JP5028513B2 - 能動振動制御装置 - Google Patents
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Description
また、往復運動を生じさせるリニアアクチュエータとして、固定子と、該固定子に対して移動可能な可動子とを備えるものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、特許文献3には、適応デジタルフィルタ(Adaptive Digital Filter)を使用して、振動体から発生する振動を減衰させ、該振動の低減化を図る車両用振動騒音制御装置の技術が開示されている。
しかしながら、そのためには、中立位置に保つために常時バイアスの直流電流をコイルに通電し続ける必要があり、無駄な消費電力となり、車両の場合燃費を悪化させる要因になる。
つまり、可動子または固定子が自重により下方に変位した状態で交流電流を印加すると可動子と固定子の軸方向の振動の振幅の中央位置が低下して振幅を最大限に活用できないというリニアアクチュエータの加振制御の制限が防止できる。
従って、請求項4に記載の発明によれば、パワープラント運転状態判別手段により判別されたパワープラントの運転状態に応じて予め設定された所定の直流電流をバイアス電流として印加重畳するリニアアクチュエータを加振させる所定の周波数の値以下の領域を変更するので、パワープラントから車体に伝達された振動の周波数が、所定の値以下の場合に対してリニアアクチュエータの振幅を最大限に活用できるようにすることができ、パワープラントから車体に伝達された振動の周波数が所定の値を超えて、その振幅が小さいときには、リニアアクチュエータに所定の直流電流をバイアスとして印加重畳しないで、無駄な消費電力が抑制できる。
図12中、太矢印は、エンジンの発生する振動が車室内振動として伝達されるまでの主要な経路を示し、中太矢印はその次のレベルの主要な経路を示し、細矢印は振動が伝達される度合いが小さい経路を示す。
また、エンジンが発生する振動の主要経路の2つ目は、図12において中太矢印で示すように、トランスミッションからドライブシャフト等の駆動系に伝達され、サスペンションを経て、サブフレーム、車体骨格を伝播して、車内振動として伝播される。
ちなみに、車体骨格が振動すると中太矢印で示すように車内振動としてだけではなく、車室内の空気を音場として車室内音(車室内騒音)としても乗員に感じさせる。
ここで、防振制御ECU50は、特許請求の範囲に記載の「制御手段」に対応する。
なお、変速機9は、例えば、エンジン2の出力軸を図示省略のトルクコンバータに入力され、その後、複数の組の変速段ギア同士またはリバースギアが油圧クラッチにより噛み合うような構成とされている。この油圧クラッチは、図示省略の油圧回路がエンジン・AT制御ECU70に制御されて動作する。
そして、エンジン・AT制御ECU70から変速機9からは、図示しない油圧回路に、変速段を切り換えるための信号を出力したり、前記したトルクコンバータのロックアップ・クラッチを動作させたり、解除させたりする信号を出力する。
これらエンジンマウント5A,5B,6,7は、エンジン2の構成部品である前記ピストンの運動に起因して、前記クランク軸の回転速度であるエンジン回転速度に対応して周期的に発生するトルク変動により発生するエンジン振動が、サブフレーム4及びメインフレーム3に伝達されるのを抑制する。
そして、リニアアクチュエータ30,30及び防振制御ECU50が能動防振制御装置1を構成している。
次に、図2を参照しながら適宜、図1を参照してエンジンマウント5A,5Bの構成について説明する。
エンジン2(図1参照)の前部及び後部でエンジン2を支持する一対のエンジンマウント5A,5Bは、エンジン振動のうちで、第1、第2フレーム4a,4b(図1参照)への主にロール振動の伝達を抑制する。各エンジンマウント5A,5Bは、フレーム4a,4bに一体に設けられた取付け座10にボルト11により固定され、該取付け座10を介してフレーム4a,4bに取り付けられるが、別の例としてフレーム4a,4bに直接固定されてもよい。
ちなみに、エンジンマウント6,7も、通常の液封のエンジンマウントである。
なお、説明の便宜上、エンジンマウント5及びリニアアクチュエータ30に関しての上下方向は、図2に示されるエンジンマウント5での上下方向であるとする。
ホルダ23は、弾性体21を介することなく、ハウジング20及び取付け座10を介して、フレーム4a,4bと剛体的に取り付けられている。
ちなみに、仕切り部材には、主液室25と前記した副液室とを連通するオリフィス通路が設けられている。
次に、図3から図5を参照しながら、適宜、図1、図6、図9を参照してリニアアクチュエータ30の構成について説明する。図3は、リニアアクチュエータの外形斜視図である。リニアアクチュエータ30の本体は、ベース板35の上面に固定された筒状のケーシング34内に収容されている。ベース板35上には振動センサ29が固定され、リニアアクチュエータ30へ電力を供給するハーネス38と振動センサ29の信号線39は、ベース板35の上下方向の貫通孔35dを経て、ベース板35の下面側に設けられたコネクタ(図示せず)に接続されている。
ちなみに、リニアアクチュエータ30へ電力を供給するハーネス38は、ケーシング34の下部の小穴34aから外部に引き出され、貫通孔35dに導かれる。リニアアクチュエータ30は、ベース板35のボルト孔35bにより第1、第2フレーム4a,4b(図1参照)にボルトナット締結される。
リニアアクチュエータ30は、車体B(図1参照)のうち、主として、エンジンマウント5(図1参照)が取り付けられた第1、第2フレーム4a,4b(図1参照)を有するサブフレーム4(図1参照)の振動を低減する。つまり、エンジン2(図1参照)の発生するロール振動を打ち消すための制振用振動を発生し、該制振用振動を第1、第2フレーム4a,4bに加える。
固定部材31は、ベース板35に固定される本体としての柱状の軸部36を備える。制振用振動の振動方向に平行な軸線LAを有する軸部36は、そのネジ部に螺合する固定具としてのナット16によりベース板35に固定される。この実施形態では、前記振動方向及び軸線LAに平行な方向である軸線方向は上下方向に一致する。
なお、ナット16でベース板35に取り付ける部分のベース板35の下面側には窪み部35aが設けられている。
そして、リニアアクチュエータ30の構成部材である第2ヨーク42、コイル40及び永久磁石43a,43b,44a,44bの質量を利用して制振用振動が発生するので、リニアアクチュエータ30を小型化できる。
なお、可動部材32が上下動の上下側限界でゴム製のストッパ67A,67Bと当接する部分はボルト17の頭部、端部を避けて、板バネ33a,33bのボルト17より外周側で環状のストッパ67A,67Bと当接するようにしても良い。そして、後記する可動部材32の自重による板バネ33a,33bの下方への垂れがない状態で、かつ、第1ヨーク41と第2ヨーク42との軸線LA方向の相対位置が図9の(a)に示すように中立位置のとき板バネ33aとストッパ67Bとの間隙、板バネ33bとストッパ67Aとの間隙が同じ距離L1になるように設定することが好ましい。
次に、図6を参照しながら、適宜、図1を参照して、防振制御ECU50の構成について説明する。図6は、防振制御ECUの機能構成ブロック図である。防振制御ECU50は、マイクロコンピュータ51、駆動回路53A,53B、CAN通信部73を含んで構成されている。マイクロコンピュータ51は、CPU、ROM、RAM、バス、クロック回路、入出力インタフェース等を含み、ここでは、マイクロコンピュータ51は、高速で信号を処理するDSP(デジタルシグナルプロセッサDigital Signal Processor)も含んで広義に呼称するものとし、後記する機能構成部分の最小二乗演算部83cと適応フィルタ部83dの演算処理はDSPにおいて行われる。
そして、ROMに格納されたプログラムを読み出してCPUにおいてそれを実行することで、エンジン回転速度演算部81、パワープラント運転状態モード判定部(パワープラント運転状態判別手段)82、振動騒音制御部83A,83Bの機能が実行される。
ここで、エンジン2として、例えば、V型6気筒エンジンを想定し、クランク軸の回転角を検出するクランクパルスセンサ(図示せず)が、例えば、6deg.ごとにクランクパルス信号を出力してエンジン・AT制御ECU70に入力し、TDC(Top Dead Center)センサが各気筒のTDC位置を示すTDCパルス信号をエンジン・AT制御ECU70に入力するものとする。
そして、振動騒音制御部83A,83Bは、それぞれ1つのリニアアクチュエータ30を加振制御する。
防振制御ECU50のCAN通信部73は、CAN通信制御機能を有しエンジン・AT制御ECU70からCAN通信線71で入力されるエンジン2の、例えば、各気筒がTDCに達したときタイミングを示すTDCパルス信号、クランク角の所定の角度、例えば、6deg.ごとに出力されるクランクパルス信号(以下、「CRKパルス信号」と称する)、エンジン2が全筒運転状態か部分気筒休止状態かを示すための気筒休止信号、FI(Fuel Injection)のタイミングを示すFI信号、アイドルストップ信号、変速機9(図1参照)内の図示しないトルクコンバータをロックアップした状態であることを示すロックアップ信号、前記したエコモード信号等を受信する。
CAN通信部73は、例えば、TDCパルス信号、CRKパルス信号をエンジン回転速度演算部81、振動騒音制御部83Aの周波数同定部83a及び基準信号生成部83b、振動騒音制御部83Bの周波数同定部83a及び基準信号生成部83bに入力する。また、CAN通信部73は、FI信号、気筒休止信号、アイドルストップ信号、ロックアップ信号、エコモード信号をパワープラント運転状態モード判定部82へ入力する。
エンジン回転速度演算部81は、主にCRKパルス信号にもとづいてエンジン2の回転速度NE(以下「エンジン回転速度NE」と称する)を演算し、演算された回転速度NEをパワープラント運転状態モード判定部82、振動騒音制御部83Aの駆動制御部83e及び振動騒音制御部83Bの駆動制御部83eに入力する。
パワープラント運転状態モード判定部82は、エンジン回転速度演算部81から入力されるエンジン回転速度NEの他CAN通信部73からン入力さえるFI信号、気筒休止信号、アイドルストップ信号、ロックアップ信号、エコモード信号にもとづいてエンジン2の運転状態が、例えば、エンジン始動時のモータリング状態、アイドリング運転状態、全筒運転状態、部分気筒運転の状態である気筒休止運転状態、アイドルストップの状態の判定を行い、また、変速機9のトルクコンバータがロックアップ状態か否かの判別、変速機9の変速制御の状態が標準モードであるかエコモードであるかの判定を行い、その結果を振動騒音制御部83Aの駆動制御部83e及び振動騒音制御部83Bの駆動制御部83eに入力する。
次に、振動騒音制御部83A,83Bの詳細な構成について説明する。そして、振動騒音制御部83A,83Bの機能構成は同一であることから、一方の振動騒音制御部83Aを例に説明する。
(周波数同定部83a)
周波数同定部83aは、TDCパルス信号、CRKパルス信号にもとづいて、例えば、120deg.のクランク角の範囲にわたるCRKパルス間隔から、1次振動、1.5次振動、2次振動、3次振動のモードどの振動モードの振幅が最大かを判定し、最大振幅の振動モードにおけるエンジン振動の周波数を同定し、その結果を基準信号生成部83bに出力するとともに、駆動制御部83eにも出力する。
基準信号生成部83bは、周波数同定部83aが同定した前記した振動モードの振幅が最大の振動モードの振動に対し、TDCパルス信号のタイミングを基準にサンプリングのタイミング信号としての基準信号を生成する。つまり、同定した前記した振動モードに対する基準信号を分周する。生成された基準信号は、DSPで処理される機能部である最小二乗演算部83c及び適応フィルタ部83dに入力される。
なお、エンジンマウント5A,5Bが能動型防振マウントである場合は、最小二乗演算部83cに対しては位相調整フィルタを介して生成された基準信号が入力される。本実施形態では、エンジンマウント5A,5Bは、能動型防振マウントではなく液封型の防振マウントで構成されているので前記した位相調整フィルタは介していないで最小二乗演算部83cに基準信号が入力されている。
振動センサ29から振動騒音制御部83Aへ入力される信号は、例えば、第1フレーム4a(図1参照)にエンジン2からエンジンマウント5Aを介して伝播される振動と、第1フレーム4aに固定されたリニアアクチュエータ30の加振作用による振動の打ち消し効果の差分の振動成分であり、それが振動騒音制御部83Aの最小二乗演算部83cに入力される。
ちなみに、もう一つの振動センサ29から振動騒音制御部83Bへ入力される信号は、例えば、第2フレーム4b(図1参照)にエンジン2からエンジンマウント5Bを介して伝播される振動と、第2フレーム4bに固定されたリニアアクチュエータ30の加振作用による振動の打ち消し効果の差分の振動成分であり、それが振動騒音制御部83Bの最小二乗演算部83cに入力される。
適応フィルタ部83dは、基準信号生成部83bから入力されるサンプリングのタイミング信号に応じて、次の周期の120deg.に対して、最小二乗演算部83cから入力された最適相殺信号を駆動制御部83eに出力する。
駆動制御部83eは、エンジン回転速度演算部81からのエンジン回転速度NE、パワープラント運転状態モード判定部82からの少なくとも気筒休止信号、周波数同定部83aからの同定された前記した振動モードの周波数の情報が入力される。
そして、それらの情報にもとづいて適応フィルタ部83dからの交流電流を出力するための最適相殺信号に対して、予め設定された直流電流成分をバイアス加算して重畳したり、既にバイアス加算して重畳されていた直流電流成分を解除したりして、駆動回路53Aに出力する。
ちなみに、振動騒音制御部83Bの駆動制御部83eでは、適応フィルタ部83dからの交流電流を出力するための最適相殺信号に対して、予め設定された直流電流成分をバイアス加算して重畳したり、既にバイアス加算して重畳されていた直流電流成分を解除したりして、駆動回路53Bに出力する。
ステップS01では、適応フィルタ部83dから入力された最適相殺信号にもとづいて交流電流波形を生成する(「AC電流波形を生成」)。
ステップS02では、パワープラント運転状態モード判定部82から入力されているエンジン運転状態に対する信号が気筒休止運転状態か否かをチェックする。気筒休止運転状態の場合(Yes)は、ステップS04へ進み、そうでない場合(No)、つまり、全筒運転状態の場合は、ステップS03へ進む。
ステップS04では、周波数同定部83aから入力された最大振幅の振動モードにおけるエンジン振動の周波数、つまり、リニアアクチュエータ30における加振周波数Fが周波数FB(所定の値)以下か否かをチェックする。加振周波数Fが周波数FB以下の場合(Yes)は、ステップS05へ進み、加振周波数Fが周波数FBを超える場合(No)は、ステップS08へ進む。
エンジン回転速度が増加している場合(Yes)は、ステップS07へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS08へ進む。
ステップS09では、ステップS01で設定された交流電流波形を駆動回路53Aまたは駆動回路53Bに出力する(「AC電流のみによる加振制御を出力」)。そしてステップS10へ進む。
ちなみに、図9の(b)に示すように可動部材32の初期位置は自重で下方に垂れ下がり、板バネ33aとストッパ67Bとの間隙L3が、板バネ33bとストッパ67Aとの間隙L2より大きくなっている状態で交流電流を印加してリニアアクチュエータ30を駆動すると、下方へ第2ヨーク42が下がっても板バネ33bはストッパ67Aに小さな振幅で衝突し、第2ヨーク42の下方への移動への抵抗となって働き、振幅を最大限に利用できない。
また、加振ゲイン要求最大値が逓減していく加振周波数の領域では、所定の直流電流を印加しないことにより消費電力を低減することができる。
本実施形態のリニアアクチュエータ30では、図4に示すように軸部36の上部は自由端としてあるが、ケーシング34の剛性を高めたものとし、軸部36のボルトをケーシング34の頂部から挿通し、隙間部材を介して板バネ33aとケーシング34の頂部下面との距離を確保して、ナット16でケーシング34とベース板35との間に固定しても良い。
また、リニアアクチュエータ30の構成は図4、図5に記載されたものに限定されるものではない。特開2006−345652号公報に記載のようなリニアアクチュエータでも良い。
本実施形態では、図4、図5に示したように可動部材32を板バネ33a,33bで軸方向に保持することとしたがそれに限定されるものではない、ベース板35と第2ヨーク42の下面との間、ケーシング34の天井面と第2ヨーク42の上面との間に複数のコイルスプリングを周方向に配置して固定部材31に対して可動部材32が相対的に上下方向に変位可能にしても良い。
また、前記した実施形態におけるリニアアクチュエータ30の固定部材31をベース板35に固定するものとしたが、それに限定されるものではなく、可動部材32をボルト17及びナット18でベース板35に固定し、固定部材31は、ベース板35に固定されることなく板バネ33a,33bに支持されて可動部材32に対して相対的に上下方向に変位可能な構成としても良い。
この意味で、固定部材31、可動部材32と称するのは相対的に軸方向に互いに変位可能という意味であり、特許請求の範囲の記載において、固定部材31を「可動子」と称し、可動部材32を「固定子」と言うのは、リニアアクチュエータの一般的な構成からは通常の呼び方である。
前記した本実施形態の図7、図8では、パワープラント運転状態モード判定部82が、エンジン2の全筒運転状態、気筒休止運転状態を判定して、所定の直流電流成分を、ステップS01で生成された交流電流波形に加算重畳する周波数の設定を行っている例で説明したがそれに限定されるものではない。
パワープラント運転状態モード判定部82は、CAN通信でエコモード信号を受信しているか否かで、エンジン・AT制御ECU70が変速機9をエコモードで変速段の切り替え制御をしている状態か、または変速機9を標準モードで変速段の切り替え制御をしている状態かを判定したり、CAN通信でロックアップ信号を受信しているか否かで、変速機9のトルクコンバータがロックアップ状態か、またはロックアップしていない状態かを判定したりし、それぞれの状態で、さらにエンジン2が全筒運転状態か、気筒休止運転状態に応じて設定される所定の加振周波数以下か否かで所定の直流電流を交流電流波形に印加重畳する。
ここで、エンジン・AT制御ECU70が変速機9をエコモードで変速段の切り替え制御をしている状態か、または標準モードで変速段の切り替え制御をしている状態かの判別、変速機9のトルクコンバータがロックアップ状態か、またはロックアップしていない状態の判別、エンジン運転状態が全筒運転状態かまたは気筒休止運転状態かの判別は、特許請求の範囲に記載の「パワープラントの運転状態の判別」に対応する。
また、トルクコンバータがロックアップされた状態では、トルクコンバータのロックアップされていない状態に比較して、車体Bにエンジン振動が伝達される際に、トルクコンバータによるエンジン2のトルク変動振動吸収効果がなくなり、かつ、エンジン2の回転が変速機に直接接続されてトルク変動が変速機9に伝わることで、振動体の質量もエンジン2と変速機9の一体とみなされることになり、車体Bへ伝わるパワープラント全体の振動の振幅は増加する傾向になることを考慮して所定の直流電流をAC電流波形に印加重畳する加振周波数範囲を設定するものである。
図10、図11に示すフローチャートにおける制御の処理は、駆動制御部83eにおいてなされる。
ステップS01では、適応フィルタ部83dから入力された最適相殺信号にもとづいて交流電流波形を生成する(「AC電流波形を生成」)。ステップS01の次はステップS21へ進み、パワープラント運転状態モード判定部82から入力されているエンジン運転状態に対する信号にエコモードが選択されている信号があるか否かをチェックする(「エコモードが選択されているか?」)。エコモードが選択されている場合(Yes)は、結合子(A)に従って、図11のステップS29へ進み、そうでない場合(No)、つまり、標準モードが選択されている場合は、ステップS22へ進む。
ステップS23では、パワープラント運転状態モード判定部82から入力されているエンジン運転状態に対する信号が気筒休止運転状態か否かをチェックする。気筒休止運転状態の場合(Yes)は、ステップS25へ進み、そうでない場合(No)、つまり、全筒運転状態の場合は、ステップS24へ進む。
ステップS25では、周波数同定部83aから入力されたリニアアクチュエータ30における加振周波数Fが周波数FB1(所定の値)以下か否かをチェックする。加振周波数Fが周波数FB1以下の場合(Yes)は、図7のステップS05へ進み、加振周波数Fが周波数FB1を超える場合(No)は、図7のステップS08へ進む。
ステップS28では、周波数同定部83aから入力されたリニアアクチュエータ30における加振周波数Fが周波数FB3(所定の値)以下か否かをチェックする。加振周波数Fが周波数FB3以下の場合(Yes)は、図7のステップS05へ進み、加振周波数Fが周波数FB3を超える場合(No)は、図7のステップS08へ進む。
ステップS30では、パワープラント運転状態モード判定部82から入力されているエンジン運転状態に対する信号が気筒休止運転状態か否かをチェックする。気筒休止運転状態の場合(Yes)は、ステップS32へ進み、そうでない場合(No)、つまり、全筒運転状態の場合は、ステップS31へ進む。
ステップS32では、周波数同定部83aから入力されたリニアアクチュエータ30における加振周波数Fが周波数FB2(所定の値)以下か否かをチェックする。加振周波数Fが周波数FB2以下の場合(Yes)は、結合子(B)に従って図7のステップS05へ進み、加振周波数Fが周波数FB2を超える場合(No)は、結合子(C)に従って図7のステップS08へ進む。
ステップS35では、周波数同定部83aから入力されたリニアアクチュエータ30における加振周波数Fが周波数FB4(所定の値)以下か否かをチェックする。加振周波数Fが周波数FB4以下の場合(Yes)は、結合子(B)に従って図7のステップS05へ進み、加振周波数Fが周波数FB1を超える場合(No)は、結合子(C)に従って図7のステップS08へ進む。
このようにして、パワープラントの運転状態に応じた所定の周波数以下の加振周波数の領域でリニアアクチュエータ30に所定の直流電流をバイアスとして印加重畳し、パワープラントの運転状態に応じた所定の周波数を越えた加振周波数の領域で、所定の直流電流をバイアスとして印加重畳せず、無駄な消費電力が抑制できる。
なお、ここでは、スポーツモードでは、気筒休止運転は選択されないとする。
この他、パワープラント運転状態モード判定部82が、CAN通信でアイドルストップ信号を受信して、アイドリングストップ状態であることを検出した場合は、エンジン2が停止していても、少なくとも所定の時間、例えば、信号機が「青」に切り替わるのを待つ程度の時間は、駆動制御部83eにおいて所定の直流電流をバイアスとして印加し続けさせて、エンジン再始動時の車体Bへの振動伝達抑制のために、リニアアクチュエータ30に振幅を最大限に活用できるように待機状態にさせても良い。
2 エンジン(振動体、パワープラント)
3 メインフレーム
4 サブフレーム
4a 第1フレーム
4a 第2フレーム
5,5A,5B エンジンマウント(防振装置)
9 変速機(パワープラント)
20 ハウジング
21 弾性体
22 取付け部
22a 突出部
25 主液室
29 振動センサ
30 リニアアクチュエータ
31 固定部材(可動子)
32 可動部材(固定子)
33 支持部材(弾性支持部材)
33a,33b 板バネ(弾性支持部材)
34 ケーシング
35 ベース板
36 軸部
40 コイル
50 防振制御ECU(制御手段)
51 マイクロコンピュータ
53A,53B 駆動回路
70 エンジン・AT制御ECU(変速機の変速段を制御する制御装置)
81 エンジン回転速度演算部
82 パワープラント運転状態モード判定部(パワープラント運転状態判別手段)
83A,83B 振動騒音制御部
83a 周波数同定部
83b 基準信号生成部
83c 最小二乗演算部
83d 適応フィルタ部
83e 駆動制御部
B 車体
LA 軸線
Claims (5)
- 可動子と、前記可動子の周囲に、前記可動子を囲むように配置された複数のコイルを有する固定子と、弾性変形することにより前記可動子をその軸方向に前記固定子に対して相対的に往復動可能に支持する弾性支持部と、を有するリニアアクチュエータと、
前記複数のコイルに通電制御する制御手段と、を備える能動振動制御装置において、
前記制御手段は、
前記可動子と前記固定子との間の前記軸方向の相対的変位による振動を発生させるために交流電流を印加するとともに、
前記リニアアクチュエータによる所定の加振条件の場合に、予め設定された所定の直流電流をバイアス電流として印加重畳して、前記可動子と前記固定子との間の前記軸方向の相対的変位による振動の振幅の中央位置を補正することを特徴とする能動振動制御装置。 - 前記リニアアクチュエータによる所定の加振条件は、車両に積載された振動体としてのエンジンにより生じる振動を打ち消すために前記リニアアクチュエータを加振させる周波数が、所定の値以下であることを特徴とする請求項1に記載の能動振動制御装置。
- さらに、前記振動体から伝達された振動に、前記リニアアクチュエータによる加振の結果が加えられた前記車両の車体の振動を検出する振動センサを備え、
前記制御手段は、前記振動センサからの信号に応じて前記リニアアクチュエータを制御することを特徴とする請求項2に記載の能動振動制御装置。 - 前記制御手段は、
車両に搭載されたエンジン及び変速機を含むパワープラントの運転状態を判別するパワープラント運転状態判別手段を有し、
前記パワープラント運転状態判別手段により判別された前記パワープラントの運転状態に応じて前記予め設定された所定の直流電流をバイアス電流として印加重畳する前記リニアアクチュエータを加振させる所定の周波数の値以下の領域を変更することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の能動振動制御装置。 - 前記パワープラントの運転状態を判別するとは、少なくとも、
全筒運転状態と気筒休止運転状態との判別、
前記エンジンに接続された変速機に含まれるトルクコンバータのロックアップされた状態と前記トルクコンバータのロックアップされていない状態との判別、
並びに、前記変速機の変速段を制御する制御装置の制御入力設定が標準モードに設定された状態と、前記標準モードよりも前記エンジンの回転速度がより低回転速度のときに変速段をシフトアップさせるエコモードに設定された状態との判別、
のいずれかを含むことを特徴とする請求項4に記載の能動振動制御装置。
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