以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、本発明の防振装置300を説明する前に、防振装置300の基礎となる技術(ダイナミックダンパ1)を第1実施の形態として説明する。本発明の防振装置300は、後述するように、ダイナミックダンパ1の基本構成をアクチュエータ装置(加振装置)として利用している。
図1は、本発明の第1実施の形態におけるダイナミックダンパ1の取り付け状態を概略的に示した斜視図である。なお、本実施の形態では、ダイナミックダンパ1がFF型自動車(以下「自動車」と略す)のエンジン10を支持するフレーム13に取り付けられる場合を例に説明する。
ダイナミックダンパ1の周辺には、図1に示すように、自動車の駆動力を発生するエンジン10と、そのエンジン10にボルト11a,11b,11cにより取り付けられる取り付け金具11と、その取り付け金具11にボルト12aにより取り付けられるエンジンマウント12と、そのエンジンマウント12がボルト12b,12c,12d,12eにより取り付けられるフレーム13と、そのフレーム13に配設される加速度センサ14とが配設されている。ダイナミックダンパ1は、ボルト1a,1bによりフレーム13に取り付けられる。
なお、加速度センサ14は、フレーム13が振動した際の加速度を計測するものであり、ダイナミックダンパ1は、その加速度センサ14により計測される加速度に基づきフレーム13の振動を減衰させるものである。この加速度センサ14は、ダイナミックダンパ1の近傍に配設され、より正確な防振を行うことができるように構成されている。
次に、図2及び図3を参照して、ダイナミックダンパ1の詳細な構造について説明する。図2は、ダイナミックダンパ1の外観を示した斜視図である。図3は、図2のIII−III線におけるダイナミックダンパ1とフレーム13との断面図である。
ダイナミックダンパ1は、フレーム13にボルト1a,1bにより取り付けられるベース板20と、そのベース板20に基端部(図3下側)がナット21により螺着され、ベース板20に対して固定される略円柱状の軸部材22と、その軸部材22の軸心方向A(図3における上下方向)における略中間部に固着される磁性体部23と、軸部材22の外周を囲むと共に軸部材22の軸心方向Aに往復動作可能なヨーク部材24と、ヨーク部材24の一部であり軸部材22を挟んでその軸部材22側に相対的に突出した磁極部25と、その磁極部25に巻回されると共にベース板20に固定されるコイル26と、ヨーク部材24及びベース板20の間を連結する連結部27とを備えている。
磁性体部23は、電磁鋼板等の磁性金属よりなる多数の略円盤状の金属23aを積層して構成されている。ヨーク部材24は、同様に電磁鋼板等の磁性金属よりなる多数の略環状(磁極部25を形成する相対的に突出した突出部を含む)の金属24aを積層して構成されている。
連結部27は、ゴム状弾性体料から構成され、ヨーク部材24の4つの側壁のうち対向する2つの側壁とベース板20とをそれぞれ加硫接着により連結している。なお、本実施の形態では、連結部27をヨーク部材24の2つの対向する側壁とベース板20とを連結するものとしたが、ヨーク部材24のベース板20との対向面全てを連結するものとしても良い。また、防振を行うために必要となる弾性力に応じて、材質(例えば、ゴム硬度)および大きさ(例えば、厚み及び幅)を変えるものとしても良い。
ヨーク部材24の磁極部25の先端(軸部材22の磁性体部23との対向面)には、円弧状の一対の永久磁石28が配設されている。永久磁石28の磁極(S極およびN極)は、軸部材22の軸心方向Aに隣り合って異極をなして構成されている(図6又は図7参照)。
即ち、図3左側の永久磁石28は、ベース板20側の磁性体部23と対向する面側がN極となると共にその反対面側(磁極部25側)がS極となる永久磁石28aと、ベース板20から離れた方(図3上側)の磁性体部23と対向する面側がS極となると共にその反対面側(磁極部25側)がN極となる永久磁極28bとを備えている。
一方、図3の紙面視右側の永久磁石28は、ベース板20側の磁性体部23と対向する面側がS極となると共に反対面側(磁極部25側)がN極となる磁極28bと、ベース板20から離れた方(図3上側)の磁性体部23と対向する面側がN極となる共に反対面側(磁極部25側)がS極となる永久磁極28aとを備えている。
よって、軸心方向Aに対して直交する方向(図3の矢印B方向)において対向配設された永久磁石28は、その矢印B方向に磁極が逆になるよう配設されている。従って、一対の永久磁石28の間には、上下で相反する方向の起磁力が発生する。なお、このように永久磁石28が配設されると、磁性体部23及び磁極部25は、永久磁石28のN極と対向する側がN極に帯磁すると共に永久磁石28のS極と対向する側がS極に帯磁する(図6又は図7参照)。
図3左右に配設されたコイル26は互いに電気的に導通しており、一方向の電流が流される。また、コイル26は磁極部25に巻回されているので、コイル26に電流が流されるとコイル26の周りに磁界が形成され、その結果、一対の永久磁石28間を磁束が通り起磁力が発生する。なお、コイル26は、ベース材20に固定されているので、ヨーク部材24が往復動作したとしても、コイル26に結線された配線が断線することを低減できる。
また、図3に示すように、コイル26は、軸心方向Aにおいてヨーク部材24の動作許容範囲t1を有する大きさに形成されている。これは、コイル26がベース板20に固定されているのに対して、ヨーク部材24が軸心方向Aに動作するためであり、そのヨーク部材24の動作範囲t2を確保するための空間である。
次に、図4を参照して、コイル26に接続される電気回路図について説明する。図4は、ダイナミックダンパ1の電気的な接続を示した電気回路図である。なお、図4では、図示を簡略化して理解を容易とするために、ダイナミックダンパ1が概略的に示されると共に、コイル26が簡易的な導線で示されている。
制御部30は、コイル26に流される電流の方向を制御するものである。制御部30には、演算装置であるCPU31と、CPU31により実行される各種の制御プログラムや固定値データが記憶されたROM32と、そのROM32内に記憶される制御プログラムの実行に際して各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリであるRAM23とが搭載されている。
また、制御部30の入力側には、加速度センサ14とエンジン回転数検出センサ40とが接続されている。加速度センサ14からは、フレーム13が振動した際の加速度が検出されその信号が入力される。エンジン回転数検出センサ40からは、エンジン10の回転数が検出されその信号が入力される。
制御部30の出力側には、コイル26に電流を流すアンプ41が接続されている。アンプ41は、制御部30からの指示を受信すると、その指示に応じて電流の方向を変えたり、通電の切り替え(オン/オフ)を行ったりするものである。
なお、ROM32には、アンプ41への出力パターンが設定されたテーブルが予め記憶されている。このテーブルは、エンジン回転数検出センサ40から入力されるエンジン回転数と、加速度センサ14から入力される加速度とに応じた出力パターンが設定されている。また、アンプ41への出力は、コイル26に流れる電流の方向や通電時間などの情報である。
アンプ41は、コイル26の両端と接続されており、コイル26に電流を流すものである。また、制御部30からの指示に応じて、コイル26へ流れる電流をオン/オフ(通電時間の調整)したり、電流の流れる方向を変更したりする。
また、図4には、白抜き矢印が示されており、その白抜き矢印の方向が一対の永久磁石28間に発生する起磁力の向きを示している。即ち、永久磁石28の間は、永久磁石28aから永久磁極28bの方向へ起磁力が発生するので、その方向は図4上下で相反する方向にある(即ち、図4上側に右側から左側への起磁力が発生し、図4下側に左側から右側への起磁力が発生する)。
次に、図5から図7を参照して、制御部30により制御されるダイナミックダンパ1の動作について説明する。図5は、制御部30のCPU31により実行されるメイン処理を示したフローチャートである。図6は、コイル26に電流を正方向に流した場合のダイナミックダンパ1の動作原理を説明するための説明図である。図7は、コイル26に電流を負方向に流した場合のダイナミックダンパ1の動作原理を説明するための説明図である。
なお、図6及び図7のコイル26の断面において、「×」と「・」が示されているが、これは電流の流れる方向を示している。即ち、図6であれば、紙面垂直方向奥側を通り下側方向に電流が流されている。本実施の形態では、この場合を正方向に電流が流されているものとする。一方、図7であれば、下側から紙面垂直方向奥側を通り上側方向に電流が流され、負方向に電流が流されているものとする。
また、磁極部25の断面における「×」と「・」は、コイル26に電流が流された場合に発生する磁束の向きを示している。即ち、図6であれば、左側から紙面垂直方向奥側(及び図示しない紙面垂直方向手前側)のヨーク部材24を通り右側へ流れ、右側から永久磁石28間を通り左側に磁束が流れる。一方、図7であれば、右側から紙面垂直方向奥側(及び図示しない垂直方向手前側)のヨーク部材24を通り左側へ流れ、左側から永久磁石28間を通り右側に磁束が流れる。
図5に示したメイン処理は、電源投入時のリセットにより起動される。電源投入とは、図示しないキーが操作されてACC(各装置への電源供給が行われた)状態にされた場合と、ONされてエンジン10が始動開始した場合の両方の状態を意味する。電源が投入されると、電源投入に伴う初期設定処理(図示せず)を実行する。この初期設定処理において、ROM32に記憶された情報(プログラムや出力パターンのテーブルなど)が読み出され、RAM33に記憶される。
CPU31は、メイン処理に関し、まず、エンジン10が始動しているか否かを判別する(S101)。エンジン10が始動していなければ(S101:No)、自動車が停止していることになり、エンジン10による振動がフレーム13に伝わらないので、フレーム13の振動を防振するためのS102〜S104の処理を行わずにS105の処理へ移行する。
一方、S101の処理でエンジン10が始動していると判別すると(S101:Yes)、エンジン回転数検出センサ40と加速度センサ14とからの情報を取得する(S102)。加速度センサ14からの情報は、フレーム13が振動した場合の加速度が入力される。エンジン回転数検出センサ40からの情報は、エンジン10の回転数が入力される。
S102の処理で各入力情報(エンジン回転数と加速度)の取得が終わると、その取得された入力情報に応じた出力パターンが選択される。この出力パターンの選択は、上述したROM32に予め記憶された出力パターンのテーブルから適宜選択される。
その後、出力パターンに基づきアンプ41に指示をし(S104)、その他の処理を実行する(S105)。その他の処理は、自動車を走行させるための各処理などであるが、ダイナミックダンパ1の制御ではないため詳細な説明は省略する。
ここで、S104の処理でアンプ41への指示がなされ、アンプ41がコイル26に正方向または負方向に電流を流した場合のダイナミックダンパ1の動作について、図6及び図7を参照して説明する。
図6に示すように、コイル26に正方向の電流を流すと、コイル26の周りに2点鎖線矢印の方向に磁界が発生し、その結果、永久磁石28の間を磁束が通り、起磁力が矢印C方向に発生する。
この場合、上側の永久磁石28の起磁力の向き(図6上側の白抜き矢印、右側から左側方向)と、コイル26に電流が流されることで発生する起磁力の向き(図6矢印C)とが同一方向となり、磁束が合成されて起磁力が強まる。
一方、下側の永久磁石28の起磁力の向き(図6下側の白抜き矢印、左側から右側方向)とコイル26に電流が流されることで発生する起磁力の向き(図6矢印C)とが反対になって、両者の起磁力が相殺されて弱まる。
これにより、軸部材22が上側の永久磁石28間に引きつけられる力が働き、軸部材22が固定されていることからヨーク部材24へ下向きの力(図6黒塗りの矢印)が作用し、ヨーク部材24が下方向に動作する。
図7に示すように、コイル26に負方向の電流を流すと、コイル26の周りに2点鎖線矢印の方向に磁界が発生し、その結果永久磁石28の間を磁束が通り、起磁力が矢印D方向に発生する。
この場合、下側の永久磁石28の起磁力の向き(図7下側の白抜き矢印、左側から右側方向)と、コイル26に電流が流されることで発生する起磁力の向き(図7矢印D)とが同一方向となり、磁束が合成されて起磁力が強まる。
一方、上側の永久磁石28の起磁力の向き(図7上側の白抜き矢印、右側から左側方向)とコイル26に電流が流されることで発生する起磁力の向き(図7矢印D)とが反対になって、両者の起磁力が相殺されて弱まる。
これにより、軸部材22が図7下側の永久磁石28間に引きつけられる力が働き、軸部材22が固定されていることからヨーク部材24に上向きへの力(図7黒塗りの矢印)が作用し、ヨーク部材24が上方向に動作する。
以上、説明したように、コイル26に流れる電流の向きを変更することで、ヨーク部材24を上下(1軸)方向に往復動作させることができる。また、制御装置30により、ヨーク部材24の動作方向が制御される。即ち、制御部30は、加速度センサ14により検出された加速度からフレーム13の振動した方向や振動の大きさを知ることができ、そのフレーム13の振動を相殺する方向にヨーク部材24を動作させることができる。よって、フレーム13の振動に応じて防振することができる。従って、自動車の車内に振動が伝わることを低減でき、運転者に不快感を与えることを低減することができる。
また、フレーム13の振動に基づく入力だけでなく、エンジン回転数検出センサ40からエンジン10の回転数が入力され、その回転数とフレーム13の振動とに基づき、ヨーク部材24の動作を制御している。これにより、エンジン10の回転数に対応して発生する振動を予測可能となるので、正確な防振を行うことができる。
特に、フレーム13に伝達される共振周波数が歪んだ波形(正弦波でない波形)である場合では、1方向のみ動作するアクチュエータや制御部を備えない防振装置では、正確に防振することが困難となる。しかし、ダイナミックダンパ1が往復動作方向に動作可能であると共に、エンジン回転数検出センサ40及び加速度センサ14の入力に応じて往復動作を制御部40で制御できるので、共振周波数が歪んだ波形であったとしても、その振動を防振することができる。さらに、ヨーク部材24の動作を電流値の大きさに応じて変化させることができるので、ソレノイドなどを用いるアクチュエータと比較して、滑らかな動作をさせることができる。
また、ヨーク部材24が重りの代わりとなるので、別に質量部材を備える必要がない。さらに、一対の永久磁石28が軸心方向Aに異なる磁極が隣り合って配設されると共に、矢印B方向に磁極が逆になるよう配設され、コイル26に電流を流すことでその一対の永久磁石28の間に起磁力を発生させる構成であるので、複数のコイルや永久磁石を備えなくてもヨーク部材24を往復動作させることができる。よって、ダイナミックダンパ1自体を小規模化できると共に製作コストを低減することができる。
また、ヨーク部材24、軸部材22、コイル26、連結部27が予めベース板20に取り付けられた状態となるので、ベース板20をフレーム13に取り付けるだけでダイナミックダンパ1の取り付け工程が終わる。よって、ダイナミックダンパ1の取り付け工程を簡略化することができる。
次いで、上述した第1実施の形態で説明したダイナミックダンパ1の基本構成を防振装置300に利用する形態を第2実施の形態として、図8から図14を参照して説明する。本発明の防振装置300は、能動型のボディマウントとして構成され、そのアクチュエータ装置(加振装置)として、ダイナミックダンパ1の基本構成が利用されている。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図8(a)は、第2実施の形態における防振装置300の上面図であり、図8(b)は、防振装置300の正面図である。図9は、図8(a)のIX−IX線における防振装置300の断面図であり、図10は、図9に示す防振装置300の部分拡大断面図である。
図11は、図9のXI−XI線における防振装置300の断面図であり、図12は、図9のXII−XII線における防振装置300の断面図である。なお、図9では、車体フレームBFへの取り付け状態が図示されている。また、図10は、図9に示した防振装置300の部分拡大断面図に対応する。
防振装置300は、車体フレームBFと足廻り部材(図示せず)との間に介設され、車体フレームBFに対して足廻り部材を防振的に支持するためのボディマウントであり、図8から図12に示すように、加振装置110と、外筒140と、防振基体150とを主に備えて構成されている。
加振装置110は、車体フレームBF側に取り付けられる装置であって、図9に示すように、後述する内筒122の内周側に挿通される軸状部材Jにより車体フレームBFに対して締結固定される。また、外筒140は、足廻り部材に連結されたサスペンションメンバの筒状のホルダFに対し、その上方(図9上側)から圧入されることで固定される。
防振基体150は、ゴム状弾性体から構成され、図8から図12に示すように、加振装置110と外筒140とを加硫接着により連結する。なお、この防振基体150の直径方向(例えば、図8(a)左右方向)に対向する2箇所には、すぐり部151が軸心方向に貫通形成されおり、軸直角方向の荷重−撓み特性に異方性が付与されている。
このように、本実施の形態における防振装置300では、図8から図12に示すように、加振装置110の外側に筒状の外筒140を配置して、これら加振装置110と外筒140とを防振基体150により連結する構成としたので、加振装置110を小型化して、防振装置300全体としての軽量化を図ることができる共に、防振基体150のボリュームを確保して、その耐久性および防振基体150による制振効果の向上を図ることができる。
即ち、本実施の形態における防振装置300と異なる構成、例えば、車体フレームBFの軸状部材Jが挿通される円筒部材を別途設け、かかる円筒部材の外側に加振装置を配置して、これら円筒部材と加振装置とを防振基体により連結する構成とした場合には、内側に配設される防振基体のボリュームを確保することができず、その耐久性及び防振基体による制振効果の低下を招くと共に、外方に配設される加振装置の大型化により、防振装置全体としての重量増加を招くという問題点が生じる。これに対し、本実施の形態における防振装置300では、上述の構成とすることで、かかる問題点を解消することができる。
外筒140は、鉄鋼材料から筒状に構成される部材であり、図9、図11又は図12に示すように、その上端(図9上側端)において径方向外方へ張り出して形成されるフランジ部141を備えている。フランジ部141の上面には、車体フレームBFのストッパ面S1との間でストッパ作用を発揮するストッパゴム部352が、防振基体150に連なるゴム状弾性体により形成されている。
加振装置110は、図9から図12に示すように、筒状に形成され上述した軸状部材Jが挿通される内筒122と、その内筒122の外周部に固着され磁性材料から構成される磁性体部123と、防振基体150を介して外筒140に連結されるヨーク部材124と、そのヨーク部材124の一部であり内筒122を挟んで位置する一対の磁極部125と、各磁極部125の周りに巻回されると共に各磁極部125に固着されるコイル126と、ヨーク部材124と内筒122との間を連結する一対の連結部材130とを主に備えている。
内筒122は、図8から図12に示すように、軸心O回りに対称形状となる円筒状に形成されており、その外周面に磁性体部123が固着されている。磁性体部123は、第1実施の形態における磁性体部23と同様に、電磁鋼板等の磁性金属からなる多数の略円盤状の金属板を積層して構成されており、図9、図10及び図12に示すように、内筒122の外周面に貼着されている。
また、内筒122の外周面には、図9又は図11に示すように、軸心O方向に沿って延設される一対の案内壁部122bが径方向外方に突出して形成されている。これら一対の案内壁部122bは、図11に示すように、周方向等間隔となる4箇所において、所定間隔を隔てつつ互いに対向しており、この対向間に案内溝部122aが形成されている。
案内溝部122aは、後述する転動輪133の転動方向を案内するための溝部であり、図11に示すように、断面コ字状に形成されている。即ち、後述する転動心133は、案内溝部122aによって、内筒122の軸心O方向へ案内されると共に、内筒122の軸心O周りの周方向への移動は規制される。
ヨーク部材124は、第1実施の形態におけるヨーク部材24と同様に、電磁鋼板等の磁性金属からなり、図12に示す外形形状(円筒形状の内周面から一対の磁極部125が磁性体部123へ向かって突出する形状)を有する多数の金属板を積層して構成されている。なお、ヨーク部材124は、図9に示すように、磁極部125よりも内筒122の軸心方向に長く形成されている。
このように、ヨーク部材124は、磁極部125よりも内筒122の軸心O方向に長い円筒状に形成されると共に、その内周側から磁極部125が内筒122の磁性体123に向けて張り出して形成される構成であるので、内筒122の外周側とヨーク部材124の内周側との間にコイル126を収容するための閉空間を形成することができる。
その結果、後述する連結部材130及び封止部材160による閉封効果により、閉空間内への雨水等の浸入による電気的なショートの発生や異物の浸入による動作不良等を抑制することができる。
また、円筒状に形成されたヨーク部材124の内周側に後述する連結部材130を圧入(内嵌)して保持させる構成であるので、組み立てコストの低減を図ることができると共に、連結部材130を強固に保持して往復動時の脱落を確実に防止することができる。同時に、上述した閉空間を閉封して内部構造を密閉する機能も確実に発揮させることができるので、異物の浸入等を確実に回避することができる。
更に、防振基体150がヨーク部材124の外周側に連結される構成であるので、防振基体150と加振装置110(ヨーク部材124)との接触面積を十分に確保することができる。よって、防振基体150と加振装置110との間の加硫接着面積を確保して、接着部の剥がれを抑制することができるので、その分、耐久性の向上を図ることができる。また、防振基体150を変形させるために必要な受圧面積を確保して、所望のばね定数を発揮させることができる。
図9に示すように、ヨーク部材124の上下端面(図9上下方向端面)には、車体フレームBFのストッパ面S1及び軸状部材Jの先端側に配設されるストッパ面S2との間でストッパ作用を発揮するストッパゴム部353,354が、防振基体150に連なるゴム状弾性体により形成されている。
ここで、ストッパゴム部352〜354は、図8(b)に示すように、軸心O方向に沿う高さ寸法が内筒122よりも高くなるように設定されると共に周方向に連続する環状の凸条として形成されている。そのため、図9に示すように、車体フレームBFへの装着状態では、ストッパゴム部352,353が車体フレームBF側のストッパ面S1に当接されると共に、ストッパゴム部354が軸状部材Jの先端側に設けられたストッパ面S2に当接され、これらストッパゴム部352〜354が圧縮変形されている。
これにより、ストッパゴム部352〜354によって加振装置110の開口部を後述する連結部材130及び封止部材160と共に閉封することができるので、加振装置110の内部構造(即ち、磁性体部123と永久磁石128との間のクリアランス部やコイル126の電気的構成など)を密閉して、加振手段110の内部構造と外部との連通を遮断することができる。
その結果、上述したように、加振装置110の内部への異物や雨水などの浸入をより確実に防止することができるので、磁性体部123と永久磁石128との間のクリアランス部に異物が挟まることや、雨水等による電気的なショートの発生などにより、動作不良が生じることを未然に回避して、加振装置300の信頼性のより一層の向上を図ることができる。
また、図9に示すように、ストッパゴム部352は外筒140のフランジ部141に対応する位置に形成されると共に、ストッパゴム部353,354はヨーク部材124の上下端面(図9上下方向端面)に対応する位置に形成されているので、車体フレームBFへの装着状態においては、これらストッパゴム部352〜354を外筒140のフランジ部141及びヨーク部材124の上下端面によってストッパ面S1,S2へ強固に押圧することができる。これにより、ストッパゴム部352〜354の圧縮状態を確実に維持して、上述した閉封効果による異物等の浸入防止機能を安定して発揮させることができる。
磁極部125は、磁性体部123との対向面に、第1実施の形態の場合と同様に、永久磁石128が配設されている。永久磁石128は、図10又は図12に示すように、軸心O方向(図10上下方向)に隣接するものが互いに異極(永久磁石128a(S極),128b(N極))をなすと共に、軸心O方向と略直交する方向(図10左右方向)において対向するもの同士も異極(永久磁石128a(S極),128b(N極))をなすように配設されている。
なお、軸心O方向の最上方(図10上方)に位置する永久磁石128の極性(永久磁石128a,128b)は、軸心O方向の最下方(図10下方)に位置する永久磁石128の極性(永久磁石128b,128a)に対し、軸心O方向において互いに異極をなすと共に、軸心O方向と略直交する方向においても互いに異極(永久磁石128a(S極),128b(N極))をなすように配設されている(図10参照)。
また、永久磁石128は、図10に示すように、軸心O方向に沿う方向(図10上下方向)の長さ寸法が磁性体部123の軸心O方向に沿う方向の長さ寸法よりも長く構成されている。即ち、永久磁石128は、軸心O方向の最上方(図10上方)に位置する永久磁石128(永久磁石128a,128b)が磁性体部123よりも上方(図10上方)まで延設されると共に、軸心O方向の最下方(図10下方)に位置する永久磁石128(永久磁石128b,128a)が磁性体部123よりも下方(図10下方)まで延設されている(図10参照)。
連結部材130は、上述したように、ヨーク部材124と内筒122とを連結する部材である。ここで、図13を参照して、連結部材130の詳細構成について説明する。図13(a)は、連結部材130の上面図であり、図13(b)は、図13(a)のXIIIb−XIIIb線における連結部材130の断面図である。
連結部材130は、図11及び図13に示すように、内筒122の案内溝部123aに沿って転動する円板状の転動輪133と、その転動輪133の互いに対向する両側面から突出し円柱状に形成される一対の軸部133aと、その軸部133aを回転可能に支持する一対の張出部131と、それら一対の張出部131が内周から径方向内方へ張り出して形成されると共に外周側がヨーク部材124の内周側に内嵌保持される外輪部材132とを備えて構成される。
なお、一対の張出部131は、図11及び図13に示すように、周方向等間隔となる4箇所において、所定間隔を隔てつつ互いに対向しており、この対向間に転動輪133が配設されている。そして、防振装置300の組み立て状態においては、転動輪133が内筒122の案内溝部122aに係合されている。
これにより、連結部材130は、案内溝部122aに係合された転動輪133を介して、内筒122の軸心O方向に直線運動することで、外輪部材132の外周側に外嵌されるヨーク部材124を内筒222の軸心O方向へ案内する(往復動させる)直線案内機構として機能する。
即ち、ヨーク部材124等が内筒122に対して往復動する場合には、図9又は図11に示すように、連結部材130の転動輪133が張出部131に保持(支持)されつつ内筒122の案内溝部122aに沿って転動することで、内筒122の軸心O方向へのヨーク部材124等の移動(往動及び復動)は許容(案内)しつつ、内筒122の軸心O方向に直交する方向へのヨーク部材124等の移動は案内溝部122aの底面により規制することができるので、これらヨーク部材124等の永久磁石128と内筒122の磁性体123との間の間隔(クリアランス)を高精度に維持しつつ、ヨーク部材124等を往復動させることができる。その結果、加振装置110の出力の向上及び安定化を図ることができる。
更に、ヨーク部材124等が内筒122に対して往復動する場合、連結部材130の転動輪133は、その転動可能な方向が内筒122の案内溝部122aに沿う方向(軸心O方向)に限定される。即ち、内筒122に対するヨーク部材124等の軸心O周りの移動(周方向への相対回転)は、連結部材130の転動輪133が内筒122の案内溝部122a(一対の案内壁部123bの対向面)に係合されることで規制される。これにより、ヨーク部材124等と内筒122との間の相対移動を軸心O方向に沿う方向への移動のみに規制して、防振装置300を含む振動系全体としての挙動を安定化することができる。
ここで、張出部131は、図13(b)に示すように、その張り出し方向先端(図13(b)右側)に凹設される支持凹部131aを備え、転動輪133の軸部133aがこの支持凹部131aに回転可能に支持されている。
即ち、支持凹部131aは、図13(b)に示すように、先端面側が開放された形状に構成されているので、この開放側から転動輪133の軸部133aを支持凹部131aに容易に挿入して支持させることができる。その結果、例えば、張出部に穿設された貫通孔に軸部を打ち込んで転動輪を支持する構造の場合と比較して、組み立て工程を簡素化することができ、その分、製造コストの削減を図ることができる。
また、この場合、上述した軸部を打ち込む構造の場合などと比較して、張出部131による転動輪133の保持構造を簡素化することができるので、その分、信頼性の向上を図ることができると共に、この保持構造を形成する為に必要な加工コストを削減することができる。同時に、構造が簡素化される分、その剛性強度を確保することができるので、その分、防振装置300全体としての小型化・軽量化を図ることができる。
図8から図12に戻って説明する。封止部材160は、加振手段110の開口部をストッパゴム部352〜354及び連結部材130と共に閉封するための部材である。ここで、図14を参照して、封止部材160の詳細構成について説明する。図14(a)は、封止部材160の上面図であり、図14(b)は、図14(a)のXIVb−XIVb線における封止部材160の断面図である。
封止部材160は、図14に示すように、内側円板部161と、外側円板部162と、連結弾性体163とを備えている。内側円板部161及び外側円板部162は、鉄鋼材料から上面視円環状に構成される板状部材であり、連結弾性体163は、ゴム状弾性体により構成され、内側円板部161の外周部と外側円板部162の内周部とを加硫接着により連結する。
図8から図12に戻って説明する。防振装置300には、図9に示すように、封止部材160が一対配設されており、これら一対の封止部材160は、連結部材130を挟んで対向する位置、即ち、内筒122の軸心O方向両端側に配設されている。
なお、連結部材130は、図9に示すように、内側円板部161の内周部を内筒122の外周側に外嵌保持させると共に、外側円板部162の外周部をヨーク部材124の内周側に内嵌保持させることで、加振手段110の開口部を閉封して、その内部構造(即ち、磁性体部123と永久磁石128との間のクリアランス部やコイル126の電気的構成など)を密閉する。これにより、加振手段110の内部構造と外部との連通が遮断されている。
これにより、上述した一対の連結部材130及びストッパゴム部352〜354による閉封効果と相乗的に作用して、磁性体部123と永久磁石128との間のクリアランス部への異物の浸入による動作不良や雨水等の浸入による電気的なショートの発生などを効果的に回避することができ、その分、加振装置110の信頼性のより一層の向上を図ることができる。
同時に、連結部材130の可動部(内筒部材122と転動体133との間の摺動面など)への異物の浸入による動作不良や摩耗による耐久性の低下などを回避することができ、これによっても、加振装置110のより一層の信頼性の向上を図ることができる。
また、封止部材160は、上述したように、内側円板部161の外周と外側円板部162の内周との間を連結弾性体163で連結する構成であるので、ヨーク部材124等が往復動する場合には、連結弾性体163を剪断方向へ変形させることでその変形抵抗を小さくして、ヨーク部材124等の往復動をスムーズに行わせることができ、その結果、加振装置110の出力の向上と安定化とを図ることができる。
また、封止部材160は、上述のように、内側円板部161及び外側円板部162を内筒122及びヨーク部材124に対して圧入(外嵌又は内嵌)することで保持される構成であるので、例えば、これらを螺合により保持させる構成と比較して、構造を簡素化することができる。
よって、部品コストや組み立てコストの低減を図り、その分、防振装置300全体としての製品コストの低減を図ることができる。加えて、構造の簡素化を図りつつ、上述した加振装置110の開口部を閉封して内部構造を密閉する機能も確実に発揮させることができるので、かかる内部構造への異物の浸入等も効果的に抑制することができる。
以上、説明したように、第2実施の形態における防振装置300によれば、コイル126を励磁して起磁力を発生させることにより、ヨーク部材124を内筒122に対して往動工程と復動工程との両方向に電気的に駆動させることができるので、入力振動を打ち消す方向へヨーク部材124を往復動させることで、入力振動を軽減することができる。その結果、足廻り部材(図示せず)から車体フレームBFへ伝達される振動を十分に軽減することができるの、かかる振動が車室内に伝達されることを抑制して、静粛性や乗り心地の向上を図ることができる。
なお、かかる制御(即ち、コイル126に通電させる電流波形)は、上述した第1実施の形態の場合と同様に、加速度センサ14の検出結果に応じて行うことができる。加速度センサ14の設置箇所は適宜選択することができ、例えば、防振装置300と足廻り部材との間の振動伝達経路上に設置しても良く、防振装置300と車室(乗員用スペース)との間の振動伝達経路上(例えば、車体フレームBF)に設置しても良く、或いは、両方に設置しても良い。更に、乗員用スペースにおける騒音をマイクロフォンにより検出し、その検出結果を加速度センサ14による検出結果と併せて利用するようにしても良い。
加速度センサ14を防振装置300と足廻り部材との間の振動伝達経路上(例えば、ホルダF)に取り付けた場合には、足廻り部材から防振装置300に入力される振動を直接検出することができるので、いわゆる見込み制御を行うことができ、その分、足廻り部材から車室内へ伝達される振動を精度良く軽減させることができる。
一方、加速度センサ14を防振装置300と車室(乗員用スペース)との間の振動伝達経路上(例えば、車体フレームBF)に取り付けられた場合には、防振装置300を通過して車体フレームBFに伝わる振動、即ち、運転者等の乗員に伝わる振動を検出することができるので、かかる振動のみに応じた制御を行うことで、減衰させる必要のある振動のみを減衰させる制御を行うことができ、その分、制御コストの削減を図ることができる。
次に、図15から図18を参照して、第3実施の形態について説明する。図15(a)は、第3実施の形態における防振装置400の上面図であり、図15(b)は、防振装置400の正面図である。図16は、図15(a)のXVI−XVI線における防振装置400の断面図である。
図17は、図16のXVII−XVII線における防振装置400の断面図であり、図18は、図16のXVVIII−XVIII線における防振装置400の断面図である。また、図19(a)は、図17に示す防振装置400における連結部材230及び内筒222の部分拡大断面図であり、図19(b)は、図16に示す防振装置400における連結部材230及び内筒222の部分拡大断面図である。なお、図16では、車体フレームBFへの取り付け状態が図示されている。
第2実施の形態では、防振基体150がヨーク部材125の外周面に連結される場合を説明したが、第3実施の形態における防振装置400は、防振基体250が磁極部225の外側に連結されて構成されている。また、第2実施の形態では、円板状の転動輪133が内筒122の案内溝部122aに案内される場合を説明したが、第3実施の形態における防振装置400は、球状に形成された転動体233が内筒222の案内溝222aに案内されるように構成されている。なお、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
第3実施の形態におけるヨーク部材224は、第2実施の形態におけるヨーク部材124と同様に、電磁鋼板等の磁性金属からなり、図17又は図18に示す外形形状(円筒形状の内周面と外周側とを一対の磁極部125が貫通する形状)を有する多数の金属板を積層して構成されている。また、ヨーク部材224は、図16に示すように、磁極部225よりも内筒122の軸心O方向に長く形成されている。
なお、ヨーク部材224の内周側には、連結部材230が内嵌保持されている。この連結部材230は、後述するように、内筒222の案内溝222aに案内されて軸心O方向へ往復動する部材である。
このように、ヨーク部材224は、磁極部225よりも内筒122の軸心O方向に長い円筒状に形成されると共に、そのヨーク部材224の内周側において磁極部125の永久磁石128が内筒122の磁性体123に向き合う構成であるので、内筒122の外周側とヨーク部材224の内周側との間に磁性体123及び永久磁石128を収容するための閉空間を形成することができる。その結果、ストッパゴム部352〜354及び一対の連結部材230による閉封効果により、閉空間(クリアランス)内への異物等の浸入を抑制して、可動部の動作不良を回避することができる。
また、円筒状に形成されたヨーク部材224の内周側に連結部材230を圧入(内嵌)して保持させる構成であるので、組み立てコストの低減を図ることができると共に、連結部材230を強固に保持して往復動時の脱落を確実に防止することができる。同時に、上述した閉空間を閉封して内部構造を密閉する機能も確実に発揮させることができるので、異物の浸入等を確実に回避することができる。
ここで、第3実施の形態における防振装置400では、図15から図18に示すように、互いに対向して配置される磁極部225の外側(図15左右側面)に防振基体250が連結される構成であるので、その分、防振基体250との接触面積(受圧面積)を小さくすることができ、こじり変形に対する耐久性の向上を図ることができる。同時に、同時に、荷重入力時の負荷を防振基体250が吸収して、その分、加振装置210の負担を抑制することができるので、加振装置210の構造を簡素化(例えば、小型化や材質の変更など)して、軽量化とコストの削減とを図ることができる。
第3実施の形態における内筒222は、第2実施の形態と同様に、軸心O回りに対称形状となる円筒状に形成されている。この内筒222の外周面には、図16、図17又は図19に示すように、軸心O方向に沿って延設される案内壁部222aが径方向内方に凹設されている。
案内溝部222aは、後述する転動輪233の転動方向を案内するための溝部であり、図19に示すように、転動体233よりも若干大きな半径を有する円弧状の断面に形成されている。転動心133は、案内溝部222aによって、内筒222の軸心O方向への移動は案内(許容)される一方、内筒222の軸心O周りとなる周方向への移動は規制される。
連結部材230は、上述したように、ヨーク部材224と内筒222とを連結するための部材であり、図17又は図19に示すように、球状に形成される転動体233と、装填凹部231が内周側に形成され外周側がヨーク部材224の内周側に内嵌保持される外輪部材232とを備える。
なお、装填凹部231は、内筒222の案内溝部222aと同様に、転動体233よりも若干大きな半径を有する半球状の凹部として形成されており、転動体233は、装填凹部231と内筒222の案内溝部222aとの間に形成される空間内に装填されている。
これにより、連結部材230は、上述の空間内に装填された転動体233を介して、内筒222の軸心O方向に直線運動することで、外輪部材232の外周側に外嵌されるヨーク部材224を内筒222の軸心O方向へ案内する(往復動させる)直線案内機構として機能する。
即ち、ヨーク部材224等が内筒222に対して往復動する場合には、図17又は図19に示すように、転動体233が装填凹部231に保持(支持)されつつ内筒222の案内溝部222aに沿って転動することで、内筒222の軸心O方向へのヨーク部材224等の移動(往動及び復動)は許容(案内)しつつ、内筒222の軸心O方向に直交する方向へのヨーク部材224等の移動は案内溝部222aの底面により規制することができるので、これらヨーク部材224等の永久磁石128と内筒222の磁性体223との間の間隔(クリアランス)を高精度に維持しつつ、ヨーク部材224等を往復動させることができる。その結果、加振装置110の出力の向上及び安定化を図ることができる。
更に、ヨーク部材224等が内筒222に対して往復動する場合、連結部材230の転動体233は、その転動可能な方向が内筒222の案内溝部222aに沿う方向(軸心O方向)に限定される。即ち、内筒222に対するヨーク部材224等の軸心O周りの移動(周方向への相対回転)は、連結部材230の転動体233が内筒222の案内溝部222aの壁面に係合されることで規制される。これにより、ヨーク部材224等と内筒222との間の相対移動を軸心O方向に沿う方向への移動のみに規制して、防振装置400を含む振動系全体としての挙動を安定化することができる。
なお、防振装置400には、図16に示すように、連結部材230が一対の配設されており、これら一対の連結部材230は、磁性体部123、ヨーク部材224の磁極部125を挟んで対向している。これにより、加振装置220の開口部を閉封して、内部構造(即ち、可動部、或いは、電気的構成)と外部との連通を遮断することができる。
その結果、例えば、磁性体123と永久磁石128との間のクリアランス部への異物の浸入による動作不良などを未然に回避して、加振装置220の信頼性の向上を図ることができる。なお、案内溝部222a及び装填凹部231内には、グリスが充填されている。これにより、転動体233の潤滑性を確保すると共に、上記クリアランス部を介しての内部構造内への異物の浸入を防止することができる。
また、連結部材230は、外輪部材232の外周側をヨーク部材224の内周側に対して圧入(内嵌)することで保持される構成であるので、例えば、これらを螺合により保持させる構成と比較して、構造を簡素化することができる。よって、部品コストや組み立てコストの低減を図り、その分、防振装置400全体としての製品コストの低減を図ることができる。加えて、構造の簡素化を図りつつ、上述した加振装置400の開口部を閉封して内部構造を密閉する機能も確実に発揮させることができるので、かかる内部構造への異物の浸入等も効果的に抑制することができる。
以上、実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態で挙げた数値は一例を示すものであり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記第2の形態では、転動輪133及び案内溝122bを周方向等間隔となる4箇所に設ける場合を説明したが、その配設箇所を3箇所以下又は5箇所以上にとすることは当然可能である。上記第3実施の形態における転動体233及び案内溝222aについても、同様に、その配設箇所を3箇所以下又は5箇所以上とすることは当然可能である。
上記第2及び第3実施の形態では、内筒122,222が車体フレームBF側に、外筒140が足廻り部材(ホルダF)側に、それぞれ取り付けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、この対応関係を逆とする、即ち、内筒122,222が足廻り部材(ホルダF)側に、外筒140が車体フレームBF側に、それぞれ取り付けられるように構成しても良い。
上記第2及び第3実施の形態では、供給線127(コイル126に制御部30(図4参照)からの電力を供給するための電線)の配線方法についての説明を省略したが、次のように配線することができる。
第2実施の形態における防振装置300では、連結部材130の外輪部材132に穿設された貫通孔、封止部材160の連結弾性体163に穿設された貫通孔、及び、ストッパ面S2に穿設された貫通孔を介して、供給線127がコイル126と制御部30(図4参照)との間で配線される。
これにより、供給線127を取り回すための構造を簡素化して、防振装置300の製造コストの削減を図ることができる。即ち、内側円板部161及び外側円板部162は鉄鋼材料から構成されるため、かかる部材に貫通孔を形成することは加工コストの上昇を招くところ、上述したように、連結弾性体163に貫通孔134を形成する構成であれば、内側円板部161と外側円板部162とに連結弾性体163を加硫接着する際に同時に貫通孔を型成形することができるので、その分、製造コストの削減を図ることができる。
なお、貫通孔は、一対の連結部材130及び一対の封止部材160の一方(図9下側)のみに形成され、他方(図9上側)には形成されない。また、供給線127が挿通された貫通孔内にはシール材が充填され、貫通孔を介した内外の連通が完全に遮断されると共に、シール材を緩衝材として機能させ供給線127の断線を防止する。
但し、貫通孔は、封止部材160の内側円板部161或いは外側円板部162に穿設することは当然可能である。この場合には、供給線127が断線することをより防止することができる。
即ち、連結弾性体163に設けた貫通孔に供給線を配線すると、防振装置300への振動の入力に伴って連結弾性体163が変形された際に貫通孔も変形されるため、かかる貫通孔の変形に伴って供給線127に負荷がかかり断線し易くなるところ、内側又は外側円板部161,162に設けた貫通孔であれば、かかる貫通孔が変形することはないので、供給線274への負荷を回避して、その断線を抑制することができる。なお、貫通孔には上述した通りシール材が充填される。
第3実施の形態における防振装置400では、ストッパ面S2に穿設された貫通孔を介して、供給線127がコイル126と制御部30(図4参照)との間で配線される。第3実施の形態では、上述の通り、ヨーク部材224の外周側にコイル126を配置することができるので、連結部材230に貫通孔を穿設する必要がなく、その分、加工コストを低減することができる。
上記第3実施の形態では、コイル126がヨーク部材224の外周側に配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、コイル126をヨーク部材224の内周側に配設することは当然可能である。即ち、防振基体250には、第3実施の形態の場合と同様に、磁極部225の外側のみが連結される一方、コイル126は、第2実施の形態の場合と同様に、内筒122,222とヨーク部材124,224との間に形成される閉空間内に収容される構成とするのである。
これにより、上述した効果、即ち、防振基体250との連結が磁極部225のみであるから、こじり変形に対する耐久性の確保や入力荷重による加振手段220への負荷の抑制を図ることができると共に、コイル126を閉空間内に閉封する構成であるから、水等の浸入による動作不良を回避することができる。
更に、この場合には、ヨーク部材224の外周面を大変位入力時のストッパ面として機能させることができる。即ち、ヨーク部材224の外周面を防振基体250の内周面に当接させることで、変位を規制して、ストッパ作用を発揮させることができる。
上記第3実施の形態では、封止部材160の配設を省略したが、封止部材160を設けることは当然可能である。この場合には、第2実施の形態の場合と同様に、内筒222の外周面とヨーク部材224の内周面との間に圧入により保持される。
上記第2実施の形態では、内筒122の外周面から一対の案内壁部122aが径方向外方へ突出して形成され、これら一対の案内壁部122aの対向面間に案内溝部122bが形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、第3実施の形態の場合と同様に、内筒122の外周面に凹部(例えば、断面コ字状)を形成し、この凹部を案内溝部として構成しても良い。
一方、上記第3実施の形態では、内筒222の外周面に案内溝部222aが凹設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、第2実施の形態の場合と同様に、内筒222の外周面から一対の案内壁部を径方向外方へ突出させ、これら一対の案内壁部の対向面間に形成される部位を案内溝部として構成しても良い。
上記第2実施の形態では、案内溝部122bが断面コ字状に形成されると共に、転動輪133の外周面が平坦面状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、案内溝部122bの底面部を断面円弧状に形成すると共に、転動輪133の外周面を案内溝部122bの底面部よりも若干小さな半径の断面円弧状に形成して構成しても良い。
上記第2実施の形態における連結部材130及び内筒122を上記第3実施の形態における連結部材230及び内筒222により構成しても良く、それとは逆に、上記第3実施の形態における連結部材230及び内筒222を上記第2実施の形態における連結部材130及び内筒122により構成しても良い。