JP5024675B2 - 電子機器の冷却システム及び冷却方法 - Google Patents

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Description

本発明は電子機器の冷却システム及び冷却方法に係り、特に、コンピュータ及びサーバ等の精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を効率的に冷却するための電子機器の冷却システムに関する。
近年、情報処理技術の向上やインタネット環境の発達に伴って、必要とされる情報処理量が増大しており、各種の情報を大量に処理するためのデータ処理センターがビジネスとして脚光をあびている。このデータ処理センターの例えばサーバルームには、コンピュータやサーバ等の電子機器が集約された状態で多数設置され、昼夜にわたって連続稼働されている。一般的に、サーバルームにおける電子機器の設置は、ラックマウント方式が主流になっている。ラックマウント方式は、電子機器を機能単位別に分割して収納するラック(筐体)を、キャビネットに段積みする方式であり、かかるキャビネットがサーバルームの床上に多数整列配置されている。これら情報を処理する電子機器は、処理速度や処理能力が急速に向上してきており電子機器からの発熱量も上昇の一途をたどっている。
一方、これらの電子機器は、動作に一定の温度環境が必要とされ、正常に動作するための温度環境が比較的低く設定されているため、電子機器が高温状態に置かれるとシステム停止等のトラブルを引き起こす。このため、従来のデータセンタでは、電子機器を設置する室内を、リーク時に機器への影響が少ないフロン系冷媒を用いた直膨式空調機により冷却している。図5は、従来の空調システムの一例を示す説明図である。図5に示すように、複数のサーバ1が設置される被空調室2内に床置型の空調機3を設置し、室外には室外機4を設置する。そして、空調機3により冷却した空気を床下チャンバ5に供給し、床面に設置した給気口6を通して被空調室2内に供給する。被空調室2内のサーバ1は、前面から冷気を吸い込むことで内部発熱を冷却した後、背面から昇温した空気を排出している。
しかしながら、このような冷却システムでは、サーバルーム内を冷房するための空調機を運転する空調動力が大幅に増加しているのが実情であり、空調動力の削減が急務となっている。
このような背景から、特許文献1や特許文献2にみられるように、電子機器を効率的に冷却するための技術が提案されている。特許文献1には、後部カバーと前部カバーと側面取付け式の冷却空気サブフレームとを電子機器に取り付けると共に、冷却空気サブフレーム内にファンと熱交換器を設けることにより、電子機器を介して冷風が閉ループで流れる流路を形成することが提案されている。
また、特許文献2には、内部に蒸発器とファンを搭載した電子機器収納用ラック群を備えた電算機室用空調システムにおいて、室外から取り入れられた冷却用空気を床下の内部空間に流動させ、蒸発器を通じて電子機器収納用ラックに収納された電子機器を冷却すると共に、電子機器収納用ラックの背面に搭載される凝縮器を冷却して電子機器収納用ラックの背面又は上方の空間を流動し、換気装置を介して室外に排出することが提案されている。
このように、従来の電子機器の冷却システムは、電子機器の冷却を空調機による冷却のみならず、電子機器に直接取り付けた冷却器を併用することで、空調機の空調動力を削減する効果が期待されている。
特表2006−507676号公報 特開2004−232927号公報
しかしながら、上記特許文献1や2の冷却システムでは、空調動力を削減できる反面、電子機器に直接取り付けた冷却器等の設備コストが増加する虞がある。また、各冷却機構が小規模であるため、大型のセントラル熱源方式と比較してシステム効率が非常に低く、消費電力が増加する傾向もある。
また、従来の空調設備では、電子機器からの発熱量は情報処理量により変動するにも関わらず、電子機器からの最大の発熱量を想定して風量等を設定することが一般的である。このため、実際には、冷却に要する以上の空調エネルギーが消費されることが多く、トータル的な省エネの観点からみると未だ十分とは言えない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、コンピュータ及びサーバ等の精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を、小さなランニングコストで効率的に冷却することができる電子機器の冷却システムを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、複数の各電子機器に近接して設けられ、該電子機器から発生する熱で冷媒を気化させることにより該電子機器を冷却する複数の蒸発器と、前記電子機器から発生する熱を含む風を前記複数の各蒸発器にあてる複数の送風手段と、前記各蒸発器に対して並列に配置され、前記蒸発器に供給する冷媒を冷却する凝縮器と、を備えた電子機器の冷却システムにおいて、 前記複数の各送風手段の風量をそれぞれ調整する風量調整手段と、前記蒸発器における冷却処理量をそれぞれ制御する冷却処理量調整手段と、前記電子機器情報処理量の負荷情報をそれぞれ取得する負荷情報取得手段と、前記負荷情報取得手段で取得した電子機器の負荷情報に基づいて、前記各電子機器の負荷に合わせて前記風量調整手段及び前記冷却処理量調整手段を制御する運転演算制御手段と、を備え、前記負荷情報取得手段は、前記電子機器の消費電力量を測定する電力量測定手段であると共に、前記蒸発器と前記凝縮器との間における冷媒の輸送は、自然循環により行うことを特徴とする電子機器の冷却システムを提供する。
請求項1によれば、電子機器に近接させて蒸発器を設置することにより、蒸発器内の冷媒を高温の排熱と熱交換させることができるので、冷媒の冷却温度を高く設定できる。また、運転演算制御手段により、電子機器の負荷情報に基づいて風量調整手段や冷却処理量調整手段を制御する。これにより、負荷変動に応じた極めて細やかな冷却制御を行うことができ、冷却に要するランニングコストを削減できる。たとえば、電子機器の処理負荷が大きくなれば、それだけ電子機器から発生する発熱量も大きくなるので、送風手段の風量や蒸発器の冷却処理量を大きくする。また、電子機器の処理負荷が小さくなれば、それだけ電子機器から発生する発熱量も小さくなるので、送風手段の風量や蒸発器の冷却処理量を小さくする。
なお、冷却処理量調整手段としては、例えば、電子機器からの排熱を蒸発器で冷却した後の温度により測定でき、蒸発器への冷媒の供給流量や冷媒温度等を変えることにより制御するものが含まれる。
請求項2は請求項1において、前記運転演算制御手段は、前記冷却システム全体の消費エネルギー量を小さくする前記送風手段の風量、前記蒸発器における冷却処理量の各設定値を演算し、該設定値となるように前記風量調整手段及び前記冷却処理量調整手段を制御することを特徴とする。
請求項2によれば、運転演算制御手段は、各電子機器の負荷情報に基づき、冷却システム全体の消費エネルギー量を小さくするように風量調整手段や冷却処理量調整手段を制御する。これにより、各電子機器の処理負荷に応じて、必要な分だけ冷却制御を行えるので、冷却システム全体を省エネルギー化できる。
請求項3は請求項1又は2において、前記冷却処理量調整手段は、前記演算結果に基づいて、前記蒸発器に供給する冷媒流量を調整する冷媒流量調整手段を備えたことを特徴とする。
請求項3によれば、演算結果に基づいて蒸発器に供給する冷媒流量を調整するので、電子機器の処理負荷に応じて冷却処理量を調整できる。このような冷媒流量調整手段としては、例えば、蒸発器への冷媒の供給流量を調整するバルブと、該バルブ開度を調整するコントローラとよりなる機構等が含まれる。
請求項4は請求項1〜3の何れか1項において、前記冷却処理量調整手段は、前記演算結果に基づいて、前記冷媒の冷却温度を調整する冷却温度調整手段を備えたことを特徴とする。
請求項4によれば、演算結果に基づいて冷媒の冷却温度を調整するので、電子機器の処理負荷に必要な量だけ冷媒を冷却できる。冷却温度調整手段としては、例えば、蒸発器内に供給する冷媒(2次冷媒)を冷却する1次冷媒の冷却温度を調整する機構や1次冷媒の循環流量を調整する機構等が挙げられる。
請求項1によれば、電子機器の情報処理量は消費電力量に比例するため、簡易な方法で電子機器における処理負荷を把握することができる。
請求項5は請求項1〜4の何れか1項において、前記電子機器における情報処理量の負荷を分配する負荷分配手段を備え、前記運転演算制御手段は、前記負荷情報に基づいて前記風量調整手段、前記冷却処理量調整手段、及び前記負荷分配手段を制御することを特徴とする。
請求項5によれば、運転演算制御手段は、負荷情報に基づいて、風量調整手段及び冷却処理量調整手段だけでなく、電子機器への処理負荷を分配する負荷分配手段も制御する。これにより、電子機器の負荷変動に応じて、送風手段等の冷却システムだけでなく電子機器を含めたトータルでのきめ細かい制御が可能となる。
請求項6は請求項5において、前記運転演算制御手段は、前記冷却システム全体の消費エネルギー量と前記電子機器の消費電力量との総和を小さくする前記送風手段の風量、前記蒸発器における冷却処理量、及び前記電子機器における情報処理量の各設定値を演算し、該設定値となるように前記風量調整手段、前記冷却処理量調整手段、及び前記負荷分配手段を制御することを特徴とする。
請求項6によれば、運転演算制御手段は冷却システム全体の消費エネルギー量と前記電子機器の消費電力量との総和を小さくするように風量調整手段、冷却処理量調整手段、及び負荷分配手段を制御するので、冷却システムだけでなく電子機器を含めたトータルでの消費エネルギーを低減できる。
請求項1によれば、自然循環を使用するので冷媒の動力コストを低減できる。また、蒸発器を電子機器に近接して設けるので、電子機器からの高温の排熱と蒸発器内の冷媒とを直接熱交換させることができる。このため、冷媒の冷却温度を高く設定できる。
請求項7は請求項1〜6の何れか1項において、前記電子機器はサーバであることを特徴とする。
このように、データセンター等におけるサーバの情報処理量の増加に伴う発熱を効率的に冷却でき、省エネルギー化できる。
請求項8に記載の発明は、前記目的を達成するために、請求項1〜7の何れか1項に記載の電子機器の冷却システムを用いたことを特徴とする電子機器の冷却方法を提供する。
本発明に係る電子機器の冷却システムによれば、コンピュータ及びサーバ等の精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を、小さなランニングコストで効率的に冷却することができる。
以下、添付図面に従って本発明に係る電子機器の冷却システムの好ましい実施の形態について詳説する。なお、電子機器の一例として、サーバルームに配設されたサーバの例で説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の電子機器の冷却システム10を示した概念図である。
図1に示すように、建屋内のサーバルーム12には、電子機器(以下、サーバ14という)を収納した複数のサーバラック16が配設される。各サーバラック16には、複数のサーバ14が段積み状態で収納される。なお、サーバラック16の設置数は、図1の形態に限定されることはない。
サーバラック16には、サーバ14を冷却するための蒸発器18及びファン20よりなる局所冷却ユニット22が設けられている。
蒸発器18の内部には冷却コイル21が設けられ、冷却コイル21内を流れる冷媒(2次冷媒)がサーバ14から発生する熱風で蒸発することにより周囲から気化熱を奪い気化する。ファン20(送風手段)は、矢印24に示すように、サーバ14がサーバルーム12の空気を吸い込み、蒸発器18に向けて排気するように配置される。これにより、サーバ14自体やサーバ14からの排熱が冷却される。なお、サーバラック14には、移動用キャスタ(不図示)を設けて移動可能に配置することが好ましい。
建屋上には冷媒凝縮器26が設けられ、冷媒凝縮器26と前述したそれぞれの蒸発器18との間には、冷媒(2次冷媒)が自然循環する循環ライン28が形成される。蒸発器18に設けられた冷却コイル21と冷媒凝縮器26に設けられた螺旋状配管30との間は、蒸発器18で気化した冷媒ガスを冷媒凝縮器26に戻すための戻し配管32と、冷媒ガスを冷媒凝縮器26で冷却して凝縮することにより液化した冷媒液体を蒸発器18に供給する供給配管34とで連結される。
戻し配管32及び供給配管34は、床下チャンバ36を通って各サーバラック14内の蒸発器18にそれぞれ分岐接続される。これにより、サーバ14を冷却する2次側冷却系が形成される。
冷媒凝縮器26の1次側コイル38は、冷凍機40からの冷水供給配管42と冷水戻り配管44に接続され、冷水戻り配管44には循環ポンプ46が設けられる。これにより、冷凍機40で製造された冷水(1次冷媒)が冷媒凝縮器26において冷媒(2次冷媒)と熱交換し、冷媒を冷却する。さらに、冷凍機40に冷却塔48を接続して冷凍機40の冷熱源とすることにより、冷凍機40の使用電力を削減するように構成してもよい。これにより、冷水を冷却する1次側冷却系が形成される。
このような構成により、サーバ14からの高温の排熱を高温状態のままで蒸発器18を流れる冷媒と直熱熱交換して冷媒の蒸発を促進させることができる。これにより、蒸発器18、冷媒凝縮器26、及び循環ライン28の間で、内部に冷媒を封入した無動力のヒートパイプが構築される。また、サーバ14からの高温の排熱と熱交換させることで高温の冷媒ガスを形成できるので、冷媒ガスを凝縮する冷却温度を高めに設定でき、少ない冷却能力でも冷媒ガスを凝縮できる。
ところで、サーバ14の発熱量は情報処理量(処理負荷)に応じて変動する。このため、各サーバ14における情報処理負荷に応じた適切な冷却制御を行うことが、冷却システムの効率化、省エネ化を実現する上で重要となる。
本実施の形態では、各サーバラック16には、ファン20の運転周波数を調整する風量調整手段50(例えば、インバータ等)が設けられる。また、各蒸発器18には、サーバ14から排出された熱風が蒸発器18で冷却された後の風の温度を測定する温度センサ52が設けられ、冷却コイル21の出口には、冷却コイル21に供給する冷媒の供給流量を調整するためのバルブ54と、バルブ54の開度を制御する流量制御部56(バルブ54及び流量制御部56は合わせて冷媒流量調整手段に相当)と、が設けられる。
そして、冷却システム10は、各サーバ14の情報処理量を監視又は制御する負荷制御ユニット58(負荷情報取得手段)と、各サーバ14の負荷情報に基づいてファン20や冷凍機40、冷却塔48等の冷却システム全体としての消費エネルギー量(以下、空調機器全体の消費エネルギー量ともいう)を小さくするようなファン20の風量、蒸発器18における冷却処理量等を演算及び制御する運転演算制御部60と、を備えている。
本実施形態では、蒸発器18における冷却処理量は、蒸発器18で冷却された後の風の温度(以下、「蒸発器18の出口温度」という)により計算でき、冷却処理量の制御は蒸発器18への冷媒の供給流量を調整することにより行う例で説明する。
負荷制御ユニット58は、各サーバ14の情報処理量(処理負荷)をモニタリングし、必要に応じて処理量を各サーバ14に分配する。この負荷制御ユニット58は、後述する運転演算制御部60とは別途独立して各サーバ14の処理負荷を制御するものである。また、負荷制御ユニット58の代わりに、各サーバ14内にソフトウェアとして設けられる仮想化ソフトの出力データを用いることもできる。
運転演算制御部60は、負荷制御ユニット58からの情報処理量データ(負荷情報)に基づき、各サーバ14の冷却に必要なファン20の風量及び蒸発器18の出口温度を処理負荷に応じて変化させたときの空調機器全体の消費エネルギー量を演算する。この演算により、空調機器全体の消費エネルギー量が最小となるファン20の風量、蒸発器18の出口温度を設定値として各風量調整手段50及び各流量制御部56に出力し、制御する。
ここで、空調機器全体の消費エネルギー量とは、ファン20の動力、冷媒冷却に要するエネルギーや各種冷媒の搬送動力を含めたトータルでの消費エネルギー量をいう。本実施形態において、冷媒冷却に要するエネルギーや冷媒の搬送動力としては、例えば、冷凍機40における冷却エネルギー、冷水を冷媒凝縮器26に循環させる循環ポンプ46の動力、及び冷水冷却用の冷媒を循環させる循環ポンプ49の動力等が含まれる。
本実施形態において使用される冷媒としては、特に限定はないが、例えば、フロン、或いは代替フロンとしてのHFC(ハイドロフロロカーボン)等を使用することができる。また、大気圧よりも低い圧力で使用するならば水を使用することも可能である。ここで、冷媒と表現する場合には、ガス状態の冷媒ガスと、液体状態の冷媒液体の両方を含むものであり、図1には、冷媒ガスの流れ方向を白矢印で示し、冷媒液体の流れ方向を黒矢印で示した。
次に、本実施形態における冷却システム10の作用について説明する。
負荷制御ユニット58において、各サーバ14での情報処理負荷を取得する。運転演算制御部60は、負荷制御ユニット58からの出力信号に基づき、空調機器全体の消費エネルギー量を小さくする風量、蒸発器18の出口温度の各設定値を演算し、該演算結果を、各サーバラック16に設けられた風量調整手段50、及び流量制御部56に出力する。そして、風量調整手段50は、各サーバ14の負荷に合わせてファン20の運転周波数を制御することにより風量を調整する。
たとえば、あるサーバ14が所定負荷で処理する際の発熱量が最大発熱時の80%である場合に、ファン20の風量を100%で動かすと、サーバ14の入口側と出口側とで風の温度差が風量を80%にした場合に対して小さくなる。即ち、蒸発器18の入口空気温度が下がるため、蒸発器18内の冷媒温度も低くしなければ、冷却能力を維持できないこととなる。
しかし、本実施形態のように、例えば、サーバ14を流れる風量を風量調整手段50で強制的に最大発熱時の80%まで落とすことで、蒸発器18の入口温度をサーバ14の排熱(約40℃の高温)に近い温度に維持できる。このように、ファン20の風量を各サーバ14における処理負荷に応じて調整することで、蒸発器18での処理温度を高くすることができる。これにより、冷媒(2次冷媒)、ひいては冷水(1次冷媒)の冷却温度を高く設定でき、冷却システム全体としての消費エネルギー量を低減することができる。
具体的には、まず、サーバ14における情報処理量、蒸発器18の出口空気の設定温度を運転演算制御部60に入力する。
次いで、運転演算制御部60は、入力した情報処理量からサーバ14の性能特性曲線(情報処理量とサーバ14の発熱量との関係を対応表又はモデル数式としてまとめたもの)を用いてサーバ14の発熱量を演算する。なお、これらの性能特性曲線は運転演算制御部60内に予め用意しておくものとする。
次いで、運転演算制御部60は、冷凍機側で冷水温度が制御されている冷水運転条件から決まる最低蒸発温度に対して、サーバ14の発熱量を処理するのに必要なファン20の風量を演算し、該演算した風量となるように風量調整手段50のINV数値を演算する。なお、上記冷水運転条件は、冷凍機側でローカルに制御されており、冷水温度の制御開始時の設定値(例えば7℃)を示している。
そして、運転演算制御部60は、上記演算結果に基づくファン20の運転周波数を風量調整手段50に出力する。
一方、流量制御部56は、温度センサ52によってモニタリングしながら、蒸発器18の出口温度が運転演算制御部60で得た設定値となるように、バルブ54の開度を自動調整し、冷媒の供給流量を制御する。
これにより、例えば、蒸発器18の出口温度が設定温度よりも低くなり過ぎた場合には、バルブ54の開度が絞られて冷媒の供給流量が減少する。このように、冷媒の供給流量を必要以上に多くしないことで、冷媒を冷却するための冷却負荷を小さくすることができるので、冷却エネルギー量を低減することができる。
すなわち、サーバルーム12の空気は、ファン20によりサーバラック16内に取り込まれて加熱され、該加熱された熱風と蒸発器18内の冷媒との間で熱交換される。そして、蒸発器18により冷却された風は、測定センサ52により測定される。一方、冷媒自然循環システムでは従来の圧縮式空調システムとは異なり、蒸発温度より低い凝縮温度が必要となるため、蒸発温度を高く設定することができれば凝縮温度(即ち、冷却塔で利用する外気の温度)も高くすることができ、より高温の外気条件でも冷却塔での冷却能力を利用できることとなる。すなわち、外気温度が高い中間期においても冷却塔単独での冷却が可能となり、冷凍機の運転を抑制してランニングコストを削減することができる。
本発明に係る電子機器の冷却システム10の第1の実施形態を構成することにより、精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きなサーバ14を、以下にまとめられる理由により、小さなランニングコストで効率的に冷却することができる。
(A)冷媒自然循環方式を採用し、蒸発器18と冷媒凝縮器26との配置位置の高低差及び処理温度差を利用することで、冷媒(熱)の搬送動力が不要となる。冷媒自然循環方式では、蒸発器18から排出され、温度センサ52で測定される空気温度と、冷媒凝縮器26で冷媒を冷却する温度との差ΔTが5℃以上あれば作動し、無動力で冷媒を搬送できる。従来のセントラル空調方式の冷却システムでは、システムに要する全体動力の10%程度は冷媒を搬送するポンプ動力で占められており、この冷媒搬送(熱搬送ともいう)に要するポンプ動力を削減できる。
また、近年におけるサーバ14からの発熱量が急激に上昇して、高温の熱(熱風)がサーバ14から発生することにより、従来にも増して上記のΔTが増加する。そして、このΔTの増加に従い熱搬送量(システムの熱処理量)が増加する。冷媒凝縮器26の仕様により熱搬送量は変化するが、ΔT=15℃でサーバ発熱量の半分程度(ΔT=30℃でサーバ全発熱量)の冷却が可能である(サーバ発熱が15kWであれば、ΔT=15℃で7.5kW,ΔT=30℃で15kW全ての熱処理が可能である)。
(B)サーバ14に近接した蒸発器18を用いて、サーバ14ごとに局所冷却を行うことにより、局所的な熱溜まりを防止できる。
例えば、データ処理センター設備において、サーバラックに搭載されるサーバは正常に動作する空気温度条件が指定されており、サーバによって若干異なるが、吸い込み空気条件は25℃以下が一般的である。
一方、従来の床吹き出し方式の空調では、空調機(パッケージ空調機)3からの給気温度は18℃程度、空調機3への戻り空気温度は26℃程度で運転されている。これは実際の運転では、サーバラック排気(通常40℃程度)と給気とが部分的に混合してサーバラックに吸い込まれるため、サーバラック吸い込み空気温度25℃を満足するには、給気温度が低温(実際の空気温度は18℃程度)でなければならないからである。
これに対して、局所熱処理ユニット方式でサーバラックを冷却した場合には、出口空気温度25℃を満足するため、給気温度が低温でなくても、即ち18℃よりも高くてもサーバ吸い込み空気温度25℃を満足できるようになり、例えば給気温度23℃と従来の18℃と比べて5℃も高くすることが可能となる。通常、パッケージ空調方式の冷却システムでは給気温度を1℃高くすることで、上記した効率(COP)を3%程度向上させることができ、給気温度5℃の上昇により、COPを15%程度向上できる。
(C)サーバ14での処理負荷に応じて、冷却に必要なだけファン20や蒸発器18における冷却処理を行うようにすることで、冷却システム全体としての消費エネルギー量をできるだけ小さくすることができる。
なお、上記実施形態では、冷媒の冷却機構として、冷水(1次冷媒)と熱交換させる冷媒凝縮器26を用いる例で説明したが、これに限定されず、例えば、外気冷却方式の冷却塔、或いは外気冷却方式の冷却塔と上記冷媒凝縮器26との併用も可能である。これにより、冷媒を冷却するためのランニングコストを一層低減できる。
上記実施形態では、蒸発器18における冷却処理量調整手段として、蒸発器18への冷媒の供給流量を制御する例を示したが、これに限定されず、例えば、供給流量は変えずに冷媒温度を変えるようにしてもよい。また、蒸発器18における冷却処理量の測定方法としては、蒸発器18の出口温度を測定する方法の他にも、蒸発器18に直接取り付けた温度センサにより冷媒温度を測定する方法も採用できる。
上記実施形態では、ファン20をサーバ14と蒸発器18との間に配置する例を示したが、これに限定されず、サーバ14の排熱を蒸発器18に向かって排気するように配置できればよい。
図2は、本実施形態の冷却システム10の別態様を示す概念図である。
本実施形態の冷却システム10は、上記図1に示される冷却システム10の構成における負荷制御ユニット58の代わりに、サーバ14の消費電力量を計測する電力測定器62を設け、その消費電力量に基づいて最適運転状態の演算及び制御するようにしたものである。
即ち、図2に示すように、各サーバ14の消費電力を測定し、該消費電力量の情報を運転演算制御部60に出力するように構成される。これにより、上記した効果に加え、簡単な構成で各サーバ14での処理負荷を把握できるという効果を有する。
なお、各サーバ14の発熱量を測定する方法としては、上述した他、サーバ内部温度測定センサや被空調室内温度センサ等を用いて測定する方法も採用できる。
図3は、本実施の形態の冷却システム10の更に別の態様を示す概念図である。
本実施形態の冷却システム10は、上記図2の冷却システム10の構成に、更に冷凍機40での冷水(1次冷媒)の冷却温度を制御する冷却温度制御部64を設け、サーバ14の処理負荷に応じて冷水温度を制御するようにしたものである。
即ち、図3に示すように、冷却温度制御部64は、運転演算制御部60での演算により得られた蒸発器18の出口温度となるように冷媒の供給流量だけでなく、冷媒を冷却するための冷水温度を制御する。このように、サーバ14の処理負荷に応じて冷却温度を調整するので、処理負荷に必要となる以上に冷媒を冷却し過ぎるのを抑制できる。したがって、トータルで省エネルギー化を図ることができる。
なお、冷水の冷却温度だけでなく、循環ポンプ46等により冷水の循環流量を調整して冷媒の冷却温度を制御してもよい。
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態の電子機器の冷却システム100を示した概念図である。なお、第1の実施形態と同じ部材及び構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第2の実施形態の冷却システム100は、第1の実施形態の冷却システム10の構成における負荷制御ユニット58の代わりに、サーバ全体で処理する情報処理量データをモニタリングする負荷モニタリングユニット66と、運転演算制御部60での演算結果に基づき、各サーバ14の処理量を分配する負荷分配ユニット68とを設け、空調機器だけでなくサーバ14を含めたシステム全体としての消費電力量を低減するようにしたものである。
負荷モニタリングユニット66は、図4に示すように、サーバ全体で処理する処理量をモニタリングし、その結果を運転演算制御部60及び負荷分配ユニット68にそれぞれ出力する。
運転演算制御部60は、ファン20や冷凍機40等の空調機器、及び各サーバ14を含めたシステム全体としての消費電力量が最小となる各サーバ14の情報処理量、空調機器運転状態を演算し、その演算結果を負荷分配ユニット68に出力する。
負荷分配ユニット68は、運転演算制御部60から得た演算結果に基づき、上記システム全体の消費電力量が最小となるように各サーバ14に処理を分配する。なお、処理の分配方法は、システム全体の消費電力量が小さくなるような方法であればよく、例えば、各サーバ14に処理負荷を均等分配する方法、特定エリアのサーバ14のみに処理負荷を分配する方法等、が挙げられる。
具体的には、まず、各サーバ14の初期情報処理量、各蒸発器18における初期冷水供給温度を運転演算制御部60に入力する(ステップS1)。
次いで、運転演算制御部60は、発熱量が最も大きい蒸発器18において必要となる蒸発温度の最高値を、蒸発器18の性能特性曲線(最大風量での処理熱量と蒸発温度の関係式)から算出する(ステップS2)。
運転演算制御部60は、上記蒸発温度条件に対して、各蒸発器18において発熱量を処理するのに必要なファン20の風量を演算する(ステップS3)。
運転演算制御部60は、上記演算した風量条件から各蒸発器18への送風動力を計算する。また、上記ステップ2で求めた蒸発温度条件と発熱量の合計から、冷凍機40、循環ポンプ46、冷却塔48、循環ポンプ49の運転状態及び消費電力を計算する。さらに、予め準備された情報処理量と消費電力の関係式を用いて各サーバ14の情報処理量から各サーバ14の消費電力も算出する(ステップS4)。即ち、この蒸発温度条件は、システムの各蒸発器18が所定の冷却性能を発揮するのに必要となる最大の蒸発温度であり、この蒸発温度を満足するように冷凍機40の冷水供給温度及び循環ポンプ46の冷水流量を調整する。
運転演算制御部60は、発熱量が最大のサーバ14での情報処理量を他のサーバ14に分散した場合について、上記ステップS1〜S4を複数回実行する(ステップS5)。
運転演算制御部60は、上記複数回行われたステップS4での結果において、合計消費電力が最小になる各サーバ14への情報処理量、ファン20の風量、冷水供給温度をそれぞれ抽出する(ステップS6)。
そして、運転演算制御部60は、上記抽出した各サーバ14の情報処理量、ファン20の風量及び冷水供給温度を、サーバ14、風量調整手段50、或いは流量制御部56にそれぞれ出力する(ステップS7)。
上記の如く構成された第2の実施形態の冷却システム100によれば、上記した第1の実施形態の効果に加え、空調機器だけでなくサーバ14を含めた設備全体としての消費電力を低減することができる。また、処理負荷を均等分配する場合には、各サーバ14における風量調整手段50や流量制御部56等の条件も統一できるので、空調制御を簡易化することができる。
なお、上記各実施形態では、電子機器としてサーバ14の例で説明したが、特に限定されず、各種電子機器や装置の排熱処理に本発明を適用できる。
本発明に係る電子機器の冷却システムの第1の実施形態を説明する概念図である。 第1の実施形態の冷却システムの別態様を説明する概念図である。 第1の実施形態の冷却システムの更に別の態様を説明する概念図である。 本発明に係る電子機器の冷却システムの第2の実施形態を説明する概念図である。 従来の空調システムの一例を説明する概念図である。
符号の説明
10、100…冷却システム、12…サーバルーム、14…サーバ、16…サーバラック、18…蒸発器、20…ファン、21…冷却コイル、26…冷媒凝縮器、28…循環ライン、32…戻し配管、34…供給配管、36…床下チャンバ、40…冷凍機、46、49…循環ポンプ、48…冷却塔、50…風量調整手段、52…温度センサ、54…バルブ、56…流量制御部、58…負荷制御ユニット、60…運転演算制御部、62…電力測定器、64…冷却温度制御部、66…負荷分配モニタリングユニット、68…負荷分配ユニット

Claims (8)

  1. 複数の各電子機器に近接して設けられ、該電子機器から発生する熱で冷媒を気化させることにより該電子機器を冷却する複数の蒸発器と、
    前記電子機器から発生する熱を含む風を前記複数の各蒸発器にあてる複数の送風手段と、
    前記各蒸発器に対して並列に配置され、前記蒸発器に供給する冷媒を冷却する凝縮器と、を備えた電子機器の冷却システムにおいて、
    前記複数の各送風手段の風量をそれぞれ調整する風量調整手段と、
    前記蒸発器における冷却処理量をそれぞれ制御する冷却処理量調整手段と、
    前記電子機器情報処理量の負荷情報をそれぞれ取得する負荷情報取得手段と、
    前記負荷情報取得手段で取得した電子機器の負荷情報に基づいて、前記各電子機器の負荷に合わせて前記風量調整手段及び前記冷却処理量調整手段を制御する運転演算制御手段と、を備え
    前記負荷情報取得手段は、前記電子機器の消費電力量を測定する電力量測定手段であると共に、
    前記蒸発器と前記凝縮器との間における冷媒の輸送は、自然循環により行うことを特徴とする電子機器の冷却システム。
  2. 前記運転演算制御手段は、前記冷却システム全体の消費エネルギー量を小さくする前記送風手段の風量、前記蒸発器における冷却処理量の各設定値を演算し、該設定値となるように前記風量調整手段及び前記冷却処理量調整手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の電子機器の冷却システム。
  3. 前記冷却処理量調整手段は、前記演算結果に基づいて、前記蒸発器に供給する冷媒流量を調整する冷媒流量調整手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器の冷却システム。
  4. 前記冷却処理量調整手段は、前記演算結果に基づいて、前記冷媒の冷却温度を調整する冷却温度調整手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電子機器の冷却システム。
  5. 前記電子機器における情報処理量の負荷を分配する負荷分配手段を備え、
    前記運転演算制御手段は、前記負荷情報に基づいて前記風量調整手段、前記冷却処理量調整手段、及び前記負荷分配手段を制御することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電子機器の冷却システム。
  6. 前記運転演算制御手段は、前記冷却システム全体の消費エネルギー量と前記電子機器の消費電力量との総和を小さくする前記送風手段の風量、前記蒸発器における冷却処理量、及び前記電子機器における情報処理量の各設定値を演算し、該設定値となるように前記風量調整手段、前記冷却処理量調整手段、及び前記負荷分配手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の電子機器の冷却システム。
  7. 前記電子機器はサーバであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の電子機器の冷却システム。
  8. 請求項1〜7の何れか1項に記載の電子機器の冷却システムを用いたことを特徴とする電子機器の冷却方法。
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