JP5025343B2 - 含チオフェン基重合体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
これら機能素子のなかで、光電変換素子とりわけ太陽電池および電子写真感光体用ホール輸送材として、低分子系材料および高分子系材料の様々な材料が報告されている。前者の低分子系材料においてはさらなる高効率化が求められており、また後者の高分子系材料においてはプリントの高速化ならびに耐久性が求められている。
一方、高分子系材料において、従来、主にPPV(poly-p-phenylenevinylene)系列やpoly-thiophene等について検討が行われてきた。しかしながら、これらの材料系は純度を上げることが困難であり、また本質的に蛍光量子収率が低いという問題点がある。よって高性能な発光素子は得られていないのが現状である。高分子系材料は、通常、ガラス状態が安定であると考えられ、高分子系材料において高蛍光量子効率を付与することができれば優れた発光素子の構築が可能となると考えられる。このため、この分野でさらなる改良が行われている。たとえば繰り返し単位としてアリールアミンユニットを含む高分子系材料を用いた発光素子の発明を挙げることができる(特許文献1〜4および非特許文献1参照)。
上記した特許文献5は本発明者らが先に提案した発明である。この文献ではアリールアミンユニットを有する高分子材料などで示される高分子系材料において、有機エレクトロニクス用素材における特性値である移動度の向上は目覚しい。有機エレクトロニクス用素材、とりわけ有機FET素子への応用を考慮すると、さらなる高移動度の素材が望まれている。
また、安価に製造でき、充分な柔軟性と強度を有し、かつ軽量であること、大面積化が可能である有機材料を用いた素子の最大の特徴を活かすため、有機溶剤に対する充分な溶解性を有することが必要である。一般的に共役が伸張された構造のπ共役重合体では、構造が剛直であり、このため溶解性に乏しい。上記従来公知の重合体でも溶解性に乏しい高分子系材料が多く、これを回避すべく様々な分子設計の試行錯誤がされているのが現状である。
即ち、本発明は以下の(1)〜(6)である。
(1)下記一般式(I)で表される構成単位を含有する含チオフェン基重合体。
(2)前記一般式(I)で表される構成単位が下記一般式(II)で表される構成単位であることを特徴とする前記(1)に記載の含チオフェン基重合体。
(3)前記一般式(II)で表される構成単位が下記一般式(III)で表される構成単位であることを特徴とする前記(2)に記載の含チオフェン基重合体。
(4)少なくとも一つの前記R1基は5位に結合していることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の含チオフェン基重合体。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の重合体の製造方法であって、下記一般式(IV)で表されるジアルデヒド化合物と下記一般式(V)で表されるジホスホン酸エステル化合物とを反応させることを特徴とする含チオフェン基重合体の製造方法。
(6)前記一般式(IV)で表されるジアルデヒド化合物において、少なくとも一つの前記R1は5位に結合していることを特徴とする前記(5)に記載の含チオフェン基重合体の製造方法。
本発明の含チオフェン基重合体は、下記一般式(I)で表される構成単位を有する。
(1)ハロゲン原子(F、Cl、Br、Iなど)、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、スルフィド(−SH)、スルフォン基など。
(2)炭素数1〜25の無置換もしくは置換のアルキル基、アルコキシ基(アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基、iso−プロピル基)、ブチル基(n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基)、ペンチル基(n−ペンチル基、iso−ペンチル基、tert−ペンチル基など)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜25の分岐していてもよいアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式アルキル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、トリフルオロメトキシ基等などの炭素数1〜25の脂肪族アルコキシ基、炭素数1〜25のベンジルオキシ基などの芳香族アルコキシ基が挙げられる。)。
(3)アリールオキシ基(アリール基としてフェニル基、ナフチル基を有するアリールオキシ基が挙げられる。これは、炭素数1〜25の無置換もしくは置換のアルキル基、炭素数1〜25の無置換もしくは置換のアルコキシ基、又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2 −ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4 −クロロフェノキシ基、6−メチル−2 −ナフチルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。)。
(4)アルキルチオ基又はアリールチオ基(具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。)。
(5)アルキル置換アミノ基(具体的には、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(p−トリル)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。)。
(6)アシル基(アシル基としては、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、マロニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。)。
また、上記の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基は前記した(1)〜(6)に示す置換基を有していてもよい。
置換または無置換の芳香族炭化水素基の例としては、たとえばフェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの1価の基、ジフェニルエーテル基、ポリエチレンジフェニルエーテル基、ジフェニルチオエーテル基及びジフェニルスルホン基等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル基、ターフェニル基などの単環を複数有するポリフェニル基、ジフェニルアルキル基、ジフェニルアルケン基、ジフェニルアルキン基、トリフェニルメチル基、ジスチリルフェニル基、ジスチリルベンジル基、1,1−ジフェニルシクロアルキル基、ポリフェニルアルキル基、及びポリフェニルアルケン基、ポリフェニルアルキン基等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の一価基が挙げられる。
ただしφは置換基を有する2価のフェニレン基であり、Ar3〜Ar4において、R3およびR4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、及び置換又は無置換のアルキルチオ基からなる群より選択される基であり、yおよびzはそれぞれ独立に1以上4以下の整数を表し、yまたはzが2以上の場合、各基R3およびR4はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
特に前記一般式(I)、(II)または(III)で表される重合単位を有する重合体において、少なくとも一つのR1基は5位に結合していることが好ましい。
本発明の重合体の製造方法は、アルデヒドとホスホネートを用いたWittig−Horner反応、アルデヒドとホスホニウム塩を用いたWittig反応、ビニル置換体とハロゲン化物を用いたHeck反応、あるいはアミンとハロゲン化物を用いたUllmann反応などを利用して製造することができる。特にWittig−Horner反応およびWittig反応は、反応操作の簡便さから有効である。
本発明における重合体は、一般的には以下に記載するスキーム1で示されるようにホスホン酸エステル化合物およびアルデヒド化合物(ジホスホン酸エステル化合物とジアルデヒド化合物)とを、化学量論的に略等しく存在する溶液とし、その2倍モル量以上の塩基の存在下に重合反応を進行させることができる。また、複数種のホスホン酸エステル化合物あるいはアルデヒド化合物を反応系内に添加することにより、ランダム共重合体を得ることもでき、このような手法を利用することにより、適宜、得られる重合体の諸特性を調整することも可能である。
また前記一般式(V)中、Ar1およびR2は前記一般式(I)と同じ意味であり、R’は炭素数1〜50のアルキル基を表し、各R’は同一でも異なっていてもよい。
一般式(V)で表されるジホスホン酸エステル化合物の具体的な例としては、下記式(V-1)〜(V-13)で表される化合物を挙げることができる。
重合反応に要する重合時間は、用いられるモノマーの反応性、または重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、たとえば0.2時間〜30時間が好ましい。
窒素ガスで置換した50mlフラスコ中に、上式(IV-1)で表されるジアルデヒド化合物0.662g(1.417mmol)、前記した(V−5)で示されるジホスホネート化合物0.880g(1.417mmol)とを脱水テトラヒドロフラン20mlに溶解し、カリウムt−ブトキシドの1.0moldm-3テトラヒドロフラン溶液4.2mlを室温下に徐々に滴下して加えた。滴下後室温で4.5時間撹拌した後、ベンズアルデヒド23mgを加え1.5時間攪拌し、ついで、ベンジルホスホン酸ジエチル45mgを加え1.5時間攪拌した後、酢酸で中和した。中和した内容物を水に滴下して粗ポリマーを得た。これをテトラヒドロフラン/メタノール、次いで、テトラヒドロフラン/アセトンで再沈させて精製をおこなった後、塩化メチレンに溶解し、イオン交換水でその洗浄液の導電率がイオン交換水と同等になるまで洗浄を繰り返した。洗浄後、メタノール中に滴下してオレンジ色の下式で示される本発明の重合体−1を0.33g得た。
ただし、実測値(計算値)として表す。
C:81.03(81.28) H:8.09(7.93) N:1.99(1.93) S:4.27(4.43)
またこの重合体−1のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は18,900であり、重量平均分子量は69,000であった。
この重合体−1の赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜により測定)を図1に示す。
窒素ガスで置換した50mlフラスコ中に、上式(IV-1)で表されるジアルデヒド化合物0.862g(1.843mmol)と、前記した(V−9)で示されるジホスホネート化合物1.170g(1.843mmol)とを脱水テトラヒドロフラン20mlに溶解し、カリウムt−ブトキシドの1.0mol・dm-3テトラヒドロフラン溶液5.6mlを室温下に徐々に滴下して加えた。滴下後室温で4.5時間撹拌した後、ベンズアルデヒド30mgを加え1.5時間攪拌し、次いで、ベンジルホスホン酸ジエチル59mgを加え1.5時間攪拌した後、酢酸で中和した。中和された内容物を水に滴下して粗ポリマーを得た。この粗ポリマーをテトラヒドロフラン/メタノール、次いで、テトラヒドロフラン/アセトンで再沈による精製をおこなった後、塩化メチレンに溶解し、イオン交換水でその洗浄液の導電率がイオン交換水と同等になるまで洗浄を繰り返した。洗浄後、メタノール中に滴下して黄色の下式で示される本発明の重合体−2、0.91gを得た。
元素分析値(%)実測値(計算値)
C:86.27(86.20) H:7.85(8.00) N:1.73(1.76) S:4.01(4.04)
重合体−2のGPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は14,500、重量平均分子量は52,900であった。
重合体−2の赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を図2に示す。
窒素ガスで置換した50mlフラスコ中に、上式(IV-1)で表されるジアルデヒド化合物0.766g(1.637mmol)と、前記した(V−13)で示されるジホスホネート化合物0.767g(1.637mmol)とを脱水テトラヒドロフラン20mlに溶解し、カリウムt−ブトキシドの1.0mol・dm-3(1.0M)テトラヒドロフラン溶液5.0mlを室温下で徐々に滴下して加えた。滴下後室温で3時間撹拌した後、ベンズアルデヒド27mgを加え1.5時間攪拌し、次いで、ベンジルホスホン酸ジエチル52mgを加え1.5時間攪拌した後、酢酸で中和した。中和された内容物を水に滴下して粗ポリマーを得た。これをクロロホルム溶液としてシリカゲルカラムにて処理した後、このポリマー溶液をイオン交換水でその洗浄液の導電率がイオン交換水と同等になるまで洗浄を繰り返した。洗浄後、この洗浄物をメタノール中に滴下してオレンジ色の下式で示される本発明の重合体−3、0.35gを得た。
元素分析値(%)実測値(計算値)
C:80.02(80.34) H:6.98(7.22) N:2.12(2.23) S:10.05(10.21)
重合体−3のGPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は2,800、重量平均分子量は4,800であった。
また重合体−3の赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を図3に示す。
Al電極が蒸着されたPET(ポリエチレンテレフタレート)基板上に、実施例1で得られた重合体−1の20wt%のテトラヒドロフラン溶液をブレード塗工し、膜厚16.2μmの薄膜を形成した。この薄膜の半導体フィルム上にさらに金電極を蒸着し、サンドイッチセルを作製した。このセルを用いて、タイムオブフライト法(TOF法)により有機半導体材料のキャリア移動度を測定したところ、2.46E+5 V/cm(2.46×105V/cm)の電界強度において2.22E−3 cm2V−1s−1(2.22×10−3 cm2V−1s−1)の高いキャリア移動度が観測された。
p−ドープされてゲートとして作用するシリコン基板表面を熱酸化してSiO2の絶縁層を200nm形成した後、酸化膜を片面だけ除去し、除去した面にAlを蒸着してゲート電極とした。次に該SiO2の絶縁層上に、実施例1で得られた重合体1の約1.0wt%のテトラヒドロフラン溶液をスピンコートして乾燥することにより有機半導体層を作製した。引き続きチャネル長30μm、チャネル幅10mmとなるようにソース・ドレイン電極のAu膜を蒸着した。
Ids=μCinW(Vg−Vth)2/2L
ただし上式において、Cinはゲート絶縁膜の単位面積あたりのキャパシタンスであり、Wはチャネル幅であり、Lはチャネル長であり、Vgはゲート電圧であり、Idsはソース−ドレイン電流であり、μは移動度であり、Vthはチャネルが形成し始めるゲートの閾値電圧である。
上式を用いて移動度μを求めたところ、作製したTFTの移動度は6.4×10−5(cm2/Vsec)であった。
またオン/オフ比(Vds=−20V、Vg=−40VにおけるIdsと、Vds=−20V、Vg=+20〜−40Vの範囲内で観測された最小のIdsとの比)は1.4×104であり、閾値電圧は−14.00Vであった。
p−ドープされてゲートとして作用するシリコン基板表面を熱酸化してSiO2の絶縁層を200nm形成した後、酸化膜を片面だけ除去し、除去した面にAlを蒸着してゲート電極とした。次に該SiO2の絶縁層上に、実施例2で得られた重合体2の約1.0wt%のテトラヒドロフラン溶液をスピンコートして乾燥することにより有機半導体層を作製した。引き続きチャネル長30μm、チャネル幅10mmとなるようにソース・ドレイン電極のAu膜を蒸着した。
p−ドープされてゲートとして作用するシリコン基板表面を熱酸化してSiO2の絶縁層を200nm形成した後、酸化膜を片面だけ除去し、除去した面にAlを蒸着してゲート電極とした。次にSiO2の絶縁層上に、実施例3で得られた重合体3の約1.0wt%のテトラヒドロフラン溶液をスピンコートして乾燥することにより有機半導体層を作製した。引き続きチャネル長30μm、チャネル幅10mmとなるようにソース・ドレイン電極のAu膜を蒸着した。
Claims (6)
- 少なくとも一つの前記R1基は5位に結合していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の含チオフェン基重合体。
- 前記一般式(IV)で表されるジアルデヒド化合物において、少なくとも一つの前記R1は5位に結合していることを特徴とする請求項5に記載の含チオフェン基重合体の製造方法。
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