JP4876455B2 - 新規なビス(シリルオキシ)ナフタセンジオン、その製造方法、およびその用途 - Google Patents

新規なビス(シリルオキシ)ナフタセンジオン、その製造方法、およびその用途 Download PDF

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Description

本発明は、新規なビス(シリルオキシ)ナフタセンジオン、その製造方法、およびその用途に関する。
従来、プリント用インク、接着剤、鋼板の表面コート、マイクロエレクトロニクス、プリント基板、歯科材料、ディスプレー用シール剤などの分野では、光重合性(または光硬化性)組成物に光重合開始剤を均一に混合(または配合)し、基材上に塗布し光線を照射して光重合性組成物をラジカル重合させて硬化膜を形成する技術が採用されている。この際使用される光重合開始剤としては、ナフタセンキノン(特許文献1参照)、カンファーキノン(特許文献2参照)、チタノセン化合物(特許文献3参照)(市販されているものに例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカル社製、商品名:イルガキュア784がある。)、ヘキサアリールビイミダゾール、アルキルアントラキノン、ホウ素化合物などが知られている。しかしながら、これら従来から知られているアルキルアントラキノン、ヘキサアリールイミダゾール、ホウ素化合物などは、可視領域の光線を吸収して開始剤(可視光感応性開始剤)として機能する性質が弱いので、単独使用では可視領域の光線照射で硬化反応を開始させるのは難しい。これら化合物につき可視領域の光線を吸収し光重合開始剤として機能するようにするには、ケトクマリンやその同効物などの光増感剤を共存させるのが通例であり、光硬化組成物の調製作業が煩雑となる。
一方、単独使用で光重合性(または光硬化性)組成物を光重合させることができる可視光感応性開始剤としては、カンファーキノン、イルガキュア784などが知られている。しかし、カンファーキノンは光重合性組成物に水素供与体のアミン化合物を共存させることが必要であり、このため光重合性組成物の調製作業が繁雑となる。さらに、チタノセン化合物であるイルガキュア784は、470nm波長付近の可視領域の光線を吸収して、ビニル単量体に光重合を開始させる性質を有し、単独使用で光重合開始剤として機能する光ラジカル重合開始剤であるが、金属イオンを含むので、導電性が問題となる電子材料分野で使用するには制約がある。さらに、アルキルアントラキノンに類似した化合物として4環性キノン化合物である6,11−ジアルコキシ−5,12−ナフタセンジオンが知られており、このものは425nm波長近辺の可視領域の光線を吸収し開始剤として機能する性質を有するが、可視領域の光線を照射した際にラジカルを発生する力は弱いという欠点がある。
特開平5−58941号公報 特開2003−313216号公報 特開2002−20441号公報 特開平10−273504号公報
本発明者は、かかる状況に鑑み、上記諸欠点を排除した技術を提供すべく鋭意検討の結果、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明の目的は、次のとおりである。
1.可視領域の光線を照射することによって硬化反応を開始させる、可視光感応性化合物を提供すること。
2.光増感剤を共存させず、単独使用でも硬化反応を開始させる、可視光感応性化合物を提供すること。
3.可視領域の光線を照射した際のラジカル発生力が強い、可視光感応性化合物を提供すること。
4.上記化合物の製造法を提供すること。
5.上記化合物を含む開始剤を提供すること。
6.上記光重合開始剤と、ラジカル重合性単量体含む光硬化性組成物を提供すること。
上記課題を解決するために、第一発明では、下記の式(I):
Figure 0004876455
{式(I)において、R、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、または、アリール基であり、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、または、カルボキシル基である。}で表される置換(無置換も含む。以下同じ意味である。)5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン提供する。
また、第二発明では、置換6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンを、シリルエーテル化することを特徴とする、第一発明に係る置換5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンの製造方法を提供する。
また、第発明では、第一発明に係る請求項1に記載の式(I)で表される置換5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンを含有することを特徴とする、光重合開始剤を提供する。
またさらに、第発明では、第発明に係る光重合開始剤と、ラジカル重合性単量体とを含むことを特徴とする、光重合性組成物を提供する。
本発明は、以下に詳細に説明するとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る化合物は、ビニル単量体を主成分とする光硬化性組成物に可視領域の光線を照射することによって硬化反応を開始させることができるので、紫外線を照射するための特別な光源が不要である。
2.本発明に係る化合物は、単独使用でもビニル単量体を主成分とする光硬化性組成物の硬化反応を開始させることができるので、光硬化性組成物調製作業が簡単である。
3.本発明に係る化合物は、寿命が長い可視領域の光源ランプを使用できるので、ランプを頻繁に変える必要がない。
4.本発明に係る化合物は、置換6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンをシリルエーテル化する方法により、容易に製造できる。
5.本発明に係る化合物は、可視領域の光線を照射した際のラジカル発生力が強いので、光増感剤などの他の化合物と併用する必要がなく、ビニル単量体を主成分とする光硬化性組成物調整作業が簡単である。
6.本発明に係る化合物を含む光硬化性組成物は、可視領域の光線を照射することによってラジカル重合反応を開始させることができるので、硬化反応の遂行が容易である。
本発明の第一発明に係る化合物は、上記式(I)で示される置換5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンであり、また、下記の式(II)で示される置換6,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオンである。下記式(II)における置換基は、式(I)のものと同じ意味である。なお、アナキノン体である上記式(I)の化合物と、パラキノン体である下記式(II)の化合物とは、光互変異性体の関係にある。
Figure 0004876455
上記式(I)または上記式(II)において、R、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはアリール基であり、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、またはカルボキシル基である。上記式(I)または上記式(II)の構造式で表わされる化合物は、赤外線分光光度計による赤外線(IR)の吸収スペクトル、核磁気共鳴装置(NMR)によるH NMR吸収スペクトル、紫外線(UV)吸収スペクトル、質量分析計によるMassスペクトル中のm/eなどによって、容易に確認することができる。特に、RとRが水素原子の場合に、H NMR吸収スペクトルが芳香族水素に帰属するピークが二種類しか認められないことから、通常、この化合物が上記式(I)の構造式で表されるアナキノン体で存在していることが確認できる。
上記式(I)および上記式(II)における置換基R(R〜R)のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基などの炭素数が1〜20のものが挙げられる。中でも入手の容易さから炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、とりわけメチル基が好適である。置換基R(R〜R)におけるアリール基としては、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、ナフチル基などが挙げられる。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられる。また、R、Rにおけるアルコキシ基としては、前記アルキル基に対応するアルコキシ基が挙げられ、特に炭素数1〜4のアルコキシ基が好適である。
上記式(I)で表わされる化合物の具体例としては、次のものが挙げられる。すなわち、5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、5,11−ビス(トリエチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、5,11−ビス(トリ−n−プロピルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、5,11−ビス(トリ−n−ブチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、5,11−ビス(トリ−n−ペンチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、5,11−ビス(フェニルジメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、5,11−ビス(フェニルジエチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、5,11−ビス(p−トリルジメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンなどである。
上記式(I)で表わされる化合物の中で代表的なものの構造式を、式(III)〜(VI)として下に示す。なお、これらの構造式において、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、t−Buはターシャリーブチル基を意味し、R、Rは式(I)におけると同じ意味である。
Figure 0004876455
Figure 0004876455
Figure 0004876455
Figure 0004876455
上記式(I)で表わされる化合物は、次の方法で製造することができる。すなわち、一般的には、置換6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオン(A)を、塩基の存在下または不存在下、有機溶媒中で、シリル化剤(B)を作用させることにより製造することができる。生成物は、H NMR吸収スペクトルから、前記式(I)の構造式で表されるアナキノン体として存在することが確認されている。
原料の置換6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオン(A)の製造は、たとえば、次の反応式(VII)で表わされ、置換1,4−ナフトヒドロキノン(C)と置換無水フタル酸(D)とを、酸の存在下加熱することにより得られる。芳香環が置換された1,4−ナフトヒドロキノン、および/または、芳香環が置換された無水フタル酸を使用すれば、置換6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンが得られる。なお反応式(VII)において、R、Rは式(I)におけると同じ意味である。反応式(VII)を遂行する際の置換1,4−ナフトヒドロキノン(C)に対する置換無水フタル酸(D)の比率は、0.5〜2モル倍、好ましくは1.0〜1.5モル倍の範囲で選ぶことができる。置換1,4−ナフトヒドロキノン(C)と置換無水フタル酸(D)を反応させる際に使用できる酸としては、硫酸、塩酸、リン酸、ポリリン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、テトラアルキルチタン酸などが挙げられる。その使用量は、置換1,4−ナフトヒドロキノン(C)に対して、1〜20モル%であり、加熱温度は100℃〜150℃、反応時間は0.1hr〜6hrである。
Figure 0004876455
置換1,4−ナフトヒドロキノン(C)の例としては、1,4−ナフトヒドロキノンのほか、5−メチル−1,4−ナフトヒドロキノン、6−メチル−1,4−ナフトヒドロキノン、5−ヒドロキシ−1,4−ナフトヒドロキノン、5−アミノ−1,4−ナフトヒドロキノン、5−ニトロ−1,4−ナフトヒドロキノンなどが挙げられる。
置換無水フタル酸(D)の例としては、無水フタル酸のほか、4−メチル無水フタル酸、4−クロル無水フタル酸、4−ニトロ無水フタル酸、3−ニトロ無水フタル酸、3−メチル無水フタル酸、3−クロル無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸が挙げられる。得られた置換6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンをシリル化すれば、置換5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンを得ることができる。置換5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンとしては、例えば、2−メチル−5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、2−クロル−5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、2−ニトロ−5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、1−メチル−5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、1−クロル−5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、1−ニトロ−5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、2−カルボキシ−5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、2,3−ジカルボキシ−5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンが挙げられる。
シリル化剤(B)としては、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロ−トリ(i−プロピル)シラン、クロロ(t−ブチル)ジメチルシラン、クロロフェニルジメチルシラン、クロロフェニルジエチルシラン、クロロ−p−トリルジメチルシラン、クロロ−トリフェニルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシランなどが挙げられる。シリル化剤(B)の使用量は、置換6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオン(A)のヒドロキシル基に対して、通常1〜5当量、好ましくは1〜2当量である。
シリル化反応を遂行する際に使用される有機溶媒は、シリル化剤(B)と反応しないものであれば特に制限がない。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼンなどの芳香属系化合物類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル系化合物類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N―ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系化合物類、ジクロルメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系化合物類、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどの飽和炭化水素系化合物類などが好適である。
シリル化反応を遂行する際に使用される塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、N,N−ジメチルアニリンなどのアミン類が挙げられる。シリル化反応を遂行する際の温度は、0℃以下であると反応が進行しにくく、80℃以上であると副反応が進み易くなるので、0〜80℃の範囲で選ぶのが好ましい。原料の置換6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンは、上記の有機溶媒に難溶性であるので、反応は通常スラリー状態で行われる。反応の進行に伴い、赤色のスラリーが黄緑色に変色するので、反応の進行状況を確認することができる。反応終了後はスラリーを濾過することにより、黄緑色のシリル化ナフタセンキノンの結晶を得ることができる。また、溶媒としてジクロルメタンなどのハロゲン系化合物類は、原料の置換6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンの溶解度が高いので、これを反応溶媒として使用した場合には、反応時間を短縮することができる。
本発明に係る置換5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンは、溶媒中で、波長が400〜500nmの光線を照射することにより、前記式(I)の構造式で表されるアナキノン体を、前記式(II)の構造式で表わされるパラキノン体に変換することができる。この光変異性体への変換は、アナキノン体を溶媒に溶解し、波長が400〜500nmの光線を照射しつつ、経時的に試料を採取し、採取した試料につき紫外線(UV)の吸収スペクトルを測定することにより、アナキノン体の波長が425nmの吸収が消失し、パラキノン体の波長が395nmの吸収が現れることによって確認することができる。パラキノン体から光互変異性体のアナキノン体に変換させる際に使用できる光源としては、青色LEDランプ、青色レーザー、青紫LEDランプ、白色LEDランプ、および、太陽光などが挙げられる。
アナキノン体をパラキノン体に変換させる際に使用できる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系化合物類、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン系化合物類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン、ネオペンタンなどの飽和炭化水素類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル類が挙げられる。アナキノン体に光線を照射しパラキノン体に変換させた後は、溶媒を除去することにより、固体のパラキノン体が得られる。このパラキノン体は、前記したとおり、赤外線(IR)の吸収スペクトル、核磁気共鳴装置(NMR)によるH NMR吸収スペクトルなどによって、確認することができる。特に、H NMR吸収スペクトルにおいて、芳香族の水素が4種類存在し、この芳香環の水素はアナキノン体には存在しないので、パラキノン体であることが容易に確認できる。
置換6,11−ビス(シリルオキシ)シナフタセン−5,12−ジオンの具体例としては、6,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオン、6,11−ビス(トリエチルシリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオン、6,11−ビス(ジメチルフェニルシリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオン、6,11−ビス(トリフェニルシリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオン、2−メチル−6,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオン、2−メチル−6,11−ビス(トリエチルシリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオン、2−メチル−6,11−ビス(ジメチルフェニルシリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオンなどが挙げられる。
本発明に係る置換5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、および、その光互変異性体である置換6,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオンは、光ラジカル発生剤としての機能を発揮し、ビニル単量体の光重合開始剤として有用である。光ラジカル重合させることができるビニル単量体としては、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどが挙げられる。これら単量体は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。これらビニル単量体を光重合させる際に、少量の多官能基を有する架橋剤を存在させるのが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシ変性シリコーン系化合物、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレートなどが挙げられる。
エポキシアクリレートは、エポキシ基に由来する〔−CH(OH)−CHO−〕を含むエポキシ樹脂一分子中に、一個またはそれ以上の(メタ)アクリル酸を導入した化合物である。エポキシ残基以外の官能基、例えば、エーテル基や水酸基などが含まれていてもよい。このような多官能エポキシアクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールF型エポキシアクリレート、ビフェニル型エポキシアクリレート、フェノールノボラック型エポキシアクリレート、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、脂肪族多価アルコールのエポキシアクリレート、脂環式エポキシアクリレートなどが挙げられる。エポキシアクリレートは、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
また、ポリエステルアクリレートは、多塩基酸と多価アルコールとが脱水縮合したポリエステルの一個またはそれより多くのアルコール残基に、(メタ)アクリル酸がエステル結合した誘導体である。なお、分子中に、エステル基以外の官能基、例えば、エーテル基や水酸基などが含まれていてもよい。二塩基酸としては、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラクロロフタル酸などが挙げられる。上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリングリコール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。ポリエステルアクリレートは、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
さらに、ウレタンアクリレートは、従来から知られている方法でポリイソシアネート、ポリオールおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるものである。すなわち、はじめにポリイソシアネートとポリオールとを反応させて高分子ポリイソシアネートを生成し、ついでそれを水酸基含有(メタ)アクリレートと反応させて、末端に不飽和基を結合させることによって、または、まず水酸基含有(メタ)アクリレートとポリイソシアネートを反応させ、ついで得られた不飽和ポリイソシアネートとポリオールとを、場合によってはポリイソシアネート共存下に反応させて得られるものである。
ウレタンアクリレート用のポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびこれらの共重合体、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,2’−チオジエタノールなどが挙げられる。これらポリオールは、一種でも二種以上の混合物であってもよい。ウレタンアクリレート用の水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
本発明に係る置換5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、および、その光互変異性体である置換6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンは、光ラジカル発生剤が主要な用途である。光重合性組成物とするには、前記光重合開始剤を上記ビニル単量体(混合物)に含有させる(配合する)。
置換5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン、または、その光互変異性体である置換6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンを、光重合開始剤として使用する場合、これら光重合開始剤の上記ビニル単量体に対する添加量を、上記単量体に対して0.01〜10重量%の範囲で選ぶのが好ましい。光重合開始剤の添加量が0.01重量%未満では重合(硬化)速度が遅くなり、10重量%を超えると硬化物の物性が悪化するので、いずれも好ましくない。光重合開始剤のより好ましい範囲は、0.1〜3重量%である。
本発明の第五発明に係る光硬化性組成物は、光重合開始剤と、ラジカル重合性単量体とを含み、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、希釈剤、シラン着色剤、有機または無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤などの各種樹脂添加剤を、通常の使用範囲で含有させる(配合する)ことができる。
希釈剤としては、エポキシアクリレートなどのようなエポキシ系希釈剤、オキサシクロブタンなどのオキセタン系希釈剤、ビニルエーテル系希釈剤、(メタ)アクリル単量体系希釈剤など挙げられる。着色剤としては、青色顔料、黄色顔料、赤色顔料、白色顔料、黒色顔料などが挙げられる。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラックなどが挙げられる。黄色顔料としては、例えば黄鉛、亜鉛黄、カドニウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどが挙げられる。
赤色顔料としては、例えば、ベンガラ、カドニウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドニウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが挙げられる。青色顔料としては、例えば紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどが挙げられる。白色顔料としては、例えば亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが挙げられる。その他の顔料としては、例えばバライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどが挙げられる。
本発明の第五発明に係る光硬化性組成物は、基材上に塗布したのち、この塗布膜に可視領域の光線を照射することにより硬化させることができる。基材は、鋼板、印刷製版、フィルム、紙、アルミニウム箔などの外観が平面を呈するもののほか、曲面を呈するもの、塊状を呈するものであってもよい。基材上に塗布した光硬化性組成物は、特に波長範囲400〜500nmの光線を照射することにより、速やかに硬化させることができる。この場合の光源としては、波長範囲400〜500nmに含まれる光線を発光できる光源であれば特に制限がなく、例えば、太陽光、キセノンランプ、青色LEDランプ、緑色LEDランプ、Vランプ(ヒュージョン社製)などが挙げられる。
光照射は、酸素不存在下で行うのが好ましい。酸素存在下で照射すると、酸素阻害のため表面のベタツキ(タック)がなかなか取れず、開始剤を多量添加する必要がある。酸素不存在下での硬化方法としては、窒素ガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス雰囲気で行う方法が挙げられる。また、酸素非過性の膜をかぶせて光硬化させる方法も有効である。なお、光硬化完了の確認は、タック(ベタツキ)フリーテスト(指蝕テスト)によって行うことができる。このタックフリーテストは、フィルムなどの基材表面の硬化膜を指先で触り、タックを確認し、硬化膜のタックが無くなるまでの時間をタックフリータイムとする。この時間が短いほど、硬化反応が速いことを意味する。
第五発明に係る光硬化性組成物を、例えば、フィルム表面に塗布して硬化させるには、次の手順で行う。すなわち光硬化性組成物を、フィルム表面にバーコーターを使用して塗布する。フィルムの場合、その厚さが通常30〜100μm程度の膜厚のものを使用し、バーコーターによって塗布する場合は、塗布膜の厚さが数μmから数十μmになるようなロッドナンバーのバーコーターを使用する。このようにして得られた塗布物を、上記した光源の光を照射することにより、アクリル酸エステル系化合物などのようなラジカル重合性単量体を含む光硬化性組成物を、速やかに硬化させることができる。また、本発明の第五発明に係る光硬化性組成物は、任意の形状の固形物として固化させることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下に記載の例に限定されるものではない。以下に記載の例において、「部」は重量部を意味し、「%」は重量%を意味する。
[実施例1]
<5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンの合成>
攪拌機、温度計を装備した容量が20ミリリットルの三口フラスコに、4ミリリットルのジクロルメタンに580mgの6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンに分散させたものを仕込み、フラスコ内空間を窒素ガスで置換した。さらに同じフラスコに、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミドを2ml仕込んだあと、室温下で48時間攪拌を継続した。時間の経過にともない、フラスコ内のスラリーは赤色から黄緑に変色した。48時間経過後、スラリーを濾過し、常温で減圧乾燥して380mgの黄緑色結晶を得た。
得られた黄緑色の結晶について、(1)融点(JIS K0064に準拠した、ガレンキャンプ社製の融点測定装置、型式:MFB−595で測定)、(2)赤外線(IR)分光光度計(日本分光社製、型式:IR−810)によるIR吸収スペクトル、(3)核磁気共鳴装置(NMR)(日本電子社製、型式:GSX FT NMR Spectrometer)によるH NMRスペクトル、(4)紫外線(UV)分光光度計(島津製作所社製、型式:UV−2200)によるUV吸収スペクトル、(5)質量分析計(島津製作所社製、型式:GCMS−QP5000)によるMassスペクトル、などを評価した。
評価結果は、次のとおりであった。
(1)融点:255℃。
(2)IR吸収スペクトル(cm−1):1658、1584、1366、1342、1276、1242、1108、1022、936、842、760、722。
(3)H NMRスペクトル:δ0.4{18H,s,2(−CHSi}、7.7(4H,bs,芳香環)、8.30(4H,bs,芳香環)。
(4)UV吸収スペクトル:425nm(ε6.52×10)、300nm(ε9.78×10)、254nm(ε4.62×10)。
(5)Massスペクトル:m/e 434。
上の(1)〜(5)、特に、(2)において、キノンに特有な1658cm−1
の吸収が認められたこと、また(3)のH NMRスペクトルにおいて、芳香族水素が二種類しかなく、高い対照性が認められること、δ0.4にトリメチルシリル基に由来する吸収が認められること、(5)のMassスペクトルにおいて、C2426Siに相当する434m/eが認められることなどから、この例で得られた黄緑色結晶は、5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンであることが確認できた。
[実施例2]
<5,11−ビス(トリエチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンの合成>
攪拌機、温度計を装備した容量が20ミリリットルの三口フラスコに、4ミリリットルのジクロルメタンに、580mgの6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンを分散させたものを仕込み、フラスコ内空間を窒素ガスで置換した。さらに同じフラスコに、トリエチルクロロシラン1.8gと、トリエチルアミン1.1g仕込んだあと、室温下で48時間攪拌を継続した。このあと、フラスコにn−ヘキサンを20ミリリットル加え、析出した白い沈殿を濾別して除いた。濾液を濃縮し、カーキ色の結晶を析出させ、吸引濾過し、常温で減圧乾燥し、280mgのカーキ色の結晶を得た。
得られたカーキ色の結晶について、実施例1におけると同様の手順で評価した。評価結果は、次のとおりである。
(1)融点:103〜104℃。
(2)IR吸収スペクトル(cm−1):2950、2870、2660、1592、1480、1415、1380、1342、1280、1240、1180、1040、990、940、762、720。
(3)1H NMRスペクトル:δ0.90(12H,q、6CH),0.96(18H,t,6CH),7.70(4H,bs,芳香環)、8.30(4H,bs,芳香環)。
(4)UV吸収スペクトル:425nm(ε1.19×10)、254nm(ε1.03×10)。
上の(1)〜(4)、特に、(3)の1H NMRスペクトルにおいて、芳香族水素が二種類しかないことから、この例で得られたカーキ色結晶は、パラキノン体ではなく、より対照性の高いアナキノン体の5,11−ビス(トリエチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンであることが確認できた。
[実施例3]
<5,11−ビス(ジメチルフェニルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンの合成>
攪拌機、温度計を装備した容量が20ミリリットルの三口フラスコに、4ミリリットルのジクロルメタンに、580mgの6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンを分散させたものを仕込み、フラスコ内空間を窒素ガスで置換した。さらに同じフラスコに、攪拌下フェニルジメチルクロロシラン1700mgと、トリエチルアミン1000mgを仕込んだところ、フラスコ内容物は直ちに緑っぽくなり、結晶の析出が開始した。2時間攪拌したあと、n−ヘキサンを10ml加えた。析出した白い沈殿を濾別して除き、濾液を濃縮し、カーキ色の結晶を析出させ、吸引濾過し、常温で減圧乾燥し、280mgのカーキ色の結晶を得た。
得られたカーキ色の結晶について、実施例1におけると同様の手順で評価した。評価結果は、次のとおりである。
(1)融点:153〜154℃。
(2)IR吸収スペクトル(cm−1):1660、1590、1484、1414、1370、1342、1272、1216、1108、1030、990、940、836、820、793、715、692。
(3)1H NMRスペクトル:δ0.70(12H,s、4CH),7.28(6H,m,フェニル),7.50(4H,bs,芳香環)、7.50(4H,d,フェニル),8.10(4H,bs,芳香環)。
(4)UV吸収スペクトル:426nm(ε1.17×10)、250nm(ε1.01×10)。
上の(1)〜(4)から、この例で得られたカーキ色結晶は、5,11−ビス(ジメチルフェニルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンであることが確認できた。
[実施例4]
<6,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオンの合成>
容量が20ミリリットルの三口フラスコに、塩化メチレン25mlに、実施例1に記載の方法で合成した5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン100mgを溶解した溶液を仕込み、常温で、窒素雰囲気下、青色LEDランプ(LUXEON社製、3W、ピーク波長約460nm)を使用して照射した。3時間照射したあと、溶液のUVスペクトルを測定したところ、アナキノン体に起因する最長波長の吸収425nmのピークが消失し、パラキノン体に起因する395nmのピークが認められた。溶液を減圧溜去させたところ、カーキ色の固体が得られた。
得られたカーキ色の固体につき、上記の例におけると同様に、各種の特性を測定した。測定結果は、次のとおりであった。
(1)融点:128〜130℃。
(2)IR吸収スペクトル(cm−1):1665、1620、1580、1440、1372、1256、1105、1024、930、840、800、760、720。
(3)1H NMRスペクトル:δ0.40(18H,s、2Si(CH、7.5(2H,m,芳香環)、7.6(2H,m,芳香環)、8.10(2H,dd,芳香環)、8.30((2H,dd,芳香環)。
(4)UV吸収スペクトル:395nm(ε8.7×10)、254(ε1.57×10)。
(5)Massスペクトル:m/e 434。
上の(1)〜(5)、特に(2)において、1665cm−1のキノンに特有な吸収が認められること、(3)の1H NMRスペクトルにおいて、芳香族水素に起因する吸収が四種類あること、および、(5)においてMassスペクトルの主ピークが434に認められることから、得られたカーキ色の固体は、6,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオンであることが確認された。
[実施例5]
<光重合開始剤としての評価試験1>
トリメチロールプロパントリアクリレート5gに、実施例1に記載の方法で合成した5,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンを10mg加え、常温で均一に混合し光重合性組成物を得た。この光重合性組成物を、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、厚さ100ミクロン)の表面に、バーコーター法によって膜厚が12ミクロンになるように塗布した。ついで、このポリエステルフィルムを窒素雰囲気下に置き、光重合性組成物の塗布面に、青色LEDランプ(実施例4で使用したものに同じ)で、照射強度を3mw/cmとして照射した。青色LEDランプを照射しつつ、タックフリーテストを行った。塗布面に青色LEDランプを照射することによりタック(ベタツキ)がなくなるので、フィルム表面の硬化膜を指先で触り、硬化膜のタックが無くなるまでの時間をタックフリータイムとした。この例のタックフリータイムは、15秒であった。
[実施例6]
<光重合開始剤としての評価試験2>
トリメチロールプロパントリアクリレート5gに、実施例2に記載の方法で合成した5,11−ビス(トリエチルシリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンを10mg加え、常温で均一に混合し光重合性組成物を得た。この光重合性組成物を、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、厚さ100ミクロン)の表面に、バーコーター法によって膜厚が12ミクロンになるように塗布した。ついで、このポリエステルフィルムを窒素雰囲気下に置き、光重合性組成物の塗布面に、青色LEDランプ(実施例4で使用したものに同じ)を光源とし、照射強度を3mw/cmとして照射した。実施例5におけると同様の方法でタックフリータイムを測定したところ、15秒であった。
[実施例7]
<光重合開始剤としての評価試験3>
トリメチロールプロパントリアクリレート5gに、実施例4に記載の方法で合成した6,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオンを10mg加え、常温で均一に混合し光重合性組成物を得た。この光重合性組成物を、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、厚さ100ミクロン)の表面に、バーコーター法によって膜厚が12ミクロンになるように塗布した。ついで、このポリエステルフィルムを窒素雰囲気下に置き、光重合性組成物の塗布面に、青色LEDランプ(実施例4で使用したものに同じ)を光源とし、照射強度を3mw/cmとして照射した。実施例5におけると同様の方法でタックフリータイムを測定したところ、40秒であった。
[比較例1]
<光重合開始剤としての比較評価試験1>
実施例5に記載の例において、6,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオンを、6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンに変更したほかは、実施例1に記載したのと同様の手順で組成物を調製し、ポリエステルフィルム表面に塗布し、同様の手順で青色LEDを光源として30分間照射したが、光重合性組成物の膜は全く硬化しなかった。
[比較例2]
<光重合開始剤としての比較評価試験2>
実施例5に記載の例において、6,11−ビス(トリメチルシリルオキシ)ナフタセン−5,12−ジオンを、6,11−ジエトキシナフタセン−5,12−ジオンに変更したほかは、実施例1に記載したのと同様の手順で組成物を調製し、ポリエステルフィルム表面に塗布し、同様の手順で青色LEDを光源として30分間照射したが、光重合性組成物の膜は全く硬化しなかった。
本発明に係るビス(シリルオキシ)ナフタセンジオンは新規な化合物であり、かつ、可視光照射によりラジカルを発生させ、これを含む光重合性組成物に可視領域の光線を照射することによって光重合を進行させ、光重合性組成物の光重合を開始させる機能を発揮する。光重合性組成物は、可視領域の光線を照射することによって硬化させることができる。この光重合性組成物は、プリント用インク、接着剤、鋼板の表面コート、マイクロエレクトロニクス、プリント基板、歯科材料、ディスプレー用シール剤などの用途において優れた耐久性を発揮し、産業上の利用価値は極めて大である。

Claims (5)

  1. 下記の式(I):
    Figure 0004876455
    {式(I)において、R、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、または、アリール基であり、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、または、カルボキシル基である。}で表わされる、置換(無置換も含む。以下同じ意味である。)5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン
  2. 請求項1に記載の式(I)におけるR、R、Rがメチル基であり、R、Rが水素である、請求項1に記載の置換5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオン。
  3. 置換6,11−ジヒドロキシナフタセン−5,12−ジオンを、シリルエーテル化することを特徴とする、請求項1に記載の置換5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンの製造方法
  4. 請求項1に記載の式(I)で表される置換5,11−ビス(シリルオキシ)ナフタセン−6,12−ジオンを含有することを特徴とする、光重合開始剤。
  5. 請求項に記載の光重合開始剤と、ラジカル重合性単量体とを含むことを特徴とする、光重合性組成物。
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