抜出し口; 14、24、18,28:熱交換器; 17、27:塔底液抜出し口; 16、26:塔頂成分抜出し口; 31 : 第2連続多段蒸留塔塔底成分抜出し口;(図4及び図5) 1 : 溶融プレポリマー受給口; 2 : 多孔板; 3 : 溶融プレポリマー供給ゾーン; 4 : ガイド; 5 : 重合反応ゾーン; 6 : 真空ベント口; 7 : 芳香族ポリカーボネート排出口; 8 : 芳香族ポリカーボネート排出ポンプ; 9 : 所望により使用される不活性ガス供給口;10 : 重合反応ゾーンの側面ケーシング;11 : 重合反応ゾーンの底部ケーシング;12 : 芳香族ポリカーボネートの抜き出し口。

Claims (21)

  1. ジアルキルカーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物から芳香族ポリカーボネートを連
    続的に製造し、高品質芳香族ポリカーボネートの工業的製造方法であって、
    (I)ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とを原料とし、この原料を触媒が存在する第1連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該第1塔内で反応と蒸留を同時に行い、生成するアルコール類を含む第1塔低沸点反応混合物を該第1塔上部よりガス状で連続的に抜出し、生成するアルキルアリールカーボネート類を含む第1塔高沸点反応混合物を該第1塔下部より液状で連続的に抜出し、該第1塔高沸点反応混合物を触媒が存在する第2連続多段蒸留塔内に連続的に供給し、該第2塔内で反応と蒸留を同時に行い、生成するジアルキルカーボネート類を含む第2塔低沸点反応混合物を該第2塔上部よりガス状で連続的に抜出し、生成するジアリールカーボネート類を含む第2塔高沸点反応混合物を該第2塔下部より液状で連続的に抜出し、一方、ジアルキルカーボネート類を含む第2塔低沸点反応混合物を第1連続多段蒸留塔内に連続的に供給することによって、ジアリールカーボネートを連続的に製造する工程(I)と、
    (II)該ジアリールカーボネートを精製し、高純度ジアリールカーボネートを取得する精製工程(II)と、
    (III)該芳香族ジヒドロキシ化合物と該高純度ジアリールカーボネートとを反応させて芳香族ポリカーボネートの溶融プレポリマーを製造し、該溶融プレポリマーをガイドの表面に沿って流下せしめ、その流下中に該溶融プレポリマーの重合を行わせるガイド接触流下式重合器を用いて芳香族ポリカーボネートを製造する工程(III)と、
    (IV)工程(III)で副生する芳香族モノヒドロキシ化合物をジアリールカーボネート製造工程(I)に循環する芳香族モノヒドロキシ化合物のリサイクル工程(IV)と、を含み、
    (a)該第1連続多段蒸留塔が、長さL1(cm)、内径D1(cm)の円筒形の胴部を有し、内部に段数n1をもつインターナルを有する構造をしており、塔頂部又はそれに近い塔の上部に内径d11(cm)のガス抜出し口、塔底部又はそれに近い塔の下部に内径d12(cm)の液抜出し口、該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間部に1つ以上の第1の導入口、該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部に1つ以上の第2の導入口を有するものであって、L1、D1、L1/D1、n1、D1/d11、D1/d12 が、それぞれ式(1)〜(6)を満足するものであり、
    1500 ≦ L1 ≦ 8000 式(1)
    100 ≦ D1 ≦ 2000 式(2)
    2 ≦ L1/D1 ≦ 40 式(3)
    20 ≦ n1 ≦ 120 式(4)
    5 ≦ D1/d11 ≦ 30 式(5)
    3 ≦ D1/d12 ≦ 20 式(6)
    (b)該第2連続多段蒸留塔が、長さL2(cm)、内径D2(cm)の円筒形の胴部を有し、内部に段数n2をもつインターナルを有する構造をしており、塔頂部又はそれに近い塔の上部に内径d21(cm)のガス抜出し口、塔底部又はそれに近い塔の下部に内径d22(cm)の液抜出し口、該ガス抜出し口より下部であって塔の上部及び/又は中間部に1つ以上の第3の導入口、該液抜出し口より上部であって塔の中間部及び/又は下部に1つ以上の第4の導入口を有するものであって、L2、D2、L2/D2、n2、D2/d21、D2/d22 が、それぞれ式(7)〜(12)を満足するものであり、
    1500 ≦ L2 ≦ 8000 式(7)
    100 ≦ D2 ≦ 2000 式(8)
    2 ≦ L2/D2 ≦ 40 式(9)
    10 ≦ n2 ≦ 80 式(10)
    2 ≦ D2/d21 ≦ 15 式(11)
    5 ≦ D2/d22 ≦ 30 式(12)
    (c)該ガイド接触流下式重合器が、
    (1)溶融プレポリマー受給口、多孔板、該溶融プレポリマーを多孔板を通して重合反応ゾーンのガイドに供給するための溶融プレポリマー供給ゾーン、該多孔板と側面ケーシングとテーパー形の底部ケーシングとに囲まれた空間に該多孔板から下方に延びる複数のガイドが設けられた重合反応ゾーン、該重合反応ゾーンに設けられた真空ベント口、テーパー形の底部ケーシングの最下部に設けられた芳香族ポリカーボネート排出口、及び該排出口に接続された芳香族ポリカーボネート排出ポンプを有するものであって、
    (2)該重合反応ゾーンの側面ケーシングの水平面における内部断面積A(m2)が、式(13)を満足するものであって、
    0.7 ≦ A ≦ 300 式(13)
    (3)該A(m2)と、芳香族ポリカーボネート排出口の水平面における内部断面積B(m2)との比が、式(14)を満足するものであって、
    20 ≦ A/B ≦ 1000 式(14)
    (4)該重合反応ゾーンの底部を構成するテーパー形の底部ケーシングが、上部の側面ケーシングに対してその内部において、角度C度で接続されており、該角度C度が式(15)を満足するものであって、
    120 ≦ C ≦ 165 式(15)
    (5)該ガイドの長さ h(cm)が、式(16)を満足するものであって、
    150 ≦ h ≦ 5000 式(16)
    (6)該ガイド全体の外部総表面積S(m2)が式(17)を満足するものである、 2 ≦ S ≦ 50000 式(17)
    ことを特徴とする高品質芳香族ポリカーボネートの工業的製造方法。
  2. 製造される芳香族ポリカーボネートが1時間あたり1トン以上であることを特徴とする
    請求項1に記載の方法。
  3. 該d11と該d12が式(18)を満足し、且つ該d21と該d22が式(19)を満
    足することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法、
    1 ≦ d12/d11 ≦ 5 式(18)
    1 ≦ d21/d22 ≦ 6 式(19)。
  4. 該第1連続多段蒸留塔のL1、D1、L1/D1、n1、D1/d11、D1/d12
    がそれぞれ、2000≦L1≦6000、 150≦D1≦1000、 3≦L1/D
    1≦30、 30≦n1≦100、 8≦D1/d11≦25、 5≦D1/d12≦1
    8であり、且つ、該第2連続多段蒸留塔のL2、D2、L2/D2、n2、D2/d21
    、D2/d22 がそれぞれ、2000≦L2≦6000、 150≦D2≦1000、
    3≦L2/D2≦30、 15≦n2≦60、 2.5≦D2/d21≦12、 7
    ≦D2/d22≦25であることを特徴とする請求項1ないし3のうち何れか一項に記載の方法。
  5. 該第1連続多段蒸留塔のL1、D1、L1/D1、n1、D1/d11、D1/d12
    がそれぞれ、2500≦L1≦5000、 200≦D1≦800、 5≦L1/D1
    ≦15、 40≦n1≦90、 10≦D1/d11≦25、 7≦D1/d12≦15
    であり、且つ、該第2連続多段蒸留塔のL2、D2、L2/D2、n2、D2/d21
    2/d22 がそれぞれ、2500≦L2≦5000、 200≦D2≦800、 5
    ≦L2/D2≦15、 20≦n2≦50、 3≦D2/d21≦10、 9≦D2/d
    22≦20であることを特徴とする請求項1ないし4のうち何れか一項に記載の方法。
  6. 該第1連続多段蒸留塔及び該第2連続多段蒸留塔が、それぞれ、該インターナルとして
    トレイ及び/又は充填物を有する蒸留塔であることを特徴とする請求項1ないし5のうち何れか一項に記載の方法。
  7. 該第1連続多段蒸留塔が、該インターナルとしてトレイを有する棚段式蒸留塔であり、
    該第2連続多段蒸留塔が、該インターナルとして充填物及びトレイの両方を有する蒸留塔であることを特徴とする請求項6記載の方法。
  8. 該第1連続多段蒸留塔及び該第2連続多段蒸留塔の該トレイのそれぞれが、多孔板部と
    ダウンカマー部を有する多孔板トレイであることを特徴とする請求項6又は7記載の方法。
  9. 該多孔板トレイが、該多孔板部の面積1m2あたり100〜1000個の孔を有するも
    のであることを特徴とする請求項8記載の方法。
  10. 該多孔板トレイの孔1個あたりの断面積が、0.5〜5cm2であることを特徴とする
    請求項8又は9記載の方法。
  11. 該第2連続多段蒸留塔が、該インターナルとして充填物を上部に、トレイを下部に有す
    る蒸留塔であることを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
  12. 該第2連続多段蒸留塔の該インターナルの該充填物が、1基又は2基以上の規則充填物
    であることを特徴とする請求項6ないし11のうち何れか一項に記載の方法。
  13. 該第2連続多段蒸留塔の該規則充填物が、メラパック、ジェムパック、テクノパック、
    フレキシパック、スルザーパッキング、グッドロールパッキング、グリッチグリッドからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. ジアリールカーボネート精製工程(II)が、蒸留であることを特徴とする請求項1な
    いし13のうち何れか一項に記載の方法。
  15. 重合反応ゾーンの側面ケーシングが、内径D(cm)、長さL(cm)の円筒形であっ
    て、その下部に接続された底部ケーシングがテーパー形であり、該テーパー形のケーシングの最下部の排出口が内径d(cm)の円筒形であって、D、L、d が、式(20)、
    (21)、(22)及び(23)を満足する、
    100 ≦ D ≦ 1800 式(20)
    5 ≦ D/d ≦ 50 式(21)
    0.5 ≦ L/D ≦ 30 式(22)
    h−20 ≦ L ≦ h+300 式(23)
    ことを特徴とする請求項1ないし14のうち何れか一項に記載の方法。
  16. 該hが式(24)を満足する、
    400 < h ≦ 2500 式(24)
    ことを特徴とする請求項1ないし15のうち何れか一項に記載の方法。
  17. 1つの該ガイドが、外径 r(cm)の円柱状又は内側に溶融プレポリマーが入らない
    ようにしたパイプ状のものであって、r が式(25)を満足する、
    0.1 ≦ r ≦ 1 式(25)
    ことを特徴とする請求項1ないし16のうち何れか一項に記載の方法。
  18. 該ガイド接触流下式重合器2基以上を連結して重合を行うこと特徴とする請求項1ない
    し17のうち何れか一項に記載の方法。
  19. 請求項18記載の2基以上のガイド接触流下式重合器が、ガイド接触流下式第1重合器
    、ガイド接触流下式第2重合器の2基の重合器であって、この順に重合度を上げていく方法において、該第1重合器のガイド全体の外部総表面積S1(m2)と該第2重合器のガイド全体の外部総表面積S2(m2)とが式(26)を満足する、
    1 ≦ S1/S2 ≦ 20 式(26)
    ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
  20. アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有量が、これらの金属元素に換
    算して、0.1〜0.01ppmであり、且つ、ハロゲン含有量が、1ppb以下である高品質芳香族ポリカーボネートを製造することを特徴とする請求項1ないし19の何れか一項に記載の方法。
  21. 主鎖に対してエステル結合やエーテル結合等の異種結合を介して部分的に分岐している
    芳香族ポリカーボネートであって、該異種結合の含有量が、カーボネート結合に対して、
    0.05〜0.5モル%である高品質芳香族ポリカーボネートを製造することを特徴とする請求項1ないし20の何れか一項に記載の方法
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