JP5028937B2 - 新規なアントラセン化合物、その製造方法およびその用途 - Google Patents
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Description
1.光増感性能に優れた新規な化合物を提供すること。
2.上記化合物を光重合増感剤として含む光硬化性組成物を提供すること。
3.上記化合物を光重合増感剤として含み、光硬化させる際の加熱工程や、硬化させた後に時間が経過しても、染み出しや揮発が少ない光硬化性組成物を提供すること。
4.上記化合物を光重合増感剤として含む光硬化性組成物を、光硬化させた塗膜に有機溶媒を接触させても、アントラセン化合物が抽出され難い光硬化性組成物を提供する。
1.本発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、新規な化合物であり、ジアルコキシアントラセン化合物に比べて光重合性モノマーに対する溶解度が高い。
2.本発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、光重合増感剤として機能し、光重合性モノマーの光重合を促進させ、光硬化性組成物を効果的に硬化させる。
3.本発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、光ラジカル重合、光カチオン重合において光重合増感剤として使用した際に、優れた効果を発揮する。
4.本発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物を光重合増感剤として含む光硬化性組成物は、光硬化させる際の加熱工程や、光硬化させた後にアントラセン化合物が揮発(昇華)することがなく、光硬化させた塗膜に有機溶媒を接触させても、アントラセン化合物が抽出され難い。
第一発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、まず、第一反応によって、9−ヒドロキシアントラセン化合物と、酸化アルキレンまたはハロゲン化アルコール(ハロヒドリン)とを、塩基の存在下または非存在下に、付加反応させることによって、9−(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物とし、ついで、第二反応によって、塩基の存在下または非存在下、塩化アクリロイルまたは塩化メタアクリロイルと反応させて、(メタ)アクリル化することによって得られる。
上記反応によって得られる第一発明に係る化合物、すなわち、9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、新規化合物である。この第一発明に係る化合物は、光重合性モノマーをカチオン重合およびラジカル重合させる際に、光増感剤として使用できるほか、この化合物を配合して光硬化性組成物を調製することができる。
<9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセンの合成>
(第一反応)
攪拌機、温度計を装備した容量が100mlの三口フラスコに、9−アントロン12.5g(64.4ミリモル)、炭酸カリウム10.5g(78.1ミリモル)、N,N−ジメチルホルムアミド100mlを仕込み、室温で、フラスコの内容物を攪拌・混合した後、ブロモエタノール20g(160ミリモル)を添加し、80℃に昇温しこの温度で6時間攪拌を継続した。不溶分を濾別した反応液に、純水200mlを加えて結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、得られた結晶を純水20mlとメタノール20mlとによって洗浄し、引き続き減圧乾燥し、薄橙色結晶の9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン14.1g(59.2ミリモル)を得た。生成物の9−アントロンに対する収率は、92モル%であった。
(1)融点:115〜116℃。
(2)IRスペクトル(KBr,cm−1):722、835、879、1065、1334、1410、3225などの波長に吸収が認められた。
(3)1H−NMR(CDCl3,ppm):δ=2.42−2.50(t,1H,OH基)4.15−4.2(m,2H,メチレン),4.31−4.35(m,2H,メチレン),7.40−7.63(m,4H,アントラセン環),7.68−8.34(m,5H,アントラセン環)。
(4)マススペクトル:(EI−MS)m/z=238(M+)。
第一反応で使用したのと同じ容量が100mlの三口フラスコに、上記第一反応によって得られた9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン2.0g(8.4ミリモル)、アセトニトリル40ml、トリエチルアミン2.3g(22.7ミリモル)を仕込み、室温で、フラスコの内容物を攪拌・混合した後、塩化アクリロイル1.9g(21.0ミリモル)をアセトニトリル10mlに溶解した溶液を添加し、室温で1時間攪拌を継続した。このフラスコに純水10mlを加え、10分間攪拌を継続した後、さらに飽和食塩水10ml、酢酸エチル40mlを加えた。得られた反応生成物に純水10mlを加えて洗浄し、この洗浄操作を3回繰り返した。純水によって洗浄した後の液から有機層を分離した。分離した有機層を濃縮して得られた油状物質を、ヘキサン、酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー法によって精製し、橙色油状の9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン1.5g(5.1ミリモル)を得た。生成物の9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセンに対する収率は、61mol%であった。
(2)IRスペクトル(neat,cm−1):730、1060、1094、1161、1188、1265、1290、1335、1402、1720などの波長に吸収が認められた。
(3)1H−NMR(CDCl3,ppm):δ=4.44−4.47(m,2H,メチレン)、4.66−4.68(m,2H,メチレン)、5.92(dd,1H,ビニル基)、6.26(dd,1H,ビニル基)、6.48(dd,1H,ビニル基)、7.38−7.54(m,4H,アントラセン環)、7.90−8.36(m,5H,アントラセン環)。
(4)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=292(M+)。
<9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセンの合成>
実施例1で使用したのと同じ容量が100mlの三口フラスコに、上記実施例1の第一反応によって得られた、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン2.0g(8.4ミリモル)、アセトニトリル40ml、トリエチルアミン2.3g(22.7ミリモル)を仕込み、室温で、フラスコの内容物を混合した後、塩化アクリロイル2.2g(21.0ミリモル)をアセトニトリル10mlに溶解した溶液を添加し、1時間攪拌を継続した。このフラスコに純水10mlを加え、10分間攪拌を継続した後、さらに飽和食塩水10ml、酢酸エチル40mlを加えた。得られた反応生成物に純水10mlを加えて洗浄し、この洗浄操作を3回繰り返した。純水によって洗浄した後の液から有機層を分離した。分離した有機層を濃縮して得られた油状物質を、ヘキサン、酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー法によって精製し、黄色結晶の9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン1.3g(4.1ミリモル)を得た。生成物の9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセンに対する収率は、50mol%であった。
(1)融点:48〜50℃。
(2)IRスペクトル(KBr,cm−1):731、1085、1155、1292、1318、1339、1383、1715などの波長に吸収が認められた。
(3)1H−NMR(CDCl3,ppm):δ=2.04(s,3H,メチル基)、4.43−4.50(m,2H,メチレン)、4.66−4.69(m,2H,メチレン),5.66−5.82(m,1H,ビニル基)、6.19−6.26(m,1H,ビニル基),7.39−7.54(m,4H,アントラセン環)、7.77−8.37(m,5H,アントラセン環)。
(4)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=306(M+)。
<9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセンの合成>
(第一反応)
実施例の第一反応で使用したのと同じ容量が100mlの三口フラスコに、9−アントロン12.5g(64.4ミリモル)、炭酸カリウム10.5g(78.1ミリモル)、N,N−ジメチルホルムアミド100mlを仕込み、室温で、フラスコの内容物を攪拌・混合した後、酸化プロピレン9.4g(162ミリモル)を添加し、80℃に昇温しこの温度で6時間攪拌を継続した。不溶分を濾別した反応液に、純水200mlを加えて結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、得られた結晶を純水20mlとメタノール20mlとによって洗浄し、引き続き減圧乾燥し、薄橙色結晶の9−(2−ヒドロキシエトキシプロポキシ)アントラセン11.4g(45.2ミリモル)を得た。生成物の−アントロンに対する収率は、70モル%であった。
(1)融点:122〜123℃。
(2)IRスペクトル(KBr,cm−1):731、840、878、1080、1330、1402、3340などの波長に吸収が認められた。
(3)1H−NMR(CDCl3,ppm):δ=1.36−1.39(d,3H,メチル),2.82−2.83(d,1H,OH基)4.01−4.17(m,2H,メチレン),4.46−4.58(m,1H,メチン),7.40−7.54(m,4H,アントラセン環),7.96−8.40(m,5H,アントラセン環)
(4)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=252(M+)。
実施例1で使用したのと同じ100mlの三口フラスコに、上記第一反応で得られた9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン2.0g(7.9ミリモル)とアセトニトリル40ml、トリエチルアミン2.2g(21.3ミリモル)を仕込み、室温で、フラスコの内容物を混合した後、塩化アクリロイル1.8g(19.9ミリモル)をアセトニトリル10mlに溶解した溶液を添加し、1時間攪拌を継続した。このフラスコに純水10mlを加え、10分間攪拌を継続した後、さらに飽和食塩水10ml、酢酸エチル40mlを加えた。得られた反応生成物に純水10mlを加えて洗浄し、この洗浄操作を3回繰り返した。純水によって洗浄した後の液から有機層を分離した。分離した有機層を濃縮して得られた油状物質を、ヘキサン、酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー法によって精製し、橙色油状の9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン1.3g(4.2ミリモル)を得た。生成物の9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンに対する収率は、53mol%であった。
(2)IRスペクトル(neat,cm−1):732、1090、1195、1342、1405、1720などの波長に吸収が認められた。
(3)1H−NMR(CDCl3,ppm):δ=1.56(d,3H,メチル基)、4.16−4.34(m,2H,CHCH2O)、5.53−5.64(m,1H,CHCH3)、5.90(dd,1H,ビニル基)、6.25(dd,1H,ビニル基)、6.50(dd,1H,ビニル基)、7.39−7.50(m,4H,アントラセン環)、7.93−8.36(m,5H,アントラセン環)。
(4)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=306(M+)。
<9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセンの合成>
実施例1で使用したのと同じ100mlの三口フラスコに、上記実施例3の第一反応で得られた、9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン2.0g(7.9ミリモル)、アセトニトリル40ml、トリエチルアミン2.2g(21.3ミリモル)を仕込み、室温で、フラスコ内容物を混合した後、塩化メタクリロイル1.8g(19.9ミリモル)をアセトニトリル10mlに溶解した溶液を添加し、1時間攪拌を継続した。このフラスコに純水10mlを加え、10分間攪拌を継続した後、さらに飽和食塩水10ml、酢酸エチル40mlを加えた。得られた反応生成物に純水10mlを加えて洗浄し、この洗浄操作を3回繰り返した。純水によって洗浄した後の液から有機層を分離した。分離した有機層を濃縮して得られた油状物質を、ヘキサン、酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー法によって精製し、橙色油状の9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン1.3g(4.1ミリモル)を得た。生成物の9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンに対する収率は、52mol%であった。
(2)IRスペクトル(neat,cm−1):732,1085,1160,1340,1712などの波長に吸収が認められた。
(3)1H−NMR(CDCl3、ppm):δ=1.55(d,3H,CHCH3),2.00(s,3H,メチル基),4.23−4.38(m,2H,CHCH2O),5.52−5.62(m,1H,CHCH3),5.64−5.81(m,1H,ビニル基),6.22−6.24(m,1H,ビニル基),7.38−7.50(m,4H,アントラセン環),7.92−8.37(m,5H,アントラセン環)。
(4)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=320(M+)。
[評価例1]
モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に、トリル−i−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(チバ・スペシャリティー社製、商品名:イルガキュア250、以下同じ。)を重量部2部、実施例1に記載の方法で合成した9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン0.5重量部を加え、均一な光硬化性組成物とした。この光硬化性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー、厚さ100μm、以下同じ。)表面に、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外線LED(サンダー社製、商品名:SDL−10M3CUV、波長が395nmで最も強い光線を発する光源である。以下同じ。)を使用し、照射強度を3mW/cm2として照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの時間{硬化時間(タック・フリー・タイム)}は、144秒であった。
モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に、トリル−i−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを2重量部、実施例2に記載の方法で合成した9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン0.5重量部を加え、均一な硬化性組成物とした。この硬化性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで窒素雰囲気下、紫外線LED(上に同じ)を使用し、照射強度を3mW/cm2として照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、90秒であった。
モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に、トリル−i−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを2重量部、実施例3に記載の方法で合成した9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン0.5重量部を加え、均一な硬化性組成物とした。この硬化性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで窒素雰囲気下、紫外線LED(上に同じ)を使用し、照射強度を3mW/cm2として照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、90秒であった。
モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に、トリル−i−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを2重量部、実施例4に記載の方法で合成した9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン0.5重量部を加え、均一な硬化性組成物とした。この硬化性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで窒素雰囲気下、紫外線LED(上に同じ)を使用し、照射強度を3mW/cm2として照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、162秒であった。
評価例1に記載の例において、9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセンを添加しなかった外は、評価例1におけると同様の手順で光硬化組成物を調製し、ポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、膜厚が12μmになるように塗布し、紫外線LED(上に同じ)で、同じ照射強度で照射した。塗布膜に1800秒照射しても、タック(ベタツキ)は改善されず硬化しなかった。上記の評価例1〜評価例4、および、評価比較例1の結果を、表−1にまとめて示した。
1.本発明の第一発明に係る化合物を光重合増感剤として使用した評価例1〜評価例4の光硬化性組成物は、光重合性モノマーの光重合が促進されて、硬化時間(タック・フリー・タイム)が短い。
2.これに対して、本発明の第一発明に係る化合物を光重合増感剤として使用しない評価比較例1の光硬化性組成物は、光重合性モノマーの光重合が促進されないので、硬化時間が極端に長くなる。
モノマーとしてエポキシ変性シリコーン(東芝GEシリコーン社製、商品名:UV−9300)100重量部に対し、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(ローディア社製、銘柄名:2074)0.5重量部、実施例1に記載の方法で合成した9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン0.5重量部を混合し、光硬化組成物を調製した。この光硬化性組成物を、ポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、バーコーターによって、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで、表面から紫外線LED(上に同じ)を使用し、照射強度を3mW/cm2として光照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、13秒であった。
モノマーとしてエポキシ変性シリコーン(評価例5で使用したものに同じ)100重量部に対し、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(上に同じ)0.5重量部、実施例2に記載の方法で合成した9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン0.5重量部を混合し、光硬化組成物を調製した。この光硬化性組成物を、ポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、バーコーターによって、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで、表面から紫外線LED(上に同じ)を使用して照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、13秒であった。
モノマーとしてエポキシ変性シリコーン(上に同じ)100重量部に対し、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(上に同じ)0.5重量部、実施例3に記載の方法で合成した9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン0.5重量部を混合し、光硬化組成物を調製した。この光硬化性組成物を、ポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、バーコーターによって、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで、表面から紫外線LED(上に同じ)を使用して照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、8秒であった。
モノマーとしてエポキシ変性シリコーン(上に同じ)100重量部に対し、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(上に同じ)0.5重量部、実施例4に記載の方法で合成した9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン0.5重量部を混合し、光硬化組成物を調製した。この光硬化性組成物を、ポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、バーコーターによって、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで、表面からサンダー社製紫外線LEDを用いて光照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、13秒であった。
評価例5に記載の例において、9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセンを添加しなかった外は、評価例5におけると同様の手順で光硬化組成物を調製し、ポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、膜厚が12μmになるように塗布し、紫外線LED(上に同じ)で、同じ照射強度で照射した。塗布膜に600秒照射しても、タック(ベタツキ)は改善されず硬化しなかった。上記の評価例5〜評価例8、および、評価比較例2の結果を、表−2にまとめて示した。
1.本発明の第一発明に係る化合物を光重合増感剤として使用した評価例5〜評価例8の光硬化性組成物は、光重合性モノマーの光重合が促進されて、硬化時間(タック・フリー・タイム)が短い。
2.これに対して、本発明の第一発明に係る化合物を光重合増感剤として使用しない評価比較例2の光硬化性組成物は、光重合性モノマーの光重合が促進されないので、硬化時間が極端に長くなる。
評価例2に記載の例おいて調製した、光硬化性組成物の塗布膜を有するポリエステルフィルムを、180℃に温度調節したオーブン中で加熱した。ポリエステルフィルムを一定時間ごとにオーブンから取り出して、9−(2−(メタ)アクリルオキシエトキシ)アントラセンに起因するUVスペクトルのうち、波長が403nm付近の吸収ピーク高さを、紫外・可視分光光度計(島津製作所製、型式:UV2200)によって測定した。加熱前と、波長が403nm付近の吸収ピークにつき、加熱前の吸収ピーク高さと加熱後にピーク高さの低下割合を調べて、9−(2−(メタ)アクリルオキシエトキシ)アントラセンの昇華の程度を判定した。その結果、10分後に加熱前より8%低下していたので、8%昇華していると判明した。
評価例2に記載の例おいて、9−(2−(メタ)アクリルオキシエトキシ)アントラセンの代わりに、9,10−ジエトキシアントラセンを使用した外は評価例2におけると同様の手順で調製した、光硬化性組成物の塗布膜を有するポリエステルフィルムを準備した。このポリエステルフィルムを上の昇華試験例におけると同様に、180℃に温度調節したオーブン中で加熱し、9,10−ジエトキシアントラセンに起因するUVスペクトルのうち、波長が406nm付近の吸収ピーク高さを測定した。加熱前の吸収ピーク高さと加熱後にピーク高さの低下割合を調べて、9,10−ジエトキシアントラセンの昇華の程度を判定した。その結果、10分後に加熱前より63%低下していたので、63%昇華していると判明した。
Claims (5)
- 次の構造式(1)で表される9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物。
{構造式(1)において、R1は水素原子、メチル基またはエチル基のいずれかを表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基またはプロピル基のいずれかを表す。} - 請求項1に記載の9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の製造方法において、9−ヒドロキシアントラセン化合物に、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、または炭素数2若しくは3のハロゲン化アルコールのいずれかを付加反応させて9−(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物とし、ついで、この化合物に塩化アクリロイル化合物または塩化メタアクリロイル化合物を反応させることを特徴とする、9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の製造方法。
- 請求項1に記載の9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物を有効成分として含有することを特徴とする、光重合増感剤。
- 光硬化性組成物において、請求項3に記載の光重合増感剤、光重合開始剤、および光重合性モノマーを含有することを特徴とする、光硬化性組成物。
- 光重合開始剤が、オニウム塩である請求項4に記載の光硬化組成物。
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